以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、本実施例における撮像装置の構成について説明する。図1は、本実施例における撮像装置(デジタルカメラ100)の構成を示すブロック図である。デジタルカメラ100は、撮影者(ユーザ)によるフレーミングを支援するためのフレーミング支援ズーム(フレーミングアシストズーム、以下FAズーム)を実行可能に構成されている。
レンズ鏡筒101(レンズ装置)は、その内部にレンズ(レンズ群)を保持している。ズームレンズ102は、光軸方向に移動することで焦点距離を調節し、光学的に画角を変更(ズーム位置を移動)する。フォーカスレンズ103は、光軸方向に移動することでピントを調節する。防振レンズ104は、手ぶれに起因する像振れを補正する補正用レンズである。絞りおよびシャッタ105は、光量を調節可能に構成されており、露出制御に用いられる。なお本実施例において、デジタルカメラ100は、レンズ鏡筒101とカメラ本体(撮像装置本体)とが一体的に構成された撮像装置であるが、これに限定されるものではない。本実施例は、カメラ本体と、カメラ本体に着脱可能なレンズ装置(交換レンズ)とを備えて構成される撮像システムにも適用可能である。
レンズ鏡筒101を通過した光(光信号)は、CCD(電荷結合素子)またはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などを備えて構成される撮像素子106により受光される。撮像素子106は、光電変換によって、受光した光信号を電気信号に変換することで、撮像信号を生成する。撮像信号は、画像処理回路107に入力される。画像処理回路107は、入力された撮像信号に対して画素補間処理や色変換処理などの各種処理を行い、画像データ(各種処理後の画像データ)を画像メモリ108に出力する。画像メモリ108は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などを備えて構成される記憶手段である。
表示部109(表示手段)は、TFT型LCD(薄膜トランジスタ駆動型液晶表示器)などを備えて構成され、撮影画像(撮影して得られた像、画像データ)を表示する。また表示部109は、撮影画像とともに、特定の情報(例えば、撮影情報や後述するFAズーム枠など)を表示する。このようなライブビューなどの情報表示により、撮影者が画角合わせを行うための電子ビューファインダ(EVF)機能を実現している。
絞りシャッタ駆動部110は、画像処理回路107の画像処理により得られた輝度情報に基づいて露出制御値(絞り値およびシャッタ速度)を演算し、この演算結果に基づいて絞りおよびシャッタ105を駆動する。これにより、AE(自動露出)制御が行われる。防振レンズ駆動部111は、ジャイロセンサなどの角速度センサの情報に基づいてデジタルカメラ100に加わる振れ量を演算し、この振れ量を打ち消す(低減する)ように防振レンズ104を駆動する。
フォーカスレンズ駆動部112は、フォーカスレンズ103を駆動する。本実施例において、デジタルカメラ100は、コントラスト方式でAF(オートフォーカス)制御を行う。このためフォーカスレンズ駆動部112は、画像処理回路107の画像処理により得られた撮影光学系の焦点調節情報(コントラスト評価値)に基づいて、被写体にピントが合うようにフォーカスレンズ103を駆動する。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、位相差方式などのコントラスト方式以外のAF制御や、コントラスト方式と位相差方式との組み合わせなど複数の方式を用いたAF制御などを行うように構成してもよい。
ズームレンズ駆動部113は、ズーム操作指示に従ってズームレンズ102を駆動する。操作部117(操作手段)は、撮影者(ユーザ)がデジタルカメラ100にズーミングを指示する(ズーミング指示操作に用いられる)ズーム操作部材としてのズームレバーまたはズームボタンなどを備えて構成される。ズーム操作部材の操作量および操作方向に基づいて、システム制御部114によりズーム駆動速度や駆動方向が演算され、その演算結果に従ってズームレンズ102が光軸に沿って移動する。
撮影動作により生成された画像データは、I/F部115(インターフェース部)を介して記録部116に送られて記録される。画像データは、デジタルカメラ100に装着して使用されるメモリカードなどの外部記録媒体またはデジタルカメラ100に内蔵されている不揮発性のメモリ118、あるいは外部記録媒体およびメモリ118の両方に記録される。
操作部117は、前述のズーム操作部材に加えて、撮影開始を指示するレリーズスイッチ、FAズーム(フレーミング支援ズーム)の開始や終了を指示するFAズーム操作スイッチ(第1の操作部)などを含む。操作部117からの信号(操作信号)は、後述のシステム制御部114(制御手段)に送られる。メモリ118は、プログラムデータや画像データに加えて、デジタルカメラ100の設定情報や、後述するFAズーム機能におけるズームイン位置などの情報を記憶する。ここで、ズームイン位置とは、FAズーム終了時にズームインする際の目標となるズーム戻り位置であり、その詳細については後述する。
システム制御部114(制御手段)は、CPU(中央演算処理装置)などの演算処理装置を備えて構成され、撮影者(ユーザ)の操作に応じて各部に制御命令を送ることによりデジタルカメラ100の全体を制御する。システム制御部114は、メモリ118に記憶されている各種の制御プログラム、例えば撮像素子106の制御、AE制御、AF制御、ズーム制御(FAズーム処理を含む)などを行うためのプログラムを実行する。
次に、システム制御部114において、FAズーム機能に関連する制御について説明する。図1に示されるように、システム制御部114は、CZ制御部119、電子ズーム制御部120、FAズーム枠制御部121、FAズーム制御部122、および、被写体検出部123を備えて構成される。
光学ズームによる画角変更時に合焦状態を維持するには、レンズ鏡筒101のようなリアフォーカスタイプのレンズ鏡筒の場合、ズームレンズ102の位置に応じてフォーカスレンズ103を適切なフォーカス位置へ移動させる必要がある。このような制御をコンピュータズーム(CZ)制御という。
図2は、ズームレンズの焦点距離と被写体距離ごとのフォーカス位置との関係図である。図2では、ズームレンズの焦点距離とピントが合うフォーカス位置との関係を、被写体までの距離ごとに示すデータデーブルとしてグラフ化している。本実施例において、このデータテーブルはフォーカスカムテーブルという。図2において、横軸はズーム位置に対応する焦点距離を示し、縦軸はフォーカス位置を示している。各グラフ線の横には、デジタルカメラ100から被写体までの距離(被写体距離)を示している。
システム制御部114は、AF制御を行う際にフォーカスレンズ駆動部112を制御して、フォーカスレンズ103を所定の範囲において移動させることによりスキャン動作を行う。この動作中に得られるコントラスト評価値などを用いて既知の方法により、合焦点であるフォーカス位置が検出される。そのときのズーム位置およびフォーカス位置を用い、フォーカスカムテーブルを参照することにより、被写体距離を計測することができる。
