JP2014129259A - 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 - Google Patents

2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014129259A
JP2014129259A JP2012286747A JP2012286747A JP2014129259A JP 2014129259 A JP2014129259 A JP 2014129259A JP 2012286747 A JP2012286747 A JP 2012286747A JP 2012286747 A JP2012286747 A JP 2012286747A JP 2014129259 A JP2014129259 A JP 2014129259A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reactor
raw material
temperature
material composition
mixture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2012286747A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaru Takeuchi
優 竹内
Shoji Furuta
昇二 古田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Priority to JP2012286747A priority Critical patent/JP2014129259A/ja
Publication of JP2014129259A publication Critical patent/JP2014129259A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

【課題】熱分解を伴う反応で、新冷媒として有用なHFO−1234yfを十分に高い収率で製造する経済的に有利な方法を提供する。
【解決手段】
R22とTFEを含む第1の原料組成物と、R40および/またはR50を含む第2の原料組成物を用いて、熱分解を伴う反応によりHFO−1234yfを製造する方法であって、(a)第1の反応器内に第1の原料組成物と第1の熱媒体とを供給して接触させ、第1の原料組成物を0〜850℃にして第1の混合物を得る工程と、(b)第2の反応器内に第2の原料組成物と第2の熱媒体とを供給して接触させ、第2の原料組成物を600〜900℃にして第2の混合物を得る工程と、(c)第3の反応器内に、(a)工程で得られた第1の混合物と(b)工程で得られた第2の混合物とを供給して接触させる工程、とを有する製造方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に係り、特に、クロロジフルオロメタンとテトラフルオロエチレンと、クロロメタンおよび/またはメタンを含む原料組成物から、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法に関する。
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)は、温室効果ガスである1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)に代わる新しい冷媒として、近年大きな期待が寄せられている。なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。
このようなHFO−1234yfの製造方法としては、例えば、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)を相間移動触媒の存在下にアルカリ水溶液で脱フッ化水素させて得られる1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)を合成原料とし、水素により還元して製造する方法が知られている。
しかし、このような方法では、多段階の反応を経るため設備コストが高くなる、中間生成物や最終生成物における蒸留・精製が難しい、などの問題があった。そのような問題を解決するため、クロロカーボン類を含む原料から、熱分解を伴う1回の反応でHFO−1234yfを製造する方法が提案されている。
特許文献1には、クロロメタン(R40)とクロロジフルオロメタン(R22)とを組み合わせて、水蒸気の共存下に845±5℃に加熱し、脱塩化水素・縮合させて、1,1−ジフルオロエチレン(VdF)を主生成物として生成する方法が記載されており、その際に、副生物としてHFO−1234yfのようなフッ素含有オレフィン類が生成したことが提示されている。
また、特許文献2には、R40と、テトラフルオロエチレン(TFE)またはR22の混合物を、反応器内で電気ヒータのような通常の加熱手段により700〜950℃の温度に加熱・分解して、HFO−1234yfを得る方法が提示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された方法においては、VdFを目的物質として反応条件等を設定しているため、VdFは高収率で得られるものの、HFO−1234yfを効率よく製造する方法ではない。
また、特許文献2に示された方法では、滞留時間の増加に伴って高沸物の生成や原料のカーボン化が起こり、反応器が閉塞するおそれがあり、また、副生する酸分の影響から、特殊な耐腐食装置(例えば、プラチナでライニングされた反応管等)が必要であり、工業的な製造を考えた場合、現実的な方法とはいえなかった。
さらに、特許文献1および特許文献2に示された方法ではいずれも、1回の反応でHFO−1234yfが生成するものの、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のようなHFO−1234yfとの蒸留分離が難しい副生物の生成量が多くなり、高純度のHFO−1234yfを十分に高い収率で得ることができなかった。
特公昭40−2132号公報(実施例4) 米国特許第2931840号明細書
本発明は、前記観点からなされたものであり、調達の容易な原料を使用し、熱分解を伴う反応で、新冷媒として有用なHFO−1234yfを十分に高い収率で製造する経済的に有利な方法を提供することを目的とする。また、HFO−1234yfとの蒸留分離が難しい副生物であるCTFEの生成を抑えることで、複雑な精製操作を経ることなく高純度のHFO−1234yfが得られる方法を提供することを目的とする。
本発明は、クロロジフルオロメタン(R22)とテトラフルオロエチレン(TFE)を含む第1の原料組成物と、クロロメタン(R40)および/またはメタン(R50)を含む第2の原料組成物を用いて、熱分解を伴う合成反応により2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を製造する方法であって、
(a)第1の反応器内に前記第1の原料組成物と第1の熱媒体とを供給して接触させ、前記第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にして、第1の混合物を得る工程と、
(b)第2の反応器内に前記第2の原料組成物と第2の熱媒体とを供給して接触させ、前記第2の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にして、第2の混合物を得る工程と、
(c)第3の反応器内に、前記(a)工程で得られた第1の混合物と、前記(b)工程で得られた第2の混合物とを供給して接触させる工程と
を有することを特徴とするHFO−1234yfの製造方法を提供する。
本発明において、「第1の混合物」とは、(a)工程で第1の原料組成物の反応により得られ、第1の反応器内に存在する全成分の混合物をいい、具体的には、第1の原料組成物の反応により生成した化学種(後述する中間活性種1,2を含む。)と、未反応の原料成分、および第1の熱媒体の混合物をいう。また、「第2の混合物」とは、(b)工程で第2の原料組成物の反応により得られ、第2の反応器内に存在する全成分の混合物をいい、具体的には、第2の原料組成物の反応により生成した化学種(後述する中間活性種3を含む。)と、未反応の原料成分、および第2の熱媒体の混合物をいう。第1の混合物および第2の混合物については、以下でさらに詳しく説明する。
本発明の製造方法によれば、調達が容易なR22とTFE、およびR40とR50の少なくとも一方を原料とし、これらの原料を、フッ素原子を含む化合物と、フッ素原子を含まない化合物の2つのグループに分け、それぞれのグループ毎に最適な温度条件下で所望の中間活性種を発生させた後、これらの中間活性種を反応系から取り出すことなく接触させて反応させることにより、工業的に有用なHFO−1234yfを十分に高い収率で製造することができる。したがって、例えば、HCFC−225caを原料としてCFO−1214yaを経由してHFO−1234yfを製造する方法に比べて、原料および製造設備に要するコストを大幅に低減することができる。
また、本発明の製造方法によれば、CTFEのような、HFO−1234yfとの蒸留分離が難しい副生物の生成が抑えられるので、高純度のHFO−1234yfを得ることができる。
さらに、熱媒体の存在下に反応を行わせることで高沸点物の生成を大きく抑制することができ、製造(反応)条件の制御が容易であり、よって定量的なHFO−1234yfの製造が可能となり経済的なメリットが大きい。具体的には、R22とTFEと、R40および/またはR50を原料とする熱分解を伴う合成反応において、反応生成物中に占めるHFO−1234yfの割合を、反応生成物においてその含有割合が高くなりがちなVdFとの相対関係において、一定値以上とできる点で経済的に有利である。またさらに、副生物のリサイクルも可能であり、経済的な効果が大きい。
