JP2015015988A - 医療用器具 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体組織の非管腔領域へ挿通されて物質を生体組織内へ送達するカテーテルを、生体組織への負荷を極力抑えつつ目的部位へ高精度に到達させることができるとともに、構造を極力簡略化できる医療用器具を提供する。
【解決手段】生体組織の非管腔領域へ挿通させて物質を生体組織内へ送達するための医療用器具1であって、前記物質を生体組織内へ送達するための送達ルーメン41、および先端側が閉鎖された先端閉鎖ルーメン42が形成されたカテーテル10と、前記先端閉鎖ルーメン42の基端側から挿通可能な長尺なスタイレット本体部21と、を有し、前記先端閉鎖ルーメン42の第2基端側開口部44が、前記送達ルーメン41の第1基端側開口部53よりも先端側に位置している。
【選択図】図1
【解決手段】生体組織の非管腔領域へ挿通させて物質を生体組織内へ送達するための医療用器具1であって、前記物質を生体組織内へ送達するための送達ルーメン41、および先端側が閉鎖された先端閉鎖ルーメン42が形成されたカテーテル10と、前記先端閉鎖ルーメン42の基端側から挿通可能な長尺なスタイレット本体部21と、を有し、前記先端閉鎖ルーメン42の第2基端側開口部44が、前記送達ルーメン41の第1基端側開口部53よりも先端側に位置している。
【選択図】図1
Description
本発明は、生体組織内への物質の持続的な送達、特に脳実質内への治療用物質の対流増加送達に用いられる医療用器具に関するものである。
近年、悪性神経膠腫(膠芽腫、退形成星性細胞腫等)に対しては、手術療法、放射線療法に加え、化学療法、免疫療法、遺伝子治療、分子標的療法等の各種治療法が試みられており、神経膠腫を含む悪性脳腫瘍の治療成績は改善している。しかし、最も悪性度の高い膠芽腫では、5年生存率が約7%と低く、いまだあらゆる癌の中で最も予後不良である(非特許文献1を参照)。
悪性神経膠芽腫に対する治療の基本は、外科手術による腫瘍の可及的切除である。しかし、脳は部位によりさまざまな機能を果たしているため、腫瘍を十分に切除できない場合が多い。特に、悪性神経膠芽腫では、腫瘍細胞が周辺脳組織へ浸潤していることから、組織レベルでの全摘出は不可能である。そのため、悪性神経膠芽腫の治療成績改善には、術後補助療法として放射線療法や化学療法などが不可欠である。
悪性神経膠腫に対する化学療法は、その有用性が立証されているにもかかわらず、治療効果はいまだ十分とはいえない。脳腫瘍では、治療薬剤を静脈内投与するにあたり、治療薬剤を血液脳関門(Blood Brain Barrier:BBB)を介して透過させるため、透過性という固有の問題があり、適用可能な薬剤が限られている。さらに、BBBの透過性が得られたとしても、薬剤による全身への副作用に対する懸念から、薬剤投与量が制限され、腫瘍部位において有効な薬剤濃度を確保することができない。
上記のような悪性神経膠腫に対する化学療法の課題を克服するための新たな薬剤投与法として、対流増加送達(Convection−Enhanced Delivery:CED)法が考案されている(例えば、特許文献1を参照)。CED法とは、脳実質内に定位的に留置したカテーテルから微量注入ポンプを用いて薬剤を能動的に注入する局所化学療法である。従来の中枢神経系への局所投与技術では、腫瘍摘出腔への腔内投与であれ、脳内留置型の局所化学療法であれ、薬剤の分布は物質の拡散に依存していた。物質の拡散は、濃度勾配や組織性状によって規定され、拡散性の良い低分子化合物であっても、毛細血管への吸収や代謝によりその範囲は数mmに留まると考えられている。これは、悪性神経膠腫の再発の80〜90%が初発病巣から2cm以内の部位に起こることに対し不十分である(非特許文献2を参照)。一方、CED法では、注入中の圧勾配を維持して脳質間にバルクフロー(bulk flow)を誘導し注入物質の拡散を強化する。従って、従来の局所投与法と比較して薬剤をより均質に高濃度で広い範囲に分布させることができる。また、薬剤の脳内分布は注入量と注入速度により制御可能であり、静脈からの全身投与と比較して投与量を少なくすることも可能なため、全身の副作用を問題のないレベルに抑えることが可能である。CED法により投与可能な薬剤は多岐にわたり、これまでに様々な薬剤の投与がラット脳腫瘍移植モデルにおいて試みられ、その有効性が報告されている。このような利点から、CED法は、脳腫瘍のみならず、パーキンソン病、アルツハイマー病やてんかんの治療法として期待されている。