デジタルカメラ100は、光学ズームおよび電子ズームの各機能を有する。CZ制御部119およびズームレンズ駆動部113は、光学ズームを行う。CZ制御部119は、ズーム動作時に、所定の制御周期ごとにズームレンズ102のズーム位置を検出する。そしてCZ制御部119は、そのズーム位置に応じてフォーカスカムテーブルに追従するように、フォーカスレンズ103を駆動させる。これにより、合焦状態を維持したまま光学ズームを行うことができる。
一方、電子ズーム制御部120および画像メモリ108は、電子ズームを行う。電子ズーム制御部120は、画像メモリ108に転送された画像データから対象領域を切り出すことにより、電子ズーム機能を実現する。また電子ズーム制御部120は、撮像素子106に取り込む画像(映像)のフレームレート周期で切り出す範囲を徐々に大きくしながら表示部109に表示させることにより、滑らかな電子ズーム表示を実現する。
被写体検出部123(被写体検出手段)は、画像メモリ108に記憶された画像データから所望の被写体領域を検出する。本実施例では、画像データに含まれる顔情報または色情報に基づいて被写体(顔または物体)を検出する被写体検出方法(顔検出処理、色検出処理)について説明する。
顔検出処理は、画像データ中に存在する顔領域を公知のアルゴリズムにより検出する処理である。例えば、被写体検出部123は、画像データ上の正方形状の部分領域から特徴量(抽出特徴量)を抽出し、その特徴量を予め用意された顔の特徴量(基準特徴量)と比較する。そして被写体検出部123は、両者(抽出特徴量と基準特徴量)の相関が所定の閾値を超える場合、その部分領域を顔領域であると判定する。この判定を、部分領域のサイズ、配置位置、配置角度の組み合わせを変更しながら繰り返すことにより、画像データ中に存在する種々の顔領域を検出することができる。
色検出処理では、後述の被写体指定方法に従って指定された被写体領域の色情報を特徴色として記憶する。色検出処理は、検出対象の被写体が物体(人物以外の「モノ」)である場合に実行される。色情報としては、画像処理回路107からの出力信号であるRGBや輝度Yおよび色差R−Y、B−Yなどが用いられる。被写体検出時において、被写体検出部123は、画像データを複数の部分領域に分割し、部分領域ごとの輝度および色差の平均値を算出する。また、被写体検出部123は、予め記憶された特徴色情報と被写体検出時の各領域の色情報とを比較し、輝度および色差の差分が所定量以下の部分領域を被写体領域の候補とする。この領域候補で隣り合う部分領域の塊を同一色領域として、同一色領域が所定のサイズ範囲となる領域を最終的な被写体領域とする。
被写体検出部123は、顔情報および色情報とともに、CZ制御部119で計測された被写体距離情報およびズームレンズ102の焦点距離情報を用いることにより、画像データ上での被写体領域の大きさを推定することができる。
次に、FAズーム機能を実行するためのFAズーム枠制御部121およびFAズーム制御部122について説明する。本実施例のデジタルカメラ100は、FAズームを実行するモードとして、手動探索モード(第2のモード)および自動追尾モード(第1のモード)の二つのモードを備えている。これらの二つのモードは、被写体がフレームアウトしたときに撮影者がFAズーム操作スイッチを操作して被写体を捉え直すモードであるか、または、デジタルカメラ100が自動で被写体を検出して画角合わせを支援するモードであるかという点で異なる。
このように本実施例において、システム制御部114(FAズーム制御部122)は、第1のモードまたは第2のモードのいずれかのモードでFAズームを行う。第2のモードは、撮影者による操作部117の操作に基づいてFAズームを行うモードである。第1のモードは、被写体の検出結果に基づいてFAズームを行うモードである。システム制御部114(FAズーム制御部122)は、操作部117の状態に基づいてモードを第1のモードまたは第2のモードのいずれかに設定する。以下、各モードの機能の概要について説明する。
FAズーム機能が非搭載のカメラでは、撮影者が望遠状態でフレーミングしてシャッタチャンスを待っている間に被写体が動いてフレームアウトした場合などにおいて、撮影者は以下の操作が必要であった。すなわち、まず、ズーム操作部材の操作によりズームアウトを行ってから被写体を探索する。そして被写体を探索した後、再び所望の画角になるまでズーム操作を行って画角調整する。
一方、FAズーム機能の手動探索モードを有するデジタルカメラ100では、撮影前に画角合わせなどを行う状態(以下、「撮影準備状態」という)で被写体を見失った場合、撮影者はFAズーム操作スイッチを操作すればよい。このFAズーム操作スイッチは、FAズーム機能のために割り当てられたスイッチであり、ズーム操作部材とは別の部材である。FAズーム操作スイッチの押下により、FAズーム機能の開始をFAズーム制御部122に指示する。FAズーム制御部122は、FAズーム操作スイッチからのFAズーム開始指示により、電子ズームおよび光学ズームの各ズーム位置(ズームイン位置)をメモリ118に記憶させる。またFAズーム制御部122は、後述の図6に示される処理手順に従って、CZ制御部119または電子ズーム制御部120に対して広角方向(広角側)にズームアウトの指示を行い、撮影準備状態よりも画角がズームアウトされた状態(被写体探索状態)にする。
続いて、図3を参照して、撮影準備状態および被写体探索状態のそれぞれの画角について説明する。図3は、被写体探索状態での画角および撮影準備状態での画角の説明図である。図3(A)および図3(D)はズームイン状態(撮影準備状態)での画角を示し、図3(B)および図3(C)はズームアウト状態(被写体探索状態)での画角を示している。
図3(A)に示されるように被写体がフレームアウトした場合、撮影者は被写体を探索するためにFAズーム操作スイッチを押下する。FAズーム操作スイッチの押下中、ズームアウト状態(被写体探索状態)が保持されるとともに、ズームイン位置を示すFAズーム枠300が画像に重畳して表示部109に表示される。図3(B)に示されるようにズームアウト状態(被写体探索状態)で所望の被写体を発見した場合、図3(C)に示されるようにFAズーム枠300の内側に被写体が収まるようにフレーミングを行う。その後、撮影者がFAズーム操作スイッチを開放することにより、FAズーム終了がFAズーム制御部122に指示される。このとき、FAズーム制御部122は、記憶された撮影準備状態のズーム位置(ズームイン位置)まで電子ズームまたは光学ズームによるズームイン動作を行う。これにより、図3(D)に示されるような最適なフレーミング状態が得られる。
FAズーム枠制御部121は、図3(B)および図3(C)に示されるように、記憶された撮影準備状態での画角を示す大きさを算出し、表示部109のEVFの中心部にFAズーム枠300を表示させる。FAズーム枠300の大きさは、ズームアウトした時点でのズーム倍率を元に計算される。例えば、撮影準備状態から2倍の電子ズーム倍率および3倍の光学ズーム倍率でズームアウトして被写体探索状態となった場合、被写体探索状態でEVFに表示される画角に対して、(1/2)×(1/3)=1/6倍の大きさのFAズーム枠300が表示される。このような処理により、撮影者は簡単な操作で、フレームアウトした被写体を再度フレームインさせながら所望の画角で撮影することができる。
