本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
まず、実施の形態の極低温冷凍機の全体構成について説明する。図1乃至図3は、本発明のある実施の形態である極低温冷凍機を説明するための図である。本実施の形態では、極低温冷凍機としてギフォード・マクマホン冷凍機(以下、GM冷凍機という)を例に挙げて説明する。本実施の形態に係るGM冷凍機は、圧縮機1、シリンダ2、及びハウジング3等を有している。
圧縮機1は、低圧配管1bが接続された吸気側から低圧の冷媒ガスを回収し、これを圧縮した後に吐出側に接続された高圧配管1aに高圧の冷媒ガスを供給する。冷媒ガスとしては、ヘリウムガスを用いることができるがこれに限定されるものではない。
本実施の形態では2段式のGM冷凍機を例に挙げて説明する。2段式のGM冷凍機では、シリンダ2は第1段目シリンダ11と第2段目シリンダ12の二つのシリンダを有している。第1段目シリンダ11の内部には、第1段目ディスプレーサ13が挿入される。また、第2段目シリンダ12の内部には、第2段目ディスプレーサ14が挿入される。
この第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14は相互に連結されており、各シリンダ11、12の内部でシリンダの軸方向に往復移動可能な構成とされている。この各ディスプレーサ13、14の内部には内部空間15、16が形成されている。この内部空間15、16には蓄冷材が充填されており、蓄冷器17、18として機能する。
上部に位置する第1段目ディスプレーサ13は、上方(Z1方向)に向けて延出する駆動軸36に連結される。この駆動軸36は、後述するスコッチヨーク機構32の一部を構成する。
また、第1段目ディスプレーサ13の高温端側(Z1方向側端部)には、ガス流路L1が形成されている。更に、第1段目ディスプレーサ13の低温端側(Z2方向側端部)には、内部空間15と第1段目膨張空間21とを連通するガス流路L2が形成されている。
第1段目シリンダ11の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、第1段目膨張空間21が形成されている。また、第1段目シリンダ11の高温側端部(図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、上部室23が形成されている。
更に、第2段目シリンダ12内の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、第2段目膨張室22が形成されている。
第2段目ディスプレーサ14は、図示しない連結機構により第1段目ディスプレーサ13の下部に取り付けられている。この第2段目ディスプレーサ14の高温側端部(図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、第1段目膨張空間21と内部空間16とを連通するガス流路L3が形成されている。また、第2段目ディスプレーサ14の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、内部空間16と第2段目膨張室22とを連通するガス流路L4が形成されている。
第1段目冷却ステージ19は、第1段目シリンダ11の外周面で、第1段目膨張空間21と対向する位置に配設されている。また第2段目冷却ステージ20は、第2段目シリンダ12の外周面で第2段目膨張室22と対向する位置に配設されている。
上記の第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14は、スコッチヨーク機構32により第1段目及び第2段目シリンダ11、12内を図中上下方向(矢印Z1、Z2方向)に移動する。
図2は、スコッチヨーク機構32を拡大して示している。スコッチヨーク機構32は、クランク33とスコッチヨーク34等を有している。このスコッチヨーク機構32は、例えばモータ31等の駆動手段により駆動することができる。
