磁気検出装置の一種に、磁界の大きさを電気的抵抗の変化や起電力などの電気的信号に変換して出力する感磁素子を用いたものがある。
従来から、磁気検出装置にこのような感磁素子を用いるのにあたっては、
1)線形性を示す動作点を利用する
2)感度が高い動作点を使用する
3)同一方向の正負の磁界に対する応答が同じである感磁素子を使用する場合には信号磁界の方向をわかるようにする
などの目的で、感磁素子にバイアス磁界を印加することが行われている。
磁気検出装置を構成する感磁素子にバイアス磁界を印加する方法としては、巻き線コイル、薄膜コイル、薄膜磁石、ラバー磁石、バルク磁石による方法などが知られている。なお、バルク磁石とは、角型・円柱型のようなブロック状の個体として製造される磁石であって、金属やセラミックスの粉末材料を成型して高温で焼き固めた焼結磁石などをいう。
図20は磁気抵抗効果素子(以下MR素子という)を用いたMRヘッドの一例を示す構成説明図であり、MRヘッドのディスク対向面から見た断面図である(特開平9-81916)。図20において、セラミックの非磁性基板上(図示せず)に厚さ2μmのNiFeを用いた下シールド1がメッキ法により成膜され、イオンミリングにより幅60μmにパターン化される。その上に、厚さ0.2μmのAl2O3を用いた下ギャップ2がスパッタリング法により成膜される。
さらに導電性の下地層3として厚さ10nmのCr膜がスパッタリング法により成膜される。このCr膜は後で成膜されるCoCrPt膜が面内に配向するための下地の役割も果たしている。
次に、軟磁性補助バイアス層としての厚さ20nmのCoZrMo、中間層としてのTa膜10nm、強磁性磁気抵抗効果層としてのNiFe膜15nmからなるMR素子層4がスパッタリング法により成膜される。
そして、MR素子層4はステンシル型のレジストを付けた後、イオンミリングにより幅2μmにパターン化される。
その後、パターン化された磁性膜の両側にCoCrPt膜からなる厚さ50nmの永久磁石層5およびAuからなる0.2μmの電極層6がスパッタリングされ、レジストが除去される。
次に、この上に厚さ0.24μmのAl2O3を用いた上ギャップ7がスパッタリング法により成膜される。
その上に厚さ2μmのNiFeを用いた上シールド8がメッキ法により成膜され、イオンミリングにより幅60μmにパターン化される。
ところが、このような薄膜磁石によるバイアス磁界印加では、磁界強度の制御が困難であり、所望の磁界強度が得にくい、などの問題がある。
図21は従来の磁気センサ装置の一例を示す構成説明図であり、MRE(磁気抵抗効果)形成面側から見た平面図である(特開2008-180550)。図21において、磁気センサ装置100は、主要部として、センサチップ110とコイル120を含んでいる。また、要部として、上述した構成要素以外にも、支持部材130と、リード140と、封止樹脂150を含んでいる。
センサチップ110は、基板のMRE形成領域111上に、たとえばNi−Co、Ni−Fe等の材料からなり、バイアス磁界の変化(磁気ベクトルの変化)に応じて抵抗値が変化するMREを形成してなるものである。本実施形態において、MREは、パターニングによってハの字状に形成されており、図示されない信号処理回路も集積化されている。
コイル120は、導線を筒状に巻いてなるものであり、通電状態(電流が流れた状態)で、センサチップ110に形成されたMRE114〜117に対してバイアス磁界を付与する。すなわち、特許請求の範囲に記載のバイアス磁界生成部に相当する。コイル120の構成材料は、導電材料であれば特に限定されるものではない。たとえば銅などの金属やより磁力が高いものとしてKS鋼、MT鋼などの合金を採用することができる。コイル120の構成材料に限らず、線径、コイル120の径(筒径)、筒形状は、特に限定されるものではない。また、コイル120の位置は、MRE114〜117に対してバイアス磁界を付与するために、MRE114〜117の近傍であればよい。
さらに、センサチップ110のMRE形成面全面を覆うように、コイル120が略矩形状の封止樹脂150の外周面に沿って一定の径で巻回され、この巻回された状態でコイル120は封止樹脂150に接着固定されている。すなわち、コイル120の筒形状も略矩形状とされている。また、コイル120の一端はリード140の電源端子141に接続され、他端はリード140のGND端子142に接続されており、図21に破線矢印で示す方向に電流Iが流れるように構成されている。
なお、電流Iが流れた状態で、それによって生じるバイアス磁界の方向(磁気ベクトルの向き)は、図21中に矢印で示す方向となる。また、コイル120の中心軸がバイアス磁界の磁気的中心をなしている。
ところで、コイルに電流を流すことによって生じる磁界は、コイルの巻き数やコイルに流れる電流によって変化する(たとえば巻き数や電流に比例して、磁界の強さが大きくなる)ことが知られている。したがって、コイル120の巻き数やコイル120に流れる電流Iを調整することで、バイアス磁界を調整することができる。すなわち、MRE114〜117における初期状態(回転体が回転する前)の磁気ベクトルを調整する(オフセット調整する)ことができる。また、コイル120とMRE114〜117との位置関係や、コイル120の形状(径)によっても、MRE114〜117における初期状態の磁気ベクトルを調整することができる。