また、動いている被写体を撮影する場合など被写体がフレームアウトしやすいシーンを撮影する場合、デジタルカメラ100が自動的にズーム位置を変更することにより、より簡単にフレームアウトを防止することができる。特に望遠状態での撮影においては、画角が狭いため、手ぶれなどに起因する微少なデジタルカメラ100の動きでも被写体がフレームアウトする場合がある。
本実施例のデジタルカメラ100は、FAズーム機能の自動追尾モードを有する。このため、自動追尾モードを設定した後、タッチパネルなどで被写体を指定する操作を実施することにより、撮影したい被写体を指定しておけばよい。被写体の指定方法としては、タッチパネル操作以外でも、特定のボタンを押下したときに中央付近にいる被写体を指定する方法や、デジタルカメラ100が検出した被写体の中から自動的に主被写体を選択する方法などが考えられる。
被写体検出部123は、画像メモリ108から指定された被写体領域の画像データ上での位置や大きさを算出する。これをライブビューとして表示する毎サンプリングの画像データに対して連続的に行うことにより、被写体の動きを追尾することが可能となる。追尾している被写体を後述するズームアウト領域で検出した場合や所定の大きさよりも大きくなった場合(図3(A))、CZ制御部119または電子ズーム制御部120に対してFAズーム制御部122が広角方向にズームアウトの指示を行う(図3(B))。
被写体をFAズーム枠300のズームイン領域内に検出し、かつ、所定の大きさの範囲内に収まった場合(図3(C))、FAズーム枠300が示すズーム位置までズームイン動作を行う(図3(D))。このような処理により、撮影者はズーム操作を気にせず被写体を画面に収めるようにデジタルカメラ100を動かすだけでよい。仮に、被写体がフレームアウトしそうになった場合でも、自動的にズーム位置が変更されるため、より簡単に画角合わせを行うことが可能となる。本実施例は、このような自動追尾モードにおけるズームアウト動作およびズームイン動作を最適なタイミングで実施することにより、撮影者が容易にフレーミングすることが可能となる。
次に、図4および図5を参照して、ズームアウト動作およびズームイン動作の開始条件について説明する。図4は、被写体(モノ)の画面外へのフレームアウトを防止する処理の説明図である。図5は、被写体(人物)の画面内でのサイズ変化(大きさ変化)を防止する処理の説明図である。
図4および図5において、400は被写体(人物以外のモノ)を追尾するモノ追尾枠、500は被写体(人物の顔)を追尾する顔追尾枠である。本実施例において、被写体が人物とモノのいずれにも適用可能な場合、モノ追尾枠400および顔追尾枠500をまとめて被写体追尾枠ということもある。被写体追尾枠は、撮影者が指定した被写体が分かるように、表示部109のEVF上に被写体を囲むように表示される。被写体追尾枠の画面上での位置および大きさは、顔情報および色情報に基づいて被写体検出部123により算出され、フレームレート周期で更新される。
図4は、被写体(飛行機)の画面外へのフレームアウトを防止する処理の説明図であり、図4(A)はEVFで表示される画角全体(画面全体)に対して所定の比率よりも外側の領域をズームアウト領域ZOとして示している。例えば、画面の中心点を0%、画面全体を100%とし、画面全体に対して80%となる位置をズームアウト領域ZOの境界として設定する場合、画面全体における80〜100%の領域がズームアウト領域ZOとなる。ズームアウト領域ZOの内部にモノ追尾枠400aの一部が進入すると、ズームアウト動作が開始する。ズームアウト動作中のズーム倍率やズーム速度は、被写体のサイズや移動速度に応じて予め設定される。また、ズーム倍率やズーム速度を被写体のサイズや移動速度に応じて適宜算出してもよい。ズームアウト動作は、そのズーム倍率やズーム速度に従って実行される。これにより、被写体のフレームアウトを効果的に防止することができる。
図4(B)は、被写体探索状態においてFAズーム枠300で示されるズームイン画角に対して所定の比率よりも内側の領域をズームイン領域ZIとして示している。例えば画面の中心点を0%、FAズーム枠300(ズームイン画角)を100%とし、ズームイン画角に対して70%となる位置をズームイン領域ZIの境界として設定する場合、FAズーム枠300の全体における0〜70%の領域がズームイン領域ZIとなる。このとき、ズーム倍率(ズームアウト倍率)が例えば1/2倍である場合、FAズーム枠300は画面全体に対して50%の大きさとなる。したがって、ズームイン領域ZIは、画面全体に対して0〜35%(=70%×(1/2))の領域であるともいえる。撮影者が、ズームイン領域ZIの内部にモノ追尾枠400bが収まるようにデジタルカメラ100の向きを変更すると、ズームイン動作が開始する。
ここで、ズームアウト領域ZOの下限比率(上記例では80%)とズームイン領域ZIの上限比率(上記例では70%)との関係について説明する。撮影準備状態でモノ追尾枠400がズームアウト領域ZOの下限比率ぎりぎりの位置で検出されたことによりズームアウト動作が開始し、被写体がその位置で停止した状態でデジタルカメラ100自体の向きを変更していない場合について考える。ここで、ズームアウト領域ZOの下限比率とズームイン領域ZIの上限比率とを同じ比率に設定している場合、ズームアウト動作の直後には、モノ追尾枠400のほぼ全体がズームイン領域ZIに収まった状態となる。また、ズームアウト領域ZOの下限比率がズームイン領域ZIの上限比率以下に設定されている場合、ズームアウト動作の直後に、モノ追尾枠400全体がズームイン領域ZIの内部に収まり、即座にズームイン動作が開始する。すなわち、ズームアウト動作とズームイン動作とを繰り返すハンチング現象が発生してしまう。したがって、このようなハンチング現象を防止するため、ズームアウト領域ZOの下限比率は、ズームイン領域ZIの上限比率より大きくなるように(ZO下限比率>ZI上限比率)設定される。
図5は、被写体(人物)がデジタルカメラ100に近づいてきた場合に、デジタルカメラ100が自動で被写体が占める割合を所定の比率内に収めるようにズーム動作させる例を示している。顔追尾枠500(500a、500b、500c)は、被写体(人物)の特徴領域として顔領域を囲むように表示している。ここでは、顔追尾枠500の大きさは被写体サイズである(顔追尾枠500の大きさ=被写体サイズ)として説明する。図5(A)は、後述の被写体指定方法に従って被写体が指定されたときの画角を示している。本実施例において、被写体指定時の顔追尾枠500aの大きさは、基準の被写体サイズとしてメモリ118に予め記憶される。
図5(B)は、図5(A)の状態からズーム位置を変更せずに被写体がデジタルカメラ100に向かって近づいてきたときの画角を示している。例えば、基準の被写体サイズである顔追尾枠500aの大きさに対して150%となる大きさをズームアウト動作の開始サイズとする。被写体追尾枠(顔追尾枠)の関係が、顔追尾枠500b>顔追尾枠500a×150%となったとき、ズームアウト動作が開始する。