クランク33は、モータ31の回転軸(以下、駆動回転軸31aという)に固定される。このクランク33は、駆動回転軸31aの取り付け位置から偏心した位置にクランクピン33bを設けた構成とされている。従って、クランク33を駆動回転軸31aに取り付けると、駆動回転軸31aに対しクランクピン33bは偏心した状態となる。この意味で、クランクピン33bは、偏心回転体として機能する。
スコッチヨーク34は、駆動軸36、ヨーク板35、及びころ軸受37等を有している。ハウジング3内には、収容空間4が形成されている。収容空間4は、スコッチヨーク34及び後述するロータリーバルブ40のロータバルブ42等を収容する気密性を持った気密容器となっている。この収容空間4は、低圧配管1bを介して圧縮機1の吸気口と連通している。そのため、収容空間4は常に低圧に維持される。
駆動軸36は、ヨーク板35から下方(Z2方向)に延出している。この駆動軸36は、ハウジング3内に設けられた摺動軸受38によって支持されている。よって駆動軸36も、図中上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
駆動軸36が摺動軸受38によって支持されることにより、スコッチヨーク34はハウジング3内で上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
なお、本実施の形態では、極低温冷凍機の構成要素の位置関係を分かりやすく表すために、「軸方向」という用語を使用することがある。軸方向は駆動軸36が延在する方向を表し、ディスプレーサ13、14が移動する方向とも一致する。便宜上、軸方向に関して膨張空間又は冷却ステージに相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。つまり、低温側端部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。なお、こうした表現はGM冷凍機が取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、GM冷凍機は鉛直方向に膨張空間を上向きにして取り付けられてもよい。
ヨーク板35は、横長窓35aが形成されている。この横長窓35aは、駆動軸36の延出する方向に対して交差する方向、例えば直交する方向(図2中、矢印X1、X2方向)に延在している。
ころ軸受37は、この横長窓35a内に配設されている。ころ軸受37は、横長窓35a内で転動可能な構成とされている。また、クランクピン33bと係合する孔37aは、ころ軸受37の中心位置に形成されている。横長窓35aは、クランクピン33bおよびころ軸受37の横方向の移動を許容する。横長窓35aは、横方向に延在する上枠部及び下枠部と、上枠部及び下枠部それぞれの横方向端部にて軸方向ないし縦方向に延在し上枠部と下枠部とを結合する第1側枠部及び第2側枠部と、を備える。
モータ31が駆動し駆動回転軸31aが回転すると、クランクピン33bは円弧を描くように回転する。これにより、スコッチヨーク34は図中矢印Z1、Z2方向に往復移動する。この際、ころ軸受37は、横長窓35a内を図中矢印X1、X2方向に往復移動する。
第1段目ディスプレーサ13は、スコッチヨーク34の下部に配設された駆動軸36に接続されている。よって、スコッチヨーク34が図中矢印Z1、Z2方向に往復移動することにより、第1段目ディスプレーサ13及びこれに連結された第2段目ディスプレーサ14も第1段目シリンダ11及び第2段目シリンダ12内で矢印Z1、Z2方向に往復移動する。
次に、バルブ機構について説明する。本実施の形態ではバルブ機構としてロータリーバルブ40を用いている。
ロータリーバルブ40は、冷媒ガスの流路を切り換えるものである。このロータリーバルブ40は、圧縮機1の吐出側から吐出された高圧の冷媒ガスを第1段目ディスプレーサ13の上部室23に導く供給用バルブとして機能すると共に、上部室23から冷媒ガスを圧縮機1の吸気側に導く排気用バルブとして機能する。
このロータリーバルブ40は、図1に加えて図3に示すように、ステータバルブ41とロータバルブ42とを有している。ステータバルブ41は平坦なステータ側摺動面45を有し、ロータバルブ42は同じく平坦なロータ側摺動面50を有している。そして、このステータ側摺動面45とロータ側摺動面50が面接触することにより、冷媒ガスの漏れが防止される。
