JP2014065779A - リグニンを用いた熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 植物性資源を主原料とし、耐熱性、高強度、難燃性、抗菌性を付与した熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 複数のオキサゾリン環を含む化合物とリグニンを含有する熱硬化性樹脂組成物。複数のオキサゾリン環を含む化合物が、2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンで、リグニンの重量平均分子量が、100〜7000、リグニン中の硫黄原子の含有率が、2質量%以下であると好ましい。また、リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものであると好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】 複数のオキサゾリン環を含む化合物とリグニンを含有する熱硬化性樹脂組成物。複数のオキサゾリン環を含む化合物が、2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンで、リグニンの重量平均分子量が、100〜7000、リグニン中の硫黄原子の含有率が、2質量%以下であると好ましい。また、リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものであると好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、地球環境保全を考慮した熱硬化性樹脂組成物に関するもので、リグニンを用いた熱硬化性樹脂組成物に関する。
近年、化石資源を焼却することで発生する二酸化炭素量の増加に伴い、地球温暖化の問題が関心を集めるようになった。そこで、地球温暖化防止の観点からバイオマス(生物資源)の有効活用が見直されている。近年、包装資材、家電製品の部材、自動車用部材などのプラスチックを植物由来樹脂(バイオプラスチック)に置き換える動きが活発化している。
前記植物由来樹脂の具体例としては、ジャガイモ、サトウキビ、トウモロコシ等の糖質を醗酵させて得られた乳酸をモノマーとし、これを用いて化学重合を行い作製したポリ乳酸:PLA(PolyLactic Acid)や、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産するポリエステルである微生物産生樹脂:PHA(PolyHydroxy Alkanoate)、発酵法で得られる1,3−プロパンジオールと石油由来のテレフタル酸とを原料とするPTT(Poly Trimethylene Telephtalate)等が挙げられる。
また、PBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来の原料が用いられているが、今後においては、植物由来樹脂として作製する研究が開発されており、主原料の一つであるコハク酸を植物由来で作製する技術についての開発がなされている。
また、PBS(Poly Butylene Succinate)は、現在は石油由来の原料が用いられているが、今後においては、植物由来樹脂として作製する研究が開発されており、主原料の一つであるコハク酸を植物由来で作製する技術についての開発がなされている。
これらの植物由来原料を用いた樹脂は、サニタリー分野、雑貨などに加え、OA関連用部品または自動車用内装部品等の幅広い分野に導入されている(特許文献1参照)。一方、電器・電子機器、自動車内部部品のような用途においては、安全上の問題から機械的強度、耐熱性、電気絶縁性が要求される。耐熱性に関してはこれまでにも、植物由来原料を用いた樹脂、特にポリ乳酸樹脂において種々の試みがなされてきた。しかし、植物由来樹脂はいずれも熱可塑性であり(非特許文献1参照)、耐熱性において課題がある。
従来の耐熱性、高い機械強度、電気絶縁性を兼ね備えた樹脂としてはフェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は最も古い歴史を持つ樹脂であり、熱可塑性のノボラック型フェノール樹脂と自己硬化性のレゾール型フェノール樹脂に大別される。上記用途のほか、化粧板、木材加工用接着剤としても広く利用されている。
こうした石油由来の硬化性樹脂を植物由来の原料から製造する事が注目されている。特に植物由来の熱硬化性樹脂原料として、古くからリグニンが注目されてきた。リグニンは木材中に20〜35質量%含まれるフェノール骨格を有する天然高分子である。国内で容易に入手できるリグニンとして、例えば、リグニンスルホン酸塩が挙げられるが、水溶性であり、有機溶媒に難溶である。そのため、硬化剤及び硬化促進剤との相溶性が悪く、均質な硬化物が得られなかった。
硬化剤等への相溶性が良好なリグニンとして爆砕リグニンが挙げられる。爆砕リグニンは有機溶剤に可溶で各種樹脂への相溶性も良好である事からエポキシ樹脂への硬化剤用途が検討されている(非特許文献2)。一方、爆砕リグニンはノボラック型のフェノール樹脂と同様熱可塑性であり、ヘキサミン等の硬化剤にて硬化させたとき、ガスの発生が不可避という課題があった。