支持部材130は、センサチップ110を搭載するものである。図21においては、封止樹脂150によってセンサチップ110を被覆する際に、センサチップ110の位置ずれを防ぐ機能も果たすように、リード140とともにリードフレームの一部(所謂アイランド)として構成されている。詳しくは、封止樹脂150によるモールド後に、封止樹脂150から露出するリードフレームの外周部位が除去されて、図1に示すように、支持部材130とリード140とが分離されている。
このような支持部材130を用いると、簡素な構成でありながら、モールド時のセンサ
チップ110の位置ずれを抑制できる。
リード140は、先に述べたように、コイル120の一端が接続された電源端子141とコイル120の他端が接続されたGND端子142以外にも、センサチップ110の出力端子143を含んでいる。図21では、電源端子141とGND端子142が、センサチップ110(MRE114〜117)とコイル120とで共用されている。
すなわち、センサチップ110も、図示されないワイヤ接続やフリップチップ接続によって、電源端子141またはGND端子142と電気的に接続されている。したがって、コイル120には直流電流が流れることとなる。
このように、センサチップ110とコイル120とで電源端子141とGND端子142を共用すると、リード140の本数を減らし、コストを低減することができる。
封止樹脂150は、センサチップ110と、センサチップ110との接続部を含む各リード140の一部を被覆するものである。すなわち、センサチップ110は封止樹脂150によって被覆され、モールドICとされている。封止樹脂150の構成材料としては、少なくとも電気絶縁性を示す材料であれば良く、好ましくは使用環境に応じて、耐熱性、耐薬品性、耐湿性などを兼ね備えた材料が適宜選択採用される。図21の構成では、センサチップ110のMRE形成面全面を被覆するようにコイル120が配置されるため、リード140の配置側とは反対側(回転体側)における封止樹脂150の肉厚がコイル120の接触代としてやや厚くされ、封止樹脂150の回転体側の端部とMRE形成領域111との距離が距離L1とされている。
しかし、図21のように構成される巻き線コイルおよび薄膜コイルによるバイアス磁界印加では、製造プロセスが複雑である、消費電力が大きい、などの問題点がある。
図22は従来の磁気式エンコーダの一例を示す構成説明図であり、磁気式エンコーダを小型のモータと結合させた側面図である(特開2002-181588)。図22において、ヨーク11は、永久磁石12から発する磁界を導くもので、コ字状の3%Si−Feの軟磁性の珪素鋼板を積層し2個のブロックに成形したものからなる。永久磁石12はブロック状のフェライト磁石をヨーク11の中に結合させて形成している。磁界検出素子13は、3個のホール素子(13a,13b,13c)をヨーク11の開口部に配置している。ホール素子3個の検出信号がそれぞれ最大となる方向が互いに垂直になるように設置している。したがって、永久磁石12から発する磁界はヨーク11を通り、磁界検出素子13を設置した空間に均一な磁界を形成する。また、図示していないが、磁界検出素子13への駆動電源の供給や磁界検出手段からの信号送信を行うための信号線を、波形処理回路に接続している。また、図示しないが、回転軸14は軸受によりケーシングに支持され、磁界検出手段はフレームを介してケーシングに固定されている。
図22の構成によれば、永久磁石12と軟磁性体のヨーク11からなる磁界発生手段を持っているが、これは永久磁石12から発する磁界はヨーク11を通り、磁界検出素子13を設置した空間に均一な磁界を形成するためである。また磁界検出素子13を設置した空間ではヨーク11により磁束が集中するため磁界検出素子13への印加磁界強度は強くなってしまい、本発明のような弱いバイアス磁界を印加するすことは困難である。
図23は従来の移動***置検出装置の一例を示す構成説明図であり、軟磁性材移動体として軟磁性材回転体の移動(回転)情報および原点情報を得るための回転センサを示している(特開2006-084416)。図23(A)において、第1軟磁性材回転体16は、円周となっている外周面に一定間隔の配列ピッチPで所定数の歯(凸部)16aを設けた構成であり、これと一定位置関係を保つ(一体となって回転する)第2軟磁性材回転体17は、円周となっている外周面の一部に切欠部17aを設けた構成である。
第1軟磁性材回転体16に対向してこれより90°位相差2信号(A相及びB相)を得るための第1の磁気抵抗効果素子として、第1のスピンバルブ型巨大磁気抵抗素子(以下、SV−GMR素子)群18が配置されている。
また、第2軟磁性材回転体17に対向してこれより原点信号(Z相)を得るための第2の磁気抵抗効果素子として、第2のSV−GMR素子群20が配置されている。また、第1および第2のSV−GMR素子群18,20にバイアス磁界を印加するために1個のバイアス磁石19を配置している。