ステータバルブ41は、ハウジング3内に固定ピン43で固定される。この固定ピン43で固定されることにより、ステータバルブ41は回転が規制される。
ロータバルブ42のロータ側摺動面50と反対側に位置する反対側端面52には、クランクピン33bと係合する係合穴(図示せず)が形成されている。クランクピン33bは、ころ軸受37に挿通された際にその先端部がころ軸受37から矢印Y1方向に突出する(図1参照)。
そして、ころ軸受37から突出したクランクピン33bの先端部は、ロータバルブ42に形成された係合穴と係合する。よって、クランクピン33bが回転(偏心回転)することにより、ロータバルブ42はスコッチヨーク機構32と同期して回転する。
ステータバルブ41は、冷媒ガス供給孔44、円弧状溝46、及びバルブ側流路49aを有している。冷媒ガス供給孔44は圧縮機1の高圧配管1aに接続されており、ステータバルブ41の中心部を貫通するよう形成されている。
円弧状溝46は、ステータ側摺動面45に形成されている。この円弧状溝46は、冷媒ガス供給孔44を中心とした円弧形状を有している。
ガス流路49は、ステータバルブ41及びハウジング3に形成されている。このガス流路49は、ステータバルブ41内に形成されたバルブ側流路49aと、ハウジング3内に形成されたハウジング側流路49bとにより構成されている。
バルブ側流路49aの一端部は、円弧状溝46内に開口し開口部48を形成している。また、バルブ側流路49aの他端部47(図3参照)は、ステータバルブ41の側面に開口している。
このバルブ側流路49aの他端部47は、ハウジング側流路49bの一端部と連通している。また、ハウジング側流路49bの他端部は、上部室23、ガス流路L1、蓄冷器17等を介して膨張空間21に接続されている。
一方、ロータバルブ42は、長円状溝51及び円弧状孔53を有している。
長円状溝51は、ロータ側摺動面50にその中心から径方向に延在するよう形成されている。また円弧状孔53は、ロータバルブ42のロータ側摺動面50から反対側端面52まで貫通し、収容空間4と接続している。この円弧状孔53は、ステータバルブ41の円弧状溝46と同一円周上に位置するよう形成されている。
上記した冷媒ガス供給孔44、長円状溝51、円弧状溝46、及び開口部48により供給弁が構成される。また、開口部48、円弧状溝46、及び円弧状孔53により排気弁が構成される。本実施の形態では、長円状溝51、円弧状溝46などのバルブの内部に存在する空間をまとめてバルブ内部空間と呼ぶことがある。
上記構成とされたGM冷凍機において、モータ31によりスコッチヨーク機構32が駆動されると、スコッチヨーク34はZ1、Z2方向に往復移動する。このスコッチヨーク34の動作により、第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14は、第1段目及び第2段目シリンダ11、12内を下死点と上死点との間で往復移動する。
第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14が下死点に達する際に、排気弁が閉じると共に供給弁が開く。即ち、冷媒ガス供給孔44、長円状溝51、円弧状溝46、及びガス流路49との間に冷媒ガス流路が形成される。
よって高圧の冷媒ガスは、圧縮機1から上部室23に充填され始める。その後、第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14は下死点を過ぎて上昇を始め、冷媒ガスは蓄冷器17、18を上から下に通過し、各膨張空間21、22に充填されてゆく。
そして、第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14が上死点に達する際に、供給弁は閉じると共に排気弁が開弁する。即ち、ガス流路49、円弧状溝46、及び円弧状孔53との間に冷媒ガス流路が形成される。
これにより、高圧の冷媒ガスは各膨張空間21、22内で膨脹することによって寒冷を発生させ、各冷却ステージ19、20を冷却する。また、寒冷を発生させた低温の冷媒ガスは、蓄冷器17、18内の蓄冷材を冷却しながら下から上に流れ、その後に圧縮機1の低圧配管1bに還流する。