土肥義治(編) 生分解性高分子材料、工業調査会 1990年発行
岡部ら ネットワークポリマー,Vol.32,130−134頁,2011年
そこで本発明においては、環境負荷低減化の観点から、植物由来のリグニンを利用した硬化時のガス発生を抑制した熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1) 複数のオキサゾリン環を含む化合物と有機溶媒可溶なリグニンを含有する熱硬化性樹脂組成物。
(2) 複数のオキサゾリン環を含む化合物が2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3) 前記リグニンの重量平均分子量が、100〜7000である上記(1)又は(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4) 前記リグニン中の硫黄原子の含有率が、2質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5) リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(6) リグニンが、植物原料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することで植物原料を爆砕する水蒸気爆砕法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(1) 複数のオキサゾリン環を含む化合物と有機溶媒可溶なリグニンを含有する熱硬化性樹脂組成物。
(2) 複数のオキサゾリン環を含む化合物が2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンである上記(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3) 前記リグニンの重量平均分子量が、100〜7000である上記(1)又は(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4) 前記リグニン中の硫黄原子の含有率が、2質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5) リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(6) リグニンが、植物原料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することで植物原料を爆砕する水蒸気爆砕法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
本発明によれば、化石資源使用量の削減、及び二酸化炭素の排出量の低減効果が得られ、環境負荷低減化に好適でありながら、硬化時のガス発生の少ない熱硬化性樹脂組成物が提供できた。また、樹脂成分の主原料としてリグニンを使用することで、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供できた。
本発明によれば、樹脂成分の主原料としてリグニンを使用することで、前記効果に加え、難燃効果を付与した熱硬化性樹脂組成物を提供できた。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
リグニンの基本骨格は一般的にヒドロキシフェニルプロパン単位を基本単位とする架橋構造の高分子である。樹木は親水性の線状高分子の多糖類(セルロースとヘミセルロース)と疎水性の架橋構造リグニンの相互侵入網目(IPN)構造を形成している。リグニンは樹木の約25質量%を占め、不規則かつ極めて複雑なポリフェノールの化学構造をしている。フェノール類は燃焼の際、黒鉛を形成し易いため難燃性に優れることが知られている。本発明では、植物から得られ、有機溶媒に溶解させて得られルリグニンを用い、これに複数のオキサゾリン環を含む化合物を配合し熱硬化性樹脂組成物とする。
リグニンの原料に特に制限は無い。杉、松、ヒノキ等の針葉樹、ブナ等の広葉樹、竹、稲わら、バガス、ヤシガラ等の植物原料が使用される。植物原料からリグニンを分離し取り出す方法としては、水を用いた分離技術を用いた方法が好ましい。使用するリグニンが、水のみを用いた処理方法により、セルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得たリグニンである。このリグニンを取得する方法としては、水蒸気爆砕法がより好ましい。水蒸気爆砕法は、高温高圧の水蒸気による加水分解と、圧力を瞬時に開放することによる物理的破砕効果により、植物を短時間に破砕するものである。
水蒸気爆砕の条件は特に限定しないが、通常、原料を水蒸気爆砕装置用の耐圧容器に入れ、1.5〜6.0MPaの水蒸気を圧入し、1〜30分間放置した後、瞬時に圧力を開放することにより爆砕する。なお、前記有機溶媒可溶リグニンは、水蒸気爆砕リグニンとも表す。また、原料としては、リグニンが抽出できれば特に限定しないが、例えば、杉、竹、稲わら、麦わら、ひのき、アカシア、ヤナギ、ポプラ、バガス、ヤシガラ、とうもろこし、サトウキビ、米穀、ユーカリ、エリアンサスなどが挙げられる。
