本発明は、一般に、対象における脊髄構造の種々のレベル、特に種々の後根(DR)、より詳細には種々の後根神経節(DRG)へ薬剤を送達するための装置、システム、および方法に関する。例えば、一態様は、例えば少なくとも1つのDRG等の少なくとも標的脊髄構造への薬剤、例えば製剤の直接送達のための装置に関し、ここで薬剤は薬剤放出モジュール内に貯蔵され、さらに薬剤送達エレメントを介して、標的構造まで、例えば少なくとも1つの標的DRGまで運ばれる。別の態様において、本発明は、例えばくも膜下腔内の空間および/または硬膜外の空間を介した少なくとも標的脊髄構造への薬剤、例えば製剤の直接送達のための装置に関する。
いくつかの実施形態において、装置、方法、およびシステムは、標的構造、例えばDRGの神経刺激等、直接的および特異的な電気刺激をDRGへの薬剤の送達と組み合わせて可能にするようにさらに構成することができる。
いくつかの実施形態において、DRGの電気刺激は、DRGへの薬剤の送達の時間的パターンと調和する時間的パターンにある。いくつかの実施形態において、装置は、後根神経節(DRG)である脊髄神経節への薬剤の送達を可能にするが一方、代替の実施形態において、装置は、例えば交感神経鎖の神経節への薬剤の送達等、交感神経系における神経根神経節への薬剤の送達を可能にする。以下の例は、DRGへの薬剤の送達単独の、またはDRGの電気刺激の時間的パターンとの組み合わせの特定の時間的パターンの実施形態を例証するが、本発明は、そのような実施形態に限定されない。また、DRGへ薬剤を送達するための送達装置も記述され、ここで送達装置は、DRGへの薬剤の送達と(例えば同時に)または断続的に、例えば実質的に同時に、薬剤の送達の前後に組み合わせたDRGの電気刺激を可能にするように構成される。異なる薬剤放出モジュール等の他のエレメントおよびパルス発生器を、DRGへの薬剤の送達単独での、または1つまたは複数の種々の脊髄レベルでのDRGの電気刺激と組み合わせたDRGへの薬剤の送達のための送達装置のモジュールの代わりにまたはそれに加えて使用してもよいことを正しく理解することができる。
本発明の装置、システム、および方法は、限定されないがDRG等の少なくとも1つの脊髄構造への薬剤の標的化された送達を可能にし、さらに、そのような所望の脊髄構造の標的化された治療を可能にする。従って、そのような単独でのまたは電気刺激と組み合わせた薬剤の標的化された送達は、望まれていない運動反応または影響を受けていない体の領域の望まれていない刺激等の有害な副作用を最小限にする標的化された治療を提供する。これは、DRGへ薬剤を直接送達することによって達成され、さらに、いくつかの実施形態において、他の構造の望まれていない神経調節を最小限にするまたは除外しながら状態と関連する標的構造を神経調節することによって達成される。例えば、これは、周囲もしくは近くの組織等の他の組織、前根の部分および治療に対して標的化されていない体の領域と関連する構造の部分の望まれていない刺激を最小限にするまたは除外しながら後根神経節、後根、後根進入部またはその一部分を刺激することを含んでもよい。そのような刺激は、典型的に、少なくとも1つの電極を表面上に有する少なくとも1つのリードを含むように適応された本明細書に開示される薬剤送達装置を用いて達成される。送達装置の遠位端は、薬剤放出のための出口ポート等の少なくとも1つの薬剤送達構造および少なくとも1つの電極を含む送達エレメントが標的DRG上、その近く、またはその周りに置かれるように、患者の構造を通って前進する。いくつかの実施形態において、リードおよび電極は、電極が他の構造の望まれていない刺激を最小限にするまたは除外することができるように寸法決定および構成される。他の実施形態において、刺激シグナルまたは他の態様は、他の構造の望まれていない刺激を最小限にするまたは除外するように構成される。加えて、他の組織の刺激も熟慮されることを正しく理解することができる。
本発明の実施形態は、直接的および特異的な神経刺激技術を可能にする新規の刺激システムおよび方法を提供する。例えば、DRGへ薬剤を送達するおよび神経根の神経節を同時に刺激する方法が提供され、当該方法は、例えば神経根の神経節またはDRGまたは脊髄等の標的脊髄構造の近くまたはそれに接して送達エレメントの電極を置くステップ、および薬剤を送達するステップを含み、さらに神経根の神経節を刺激するために電極を活性化するステップも含む。以下でより詳細に考察されるように、神経根の神経節は、いくつかの実施形態において後根神経節であってもよいが、他の実施形態において、神経根の神経節は、交感神経系における神経根の神経節または交感神経鎖の神経節等の他の神経節であってもよい。
本発明の別の態様は、電気刺激システムと組み合わされて標的DRG近くのくも膜下腔内の空間へ薬剤を送達する薬剤送達装置および使用方法を提供する。例えば、標的DRG近くのくも膜下腔内の空間へ薬剤を送達する、および、硬膜外の空間内に置かれた別の送達装置を使用して標的DRGを同時に刺激する方法が本明細書において提供される。このように、薬剤は、硬膜外に置かれた電極を活性化することとも協力してくも膜下腔内に送達される。
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において利用される特定の用語がここに集められる。他で述べられない限り、または文脈から暗に示されない限り、以下の用語および語句は、以下に提供される意味を含む。他で明白に述べられない限り、または文脈から明らかではない限り、以下の用語および語句は、用語または語句が、その属する技術分野において得た意味を除外しない。定義は、特定の実施形態を記述することを助けるために提供され、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるために、特許請求された本発明を限定するようには意図されない。他で規定されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の技能を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書に使用される場合「疼痛」という用語は、他で明確に言及されない限り、いかなる長さおよび頻度の疼痛も包含するように意図され、限定されないが急性疼痛、慢性疼痛、断続的疼痛等を含む。疼痛の理由は、同定可能であってもまたは同定できなくてもよい。同定可能である場合、疼痛の原因は、例えば悪性、悪性ではない、感染性、非感染性、または自己免疫性のものであり得る。特に関心があるのは、障害、疾患、または例えば慢性的および/もしくは持続性の疾患等の長期の治療を必要とする状態、もしくは治療が数日(例えば約3日から10日)から数週間(例えば約2週間または4週間から6週間)、数か月または数年から対象の残りの寿命を含むまでにわたる処置を含む状態と関連した疼痛の管理である。目下疾患または状態を患っていないがその影響を受けやすい対象は、例えば外傷手術に先立ち、本発明の装置および方法を使用した予防的な疼痛管理で利益を得ることもできる。本発明による治療を受け入れられる疼痛は、無痛の間隔と交互に長期の疼痛のエピソードを含むか、または重症度が変わる実質的に間断のない疼痛を含んでもよい。疼痛は、Hawthorn and Redmond, Pain: causes and managements(Blackwell Science編)に規定されるように、限定されないが侵害受容性疼痛、病的疼痛、神経障害性疼痛、体性疼痛、皮膚性疼痛、慢性疼痛症候群、関連痛、根性痛、突発痛または偶発的疼痛(incidence pain)、幻肢痛、難治性疼痛、および特発性疼痛を含む全てのタイプの慢性疼痛を含む。
「突発痛」という用語は、偶発的疼痛とも呼ばれ、基礎環境を「切り開く」短期間のより鋭く激しい疼痛または疼痛からの一定の不快感を意味する。突発痛は、運動、圧力、または治療の介入によって引き起こされ得る。
「侵害受容性疼痛」という用語は、同定可能な理由から生じる疼痛を意味する。
「病的疼痛」という用語は、同定可能な理由のために生じるかもしれない侵害受容性経路における活性のためまたは正常な感覚機構における混乱のために感じられる疼痛を意味する。病的疼痛は、通常、原因となる要因に対して不釣合いかつ不適当であり得、末梢感作および/または中央感作を含む神経可塑性のために本来の外傷より長く続き得る。
「特発性疼痛」という用語は、未知の原因からの疼痛もしくは明らかな根底にある理由を有さない疼痛、または根底にある理由と比較して度を超えた疼痛を意味する。特発性疼痛は、侵害受容性、神経障害性、または心因性でさえない。特発性疼痛は、心理的苦痛によって悪化する場合があり、TMJおよび線維筋痛等の疼痛性障害をすでに有する人々においてより一般的である。心因性疼痛のような特発性疼痛は、侵害受容性または神経障害性疼痛よりも治療するのがより困難である場合が多い。明らかな理由がなく背痛を有する人物は、特発性の背痛を有するとして診断することができる。
「慢性疼痛」という用語は、長期にわたる疼痛または理由と不釣合いな疼痛を意味する。慢性疼痛は、中枢または末梢神経系における変化と関連する病的疼痛であり得るか、または一定の刺激によるものであり得る。
「慢性疼痛症候群」という用語は、長期の疼痛によって誘発される症候群を意味し、ここで疼痛および疼痛に対する反応は、根底にある状態とはそれほど相関していない。いくつかの実施形態において、慢性疼痛を有する対象は、その個性、行動における変化および機能上の能力に対する変化を経験してもよい。
「関連痛」という用語は、疼痛の根源とは異なる領域において感じられる疼痛を意味する。関連痛は、一般的に、臓器および深部組織から筋肉および皮膚までに言及する。
「疼痛関連障害」という用語は、本明細書において使用される場合、対象が疼痛を経験するいかなる疾患、状態、または疾病も意味する。
「送達部位」という用語は、本明細書において使用される場合、薬剤または薬物が送達される体の領域を意味するように意図されている。送達部位は標的脊髄構造の近くにあり得、これは、送達部位が標的脊髄構造まで薬剤および/または電気刺激を送達するのに十分近くにまたは十分近くの位置にあることを意味し、さらに、送達部位は、限定されないが後根神経節(DRG)、後根、後根進入部、またのその一部分を含む。
「移植」または「移植する」もしくは「移植された」という用語は、本明細書において置換可能に使用され、さらに、例えば神経細胞の組織内への送達エレメントの遠位端の侵入等、組織内へのエレメントの侵入または挿入を意味する。いくつかの態様において、移植は、体内の空洞内へ装置またはポンプを挿入することも意味し得る。
「近く」という用語は、本明細書において使用される場合、別のエレメントまたは解剖学的構造もしくは組織に接近してもしくはその接近した位置に、または別のエレメントまたは解剖学的構造もしくは組織と接触してエレメントを置くことを意味する。
「薬物送達装置」または「薬剤送達装置」という用語は、例えば対象における所望の標的領域または標的構造へ薬剤または製剤を運ぶ送達エレメント等、埋め込み型の薬剤放出モジュールおよび手段を含む。
本明細書において「制御された薬物ポンプ装置」とも呼ばれる「薬物放出モジュール」または「薬剤放出モジュール」という用語は、本発明の方法に従った疼痛管理に対する薬剤または製剤の貯蔵および制御された放出のために対象における皮下または所望の位置に置くことに適したいかなる装置も意味する。ポンプ内に含有された薬剤もしくは薬物または他の所望の物質は、制御された様式(例えば、放出の速度、タイミング)で放出され、それは、所定のプログラムまたは治療プロトコルに従って装置自体によって制御されるかまたは決定され、今度は、対象とする使用者または臨床医によって制御することができる。いくつかの実施形態において、薬剤もしくは薬物または他の物質の放出は、例えば拡散および浸透圧濃度が制御された様式でポンプからの薬剤または薬物の放出を制御する等、環境的使用に従って薬剤が放出される浸透圧ポンプであり得る。「薬物放出モジュール」または「薬剤放出モジュール」という用語は、例えば浸透圧ポンプ、生物分解性移植片、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、沸騰性ポンプ(effervescent pump)、圧電ポンプ、侵食ベースのシステム、もしくは電気機械システム等の拡散性、侵食可能、または対流性システムを含むいかなる作用の機構を有するいかなる装置も包含する。
「制御された薬物ポンプ装置」という用語は、中に含有された薬物または他の所望の物質の放出(例えば、放出の速度、タイミング)が使用の環境によってではなく装置自体によって制御されるかまたは決定されるいかなる装置も包含するように意図される。
「パターン化された」または「時間的な」という用語は、薬物送達および/または電子刺激の状況において使用される場合、(例えば、ボーラス投与と関連する期間以外の)予め選択された期間にわたったあるパターン、一般的には実質的に規則的なパターンにおける薬剤および/または電気刺激の送達を意味する。「パターン化された」または「時間的な」薬物送達という用語は、増加する、減少する、実質的に一定の、もしくは拍動性の速度または速度の範囲(例えば、単位時間あたりの薬物の量、または単位時間あたりの製剤の容量)での薬物の送達を包含するよう、さらに、連続もしくは実質的に連続した、または長期にわたる送達を含有するように意図される。
「実質的に連続した」とは、例えば「実質的に連続した皮下注射」または「実質的に連続した送達」の状況において使用される場合、(例えば、ボーラス投与と関連する期間以外の)予め選択された薬物送達の期間中実質的にとぎれない様式での薬剤または薬物の送達を意味するように意図される。さらに、「実質的に連続した」薬物送達は、予め選択された薬物送達の期間中実質的にとぎれない実質的に一定の予め選択された速度又は速度の範囲(例えば、単位時間あたりの薬物の量、または単位時間あたりの製剤の容量)での薬物の送達も包含することができる。
「全身送達」という用語は、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、脂肪内組織、リンパ内等の体循環内に薬物が入るのを許可する送達の非経口的経路全てを包含するように意図される。
「遮断する」もしくは「遮断」または「ブロッキング」という用語は、本明細書において置換可能に使用され、さらに、活動電位の伝導または伝播および標的神経の軸索に沿った神経インパルスの伝達の部分的または完全な阻害、崩壊、予防または阻止を意味する。「遮断する」もしくは「遮断」または「ブロッキング」という用語は、例えばグリア細胞および星状細胞等の非神経細胞型に沿った電気シグナルの遮断も意味し、ならびに、細胞表面マーカーからの細胞内シグナル伝達および細胞体サイズの増加の阻害も意味する。
「神経アブレーション」または「神経損傷(nerve lesioning)」という用語は、本明細書において使用される場合、神経によって通常媒介される感覚機能の弱化もしくは消滅、または1週間、2週間、または1か月を超えて続く標的神経によって刺激された体組織の弱さもしくは麻痺によって明示されるように、標的神経における活動電位の伝導または伝播が可逆的または永久的に弱められるかまたは消滅される神経遮断を生じるように、標的神経の1つまたは複数の軸索の破壊を意味する。
本明細書において使用される場合、「神経変性疾患または障害」という用語は、神経細胞恒常性に影響を与える、例えば神経細胞の変性または減少を生じるいかなる疾患障害または状態も含む。神経変性疾患は、神経細胞すなわち運動神経細胞または脳神経細胞の発達が異常である状態、ならびに、正常な神経細胞の機能を失う状態を含む。そのような神経変性障害の例として、アルツハイマー病、ならびに、前頭側頭型認知症、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉型認知症(frontotemporal lobe dementia)、淡蒼球橋黒質変性(pallidopontonigral degeneration)、進行性核上性麻痺、多系統タウオパシー、初老期認知症を伴う多系統タウオパシー、Wilhelmsen-Lynch疾患、脱抑制-認知症-パーキンソニズム-筋委縮症(amytrophy)の複合体、ピック病またはピック病様認知症、皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、フリードライヒ運動失調症、レビー小体病、脊髄性筋委縮症、および17番染色体に連鎖したパーキンソニズム等の他のタウオパシーが挙げられる。
本明細書において使用される場合、「炎症」という用語は、カスパーゼ1もしくはカスパーゼ5の活性化、サイトカインIL-IおよびIL-8の生成、ならびに/または、そのように生成されたサイトカインの作用の結果として生じる関連した下流の細胞事象、例えば熱、流体貯留、腫脹、膿瘍形成、および細胞死を生じるいかなる細胞のプロセスも意味する。本明細書に使用される場合、「炎症」という用語は、急性期反応(すなわち、炎症性プロセスが活性である反応)も慢性期反応(すなわち、遅い進行および新たな結合組織の形成によって標識される反応)も意味する。急性および慢性の炎症は、関係する細胞型によって区別することができる。急性の炎症は、多形核好中球を含むことが多いが一方、慢性の炎症は、通常、リンパ組織球性および/または肉芽腫性の反応によって特徴づけられる。
本明細書において使用される場合、「炎症」という用語は、特異的防御システムの反応も非特異的防御システムの反応も含む。特異的防御システム反応は、抗原(おそらく自己抗原を含む)に対する特異的免疫システム反応応答である。非特異的防御システム反応は、免疫記憶する能力を欠いている白血球によって媒介される炎症応答である。そのような細胞は、顆粒球、マクロファージ、好中球、および好酸球を含む。特定のタイプの炎症の例として、限定されないがびまん性炎症、病巣性炎症、クループ性炎症、間質性炎症、閉塞性炎症、実質性炎症、反応性炎症、特異性炎症、中毒性炎症、および外傷性炎症が挙げられる。
「薬剤」という用語は、本明細書において使用される場合、限定されないが小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオン等のいかなる化合物または物質も意味する。「薬剤」は、限定されることなく合成および自然に発生するタンパク質性ならびに非タンパク質性の成分を含むいかなる化学的な成分または部分でもあり得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であり、限定されることなくタンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにその改変および組み合わせ等を含む。特定の実施形態において、薬剤は、化学的な部分を有する小分子である。例えば、化学的な部分は、マクロライド、レプトマイシン、および関連する自然生産物またはその類似体を含めた未置換または置換されたアルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分を含む。化合物は、所望の活性および/もしくは特性を有するとして周知であり得るか、または、多様な化合物のライブラリから選択することができる。
本明細書において使用される場合、「小分子」という用語は、限定されないがペプチド、ペプチド模倣薬、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物(例えば、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を含み得る化学薬剤を意味する。
「薬物」または「化合物」という用語は、本明細書において使用される場合、疾患もしくは状態を治療または予防または制御するために対象に投与される化学成分もしくは生物学的製剤、または化学成分もしくは生物学的製剤の組み合わせを意味する。化学成分または生物学的製剤は、必ずしもそうではないが低分子量の化合物であることが好ましいが、より大きな化合物、例えば、限定されることなくタンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにその改変および組み合わせを含む核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であってもよい。
本明細書において使用される場合、「イオンチャネル」という用語は、脂質二重層を横切り電気化学勾配を下る特定のイオンに対する親水性チャネルを示す膜貫通ポアを意味する。生細胞には300種類を超えるイオンチャネルがある(Gabashviliら、「Ion-channel gene expression in the inner ear」、J. Assoc. Res. Otolaryngol、8 (3): 305〜28頁(2007))。イオンチャネルは、そのイオン特異性、生物学的な機能、調整、または分子構造、およびゲーティングの性質に基づいて分類される。イオンチャネルの例は、電位開口型イオンチャネル、ギャップ結合イオンチャネル、リガンド開口型イオンチャネル、ATP開口型イオンチャネル、熱活性化イオンチャネル、細胞内イオンチャネル、環状ヌクレオチド開口型チャネルまたはカルシウム活性化イオンチャネル等の細胞内リガンドによって開口されるイオンチャネルである。本明細書において使用される場合、「開口型イオンチャネル」という用語は、そこを通るイオンの通過が分析物の存在次第であるイオンチャネルとして定義される。本明細書において使用される場合、「電位開口型イオンチャネル」という用語は、本明細書において使用される場合、そこを通るイオンの通過がチャネルの電圧活性化の存在次第であるイオンチャネルを意味し、ここでイオンチャネルに対する特定の閾値レベルより上の活性化は、イオンがイオンチャネルを通過するのを可能にする。本明細書において使用される場合、「イオンチャネル」は、膜を横切ってイオンおよび他の帯電した分子を運ぶ輸送体も包含し、限定されないがNa+/K+チャネル、Na+/Ca2+および他のイオン輸送体を含む。
本明細書において使用される場合、「イオンチャネルモジュレーター」という用語は、イオンチャネルの少なくとも1つの活性を調節する化合物、ならびに、例えば限定されないが、イオンチャネルの開く頻度および/もしくは開く時間を増加させるまたは減少させる薬剤、あるいは、活性化(開放)もしくは非活性化(閉鎖)の通常の閾値からイオンチャネルの開放および/もしくは閉鎖の感度を増加させるならびに/または低下させる薬剤を意味する。いくつかの実施形態において、イオンチャネルモジュレーターは、種々のイオンがイオンチャネルに入るのを可能にまたは予防するイオンチャネルの選択性を変える薬剤、ならびに、種々の受容体活性化によってイオンチャネルの活性化を変える(増加させるまたは減少させる)薬剤である。「イオンチャネルモジュレーター」という用語は、本明細書において使用される場合、チャネルポア自体と相互作用する、または、チャネル複合体上の部位と相互作用することによってチャネルのアロステリックなモジュレーターとして作用し得る薬剤を含むように意図される。「イオンチャネルモジュレーター」という用語は、本明細書において使用される場合、間接的にイオンチャネルの活性を調節する薬剤を含むようにも意図される。「間接的に」とは、イオンチャネルとのモジュレーターの相互作用に関して使用される場合、イオンチャネルモジュレーターがイオンチャネル自体と直接相互作用しない、すなわち、イオンチャネルモジュレーターは媒介物を介してイオンチャネルと相互作用するという意味である。従って、「間接的に」という用語は、イオンチャネルと結合するまたは相互作用するためにイオンチャネルモジュレーターが別の分子を必要とする状況も包含する。
本明細書において使用される場合、「調節する」という用語は、イオンチャネルまたは受容体、例えば細胞表面受容体の少なくとも1つの生物学的活性における変化もしくは交互変化を意味する。調節は、イオンチャネルまたは受容体の活性の増加もしくは減少、結合特徴の変化、あるいは、イオンチャネルまたは受容体の生物学的、機能的、もしくは免疫学的特性におけるいかなる他の変化であってもよい。調節は、例えば、減少または増加した活性化の閾値、活性化もしくは非活性化に対する増加または減少した感度、それぞれイオンチャネルおよび/または受容体の特定のイオンおよび/またはリガンド(例えば、内因性もしくは外因性リガンドまたは生物製剤)に対する増加または減少した選択性を含み得る。調節は、イオンチャネルまたは受容体の作用モードにおける変化も含むことができ、例えば、薬剤は、イオンチャネルを調節して、細胞内にイオンを流入するのではなくイオンを流出する、またあるいは、イオンチャネルを通して送られるイオンを変えることができる。本明細書において記述される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネルモジュレーターは、イオンチャネルを貫くイオンの通過を調節する。
「鎮痛剤」という用語は、本明細書において使用される場合、疼痛を和らげるために使用される薬物の多様な群のいかなるメンバーも意味する。鎮痛薬は、限定されないがサリチラート、モルヒネ等の麻酔剤、および、トラマドール等の麻酔特性を有する合成薬品等、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。通常は鎮痛剤とみなされない他の種類の薬物は、神経障害性疼痛症候群を治療するために使用され、これらは、三環系抗鬱剤および抗痙攣薬を含む。理論に束縛されるものではないが、アスピリン、ナプロキセン、およびイブプロフェンを含むNSAIDは、疼痛を和らげるだけでなく、熱を下げおよび炎症も減少させる。アヘン剤、ならびに、(商標名DAZIDOX(商標)、ETH-OXYDOSE(商標)、ENDOCODONE(商標)、OXYIR(商標)、OXYCONTIN(商標)、OXYFAST(商標)、PERCOLONE(商標)、ROXICODONE(商標)としても知られる)オキシコドン、および(商標名VICODIN(商標)、ANEXSIA(商標)、ANOLOR DH5(商標)、BANCAP HC(商標)、ZYDONE(商標)、DOLACET(商標)、LORCET(商標)、LORTAB(商標)、およびNORCO(商標)としても知られる)ヒドロコドン/パラセタモール(またはアセトアミノフェン)混合物を含むオピオイドを含む麻薬性鎮痛薬は、末梢および中枢神経系における特定のオピオイド受容体を介して大いに作用しかつ疼痛の知覚(痛覚)を変える。鎮痛剤は、副鼻腔関連製剤のためのプソイドエフェドリン等の血管収縮薬と、または、アレルギー患者のための抗ヒスタミン薬と組み合わせて使用することができる。
「アゴニスト」という用語は、本明細書において使用される場合、アゴニスト剤の標的であるタンパク質、そのポリペプチド部分、またはポリヌクレオチドの発現および/もしくは生物学的活性を増加させる能力を持ついかなる薬剤または成分も意味する。従って、アゴニストは、転写、翻訳、転写後または翻訳後のプロセシングを増加させるように機能することができる、またはそれ以外に、受容体を活性化するようにリガンドとして、もしくは、他の形態の直接もしくは間接的な作用を介して機能する等、タンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチドの活動をいかなる方法でも活性化するように機能することができる。いくつかの実施形態において、アゴニストは、アゴニストの非存在下における量と比較して統計的に有意な量の分だけ標的タンパク質の生物学的活性を増加させる薬剤を意味する。いくつかの実施形態において、アゴニストは、標的タンパク質に対するアゴニストの効果が臨床上重要な変化を成果において生じるように、アゴニストの非存在下における量と比較して臨床上統計的に有意な量の分だけ標的タンパク質の生物学的活性を増加させる薬剤を意味する。いくつかの実施形態において、「アゴニスト」という用語は、少なくとも約5%分だけ標的タンパク質の生物学的活性を増加させる薬剤を意味することができ、例えば、標的イオンチャネルに対するアゴニストは、少なくとも5%または5%を超える分だけDRG上に発現されるイオンチャネルの活性を増加させる。例としてのみ、例えばナトリウムチャネル等のイオンチャネルを活性化するアゴニストは、ナトリウムチャネルを開くもしくはナトリウムチャネルの活性化の閾値を低下させる、または、ナトリウムチャネルに伴うベータサブユニットを促進する補助因子またはリガンドとして機能するいかなる成分または薬剤でもあり得るか、またあるいは、(ナトリウムチャネルが電位開口型ナトリウムチャネルである場合に)ナトリウムチャネルと相互作用してその開放を増加させるまたはその活性化の閾値を低下させるいかなる薬剤でもあり得る。アゴニストは、例えば、核酸、ペプチド、またはいかなる他の適した化学化合物もしくは分子、あるいは、これらのいかなる組み合わせでもあり得る。加えて、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの活動を間接的に活性化することにおいて、アゴニストは、細胞分子の活性に影響を与え、今度は制御因子またはタンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチド自体として作用し得ることが理解される。同様に、アゴニストは、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドによる制御または調節にそれ自体をさらす分子の活性に影響を与え得る。アゴニストは、本明細書において「活性化剤」とも呼ばれる。
「アンタゴニスト」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質、そのポリペプチド部分、またはポリヌクレオチドの発現および/もしくは生物学的活性を阻害する能力を持ついかなる薬剤または成分も意味する。従って、アンタゴニストは、転写、翻訳、転写後または翻訳後のプロセシングを予防するように機能することができ、またはそれ以外に、受容体を活性化するようにリガンドとして、もしくは、他の形態の直接もしくは間接的な作用を介して機能する等、タンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチドの活動をいかなる方法でも阻害するように機能することができる。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、アンタゴニストの非存在下における量と比較して統計的に有意な量の分だけ標的タンパク質の生物学的活性を減少させる薬剤を意味する。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、標的タンパク質に対するアンタゴニストの効果が臨床上重要な変化を成果において生じるように、アンタゴニストの非存在下における量と比較して臨床上統計的に有意な量の分だけ標的タンパク質の生物学的活性を減少させる薬剤を意味する。いくつかの実施形態において、「アンタゴニスト」は、少なくとも約5%分だけ標的タンパク質の生物学的活性を減少させることができる薬剤を意味し、例えば、標的イオンチャネルに対するアンタゴニストは、少なくとも5%または5%を超える分だけDRG上に発現されるイオンチャネルの活性を減少させる。例としてのみ、ナトリウムチャネルを阻害するアンタゴニスト、例えば、ナトリウムチャネル遮断剤は、ナトリウムチャネルのチャネルポアを競合的に遮断するとして機能するいかなる成分または薬剤でもあり得るか、またあるいは、(例えば、ナトリウムチャネルが電位開口型ナトリウムチャネルである場合に)チャネルの開放を阻害するまたは活性化の閾値を増加させるためにポアではないナトリウムチャネルの領域にて相互作用するナトリウムチャネルの非競合的阻害剤であるいかなる薬剤でもあり得る。アンタゴニストは、例えば、限定されないが核酸、ペプチド、またはいかなる他の適した化学化合物もしくは分子、あるいは、これらのいかなる組み合わせ等、いかなる薬剤でもあり得る。加えて、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの活動を間接的に減じることにおいて、アンタゴニストは、細胞分子の活性に影響を与え、今度は制御因子またはタンパク質、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチド自体として作用し得ることが理解される。同様に、アンタゴニストは、タンパク質、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドによる制御または調節にそれ自体をさらす分子の活性に影響を与え得る。
「治療する」という用語は、本明細書において使用される場合、治療されている対象の疾患経過を変えることを意味する。治療の治療効果は、限定されることなく疾患の発生または再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病的事象の減少、疾患進行の速度の低下、疾患状態の改善または一時的緩和、および寛解または改善された予後を含む。
「疼痛管理または治療」という用語は、一般的に、主観的基準、客観的基準、またはその両方によって決定される、対象をより快適にするような疼痛の軽減、抑制、または鎮静を表現するためにここでは使用される。一般に、疼痛は、医療従業者が患者の年齢、文化背景、環境、および、疼痛に対する個人の主観的反応を変えるとして知られる他の心理学的背景の要因を考慮にいれ、患者の報告書によって主観的に評価される。
「治療的に有効な量」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば対象によって経験される疼痛の感覚における重要な減少等、治療後の所望の治療効果もしくは利益、または所望の臨床結果を促進するのに有効な薬剤の量または薬剤の送達の速度を意味する。精密な所望の治療効果(例えば疼痛寛解の程度および和らいだ疼痛の根源等)は、治療されることになる状態、投与されることになる薬剤および/または製剤、ならびに、電気刺激と組み合わせた効果、および当業者によって正しく理解される種々の他の要因によって変わる。一般に、本発明の方法は、種々の同定可能または同定できない病因のいずれかに関連し得る疼痛を患う対象における疼痛の抑制または鎮静を含む。「治療的に有効な量」という語句は、本明細書において使用される場合、例えば、いかなる医療にも適用できる道理にかなったベネフィット/リスク比にて動物内の細胞の少なくとも部分母集団においていくらかの所望の治療効果を生じるのに有効であるイオンチャネルモジュレーター等の薬剤を含む化合物、材料、または組成物の量を意味する。例えば、対象によって経験される疼痛において臨床上意味のあるまたは統計的に有意で重要な減少を生じるのに十分な対象に投与されるイオンチャネルモジュレーターの量である。治療的に有効な量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の疾患、選択される賦形剤、および、例えばDRGの電気刺激と組み合わせた薬剤の送達の効果等、組み合わせ治療の可能性に応じて変わる。
治療的に有効な量の決定は、当業者の能力内にはっきりとある。一般に、治療的に有効な量は、対象の病歴、年齢、状態、性別だけでなく、対象の医学的状態の重症度およびタイプ、ならびに、他の薬学的に活性な薬剤の投与と共に変わり得る。さらに、治療的に有効な量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の疾患、投与の経路、選択される賦形剤、および組み合わせ治療の可能性に応じて変わる。
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書において使用される場合、本発明の薬学的組成物の有効成分(例えば本発明の化合物)と適合性のある(および好ましくはそれを安定化する能力を持つ)、および、治療されることになる対象にとって有害ではない担体および媒体を意味する。例えば、本発明の化合物と特定のより溶性の複合体を形成する可溶化剤を、化合物の送達のための薬学的賦形剤として利用することができる。適した担体および媒体は、当業者には知られている。「賦形剤」という用語は、本明細書において使用される場合、全てのそのような担体、アジュバント、希釈剤、溶媒、または他の不活性添加剤を包含する。適した薬学的に許容される賦形剤は、限定されないが水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性の高いパラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトロエトラル脂肪酸エステル(petroethral fatty acid ester)、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を含む。本発明の薬学的組成物は、殺菌することもでき、さらに所望であれば、本発明の活性化合物と有害には反応しない、例えば潤滑油、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤、および/または芳香族物質等の補助的薬剤と混合することができる。
従って、本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の酸および塩基性基から形成された塩である。例証となる塩は、限定されないが硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩、糖酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモエート塩を含む。
「薬学的に許容される塩」という用語は、カルボン酸官能基等の酸性の官能基、および、薬学的に許容される無機または有機塩基を有する本発明の化合物から調製される塩も意味する。適した塩基は、限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウム等のアルカリ金属の水酸化物、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アルミニウムおよび亜鉛等の他の金属の水酸化物、アンモニアおよび未置換またはヒドロキシで置換されたモノ-、ジ-、もしくはトリアルキルアミン等の有機アミン、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N-メチル、N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ-、ビス-、もしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン等のモノ-、ビス-、もしくはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、N,N,-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン等のN,N,-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、N-メチル-D-グルカミン、ならびに、アルギニン、リジン等のアミノ酸を含む。他の薬学的に許容される塩は、the Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection, and Use(P. Heinrich Stahl and C. Wermuth編、Verlag Helvetica Chica Acta, Zurich, Switzerland(2002))に記載されている。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、堅実な医学的判断(sound medical judgment)の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症はなく、道理にかなったベネフィット/リスク比に相応した、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部まで対象の化合物を運ぶもしくは輸送することに関与する液体もしくは固体の注入剤、希釈剤、賦形剤、(例えば、潤滑油、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸等の)製造援助(manufacturing aid)、または溶媒封入材料等の薬学的に許容される材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、他の製剤の成分と適合性があるおよび患者に害を与えないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例は、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖、(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプン等のデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、および酢酸セルロース等のセルロースおよびその誘導体、(4)トラガント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク等の平滑剤、(8)カカオバターおよび坐薬ワックス等の賦形剤、(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油等の油、(10)プロピレングリコール等のグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG)等のポリオール、(12)エチルオレエートおよびエチルラウレート等のエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質不含有水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ酸無水物、(22)ポリペプチドおよびアミノ酸等の充填剤、(23)血清アルブミン、HDL、およびLDL等の血清成分、(22)エタノール等のC2〜C12アルコール、ならびに(23)製剤においても存在し得る医薬製剤、湿潤剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、香料、防腐剤、および酸化防止剤に利用される他の非毒性の適合性のある物質を含む。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」等の用語は、本明細書において置換可能に使用される。
「対象」という用語は、「患者」と本明細書において置換可能に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長目の動物、さらにより好ましくはヒトを意味する。哺乳動物は、限定されることなく、ヒト、霊長目の動物、野生動物、野にいる動物、家畜、スポーツアニマル、およびペットを含む。哺乳動物は、限定されることなくヒト、霊長目の動物、野生動物、齧歯類、野にいる動物、家畜、スポーツアニマル、およびペットを含む。霊長目の動物は、チンパンジー、例えばアカゲザル等のカニクイザル(cynomologous monkey)、クモザル、およびマカクを含む。齧歯類は、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターを含む。家畜および狩猟動物は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、例えばイエネコ等のネコ科、例えばイヌ、キツネ、オオカミ等のイヌ科、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ等の鳥類、ならびに、例えばマス、ナマズ、およびサケ等の魚類を含む。「患者」および「対象」という用語は、本明細書において置換可能に使用される。対象は、雄性または雌性であり得る。対象は、疼痛等の状態を患っているもしくは疼痛関連障害を有していると前もって診断または同定された対象であり得る。対象は、例えば慢性疼痛または疼痛関連障害等の疼痛に対して目下治療されている対象でもあり得る。加えて、本明細書において記述される方法および組成物を使用して、家畜化された動物および/またはペットを治療することができる。
本明細書において使用される場合、「プロドラッグ」は、いくつかの化学的または生理学的プロセス(例えば、酵素学的プロセスおよび代謝的加水分解)を介して、S-α-メチル-ヒドロ桂皮酸またはR-α-メチル-ヒドロ桂皮酸に変えることができる化合物を意味する。プロドラッグは、対象に投与される時は不活性、すなわちエステルであり得るが、in vivoで活性化合物(例えば、S-α-メチル-ヒドロ桂皮酸またはR-α-メチル-ヒドロ桂皮酸)に変えられ、例えば加水分解によって遊離のカルボン酸または遊離のヒドロキシルに変えられる。プロドラッグ化合物は、生物における溶解性、組織適合性、または遅延的解放の利点を提供することが多い。「プロドラッグ」という用語は、そのようなプロドラッグが対象に投与された場合にin vivoで活性化合物を放出するいかなる共有結合された担体も含むようにも意図される。活性化合物のプロドラッグは、親活性化合物に対するルーチン的な操作またはin vivoで修飾が切断される方法で活性化合物内に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基がいかなる基にも結合される化合物を含み、活性化合物のプロドラッグが対象に投与される場合に、切れて遊離のヒドロキシ基、遊離のアミノ基、または遊離のメルカプト基をそれぞれ形成する。プロドラッグの例は、限定されないが、活性化合物等におけるアルコールのアセテート、ホルメート、およびベンゾアート誘導体、または、アミン官能基のアセトアミド、ホルムアミドおよびベンズアミド誘導体を含む。Harper, "Drug Latentiation" in Jucker編、Progress in Drug Research 4:221〜294頁(1962); Morozowichら、"Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design" in E. B. Roche編、Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs, APHA Acad. Pharm. Sci. 40 (1977); Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application, E. B. Roche編、APHA Acad. Pharm. Sci. (1987); Design of Prodrugs, H. Bundgaard, Elsevier (1985); Wangら、"Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug" in Curr. Pharm. Design. 5(4):265〜287頁(1999); Paulettiら、(1997) Improvement in peptide bioavailability: Peptidomimetics and Prodrug Strategies, Adv. Drug. Delivery Rev. 27:235〜256頁; Mizenら、(1998) "The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of (3-Lactam antibiotics," Pharm. Biotech. ll,:345〜 365頁; Gaignaultら、(1996) "Designing Prodrugs and Bioprecursors I. Carrier Prodrugs," Pract. Med. Chem. 671〜696頁; Asgharnejad, "Improving Oral Drug Transport", in Transport Processes in Pharmaceutical Systems, G. L. Amidon, P. I. Lee and E. M. Topp編、Marcell Dekker, p. 185〜218頁(2000); Balantら、"Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration", Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet, 15(2): 143〜53頁(1990); Balimane and Sinko, "Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues", Adv. Drug Delivery Rev., 39(1-3): 183〜209頁(1999); Browne, "Fosphenytoin (Cerebyx)", Clin. Neuropharmacol. 20(1): 1〜12頁(1997); Bundgaard, "Bioreversible derivatization of drugs-principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs", Arch. Pharm. Chemi 86(1): 1〜39頁(1979); Bundgaard H. "Improved drug delivery by the prodrug approach", Controlled Drug Delivery 17: 179〜96頁(1987); Bundgaard H. "Prodrugs as a means to improve the delivery of peptide drugs",Arfv. Drug Delivery Rev. 8(1): 1〜38頁(1992); Fleisherら、"Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs", Arfv. Drug Delivery Rev. 19(2): 115〜130頁(1996); Fleisherら、"Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting", Methods Enzymol. 112 (Drug Enzyme Targeting, Pt. A): 360〜81頁(1985); Farquhar Dら、"Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups", Pharm. Sci, 72(3): 324〜325頁(1983); Freeman Sら、"Bioreversible Protection for the Phospho Group: Chemical Stability and Bioactivation of Di(4-acetoxy-benzyl) Methylphosphonate with Carboxyesterase," Chem. Soc, Chem. Commun., 875〜877頁(1991); Friis and Bundgaard, "Prodrugs of phosphates and phosphonates: Novel lipophilic alphaacyloxyalkyl ester derivatives of phosphate- or phosphonate containing drugs masking the negative charges of these groups", Eur. J. Pharm. Sci. 4: 49〜59頁(1996); Gangwarら、"Pro-drug, molecular structure and percutaneous delivery", Des. Biopharm. Prop. Prodrugs Analogs, [Symp.] Meeting Date 1976, 409〜21頁(1977); Nathwani and Wood, "Penicillins: a current review of their clinical pharmacology and therapeutic use", Drugs 45(6): 866〜94頁(1993); Sinhababu and Thakker, "Prodrugs of anticancer agents", Adv. Drug Delivery Rev. 19(2): 241〜273頁(1996); Stellaら、"Prodrugs. Do they have advantages in clinical practice?", Drugs 29(5): 455〜73頁(1985); Tanら、"Development and optimization of anti-HIV nucleoside analogs and prodrugs: A review of their cellular pharmacology, structure-activity relationships and pharmacokinetics", Adv. Drug Delivery Rev. 39(1-3): 117〜151頁(1999); Taylor,"Improved passive oral drug delivery via prodrugs", Adv. Drug Delivery Rev., 19(2): 131〜148頁(1996); Valentino and Borchardt, "Prodrug strategies to enhance the intestinal absorption of peptides", Drug Discovery Today 2(4): 148〜155頁(1997); Wiebe and Knaus, "Concepts for the design of anti-HIV nucleoside prodrugs for treating cephalic HIV infection", Adv. Drug Delivery Rev.: 39(1-3):63〜80頁(1999); Wallerら、"Prodrugs", Br. J. Clin. Pharmac. 28: 497〜507頁(1989)を参照。
本明細書に記述される態様のいくつかの実施形態において、当該方法は、本明細書に記述されるシステム、装置、および方法を用いた治療の前に、疼痛または疼痛関連障害を有する対象を診断するステップをさらに含む。慢性疼痛、神経障害性および炎症性の疼痛等の疼痛を診断する方法は、当技術分野においてよく知られている。
いくつかの実施形態において、当該方法は、本明細書に記述されるシステム、装置、および方法を用いた治療の前に、慢性疼痛等の疼痛を有するとして同定される対象を選択するステップをさらに含む。
本明細書で使用される「減少する(decrease)」、「減らす(reduce)」、「減少(reduction)」または「抑制する(inhibit)」という用語はすべて、一般には統計的に有意な量の減少を意味する。しかし、誤解を避けるために、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」または「減少する(decrease)」または「抑制する(inhibit)」は、基準レベルと比べた場合、少なくとも5%または少なくとも10%の減少、例えば、基準レベルと比べた場合、少なくとも約5%もしくは約10%もしくは約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または100%までおよびこれを含む減少(たとえば、基準試料と比べた不在レベル)、または10〜100%間の任意の減少を意味する。
本明細書で使用される「増加する(increase)」、または「亢進する(enhance)」または「活性化する(activate)」という用語はすべて、一般には統計的に有意な量の増加を意味する。しかし、何らかの誤解を避けるために、用語「増加した(increased)」、「増加する(increase)」または「亢進する(enhance)」または「活性化する(activate)」は、基準レベルと比べた場合、少なくとも約5%もしくは少なくとも10%の増加、例えば、基準レベルと比べた場合、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは100%までおよびこれを含む増加、もしくは10〜100%間の任意の増加、または基準レベルと比べた場合、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍増加、もしくは2倍から10倍間の任意の増加もしくはそれよりも多い増加を意味する。
用語「統計的に有意な」または「有意に」とは、統計的有意性のことであり、一般にはもう一方の値と比べた2つの標準偏差(2SD)を意味する。前記用語は、違いが存在するという統計的証拠のことである。その決定はp-値を使用して行われることが多い。
本明細書で使用されるように、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、本発明に不可欠であるが不可欠であろうとそうでなかろうと特定されていないエレメントを包含することに開かれている組成物、方法およびそのそれぞれの構成成分に関連して使用される。
本明細書で使用されるように、用語「基本的にからなる」とは、所定の実施形態に必要なエレメントのことである。前記用語は、本発明のその実施形態の基本的および新規のまたは機能的特徴に実質的に影響を与えない追加のエレメントの存在を容認する。
用語「からなる」とは、実施形態のその記載に列挙されていないいかなるエレメントも含まない本明細書に記載される組成物、方法およびそのそれぞれの構成成分のことである。
本明細書および添付されている特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈が他の方法ではっきりと指示していなければ、複数の参照を含む。したがって、例えば、「その(the)方法」への言及は、本明細書に記載されているおよび/または本開示を読めば当業者には明らかになる等の種類の、1つまたは複数の方法および/またはステップを含む。
操作例における以外では、または他の方法で指示されている場合、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての例において用語「約(about)」に修飾されていると理解されるべきである。百分率に関連して使用される場合の用語「約(about)」は±1%を意味することが可能である。
