以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る自車位置認識装置を、車両用の走行支援システムに適用した場合を例にして説明する。
図1は、本実施形態に係る自車位置認識装置100を備える車両用の走行支援システム1のブロック構成を示す図である。自車位置認識装置100及びこれを含む車両用の走行支援システム1は、車両に搭載されている。車両用の走行支援システム1は、自車両の操舵操作や加減速操作などの一部又は全部を実行し、又は自車両の走行に必要な情報を出力して自車両の走行を支援する。自車位置認識装置100は、自車両が走行する車線に対して、自車両が存在する相対横位置を認識する。相対横位置とは、レーンマーカにより区分される車線の幅方向における自車両の位置である。本実施形態において、認識した相対横位置の情報は運転支援処理に利用される。なお、本実施形態では分岐車線を例にして説明するが、本実施形態の自車位置認識装置100及び走行制御装置1は、走行車線の幅が変化するという点で共通する合流車線についても同様に適用可能であり、同様の作用効果を奏する。また、本実施形態の分岐車線は車線数が増加する態様のものを含み、本実施形態の合流車線は車線数が減少する態様のものを含む。
図1に示すように、車両用の走行支援システム1は、自車位置認識装置100と、車載装置200とを有する。車載装置200は、車両コントローラ50と、駆動系60と、操舵装置70と、走行支援装置80と、ナビゲーション装置90とを備える。自車位置認識装置100と各車載装置200とは、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
車両コントローラ50は、車両全体の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)である。車両コントローラ50は、車載された各種のセンサ51からの検出信号を取得する。取得した信号は車両制御に用いられ、走行支援装置80、自車位置認識装置100へ送出される。各種センサ51は、車両の状態を検出するものであり、具体的には車速センサ、操舵角センサ、ステアリングアクチュエータの電流センサを含む。また、ヨーレートセンサを含んでもよい。車速は変速機の出力側の回転数や車輪の回転数を計測することにより検出する。操舵角は、ステアリングシャフトの回転変位を直接またはギヤ機構等により増幅した後、ロータリエンコーダやポテンショメータ等の角度検出機構によって操舵角検出信号として検出する。
駆動系60は、車両Vの駆動機構であり、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ50又は走行支援装置80から取得した制御信号に基づいて車両を駆動させる。操舵制御装置70は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。運転者のステアリング操作による入力信号、車両コントローラ50又は走行支援装置80から取得した制御信号に基づいて車両を動かす。
走行支援装置80は、自車位置認識装置100により算出された走行車線と自車両との相対位置関係を表現するレーンマーカモデルを用いて、自車両が車線中央の位置を維持して走行するように、又は自車両が車線に対して設定された横位置を維持して走行するように操舵装置70の制御を行う。走行支援装置80は、車両コントローラ50の各種センサ51から取得した車速、操舵角、およびステアリングアクチュエータの電流の情報に基づいて、操舵制御量を算出し、ステアリングアクチュエータに電流指令を送ることで、自車両が目標の横位置を走行するように制御を行う。
ナビゲーション装置90は、現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)91と、地点情報、道路情報、施設情報などを位置情報に対応づけた地図情報とを有する。
また、同図に示すように、本実施形態の自車位置認識装置100は、制御装置10と、車両の前方を、側方を含む車両周囲を撮影するカメラ20と、自車両の相対横位置の認識結果を出力する出力装置30とを備える。
本実施形態のカメラ20は、車両の車幅方向の略中央位置に設けられる。本実施形態では、車室内のフロントウィンドウの上部に取り付けられる。カメラ20は、CCD等の撮像素子を用いたカメラであり、車両Vの進行方向の映像を撮像する。カメラ20は、重力方向に沿って下側のピッチ角をもって車両に取り付けられる。ピッチ角は、車両の高さやカメラ20の性能に応じて適宜に設定することができる。このため、本実施形態のカメラ20は、車両前方の数m〜数10m先の路面を撮像する。また、本実施形態では、自車が走行する走行車線のみならず、隣の車線、さらには隣の隣の車線の道路も撮像できる。この場合には広角のカメラ20を用いることが好ましい。
本実施形態の出力装置30としてのディスプレイ31やスピーカ32は、車両のドライバが視認可能なダッシュボード周囲に設置され、自車両の相対横位置の認識結果に関する情報、自車両の相対横位置に応じた走行支援に関する情報などをドライバに提示する。また、本実施形態の出力装置30は、無線又は有線の通信機能を備え、制御装置10の指令に従い、算出結果を自車位置認識装置100外の走行支援装置80その他の車載装置200へ送出する。算出結果には、第1相対横位置、第2相対横位置を含む。また算出結果に、第1評価値、第2評価値、評価比較値、道路パラメータを含ませてもよい。
続いて、本実施形態の自車位置認識装置100の制御装置10について説明する。自車位置認識装置100は、撮像画像に基づいて、自車両と、各車線を区分するレーンマーカとの相対的な位置関係を認識する。本実施形態の制御装置10は、自車両の位置を認識するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、自車位置認識装置100と車両用の走行支援システム1として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
本実施形態に係る自車位置認識装置100の制御装置10は、画像取得機能と、レーンマーカ検出機能と、評価値算出機能と、自車相対横位置算出機能とを有する。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行するコンピュータである。