図5(C)は、図5(A)から図5(B)の状態に変化した被写体サイズの変化量と同等の1/1.5倍だけズーム倍率を広角方向にズームアウトしたときの画角およびこのときの顔追尾枠500cを示している。この後、さらに被写体が近づいてくる場合、光学ズーム位置がワイド端となるまでズームアウト動作を行うことにより、被写体を所定の比率内に収め続けることができる。このため、撮影者は、レリーズスイッチの操作に集中することが可能である。図4および図5では、被写体がモノである場合にフレームアウトを防止する処理と、被写体が人物である場合に被写体の大きさを所定の比率に収める処理について説明を行ったが、追尾する被写体とズーム動作開始の判定処理とはいずれの組み合わせであってもよい。
次に、図6を参照して、FAズーム機能の処理の概要について説明する。図6は、FAズーム機能の処理を示すフローチャートである。図6のFAズーム機能は、FAズーム制御部122の指令に基づいて行われる。
まずステップS100において、FAズーム制御部122は、FAズームを開始するか否かを判定する(FAズーム開始判定)。FAズーム開始判定において、FAズーム制御部122は、モードが手動探索モードまたは自動追尾モードのいずれかであるかのモード判定を行う。手動探索モードの場合、操作部117のFAズーム操作スイッチの状態に基づいて、FAズーム開始判定を行う。自動追尾モードの場合、被写体検出結果に基づいて、FAズーム開始判定を行う。モード判定については後述する。ステップS100のFAズーム開始判定にて、FAズームを開始すると判定された場合、ステップS101に進む。
ステップS101において、FAズーム制御部122は、ズームアウト開始時の光学ズーム位置および電子ズーム位置(ズーム戻り位置)を記憶する。またFAズーム制御部122は、所定の駆動量をCZ制御部119または電子ズーム制御部120に指令してFAズームアウト動作を行う。FAズームアウト動作が終了すると、ステップS102に進む。
ステップS102において、FAズーム枠制御部121は、記憶されたズーム戻り位置を示すFAズーム枠300(指標)を表示部109に表示する(FAズーム枠表示)。撮影者は、FAズーム枠300を目安として、撮影したい被写体を画面中央付近に収めるようにフレーミング操作を行う。このとき、FAズーム枠300内に被写体が収まらない場合や被写体が小さすぎる場合、ステップS103に進む。ステップS103において、FAズーム枠300を適切な大きさに変更するとともに、記憶したズーム位置の情報を更新する(ズーム戻り位置変更)。
続いてステップS104において、FAズーム制御部122は、FAズームを終了するか否かを判定する(FAズーム終了判定)。FAズーム終了判定では、FAズーム開始時のモードが手動探索モードの場合、操作部117のFAズーム操作スイッチの状態に基づいてFAズーム終了を判定する。また、FAズーム開始時のモードが自動追尾モードの場合、被写体検出結果に基づいてFAズーム終了の判定を行う。ステップS104のFAズーム終了判定にてFAズームの終了判定がなされると、ステップS105に進む。
ステップS105において、FAズーム制御部122は、記憶した光学ズーム位置および電子ズーム位置(ズーム位置)まで駆動を行うようにCZ制御部119または電子ズーム制御部120に指令してFAズームイン動作を行う。これにより、FAズーム機能は終了する。
続いて、図7A乃至図10を参照して、図6に示されるFAズーム機能の各処理について詳述する。図7Aは、図6のFAズーム開始判定(ステップS100)のフローチャートである。ステップS200において、FAズーム制御部122は、操作部117のFAズーム操作スイッチが押下されたか否かを判定する。FAズーム操作スイッチが押下されると、ステップS201において、FAズーム制御部122はFAズーム操作スイッチの押下時間を測定する。
ステップS201において、FAズーム制御部122は、FAズーム操作スイッチの押下された後、FAズーム操作スイッチが所定の時間内に開放されるか否かを判定する。すなわちFAズーム制御部122は、FAズーム操作スイッチの長押しまたは短押しの判定を行い、押下時間によって実行するモードを変更する。FAズーム操作スイッチの長押し(第2の操作)時には、ステップS202に進み、手動探索モードを選択し、選択されたモードをメモリ118に記憶する。一方、FAズーム操作スイッチの短押し(第1の操作)時には、ステップS203に進み、自動追尾モードを選択し、選択されたモードをメモリ118に記憶する。
手動探索モードの場合、FAズーム操作スイッチの押下開始からFAズーム操作スイッチの押下が継続したまま所定時間を経過した時点、すなわち、長押しであることが確定した時点でステップS208に進み、FAズーム開始と判定される。一方、自動追尾モードの場合、ステップS204に進み、追尾する被写体指定処理を行う。すなわちFAズーム制御部122(システム制御部114)は、操作部117(FAズーム操作スイッチ)の押下時間(操作時間)が第1の時間よりも長い場合、モードを第2のモード(手動探索モード)に設定する。一方、FAズーム制御部122は、操作部117の押下時間が第1の時間未満である場合、モードを第1のモード(自動追尾モード)に設定する。
なお、本実施例では、スイッチの押下時間によって手動探索モードか自動追尾モードかを判定しているが、モード判定の方法はズーム操作スイッチを用いたものであればこれに限定されない。例えば、ズーム操作スイッチが一度押下されてから所定時間内に再度押下された場合に、いずれかのモードと判定するようにしても良い。また、ズーム操作スイッチと他の部材との同時操作によって、いずれかのモードと判定するようにしても良い。また、押下するタイプのズーム操作スイッチに限らず、代わりに回転可能なリング部材などを用いてFAズームの操作を指示するようにしても良い。
ここで、図8A乃至図8Cを参照して、図7AのステップS204(被写体指定処理)について説明する。図8Aは、操作部117を構成する部材であるタッチパネルを用いて表示部109に表示された被写体をタッチして指定する操作例のフローチャートを示している。ステップS300において、FAズーム制御部122は、タッチパネルが押下されたか否かを判定する。タッチパネルが押下された場合にはステップS301に進み、FAズーム制御部122はタッチされた位置(タッチ位置)を取得する。続いてステップS302において、FAズーム制御部122は、タッチ位置を被写体検出部123に通知し、被写体検出部123はタッチ位置付近で顔検出を行う。タッチ位置付近に顔を検出した場合、主被写体は人物であると判定し、ステップS303に進む。ステップS303において、FAズーム制御部122は、自動追尾の対象である人物の顔情報をメモリ118に記憶する。具体的な顔情報としては、被写体指定時の顔のサイズや顔の検出位置、顔の向きなどがある。また、顔認証機能を有するカメラにおいては、認証IDなども記憶する。