本発明の製造方法に使用する反応装置の一例を示す図である。 例5に使用する反応装置の一例を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、R22とTFEを含む第1の原料組成物と、R40および/またはR50を含む第2の原料組成物を用いて、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfを製造する方法を提供する。そして、この製造方法は、以下に詳述するように、
(a)第1の反応器内に前記第1の原料組成物と第1の熱媒体とを供給して接触させ、第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にして、第1の混合物を得る工程と、
(b)第2の反応器内に前記第2の原料組成物と第2の熱媒体とを供給して接触させ、第2の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にして、第2の混合物を得る工程と、
(c)前記(a)工程で得られた第1の混合物と、前記(b)工程で得られた第2の混合物とを、第3の反応器内に供給して接触させる工程とを有する。
以下に、下記式(1)を参照しながら、本発明の製造方法が対象とする、R22とTFEと、R40および/またはR50を原料として、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfを合成する反応系について説明する。
Figure 2014129259
式(1)中、枠Aで囲まれた部分には、R22とTFEの熱分解等により生成する化学種が示される。すなわち、加熱によりR22からは、R22が脱塩化水素したジフルオロカルベン(中間活性種1)が生成し、該中間活性種1のホモカップリングによりTFEが生成する。また、TFEからは、加熱によりフッ素の転移が起こることにより、トリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)が生成すると想定される。
一方、式(1)中、枠Bで囲まれた部分には、R40および/またはR50の熱分解反応により生成する化学種が示される。R40およびR50は、それぞれ加熱により塩素および水素がラジカル的に切断され、いずれもメチルラジカル(中間活性種3)を生成すると考えられる。
そして、R22およびTFEから生成するトリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)およびジフルオロカルベン(中間活性種1)と、R40および/またはR50から生成するメチルラジカル(中間活性種3)とがそれぞれ結合して、中間活性種4および中間活性種5を生成し、これらの中間活性種(中間活性種4および中間活性種5)が脱水素ラジカル反応して、HFO−1234yfおよびVdFが生成すると考えられる。前記式(1)において、経路AはHFO−1234yfを生成する反応経路を、経路BはVdFを生成する反応経路を示す。
ここで、HFO−1234yfを生成する経路Aと、VdFを生成する経路Bは競合しており、経路Aを優先的に進行させることで、前記式(1)に示される反応系においてHFO−1234yfを効率よく製造することが可能となる。
通常、このような熱分解反応は、原料すなわち、R22およびTFEと、R40および/またはR50が一つの反応器に供給されて、上に説明した各反応がほぼ同時進行して行われる。したがって、式(1)に示す反応系の中で、反応条件を変更して、経路Bに比して経路Aを優先的に行わせるにも限界がある。特に温度条件に関しては、原料成分全体を一つの反応器に供給したのでは、個々の反応の温度をそれぞれに最適な温度に設定することが困難である。
そこで、本発明の製造方法においては、前記式(1)における枠A内の反応を、(a)工程において第1の熱媒体を利用して第1の反応器内で行い、同様に枠B内の反応を、(b)工程において第2の熱媒体を利用して第2の反応器内で行い、さらに、(c)工程において、(a)工程で第1の反応器内に得られた全成分(第1の熱媒体を含む。)を、第1の混合物として第3の反応器内に供給するとともに、(b)工程で第2の反応器内に得られた全成分(第2の熱媒体を含む。)を、第2の混合物として第3の反応器内に供給して、第3の反応器内で式(1)全体を示す枠C内での反応を行わせることとした。そして、(a)工程および(b)工程における温度条件を、それぞれの工程の反応に最適な温度、すなわち前記に示す温度範囲とすることで、(c)工程において、経路AによるHFO−1234yfの生成を、経路BによるVdFの生成に優先させて行うことを可能としたものである。
本発明の製造方法は、連続式の製造方法であっても、バッチ式の製造方法であってもよい。連続式の製造方法においては、(a)工程におけるR22とTFEを含む第1の原料組成物の第1の反応器への供給と、第1の熱媒体の第1の反応器への供給は、第1の原料組成物の温度を前記第1の温度の範囲内にできる条件で、それぞれ同時にかつ連続的に行われる。そして、このような(a)工程と、(a)工程において第1の反応器内で得られた第1の混合物の第3の反応器への供給も、連続的に行われる。また(b)工程において、R40および/またはR50を含む第2の原料組成物の第2の反応器への供給と、第2の熱媒体の第2の反応器への供給は、第2の原料組成物の温度を前記第2の温度の範囲内にできる条件で、それぞれ同時にかつ連続的に行われ、このような(b)工程と、(b)工程において第2の反応器内で得られた第2の混合物の第3の反応器への供給も、連続的に行われる。
バッチ式の製造方法において、(a)工程における第1の原料組成物の供給と第1の熱媒体の供給とは、どちらが先であっても、あるいは同時であってもよい。すなわち、第1の原料組成物と第1の熱媒体のいずれか一方の供給の際に、他方が第1の反応器内に供給されていない場合でも、先に供給された第1の原料組成物または第1の熱媒体が第1の反応器内に滞留中に、後から供給される成分が供給され、第1の原料組成物と第1の熱媒体とが第1の反応器内で接触して、第1の原料組成物の温度が前記第1の温度の範囲内になればよい。また、同様に、(b)工程における第2の原料組成物の供給と第2の熱媒体の供給とは、第2の原料組成物と第2の熱媒体とが第2の反応器内で接触して、第2の原料組成物の温度が前記第2の温度の範囲内になれば、どちらが先であってもあるいは同時であってもよい。
さらに、バッチ式の製造方法では、(c)工程において、前記(a)工程で得られた第1の混合物の第3の反応器への供給と、前記(b)工程で得られた第2の混合物の第3の反応器への供給とは、どちらが先であっても、あるいは同時であってもよい。すなわち、第1の混合物と第2の混合物のいずれか一方の供給の際に、他方が第3の反応器内に供給されていない場合でも、先に供給された第1の混合物または第2の混合物が第3の反応器内に滞留中に、後から供給される混合物が供給され、第1の混合物と第2の混合物とが第3の反応器内に所定の時間滞留すればよい。
本発明の製造方法は、製造効率の点で連続式の方法であることが好ましい。以下、本発明の方法を連続式の製造に適用する実施形態について説明するが、これに限定されない。
<(a)工程>
本発明の(a)工程においては、R22とTFEを含む第1の原料組成物を、第1の反応器に供給するとともに、第1の熱媒体をこの第1の反応器に供給する。そして、第1の反応器内で第1の熱媒体を前記第1の原料組成物と接触させて、第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にする。この(a)工程において、前記(1)式の枠Aに囲まれた反応が、第1の反応器内でその他の反応とは分離して行われる。以下、枠Aに囲まれた反応を、必要に応じて(a)工程の反応という。なお、第1の温度は、0〜800℃の範囲が好ましく、0〜750℃の範囲がさらに好ましく、100〜750℃の範囲が特に好ましい。
R22とTFEを含む第1の原料組成物は、第1の反応器内で第1の熱媒体と接触して前記範囲の第1の温度に加熱・保持される。そして、熱分解、脱塩化水素反応およびフッ素転移により生成されるジフルオロカルベン(中間活性種1)とトリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)、未反応原料であるR22、および未反応原料であり、R22の熱分解、脱塩化水素反応により生成される化合物でもあるTFEを含む第1の反応生成物を生成すると考えられる。なお、この第1の反応生成物と第1の熱媒体との混合物が、(a)工程で得られる第1の混合物となる。
(a)工程で得られる第1の混合物においては、ジフルオロカルベン(中間活性種1)に比べてトリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)の存在割合が高いことが好ましい。それにより、次の(c)工程において前記(1)式中の経路Aの反応が経路Bの反応に優先して進行して、HFO−1234yfを効率的に製造できる。第1の混合物において、トリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)の存在割合を高めるための具体的な方法、条件等については、以下に説明する。
(第1の原料組成物)
(a)工程に用いる第1の原料組成物は、R22とTFEを含有する。第1の原料組成物は、R22とTFE以外に、第1の反応器内で第1の熱媒体との接触により分解してジフルオロカルベン(中間活性種1)やトリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)を発生し得る化合物、例えば、ヘキサフルオロプロペン(以下、HFPという。)、トリフルオロエチレン、オクタフルオロシクロブタン(以下、RC318という。)、ヘキサフルオロプロペンオキサイド等を含有することができる。
第1の原料組成物に含有される、このような熱分解してジフルオロカルベン等を発生しうる含フッ素化合物からも、(a)工程の反応においてTFEを経由してトリフルオロメチルフルオロカルベン(中間活性種2)が生成される。また、前記含フッ素化合物には、熱分解により直接トリフルオロメチルフルオロカルベンを発生するものもあり、(a)工程で該熱分解反応が生起すれば、トリフルオロメチルフルオロカルベンが生成される。そして、得られたトリフルオロメチルフルオロカルベンが、後述する(c)工程で、(b)工程で生成されたメチルラジカル(中間活性種3)と反応し、最終的にHFO−1234yfが生成される。