しかし、CED法を広く臨床応用するには、いくつかの課題が残されている。そのひとつは、脳内(脳実質内)に留置したカテーテルの外面に沿って起こる薬剤の逆流である。カテーテルに沿った逆流は、カテーテル先端部の径が太く、また投与速度が速いほど起こりやすい。そのため、CED法におけるカテーテルの径は細く、薬剤の注入速度は0.5〜10μl/分と非常に低速である。従って、治療有効量とするためには長時間の投与にならざるを得ず、場合によっては数日かけての注入が必要となる。この間、患者の自由を長期間にわたり制限するだけでなく、患者の体動によってカテーテルの先端位置にずれが生じたり、カテーテルが抜けたりするなどの危険を生じる。これらは、不必要な部位への投薬による副作用や、脳組織の損傷、感染症等の合併症の原因となるので、好ましくない(非特許文献3を参照)。また、CED法において、薬剤が逆流して脳表、脳溝、摘出腔などに一度漏出してしまうと、圧勾配の維持が困難となり、それ以上の拡散が望めなくなる。従って、より正確で安全かつ効果的なCED法の実現のために、薬剤の逆流を防止することのできるカテーテルを提供することが望まれている。
薬剤の逆流を防止するカテーテルとして、特許文献1では、末端付近に外径が段階的に小さくなる段構造を有するカテーテルと薬剤送達システムが開示されている。この技術では、実質的に一定な内径を有する管に外径が基端側から末端側にかけて減少するように配置された多段の段構造を設けることで、薬剤の逆流を防止する。
The Committee of Brain Tumor Registry of Japan: Report of brain tumor registry of Japan (1984−2000) 12th edition. Neuro Med Chir 49 Suppl: 1−101, 2003.
Hochberg FH. and Pruitt A: Assumptions in the radiotherapy of glioblastoma. Neurology 30: 907−911, 1980.
Lidar Z, Mardor Y, et al: Convection−enhanced delivery of paclitaxel for the treatment of recurrent malignant glioma: a Phase I/II clinical study. J Neurosurg. 100: 472−479, 2004.
特許文献1に記載のカテーテルは、脳組織の損傷およびカテーテルに沿った逆流を抑制するために、外径が細く形成されているため、曲がりやすく、目的の部位へ正確に挿通させることが容易ではない。
本発明は上述した課題を解決するものであり、生体組織の非管腔領域へ挿通されて物質を生体組織内へ送達するカテーテルを、生体組織への負荷を極力抑えて目的部位へ高精度に到達させることができるとともに、構造を極力簡略化できる医療用器具を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る医療用器具は、生体組織の非管腔領域へ挿通させて物質を生体組織内へ送達するための医療用器具であって、前記物質を生体組織内へ送達するための送達ルーメンおよび先端側が閉鎖された先端閉鎖ルーメンが形成されたカテーテルと、前記先端閉鎖ルーメンの基端側から挿通可能な長尺な芯材部と、を有し、前記先端閉鎖ルーメンの基端側開口部が、前記送達ルーメンの基端側開口部よりも先端側に位置している。
上記のように構成した医療用器具は、先端閉鎖ルーメンに挿通される芯材部によってカテーテルに剛性を付与することができ、カテーテルを目的部位へ高精度に到達させることが可能となる。また、先端閉鎖ルーメンは、先端が閉鎖されているため、生体組織内への空気の混入を防止でき、かつ先端閉鎖ルーメンから芯材部を抜去しても、生体内の組織液が先端閉鎖ルーメン内へ流入せず、生体組織への負荷を極力抑えることができる。また、先端閉鎖ルーメンの基端側開口部が、送達ルーメンの基端側開口部よりも先端側に位置しているため、送達ルーメンの基端側開口部が形成されるカテーテルの基端部に、送達ルーメンおよび先端閉鎖ルーメンを分離するための構造を設ける必要がなく、構造を極力簡略化できる。さらに、芯材部を先端閉鎖ルーメンから抜去した後、先端閉鎖ルーメン内の空気によるMRI画像のハレーションを抑制するために先端閉鎖ルーメン内に生理食塩水等を注入する場合に、先端閉鎖ルーメンが送達ルーメンよりも短いため、注入する生理食塩水等の量が少量で済み、より簡便な操作で注入を行うことができる。また、先端閉鎖ルーメンが短くなることで、生理食塩水等を注入する際に、針が必要以上に長くない汎用の注射針等を適用可能となり、構成が容易となるとともに、操作性が向上する。