以下、本実施形態に係る自車位置認識装置100の各機能について説明する。
まず、本実施形態の制御装置10の画像取得機能について説明する。制御装置10は、カメラ20が撮像する車両周囲の撮像画像を取得する。撮像画像は、車両の前方、前側方の道路表面の映像を含む。
本実施形態の制御装置10のレーンマーカ検出機能について説明する。制御装置10は、撮像画像に基づいて、自車両が走行する第1走行車線を区分する一対(二本)の第1レーンマーカを検出する。走行車線のレーンマーカの検出手法は特に限定されず、出願時に知られた白線検知機能、走行支援機能、キープレーンサポート機能などの技術を適宜に用いることができる。本実施形態の制御装置10は、撮像画像に含まれる道路とレーンマーカ(白線)との境界に対応するエッジを抽出し、抽出されたエッジを解析することによりレーンマーカを検出する。
また、本実施形態の制御装置10は、自車両が走行する第1走行車線に隣接する第2走行車線をそれぞれ区分する第2レーンマーカを検出する。第1走行車線と第2走行車線とが隣接する場合には、中央のレーンマーカは第1レーンマーカでもあり、第2レーンマーカでもある。具体的に、3本のレーンマーカによって区分される自車両が走行する第1走行車線と、その右側に並行して隣接する第2走行車線とが存在する場合において、最左側と中央の一対(二本)のレーンマーカは第1走行車線を区分する第1レーンマーカであり、最右側と中央の一対(二本)のレーンマーカが第2走行車線を区分する第2レーンマーカともいえる。
中央のレーンマーカの属性を明確にするために、本実施形態において、第2レーンマーカは第1レーンマーカを含まないと定義してもよい。つまり、第2レーンマーカは、第1レーンマーカ以外のレーンマーカに限定する。上述の例を用いて説明すると、3本のレーンマーカのうち最左側と中央のレーンマーカを第1レーンマーカとし、最右側のレーンマーカのみを第2レーンマーカとしてもよい。
本実施形態の第2走行車線は、第1走行車線に隣接する車線を少なくとも含む。また、第2走行車線は、第1走行車線と走行方向が同じ車線のみならず、第1走行車線と走行方向が反対の対向車線を含む。第2走行車線は、自車両が走行する車線の隣に存在する隣接車線、さらに、この隣接車線の隣に存在する隣々接車線(自車走行車線の隣の隣の車線)を含む。制御装置10は、自車両の走行車線、その隣の隣接車線、さらにその隣の隣々接車線など、自車両が走行する道路に属する複数のレーンマーカを検出する。制御装置10は、検出されたレーンマーカの位置を取得する。
本実施形態の制御装置10の評価値算出機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、撮像画像における第1レーンマーカの相対位置に基づいて算出された、第1レーンマーカにより区分される第1走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角のいずれか一つ以上を含む第1道路パラメータを用いて第1評価値を算出する。また、本実施形態の制御装置10は、撮像画像における第2レーンマーカの相対位置に基づいて算出された、第2レーンマーカににより区分される第2走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角のいずれか一つ以上を含む第2道路パラメータを用いて第2評価値を算出する。第1評価値、第2評価値は、道路パラメータとして定義された走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角から所定の演算処理を経て得られる値である。走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角の何れか一つの値を用いて評価値(第1評価値、第2評価値を含む、以下同じ)を算出してもよいし、二つ以上の値を組み合わせて評価値を算出してもよい。道路パラメータの種類ごとに異なる演算処理を定義してもよい。
本実施形態の制御装置10は、以下の何れか一つの手法により、道路に分岐車線又は合流車線が含まれるか否かを判断するための評価値を算出する。
第1の手法として、本実施形態の制御装置10は、第1道路パラメータから算出された第1評価値と第2道路パラメータの走行車線の道路曲率から算出された第2評価値との差が各道路パラメータの種類や各道路パラメータの組み合わせに応じて設定された第1所定閾値以上である場合には、第1走行車線に分岐車線又は合流車線が含まれると判定する。他方、第1評価値と第2評価値との差が所定閾値未満である場合には第1走行車線に分岐車線又は合流車線は含まれないと判定する。なお、本処理において、分岐車線又は合流車線が第2走行車線に含まれる場合もあり得るが、分岐車線又は合流車線の存在を予測する手法としては採用しても問題はない。
ちなみに、本実施形態における第1所定閾値は、レーンマーカの幅が一定である直進道路と、レーンマーカの幅が増減する分岐車線又は合流車線とを識別するという目的を達成するために設定される値である。第1所定閾値は、走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、及び自車両に対する相対ヨー角のそれぞれについて、異なる値が設定される。
第2の手法として、本実施形態の制御装置10は、異なるタイミングにおける第1道路パラメータ及び第2道路パラメータを用いて、道路に分岐車線又は合流車線が含まれるか否かを判定する。具体的に、制御装置10は、第1のタイミングにおける第1レーンマーカの相対位置に基づいて算出された、第1レーンマーカが区分する第1走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角のいずれか一つ以上を含む第1道路パラメータを算出する。そして、第1のタイミングよりも後の第2のタイミングにおいて、制御装置10は第1レーンマーカの相対位置に基づいて算出された第1道路パラメータを算出する。制御装置10は、第1タイミングにおける第1道路パラメータと、第2タイミングにおける第1道路パラメータとの第1差分に基づいて第1評価値を算出する。これにより、異なるタイミング、例えば現在と過去の道路パラメータを考慮した第1評価値を取得する。