ここでは、図23(B)に示すように、第1のSV−GMR素子群18として2対のSV−GMR素子R1〜R4を用い、第2のSV−GMR素子群20として1対のSV−GMR素子R5,R6を用いている。なお、図23では解りやすくするためにSV−GMR1〜6をバイアス磁石15に比較して大きく図示したが、実際には微小寸法である。
第1のSV−GMR素子群18としての2対のSV−GMR素子R1〜R4は、第1軟磁性材回転体16の外周に対向し、そのうち一方のSV−GMR素子R1,R2の対は前記外周面に対向する同一平面(回転体16の移動方向に平行な面)上にあり、かつ回転体18の移動方向に略垂直方向でかつ回転体16の厚み方向(つまり凸部を有する面に平行な方向)に配列されている。SV−GMR素子R1,R2のピン層磁化方向は回転体16の移動方向に対して互いに略順方向と略逆方向を向くように配置されている。
他方のSV−GMR素子R3,R4の対も回転体16の外周面に対向する同一平面(回転体1の移動方向に平行な面)上にあり、かつ回転体16の移動方向に略垂直方向(回転体1の厚み方向に)に配列されていて、SV−GMR素子R1,R2の対から回転体16の移動方向に配列間隔Lだけ離れた位置となっている。但し、配列間隔Lは、回転体16の歯16aの配列ピッチをPとしたとき、L=nP±P/4 (nは整数)である。なお、SV−GMR素子R3,R4のピン層磁化方向も回転体16の移動方向に対して互いに略順方向と略逆方向を向くように配置されている。
第2のSV−GMR素子群20として1対のSV−GMR素子R5,R6は、第2軟磁性材回転体17の外周面に対向する同一平面(回転体17の移動方向に平行な面)上にあり、かつ回転体17の移動方向に略垂直方向(回転体17の厚み方向に)に配列されている。SV−GMR素子R5,R6のピン層磁化方向は回転体17の移動方向に対して互いに略順方向と略逆方向を向くように配置されている。
バイアス磁界発生用のバイアス磁石19は、第1及び第2軟磁性材回転体16,17の移動方向に垂直な厚み方向において、第1のSV−GMR素子群18(2対のSVGMR素子R1〜R4)と第2のSV−GMR素子群20(1対のSV−GMR素子R5,R6)との間に1個配置されている。そして、第1及び第2回転体16,17が存在しないときに、SV−GMR素子R1〜R6位置での磁界が当該SV−GMR素子R1〜R6の感磁面に平行な磁界成分を主に有し、かつ各SV−GMR素子R1〜R6のピン層磁化方向に略垂直な磁束を発生する磁極配置(例えば、磁極面19aが前記感磁面に略垂直)となっている。なお、バイアス磁石15がSV−GMR素子R1〜R6の感磁面と回転体1,2の外周面間のギャップにはみ出さないように、バイアス磁石19の側面19bは前記感磁面と同一平面上にあるか、やや後退した位置となっている。
ている。
図23は、磁性材の相対移動による外部磁界のベクトル方向を検出しているものの、本発明の低バイアス磁界を印加するための構造とは明らかに異なる。
図24は従来の磁気検出装置の一例を示す構成説明図であり、磁気インピーダンス(MI)効果を有する金属磁性材料によりミアンダ形状に形成された薄膜状磁気センサを用いた磁気検出装置を示している(特開2001-004728)。
図24において、ミアンダ形状に形成された2個の薄膜状磁気センサ21が、軟磁性材料26を用いてH形に形成された支持台27の水平部27aの上面に、シート状磁気媒体28に対向するようにその移動方向に沿って並設されている。
図25は薄膜状磁気センサ21の具体例を示す構成説明図であって、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A部分拡大断面図である。図25において、薄膜状磁気センサ21は、ガラスなどの基板21aの上に、所定膜厚の軟磁性材料21bとTiなどの非磁性材料21cがたとえばスパッタ法により交互に積層されてイオンミリングによりミアンダ形状に形成されたものであり、その両端には端子21d、21eが形成されている。なお、素子となる金属磁性体の膜厚は、MI効果を最も効率よく利用するために、通電する高周波電流の周波数に応じた値に調整される。
上記構成の磁気検出装置30は読取装置に組み込まれ、シート状磁気媒体28が搬送されて来ると、この外部信号磁界32を非接触の状態で磁気センサ21により検出する。この磁気センサ21の磁気インピーダンス(MI)効果は、薄膜状磁気センサ21の端子21d、21eに高周波電流を通電すると、外部信号磁界32によって磁性材料24の透磁率が変化することに伴い、磁性材料24の電気的インピーダンスが変化する現象を利用したものである。
ここで、磁気センサ21は図24に示すように、軟磁性材料26でH形に形成された支持台27の水平部27aの上面に取り付けられているので、支持台27を構成する軟磁性材料26が磁気シールド材29となり、磁気センサ21の背面、前面および後面が磁気シールドされ、センサ面以外のあらゆる方向からの磁気的雑音が排除され、シート状磁気媒体28と対向するセンサ面のみで磁気媒体28からの漏洩磁界を有効に検出すことができる。この場合、磁気シールド材29として軟磁性材料26を用いているので地磁気や低い周波数の磁気雑音を有効にシールドすることができる。