前記芯材部が、前記先端閉鎖ルーメンに先端側まで挿通された状態において、その基端部が前記送達ルーメンの基端側開口部よりも先端側に位置するようにすれば、芯材部が送達ルーメンの基端部まで延びることなく極力短くできるため、芯材部の構成を簡略化し、かつ芯材部をより高精度に制御して、カテーテルを目的の位置までより高精度に到達させることができる。
前記送達ルーメンの先端側開口部に、フィルターが設けられるようにすれば、カテーテルを生体組織に挿通させる際に、生体組織が送達ルーメン内に侵入することを抑制できるため、生体組織への負荷を極力抑えることができるとともに、送達ルーメンの目詰まりが抑制されて物質の送達を良好に維持できる。
前記フィルターが、前記カテーテルの先端から先端方向へ0.5〜2mm突出するように設けられるようにすれば、フィルターを通った物質を、フィルターから放射方向へ均等に放出することができる。
前記フィルターの先端部は、前記カテーテルの中心軸を中心とする回転対称形状であるようにすれば、カテーテルを生体組織へ挿通させる際に生体組織の損傷を低減させることができ、かつ生体組織内にカテーテルをよりまっすぐ挿通させることができる。さらに、フィルターを通った物質を、フィルターから放射方向へ均等に放出することができる。
前記フィルターが、樹脂製であるようにすれば、フィルターによるハレーションを生じさせずにMRIによる撮像を行うことができる。
前記フィルターが、セラミック製であるようにすれば、フィルターによるハレーションを生じさせずにMRIによる撮像を行うことができる。
前記カテーテルは、先端部の外径が、前記送達ルーメンおよび先端閉鎖ルーメンの両方が形成される部位の外径よりも小さいようにすれば、カテーテルの外径が変化する部位によって、物質のカテーテルの外面に沿う逆流を抑制できる。
前記カテーテルは、先端部と、前記送達ルーメンおよび先端閉鎖ルーメンの両方が形成される部位との間に、外径が先端側へ向かって漸次的に減少するテーパー部を有するようにすれば、生体組織の損傷を極力抑えつつ押し広げるようにカテーテルを挿通させることが可能となるとともに、テーパー部によって、物質のカテーテルの外面に沿う逆流を抑制できる。
前記芯材部の基端に芯材用ハブ部が設けられ、当該芯材用ハブ部が、前記送達ルーメンの基端側開口部が形成される送達用ハブ部に連結せずに当該送達用ハブ部から独立した構造を有するようにすれば、芯材用ハブ部および送達用ハブ部を互いに干渉させずに操作でき、操作性が向上するとともに、互いに連結されないために芯材用ハブ部および送達用ハブ部の構造を極力簡略化できる。
前記芯材部が、非磁性体で形成されるようにすれば、MRI造影時にハレーションを起こさないようにすることがでる。
前記カテーテルが、腫瘍への物質の対流増加送達に用いられるようにすれば、腫瘍が形成される領域の目的位置まで、芯材部によって補強されたカテーテルを高精度に挿通させることができ、腫瘍へ物質を効果的に送達することが可能となる。
前記カテーテルが、脳への物質の対流増加送達に用いられるようにすれば、脳の目的位置まで、芯材部によって補強されたカテーテルを高精度に挿通させて、脳への物質を効果的に送達することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
なお、以下の説明において、カテーテルの手元側を「基端側」、挿通される側を「先端側」と称す。また、「カテーテル」とは、医療用に使用される管体を含むものを表すものである。カテーテルの用途は治療用に限定されず、例えば検査用であってもよい。
本発明の実施形態に係る医療用器具1は、脳内の例えば脳腫瘍へ物質(例えば治療用物質)を送達する対流増加送達(CED)法に用いられる。CED法とは、脳実質内に定位的に留置したカテーテル10を介して薬剤を少しずつ、能動的かつ持続的に加圧しながら注入することで、圧勾配を維持し、対流を発生させ、これにより生じる流れを利用して組織間隙に広範で高濃度に治療用物質を分布させる局所化学療法である。
医療用器具1は、図1〜5に示すように、脳実質内に挿通されて治療用物質を送達させるための管状のカテーテル10と、カテーテル10内に挿通可能なスタイレット20と、カテーテル10の先端部に装着されるフィルター30と、を有している。
カテーテル10は、長尺に形成されて内部に複数のルーメンが形成される管状部40と、管状部40の基端に固着された送達用ハブ部50とを有している。