同様に、自車が走行する第1走行車線以外の第2走行車線についても同様の処理を行う。つまり、制御装置10は、第1のタイミングにおける第2レーンマーカの第2道路パラメータと、その後の第2タイミングにおける第2レーンマーカの第2道路パラメータを算出する。制御装置10は、第1タイミングにおける第2道路パラメータと、第2タイミングにおける第2道路パラメータとの第2差分に基づいて第2評価値を算出する。これにより、異なるタイミング、例えば現在と過去の道路パラメータを考慮した第2評価値を取得する。道路パラメータ、評価値は処理時間に対応づけて逐次記憶したものを、本処理において読み込んでもよい。
本実施形態の制御装置10は、第1差分と第2差分との差分が第2所定閾値以上である場合には、第1走行車線又はこれを含む道路に分岐車線又は合流車線が含まれると判定する。分岐車線又は合流車線は第2走行車線に含まれる場合もあり得るが、分岐車線又は合流車線の存在を予測する手法としては採用しても問題はない。
ちなみに、本実施形態における第2所定閾値は、レーンマーカの幅が一定である直進道路と、レーンマーカの幅が増減する分岐車線又は合流車線とを識別するという目的を達成するために設定される値である。第2所定閾値は、走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、及び自車両に対する相対ヨー角のそれぞれについて、異なる値が設定される。第2所定閾値は、第1所定閾値と同値であってもよいし、異なる値であってもよい。
本手法は、上述した第1の手法、後述する第3の手法と独立に行うことができる。つまり、本実施形態の制御装置10は、レーンマーカ検出機能と、上記第2の手法を用いて第1評価値及び第2評価値を算出する評価値算出機能と、上記第2の手法を用いて評価比較値を算出し、自車両の相対横位置を算出する自車相対横位置算出機能とを実行するように構成することができる。
第3の手法は、第2走行車線が複数ある場合に適した手法である。本実施形態の制御装置10は、自車両に対する第1レーンマーカのの第1道路パラメータに基づいて第1評価値を算出する。制御装置10は、自車両に対する複数の第2レーンマーカのの第2道路パラメータに基づいて第2評価値を算出する。
本実施形態の制御装置10は、第1評価値及び第2評価値を母集団とし、この母集団に対する第1評価値(又は第2評価値)の偏差を算出する。第1評価値(又は第2評価値)の偏差が第3所定閾値以上である場合には、自車両が走行する第1第1走行車線(又は第2走行車線)に分岐車線又は合流車線が含まれると判定する。
本実施形態における偏差は、第1道路パラメータ及び第2道路パラメータを含む母集団に対する、各パラメータの偏り度合である。特に限定されないが、本実施形態における偏差は、第1道路パラメータ及び第2道路パラメータを含む母集団の平均からの各第1道路パラメータの差であってもよいし、第1道路パラメータ及び第2道路パラメータを含む母集団に対する各第1道路パラメータの標準偏差であってもよい。
ちなみに、本実施形態における第3所定閾値は、レーンマーカの幅が一定である直進道路と、レーンマーカの幅が増減する分岐車線又は合流車線とを識別するという目的を達成するために設定される値である。第3所定閾値は、走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、及び自車両に対する相対ヨー角のそれぞれについて、異なる値が設定される。第3所定閾値は、第1所定閾値又は第2所定閾値と同値であってもよいし、異なる値であってもよい。
本手法は、上述した第1の手法、第2の手法と独立に行うことができる。つまり、本実施形態の制御装置10は、レーンマーカ検出機能と、上記第3の手法を用いて第1評価値及び第2評価値を算出する評価値算出機能と、上記第3の手法を用いて評価比較値を算出し、自車両の相対横位置を算出する自車相対横位置算出機能とを実行するように構成することができる。
制御装置10は、レーンマーカに対する自車両の相対横位置を算出する自車相対横位置算出機能を備える。制御装置10は、評価値算出機能から取得した第1評価値と第2評価値とを比較して評価比較値を算出する。そして、制御装置10は、この評価比較値が第1所定閾値未満である場合には、検出された第1レーンマーカに対する自車両の第1相対横位置を算出し、評価比較値が第1所定閾値以上である場合には、前記検出された第2レーンマーカに対する自車両の第2相対横位置を算出する。評価比較値は、第1評価値と第2評価値との差分であってもよいし、第1評価値の第2評価値(又は第1評価値と第2評価値を含む母集団)に対する偏差値であってもよい。
制御装置10は、レーンマーカの検出結果に基づいて、車両とレーンマーカとの相対位置を認識する車線認識機能を備えてもよい。制御装置10は、カメラ20の撮影画像を処理することにより道路上のレーンマーカを検出し、次いで、道路形状と車両挙動を表す複数のパラメータ(以下「道路パラメータ」ともいう)を用いて道路車線の形状を数学的に表現したレーンマーカのモデルと、レーンマーカの検出結果とが一致するように道路パラメータを時間と共に更新していくことによって、車線に対する自車両の相対位置又は自車両に対する車線の相対位置を認識する。そして、制御装置10は、認識した車線の道路形状及び車両挙動を推定する。制御装置10は、この処理において得られた道路パラメータを用いて評価値算出処理を行う。
ここで、第1道路パラメータ、第2道路パラメータを含む本実施形態の道路パラメータについて説明する。図2A,図2Bは道路形状と車両挙動を表現する複数のパラメータを説明するための図である。図2A,図2Bに示すように、道路パラメータは基準となるレーンマーカに対する自車の重心点横変位yr、車線に対する自車のヨー角φr、車両のピッチ角η、カメラの路面からの高さh、道路曲率(曲率半径の逆数)ρ、走行車線幅W等である。
そして、図3に示すような画面座標系x,y上において、レーンマーカモデルを、道路パラメータを用いて式(1)で表す。なお、レーンマーカモデルの表現手法は、特に限定されず、出願時に知られたモデルを用いることができる。