しかし、図24の構成によれば、磁極面の片面を軟磁性材料26で形成した磁気シールドで完全に覆って他方の面を露出させ、磁気回路は感知対象物を着磁する必要からバルク磁石33の磁極方向と磁気センサ21の感磁方向を直交させている。さらに、スペーサ35によりバイアス磁界の大きさを調整するように構成されているので、計測対象磁界の一部が軟磁性構造体へ迂回することになり、計測対象磁界の正確な測定は困難である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に基づく磁気検出装置の一実施例を示す構成説明図である。(A)〜(C)は非磁性スペーサを設けない構成であり、(A)は上面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。(D)〜(F)は非磁性スペーサを設けた構成を示すもので、(D)は上面図、(E)は側面図、(F)は底面図である。
図1(B)において、非磁性材料よりなる基板41の一方の面(上面)には感磁素子42がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置されていて、その両端には配線パッド43、44が設けられている。他方の面(下面)にはコの字形に成形された軟磁性構造体45の連結部45aが固着されていて、軟磁性構造体45の開口部45bにはバルク磁石46の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して同一で平行な状態になるようにバルク磁石46の両磁極面の一部が嵌め合わされている。
図1(E)において、基板41と軟磁性構造体45の連結部45aとの間には非磁性材料よりなるスペーサ47が設けられている。
ここで、感磁素子42は、印加磁界に対する出力特性が線対称となる特性を持つものとする。バルク磁石46は、感磁素子42に対してバイアス磁界を印加するように機能する。軟磁性構造体45は、バルク磁石46の両磁極面の少なくとも一部を覆うことによりバルク磁石46の両磁極面を連結するように機能する。
図1の構成におけるバイアス磁界による調整原理について説明する。バルク磁石46と軟磁性構造体45によるバイアス磁界からの磁束は、以下に説明する第1の磁束と第2の磁束を足し合わせたものが支配的である。
第1の磁束は、軟磁性構造体45で覆われていないバルク磁石46のN極面を始点として基板41などの周辺部材や空気などの外部環境を通り、軟磁性構造体45で覆われていないバルク磁石46のS極面を終点とする磁路を通過する磁束である。
第2の磁束は、軟磁性構造体45の断面積が小さい箇所周辺において発生する漏れ磁束である。これは、軟磁性構造体45により覆われたバルク磁石46のN極面を始点として軟磁性構造体45内を通り、軟磁性構造体45により覆われたバルク磁石46のS極面を終点とする磁路を通過する磁束において、軟磁性構造体45内の断面積が小さい箇所を通過する際に、局所的に磁束密度が高くなり、漏れ磁束が発生することに起因する。特に、局所的に磁束密度が飽和して飽和時のB−H曲線の傾きである透磁率が小さくなり、周辺の空気や非磁性部材などの透磁率が無視できない大きさとなる場合、漏れ磁束は大きくなる。
すなわち、バルク磁石46単体を用いた際に生じる磁束と比較すると、バルク磁石46から生じる磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回し、軟磁性構造体45周辺の磁界強度が弱められるため、バルク磁石46からのバイアス磁界を感磁素子42の飽和磁界範囲内となるように調整することが可能となる。
図1(B)に示すように、基板41と軟磁性構造体45の連結部との間に非磁性材料よりなるスペーサ47を設けていない場合、軟磁性構造体45近傍に感磁素子42を配置すると、計測対象となる磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回するため、感磁素子42を通過する磁束が本来の磁束に比べて小さくなり、結果出力信号が小さくなる。
すなわち、図1(E)に示すように感磁素子42と軟磁性構造体45の間に非磁性スペーサ47を設けることにより、計測対象の磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回することがほとんど無くなり、出力信号の劣化が無い安定した磁界計測が可能となる。
図2は本発明の他の実施例を示す構成説明図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図2(B)において、非磁性材料よりなる基板41の一方の面(上面)には感磁素子42がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置され、その両端には配線パッド43、44が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石46の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して同一で平行な状態を維持するように図1(B)の状態から軟磁性構造体45を90°回転させた状態で、コの字形に成形された軟磁性構造体45の連結部に隣接する一方の側面部が固着されていて、軟磁性構造体45の開口部にはバルク磁石46の両磁極面の一部が嵌め合わされている。