管状部40の内部には、カテーテル10の治療用物質を送達させための貫通孔である送達ルーメン41と、先端側が閉鎖されて基端側のみが開口する先端閉鎖ルーメン42とが形成されている。送達ルーメン41は、管状部40の最先端面45(図3を参照)に形成される先端側開口部43で開口するとともに、送達用ハブ部50の基端側の面に形成される第1基端側開口部53で開口している。先端閉鎖ルーメン42は、管状部40の軸方向の途中に形成される第2基端側開口部44で開口するとともに、管状部40の最先端近傍まで延在し、先端側が外部へ解放されずに閉鎖されている。管状部40における第2基端側開口部44の位置は、カテーテル10を脳実質内に挿通させた際に、体外に位置しつつ、生体から離れすぎない位置であることが好ましい。
管状部40は、図1〜4に示すように、フィルター30が装着される管状先端部46と、管状先端部46よりも外径が大きい管状基端部47と、管状先端部46および管状基端部47の間に外径が先端側へ向かって漸次的に減少するテーパー部48とを有する。管状基端部47は、その軸方向の途中に第2基端側開口部44が形成されており、第2基端側開口部44よりも先端側の領域に、送達ルーメン41および先端閉鎖ルーメン42の両方が形成されている。
管状先端部46の外径は、好ましくは0.3〜1.5mmであるが、これに限定されない。管状基端部47の外径は、好ましくは0.5〜2.0mmであるが、これに限定されない。管状先端部46および管状基端部47の外径は、小さいほど外面に沿う逆流を抑制できるとともに脳実質の損傷を低減できるが、上記範囲未満になると治療用物質の送達量が少量に限定される。
管状先端部46の長さは、好ましくは1〜10mmであるが、これに限定されない。管状基端部47の長さは、好ましくは40〜200mmであるが、これに限定されない。テーパー部の長さは、管状先端部46の外径、管状基端部47の外径、およびテーパー部48の傾斜角度αにより決定される。
テーパー部48は、カテーテル10の外面に沿う治療用物質の逆流を抑制する機能を発揮する。テーパー部48の外径は、カテーテル10の中心軸Xに対して好ましくは2°〜60°、より好ましくは、2°〜45°の角度αで漸次的に減少することにより形成される。テーパー部48の角度αが60°を超えると、脳実質の損傷が大きくなり、テーパー部48の角度αが2°未満になると、テーパー部48における逆流の効果が減少する可能性がある。
カテーテル10は、可撓性を有する材料により構成され、例えばポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、シリコーンエラストマー等を好適に適用できるが、これらに限定されない。
送達用ハブ部50は、管状部40の基端に連結されており、外部から治療用物質を送達ルーメン41へ供給するためのシリンジ60から延びる送液チューブ70を接続可能となっている。
送液チューブ70は、治療用物質を注入するためのシリンジ60の筒先61を挿嵌可能となっている。なお、送液チューブ70のシリンジ60が接続される基端部に、逆止弁や三方活栓等が設けられてもよい。シリンジ60は、微量注入ポンプ65(図6を参照)に取り付けられて、予め設定された注入量および注入速度で治療用物質を送り出すことができる。
フィルター30は、図3に示すように、送達ルーメン41の先端側開口部43に嵌合して装着されている。フィルター30は、カテーテル10を脳実質に挿通させる際に、生体組織が送達ルーメン41内に侵入することによる送達ルーメン41の目詰まりを抑制するとともに、シリンジ60から送られた治療用物質を通過させる。フィルター30は、管状部40の最先端面45から先端方向へ0.5〜2mm突出しており、先端が、カテーテル10の中心軸Xを中心として回転対称形状となっている。また、フィルター30の最先端面45から突出している部位は、その外径が先端側開口部43の内径よりも大きく形成されており、最先端面45を覆っている。
フィルター30は、例えば、多孔体(例えば、スポンジ等)、不織布、織布、ファイバーニブ等により形成される。フィルター30の材料は、MRI(magnetic resonance imaging、磁気共鳴画像)造影時にハレーションを起こしにくい非磁性体(強磁性体ではない材料)であることが好ましく、例えば、樹脂やセラミック等が挙げられるが、これらに限定されない。また、フィルター30は、管状部40と一体的に形成されて、管状部40に微細な孔を複数形成することで構成されてもよい。フィルター30は、フィルター30が設けられない場合よりも効果があるのであれば、孔の径や形状等の構成は特に限定されない。但し、フィルター30に設けられる孔は、例えば生体組織の細胞の大きさよりも小さくすることで、生体組織の侵入をより効果的に抑制でき、ヒトの生体組織の細胞の大きさが約6〜25μm程度であることから、フィルター30の平均孔径は、0.2〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。