式(1)において、a〜eは道路パラメータであり、路面からのカメラ1の高さhを一定とすると、それぞれの道路パラメータは、次のような道路及び白線の形状又は車両挙動を表す。すなわち、aは車線内の自車両の横変位量yrに、bは道路の曲率ρに、cは自車両(カメラ1の光軸)の道路に対するヨー角φrに、dは自車両(カメラ1の光軸)の道路に対するピッチ角ηに、eは道路の車線幅Wにそれぞれ対応する。なお、ここでは基準とするレーンマーカを自車走行車線左側に設定しているが、他のレーンマーカを基準として設定することも可能で、その際は式(1)中の{}の部分が変化する。{a+2e}、{a+3e}又は{a-2e}、{a-3e}とすることで、隣の車線だけでなくその隣の隣の車線などの複数の車線のレーンマーカを表現することができる。横変位量yrは自車に対する基準となるレーンマーカの位置横変位を示す。例えば車線中央を目標走行位置とする場合には、yr= −W/2を目標として設定すればよい。以下に、上記(1)式の説明をする。
車両に固定された実座標系x(車両の左右方向)、y(車両の上下方向)、z(車両の前後方向)上の任意の点を画面座標系x,yに投影すると下記の式(2)となる。
ただし、fはレンズパラメータであり、レンズの焦点距離に対応した係数である。道路曲率ρがあまり大きくなく、かつ道路面は平面であると仮定すると、Z[m]前方における車両中心線(カメラ中心線)に対する道路白線の座標は下記の(3)式で与えられる。ただし、この仮定はモデルの簡略化のために設定した仮定であり、モデルの次数を大きくすることにより、一般的な条件でも成立するようになる。
上記(2)〜(3)式よりX,Y,Zを消去することにより、下式(4)が得られる。
各変数の中で最も変動の小さいカメラ高さhを一定として(5)式を用いて各パラメータを正規化することにより上記(1)式を得る。
なお、初期状態では、道路及びレーンマーカの形状や車両挙動が不明であるから、各道路パラメータには、例えば、中央値に相当する値を初期値として設定する。例えば、車線内の自車両の横変位量対応パラメータaには車線中央を設定し、道路曲率対応パラメータbには直線を設定し、車線に対するヨー角対応パラメータcには零度、車線に対するピッチ角度対応パラメータdには停止状態のη度分を設定し、車線幅対応パラメータeには、一般的な道路の車線幅を設定する。
分岐車線又は合流車線に進入する場面においては、分岐車線又は合流車線に連なる車線のレーンマーカの幅は変化する一方で、その車線と同じ道路に属し、分岐車線又は合流車線に連ならない車線のレーンマーカの幅が変化しない。本実施形態ではこの点に着目し、自車両が走行する第1走行車線のレーンマーカと自車両の位置関係と別の第2走行車線のレーンマーカと自車両との位置関係の差に基づいて、その道路に分岐車線又は合流車線が含まれるか否かを判定する。
本実施形態の自車位置認識装置100によれば、本線車線が複数存在する道路において、各車線と自車両との位置関係の変化に基づいて、分岐車線、合流車線(車線が増加する道路を含む)の存在を迅速かつ正確に判定し、分岐車線、合流車線が存在しない車線を区分するレーンマーカに対する自車両の相対横位置を算出できる。算出された自車両の相対横位置は、自車両の走行支援に利用される。
続いて、本実施形態の自車位置認識処理、及び走行支援処理の手順を、図4乃至図8に基づいて説明する。
図4に示すように、本実施形態の走行支援システム1の自車位置認識装置100は、自車位置認識処理として、エッジ抽出処理S1、レーンマーカ検出処理S2、道路パラメータ算出処理S3、分岐車線及び合流車線の判定処理S4、自車相対横位置の出力処理S5を行う。これに続いて走行支援装置80は、走行支援処理S6を行う。
エッジ抽出処理S1では、道路の映像を含む撮像画像からレーンマーカに対応する画像のエッジを抽出する。一般に、レーンマーカは道路と識別可能な色等が付されているため、その色のコントラストに基づいてエッジを抽出することができる。
レーンマーカ検出処理S2では、エッジ抽出処理S1にて抽出されたエッジの連続性などを検討し、レーンマーカを構成するエッジ情報に基づいてレーンマーカの存在及びその位置を検出する。エッジの抽出は、自車両の走行車線と、その隣の走行車線の映像が含まれる範囲において行う。必要に応じて、自車両の走行車線と、その隣の走行車線、さらに自車両の走行車線の隣の隣の走行車線の映像が含まれる範囲において行う。
レーンマーカの検出処理S2のサブルーチンを図5に示す。ステップS101において、初期状態では道路及びレーンマーカの形状や車両挙動が不明であるから、各道路パラメータには、例えば、中央値に相当する値を初期値として設定する。例えば、車線内の自車両の横変位量対応パラメータaには車線中央を設定し、道路曲率対応パラメータbには直線を設定し、車線に対するヨー角対応パラメータcには零度、車線に対するピッチ角度対応パラメータdには停止状態のη度分を設定し、車線幅対応パラメータeには、一般的な道路の車線幅を設定する。車線幅は、ナビゲーション装置90が記憶する道路幅その他の道路情報を含む地図情報92を参照し、GPS91により検出された位置情報が属する道路の道路情報から読み出してもよい。
ステップS102では、図6に示すように、レーンマーカ候補点を検出するための領域LMの初期設定を行う。レーンマーカ候補点を検出するための領域LMは、まず、自車両が走行する第1走行車線について行い、順次、第1走行車線の隣の第2走行車線について行う。必要があれば、さらに第1走行車線の隣の隣の第2走行車線についても行う。初期状態においては、道路パラメータに初期値を設定した白線モデルと、実際の画面上の道路白線との間には大きな開きがあると予想されるので、できる限り大きな領域を設定するのが望ましい。
次いでステップS103に移行し、エッジ点情報を入力する。ステップS104において、初期状態では、S102で設定した検出領域を利用する。前回の処理までにレーンマーカが既に検出されている場合には、前回検出位置が領域の中心になるようにレーンマーカ候補点の検出領域を設定する。さらに、前回の処理で道路パラメータが算出されている場合には、前回の処理で求めたレーンマーカモデルから車両の変化方向にオフセットした位置にレーンマーカ候補点検出領域を設定するようにしてもよい。