第1の原料組成物に、このような反応器内で熱分解してジフルオロカルベンやトリフルオロメチルフルオロカルベンを発生しうる含フッ素化合物(以下、カルベン源となる含フッ素化合物という。)を用いる場合、このようなカルベン源となる含フッ素化合物を新たに用意してもよいが、本発明の製造方法で熱分解反応により副生される含フッ素化合物、例えば、HFP、RC318、トリフルオロエチレン等から選ばれる1種または2種以上を用いることが、リサイクルの観点から好ましい。これらの中でも、RC318が特に好ましい。さらに、第1の混合物が含有するTFEを、R22とともに、(c)工程終了後に回収して第1の原料組成物に用いることが可能であり、リサイクルの観点から特に好ましい。
ここで、第1の原料組成物として、R22およびTFEに加えて、上記のようにリサイクルされるその他のカルベン源となる含フッ素化合物を用いた場合には、第1の原料組成物における、R22およびTFEと、その他のカルベン源となる含フッ素化合物との含有割合については、特に制限されない。また、(a)工程で得られる第1の混合物におけるジフルオロカルベンとトリフルオロメチルフルオロカルベンとの含有割合は、用いる含フッ素化合物の種類によらず、主として(a)工程が実行される第1の温度により制御されると考えられる。
(a)工程におけるTFEの供給量とR22の供給量とのモル比(以下、TFE/R22と示す。)は、0.01〜100の範囲とするのが好ましく、0.1〜10の範囲がより好ましい。なお、R22とTFEを含む第1の原料組成物と第1の熱媒体を、第1の反応器内を連続的に流通させて反応を行わせる本実施形態において、原料各成分および熱媒体の供給量は、単位時間当たりの供給量を示すものとする。(b)工程および(c)工程における各成分、熱媒体等の供給量についても同様である。
TFE/R22を0.01以上とすることで、後述する第1の滞留時間を短縮できるうえに、ジフルオロカルベンの生成を抑制し、トリフルオロメチルフルオロカルベンの生成を増大させることができる。そして、このようにジフルオロカルベンの生成を抑えてトリフルオロメチルフルオロカルベンの生成を高めることで、後述する(c)工程で、VdFやCTFE等の副生物の生成を抑制し、純度の高いHFO−1234yfを得ることができる。また、TFE/R22を100以下とすることで、より高い収率でHFO−1234yfを得ることができる。TFE/R22は、0.1〜3の範囲が特に好ましい。
第1の反応器に供給する第1の原料組成物のうちで、R22および前記カルベン源となる含フッ素化合物の温度は、反応性がある程度高いがカーボン化はしにくい温度とするという観点から、0〜600℃とするのが好ましい。より反応性を高めるという観点からは、R22およびカルベン源となる含フッ素化合物は、第1の反応器に導入する前に、常温(25℃)以上600℃以下に予熱(プレヒート)することが好ましく、100〜500℃に予熱(プレヒート)することがより好ましい。
また、第1の反応器に供給するTFEの温度は、反応性の観点から0〜600℃とするのが好ましい。より反応性を高めるという観点からは、TFEは、第1の反応器に導入する前に、常温(25℃)以上600℃以下に予熱(プレヒート)することが好ましく、100〜500℃に予熱(プレヒート)することがより好ましい。
ただし、第1の反応器に供給する前記各成分の温度はそれぞれ、前記第1の温度以下に設定される。
R22とTFE、さらに必要に応じて用いられる前記カルベン源となる含フッ素化合物の第1の反応器への供給は、別々であってもよいし、2種以上の成分を混合してから供給してもよい。2種以上の成分を混合してから供給する場合には、予熱の効率の観点から、混合したものを所定の温度に予熱した後、供給することが好ましい。その場合の予熱温度についても、上記と同様の温度にすることが好ましい。
(第1の熱媒体)
(a)工程においては、第1の反応器に供給された第1の熱媒体がこの反応器内で前記第1の原料組成物と接触して、第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にすることで、第1の反応生成物が得られる。
第1の反応器に供給される第1の熱媒体の温度は、第1の原料組成物と接触してから第3の反応器に供給されるまでの間、得られる第1の反応生成物と第1の熱媒体との混合物である第1の混合物を、第1の温度に保持できる温度である。したがって、第1の反応器に供給される第1の熱媒体の温度は、必ずしも前記第1の温度と同じである必要はなく、第1の原料組成物の温度等に合わせて適宜調整される。
第1の熱媒体は、前記第1の温度で熱分解が生じないことはもとより、(c)工程で接触する、(b)工程で得られる第2の混合物の温度、具体的には後述する第2の温度、または、(c)工程において反応が行われる温度が第1の温度および第2の温度より高い温度である場合には、該温度で熱分解が生じない媒体であり、具体的には200〜1300℃の温度で熱分解しない媒体であるのが好ましい。第1の熱媒体としては、水蒸気、窒素、二酸化炭素から選ばれる1種または2種以上の気体が挙げられ、水蒸気を50体積%以上含み、残部が窒素および/または二酸化炭素である気体の使用が好ましい。前記(a)工程の反応において生成するHClを塩酸にして除くために、第1の熱媒体における水蒸気の含有割合は50体積%以上が好ましく、実質的に水蒸気のみ(100体積%)からなる気体の使用が特に好ましい。
第1の熱媒体の供給量は、この熱媒体と第1の原料組成物の供給量の合計に対して20〜98体積%の割合が好ましく、50〜95体積%がより好ましい。第1の熱媒体の供給量の割合を20体積%以上とすることで、高沸物の生成や原料のカーボン化を抑制しながら(a)工程の反応を進行させることができる。すなわち、R22からジフルオロカルベンおよびTFEを経てトリフルオロメチルフルオロカルベンを生成する反応を、効率よくかつ安定して実行できる。また、(a)工程の反応において、ジフルオロカルベンとTFEの間の結合・分解反応、TFEとトリフルオロメチルフルオロカルベンのフッ素転移はいずれも可逆反応であり、平衡状態が安定化していることが好ましい。第1の熱媒体を20体積%以上とすることで、より均一な混合ガスとなり、(a)工程の反応後の該平衡状態も安定に維持されるので、後述する(c)工程における反応を十分に制御された状態で行うことができ、HFO−1234yfを高い収率で製造できる。また、第1の熱媒体の供給量の割合が98体積%を超えると、生産性が著しく低下するため、工業的に現実的でない。
このように第1の反応器に供給される第1の熱媒体と、前記第1の原料組成物とが接触してから、(c)工程で、(a)工程で得られた第1の混合物が第3の反応器に供給されるまでの時間(以下、第1の滞留時間という。)は、0.01〜10秒間とするのが好ましく、0.1〜3.0秒間とするのがより好ましい。第1の滞留時間を0.01〜10秒間とすることで、トリフルオロメチルフルオロカルベンの生成反応を十分に進行させることができる。なお、この第1の滞留時間は、第1の原料組成物の第1の反応器への供給量(流量)を調節することで制御できる。
(第1の反応器)
第1の反応器としては、後述する反応器内温度および圧力に耐えるものであれば、特に形状は限定されず、例えば、円筒状の縦型反応器が挙げられる。第1の反応器の材質としては、ガラス、鉄、ニッケル、または鉄、ニッケルを主成分とする合金等が挙げられる。
(a)工程における第1の反応器内の温度は、この反応器内で前記第1の混合物を0〜850℃の範囲の第1の温度に保持できる温度(以下、第1の器内温度)とする。このような第1の器内温度は、前記第1の温度でもある。すなわち、第1の反応器内の温度を0〜850℃の範囲の第1の器内温度とすることで、第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にして、第1の反応生成物を得ることができる。
第1の反応器内の温度は、第1の反応器に供給される前記第1の熱媒体の温度および圧力を調整することで制御することができる。このような第1の反応器内の温度が、前記第1の器内温度となるように、電気ヒータ等により第1の反応器内を補助的に加熱することもできる。なお、前記第1の器内温度は、0〜800℃の範囲が好ましく、0〜750℃の範囲がさらに好ましく、100〜750℃の範囲が特に好ましい。
第1の反応器内の温度を前記第1の器内温度とすることで、前記(a)工程の反応において、R22からジフルオロカルベンを経て生成されるTFEを十分に高い収率で製造できる。そして、得られる第1の混合物におけるジフルオロカルベンとTFEとトリフルオロメチルフルオロカルベンの3者の平衡状態において、トリフルオロメチルフルオロカルベンの存在割合を高く維持することが可能となる。こうして前記(a)工程の反応において得られる第1の混合物におけるトリフルオロメチルフルオロカルベンの存在割合を高くすることができるので、次の(c)工程において、VdFに比べてHFO−1234yfを高収率で生成できる。
第1の反応器内の圧力は、ゲージ圧で0〜2MPaとすることが好ましく、0〜0.5MPaの範囲がさらに好ましい。
<(b)工程>
本発明の(b)工程においては、R40とR50の少なくとも一方を含む第2の原料組成物を、第2の反応器に供給するとともに、第2の熱媒体をこの第2の反応器に供給する。そして、第2の反応器内で第2の熱媒体を前記第2の原料組成物と接触させて、第2の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にする。この(b)工程において、前記(1)式の枠Bに囲まれた反応が、第2の反応器内で分離して行われる。以下、枠Bに囲まれた反応を、必要に応じて(b)工程の反応という。
第2の温度は、700〜900℃の範囲が好ましく,760〜900℃の範囲がさらに好ましい。なお、この第2の温度は、前記(a)工程での第1の原料組成物の温度である第1の温度より高いことが好ましい。