スタイレット20は、カテーテル10の管状部40を脳実質内へ挿通させる際に、図2,4に示すように、第2基端側開口部44から先端閉鎖ルーメン42に挿通されることで、可撓性を有する管状部40に剛性を付与する芯材として機能する。スタイレット20は、先端閉鎖ルーメン42に挿通される長尺なスタイレット本体部21(芯材部)と、スタイレット本体部21の基端に固着されたスタイレットハブ部22(芯材用ハブ部)とを有している。
スタイレット本体部21は、直線状に延び中実構造を有する。スタイレット本体部21は、MRI造影時にハレーションを起こしにくい非磁性体(強磁性体ではない材料)で形成されることが好ましく、例えば、チタン、セラミック、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、Co系合金、非磁性ステンレス鋼等で形成されることが好ましいが、これらに限定されない。
スタイレットハブ部22は、図5に示すように、スタイレット本体部21の基端部が固着されている。スタイレットハブ部22は、スタイレット本体部21をカテーテル10の先端閉鎖ルーメン42の最先端(最奥)まで挿通させた際に、管状部40の第2基端側開口部44が形成される部位が嵌合するように延びる溝部23が形成されている。スタイレットハブ部22は、スタイレット本体部21をカテーテル10に挿通させる際、およびカテーテル10から抜去する際に、操作者が把持する部位として機能する。なお、本実施形態では、スタイレットハブ部22はスタイレット本体部21と別体として形成されているが、一体で形成されてもよい。
治療用物質としては、例えば抗癌剤、より具体的には、ニムスチン、ラニムスチン、テモゾロミド等のアルキル化剤、シスプラチン、オキサリプラチン、ダハプラチン等の白金製剤、スルファジン、メソトレキセート、フルオロウラシル、フルトシン、アザチオプリン、ペントスタチン等の代謝拮抗剤、イリノテカン、ドキソルビシン、レボフロキサシン等のトポイソメラーゼ阻害薬、パクリタキセル、ドタキセル等の微小管脱重合阻害薬、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン等の抗腫瘍性抗生物質、イマチニブ、ゲフィニチブ、スニチニブ、セツキシマブ、トラツズマブ等の分子標的薬等が挙げられるが、これらに限定されない。
次に、本実施形態に係る医療用器具1の作用を説明する。
始めに、スタイレットハブ部22を把持し、スタイレット本体部21を第2基端側開口部44より先端閉鎖ルーメン42に挿通させ、スタイレットハブ部22の溝部23に、管状部40を位置させる。図2に示すように、スタイレット本体部21の先端部が、先端閉鎖ルーメン42の最先端に到達する。次に、シリンジ60に接続された送液チューブ70を、送達用ハブ部50に接続する。なお、送達用ハブ部50に逆止弁や三方活栓等が設けられるのであれば、カテーテル10を生体組織内に留置した後に、送液チューブ70を送達用ハブ部50に接続してもよい。送液チューブ70に逆止弁や三方活栓等が設けられるのであれば、送液チューブ70を送達用ハブ部50に接続し、カテーテル10を生体組織内に留置した後に、シリンジ60を送液チューブ70に接続してもよい。
次に、図6に示すように、スタイレット20が挿通された状態のカテーテル10を把持し、脳実質内における脳腫瘍へ、若しくは脳腫瘍の近傍へ管状部40の先端が到達するまで、カテーテル10を脳実質内に挿通させる。このとき、カテーテル10の管状部40にスタイレット本体部21が挿通されているため、柔軟で細い管状部40に剛性が付与されて曲がりにくくなり、目的の位置まで高精度にカテーテル10を到達させることができる。また、先端閉鎖ルーメン42が送達ルーメン41よりも短く、先端閉鎖ルーメン42に挿通されるスタイレット本体部21も、それに応じて短くなっているため、スタイレット本体部21をより高精度に制御でき、カテーテル10を目的の位置までより高精度に到達させることができる。また、送達ルーメン41の先端側開口部43にフィルター30が設けられているため、カテーテル10を脳実質に挿通させる際に、脳実質が送達ルーメン41内に侵入することを抑制でき、生体組織への負荷を極力抑えることができるとともに、送達ルーメン41を介しての治療用物質の送達を良好に維持できる。また、フィルター30の先端が、カテーテル10の中心軸を中心として回転対称形状となっているため、生体組織の損傷をより低減させることができ、かつ生体組織内へ管状部40をよりまっすぐ挿通させることができる。また、フィルター30の先端側開口部43から突出している部位は、その外径が先端側開口部43の内径よりも大きく形成されており、管状部40の最先端面45と接しているため、カテーテル10を脳実質へ挿通させる際に、最先端面45による生体組織の損傷を抑えることができるとともに、生体組織から力を受けるフィルター30が管状部40により保持され、フィルター30が管状部40から外れることを抑制できる。