一方、ステップS302にてタッチ位置付近に顔を検出しなかった場合、主被写体は人物以外のモノであると判定し、ステップS304に進む。ステップS304において、FAズーム制御部122は、タッチ位置付近の特徴色を自動追尾対象の色情報としてメモリ118に記憶する。具体的な色情報としては、被写体指定時の特徴色の色や輝度、色差の値や同一色領域のサイズ、同一色領域の重心位置などがある。顔情報および色情報を、以下の説明ではまとめて被写体情報(被写体サイズ、被写体検出位置など)という。
ステップS303またはステップS304にて被写体情報が記憶されると、ステップS305に進む。ステップS305において、FAズーム制御部122は、被写体検出位置を中心に被写体サイズに対応した大きさの被写体追尾枠(モノ追尾枠400または顔追尾枠500)を表示部109に表示する。これにより、被写体指定処理は終了する。
このようにシステム制御部114(被写体検出部123)は、モードが自動追尾モード(第1のモード)である場合、表示部109において撮影者により指定された位置または指定された位置の近傍で被写体を検出する。そしてシステム制御部114(FAズーム制御部122)は被写体追尾枠を表示部109に表示する。図8Aのフローチャートによれば、撮影者が追尾したい被写体を直感的な指定方法で簡単に指定することが可能となる。
図8Bは、操作部117を構成する部材であるFAズーム操作スイッチとは別のスイッチ(被写体指定用スイッチ)によって被写体を指定する操作例のフローチャートを示している。まずステップS306において、FAズーム制御部122は、表示部109の画面中央付近に被写体指定の目安となる枠を表示する。撮影者は、この枠を目安として追尾したい被写体を中央付近に収めるようにカメラの向きを調整する。続いてステップS307において、FAズーム制御部122は、被写体指定用スイッチが押下されたか否かを判定する。被写体指定用スイッチが押下された場合、ステップS308に進む。
ステップS308において、被写体検出部123は、画面中央付近で顔検出を行う。画面中央付近に顔を検出した場合、主被写体は人物であると判定し、ステップS309に進む。一方、画面中央付近に顔を検出しなかった場合、主被写体は人物以外のモノであると判定し、ステップS310に進む。ステップS309またはステップS310にて被写体情報を記憶すると、ステップS311に進む。ステップS311において、被写体追尾枠(モノ追尾枠400または顔追尾枠500)を表示され、被写体指定処理は終了となる。ステップS309、S310、S311の基本的な処理は、図8AのステップS303、S304、S305とそれぞれ同様である。
このようにシステム制御部114(被写体検出部123)は、モードが自動追尾モード(第1のモード)である場合、表示部109の画面中央位置または画面中央位置の近傍で被写体を検出する。そしてシステム制御部114(FAズーム制御部122)は、被写体の位置を示す被写体追尾枠を表示部109に表示する。図8Bのフローチャートによれば、タッチパネルなどの操作部材を搭載しないカメラにおいても被写体を簡単に指定することが可能となる。
図8Cは、操作部117を構成する部材であるFAズーム操作スイッチが短押しされた時点で検出された顔の中から追尾する被写体を自動的に選択する例のフローチャートを示している。まずステップS312において、被写体検出部123は、画面全体で顔検出を行う。画面全体で一人でも顔を検出した場合には主被写体は人物であると判定し、ステップS313に進む。ステップS313において、被写体検出部123は、検出した顔が一人の場合、その顔を主顔とする。被写体検出部123は、検出した顔が複数の場合、その顔の中から追尾する被写体とする主顔を選択する。主顔選択の判定基準としては、例えば、顔検出位置がより画面中央付近に位置する顔である。また、同程度の位置に複数の顔がある場合、サイズのより大きい顔を主顔として選択する。また、顔認証機能を有するカメラにおいては、認証登録されている顔がある場合、その顔を優先して主顔とする。そしてステップS314において、FAズーム制御部122は、選択された主顔の顔情報をメモリ118に記憶する。ステップS314にて顔情報を記憶すると、ステップS315に進み、顔追尾枠500を表示する。
続いてステップS316において、複数の顔から自動で選択された主顔が撮影者の意図しない顔である場合、撮影者が主顔を変更することが可能である。このとき、操作部117のスイッチ(FAズーム操作スイッチでも他のスイッチでもよい)を押下すると、検出された顔の中から主顔として選択されなかった顔に主顔を変更し、顔追尾枠500を更新する。主顔が変更された場合、再度、ステップS314に進み、記憶する顔情報を更新する。また、ステップS315にて顔追尾枠500を新たに選択された主顔のサイズおよび検出位置に変更する。
一方、ステップS312にて画面全体で顔が検出されない場合、主被写体は人物以外のモノであると判定し、ステップS317に進む。ステップS317において、FAズーム制御部122は、画面中央付近の特徴色を自動追尾対象の色情報として、メモリ118に記憶する。ステップS317にて色情報を記憶すると、ステップS318に進み、モノ追尾枠400を表示する。これにより、被写体指定処理は終了する。ステップS314、S317、S315(S318)における基本的な処理は、図8AのステップS303、S304、S305とそれぞれ同様である。
このようにシステム制御部114(被写体検出部123)は、モードが自動追尾モード(第1のモード)である場合、表示部109の画面全体において顔検出を行う。システム制御部114(FAズーム制御部122)は、複数の顔が検出された場合、複数の顔のなかから被写体として第1の顔の位置を示す被写体追尾枠を表示部109に表示する。またシステム制御部114(FAズーム制御部122)は、被写体として第1の顔が第2の顔に変更された場合、第2の顔の位置を示す被写体追尾枠を表示部109に表示する。図8Cのフローチャートによれば、より少ない操作回数で被写体を簡単に指定することが可能となる。
図8A乃至図8Cのいずれかに示される被写体指定処理を終了すると、図7AのステップS205に進む。ステップS205〜S207において、FAズーム制御部122は、被写体指定時の基準被写体情報および周期的に検出する被写体情報に基づいて、FAズームを開始するか否かを判定する。この判定は、FAズーム開始の条件を満たすまで所定の制御周期で繰り返される。
ステップS205において、被写体検出部123は、画面全体の中から基準被写体情報と同じ特徴を持つ被写体、すなわち、基準被写体が人物である場合には顔が、モノである場合には同一の特徴色が検出されるか否かを判定する。追尾する被写体が検出されなかった場合、ステップS209に進む。一方、追尾する被写体が検出された場合、ステップS206に進む。ステップS206において、追尾する被写体の被写体追尾枠が図4(A)に示されるズームアウト領域ZO(画像内の第1の領域外)に含まれるか否かを判定する。ステップS206にて追尾枠がズームアウト領域ZOに含まれる場合、すなわち、被写体が画面周辺付近にありフレームアウトする可能性が大きい場合、ステップS208に進み、FAズーム(ズームアウト動作)が開始する。