続くステップS105において、レーンマーカ候補点検出領域の中に存在するエッジ点をレーンマーカ候補点として検出する。ステップS106において、レーンマーカ候補点の点数が所定値以上かどうかを確認し、所定値より少なければ、レーンマーカ候補点検出領域内にレーンマーカが含まれていなかったと判断する。所定値よりも大きければ、ステップS107に移行し、検出したレーンマーカに含まれるレーンマーカ候補点情報を出力する。レーンマーカ候補点情報は、次に行われる道路パラメータ算出処理において用いられる。同様の処理を、自車両が走行する第1走行車線の第1レーンマーカのみではなく、他の走行車線についても行い、第2走行車線の第2レーンマーカも検出する。なお、ステップS104において、前回の処理で算出した道路パラメータを元に、前回検出したレーンマーカを基準に道路幅Wオフセットさせた位置にレーンマーカ候補点検出領域を設定することで、隣の車線のレーンマーカが存在しうる領域を、候補点検出領域として設定することができる。
道路パラメータ算出処理S3では、各レーンマーカに対する自車両の相対位置に基づいて算出された各レーンマーカに対応する走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角のいずれか一つ以上を含む道路パラメータを算出する。制御装置10は、自車両が走行する第1走行車線についての第1道路パラメータに基づく第1評価値と、第1走行車線以外の第2走行車線についての第2道路パラメータに基づく第2評価値とをそれぞれ算出する。第1(第2)評価値は、第1(第2)道路パラメータと所定の相関関係を有する数値である。各種の第1(第2)道路パラメータを第1(第2)評価値として表現することにより、異なる種類の道路パラメータに基づく一の評価値を求めることができる。
具体的に、画像中央の自車両が走行する車線を区分する2本のレーンマーカを選択し、自車両が走行する第1走行車線に基づく第1道路パラメータを算出する。この算出方法は、例えば、検出された複数のレーンマーカ候補点を最小二乗法によりレーンマーカモデル式(1)にフィッティングする手法により算出できる。さらに式(5)を用いて実際の物理量に変換する。同様に、第1走行車線以外の第2走行車線の第2レーンマーカに対しても、その両側のレーンマーカに基づいて第2道路パラメータを算出する。このようにしてカメラ20の撮像画像から検出されたレーンマーカモデルの第1・第2道路パラメータに基づいて、自車両と各走行車線との相対的な位置関係を認識する。
分岐車線及び合流車線の判定処理S4では、第1道路パラメータから算出された第1評価値と第2道路パラメータから算出された第2評価値とを比較し、その差分を評価比較値として算出する。この評価比較値が第1所定閾値以上である場合には、自車両が走行する道路に分岐車線又は合流車線が含まれていると判定する。本例において、制御装置10は、各レーンマーカに対応する走行車線の道路曲率に関する第1所定閾値ρ01と、自車両に対する相対ピッチ角に関する第1所定閾値η01と、自車両に対する相対ヨー角に関する第1所定閾値φr01とを予め記憶する。
分岐・合流車線の判定処理と、自車相対横位置の算出及び出力処理のサブルーチンを図7A〜図7Dに示す。分岐車線又は合流車線の存在を判断する手法のうち、図7Aは第1の手法に係る制御手順を示し、図7Bは第2の手法に係る制御手順を示し、図7C,Dは第3の手法に係る制御手順を示す。各フローチャートにおけるステップS203以外の処理は略共通する。
図7Aに基づいて、分岐車線又は合流車線の存在を判断し、その判断結果に応じて自車相対横位置を求める第1の手法について説明する。
まず、ステップS201において、所定時間内の自車走行車線(第1走行車線)の道路パラメータを格納し、その平均値ρp,φrp,ηp,yrp,Wp,を算出する。この道路パラメータから第1評価値を算出する。ステップS202において、第1走行車線のみならず他の第2走行車線についての道路パラメータを算出しているか否かの判定を行う。第1走行車線の第1道路パラメータに基づく第1評価値及び第2走行車線の第2道路パラメータに基づく第2評価値が算出されている場合にはステップS203Aに移行する。。
ステップS202において、自車走行車線以外の第2走行車線の第2道路パラメータによる第2評価値が算出されなかった場合はステップS201に戻って、ステップS201、S202を繰り返す。図示はしないが、自車走行車線以外の第2走行車線の第2道路パラメータによる第2評価値が算出されなかった場合に、自車走行車線の道路パラメータの第1評価値のみに基づいて自車両が走行する第1走行車線に分岐車線又は合流車線が存在するか否かを判定してもよい。この場合には、今回得られた第1道路パラメータに基づく第1評価値と過去の第1道路パラメータに基づく第1評価値とを比較し、いずれか1つの第1道路パラメータに基づく第1評価値の変化(今回と前回の第1道路パラメータの差)が設定された所定値以上である場合には、第1走行車線に分岐車線又は合流車線が存在すると判定する。第1道路パラメータの第1評価値の変化が設定された所定値未満である場合には、第1走行車線に分岐車線又は合流車線は存在せず、正常に自車両の位置を認識できる状態であると判断し、ステップS206に移行する。
第1手法におけるステップS203Aでは、制御装置10は、自車両が走行する第1走行車線の第1道路パラメータρ1,φr1,η1,又はこれに基づいて算出された第1評価値と自車走行車線以外の第2走行車線の道路パラメータρ2,φr2,η2,又はこれに基づいて算出された第2評価値との差分(変化)を算出する。制御装置10は、第1道路パラメータρ1,φr1,η1と第2走行車線の道路パラメータρ2,φr2,η2,との差分が第1所定閾値ρ01,η01,φr01未満である場合には、自車両が走行する道路に分岐車線又は合流車線は存在せず、正常に自車走行車線(第1走行車線)を認識できる状態であると判断し、ステップS206に移行する。ステップS206では、制御装置10は、検出された第1レーンマーカに対する自車両の第1相対横位置を算出し、これを走行制御装置80に出力する。
他方、ステップS203Aにおいて、制御装置10は、第1道路パラメータρ1,φr1,η1に基づく第1評価値と第2走行車線の道路パラメータρ2,φr2,η2,に基づく第2評価値とを比較して得られた評価比較値(例えば、第1評価値と第2評価値との差分)が第1所定閾値ρ01,η01,φr01以上である場合には、ステップS205に移行する。ステップS205において、制御装置10は、自車両が走行する第1走行車線を含む道路に分岐車線又は合流車線が存在すると判定する。ステップS207では、検出された第2レーンマーカに対する自車両の第2相対横位置を算出し、これを走行支援装置80に出力する。ステップS207の処理とともに、制御装置10は、第1道路パラメータの出力を停止してもよい。また、制御装置10は、分岐車線又は合流車線が存在しないと判断された場面で求められた過去の第1道路パラメータを出力してもよい。さらに、ステップS207の処理に代えて、制御装置10は、道路に分岐車線又は合流車線が存在しないと判断された場面で求められる第1道路パラメータが所定時間以上取得できない場合には、レーンマーカが不検出である旨の結果を出力し、第1道路パラメータの出力を停止してもよい。