本出願および特許請求の範囲では、単数形の使用は、他の方法で具体的に記述されなければ、複数形を含む。さらに、「または(or)」の使用は、他の方法で記述されなければ、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」等の他の形の使用は、限定的ではない。その上、「エレメント(element)」または「構成成分(component)」等の用語は、他の方法で具体的に記述されなければ、1つの単位(unit)を含むエレメントおよび構成成分と1つよりも多い単位(unit)を含むエレメントおよび構成成分の両方を包含する。
本明細書において他の方法で定義されなければ、本出願に関連して使用される科学および技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されている意味を持たせる。本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬等に限定されず、したがって変化できることは理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、もっぱら特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図してはいない。免疫学および分子生物学における共通語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、18th Edition、published by Merck Research Laboratories、2006年(ISBN 0-911910-18-2); Robert S. Porterら、(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、published by Blackwell Science Ltd., 1994年(ISBN 0-632-02182-9); and Robert A. Meyers (編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、published by VCH Publishers、Inc.、1995年(ISBN 1-56081-569-8); Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier、2006年に見ることができる。分子生物学における共通語の定義は、Benjamin Lewin、Genes IX、published by Jones & Bartlett Publishing、2007年(ISBN-13: 9780763740634); Kendrewら、(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、published by Blackwell Science Ltd.、1994年(ISBN 0-632-02182-9); and Robert A. Meyers (編)、Maniatisら、Molecular Cloning:
A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、USA (1982); Sambrook ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2 ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、USA (1989); Davisら、Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier Science Publishing、Inc.、New York、USA (1986); or Methods in Enzymology: Guide to Molecular Cloning Techniques Vol.152、S. L. Berger and A. R. Kimmerl編、Academic Press Inc.、San Diego、USA (1987); Current Protocols in Molecular Biology (CPMB) (Fred M. Ausubelら、編、John Wiley and Sons、Inc.)、Current Protocols in Protein Science (CPPS) (John E. Coliganら、編、John Wiley and Sons、Inc.) and Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coliganら、編、John Wiley and Sons、Inc.)に見られる。
前述の詳細な説明および以下の実施例は説明的であるにすぎず、本発明の範囲に対する限定と解釈されるべきではないことが理解される。開示された実施形態への様々な変化および修正は、当業者には明らかとなるが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく加え得る。さらに、確認された特許、特許出願および出版物はすべて、例えば、本発明に関連して使用し得るような出版物において記載されている方法論を記載するおよび開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本発明の出願日に先立ってもっぱらその開示のために提供される。これに関して、本発明者らは先行発明のおかげでまたは他のいかなる理由によってもそのような開示よりも前日付にする権利はないことを認めたものと見なすべきものは何もない。日付に関する陳述またはこれらの文書の内容に関する表現はすべて、出願者が入手可能な情報に基づいており、日付またはこれらの文書の内容の正確さに関するいかなる自認も構成しない。
B.薬剤送達システムの実施形態
本発明のいくつかの実施形態において、送達システムは、例えば対象の後根(DR)または後根神経節(DRG)等の1つまたは複数の標的脊髄構造へ薬剤または製剤を送達する。
I. 薬剤送達モジュールと接続可能な送達エレメント
図1は、薬剤送達システム10、臨床プログラマー65、および患者プログラマー60を含む神経調節システム1000の例として示される実施形態を例証している。この実施形態において、薬剤送達システム10は、2つの主要な構成要素、1)薬剤送達の標的解剖学的部位、例えばDRGへ送達されることになる例えば製剤等の薬剤を貯蔵および放出する薬剤放出モジュール20、ならびに、2)薬剤放出モジュール20に接続される少なくとも1つの送達エレメント30を含み、ここで送達エレメントは、薬剤放出モジュール20から薬剤送達の標的解剖学的部位、例えばDRGまで、例えば製剤等の薬剤を送達する少なくとも1つの送達管腔を含む。ジグザグの矢印によって示されているように、臨床プログラマー65および/または患者プログラマー60は薬剤送達モジュール20と無線で通信して、本明細書においてさらに記述されるように、薬剤送達プログラム情報を提供し、データを受信し、および/または、種々の他の機能を遂行する。
この実施形態において、送達エレメント30は、標的解剖学的部位へ薬剤も電気刺激も送達する。従って、この実施形態において、各送達エレメント30は、少なくとも1つの電極50および少なくとも1つの出口ポート40を含み、薬物または薬剤は出口ポート40を通って送達される。そのような送達エレメント30が少なくとも1つの電極50を含む例において、送達エレメントはリードとも呼ばれる。送達エレメント30はあるいは電極を含まなくてもよいことが包含され、ここで送達エレメントは、電気刺激とは関係なく薬剤を送達するためのものである。そのような送達エレメントは、本明細書においてカテーテルと呼ばれる。薬剤送達システム10はリード、カテーテル、またはリードおよびカテーテルを含んでもよいことを正しく理解することができる。
図3は、例として示される図1の送達システム10の送達エレメント30の配置を例証している。送達エレメント30は、中枢神経系の一部に沿って置かれて示されている。典型的に、送達システムは、中枢神経系の神経組織の一部を神経調節するために使用され、ここで中枢神経系は、脊髄、および、脊髄神経として知られる脊髄に沿った神経の対を含む。脊髄神経は、末梢神経系の一部である混合神経を作るために椎間孔(intravertebral foramen)で合体する後根も前根も含む。少なくとも1つの後根神経節(DRG)が、混合のポイント前に各後根に沿って配置されている。このように、中枢神経系の神経組織は、後根神経節を含み、かつ、末梢神経系の混合神経等、後根神経節以外の神経系の部分を除くと思われる。いくつかの実施形態において、本発明のシステムおよび装置は、1つまたは複数の後根神経節、後根、後根進入部、またはその一部を神経調節するために使用される。図3は、送達エレメントのそれぞれの遠位端がDRGの近くにあるように置かれた図1の送達システム10の送達エレメント30を例証している。特に、各遠位端は、表面上の少なくとも1つの電極および少なくとも1つの薬剤送達ポートが、標的DRGの神経調節、より詳細にはDRGの選択的神経調節を可能にするような標的DRGの距離内にあるように置かれている。
特に順行性の硬膜外へのアプローチからこれらの領域に接近することは挑戦である。図4は、図3の構造の一部を概略的に例証し、椎根弓PDの解剖学的配置を含んでいる。示されているように、各DRGは、後根DRに沿って配置され、典型的に、少なくとも部分的に椎根弓PD間または孔内にとどまる。各後根DRは、角度θで脊髄Sを出る。この角度θは、後根鞘角形成部とみなされ、患者によっておよび脊柱に沿った位置によってわずかに変わる。腰椎内の平均の後根鞘角形成部は、有意に90度未満であり、典型的には45度未満である。従って、順行性のアプローチからこの構造に接近することは、後根鞘角形成部を通って、それに沿って、またはその付近で鋭い方向転換をすることを含む。そのような方向転換は、精密に後根鞘角形成部に従ってもよい、または、後根鞘角形成部の近くで種々の曲線に従ってもよいと正しく理解することができる。
図4は、硬膜外に挿入され、脊髄Sに沿って硬膜外の空間内を順行性の方向に前進する図1の送達エレメント30の実施形態を例証している。少なくとも1つの電極50を表面に有する送達エレメント30は、電極50のうち少なくとも1つが標的DRG上に置かれるように、患者の構造を通って前進する。同様に、送達エレメント30は、出口ポートのうち少なくとも1つが、標的DRG等の標的構造に対して臨床上有効な距離内に置かれるように置かれる。この様式で標的DRGへ向かうリード100のそのような前進は、角度θに沿って鋭い方向転換をすることを含む。この激しさの方向転換は、本明細書においてより詳細に記述される送達エレメント30の種々の送達ツールおよび設計特徴を使用して達成される。加えて、神経根とDRGと周囲の構造との間の空間的関係は、特に腰椎における変性変化によって著しく影響される。従って、患者は、さらにきつい方向転換を必要とするさらに小さい角形成部を有する等、正常な構造とは異なる後根鞘角形成部を有し得る。本発明は、これらの構造も受け入れる。
本発明の装置、システムおよび方法は、所望の構造の標的化治療を可能にする。そのような標的化治療は、望まれていない運動反応または影響を受けない体の領域の望まれていない刺激もしくは神経調節等の有害な副作用を最小限にする。これは、望まれていない他の構造の神経調節を最小限にまたは除去しながら、状態と関連する標的構造を直接神経調節することによって達成される。例えば、これは、周囲もしくは付近の組織等の他の組織、治療に対して標的とされていない体の領域に関連する後根の部分および構造の部分の望まれていない刺激を最小限にまたは除去しながら、後根神経節、後根、後根進入部、またはその一部を刺激することを含んでもよい。加えて、他の組織の刺激も熟慮されることを正しく理解することができる。
図5は、例としての個々の脊髄レベルの断面図を例証し、標的DRGの上、その付近、またはその周囲に置かれる図1の送達エレメント30を示している。送達エレメント30は、適切な脊髄レベルまで硬膜外の空間内を脊髄Sに沿って前進し、ここで送達エレメント30は、標的DRGの外側に前進する。いくつかの例において、送達エレメント30は穴を通ってまたは部分的に通って前進する。電極50および薬剤送達出口ポート40のうち少なくとも1つ、いくつか、または全てが、DRGの上、その周囲、またはその近くに置かれる。好ましい実施形態において、図5に例証されているように、送達エレメント30は、電極50および出口ポート40が後根VRとは反対のDRGの表面に沿って配置されるように置かれる。後根VRとは反対のDRGの表面は後根VRの部分とは完全に反対であってもよいが、それほど限定されないことを正しく理解することができる。そのような表面は、隔たりによって後根VRとは離されたDRGの種々の領域に沿ってとどまることができる。
前述のように、図1の送達エレメント30は、標的部位への断続的な(例えば時間的にパターン化された)または同時の電気刺激ならびに薬剤および/または製剤の送達のために電極を含むように構成される。そのような構成は、薬剤送達パラメータ、電気シグナルパラメータを含む種々の設計特徴を含んでもよく、望まれていない他の構造の送達または刺激を最小限にすることができる。図5は、例としての薬剤放出の領域、および、点線によって示された電気刺激の電界180を示している。領域180は、DRG内で延びているが、後根VRまでは延びない。従って、そのような送達エレメント30の配置は、その距離のため後根VRのいかなる可能な刺激も減らすことを支援することができる。しかし、DRGに関連して種々の位置に電極50および薬剤出口ポート40を置くことができ、さらに、2、3例をあげると、刺激プロファイルの形態、刺激シグナルパラメータ、薬剤選択、薬剤濃度、投薬スケジュールによって等、距離以外の要因または距離の他の要因によってDRGを選択的に刺激することができることを正しく理解することができる。標的DRGには、逆行性の硬膜外アプローチ等、他の方法によってアプローチすることができることも正しく理解することができる。同様に、DRGには、脊柱の外側からアプローチすることができ、ここで、送達エレメント30は、脊柱に向かって末梢の方向から前進し、任意で、孔を通り抜けるかまたは部分的に通り、電極106のうち少なくとも一部が、DRGの上、その周囲、またはその近くに置かれるように置かれる。
送達エレメント30を、多くの異なる構成において、選択的な電気刺激または神経調節のために使用することができることを正しく理解することができる。例としての構成は、片側(1つのレベルでの1つの根神経節の上もしくはその中)、両側(同じレベルでの2つの根神経節の上もしくはその中)、ユニレベル(同じレベルでの1つもしくは複数の根神経節)、またはマルチレベル(少なくとも1つの根神経節が2つ以上のレベルのそれぞれにおいて刺激される)、あるいは、上記の組み合わせを含み、交感神経系の一部および交感神経系のその部分の神経活性もしくは伝達と関連する1つまたは複数の後根神経節の刺激を含む。同様に、例としての構成は上記の組み合わせを含み、脊髄の一部および神経活性と関連する1つまたは複数の後根神経節の刺激を含む。そういうものとして、本発明の実施形態を使用して、多種多様な刺激制御計画を個々にまたは重複して作って、治療の範囲を作りかつ提供することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される送達装置およびシステムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている国際出願WO2010/083308号およびWO2006/029257号、ならびに、米国特許出願US2010/0137938号およびUS2008/0167698号に開示されている改善されたバージョンの神経刺激装置に基づいている。
代替の実施形態において、同定されるDRGまたは数多くのDRGが、例えば薬剤送達のための出口ポート40等の複数の側壁の孔がDRG近くへの薬剤の送達を可能にするように、送達エレメント30のシャフトの遠位端の配置のために同定されかつ選択される。そのような実施形態において、装置の配置は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第2010/0137938号、第2010/0249875号、US2008/0167698号、および国際出願WO2010/083308号、WO2008/070807号、WO2006/029257号に開示されている方法を介して達成することができる。
a.送達エレメント
前述したように、送達エレメント30は、図1において描かれているように、その近位端によって薬剤放出モジュール20へ接続される。この実施形態において、薬剤送達装置10は、4つの送達エレメント30を含むが、1、2、3、4、5、6、7、8、約8〜10、約10〜20、約20〜30、約30〜50、もしくは約50以上、または約58以上の数を含むいかなる数の送達エレメント30も使用することができることを正しく理解することができる。いくつかの実施形態において、送達エレメント30は、その遠位端付近に、薬剤出口40等の少なくとも1つの薬剤送達構造を含む。前述したように、少なくとも1つの電極50を有する送達エレメント30は、リードとみなされる。少なくとも1つの電極もない送達エレメント30は、カテーテルとみなされる。
1)リード
上記のように、リードと見なされる送達エレメント30は、少なくとも1つの電極50を、典型的には遠位端の近くに含む。それぞれのリードは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16またはそれよりも多いを含むいかなる数の電極50でも含むことが可能であることは認識され得る。典型的には、それぞれの電極はオフ、陽極または陰極として構成することができる。いくつかの実施形態において、1つのリードのみが所定の任意の時間に刺激エネルギーを提供している。他の実施形態において、1つよりも多いリードが所定の任意の時間に刺激エネルギーを提供している、またはリードによる刺激が互い違いになっているもしくは重複している。同様に、所定の任意の時間にリードあたり1つの電極のみが刺激エネルギーを提供している、またはリードあたり1つよりも多い電極が刺激エネルギーを提供しており、前記1つよりも多い電極は刺激エネルギーを同時に、互い違いにまたは重複して提供している。いくつかの実施形態において、それぞれの電極は独立して構成可能であるけれども、所定の任意の時間にソフトウェアは必ずどんな時でも1つのリードのみが刺激しているようにする。他の実施形態において、1つよりも多いリードがどんな時でも刺激している、または前記リードによる刺激は互い違いになっている、もしくは重複している。
いくつかの実施形態において、それぞれのリードは少なくとも1つの出口ポート40を含む。出口ポート40は典型的には前記リードの遠位端の近くに設置されており、1つまたは複数の電極50の近くに設置されていてもよい。いくつかの実施形態において、図1に示されるように、前記リードは少なくとも2つまたは少なくとも3つの出口ポート40、および前記出口ポート40間に配置された少なくとも3つまたは少なくとも4つの電極50を含む。
図6は、薬剤放出モジュール20ならびに複数の電極50および複数の出口ポート40を有する単一の送達エレメント30を示している。前記送達エレメント30は、薬剤放出モジュール20と接続可能であり、特にリードレセプタクル36またはリード接続アセンブリを有するヘッダー34に挿入可能な近位端32を有する。
図7Aは、図6に示される等の送達エレメント30の実施形態の横断面図を示している。送達エレメント30は、それを貫通する複数の構成成分を有するシャフト55を含む。この実施形態において、前記構成成分は、それを通る薬剤送達管腔140を有するチューブ148を含む。前記構成成分は、それぞれが送達エレメント30の遠位端の近くの電極に接続している複数の導体ケーブル150も含む。この実施形態において、前記エレメント30は4つの電極50を有しており、したがって4つの導体ケーブル150が示されている。さらに、前記送達エレメント30は、リードに引張強度を与える張力エレメント170を含む。図7Bは、送達エレメント30の別の実施形態を示している。この実施形態において、シャフト55は多腔押出しチューブを含み、構成成分のそれぞれが専用の管腔を貫通している。例えば、それぞれの導体ケーブル150、張力エレメント170およびチューブ148は別々の専用の管腔を貫通している。
図8A〜8Cを参照すると、送達エレメント30(図8A)ならびにシース122(図8B)およびスタイレット130(図8C)を含む送達システムの実施形態が示されている。前記送達システムは対象の構造内に前記送達エレメントを配置するために使用される。この実施形態において、送達エレメント30の遠位端は閉端遠位先端160を有する。前記遠位先端160は、数例を挙げると、球状(示されている)または涙滴形等の円形および円錐形を含む種々の形状を有し得る。これらの形状であれば送達エレメントに非外傷性先端を与え、ならびに他の目的にも適う。前記送達エレメント30は、閉端遠位先端160に向かって伸びるスタイレット管腔155(いくつかの実施形態において、薬剤送達管腔としても機能する)も含む。
図8Bは、およそ80から165°の範囲にある角度αを有するようにあらかじめ湾曲されている遠位端128を有するシース122の実施形態を示している。前記シース122は、その遠位端の一部が送達エレメント30の遠位先端160と境を接するまで送達エレメント30のシャフト上を前進させるように寸法を合わせ構成されている。したがって、この実施形態の球状先端160は、前記シース122がそれ以上伸びるのを防いでもいる。前記送達エレメント30上をシース122が通過すると、前記エレメント30は前記シース122のプレ湾曲(precurvature)に従って曲がる。したがって、前記シース122は、前記送達エレメント30を、横方向になどの脊柱Sに沿っておよび標的DRGに向けて誘導するのを支援する。角度αは場合によっては80°未満等のさらに小さく、U字型またはさらに急激な屈曲を形成してもよいことは認識され得る。
図8Cを参照すると、プレ湾曲されている遠位端を有するスタイレット130の実施形態が示されている。いくつかの実施形態において、遠位端はおよそ0.1から0.5インチ(0.254から1.27cm)の範囲の曲率半径を有する。スタイレット130は送達エレメント30のスタイレット管腔155内を前進させるように寸法を合わせ構成されている。典型的には、スタイレット130は、その遠位端が送達エレメント30の遠位端と一直線になるようにそこを貫通している。スタイレット130が送達エレメント30の中を通過すると、前記送達エレメント30は前記スタイレット130のプレ湾曲に従って曲がる。典型的には、スタイレット130はシース122よりも曲率半径が小さい、または急激に湾曲している。したがって、図8Dに示されるように、スタイレット130が送達エレメント30内に配置されると、シース122を通る送達エレメント30とスタイレット130の伸長は曲がるまたは送達エレメント30を第一の湾曲123中に向ける。シース122の遠位端を過ぎて送達エレメント30とスタイレット130がさらに伸長すると、送達エレメント30は第二の湾曲125に沿ってさらに曲がる。標的DRGに近づくと、前記第二の湾曲は、外側に向けられた送達エレメント30を今度は、神経根角形成部に沿って等の、標的DRGに向かって湾曲させる。この2ステップの湾曲により送達エレメント30は、特に角度θに沿って急カーブをすることにより電極50と薬剤送達出口ポート40のうちの少なくとも1つが標的DRG上に、近くにまたは周辺にあるように首尾よく配置される。さらに、電極50および/または送達ポート40はそのような急カーブをするのを支援するように間隔が空けられている。
本明細書に開示される送達エレメント30および送達デバイスのいくつかの実施形態は、「Stimulation Leads、Delivery Systems and Methods of Use」と表題の付いた米国特許出願第12/687737号に開示されている神経刺激デバイスに基づいており、この特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれており、したがってそこに記載されているのと類似の特長および送達方法を共有していることは認識され得る。
図9A〜9Cは、少なくとも1つの電極50および少なくとも1つの薬剤送達出口ポート40を有する送達エレメント30の様々な実施形態を示している。図9Aを参照すると、送達エレメント30はそこに1つの送達管腔140を含み、この管腔は薬剤放出モジュール20の容器70と液体接続しているその近位端を有しており、遠位先端160に向かって伸びている。送達管腔の径はいかなる径でも、例えば、0.1mm、0.2mm、0.5mm、1mm、2mm、5mm、または5mmよりも大きく、および0.1mmから5mm径間の任意の整数であることが可能である。いくつかの実施形態において、送達エレメント30の遠位端は閉端遠位先端160を有する。そのような実施形態において、遠位先端160は、数例を挙げると、円形、球状、涙滴形または円錐形を含む種々の形状を有し得る。これらの形状であれば送達エレメント30に非外傷性先端を与え、ならびに他の目的にも適う。遠位先端160が閉端を有する場合、送達管腔140はエレメント30の壁に位置する少なくとも1つの出口ポート40と接続している。いくつかの実施形態において、送達エレメント30が開端遠位先端160を有することは認識され得る。図9Aは、閉端遠位先端160および遠位先端160に向かって伸び、それぞれが一対の電極50間に配置されている2つの薬剤送達出口ポート40に接続している1本の送達管腔140を示している。送達エレメント30は、前記送達エレメント30の遠位端からそれぞれの電極50まで伸びている導体ケーブル150をさらに含む。
図9Bは、送達エレメント30の別の実施形態を示している。この実施形態において、送達エレメント30は、それぞれが出口ポート40と液体で接続している複数の薬剤送達管腔140を含む。これにより、それぞれの送達管腔を介したDRGへの1つよりも多い異なる薬剤の送達が、または代わりにそれぞれの送達管腔を介した同一薬剤のしかし種々の異なる用量での送達が可能になる。この実施形態において、第一の送達管腔140(i)は第一の出口ポート40(i)に接続されており、第二の送達管腔140(ii)は第二の出口ポート40(ii)に接続されている。この実施形態において、第一の出口ポート40(i)と第二の出口ポート40(ii)の両方が、それぞれが反対方向を向いている対になった電極50間に配置されている。1、2、3、4、5、6、7、8、等を含むいかなる数の出口ポート40が存在していてもよく、前記出口ポート40は、互いに対しておよび電極50に対していかなる構成で配置されていてもよいことは認識され得る。
図9Cは、それぞれがその近位端で少なくとも1つの容器70とおよびその遠位端の近くのエレメント壁において少なくとも1つの出口ポートと液体接続している複数の送達管腔140(i)、140(ii)を有する送達エレメント30の別の実施形態を示している。この実施形態において、第一の送達管腔140(i)は2つの出口ポート40(i)、40(i')と液体接続しており、第二の送達管腔140(ii)は2つの出口ポート40(ii)、40(ii')と液体接続している。出口ポート40(i)、40(i')の対等のそれぞれの出口ポートのそれぞれの対は、異なる対の電極50間に配置されている。さらに、複数の送達管腔のせいで、それぞれの送達管腔を介したDRGへの1つよりも多い異なる薬剤の送達が、または代わりにそれぞれの送達管腔を介した同一薬剤のしかし種々の異なる用量での送達が可能になる。送達エレメント30は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16またはそれよりも多いを含むいかなる数の送達管腔でも含むことができることも認識される。それぞれの送達管腔は、同一の薬剤(例えば、それぞれの近位端は同一容器に接続されている)を標的構造、例えば、DRGに、または異なる薬剤(例えば、それぞれの管腔の近位端は異なる容器に接続されている)を標的構造、例えば、DRGに送達するために使用することができる。いくつかの実施形態において、送達エレメント内に配置されているそれぞれの送達管腔は独立して構成可能である。例えば、いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、必ず特定の時間に特定の速度で薬剤が特定の管腔から送達されるようにすることができる。したがって、薬剤放出は異なる送達管腔から互い違いになるまたは重複することができる。
組合せ神経刺激および薬理学的薬剤送達エレメントに関しては、電極50および薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位先端は、所望の刺激または調節レベルを得るために標的脊髄構造、例えば、DRGの近くの任意の位置に置くことができる。さらに、電極50および薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位先端は、標的にされた神経組織内に残るまたは神経組織内でのみ消散する等の、調節または刺激エネルギーパターンが標的組織にとって選択的であるように置くことができる。
2)カテーテル
いくつかの実施形態において、薬剤または製剤は、容器70と流動連絡している送達エレメント30内の薬剤送達管腔を介して薬剤放出モジュール20における容器70(または薬剤保持チャンバー)から、DRG、後根、後根進入部等の標的脊髄構造送達部位に輸送される。薬剤送達エレメント30は一般には、送達デバイスの薬剤放出モジュールに付随している第一の端(または「近位」端)および所望の標的送達部位への薬剤または製剤の送達のための第二の端(または「遠位」端)を有する実質的に中空の細長い部材またはシャフトである。いくつかの実施形態において、薬剤送達エレメントの近位(例えば、第一の)端は、前記薬剤送達エレメントの管腔が薬剤放出モジュールにおける薬剤容器と連絡しているように薬剤放出モジュール20に流動連絡しているまたは結合しているので、前記容器に含まれる製剤は薬剤送達管腔内に入り、所望の標的構造送達部位の近くに配置されている出口ポートから出ることができる。そのような送達エレメントは送達カテーテルと呼んでもよいことは認識され得る。
薬剤送達管腔は、薬剤、例えば、薬剤放出モジュールからの製剤の漏洩防止送達を提供することと両立できる径を有することになる。薬剤放出モジュールが薬剤、例えば、製剤を対流により分注する場合には(例えば、浸透圧薬物送達システムにおけるように)、容器から通じる薬物送達管腔のサイズはTheeuwes (1975) J. Pharm. Sci. 64: 1987〜91頁により記載される通りに設計することが可能である。
薬剤送達エレメント30の本体は、柔軟性に対するおよびDRGへの薬剤の送達のための物理力に耐えるその適合性に従って選択することができる種々の寸法および幾何学的形状(例えば、湾曲している、実質的に直線的、漸減している等)のいずれでも可能である。薬剤送達エレメントの遠位端は、薬剤の送達のための出口ポートで、またはDRG等の標的構造送達部位の近くに配置されている一連の開口部もしくは出口ポートとして別個の開口部を提供することができる。
いくつかの実施形態において、薬剤送達エレメントの部分は、薬剤送達を促進するためにおよび/または前記薬剤送達エレメントに他の望ましい特徴を与えるために追加の材料または薬剤(例えば、外部または内部カテーテル本体表面上のコーティング)を含むことができる。例えば、薬剤送達エレメント内部および/または外部壁の部分は銀で被覆するまたは別の方法により抗菌剤で被覆するまたは処理し、したがって、薬剤放出モジュール移植およびDRG薬剤送達の部位での感染の危険をさらに減少させることが可能である。
一実施形態において、薬剤送達管腔は薬剤、例えば、製剤でプライムされ、例えば、対象への移植に先立って薬剤を実質的に前もって充填しておく。薬剤送達管腔のプライミングにより、送達始動時間、すなわち、薬剤送達モジュールから薬剤送達エレメントの遠位端への薬剤の移動に関する時間が減少する。この特長は、薬剤送達デバイスの薬剤放出モジュールが比較的低い流速で薬剤を放出する本発明においては特に有利である。
前述の実施形態のいずれにおいても、送達エレメントは、隣接する組織における感染または免疫応答を防ぐまたは減らすためのコーティングを有し得る。種々のコーティング、例えば、銀または銀ベースのコーティングを使用することができるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、側壁開口部への組織内殖を防止するのが望ましい場合があり、したがって、組織内殖を阻止するために適切なコーティングをチューブの遠位端の少なくとも一部に適用してもよい。代わりに、柔軟性のある管類のために選択される材料は組織内殖を阻止する固有特性を有していてもよい。そのような材料またはコーティングは、ヒアルロニダーゼ阻害剤を有するコーティング、ヒアルロニダーゼ酵素的タンパク質分解化学を有するコーティングまたは希釈パパイン酵素作用を有するコーティングを含み得る。
図10A〜10Cは、少なくとも1つの薬剤送達出口ポート40を有する送達エレメント30の様々な実施形態を示している。図10Aを参照すると、送達エレメント30はそのなかに少なくとも1つの送達管腔140を含み、前記管腔は薬剤放出モジュール20の容器70と液体接続しているその近位端を有し、遠位先端160に向かって伸びている。送達管腔の径はいかなる径でも、例えば、0.1mm、0.2mm、0.5mm、1mm、2mm、5mm、または5mmよりも大きい、および0.1mmから5mm径間の任意の整数であることが可能である。いくつかの実施形態において、送達エレメント30の遠位端は閉端遠位先端160を有する。そのような実施形態において、遠位先端160は、数例を挙げると、円形、球状、涙滴形または円錐形を含む種々の形状を有し得る。これらの形状であれば送達エレメント30に非外傷性先端を与え、ならびに他の目的にも適う。遠位先端160が閉端を有する場合、送達管腔140はエレメント30の壁に位置する少なくとも1つの出口ポート40と接続している。いくつかの実施形態において、送達エレメント30が開端遠位先端160を有することは認識され得る。そのような実施形態において、送達管腔140は開端遠位先端160に接続していてもよく、前記遠位先端160は薬剤出口ポート40としての働きをする。
図10Bは、それぞれが送達管腔140に液体で接続している複数の薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の一実施形態を示している。この実施形態において、1つの送達管腔は前記送達エレメントの壁における4つの出口ポート40に接続されている。1、2、3、4、5、6、7、8等を含むいかなる数の出口ポート40が存在していてもよいことは認識され得る。
代わりに、図10Cに示されるように、送達エレメント30は、それぞれがその近位端で少なくとも1つの容器70とおよびその遠位端の近くのエレメント壁において少なくとも1つの出口ポートと液体接続している複数の送達管腔140(i)、140(ii)を含むことができる。この実施形態において、第一の送達管腔140(i)は2つの出口ポート40(i)、40(i')と流動連絡しており、第二の送達管腔140(ii)は2つの出口ポート40(ii)、40(ii')と流動連絡している。そのような実施形態は、それぞれの送達管腔を介したDRGへの1つよりも多い異なる薬剤の送達を、または代わりにそれぞれの送達管腔を介した同一薬剤のしかし種々の異なる用量での送達を可能にする。送達エレメント30は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16またはそれよりも多いを含むいかなる数の送達管腔でも含むことができることも認識される。それぞれの送達管腔は、同一の薬剤(例えば、それぞれの近位端は同一容器に接続されている)を標的構造、例えば、DRGに、または異なる薬剤(例えば、それぞれの管腔の近位端は異なる容器に接続されている)を標的構造、例えば、DRGに送達するために使用することができる。いくつかの実施形態において、送達エレメント内に配置されているそれぞれの送達管腔は独立して構成可能である。例えば、いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、必ず特定の時間に特定の速度で薬剤が特定の管腔から送達されるようにすることができる。したがって、薬剤放出は異なる送達管腔から互い違いになるまたは重複することができる。
組合せ神経刺激および薬理学的薬剤送達エレメントに関しては、電極50および薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位先端は、所望の刺激または調節レベルを得るために標的脊髄構造、例えば、DRGの近くの任意の位置に置くことができる。さらに、電極50および薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位先端は、電極により生み出される調節または刺激エネルギーパターンが標的にされた神経組織内に残るまたは神経組織内でのみ消散するように置くことができる。
b.薬剤送達モジュール
図11は、図1の送達装置10の薬剤放出モジュール20の特定の例示的な実施形態の単純化した略図を示す。特に、図11は、容器から薬剤放出モジュール20のアウトプット120へと薬剤を制御放出するためのポンプ80と流動接続される薬剤保持装置または製剤もしくは薬剤貯蔵ウェル70を含む薬剤放出モジュール20のこの実施形態内の構成成分を例証する。いくつかの実施形態において、貯蔵ウェル70は容器を含み、または代替の実施形態において、既定の制御された様式で薬剤を放出する、薬剤の支持体として機能することができる透過性マトリックスであり得る。
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュール20は、パルス発生器110および電源100、例えば充電式または非充電式バッテリー等のバッテリーも含み、それゆえ薬剤送達装置は外部電力供給源と独立して作動することができる。あるいは、電源は、誘導結合、RFまたは光活性化等を介して薬剤放出モジュールに電力を供給する外部装置内等、薬剤放出モジュール20の筐体の外側に置いてもよいことを理解することができる。電源100を使用して、薬剤ポンプおよびパルス発生器110を含む、薬剤放出モジュール10の種々の他の構成成分に電力供給することができる。従って、電源100を使用して、電気刺激パルスを発生させることができる。従って、電源100をパルス発生器110につなげることができる。薬剤放出モジュール20で使用するパルス発生器110の例は、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願第2010/0137938号、第2010/0249875号、US2008/0167698および国際出願WO2010/083308号、WO2008/070807号、WO2006/029257号に開示されている。いくつかの実施形態において、電源はコントローラおよびスイッチ装置、ならびに薬剤放出モジュール中のメモリ(示さず)につなげることもできる。
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュール10は、電気パルスの電圧を変化させ、例えば電源100によって供給される電圧を上げまたは下げて、薬剤放出モジュール10のそのような構成成分に電力供給するのに有用な1つまたは複数の所定の電圧を生じさせるために使用することができる電圧調整器(示さず)を含んでもよい。コンデンサ、抵抗器、トランジスタ等のさらなる電子回路部品を使用して、刺激パルスを発生させることができる。
いくつかの実施形態において、パルス発生器110を、スイッチ装置を介してリードの電極50とつなげる。パルス発生器110は、単一または多重チャネルパルス発生器であり得、単一の電極の組み合わせを介して所与の時間に単一の刺激パルスもしくは複数の刺激パルスを、または複数の電極の組み合わせを介して所与の時間に複数の刺激パルスを送達することが可能であり得る。いくつかの実施形態において、パルス発生器110およびスイッチ装置は、時間挟み込み方式で電気刺激パルスを複数のチャネルに送達するように構成することができ、この場合スイッチ装置の時間分割が異なる時間で異なる電極の組み合わせにわたってパルス発生器110のアウトプットを多重化して、刺激エネルギーの複数のプログラムまたはチャネルを患者に送達する。
以前に述べたように、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外部プログラミング装置は、臨床プログラマー65および/または患者プログラマー60を含む。臨床プログラマー65を使用して、臨床医または研究者によって決定されるように、薬剤放出をプログラムし(例えば薬剤ポンプ80を制御し)、かつ/またはパルス発生器110からの電気刺激情報をプログラムする。電気刺激情報には、電圧、電流、パルス幅、繰返し率、バースト率等のシグナルパラメータが挙げられる。図22は、様々であり得る薬剤送達と電気刺激シグナル両方の考えられるパラメータの例を例証する。本発明の実施形態を使用して、最適な治療結果をもたらす振幅、電流、パルス幅および繰返し率(周波数とも称される)を決定することができる。定振幅での定電流を使用できることを理解することができる。
患者プログラマー60は、臨床医によって予め設定された制限内で、患者が薬剤送達および薬剤放出モジュール20の刺激設定を調整することを可能にする。患者プログラマー60は、必要であれば、患者が薬剤送達を止め、または薬剤送達もしくは用量を増大させ、電気刺激を始めまたは止めることも可能にする。臨床および患者プログラマー65、60は、電源出力に差し込み、内部バッテリーによって電力供給することができる携帯式の手持ち型装置である。バッテリーは、典型的には電源および電源出力を使用して充電可能である。いくつかの実施形態において、プログラマー65、60は、薬剤放出モジュール20との連絡を開始する内部磁石を含有する。患者プログラマー65は、薬剤放出モジュール20との2方向の連絡を使用しそれを確立して、DRGへの薬剤送達および/または電気刺激を制御することが容易となるように設計される。送達装置10と一緒に、臨床プログラマー65および患者プログラマー60は、薬剤-神経刺激システム1000を形成し、このシステムは、本明細書においてより詳細に説明するが、各患者の個別化治療を提供するように作動する。
図11に戻って参照すると、コントローラ(示さず)は、パルス発生器110を制御して刺激パルスを発生させ、スイッチ装置を制御して刺激エネルギーを選択された電極に連結することができる。より具体的には、コントローラは、パルス発生器110およびスイッチ装置を制御して、メモリ内に記憶された1つまたは複数の刺激パラメータセットにより特定されるパラメータに従って電気刺激エネルギーを送達することもできる。特定することができる例示的なプログラム可能な電気刺激パラメータには、刺激波形(刺激シグナルとしても知られる)のパルス振幅、パルス幅、およびパルス率(繰返し率または周波数としても知られる)が挙げられる。さらに、コントローラは、パルス発生器110からの刺激エネルギーの送達について異なる電極の構成を選択するようにスイッチ装置を制御することができる。言い換えると、特定することができるさらなるプログラム可能な電気刺激パラメータには、そのリードが刺激エネルギーの送達に使用される電極50、および選択された電極50の極性が挙げられる。各電極50は、アノード(陽極性を有する)、カソード(陰極性を有する)、または中性電極(この場合電極は刺激エネルギーの送達に使用されず、すなわち不活性である)として接続することができる。電気刺激パラメータのセットは、それらが患者に送達する刺激療法を定義するので、刺激パラメータセットと称することができる。ある刺激パラメータセットは、患者の身体の1つの位置における状態を治療するのに有用である場合があり、一方で第2の刺激パラメータセットは、第2の位置における状態を治療するのに有用である場合がある。個々のリード上の電極がそれぞれ、同じシグナルパラメータを有するシグナルを提供でき、またはリード上の1つもしくは複数の電極が異なるシグナルパラメータを有するシグナルを提供できることを理解することができる。同様に、個々の電極は、経時的に異なるシグナルパラメータを有するシグナルを提供することができる。
コントローラは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array)(FPGA)、状態機械、または類似の個別および/もしくは集積論理回路部品を含み得る。スイッチ装置は、スイッチアレイ、スイッチマトリックス、マルチプレクサ、および/または刺激エネルギーを選択された電極に選択的に連結するのに適した任意の他の型のスイッチング装置を含み得る。メモリは、RAM、ROM、NVRAM、EEPROMまたはフラッシュメモリを含み得るがこれに限定されない。種々の薬剤放出プログラムおよび/または電気刺激パラメータセットをメモリに記憶させることができ、その例について本明細書で論じる。
所望の薬剤送達速度およびレジメンならびに/または電気刺激パラメータセットが決定されると、セットの最適なパラメータで薬剤放出モジュールをプログラムすることができる。このように、薬剤送達および電気刺激が所望される場合に、薬剤送達を制御する適当な薬剤ポンプ80およびリード上の適当な電極50が活性化されて、神経調節送達が決定された神経組織に影響を与える。
少なくとも1つの送達エレメント30の近位端は、薬剤放出モジュール20と接続し、製剤または薬剤の供給源、例えば容器70と流動的に接続している。薬剤放出モジュール20は少なくとも1つの容器を含み、これらはそれぞれ少なくとも1つの送達エレメントと流動的に接続するように構成される。各容器70はインプットポートも含み、これは流動薬剤を容器に加えるための関連する容器への1方向の流動を可能にする。各容器のインプットポートは、経皮的に到達可能である中隔に接続することができ、外部から導入されたカニューレを通じて少なくとも1つの容器に流動薬剤を周期的に反復して補充するために使用することができる。インプットポートの到達部位は、切開の治癒後に目に見えなくてもよく、接触、超音波、または他の医学的画像化技術によってしか検出できなくてもよい。薬剤放出モジュールの断面図を図11に示す。図2は、例示的な薬剤放出モジュール20の斜視図を示す。
いくつかの実施形態において、容器は、カテーテルの容器端に付着させ、次いで到達部位において中隔の外側に移植することができる。送達装置の容器は、慢性神経痛を緩和する薬剤で周期的に反復して満たすことができる。
薬剤放出モジュール20に流動薬剤を入れるために、容器入口ポート90を介して容器または薬剤保持チャンバー70を外部カニューレと接続することができ、そのようにして薬剤を容器に加える。一実施形態において、入口ポート90は、皮下針を使用して薬剤を満たしたシリンジと接続することができる。別の実施形態において、カニューレは、流動薬剤の供給源に取り外し可能な形で取り付けることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される送達装置の単純な構成および操作はまた、正しく作動しない可能性がある部分を動かす必要を有利にも回避する。
薬剤放出モジュール20に流動薬剤を入れた後、容器を食塩溶液で流すことが望ましいことがある。容器からカニューレのチップを取り外すことなく、流動薬剤の供給源をカニューレから取り外すことができ、食塩水の供給源(示さず)を付着させることができる。食塩水に流動圧をかけて、容器中に残っている薬剤を流すことができる。
1)薬剤送達モジュールのサイズ
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュール20は、約32ccを超えない容積および約1.2cmを超えない厚さまたは約30gを超えない重量を有する。他の実施形態において、薬剤放出モジュール20が約0.2、5、10、15、20、30、40、50、60または70ccを超えない容積を有することは、理解することができる。いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュール20は、卵形、円形(図11に示すように)、丸みを帯びた正方形または図1に示すような丸みを帯びた長方形の形状を含む様々な形状を有しうる。いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュール20は、約61mmの高さ、約48mmの幅および約11mmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、貯蔵器は、約100μl〜100ml、例えば、少なくとも約10μl、または約10μl、または約100μl、または約200μl、または約300μl、または約400μl、または約500μl、または約600μl、または約700μl、または約1000μl、または約2ml、または約3ml、または約4ml、または約5ml、または約10ml、または約15ml、または約20ml、または約25ml、または約30ml、または約40ml、または約50ml、または約60ml、または約70ml、または約70mlを超える容積を有する。
2)薬剤送達モジュールの材料
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュールは、治療上要求されるような量および濃度の薬剤を運ぶことができる貯蔵器を含み、移植および送達の継続期間中の身体過程による攻撃からの十分な保護を薬剤製剤に与えなければならない。したがって、いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュールの外側は、例えば、対象による動作の結果として薬剤放出モジュールにかかる物理的な力またはDRGへの薬剤の送達に関連して貯蔵器内で発生する圧力に伴う物理的な力に起因する使用中にそれが受ける応力のもとで制御されない様式でその内容物を排出することを防ぐように、漏れ、き裂、破損またはひずみのリスクを低減する特性を有する材料製である。代替の実施形態において、薬剤放出モジュールは、活性薬剤製剤との意図しない反応を避けるような材料のものでもなければならず、好ましくは生体適合性である、薬剤を保持または含む他の手段を含む(例えば、薬剤放出モジュールが移植される場合、それは、対象の身体または体液に対して実質的に非反応性である)。
送達装置の薬剤放出モジュールに用いる貯蔵器または薬剤保持手段に適する材料の例を本明細書に開示する。例えば、貯蔵器材料は、非反応性ポリマーまたは生体適合性金属もしくは合金を含みうる。適切なポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー等のアクリロニトリルポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(tetrafiuoroethylene)およびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー等のハロゲン化ポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル-アクリルコポリマー、ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリスチレン、セルロースポリマー等を含むが、これらに必ずしも限定されない。さらなる具体例としてのポリマーは、The Handbook of Common Polymers、Scott and Roff、CRC Press、Cleveland Rubber Co.、Cleveland、Ohioに記載されている。
薬剤放出モジュールの貯蔵器に用いるのに適する金属材料は、ステンレススチール、チタン、白金、タンタル、金およびそれらの合金、金メッキ合金鉄、白金メッキチタン、ステンレススチール、タンタル、金およびそれらの合金ならびに他の合金鉄、コバルトクロム合金、ならびに窒化チタン被覆ステンレススチール、チタン、白金、タンタル、金およびそれらの合金を含む。
ポリマーマトリックスに用いる具体例としての材料は、生体安定性ポリマーおよび生分解性ポリマーを含む生体適合性ポリマーを含むが、これらに必ずしも限定されない。具体例としての生体安定性ポリマーは、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレタン尿素、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン-クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたは「TEFLON(登録商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド-ポリスチレン、ポリ-a-クロロ-p-キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホンおよび他の関連生体安定性ポリマーを含むが、これらに必ずしも限定されない。具体例としての生分解性ポリマーは、ポリ酸無水物、シクロデキストラン(cyclodestrans)、ポリ乳酸-グリコール酸、ポリオルトエステル、n-ビニルアルコール、ポリエチレンオキシド/ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸および他の関連生体吸収性ポリマーを含むが、これらに必ずしも限定されない。
いくつかの実施形態において、薬剤、例えば、製剤を金属または金属合金を含む貯蔵器に保存する。特に、いくつかの実施形態において、貯蔵器は、チタンまたは60%を超える、しばしば85%を超えるチタンを有するチタン合金からなる。チタンは、サイズが重要な適用例について、高いペイロード能力についておよび長い継続時間の適用例についてならびに製剤が移植部位における身体の化学に対して感受性である、または身体が製剤に対して感受性である適用例について好ましい。典型的に、薬剤放出モジュールは、室温またはそれ以上の薬剤の貯蔵のために設計されている。
3)制御された薬剤放出
本発明により用いるのに適する薬剤送達装置は、様々な制御された薬剤放出装置のいずれかを利用しうる。一般的に、本発明の様々な実施形態に用いるのに適する薬剤放出装置は、製剤を保つための薬剤貯蔵器または代わりになるべき物として薬剤を保持しうるある種の基材もしくはマトリックス(例えば、ポリマー、結合固体等)を含む。本発明に用いるのに適する制御された薬剤放出装置は、対象における選択された部位への選択されたまたは別途パターン化された量および/または速度での装置からの薬剤の送達を一般的にもたらしうる。
DRGへの薬剤、例えば、製剤の送達を達成するために、様々な薬剤放出モジュールのいずれかを本発明の送達装置に用いることができる。一般的に、薬剤放出モジュールは、薬剤放出モジュール20の移植部位が標的DRG送達部位から遠い場合に、カテーテルまたはリード等の薬剤送達エレメント30に接続できる。
いくつかの実施形態において、本発明による使用に適する薬剤放出モジュール20は、様々な制御された薬剤放出装置のいずれかを利用しうる。一般的に、本発明に用いるのに適する薬剤放出モジュールは、薬剤、例えば、製剤を保つための薬剤貯蔵器または代わりになるべき物として薬剤を保持しうるある種の基材もしくはマトリックス(例えば、ポリマー、結合固体等)を含む。本発明に用いるのに適する制御された薬剤放出装置は、対象におけるDRG標的部位への選択されたまたは別途パターン化された量および/または速度での薬剤放出モジュールからの薬剤の送達を一般的にもたらしうる。
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュールは、拡散、浸食および/または対流システムに基づく移植型装置、例えば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、浸食に基づくシステムまたは電気機械システムである。
いくつかの実施形態において、ポンプは、(i)能動ポンピング、(ii)受動ポンピング(例えば、拡散)および/または(iii)電気泳動的薬物送達等であるが、これらに限定されない機構によって働く。いくつかの実施形態において、電気泳動的薬物送達が望ましい場合、電気的に導電性のワイヤーを送達管腔140に挿入し、導電性ワイヤーを用いて管腔内の薬剤に荷電する場合(例えば、正または負電荷)、電荷が対象の身体における電荷より大きいとき、荷電薬剤が管腔から出口ポート40を経て、DRG等の標的部位に極めて近接した部位に送られる。当技術分野でイオン泳動フラックスまたは「イオン泳動的送達(iontrophoretic delivery)」とも呼ばれている、そのような電気泳動的薬物送達を用いて送達するのに適する薬剤には、制限なしに、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、特許第5,494,679号および第6,730,667号に開示されているリドカイン、エピネフリン、フェンタニル、フェンタニル塩酸塩、ケタミン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ならびにアンジオテンシン(Angiotension)IIアンタゴニスト、アントリオペプチン、ブラジキニン、ならびに組織プラスミノーゲン活性化因子、神経ペプチドYおよび神経成長因子(NGF)、ニューロテンシン(Neurotension)、ソマトスタチンおよびオクトレオチド等のその類似体等のペプチドおよびタンパク質を含むが、これらに限定されないぺプチドを含む。ブルシン等の免疫調節ペプチドおよびタンパク質、コロニー刺激因子、シクロスポリン、エンケファリン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、チモポイエチンおよびTNF、ならびに表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子I&II(IGF-I&II)、インターロイキン2(T細胞成長因子)(II-2)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)(Iもしくはδ型)(TGF)、軟骨由来成長因子、コロニー刺激因子(CSF)、内皮細胞成長因子(ECGF)、エリスロポイエチン、眼由来成長因子(EDGF)、線維芽細胞由来成長因子(FDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、グリア成長因子(GGF)、骨肉腫由来成長因子(ODGF)、チモシンおよびトランスフォーミング成長因子(IIもしくはβ型)(TGF)等の他の成長因子が挙げられる。