一方、ステップS206にて被写体追尾枠がズームアウト領域ZOに含まれていない、すなわち、画面中央付近で被写体を捉えられている場合、ステップS207に進む。続いてステップS207において、基準被写体情報の被写体サイズとステップS205にて検出された被写体サイズとの比較を行う。ステップS205にて検出された被写体のサイズが基準被写体のサイズに対して所定倍以上である(被写体のサイズが所定倍以上大きく変化した)場合、すなわち被写体が画面に占める比率が所定値以上である場合、ステップS208に進み、FAズームが開始する。ステップS208にてFAズーム開始の判定がなされると、図6のステップS101に進み、ズームアウト動作が開始する。
一方、ステップS205で被写体が検出されなかった場合、FAズーム制御部122は、ステップS209で所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していなければ、FAズーム制御部122は、ステップS210でFAズーム操作スイッチが押下されたか否かを判定する。また、ステップS205で検出した被写体が画面中央付近でかつ被写体サイズが基準の被写体サイズに対して所定倍未満である場合(ステップS207で「no」)も、ステップS210でFAズーム操作スイッチの押下を判定する。ステップS210でFAズーム操作スイッチが押下されなければステップS205の被写体検出処理に戻り、ステップS205、S209、S210のループを繰り返す。そして、ステップS209で被写体が検出されない状態で所定時間が経過した場合、ステップS204に進み、再度被写体指定処理を行う。ステップS210でFAズーム操作スイッチが押下された場合、ステップS211に進む。
ステップS211では、FAズーム操作スイッチが押下されてから所定時間内に開放されたか否かを判定する。所定時間内にFAズーム操作スイッチが開放された場合、自動追尾モードがキャンセルされたとして、FAズーム機能を終了する。一方、所定時間経過後にスイッチが開放された場合、ステップS202に進み、手動探索モードが記憶される。すなわち、本実施形態では、自動追尾モード中にFAズーム操作スイッチが所定時間以上押下された場合、FAモードを手動探索モードに変更する。
図9Aは、図6のステップS101(FAズームアウト動作)のフローチャートである。まずステップS400において、FAズーム制御部122は、撮影準備状態での光学ズーム位置をCZ制御部119から取得し、電子ズーム位置を電子ズーム制御部120から取得する。またFAズーム制御部122は、光学ズーム位置および電子ズーム位置のデータをメモリ118に記憶する。光学ズーム位置は、光学ズーム機能によって変更可能なズーム倍率に相当するズームレンズの位置を表す。また、電子ズーム位置は、電子ズーム機能によって変更可能な画像拡大および縮小の倍率に相当する制御位置を表す。手動探索モードの場合、ここで記憶したズーム位置がズーム戻り位置(第2のズーム位置)に設定される。
続いてステップS401において、FAズーム制御部122は、メモリ118に記憶されたズームアウト駆動量を取得する。自動追尾モードのズームアウト駆動量は、検出された被写体のサイズに応じて設定される。具体的には、被写体のサイズが小さいほどズームアウト駆動量は小さく設定される。なお、被写体検出可能な最小サイズを考慮して、被写体のサイズが所定のサイズより小さい場合は、ズームアウトを行わないようにする。また、手動探索モードのズームアウト駆動量は、撮影者が設定メニューからの操作によって変更可能にしてもよい。
そしてステップS402において、FAズーム制御部122は、撮影準備状態でのズーム状態が電子ズーム状態であるか否かを判定する。一般的なズーム操作では、操作部117のズーム操作スイッチが押下されると、光学ズーム位置がワイド端からテレ端の間である場合、CZ制御部119により光学ズームを駆動させる。光学ズーム位置がテレ端であって、さらに望遠方向への操作指示がなされた場合、電子ズーム制御部120が電子ズームを駆動させることで超望遠撮影が可能となる。ズーム操作スイッチの操作によるズーム動作とFAズーム動作との整合性を取るため、FAズーム動作においても、撮影準備状態でのズーム状態が電子ズーム状態の場合には電子ズームを先に駆動させる。すなわち、メモリ118に記憶した時点のズーム位置が優先すべきズーム状態でのズーム領域内にあるか否かが判定される。本実施例では電子ズームが優先されるため、ステップS402では、ズーム位置が電子ズーム領域にあるか否かが判定される。FAズーム開始時のズーム状態が電子ズーム状態である場合、ステップS403に進む。
ステップS403において、FAズーム制御部122は、ステップS400にて取得された電子ズーム位置とステップS401にて取得されたズームアウト駆動量に基づいて電子ズームのズームアウト位置を算出し、電子ズーム制御部120に設定する。続いてステップS404において、FAズーム制御部122は、電子ズーム制御部120に対して、ステップS403にて設定された電子ズームのズームアウト位置まで変倍処理を行うように指示する。そして電子ズーム制御部120は、電子ズームによるズームアウト動作を行う。ステップS402にて撮影準備状態でのズーム位置が光学ズーム領域にあると判定された場合、または、ステップS404にて電子ズームのズームアウト動作が行われた後、ステップS405に進む。
ステップS405において、FAズーム制御部122は、さらに光学ズームによるズームアウトが必要であるか否かを判定する。すなわち、電子ズームだけでは、設定したズームアウト駆動量のズーム駆動に十分でない場合、残りのズームアウト駆動量を光学ズームで補う必要がある。光学ズームによるズームアウトが必要と判定された場合、ステップS406に進む。ステップS406において、FAズーム制御部122は、光学ズーム位置およびズームアウト駆動量に基づいて光学ズームのズームアウト位置を算出し、CZ制御部119に設定する。
そしてステップS407において、FAズーム制御部122は、CZ制御部119に対して、S406で設定した光学ズームのズームアウト位置までズーム駆動するように指示する。CZ制御部119は、ズームレンズ駆動部113を制御し、光学ズームのズームアウト動作を行う。FAズームアウト動作が終了すると、図6のステップS102に進む。ステップS102において、FAズーム制御部122は、ズーム戻り位置に対応するFAズーム枠300の表示をFAズーム枠制御部121に指示する。自動追尾モードの場合、現在の画角(移動前のズーム位置)に対して所定倍率望遠側のズーム位置をズーム戻り位置(第1のズーム位置)としてメモリ118に記憶するとともに、それに対応する画角をFAズーム枠として表示する。一方、手動探索モードの場合、図9AのステップS400で記憶したFAズームアウト開始時のズーム位置に対応する画角をFAズーム枠として表示する。FAズーム枠を表示すると、被写体探索状態としてステップS103のズーム戻り位置変更処理に進む。