次に、図7Bに基づいて、分岐車線又は合流車線の存在を判断し、その判断結果に応じて自車相対横位置を求める第2の手法について説明する。ここでは、図7Aに基づく説明を援用し、異なる処理となるステップS203Bについて説明する。
第2手法におけるステップS203Bでは、制御装置10は、過去に算出された第1走行車線の第1道路パラメータρp,φrp,ηp,に対する、現在算出された第1走行車線の第1道路パラメータρ1,φr1,η1,の第1差分(変化)から第1評価値を求める。第1差分を第1評価値としてもよい。また、制御装置10は、過去に算出された第1走行車線以外の第2走行車線の第2道路パラメータρp,φrp,ηp,に対する、現在算出された第2走行車線の第2道路パラメータρ2,φr2,η2の第2差分(変化)を第2評価値から求める。第2差分を第2評価値としてもよい。そして、制御装置10は、第1差分と第2差分との差分が第2所定閾値ρ02,η02,φr02未満である場合には、自車両が走行する道路に分岐車線又は合流車線は存在せず、正常に自車走行車線、及び自車両に位置を認識できる状態であると判断し、ステップS206に移行する。ステップS206では、自車両が走行する第1走行車線を区分する第1レーンマーカに対する自車両の第1相対横位置を算出し、これをを走行制御装置80に出力する。
他方、ステップS203Bにおいて、制御装置10は、予め算出されている第1道路パラメータρp,φrp,ηpと第1道路パラメータρ1,φr1,η1との第1差分(第1評価値)と、予め算出されている第2道路パラメータρp,φrp,ηpと第2走行車線の道路パラメータρ2,φr2,η2,との第2差分(第2評価値)との差分が、第2所定閾値ρ02,η02,φr02以上である場合には、ステップS205に移行する。ステップS205は、自車両が走行する第1走行車線を含む道路に分岐車線又は合流車線が存在すると判定する。ステップ207の処理は、第1の手法と共通する。
次に、図7C、図7Dに基づいて、分岐車線又は合流車線の存在を判断し、その判断結果に応じて自車相対横位置を求める第3の手法について説明する。ここでは、図7A、図7Bに基づく説明を援用し、異なる処理となるステップS203C、S203Dについて説明する。
第3手法におけるステップS203Cでは、制御装置10は、第1走行車線の第1道路パラメータρ1,φr1,η1と、複数の第2走行車線の第2道路パラメータ(ρ2,φr2,η2),(ρ3,φr2,η3),(ρ4,φr4,η4)…(ρn,φrn,ηn)とを求める。制御装置10は、これら第1道路パラメータから算出した第1評価値及び複数の第2道路パラメータから算出した第2評価値を母集団とし、第1走行車線の道路曲率、自車両に対する相対ピッチ角、又は自車両に対する相対ヨー角のいずれか一つの値について第1評価値の偏差をそれぞれ算出する。そして、制御装置10は、いずれかの偏差が第3所定閾値ρ03,η03,φr03未満である場合には、自車両が走行する道路に分岐車線又は合流車線は存在せず、正常に自車走行車線、及び自車両の位置を認識できる状態であると判断し、ステップS206に移行する。ステップS206では、自車両が走行する第1走行車線を区分する第1レーンマーカに対する自車両の第1相対横位置を算出し、これを走行制御装置80に出力する。
他方、ステップS203Cにおいて、第1道路パラメータの偏差のいずれかが、第3所定閾値ρ03,η03,φr03以上である場合には、制御装置10は、ステップS205に移行する。ステップS205は、自車両が走行する第1走行車線に分岐車線又は合流車線が存在すると判定する。ステップ207の処理は、第1、第2の手法と共通する。
第3手法のもう一つの手法を図7Dに基づいて説明する。図7Cで説明した第3手法は、第1走行車線に分岐車線又は合流車線が存在するか否かを判断するが、図7Dに示す手法では、第1走行車線及び第2走行車線を含む走行車線のいずれかに分岐車線又は合流車線が存在するか否かを判断する。
先述したステップS203Cと同様に、図7DのステップS203Dにおいて、制御装置10は、第1走行車線の第1道路パラメータρ1,φr1,η1と、複数の第2走行車線の第2道路パラメータ(ρ2,φr2,η2),(ρ3,φr2,η3),(ρ4,φr4,η4)…(ρn,φrn,ηn)とを求める。そして、制御装置10は、これら第1道路パラメータに基づいて算出された第1評価値及び第2道路パラメータ(ρn,φrn,ηn:nは1を含む自然数)に基づいて算出された第2評価値を母集団とし、各評価値の偏差をそれぞれ算出する。そして、制御装置10は、いずれかの偏差が第4所定閾値ρ04,η04,φr04未満である場合には、自車両が走行する道路には分岐車線又は合流車線は存在せず、自車走行車線を正常に認識できる状態であると判断し、ステップS206に移行する。ステップS206では、自車両が走行する第1走行車線を区分する第1レーンマーカに対する自車両の第1相対横位置を算出し、これを走行制御装置80に出力する。
他方、ステップS203Dにおいて、第1道路パラメータ又は各道路パラメータの偏差のいずれかが、第4所定閾値ρ04,η04,φr04以上である場合には、制御装置10は、ステップS205に移行する。ステップS205は、自車両が走行する第1走行車線を含む道路に分岐車線又は合流車線が存在すると判定する。ステップ207の処理は、第1、第2の手法と共通する。