図2(E)において、基板41と軟磁性構造体45の連結部との間には非磁性材料よりなるスペーサ47が設けられている。
図3も本発明の他の実施例を示す構成説明図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図3(B)において、非磁性材料よりなる基板41の一方の面(上面)には感磁素子42がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置されていて、その両端には配線パッド43、44が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石46の両磁極が感磁方向Aに対して同一の磁界方向で平行な状態を維持するように図1(B)の状態から軟磁性構造体45を180°回転させた状態でバルク磁石46の端面が固着され、磁性構造体45の連結部は底面として露出している。
図3(E)において、基板41と軟磁性構造体45の連結部との間には非磁性材料よりなるスペーサ47が設けられている。
図4も本発明の他の実施例を示す構成説明図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図4(B)において、非磁性材料よりなる基板41の一方の面(上面)には感磁素子42がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置され、その両端には配線パッド43、44が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石46の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して直交するように、コの字形に成形された開口部にバルク磁石46の両磁極面の一部を嵌め合わせた軟磁性構造体45が、図1(B)の状態から反時計方向に90°回転させた状態で配置されている。
これら図1から図4の構成によれば、バルク磁石46と軟磁性構造体45の配置方法が異なるため印加磁界強度はそれぞれ異なるものの、バルク磁石46単体を用いた際の磁界と比較して弱められたバイアス磁界が印加されることになる。
非磁性スペーサ47の機能について説明する。
軟磁性構造体45の近傍に感磁素子42を配置すると、計測対象となる磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回することから感磁素子42を通過する磁束が本来の磁束に比べて小さくなり、その結果、出力信号が小さくなる。これに対し、感磁素子42と軟磁性構造体45の間に非磁性スペーサ47を設置することにより、計測対象の磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回することがほとんど無くなり、出力信号の劣化の少ない安定した磁界計測が可能となる。
軟磁性構造体45の周辺における磁界強度について説明する。
図5は軟磁性構造体45の具体例を示す構成説明図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。軟磁性構造体45は、たとえばたて1.0mm、横1.5mm、高さ0.6mmの直方体であって、底面中央には短手方向に沿って半径0.275mmで深さ0.35mmの溝Gが設けられている鉄とニッケルからなる磁性材料パーマロイPB(JIS規格品)を用いる。
この軟磁性構造体45の溝Gには、図6に示すように、バルク磁石46が嵌め合わされる。図6は磁界強度測定に用いた磁気検出装置の構成説明図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は底面図である。バルク磁石46としては、たとえばサマリウムとコバルトを主成分とするSmCo磁石を用いる。形状は0.8mm□×0.5mmの角型に加工されたもので、磁極面が0.8mm□の両面となるように着磁されている。
磁界強度の測定点は図6に示すA点、B点、C点、D点の4点であり、軟磁性構造体45もしくはバルク磁石46の表面から1mmの箇所に図示しない感磁素子を配置して磁界強度をそれぞれ測定した。
また比較例として、図7に示すように、バルク磁石46単体の周辺の磁界強度についても測定した。図7はバルク磁石46単体の具体例を示す構成説明図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。測定点はE点であり、同じくバルク磁石46の表面から1mmの箇所にナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなるトンネル磁気抵抗素子を用いた感磁素子を配置し、原点ピークのシフト量から磁界強度を測定した。