薬剤放出モジュールからの薬剤の放出は、典型的に薬剤の制御放出であり、様々なやり方のいずれか、例えば、ポリマー内からの薬剤の実質的に制御された拡散をもたらすポリマーへの薬剤の組込み、浸透圧駆動装置からの薬剤の送達をもたらす生分解性ポリマーへの薬剤の組込み等により達成することができる。いくつかの実施形態において、薬剤は、薬剤送達エレメント(例えば、薬剤送達管腔)を経て毛細管作用の結果として、例えば、薬剤放出モジュールから発生した圧力の結果として、装置および/またはエレメントを経る拡散により、電気拡散により、または電気浸透により標的DRG送達部位に送達することができる。同様に、放出をもたらすために用いることができる刺激の例は、pH、酵素、光、磁界、温度、超音波、浸透作用ならびにより最近のMEMSおよびNEMSの電子制御を含む。
いくつかの実施形態において、送達装置がDRGの電気刺激のためのリードを含むように構成されている場合、薬剤は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Dixitら、Current Drug Delivery、2007年、4巻、1〜10頁に開示されているように、イオン泳動により薬剤送達エレメント、例えば、薬剤送達管腔を経て送達することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置に用いるのに適する薬剤放出モジュールは、様々な作動モードのいずれかに基づくものでありうる。例えば、薬剤放出モジュールは、拡散システム、対流システムまたは侵食性システム(例えば、浸食に基づくシステム)に基づくものでありうる。例えば、薬剤放出モジュールは、浸透圧ポンプ、電気浸透ポンプ、蒸気圧ポンプ、または、例えば、薬剤がポリマーに組み込まれ、ポリマーが薬剤の放出をもたらす、例えば、薬剤含浸ポリマー材料の分解を伴う製剤(例えば、生分解性薬物含浸ポリマー材料)の場合の浸透バースティングマトリックス(osmotic bursting matrix)でありうる。他の実施形態において、薬剤放出モジュールは、電気拡散システム、電気分解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、加水分解システム等に基づくものであり、それを用いて、DRGへの送達のための接続された送達管腔内への薬剤の放出を制御することができる。
本明細書で開示した薬剤送達装置に有用な薬剤放出モジュールは、機械的および/または電気機械的注入ポンプを含みうる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置は、様々な詰め替え可能な非交換型ポンプシステムのいずれかを含む薬剤放出モジュールを含む。場合によって、ポンプおよび他の対流システムが、それらの一般的に長期間にわたるより一貫した制御放出のため、好ましい。場合によって、浸透圧ポンプが、それらのより一貫した制御放出および比較的に小さいサイズの複合的利点のため、特に好ましい。
一実施形態において、本明細書で開示した薬剤送達装置に有用な薬剤放出モジュールは、浸透圧駆動装置である。浸透圧駆動薬剤放出システムは、約0.01μg/時から約200μg/時までの速度範囲の薬剤または薬物の放出をもたらしうる、および約0.01μl/日から約100μl/日まで(すなわち、約0.0004μl/時から約4μl/時まで)、好ましくは約0.04μl/日から約10μl/日まで、一般的に約0.2μl/日から約5μl/日まで、典型的に約0.5μl/日から約1μl/日までの容積速度で送達しうるものである。
パルス発生器110および薬剤放出モジュール20を用いるDRGへの神経刺激および薬剤の放出の併用のさらなる詳細は、連結されたポンプ80および貯蔵器70とパルス発生器110を典型的に使用するものであるが、DRGに薬剤放出モジュール20から貯蔵器70からの薬剤を移動させるためのポンプ80と電極40に接続されるパルス発生器110とは、協調的に作動する2つの別個の構成要素でありうることを理解すべきである。ポンプおよび貯蔵器は、送達される特定の薬理学的薬剤の制御送達に適するもののいずれかでありうる。適切なポンプは、対象における完全な移植のために適合された任意の装置を含み、疼痛管理のための製剤または本明細書で述べた他の薬理学的薬剤を送達するのに適している。一般的に、ポンプおよび貯蔵器は、作動可能に連結されたポンプ、例えば、浸透圧ポンプ、蒸気圧ポンプ、電気分解ポンプ、電気化学的ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプまたは電気機械的ポンプシステムの作用による貯蔵器(ポンプのハウジングまたはポンプと連通した別個の容器により定義される)からの薬剤の移動をもたらす。
本開示はまた、対象、例えば、ヒト対象における慢性疼痛を含む様々な状態の長期軽減をもたらすための本明細書で開示した送達装置を用いる方法を提供する。疼痛軽減のような長期治療は、適切な製剤または薬剤を薬剤放出モジュールにおける貯蔵器に定期的および反復して補充することによって提供することができる。送達装置は、約1日から患者の生涯のほぼ終わりまでに及びうる全使用期間中に患者の体内に完全に封入したままでありうる。本明細書で開示した送達装置の所望の使用期間は、約1週間から約50年までの範囲にありえ、さらなる適切な例は、約1年から約25年の範囲である。
c.標的としてのDRG
後根神経節(DRG)は、一次感覚ニューロンを部分的に含有する脊髄神経構造体である。当該一次感覚ニューロンは、それらが、双極細胞、または偽単極細胞であるという点においてかなり独特である。各感覚ニューロンは、細胞体(ソーマ)と、一方が末梢からソーマへと感覚情報を運び、もう一方はソーマから脊髄へ情報を運ぶ2つの軸索とを含む。ソーマ自体は、DRG内に位置しており、軸索はそこから、例えば、後根を介して脊髄中へ、および知覚線維軸索を介して末梢標的、例えば皮膚等へ延びている。
理論に束縛されることを望むわけではないが、慢性的な疼痛状態において、疼痛の伝達にとって特異的である後根神経節におけるニューロンは、膜生理学(中でも特に受容体およびイオンチャネル発現によって誘導される)における変化、中枢神経末端および末梢神経末端での感度および活性化(それぞれ中枢性感作および末梢感作と呼ばれる)の結果として過剰感作する。この過剰感作の結果、ニューロンが典型的な侵害受容または非侵害受容に対して過剰に反応することにより、与えられた入力に対して、通常予想されるであろう疼痛よりも大きな疼痛の知覚を生じる。この反応は痛覚過敏と呼ばれる。DRGにおける疼痛ニューロンの興奮性の増加に寄与するのは、一次感覚ニューロンにおける様々なナトリウムチャネル(NaV)サブタイプならびに他のイオンチャネルの発現の増加である。
ナトリウムチャネル(NaV)は、ニューロンにおける半透過性膜を越えるナトリウムイオンの輸送に関与する膜内在性タンパク質である。これらのチャネルは、チャネルの「ファミリー」を形成し、それには、いくつかの異なるサブタイプのナトリウムチャネルが存在する。ナトリウムチャネルは、本質的に、基本的興奮性をニューロンに提供する。それらは、細胞外腔から細胞内腔へのナトリウムイオンの伝達を可能にし、その結果、膜脱分極化および作動電位を生じる。ナトリウムチャネルは、神経シグナルおよび神経インパルスの伝達において重要なエレメントである。ナトリウムチャネルは、慢性的な疼痛の発生および維持に関与している。ナトリウムチャネルは、ニューロンの膜興奮の主要な推進力であるので、発現の増加およびチャネル動態における変化は、細胞機能における病態生理学的変化に対して著しく寄与し、結果として、慢性的な疼痛状態に寄与する。
したがって、局所麻酔薬は、ナトリウムチャネルを遮断することによって主に機能し、それにより疼痛の伝達を効果的に遮断する能力を生じる。これらの麻酔剤は、局所浸潤、硬膜外麻酔、局部麻酔等の様々な方法において、ならびに診断用神経ブロックとして、現在使用されている。ナトリウムチャネルの急性的妨害は、診断手順のために使用することができるが、慢性疼痛の治療におけるナトリウムチャネル遮断薬の慢性的送達は、非効率および副作用の可能性のために制限される。
したがって、本発明は、薬剤の直接送達、例えば鎮痛剤を標的脊髄構造、例えばDRGへ直接送達することを可能にし、局所的な様式においてそれらの作用を特異的に管理するので、望ましくない非特異的効果を排除して効率を高めることにおいて有利である。DRGにおける一次感覚ニューロンのソーマ(例えば、細胞体)が、主に、侵害性の神経因性疼痛症候群の際に生じる病態生理学的変化の場所であるので、薬剤の直接送達を使用して、これを標的とすることができる。いくつかの実施形態において、標的脊髄構造、例えばDRGへの薬剤の送達は、細胞体膜および膜貫通、細胞核および核内構造、リボソーム、ミトコンドリア、t-接合、ならびに双極(biplolar)細胞から延びている末梢および中枢軸索に作用することができる。
いくつかの実施形態において、本発明は、標的脊髄構造の近くの非神経細胞、例えば、グリア細胞(例えば、衛星(satalite)細胞)および星状細胞および他の非神経性支持細胞、ならびに/またはDRGの近傍内の炎症細胞もしくは感覚ニューロンの細胞体に薬剤を送達するために使用することができる。
薬剤送達と神経刺激とを組み合わせることが所望される場合、送達エレメント30(管腔を含む)は、リードも含む。当該リードは、少なくとも1つの電極50を含み、当該少なくとも1つの電極50が、所望の脊髄構造、例えば神経根神経節(DRG)上に、その中に、またはそれに隣接して配置されている場合、活性化ステップは、プログラム可能な電気シグナルを電極に連結することによって進行する。一実施形態において、標的構造、例えば神経節に提供される刺激エネルギーの量は、標的構造、例えばDRGを選択的に刺激するのに十分である。そのような実施形態において、提供される刺激エネルギーは、標的化されたDRG内の神経組織を刺激するのみであり、DRGを越える刺激エネルギーは、近くの神経組織を刺激、調節、または影響を及ぼすのに十分なレベルより低い。
電極が、後根神経節(DRG)である標的細胞中に移植される例において、刺激レベルは、無髄の小径繊維(例えば、c-繊維)よりも有髄の大径繊維および/またはソーマ(例えば、AβおよびAα繊維)を優先的に活性化するレベルとして選択され得る。追加の実施形態において、電極を活性化して神経組織を刺激するために使用される刺激エネルギーは、神経組織を切除もしくは傷害する、または他の方法で損傷するために使用されるレベルより低いエネルギーレベルに維持される。例えば、高周波による経皮的部分的根切開術の際、電極が、後根神経節中に位置されて、熱傷害が形成される(すなわち、約67℃の電極チップ温度)まで活性化され、その結果として、対応する真皮節において部分的および一時的感覚消失を生じる。一実施形態において、DRGに適用される刺激エネルギーレベルは、熱切除、RF切除、または他の根切開術手順の際に使用されるエネルギーレベルより低く維持される。
組織刺激は、当該組織を流れる電流が、この電流を受けた細胞に脱分極を生じさせる閾値に達する場合に調節される。電流は、例えば特定の表面積を有する2つの電極間に電圧が供給される場合に発生する。刺激電極のすぐ付近での電流密度は、重要なパラメータである。例えば、1mm2の面積の電極を流れる1mAの電流は、そのすぐ近くにおいて、10mm2の面積の電極を流れる10mAの電流(これは1mA/mm2である)と同じ電流密度を有している。この例において、電極表面に近い細胞は、同じ刺激密度を受ける。違いは、表面積に比例して、電極が大きいほど、細胞のより大きい体積を刺激することができ、電極が小さいほど、細胞のより小さい体積を刺激することができることである。
多くの例において、好ましい効果は、神経組織を刺激すること、または可逆的に遮断することである。本明細書における「遮断」または「妨害」なる用語の使用は、神経インパルス伝達の分断、調節、および抑制を意味する。異常制御は、経路の外乱または経路の抑制の消失の結果であり得、正味の結果は、知覚または反応の増大である。治療的手段は、シグナルの伝達の遮断または抑制フィードバックの刺激のいずれかを目的として行われ得る。電気刺激は、標的神経構造のそのような刺激を可能にし、等しく重要なことに、神経系の総破壊を防ぐ。さらに、電気刺激パラメータは、恩恵が最大となりかつ副作用が最小となるように調節することができる。
いくつかの実施形態において、神経調節システム1000は、小面積かつ高インピーダンスの微小電極を使用した神経組織の直接刺激に適合される、プログラム可能なパターンにおいて刺激エネルギーを提供するパルス発生器110を含む。提供される刺激のレベルは、c-繊維よりもAβおよびAα繊維を優先的に刺激するように選択される。電極50は、有利には、後根神経節(DRG)上に、その中に、またはその周囲に位置されるので、本発明の実施形態によって使用される刺激エネルギーレベルは、従来の非直接的かつ非特異的刺激システムよりも低い刺激エネルギーレベルを用いる。理論に束縛されることを望むわけではないが、より速く伝達するAβおよびAα繊維を本発明の電気刺激法によって刺激することの利点の1つは、後根と刺激される繊維からの脊髄との接合部においてオピオイドを放出し得る。この放出により、当該接合部での反応閾値が上がる(高められた接合部閾値)。より遅く、より後に到達するc-線維作動電位シグナルは、当該高い接合部閾値より低く維持され、検知されずに進む。
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、脊髄、末梢神経系、および/または1つもしくは複数の後根神経節の選択的電気刺激を提供する。本明細書において使用される場合、一実施形態において、選択的電気刺激は、当該刺激が、神経根神経節を、実質的に神経調節または神経刺激することを意味する。一実施形態において、後根神経節の選択的刺激は、運動神経を刺激しないまま、または調節しないままにする。さらに、他の実施形態において、選択的刺激は、神経鞘内において、c-無髄繊維と比較してA-有髄繊維が優先的に刺激または神経調節されることも意味する。そのため、本発明の実施形態は、有利には、A-繊維がc-繊維よりも速く(ほとんど2倍速く)、神経インパルスを運ぶという事実を利用する。本発明のいくつかの実施形態は、c-繊維よりもA-繊維を優先的に刺激することを意図する刺激レベルを提供するように適合される。
いくつかの実施形態において、パルス発生器110は、Aβ繊維動員のための閾値より低いレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。他の実施形態において、当該パルス発生器は、Aβ繊維細胞体動員のための閾値より低いレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。他の実施形態において、当該パルス発生器は、Aδ繊維細胞体動員のための閾値を上回るレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。さらなる他の実施形態において、当該パルス発生器は、C繊維細胞体動員のための閾値を上回るレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。いくつかの実施形態において、当該パルス発生器は、小さい有髄(myelenated)繊維細胞体動員のための閾値を上回るレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。ならびに、いくつかの実施形態において、当該パルス発生器は、無髄(unmyelenated)繊維細胞体動員のための閾値を上回るレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。
いくつかの実施形態において、電気刺激シグナルは、約10mA以下の電流振幅を有する。いくつかの実施形態において、電気刺激シグナルは、10〜100mAの間、または約100〜200mAの間、または約200〜300mAの間、または約300〜500mAの間、または約500〜800mAの間、または約800〜1000mAの間、または1000mA以上の電流振幅を有する。場合によって、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、約6mm2以下の平均電極表面積を有する。任意で、当該平均電極表面積は、約4mm2以下である。
いくつかの実施形態において、当該電気刺激シグナルは、100μA未満の電流振幅を有する刺激シグナルを有する。典型的には、当該標的脊髄神経組織は、後根神経節を含む。
いくつかの実施形態において、当該パルス発生器110は、1パルスあたり約100nJ未満のエネルギーを有する刺激シグナルを提供する。いくつかの実施形態において、当該刺激シグナルは、1パルスあたり約50nJ未満のエネルギーを有する。あるいは、当該刺激シグナルは、1パルスあたり約12〜24nJの間または約10nJ未満のエネルギーを有し得る。典型的には、当該標的後根の少なくとも一部は、後根神経節を含む。
同様に、いくつかの実施形態において、当該少なくとも1つのシグナルパラメータは、500μs未満であるパルス幅を含む。いくつかの実施形態において、パルス発生器110は、50μA以下の増分において調節可能な電流振幅を有する刺激シグナルを提供する。
いくつか例を挙げると、患者の解剖学的構造、疼痛プロファイル、疼痛知覚、リードの位置における可変性により、シグナルパラメータ設定は、おそらく、患者ごとに、および同じ患者におけるリードごとに変わるであろう。シグナルパラメータとしては、いくつか例を挙げると、電圧、電流振幅、パルス幅および反復率、パルス波形が挙げられる。本発明の刺激システムのいくつかの実施形態において、提供される電圧は、約0〜7ボルトの範囲である。いくつかの実施形態において、提供される電流振幅は、約4mA未満、特に約0.5〜2mAの範囲、とりわけ約0.5〜1.0mA、0.1〜1.0mA、または0.01〜1.0mAの範囲である。さらに、いくつかの実施形態において、提供されるパルス幅は、約2000μs未満、特に約1000μs未満、とりわけ約500μs未満、とりわけ10〜120μsである。ならびに、いくつかの実施形態において、反復率は、約2〜120Hzの範囲、200Hzまで、または30,000Hzまで、または30,000Hz以上である。
通常、刺激パラメータは、満足できる臨床結果に至るまで調節される。したがって、患者ごとに、任意の所定のDRGの近くに位置された任意の所定のリードに対してDRG刺激のための閾値と前根刺激のための閾値との間に刺激パラメータ値の組み合わせの限界が存在する。首尾よく患者を治療するために使用することができるであろう特定の組み合わせまたは可能な組み合わせは、典型的には、術中および/または術後に決定され、様々な因子、例えば、電極の位置ならびに対象が経験する疼痛のタイプおよび激しさに応じて変わる。因子の1つは、リードの位置である。所望の電極がDRGに近いほど、DRGを刺激するために必要なエネルギーは低い。他の因子としては、いくつか例を挙げると、電極の選択、患者の解剖学的構造、治療を受けている疼痛プロファイル、および患者による疼痛の心理学的知覚が挙げられる。時間と共に、患者を治療するための任意の所定のリードのパラメータ値は、リードの位置における変化、インピーダンスにおける変化、または他の身体的もしくは心理学的変化によって変わり得る。どんな場合でも、パラメータ値の限界は、患者の疼痛状態を治療するために少なくともより高い桁でのエネルギー送達を必要とする従来の刺激システムより、極めて低い。
より低い範囲のパラメータ値を想定すると、制御の粒度も、従来の刺激システムと比較してより小さい。例えば、従来の刺激システムにおける電流は、典型的には、0.1mAの増分において調節可能である。この増分は、本発明のいくつかの実施形態において、患者を治療するために使用され得る電流振幅値の範囲全体よりも大きい。したがって、状態を治療するために値の適切な組み合わせを決定するためにシグナルパラメータ値を周期的に繰り返すためには、より小さい増分が必要とされる。いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、特に、例えば2mAを下回る電流振幅を使用する場合、約25μAの最小変位において電流振幅の制御を提供するが、しかしながら、より小さい増分、例えば、約10μA、5μA、または1μA等の増分を使用することができることも理解され得る。他の実施形態において、特に、例えば2mA以上の電流振幅を使用する場合、約50μAの最小変位において電流振幅の制御が提供される。最小変位におけるそのような変化は、他のレベル、例えば1mA等においても生じ得ることを理解することができる。同様に、従来の刺激システムにおける電圧は、通常、100mVの増分において調節可能である。対照的に、本発明のいくつかの実施形態は、50mVの最小変位において電圧制御を提供する。同様に、本発明のいくつかの実施形態は、10μsの最小変位においてパルス幅の制御を提供する。したがって、本発明が、パラメータ値の低い範囲に起因する、刺激パラメータの制御の高い粒度を提供することを理解することができる。
場合によって、本発明の刺激システムを用いて患者を首尾よく治療するために、さらにより低いレベルのエネルギーを使用することができることは理解され得る。リードが標的DRGのより近くに位置されているほど、当該標的DRGを選択的に刺激するために必要とされ得るエネルギーのレベルも低い。したがって、シグナルパラメータ値は、対応する制御のより高い粒度で本明細書において述べられているものより低くてもよい。
エネルギーにおけるそのような減少は、恩恵の中でも特に、電極サイズの減少を可能にする。いくつかの実施形態において、平均電極表面積は、約1〜6mm2、特に約2〜4mm2、とりわけ3.93mm2であるが、その一方で、従来の脊髄刺激装置は、典型的には、はるかに大きな平均電極表面積、例えば、いくつかのリードに対して7.5mm2、または従来のパドル式リードに対して12.7mm2等を有する。同様に、いくつかの実施形態において、平均電極長は1,25mmであるが、その一方で、従来の脊髄刺激装置は、典型的には3mmの平均電極長を有する。そのような電極サイズの減少は、DRGの近くでの電極のより密接な位置決めを可能にし、ならびに様々な制御パラメータおよび性能パラメータを有する薬剤放出モジュール20におけるパルス発生器110が、標的化された神経細胞、特にDRGの直接的かつ選択的刺激を提供することを可能にする。さらに、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の電極の寸法全体および電極の間隔は、刺激標的の寸法全体またはサイズに適合またはほぼ適合するように選択される。
状態の効果的な治療は、状態に関連する標的構造を直接刺激しつつ、他の構造への望ましくない刺激を最小化または排除することによって達成され得る。そのような状態が、単一の真皮節に限定されるかまたは主に単一の真皮節に影響を及ぼす場合、本発明は、単一の真皮節または真皮節内の領域(真皮節下(subdermatomal)とも呼ばれる)の刺激を可能にする。
本発明の一態様において、脊髄神経組織に関連する状態を治療する方法が提供され、この場合、当該治療は、実質的に単一の真皮節内において適用される。いくつか実施形態において、当該方法は、少なくとも1つの電極を有するリードを、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つが硬膜外腔内の脊髄神経組織の近くに位置するように配置するステップと、脊髄神経組織を刺激して単一の真皮節内に治療効果を生じさせつつ当該単一の真皮節外の身体の領域が実質的に影響を受けないままに維持するように当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つにエネルギーを供給するステップとを含む。いくつかの実施形態において、当該少なくとも1つの電極にエネルギーを供給するステップは、脊髄神経組織を刺激して単一の真皮節内の特定の身体領域内に治療効果を生じさせつつ当該特定の身体領域の外側の身体領域が実質的に影響を受けないままに維持するように当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つにエネルギーを供給するステップを含む。典型的には、当該脊髄神経組織は後根神経節を含み、当該治療効果は感覚異常を含む。いくつかの実施形態において、当該特定の身体領域は足を含む。
本発明の別の態様において、患者の状態を治療する方法が提供され、この場合、当該状態は、後根神経節の一部に関連し、かつ当該後根神経節の他の部分には実質的に関連しない。いくつかの実施形態において、当該方法は、少なくとも1つの電極を有するリードを、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つが後根神経節の一部の近くに存在するように位置するステップと、状態に影響を及ぼす方法において後根神経節の一部を刺激しつつ他の部分は実質的に刺激しないように当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つに刺激シグナルを提供するステップとを含む。いくつかの実施形態において、当該状態は疼痛を含む。そのような実施形態において、状態に影響を及ぼすステップは、知覚可能な運動応答を生じることなく疼痛を緩和するステップを含み得る。
いくつかの実施形態において、当該状態は、真皮節内のある位置において患者によって感じられ、後根神経節の他の部分は、真皮節内の他の位置に関連する。いくつかの実施形態において、刺激シグナルは、約4mA以下の電流振幅を有し得る。任意で、刺激シグナルは、1mA以下の電流振幅を有していてもよい。典型的には、リードを位置決めするステップは、硬膜外アプローチを用いてリードを前進させるステップを含むが、そのような方法に限定されない。
本発明の別の態様において、真皮節下刺激を提供する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリードを、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つが真皮節内の後根神経節の近くに存在するように位置決めするステップと、真皮節の真皮節下領域における状態に影響を及ぼす方法において後根神経節を刺激するように当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つに刺激シグナルを提供するステップとを含む方法が提供される。
本発明の別の態様において、後根神経節の一部を刺激するためのシステムが提供され、この場合、後根神経節の当該一部は、真皮節内の特定の領域に関連している。いくつかの実施形態において、当該システムは、少なくとも1つの電極を有するリードであって、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つが後根神経節の一部を刺激することができるように位置決めされるように構成されるリードと、当該リードに接続可能なパルス発生器であって、後根神経節の一部を刺激して真皮節の特定の領域内に効果を生じる当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つに刺激シグナルを供給するパルス発生器とを含む。
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つと刺激シグナルとの組み合わせが、後根神経節の他の部分を実質的に除いた、後根神経節の一部の刺激を可能にする形状を有する電場を生成する。いくつかの実施形態において、当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、各電極のおよその中心間が0.250インチ離隔されている2つの電極を含む。いくつかの実施形態において、刺激シグナルは、約4mA以下の電流振幅を有する。任意で、当該刺激シグナルは、1mA以下の電流振幅を有していてもよい。いくつかの実施形態において、当該刺激シグナルは、1パルスあたり約100nJ未満のエネルギーを有する。
いくつかの実施形態において、パルス発生器110は、後根神経節内でグリア細胞の機能を調節することが可能なレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。例えば、いくつかの実施形態において、当該パルス発生器は、後根神経節内で衛星細胞の機能を調節することが可能なレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。他の実施形態において、当該パルス発生器は、後根神経節内でシュワン細胞の機能を調節することが可能なレベルにおいて刺激エネルギーを提供する。
いくつかの例において、当該パルス発生器は、後根神経節に関連する少なくとも1つの血管に薬剤を放出させるかまたは後根神経節内の神経細胞またはグリア細胞に影響を及ぼす細胞シグナルを送ることができるレベルにおいて、刺激エネルギーを提供する。
「刺激オン」シグナルは、多種多様の刺激パターンおよび刺激の程度のいずれかを示す。「刺激オン」シグナルは、連続的または断続的に適用され得る振動性電気シグナルであり得る。さらに、電極が、直接2つ以上の神経節の中に、または当該神経節に隣接するように移植される場合、振動性電気シグナルは、一方の電極に適用され、他には適用され得ず、ならびにその逆の場合も同じである。刺激する極、パルス幅、振幅、ならびに刺激の振動数および他の制御可能な電気的なシグナル因子を調節して、所望の調節または刺激結果を得ることができる。
振動性電気シグナルの適用は、電極115が位置されている神経連鎖のエリアを刺激する。この刺激は、神経活性を増加または減少させ得る。次いで、この振動性電気シグナルの振動数は、治療されている生理障害によって現れている症候が、確実に緩和されるまで調節される。このステップは、患者フィードバック、センサー、または他の生理的パラメータもしくは指標を用いて実施され得る。一度特定されると、この振動数が理想的な振動数と見なされる。理想的な振動数が決定されると、振動性電気シグナルは、コントローラにこの振動数を記憶させることによって、この理想的振動数に維持される。
一具体例において、振動性電気シグナルは、約0.5Vから約20Vの間またはそれ以上の電圧で操作される。より好ましくは、当該振動性電気シグナルは、約1Vから約30Vさらには40Vの間の電圧で操作される。微少刺激の場合、1Vから約20Vまでの範囲内で刺激することが好ましいが、当該範囲は、電極の表面積等の因子に依存する。好ましくは、電極シグナル源は、約10Hzから約10,000Hzの間の範囲の振動数で操作される。より好ましくは、電極シグナルは、約30Hzから約500Hzの間の範囲の振動数で操作される。好ましくは、振動性電気シグナルのパルス幅は、約25マイクロ秒から約500マイクロ秒の間である。より好ましくは、振動性電気シグナルのパルス幅は、約50マイクロ秒から約300マイクロ秒の間である。
振動性電気シグナルの適用は、いくつかの異なる方法において提供することができ、そのような方法としては、これらに限定されないが、(1)単極刺激電極と大面積の非刺激性電極-リターン電極;(2)いくつかの単極刺激性電極と単一の大面積の非刺激性リターン電極;(3)一対の狭い間隔で配置された双極電極;および(4)数対の狭い間隔で配置された双極電極、が挙げられる。他の構成も可能である。例えば、本発明の刺激電極は、他の非刺激性電極-リターン電極-と併せて使用され得るか、または刺激システムの一部は、リターン電極の機能を提供するように適合および/または構成され得る。リターン電極の機能を提供するように適合および/または構成され得る刺激システムの一部は、限定されないが、バッテリーケーシングまたはパルス発生器ケーシングを含む。
本発明の実施形態は、特定の真皮節分布を刺激することで、電極もしくは電極群もしくは電極の組み合わせ(薬剤でコーティングされた電極または薬剤送達電極等)が最良に位置決めされているか、または疼痛の1つまたは複数の特定のエリアに最も密接に関連しているかを調べることができることが理解されよう。そのため、本発明の実施形態による刺激システムは、疼痛の範囲または型の特定のエリアに対して「微調整する」ことができる。そのような試験から得られる結果は、疼痛の特定の型に対して、特定の患者(patent)に対して、1つまたは複数の刺激または治療レジメ(すなわち、コーティングされた電極からの治療薬の存在下での、または治療薬との組み合わせにおいての一連の刺激)に対して、使用することができる。これらの疼痛の治療レジメは、所望の治療レジメが実行されるように、治療プログラムを記憶させ、刺激レジメのシステム構成要素の実行を制御およびモニターするために、好適な電気コントローラまたはコンピュータコントローラシステム(下記において説明する)にプログラムすることができる。
神経根神経節、後根神経節、脊髄神経系、末梢神経系の特異的な直接的刺激と組み合わせて、様々な投与経路を用いた多くの他の利用可能な薬理学的遮断薬または他の治療薬を用いることにより、電気的調節と薬理学的調節の相乗効果を得ることもできる。薬理学的遮断薬としては、例えば、Na+チャネル遮断薬、Ca++チャネル遮断薬、NMDA受容体遮断薬、およびオピオイド鎮痛薬が挙げられる。図12A〜16に図示されているように、刺激と薬剤送達電極とを組み合わせることで、結果として、いくつかの効果、例えば、これらに限定されないが、(i)薬剤と電気刺激の相乗作用、(ii)標的DRG細胞体に対する薬剤の選択性の向上、(iii)DRGに送達される薬剤の標的化の活性化、および(iv)送達される標的DRG細胞体に対する薬剤の差次的亢進を生じる。例えば、(iv)の場合、c-繊維の活性化電位が低下するので、より大きな直径のA-繊維が優先的に刺激されるか、A-繊維の応答が活性化の閾値以上のままに維持される。
本発明の実施形態は、多くの有利な併用療法も提供する。例えば、電極50によって提供される刺激の量を減らすことができ、かつそれでも臨床上有意な効果を達成できるような方法において、後根神経節内において作用するか、または後根神経節内での反応に影響を及ぼす薬理学的薬剤が提供され得る。あるいは、提供される刺激の有効性が薬理学的薬剤の不在下において提供される同じ刺激と比較して増加するような方法において、後根神経節内において作用するか、または後根神経節内での反応に影響を及ぼす薬理学的薬剤が提供され得る。具体的一実施形態において、当該薬理学的薬剤は、導入後に、チャネル遮断薬の存在下においてより高いレベルの刺激が使用され得るようにc-繊維受容体を効果的に遮断するチャネル遮断薬である。いくつかの実施形態において、薬剤は刺激前に放出され得る。他の実施形態において、薬剤は、刺激中、または刺激の後、またはそれらの組み合わせにおいて放出され得る。例えば、薬剤が単独で導入されるか、刺激が単独で提供されるか、刺激が薬剤の存在下において提供されるか、または刺激パターンの適用前に所望の薬理効果を導入するのに十分な時間を薬剤が与えるような方法において薬剤投与後にある時間間隔をあけて刺激が提供されるような治療法が提供される。
本発明の刺激システムおよび刺激方法の実施形態は、電気刺激と組み合わされたDRG送達された薬剤を用いたC-繊維およびAβ-繊維の閾値の微調整を可能にする。代表的な薬理学的薬剤としては、これらに限定されないが、Na+チャネル阻害剤、フェニトイン、カルバマゼピン、リドカインGDNF、オピエート、バイコディン、ウルトラム、およびモルヒネが挙げられる。
2.薬剤送達ビヒクルおよび方法
当該薬剤は、それ自体によって、または薬剤または薬剤送達ビヒクルもしくは薬剤送達方法を介して、標的組織、例えばDRGへ送達可能である。薬剤送達ビヒクルおよび薬剤送達方法の例としては、いくつか例を挙げると、ナノ粒子、ミセル、デンドリマー、リポソーム、ミスト、ミクロ液滴、エアゾール、噴霧化、ゲル、人工(artifical)DNAナノ構造体、および生物学的ベクターが挙げられる。これらのうちの少なくともいくつかを、本明細書において説明する。
いくつかの実施形態において、薬剤送達ビヒクルは、生体分解性ポリマーを含み、当該ポリマーは、薬剤供給が使い果たされてしまった後は外科的除去を必要としない。いくつかの実施形態において、脂肪酸ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(デカラクトン)、ポリε-カプロラクトン等が使用される。ポリ(D,L-ラクチド)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(D,L-ラクチド)、低分子量ポリ(D,L-ラクチド)とポリ(ε-カプロラクトン)のブレンド、で構成されるトリブロックポリマー系のような様々な他のポリマーも使用することができる。これらのポリマーは、主に、注射可能なin situ製剤のために使用される。生物活性剤の制御放出のための賦形剤としてのラクチド/グリコリドポリマーの実現可能性は、周知である。これらの材料は、任意の有害な副作用の所見もなく、広範囲の動物試験およびヒト試験に供されている。純粋なモノマーからGMP条件下において適切に調製された場合、当該ポリマーは、移植に関して炎症反応または他の悪影響の証拠は示されていない。
図12は、送達エレメント30を用いた、薬剤または薬剤含有送達ビヒクルの例示的送達を示している。送達エレメント30が、適切な脊髄レベルまで、硬膜上腔E内において脊髄Sに沿って進められ、ならびに椎弓根PDの間を、椎間孔を少なくとも部分的に通って進められているのが示されている。この例において、送達エレメント30は、出口ポート40を有するカテーテルを含む。送達エレメント30は、出口ポート40が標的DRGの近くにあるかまたは近接するように位置決めされる。薬剤または薬剤含有送達ビヒクルは、出口ポート40のうちの1つまたは複数を通って硬膜上腔内へと進められる。いくつかの実施形態において、薬剤または薬剤含有送達ビヒクルが、DRG内へと送達されるように、硬膜層DおよびDRGの神経上膜(epinurium)に充満、浸透、または行き渡ることは理解され得る。下記において説明されるであろうが、他の目的のために、例えば、神経刺激に影響を及ぼすため等に、薬剤をDRGの近くの硬膜上腔に送達することもできることも理解され得る。送達エレメント30が、例えば椎間孔外(extraforminal)アプローチ等、脊椎骨の外側から標的DRGにアプローチし得るが、この場合、当該送達エレメント30は、脊髄Sに向かって椎間孔中を進められることも理解され得る。
a.ナノ粒子
いくつかの実施形態において、標的脊髄構造、例えばDRGに送達される薬剤は、担体粒子中において送達することができ、この場合、当該担体粒子は薬剤を含む。本明細書において開示されるような担体粒子は、本明細書において開示されるような方法により薬剤を輸送するための任意の担体粒子を含む。いくつかの実施形態において、担体粒子は、コロイド分散系を含み、そのようなコロイド分散系としては、これらに限定されないが、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系、例えば、水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、リポソーム、および構造が特徴づけられていない脂質:オリゴヌクレオチド複合体、が挙げられる。いくつかの実施形態において、担体粒子は、リポソーム、デンドリマー、ナノ結晶、量子ドット、ナノシェルもしくはナノロッド、または同様の構造体である。
いくつかの実施形態において、所望の薬剤を標的脊髄構造に送達するための送達ツールとしての担体粒子として、例えば、これらに限定されないが、ミクロ脂質粒子もしくはナノ脂質粒子、例えば、リポソーム、スフェア、ミセル、またはナノ粒子が挙げられる。いくつかの実施形態において、担体粒子は単層(unilammar)、(担体粒子が二層以上を含むか、多層であることを意味する)である。いくつかの実施形態において、担体粒子はコロイド状分散系を含み、そのようなものとしては、これらに限定されないが、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系、例えば、水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、リポソーム、および構造が特徴づけられていない脂質:オリゴヌクレオチド複合体、が挙げられる。他の担体粒子は、細胞内取り込みまた膜破壊部分、例えば、ポリアミン、例えば、スペルミジン、スペルミン基、またはポリリジン等;脂質および親油基;ポリミキシンまたはポリミキシン誘導ペプチド;オクタペプチン;膜細孔形成ペプチド;イオノフォア;プロタミン;アミノグリコシド;ポリエン;等である。他の潜在的に有用な官能基としては、インターカレート剤;ラジカル発生剤;アルキル化剤;検出可能な標識;キレート剤;等が挙げられる。
「担体粒子」なる用語は、本明細書において使用される場合、身体において、薬剤と会合する能力または薬剤を運ぶ(輸送する)能力を有する任意の実体を意味する。本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、担体粒子は、不溶性薬剤および可溶性薬剤の両方を同時に運ぶことができる。代替の実施形態において、担体粒子は、不溶性薬剤または可溶性薬剤を運ぶことができる。担体粒子は、脂質粒子、例えば、これらに限定されないが、リポソームまたはタンパク質またはペプチド担体粒子、であり得る。担体粒子としては、これらに限定されないが、リポソームまたはポリマー性ナノ粒子、例えば、リポソーム、タンパク質、および非タンパク質ポリマー、が挙げられる。担体粒子は、(i)最適な薬剤を輸送するそれらの能力、および(ii)本明細書において開示されるような、膵島標的化分子と会合する能力、に従って選択することができる。
「ナノ粒子」なる用語は、本明細書において使用される場合、サイズがナノメートルにおいて測定されるような微視的粒子を意味する。ここで、担体粒子は、ナノ粒子であり得る。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるように、担体粒子はポリマーであり得る。担体粒子として有用な可溶性非タンパク質ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル(palitoyl)残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシン、が挙げられる。さらに、治療薬は、薬物、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマー等の制御放出の達成において有用な生体分解性ポリマーのクラスと結合させることができる。当該治療薬は、硬質ポリマーおよび他の構造体、例えば、フラーレンまたはバッキーボール(Buckeyball)等に取り付けることもできる。
そのような実施形態において、実際に、任意の薬剤または薬物を、薬剤が水溶液中に懸濁した状態で、凍結乾燥および再構成により、担体内に封入することができる。例えば、本明細書において開示されるように、両親媒性(amphiliphic)ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-b-PEG-COOH)コポリマーの使用は、水溶液中におけるナノ粒子への自発的自己集合を可能にする。したがって、水溶液が、標的脊髄構造内の特定の細胞型へ送達される薬剤、例えばDRG、DRまたはDREZ標的化分子を含む場合、薬剤は、自発的自己集合の際に担体ナノ粒子に自動的に封入され得る。そのような、自己集合する両親媒性(amphiliphic)ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(PLGA-b-PEG-COOH)コポリマーは、関心対象の薬剤を封入する担体粒子の最適化および大規模生産を簡素化するので、有利である。
したがって、いくつかの実施形態において、ポリマー担体粒子は、コポリマー、例えば、これらに限定されないが、PLGA-PEGコポリマー、例えば、これらに限定されないが、[PLGA-b-PEG-COOH]n、である。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーが[PLGA-b-PEG-COOH]nの場合、PLGAとPEGの、例えば、(75:25、50:50等、およびその逆も同様)等の様々な比率の様々なブレンド組成物が存在し得、ならびに、いくつかの実施形態において、他の生体分解性ポリマー、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、およびポリグリコリド等であり得るかまたは含み得る。
「ポリマー」なる用語は、本明細書において使用される場合、共有結合で結合された2つ以上の同一または非同一のサブユニットによる直鎖を意味する。ペプチドは、ポリマーの一例であり、これは、ペプチド結合によって結合された同一または非同一のアミノ酸サブユニットで構成され得る。コポリマーは、繰り返しユニット形態における様々な非同一サブユニットの連鎖である。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような組成物および方法において有用なコポリマーは、生体適合性および生体分解性の合成コポリマー、例えば、これらに限定されないが、以下:ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリオルトカーボネート、ポリジヒドロピラン、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシセルロース、ポリメチルメタクリレートのうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような薬剤を送達するための担体粒子として有用なコポリマーは、生体適合性および非分解性の合成コポリマー、例えば、これらに限定されないが、以下の、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック(Poloxamers 407、188、127、68)、ポリ(エチレンイミン)、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースのうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような組成物および方法において有用なコポリマーは、生体分解性の天然ポリマー、例えば、これらに限定されないが、以下の、キチン、キトサン、エラスチン、ゼラチン、コラーゲン、絹、アルギン酸塩、セルロース、ポリ核酸、ポリ(アミノ酸)、ヒアルロナン、ヘパリン、アガロース、プルランのうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような組成物および方法において有用なコポリマーは、生体分解性/生体適合性/天然ポリマーの組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、凍結保護、循環流中での長い半減期、またはその両方を容易にする薬剤(PEG、ヒアルロナン、他のもの)を含み得る第一層を含み得る。担体粒子は、少なくとも1種の不溶性薬剤および/または少なくとも1種の可溶性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、担体粒子は、当該担体粒子を特定の脊髄構造の場所、例えばDRGに対して、またはDRGの特定の細胞型、例えばc-繊維の細胞体に対して明確に標的化するための薬剤にコンジュゲートすることもできる。したがって、担体粒子は、特定の細胞型、例えば、これに限定されないが、DRGにおけるC-繊維細胞体等において発現する細胞表面マーカーに結合することができる(または、それに対して特異的親和性を有する)標的化分子を含み得る。標的細胞、例えば、DRGにおけるc-繊維細胞体等において発現する細胞表面マーカーに結合する(例えば、それに対して特異的親和性を有する)そのような標的化分子は、例えば、これらに限定されないが、ペプチド、抗体、もしくはアプタマー、またはそれらの改変型等であり得る。
別の実施形態において、担体粒子は、シクロデキストリンベースのナノ粒子である。多価イオン処方ナノ粒子は、脳への薬剤送達のために使用されており、任意の薬剤、例えば、これに限定されないが、siRNA等の送達にとって有用である。独特なシクロデキストリンベースのナノ粒子技術が、in vivoでの、標的化された遺伝子送達のために開発されてきた。この送達システムは、2つの構成要素からなる。第一構成要素は、生物学的非毒性シクロデキストリン含有多価イオン(CDP)である。CDPは、siRNAと共に自己集合して、約50nmの直径のコロイド状粒子を形成し、体液中での分解からsi/shRNAを保護する。さらに、CDPは、核酸の細胞内輸送および放出を支援するようにその末端にイミダゾール基を有するように設計されている。CDPは、第二構成要素との集合も可能にする。第二構成要素は、血漿との相互作用を最小化して、標的ニューロン細胞(例えば、DRG細胞)における細胞表面標的化マーカーへの付着を増加させるために、粒子を安定化するためのアダマンタン末端ポリエチレングリコール(PEG)修飾剤である。したがって、この送達システムの利点は、1)CDPが分解からsiRNAを保護するので核酸の化学修飾が不要である、2)末端アダマンタンとシクロデキストリンとの間での包接複合体形成により生じるPEGによる表面装飾のために、コロイド状粒子が体液中において凝集せずに長い寿命を有する、3)PEG鎖のうちのいくつかが少なくとも1つまたは複数の標的化分子を含有することができるので細胞型-特異的標的化送達が可能である、4)免疫反応を誘導しない、ならびに5)脂質によりin vivoで送達される場合に免疫賦活性であることが知られているモチーフを含有するsiRNAが使用される場合でも、in vivo送達がインターフェロン応答を生じない、ことである。
米国特許出願公開第20040241248号において開示されているグリコサミングリカン担体粒子、ならびにWO 06/017195において開示されている糖タンパク質担体粒子は、本発明の方法において有用であり、なお、これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様の自然発生的なポリマー型の担体も、本発明の方法において有用である。
いくつかの実施形態において、担体粒子は、標的化分子を含有する第二層でコーティングすることができる。特に、いくつかの実施形態において、担体粒子は、特定の標的細胞、例えば、ニューロン細胞またはDRG細胞の特定の型、例えば、DRGにおけるc-繊維細胞体等に結合することができる(またはそれらに対して特異性を有する)少なくとも標的化分子の付着によって修飾可能であるその能力により選択される。担体粒子は、(i)最良の薬剤を輸送するそれらの能力、および/または(ii)本明細書において開示されるような標的化部分と会合するそれらの能力、に従って選択することができる。いくつかの実施形態において、担体粒子は、担体粒子1個あたり、少なくとも1つ、または少なくとも約2つ、または少なくとも約3つ、または約4〜5の間、または約5〜10の間、または約10〜20の間、または約20〜50の間、または約50〜100の間、または約100〜200の間、または約200〜500の間または500以上、または1〜500の間またはそれ以上の任意の整数における標的化分子を含み得る。担体粒子1個あたりにおける複数の標的化分子は、標的位置または特定の標的細胞に対する担体粒子の標的化の効率を増加させるであろうことが想定される。いくつかの実施形態において、担体粒子は、2つ以上の異なる標的化分子を含み得、したがって、当該担体粒子(薬剤を含む)を2つ以上の標的細胞型に対して標的化することを可能にする。当業者であれば、担体粒子の外側に付着された薬剤の効果の能力、または標的化されたニューロン細胞の部位において薬剤を放出する担体粒子の能力に干渉することなく、標的化分子の最大量を決定するはずである。
標的化分子は、任意の好適な手段により、担体粒子、例えばナノ粒子等、または他の実体に結合させることができ、例えば、米国特許第4,625,014号、米国特許第5,057,301号、および米国特許第5,514,363号を参照されたく、なお、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらなる方法は、例えば、Hermanson(1996、Bioconjugate Techniques、Academic Press)、U.S. 6,180,084、およびU.S. 6,264,914に記載されており、なお、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、そのような方法としては、例えば、適用される免疫において一般的に使用されるように、ハプテンを担体タンパク質に結合させるために使用される方法が挙げられる(HarlowおよびLane、1988、「Antibodies:A laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨークを参照のこと)。場合によって、膵島標的化分子または担体粒子は、例えば、コンジュゲート手順またはそれにおいて利用される化学基に応じて、コンジュゲートに対する有効性または機能性を失い得る。しかしながら、コンジュゲートのための多種多様の方法を考えると、当業者は、コンジュゲートされるエンティティの有効性または機能性に全くまたはほとんど影響を及ぼさないコンジュゲート方法を見出すことができる。
別の実施形態において、2種以上の薬剤を、担体粒子、例えば、脂質粒子またはポリマー性ナノ粒子等によって送達することができる。そのような実施形態において、一方の薬剤は、不溶性(すなわち、疎水性または脂溶性(lipohilic))薬剤であり得、他方の薬剤は可溶性(すなわち、親水性)薬剤であり得る。不溶性(または疎水性/脂溶性)薬剤は、脂質粒子の形成の際に当該脂質粒子に加えることができ、ならびに当該脂質粒子の脂質部分と会合することができる。可溶性薬剤(すなわち、親水性薬剤)は、凍結乾燥された脂質流離の再水和の際に水溶液中に加えることによって脂質粒子と会合し、したがって、単体粒子中に封入される。2種の薬物送達の例示的実施形態は、可溶性薬剤、例えば、核酸、例えば、RNAi、modRNA等、および/または他の可溶性溶剤を含み得、これらは、担体粒子リポソームの水性内部に封入または捕捉され、ならびに不溶性(疎水性)薬剤および水溶液に難溶性の薬剤は、リポソーム担体粒子の脂質部分と会合する。本明細書において使用される場合、「水溶液に難溶性」とは、水に対して10%未満の可溶性である組成物を意味する。
当該方法の一態様において、標的化分子:担体粒子複合体は、検出可能に標識化することができ、例えば、それは、担体粒子、例えば、リポソーム等を含み得、またはポリマー性ナノ粒子は、放射性標識、蛍光標識、非蛍光標識、染料、または磁気共鳴映像法(MRI)を高める化合物を含む群より選択される標識で検出可能に標識化される。一実施形態において、当該リポソーム生成物は、音響反射率によって検出される。当該標識は、リポソームの外部に付着させてもよく、またはリポソームの内部に封入してもよい。
b.ミセルおよびデンドリマー
いくつかの実施形態において、本発明に用いる担体粒子は、マイクロ脂質粒子またはナノ脂質粒子、例えば、スフェア、ミセルまたはデンドリマーでありうる。いくつかの実施形態において、担体粒子は単層(担体粒子が二層以上を含むか、多層であることを意味する)である。
ミセルは、液体コロイド中に分散した表面活性物質分子の凝集体である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触している親水性「頭部」領域を有し、疎水性単一尾部領域をミセルの中心に隔離している凝集体を形成している。この種のミセルは、順相ミセル(水中油型ミセル)として公知である。逆ミセルは、中心における頭部基と外部に延びている尾部を有する(油中水型ミセル)。
「ミセル」という用語は、本明細書で用いているように、表面活性物質分子の配置を意味する(表面活性物質は、非極性の親油性「尾部」および極性の親水性「頭部」を含む)。当用語を本明細書で用いるときのミセルは、非極性尾部が内側に向いており、極性頭部が外側に向いている水溶液中の配置を有する。ミセルは、典型的に小分子の凝集により形成されるコロイド粒子であり、通常、ある種の液体媒体、例えば、水に懸濁した顕微鏡的粒子であり、サイズが1ナノメートルと1マイクロメートルの間である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触している親水性「頭部」領域を有し、疎水性尾部領域をミセルの中心に隔離している凝集体を形成している。この種のミセルは、順相ミセル(水中油型ミセル)として公知である。逆ミセルは、中心における頭部基と外部に延びている尾部を有する(油中水型ミセル)。
ミセルは、本明細書で開示するようにリポソームより直径および周囲が典型的に小さく、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,763,271号、第7,674,478号、第5,510,103号、第5,925,720号および米国特許出願公開第2011/0142884号に開示されている。ミセルは、親水性および疎水性部分の両方を含む両親媒性分子のコロイド状凝集体でありうる。水等の極性媒体中では、ミセルを形成する両親媒性物質の疎水性部分は、極性部分から離れて位置する傾向があるが、頭部基としても公知である分子の極性部分は、極性ミセル水(溶媒)界面に位置する傾向がある。他方で、ミセルは、非極性有機溶媒、例えば、ヘキサン等の非極性媒体中においても形成される可能性があり、それにより、小水滴の周りの両親媒性クラスターが系の中心に存在する。非極性媒体中では、疎水性部分は、非極性媒体に曝露されているが、親水性部分は、溶媒から離れて位置する傾向があり、水滴の方を向いている。そのようなアセンブリは、時として逆ミセルと呼ばれている。これらの前述の2つの系は、それぞれ油中水および水中油型の系である。
