JP2014114413A - 酸化耐熱と耐変色性に優れた樹脂組成物及びフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂に対し、(A)同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤、(B)酸化防止剤(A)とは異なるリン系酸化防止剤、(C)pHが6〜8であるアンチブロッキング剤の3成分を必須として含有する樹脂組成物、及び、フィルム。
【選択図】なし
Description
これらのポリオレフィン系フィルムに要求される性能としては、酸化耐熱性、耐変色性があるが、この2つの性能を同時に改良した樹脂組成物を得ることは非常に難しかった。酸化耐熱性を改善させるために酸化防止剤の量を増やすと、酸化防止剤由来の着色が起きて耐変色性が悪化するためである。
耐加水分形成に優れ、且つ高温溶融加工に対して劣化しない、包装材料用フィルムを提供することを目的として、ポリエチレン樹脂100重量部に対し、本願発明のA成分に相当する同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤0.001〜1重量部、本願発明のC成分に相当する無機アンチブロッキング剤0.001〜150重量部を含有することを特徴とするポリエチレン樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
一方、NOxガスに対する耐変色性、加工安定性、帯電防止性、耐候性および耐熱老化性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物およびその樹脂組成物からなる成形体を提供することを課題として、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、本願発明のA成分に相当する特定の式で示される亜リン酸エステル類0.001〜5重量部と、アミド系帯電防止剤0.01〜5重量部、さらに中和剤としてステアリン酸カルシウムを含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。
しかしながら、フィルム成形時のブロッキングを抑制するために、シリカ、タルク、ゼオライト等のアンチブロッキング剤を加えると、耐変色性が悪化するという問題点があった。つまり、耐酸化性、耐変色性、耐ブロッキング性、いずれも優れたフィルム用オレフィン系樹脂組成物を得ることは難しいとされていた。
また、第3の発明によれば、第1又は2の発明において、同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤(A)は、下記一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
また、第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
(1)熱可塑性樹脂
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を必須として含有する。
前記熱可塑性樹脂としては、種々のものが使用可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリエチレン系樹脂が好ましい。
また、前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるポリエチレンの製造方法は、チーグラー型、フィリップス型、シングルサイト型触媒等の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法などで製造され、実質的に酸素、水などを断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などに例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。
本発明の樹脂組成物は、同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤(A)(以下、「酸化防止剤(A)」、「(A)成分」ともいう。)を必須として含有する。
前記酸化防止剤(A)としては、下記一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物などが例示されるが、本発明の効果は具体例に示された化合物に限定されるものではない。本発明における亜リン酸エステル構造とは、亜リン酸P(OH)3の水素原子が炭化水素基などの有機基に置換された構造のことをいう。また、本発明におけるヒンダードフェノール構造とは、フェノールの2,6位の水素原子が炭化水素基に置換された構造のことをいう。
一般式(I)で示される化合物は、市販のものとしては、住友化学株式会社製の「スミライザー(登録商標)GP」が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)(以下、「酸化防止剤(B)」、「(B)成分」ともいう。)を必須として含有する。なお、酸化防止剤(B)は、酸化防止剤(A)(同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤)とは異なるリン系酸化防止剤である。
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の比が前記範囲を超え、(A)成分の含有量が多くなるか、または(B)成分の含有量が多くなると、酸化耐熱向上に相乗効果が乏しくなるおそれがあるため好ましくない。
本発明の樹脂組成物は、フィルム成形時のブロッキング性を改善するためにアンチブロッキング剤を必須として含有する。本発明で用いるアンチブロッキング剤としては、pHが6〜8であることが必須である。この範囲外である時、特にリン系酸化防止剤(B)の加水分解が起こり、酸化防止や着色防止の効果が得られなくなる。ここでpHはJIS.K.5101.24Aに準じて測定したものである。
これらの中でアルミノシリケートが好ましく、さらにその中でもソディウムアルミノシリケートが最も好ましい。AB剤(C)は、市販のものとしては、水澤化学工業社製シルトンAMT100S2やMizupearlが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は上記(A)(B)(C)の3成分を必須とし、かつ、(A)成分の含有量が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.02重量部以上0.15重量部未満の較的低含有量であることを特徴とするものであり、(B)成分の樹脂組成物中含有量が、0.01重量部以上0.15重量部未満、(C)成分の樹脂組成物中含有量が、0.01重量部以上0.15重量部未満、好ましくは、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の比が、1:0.5〜1:5の範囲であることを特徴とすることにより、絶妙のバランスで、相反する性能である、酸化耐熱と耐変色性の両性能に優れ、且つ、アンチブロッキング性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂に対し、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び3成分を必須として含有する樹脂組成物であるが、樹脂組成物の製造方法としては、通常行われている方法を用いることができる。上記成分の添加順序は特に制限はない。