その後、第1段目及び第2段目ディスプレーサ13、14が下死点に達する際に、排気弁は閉じると共に供給弁が開いて1サイクルを終了する。このようにして、冷媒ガスの圧縮、膨張のサイクルを繰り返すことによって、GM冷凍機の各冷却ステージ19、20は極低温に冷却される。GM冷凍機の各冷却ステージ19、20は、膨張空間21、22内の冷媒ガスを膨張させることにより発生した寒冷を、第1段目及び第2段目シリンダ11、12の外部に伝導する。
以上説明したように、実施の形態に係るGM冷凍機においては、モータ31等の駆動装置が回転するクランク33の動きをスコッチヨーク機構32が軸方向の往復移動に変換する。このため、スコッチヨーク機構32中のヨーク板35には、往復移動以外の横方向の動きも加えられることになる。以下、スコッチヨーク機構32において、往復移動以外の動きを抑制する回転抑止力について説明する。
図4(a)−(b)は、従来技術に係るスコッチヨーク34における回転抑止力を説明する図である。スコッチヨーク34は、その特性上、直線駆動軸である駆動軸36からずれた位置にてモータ31等の駆動装置から作用する力を受ける。このため、スコッチヨーク34の駆動軸36には、駆動装置の駆動回転軸31aを回転軸として回転または傾斜(以下、駆動軸36が駆動回転軸31aを回転軸として回転または傾斜することを、駆動軸36の「ローリング」と記載することがある。)しようとする力が働く。一般にスコッチヨーク34では、ローリングしようとする力を押さえるための軸受け機構が設けられている。
図4(a)に示すように、従来技術に係るスコッチヨーク34は、駆動軸36aはヨーク板35から上方に延出しており、摺動軸受38aによって支持される。よって駆動軸36aは、図中上下方向に移動可能な構成となっている。また駆動軸36bは、ヨーク板35から下方に延出しており、摺動軸受38bによって支持される。従来技術に係るスコッチヨーク34では、摺動軸受38aおよび摺動軸受38bが、ローリングしようとする力を押さえるための軸受け機構となる。
説明の簡略化のため、駆動軸36aおよび駆動軸36bの太さを無視して考える。図4(a)において、駆動軸36aおよび駆動軸36bから距離Lずれた位置にて、ヨーク板35は駆動装置から作用する力Fを受けるとする。この力Fは、図4(a)には図示しないディスプレーサ13、14の両端圧力損失による荷重Bと同程度の大きさである。
図4(a)において、摺動軸受38aおよび摺動軸受38bが、駆動軸36aおよび駆動軸36bのそれぞれから受ける抗力をNH、NLとし、かつNH=NL=Nとする。また、スコッチヨーク34の駆動軸36がローリングしようとする力を押さえるため回転抑止力をNBとする。このとき、NB=2×l×Nとなる。ここでlは、ヨーク板35上の駆動装置から作用する力を受けた位置から、摺動軸受38aまたは摺動軸受38bまでの距離を表す。
ここで、Nが小さいほど摺動軸受38aおよび摺動軸受38bに係る抗力は小さくなり、低負荷にて駆動軸36がローリングしようとする力を抑えることができる。すなわち、ヨーク板35上の駆動装置から作用する力Fを受ける位置から、摺動軸受38aまたは摺動軸受38bまでの距離lが長いほど、低負荷で駆動軸36がローリングしようとする力を押さえることができる。
したがって、従来技術に係るスコッチヨーク34では、ヨーク板35の上下方向に駆動軸36aと駆動軸36bとをそれぞれ設け、回転抑止力NBを維持するための有効長lを長くしている。しかしながら、このような構造を取ると、ヨーク板35の上部の駆動軸36aを冷凍機に収容する必要があるため、冷凍機の全長が長くなる。
図4(b)は、別の従来技術に係るスコッチヨーク34における回転抑止力を説明する図である。図4(b)に示すスコッチヨークでは、図4(a)の問題点を鑑みて、ヨーク板35の上部の駆動軸36aおよび摺動軸受38aを廃し、ヨーク板35の下部の駆動軸36bを摺動軸受38bで駆動軸36のローリングを抑止する。駆動軸36aおよび摺動軸受38aが存在しないため、図4(a)に示す場合と比較すると、摺動軸受38bに係る抗力NLは大きくなる。そこで図4(b)に示す別の従来技術に係るスコッチヨーク34は、ヨーク板35の下部に、摺動軸受38bに加えてさらに副ガイド38cを設けることで、駆動軸36がローリングしようとする力を抑制する。