R40および/またはR50を含む第2の原料組成物は、第2の反応器内で第2の熱媒体との接触により、600〜900℃の範囲の第2の温度に加熱・保持される。そして、R40および/またはR50の熱分解、脱塩素反応または脱水素反応により生成されるメチルラジカル(中間活性種3)、および未反応原料であるR40および/またはR50を含む第2の反応生成物を生成すると考えられる。なお、この第2の反応生成物と第2の熱媒体との混合物が、(b)工程で得られる第2の混合物となる。
(第2の原料組成物)
(b)工程に用いる第2の原料組成物は、R40とR50の少なくとも一方を含み、R40の単独使用、R50の単独使用、もしくはR40とR50との混合物の使用の各態様を有する。
(b)工程におけるR40および/またはR50の供給量と、前記(a)工程におけるR22とTFEの供給量の合計とのモル比(以下、(R40+R50)/(R22+TFE)と示す。)は、0.01〜100の範囲が好ましい。0.1〜10の範囲がより好ましく、0.1〜3の範囲が特に好ましい。R40/(R22+TFE)を0.01〜100とすることで、R40および/またはR50の転化率を上げ、HFO−1234yfを高い収率で製造することができる。
第2の反応器に供給するR40および/またはR50の温度は、反応性の観点から0〜1200℃とするのが好ましい。より反応性を高めるという観点からは、R40および/またはR50を第2の反応器に導入する前に、常温(25℃)以上1200℃以下に予熱(プレヒート)するのが好ましく、100〜800℃に予熱するのがより好ましい。ただし、第2の反応器に供給する前記各成分の温度はそれぞれ、前記第2の温度以下に設定される。また、R40とR50をともに使用する場合、これらの第2の反応器への供給は、別々であってもよいし混合してから供給してもよい。
(第2の熱媒体)
(b)工程においては、第2の反応器に供給された第2の熱媒体がこの反応器内で前記第2の原料組成物と接触して、第2の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にすることで、第2の反応生成物が得られる。
第2の反応器に供給される第2の熱媒体の温度は、第2の原料組成物と接触してから第3の反応器に供給されるまでの間、得られる第2の反応生成物と第2の熱媒体との混合物である第2の混合物を、第2の温度に保持できる温度である。したがって、第2の反応器に供給される第2の熱媒体の温度は、必ずしも前記第2の温度と同じである必要はなく、第2の原料組成物の温度等に合わせて適宜調整される。
第2の熱媒体は、前記第2の温度で熱分解が生じないことはもとより、(c)工程で接触する、(a)工程で得られる第1の混合物の温度、具体的には前記した第1の温度、または、(c)工程において反応が行われる温度が第1の温度および第2の温度より高い温度である場合には、該温度で熱分解が生じない媒体であり、具体的には200〜1300℃の温度で熱分解しない媒体であるのが好ましい。第2の熱媒体としては、上記第1の熱媒体と同様な気体が挙げられる。実質的に水蒸気のみ(100体積%)からなる気体の使用が特に好ましい。また、第1の熱媒体と第2の熱媒体とは、供給温度のみが異なる同種の気体であることが好ましい。
第2の反応器への第2の熱媒体の供給量は、この熱媒体と第2の原料組成物の供給量の合計に対して20〜98体積%の割合が好ましく、50〜95体積%がより好ましい。第2の熱媒体の供給量の割合を20体積%以上とすることで、高沸物の生成や原料のカーボン化を抑制しながら(b)工程の反応を進行させてメチルラジカルを安定して生成することができる。そして、これにより(c)工程における反応を十分に制御された状態で行うことができ、HFO−1234yfを効率よく製造できる。また、第2の熱媒体の供給量の割合が98体積%を超えると、生産性が著しく低下するため、工業的に現実的でない。
このように第2の反応器に供給される第2の熱媒体と、前記第2の原料組成物とが接触してから、(c)工程で、(b)工程で得られた第2の混合物が第3の反応器に供給されるまでの時間(以下、第2の滞留時間という。)は、0.001〜10秒間とするのが好ましく、0.05〜3.0秒間とするのがより好ましい。第2の滞留時間を0.001〜10秒間とすることで、メチルラジカルの生成反応を十分に進行させることができる。なお、第2の滞留時間は、第2の原料組成物の第2の反応器への供給量(流量)を調節することで制御できる。
(第2の反応器)
第2の反応器としては、後述する反応器内温度および圧力に耐えるものであれば、特に形状は限定されず、例えば、円筒状の縦型反応器が挙げられる。第2の反応器の材質としては、ガラス、鉄、ニッケル、または鉄、ニッケルを主成分とする合金等が挙げられる。
(b)工程における第2の反応器内の温度は、この反応器内で前記第2の混合物を600〜900℃の範囲の第2の温度に保持できる温度(以下、第2の器内温度)とする。このような第2の器内温度は、前記第2の温度でもある。すなわち、第2の反応器内の温度を600〜900℃の範囲の第2の器内温度とすることで、第1の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にして、第2の反応生成物を得ることができる。
第2の反応器内の温度は、第2の反応器に供給される前記第2の熱媒体の温度および圧力を調整することで制御することができる。このような第2の反応器内の温度が、前記第2の器内温度となるように、電気ヒータ等により第2の反応器内を補助的に加熱することもできる。なお、前記第2の器内温度は、700〜900℃の範囲が好ましく、760〜900℃の範囲がさらに好ましい。
第2の反応器内の温度を前記第2の器内温度とすることで、前記式(1)で示される反応系のうちの(b)工程の反応の反応率を高め、メチルラジカルを十分に高い収率で得ることができる。
第2の反応器内の圧力は、ゲージ圧で0〜2MPaとすることが好ましく、0〜0.5MPaの範囲がさらに好ましい。
<(c)工程>
本発明の(c)工程においては、前記(a)工程で得られた前記第1の混合物と前記(b)工程で得られた前記第2の混合物とを、第3の反応器に供給し、第3の反応器内で接触させて第3の温度とする。(c)工程においては、枠A内のトリフルオロメチルフルオロカルベンおよびジフルオロカルベンと、枠B内のメチルラジカルとが、それぞれ経路Aおよび経路Bで示されるように反応して、HFO−1234yfおよびVdFが生成する。
ここで、(a)工程で得られた第1の混合物は、式(1)における枠A内の化合物と中間活性種、すなわち、R22、TFE、ジフルオロカルベン、トリフルオロメチルフルオロカルベン、および第1の熱媒体を含み、前記したように、トリフルオロメチルフルオロカルベンの存在割合が高い状態で平衡となるように、第1の温度に調整された混合物である。なお、第1の原料組成物が、TFE以外のカルベン源となる含フッ素化合物を含む場合には、第1の混合物は、前記に加えて該含フッ素化合物自体やその熱分解生成物を含有するが、前記と同様に、第1の温度の範囲内でトリフルオロメチルフルオロカルベンの存在割合が高い状態で平衡となるように調整されている。
また、(b)工程で得られた第2の混合物は、式(1)における枠B内の化合物と中間活性種、すなわち、R40および/またはR50、メチルラジカル、および第2の熱媒体を含み、メチルラジカルが多く生成する条件の第2の温度に調整された混合物である。
本発明の製造方法においては、このようにして、それぞれに最適の温度条件に調整された混合物同士を、(c)工程において第3の反応器内で接触させることで、上記枠C内の経路Bによる反応に比して経路Aによる反応を優先的に生起させ、HFO−1234yfを効率よく生成することができる。なお、(a)工程で得られた第1の混合物と、(b)工程で得られた第2の混合物とは、それぞれの反応器内に存在するもの全てをそのまま第3の反応器に供給される。
(c)工程における第3の温度は、加温しない限りは、第3の反応器に供給される第1の温度に保持された第1の混合物と、第2の温度に保持された第2の混合物との供給量の割合により制御される。ここで、第3の反応器に供給される第1の混合物と第2の混合物の供給量の割合は、前記(R40+R50)/(R22+TFE)として好ましい範囲が規定されているため、第3の温度を制御するための自由度は小さい。第3の温度を制御するためには。例えば、第3の反応器に第3の熱媒体を供給する方法をとってもよく、また電気ヒータ等で第3の反応器内をさらに加熱する方法をとってもよい。
第3の温度は、反応性の観点から、600〜1200℃とすることが好ましく、600〜900℃の範囲がさらに好ましい。第3の温度を600〜1200℃とすることで、上記枠C内の経路Bによる反応に比して経路Aによる反応を優先的に生起することができ、それによりHFO−1234yfを効率よく生成できる。また、CTFEのような、HFO−1234yfとの蒸留分離が難しい副生物の生成が抑えられる。
(c)工程で、第1の混合物と第2の混合物が接触してから第3の反応器外から導出されるまでの時間、すなわち供給された第1の混合物と第2の混合物とが、第3の反応器内で接触してから、この反応器内に留まり、前記第3の温度に保持されている時間(以下、第3の滞留時間という。)は、0.01〜10秒間とするのが好ましく、0.2〜3.0秒間とするのがより好ましい。第3の滞留時間を0.01〜10秒間とすることで、経路Bによる反応に比して経路Aによる反応を優先的に生起させることができ、それによりHFO−1234yfを効率よく生成できる。
なお、前記第3の滞留時間は、第1の混合物および第2の混合物の第3の反応器への供給量(流量)を調節することで制御できる。
(第3の反応器)
第3の反応器としては、前記第3の温度および以下の圧力に耐えるものであれば、特に形状は限定されず、例えば、円筒状の縦型反応器が挙げられる。第3の反応器の材質としては、ガラス、鉄、ニッケル、または鉄、ニッケルを主成分とする合金等が挙げられる。
第3の反応器内の温度を制御する方法は上記のとおりである。第3の反応器内の温度を制御する方法としては、電気ヒータ等により加熱する方法が好ましい。
第3の反応器内の圧力は、ゲージ圧で0〜2MPaとすることが好ましく、0〜0.5MPaの範囲がさらに好ましい。