図10は、図6のステップS103(ズーム戻り位置変更)のフローチャートである。まずステップS500において、図7AのステップS202またはステップS203にて記憶されたモードが自動追尾モードまたは手動探索モードのいずれかであるかを判定する。記憶されたモードが手動探索モードである場合、ステップS506に進む。手動探索モード時には、撮影者がズームレバー操作を行うことにより、図9AのステップS400にて記憶されたズーム戻り位置およびFAズーム枠300を変更することが可能である。ステップS506では、操作部117のズームレバーが望遠方向または広角方向のいずれかに操作されたか否かを判定する。ズームレバー操作が行われた場合、ステップS507に進む。ズームレバー操作が行われなければ、本フローを終了する。
ステップS507において、ズームアウト動作前に図9AのステップS400にてメモリ118に記憶されたズーム戻り位置をステップS506にて判定された操作方向に応じて望遠方向または広角方向に所定量だけ変更するように更新する。続いてステップS508において、ステップS507にて更新されたズーム戻り位置(第2のズーム位置)と対応する画角を示すようにFAズーム枠300の表示を更新し、ステップS509に進む。
ステップS509において、操作部117のズームレバーが開放されたか否かを判定する。ズームレバーが開放されない場合、ステップS507、S508の処理を繰り返す。一方、ズームレバーが開放された場合、本フローを終了する。
以上の処理により、ズームアウト動作後に被写体が近づいてくるなどして表示部109に表示される被写体の大きさが変わった場合でも、撮影者が簡単な操作でズーム戻り位置を変更可能であり、フレーミング操作がより簡単になる。
一方、ステップS500にてモードが自動追尾モードと判定された場合、ステップS501に進む。自動追尾モード時には、カメラが検出した被写体サイズに基づいて、ズームイン動作後に被写体が適切な画角に収まるようにズーム戻り位置およびFAズーム枠300を自動で変更することが可能である。ここで、「適切な画角」とは、画面全体に対して被写体が占める比率が図7AのステップS204にて指定された基準となる被写体サイズと同程度となる画角を保持することである。ステップS501では、基準被写体情報と対応する顔情報または色情報を持つ被写体が検出されるか否かを判定する。追尾する被写体が検出されなかった場合、ステップS510に進み、FAズーム制御部122は、被写体が検出されない状態で所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していなければ本フローを終了し、所定時間が経過した場合は図7AのステップS204に進んで再度被写体指定処理を行う。
一方、追尾する被写体が検出された場合、ステップS502に進む。ステップS502では、画面全体に対して基準被写体サイズの比率と、FAズーム枠300すなわちズームイン動作後の画角に対してステップS501にて検出された被写体が占める比率とを比較する。比較の結果、二つの比率の差が所定範囲内である場合、本フローを終了する。一方、二つの比率の差が所定範囲を超える場合、ステップS503に進む。ステップS503では、メモリ118に記憶されたズーム戻り位置を更新する。具体的には、ステップS511にて検出された被写体サイズが基準の被写体サイズよりも大きい場合、広角方向に所定量だけズーム戻り位置を変更するように更新する。一方、被写体サイズが基準の被写体サイズよりも小さい場合、望遠方向に所定量だけズーム戻り位置を変更するように更新する。そして、ステップS504に進む。ステップS504では、ステップS503にて更新したズーム戻り位置(第1のズーム位置)と同じ画角を示すようにFAズーム枠300の表示を更新し、ステップS505に進む。
ステップS505において、画面全体に対する基準の被写体サイズの比率と、更新されたズーム戻り位置を示すFAズーム枠300に対する被写体の比率との差が所定範囲以内であるか否かを判定する。ズーム戻り位置を所定量だけ更新してもFAズーム枠300に対する被写体の比率と基準の被写体の比率との差が所定範囲を超える場合、さらにズーム戻り位置を変更するようにステップS503、S504、S505の処理を繰り返す。一方、FAズーム枠300に対する被写体と基準の被写体の比率との差が所定範囲内の場合、本フローを終了する。
このように本実施例において、表示部109は、フレーミング支援ズームにおけるFAズームアウト動作を行い、ズームアウト開始時のズーム位置を示すFAズーム枠を表示する。そしてシステム制御部114(FAズーム制御部122)は、モードが手動探索モード(第2のモード)である場合、操作部117の操作に基づいてズーム戻り位置およびFAズーム枠の表示を変更する。一方、システム制御部114は、モードが自動追尾モード(第1のモード)である場合、被写体の検出結果に基づいて、ズームアウト動作を行い、所定倍率望遠側のズーム位置に対応するFAズーム枠を表示する。また、被写体の検出結果に基づいて、ズーム戻り位置およびFAズーム枠の表示を変更する。
以上の処理により、FAズームアウト動作後に被写体が近づいてくるなどして表示部109に表示される被写体の大きさが変わった場合でも、ズーム戻り位置を変更することが可能なため、フレーミング操作がより簡単になる。図10では、ズーム戻り位置を手動探索モード時にはズームレバーの手動操作によって変更し、自動追尾モード時には被写体サイズに応じて自動で変更する例を示したが、手動探索モード時の自動変更や自動追尾モード時の手動変更ができる構成としてもよい。
図7Bは、図6のステップS104(FAズーム終了判定)のフローチャートである。まずステップS212において、FAズーム開始判定にてステップS202またはステップS203にて記憶されたモードが自動追尾モードまたは手動探索モードのいずれであるかを判定する。モードが手動探索モードである場合、ステップS216に進む。モードが手動探索モードである場合、被写体探索状態である間はステップS200又はS210でFAズーム操作スイッチの押下を検出してから押下状態が継続している。
ステップS216において、FAズーム操作スイッチが長押し状態からスイッチが開放された否かを判定する。FAズーム操作スイッチが開放された(第3の操作)場合、ステップS213に進み、FAズームの終了が判定される。すなわちFAズーム制御部122は、手動探索モード(第2のモード)において、操作部117の押下が終了した場合、ズームイン動作を開始し、フレーミング支援ズームを終了する。一方、ステップS210でFAズーム操作スイッチが開放されていない場合、被写体探索状態が継続しているので、図10のステップS500に戻り、ズーム戻り位置変更のフローを繰り返す。
一方、ステップS212にてモードが自動追尾モードである場合、ステップS213に進む。ステップS213において、ステップS204にて指定された基準被写体情報と同じ特徴を持つ被写体、すなわち基準被写体が人物である場合には顔、モノである場合には対応する特徴色が検出されるか否かを判定する。追尾する被写体が検出されなかった場合、ステップS217に進む。一方、追尾する被写体が検出された場合、ステップS214に進む。ステップS214において、追尾する被写体の被写体追尾枠が図4(B)に示されるズームイン領域ZI(画像内の第2の領域)に包含されているか否かを判定する。ステップS214にて追尾枠(被写体)がズームイン領域ZIに包含されている、すなわち、画面中央付近でかつズーム戻り位置の画角内の被写体サイズとなるように被写体を捉えられている場合、ステップS215に進む。ステップS215において、FAズームの終了判定がなされると、図6のステップS105に進み、ズームイン動作が開始する。