しかしながら、ヨーク板35の下部に回転抑止力を発生させるためのガイドを設ける構造では、駆動軸36がローリングしようとする力にある程度の長さを持って対応する必要がある。結果として、ヨーク板35の下部の駆動軸36bの全長が長くなり、冷凍機の全長も長くなる。また、ヨーク板35の下部に回転抑止力を発生させるためのガイドを設ける構造では、十分な回転抑止力を得られない場合もある。
これを解決するために、実施の形態に係るスコッチヨーク34は、まずヨーク板35の上部の駆動軸36aおよび摺動軸受38aを廃止する。その上で、実施の形態に係るスコッチヨーク34は、ヨーク板35上において駆動装置から作用する力Fを受ける位置よりも上側に、駆動軸36がローリングしようとする力を抑制する機構を設ける。以下、実施の形態に係るスコッチヨーク34について詳細に説明する。
図5(a)−(d)は、収容空間4内のスコッチヨーク34におけるヨーク板35の動きを規制するガイド機構を説明する図である。なお、図1においては2段式のGM冷凍機を示したが、説明の簡略化のため、図5(a)−(d)では、1段式のGM冷凍機を示している。より具体的には、5(a)−(d)は、スコッチヨーク34、スコッチヨーク34を収納するハウジング3および第1段目シリンダ11、第1段目ディスプレーサ13および蓄冷器17を備える1段式のGM冷凍機を模式的に示している。しかしながら、本願発明は2段式のGM冷凍機であっても成立することは当業者であれば容易に理解できることである。
図5(a)は、比較のために従来技術に係るGM冷凍機の断面を簡略化して示す図であり、上述した図4(a)に対応する図である。図4(a)を参照して説明したように、図5(a)に示す例では、ヨーク板35の上部に駆動軸36aおよび摺動軸受38aを有し、これらを収納するためにハウジング3の該当箇所が突出している。なお限定はしないが、一例として、実施の形態に係る2段式のGM冷凍機の全長は50cm程度である。このうちハウジング3において駆動軸36aおよび摺動軸受38aを収納するために突出する部分の全長方向の長さは7cm程度である。したがって、2段式のGM冷凍機の全長のうち、およそ10%程度が、駆動軸36aおよび摺動軸受38aを収納するための部分となる。これは駆動軸36を含むスコッチヨーク34の長さが、冷凍機全体の長さに大きく寄与することを示している。
図5(b)は、ヨーク板35の上部に駆動軸36aおよび摺動軸受38aを廃した場合のGM冷凍機の断面を簡略化して示す図である。図5(b)に示すGM冷凍機は、ハウジング3において駆動軸36aおよび摺動軸受38aを収納するための突出部が存在しないため、図5(a)に示すGM冷凍機と比較して全長が短くなる。しかしながら、駆動軸36がローリングしようとする力を抑制する箇所は摺動軸受38のみであるため、十分な回転抑止力を得られない場合もありうる。
また上述したように、収容空間4は気密容器となっており、摺動軸受38は収容空間4の機密性を保つためのシールが存在する。図5(b)に示すように駆動軸36がローリングしようとする力を抑制する箇所が摺動軸受38だけの場合、摺動軸受38に多くの負荷が集中する。そのため、GM冷凍機を長期間運転すると摺動軸受38の摩耗により、シールの性能が低下することも起こりうる。
そこで実施の形態に係るGM冷凍機では、収容空間4の一部としてヨーク板35の動きを規制するガイド機構60を設ける。
図5(c)は、実施の形態に係るヨーク板35の動きを規制するガイド機構60を示す図である。図5(c)に示すように、ガイド機構60は、ハウジング3内の収容空間4の一部として構成されている。ガイド機構60は、収容空間4内においてヨーク板35の往復移動以外の動きを規制する。ガイド機構60は収容空間4の一部として構成されているため、ガイド機構60の少なくとも一部は、ヨーク板35上において駆動装置から作用する力Fを受ける位置よりも上側に存在することになる。ガイド機構60は、クランク33の回転軸まわりにおけるヨーク板35の傾動を規制するように、ヨーク板35の側部を支持するように取り付けられる。これにより、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力を抑制することが可能となる。以下、ヨーク板35の面のうち、ガイド機構60が取り付けられる面を、「ガイド取付面」と言うことがある。なお詳細は後述するが、ヨーク板35の動きを規制するガイド機構60は、ヨーク板35の側面よりも内側に配置されることもある。したがって、本明細書においてヨーク板35の「側部」とはヨーク板35の側面に限定されず、ヨーク板35の側面から内側に入り込んだ領域も含まれる。