<反応装置>
本発明において、HFO−1234yfの製造に使用される反応装置の一例を、図1に示す。
この反応装置20は、いずれも電気ヒータ等の加熱手段を備えた第1の反応器1と第2の反応器2および第3の反応器3を備える。なお、これらの反応器における加熱手段の設置は必須ではない。
第1の反応器1には、R22とTFEを含む第1の原料組成物の供給ライン4と第1の水蒸気の供給ライン5が接続されており、第2の反応器2には、R40および/またはR50を含む第2の原料組成物の供給ライン6と第2の水蒸気の供給ライン7が接続されている。第1の原料組成物の供給ライン4および第2の原料組成物の供給ライン6には、それぞれ電気ヒータ等を備えた予熱器(プレヒータ)4a、6aが設置されており、供給される各原料組成物が所定の温度に予熱されてから第1の反応器1および第2の反応器2に供給される。また、第1の水蒸気の供給ライン5および第2の水蒸気の供給ライン7には、それぞれ過熱水蒸気発生器5a、7aが設置されており、過熱水蒸気と混合されることで、第1の水蒸気および第2の水蒸気の温度および圧力がそれぞれ所定の値に調整された後、供給される。なお、過熱水蒸気発生器5a、7aは、電気ヒータ等を備えた予熱器(プレヒータ)でもよい。また、第1の原料組成物の供給ライン4および第2の原料組成物の供給ライン6における予熱器(プレヒータ)4a、6aの設置は、必須ではない。
図1では、第1の反応器1に接続される第1の原料組成物の供給ライン4を1本とし、R22とTFEの混合物が予熱器4aを経て第1の反応器1に供給されるようにしているが、R22の供給ラインとTFEの供給ラインとを別々に設け、それぞれの供給ラインが別々に設置された予熱器を経て、第1の反応器1に接続されるようにしてもよい。また、必要に応じてカルベン源となる含フッ素化合物を用いる場合には、その供給ラインをさらに設け、それぞれの供給ラインが別々に設置された予熱器を経て、第1の反応器1に接続されるようにしてもよい。
また、第2の原料組成物がR40とR50の両方の原料成分を含有する場合、図1に示すように、第2の原料組成物の供給ライン6を1本とし、R40とR50の混合物が予熱器6aを経て第2の反応器2に供給されるようにしてもよいが、R40の供給ラインとR50の供給ラインとを別々に設け、それぞれの供給ラインが別々に設置された予熱器を経て、第2の反応器2に接続されるようにしてもよい。
第1の反応器1の出口には、第1の反応器1内で得られた第1の混合物の供給ライン8が接続されている。また、第2の反応器2の出口には、第2の反応器2内で得られた第2の混合物の供給ライン9が接続されている。第1の混合物の供給ライン8の他端部、および第2の混合物の供給ライン9の他端部は、いずれも第3の反応器3に接続されている。
第3の反応器3の出口には、熱交換器のような冷却手段10が設置された出口ライン11が接続されている。出口ライン11には、さらに、蒸気および酸性液回収槽12、アルカリ洗浄装置13および脱水塔14が順に設置されている。そして、脱水塔14により脱水された後、出口ガスの各成分がガスクロマトグラフィ(GC)のような分析装置により分析・定量されるようになっている。
<出口ガス成分>
本発明の製造方法においては、第3の反応器3からの出口ガスの成分として、HFO−1234yfを得ることができる。出口ガスに含有されるHFO−1234yfおよび未反応原料成分(R22、TFE、R40およびR50)以外の化合物としては、エチレン、HFP、CTFE、トリフルオロエチレン、RC318、VdF、3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CH:HFO−1243zf)等が挙げられる。
これら出口ガスに含有される成分のうちで、メチレン基(=CH)またはメチル基(−CH)を有する成分は、原料成分のR40またはR50に由来する化合物であり、フルオロ基(−F)を有する成分は、原料成分のR22および/またはTFEに由来する化合物である。すなわち、出口ガスに含有される成分のうち、エチレンは、原料成分のR40またはR50に由来する化合物であり、HFP、CTFE、トリフルオロエチレン、RC318は、いずれも原料成分のR22および/またはTFEに由来する化合物である。HFO−1234yfおよびVdF、さらにはHFO−1243zfは、R22および/またはTFEに由来する化合物であるとともに、R40および/またはR50に由来する化合物である。
出口ガスに含まれるHFO−1234yf以外の上記成分は、蒸留等の既知の手段により分離し、望まれる程度に除去することができる。そして、分離されたR22、TFE、R40やR50は、原料組成物の一部としてリサイクルが可能である。また、HFP、トリフルオロエチレンおよびRC318も、カルベン源となる含フッ素化合物であり、原料組成物の一部としてリサイクルが可能である。特に、RC318はカルベン源となる含フッ素化合物として好適である。VdFについては前記反応条件においてはほとんどカルベンを生成しないため、分離回収することが好ましい。CTFEは、前記反応条件のうちで、カルベン源としてHFO−1234yfに高い割合で転換されてそれ自体が反応系に残存する割合が少ない条件であれば、その条件下の反応においてリサイクル使用してもよい。
分離回収して得られるVdF等は、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデン、FEP(TFE−HFP共重合体)、VdF−HFP共重合体、PCTFE(CTFE重合体)、ECTFE(エチレン−CTFE共重合体)等のフッ素樹脂の原料として使用することもできる。
なお、副生物として出口ガスに含まれるCTFEは、沸点が近いためHFO−1234yfとの蒸留分離が難しいが、本実施形態ではHFO−1234yfの生成量に対するCTFEの副生量の割合が低いので、蒸留精製により純度の高いHFO−1234yfを得ることができる。
本発明の製造方法によれば、調達が容易なR22とTFE、およびR40とR50の少なくとも一方を原料として、地球温暖化係数(GWP)が4と小さい、新冷媒として有用なHFO−1234yfを高い収率で製造することができる。したがって、本発明の製造方法は、例えば、HCFC−225caを原料としてCFO−1214yaを経由してHFO−1234yfを製造する、多段階反応が必要な方法に比べて、原料および製造設備に要するコストを低減することができるばかりでなく、製造に必要なエネルギーを圧倒的に低減することができる。
また、本発明の製造方法によれば、R22およびTFEに由来する副生物のうちでも、沸点が近いことから非常に分離しにくい副生物の生成を抑制し、純度の高いHFO−1234yfを得ることができる。すなわち、R22およびTFE由来の副生物のなかでもCTFEは、沸点が−28℃とHFO−1234yfの沸点(−29℃)と極めて近いため、通常の分離精製技術(蒸留等)では分離・精製が困難であるが、本発明においては、HFO−1234yfの生成量に対するCTFEの生成量の割合を大幅に減少させることができ、より高い純度のHFO−1234yfを得ることができる。
具体的には、反応生成物におけるHFO−1234yfとCTFEの含有割合のモル比(以下、「HFO−1234yf/CTFE」と示す。)を、8.5以上とすることができる。HFO−1234yf/CTFEは、好ましくは9.0以上であり、さらに好ましくは10.0以上である。HFO−1234yf/CTFEの値が8.5以上であれば、HFO−1234yfの製造方法として経済的に優位性が高い。
さらに、本発明の製造方法では、原料成分の加熱・分解に熱媒体を用いているので、製造(反応)条件の制御、特に温度条件の制御が容易であり、高沸物の生成や原料のカーボン化による反応器の閉塞等のリスクがほとんどない。したがって、安定して定量的なHFO−1234yfの製造が可能となる。
さらに、原料組成物がR22とR40および/またはR50を含み、TFEを含まない場合も、熱媒体との接触により同様な熱分解・脱塩化水素反応が生起してHFO−1234yfが生成するが、TFEを含む原料組成物を使用する本発明においては、HFO−1234yf/CTFEがより大きく、高純度のHFO−1234yfを得ることができるうえに、原料成分が熱媒体とともに反応器(第1の反応器および第2の反応器)内に留まる時間を短縮でき、安全に原料のハンドリングを行うことができるという利点がある。また、反応生成物中に占めるHFO−1234yfの割合を、反応生成物においてその含有割合が高くなりがちなVdFとの相対関係において、一定値以上とできる点で経済的に有利である。
またさらに、本発明の製造方法は、原料成分であるR22とTFEとR40および/またはR50を、全て一つの反応器に供給し、この反応器内で熱媒体と所定の時間接触させる方法に比べて、HFO−1234yfの生成量を増大して、HFO−1234yfの選択率を高めることができるという利点がある。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。例1〜3は実施例であり、例4〜5は比較例である。
[例1]
図1に示す反応装置を用い、R22とTFEとからなる第1の原料ガス(以下、混合原料ガスという。)と、R40からなる第2の原料ガスを用いて、以下に示すようにして粗HFO−1234yfを得た。
(a)工程
炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、R22とTFEの混合原料ガスを連続的に導入し、300℃に予熱(プレヒート)した。プレヒートされた混合原料ガス(R22およびTFE)と、炉内温度600℃に設定した電気炉によって加熱された水蒸気とを、原料成分の供給量のモル比が、TFE/(TFE+R22)=30/100(=0.30)となり、かつガス供給量全体に対する水蒸気の供給量の割合が、体積%で、水蒸気/(R22+TFE+水蒸気)×100=90%となるようにして、内圧(ゲージ圧)0.042MPaで内温500℃に管理された第1の反応器(以下、反応器Aと示す。)に供給した。以下、圧力はいずれもゲージ圧とする。