第3の手法において、2つ以上の第2走行車線の第2道路パラメータが算出されている場合には、複数の走行車線に対する道路パラメータを母集団として、その偏差を考察する。自車両が走行する第1走行車線以外の複数の第2走行車線の第2道路パラメータに対して第1走行車線の第1道路パラメータが大きく異なる(大きい偏差が観察される)場合には、自車両が走行する第1走行車線に分岐車線又は合流車線が存在すると判定できる。このように、第1走行車線及び複数の第2走行車線の道路パラメータを比較することで、いずれかの走行車線の道路パラメータに偏差があるのか、さらにはどの走行車線の道路パラメータに偏差があるのか、を判断することができる。自車両が走行する第1走行車線の第1道路パラメータに偏差が生じている場合には、第1走行車線の第1レーンマーカが通常の幅一定の車線として認識されていない、又は第1レーンマーカを正しく検出できていない可能性があると判断できる。本処理によれば、道路パラメータの出力を停止させることにより、車線維持制御などの走行支援を停止させ、不正確な道路パラメータに基づいて自車両の走行が制御されることを防止することができる。
なお、本実施形態において、「道路に分岐車線又は合流車線が含まれると判定された場合」とは、第1走行車線が含まれる道路に属する走行車線(第1走行車線及び第2走行車線を含む)のうちの何れかに分岐車線又は合流車線が含まれると判定された場合と、第1走行車線に分岐車線又は合流車線が含まれると判定された場合とを含む、
図4に戻り、道路パラメータ出力処理S5では、制御装置10は、算出された自車相対横位置と、必要に応じて第1又は第2道路パラメータと、自車位置認識処理の対象となった車線の特定情報を走行支援装置80へ出力する。走行支援処理S6では、走行支援装置80が自車位置認識装置100から取得した道路パラメータを用いて自車両の走行支援を行う。
以下、走行支援処理S6について説明する。本実施形態では、道路に分岐車線又は合流車線が含まれるか否かの判定結果に応じて算出された相対横位置は、走行支援装置80において利用される。
本実施形態の走行支援装置80は、車両から走行に関する車両情報を取得する車両情報取得機能と、自車位置認識装置100の自車相対横位置算出機能により算出された第1又は第2レーンマーカに対する自車両の第1又は第2相対横位置とを取得する相対位置取得機能を有する。走行支援装置80は、第1又は第2道路パラメータと、第1又は第2道路パラメータに対応する第1又は第2走行車線を特定する車線特定情報とを取得してもよい。
走行支援装置80は、取得した車両情報と、第1又は第2道路パラメータと、車線特定情報とに基づいて、第1又は第2走行車線に対する目標横位置を設定する目標横位置設定機能と、第1又は第2走行車線の目標横位置と自車両との相対位置関係が維持されるように車両の走行を支援する走行支援機能とを有する。
図8に基づいて、本実施形態の走行支援処理について説明する。
ステップS301において、走行支援装置80は、車両コントローラ50の各種センサ51から車両情報としての各センサ信号を取得する。具体的に、車両信号は、車速センサ、操舵角センサ、ステアリングアクチュエータの電流センサの信号を含む。
ステップS302において、走行支援装置80は、自車位置認識装置100により算出された自車両の相対横位置、第1又は第2道路パラメータ及び自車位置認識処理の対象となる車線を特定する車線特定情報を取得する。
ステップS303において、走行支援装置80は、ステップS302で取得した第1又は第2道路パラメータ及び自車位置認識処理の対象となる車線を特定する車線特定情報に基づいて、自車両を走行させる際の目標横位置を設定する。例えば、第1走行車線の第1道路パラメータを取得した場合には、yr=−W/2とすることで車線の中央を目標横位置に設定できる。右隣車線に基づく第2道路パラメータを取得した場合には、yr=W/2が車線中央となる。もちろん、状況に応じて車線中央からオフセットした位置を目標横位置と設定することもできる。また、認識対象となる車線が切り替わった際に、既に取得した値を使用すると、目標横位置が急激に変化する恐れがある。このため、車線が切り替わる際には、切替直後の横変位量を目標横位置として設定することで、以前の横位置を持続して走行支援をすることができる。
ステップS304において、走行支援装置80は、自車位置認識装置100により算出された第1又は第2相対横位置、センサ信号、道路パラメータ及び目標横位置に応じた操舵制御量を算出する。算出した操舵制御量に基づいて、車両の制御指令を車両コントローラ50及び/又は操舵装置70へ送出する。
ステップS305において、車両コントローラ50及び/又は操舵装置70は、制御指令に含まれる操舵制御量に応じてステアリングアクチュエータ71を駆動させる。これにより、第1又は第2相対横位置に存在する自車両は、所定の走行車線の目標横位置に対して所定の位置関係を維持した状態で、走行することができる。
具体的に、図9Aに本実施形態の走行支援システム1が効果的に機能する分岐車線におけるシーンを示す。また、図9Bに、同じく本実施形態の走行支援システム1が効果的に機能する合流車線におけるシーンを示す。図9Aに示すように、本線を区切るレーンマーカは同幅ではない。右側車線に注目すると、右側車線を区切る2本のレーンマーカの幅は手前側では広いが、進行方向となる奥手側では分岐し、急に狭くなる。また、図9Bに示すように、本線を区切るレーンマーカは同幅ではない。中央の本線に注目すると、2本のレーンマーカの幅は合流手前側では狭いが、進行方向となる奥手側で合流車線と合体し、急に広くなる。なお、本実施形態における「分岐車線」は車線数が減少する態様の車線を意味し、本実施形態における「合流車線」は車線数が増加する態様の車線を意味する。
さらに、具体的に、分岐車線を例にして、図10Aに基づき、本実施形態の自車位置認識処理の作用を説明する。図10Aのように、自車両が走行する道路の第1走行車線に分岐車線が存在し、第1走行車線の片側のレーンマーカP1Lが本流車線から逸れて行く場面を設定する。同図に示す場面では、第1走行車線の右隣の第2走行車線は分岐車線又は合流車線を含まない。
図10Aに示すように、第1走行車線のレーンマーカP1LとP1Rとの間隔Q11,Q12は、自車両Vの進行方向Eに沿って変化する。第2走行車線のレーンマーカP2LとP2Rとの間隔Q21,Q22は、自車両Vの進行方向Eに沿って変化しない。
また、図10Bは、合流車線における自車位置認識処理の作用を説明するための図である。図10Bのように、自車両が走行する道路の第1走行車線に合流する合流車線が存在する。このため、第1走行車線の片側のレーンマーカP1Lが途中で途切れ、その後、進行方向前方において合流車線のレーンマーカP1L´が第1走行車線の片側のレーンマーカP1Lに連なる。同図に示す場面では、第1走行車線の右隣の第2走行車線は分岐車線又は合流車線を含まない。