図8は、軟磁性構造体45の周辺における磁界強度の測定結果例である。A点の磁界強度は4.1OeでE点の磁界強度の5.3%であり、B点の磁界強度は13.5OeでE点の磁界強度の17.6%であり、C点の磁界強度は11.5OeでE点の磁界強度の15.0%であり、D点の磁界強度は46.8OeでE点の磁界強度の61.0%である。なお、図7のE点における磁界強度は76.7Oeである。
これらの結果から、バルク磁石46単体を用いた際に生じる磁束と比較して、軟磁性構造体45周辺の磁界強度が弱められており、バルク磁石46からのバイアス磁界を弱める方向に調整することが可能であることが明らかである。よって、本発明の構成を用いることにより、感磁素子42に低バイアス磁界を印加することが可能になる。
図9は非磁性スペーサ47の効果を確認するための磁気検出装置の構成説明図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。なお、感磁素子42としてナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなるトンネル磁気抵抗素子を用い、非磁性スペーサ47として厚さ0.5mmの石英板を用いた。また感磁素子42が形成される基板41の厚さも0.5mmである。
非磁性スペーサ47の効果を確認するための測定ステップは以下のとおりである。
1)まず、感磁素子42単体の磁気抵抗特性を計測する(ステップS1)。
2)次に、感磁素子42にバルク磁石46と軟磁性構造体45を組み合わせた磁気検出装置の磁気抵抗特性を計測する(ステップS2)。
3)バルク磁石46と軟磁性構造体45により感磁素子42にバイアス磁界が印加されていることから、感磁素子42単体の磁気抵抗特性と比較を行うために、バイアス磁界分を差し引いて磁気抵抗特性を導出する(ステップS3)。
4)感磁素子42にバルク磁石46と軟磁性構造体45と非磁性スペーサ47を組み合わせた磁気検出装置の磁気抵抗特性を計測する(ステップS4)。
5)バルク磁石46と軟磁性構造体45により感磁素子42にバイアス磁界が印加されていることから、感磁素子42単体の磁気抵抗特性と比較を行うために、バイアス磁界分を差し引いた磁気抵抗特性を導出する(ステップS5)。
図10は非磁性スペーサ47の効果を確認するための磁気抵抗特性例図であり、特性Aは感磁素子42単体を用いた場合を示し、特性Bは感磁素子42とバルク磁石46と軟磁性構造体45を組み合わせた場合を示し、特性Cは感磁素子42とバルク磁石46と軟磁性構造体45と非磁性スペーサ47を組み合わせた場合を示している。
図10から明らかなように、感磁素子42単体を用いた際の抵抗変化率と比較して、非磁性スペーサ47を用いない場合は、計測対象となる磁束の一部が軟磁性構造体45へ迂回するため、感磁素子42を通過する磁束が本来の磁束に比べて小さくなって、抵抗変化率が小さくなる。また非磁性スペーサ47を用いた場合は、計測対象となる磁束はほとんどが感磁素子42を通過するため、本来の計測対象磁界による抵抗変化率と同等である。よって本発明の構成を用いれば、計測対象磁界の一部が軟磁性構造体45へ迂回することを防止でき、出力信号の劣化を実用上無視できる安定した磁界計測が可能となる。
図11は磁束が通過する軟磁性構造体45内の断面積の大きさがバイアス磁界に及ぼす影響を確認するために用いた磁気検出装置の構成説明図であり、軟磁性構造体45の高さxと幅yの寸法を色々と変更して磁束が通過する軟磁性構造体45内の断面積を変化させた場合のF点における磁界の大きさを測定したものである。図11において、軟磁性体45の狭まった部分の厚さ0.25mmは高さxを変更した際も一定であり、計測点であるF点は軟磁性構造体45の上部表面から0.5mmの箇所にあるものとする。
図12は、図11の磁気検出装置の測定結果例である。幅1mmの場合は、高さxが大きくなるほど計測点での磁界が大きくなる傾向にある。これは、幅1mmの場合、軟磁性構造体45の狭まった部分の断面積が小さいため、該当箇所周辺において漏れ磁束が大きくなることによると考えられる。また、高さxが大きくなると、磁極面の軟磁性構造体45により覆われる面積が増加して軟磁性構造体45内を通過する磁束が多くなり、漏れ磁界が大きくなるためと考えられる。
幅2mmの場合は、逆に高さxが大きくなるほど計測点での磁界が小さくなる傾向が見られる。幅2mmの場合、軟磁性構造体45の狭まった部分の断面積が大きくなって該当箇所周辺における漏れ磁束の影響はほぼ無くなり、軟磁性構造体45で覆われていないバルク磁石46のN極面を始点として基板などの周辺部材や空気などの外部環境を通って軟磁性構造体46により覆われていないバルク磁石46のS極面を終点とする磁路を通過する磁束が支配的になる。
すなわち、高さxが大きくなると磁極面の軟磁性構造体45により覆われる面積が増加して軟磁性構造体45内を通過する磁束が多くなり、外部環境を通過する磁束が少なくなるため磁界が小さくなると考えられる。上記のように、本発明を用いることにより、バイアス磁界を所望の強度に調整することが可能になる。