次に、図7に示すように、スタイレットハブ部22を把持して、管状部40を生体内(脳実質内)に残したまま、スタイレット本体部21を先端閉鎖ルーメン42から引き抜く。これにより、カテーテル10の管状部40が生体の運動に対応して柔軟に変形可能となり、長時間の使用における生体組織への負荷を極力減らすことができる。そして、先端閉鎖ルーメン42の先端側が閉鎖されているため、先端閉鎖ルーメン42を介しての生体内への空気の混入を防止できるとともに、先端閉鎖ルーメン42からスタイレットハブ部22を抜去しても、生体の組織液が先端閉鎖ルーメン42内へ流入せず、生体組織への負荷を極力抑えることができる。
次に、微量注入ポンプ65により、シリンジ60から送達ルーメン41へ治療用物質を供給する。これにより、送達ルーメン41を通してカテーテル10の先端側開口部43から、治療用物質を所定の注入量および注入速度で放出し、脳腫瘍へ直接的かつ持続的に投与・送達する。カテーテル10から脳実質内へ送達された治療用物質は、圧勾配が維持されて脳質間へ効果的に誘導されて拡散される。そして、管状部40にテーパー部48が設けられることで、管状部40の外周面に沿う治療用物質の逆流を抑制できる。治療用物質の逆流を抑制することで、逆流を主な原因とする脳表、脳溝、摘出腔などへの治療用物質の漏出を防止できるため、治療用物質の分布効率の低下や、不必要な部位への投薬による副作用、脳組織の損傷、感染症等の合併症が発生する可能性を低減させ、より正確で安全かつ効果的なCED法の実現に寄与できる。
治療用物質の投与が完了した後には、シリンジ60による治療用物質の供給を停止し、カテーテル10を脳実質内から抜去して、治療が完了する。
以上のように、本実施形態に係る医療用器具1は、生体管腔(血管、脈管、尿管等)ではない非管腔領域へ挿通させて治療用物質(物質)を生体組織内へ送達するものであり、治療用物質を生体組織内へ送達するための送達ルーメン41および先端側が閉鎖された先端閉鎖ルーメン42が形成されたカテーテル10と、先端閉鎖ルーメン42の基端側から挿通可能な長尺なスタイレット本体部21(芯材部)と、を有し、先端閉鎖ルーメン42の第2基端側開口部44が、送達ルーメン41の第1基端側開口部53よりも先端側に位置している。このため、先端閉鎖ルーメン42へスタイレット本体部21を挿通することでカテーテル10に剛性を付与して生体組織へ挿通でき、カテーテル10を目的部位へ高精度に到達させることが可能となる。また、送達ルーメン41の第1基端側開口部53が形成される送達用ハブ部50に、送達ルーメン41および先端閉鎖ルーメン42を分離するための構造を設ける必要がなく、構造を簡略化できる。
また、スタイレット20を先端閉鎖ルーメン42から抜去した後、先端閉鎖ルーメン42内の空気によるMRI画像のハレーションを抑制するために、先端閉鎖ルーメン42内に生理食塩水等を注入する場合がある。この際、別のカテーテルや注射針を第2基端側開口部44より先端閉鎖ルーメン42に差し込んで、生理食塩水等を注入する必要がある。このとき、本実施形態に係る医療用器具1は、先端閉鎖ルーメン42の第2基端側開口部44が、送達ルーメン41の第1基端側開口部53よりも先端側に位置しているため、第2基端側開口部44が、第1基端側開口部53の近傍に位置する場合と比較して、先端閉鎖ルーメン42が短くなる。このため、注入する生理食塩水等の量が少量で済み、より簡便な操作で注入を行うことができる。また、先端閉鎖ルーメン42が短くなることで、生理食塩水等を注入する際に、針が必要以上に長くない汎用の注射針を適用でき、構成が簡易となるとともに、操作性が向上する。なお、汎用の注射針を用いる際には、針の鋭利な先端部を丸めることが好ましい。
また、先端閉鎖ルーメン42は、先端が閉鎖されているため、先端閉鎖ルーメン42を介しての生体内への空気の混入を防止でき、かつ先端閉鎖ルーメン42からスタイレット本体部21を抜去しても、生体の組織液が先端閉鎖ルーメン42内へ流入せず、生体組織への負荷を極力抑えることができる。
また、スタイレット本体部21(芯材部)の基端部が、先端閉鎖ルーメン42の先端側まで挿通された状態において、送達ルーメン41の第1基端側開口部53よりも先端側に位置するため、スタイレット本体部21が送達ルーメン41の基端部まで延びることなく極力短くでき、スタイレット本体部21の構成を簡略化し、かつスタイレット本体部21をより高精度に制御して、カテーテル10を目的の位置までより高精度に到達させることができる。