図10Bに示すように、第1走行車線のレーンマーカP1L´(後にP1L)とP1Rとの間隔Q11,Q11´,Q12は、自車両Vの進行方向Eに沿って変化する。具体的に、第1走行車線の道路幅はQ11であったところ、合流車線の存在によりQ11´に増加する。合流完了点では再度Q11とほぼ同じQ12に狭まる。第2走行車線のレーンマーカP2LとP2Rとの間隔Q21,Q22は、自車両Vの進行方向Eに沿って変化しない。
図10A及び図10Bの状況下において、第2走行車線の第2レーンマーカP2LとP2Rと第1走行車線又は第2走行車線を走行する自車両との相対位置及び道路パラメータは、複数回算出しても、処理ごとにバラツキが生じ難い。このため、本例の第2走行車線について今回の処理で算出される道路パラメータは、過去に算出された第2走行車線の道路パラメータとほぼ一致する。
一方、図10A及び図10Bに示す状況下において、自車両が走行する第1走行車線の両側のレーンマーカP1L(P1L´)とP1Rとの間隔は変化するため、道路パラメータの値には相対的に大きいバラツキが生じる傾向がある。このため、本例の第1走行車線について今回の処理で算出される道路パラメータと、過去に算出された第1走行車線の道路パラメータとの間には差が生じる。
本実施形態では、第1走行車線の第1道路パラメータと第2走行車線の第2道路パラメータを比較し、その評価結果に基づいて第1走行車線又は第2走行車線に分岐車線又は合流車線が含まれるか否かを判断する。
ちなみに、第1走行車線の第1道路パラメータのみを用いて、つまり、過去に算出された第1道路パラメータと今回算出された第1道路パラメータとの変化を評価する処理を行う場合には、評価基準となる閾値は大きくならざるを得ない。分岐車線又は合流車線が含まれる第1走行車線の第1道路パラメータにおいて、実際に算出されるヨー角、ピッチ角、曲率変化のばらつきは大きいからである。つまり、道路パラメータの評価閾値を小さく設定すると、分岐車線又は合流車線の存否判断自体の精度が低下する。
しかし、分岐車線又は合流車線を含むことを前提に、道路パラメータの評価閾値を大きく設定すると、分岐車線又は合流車線が存否判断のタイミングが遅延する。分岐車線又は合流車線が存在する旨が判断された後には、走行支援処理において車両位置の基準となる目標横位置を是正する必要がある。分岐車線又は合流車線の存否判断のタイミングが遅延すると、目標横位置の是正処理も遅れるので、その是正量が大きくなる。このように、分岐車線又は合流車線の存否判断のタイミングが遅延し、走行支援処理において目標横位置が大幅に是正されると、乗員は車両の挙動が急激かつ大きく変化したように感じてしまう。本実施形態では、分岐車線又は合流車線の存否判断を迅速かつ正確に行うので、走行支援処理における目標横位置を早目に、かつ少量づつ是正できるので、乗員に違和感を感じさせないようにすることができる。
本実施形態では、自車両が走行する第1走行車線のみならず、第1走行車線に隣接する第2走行車線の第2道路パラメータを算出し、第1走行車線の第1道路パラメータとの差異を評価することにより、分岐車線又は合流車線が存否を迅速かつ高精度で行うことができる。この結果、分岐車線又は合流車線が存在し、道路パラメータが正確に算出できない場面(図10A又は図10Bに示すような場面)を迅速に検出するので、不正確な道路パラメータに基づいた走行支援処理が実行されることを防止することができる。
本実施形態の自車位置認識装置100は以上のように構成され、動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の自車位置認識装置100は、自車両が走行する第1走行車線の道路パラメータから求められる第1評価値と、第2走行車線の道路パラメータから求められる第2評価値を比較して得た評価比較値を評価することにより、走行車線に対応するレーンマーカの形状が左右に拡張し又は狭まることを推測できるので、自車両の走行車線が分岐車線又は合流車線を含むか否かを、迅速かつ正確に判定することができる。自車両の走行車線が分岐車線又は合流車線を含む場合には第1走行車線を区分する第1レーンマーカに対する第1相対横位置を算出し、自車両の走行車線が分岐車線又は合流車線を含まない場合は第2走行車線を区分する第2レーンマーカに対する第2相対横位置を算出するので、幅が変化しないレーンマーカを基準とした信頼性の高い相対横位置を迅速に算出できる。
[2]本実施形態の自車位置認識装置100によれば、現在と過去の第1道路パラメータの第1差分を第1評価値として算出し、現在と過去の第2道路パラメータの第2差分を第2評価値として算出し、第1評価値と第2評価値の比較結果である評価比較値を評価する。これにより、検出結果のバラツキによる誤判断を抑制し、自車両の走行車線が分岐車線又は合流車線を含むか否かを、迅速かつ正確に判定することができる。この結果、上記効果を奏することができる。
[3]本実施形態の自車位置認識装置100によれば、第1道路パラメータから算出された第1評価値と一又は複数の第2道路パラメータから算出された第2評価値とを母集団とし、この母集団における第1評価値の偏差である評価比較値を評価する。これにより、自車両が走行する第1走行車線と並列して同じ方向に延びる複数の車線が存在する場面においても、自車両の走行車線が分岐車線又は合流車線を含むか否かを、迅速かつ正確に判定することができる。この結果、上記効果を奏することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明を、自車位置認識装置100と走行支援装置80を含む車載装置200とを備える車両用の走行支援システム1を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、本発明に係る自車位置認識装置の一態様として、制御装置10と、カメラ20と、出力装置30とを備える自車位置認識装置100を一例として説明するが、これに限定されるものではない。
本明細書では、画像取得手段と、レーンマーカ検出手段と、評価値算出手段とを備える本発明に係る自車位置認識装置の一例として、画像取得機能と、レーンマーカ検出機能と、評価値算出機能と、自車相対位置算出機能とを実行する制御装置10を備える自車位置認識装置100を一例として説明するが、これに限定されるものではない。