なお、上記各実施例では、バルク磁石46として、サマリウムとコバルトを主成分とする温度安定性が良好で加工性の良いSmCo磁石を用いているが、これに限るものではなく、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とするネオジム磁石、酸化鉄を主成分とするフェライト磁石、アルミニウムとニッケルとコバルトと鉄を主成分とするアルニコ磁石、鉄とクロムとコバルトを主成分とする磁石なども用いることができる。
また、バルク磁石46の形状としては、上記各実施例のような直方体型に限るものではなく、角型、円柱型、リング型、ボール型、シート型などの形状も用いることができる。
また、軟磁性体材料としては、本実施例で用いる鉄とニッケルからなり透磁率が高く入手性と加工性の良好な磁性材料パーマロイPB以外に、純鉄や、鉄とニッケルを主成分としてモリブデンや銅、クロムのうち少なくとも1つを含む軟磁性体、鉄を主成分としてケイ素と炭素、マンガン、リン、硫黄のうち少なくとも1つを含む軟磁性体、マンガン亜鉛フェライトやニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライトなどの酸化鉄を主成分とする軟磁性材料なども用いることができる。
また、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Co(コバルト)の単体またはこれらを成分とする合金を軟磁性材料とし、電鋳法により作製した軟磁性構造体45を用いてもよい。電鋳法で軟磁性構造体45を作製することにより、複雑な形状を持つ軟磁性構造体45の寸法精度が高くなり、バルク磁石46との組み合わせで安定した磁界強度が得られる。
また、電鋳法によれば、一度に大量の軟磁性構造体45を安定に作製することができ、安価かつ量産に適した軟磁性構造体45が得られる。
また、軟磁性構造体45の形状は、上記各実施例のコの字型に限るものではなく、たとえば図13に示すように、バルク磁石46を嵌め込んで使用するくり抜き型の形状を用いてもよい。
非磁性スペーサ47としては、上記各実施例で用いるハンドリングの良好な石英に限るものではなく、不純物を含有したガラス、Al2O3(サファイア)、Si(シリコン)、AlN(窒化アルミ)、Al2O3-TiC(アルミナチタンカーバイド)、非磁性ステンレス、真鍮、Al(アルミ)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Au(金)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)、Sn(すず)、Pb(鉛)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ナイロン、ポリアミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、フェノール樹脂、セラミックスなどの非磁性材料を用いることもできる。
また、感磁素子42を形成する基板41を非磁性スペーサ47として使用してもよい。
感磁素子42は、上記各実施例で用いているナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなるトンネル磁気抵抗素子の他に、磁界の印加に対して電気的抵抗が変化する異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)、磁界の印加に対して電気的インピーダンスが変化する軟磁性材料により構成されるアモルファスワイヤあるいは薄膜からなる磁気インピーダンス素子などを用いてもよい。
本発明では、磁界強度100Oe未満のバイアス磁界を、「低バイアス磁界」と定義する。磁界強度100Oe以上ではバルク磁石46単体を用いればよいが、バルク磁石46の表面周辺において100Oe未満の低バイアス磁界とするためにはバルク磁石46自身の着磁を弱める必要があり、バルク磁石46単体での実現は困難である。
感磁素子42の感磁方向に対して磁極方向が平行もしくはねじれの位置もしくは交差となるように配置することができる。上記各実施例では簡単のため平行となるように配置しているが、図4に示すように交差していてもバイアス磁界を印加できる。
また、ねじれの位置に配置することにより、実装段階で感磁素子42に対する磁極方向の角度を調整してバイアス磁界強度を仕様の値に調整することが可能になるため、個体差の少ない安定した低バイアス磁界の印加が可能になる。
本発明に基づく磁気検出装置から出力信号を取り出すのにあたり、図14に示すような各種のブリッジ回路を用いることができる。
(A)は1つの感磁素子42(磁気検出素子)とその他3つの固定抵抗R1〜R3によりブリッジ回路を構成したものである。この回路によれば、出力信号の小さな低磁界を測定する場合に、感磁素子の温度などに起因する熱ノイズやドリフトの影響が生じるという問題がある。
(B)は同一方向に配置それた測定用の感磁素子42aと参照用の感磁素子42bとその他2つの固定抵抗R1、R2によりブリッジ回路を構成したものである。この回路によれば、2つの感磁素子42a、42bを共にブリッジ回路の電源側もしくはグラウンド端子側に接続することにより、感磁素子42の温度などに起因する熱ノイズやドリフトの影響についてはキャンセルできるが、参照用の感磁素子42bに対して低感磁化もしくは磁気シールドを行う必要がある。また、感磁素子42を2個使用しているにも拘わらず、測定感度は1個の感磁素子42を使用した時と同じである。