また、送達ルーメン41の先端側開口部43に、フィルター30が設けられるため、カテーテル10を脳実質に挿通させる際に、生体組織が送達ルーメン41内に侵入することを抑制でき、生体組織への負荷を極力抑えることができるとともに、送達ルーメン41を介しての治療用物質の送達を良好に維持できる。
また、フィルター30が、カテーテル10の先端(送達ルーメン41の先端側開口部43)から先端方向へ0.5〜2mm突出するように設けられるため、治療用物質を先端側開口部43から直接的に放出する場合と比較して、フィルター30を通った治療用物質を、フィルター30から放射方向へ極力ばらつきを抑えつつ均等に放出することができる。
また、フィルター30の先端部は、カテーテル10の中心軸Xを中心とする回転対称形状であるため、カテーテル10を脳実質へ挿通させる際に生体組織の損傷を低減させることができ、かつ生体組織内にカテーテル10をよりまっすぐ挿通させることができる。さらに、フィルター30を通った治療用物質を、フィルター30から放射方向へ均等に放出することができる。
そして、フィルター30が、樹脂製またはセラミック製である場合、フィルター30によるハレーションを生じさせずにMRIによる撮像を行うことができる。
また、カテーテル10は、管状先端部46の外径が、送達ルーメン41および先端閉鎖ルーメン42の両方が形成される部位(管状基端部47の先端側の部位)の外径よりも小さいため、カテーテル10から治療用物質を送達する際に、外径が変化する部位によって、治療用物質のカテーテル10の外面に沿う逆流を抑制できる。
また、カテーテル10の管状先端部46と、送達ルーメン41および先端閉鎖ルーメン42の両方が形成される部位(管状基端部47の先端側の部位)との間に、外径が先端側へ向かって漸次的に減少するテーパー部48を有するため、生体組織の損傷を極力抑えつつ押し広げるようにカテーテル10を挿通させることが可能となるとともに、カテーテル10から治療用物質を送達する際に、テーパー部48によって、治療用物質のカテーテル10の外面に沿う逆流を抑制できる。
また、スタイレット本体部21(芯材部)の基端にスタイレットハブ部22(芯材用ハブ部)が設けられ、スタイレットハブ部22が、送達ルーメン41の第1基端側開口部53が形成される送達用ハブ部50に連結せずに当該送達用ハブ部50から独立した構造を有するため、スタイレットハブ部22および送達用ハブ部50を互いに干渉させずに操作でき、操作性が向上する。また、スタイレットハブ部22および送達用ハブ部50が、互いに連結されないため、連結のための構造が不要となり、構造を極力簡略化できる。
また、スタイレット本体部21(芯材部)が、非磁性体で形成される場合、MRI造影時にハレーションを起こさないようにすることがでる。
また、カテーテル10が、腫瘍への治療用物質(物質)の対流増加送達に用いられるため、腫瘍が形成される領域の目的位置まで、スタイレット20によって補強されたカテーテル10を高精度に挿通させることができるとともに、腫瘍へ治療用物質を効果的に送達することが可能となる。
また、カテーテル10が、脳への治療用物質(物質)の対流増加送達に用いられるため、脳の目的位置まで、スタイレット20によって補強されたカテーテル10を高精度に挿通させることができるとともに、脳への治療用物質を効果的に送達することが可能となる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、カテーテルの管状部が、外径が先端側へ向かって漸次的に減少するテーパー部を複数有してもよい。テーパー部が複数設けられることで、カテーテルの外面に沿う治療用物質の逆流を効果的に抑制するとともに、テーパー部によって生体組織を押し広げながらカテーテルを生体組織に挿通させることで、生体組織の損傷を極力抑えることができる。また、テーパー部ではなしに、外径がカテーテルの中心軸Xと直角方向に減少する段部が1つもしくは複数設けられてもよい。または、管状部に、テーパー部や段部が設けられなくてもよい。
また、本実施形態に係る医療用器具1は、脳腫瘍へ治療用物質を送達しているが、送達する部位は、腫瘍に限定されず、また、例えば肝臓、膵臓、胆のう、***、子宮、大腸等の脳以外の生体組織であってもよい。医療用器具1は、生体管腔(血管、脈管、尿管等)ではない種々の非管腔領域へ挿通させて、治療用物質を非管腔領域の生体組織内へ送達することができる。
1 医療用器具、
10 カテーテル、
20 スタイレット、
21 スタイレット本体部(芯材部)、
22 スタイレットハブ部(芯材用ハブ部)、
30 フィルター、
41 送達ルーメン、
42 先端閉鎖ルーメン、
43 先端側開口部、
44 第2基端側開口部、
48 テーパー部、