ミセルを形成する方法は、ミセル形成として公知である。薬剤、抗体、抗体断片、インテグリンリガンドまたはインテグリンリガンド断片またはその変異体の懸濁液を従来の方法によりミセルに封入してリポソームを形成することができる場合に、ミセルを製造することができる(参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,043,164号、米国特許第4,957,735,I5号、米国特許第4,925,661号、ConnorおよびHuang、(1985年) J. Cell Biol.、101巻、581頁、Lasic D.D.(1992年) Nature、355巻、279頁、Novel Drug Delivery(PrescottおよびNimmo編、Wiley、New York、1989年)、Reddyら(1992年) J. Immunol.、148巻、1585頁)。
ミセルは、形状がほぼ球状である。ミセルの形状およびサイズは、その表面活性物質分子の分子形状ならびに表面活性物質濃度、温度、pHおよびイオン強度等の溶液条件の関数であるので、系の条件および組成によって、楕円、円柱および二重層等の形状を含む他の相も可能である。例えば、ほぼ臨界ミセル濃度(CMC)の希薄溶液中の小ミセルは、一般的に球状であると考えられている。しかし、他の条件下では、それらは、ゆがんだ球、ディスク、ロッド、ラメラ等の形状である可能性がある。
例えば、Kataokaらへの米国特許第5,929,177号は、とりわけ薬物送達担体として使用できるポリマー分子を記載している。ミセルは、その末端の両方に官能基を有し、親水性/疎水性セグメントを含むブロックコポリマーから形成させることができる。ブロックコポリマーの末端におけるポリマー官能基は、α末端におけるアミノ、カルボキシルおよびメルカプト基ならびにオメガ末端におけるヒドロキシル、カルボキシル基、アルデヒド基およびビニル基を含む。親水性セグメントは、ポリエチレンオキシドを含むが、疎水性セグメントは、ラクチド、ラクトンまたは(メタ)アクリル酸エステルに由来する。
いくつかの実施形態において、薬剤を送達するために用いる担体粒子は、デンドリマーである。デンドリマーは、直径が約5〜10ナノメートルである詳細に定義された合成ナノ材料である。それらは、中心コアを囲むポリマーの層で構成されている。特に、デンドリマーは、分岐巨大分子であり、単純コアユニットの周りに構築されている。それらは、高度の分子均一性、狭い分子量分布、特有のサイズおよび形状特徴ならびに高度官能基化末端表面を有する。製造方法は、中心イニシエーターコアから開始される一連の反復ステップである。各後続の成長ステップは、より大きい分子径を有するポリマーの新たな「世代」を意味し、反応性表面部位の数を2倍にし、先行する世代の分子量をほぼ2倍にする。
デンドリマーは、それらのサイズ、デンドリマーのコアへの薬物の見込まれる封入および薬物の化学的コンジュゲーション、可溶化基(ポリエチレングリコールを含む)およびそれらを薬物送達のための理想的なナノ担体とするデンドリマーの表面へのリガンドのためにナノ担体として魅力があった。いくつかの実施形態において、デンドリマーの表面は、薬物または薬剤が結合する可能性がある多くの異なる部位を、またデンドリマーが身体と相互作用する仕方を修正するために用いることができるポリエチレングリコール(PEG)等の物質に対する結合部位も含む。PEGは、デンドリマーを「隠し」、身体の防御機構がそれを検出することを妨げ、それにより分解の過程を遅くするためにデンドリマーに結合させることができる。これは、送達システムが体内で長期間循環することを可能にし、薬物が適切な部位に到達する機会を最大限にする。
本明細書で開示した標的脊髄構造に送達すべき薬剤の担体として用いるデンドリマーは、すべてが参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,316,845号、第7,390,407号、第7,405,042号、第7,320,963号、第7,354,969号、第7,384,626号、第7,425,582号、第7,459,146号および第7,432,239号に開示されている。
c.リポソーム
いくつかの実施形態において、担体粒子は、薬剤を捕捉し、本明細書における方法および装置を用いて標的脊髄構造に送達するために用いられるリポソームである。リポソームは、二重層の形態で整列した脂質で構成された1つまたは複数の外層により囲まれた水性コアを有する顕微鏡的球体である(一般的にChonnら、Current Op. Biotech. 1995年、6巻、698〜708頁参照)。リポソームは、反復注入においてさえ非毒性、非溶血性および非免疫原性であり、それらは、生体適合性および生分解性である。脂質ベースのリガンド被覆ナノ担体は、それらのペイロードを、運ばれる薬物/造影剤の性質によって、疎水性シェル内または親水性内部に保存しうる。
リポソームは、捕捉された水性塊(volume)を含む完全に閉鎖された脂質二重膜である。リポソームは、単一膜二重層を有する単層小胞またはそれぞれが次のものから水性層により分離された多重膜二重層によって特徴付けられるタマネギ様構造である、多層小胞であってもよい。好ましい一実施形態において、本発明のリポソームは、単層小胞である。二重層は、疎水性「尾部」領域および親水性「頭部」領域を有する2つの脂質単層から構成されている。膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)「尾部」が二重層の中心の方向に配向するのに対して、親水性「頭部」は水相の方向に配向するようになっている。
リポソーム粒子は、薬剤がその中に含まれている限り、単層または多層等の任意の適切な構造のものでありうる。N-[I-(2,3ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-メチル硫酸アンモニウム(-anunoniummethylsulfate)または「DOTAP」等の正に荷電した脂質は、そのような粒子および小胞用に特に好ましい。そのような脂質粒子の調製は、周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,880,635号、第4,906,477号、第4,911,928号、第4,917,951号、第4,920,016号および第4,921,757号を参照のこと。他の非毒性脂質ベースの媒体成分は、膵島内皮細胞による、運ばれる(例えば、封入または担体粒子の外側上)薬剤の取込みを促進するために同様に利用することができる。
本明細書で開示した方法および組成物に有用なリポソームは、周知であり、リポソームを製造するために当技術分野で常用されている脂質材料の組合せから製造することがきる。脂質は、スフィンゴミエリン等の比較的硬い種類のものまたは不飽和アシル鎖を有するリン脂質等の液体等でありうる。「リン脂質」は、リポソームを形成することができるいずれか1つのリン脂質またはリン脂質の組合せを意味する。卵、大豆もしくは他の植物源から得られるものまたは部分的もしくは完全に合成によるもの、あるいは可変脂質鎖長および不飽和のものを含むホスファチジルコリン(PC)は、本発明に用いるのに適している。
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、大豆ホスファチジルコリン(大豆PC)、卵ホスファチジルコリン(卵PC)、水素添加卵ホスファチジルコリン(HEPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)を含むが、これらに限定されない合成、半合成および天然産物ホスファチジルコリンは、本発明に用いるのに適するホスファチジルコリンである。これらのリン脂質のすべてが市販されている。さらに、ホスファチジルグリセロール(PG)およびホスファチジン酸(phosphatic acid)(PA)も本発明に用いるのに適するリン脂質であり、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジラウリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジラウリルホスファチジン酸(DLPA)およびジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を含むが、これらに限定されない。ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)は、製剤に用いる場合に好ましい負に荷電した脂質である。他の適切なリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンならびにラウリン、ミリスチン、ステアロイルおよびパルミチン酸鎖を含むホスファチジン酸等がある。脂質膜を安定化する目的のために、コレステロール等のさらなる脂質成分を加えることが好ましい。本発明によるリポソームを製造するための好ましい脂質としては、コレステロール(CH)とさらに組み合わせたホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルコリン(PC)等がある。本発明の一実施形態によれば、本発明のリポソームを製造するための脂質とコレステロールの組合せは、3:1:1のPE:PC:Cholモル比を含む。さらに、リン脂質を含むポリエチレングリコール(PEG)の組込みも本発明により企図される。
本明細書で開示した方法および組成物に有用なリポソームは、当業者に公知の任意の方法により得ることができる。例えば、本発明のリポソーム製剤は、逆相蒸発(REV)法(米国特許第4,235,871号参照)、注入手順または界面活性剤希釈により製造することができる。リポソームを製造するためのこれらおよび他の方法の総説は、教科書Liposomes、Marc Ostro編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1983年、1章に見いだすことができる。Szoka Jr.ら(1980年、Ann. Rev. Biophys. Bioeng.、9巻、467頁)も参照のこと。ULVを形成する方法は、「Extrusion Technique for Producing Unilamellar Vesicles」と題するCullisら、PCT公開第87/00238号、1986年1月16日に記載されている。多層リポソーム(MLV)は、脂質フィルム法により調製することができ、該方法において、脂質をクロロホルム-メタノール溶液(3:1、容積/容積)に溶解し、減圧下で蒸発乾固し、膨潤溶液により水和する。次いで、溶液を広範な撹拌および例えば、37℃で、例えば、2時間のインキュベーションに供する。インキュベーションの後、押出しにより単層リポソーム(ULV)が得られる。押出しステップは、リポソームのサイズを好ましい平均直径に減少させることによりリポソームを改変する。
いくつかの実施形態において、所望のサイズのリポソームは、ろ過または他のサイズ選択技術等の技術を用いて選択することができる。本発明のサイズ選択済みリポソームは約300nm未満の平均直径を有するべきであるが、それらは、約200nm未満の平均直径を有するように選択されることが好ましく、約100nm未満の平均直径が特に好ましい。本発明のリポソームが単層リポソームである場合、それは、好ましくは約200nm未満の平均直径を有するように選択される。本発明の最も好ましい単層リポソームは、約100nm未満の平均直径を有する。しかし、より小さい単層リポソームに由来する本発明の多小胞リポソームが一般的により大きく、約1000nm未満の平均直径を有しうることは理解される。本発明の好ましい多小胞リポソームは、約800nm未満、約500nm未満の平均直径を有するが、本発明の最も好ましい多小胞リポソームは、約300nm未満の平均直径を有する。
いくつかの実施形態において、リポソームの外表面は、長循環剤(long-circulating agent)、例えば、PEG、例えば、ヒアルロン酸(HA)で修飾することができる。長循環剤としての親水性ポリマーによるリポソームの修飾は、血液中のリポソームの半減期を長くすることができることが公知である。親水性ポリマーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリメチルエチレングリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリメチルプロピレングリコールおよびポリヒドロキシプロピレンオキシド等がある。一実施形態において、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。グリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸も長循環剤として用いることができる。
リポソームは、凍結防止剤、例えば、トレハロース、スクロース、マンノースまたはグルコース等の糖、例えば、HAで修飾することができる。いくつかの実施形態において、リポソームをHAで被覆する。HAは、長循環剤および凍結防止剤の両方として作用する。リポソームを標的部分の結合により修飾する。他の実施形態において、標的化分子は、リポソーム表面に結合しているHAに共有結合させることができる。あるいは、担体粒子はミセルである。あるいは、ミセルを凍結防止剤、例えば、HA、PEGで修飾する。
リポソームまたは他のポリマーナノ粒子を標的化分子で被覆する方法は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、2006年4月24日に出願された米国仮特許出願第60/794,361号および2007年4月24日に出願された国際特許出願PCT/US07/10075に開示されている。
一実施形態において、薬剤は、標的脊髄構造内の特定の細胞型を標的とするための免疫リポソームである担体粒子で送達することができ、標的化分子は、担体粒子と結合しており、担体粒子は、少なくとも1つの薬剤を含む。
一実施形態において、リポソームは、薬物もしくは薬剤の封入の前に、または少なくとも1つの標的化分子の結合の前に、凍結乾燥条件で保存することができる。
有効である任意の適切な脂質:薬理学的薬剤の比は、本発明により企図される。いくつかの実施形態において、脂質:薬理学的薬剤のモル比は、約2:1〜約30:1、約5:1〜約100:1、約10:1〜約40:1、約15:1〜約25:1等である。
いくつかの実施形態において、治療薬または薬理学的薬剤の負荷効率は、約50%、約60%、約70%またはそれ以上の封入された薬理学的薬剤のパーセントである。一実施形態において、可溶性薬剤の負荷効率は、50〜100%の範囲にある。いくつかの実施形態において、脂質粒子の脂質部分と結合させるべき不溶性薬剤(すなわち、水溶液に難溶性の薬理学的薬剤)の負荷効率は、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%の負荷された薬理学的薬剤のパーセントである。一実施形態において、脂質層における疎水性薬剤の負荷効率は、80〜100%の範囲にある。
いくつかの実施形態において、リポソームは、段階的にアセンブリングされた複数の層を含むことができ、各層は、標的脊髄構造に送達すべき少なくとも1つの薬剤を含むことができる。一実施形態において、第1のステップは、空のナノスケールのリポソームの調製である。リポソームは、当業者に公知の任意の方法により調製することができる。第2のステップは、第1の層への薬剤の添加である。第1の層は、共有結合修飾によりリポソームに付加する。いくつかの実施形態において、第1の層は、ヒアルロン酸または他の凍結防止剤グルコサミノグリカンを含む。リポソーム組成物は、第1の層の付加の後に随時、凍結乾燥し、再構成することもできる。第3のステップは、第2の表面修飾を加えることである。第2の層は、第1の層への共有結合により付加する。第2の層は、少なくとも1つの標的化分子を含む。さらなる層をリポソームに付加することができ、これらの層は、追加の薬剤および/または標的化分子を含みうる。あるいは、第2の層は、標的化分子ならびに薬剤の不均一混合物を含みうる。リポソーム組成物は、最終標的層の付加の後に凍結乾燥することができる。標的脊髄構造に送達すべき対象の薬剤は、薬剤を含む水溶液によるリポソームの再水和によってリポソームにより封入させることができる。一実施形態において、水溶液に難溶性である薬剤または疎水性である薬剤は、ステップ1におけるリポソームの調製時に組成物に付加することができる。
「安定化リポソーム」という用語は、本明細書で用いているように、凍結防止剤および/または長循環剤を含むリポソームを意味する。
「封入」および「捕捉」という用語は、本明細書で用いているように、脂質粒子中への薬剤の組込みを意味する。薬剤は、脂質粒子の水性の内部に存在する可能性があり、例えば、親水性薬剤である。一実施形態において、封入薬剤の一部は、リポソームの内部で析出した塩の形をとる。薬剤は、リポソームの内部で自己析出する可能性もある。代替の実施形態において、薬剤は、担体粒子の脂質相に組み込むことができ、例えば、疎水性および/または親油性薬剤である。
「脂質粒子」という用語は、リポソームまたはミセル等の脂質小胞を意味する。
「親水性」という用語は、本明細書で用いているように、典型的に電荷が分極し、水素結合でき、それが油または他の疎水性溶媒に対するよりも水に対して容易に溶解することを可能にする分子または分子の一部を意味する。親水性分子は、極性分子としても公知であり、水分を容易に吸収する分子であり、吸湿性であり、水と容易に相互作用する強極性基を有する。当用語を本明細書で用いるときの「親水性」ポリマーは、25℃で少なくとも100mg/mlの水に対する溶解度を有する。
「可溶性薬剤」または「親水性薬剤」および「親水性薬物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、生物学的または薬理学的活性を有し、10mg/mlより大きい水溶解度を有する治療目的のために適合されまたは用いられる任意の有機または無機化合物または物質を意味する。
「疎水性」という用語は、本明細書で用いているように、非極性であり、他の中性分子および非極性溶媒を好む傾向がある分子を意味する。水中の疎水性分子は、しばしば集合する。疎水性表面上の水は、高い接触角を示す。疎水性分子の例としては、一般にアルカン、油、脂肪および油性物質等がある。疎水性物質は、水からの油の除去、油漏出の管理および極性化合物から非極性化合物を除去するための化学的分離過程に用いられる。疎水性分子は、非極性分子としても公知である。疎水性分子は、水を容易に吸収せず、または例えば、疎水コロイドとして水による悪影響を受ける。当用語を本明細書で用いるときの「疎水性」ポリマーは、25℃で10mg/ml未満、好ましくは5mg/ml未満、1mg/ml未満またはそれ以下の水に対する溶解度を有する。
「親油性」という用語は、本明細書で用いているように、脂質分子または脂肪分子に対する親和性を有し、親油性に関連するまたは親油性によって特徴付けられる分子を指すために用いる。親油性または脂肪結合分子は、脂肪、油、脂質および例えば、ヘキサンまたはトルエン等の非極性溶媒に溶解する能力を有する分子を意味する。親油性物質は、他の親油性物質に溶解する傾向があるのに対して、親水性(水を好む)物質は、水および他の親水性物質に溶解する傾向がある。親油性、疎水性および非極性(後者は分子間相互作用を記述するために用い、双極子における電荷の分離を記述しない)はすべて、本質的には同じ分子属性を記述するものであり、これらの用語は、しばしば互換的に使用される。
「不溶性薬剤」または「疎水性薬剤」または「疎水性薬物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、生物学的または薬理学的活性を有し、10mg/ml未満の水溶解度を有する治療目的のために適合されまたは用いられる任意の有機または無機化合物または物質を意味する。典型的に不溶性薬剤は、生理的pH(6.5〜7.4)において約<5mg/ml、または約<1mg/ml、または約<0.1mg/mlのような少なくとも10mg/ml未満を有する、正常な生理的温度でまたはそれ以下で水に対する不十分な溶解度を有する薬剤のような、水不溶性、難水溶性または難溶性である薬剤である。
「水溶液」という用語は、本明細書で用いているように、添加剤を含まない水、または医薬製剤の調製に一般的に用いられているようなpH緩衝剤、張性調整用の成分、抗酸化剤、保存剤、薬物安定化剤等等の添加剤もしくは賦形剤を含む水溶液を含む。
d.ビロソーム
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置、システムおよび方法を用いて送達すべき薬剤は、ビロソームに封入する。ビロソームは、エンベロープウイルス由来のウイルス糖タンパク質を含む脂質二重層を含む担体粒子である。ビロソーム(またはビロソーム様粒子、粒子の正確なサイズおよび形状を考慮して)は、一般的に界面活性剤によるエンベロープウイルスからの膜タンパク質および脂質の抽出とそれに続く、抽出脂質およびウイルス膜タンパク質からのこの界面活性剤の除去、事実上は、ウイルスコアまたはヌクレオキャプシドを囲む特徴的な脂質二重層(エンベロープ)の再構成または再形成により製造される。
「ビロソーム」という用語は、特有の形態のウイルス様粒子(YLP)を定義する。ビロソームは、ウイルス粒子由来の半合成複合体であり、in vitro手順により製造される。それらは、本質的に再構成ウイルスコートであるが、ウイルスヌクレオキャプシドは、最適な化合物により置換される。ビロソームは、それらの融合誘導活性を保持し、それにより、取込み化合物(抗原、薬剤、遺伝子)を標的細胞内に送達する。それらは、ワクチン、薬剤送達または遺伝子導入に用いることができる。
ウイルス様粒子(VLP)は、サイズおよび形状がそれらの親ウイルスを連想させる、または区別さえできない粒子構造体であるが、宿主細胞において感染し、複製する能力を欠いている。VLPは、ウイルスタンパク質からなる多量体構造(それの真性または修飾変異体)である。さらに、VLPは、核酸、脂質を含むまたは含まないことがあり、脂質膜構造を含むまたは含まない。単一ウイルス(HBV)由来のVLPの2つの典型的であるが、非常に異なる例は、HBsおよびHBc粒子である。
ビロソームは、ビロソームが標的細胞と融合することを可能にするウイルス由来タンパク質を組み込んだ単層リン脂質二重層小胞である。ビロソームは、複製することができないが、純粋な融合活性小胞である。リポソームと対照的に、ビロソームは、機能性ウイルスエンベロープ糖タンパク質、例えば、リン脂質二重層膜に挿入されたインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含む。ビロソームは、典型的に150nmの平均直径を有し、理論に限定されることなく、ビロソームは、源ウイルスの遺伝物質を含むヌクレオキャプシドを欠いている、再構成空インフルエンザウイルスエンベロープである。
ビロソームの独特な特性は、それらの膜における生物学的に活性なインフルエンザHAの存在に部分的に関連している。このウイルスタンパク質は、ビロソームベースの製剤に構造安定性および均一性を与えるだけでなく、他のリポソームおよびプロテオリポソーム担体システムと明らかに異なったビロソームの免疫学的特性にも著しく寄与している。
ビロソームは、短鎖リン脂質によるウイルス膜の可溶化およびウイルス膜成分の精製とそれに続く短鎖リン脂質の除去により製造することができる。短鎖リン脂質は、それぞれ12個未満の炭素原子を有するアシル鎖を含む。一実施形態において、短鎖リン脂質は、ホスファチジルコリン、例えば、1,2-ジヘプタノイル-sn-ホスファチジルコリン(DHPC)または1,2-ジカプロイル-sn-ホスファチジルコリン(DCPC)である。短鎖リン脂質は、合成によりまたは半合成により製造することができる。ビロソームはまた、天然に存在する(すなわち、中鎖から長鎖)リン脂質の種々の組成物を用いる古典的な界面活性剤透析法により調製することができる(J. Biochemistry and Molecular Biology、35巻、5号、2002年、459〜464頁。例えば、Kim Hong Sungらにより用いられたリン脂質は、主としてC16およびC18脂肪アシル鎖を有する卵PCならびに2つのC18:1脂肪アシル鎖を有するジオレオイルPEであった)。
本明細書で開示した標的脊髄構造に送達すべき薬剤の担体として用いるビロソームは、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、国際出願WO1992/19267、WO1998/52603、米国特許第7,901,902号、第5,565,203号ならびに米国特許出願公開第2009/0202622号、第2009/0087453号および第2006/0228376号に開示されている。さらに、例えば、既製のビロソーム(EPAXAL(商標)またはInflexal(商標))等の市販のビロソームを用いることができる。いくつかの実施形態において、ビロソームは、神経細胞に対する高い向性(trophism)を有するウイルスからの、例えば、神経細胞に対する高い親和性を有し、高い親和性および効率で神経細胞を特異的にトランスフェクトするウイルス、例えば、アデノウイルス粒子、単純疱疹ウイルス粒子等からのウイルス糖タンパク質を含む。
e.ミスト、微小液滴、エアロゾル、霧化
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した方法、システムおよび装置により標的脊髄構造に送達される薬剤は、エアロゾルの形態でまたは噴霧により、例えば、ミスト、微小液滴、エアロゾルおよび霧化の形態で投与することができる。エアロゾルとしての使用のために、薬剤は、溶液または懸濁液に存在していてよく、装置に存在する加圧エアロゾルに接続することができ、適切な噴射剤、例えば、空気、従来の佐剤を含むプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤により送達することができる。薬剤はまた、例えば、ネブライザーまたは噴霧器等で非加圧の形態で投与することができる。
「噴霧」という用語は、当技術分野で周知であり、液体を微細な噴霧体に縮小させることを含む。好ましくは、そのような噴霧により、均一なサイズの小液滴が液体のより大きい本体から、制御された様式で生成される。噴霧は、任意の適切な手段により、したがって、今日公知で、市販されている多くのネブライザーを用いる等により達成することができる。有効成分が、ネブライザーにより一緒にまたは個別に投与されるように適合される場合、それらは、単位用量または複数回分用量装置としての、適切なpHまたは張性調整を伴うまたは伴わない噴霧水性懸濁液または溶液の形態であってよい。
任意の適切なガスを用いて、噴霧時に圧力を加えることができ、現在までの好ましいガスは、送達される薬剤に対して化学的に不活性であるものである。具体例としてのガスは、空気、窒素、アルゴンまたはヘリウムを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、薬剤は、乾燥粉末の形態でエアロゾルとしても投与することができる。乾燥粉末として使用するために、組成物の正しい用量が患者に送達されるように、耐圧キャニスターまたは容器に液化噴射剤に溶解した医薬組成物または液化噴射剤に懸濁した微粉化粒子のような製品を満たす。
乾燥粉末エアロゾルは、主として5μm未満の範囲の平均直径で一般的に生成する。粒子の直径が3μmを超えるとき、マクロファージによる食作用がますます少なくなる。粉末組成物は、エアロゾルディスペンサーにより、または刺して、粉末を標的脊髄位置へのカテーテルに沿った定常流中に吹き出すことができる破壊可能なカプセルに入れることにより投与することができる。組成物は、噴射剤、表面活性物質および共溶媒を含んでいてよく、適切な計量弁により閉鎖されるエアロゾル容器に満たすことができる。
エアロゾルは、当技術分野で公知である。すべての内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、例えば、Adjei, A.およびGarren, J.、Pharm. Res.、1巻、565〜569頁(1990年)、Zanen, P.およびLamm, J.-W.J.、Int. J. Pharm.、114巻、111〜115頁(1995年)、Gonda, I.「Aerosols for delivery of therapeutic an diagnostic agents to the respiratory tract」、in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Sysems、6巻、273〜313頁(1990年)、Andersonら、Am. Rev. Respir. Dis.、140巻、1317〜1324頁(1989年)を参照のこと、またペプチドおよびタンパク質の全身送達の可能性も有する(PattonおよびPlatz、Advanced Drug Delivery Reviews、8巻、179〜196頁(1992年))、Timsinaら、Int. J. Pharm.、101巻、1〜13頁(1995年)、ならびにTansey, I. P.、Spray Technol. Market、4巻、26〜29頁(1994年)、French, D. L.、Edwards, D. A.およびNiven, R. W.、Aerosol Sci.、27巻、769〜783頁(1996年)、Visser, J.、Powder Technology、58巻、1〜10頁(1989年)、Rudt, S.およびR. H. Muller, J.、Controlled Release、22巻、263〜272頁(1992年)、Tabata, Y.およびY. Ikeda、Biomed. Mater. Res.、22巻、837〜858頁(1988年)、Wall, D. A.、Drug Delivery、2巻、10号、1〜20頁(1995年)、Patton, J.およびPlatz, R.、Adv. Drug Del. Rev.、8巻、179〜196頁(1992年)、Bryon, P.、Adv. Drug. Del. Rev.、5巻、107〜132頁(1990年)、Patton, J. S.ら、Controlled Release、28巻、15号、79〜85頁(1994年)、Damms, B.およびBains, W.、Nature Biotechnology(1996年)、Niven, R. W.ら、Pharm. Res.、12巻(9号)、1343〜1349頁(1995年)ならびにKobayashi, S.ら、Pharm. Res.、13巻(1号)、80〜83頁(1996年)。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置、システムおよび方法により送達される薬剤は、微小液滴の形態である。最初に単層小胞と呼ばれた、微小液滴は、直径が約500オングストローム、直径が200オングストロームから少なくとも1ミクロン(10,000オングストローム)までの範囲の有機液相薬剤の球体からなり、適切なリン脂質の単層で被覆されている。微小液滴は、内部に水相を有する球状脂質二重層からなる、リポソーム(多層)および単層リン脂質小胞と区別される。
微小液滴は、任意の水不溶性/油溶性薬剤化合物または薬剤を送達するために用いることができる。有機液相は、薬物または薬剤自体でありうる。微小液滴の利点は、薬剤物質の組織への比較的に遅い放出、より低い代謝分解、初回通過効果により標的送達を可能にすること、ならびに肝臓および他の臓器における低い毒性副作用等である。
用いる微小粒子は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、薬剤のサブミクロンサイズの粒子のリン脂質安定化水性懸濁液(米国特許第5,091,187号、第5,091,188号および第5,246,707号参照)および薬剤を適切な生体適合性疎水性担体に溶解することによるリン脂質安定化水中油型乳剤である微小液滴(米国特許第4,622,219号および第4,725,442号参照)でありうる。微小粒子は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる第6,576,264号、第5,624,608号および第6,974,593号に開示されているような装置を用いて製造することができる。微小液滴は、本明細書で開示した方法および装置により標的脊髄構造に送達されるミストを形成しうる。
f.ゲル
いくつかの実施形態において、薬剤は、ゲルからなる。ゲルは、定常状態の固体に類似している実質的に希薄な架橋系である。重量により、ゲルは、ほとんど液体であるのにもかかわらず、液体内の三次元架橋ネットワークのため固体のように挙動する。この内部ネットワーク構造は、物理的結合(物理的ゲル)または化学的結合(化学的ゲル)ならびに増量(extending)流体内で完全のままである微結晶または他の結合に起因する可能性がある。水(ヒドロゲル)、油および空気(エアロゲル)等の事実上あらゆる流体を増量剤として用いることができる。
薬剤は、DRGの上、近傍、周りまたは隣接部位等の標的組織部位にゲルの形態でまたは標的部位でゲル化する液体の形態で送達することができる。図13に標的DRGに隣接する硬膜外腔Eに送達されたゲル200を示す。この例において、ゲル200は、図12に示す方法により送達される。薬剤のゲル化は、2〜3例を挙げると、光活性化、電気活性化、温度活性化およびpH活性化等の様々な手法により達成することができる。
典型的に、光は、送達エレメント等の薬剤が送達される装置により送達される。いくつかの実施形態において、光は、別個の装置により送達される。同様に、電気エネルギーは、薬剤が送達される装置によりまたは針等の別個の装置により送達させることができる。温度活性化は、自然環境によりもたらされる温度の変化により達成することができる。例えば、薬剤を特定の温度に保持することができ、標的部位への送達により、薬剤の温度を標的組織の自然温度にもしくはそれに向けて遷移させ、それにより薬剤をゲル化する。または、温度活性化は、例えば、送達エレメントにより適用する等により、標的部位を直接加熱または冷却することによって達成することができる。同様に、pH活性化は、自然環境によりもたらされるpHの変化により達成することができる。例えば、薬剤は、特定のpHを有する可能性があり、標的部位へのまたはそれに向けての送達により、薬剤のpHを標的組織の自然pHに遷移させ、それにより薬剤をゲル化する。または、pH活性化は、例えば、送達エレメントにより適用する等により、標的部位におけるpHを直接変化させることによって達成することができる。
ゲルが標的組織部位に送達されたならば、ネットワーク構造がゲルを標的部位に保持すると同時に、薬剤が例えば、制御された放出様式で送達される。典型的に、ネットワーク構造は、長い期間の間に生分解性となる。
1)バイオゲル
いくつかの実施形態において、ゲルは、in vivoでバイオゲルを含み、タンパク質薬剤を長期間にわたりゆっくり放出する。いくつかの例では、バイオゲルは、生理的条件への曝露時に静電的に連結してゲルを形成する生体適合性成分であるカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリエチレンイミンを用いて設計される。典型的に、ゲルは、生物学的物質が入ることを妨げると同時に、薬剤を遅く、制御された様式で15日までの期間にわたって放出するのに十分な多孔性である。タンパク質薬剤のこのゆっくりした送達は、それらの治療上の利益を増大させるものである。
2)ナノファイバーヒドロゲル足場
いくつかの実施形態において、薬剤は、ナノファイバーヒドロゲル足場を含む。そのようなゲルは、種々のサイズのタンパク質を成功裏に運び、放出することができる織タンパク質の小断片からなる。放出速度は、特定の期間にわたり連続的な薬物の送達を可能にする、ゲルの密度を変化させることにより制御することができる。タンパク質は、ゲルから数時間、数日または数ヵ月にもわたり放出され、ゲル自体は、最終的に無害のアミノ酸に分解される。そのようなペプチドヒドロゲルは、純粋であり、設計および使用が容易であり、非毒性、非免疫原性、生体吸収性であり、特定の組織に局所的に適用できるので、薬剤の送達に理想的に適している。さらに、ゲルにより運ばれたタンパク質は、送達後に無傷で出現し、それらの機能に対する有害な影響はない。
3)注射可能なin situ形成ゲル
いくつかの実施形態において、標的組織に送達された薬剤がin situでゲルを形成する。ゲルは、次に、長時間にわたる標的組織への薬剤の制御送達をもたらすことができる。薬剤は注射可能であるので、薬剤を薬剤送達モジュールに保存し、上述のような送達エレメントを用いて標的組織に送達することができる。薬剤は、それが送達エレメントから標的組織部位に注入されるまで、ゲルを形成しない。
いくつかの実施形態において、薬剤は、キトサンを含む。キトサンは、エビおよびカニ殻の天然成分であるキチンのアルカリ脱アセチル化により得られる生体適合性pH依存性陽イオンポリマーである。キトサンは、pH6.2まで水溶液に溶解したままである。6.2を超えるpHへのキトサン水溶液の中和により、水和ゲル様沈殿物の形成がもたらされる。pHゲル化陽イオン多糖溶液は、グリセロール、ソルビトール、フルクトースまたはグルコースリン酸塩等の単一陰イオン頭部を有するポリオール塩をキトサン水溶液に添加することにより、化学修飾または架橋を施すことなく熱的に敏感なpH依存性ゲル形成水溶液に変換される。この変換により、キトサンが生分解性および熱感受性になる。製剤は、生細胞および治療用タンパク質を取り込むことができる、室温でゾルの形態である。この製剤は、in vivoで注射するとき、in situでゲルインプラントになる。
他の実施形態において、薬剤は、in situ架橋システムを含み、ポリマーが光(光重合性システム)または熱(熱硬化性システム)により起こりうるフリーラジカル反応により架橋ネットワークを形成する。光重合性システムは、注射により所望の部位に導入するとき、光ファイバーケーブルを用いることによりin situ(送達エレメント内等)で光硬化し、次に、薬剤を長期間にわたり放出する。光反応は、生理的温度で迅速な重合速度をもたらす。さらに、システムは、複雑な形状の体積要素(volumes)に容易に入れられ、インプラント形成につながる。いくつかの実施形態において、光重合性、生分解性ヒドロゲルは、マクロマー(PEG-オリゴグリコリル-アクリレート)、光感受性イニシエーター(エオシン染料)からなり、光源(UVまたは可視光)とともに用いる。光に曝露するとき、システムは、光重合を受けてネットワークを形成する。これらのシステムは、水溶性薬剤および酵素を制御された速度で放出させるのに用いることができる。アルゴンレーザーも光源として用いることができる。
他の実施形態において、薬剤は、最初に構成するときゾルの形態であるが、加熱により、その最終の形状に凝固する。このゾル-ゲル転移は、硬化として公知である。硬化は、巨大分子ネットワークを形成するポリマー鎖間の共有結合架橋の形成を主として伴う。いくつかの実施形態において、薬剤は、DL-ラクチドまたはL-ラクチドとε-カプロラクトンインプラントとの生分解性コポリマーおよび徐放薬剤送達を含む。薬剤は、体外で液体であり、針または送達エレメント30により注射することができ、体内に入ったならばゲル化する。in situ析出ポリマーシステムにおいて、溶液からのポリマーの析出は、in situでのゲル形成をもたらす可能性があり、この析出は、温度の変化(熱感受性システム)、溶媒除去またはpHの変化により誘発させることができる。
いくつかの実施形態において、薬剤は、ジメチルスルホキシド等のいくつかの有機溶媒に溶解する非結晶性粘性化合物であるスクロース酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)を含む。2つの酢酸および6つのイソ酪酸部分でエステル化されたスクロース分子であるSAIBは、高度に親油性の水不溶性糖であり、非常に粘性の液体として存在する。SAIBは、エタノール、NMP、トリアセチンおよびプロピレンカーボネート等の有機溶媒に溶解したとき、低粘度溶液を形成し、これを投与前に有効成分と混合する。投与したならば、溶媒が外部に拡散して、有効成分の制御送達のための貯蔵所の形成がもたらされる。SAIBの濃度、溶媒の種類および用いる添加剤がin situで形成された貯蔵所からの薬剤の放出速度に影響を及ぼす。
g.人工DNAナノ構造
いくつかの実施形態において、薬剤は、人工DNAナノ構造を含む。人工DNAナノ構造は、遺伝情報のキャリアーとしてではなく、構造材料として用いられるDNAである。DNAナノテクノロジーは、ワトソン-クリック塩基対合の特異性のため、互いに相補的である鎖の部分のみが互いに結合して二重鎖DNAを形成するという事実を利用する。DNAナノテクノロジーは、各鎖の所望の部分がある所望の標的構造の正しい位置に集合するように、DNA鎖の組を合理的に設計することを試みるが、これは、核酸設計と呼ばれる方法である。
DNAナノテクノロジーの原理は、RNAおよびPNA等の他の核酸に同等によく適用され、本明細書で述べた薬剤と同様な様式で用いることができることは、理解されうる。
h.生物学的ベクター
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置、方法およびシステムを用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達される薬剤は、生物学的ベクターに存在する。タンパク質薬剤をコードする核酸を含むベクター中の薬剤の投与の技術は、当技術分野で周知である。
タンパク質および/または核酸等の薬剤の送達のための生物学的ベクターを用いる様々な方法は、本明細書で開示した装置、システムおよび方法を用いて対象における標的脊髄構造細胞、例えばDRG細胞に薬剤を送達するために用いることができ、制限なしに、細胞トランスフェクション、遺伝子療法、送達媒体または薬学的に許容される担体を用いた直接投与、ポリペプチド薬剤をコードする核酸を含む組換え細胞を供給することによる間接的送達、リポフェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃、染色体媒介遺伝子導入、微小核細胞媒介(microcell-mediated)遺伝子導入、核導入等である。
様々な遺伝子導入/遺伝子療法ベクターおよび構築物が当技術分野で公知である。これらのベクターは、本発明の装置、システムおよび方法における使用のために容易に適合される。タンパク質薬剤もしくは機能性断片、または機能性変異体もしくはその誘導体をコードする作動可能に連結した核酸を選択された発現/送達ベクターに挿入するための組換えDNA/分子生物学手法を用いた適切な操作により、本明細書で述べた方法の実施のための多くの同等なベクターを発生させることができる。発現制御エレメントに連結され、細胞内で複製することができる本発明の核酸分子を含むベクターを調製する。あるいは、ベクターは、複製欠損であってよく、複製および遺伝子療法における使用のためにヘルパー細胞を必要としうる。
ベクター、組換えウイルスおよび他の発現システムは、神経細胞または神経支持細胞、例えば、グリア、星状細胞等を感染させ、トランスフェクトし、一時的または永久的に形質導入することができる任意の核酸を含みうる。一態様において、ベクターは、裸核酸またはタンパク質もしくは脂質と複合した核酸でありうる。一態様において、ベクターは、ウイルスもしくは細菌核酸および/またはタンパク質、および/または膜(例えば、細胞膜、ウイルス脂質エンベロープ等)を含みうる。一態様において、発現システムは、DNAの断片を結合させることができ、複製された状態になるレプリコン(例えば、RNAレプリコン、バクテリオファージ)でありうる。一態様において、発現システムは、RNA、自律性自己複製環状もしくは線状DNAまたはRNA(例えば、プラスミド、ウイルス等、例えば、米国特許第5,217,879号参照)も含むが、これらに限定されず、発現および非発現プラスミドの両方を含む。
一態様において、ベクターは、宿主染色体に組み込まれた染色体外環状および/または線状核酸(DNAまたはRNA)の両方(またはいずれか)を含む発現ベクターでありうる。一態様において、ベクターが宿主細胞により維持されている場合、ベクターは、自律性構造として有糸***時に細胞により安定に複製されうるか、または宿主のゲノムに組み込まれる。
一態様において、発現システムは、市販され、無制限に公的に入手することができ、または公表された手順に従って利用可能なプラスミドから構築することができる。本発明を実施するために用いることができるプラスミドは、当技術分野で周知である。
他のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションまたはウイルス感染のような方法により遺伝子または核酸配列を細胞に導入することである。米国特許第5,676,954号(参照により本明細書に組み込まれる)は、陽イオン性リポソーム担体と複合させた裸DNAのような遺伝物質のマウスへの注入について報告している。米国特許第4,897,355号、第4,946,787号、第5,049,386号、第5,459,127号、第5,589,466号、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号および国際公開WO94/9469(参照によりすべて本明細書に組み込まれる)は、DNAを細胞および哺乳動物にトランスフェクトするのに用いる陽イオン性脂質を提供する。米国特許第5,589,466号、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号および国際公開WO94/9469(参照によりすべて本明細書に組み込まれる)は、DNA-陽イオン性脂質複合体を哺乳動物に送達する方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書で開示したような陽イオン性脂質複合体またはナノ粒子は、対象のタンパク質薬剤をコードする核酸を対象における標的脊髄構造、例えばDRGに送達するために用いることができる。
いくつかの実施形態において、装置の電気刺激部分は、WongおよびNeumann、Biochem. Biophys. Res. Commun.、107巻、584〜87頁(1982年)に示されている事前(prior)パラメータに基づく本発明の装置および微粒子銃(例えば、遺伝子銃、JohnstonおよびTang、Methods Cell Biol.、43 Pt A:353〜65頁(1994年)、Fynanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、11478〜82頁(1993年))を用いてエレクトロポレーションのパラメータを適合させたエレクトロポレーションにより裸DNA、例えば、対象の薬剤をコードする核酸を標的脊髄構造位置(例えばDRG)における神経細胞に導入するために用いることができる。
ある特定の実施形態において、タンパク質薬剤をコードする遺伝子または核酸配列をトランスフェクションまたはリポフェクションによって標的脊髄構造細胞、例えばDRG細胞に導入することもできる。トランスフェクションまたはリポフェクション用の適切な薬剤としては、例えば、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポフェクチン、リポフェクタミン、DIMRIE C、SuperfectおよびEffectin(Qiagen)、ユニフェクチン、マキシフェクチン、DOTMA、DOGS(Trasfectam;ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DHDEAB(N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、HDEAB(N-n-ヘキサデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、ポリブレン、ポリ(エチレンイミン)(PEI)等がある(例えば、Banerjeeら、Med. Chem.、42巻、4292〜99頁(1999年)、Godbeyら、Gene Ther.、6巻、1380〜88頁(1999年)、Kichlerら、Gene Ther.、5巻、855〜60頁(1998年)、Birchaaら、J. Pharm.、183巻、195〜207頁(1999年)参照)。
他の態様において、薬剤をコードする構築物を例えば、ベクターにより宿主細胞のゲノムに挿入することができる。核酸配列は、様々な手順によりベクター、例えば、ウイルスベクターに挿入することができる。一般的に、挿入断片およびベクターを適切な制限エンドヌクレアーゼで消化した後に配列をベクターにおける所望の位置にライゲーションする。あるいは、挿入断片およびベクターの両方の平滑末端をライゲーションすることができる。例えば、AusubelおよびSambrookに記載されているように、様々なクローニング手法が当技術分野で公知である。そのような手順およびその他は、当業者の範囲内にあるとみなされる。
代替の態様において、本発明を行うまたは実施するために用いられるベクターは、コスミド、YAC(酵母人工染色体)、メガYACS、BAC(細菌人工染色体)、PAC(P1人工染色体)、MAC(哺乳動物人工染色体)、全染色体または小全ゲノムを含むかなり多くの適切なベクターから選択することができる。ベクターは、プラスミド、ウイルス粒子またはファージの形態でもありうる。他のベクターとしては、染色体、非染色体および合成DNA配列、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病ウイルス等のウイルスDNA等がある。原核および真核宿主とともに用いる様々なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrookにより記載されている。用いることができる特定の細菌ベクターは、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC37017)、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals、Uppsala、Sweden)、GEMI(Promega Biotec、Madison、Wis.、USA) pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pD10、psiX174 pBluescript 11KS、pNII8A、pN1-116a、pN1118A、pNI-146A(Stratagene)、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、DR540、pRIT5(Pharmacia)、pKK232-8およびpCM7の遺伝エレメントを含む市販のプラスミド等である。特定の真核ベクターは、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene) pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmacia)等である。しかし、宿主細胞において複製可能であり、存続可能である限り、任意の他のベクターを用いることができる。
いくつかの実施形態において、タンパク質薬剤をコードする核酸を標的脊髄構造、例えば、ベクターに存在するDRG細胞に投与する。いくつかの実施形態において、対象の薬剤をコードする核酸を含むウイルスまたはベクター粒子の濃度は、1ミリリットル当たり約少なくとも1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016または1017個の物理的粒子の力価で処方する。一態様において、対象の薬剤をコードする核酸を約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140もしくは150マイクロリットル(μl)またはそれ以上の注射で投与する。
代替の実施形態において、対象の薬剤をコードする核酸への標的ニューロンの十分な曝露を保証するために標的脊椎ニューロン、例えばDRGに複数回適用で投与することが適切でありうる。いくつかの実施形態において、発現構築物の複数回適用は、所望の効果を達成するためにも必要でありうる。
用量および投与計画は、様々な範囲設定手法により決定することができる。例えば、代替の実施形態において、約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016または1017個のウイルス(例えば、アデノウイルス)粒子を1回または複数回用量として個体(例えば、ヒト患者)に送達する。いくつかの実施形態において、約2x107または約2x106または約2x105個の粒子を1回または複数回用量として個体(例えば、ヒト患者)に送達する。
他の実施形態において、標的脊椎ニューロン、例えばDRGに投与することができるタンパク質薬剤をコードするベクター組成物の容量は、約0.1μl〜1.0μlから約10μlまたは約100μlまたは100μlを超えるまででありうる。あるいは、約0.5ngまたは1.0ngから約10μgまで、100μgから1000μgまでの用量範囲の対象の薬剤をコードする核酸を投与する(発現構築物における量または一実施形態と同様に裸DNAを注射する量)。用量および投与経路のあらゆる必要な変形形態を決定することができる。
薬剤を発現するために利用することができるウイルスベクターシステムは、(a)5型血清型、例えば、Ad5を含むアデノウイルスベクター、(b)レトロウイルスベクター、(c)血清型AAV5を含むアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、(d)単純疱疹ウイルスベクター(HSV)、(e)SV40ベクター、(f)ポリオーマウイルスベクター、(g)パピローマウイルスベクター、(h)ピコルナウイルスベクター、(i)オルソポックス、例えば、ワクシニアウイルスベクターまたはアビポックス、例えば、カナリア痘または鶏痘等のポックスウイルスベクター、および(j)ヘルパー依存性または内容のない(gutless)アデノウイルスを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、ベクターは、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスまたはバキュロウイルスである。ニューロンに結合または入るように改変されたウイルスと同様に、複製欠損ウイルスも有利でありうる。特に、5型アデノウイルス(Ad-5)ならびにAdF2K、Adf.11DおよびAd.RGDのような細胞結合および細胞侵入特性の増強を有するウイルスベクターは、DRG細胞に対する向性を示した。
いくつかの実施形態において、薬剤をコードするベクターは、標的細胞ゲノムに組み込むことができる、またはできない。構築物は、所望の場合、トランスフェクションのためのウイルス配列を含みうる。あるいは、構築物は、エピソームの複製ができるベクター、例えば、EPVおよびEBVベクターに組み込むことができる。
薬剤のレベルを増大させる薬剤の組換え発現のための構築物は、標的細胞における構築物の発現を保証するために、一般的に調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー等を含む。ベクターおよび構築物に関する他の仕様は、以下でさらに詳細に述べる。いくつかの実施形態において、薬剤をコードする核酸は、調節エレメントに作動可能に連結している。
本明細書で用いているように、本明細書において互換的に使用される「プロモーター」または「プロモーター領域」または「プロモーターエレメント」は、それが作動可能に連結している核酸配列の転写を制御する、核酸配列のセグメントを意味し、典型的にDNAまたはRNAまたはその類似体であるが、これらに限定されない。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼ認識、結合および転写開始のために十分である特定の配列を含む。プロモーター領域のこの部分は、プロモーターと呼ばれている。さらに、プロモーター領域は、RNAポリメラーゼのこの認識、結合および転写開始活性を調節する配列を含む。これらの配列は、シス作用性であるか、またはトランス作用性因子に対して反応性である可能性がある。プロモーターは、調節の性質によって、構成的であるか、または調節される可能性がある。
「調節配列」という用語は、本明細書において「調節エレメント」と互換的に使用され、それが作動可能に連結している核酸配列の転写を調節し、したがって、転写モジュレーターとして作用する核酸のセグメントに対するエレメントを意味し、典型的にDNAまたはRNAまたはその類似体であるが、これらに限定されない。調節配列は、それらが作動可能に連結している遺伝子および/または核酸配列の発現を調節する。調節配列は、転写結合ドメインであり、転写タンパク質および/または転写因子、レプレッサーまたはエンハンサー等の核酸結合ドメインにより認識される核酸配列である「調節エレメント」をしばしば含む。典型的な調節配列は、転写プロモーター、誘導プロモーターおよび転写エレメント、転写を制御するための任意選択の作動配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列ならびに転写および/または翻訳の終結を制御するための配列を含むが、これらに限定されない。調節配列は、単一調節配列もしくは複数の調節配列または修飾調節配列もしくはその断片でありうる。修飾調節配列は、核酸配列が、例えば、突然変異、メチル化等であるが、これらに限定されない、ある種の手段により変化または修飾された調節配列である。
「作動可能に連結した」という用語は、本明細書で用いているように、核酸配列とプロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位ならびに他のシグナル配列等のヌクレオチドの調節配列との機能的関連を意味する。例えば、核酸配列、典型的にDNAの調節配列またはプロモーター領域への作動連結は、そのようなDNAの転写が、DNAを特異的に認識し、結合し、転写するRNAポリメラーゼにより調節配列またはプロモーターから開始されるようなDNAと調節配列またはプロモーターとの間の物理的および機能的関係を意味する。発現および/またはin vitro転写を最適化するために、それが発現する細胞型における核酸またはDNAの発現のために調節配列を修飾することが必要である可能性がある。そのような修飾の望ましさまたは必要性は、経験的に判断することができる。いくつかの実施形態において、例えば、神経細胞または後根神経節細胞(DRG)におけるタンパク質薬剤の発現を組織または細胞特異的な様式で導くことは、有利でありうる。いくつかの実施形態において、例えば、らせん神経節細胞において有効な遺伝子発現を示した、エノラーゼプロモーターもしくは伸長因子1aプロモーター、ニューロフィラメント(NF)遺伝子プロモーター、Tujl遺伝子プロモーターであるが、これらに限定されないニューロン特異的プロモーター、または当技術分野で公知の他のニューロン特異的プロモーターを用いることができる。