また、ヨーク板35は収容空間4内を往復移動する。このため、ヨーク板35を構成する面のうち、第1段目ディスプレーサ13に対して反対側の面(以下、「ヨーク板35の上面」ということがある。)は、収容空間4を構成する壁面のうち、ヨーク板35の上面と対向する壁面(以下、「収容空間4の上面」ということがある。)と離れている。収容空間4の上面は、収容空間4を構成する壁面のうち、第1段目シリンダ11に対して反対側の面と表現することもできる。第1段目ディスプレーサ13が上死点にあるとき、ヨーク板35の上面と収容空間4の上面とは接触してもよいが、第1段目ディスプレーサ13が上死点にあるときもヨーク板35の上面と収容空間4の上面とは離れていることが好ましい。このような場合には、ガイド機構60は、常に収容空間4の上面よりも下の位置においてのみヨーク板35の往復移動以外の動きを規制する。
図6(a)−(c)は、スコッチヨーク34におけるヨーク板35の動きを規制するガイド機構60の一例をより詳細に説明する図である。より具体的に、図6(a)は、リニアガイド機構61を用いてガイド機構60を実現した場合の例を示す図である。図6(a)に示すように、ヨーク板35の面のうち、ガイド取付面に溝を設け、レール63を挿入する。レール63は収容空間4の上下の壁に支持され、ヨーク板35の往復移動方向に延在する。さらにヨーク板35とレール63との間に複数のボール62を挿入し、ヨーク板35はレール63に沿って転動するように構成する。リニアガイド機構61は、ヨーク板35を往復移動させる転動部として機能する。リニアガイド機構61をこのように構成することにより、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力を抑制することができる。また、ヨーク板35が駆動軸36を回転軸として回転するヨーイングを抑制することもできる。さらに加えて、ヨーク板35が図1におけるY1またはY2方向を回転軸として回転するピッチングも抑制することもできる。
図6(b)は、サイドガイド構造64を用いてガイド機構60を実現した場合の例を示す図である。図6(a)に示す場合と同様に、ヨーク板35のガイド取付面に溝を設け、収容空間4の上下の壁に支持されるロッド65を挿入する。しかしながら、図6(b)に示す例は、図6(a)に示す場合と異なり、ヨーク板35とロッド65との間にはボールを設けず、ヨーク板35とロッド65とが摺動するように構成される。すなわち、図6(b)に示すサイドガイド構造64は、ヨーク板35を往復移動させる摺動部として機能する。なお、図6(b)は、ロッド65として断面が円形の円筒ロッドを採用する場合を示すが、ロッド65の形状は円筒に限られず、断面が矩形や楕円等の他の形状であってもよい。
上述したとおり、収容空間4は、低圧配管1bを介して圧縮機1の吸気口と連通している。つまり、収容空間4は冷媒ガスが循環する空間の一部を構成する。このため、ヨーク板35の溝部とロッド65との間に、グリース等の潤滑材を用いると循環ラインの汚染を引き起こす可能性もある。
そこで実施の形態に係るロッド65を用いたサイドガイド構造64においては、ロッド65のうちヨーク板35の溝と接触する摺動面は、潤滑性を持った膜がコーティングされている。同様に、ヨーク板35のうち、ロッド65と接触する接触面にも、潤滑性を持った膜がコーティングされてもよい。潤滑性を持った膜は、ロッド65のうちヨーク板35の溝と接触する摺動面と、ヨーク板35のうちロッド65と接触する接触面のうち少なくとも一方又は両方にコーティングされてもよい。これにより、グリース等の潤滑材を用いることなく、ロッド65とヨーク板35との摺動面に生じる摩擦を低減することができる。潤滑性を持った膜は、例えばフッ素樹脂や、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon; DLC)等の硬質膜を用いて実現できる。サイドガイド構造64をこのように構成することにより、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力を抑制することができる。さらに、ヨーク板35が駆動軸36を回転軸として回転するヨーイングや、図1におけるY1またはY2方向に動くピッチングも抑制することもできる。