反応器A内のガス(水蒸気および混合原料ガス(R22+TFE))の滞留時間が0.25秒間となるように、水蒸気および混合原料ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、反応器Aの出口ガス(第1の混合物)を内温750℃に管理された第3の反応器(以下、反応器Cと示す。)に導入した。第1の混合物の温度(第1の温度)は500℃であった。
(b)工程
炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、第2の原料ガスであるR40を連続的に導入し、300℃に予熱(プレヒート)した。プレヒートされたR40と、炉内温度800℃に設定した電気炉によって加熱された水蒸気とを、ガス供給量全体に対する水蒸気の供給量の割合が、体積%で、水蒸気/(R40+水蒸気)×100=90%となるようにして、内圧(ゲージ圧)0.042MPaで内温800℃に管理された第2の反応器(以下、反応器Bと示す。)に供給した。反応器B内のガス(水蒸気およびR40)の滞留時間が1.7秒間となるように、R40および水蒸気の流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、反応器Bの出口ガス(第2の混合物)を内温750℃に管理された反応器Cに導入した。第2の混合物の温度(第2の温度)は800℃であった。
(c)工程
反応器Cにおいて、前記反応器Aから供給された水蒸気を含む第1の混合物と前記反応器Bから供給された水蒸気を含む第2の混合物を接触させた。
ここで、反応器Bに供給したR40の供給量と反応器Aに供給したR22およびTFEの供給量の合計のモル比は、R40/(R22+TFE)=39.3/60.7=0.65であった。すなわち、R40とR22とTFEの各供給量のモル比は、R40/R22/TFE=39.3/42.5/18.2であった。
なお、反応器Cに供給されるガス全体の供給量に対する水蒸気の供給量、すなわち反応器AへのR22およびTFEの混合原料ガスの供給量と、反応器BへのR40の供給量との合計に対する、反応器Aおよび反応器Bへの水蒸気の供給量の合計の体積比は、水蒸気/(R40+R22+TFE)=90/10となる。すなわち、R40とR22とTFEと水蒸気の各供給量の体積比は、R40/R22/TFE/水蒸気=3.9/4.3/1.8/90となる。
また、R40の供給量と、R22とTFEの供給量の合計とのモル比は、前記したように0.65(R40/(R22+TFE)=39.3/60.7)であるが、原料組成物を構成する成分のうちで、フッ素を含む化合物としての働きの観点からは、TFEの1モルはR22の2モルに相当して2当量とカウントできるため、R40の供給量と、R22とTFEの供給量の合計との当量比は、以下の計算から0.5となる。
R40/(R22+TFE)=39.3/(42.5+18.2×2)=0.5
こうして、反応器C内での前記第1の混合物と前記第2の混合物の滞留時間がいずれも0.5秒間となるように、反応器Aおよび反応器Bに供給する混合原料ガスと水蒸気の流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、生成ガスを反応器Cの出口より取り出した。反応器C内の温度の実測値(第3の温度)は750℃であり、反応器C内の圧力の実測値は0.042MPaであった。なお、反応器Cの出口より取り出された出口ガスには、反応器C内の反応により生成または副生したガスの他に、未反応の原料ガスも含まれるが、以下の記載では出口ガスを生成ガスということもある。
次いで、反応器Cの出口より取り出した出口ガスを、100℃以下に冷却し、蒸気および酸性液の回収とアルカリ洗浄を順に行ってから脱水処理した後、ガスクロマトグラフィで分析して、出口ガスに含まれるガス成分のモル組成を計算した。これらの結果を、反応の条件とともに表1に示す。
なお、R40、R22およびTFEのプレヒート温度は、プレヒート用の各電気炉における設定温度であり、水蒸気温度は、水蒸気加熱用の電気炉における設定温度である。また、水蒸気圧力は設定圧力である。
また、ガスクロマトグラフィでの分析で得られた出口ガスのモル組成を基にして、R40の転化率(反応率)、R22およびTFEの転化率(反応率)、R22および/またはTFE由来の各成分の選択率、ならびにHFO−1234yf/CTFE比およびHFO−1234yf/VdF比をそれぞれ求めた。これらの結果を表1の下欄に示す。
なお、前記値は、それぞれ以下のことを意味するものである。
(R40転化率(反応率))
出口ガス中のR40由来成分(メチレン基またはメチル基を持つ成分)のうちで、R40の占める割合(R40回収率)がX%であるとき、(100−X)%をR40の転化率(反応率)という。反応したR40の割合(モル%)を意味する。
(R22およびTFEの転化率(反応率))
出口ガス中のフッ素を含む化合物であるR22および/またはTFEに由来する成分(フルオロ基を持つ成分)のうちで、R22および/またはTFEの占める割合(R22および/またはTFE回収率)がX%であるとき、(100−X)%をR22および/またはTFEの転化率(反応率)という。反応したR22および/またはTFEの割合(モル%)を意味する。
(R22および/またはTFE由来の各成分の選択率)
反応したR22および/またはTFEのうちで、R22以外の各成分として得られたのは各々何%かをいう。各成分の選択率は、「R22および/またはTFE由来の各成分の収率」/「R22および/またはTFEの転化率(反応率)」で求められる。なお、R22および/またはTFE由来の各成分の収率は、出口ガス中のR22および/またはTFE由来成分のうちのR22以外の各成分の占める割合(モル%)をいう。
なお、原料ガスとしてTFEを含む本発明の実施例では、TFEは反応(=転化)しているが、R22から生成もしているため、TFEだけの転化率(反応率)を求めることは不可能である。また、フルオロ基(−F)を有する生成物であるHFO−1234yfやVdFが、R22から生成したものであるか、TFEから生成したものであるかを求めることも不可能である。そのため、「原料のTFEは全てR22である」と仮定して、その原料R22が反応した割合を、R22および/またはTFEの転化率(反応率)としている。また、前記原料R22から各成分に何%転化しているかを求め、R22および/またはTFE由来の各成分の選択率としている。
(HFO−1234yf/CTFE比)
出口ガス中のCTFEに対するHFO−1234yfのモル比を算出した。出口ガス中にHFO−1234yfがCTFEに対してどのくらいの割合(モル比)で存在しているかを表す。
(HFO−1234yf/VdF比)
出口ガス中のVdFに対するHFO−1234yfのモル比を算出した。出口ガス中にHFO−1234yfがVdFに対してどのくらいの割合(モル比)で存在しているかを表す。
[例2]
TFEの供給量と、TFEとR22の供給量の合計とのモル比(TFE/(TFE+R22))を、例2では0.5(50%)とした。また、R40/(TFE+R22)の当量比が0.5になるように、R40/(TFE+R22)のモル比を、例2では0.75とした。それ以外は例1と同様な条件で反応を行なわせた。
次いで、反応器の出口より取り出した出口ガスを、100℃以下に冷却し、蒸気および酸性液回収とアルカリ洗浄を順に行ってから脱水処理した後、ガスクロマトグラフィで分析して、出口ガスに含まれるガス成分のモル組成を計算した。そして、得られた出口ガスのモル組成を基にして、R40の転化率(反応率)、R22および/またはTFEの転化率(反応率)、R22および/またはTFE由来の各成分の選択率、ならびにHFO−1234yf/CTFE比およびHFO−1234yf/VdF比をそれぞれ求めた。結果を表1の下欄に示す。
[例3]
R40の代わりにR50を使用した以外は、例2と同様な条件で反応を行わせた。次いで、反応器Cの出口より取り出したガスを、例1と同様に処理した後、同様に分析を行った。結果を表1の下欄に示す。
[例4]
TFEを使用せず、R22からなる第1の原料ガスとR40からなる第2の原料ガスを用いて、以下に示すようにして粗HFO−1234yfを得た。
炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、R22を連続的に導入して300℃にプレヒートした。プレヒートされたR22と、炉内温度600℃に設定した電気炉によって加熱された水蒸気とを、体積比で、水蒸気/R22=90/10となるようにして、内圧(ゲージ圧)0.042MPaで内温500℃に管理された反応器Aに供給した。反応器A内のガス(水蒸気およびR22)の滞留時間が0.25秒間となるように、水蒸気およびR22の流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、反応器Aの出口ガスである第1の混合物を内温750℃に管理された反応器Cに導入した。
また、炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、R40を連続的に導入し、300℃にプレヒートした。プレヒートされたR40と、炉内温度800℃に設定した電気炉によって加熱された水蒸気とを、供給量が体積比で、水蒸気/R40=90/10となるようにして、内圧(ゲージ圧)0.042MPaで内温800℃に管理された反応器Bに供給した。反応器B内のガス(水蒸気およびR40)の滞留時間が1.7秒間となるように、R40および水蒸気の流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、反応器Bの出口ガスである第2の混合物を内温750℃に管理された反応器Cに導入した。
ここで、反応器Bに供給したR40の供給量と反応器Aに供給したR22の供給量とのモル比は、R40/R22=33/67=0.50であった。
なお、反応器Cに供給される原料ガス全体の供給量に対する水蒸気の供給量、すなわち反応器AへのR22の供給量と反応器BへのR40の供給量との合計に対する、反応器Aおよび反応器Bへの水蒸気の供給量の合計の体積比は、水蒸気/(R40+R22)=90/10となる。すなわち、R40とR22と水蒸気の各供給量の体積比は、R40/R22/水蒸気=3.3/6.7/90となる。