(C)は同一方向に配置された2つの感磁素子42a、42bをブリッジ回路の対辺に配置し、その他2つの固定抵抗R1、R2によりブリッジ回路を構成したものである。この回路によれば、2つの感磁素子42a、42bに同方向のバイアス磁界を印加すれば、感度を約2倍にすることが可能になるが、感磁素子42a、42bの温度などに起因する熱ノイズやドリフトの影響も約2倍となり、環境変動に対して弱くなってしまう。
そこで、本発明では、(D)に示すように、同一方向に配置された2つの感磁素子42a、42bを共にブリッジ回路の電源側もしくはグラウンド端子側に配置し、その他2つの固定抵抗R1、R2によりブリッジ回路を構成するとともに、各感磁素子42a、42bに対するバイアス磁界印加方向が互いに逆方向となるように磁気検出装置内の第1および第2のバルク磁石46a、46bの磁極方向を互いに逆方向に配置している。
(D)に示すように構成することにより、感磁素子42a、42bの温度などに起因する熱ノイズやドリフトの影響をキャンセルできるとともに、ブリッジ回路の出力を約2倍に増大することができ、SNRを改善できる。
図15および図16は図14(D)のブリッジ回路を適用するのに好適な磁気検出装置の具体例を示す構成説明図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図16は図15の構成に非磁性スペーサ47を追加したものであり、ここでは図15の構成について説明する。
図15において、共通の基板41の上面には2つの感磁素子42a、42bが同一の感磁方向となるように平行に配置されていて、その両端にはそれぞれ配線パッド43a、44a、43b、44bが設けられている。他方の面(下面)にはコの字形に成形された軟磁性構造体45の連結部45aが固着されている。そして、軟磁性構造体45の開口部45bには、バルク磁石46a、46bの両磁極面の一部が嵌め合わされている。これら嵌め合わされたバルク磁石46a、46bは、それぞれの磁極方向が感磁方向に対して平行で、2つの感磁素子42a、42bに対するバイアス磁界印加方向が互いに逆方向となるような位置関係に設定されている。
図17および図18は厚さ0.5mmの共通の基板上に設けられた2つの感磁素子に対するバイアス磁界の測定例図であって、図17は非磁性スペーサが無い場合の特性例を示し、図18は非磁性スペーサが有る場合の特性例を示している。これらの測定にあたっては、高さx=0.8mm、幅y=1.0mmの軟磁性構造体とバルク磁石を用い、バイアス磁界印加方向が互いに逆方向になるようにバルク磁石の磁極方向を互いに逆方向に配置した。なお、感磁素子としてナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなるトンネル磁気抵抗素子を用い、非磁性スペーサとして厚さ0.5mmの石英板を用いた。
図17において、特性Aは感磁方向に対して逆方向のバイアス磁界を示し、特性Bは感磁方向に対して順方向のバイアス磁界を示している。非磁性スペーサが無い場合では、感磁素子にそれぞれ±4.18Oeのバイアス磁界が印加されていた。
図18において、特性Aは感磁素子単体のバイアス磁界を示し、特性Bは感磁素子とバルク磁石と軟磁性構造体を組み合わせた場合のバイアス磁界を示し、特性Cは感磁素子とバルク磁石と軟磁性構造体と非磁性スペーサを組み合わせた場合のバイアス磁界を示している。非磁性スペーサが有る場合では、感磁素子にそれぞれ±1.04Oeのバイアス磁界が印加されていた。非磁性スペーサにより、感磁素子との距離が離れるためバイアス磁界は小さくなるが、それぞれの感磁素子に対して互いに逆方向となるようなバイアス磁界を印加することが可能であることが分かる。
また、図18に示すように、非磁性スペーサを用いた場合は、計測対象となる磁束のほとんどが感磁素子を通過するため、本来の計測対象磁界による抵抗変化率と同等である。 したがって、本発明の構成を用いれば、計測対象磁界の一部が軟磁性構造体へ迂回することは無く、出力信号の劣化の無い安定した磁界計測が可能となる。
図19は、本発明に基づく磁気検出装置を用いた異物検出システムの具体例を示すブロック図であり、リチウムイオン二次電池の電極やセパレータなどとして用いられるシート材における金属異物の混入有無を検出するものである。
図19(A)において、交流電流源51でコイル52を交流駆動し、検査対象物であるシート材53に対して交流磁界を印加する。シート材53に金属異物54が混入していると、金属異物54の内部に渦電流が発生し、この渦電流による微小磁界が発生する。本発明に基づく磁気検出装置55は、この渦電流に基づいて発生する微小磁界を、ブリッジ回路56を介して(B)に示すような出力電圧Voutとして検出する。
以上説明したように、本発明によれば、比較的小型で、低消費電力で、高いSNR(信号対雑音比)を保ちながら環境変動に対して安定した磁気測定出力信号が得られる磁気検出装置を実現することができ、たとえばシート材における金属異物の混入有無を検出する異物検出システムのセンサとして好適である。