いくつかの実施形態において、異種プロモーターは、発現させるべき薬剤、ならびにTet誘導システム等の薬剤またはストレス誘導プロモーターの制御発現を可能にする。例えば、誘導調節エレメントの制御下で薬剤をコードする内因性遺伝子を発現するように、細胞を改変することができ、その場合、内因性遺伝子の調節配列は、相同的組換えにより置換することができる。遺伝子活性化技術は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、Chappelへの米国特許第5,272,071号、Sherwinらへの米国特許第5,578,461号、SeldenらによるPCT/US92/09627(WO93/09222)およびSkoultchiらによるPCT/US90/06436(WO91/06667)に記載されている。
薬剤をコードする核酸配列を含むあらゆるウイルスベクターは、本明細書で用いるために含められる。例えば、レトロウイルスベクターを用いることができる(Millerら、Meth. Enzymol.、217巻、581〜599頁(1993年)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みのために必要な成分を含む。薬剤をコードする核酸配列は、患者への遺伝子の送達を促進する、1つまたは複数のベクターにクローニングすることができる。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするために造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載しているBoesenら、Biotherapy、6巻、291〜302頁(1994年)に見いだすことができる。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの使用を例示している他の参考文献は、Clowesら、J. Clin. Invest.、93巻、644〜651頁(1994年)、Kiemら、Blood、83巻、1467〜1473頁(1994年)、SalmonsおよびGunzberg、Human Gene Therapy、4巻、129〜141頁(1993年)ならびにGrossmanおよびWilson、Curr. Opin. in Genetics and Devel.、3巻、110〜114頁(1993年)である。レトロウイルス科に属するあらゆるレンチウイルスは、***および非***細胞の両方を感染させるために用いることができる(例えば、Lewisら(1992年) EMBO J.、3053〜3058頁参照)。
「霊長類」および/または「非霊長類」からのレンチウイルス群からのウイルスを用いることができる;例えば、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原因子であるヒト免疫不全症ウイルス(HIV)およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)を含む任意の霊長類レンチウイルス、または例えば、ビスナ/マエディウイルス(VMV)等の「遅発性ウイルス」ならびに関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)および/またはネコ免疫不全症ウイルス(FIV)またはウシ免疫不全症ウイルス(BIV)を含む非霊長類レンチウイルス群メンバーを用いることができる。いくつかのレンチウイルスのゲノム構造に関する詳細は、当技術分野で見いだすことができる;例えば、HIVおよびEIAVに関する詳細は、NCBI Genbankデータベース、例えば、ゲノム受託番号AF033819(HIV)およびAF033820(EIAV)から見いだすことができる。代替の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、HIVベースのレンチウイルスベクターまたはEIAVベースのレンチウイルスベクターである。
代替の実施形態において、レンチウイルスベクターは、偽型レンチウイルスベクターでありうる。一態様において、シュードタイピングは、異種env遺伝子、例えば、他のウイルスからのenv遺伝子を有するウイルスゲノムのenv遺伝子の少なくとも一部に組み込む、またはその一部を置換する、またはそのすべてを置き換える。シュードタイピングの例は、例えば、WO99/61639、WO98/05759、WO98/05754、WO97/17457、WO96/09400、WO91/00047およびMebatsionら(1997年) Cell、90巻、841〜847頁に見いだすことができる。代替の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、VSV.Gによりシュードタイピングする。代替の実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは、Rabies.Gによりシュードタイピングする。
本発明を実施するために用いるレンチウイルスベクターは、安全性の向上の目的のためにコドン最適化することができる。コドン最適化は、例えば、WO99/41397に以前に記載された。異なる細胞は、特定のコドンのそれらの使用法が異なる。このコドンのバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在度のバイアスに対応する。対応するtRNAの相対的存在度と一致するように調整されるように配列におけるコドンを変化させることにより、発現を増加させることが可能である。同じ証拠により、対応するtRNAが特定の細胞型においてまれであることが公知であるコドンを意図的に選択することにより、発現を減少させることが可能である。したがって、さらなる程度の翻訳制御が利用できる。HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは、多数のまれなコドンを使用しており、対応するこれらを一般的に用いられる哺乳動物コドンに変化させることにより、哺乳動物プロデューサー細胞におけるパッケージング構成成分の発現の増加を達成することができる。コドン利用表は、哺乳動物細胞ならびに様々な他の生物について当技術分野で公知である。コドンの最適化は、多くの他の利点がある。それらの配列の変化により、プロデューサー細胞/パッケージング細胞におけるウイルス粒子のアセンブリに必要なウイルス粒子のパッケージング構成成分をコードするヌクレオチド配列は、それらから除去されたRNA不安定性配列(INS)を有する。同時に、パッケージング構成成分の配列をコードするアミノ酸配列は、配列によりコードされるウイルス構成成分が同じままであるように保持されるか、またはパッケージング構成成分の機能が損なわれないように少なくとも十分に同様である。コドンの最適化はまた、輸出に関するRev/RRE要件を克服し、最適化配列をRev非依存性にする。コドンの最適化はまた、ベクター系内の異なる構築物間(例えば、gag-polおよびenvオープンリーディングフレームにおけるオーバーラップの領域間)の相同組換えを減少させる。したがって、コドンの最適化の全体的な効果は、ウイルス力価の著しい増加および安全性の改善である。コドン最適化gag-pol配列に関する戦略は、あらゆるレトロウイルスに関して用いることができる。これは、EIAV、FIV、BIV、CAEV、VMR、SIV、HIV
-1およびHIV-2を含むすべてのレンチウイルスに適用されるであろう。さらに、この方法は、HTLV-1、HTLV-2、HFV、HSRVならびにヒト内因性レトロウイルス(HERV)、MLVおよび他のレトロウイルスからの遺伝子の発現を増加させるために用いることができると思われる。他の実施形態において、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,143,520号、第5,665,557号および第5,981,276号に記載されているHIVベースのベクター等のレンチウイルスベクターを用いる。
他のウイルスベクターを用いることができ、トリ、マウスおよびヒト起源のアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、パポバウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスを含む。アデノウイルスは、遺伝子療法に用いることができる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、中枢神経系、内皮細胞および筋肉へのアデノウイルスベースの送達の特に魅力的な媒体である。アデノウイルスは、非***細胞を感染させることができるという利点を有する。KozarskyおよびWilson、Current Opinion in Genetics and Development、3巻、499〜503頁(1993年)は、アデノウイルスベースの遺伝子療法の総説を提示している。Boutら、Human Gene Therapy、5巻、3〜10頁(1994年)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用を示した。他の好ましいウイルスベクターは、ワクシニアウイルス、例えば、Modified Virus Ankara(MVA)またはNYVAC等の弱毒化ワクシニア、鶏痘またはカナリア痘等のアビポックス等のポックスウイルスである。遺伝子療法におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeldら、Science、252巻、431〜434頁(1991年)、Rosenfeldら、Cell、68巻、143〜155頁(1992年)、Mastrangeliら、J. Clin. Invest.、91巻、225〜234頁(1993年)、PCT公開WO94/12649およびWangら、Gene Therapy、2巻、775〜783頁(1995年)に見いだすことができる。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用も企図されている(Walshら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、204巻、289〜300頁(1993年)、米国特許第5,436,146号)。組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、米国特許出願公開第2002/0194630号および米国特許第6,943,153号に記載されており、レンチウイルス遺伝子療法ベクターは、例えば、Dullら(1998年) J. Virol.、72巻、8463〜8471頁に記載されており、あるいは、ウイルスベクター粒子、例えば、米国特許出願公開第2003/0003582号に記載されているような修飾プロウイルスRNAゲノムを有する修飾レトロウイルス、および米国特許第7,198,950号、第7,160,727号、第7,122,18号、第6,555,107号に記載されているようなレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを用いることができる。組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、多くの異なるヒトおよび非ヒト細胞系または組織を含む広範囲の宿主細胞に適用できる。AAVは、非病原性であり、免疫応答を誘発(ellicit)しないため、多数の前臨床試験で優れた安全性プロファイルが報告された。rAAVは、広範囲の細胞型に形質導入することができ、形質導入は、活性な宿主細胞***に依存しない。高力価、すなわち、>108ウイルス粒子/mlが上清中で、さらなる濃縮により1011〜1012ウイルス粒子/mlが容易に得られる。トランス遺伝子が宿主ゲノムに組み込まれ、したがって、発現が長期であり、安定である。
AAV-2以外のAAV血清型の使用(Davidsonら(2000年)、PNAS、97巻(7号)、3428〜32頁、Passiniら(2003年)、J. Virol、77巻(12号)、7034〜40頁)で異なる細胞向性および形質導入能力の増大が示された。脳腫瘍に関して、脳への新規注入技術、具体的には対流増強送達(CED、Boboら(1994年)、PNAS、91巻(6号)、2076〜80頁、Nguyenら(2001年)、Neuroreport、12巻(9号)、1961〜4頁)の開発により、脳の広い部位にAAVベクターを導入する能力が著しく向上した。特に、AAV5およびAAV2血清型ならびにアデノウイルスサブタイプAd-5は、神経細胞への形質導入に高度に効率的であることが示された。したがって、陽圧下での持続注入である対流(convention)増強送達(CED)は、本明細書で開示した装置による標的脊髄構造への薬剤の生物学的ベクター送達媒介輸送を増強しうる。
3.送達エレメント上の薬剤溶出性コーティングまたは構造
いくつかの実施形態において、薬剤送達構造は、コーティングまたは薬剤溶出性構造を含む。そのような実施形態において、薬剤は、送達エレメント30上のコーティングまたは薬剤溶出性構造から送達される。
いくつかの実施形態において、送達エレメント30は、薬剤または薬剤溶出性コーティングで被覆されている。図14に電極50およびその遠位端を被覆している薬剤溶出性コーティング250を有する送達エレメント30の実施形態を示す。典型的に薬剤溶出性コーティング250は、送達エレメント30の著しい変形に耐えるように、薄く、共形的(conformal)であるポリマーマトリックスからなる。また、ポリマーマトリックスは、典型的に高濃度の薬剤を取り込み、薬剤の溶出を制御するように調整されている。いくつかの実施形態において、2種のポリマーの比率を変化させることによって溶出速度および機械的特性を調節する能力等の、単一ポリマーコーティングに見いだされない利点があるポリマーブレンドを用いる。
コーティングは、コーティング溶液または乾燥材料を非常に明確で精密なパターンで施すことができるディッピング、吹付および堆積法を含む様々な方法により送達エレメント30に施すことができる。さらに、コーティングは、送達エレメント30の表面に共有結合させるか、または単に表面に接着させることができる。同様に、コーティングは、様々な属性を提供するように質感をもたせることができる。
コーティングは、縦もしくは円周(部分円周を含む)ストライプ、ストリップ、ドット、正方形および/または斑点等として送達エレメント30の特定の部分に施すことができる。コーティングは、特定の電極間および/または特定の電極上に施すことができる。コーティングは、送達エレメントの全遠位端、送達エレメントの遠位チップまたは特定の部分を被覆していてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、複数の層を含み、またはそれぞれが同じもしくは異なる薬剤を含有する、複数のコーティングを用いることができる。コーティングは、同じまたは異なる薬剤を送達するために、他の薬剤送達技術と併用して用いることもできる。
いくつかの実施形態において、薬剤を送達エレメント上の構造から送達する。いくつかの実施形態において、構造は、薬剤を取り込み、薬剤の溶出を制御するポリマーマトリックスからなる。典型的に、構造は、ふくらんだ表面または突起物の形態を有する等の送達エレメントの表面から広がっている。図15A〜15Bに送達エレメント30の遠位端の表面上に配置された薬剤溶出構造260を有する実施形態を示す。両実施形態において、構造260は、送達エレメント30のシャフトの周りに広がる円周ストライプまたはストリップ262を含む。図15Aにおいて、送達エレメント30は、カテーテルを含み、ストリップ262は、送達エレメント30の遠位端に沿って間隔をあけて配置されている。図15Bにおいて、送達エレメント30は、電極50を有するリードを含む。この実施形態において、構造260は、電極の間に配置されている円周ストライプまたはストリップ262を含む。したがって、薬剤は、例えば、電気刺激との併用等のために電極50の近くに溶出させる。構造260は、縦ストライプもしくはストリップ(図16のような)、円周(部分円周を含む)ストライプもしくはストリップ、ドット(図17のような)、正方形および/または斑点等として送達エレメント30の特定の部分に沿って配置することができる。図18に送達エレメント30がその遠位端の一部に沿って広がる薬剤溶出構造260を有し、構造260が送達エレメント30のシャフトの周りに少なくとも部分的に広がり、少なくとも1つの出口ポート40用の開口部を含む実施形態を示す。したがって、同じまたは異なる薬剤は、構造260から送達される薬剤に加えて、送達エレメント30から送達することができる。
いくつかの実施形態において、薬剤溶出構造260は、図19A〜19Bに示すように柔軟な毛髪様突起物264のような突起物を含む。そのような突起物264は、ポリマー、繊維、マイクロファイバー、糸、フィラメント等を含む任意の適切な材料からなっていてもよい。突起物264は、薬剤で被覆するか、または薬剤の制御送達のために薬剤を浸み込ませることができる。典型的に突起物264は、送達エレメント30に固定された第1の末端および自由端である第2の末端を有するが、第2の末端も送達エレメント30に固定されてループを形成しうることは、理解されうる。いずれの場合にも、突起物264は、標的組織、例えばDRGの近く等に移植する場合に送達エレメント30を組織に固定することを支援しうる。図19Aに送達エレメント30のシャフトから放射方向に外に向かって延びる突起物264を有するカテーテルを含む送達エレメント30の実施形態を示す。図19Bに少なくとも1つの電極50を有するリード、少なくとも1つの出口ポート40および少なくとも1つの突起物264を含む送達エレメント30の実施形態を示す。ここで、少なくとも1つの突起物264は、送達エレメント30の遠位チップから延びる複数の突起物を含む。
いくつかの実施形態において、構造260は生分解性である。そのような実施形態において、構造260は、それが移植部位から最終的に除去されるように、体内で長い期間の間に生分解しうる。
4.薬剤溶出性足場
いくつかの実施形態において、薬剤は、標的組織の近くに置かれた移植型薬物または薬剤溶出性足場から送達される。足場は、シート、管または他の形状等の任意の適切な形態を有する網様フレームワークからなる。いくつかの実施形態において、足場は、拡張型金属合金フレームワークからなる。そのような実施形態において、フレームワークは、典型的に拡張を可能にし、柔軟性をもたせるために網様デザインを有する。場合によっては、フレームワークは、ステンレススチール、316Lステンレススチール、コバルトクロム合金、L605コバルトクロム合金等の裸のポリマーまたは金属からなる。裸のポリマーまたは金属からなる場合、足場は、典型的に接触輸送(contact transfer)等により薬剤を送達する放出制御ポリマーで被覆されている。コーティングは、典型的にスプレーコーティングまたはディップコーティングされるが、コーティングに関連して上述したものを含む任意の適切な手法を用いることができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、3以上の層、例えば、接着のための基層、薬剤を保持するための主層および薬剤の放出を減速させ、その作用を延長させるための時としてのトップコートを含む。他の実施形態において、フレームワーク自体が放出制御ポリマーのような薬剤を含む材料から形成される。そのような場合、薬剤は、フレームワークから直接溶出する。
足場は、2種以上の薬剤または同じ薬剤を異なる速度または濃度で溶出しうることは、理解されうる。いくつかの実施形態において、フレームワークが薬剤を溶出し、フレームワーク上のコーティングが異なる薬剤を溶出する。他の実施形態において、フレームワークが薬剤を溶出し、フレームワーク上のコーティングが同じ薬剤を異なる速度で溶出する。いくつかの実施形態において、足場は、コーティングがフレームワークを残して生分解してなくなり、次にフレームワークがその曝露により異なる薬剤を溶出するまで、薬剤を溶出する生分解性コーティングを有する。
いくつかの実施形態において、足場は、DRGとの接触を含め、DRGに隣接して置くことができる。足場がシートの形態を有する場合、シートは、DRGの表面に沿って広げる等、DRGと並べることができる。いくつかの実施形態において、シートは、DRGを部分的にまたは少なくとも部分的に包む。図20にDRGに隣接して置かれ、DRGを部分的に包むシート300の設置の例を示す。この実施形態において、シート300は、少なくとも部分的には示した椎弓根PDの間の孔内の硬膜外腔E内に置かれている。シート300は、硬膜外腔を経る硬膜外アプローチによりDRGにアプローチする送達エレメント30を用いて送達することができる。送達エレメント30を脊髄Sに向かって孔内に進める、椎間孔外アプローチ等により、送達エレメント30が脊柱外から標的DRGにアプローチしうることも理解されうる。あるいは、シート300は、直視下手術を用いて、または孔に直接到達する様々な最小侵襲装置を用いて送達することができる。いずれの場合にも、シート300は、DRGの近くの硬膜外腔に薬剤を溶出する。
足場が管の形態を有する場合、管は、DRGが管内に少なくとも部分的に存在するように、DRGの周りに伸長しうる。いくつかの実施形態において、足場は、孔内に置くことができる。そのような位置決めは、孔の限定された境界等のため、足場を所定の位置に固定することを支援する可能性があり、かつ/または孔とその関連DRGとの公知の解剖学的関係のため、標的DRGへの予測可能な送達を保証する可能性がある。図21に管350がDRGの周りに伸長するように、椎弓根PDの間の孔内に置かれた管350を示す。管350が硬膜外腔E内に置かれているので、管350は、DRGおよび隣接前根VRの両方を囲んでいる硬膜層Dの表面に沿って伸長している。しかし、2〜3のシナリオを挙げると、管350から溶出する薬剤は、DRGのみを標的とするように設計することができ、DRGに対してのみ作用を有する可能性があり、かつ/またはDRGのみに作用する刺激とともに用いることができる。他の例では、前根VRへの薬剤の送達は、患者の成功裏の治療を妨げない。
いずれの場合にも、薬剤溶出性足場は、薬剤の仕様および足場の放出制御機構に従って薬剤を送達する。そのような薬剤の溶出は、患者が治療を受けている患者の疾患段階または状態に対応して調整される。いくつかの実施形態において、足場が孔内に置かれている場合、送達の標的組織は、孔自体の椎または孔の裏打ち組織である。例えば、そのような足場は、孔拡大術後の孔の開存性を保つことを支援するために用いることができる。孔拡大術は、脊髄から身体へ神経束を通す脊椎の骨を通しての通路である孔により圧迫されている神経における圧力を軽減するために用いられる医療手術である。孔拡大術は、神経根が骨、椎間板、瘢痕組織または神経が挟まれた状態をもたらす過剰な索の発生により圧迫されている場合の椎孔狭窄の症状を軽減するためにしばしば実施される。手技は、椎骨自体に***を切り込む最小侵襲手技としてしばしば実施される。この穴を通して、関節鏡を用いて孔を視覚化し、衝突している骨または物質を除去することができる。孔拡大術の後に薬剤溶出性足場を孔内に少なくとも部分的に置くことにより、組織成長を抑制すること等によって孔の開存性を維持することを支援するために薬剤を孔内に送達することができる。あるいはまたはさらに、足場は、孔の開存性を維持することを支援するために構造支持をもたらしうる。
5.くも膜下腔内薬剤送達
いくつかの実施形態において、薬剤は、図22に示すようなくも膜下腔内に設置したまたはくも膜下もしくはくも膜下腔内空間に入れた送達エレメント30を経て送達される。そのような実施形態において、送達エレメント30は、硬膜外腔への設置に関して述べたのと同様な様式で置く。始めるために、伝統的な方法によりくも膜下腔内空間に到達する。次いで、送達エレメント30をくも膜下腔内空間に挿入し、脊髄Sに沿ったくも膜下腔内空間内で順方向に進める。この実施形態において、送達エレメント30は、少なくとも1つの出口ポート40を有するカテーテルを含む。出口ポート40の少なくとも1つが標的DRGのような標的構造に対して臨床的に有効な距離内にあるように、送達エレメントを患者の解剖学的構造を通して進める。このように標的DRGに向かう送達エレメント30のそのような前進には、図4に関して説明したように神経根スリーブの角形成または角度θに沿った急な曲げを行うことを伴う。このような厳しい曲げは、様々な送達ツールおよび図8A〜8Dに関して述べたような送達エレメント30の設計上の特徴を用いることによって達成される。いくつかの実施形態において、図8Bに関して例示し、述べたのと同様な柔軟性のあるシースを用いることができる。しかし、くも膜下腔内で用いられるそのようなシースは、脊髄または神経組織を損傷するあらゆるリスクを低減するために硬膜外で用いられるシースより典型的に柔軟性のあるものとする。用いる場合、シースは、角度αを有するようにあらかじめ湾曲させた遠位端を有する。場合によって、角度αは、約80〜165度の範囲内にある。送達エレメント30上にシースを通すことにより、送達エレメント30がシースのプレ湾曲に従って曲がる。それにより、シースは、送達エレメント30を脊柱Sに沿って標的DRGに向けて横方向等に導くことを支援する。しかし、標的DRGに向けてのくも膜下腔内空間内での送達エレメント30の誘導操作は、脊椎構造により補助され、硬膜層が標的DRGに向けての送達エレメント30の誘導を支援しうる。そのような場合には、シースは必要でなく、送達エレメント30は、図8Cに関して述べ、例示したような内部スタイレットを用いることによって標的DRGに向けて導くことができる。いくつかの実施形態において、スタイレットは、例えば、その曲率半径が約
0.1〜0.5インチの範囲内にあるようにあらかじめ湾曲させた遠位端を有する。スタイレットは、送達エレメント30のスタイレット腔内を進められるようにサイズを選定し、構成する。典型的にスタイレットは、その遠位端が送達エレメント30の遠位端と並ぶようにその中で伸長する。送達エレメント30中のスタイレットの通過により、エレメント30がスタイレットのプレ湾曲に従って曲がる。標的DRGにアプローチする場合、その湾曲が、送達エレメント30が神経根角形成に沿う等して標的DRGの方に曲がることを可能にする。これにより、送達エレメント30は、出口ポート40の少なくとも1つが標的DRGの上、近傍、周りまたは付近にあるように成功裏に置くことができる。さらに、出口ポート40は、DRGの方にそのように曲がることを支援するように間隔をあけることができる。典型的に、送達エレメント30が標的構造、例えばDRGに適切に置かれたときに、内部スタイレットが除去される。
送達エレメント30が例えば、図22に示すように置かれたならば、薬剤は、送達エレメント30を経てDRGのような標的組織に送達することができる。DRGは、薬剤をDRGに効率よく送達する脳脊髄液に浸されている。そして、くも膜下腔内空間の硬膜層DがDRGのすぐ外側または遠位側で終わっているので、脳脊髄液は、外側にまたは孔から流れ出ない。それどころか、脊髄神経は、脳脊髄液の嚢に包まれている。これにより、薬剤が送達され、その部位に一定の期間実質的に留まることができる。期間の例は、少なくとも約1分、または少なくとも約5分、または少なくとも約10分、または少なくとも約30分、または1分と30分との間の任意の整数分、または30分を超える等である。いくつかの実施形態において、薬剤の濃度および薬剤を送達するために用いる媒体のバリシティによって、薬剤は、少なくとも1時間またはそれを超える時間それが送達される部位に留まることができる。いくつかの実施形態において、薬剤が特定の送達媒体、例えば、ナノ粒子、リポソーム、ゲル等により送達される場合、薬剤は、長期間、例えば、数時間から6時間または約6〜12時間、または約12〜24時間または24時間を超える時間、例えば、少なくとも2日または少なくとも3日または3日を超える期間その部位に留まることができる。送達エレメントがくも膜下腔空間におけるCSFの主流外にある場合、薬剤は、それが長期間にわたって送達される場所に留まる。例えば、DRGは、ベクターの単回腰くも膜下腔内注入の少なくとも2日後に遺伝子をトランスフェクトすることができる。場合によって、これにより、くも膜下腔内空間内の他所、または硬膜外腔内の他所もしくは体内の他所で用いるよりも小用量の薬剤を用い、かつ/または投与スケジュールを低減することが可能になる。いくつかの実施形態において、CSFの流れはDRGにおいて硬膜外腔におけるより少なくとも約10倍少なく、したがって、いくつかの実施形態において、DRGに送達される薬剤は、ほぼ近傍に、例えば、神経節の近くの外側陥凹に留まり、後にそれは、薬剤が硬膜外腔に送達された場合に比較して少なくとも約10倍長く送達された。したがって、薬剤を例えば、硬膜外腔に送達する場合より少なくとも約10倍低い濃度でDRGに送達する薬剤の用量を用いることができる。
様々な薬剤を用いることができる。特に、ベンゾジアゼピン、クロナゼパム(Klonopin、Rivotril、Ravotril、Rivatril、Clonex、PaxamもしくはKriadex)、モルヒネ、バクロフェンおよび/またはジコノチドを用いることができる。本明細書の他所に提示した薬剤のような様々な他の薬剤を用いることができることは、理解されうる。
いくつかの実施形態において、薬剤を、くも膜下腔内に設置されている送達エレメント30を介して標的DRGに送達し、電気刺激を、硬膜外に設置されている別個の送達エレメント30を介して標的DRGに送達する。そのような実施形態において、くも膜下腔内送達エレメントは、カテーテルであり、硬膜外送達エレメントは、リードである。場合によって、くも膜下腔内薬剤送達および硬膜外刺激送達の併用療法は、1種類の療法のみによって達成できる効果を超える効果をもたらす。そのような併用療法の例を下で述べる。
いくつかの実施形態において、第1の薬剤をくも膜下腔内に設置されている送達エレメント30を介して標的DRGに送達し、第2の薬剤および電気刺激を硬膜外に設置されている別個の送達エレメント30を介して標的DRGに送達することは、理解されうる。そのような実施形態において、くも膜下腔内送達エレメントは、カテーテルであり、硬膜外送達エレメントは、出口ポートまたはコーティング等のような薬剤送達構造も有するリードである。第1および第2の薬剤は、同じまたは異なっていてもよい。場合によって、くも膜下腔内薬剤送達および硬膜外薬剤送達および刺激送達の併用療法は、任意の1種類の療法のみによってまたはこれらの種類の療法の任意の部分併用によって達成できる効果を超える効果をもたらす。そのような併用療法の例を下で述べる。
C.神経調節法
本発明のいくつかの態様において、送達装置は、薬剤を標的構造、例えばDRGに直接的に、ならびに標的構造、例えばDRGの電気刺激と併用して送達するために用いることができる。この併用により、DRGの神経調節が可能であり、神経調節は、電気刺激ならびに例えば、DRG標的部位に薬剤を送達することにより神経活動を変化または調節する様々な他の形態を含む。
併用神経刺激および薬理学的薬剤送達エレメントに関して、電極50および薬物または薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位チップは、所望の刺激または調節レベルを得るために、標的脊髄構造、例えばDRGの近くの任意の位置に設置することができる。さらに、電極50および薬剤出口ポート40を含む送達エレメント30の遠位チップは、図23に示すように、電極により発生した調節または刺激エネルギーパターンが標的神経組織内に留まるか、またはその組織内でのみ放散するように設置することができる。この実施形態において、標的脊髄構造神経組織は、DRGである。
本発明の一態様は、出口ポート40を有する送達管腔を含む送達エレメント30をDRGに極めて近接して置き、送達エレメント30の遠位端から少なくとも1つの薬剤をDRGに送達するステップを含む対象における疼痛を治療する方法に関する。いくつかの実施形態において、送達エレメント30は、リードを含み、リードは、少なくとも1つの電極がDRGに近接して置くことができるように、エレメントの遠位端で少なくとも1つの電極を有し、後根神経節を刺激するように少なくとも1つの電極に刺激エネルギーを供給する。送達エレメントの位置決めと薬剤の送達と刺激エネルギーの供給がともに、知覚障害の実質的な感覚を発生させることなく、痛覚を調節する、例えば、低減する。いくつかの実施形態において、刺激エネルギーの供給は、Aβ線維動員の閾値未満のレベルの刺激エネルギーの供給を含む。そして、いくつかの実施形態において、刺激エネルギーの供給は、Aβ線維細胞体動員の閾値未満のレベルの刺激エネルギーの供給を含む。
他の実施形態において、刺激エネルギーの供給は、a)Aδ線維細胞体動員の閾値を超えるレベルの刺激エネルギーの供給、b)C線維細胞体動員の閾値を超えるレベルの刺激エネルギーの供給、c)小有髄線維細胞体動員の閾値を超えるレベルの刺激エネルギーの供給、またはd)無髄線維細胞体動員の閾値を超えるレベルの刺激エネルギーの供給を含む。
さらに他の実施形態において、刺激エネルギーの供給は、後根神経節内のグリア細胞機能を調節することができるレベルの刺激エネルギーの供給を含む。例えば、いくつかの実施形態において、刺激エネルギーの供給は、後根神経節内の衛星細胞機能を調節することができるレベルの刺激エネルギーの供給を含む。他の実施形態において、刺激エネルギーの供給は、後根神経節内のシュワン細胞機能を調節することができるレベルの刺激エネルギーの供給を含む。
なお他の実施形態において、刺激エネルギーの供給は、後根神経節に関連する少なくとも1つの血管に後根神経節内のニューロンまたはグリア細胞に作用する薬剤を放出させるまたは細胞シグナルを送らせることができるレベルの刺激エネルギーの供給を含む。
いくつかの実施形態において、電気刺激は、対象の後根神経節内のAβ線維細胞体を除くが、対象の後根神経節内の小線維細胞体を選択的に刺激することを含む。いくつかの実施形態において、小線維細胞体は、Aδ線維細胞体を含む。他の実施形態において、小線維細胞体は、C線維細胞体を含む。
本発明のいくつかの実施形態は、神経根神経節の電気刺激と併用したDRGへの薬剤の直接送達、例えばDRGに薬剤を送達すると同時の電気刺激を含む。一実施形態において、電極を作動させる前に薬剤を送達する。他の実施形態において、電極作動後または作動中に薬剤をDRGに送達する。
さらに他の実施形態において、DRGに送達された薬剤は、神経根神経節の刺激中に神経根神経節において薬理学的に活性である。本発明の実施形態は、刺激される神経構成成分の特定の要求に適合するように変更し、修正することができることを理解すべきである。例えば、本発明の実施形態は、適切な薬理学的薬剤、薬剤放出パターンおよび量ならびに刺激パターンおよびレベルを用いて交感神経系の後根神経節または神経根神経節を直接刺激するために用いることができる。
本発明のいくつかの実施形態は、神経根神経節の電気刺激と併用したDRGへの薬剤の直接送達、例えばDRGに薬剤を送達すると同時の電気刺激を含む。一実施形態において、電極を作動させる前に薬剤を送達する。他の実施形態において、電極作動後または作動中に薬剤をDRGに送達する。
他の実施形態において、患者による疼痛の感覚に関連する後根神経節を特定するステップと、疼痛のレベルに関連する少なくとも1つのDRGに薬剤を送達するステップと、対象により経験される疼痛の感覚を低減するようにDRGに電気刺激を場合によって与えるステップとを含む、疼痛または疼痛関連障害を有する対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、薬剤は、非神経細胞、例えば、グリア細胞、例えば、衛星細胞、またはシュワン細胞を含む少なくとも1つのグリア細胞、または星状細胞にも送達する。
特に、本明細書で開示した神経調節システムは、併用する薬剤送達およびDRGの電気刺激のいくつかの利点を提供することができる。例えば、薬剤および電気刺激は、対象における痛覚の低減および薬剤の治療効果の増大に相乗的に機能しうる(図24A〜24B参照)。あるいは、いくつかの実施形態において、電気刺激は、DRG細胞体を標的とする薬剤の選択性を増大させる(図25A〜25B参照)。あるいは、いくつかの実施形態において、電気刺激は、DRGに送達された薬剤の標的活性化を可能にする(図26A〜26B参照)。他の実施形態において、電気刺激は、送達標的DRG細胞体に薬剤の差次的亢進をもたらす(図27A〜27B参照)。
次に図28A〜28Eを参照すると、薬剤送達および電気刺激機構の様々な時間的パターンを用いることができる。これらの様々な機構が疼痛を増強する(potentate)が、それらのそれぞれは、一次感覚ニューロンに作用する。
1.DRGに対する薬剤および電気刺激の相乗作用
図24A〜24Cを参照すると、一実施形態において、DRGへの薬剤の送達は、DRGの電気刺激の治療効果を増強し、また逆に、電気刺激は、DRGに送達された薬剤の治療効果を増強する。例えば、薬剤の送達を伴わないDRGの電気刺激402は、著しい疼痛軽減をもたらすこと等の所望のレベルの治療を患者に提供することができる(図24A)。薬剤400送達または標的組織もしくは細胞(神経もしくはグリア細胞等の非神経)の薬理学的神経調節も疼痛軽減等の所望のレベルの治療を患者に提供することができる(図24B)。電気刺激402および薬剤400または化学的神経調節の両方の併用は、さらなる軽減、より長期の軽減または電気刺激もしくは薬理学的管理単独によって達成されなかった軽減をもたらすことができる可能性がある(図24C)。したがって、薬剤400および電気刺激402は、それらの単独使用と比較してそれらの治療効果を増大させるのに相乗的に機能する。
2.電気刺激は薬剤の選択性を増大させる
図25Aを参照すると、いくつかの実施形態において、その正常不活性状態のDRG内細胞体C(例えば、体細胞)への薬剤400、例えば、毒素または神経毒の送達は、細胞による薬剤400、例えば、毒素の軽度の誘引または取込みのみを引き起こす。そのような実施形態において、電気刺激402を用いて細胞体Cを活性化して、図25Bに示すように、それを選択的に薬剤400による標的とすることができる。したがって、電気刺激は、細胞体Cに対して作用するのであって、薬剤に対してではない。いくつかの実施形態において、毒素、例えば、d-コノトキシン等の神経毒は、脊髄内の疼痛の伝達に関与するニューロンを標的とするために用いられる。毒素は、細胞機能を直接調整または細胞を破壊するために用いることができる。DRG内の細胞の電気刺激と毒素等の薬剤の送達の併用は、DRGにおけるある特定の細胞型、例えば、c線維の選択的アブレーションを可能にし、治療有利性を提供することができる可能性がある。いくつかの実施形態において、他の非神経細胞に作用する毒素である薬剤も特定の組織を選択的に標的としうる。
3.電気刺激は薬剤の標的活性化を可能にする
図26Aを参照すると、いくつかの実施形態において、細胞Aおよび細胞Bのようなすべての細胞型を同等に標的にする送達装置を用いて薬剤400をDRGに送達する。そのような実施形態において、細胞Bのような少なくとも1つの細胞(ただし細胞Aのような少なくとも他の細胞でない)中の薬剤400を選択的に活性化する電気刺激402を与えることができる。図26Bにそのような活性化を示す。ここで、電極50の少なくとも1つがDRGに近接して存在するように送達エレメント30をDRGの近くに配置する。送達エレメント30上の出口ポート40から薬剤400が送達され、電極50の少なくとも1つにより与えられる電気刺激402が少なくとも1つの細胞(細胞B)(ただし他のもの(細胞A)でない)中の薬剤400を選択的に活性化する。
いくつかの実施形態において、薬剤は、プロドラッグ、例えば、電圧感受性であり、電圧差のある環境に置かれた場合に活性になる毒素または他の巨大分子でありうる。電圧感受性である具体例としての薬剤は、電圧を変化させることにより活性化されることが公知である特定の染料を含むが、これらに限定されない。そのようなプロドラッグの使用、例えば、電圧差により活性化するプロドラッグ毒素は、DRGにおける特定の細胞型を選択的に神経調節し、かつ/または選択的に破壊するために用いることができる。例えば、プロドラッグ毒素薬剤は、それらが標的とし、接着し、または感染させる細胞において汎化可能であると思われるが、毒性の活性化のための電圧感受性の性質は、選択細胞型が電気刺激電界により選択的に調節されるという事実と相まって、DRGにおける特定の細胞型への薬剤の標的活性化を可能にする。
4.薬剤は電気刺激の差次的亢進を可能にする
図27A〜27Bを参照すると、いくつかの実施形態において、DRGに送達された薬剤400の治療効果は、電気刺激402を用いて亢進される。例えば、送達装置を用いてDRGに送達された薬剤400は、痛覚消失のためのDRG内の細胞型の電気刺激の効果を促進または亢進する。例えば、細胞の化学的神経調節は、電気的神経調節を増大させることができ、または細胞型を電気的神経調節に対してより感受性にする。例えば、イオンチャネル調節剤として機能するある特定の薬剤は、特定の細胞型を電界の作用およびその後の神経調節に対してより感受性にする仕方で膜の生物物理学を変化させるために用いることができる。薬剤によるこの差次的亢進は、疼痛軽減の亢進をもたらしうる。
図27Aの場合、薬剤が細胞に送達され、細胞の機能に対するある特定の興奮または抑制作用を有しうる。27Bの場合、薬物は今度は、細胞がより効率的に標的になることができ、または細胞機能に対する特に特異的で、より大きい作用を有するように刺激に対する特異的感受性を誘発している。
5.DRGへの薬剤の送達およびDRGの電気刺激の時間的パターン
Table 1(表1)に示すように、薬剤は、電気刺激の前または後に、同時(例えば、それと同時に)の電気刺激を用いずにDRGに送達することができる。いくつかの実施形態において、電気刺激は、例えば、約1秒以内、または約2秒もしくはより長い時間標的脊髄構造、例えばDRGへの薬剤の送達と調和するように、時間的に調節する。
いくつかの実施形態において、薬剤の送達および電気刺激の両方が間欠的である場合、薬剤が送達「オンフェーズ」にあるとき、電気刺激が起こらず、薬剤が送達「オフフェーズ」にあるとき、電気刺激パルスが起こるように、それらを時間的に調節し、互いに調和させることができる。代替の実施形態において、薬剤の送達および電気刺激の両方が、一緒または個別に、あらかじめ定められた期間にわたり「オンフェーズ」にあってよく、薬剤の送達および電気刺激の両方があらかじめ定められた期間にわたり「オフフェーズ」にある期間がその後に続く。
理論に限定されることを望むものでないが、電気生理学的試験で、COX酵素により産生されたプロスタグランジンE2(PGE2)がTTX-R Na+チャネルを活性化するのに必要な膜脱分極の程度を低下させることにより一部DRGニューロンの興奮性を増大させることが示唆されている。これは、ニューロンがより多くの自発的ファイヤリングを示すことをもたらし、それらに反復スパイキングを支持する傾向を与えた(より強い痛覚につながる)。またここで示すことは、他の炎症性薬剤(ブラジキニン、バニロイド受容体[VR1]上のカプサイシン)がTTX-R Na+チャネルに作用するためにどのように集結するかである。オピエート作用もTTX-R Na+チャネル調節からの上流にある。本発明の実施形態は、刺激システムの有効性を最適化するために電気刺激を薬理学的薬剤と組み合せる(電気刺激単独または薬理学的薬剤と併用)場合にDRGニューロンの電気生理学的興奮性を修正するために疼痛経路および神経化学の側面を有利に利用する。
電気的および薬理学的調節の相乗効果は、神経根神経節、後根神経節、脊髄または末梢神経系の特異的、指向性刺激と併用した様々な投与経路を用いる多くの他の利用可能な薬理学的遮断薬または他の治療薬を用いて得ることもできる。薬理学的遮断薬としては、例えば、Na+チャネル遮断薬、Ca++チャネル遮断薬、NMDA受容体遮断薬およびオピオイド鎮痛薬等がある。本明細書において図24〜28に示すように、刺激と薬剤の送達の併用の方法の実施形態を本明細書に含める。本明細書で示すように、電極50および薬剤出口ポート40は、脊髄構造、例えばDRGに極めて近接しており、c線維の応答性を修正し、かつ/または影響を与えるように置かれている。例えば、標的構造、例えばDRGの電気刺激と同時またはその後にナトリウムチャネル遮断薬(例えば、ジランチン-[フェニトイン]、テグレトール-[カルバマゼピン]または他のNa+チャネル遮断薬等)を標的構造、例えばDRGに送達することができる。薬剤を薬剤出口ポート40から送達するとき、c線維上の受容体がブロックされ、それにより、c線維の応答性を応答閾値未満に低下させる。したがって、c線維の活性化電位が低下したとき、より大きい径のA線維ニューロンが選択的に刺激されるか、またはA線維の応答が閾値を超えたままである。
図28Aを参照すると、DRG内の細胞体C(例えば、体細胞)が無処置の状態で示されており、活動電位500は、対象による疼痛の感覚を示している。図28Bに本明細書で述べた送達エレメント30を用いること等による電気刺激402の適用による疼痛軽減(活動電位500の数の低下による)を示す。図28Cに電気刺激が加えられていない場合の細胞体Cへの薬物1(薬剤400)の適用を示す。この例では、疼痛軽減は、電気刺激を単独で用いた場合と同じである(図28Bに示したのと同じパターンの活動電位500)。図28Dに電気刺激が加えられていない場合の細胞体Cへの薬物2(薬剤400')の適用を示す。この例では、疼痛軽減は、電気刺激単独(図28B)および薬物1単独の適用(図28C)と比較して増加している。図28Eに細胞体Cへの電気刺激402の適用に加えての細胞体Cへの薬物1(薬剤400)の適用を示す。この例では、疼痛軽減は、薬物2(Drug 1)(図28D)により達成されたレベルに増加している。したがって、電気刺激は、特定の薬物の有効性を増加させる(例えば、他の薬物のレベルに)こと等により、特定の薬物に由来する疼痛軽減の利益を変化させうる。これは、他の薬物が他のネガティブな副作用を有する場合を含む様々な状況において有用である可能性がある。
再び図28A〜28Eを参照すると、薬物送達の場合、ある種の薬剤は、DRGにおける細胞に対する薬物の直接的な作用による疼痛軽減をもたらす(図28D、薬物2)。他の場合には、疼痛軽減効果を誘発するために薬物を電気刺激と併用する。図28Cの薬物1は、薬物がDRGに送達され、細胞に結合するが、直接的な作用を有さない場合を示す。図28Eでは、薬物1は、併用電界が細胞への薬物の結合領域内に配置され、それにより、疼痛軽減を誘導し、増幅することができる機構を活性化するこの時を除いて投与される。この同じやり方で、薬剤および/または電気を持続的に送達する必要なく疼痛軽減を誘発することができる手段となる、薬剤の送達と電気刺激とを制御された様式(例えば、互いに対して時間的に調節する)で併用するオンデマンドシステムを開発することができる。さらに、これは、持続性薬剤投与により起こる可能性がある抵抗性もしくは「耐性」、または持続性電気刺激による脱感のリスクを避けるものである。したがって、本発明は、薬剤および/または電気刺激への抵抗性もしくは耐性を予防するための薬剤および/または電気刺激の段階的送達のための方法を提供する。
本発明の実施形態はまた、多くの有利な併用療法を提供する。例えば、電極50によりもたらされる刺激の量を減少させ、それでもなお臨床的に意味のある効果を達成することができるような仕方で後根神経節内で作用するまたは後根神経節内の反応に影響を及ぼす薬理学的薬剤を提供することができる。あるいは、薬剤が存在しない場合にもたらされる同じ刺激と比較してもたらされる刺激の有効性が増加するような仕方で後根神経節内で作用するまたは後根神経節内の反応に影響を及ぼす薬理学的薬剤を提供することができる。特定の一実施形態において、薬理学的薬剤は、導入後に、チャネル遮断薬の存在下で用いることができる、より高いレベルの刺激を用いることができるようにc線維受容体が効果的に遮断される、チャネル遮断薬である。いくつかの実施形態において、薬剤は、刺激の前に放出させることができる。他の実施形態において、薬剤は、刺激中もしくは後に、またはその組合せで放出させることができる。例えば、薬剤を単独で導入する、刺激を単独でもたらす、刺激を薬剤存在下でもたらす、または加えられる刺激パターンより前に薬剤を所望の薬理効果を導入するのに十分な時間投与したような仕方で薬剤の導入後の時間間隔でもたらす、処置療法を提供することができる。本発明の刺激システムおよび方法の実施形態は、電気刺激と対をなす薬理学的薬剤コーティングを有する本発明の微小電極を用いてC線維およびAβ線維閾値の微調整を可能にする。
D.送達用薬剤
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置(DD)10、システム1000および方法により慢性神経痛を治療するのに適する薬剤および医薬は、疼痛を治療するのに有用な任意の薬剤、例えば、薬理学的薬剤でありうる。いくつかの実施形態において、薬剤は、神経細胞体、例えば、感覚ニューロン細胞体または体細胞(somas)、体ニューロン膜、細胞内第二メッセンジャーシステム、遺伝子発現システム(例えば、翻訳修飾、翻訳後、転写および転写後機構)、エピジェネティック修飾等を標的とすることができる。いくつかの実施形態において、薬剤は、細胞体膜および感覚ニューロン細胞体の内在性膜ならびに細胞核および核内構造、リボソーム、ミトコンドリア、tジャンクションならびに双極性感覚ニューロン細胞から発する末梢および中枢軸索に作用しうる。いくつかの実施形態において、薬剤および/または電気刺激は、tジャンクションが末梢から中枢神経系への活動電位の伝導における「ローパスフィルター」として作用するその能力を低下させるようにtジャンクションを標的とする。
そのような薬剤の例は、デキサメタゾン等のステロイドおよび/またはブピビカイン、リドカイン等の局所麻酔薬を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ドキセピンまたはオピエートクラスの薬物も開示した送達装置(DD)、システムおよび方法とともに用いることができる。
いくつかの実施形態において、送達装置10は、DRGへの薬剤の送達と併用する電極からの電気刺激のためにDRGに極めて近接して置かれる電極50を含むように適合されている。図4Cに示す実施形態において、薬剤の放出のための出力ポート40は、電極50により囲まれている。他の実施形態において、薬剤送達構造、例えば、薬剤出口ポートおよび電極設置の任意の組合せは、所望の臨床アウトカムを達成するように構成することができる。
電気刺激の前、刺激中または刺激の後にDRGへの薬剤の送達によりもたらされる所望の臨床アウトカムの例は、炎症の低減または痛覚もしくは他の神経学的病状の低減を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、薬剤は、体内に配置されたときに、薬剤が長時間にわたりある特定のレベルで放出されることを可能にする他の化合物を含んでいてもよい(すなわち、時間放出薬剤)。いくつかの実施形態において、薬剤は、鎮痛薬または抗炎症薬であり、代表的な薬理学的薬剤は、オピオイド、COX阻害剤、PGE2阻害剤、Na+チャネル阻害剤およびそれらの組合せならびに/または例えば、フェニトイン、カルバマゼピン、リドカインGDNF、オピエート、ビコディン、ウルトラムおよびモルヒネ等の侵害受容性または神経障害性または炎症性疼痛を抑制するための他の適切な薬剤を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、薬剤は、電気刺激により活性化されるプロドラッグである。
送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる具体例としての薬剤は、アルファ受容体ブロッカーIアゴニスト、ベータ受容体ブロッカーIアゴニスト、CB-1(カンナボイド1)受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、神経栄養性因子受容体(TrkA、TrkB、TrkC)アゴニストおよびアンタゴニスト、オピオイド受容体(ミュー、デルタおよびカッパサブタイプ)アゴニストおよびアンタゴニスト、部分オピオイド受容体アゴニスト(例えば、ブプレノルフィン、トラマドール等)、5-HT1Aアゴニストまたはアンタゴニストおよび5-HT1A部分アゴニストを含むセロトニン(5HT)受容体アゴニスト(例えば、アミトリプチリン、アミトリプチリン)またはアンタゴニスト、ノルエピネフリントランスポーター遮断薬、GABA受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グルタミン酸受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、トール様受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、NK-1受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、神経ペプチドY受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、アデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、神経ペプチドY受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、レプチン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グリシン作動性受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、オルファニン/ノシセプチン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト等の受容体アゴニストおよびアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、例えば、一過性受容体電位(TRP)チャネルアゴニストまたはアンタゴニスト、ナトリウムチャネルアゴニストまたはアンタゴニスト、カリウムチャネルアゴニストまたはアンタゴニスト、カルシウムチャネルアゴニストまたはアンタゴニスト、塩素チャネルアゴニストまたはアンタゴニスト、トランスポーターアゴニストまたはアンタゴニスト、アクアポリンチャネルアゴニストまたはアンタゴニスト等であるが、これらに限定されないイオンおよび非イオン性伝導性膜チャネルタンパク質を調節する薬剤を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、カルシウムチャネルアンタゴニスト、ナトリウムチャネルアンタゴニスト、ノイロキニン受容体1(NK1)アンタゴニスト、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)および/または選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取込み阻害剤(SSNRI)、三環系抗うつ薬、ノルエピネフリンモジュレーター、リチウム、バルプロエート、ノルエピネフリン再取込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、モノアミンオキシダーゼの可逆性阻害剤(RIMA)、アルファ-アドレナリン受容体アンタゴニスト、非定型抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、ガバペンチン(例えば、NEURONTIN(商標))およびプレガバリン等である。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、例えば、サイトカイン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト(I、II型TNF受容体ファミリー、ケモカイン受容体ファミリー、免疫グロブリン受容体スーパーファミリーを含むが、これらに限定されない)等であるが、これらに限定されない神経炎症モジュレーター、IL-1ファミリー、IL-2ファミリー、IL-6、TNT-α、IL-10、IFN-γ(ただし、これらに限定されない)を標的とする抗体等である。
他の実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、例えば、VEGF、BDNF、NGF、IGF、例えば、IGF1、IGF2、NT(16)、GDNF、CNTF等のような成長因子に対する抗体、ステロイド抗炎症薬、スーパーオキシドジスムターゼ等のフリーラジカルスカベンジャー、NOS阻害剤、カルシニューリン阻害剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ阻害剤、フラクタリン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ヘムオキシゲナーゼエンハンサーおよび阻害剤、NF-カッパB阻害剤、C-Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤等であるが、これらに限定されない細胞内シグナル伝達および酵素モジュレーター等である。