こうして、反応器C内での第1の混合物と第2の混合物の滞留時間がいずれも1.0秒間となるように、反応器Aおよび反応器Bに供給する混合原料ガスと水蒸気の流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、生成ガスを反応器Cの出口より取り出した。反応器C内の温度の実測値は750℃であり、反応器C内の圧力の実測値は0.042MPaであった。
次いで、反応器Cの出口より取り出した出口ガスを、100℃以下に冷却し、蒸気および酸性液の回収とアルカリ洗浄を順に行ってから脱水処理した後、ガスクロマトグラフィで分析して、出口ガスに含まれるガス成分のモル組成を計算し、得られた出口ガスのモル組成を基にして、R40の転化率(反応率)、R22の転化率(反応率)、R22由来の各成分の選択率、ならびにHFO−1234yf/CTFE比およびHFO−1234yf/VdF比をそれぞれ求めた。これらの結果を表1の下欄に示す。
[例5]
図2に示す反応装置を用い、R22とR40とTFEとからなる原料組成物(以下、原料ガスともいう。)から、以下に示すようにして粗HFO−1234yfを得た。
ここで、図2に示す反応装置30は、電気ヒータ等の加熱手段を備えた一括反応器21を有し、この一括反応器21には、R40の供給ライン22、R22の供給ライン23、TFEの供給ライン24、および水蒸気の供給ライン25が接続されている。R40の供給ライン22、R22の供給ライン23およびTFEの供給ライン24には、それぞれ電気ヒータ等を備えた予熱器(プレヒータ)22a、23a、24aが設置されており、供給される各原料成分が所定の温度に予熱されてから一括反応器21に供給される。また、水蒸気の供給ライン25には、電気ヒータ等を備えた予熱器(プレヒータ)25aが設置されており、温度および圧力が調整された水蒸気が供給される。そして、一括反応器21の出口には、熱交換器のような冷却手段10が設置された出口ライン11が接続されている。出口ライン11には、さらに、蒸気および酸性液回収槽12、アルカリ洗浄装置13および脱水塔14が順に設置されている。そして、脱水塔14により脱水された後、出口ガスの各成分がガスクロマトグラフィ(GC)のような分析装置により分析・定量されるようになっている。
R40用予熱器22aである炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、R40を連続的に導入し、R40を300℃にプレヒートした。また、R22用予熱器23aである炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、R22を連続的に導入し、R22を300℃にプレヒートした。さらに、TFE用予熱器24aである炉内温度300℃に設定した電気炉内のステンレス製チューブに、TFEを連続的に導入し、TFEを300℃にプレヒートした。
プレヒートされたこれらの原料ガス成分(R40、R22およびTFE)と、水蒸気用予熱器25aである炉内温度800℃に設定した電気炉によって加熱された水蒸気とを、原料成分の供給量のモル比が、
TFE/(TFE+R22)=30/100(=0.30)、
R40/(R22+TFE)=39.3/60.7=0.65
となり、かつ水蒸気と原料組成物全体との供給量の体積比が、
水蒸気/(R40+R22+TFE)=90/10
(すなわち、R40/R22/TFE/水蒸気=3.9/4.3/1.8/90)
となるようにして、内圧(ゲージ圧)0.042MPaで内温800℃に管理された一括反応器21に供給した。
なお、一括反応器21に供給されるガス全体の供給量に対する水蒸気の供給量の体積比(以下、水蒸気の流量体積比という。)は、90/(10+90)=0.9(90%)となる。また、R40の供給量と、R22とTFEの供給量の合計とのモル比は、前記したように0.65(R40/(R22+TFE)=39.3/60.7)であるが、R40の供給量と、R22およびTFEの供給量の合計との当量比は、以下の計算から0.5となる。
R40/(R22+TFE)=39.3/(42.5+18.2×2)=0.5
こうして、一括反応器21内の原料ガスの滞留時間が0.5秒間となるように、原料ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を制御し、生成したガスを一括反応器21の出口より取り出した。一括反応器21内温度の実測値は800℃であり、一括反応器21内圧力の実測値は0.042MPaであった。
次いで、一括反応器21の出口より取り出した出口ガスを、100℃以下に冷却し、蒸気および酸性液の回収とアルカリ洗浄を順に行ってから脱水処理した後、ガスクロマトグラフィで分析して、出口ガスに含まれるガス成分のモル組成を計算し、得られた出口ガスのモル組成を基にして、R40の転化率(反応率)、R22およびTFEの転化率(反応率)、R22および/またはTFE由来の各成分の選択率、ならびにHFO−1234yf/CTFE比およびHFO−1234yf/VdF比とそれぞれ求めた。これらの結果を表1の下欄に示す。
Figure 2014129259
表1からわかるように、例1〜3では、R22とTFEとR40またはR50を原料とし、各原料成分を、フッ素原子を含む化合物であるR22およびTFEと、フッ素原子を含まない化合物であるR40またはR50との2つのグループに分け、それぞれのグループ毎に最適な温度条件下で所望の中間活性種を発生させた後、これらの中間活性種を反応系から取り出すことなく接触させて反応させることにより、HFO−1234yfを高い収率で製造することができた。
また、例1〜3では、R22および/またはTFEに由来する生成物のうちでも、HFO−1234yfと沸点が近いことから非常に分離しにくいCTFEの生成が、例4に比べて抑制されており、純度の高いHFO−1234yfを得ることができた。
さらに、例5に比べて、HFO−1234yf/VdF比が大きくなっており、HFO−1234yfが効率的に得られていることがわかる。
本発明の製造方法によれば、調達が容易なR22とTFEと、R40および/またはR50を原料とし、新冷媒として有用なHFO−1234yfを十分に高い収率で製造することができ、従来公知のHFO−1234yfを製造する方法に比べて、原料および製造設備に要するコストを低減することができる。また、CTFEのような、HFO−1234yfとの蒸留分離が難しい副生物の生成が抑えられ、高純度のHFO−1234yfを得ることができる。
1…第1の反応器(反応器A)、2…第2の反応器(反応器B)、3…第3の反応器(反応器C)、4…第1の原料組成物の供給ライン、5…第1の水蒸気の供給ライン、6…第2の原料組成物の供給ライン、7…第2の水蒸気の供給ライン、4a,6a…予熱器(プレヒータ)、5a,7a…過熱水蒸気発生器、8…第1の混合物の供給ライン、9…第2の混合物の供給ライン、10…冷却手段、11…出口ライン、12…蒸気および酸性液回収槽、13…アルカリ洗浄装置、14…脱水塔、20…反応装置。

Claims (20)

  1. クロロジフルオロメタンとテトラフルオロエチレンを含む第1の原料組成物と、クロロメタンおよび/またはメタンを含む第2の原料組成物を用いて、熱分解を伴う合成反応により2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法であって、
    (a)第1の反応器内に前記第1の原料組成物と第1の熱媒体とを供給して接触させ、前記第1の原料組成物を0〜850℃の範囲の第1の温度にして、第1の混合物を得る工程と、
    (b)第2の反応器内に前記第2の原料組成物と第2の熱媒体とを供給して接触させ、前記第2の原料組成物を600〜900℃の範囲の第2の温度にして、第2の混合物を得る工程と、
    (c)第3の反応器内に、前記(a)工程で得られた第1の混合物と、前記(b)工程で得られた第2の混合物とを供給して接触させる工程と
    を有することを特徴とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  2. 前記第1の温度は0〜700℃である、請求項1に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  3. 前記第2の温度は760〜900℃である、請求項1または2に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  4. 前記(a)工程において、前記テトラフルオロエチレンの前記第1の反応器への供給量は、前記クロロジフルオロメタンの前記第1の反応器への供給量1モルに対して0.01〜100モルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  5. 前記(b)工程における前記クロロメタンおよび/または前記メタンの前記第2の反応器への供給量の合計は、前記(a)工程における前記クロロジフルオロメタンと前記テトラフルオロエチレンの前記第1の反応器への供給量の合計1モルに対して0.01〜100モルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  6. 前記第1の反応器に供給する前記クロロジフルオロメタンの温度は0〜600℃である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  7. 前記第1の反応器に供給する前記テトラフルオロエチレンの温度は0〜600℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  8. 前記第2の反応器に供給する前記クロロメタンおよび/またはメタンの温度は0〜1200℃である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  9. 前記(c)工程において、前記第1の混合物と前記第2の混合物とを接触させて、これらを600〜1200℃の範囲の第3の温度にする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  10. 