50 送達用ハブ部、
53 第1基端側開口部。
10 カテーテル、
20 スタイレット、
21 スタイレット本体部(芯材部)、
22 スタイレットハブ部(芯材用ハブ部)、
30 フィルター、
41 送達ルーメン、
42 先端閉鎖ルーメン、
43 先端側開口部、
44 第2基端側開口部、
48 テーパー部、
50 送達用ハブ部、
53 第1基端側開口部。
Claims (13)
- 生体組織の非管腔領域へ挿通させて物質を生体組織内へ送達するための医療用器具であって、
前記物質を生体組織内へ送達するための送達ルーメン、および先端側が閉鎖された先端閉鎖ルーメンが形成されたカテーテルと、
前記先端閉鎖ルーメンの基端側から挿通可能な長尺な芯材部と、を有し、
前記先端閉鎖ルーメンの基端側開口部が、前記送達ルーメンの基端側開口部よりも先端側に位置する医療用器具。 - 前記芯材部は、前記先端閉鎖ルーメンに先端側まで挿通された状態において、その基端部が前記送達ルーメンの基端側開口部よりも先端側に位置する請求項1に記載の医療用器具。
- 前記送達ルーメンの先端側開口部に、フィルターが設けられる請求項1または2に記載の医療用器具。
- 前記フィルターは、前記カテーテルの先端から先端方向へ0.5〜2mm突出するように設けられる請求項3に記載の医療用器具。
- 前記フィルターの先端部は、前記カテーテルの中心軸を中心とする回転対称形状である請求項3または4に記載の医療用器具。
- 前記フィルターは、樹脂製である請求項3〜5のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記フィルターは、セラミック製である請求項3〜5のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルは、先端部の外径が、前記送達ルーメンおよび先端閉鎖ルーメンの両方が形成される部位の外径よりも小さい請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルの先端部と、前記送達ルーメンおよび先端閉鎖ルーメンの両方が形成される部位との間に、外径が先端側へ向かって漸次的に減少するテーパー部を有する請求項8に記載の医療用器具。
- 前記芯材部の基端に芯材用ハブ部が設けられ、当該芯材用ハブ部が、前記送達ルーメンの基端側開口部が形成される送達用ハブ部に連結せずに当該送達用ハブ部から独立した構造を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記芯材部は、非磁性体で形成される請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルは、腫瘍への物質の対流増加送達に用いられる請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルは、脳への物質の対流増加送達に用いられる請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療用器具。
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JP2013143171A JP2015015988A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | 医療用器具 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11298043B2 (en) | 2016-08-30 | 2022-04-12 | The Regents Of The University Of California | Methods for biomedical targeting and delivery and devices and systems for practicing the same |
WO2022229659A1 (en) * | 2021-04-30 | 2022-11-03 | Neurochase Technologies Limited | Neurosurgical device |
US11497576B2 (en) | 2017-07-17 | 2022-11-15 | Voyager Therapeutics, Inc. | Trajectory array guide system |
-
2013
- 2013-07-09 JP JP2013143171A patent/JP2015015988A/ja active Pending
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