本明細書で開示した送達装置を用いてDRGに送達することができる他の薬剤は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、例えば、NMDA Ca2+チャネルを局所的に遮断するケタミンおよびNMDAの他の阻害剤(NR2BおよびNR1サブユニットの阻害剤を含む)等である。ガバペンチンはまた、グルタミン酸アンタゴニストである。カルバマゼピンは、ガバペンチンと同様に、AMPA(Na+チャネル)受容体遮断薬である。10-11エポキシドは、ランゲルハンスコンプレックス(Langerhans complex)におけるC線維求心性部分を調節する活性分子である。カルバマゼピンは、それが後根神経節(DRG)における交感神経受容体を遮断するのと同じ様式で、電位依存性ナトリウムチャネルを介して末梢交感神経受容体を遮断する。クロニジンは、アルファ2受容体を同様に遮断するアルファ2遮断薬である。フェノキシベンザミンは、アルファ1アゴニストである。それは、視床への求心性痛性刺激を運ぶLissauerの脊髄視床路に上行する前に、後角のV〜IX野の広範囲のニューロンの介在ニューロンとシナプスを形成する後神経節求心核(afferens)を遮断するはるかに大きい力を有する。ニフェジピンは、酸化窒素(NO)合成を下方制御する非NMDA電圧感受性カルシウムチャネル遮断に有用である。したがって、ケタミンHCl USP、ガバペンチンおよびフェノキシベンザミンHClは、送達することができ、これらは、併用または単独で送達することができる。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)阻害剤、α2-受容体アゴニスト、神経性ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、可溶性受容体およびその混合物、各クラスが疼痛および炎症抑制の異なる分子的作用機序により作用する、次のクラスの受容体アンタゴニストおよびアゴニストならびに酵素活性化薬および阻害剤から選択される1つまたは複数の薬剤:ヒスタミン受容体アンタゴニスト、ブラジキニン受容体アンタゴニスト、カリクレイン阻害剤、ノイロキニン1およびノイロキニン2受容体サブタイプアンタゴニストを含むタチキニン受容体アンタゴニスト、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニスト、インターロイキン受容体アンタゴニスト、PLA2アイソタイプ阻害剤およびPLCγアイソタイプ阻害剤、ならびにリポオキシゲナーゼ阻害剤を含む、ホスホリパーゼ阻害剤を含む、アラキドン酸代謝物の合成経路において活性な酵素の阻害剤、エイコサノイドEP-1およびEP-4受容体サブタイプアンタゴニストならびにトロンボキサン受容体サブタイプアンタゴニストを含むプロスタノイド受容体アンタゴニスト、ロイコトリエンB4受容体サブタイプアンタゴニストおよびロイコトリエンD4受容体サブタイプアンタゴニストを含むロイコトリエン受容体アンタゴニスト、ならびにアデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャネルオープナーを含むが、これらに限定されない。上記の薬剤のそれぞれは、抗炎症薬として、かつ/または抗侵害受容性、すなわち、鎮痛もしくは痛覚消失薬として機能する。これらのクラスの化合物からの薬剤の選択は、特定の用途に調整する。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、TrkBの阻害剤、PGE2 EP受容体の阻害剤、MMP-2およびMMP-9の阻害剤、カリウムチャネルKril.4の阻害剤、ノイロテンシン受容体2の阻害剤ならびに酸感受性イオンチャネル(ASIC-3)の阻害剤を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、薬剤阻害剤は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Tanら、「Therapeutic potential of RNA interference in Pain Medicine」、2009年、Open Pain Journal、2巻、57〜63頁において討議されているsiRNA等のRNA干渉(RNAi)薬でありうる。いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Woolfら、Nociceptors-Noxious stimulus detectors、Neuron、2007年、55巻、353〜364頁において討議されているMOR(μ-オピオイド(opiod)受容体)、DOR(δ-オピオイド受容体)、CB1(カンナボイド受容体1)、GABAA/B、Cav2.2、EPおよびB2(ブラジキニン受容体)を含むが、これらに限定されない感覚ニューロンの中枢末端上のチャネルのアンタゴニストまたは阻害剤等である。
代替の実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、TREK(熱感受性カリウムチャネル)、TASKを含むが、これらに限定されない感覚ニューロンの末梢末端上の伝達チャネル(transducer channel)のアンタゴニストもしくは阻害剤、あるいはナトリウムチャネルNav1.6、Nav1.7、Nav1.8およびNav1.9を含む活動電位の発生および/または活動電位伝達に関与する電圧ゲートチャネルのアンタゴニストもしくは阻害剤等である。
他の実施形態において、QX-314のようなナトリウムチャネル遮断薬は、本明細書で開示した装置を用いて脊髄構造、例えばDRGに送達することができ、その理由は、QX-314は細胞外ではナトリウムチャネルの遮断に無効である(チャネルの内面に到達できないため)が、TRPV1発現侵害受容器におけるナトリウムチャネルを阻害することが示されたからである。さらに、DRGの電気刺激は、ナトリウムチャネルの閾値活性化を引き起こし、したがって、チャネルの開口を引き起こすことができ、細胞内へのQX-314の侵入およびナトリウムチャネルの有効な阻害を可能にする。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達される薬剤は、例えば、TRP1〜4(一過性受容体電位チャネル1〜4)、TRPM8(寒冷感受性TRPチャネル)のアゴニストおよびアンタゴニスト、TRPV1(寒冷感受性チャネル)、TRPA1(寒冷感受性TRPチャネル)、ASIC、P2X3、TREK(熱感受性カリウムチャネル)の阻害剤、TASK(TRPA1アゴニストおよびアンタゴニストは当業者に周知である)等の、TRP(一過性受容体電位チャネル)または炎症時に調節されるナトリウムチャネル(炎症部位の疼痛閾値を低下させる)を阻害する阻害剤もしくはアンタゴニストを含み、QX-314、Neuroges X、AnesivaならびにGRC15133およびGRC17173(Glenmark製)を含むTRPV3アンタゴニストを含む。第I相臨床試験における化合物であるAMG628、AMG517、ABT102、第II相臨床試験における化合物であるGRC6211、SB-705498、MK-2295等の他のTRPV1アンタゴニストならびに第III相臨床試験におけるTRPV1アゴニスト、Patapoutianら、Nat. Rev. Drug Discovery、2009年、8巻(1号)、55〜68頁に開示されているNGX4010(カプサイシン(capsascin))、ズカプサイシンおよび徐放性カプサイシンが公知である。他のTRPV1アゴニストは、WL-1001、WL-1002、カプサゼピン、キナゾロン化合物26、AMG0347、AMG8163、A-784168、ベンゾイミダゾール、GRC6127を含む。TRPV1のアンタゴニストは、A-425619、BCTC、SB-705498、AMG9810、A-425619、SB-705498、JNJ-17203212(4-(3-トリフルオロメチル-ピリジン-2-イル)-ピペラジン-1-カルボン酸(5-トリフルオロメチル-ピリジン-2-イル)-アミド)、化合物26と呼ばれたキナゾロン、構造式がJara-Osegueraら、Curr Mol Pharmacol、2008年、1巻(3号)、255〜269頁に開示されており、神経障害性疼痛、骨癌疼痛、骨関節症性疼痛に関連する侵害受容性行動を逆転するのに有効であるA-784168(N-1H-インダゾール-4-イル-N'-[(1R)-5-ピペリジン-1-イル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル]尿素)およびJYL1421(N-(4-tert-ブチルベンジル)-N'-[3-フルオロ-4-(メチルスルホニルアミノ)ベンジル]チオ尿素)も含む。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、例えば、ミノサイクリン、ホスホジエステラーゼ阻害剤(プロペントフィリン、AV-411、ペントキシフィリン)、メトトレキセート、ヌクレオチド受容体アンタゴニスト(末梢免疫細胞およびミクログリアの活性を調節するP2XおよびP2Y受容体の活性化)、p38 MAPキナーゼ阻害剤、サイトカイン合成(例えば、IL1、IL6、IL10、TNFおよびその他に対する中和抗体および受容体捕捉戦略)および活性のモジュレーター、補体阻害剤、カンナビノイド(Costiganら、Ann Rev Neuroscience、2009年、32巻、1〜32頁参照)を含むが、これらに限定されない神経障害性疼痛の免疫モジュレーターを含む。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、P2X受容体アンタゴニストおよびP2Y受容体アゴニスト等のプリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにP2Y2受容体アゴニストまたはその薬学的に許容される塩(また本明細書で時として「活性剤」と呼ぶ)でありうる。適切なP2Y2受容体アゴニストは、米国特許第6,264,975号のカラム9〜10、米国特許第5,656,256号および米国特許第5,292,498号に記載されている。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置は、感覚ニューロンの非体領域に送達した場合(例えば、後柱における遠位軸索または中枢軸索に送達した場合)、対象における疼痛を低減するのに治療上有効な効果を典型的に有さない薬剤を送達するために用いる。例えば、本明細書で開示した本送達装置の1つの利点は、標的脊髄構造への薬剤の直接的な送達であり、標的脊髄構造がDRGである場合、送達された薬剤が感覚ニューロン細胞体(例えば、体細胞)に直接作用することができることである。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、抗けいれん薬を含み、セロトニン受容体アンタゴニスト、タチキニン受容体アンタゴニストならびにATP感受性カリウムチャネル開口薬、カルシウムチャネルアンタゴニスト、エンドセリン受容体アンタゴニストおよび酸化窒素ドナー(酵素活性化剤)を含む。
バニロイド受容体アゴニスト
いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、持続的使用で炎症時等の多くの(heap)疼痛を伝達するバニロイド受容体1(VR-1)を脱感作するバニロイドアゴニストを含む。理論により拘束されることを望むものでないが、バニロイド受容体1(VR1)は、侵害受容一次求心性ニューロンにおいて顕著に発現する多量体陽イオンチャネルである(例えば、Caterinaら、Nature、389巻、8160824頁、1997年、Tominagaら、Neuron、531〜543頁、1998年参照)。受容体の活性化は、典型的に有痛性熱の適用により(VR1は熱疼痛を伝達する)または炎症もしくはバニロイドへの曝露時に神経終末において起こる。
VR1の最初の活性化後、VR1アゴニストは、後の刺激に対してVR1を脱感作することが報告された。後の侵害受容チャレンジに対する痛覚消失をもたらすために、この脱感作現象が活用された。例えば、強力なバニロイド受容体アゴニストであるレシニフェラトキシン(resinferatoxin)(RTX)の局所投与により、化学的疼痛刺激に対する長時間持続性無感覚がもたらされることが示された。バニロイドアゴニスト、例えば、レシニフェラトキシン(RTX)の神経節内またはくも膜下腔内投与により、痛覚の減少および神経原性(neuogenic)炎症の低減ならびにVR1発現ニューロンの選択的アブレーションがもたらされることが、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0222385号において最近報告された。したがって、いくつかの実施形態において、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる薬剤は、レシニフェラトキシン(RTX)またはオバニル等のカプサイシン等であるが、これらに限定されないバニロイドアゴニスト等である。
VR1アゴニストは、受容体の結合および活性化を媒介するバニロイド部分の存在によって典型的に特徴付けられる。かなり多くのVR1受容体アゴニストが、本発明の送達装置を用いて標的構造、例えば、脊髄に送達するために有用である。VR1受容体アゴニストとして作用する化合物としては、レシニフェラトキシンおよびチンヤトキシン等の他のレシニフェラトキシン様複合(complex)多環式化合物、カプサイシンおよびオバニル等の他のカプサイシン類似体、ならびにVR1の結合および活性化を媒介するバニロイド部分を含む他の化合物等がある。天然に存在するまたは野生型RTXは、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0222385号に開示されており、また、チンヤトキシン等のRTX類似体化合物、さらに他の化合物、例えば、12-デオキシホルボール13-フェニルアセテート20-ホモバニレートおよびメゼレイン20-ホモバニレート等のジテルペンの20-ホモバニリルエステルは、例えば、米国特許第4,939,194号、第5,021,450号および第5,232,684号に開示されている。他のレシニフェラトキシン型ホルボイドバニロイドも同定された(例えば、Szallasiら、Brit. J. Phrmacol.、128巻、428〜434頁、1999年参照)。しばしば、C20-ホモバニリン部分、環C上のC3-ケト基およびオルトエステルフェニル基は、RTXおよびその類似体の活性化のための重要な構造要素である。本明細書で用いているように、「レシニフェラトキシン」または「RTX」は、VR1アゴニスト活性を有する他のホルボールバニロイドを含む、天然に存在するRTXおよびRTXの類似体を意味する。
いくつかの実施形態において、用いることができるVR1アゴニストは、これらのカラシの特徴である「熱」感を媒介する唐辛子における天然産物であるカプサイシンを含む。本明細書で用いているように、「カプサイシン」または「カプサイシノイド」は、カプサイシンおよびカプサイシン関連または類似体化合物を意味する。天然に存在するまたは野生型カプサイシンは、米国特許出願公開第2010/0222385号に開示されている構造を有し、当技術分野で公知であるバニリルアクリルアミド、ホモバニリルアクリルアミド、カルバメート誘導体、スルホンアミド誘導体、尿素誘導体、アラルキルアミドおよびチオアミド、アラルキルアラルカンアミド、フェニルアセトアミドおよびフェニル酢酸エステル等の当技術分野で公知であるカプサイシンの類似体としても存在しうる。一実施形態において、カプサイシン類似体オルバニル(N-バニリル-9-オクタデセンアミド)を本発明の方法に用いる。カプサイシンおよびカプサイシン類似体の例は、例えば、次の特許および特許出願に記載されている:すなわち、すべてが参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,962,532号、米国特許第5,762,963号、米国特許第5,221,692号、米国特許第4,313,958号、米国特許第4,532,139号、米国特許第4,544,668号、米国特許第4,564,633号、米国特許第4,544,669号ならびに米国特許第4,493,848号、第4,532,139号、第4,564,633号および第4,544,668号。
他のVR1アゴニストは、当業者に周知であり、VR1への化合物の結合を測定すること(VR1結合アッセイは、WO00/50387、米国特許第5,232,684号に記載されている)、Ca2+の流入を刺激する化合物の能力および/またはバニロイド受容体を発現する細胞を殺す薬剤の能力を測定することにより容易に同定することができる。VR1アゴニストは、WO00/50387に開示されているもの、ならびに本明細書で開示した送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができるOLVANIL(商標)、AM404、アナンダミドおよび15-HPETEを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、これらの薬剤は、VR1受容体を発現する神経細胞型、例えば、C線維ニューロンを選択的にアブレートするためにも用いることができる。好ましいVR1アゴニスト、例えば、RTXは、野生型、すなわち、天然に存在するカプサイシンよりも典型的に10倍、しばしば100倍、好ましくは1000倍高いVR1に対する結合親和力を有する。
セロトニン受容体アンタゴニストおよびアゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、炎症性疼痛および慢性疼痛を有する対象の治療のためのセロトニン受容体アンタゴニストである。セロトニン(5-HT)は、末梢における侵害受容ニューロン上のセロトニン2(5-HT2)および/またはセロトニン3(5-HT3)受容体を刺激することにより疼痛をもたらす。末梢侵害受容器上の5-HT3受容体は、5-HTによりもたらされる即時痛覚を媒介する(Richardsonら、1985年)。5-HT3および5-HT2受容体アンタゴニストは、侵害受容器の活性化および神経原性炎症を抑制する。
したがって、いくつかの実施形態において、5-HT2および5-HT3受容体アンタゴニストは、個別または一緒に送達することができる。いくつかの実施形態において、5-HT2受容体アンタゴニストは、ある特定の慢性疼痛患者において有益な効果を有するアミトリプチリン(ELAVIL(商標))である。いくつかの実施形態において、5-HT3受容体アンタゴニストは、制吐薬として臨床的に用いられ、血小板からの5-HTの放出を阻害するために疼痛を抑制することができるメトクロプラミド(REGLAN(商標))である。他の適切な5-HT2受容体アンタゴニストは、イミプラミン、トラゾドン、デシプラミンおよびケタンセリンを含むが、これらに限定されない。ケタンセリンは、その抗高血圧作用のために臨床的に使用されている。他の適切な5-HT3受容体アンタゴニストは、シサプリドおよびオンダンセトロン等である。セロトニンIB受容体アンタゴニストも本明細書で開示した装置を用いて標的脊髄構造に送達することができ、ヨヒンビン、N-[-メトキシ-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)フェニル]-2'-メチル-4'-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)[1,1-ビフェニル]-4-カルボキサミド(「GR127935」)およびメチオテピンを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、送達装置を用いてDRGに送達することができる薬剤は、アデニル酸シクラーゼ活性を阻害することが公知である5-HT1A、5-HT1Bおよび5-HT1D受容体に対するアゴニスト等である。したがって、溶液に低用量のこれらのセロトニン1A、セロトニン1Bおよびセロトニン1D受容体アゴニストを含めることにより、疼痛および炎症を媒介するニューロンが抑制されるはずである。セロトニン1Eおよびセロトニン1F受容体アゴニストによる同じ作用が予想され、その理由は、これらの受容体もアデニル酸シクラーゼを阻害するからである。ブスピロンは、本発明に用いる適切な1A受容体アゴニストである。スマトリプタンは、適切な1A、1B、1Dおよび1F受容体アゴニストである。適切な1Bおよび1D受容体アゴニストは、ジヒドロエルゴタミンである。適切な1E受容体アゴニストは、エルゴノビンである。
ブラジキニン受容体アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、急性末梢疼痛および炎症性疼痛の治療のためのブラジキニン受容体アンタゴニストである。ブラジキニン受容体は、一般的にブラジキニン1(B1)およびブラジキニン2(B2)サブタイプに分類される。ブラジキニンによってもたらされる急性末梢疼痛および炎症は、B2サブタイプにより媒介されるが、慢性炎症の状況におけるブラジキニン誘発性疼痛は、B1サブタイプにより媒介される。
ブラジキニン受容体アンタゴニストは、ペプチド(小タンパク質)でありうる。B2受容体に対するアンタゴニストは、ブラジキニン誘発性急性疼痛および炎症を遮断する。したがって、用途によって、本明細書で開示した装置により送達される薬剤は、ブラジキニンB1およびB2受容体アンタゴニストのいずれか、または両方でありうる。適切なブラジキニン受容体アンタゴニストは、B1受容体アンタゴニストであるD-Arg-(Hyp3-Thi5-D-Tic7-Oic8)-BKの[des-Arg10]誘導体(Hoechst Pharmaceuticalsから入手できる「HOE140の[des-Arg10]誘導体」)および[Leu8]des-Arg9-BKを含むが、これらに限定されない。適切なブラジキニン2受容体アンタゴニストは、[D-Phe7]-BK、D-Arg-(Hyp3-Thi5.8-D-Phe7)-BK(「NPC349」)、D-Arg-(Hyp3-D-Phe7)-BK(「NPC567」)およびD-Arg-(Hyp3-Thi5-D-Tic7-Oic8)-BK(「HOE140」)を含む。これらの化合物は、以前に組み込まれたPerkinsら1993年およびDrayら1993年参考文献により十分に記載されている。
カリクレイン阻害剤
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、急性末梢疼痛(pan)および炎症性疼痛の治療のためのカリクレイン阻害剤である。ブラジキニンは、血漿中の高分子量キニノーゲンに対するカリクレインの作用による切断産物として産生される。したがって、アプロチニンのようなカリクレイン阻害剤は、ブラジキニンの産生ならびにこれに伴う疼痛および炎症を抑制するための薬剤として用いることができる。
タチキニン(TK)受容体アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、神経原性炎症性疼痛の治療のためのタチキニン受容体アンタゴニストである。タチキニン(TK)は、ニューロン刺激ならびに内皮依存性血管拡張、血漿タンパク質血管外遊出、マスト細胞の動員および脱顆粒ならびに炎症性細胞の刺激を誘発する、サブスタンスP、ノイロキニンA(NKA)およびノイロキニンB(NKB)を含む構造的に関連するペプチドのファミリーである。TK受容体の活性化によって上述の生理学的作用の組合せが媒介されるため、TK受容体阻害剤は、神経原性炎症の治療のための薬剤として用いることができる。
ノイロキニン1受容体サブタイプアンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、炎症性疼痛の治療のためのNK1受容体アンタゴニストである。サブスタンスPは、ノイロキニン受容体サブタイプNK1を活性化して、血管拡張、血漿血管外遊出およびマスト細胞の脱顆粒を含む、C線維活性化後の末梢における炎症および疼痛をもたらす複数の作用を有する。したがって、炎症性疼痛の治療のための本明細書で開示した標的脊髄構造に送達される薬剤は、([D-Pro9[スピロ-ガンマ-ラクタム]Leu10,Trp11]フィサラエミン-(1-11))(「GR82334」)ならびに1-イミノ-2-(2-メトキシ-フェニル)-エチル)-7,7-ジフェニル-4-ペルヒドロ-イソインドロン(3aR,7aR)(「RP67580」)および2S,3S-シス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-ベンズヒドリルキヌクリジン(「CP96,345」)等のNK1受容体アンタゴニスト等であるが、これらに限定されないサブスタンスPアンタゴニストを含む。
ノイロキニン2受容体サブタイプアンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、炎症性疼痛の治療のためのNK2受容体アンタゴニストである。ノイロキニンAは、サブスタンスPとともに感覚ニューロンに共局在化し、炎症および疼痛も促進するペプチドである。ノイロキニンAは、特異的なノイロキニン受容体NK2を活性化する。本明細書で開示した装置を用いて標的脊髄構造に送達することができるNK2アンタゴニストは、制限なしに、((S)-N-メチル-N-[4-(4-アセチルアミノ-4-フェニルピペリジノ)-2-(3,4-ジクロロフェニル)ブチル]ベンズアミド(「(±)-SR48968」)、Met-Asp-Trp-Phe-Dap-Leu(「MEN10,627」)およびcyc(Gln-Trp-Phe-Gly-Leu-Met)(「L659,877」)を含む。
CGRP受容体アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、疼痛および炎症性疼痛の治療のためのCGRP受容体アンタゴニストである。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、サブスタンスPとともに感覚ニューロンに共局在化もし、血管拡張薬として作用し、サブスタンスの作用を増強するペプチドである。適切なCGRP受容体アンタゴニストの例は、CGRPの切断型であるα-CGRP-(8-37)である。このポリペプチドは、CGRP受容体の活性化を阻害する。
シクロオキシゲナーゼ阻害剤
いくつかの実施形態において、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)は、炎症性疼痛の治療のために本明細書で開示した送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる。そのようなNSAID'sは、アスピリン、CELECOXIB(商標)、CELEBREX(商標)、DICLOFENAC(商標)、IBUPROFEN(商標)、KETOPROFEN(商標)、NAPROXEN(商標)等のCOX2阻害剤を含むが、これらに限定されない。本明細書で開示した送達装置を用いてDRGに送達することができる他の薬剤は、例えば、アスピリン、アセトアミノフェン(TYLENOL(商標))、イブプロフェン(MOTRIN(商標)、ADVIL(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))ならびにモルヒネ、オキシコドンおよびヒドロコドン(VICODIN(商標))等の麻薬を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願US2003/02039956号に開示されているCOX-2阻害剤のいずれか1つまたは組合せは、本明細書で開示した装置、システムおよび方法を用いて送達することができる。
NSAIDは、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、イブプロフェン等も含み(ただし、制限なしに)、一般的にCOXの両アイソタイプの非選択的阻害剤であるが、COX-2と比べてCOX-1に対してより大きい選択性(selectively)を示す可能性がある(この比は異なる化合物について様々であるが)。エイコサノイド受容体(EP-1、EP-2、EP-3、EP-4、DP、FPおよびTP)のアンタゴニストもトロンボキサンA2のアンタゴニストと同様に炎症性疼痛の治療のために送達することができる。いくつかの実施形態において、炎症性疼痛の治療のために装置を用いてケトロラック(TORADOL(商標))を送達することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置により送達されるCOX-2阻害剤は、COX-1対COX-2に対する選択性の増加を有し、例えば、薬剤は、有効性の序列で、DuP697>SC-58451、セレコキシブ>ニメスリド=メロキシカム=ピロキシカム=NS-398=RS-57067>SC-57666>SC-58125>フロスリド>エトドラク>L-745,337>DFU-T-614を含むが、これらに限定されない。本明細書で開示した装置を用いて送達することができる適切なCOX-2阻害剤は、制限なしに、セレコキシブ、メロキシカム、ニメスリド、ジクロフェナク、フロスリド、N-[2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル]-メタンスルホンアミド(NS-398)、1-[(4-メチルスルホニル)フェニル]-3-トリフルオロメチル-5-[(4-フルオロ)フェニル]ピラゾール(SC58125)およびRiendeau, D.ら、(1997年) Can. J. Physiol. Pharmacol.、75巻、1088〜95頁に記載されている次の化合物、DuP697を含む。
リポオキシゲナーゼ阻害剤
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのリポオキシゲナーゼ阻害剤である。リポオキシゲナーゼ酵素の阻害は、炎症および疼痛の重要なメディエーターであることが公知であるロイコトリエンB4等のロイコトリエンの産生を阻害する。5-リポオキシゲナーゼアンタゴニストの例は、2,3,5-トリメチル-6-(12-ヒドロキシ-5,10-ドデカジニル)-1,4-ベンゾキノン(「AA861」)である。
プロスタノイド受容体アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのプロスタノイド受容体アンタゴニストである。アラキドン酸の代謝物として産生される特定のプロスタノイドは、プロスタノイド受容体の活性化によりそれらの炎症作用を媒介する。特定のプロスタノイドアンタゴニストのクラスの例は、エイコサノイドEP-1およびEP-4受容体サブタイプアンタゴニストならびにトロンボキサン受容体サブタイプアンタゴニストである。適切なプロスタグランジンE2受容体アンタゴニストは、8-クロロジベンズ[b,f][1,4]オキサゼピン-10(11H)-カルボン酸、2-アセチルヒドラジド(「SC19220」)である。適切なトロンボキサン受容体サブタイプアンタゴニストは、[15-[1α,2β(5Z),3β,4α]-7-[3-[2-(フェニルアミノ)-カルボニル]ヒドラジノ]メチル]-7-オキソビシクロ-[2,2,1]-へプタ-2-イル]-5-ヘプタン酸(「SQ29548」)である。
オピオイド受容体アゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における慢性疼痛および/または炎症性疼痛の治療のためのオピオイドである。特に、DRGにおける小細胞がMOR1(ミュー-オピオイド受容体)を発現し、後角(DH)がDOR(デルタ-オピオイド受容体)を発現するので、μ-オピオイド、δ-オピオイドおよびκ-オピオイド受容体サブタイプアゴニストを含むオピオイド受容体アゴニストは、送達装置を用いて標的脊髄構造、例えばDRGに送達することができる。送達することができる適切なオピオイドは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、カルフェンタニル、コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、エンドルフィン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、ペチジン/メペリジン、レミフェンタニル、スフェンタニル、トラマドールならびにそれらの誘導体および類似体を含むが、これらに限定されない。
μ-受容体は、末梢における感覚ニューロン末端に位置し、これらの受容体の活性化により、感覚ニューロンの活動が抑制される。δ-およびκ-受容体は、交感神経遠心性末端に位置し、プロスタグランジンの放出を阻害し、それにより、疼痛および炎症を抑制する。適切なμ-オピオイド受容体アゴニストの例は、フェンタニルおよびTry-D-Ala-Gly-[N-MePhe]-NH(CH2)-OH(「DAMGO」)である。適切なδ-オピオイド受容体アゴニストの例は、[D-Pen2,D-Pen5]エンケファリン(「DPDPE」)である。適切なκ-オピオイド受容体アゴニストの例は、(トランス)-3,4-ジクロロ-N-メチル-N-[2-(1-ピロリジニル(pyrrolidnyl))シクロヘキシル]-ベンゼンアセトアミド(「U50,488」)である。
対象における慢性および炎症性疼痛の治療のための本明細書で開示した装置により送達することができる他のオピオイドは、フェンタニル、スフェンタニルを含み、フェンタニル同族体は、当技術分野で周知であり、例えば、スフェンタニル(例えば、米国特許第3,998,834号、化学名:((N-[4-(メトキシメチル(methyoxymethyl))-1-[2-(2-チエニル)エチル]-4-ピペリジニル]-N-フェニルプロパンアミド2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボキシレート(1:1)、C22H30N2O2S)、フェンタニル(例えば、米国特許第3,141,823号、化学名:N-フェニル-N-[1-(2-フェニルエチル)-4-ピペリジニル]プロパンアミド)、アルフェンタニル(例えば、米国特許第4,167,574号、化学名:N-[1-[2-(4-エチル-4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1H-テトラゾール-1-イル)エチル]-4-(メトキシメチル)-4-ピペリジニル]-N-フェニルプロパンアミド(C21H32N6O3))、ロフェナトニル(例えば、米国特許第3,998,834号、化学名:3-メチル-4-[(1-オキソプロピル)フェニルアミノ]-1-(2-フェニルエチル)4-ピペリジンカルボン酸メチルエステル)、カルフェンタニル(化学名:メチル-4-[(1-オキソプロピル)フェニルアミノ]-1-(2-フェニルエチル)-4-ピペリジンカルボキシレート(C24H30N2O3))、レミフェンタニル(化学名:3-[4-メトキシカルボニル-4-[(1-オキソプロピル)フェニルアミノ]1-ピペリジン]プロパン酸)、トレフェンタニル(化学名:N-(1-(2-(4-エチル-4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1H-テトラゾール1-イル)エチル)-4-フェニル-4-ピペリジニル)-N-(2-フルオロフェニル)-プロパンアミドおよびミルフェンタニル(化学名:[N-(2-ピラジニル)-N-(1-フェネチル4-ピペリジニル)-2-フラミド)を参照のこと。
対象における慢性および炎症性疼痛の治療のための本明細書で開示した装置により送達することができるフェンタニルおよびフェンタニル同族体ならびに他のオピオイドは、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、23章、「Opioid Analgesics and Antagonists」、521〜555頁(9版、1996年)、Balyら、1991年、Med Res. Rev.、11巻、403〜36頁(4-アニリドピペリジンオピオイドの発展)およびFeldmanら、1991年、J. Med. Chem.、34巻、2202〜8頁(オピオイド鎮痛薬の設計、合成および薬理学的評価)において討議されている。フェンタニルおよびフェンタニル同族体に関する追加情報については、例えば、Scholzら、1996年、Clin. Pharmacokinet.、31巻、275〜92頁(アルフェンタニル、フェンタニルおよびスフェンタニルの臨床薬物動態)、Meert、1996年、Pharmacy World Sci.、18巻、1〜15頁(モルヒネ、フェンタニルおよびフェンタニル同族体の薬物療法を記載)、Lemmensら、1995年、Anesth. Analg.、80巻、1206〜11頁(ミルフェンタニルの薬物動態)、Mintoら、1997年、Int. Anesthesiol. Clin.、35巻、49〜65頁(最近開発されたオピオイド鎮痛薬の総説)、James、1994年、Expert Opin. Invest. Drugs、3巻、331〜40頁(レミフェンタニルに関する考察)、Rosow、1993年、Anesthesiology、79巻、875〜6頁(レミフェンタニルに関する考察)、Glass、1995年、Eur. J. Anaesthesiol. Suppl.、10巻、73〜4頁(レミフェンタニルの薬理)およびLemmensら、1994年、Clin. Pharmacol. Ther.、56巻、261〜71頁(トレフェンタニルの薬物動態)を参照のこと。
フェンタニルまたはフェンタニル同族体等の本明細書で開示した送達装置により送達される薬剤は、オピオイド塩基および/またはオピオイドの薬学的に許容される塩として製剤で提供することができる。薬学的に許容される塩は、無機および有機塩を含む。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、ミューテート(mutate)、クエン酸塩、コハク酸塩、n-オキシド、硫酸塩、マロン酸塩、酢酸塩、二塩基リン酸塩、一塩基リン酸塩、酢酸塩三水和物、重ヘプタフルオロ酪酸塩、マレイン酸塩、重メチルカルバミン酸塩、重ペンタフルオロプロピオン酸塩、メシル酸塩、重ピリジン-3-カルボン酸塩、重トリフルオロ酢酸塩、重酒石酸塩、クロロハイドレート、フマル酸塩および硫酸塩五水和物からなる群から選択されるメンバーを含む。
プリン受容体アンタゴニストおよびアゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛または侵害受容性疼痛(nociceptive)の治療のためのプリン受容体アンタゴニストまたはアゴニストである。細胞外ATPは、P2プリン受容体との相互作用によりシグナル伝達分子として作用する。特に、ATPは、感覚ニューロンを脱分極し、侵害受容器の活性化に役割を果たし、その理由は、損傷細胞から放出されたATPがP2X受容体を刺激し、侵害受容神経線維末端の脱分極をもたらすためである。リガンド開口型イオンチャネルであるP2Xプリン受容体は、Na+、K+およびCa2+に対して透過性の内在性イオンチャネルを有する。P2X受容体は、一次求心性神経伝達および侵害受容に重要である。P2X3受容体は、高度に限定された分布を有し、感覚C線維感覚ニューロンにおいて選択的に発現する。したがって、炎症性疼痛の治療のための本明細書で開示した装置を用いて送達することができるP2X3のアンタゴニストは、例として、スラミンおよびピリドキシルリン酸-6-アゾフェニル-2,4-ジスルホン酸(「PPADS」)を含む。
アデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャネル開口薬(KCO)
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのATP感受性カリウムチャネル開口薬(KCO)である。ATP感受性カリウムチャネルは、血管および非血管平滑筋ならびに脳を含む多くの組織において発現し、これらのチャネルの開口により、カリウム(K+)の流出が引き起こされ、細胞膜が過分極して、電圧依存性カルシウム(Ca2+)チャネルおよび受容体作動性Ca2+チャネルの抑制による細胞内遊離カルシウムの低下がもたらされる。したがって、K+チャネル開口薬(KCO)は、神経刺激および炎症メディエーターの放出時に典型的に活性化されるATP感受性K+チャネルの作用を抑制する。Quast, U.ら、Cardiovasc. Res.、28巻、805〜810頁(1994年)。
ATP感受性カリウムチャネル開口薬(KCO)は、相乗作用を示す。ATP感受性であるカリウムチャネル(KATP)は、細胞の膜電位をアデノシンヌクレオチドへの感受性により細胞の代謝状態に共役させる。KATPチャネルは、細胞内ATPにより抑制されるが、細胞内ヌクレオチドジホスフェートにより刺激される。これらのチャネルの活動性は、カリウムおよび細胞内シグナル(例えば、ATPまたはGタンパク質)への電気化学的推進力により制御されるが、膜電位それ自体によってゲートされない。KATPチャネルは、膜を過分極させ、それにより、それらが細胞の静止電位を制御することを可能にする。ATP感受性カリウム電流が骨格筋、脳ならびに血管および非血管平滑筋に発見された。これらのチャネルの開口により、カリウムの流出が引き起こされ、細胞膜が過分極する。この過分極は、(1)L型またはT型カルシウムチャネルを開口させる可能性を低下させることによる電圧依存性Ca2+チャネルの抑制による細胞内遊離カルシウムの低下を誘発し、(2)イノシトール三リン酸(IP3)の形成の抑制により細胞内源からのアゴニスト誘発性(受容体作動性チャネルにおける)Ca2+放出を抑止し、(3)収縮性タンパク質の活性化因子としてのカルシウムの効率を低下させる。これらの2つのクラスの薬物(ATP感受性カリウムチャネル開口薬およびカルシウムチャネルアンタゴニスト)の複合作用は、標的細胞をクランプして弛緩状態または活性化に対してより抵抗性の状態にする。
ピナシジル等のカリウムチャネル開口薬は、これらのチャネルを開口させて、K+の流出および細胞膜の過分極を引き起こす。本発明の実施のための適切なATP感受性K+チャネル開口薬は、(-)ピナシジル、クロマカリム、ニコランジル、ミノキシジル、N-シアノ-N'-[1,1-ジメチル-[2,2,3,3-3H]プロピル]-N''-(3-ピリジニル)グアニジン(「P1075」)およびN-シアノ-N'-(2-ニトロキシエチル)-3-ピリジンカルボキシミダミドモノメタンスルホネート(「KRN2391」)を含む。
MAPK阻害剤
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのMAPK阻害剤である。本発明に適するMAPK阻害剤化合物の代表的な例は、例えば、4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(SB203580)、4-(3-ヨードフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(SB203580-ヨード)、4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(SB202190)、5-(2-アミノ-4-ピリミジル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール(SB220025)、4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(PD169316)、および2'-アミノ-3'-メトキシフラボン(PD98059)を含む。
腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリー
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのTNFαまたはTNF受容体の阻害剤である。TNFαは、活性化マクロファージにより主として産生されるサイトカインであり、炎症応答の基礎をなす一連の細胞および分子事象に中心的な役割を果たす。TNFの炎症誘発作用のうちで、それは、IL-1、IL-6およびIL-8を含む他の炎症誘発性サイトカインの放出を刺激する。TNFαは、好中球、線維芽細胞および軟骨細胞からのマトリックスメタロプロテイナーゼの放出も誘導し、細胞毒性、抗ウイルス活性、免疫調節活性および特異的TNF受容体により媒介されるいくつかの遺伝子の転写調節等の他の多くの生物学的作用を有する。8種の異なるTNF関連サイトカインが関連する、12種の異なるTNF関連受容体が同定された(TNFR-1、TNFR-2、TNFR-RP、CD27、CD30、CD40、NGF受容体、PV-T2、PV-A53R、4-1BB、OX-40およびFas)。
キメラTNF可溶性受容体(米国特許第5,447,851号において「キメラTNF阻害剤」とも呼ばれている)は、高親和力でTNFαに結合することが示されており、TNFαの生物学的活性の有効な阻害剤である。さらに、第2の例は、TNFα受容体について作られたFc抗体の一部を含むTNF受容体のリガンド結合ドメインからなるキメラ融合構築物である(Fc融合可溶性受容体とも呼ばれる)。他の実施形態において、可溶性TNF受容体、すなわちFc融合タンパク質または米国特許第5,605,690号に開示されているその修飾形(例えば、単量体または二量体形)は、本明細書で開示した装置を用いて標的構造に送達することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置を用いた送達のためのTNFαを阻害する薬剤は、可溶性TNF受容体、すなわちFc融合タンパク質(ENBREL(商標))、SC-58451、RS-57067、SC-57666およびL-745,337を含むが、これらに限定されない。
イオンチャネル遮断薬
イオンチャネル遮断薬は、炎症性疼痛、慢性疼痛、侵害受容性疼痛および/または炎症性疼痛の治療のために本明細書で開示した装置を用いて送達することができる。理論に限定されることを望むものでないが、イオンチャネルは、陰イオンチャネルまたは陽イオンチャネルでありうる。陰イオンチャネルは、細胞膜を横切る陰イオン(例えば、塩化物、重炭酸および胆汁酸等の有機イオン)の輸送を促進するチャネルである。陽イオンチャネルは、細胞膜を横切る陽イオン(例えば、Ca+2もしくはBa+2等の二価陽イオンまたはNa+、K+もしくはH+等の一価陽イオン)の輸送を促進するチャネルである。本明細書で述べる態様のいくつかの実施形態において、阻害されるイオンチャネルは、Na+、またはCa+2またはK+イオンチャネルである。
ナトリウムチャネル
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置は、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛または神経損傷後の神経障害性疼痛の治療のためにナトリウムチャネル遮断薬を標的脊髄構造、例えばDRGに送達する。
本明細書で述べる態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネルモジュレーターは、ナトリウムポンプ遮断薬である。本明細書で用いているように、「ナトリウムポンプ遮断薬」、「ナトリウムポンプ阻害剤」および「ナトリウムポンプアンタゴニスト」という用語は、細胞膜を横切るナトリウムおよび/またはカリウムイオンの流れを阻害または遮断する化合物を意味する。
本明細書で用いているように、「Na+イオンチャネル」は、Na+イオンに対して選択的透過性を示すイオンチャネルである。「ナトリウムチャネル遮断薬」または「ナトリウムチャネル遮断化合物」という用語は、ナトリウムチャネルに選択的に結合し、それによりナトリウムチャネルを不活性化するあらゆる化学物質を含む。ナトリウムチャネル遮断薬として機能する薬剤は、ナトリウムチャネルのSS1またはSS2サブユニットに結合することができ、制限なく、米国特許第6,407,088号(参照によりその全体として本明細書に組み込まれる)に開示されているテトロドトキシン(TTX)およびサキシトキシンを含む。
理論により拘束されることを望むものでないが、Nav1.1は、大ニューロンにより主として発現されるのに対して、Nav1.6およびNaxは、中から大ニューロンにおいて発現する。小c線維または侵害受容ニューロンにおいて、Nav1.7、Nav1.8およびNav1.9は、選択的に発現し、活動電位の急速な脱分極に関与する。Nav1.3およびNaxは、脊髄損傷後に増加し、TTX抵抗性ナトリウムチャネルNav1.8は、損傷ニューロンにおいて減少するが、周囲の非損傷であるが、感作されたニューロンにおいて上方制御される。
したがって、いくつかの実施形態において、Nav1.7、Nav1.8およびNav1.9を選択的に遮断するナトリウムチャネル遮断薬は、疼痛の治療のための方法およびシステムに有用であり、さらにNav1.3、Nav1.8およびNaxのいずれか1つを阻害するナトリウムチャネル遮断薬は、神経障害性疼痛または神経損傷後の疼痛を治療するための本発明の方法に有用である。
いくつかの実施形態において、標的脊髄構造、例えばDRGに送達されるナトリウムチャネル遮断薬は、ディランチン-[フェニトイン]、テグレトール-[カルバマゼピン]、フェニトイン、カルバマゼピン、リドカイン、モルヒネ、メキシレチンまたは他のNa+チャネル遮断薬を含む群から選択することができる。
ナトリウムチャネル遮断薬リドカインの静脈内適用は、一般の行動および運動機能に影響を与えない濃度で異所性活動を抑制し、接触性アロディニアを逆転しうる[Mao, J.およびL. L. Chen、Systemic lidocaine for neuropathic pain relief、Pain、2000年、87巻、7〜17頁]。プラセボ対照試験において、リドカインの持続注入により、末梢神経損傷を有する患者における疼痛スコアの低下がもたらされ、別個の試験において、静脈内リドカインにより、帯状疱疹後神経痛(PHN)に伴う疼痛強度が低下した[Mao, J.およびL. L. Chen、Systemic lidocaine for neuropathic pain relief、Pain、2000年、87巻、7〜17頁、Anger, T.ら、Medicinal chemistry of neuronal voltage-gated sodium channel blockers、Journal of Medicinal Chemistry、2001年、44巻(2号)、115〜137頁]。LIDODERM(登録商標)、という皮膚パッチの形態で適用されるリドカインは、現在のところPHNの唯一のFDA承認治療薬である。
例えば、米国特許出願公開第2010/0144661号および米国特許第6,030,974号に開示されているような様々なナトリウムチャネル遮断薬が送達装置により送達することができ、米国特許出願公開第2010/0144715号に開示されている置換ベンゾジアゼピノン、ベンゾオキサゼピノンおよびベンゾチアゼピノン化合物を含みうるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ナトリウムチャネル遮断薬は、テトロドトキシンもしくはサキシトキシン、またはそれらの類似体/誘導体であり、米国特許出願公開第2010/0215771号に開示されているように約0.001〜10mMの濃度で送達することができる。いくつかの実施形態において、ナトリウムチャネル遮断薬は、そのαサブユニットのSS1またはSS2細胞外口に結合する化合物であり、米国特許出願公開第2010/0144767号および米国特許第6,407,088号、第6,030,974号(参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる)に開示されているようなサキシトキシンおよびその誘導体および類似体ならびにテトロドトキシンおよびその誘導体および類似体を含む。Adamsら、米国特許第4,022,899号および第4,029,793号は、テトロドトキシンまたはデスオキシテトロドトキシンの局所麻酔組成物および他の化合物、一般的に従来の局所麻酔化合物または神経遮断特性を有する類似化合物に関する。
テトロドトキシンは、局所麻酔薬として用いることができ、一般的に用いられている局所非麻薬より1万倍強力である。他の広く用いられている麻酔薬と組み合わせたテトロドトキシン製剤は、米国特許第4,022,899号および米国特許第4,029,793号において言及された。局所麻酔薬および鎮痛薬としてのテトロドトキシンの使用ならびにその局所投与は、米国特許第6,599,906号Kuに記載されている。鎮痛薬としてのテトロドトキシンの全身使用は、米国特許第6,407,088号に記載されている。フグ毒(Puffer Fish toxin)、マキュロトキシン、スフェロイジン、タリカトキシン、テトロドントキシンおよびフグ毒(fugu poison)としても公知であるテトロドトキシン(「TTX」)は、フグ(Tetradontiae)において発見された生物学的毒素である。化学名は、オクタヒドロ-12-(ヒドロキシメチル)-2-イミノ-5,9:7,10aH-[1,3]ジオキソシノ[6,5-d]ピリミジン-4,7,10,11,12-ペントールであり、分子式は、C11H17N3O8であり、分子量は、319.27である。TTXは、海洋生物から抽出(例えば、JP270719)または当業者に周知の、例えば、米国特許第6,552,191号、米国特許第6,478,966号、米国特許第6,562,968号およびUS2002/0086997における方法により合成することができる。
テトロドトキシンの「誘導体および類似体」は、米国特許第6,030,974号および第6,846,475号に開示されており、分子式C11H17N3O8を有するアミノペルヒドロキナゾリン化合物、アンヒドロ-テトロドトキシン、テトロドアミノトキシン、メトキシテトロドトキシン、エトキシテトロドトキシン、デオキシテトロドトキシンおよびテトロドン酸、6エピ-テトロドトキシン、11-デオキシテトロドトキシンならびにヘミラクタール型TTX類似体(例えば、4-エピ-TTX、6-エピ-TTX、11-デオキシ-TTX、4-エピ-11-デオキシ-TTX、TTX-8-O-ヘミスクシネート、キリキトキシン、11-ノル-TTX-6(S)-オール、11-ノル-TTX-6(R)-オール、11-ノル-TTX-6,6-ジオール、11-オキソ-TTXおよびTTX-11-カルボン酸)、ラクトン型TTX類似体(例えば、6-エピ-TTX(ラクトン)、11-デオキシ-TTX(ラクトン)、11-ノル-TTX-6(S)-オール(ラクトン)、11-ノル-TTX-6(R)-オール(ラクトン)、11-ノル-TTX-6,6-ジオール(ラクトン)、5-デオキシ-TTX、5,11-ジデオキシ-TTX、4-エピ-5,11-ジデオキシ-TTX、1-ヒドロキシ-5,11-ジデオキシ-TTX、5,6,11-トリデオキシ-TTXおよび4-エピ-5,6,11-トリデオキシ-TTX)ならびに4,9-アンヒドロ型TTX類似体(例えば、4,9-アンヒドロ-TTX、4,9-アンヒドロ-6-エピ-TTX、4,9-アンヒドロ-11-デオキシ-TTX、4,9-アンヒドロ-TTX-8-O-ヘミスクシネート、4,9-アンヒドロ-TTX-11-O-ヘミスクシネート)を含むが、これらに限定されない。TTXの典型的な類似体は、マウスにおける内因性TTXの毒性の1/8〜1/40を有するにすぎない。
本明細書で述べた態様のいくつかの実施形態において、ナトリウムチャネル阻害剤または遮断薬は、アミロリド感受性ナトリウムチャネルを著しく調節しない。アミロリド感受性ナトリウムチャネルは、高度にナトリウム選択性である(例えば、カリウムイオンの出入を一切させない)膜結合イオンチャネルであり、構成的に活性なイオンチャネルである。アミロリド感受性ナトリウムチャネルは、当技術分野で上皮ナトリウムチャネル(「ENaC」)およびナトリウムチャネル非ニューロン1(「SCNN1」)とも呼ばれている。
Ca2+チャネルアンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した装置およびシステムにより送達される薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのカルシウムチャネルアンタゴニストである。本明細書で用いているように、「Ca2+イオンチャネル」は、Ca2+イオンに対して選択的透過性を示すイオンチャネルである。リガンド開口型カルシウムチャネルも存在するが、それは、電圧依存性カルシウムチャネルと同義とされることがある。例えば、F. StriggowおよびB. E. Ehrlich、「Ligand-gated calcium channels inside and out」、Curr. Opin. Cell Biol.、8巻(4号)、490〜5頁(1996年)を参照のこと。具体例としてのCa2+イオンチャネルは、L型、P型/Q型、N型、R型およびT型を含むが、これらに限定されない。本明細書で述べた態様のいくつかの実施形態において、Ca2+イオンチャネルは、L型Ca2+イオンチャネルである。
したがって、本明細書で述べた態様のいくつかの実施形態において、本明細書で開示した送達装置により送達されるイオンチャネルモジュレーターは、カルシウムチャネル遮断薬である。本明細書で用いているように、「カルシウムチャネル遮断薬」、「カルシウムチャネル阻害剤」および「カルシウムチャネルアンタゴニスト」という用語は、細胞膜を横切るカルシウムイオンの流れを阻害または遮断する化合物を意味する。カルシウムチャネル遮断薬は、カルシウムイオン流入阻害剤、緩徐チャネル遮断薬、カルシウムイオンアンタゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト薬として、またクラスIV抗不整脈薬としても公知である。
カルシウムチャネルアンタゴニストは、神経炎症を媒介する細胞応答の活性化に必要なカルシウムイオンの膜透過フラックスを妨げる、例えば、遮断することができる。具体例としてのカルシウムチャネル遮断薬は、アミロリド、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ミベフラジル、ニカルジピン、ニフェジピン(ジヒドロピリジン)、ニッケル、ニモジンピン、酸化窒素(NO)、ノルベラパミル、ベラパミルならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグを含むが、これらに限定されない。ニフェジピンは、様々な刺激により誘発されるアラキドン酸、プロスタグランジンおよびロイコトリエンの放出を減少させうる。
本明細書で述べた態様のいくつかの実施形態において、カルシウムチャネル遮断薬は、ベータ遮断薬である。具体例としてのベータ遮断薬は、アルプレノロール、ブシンドロール、カルテオロール、カルベジロール(付加的なα遮断活性を有する)、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、セリプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、ブタキサミンおよびICI-118,551(3-(イソプロピルアミノ)-1-[(7-メチル-4-インダニル)オキシ]ブタン-2-オール)ならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグを含むが、これらに限定されない。