前記第1の熱媒体および前記第2の熱媒体は、いずれも200〜1300℃で熱分解しない媒体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  11. 前記第1の熱媒体および前記第2の熱媒体は、いずれも水蒸気、窒素、二酸化炭素から選ばれる1種または2種以上の気体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  12. 前記(a)工程において、前記第1の熱媒体の前記第1の反応器への供給量は、該熱媒体と前記第1の原料組成物の供給量の合計に対して、20〜98体積%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  13. 前記(b)工程において、前記第2の熱媒体の前記第2の反応器への供給量は、該熱媒体と前記第2の原料組成物の供給量の合計に対して、20〜98体積%である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  14. 前記(a)工程で前記第1の原料組成物と前記第1の熱媒体が接触してから、前記(c)工程で前記第3の反応器に前記第1の混合物が供給されるまでの時間は、0.01〜10秒間である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  15. 前記(b)工程で前記第2の原料組成物と前記第2の熱媒体が接触してから、前記(c)工程で前記第3の反応器に前記第2の混合物が供給されるまでの時間は、0.001〜10秒間である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  16. 前記(a)工程において、前記第1の反応器内の圧力はゲージ圧で0〜2MPaである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  17. 前記(b)工程において、前記第2の反応器内の圧力はゲージ圧で0〜2MPaである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  18. 前記(c)工程において、前記第3の反応器内の圧力はゲージ圧で0〜2MPaである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  19. 前記(a)工程において、前記クロロジフルオロメタンおよび前記テトラフルオロエチレンとともに、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、およびオクタフルオロシクロブタンから選ばれる1種以上の含フッ素化合物を前記第1の反応器に供給する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
  20. 前記(c)工程で前記第1の混合物と前記第2の混合物が接触してから、前記第3の反応器内に留まる時間は、0.01〜10秒間である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
JP2012286747A 2012-12-28 2012-12-28 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 Withdrawn JP2014129259A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012286747A JP2014129259A (ja) 2012-12-28 2012-12-28 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012286747A JP2014129259A (ja) 2012-12-28 2012-12-28 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014129259A true JP2014129259A (ja) 2014-07-10

Family

ID=51408027

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012286747A Withdrawn JP2014129259A (ja) 2012-12-28 2012-12-28 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014129259A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129260A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Asahi Glass Co Ltd 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129260A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Asahi Glass Co Ltd 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129260A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Asahi Glass Co Ltd 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129260A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Asahi Glass Co Ltd 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5149456B1 (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1−ジフルオロエチレンの製造方法
JP5201284B1 (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP5501313B2 (ja) 塩素化炭化水素の製造方法
JP5462469B2 (ja) 2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンからの2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの気相合成
JP2013507241A5 (ja)
JP2010043080A5 (ja)
JP2016511249A (ja) 1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造方法
JP5975096B2 (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1−ジフルオロエチレンの製造方法
WO2014080916A1 (ja) 2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2014129260A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2014101326A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2014129259A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2014129273A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2013227244A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
WO2014080779A1 (ja) 2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび1,1-ジフルオロエチレンの製造方法
JP2015110533A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1−ジフルオロエチレンの製造方法
JP2015120669A (ja) (e)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2015117184A (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP6217750B2 (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP2015117188A (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP2015010058A (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP2013189402A (ja) ポリクロロプロパンの製造方法
JP2012097017A (ja) クロロプロペンの製造方法
JP6217749B2 (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP2013227245A (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1−ジフルオロエチレンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150813

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132

Effective date: 20160308

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20160317