この方法は硫酸法、クラフト法など他の分離方法と比較し、硫酸、亜硫酸塩等を用いることなく、水のみを使用するので、クリーンな分離方法である。この方法では、リグニン中に硫黄原子を含まないリグニン、又は、硫黄原子の含有率が少ないリグニンが得られる。通常、リグニン中の硫黄原子の含有率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。硫黄原子の含有量が増大すると親水性のスルホン酸基が増加するため、有機溶剤への溶解性が低下するおそれがある。本発明者らは、さらに、爆砕物から有機溶媒による抽出により、リグニンの分子量を制御し得ることを見出した。
この方法は硫酸法、クラフト法など他の分離方法と比較し、硫酸、亜硫酸塩等を用いることなく、水のみを使用するので、クリーンな分離方法である。この方法では、リグニン中に硫黄原子を含まないリグニン、又は、硫黄原子の含有率が少ないリグニンが得られる。通常、リグニン中の硫黄原子の含有率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。硫黄原子の含有量が増大すると親水性のスルホン酸基が増加するため、有機溶剤への溶解性が低下するおそれがある。本発明者らは、さらに、爆砕物から有機溶媒による抽出により、リグニンの分子量を制御し得ることを見出した。
前記リグニンの重量平均分子量は、ポリスチレン換算値において、100〜7000が好ましく、さらに200〜5000が好ましく、500〜4000であることが特に好ましい。リグニンの重量平均分子量が、7000を超えると反応後の樹脂の流動性が低下するおそれがある。重量平均分子量が、100未満であるとフェノール基と未結合の芳香族成分がおおくなるため樹脂材料の強度が低下するおそれがある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用した。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用した。
本発明で用いるリグニンの抽出に用いる有機溶媒は、1種又は2種以上複数の混合のアルコール溶媒、アルコールと水を混合した含水アルコール溶媒、そのほかの有機溶媒または、水と混合した含水有機溶媒を使用することができる。水にはイオン交換水を使用することが好ましい。水との混合溶媒の含水率は0〜70質量%が好ましい。リグニンは、水への溶解度が低いため、水のみを溶媒とするとリグニンを抽出することが困難である。また、用いる溶媒を選択することにより、得られるリグニンの重量平均分子量を制御することが可能である。リグニンの抽出に用いられる有機溶媒としてはアルコール、トルエン、ベンゼン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどがあり、これらは二種類以上、混合して用いることができる。
リグニンには、リグニン以外の例えばセルロースやヘミセルロースのような成分が、含まれていてもよい。また、これらのリグニンをアセチル化、メチル化、ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、硫化ナトリウムや硫化水素との反応等によって作製されたリグニン誘導体も含む。
本発明で用いる複数のオキサゾリン環を含む化合物は、複数のオキサゾリン環を含む化合物であれば特に制限はないが、2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンが特に好適に使用できる。2,2´−ビス(2−オキサゾリン)、2,2´−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2´−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2´−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2´−ビス(アリール−2−オキサゾリン)、2,2´−ビス(シクロアルキル−2−オキサゾリン、2,2´−ビス(アラルキル−2−オキサゾリン)、2,2´−アルキレンビス(2−オキサゾリン)、2,2´−アルキレンビス(アルキル−2−オキサゾリン)、2,2´−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2´−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2´−(1,2−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2´−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2´−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2´−(1,4−フェニレン)−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)も使用可能である。株式会社日本触媒製のオキサゾリン基含有ポリマであるエポクロスシリーズも使用できる。オキサゾリン環はリグニン中のフェノール性水酸基と反応して開環し、リグニンと結合することができる。分子内にオキサゾリン環を複数有することで、フェノール性水酸基を多数含有するリグニンと複雑な三次元ネットワーク構造を形成可能である。また本反応は開環反応であるため、副生成物としての水、各種ガスの発生がない。