ニソルジピンを含むジヒドロピリジンは、カルシウムチャネルのL型サブタイプの電圧依存性ゲーティングの特異的阻害剤(アンタゴニスト)として作用する。心臓手術中のカルシウムチャネルアンタゴニストであるニフェジピンの全身投与は、冠動脈のれん縮を予防または最小限にするために以前に用いられた。Seitelberger, R.ら、Circulation、83巻、460〜468頁(1991年)。
カルシウムチャネルアンタゴニストおよびATP感受性カリウムチャネル開口薬は、相乗作用を同様に示す。ATP感受性カリウムチャネルの開口により、カリウムの流出が引き起こされ、細胞膜が過分極する。この過分極は、(1)L型またはT型カルシウムチャネルを開口させる可能性を低下させることによる電圧依存性Ca2+チャネルの抑制による細胞内遊離カルシウムの低下を誘発し、(2)イノシトール三リン酸(IP3)の形成の抑制により細胞内源からのアゴニスト誘発性(受容体作動性チャネルにおける)Ca2+放出を抑止し、(3)収縮性タンパク質の活性化因子としてのカルシウムの効率を低下させる。これらの2つのクラスの薬物(ATP感受性カリウムチャネル開口薬およびカルシウムチャネルアンタゴニスト)の複合作用は、標的細胞をクランプして弛緩状態または活性化に対してより抵抗性の状態にする。したがって、いくつかの実施形態において、カルシウムチャネルアンタゴニストおよびKCOの両方は、本明細書で開示した装置を用いて個別または一緒に送達する。
いくつかの実施形態において、カルシウムチャネルアンタゴニストは、神経炎症の媒介における相乗効果をもたらすためにタチキニンおよび/またはブラジキニンアンタゴニストと併用することができる。カルシウムチャネルアンタゴニストは、一部がL型チャネルを経て入る細胞内カルシウムの上昇に関与する共通の機構を妨げる。疼痛の治療のための送達に適するカルシウムチャネルアンタゴニストは、ニソルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ラシジピン、イスラジピンおよびアムロジピンを含むが、これらに限定されない。
カリウムチャネル
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるようなデバイスおよびシステムによって送達される薬剤は、対象の炎症性疼痛の治療のためのカリウム(K+)チャネルアンタゴニストである。本明細書において使用される場合、「K+イオンチャネル」は、K+イオンに対して選択的透過性を示すイオンチャネルである。カリウムチャネルには4つの主要なクラス:カルシウムイオンまたは他のシグナリング分子の存在に応じて開くカルシウム開口型カリウムチャネル;内向き方向に(細胞内へ)電流(正電荷)をより容易に通過させる内向き整流性カリウムチャネル;構成的に開いているかまたは高い基礎活性を有している直列ポアドメインカリウムチャネル;および、膜横断電位の変化に応じて開いたり閉じたりする電位開口型カリウムチャネルが存在する。
例示的K+イオンチャネルとしては、これらに限定されないが、BKチャネル、SKチャネル、ROMK(Kir1.1)、GPCR調節性(Kir3.X)、ATP-感応性(Kir6.x)、TWIK、TRAAK、TREK、TASK、hERG(Kv11.1)、およびKvLQT1(Kv7.1)が挙げられる。いくつかの実施形態において、K+イオンチャネルは、ATP-感応性K+チャネルであり、これは、ATPによって開閉されるK+イオンチャネルである。ATP-感応性カリウムチャネルは、追加の成分と共にKir6.xサブユニットおよびスルホニル尿素受容体(SUR)サブユニットで構成される。例えば、Stephanら、「Selectivity of repaglinide and glibenclamide for the pancreatic over the cardiovascular K(ATP) channels」、Diabetologia 49 (9):2039〜48頁(2006)を参照されたい。ATP-感応性K+チャネルは、さらに、細胞内のそれらの位置によって、筋線維鞘性(「sarcKATP」)、ミトコンドリア性(「mitoKATP」)、または細胞核性(「nucKATP」)のいずれかとして特定することができる。
いくつかの実施形態において、K+イオンチャネルにおけるイオン透過を促進させるK+イオンチャネル調節薬であるカリウムチャネルアゴニストを、本明細書において開示されるようなデバイスを使用して標的脊髄構造に送達することができる。例示的カリウムチャネルアゴニストとしては、これらに限定されないが、ジアゾキシド、ミノキシジル、ニコランジル、ピナシジル、レチガビン、フルピルチン、レマカリム、L-735534、ならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグが挙げられる。
疼痛、例えば、炎症性疼痛等の治療のために、本明細書において開示されるようなデバイスを用いて送達することができる追加の例示的K+イオンチャネル調節薬としては、これらに限定されないが、2,3-ブタンジオンモノキシム;3-ベンジジノ-6-(4-クロロフェニル)ピリダジン;4-アミノピリジン;5-(4-フェノキシブトキシ)ソラレン;5-ヒドロキシデカン酸ナトリウム塩;L-α-ホスファチジル-D-ミオイノシトール;4,5-二リン酸塩、ジオクタノイル;Aal;アデノシン5'-(β,γ-イミド)トリホスフェートテトラリチウム塩水和物;アジトキシン-1;アジトキシン-2;アジトキシン-3;アリニジン;アパミン;塩酸アプリンジン;BDS-I;BDS-II;BL-1249;BeKm-1;CP-339818;カリブドトキシン;カリブドトキシン;クロルゾキサゾン;クロマノール293B;コハク酸シベンゾリン;トシル酸クロフィリウム;クロトリマゾール;クロマカリム;CyPPA;DK-AH269;デンドロトキシン-I;デンドロトキシン-K;塩化デクアリニウム水和物;DPO-1針状晶;ジアゾキシド;ドフェチリド;E-4031;エルゴトキシン;グリメピリド;グリピザイド;グリベンクラミド;ヘテロポダトキシン-2;ホンゴトキシン-1;ICA-105574;IMID-4F塩酸塩;イベリオトキシン;イブチリドヘミフマル酸塩;イソピマル酸;カリオトキシン-1;レブクロマカリム;Lq2;マルガトキシン;肥満細胞脱顆粒ペプチド;マウロトキシン;メチルテトラゾール;塩酸メピバカイン;ミノキシジル;硫酸ミノキシジル;N-アセチルプロカインアミドヒドロ塩酸塩;N-サリチロイルトリプタミン;NS1619;NS1643;NS309;NS8593塩酸塩;ニコランジル;ノキシウストキシン;オメプラゾール;PD-118057;PNU-37883A;パンジノトキシン-Kα;パキシリン;ペニトレムA;フリクソトキシン-2;ピナシジル一水和物;プソーラ-4;キニーネ;キニーネヘミ硫酸塩一水和物;キニーネ臭化水素酸塩;キニーネ塩化水素塩脱水物;レパグリニド;ルテカルピン;S(+)-ニグルジピン塩化水素塩;SG-209;スキラトキシン;セマチリド一塩酸塩一水和物;スロトキシン;ストロマトキシン-1;TRAM-34;タマピン;テルティアピン;テルティアピン-Qトリフルオロ酢酸塩;テトラカイン;塩酸テトラカイン;塩化テトラエチルアンモニウム;チチウストキシン-Kα;トラザミド;UCL1684;UCL-1848トリフルオロ酢酸塩;UK-78282一塩酸塩;VU590二塩化水素化物水和物;XE-991;ZD7288水和物;ザテブラジン塩酸塩;α-デンドロトキシン;β-デンドロトキシン;δ-デンドロトキシン;γ-デンドロトキシン;β-ブンガロトキシン;ならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグが挙げられる。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネルは、Na+/K+ポンプである。当該Na+/K+ポンプは、当技術分野において単にナトリウムポンプとも呼ばれる。Na+/K+ポンプは、起電性膜貫通型のATPアーゼである。それは、高等生物のほとんどのすべての細胞において発現する、高度に保存された膜内在性タンパク質である。当該ナトリウムポンプは、細胞外に3つのNa+を送り出し2つのK+を細胞内に取り込むことによって細胞膜の内外でのイオン濃度勾配の維持を担っている。このチャネルは、この作用のためにATPの加水分解によるエネルギーの消費を必要とするので、Na+/K+-ATPアーゼと呼ばれる。安静時のヒトにおいてすべての細胞質ATPのおよそ25%がナトリウムポンプによって加水分解されると見積もられる。神経細胞においては、およそ70%のATPが、Na+/K+-ATPアーゼを駆動するために消費される。Na+/K+-ATPアーゼは、静止電位の維持、輸送利用、および細胞体積の調節を助ける。それは、MAPK経路、ROS、ならびに細胞内カルシウムを調節するためのシグナルトランスデューサ/インテグレータとしても機能する。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるようなデバイスおよびシステムによって送達された薬剤は、対象における炎症性疼痛の治療のためのNa+/K+ポンプアンタゴニストである。Na+/K+ポンプは、細胞の体積を維持する。当該ポンプは、3つのNa+イオンを細胞外に輸送し、引き換えに2つのK+イオンを細胞内に取り込む。当該膜は、K+イオンに比べて、Na+イオンに対して極めて浸透性が乏しいため、ナトリウムイオンは、そこに留まる傾向を有する。これは、細胞外へのイオンの絶え間ない正味の消失を意味する。結果として生じる反対方向の浸透圧性傾向は、細胞外へ水分子を送るために作用する。さらに、細胞が膨張し始めるときには、これがNa+-K+ポンプを自動的に活性化させ、それにより、さらに多くのイオンを外部へと移動させる。
Na+/K+-ATPアーゼの触媒サブユニットは、様々なアイソタイプ(α1、α2、α3)において発現する。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達することができる薬剤は、イオンチャネルの調節薬または阻害剤またはアンタゴニストである。本明細書において使用される場合、「イオンチャネルの阻害剤」に関連する「阻害剤」なる用語は、イオンチャネルを通るイオンの流れを阻害または減少させる薬剤または化合物を意味する。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、調節薬は、例えば、特に抑制性ニューロンに存在しているイオンチャネルの活性化を増加させることが望ましい場合の、イオンチャネルのアゴニストである。本明細書において使用される場合、「イオンチャネルアゴニスト」への言及において使用される場合の「アゴニスト」なる用語は、イオンチャネルを通るイオンの流れを増加させる薬剤および化合物を意味する。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、調節を行わない対照と比較して、イオンチャネルの少なくとも1つの活性を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれ以上を調節する。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネルの少なくとも1つの活性は、調節薬を用いない対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%、少なくとも98%、または100%(例えば、活性の完全な消失)阻害または低減される。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、イオンチャネルの活性の阻害に対して、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、1nM、0.1nM、0.01nM、または0.001nM以下のIC50を有する。
本明細書において説明した態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、調節薬を用いない対照と比較して、イオンチャネルを通るイオンの流れを、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%(例えば、チャネルを通るイオンの流れを完全に止める)阻害する。
本明細書において説明した態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、調節薬を用いない対照と比較して、イオンチャネルを通るイオンの流れを、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、もしくは少なくとも5倍、またはそれ以上増加させる。
本明細書において説明した態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、細胞内のイオン、例えばナトリウム、の濃度を、調節薬を用いない対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、もしくは少なくとも5倍、またはそれ以上増加させる。
理論に束縛されることを望むわけではないが、イオンチャネル調節薬は、いくつかの異なる機構によりイオンチャネルの活性を調節することができる。例えば、ある調節薬は、イオンチャネルと結合して、イオンがチャネルを通過するのを物理的に妨げることができる。あるイオンチャネル調節薬は、結合の際にイオンチャネルに構造変化を生じさせることができ、これが、イオンとチャネルとの間の相互作用を増加もしくは減少させ得るか、またはチャネル開口部を増加もしくは減少させ得る。
ある調節薬は、イオンチャネルの活性、例えばATPアーゼ活性等を利用してエネルギーを調節することができる。本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態では、イオンチャネル調節薬は、イオンチャネルのATPアーゼ活性を阻害する。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、ATP依存性チャネルのATPアーゼ活性、例えばNa+/K+-ATPアーゼ、を、調節薬を用いない対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%(完全な阻害)阻害することができる。理論に束縛されることを望むわけではないが、ATPアーゼ活性は、そのような脱リン酸化反応を測定するために当業者に周知の方法を用いて、アデノシン三リン酸塩の脱リン酸化を測定することによって、測定することができる。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、あるイオンチャネル調節薬は、ナトリウムチャネル活性を、調節薬を用いない対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%(完全な阻害)阻害する。
限定されないが、イオンチャネル調節薬は、有機小分子、無機小分子、多糖、ペプチド、タンパク質、核酸、生物物質、例えば、細菌、植物、菌、動物細胞、動物組織等から作られた抽出物、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。
いくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、抗不整脈薬であり得る。本明細書において使用される場合、「抗不整脈薬」なる用語は、心臓性不整脈、例えば、心房細動、心房粗動、心室性頻脈、心室細動等を治療または制御するために使用される化合物を意味する。一般的に、抗不整脈薬の作用機構は、4つのVaughan Williams分類のうちの1つまたは複数に従う。抗不整脈薬のVaughan Williams分類における4つの主なクラスは、以下の通りである:Na+チャネルに干渉するI群薬;抗交感神経系薬であるII群薬、このクラスのほとんどの薬剤はベータ遮断薬である;K+流出に影響を及ぼすIII群薬;ならびにCa+チャネルおよび房室結節に影響を及ぼすIV群薬。オリジナルのVaughan Williams分類系の開発以来、明確にはI〜IVのカテゴリに当てはまらないような、さらなる薬剤が使用されている。これらの薬剤も、「抗不整脈薬」なる用語に包含される。例示的抗不整脈薬としては、これらに限定されないが、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、モリシジン、プロプラノロール、エスモロール、チモロール、メトプロロール、アテノロール、ビソプロロール、アミオダロン、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、E-4031、ジルチアゼム、アデノシン、ジゴキシン、アデノシン、硫酸マグネシウム、ならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグが挙げられる。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、ブファリン;ジゴキシン;ウアベイン;ニモジピン;ジアゾキシド;ジギトキシゲニン;ラノラジン;ラナトシドC;ストロファンチンK;ウザリゲニン;デスアセチルラナトシドA;アセチルジギトキシン;デスアセチルラナトシドC;ストロファントシド;シラレンA;プロスシラリジンA;ジギトキソース;ギトキシン;ストロファンチドール;オレアンドリン;アコベノシドA;ストロファンチジンジギラノビオシド;ストロファンチジン-d-シマロシド;ジギトキシゲニン-L-ラムノシド;ジギトキシゲニンセレトシド;ストロファンチジン;ジゴキシゲニン-3,12-ジアセタト;ギトキシゲニン;ギトキシゲニン3-アセテート;ギトキシゲニン-3、16-ジアセタト;16-アセチルギトキシゲニン;アセチルストロファンチジン;ウアバゲニン;3-エピ-ジゴキシゲニン;ネリイホリン;アセチルネリイホリンセレベリン;テベチン;ソマリン(somalin);オドロシド;ホングヘリン;デスアセチルジギラニド;カロトロピン;カロトキシン;コンバラトキシン;オレアンドリゲニン;ペリプロシマリン;ストロファンチジンオキシム;ストロファンチジンセミカルバゾン;ストロファンチジル酸ラクトンアセテタート;エミシマリン;サルメントシドD;サルベロゲニン;サルメントシドA;サルメントゲニン;プロスシラリジン;マリノブファゲニン;アミオダロン;ドフェチリド;ソタロール;イブチリド;アジミリド;ブレチリウム;クロフィリウム;N-[4-[[1-[2-(6-メチル-2-ピリジニル)エチル]-4-ピペリジニル]カルボニル]フェニル]メタンスルホアミド(E-4031);ニフェカラント;テジサミル;セマチリド;アムピラ;アパミン;カリブドトキシン;1-エチル-2-ベンズイミダゾリノン(1-EBIO);3-オキシム-6,7-ジクロロ-1H-インドール-2,3-ジオン(NS309);シクロヘキシル-[2-(3,5-ジメチル-ピラゾール-1-イル)-6-メチル-ピリミジン-4-イル]-アミン(CyPPA);GPCRアンタゴニスト;イフェンプロジル;グリベンクラミド;トルブタミド;ジアゾキシド;ピナシジル;ハロタン;テトラエチルアンモニウムビス;4-アミノピリジン;デンドロトキシン;レチガビン;4-アミノピリジン;3,4-ジアミノピリジン;ジアゾキシド;ミノキシジル;ニコランジル;レチガビン;フルピルチン;キニジン;プロカインアミド;ジソピラミド;リドカイン;フェニトイン;メキシレチン;フレカイニド;プロパフェノン;モリシジン;アテノロール;プロプラノロール;エスモロール;チモロール;メトプロロール;アテノロール;ビソプロロール;アミオダロン;ソタロール;イブチリド;ドフェチリド;アデノシン;ニフェジピン;δ-コノトキシン;κ-コノトキシン;μ-コノトキシン;ω-コノトキシン;ω-コノトキシンGVIA;ω-コノトキシンCNVIIA;ω-コノトキシンCVIID;ω-コノトキシンAM336;シルニジピン;L-システイン誘導体2A;ω-アガトキシンIVA;N,N-ジアルキルジペプチジルアミン;SNX-111(ジコノチド);カフェイン;ラモトリジン;202W92(ラモトリジンの構造類似体);フェニトイン;カルバマゼピン;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-フェニルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチル-2-プロピニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、シクロプロピルメチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ(3,2-c)ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、ブチルエステル;(S)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチルプロピルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、メチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-プロピニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチル-2-プロピニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-ブチニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチル-2-ブチニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2,2-ジメチルプロピルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、3-ブチニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1,1-ジメチル-2-プロピニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル-3-ピリジンカルボン酸、1,2,2-トリメチルプロピルエステル;R(+)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸(2A-メチル-1-フェニルプロピル)エステル;S-(-)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメリル-5-ニトロ-4[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-メチル-1-フェニルプロピルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチルフェニルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-フェニルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、(1-フェニルプロピル)エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、(4-メトキシフェニル)メチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-メチル-2-フェニルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-フェニルプロピルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、フェニルメチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-フェノキシエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、3-フェニル-2-プロピニルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-メトキシ-2-フェニルエチルエステル;(S)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-フェニルエチルエステル;(R)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-フェニルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、シクロプロピルメチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-チエノ[3,2-c]ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、1-シクロプロピルエチルエステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-[チエノ[3,2c]-ピリジン-3-イル]-3-ピリジンカルボン酸、2-シアノエチルエステル;1,4-ジヒドロ-4-(2-{5-[4-(2-メトキシフェニル)-1-ピペラジニル]ペンチル}-3-フラニル)-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、メチルエステル;4-(4-ベンゾフラザニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-メトキシフェニル)-1-ピペラジニル]ブチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-(3-ピリジニル)-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]ブチル}エステル;4-(3-フラニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-メトキシフェニル)-ピペラジニル]エチル}エステル;4-(3-フラニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-ピリミジニル)-ピペラジニル]エチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-メトキシフェニル)1-ピペラジニル]ブチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]ブチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-(3-チエニル)-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-メトキシフェニル)-1-ピペラジニル]エチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-(3-チエニル)-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]エチル}エステル;4-(3-フラニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]ブチル}エステル;(4-(2-フラニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{4-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]ブチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-5-ニトロ-4-(2-チエニル)-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-メトキシフェニル)-1-ピペラジニル]エチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-メトキシフェニル)-1-ピペラジニル]エチル}エステル;1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)-5-ニトロ-3-ピリジンカルボン酸、{2-[4-(2-ピリミジニル)-1-ピペラジニル]エチル}エステル;5-(4-クロロフェニル)-N-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-フランカロキサミド(A-803467);ならびにそれらの類似体、誘導体、薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグからなる群より選択される。
本明細書において説明される態様のいくつかの実施形態において、イオンチャネル調節薬は、ブファリン、あるいはその類似体、誘導体、薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグである。例示的ブファリン類似体および誘導体としては、これらに限定されないが、7β-ヒドロキシルブファリン;3-エピ-7β-ヒドロキシルブファリン;1β-ヒドロキシルブファリン;15α-ヒドロキシルブファリン;15β-ヒドロキシルブファリン;テロシノブファギン(5-ヒドロキシルブファリン);3-エピ-テロシノブファギン;3-エピ-ブファリン-3-O-β-d-グルコシド;11β-ヒドロキシルブファリン;12β-ヒドロキシルブファリン;1β,7β-ジヒドロキシルブファリン;16α-ヒドロキシルブファリン;7β,16α-ジヒドロキシルブファリン;1β,12β-ジヒドロキシルブファリン;レジブフォゲニン;ノルブファリン;3-ヒドロキシ-14(15)-エン-19-ノルブファリン-20,22-ジエノリド;14-デヒドロブファリン;ブホタリン;アレノブファギン;シノブファギン;マリノブファゲニン;プロスシラリジン;シリロシド;シラレニン;および14,15-エポキシ-ブファリンが挙げられる。限定されないが、ブファリンの類似体および誘導体としては、血液脳関門を横断することができるものが挙げられる。本明細書において、ブファジエノリドならびにその類似体および誘導体も、それらのブファリン類似体および誘導体と見なされる。本発明に適しているさらなるブファリンもしくはブファジエノリド類似体および誘導体としては、米国特許第3,080,362号;第3,136,753号;第3,470,240号;第3,560,487号;第3,585,187号;第3,639,392号;第3,642,770号;第3,661,941号;第3,682,891号;第3,682,895号;第3,687,944号;第3,706,727号;第3,726,857号;第3,732,203号;第3,80,6502号;第3,812,106号;第3,838,146号;第4,001,401号;第4,102,884号;第4,175,078号;第4,242,33号;第4,380,624号;第5,314,932号;第5,874,423号;および第7,087,590号に記載されているもの、ならびに、Minら、J. Steroid. Biochem. MoL Biol、9(1〜2): 87〜98頁(2004);Kamano, Y. & Pettit, G.R. J. Org.Chem.、38 (12): 2202〜2204頁(1973);Watabeら、Cell Growth Differ、8(8): 871 (1997);およびMahringerら、Cancer Genomics and Proteomics、7(4): 191205 (2010)に記載されているものが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような薬剤は、リガンドと結合することができる。リガンドは、選択された標的に対して高い親和性を提供することができ、標的化リガンドとも呼ばれる。リガンドは、一般的に、例えば摂取を高めるため等の治療調節剤;診断化合物;または、例えば分布をモニターする等のためのレポーター基を含み得る。一般的な例としては、脂質、ステロイド、ビタミン、糖類、タンパク質、ぺプチド、ポリアミン、ペプチド模倣物、およびオリゴヌクレオチドが挙げられる。
リガンドは、自然発生的な物質、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清、アルブミン(HSA)、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)、またはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、またはヒアルロン酸);または脂質を含み得る。リガンドは、組換え分子または合成分子、例えば、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)等であり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-マレイン酸無水物コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチド類似ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはアルファヘリックス構造ペプチドが挙げられる。
リガンドは、標的化群、例えば、細胞もしくは組織の標的化剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質、またはタンパク質、例えば、抗体、も含み得、これらは指定された細胞タイプ、例えば、特定の感覚性ニューロン細胞タイプ、例えば、c-線維、に結合する。標的化群は、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣薬、抗体、またはアプタマーであり得る。
リガンドの他の例としては、染料、ポリフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、親油性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、または、フェノキサジン)、ペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質等、またはペプチド、例えば、コリガンドに対して特異的親和性を有する分子等、または抗体、例えば、特定の細胞型、例えば、癌細胞、内皮細胞、もしくは骨細胞等に結合する抗体等であり得る。リガンドは、ホルモンおよびホルモン受容体も含み得る。それらは、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、またはアプタマー等も含み得る。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼの活性化剤、またはNF-κBの活性化剤であり得る。
別の態様において、当該リガンドは、ある部分、例えばビタミン等であり、これは、標的DRG細胞体によって摂取される。例示的ビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。他の例示的ビタミンとしては、ビタミンB群、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール等が挙げられる。さらに、HAS、低比重リポタンパク質(LDL)、および高比重リポタンパク質(HDL)も含まれる。
いくつかの好ましい実施形態において、当該リガンドは、炭水化物、例えば、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、および多糖である。例示的炭水化物リガンドとしては、これらに限定されないが、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、N-Ac-ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フクロース、ラムノース、セドヘプツロース、オクトース、ノノース(ノイラミン酸)、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、メレチトース、マルトトリオース、アカルボース、スタキオース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、グリコーゲン、デンプン(アミラーゼ、アミロペクチン)、セルロース、ベータ-グルカン(チモサン、レンチナン、シゾフィラン)、マルトデキストリン、イヌリン、レバンベータ(2→6)、キチンが挙げられ、この場合、当該炭水化物は、任意により置換されていてもよい。
炭水化物リガンドが、2種以上の糖を含む場合、各糖は、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、N-Ac-ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フクロース、ラムノース、セドヘプツロース、オクトース、およびノノース(ノイラミン酸)からなる群より独立して選択され、この場合、当該糖は、任意により置換されていてもよい。限定されないが、各糖は、独立して、L-またはD-立体配置を有し得る。さらに、2つの糖の間の結合は、独立して、αまたはβであり得る。
代替の実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスおよびシステムを用いてDRGに送達される薬剤は、機能性ゲノム薬剤であり、そのようなものとしては、これらに限定されないが、RNA干渉(RNAi)技術(短い干渉RNA分子)、組み換えDNA、核酸の同族体および類似体、例えば、タンパク質-核酸(PNA)、疑似相補PNA、ロックド核酸(LNA)等;ウイルスベクターをベースとする遺伝子送達、細菌ベクターをベースとする遺伝子送達、並びにヒストン調節薬が挙げられる。
代替の実施形態において、開示されるような送達デバイスおよびシステムを用いてDRGに送達される薬剤は、生物製剤、例えばDRGにおける標的細胞の選択的除去もしくは死のための毒素、である。いくつかの実施形態において、毒素は、当業者に既知の任意の毒素であり得、そのようなものとして、例えば、ボツリヌス毒素、コノトキシンが挙げられる。いくつかの実施形態において、毒素は、免疫毒素である。免疫毒素は、通常、標的化部分、例えばリガンド等、増殖因子、またはタンパク質毒素に結合する細胞タイプ選択性を有する抗体または並外れた効力を有する抗体で構成される(Hallら、2001; Cancer Res; 81;93〜124頁)。本明細書において開示されるような免疫毒素における使用のために好適な標的化部分は、除去または選択的殺滅のために標的化されるDRGにおける、選択された感覚ニューロンの表面上の特定の受容体を認識し、全分子を当該受容体に送達するであろう。したがって、毒素は、サイトゾールに達して生活細胞プロセスを触媒的に不活性化することによって、あるいは感覚ニューロンの細胞膜を変えることによって、細胞死を引き起こすことができる。免疫毒素において使用される毒素は、通常、DRGにおける感覚ニューロン上に特異的に発現する表面受容体を認識して結合するような抗体、または殺滅されるように選択された感覚ニューロンの表面上に特異的に発現する受容体に対するリガンドであり得るような標的化部分にコンジュゲートされる。一般的に使用される免疫毒素は、モノクローナル抗体(MAb)にコンジュケートされたリボヌクレアーゼを利用して(Hursetら、2002;43;953〜959頁)、多くの場合、感覚ニューロンの表面受容体を標的化し、単一分子で細胞を殺すことができる毒素を運ぶ(Yamaizumiら、1978;15:245〜250頁;Eiklidら、1980;126:321〜326頁)。
いくつかの実施形態において、毒素分子またはそれらの断片、あるいは代替的に、免疫毒素またはその断片は、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達させることができる。いくつかの実施形態において、毒素(または免疫毒素)は、これらに限定されないが、タンパク質毒素、細菌毒素、および植物毒素を含む。例示的植物毒素としては、これらに限定されないが、植物ホロトキシン、II群リボゾーム不活性化タンパク質、植物ヘミトキシン、I群リボソーム不活性化タンパク質、サポリン(SAP);ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP);ブリオジン1;ボウガニンおよびゲロニン、炭疽毒素;ジフテリア毒素(DT);シュードモナス性内毒素(PE);ストレプトリジンO;あるいは、それらの自然発生的変異体または遺伝子を組み換えた変異体もしくは断片が挙げられる。本明細書において開示されるような方法におけるエフェクター分子として有用な植物毒素のさらなる例としては、これらに限定されないが、リシンA鎖(RTA);リシンB(RTB);アブリン;ヤドリギ;レクチンおよびモデッシン、あるいは、それらの自然発生的変異体または遺伝子を組み換えた変異体もしくは断片が挙げられる。いくつかの実施形態において、植物毒は、リボトキシン、例えば、これに限定されないが、リシンA鎖(RTA)、である。さらなる実施形態において、植物毒は、ヌクレアーゼ、例えば、これに限定されないが、サルシン、レストリクトシンであり得る。いくつかの実施形態において、細胞傷害性分子は、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達され、そのようなものとしては、例えば、サイトカイン、例えば、これに限定されないが、IL-1;IL-2;IL-3;IL-4;IL-13;インターフェロン-□;腫瘍壊死因子アルファ(TNF□);IL-6;顆粒膜コロニー刺激因子(G-CSF);GM-CSF、あるいは、それらの自然発生的変異体または遺伝子を組み換えられた変異体が挙げられる。いくつかの実施形態において、毒素は、ヌクレアーゼであるか、またはエンドヌクレアーゼ的活性を有し、例えば、DNAヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えば、DNAエンドヌクレアーゼI等、あるいは、それらの自然発生的変異体または遺伝子を組み換えられた変異体である。代替の実施
形態において、ヌクレアーゼは、RNAヌクレアーゼまたはRNAエンドヌクレアーゼ、例えば、これらに限定されないが、RNAエンドヌクレアーゼI;RNAエンドヌクレアーゼII;RNAエンドヌクレアーゼIIIであり得る。いくつかの実施形態において、RNAヌクレアーゼは、例えば、これらに限定されないが、アンギオゲニン、ダイサー、RNアーゼA、あるいはそれらの変異体または断片等であり得る。
代替の実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達される毒素剤は、タンパク質分解酵素、例えば、これらに限定されないが、カスパーゼ酵素;カルパイン酵素;カテプシン酵素;エンドプロテアーゼ酵素;グランザイム;マトリックスメタロプロテアーゼ;ペプシン;プロナーゼ;プロテアーゼ;プロティナーゼ;レンニン;トリプシン;またはその変異体もしくは断片、を含む。
代替の実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達される毒素剤は、細胞において細胞死経路を誘導することが可能な分子を含む。そのような実施形態において、細胞死を誘導することができる毒素分子として、アポトーシス促進性分子、例えば、これらに限定されないが、Hsp90;TNF□;DIABLO;BAX;Bcl-2の阻害剤;Bad;ポリADPリボースポリメラーゼ-1(PARP-1):第2ミトコンドリア由来活性化剤またはカスパーゼ(SMAC);アポトーシス誘発因子(A1F);Fas(Apo-1またはCD95としても知られる);Fasリガンド(FasL)、またはそれらの変異体もしくは断片が挙げられる。代替の実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いてDRGに送達される毒素剤は、タンパク質分解のために、標的ポリペプチドにタグ付けし、例えば、分解のために、電位によって開閉するナトリウムチャネル等のイオンチャネルまたはDRGの表面上に発現する分解のための受容体にタグ付けすることができる。そのような実施形態において、分解のために標的タンパク質にタグ付けするそのような毒素としては、これらに限定されないが、ユビキチン;低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO);DNAメチルトランスフェラーゼ(DNA MTアーゼ);ヒストンアセチル化酵素(HAT)、およびそれらの変異体もしくは断片が挙げられる。
いくつかの実施形態において、薬剤は、標的脊髄構造、例えばDRGに送達され、RNA干渉(RNAi)剤である。本明細書において使用される場合、「RNA干渉分子」または「RNAi分子」または「RNAi剤」なる用語は、RNA分子、例えば二本鎖RNA等を意味するために本明細書において互換的に使用され、これらは、RNA媒介性標的転写切断またはRNA干渉により標的遺伝子の遺伝子発現を阻害するように機能する。別の言い方をすれば、RNA干渉誘導分子は、標的遺伝子の遺伝子サイレンシングを誘導する。RNA干渉誘導分子の全体的効果は、標的遺伝子の遺伝子サイレンシングである。siRNAにおいて使用されるような二本鎖RNAは、一本鎖RNA、二本鎖DNA、または一本鎖DNAとは異なる特性を有する。核酸の種のそれぞれは、細胞内においてほとんど重複しない結合タンパク質のセットと結合しており、ほとんど重複しないヌクレアーゼのセットによって分解される。すべての細胞の核ゲノムは、DNAベースであり、そのため、自己免疫疾患を除いて、免疫反応を生じる可能性が低い(Pisetsky、Clin Diagn Lab Immunol.、1998 Jan;51:1〜6頁)。一本鎖RNA(ssRNA)は、真核細胞においてDNA転写の産生物として内因的に見出される形態である。細胞性ssRNA分子は、メッセンジャーRNA(および原体であるプレメッセンジャーRNA)、核内低分子RNA、小核小体RNA、転移RNA、およびリボソームRNAを含む。一本鎖RNAは、TLR7およびTLR8受容体を介してインターフェロン応答および炎症性免疫反応を誘導することができる(Proc Natl Acad Sci.、2004、101:5598〜603頁;Science、2004、303:1526〜9頁;Science、2004、303:1529〜3頁)。二本鎖RNAは、サイズ依存的な免疫応答を誘導し、30bpよりも大きいdsRNAは、インターフェロン応答を活性化するが、その一方で、より短いdsRNAは、ダイサー酵素の下流にある細胞の内因性RNA干渉機構内に送り込まれる。低分子一過性RNAおよび低分子調節性RNA等のマイクロRNA(miRNA)は、哺乳動物において唯一知られている細胞性dsRNA分子であり、2001年になるまで発見されなかった(Kim、2005、Mol Cells. 19:1〜15頁)。血流中の細胞外RNAに対する応答は、いかなる長さの二本鎖または一本鎖でも、腎臓による急速な***および酵素による分解である(PLOS Biol、2004、2:18〜20頁)。
したがって、本明細書において言及するRNA干渉誘導分子としては、これらに限定されないが、低分子一過性RNA(stRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)を含む非修飾性および修飾性の二本鎖(ds)RNA分子が挙げられる(例えば、Baulcombe、Science 297:2002〜2003頁、2002を参照されたい)。dsRNA分子、例えば、siRNA等は、3'オーバーハング、好ましくは3'UUまたは3'TTオーバーハングも有し得る。一実施形態において、本発明のsiRNA分子には、約30〜40塩基、約40〜50塩基、約50塩基またはそれ以上のssRNAを含むRNA分子は含まれない。一実施形態において、本発明のsiRNA分子は、二本鎖構造を有する。一実施形態において、本発明のsiRNA分子は、その全長の約25%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超が二本鎖である。
本明細書において使用される場合、RNA干渉によって誘導される「遺伝子サイレンシング」は、RNA干渉を導入していない細胞において認められるmRNAレベルに対して、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、約100%の、標的遺伝子に対する細胞でのmRNAレベルの減少を意味する。好ましい一実施形態において、mRNAレベルは、少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、約100%減少する。
別の実施形態において、本発明の方法によって有用なsiRNAは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO 05/042719、WO 05/013886、WO 04/039957、および米国特許出願公開第20040248296号に見出される。本発明の方法において有用な他の有用なsiRNAとしては、これらに限定されないが、米国特許出願公開第20050176666号、第20050176665号、第20050176664号、第20050176663号、第20050176025号、第20050176024号、第20050171040号、第20050171039号、第20050164970号、第20050164968号、第20050164967号、第20050164966号、第20050164224号、第20050159382号、第20050159381号、第20050159380号、第20050159379号、第20050159378号、第20050159376号、第20050158735号、第20050153916号、第20050153915号、第20050153914号、第20050148530号、第20050143333号、第20050137155号、第20050137153号、第20050137151号、第20050136436号、第20050130181号、第20050124569号、第20050124568号、第20050124567号、第20050124566号、第20050119212号、第20050106726号、第20050096284号、第20050080031号、第20050079610号、第20050075306号、第20050075304号、第20050070497号、第20050054598号、第20050054596号、第20050053583号、第20050048529号、第20040248174号、第20050043266号、第20050043257号、第20050042646号、第20040242518号、第20040241854号、第20040235775号、第20040220129号、第20040220128号、第20040219671号、第20040209832号、第20040209831号、第20040198682号、第2
0040191905号、第20040180357号、第20040152651号、第20040138163号、第20040121353号、第20040102389号、第20040077574号、第20040019001号、第20040018176号、第20040009946号、第20040006035号、第20030206887号、第20030190635号、第20030175950号、第20030170891号、第20030148507号、第20030143732号、およびWO 05/060721、WO 05/060721、WO 05/045039、WO 05/059134、WO 05/045041、WO 05/045040、WO 05/045039、WO 05/027980、WO 05/014837、WO 05/002594、WO 04/085645、WO 04/078181、WO 04/076623、およびWO 04/04635において見出されるものが挙げられ、なお、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるように送達される薬剤は、遺伝子の遺伝子発現を増加させ、ならびに、組織において、例えば、標的脊髄構造、例えばDRGにおいてタンパク質発現を誘導する合成修飾RNA(本明細書において、「MOD-RNA」と呼ばれる)である。いくつかの実施形態において、当該心筋細胞は、哺乳動物の心筋細胞、例えば、ヒト心筋細胞である。
MOD-RNAの投与は、結果として、非MOD-RNAでトランスフェクトされた細胞と比較して著しく高い、例えば、少なくとも約2倍高いタンパク質発現レベルにおいて、タンパク質発現の非常に急速な始まりを生じる。いくつかの実施形態において、MOD-RNAによるトランスフェクトのための最適用量範囲は、1000細胞あたり10〜30ngであり、そのような用量は、細胞に対して無毒である。
本明細書において開示されるようなデバイスおよび方法を用いた送達のための合成修飾RNAは、2010年9月28日に出願された米国特許仮出願第61/387,220号、および2010年4月16日に出願された米国特許仮出願第61/325,003号に記載されており、なお、当該文献の両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、合成修飾RNA分子はベクターにおいて発現せず、ならびに、当該合成修飾RNA分子は、そのままの合成修飾RNA分子であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、脂質複合体に存在する少なくとも1つの合成修飾RNA分子を含み得る。
さらなる実施形態において、本明細書において開示されるようなデバイスを用いて送達される薬剤は、小分子活性化RNAであり得、これは、WO067/013559、US2005/0226848A1、WO2009/086428A2、6,022,863において開示されており、なお、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
E.送達デバイスによって送達される薬剤の用量
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュールは、長期間にわたる薬剤および薬物製剤の送達に適用される。そのような薬剤放出モジュールは、数時間(例えば、2時間、12時間、または24時間から48時間またはそれ以上)から、数日(例えば、2日から5日またはそれ以上、約100日からまたはそれ以上)まで、数ヶ月または数年までにわたる薬剤の投与に適用し得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、薬剤放出モジュールは、約1ヶ月から約12ヶ月またはそれ以上での範囲の期間にわたる送達に適用される。薬剤放出モジュールは、ある期間において、例えば、約2時間から約72時間まで、約4時間から約36時間まで、約12時間から約24時間まで、約2日から約30日まで、約5日から約20日まで、約7日またはそれ以上、約10日またはそれ以上、約100日またはそれ以上;約1週間から約4週間まで、約1ヶ月から約24ヶ月まで、約2ヶ月から約12ヶ月まで、約3ヶ月から約9ヶ月まで、約1ヶ月またはそれ以上、約2ヶ月またはそれ以上、または約6ヶ月またはそれ以上の期間、あるいは、例えば対象の疼痛の治療または管理等のために必要とされるような、これらの範囲内の、漸増する範囲を含む他の範囲の期間においての、対象への薬剤または薬物製剤の投与に適用されるものであり得る。これらの実施形態において、本明細書に記載されるような薬剤の高濃度製剤は、本発明における使用のための特定の関心対象である。
一実施形態において、薬剤の体積/時間送達速度は、実質的に一定である(例えば、送達は、一般的に、言及された期間にわたって、言及された体積の速度±約5%から10%まで、例えば、約0.01μg/hrから約200μg/hrまでの速度におけるおよその範囲の体積速度であり、ならびに、約0.01μl/dayから約100μl/dayまで(すなわち、約0.0004μl/hrから約4μl/hrまで)、好ましくは約0.04μl/日から約10μl/日まで、一般的に約0.2μl/日から約5μl/日まで、典型的には約0.5μl/日から約1μl/日まで、の体積速度において送達され得る。
一実施形態において、薬剤の体積/時間送達速度は、パターン化された送達または一時的な送達であり、例えば、特定の体積の送達は、送達の後に薬剤の送達されない特定の期間があり、その後続いて特定の体積の送達が行われるようなサイクルを繰り返すことによって送達される。「オンフェーズ」(例えば、薬物送達フェーズ)において送達部位に送達される薬剤の量は、送達される薬物の体積によって、あるいは送達のための特定の期間によって決定することができる。例えば、限定されないが、薬剤は、約1分間、または約2分間、または約5分間、または約30分間、または約1時間、または1時間より長い規定された期間、または中間の任意の所定の期間の「オン」フェーズと、それに続く、約1分間、または約2分間、または約5分間、または約30分間、または約1時間、または約2時間、または約3時間、または約6時間、または約12時間、または12時間より長い規定の期間、または中間の任意の所定の期間の送達「オフフェーズ」(例えば、薬物送達が行われないフェーズ)において送達することができる。代替の実施形態において、薬剤は、約0.01μl、または約0.05μl、または約0.1μl、または約0.2μl、または約0.5μl、または約1.0μl、または約2.0μl、約2.0μl超、または0.01μlから2.0μlまでの間の任意の整数値、の送達の規定された体積、あるいは薬剤送達の任意の所定の体積、のための送達「オン」フェーズと、それに続く、約1分間、または約2分間、または約5分間、または約30分間、または約1時間、または約2時間、または約3時間、または約6時間、または約12時間、または12時間超の規定された期間、または中間の所定の期間、のための送達「オフ」期間(例えば、薬物送達の行われないフェーズ)において、送達することができる。