一方、ステップS213で被写体が検出されなかった場合、FAズーム制御部122は、ステップS217で所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していなければ、FAズーム制御部122は、ステップS218でFAズーム操作スイッチが押下されたか否かを判定する。また、ステップS213で検出した被写体の被写体追尾枠がズームイン領域ZIに包含されていない場合(ステップS214でno)も、ステップS218でFAズーム操作スイッチの押下を判定する。ステップS218でFAズーム操作スイッチが押下されなければ図10のステップS500に戻り、ズーム戻り位置変更処理を繰り返す。そして、ステップS217で被写体が検出されない状態で所定時間が経過した場合、図7AのステップS204に進み、再度被写体指定処理を行う。ステップS218でFAズーム操作スイッチが押下された場合は、ステップS219に進む。
ステップS219では、FAズーム操作スイッチが押下されてから所定時間内に開放されたか否かを判定する。所定時間内にFAズーム操作スイッチが開放された場合、自動追尾モードがキャンセルされたとして、FAズーム機能を終了する。一方、所定時間経過後にスイッチが開放された場合、図7AのステップS202に進み、手動探索モードが記憶される。すなわち、本実施形態では、自動追尾モード中にFAズーム操作スイッチが所定時間以上押下された場合、FAモードを手動探索モードに変更する。
図9Bは、図6のステップS105(ズームイン動作)のフローチャートである。まずステップS408において、FAズーム制御部122は、記憶されたズーム位置(ズーム戻り位置)のデータをメモリ118から読み込む。続いてステップS409において、FAズーム制御部122は、被写体探索状態でのズーム状態が光学ズーム状態であるか否かを判定する。ズーム状態が光学ズーム状態である場合、光学ズームを優先してズームインを行うため、ステップS410に進む。一方、ズーム状態が電子ズーム状態である場合、電子ズームのみでズームインを行うため、ステップS412に進む。
ステップS410において、FAズーム制御部122は、ステップS408にて読み込んだズーム戻り位置のうち、光学ズームによるズームイン位置をCZ制御部119に設定する。続いてステップS411において、FAズーム制御部122は、CZ制御部119に対して、ステップS410にて設定された光学ズームによるズームイン位置までズームレンズ102を駆動するように指示する。そしてCZ制御部119は、ズームレンズ駆動部113を制御して、光学ズームでのズームイン動作を行う。
ステップS409にて被写体探索状態でのズーム位置が電子ズーム領域内であると判定された場合や、ステップS411での光学ズームでズームイン動作が行われた後、ステップS412に進む。ステップS412において、FAズーム制御部122は、さらに電子ズームによるズームインが必要か否かを判定する。電子ズームによるズームインが必要な場合、ステップS413に進む。一方、電子ズームによるズームインが不要な場合、撮影準備状態にして処理を終了する。
ステップS413において、FAズーム制御部122は、ステップS408にて読み込んだズーム戻り位置のうち、電子ズームによるズームイン位置を電子ズーム制御部120に設定する。続いてステップS414において、FAズーム制御部122は、電子ズーム制御部120に対して、ステップS413にて設定された電子ズームによるズームイン位置まで変倍処理を行うように指示する。そして電子ズーム制御部120は、電子ズームイン動作を行い、これによりズーム戻り位置へ復帰する。この動作が終了すると、撮影準備状態にしてズームイン動作は終了する。
(他の実施形態)
本発明の目的は以下のようにしても達成できる。すなわち、前述した各実施形態の機能を実現するための手順が記述されたソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムまたは装置に供給する。そしてそのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPU、MPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行する。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体およびプログラムは本発明を構成することになる。
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどが挙げられる。また、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等も用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行可能とすることにより、前述した各実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した各実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
更に、以下の場合も含まれる。まず記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う。
また、本発明はデジタルカメラのような撮影を主目的とした機器に限定されず、携帯電話、パーソナルコンピュータ(ラップトップ型、デスクトップ型、タブレット型など)、ゲーム機など、撮像装置を内蔵もしくは外部接続する任意の機器に適用可能である。従って、本明細書における「撮像装置」は、撮像機能を備えた任意の電子機器を包含することが意図されている。
本実施例によれば、自動または手動によるフレーミング支援ズームの実行を簡単に切り替え可能な撮像装置、撮像システム、撮像装置の制御方法、プログラム、および、記憶媒体を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
図6乃至図10において、自動追尾モードでは、ズームアウト動作を行った後、ズームイン動作を行う例を示しているが、ズームアウト動作だけを行うように構成してもよい。同様に、被写体が所定の領域内に収まった場合に、ズームアウト動作を行わず、所定量だけズームイン動作を行うように構成してもよい。また、適用シーンとして、静止画撮影のための画角合わせ中のみでなく、動画記録中の画角合わせの際に実施しても構わない。
またシステム制御部114(FAズーム制御部122)は、モードが自動追尾モードに設定されている状態で操作部117が第2の時間よりも長い時間だけ押下された場合、モードを自動追尾モードから手動探索モードに変更することもできる。