4.用途
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、通常の空冷インフレーション成形、空冷二段冷却インフレション成形、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等で加工することにより、耐酸化性、耐変色性に優れ、耐ブロッキング性にも優れたフィルムにすることができる。
なお、各実施例及び比較例において、用いた重合体の各物性の評価方法を以下に示す。
1.評価方法
(1)メルトフローレイト
MFRは、JIS K 7210:1999に準拠して、各条件にて測定した。
(2)密度
ラミフィルムをタテヨコ2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃で、JIS K7112に準拠して、測定した。
酸化防止剤とAB剤の混合物サンプルを用い、試験温度230℃にて2hr処理した後に色味の観察を行い、下記の基準により数値化を行った。
色味数値化の基準
ピンキングなし:1,若干のピンキングあり:2,ピンキングあり:3,濃いピンキングあり:4
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 DSC7020の熱分析装置を用い、下記条件で測定を行った。
測定温度:230℃
昇温速度:20℃/分
窒素流量:50ml/分
酸素流量:50ml/分
試料:30μmフィルム
試料重量:15mg
窒素雰囲気下で所定温度(230℃)に達するまで昇温し、温度が安定化したところで酸素に切り替えると、その後試料が酸化により発熱を開始する。
酸素に切替を開始した時点から発熱を開始する時点までの所要時間(単位:分)を酸素誘導時間(OIT)とした。
(5)アンチブロッキング性
評価サンプルを10枚重ねた状態で、温度を50℃として、0.49MPaの荷重を24時間かけた場合における評価サンプルのブロッキングの程度をブロッキングの程度と比較した。なお、ブロッキングの程度は、下記の判定基準を用いて評価した。
( 判定基準 )
評価内容
○ : ブロッキングなし
△ : ブロッキングしているが、指で剥がすことは可能である。
× : ブロッキングが極めて酷く、指で剥がすことが困難である。
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂として、メタロセン系ポリエチレンである、日本ポリエチレン社製「ハーモレックス(登録商標):NW564N」重合時の無添加パウダー(製造時に採取した添加剤を配合していないポリエチレンパウダー)、MFR(JIS K6922−2準拠):3.5g/10分、密度(JIS K7112準拠):0.918g/cm3を使用した。
同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤(A)として、住友化学社製リン系酸化防止剤、商品名「スミライザーGP」を使用した。リン系酸化防止剤(B)として、BASFジャパン社製リン系酸化防止剤(商品名「イルガフォス168」)、クラリアントジャパン社製リン系酸化防止剤(商品名「P−EPQ」)を使用した。
アンチブロッキング剤(C)として、3種類の水澤化学工業製ソジュウムアルミノシリケート粒子(商品名「AMT100S2」、「AMT100」、「JC50」)を使用した。それぞれのpHは、AMT100S2は7、AMT100は9、JC50は10である。
中和剤として、高級脂肪族の周期律表第II族金属塩である、日油社ステアリン酸カルシウム(商品名「カルシウムステアレートG」)を使用した。
(1)耐熱変色性評価サンプルの作製
アルミカップ中にて表1に示した添加剤の配合割合の添加剤を混合し耐熱変色性評価サンプルを作製した。
(2)樹脂組成物の調製
ベースとなる前記高密度ポリエチレンパウダー4000gに対し、表1に示した所定量の添加剤を加え、ヘンシェルミキサーにより3分間攪拌しポリエチレンと添加剤が均質混合されるよう調整した。なお、樹脂組成物での評価の際には中和剤としてステアリン酸カルシウムを使用している。(表中の数字は組成物中の各添加剤の重量分率ppmを示す)
き
(3)ペレット化
上記で調製した添加剤入りポリエチレンパウダーを、押出機を使用し以下の条件で押出造粒によりペレットを得た。
押出機:モダンマシナリー製50mmφ(単軸)
L/D:24
スクリュー圧縮比:2.5 (3ステージフルフライトタイプ)
押出機温度設定(℃)
シリンダー1:140
シリンダー2〜シリンダー3:160
押出機ヘッド〜ダイ:140
ノズル:3mmφ(穴径)×8(穴数)
スクリーンメッシュ構成:100/120/100
押出量:22Kg/Hr
ストランド冷却:水冷(常温)
ペレット化:自社製ペレタイザー
以下、本願実施例と比較例の説明について、表1を用いて説明する。
実施例1〜3では、耐熱変色性は良好であり、OITも適度な値であり、耐変色性、酸化耐性ともに兼ねそろえるフィルムが得られている。
一方、リン系酸化防止剤(B)が含まれていない比較例1,2では、OITは適度な値であるが、フィルム成形時に変色しており好ましくない。酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(B)が必須であることがわかる。
また、実施例1〜3と対比した場合、アンチブロッキング剤のpHが6〜8の範囲外である比較例3〜5では、変色が起こっていた。この原因としては、アンチブロッキング剤によるリン系酸化防止剤(B)の加水分解が起こっていると推測され、アンチブロッキング剤のpHを範囲内にすることが必要であることがわかる。
酸化防止剤(A)と酸化防止剤(B)を加えて、アンチブロッキング剤(C)を加えていない比較例6では、耐変色性、酸化耐性は優れているが、アンチブロッキング性が良好ではない。
以上より、酸化防止剤(A)と酸化防止剤(B)の組合せにより耐変色性、酸化耐性を持つ樹脂組成物に対して、さらに、優れたアンチブロッキング性を付与したい場合、適当な条件のアンチブロッキング剤を選択しなければ、樹脂の変色が起こる。本発明は、優れた酸化耐熱、耐変色性、及び、耐ブロッキング性をいずれも兼ね備える樹脂を得るために有用である。
Claims (6)
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して、同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤(A)を0.02重量部以上0.15重量部未満、酸化防止剤(A)とは異なるリン系酸化防止剤(B)を0.01重量部以上0.15重量部未満、pHが6〜8であるアンチブロッキング剤(C)を0.01重量部以上3.0重量部未満含むことを特徴とする樹脂組成物。
- 同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤(A)の含有重量と、リン系酸化防止剤(B)の含有重量の比が、1:0.5〜1:5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- アンチブロッキング剤(C)は、ソジュウムアルミノシリケート又は非晶質シリカを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするフィルム。
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