図6(c)は、バネ66および滑りピンジョイント68を用いたヨーク板35の保持機構を示す図である。図6(c)に示すように、収容空間4の壁面のうち、ヨーク板35におけるガイド取付面と対向する壁面に、ヨーク板35の動きを規制するためのバネ66が設けられている。バネ66とヨーク板35とは、球形の滑りピンジョイント68を介して接触している。これにより、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力は、バネ66の弾性力が抗力となって抑制される。またバネ66とヨーク板35とは、球形の滑りピンジョイント68を介して接触しているため、ヨーク板35の往復移動の摩擦が低減される。
以上、図6(a)−(c)を参照して説明したように、収容空間4内部に設けられたガイド機構によって、ヨーク板35の往復移動の摩擦以外の動きを規制することができる。
なお、ヨーク板35の動きを規制するガイド機構として、収容空間4内部ではなく、収容空間4を構成するハウジング3の壁面を利用してもよい。
図5の説明に戻り、図5(d)は、収容空間4の壁面をガイド機構に利用する場合の例を示す図である。図5(d)に示すように、ヨーク板35のガイド取付面は、収容空間4の壁面と接触している。このため、収容空間4の壁面自体が、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力を抑制するガイド機構となる。
図5(d)に示す例では、図5(c)に示す例と比較して、ヨーク板35の大きさは変わらない。そのため図5(d)に示す例では、図5(c)に示す例と比較して、収容空間4の壁面がヨーク板35に接触するまで収容空間4を小さくしている。これにより、図5(d)に示す例では、GM冷凍機をスリム化する効果もある。なお、図5(d)に示す例において、ヨーク板35のガイド取付面と、収容空間4の壁面のうちヨーク板35と接触する部分に、フッ素樹脂等の摩擦を低減するための潤滑性を持った膜をコーティングするのが好ましい。
なお、図示はしないが、収容空間4の壁面がヨーク板35に接触するまで収容空間4を小さくすることに替えて、ヨーク板35が収容空間4の壁面に接触するまで大きくしてもよい。あるいは、ヨーク板35と収容空間4の壁面とが接触するまで、ヨーク板35を大きくしつつ、かつ収容空間4を小さくしてもよい。
このように、収容空間4の壁面自体に抗力を発生させることで、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力を抑制することができる。図示はしないが、ヨーク板35が駆動軸36を回転軸としてヨーイングしようとすることを抑えるために、収容空間4の壁面にガイド機構を設けてもよい。これは例えば収容空間4の壁面に、ヨーク板35を往復移動自在となるようにはめ込む溝を設けることで実現できる。また、収容空間4の壁面に凸部を形成し、ヨーク板35に凸部をはめ込む溝を設けてもよい。凸部は、メンテナンス時にスコッチヨークを収容空間4から取り出すために、収容空間4の壁面に対して進退可能に設けてもよい。
以上説明したように、実施の形態に係るGM冷凍機は、冷凍機の全長を短くすることができる。
特に、収容空間4の一部に設けられたガイド機構を用いてヨーク板35の動きを規制することにより、駆動軸36およびヨーク板35がローリングしようとする力の他、ヨーイングしようとする力も抑制することができる。さらに収容空間4の壁面自体をガイド機構として用いる場合には、GM冷凍機をスリム化することもできる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。