送達エレメント30がリードであるいくつかの実施形態では、薬物送達「オン」および「オフ」フェーズは、電気刺激によって調和させてもよく、例えば、電気刺激は、薬物送達が「オフ」の場合に生じさせることができるが、あるいは、送達される薬剤に応じて、薬物送達が「オン」フェーズの場合にも生じさせることができる。いくつかの実施形態において、断続的またはパターン化された薬剤送達でも、薬剤送達の速度は、約0.01μg/時から約200μg/時までの速度で送達することができ、これは、約0.001μl/日から約100μl/日まで(すなわち、約0.0004μl/時から約4μl/時まで)、好ましくは約0.04μl/日から約10μl/日まで、一般的には約0.2μl/日から約5μl/日まで、典型的には約0.5μl/日から約1μl/日まで、の体積速度で送達することができる。
概して、本明細書において開示されるような薬剤放出デバイスにおいて有用な薬剤放出モジュールは、低用量、例えば、約0.01μg/時から約200μg/時まで、において、ならびに、好ましくは低体積速度、例えば1日あたりナノリットルからマイクロリットルまでのオーダー、において薬剤を送達することができる。一実施形態において、約0.01μl/日から約2ml/日までの体積速度は、24時間における送達速度の変動がその期間において約±5%から10%までであるような、24時間にわたる約80μl/時の送達によって達成される。
いくつかの実施形態において、薬剤の濃度は、少なくとも約0.001mg/mL、または少なくとも約0.01mg/mL、または少なくとも約0.05mg/mL、または少なくとも約0.1mg/mL、または少なくとも約0.5mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、25mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、またはそれ以上の流量であり得、ならびに、そのような流量において投与することができる。送達デバイスによって送達される薬剤は、溶液であり得、例えば、液体中に溶解される。
送達デバイスによって送達される薬剤は、全身的に送達される薬剤の用量または当技術分野においてそのような薬剤の投与のために一般的に使用される別の標準的手順の投与によって送達される薬剤の用量より低い濃度であり得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、対象に対して全身的に投与される場合の、または当技術分野においてそのような薬剤の投与のために一般的に使用される別の標準的手順の投与によって投与される場合の薬剤の通常の用量より、少なくとも5倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約20倍低い用量において、標的脊髄の位置に送達される。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるようなデバイスによって標的構造に送達される薬剤の用量は、薬剤の濃度および標的構造への薬剤送達の流量によって決定される。いくつかの実施形態において、薬剤の濃度は、全身的に、または標準的投与経路によって投与されるそのような薬剤に対して標準的に使用される濃度よりも、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍、または少なくとも約200倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍低く、あるいは、薬剤が全身的にまたは標準的投与経路によって投与される場合に使用される濃度と比較して5倍から1000倍の間の任意の濃度整数値において低い。
いくつかの実施形態において、薬剤放出モジュールのリザーバー(または薬剤保持室)からの薬剤の放出は、対象によって制御され、ならびに当該薬剤放出モジュールは、制御可能なポンプを備える。
薬剤、例えば、慢性的疼痛等の疼痛の治療に有用な薬理学的薬剤の好適な量は、約0.5ccから、初期治療処置のための持続的点滴注射までの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、約1ナノグラム/ccから約10グラム/ccまでの範囲の濃度において送達され得、この場合、薬剤の濃度は、薬剤の型(例えば、siRNA、小分子、毒素、タンパク質、または抗体等)、使用される特定の薬剤の抗力、および対象が経験している疼痛の激しさに応じて変わる。いくつかの実施形態において、リザーバーは、定期的な計画に基づいて充填することができ、または、患者の疼痛を監視する医者によって決定されるように、必要に応じて再充填してもよい。
異常制御は、経路の外乱または経路の抑制の喪失の結果であり得、正味の結果は、知覚または応答の増大である。本明細書において開示されるようなシステム、方法、およびデバイスでの使用にとって好適な薬剤は、シグナルの伝達を遮断することまたは抑制フィードバックを刺激することを対象とし得る。いくつかの実施形態において、電気刺激は、標的神経のそのような刺激を可能にする。DRGでの送達された薬剤による最大の恩恵および調和された効果について、および副作用を最小化するために、電気刺激パラメータを調節および最適化することができる。
概して、本明細書において開示されるような送達デバイスによってDRGに送達される薬剤は、DRGへの薬剤の送達に適合するような体積速度において、ならびに、疼痛の軽減において治療的に有効な(例えば、疼痛のかなりの管理を達成するのに十分な)用量であると同時に、例えば、薬剤が既知の副作用を有する場合、例えば、オピオイド薬等の場合、そのような薬剤の投与に関連し得る副作用の存在およびリスクを低減する用量において、送達される。
疼痛を患っているまたは影響されやすい対象は、任意の所望の期間にわたって、本発明の方法による疼痛の緩和を受けることができる。概して、本発明の方法による標的構造、例えばDRGへの薬剤の投与は、数時間(例えば、2時間、12時間、または24時間から48時間またはそれ以上)から、数日間(例えば、2から5日またはそれ以上)まで、数ヶ月または数年まで、持続することができる。典型的には、送達は、約1ヶ月から約12ヶ月またはそれ以上の範囲の期間にわたって継続することができる。本明細書において開示されるような送達デバイスによって標的構造、例えばDRGに送達される薬剤は、例えば、約2時間から約72時間まで、約4時間から約36時間まで、約12時間から約24時間まで、約2日間から約30日間まで、約5日間から約20日間まで、約7日間またはそれ以上、約10日間またはそれ以上、約100日間またはそれ以上、約1週間から約4週間まで、約1ヶ月から約24ヶ月まで、約2ヶ月から約12ヶ月まで、約3ヶ月から約9ヶ月まで、約1ヶ月またはそれ以上、約2ヶ月またはそれ以上、または約6ヶ月またはそれ以上の期間において、あるいは必要に応じて、これらの範囲内の、漸増する範囲等の他の範囲の期間において、個体に投与することができる。この長期間の薬剤送達は、適切な疼痛寛解と、それと同時に薬剤の副作用(例えば、いく種かの薬剤、例えばオピオイド等は、吐き気、嘔吐、鎮静、精神錯乱、呼吸抑制等の副作用を有する)の激しさを最小限にすることの両方を提供する本発明の能力によって可能となる。特定の実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスによってDRGに送達される薬剤は、当該デバイスに再到達する必要なく、および/または当該デバイスを再充填する必要なく、対象のDRGに送達することができる。これらの実施形態において、DRGに送達される薬剤の高濃度製剤は、特に関心対象である。
好ましくは、本明細書において開示されるような送達デバイスによってDRGに送達される薬剤は、あるパターン化された様式において、より好ましくは実質的に連続的様式において、例えば、事前に選択された薬物送達期間において実質的に中断されないで、ならびにより好ましくは、実質的に一定の事前に選択された速度または速度範囲(例えば、単位時間あたりの薬物の量、または単位時間における薬物製剤の体積)において、送達することができる。薬物は、好ましくは、約0.01μl/日から約2ml/日まで、好ましくは約0.04μl/日から約1ml/日まで、概して約0.2μl/日から約0.5ml/日まで、典型的には約2.0μl/日から約0.25ml/日までの低体積速度において送達される。
低体積速度でのDRGへの薬剤の特定の送達は、本発明の好ましい実施形態である。概して、DRGへの低体積速度の薬剤送達は、(例えば、送達部位での組織および周りの細胞における薬剤の吸収、血液または他の体液の流れによる送達部位からの薬剤の移動等による)送達部位からの薬剤の除去の速度より遅い、または同じ、または非常にわずかだけ速い投与速度を提供することによって、送達部位での薬剤の蓄積(例えば、貯蔵効果またはプーリング効果)を避ける。したがって、当該システムおよびデバイスは、DRGへの薬剤の直接送達のための送達システムの提供に加えて、治療有効量の薬剤の投与を達成しつつ送達部位での薬剤の蓄積を避けるために薬剤吸収と薬剤送達の速度のバランスを取ることによって疼痛を治療する方法において、非常に強力な薬剤、例えば、これらに限定されないが、オピエート、ナトリウムチャネル遮断薬、の送達を提供する。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるようなDRG薬剤送達デバイスは、実質的に連続的な事前選択された速度で、送達標的部位において薬剤を放出することができる。例えば、いくつかの実施形態において、薬剤は、約0.01μg/時から約200μg/時まで、通常約0.01μg/時、0.25μg/時、または3μg/時から約85μg/時まで、典型的には約5μg/時から約100μg/時の間の速度において放出させることができる。いくつかの実施形態において、薬剤は、約0.01μg/時、0.1μg/時、0.25μg/hr、1μg/時から、概して約200μg/時までの速度においてDRGに送達される。薬剤の適切な量および送達の適切な速度は、例えば、薬剤または薬物製剤の相対効力等に基づいて、当業者が容易に決定することができる。送達される薬剤の実際の用量は、様々な因子、例えば、選択された使用薬剤の効力および他の特性等(例えば、親油性等)によって変わるであろう。
一実施形態において、送達デバイスによって送達される薬剤は、従来の製剤、例えば現在市販されている製剤、よりも実質的に高い濃度において製剤中に存在し得る。「実質的により高い」とは、薬剤が、くも膜下腔内投与または静脈内投与のための通常の水溶液または従来の製剤中における薬剤の溶解度よりも、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約1500倍、少なくとも約2000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約3000倍、少なくとも約3500倍、少なくとも約4000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約6000倍、少なくとも約7000倍、少なくとも約8000倍、少なくとも約9000倍、少なくとも約10,000倍、またはそれ以上の濃度において製剤中に存在することを意図するものである。
送達デバイスによって送達される薬剤は、少なくとも約0.5mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、25mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、またはそれ以上の濃度であり得る。送達デバイスによって送達される薬剤は、溶液であり得、例えば、液体中に溶解される。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイスを用いたDRGへの直接的な薬剤の送達は、他の経路による薬剤の送達が望ましくなくなっている場合、例えば、対象が、そのような薬剤の経口、静脈内、または従来のくも膜下腔内送達、あるいは従来的に投与された皮下注入(例えば、シリンジドライバーシステムまたは比較的高体積送達を必要とする他の送達システムを用いて)による、難治性の有害な副作用を経験している場合に有利である。本明細書において開示されるような送達デバイスを用いた送達は、移植が永久的であり、ならびに特異的にDRGに薬剤を送達するので、したがって、非特異的副作用を最小化するので、対象にとって好都合である。さらに、本明細書において開示されるような送達デバイスは、患者コンプライアンスを高め、薬剤の転用および乱用を防ぎ、皮膚を繰り返し破壊することを必要とする外部ポンプもしくは他の方法に関連する感染症のリスクおよび/または投与のためのポートのメンテナンスを減じることもできる。
送達デバイスによって送達される薬剤の送達にとって好適な、医薬品グレードの有機または無機担体および/または希釈剤は、任意の生理学的に許容される担体を含み得る。本発明による使用のための例示的液体担体は、有効成分以外の材料を含有しない無菌の非水溶液もしくは水溶液であり得る。一般的に、疎水性溶媒は、薬剤の親油性のために、概して好ましい。製剤は、任意で、緩衝液、例えば、生理的pH値におけるリン酸ナトリウム、生理食塩、またはその両方(すなわち、リン酸緩衝食塩水)をさらに含んでいてもよい。好適な水性担体は、任意で、2種以上の緩衝塩、ならびに他の塩(例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム)および/または他の溶質をさらに含んでいてもよい。
いくつかの例示的実施形態において、送達デバイスによって送達される薬剤は、低分子量(例えば、約300g/mol未満のMW)アルコールを含み得る。これらの実施形態において、送達デバイスによって送達される薬剤は、約0.5mg/mLから約500mg/mLまで、約1mg/mLから約450mg/mLまで、約50mg/mLから約400mg/mLまで、約75mg/mLから約300mg/mLまで、または約100mg/mLから約250mg/mLまでの濃度において製剤中に存在し得る。好適な低分子量アルコールとしては、薬学的に許容され、好ましくは芳香族部分を含み、水に比較的非混和性(例えば、約5グラム未満、約4グラム未満、約3グラム未満、約2グラム未満、約1グラム未満を25mlのH2Oに溶解させることができる)であるようなものが挙げられ、そのようなアルコールとしては、これに限定されないが、ベンジルアルコールおよびその誘導体が挙げられる。少量の他の薬学的に許容される物質、例えば、他の薬学的に許容されるアルコール、例えば、エタノール又は水等も存在していてもよく、存在する場合には、約10%未満、約5%未満、または約1%未満の量において存在する。
追加の例示的実施形態において、送達デバイスによって送達される薬剤は、アルコールエステル、例えば、上記において説明したような低分子アルコールのエステルの中に非イオン性表面活性物質を含み得る。これらの実施形態において、送達デバイスによって送達される薬剤は、約0.5mg/mlまたは1mg/mLから約500mg/mLまで、約50mg/mLから約300mg/mLまで、約75mg/mLから約275mg/mLまで、または約100mg/mLから約250mg/mLまでの濃度において製剤中に存在し得る。好適なアルコールエステルとしては、薬学的に許容され、好ましくは芳香族部分を含み、水に不溶性であるようなものが挙げられ、そのようなアルコールエステルとしては、これらに限定されないが、安息香酸ベンジルおよびそれらの誘導体が挙げられる。少量の薬学的に許容される物質、例えば、薬学的に許容されるアルコールもしくは他の薬学的に許容されるアルコールエステル等、または水も存在していてもよく、存在する場合には、約10%未満、約5%未満、または約1%未満の量において存在する。特定の実施形態において、アルコールエステルは、対象の標的脊髄構造に送達されるべき薬剤を伴う100%安息香酸ベンジルである。
好適な非イオン性表面活性物質としては、薬学的に許容されるものが挙げられ、そのようなものとしては、これらに限定されないが、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60等;トリオレイン酸ソルビタン;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、例えば、ポリオキシエチレン(160)グリコールおよびポリオキシプロピレン(30)グリコール等が挙げられる。製剤における使用にとって好適な他の非イオン性表面活性物質としては、脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステルタイプの非イオン性表面活性物質、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、またはモノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、またはトリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンの付加体等、ならびに、脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステル、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン、トリステアリン酸ポリオキシエチレン、またはトリオレイン酸ポリオキシエチレン等、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチルステアレート、ポリエチレングリコール400ステアレート、ポリエチレングリコール2000ステアレート等、特に、Pluronics(Wyandotte)またはSynperonic(ICI)のエチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマーが挙げられる。特定の実施形態において、当該非イオン性表面活性物質は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはトリオレイン酸ソルビタン、あるいはそれらのうちの1種または複数種の混合物である。
概して、非イオン性表面活性物質は、約50mg/mLから約200mg/mLまで、約75mg/mLから約175mg/mLまで、または約100mg/mLから約150mg/mLまでの濃度において製剤中に存在する。
本明細書において開示されるような送達デバイスによるDRGへの薬剤の送達は、他の経路による送達が望ましくなくなっている場合、例えば、対象が、薬剤の経口、静脈内、または従来のくも膜下腔内送達、あるいは疼痛の効果的でない治療を経験している場合に有用である。本明細書において開示されるような送達デバイスを用いた薬剤の送達は、当該送達デバイスの移植および除去手順が1回の治療介入であるため、対象にとって好都合である。さらに、DRG薬剤送達デバイスは、患者コンプライアンスを高め、薬剤の転用および乱用を防ぎ、皮膚を繰り返し破壊することを必要とする外部ポンプもしくは他の方法に関連する感染症のリスクおよび/または投与のためのポートのメンテナンスを減じることも可能にする。
低体積速度において、本明細書において開示されるような送達デバイスによってDRGに送達される薬剤は、本発明の特に好ましい実施形態である。概して、低体積速度の薬剤送達は、(例えば、送達部位での組織における薬剤の吸収、血液または他の体液の流れによる送達部位からの薬剤の移動等による)送達部位からの薬剤の除去の速度より遅い、または同じ、または非常にわずかだけ速い投与速度を提供することによって、送達部位での薬剤の蓄積(例えば、貯蔵効果またはプーリング効果)を避ける。したがって、標的構造、例えばDRGへの薬剤の送達を可能にすることに加え、非常に強力な薬剤、例えば、オピオイドアンタゴニスト、例えば、モルフィン、フェンタニル、およびフェンタニル同族体(例えば、スフェンタニル)等の送達を可能にし、ならびに、治療有効量の薬剤の投与を達成しつつ送達部位での薬剤の蓄積を避けるために薬剤吸収と薬剤送達の速度のバランスを見事に取ることによって疼痛を治療する方法を提供する。
送達にとって特に関心対象である製剤は、本明細書において開示されるような送達デバイスによって送達されるべき薬剤が、上記において説明したように、高濃度において存在し得ることにおいて特徴づけられる。送達デバイスによって送達される薬剤は、製剤中に可溶であり得、すなわち、薬剤は、製剤が体液等の水性環境と接触する場合に、薬剤沈殿物を、ほとんどまたは全く形成しない。
本明細書において開示されるような送達デバイスによって送達される薬剤を含む製剤は、薬学的に許容されかつ有効成分に適合する追加の有効成分または不活性成分を含み得る。好適な賦形剤は、好適な組成物を提供するために、デキストロース、グリセロール、アルコール(例えば、エタノール)等、およびそれらのうちの1種または複数種と、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、有機体等との組み合わせを含み得る。さらに、所望であれば、当該組成物は、疎水または水性表面活性物質、分散剤、湿潤剤または乳化剤、等張剤、pH緩衝剤、溶解促進剤、安定化剤、防腐剤、および医薬品の製剤化において用いられる他の典型的な補助添加剤を含み得る。
本発明おいて有用な製剤中に存在し得る例示的な追加の有効成分は、オピオイドアンタゴニストを含み得(例えば、常用癖または依存性の可能性をさらに減じるため、例えば、参照のこと)、例えば、オピオイドアゴニストおよびオピオイドアンタゴニストを含む例示的浸透圧投与量製剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第No.5,866,164号に記載されている。
F.送達デバイスを移植する方法
DRG薬剤送達デバイスの薬剤放出モジュールは、任意の好適な移植部位に移植することができる。下方において述べられるように、移植部位は、薬剤放出モジュールが導入され位置される、対象の身体内の部位である。移植部位としては、必ずしもこれらに限定されないが、真皮下、表皮下、筋肉内、または対象の身体内の他の好適な部位が挙げられる。薬剤送達デバイスの移植および除去の利便性から、表皮下移植部位が好ましい。いくつかの実施形態において、移植部位は、DRG送達部位またはその近く(例えば、送達部位が、移植部位から遠く離れていない)であり、したがって、薬剤のDRG送達に適合する部位(例えば、表皮下部位)であるべきである。薬剤放出モジュールの移植部位とDRG送達部位とが遠く離れている場合、薬剤放出モジュールは、表皮下部位に移植することができ、薬剤放出モジュールから標的DRG送達部位への薬剤または薬物製剤の送達は、本明細書において説明されているように、カテーテルまたはリードにより、薬剤または薬物製剤を輸送することによって達成することができる。
DRG送達部位は、薬剤または薬物製剤が送達される、身体の解剖学的エリアである。
本明細書の実施例において、当該デバイスは、様々な外科的方法を用いて移植され得る。送達エレメントの遠位端がDRGに近接するような、そのようなデバイスを移植する方法は、米国特許出願公開第2010/0137938号、同第2010/0249875号、US2008/0167698、および国際公開第2010/083308号、国際公開第2008/070807号、国際公開第2006/029257号において開示されており、なお、当該文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
当該方法は、さらに、哺乳動物が患う疼痛をモニターするステップ、および当該疼痛が、特定された神経組織にさらなる医薬品を送達する必要性を示すのに十分であり得る場合を特定するステップを含み得る。薬剤、例えば、疼痛剤または鎮痛剤等は、所望される場合、対象によって経験されるモニターされた疼痛に応じて、リザーバーに繰り返し導入することができる。
したがって、本開示は、有利には、長期間にわたって慢性的な神経痛を治療するための医薬品を定期的に繰り返し充填することができる移植可能な薬剤送達システム、ならびに慢性的な神経痛の治療にとって好適な方法を提供する。本明細書において開示される当該システムおよび方法が、有利には、慢性痛の治療を可能にし、ならびに従来の治療デバイスおよび方法の欠点を克服することが観察された。例えば、本明細書におけるシステムおよびデバイスのいくつかの利点としては、限定されないが、DRGへの薬剤の直接送達の結果としてのCSFへの非特異的または全身性投与または送達による任意の副作用の回避、さらに、送達される薬剤のより少ない用量を可能にすることの結果としての、望ましくない副作用のリスクを減じること、疼痛の治療のための最適な薬剤送達および治療効率のために同時にまたは一時的に同調された、DRGへの薬剤の送達とDRGの電気刺激との組み合わせ、が挙げられる。さらに、本発明のシステム、デバイス、および治療の方法は、不特定の観察者による目視での観察から実質的に遮蔽された、使用者または患者による制御された疼痛の管理、ならびに完全に内包されたシステムによる感染症のリスクの低減、を可能にする統合システムを可能にする。
いくつかの実施形態において、当該デバイスおよびシステムは、対象から当該システムを除去することなく、長期間にわたって、例えば、少なくとも1年間、または少なくとも2年間、または2から5年間の間、または5から10年間の間、または10年間以上にわたって、対象の身体の機能を維持することができる。
G.送達デバイス、システム、および方法による管理の効果の高い障害
疼痛は、本明細書において開示されるような方法、システム、および送達デバイスを用いて緩和することができ、そのような疼痛としては、必ずしもこれらに限定されないが、癌性疼痛、炎症性疾患疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、術後疼痛、医原性疼痛、複雑性局所疼痛症候群、機能しなくなった背骨の疼痛、軟組織疼痛、関節痛、骨疼痛、中枢性疼痛、外傷疼痛、関節炎性疼痛、遺伝性疾患、感染性疾患、頭痛、灼熱痛、知覚過敏症、交感神経ジストロフィー、幻肢症候群、および除神経等の様々なタイプの急性または慢性的疼痛が挙げられる。本発明は、長期間の疼痛または慢性の疼痛の治療に対して特に有用である。
概して、本発明による送達デバイス、システム、および方法を用いた、薬剤、例えば薬物製剤、の投与は、多種多様な障害、状態、疾患のいずれかに関する疼痛の管理(例えば、全身的鎮痛または中枢的に仲介される鎮痛による緩和療法)を容易にするために使用することができる。「疼痛」は、本明細書において使用される場合、特にそうでないことが言及されない限り、これらに限定されないが、急性疼痛、慢性疼痛、間欠痛等の、任意の期間および頻度における疼痛を包含することを意味する。疼痛の原因は、特定できる場合もあるし、特定できない場合もある。特定できる場合、疼痛の原因は、例えば、悪性、非悪性、感染性、非感染性、または自己免疫性であり得る。
特に関心対象であるのは、長期間の治療を必要とする障害、疾患、または状態、例えば、慢性および/または持続性の疾患または状態に関連する疼痛の管理であり、そのための治療法は、数日間(例えば、約3日から10日間)から、数週間(例えば、約2週間または4週間から6週間)まで、数ヶ月または数年までの、対象の残りの寿命までを含めた期間にわたる治療を伴う。現在は疾患または状態を患ってはいないが、そういったものに影響を受けやすい対象も、例えば、外傷性手術の前等に、本発明のデバイスおよび方法を用いた予防的な疼痛の管理から恩恵を受けることもできる。本発明による治療法で治療することができる疼痛は、疼痛のない間隔と交互に生じる疼痛、または激しさが変化する実質的に不断の疼痛における長期にわたる症状の発現を包含し得る。
一般的に、疼痛は、侵害受容性、体細胞原性、神経原性、または心因性であり得る。体細胞原性疼痛は、筋肉または骨(すなわち、骨関節炎、腰仙部痛、外傷後、筋膜)、内臓性(すなわち、膵臓炎、潰瘍、過敏性大腸)、虚血性(すなわち、閉塞性動脈硬化症)、または癌(例えば、悪性または非悪性)の進行に関連するもの、であり得る。神経原性疼痛は、外傷後および術後神経痛に起因し得、神経障害(すなわち、糖尿病性、毒物等)に関連し得、ならびに神経絞扼、顔面神経痛、会陰神経痛、切断手術後、視床性、灼熱痛、および反射***感神経性ジストロフィーに関連し得る。
本発明による管理を受け入れられる疼痛関連の障害、状態、疾患、および疼痛の原因の特定の例としては、これらに限定されないが、癌性疼痛(例えば、転移性または非転移性の癌)、炎症性疾患の疼痛、神経障害性疼痛、術後疼痛、医原性疼痛(例えば、侵襲性手技または高用量の放射線治療を行った後の疼痛、例えば、動作の自由度と実質的な疼痛との妥協を弱めてしまう結果になる傷跡の関与等)、複合領域性の疼痛症候群、機能しなくなった背骨の疼痛(例えば、急性または慢性の背部痛)、軟組織疼痛、関節及び骨の疼痛、中枢性疼痛、障害(例えば、衰弱性の障害、例えば、例えば対麻痺、四肢麻痺等、ならびに非衰弱性の障害(例えば、背中、首、脊椎、関節、脚、腕、手、足等))、関節痛(例えば、慢性関節リウマチ、骨関節炎、未知の病因の関節炎症状等)、遺伝性疾患(例えば、鎌状赤血球貧血)、感染症および結果的に生じる症候群(例えば、ライム病、AIDS等)、頭痛(例えば、偏頭痛)、灼熱痛、知覚過敏症、交感神経ジストロフィー、幻肢症候群、除神経等が挙げられる。疼痛は、任意の部分、例えば、筋骨格系、内臓、皮膚、神経系等に関連付けられ得る。
癌性疼痛は、本発明の方法により緩和することができる疼痛の1つの広いカテゴリの例である。癌性疼痛の根本にある原因の1つは、腫瘍性病変による組織の激しい局所的伸張である。例えば、癌細胞が無制限に増殖する場合、癌細胞増殖の局所領域における組織は、組織を移動させて、腫瘤によって占領された体積の増加を収容するために必要な力学的応力を受ける。腫瘍量が小さな内包された区画、例えば骨の骨髄等に限定されている場合、結果として生じる圧力が激痛を生じ得る。癌性疼痛の別の原因は、患者の癌に対抗するために使用される積極的治療、例えば、放射線治療、化学療法等から生じ得る。そのような癌治療は、局所または広範囲の組織への損傷を伴い得、結果として疼痛を生じる。
あるタイプの癌に関連する疼痛は、本発明による緩和を受け入れられる。疼痛(癌自体の性質または癌を治療する治療法による疼痛)を伴い得る癌の特定の例としては、必ずしもこれらに限定されないが、肺癌、膀胱癌、黒色腫、骨癌、多発性骨髄腫、脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、大腸癌、直腸癌、膵臓癌、異形成母斑、内分泌性癌腫、前立腺癌、頭部および頸部癌、肉腫、ホジキン病、皮膚癌、腎癌、胃癌、白血病、精巣癌、肝臓癌、子宮癌、および無形成性貧血、が挙げられる。ある特定の型の神経障害性疼痛も、本発明による治療に適している。
背部痛は、本発明の方法を用いた管理も受け入れられ、これは、本発明の方法の適用によって緩和することができる疼痛の別の広いカテゴリである。背部痛は、一般的に、次の6つの原因のうちの1つまたは複数に起因する:(i)ずれ、関節炎、楔状化、または脊柱側彎症によって引き起こされる椎骨間の面関節のストレス;(ii)神経根疾患、***性椎間板および腫瘍による神経根の力学的圧迫;(iii)腱鞘炎または腱捻挫;(iv)痙攣性疾患または筋捻挫;(v)虚血、循環流における局所的機能不全;および(vi)神経障害、代謝性病因の神経組織への損傷、または臍帯腫瘍もしくは中枢神経系疾患から生じる損傷。
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるような送達デバイス、システム、および方法は、オピオイド未経験患者またはもはやオピオイドを投与されていない患者において疼痛を管理するために使用することができるが、投与される薬剤の効力から、患者は、オピオイド未経験者でないことが好ましい。例示的なオピオイド未経験患者は、疼痛管理のための長期オピオイド療法を受けていない患者である。例示的な非オピオイド未経験患者は、短期間または長期間のオピオイド治療を受けたことがあり、耐性、依存性、または他の望ましくない副作用が発生したことのある患者である。例えば、経口、静脈内、もしくはくも膜下腔内のモルヒネあるいはモルヒネ類似体および誘導体、例えば、経皮的フェンタニル貼付剤、あるいは、フェンタニル、モルヒネ、または他のオピオイドの、従来法で投与される皮下注入、による難治性の有害な副作用を抱えている対象は、本明細書において開示されるような方法、送達デバイス、およびシステムを用いて、例えば上記に記載した用量範囲および/または低容量速度において投与される場合の薬剤および薬物製剤の送達により、良好な痛覚消失を達成し、好ましい副作用プロファイルを維持することができる。
いくつかの実施形態において、医師は、対象に送達デバイスを導入する前に、疼痛の原因の位置を特定することができる。患者が移植から最大の疼痛寛解の恩恵を受けるために、疼痛の原因の位置を正確に特定することが望ましい。慢性の神経痛を経験している患者は、口頭で医師への疼痛の位置を特定することができる。医師も、慢性疼痛を引き起こす神経組織の位置を確認するために、患者の以前の医療歴、画像診断検査、例えば、MRIまたはCTスキャン等、または任意の他の好適な診断検査を利用することもできる。いくつかの実施形態において、医師は、これに限定されないが腕神経叢等の末梢神経束を含む、慢性的疼痛に関連する脊髄レベルを特定する。
さらなる実施形態において、本明細書において開示されるようなデバイス、システム、および方法は、開胸術後症候群および非封入皮節性末梢神経障害、ならびにくも膜下腔内の位置を除いた中軸骨格での慢性的疼痛の任意の症候群の治療のために、日常的に使用することができる。
運動障害は、本明細書において開示されるような方法、システム、および送達デバイスを使用する緩和に適しており、そのような障害としては、必ずしもこれらに限定されないが、座位不能症、運動不能症(運動の喪失)、連合運動(鏡像運動または同側性共同運動)、無定位運動症(回旋状捻転または捻回)、運動失調、舞踏病痙攣様運動(乱暴な不本意な急速で不規則な運動)および片側バリズム(身体の半面だけへの影響)、動作緩慢(ゆっくりした動作)、脳性麻痺、舞踏病(急速で不本意な運動)、例えば、シドナム舞踏病、リウマチ性舞踏病、およびハンチントン舞踏病等、ジストニア(持続性捻転)、例えば、変形性筋ジストニア、眼瞼痙攣、書痙、痙性斜頚(頭頚部の捻回)、およびドーパミン反応性ジストニア(日周的変動またはSegawa疾病を伴う遺伝性進行性ジストニア)等、Geniospasm(顎と下唇の挿間不随意性上下運動)、間代性筋痙攣(筋または筋群の簡潔で不本意な攣縮)、代謝性の全体的に気分のすぐれない動作の症候群(MGUMS)、多発性硬化症、パーキンソン病、不穏脚症候群RLS(WittMaack-Ekboms病)、痙攣(収縮)、常同性運動障害、常同行動(反復)、遅発性ジスキネジア、チック障害(不随意性、強迫性、反復性、常同性)、例えば、トゥレット症候群等、振戦(強制振動)、静止振戦(およそ4〜8Hz)、***性振戦、運動性振戦、本態性振戦(およそ6〜8Hzの可変振幅)、小脳性振戦(およそ6〜8Hzの可変振幅)、パーキンソン振戦(およそ4〜8Hzの可変振幅)、生理的振戦(およそ10〜12Hzの低振幅)、ならびにウィルソン病等が挙げられる。
本明細書において開示されるような方法、システム、およびデバイスは、参照により本明細書に組み込まれる「Devices, Systems and Methods for the Targeted Treatment of Movement Disorders」と題する米国特許仮出願第61/438,895号に記載されているような運動障害を治療するために使用され得る。そのような状態の標的化された治療は、有害な副作用、例えば、影響を受けない身体領域における望ましくない運動反応もしくは望ましくない刺激等を最小限でしか提供しない。これは、状態に関連する標的構造を直接的に神経調節しつつ、他の構造への望ましくない神経調節を最小限にするかまたは除くことによって達成される。神経調節が、電気および/または薬学的薬剤をDRG等の標的エリアに直接送達することにより、神経活性を変更または調節することの様々な形態を含み得ることは、認識され得る。
本発明は、以下の番号付きパラグラフのうちのいずれかにおいて定義され得る。
1.遠位端および当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの出口ポートを有する送達エレメントであって、当該遠位端が、当該少なくとも1つの出口ポートのうちの少なくとも1つを後根神経節の近くに置くために構成される送達エレメントと、
薬剤放出機構を有する、当該送達エレメントと接続可能な薬剤放出モジュールと、
後根神経節を神経調節することを少なくとも支援する、制御された放出パターンに従って当該少なくとも1つの出口ポートから送達されるように当該薬剤放出機構から放出可能な薬剤と
を含む、神経調節システム。
2.上記薬剤が帯電可能であり、上記薬剤放出機構が、上記制御された放出パターンに従ってイオン泳動フラックスにより送達されるように当該薬剤を帯電するための機構を含む、パラグラフ1に記載の神経調節システム。
3.上記薬剤が、リドカイン、エピネフリン、フェンタニル、塩酸フェンタニル、ケタミン、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、ペプチド、タンパク質、アンギオテンシン(Angiotension)IIアンタゴニスト、アトリオペプチン、ブラジキニン、組織プラスミノゲン活性化因子、神経ペプチドY、神経増殖因子(NGF)、ニューロテンシン(Neurotension)、ソマトスタチン、オクトレオチド、免疫調節性ペプチドおよびタンパク質、バルシン(Bursin)、コロニー刺激因子、シクロスポリン、エンケファリン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、TNF、増殖因子、表皮増殖因子(EGF)、インシュリン様増殖因子I&II(IGF-I&II)、インター-ロイキン-2(T細胞性増殖因子)(II-2)、神経増殖因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(I型またはδ)(TGF)、軟骨由来増殖因子、コロニー刺激因子(CSF)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、エリスロポイエチン、眼由来増殖因子(EDGF)、繊維芽細胞誘導増殖因子(FDGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、グリア細胞増殖因子(GGF)、骨肉腫由来増殖因子(ODGF)、サイモシン、トランスフォーミング増殖因子(II型またはβ)(TGF)からなる群のうちの1つまたは複数から選択される、パラグラフ1または2に記載の神経調節システム。
4.上記薬剤が、オピオイド、COX阻害剤、PGE2阻害剤、Na+チャネル阻害剤からなる群のうちの1つまたは複数から選択される、パラグラフ1から3のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
5.上記薬剤が、後根神経節によって発現される受容体またはイオンチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストである、パラグラフ1から4のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
6.上記薬剤が、神経損傷、炎症、神経障害性疼痛、および/または侵害受容性疼痛に応答して後根神経節において上方制御される受容体またはイオンチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストである、パラグラフ1から5のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
7.後根神経節によって発現されるイオンチャネルが、電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)、電位開口型カルシウムチャネル(VGCC)、電位開口型カリウムチャネル(VGPC)、酸性感受性イオンチャネル(ASIC)からなる群より選択される、パラグラフ1から6のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
8.上記電位開口型ナトリウムチャネルが、TTX抵抗性電位開口型ナトリウムチャネルを含む、パラグラフ1から7のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
9.上記TTX抵抗性電位開口型ナトリウムチャネルが、Nav1.8およびNav1.9を含む、パラグラフ1から8のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
10.上記電位開口型ナトリウムチャネルが、TTX感応性電位開口型ナトリウムチャネルを含む、パラグラフ1から9のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
11.上記TTX感応性電位開口型ナトリウムチャネルがブレイン(Brain)III(Nav1.3)である、パラグラフ1から10のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
12.上記受容体が、ATP受容体、NMDA受容体、EP4受容体、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、TRP受容体、ニューロテンシン受容体から選択される、パラグラフ1から11のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
13.上記送達エレメントが、電気エネルギーを送達する能力を持つ少なくとも1つの電極をさらに含む、パラグラフ1から12のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
14.上記電気エネルギーが、上記薬剤のイオン泳動フラックスを生じさせることを少なくとも支援する、パラグラフ1から13のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
15.上記少なくとも1つ電極が、上記少なくとも1つの出口ポートの近くにある、パラグラフ1から14のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
16.上記薬剤放出モジュールが、後根神経節の少なくとも一部に対する上記薬剤の効果に影響を及ぼす様式で電気エネルギーを提供するパルス発生器をさらに含む、パラグラフ1から15のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
17.上記薬剤が後根神経節の少なくとも一部を標的とすると上記電気エネルギーが提供される、パラグラフ1から16のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
18.後根神経節内の少なくとも1つ特定の型の細胞を標的とする様式で上記電気エネルギーが提供される、パラグラフ1から17のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
19.上記制御された放出パターンが、後根神経節の少なくとも一部に対する電気エネルギーの効果に影響を及ぼすように決定される、パラグラフ1から18のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
20.上記薬剤および/または上記制御された放出パターンが、上記後根神経節における一次感覚ニューロンを興奮させるかまたは抑制する上記電気エネルギーの能力を亢進させるように決定される、パラグラフ1から19のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
21.上記薬剤および/または上記制御された放出パターンが、少なくとも1つのナトリウムチャネルの開く確率に変化をもたらすように決定される、パラグラフ1から20のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
22.上記薬剤放出機構が、経時的に上記後根神経節を神経調節することを支援する上記薬剤を送達する、パラグラフ1から21のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
23.上記薬剤放出機構が、上記薬剤で含浸された当該マトリックスを含み、その結果、上記マトリックスが、上記制御された放出パターンに従って経時的に上記薬剤を放出する、パラグラフ1から22のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
24.上記マトリックスが、侵食可能な性材料を含む、パラグラフ1から23のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
25.上記薬剤が担体粒子を含む、パラグラフ1から24のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
26.上記担体粒子が、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズまたは脂質ベースの系、ミセル、混合ミセル、リポソームまたは脂質:特徴づけられていない構造のオリゴヌクレオチド複合体、デンドリマー、ビロゾーム、ナノ結晶、量子ドット、ナノシェル、ナノロッドからなる群のうちの1つまたは複数から選択される、パラグラフ1から25のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
27.上記薬剤が、上記後根神経節を標的とする標的化分子を含む、パラグラフ1から26のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
28.上記標的化分子が、上記後根神経節内の少なくとも1つの細胞上で発現する細胞表面マーカーに対する特異的親和性を有する、パラグラフ1から27のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
29.上記少なくとも1つの細胞が、C繊維の少なくとも1つの細胞体を含む、パラグラフ1から28のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
30.上記薬剤が、送達後に後根神経節の近くに当該薬剤を保つゲル化材料を含む、パラグラフ1から29のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
31.上記ゲル化材料が送達後にゲル化する、パラグラフ1から30のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
32.上記送達エレメントの上記遠位端を置くことが、上記後根神経節の神経上膜の上にまたはそれと接触させて上記少なくとも1つの出口ポートのうちの少なくとも1つを位置決めするステップを含む、パラグラフ1から31のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
33.上記送達エレメントが、上記後根神経節内に移植されない、パラグラフ1から32のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
34.遠位端および当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの出口ポートを有する送達エレメントであって、当該少なくとも1つの出口ポートのうちの少なくとも1つを関連する後根神経節の近くに置くために脊髄に沿って、次に後根に沿ってくも膜下腔内の空間内で前進するように構成される送達エレメントと、
薬剤放出機構を有する、当該送達エレメントと接続可能な薬剤放出モジュールと、
当該後根神経節を神経調節することを少なくとも支援する、当該少なくとも1つの出口ポートから送達されるように当該薬剤放出機構から放出可能な薬剤と
を含むくも膜下腔内送達システム。
35.上記送達エレメントがスタイレットを含み、当該スタイレットが、前進している間に上記後根の後根鞘角形成部に沿って当該送達エレメントを導くことを支援するように構成される曲がった遠位端を有する、パラグラフ34に記載のくも膜下腔内送達システム。
36.上記薬剤が、当該薬剤を上記後根神経節へと標的化する標的化分子を含む、パラグラフ34または35に記載のくも膜下腔内送達システム。
37.上記標的化分子が、上記後根神経節内の少なくとも1つ細胞上で発現される細胞表面マーカーに対する特異的親和性を有する、パラグラフ34から36のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
38.上記薬剤が、ベンゾジアゼピン、クロナゼパム、モルヒネ、バクロフェン、および/またはジコノチドを含む、パラグラフ34から37のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
39.上記薬剤が、ゲノム薬剤または生物製剤を含む、パラグラフ34から38のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
40.上記薬剤が、電気刺激によって活性化できる、パラグラフ34から39のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
41.上記薬剤が、上記後根神経節における一次感覚ニューロンを興奮させるかまたは抑制する電気刺激の能力を亢進させる、パラグラフ34から40のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
42.上記薬剤が、上記後根神経節内の少なくとも1つの特定の細胞を標的とする電気刺激の能力を亢進させる、パラグラフ34から41のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
43.上記薬剤放出モジュールが、電極を有する送達エレメントへの送達のための刺激エネルギーを発生させる能力を持つ電子回路部品を含む、パラグラフ34から42のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
44.上記電子回路部品が、電気刺激パラメータセットおよび薬剤送達パラメータセットでプログラム可能なメモリを含む、パラグラフ34から43のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
45.上記パラメータセットが、所定の調和された様式で上記薬剤および上記刺激エネルギーを送達させる、パラグラフ34から44のうちのいずれかに記載のくも膜下腔内送達システム。
46.遠位端、当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの薬剤送達構造、および当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの電極を有する送達エレメントであって、当該遠位端が、少なくとも1つの薬剤送達構造のうちの少なくとも1つおよび当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つを後根神経節の近くに置くように構成される送達エレメントと、
当該送達エレメントと接続可能なパルス発生器であって、当該少なくとも1つの薬剤送達構造のうちの少なくとも1つからの薬剤の送達に応じて所定の様式で当該少なくとも1つの電極から電気エネルギーの送達を制御する電気刺激パラメータセットでプログラム可能なメモリを含むパルス発生器と
を含む薬剤送達システム。
47.上記薬剤送達構造が薬剤溶出コーティングを含む、パラグラフ46に記載の薬剤送達システム。
48.上記薬剤送達構造が薬剤溶出構造を含む、パラグラフ46または47記載の薬剤送達システム。
49.上記薬剤送達構造が薬剤出口ポートを含む、パラグラフ46から48のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
50.上記パルス発生器が、上記少なくとも1つの薬剤出口ポートに薬剤を放出する薬剤放出機構をさらに含む、パラグラフ46から49のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
51.上記パルス発生器が、上記薬剤放出機構からの薬剤の送達を制御する薬剤送達パラメータセットでプログラム可能なメモリを含む、パラグラフ46から50のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
52.電気エネルギーの送達が、上記後根神経節の少なくとも一部に対する上記薬剤の効果に影響を及ぼすように制御される、パラグラフ46から51のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
53.上記電気エネルギーの送達が、上記後根神経節の少なくとも一部に対する薬剤の効果を最大化するように時間調整される、パラグラフ46から52のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
54.上記電気エネルギーの送達が、上記後根神経節の少なくとも一部に対する電気エネルギーの効果に対して上記送達薬剤が有する影響に基づき制御される、パラグラフ46から53のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
55.上記電気エネルギーの送達が、上記薬剤の送達の間に低下する、パラグラフ46から54のうちのいずれかに記載の薬剤送達システム。
56.遠位端、当該遠位端の近く配置される少なくとも1つの薬剤送達構造、および当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの電極を有する送達エレメントを含む薬物送達システムであって、当該遠位端が、当該少なくとも1つの薬剤送達構造のうちの少なくとも1つおよび当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つを後根神経節の近くに置くように構成される薬剤送達システムと、
当該少なくとも1つの薬剤送達構造から放出可能な薬剤であって、当該少なくとも1つの電極によって提供される電気エネルギーが、当該後根神経節内の細胞体が当該薬剤よって優先的に標的化されるように当該細胞体を活性化することによって当該後根神経節を神経調節することを支援する薬剤と
を含む神経調節システム。
57.上記細胞体を活性化することが、当該細胞体を脱分極させることを含む、パラグラフ56に記載の神経調節システム。
58.上記細胞体は、そのサイズおよび/または膜性質に基づき優先的に活性化される、パラグラフ56または57に記載の神経調節システム。
59.上記薬剤が、毒素を含む、パラグラフ56から58のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
60.遠位端、当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの薬剤送達構造、および当該遠位端の近くに配置される少なくとも1つの電極を有する送達エレメントを含む薬剤送達システムであって、当該遠位端が、当該薬剤送達構造のうちの少なくとも1つおよび当該少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つを後根神経節の近くに置くように構成される薬剤送達システムと、
少なくとも1つの薬剤送達構造から放出可能な薬剤であって、当該少なくとも1つの電極によって提供される電気エネルギーが、上記後根神経節内の第1細胞型において当該薬剤を選択的に活性化するが、当該後根神経節内の第2細胞型において当該薬剤を活性化しない薬剤と
を含む神経調節システム。
61.上記薬剤がプロドラッグを含む、パラグラフ60に記載の神経調節システム。
62.上記薬剤が、オピオイド、COX阻害剤、PGE2阻害剤、Na+チャネル阻害剤からなる群のうちの1つまたは任意の組み合わせから選択される、パラグラフ60または61に記載の神経調節システム。
63.上記薬剤が、神経損傷、炎症、神経障害性疼痛、および/または侵害受容性疼痛に応答して後根神経節において上方制御される受容体またはイオンチャネルのアゴニストまたはアンタゴニストである、パラグラフ60から62のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
64.上記後根神経節によって発現される上記イオンチャネルが、電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)、電位開口型カルシウムチャネル(VGCC)、電位開口型カリウムチャネル(VGPC)、酸性感受性イオンチャネル(ASIC)からなる群より選択される、
パラグラフ60から63のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
65.上記電位開口型ナトリウムチャネルが、TTX抵抗性電位開口型ナトリウムチャネルを含む、パラグラフ60から64のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
66.上記TTX抵抗性電位開口型ナトリウムチャネルが、Nav1.8およびNav1.9を含む、パラグラフ60から65のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
67.上記電位開口型ナトリウムチャネルが、TTX感応性電位開口型ナトリウムチャネルを含む、パラグラフ60から66のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
68.上記TTX感応性電位開口型ナトリウムチャネルがブレイン(Brain)III(Nav1.3)である、パラグラフ60から67のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
69.上記受容体が、ATP受容体、NMDA受容体、EP4受容体、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、TRP受容体、ニューロテンシン受容体から選択される、パラグラフ60から68のうちのいずれかに記載の神経調節システム。
参考文献
本明細書においておよび本明細書の全体にわたって引用されるすべての参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。