前記オキサゾリン環を複数含有する化合物と、リグニンの混合比に特に制約はないが、リグニン中のフェノール性水酸基に対するオキサゾリン環のモル比が0.3〜3.0の範囲が好ましい。より好ましくはモル比0.5〜2.0、さらに好ましくは0.7〜1.5の範囲である。
前記オキサゾリン環を複数含有する化合物と、リグニンの硬化反応を促進させるため、触媒を添加してもよい。触媒としては、アニリンヨウ化水素塩、アニリン臭化水素塩、アニリン塩酸塩、p−トルエンスルホン酸エチル、ヨウ化−n−オクチル、臭化−n−オクチル、塩化−n−オクチル、α−臭化エチルベンゼン、α−臭化−n−プロピオン酸エチル、臭化−n−イソ酪酸エチル、ヨウ化シクロヘキシル、臭化シクロヘキシル、塩化シクロヘキシル等が好適に使用できる。
触媒の添加量は、オキサゾリン環を含む化合物に対して0.2モル%から5.0モル%の範囲が使用できる。より好ましくは0.5〜2.0モル%の範囲である。触媒が多すぎると硬化反応が速すぎて成形が困難となり、少なすぎると硬化が進行しない。
前記反応時の温度に制限はないが、100〜200℃の範囲が好適である。反応時間は3分から120分の範囲が好ましく適用できる。
前記リグニンと前記オキサゾリン環を含む化合物の混合物に、各種フィラ、離型剤、難燃剤を混合分散することができる。各種フィラの有機フィラとして、木粉、パルプ、綿粉、植物繊維等を、また、無機フィラとしてシリカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維等が好適に使用できる。離型剤としてはステアリン酸亜鉛等が使用可能である。難燃剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、トリフェニルフォスフェート等のリン系の難燃剤を併用してもよい。
前記のようにして得られた熱硬化性樹脂組成物は、樹脂成分としてリグニンを含有している。リグニンはフェニルプロパンの架橋体であり、フェノール樹脂と同様に芳香族環を多く含む。芳香族環炭素は容易に燃焼せず炭化反応を起こす事から、本発明の自己硬化性樹脂材料は難燃性を有しているという特徴がある。さらに分子内に多くのフェノール性水酸基を有する事から、微生物等に対する抗菌作用を有するという特徴がある。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(リグニンの抽出)
リグニン抽出原料としては、竹を使用した。適当な大きさにカットした竹材を水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、4分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、真空乾燥機で残存水分を除去した。得られた乾燥体100gに抽出溶媒(アセトン)1000mlを加え、3時間攪拌した後、ろ過により繊維物質を取り除いた。得られた濾液から抽出溶媒(アセトン)を除去し、リグニンを得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(実施例1)
(リグニンの抽出)
リグニン抽出原料としては、竹を使用した。適当な大きさにカットした竹材を水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、4分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、真空乾燥機で残存水分を除去した。得られた乾燥体100gに抽出溶媒(アセトン)1000mlを加え、3時間攪拌した後、ろ過により繊維物質を取り除いた。得られた濾液から抽出溶媒(アセトン)を除去し、リグニンを得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(リグニンの分析)
溶媒溶解性としては、前記リグニン1gを、有機溶媒10mlに加えて評価した。常温(25℃)で容易に溶解した場合は「○」、50〜70℃で溶解した場合は「△」、加熱しても溶解しなかった場合を「×」として、評価した。溶媒群1としてアセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランを、溶媒群2としてメタノール、エタノール、メチルエチルケトンを用いて溶解性を評価した結果、溶媒群1ではいずれも「○」、溶媒群2ではいずれも「△」の判定結果であった。
溶媒溶解性としては、前記リグニン1gを、有機溶媒10mlに加えて評価した。常温(25℃)で容易に溶解した場合は「○」、50〜70℃で溶解した場合は「△」、加熱しても溶解しなかった場合を「×」として、評価した。溶媒群1としてアセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランを、溶媒群2としてメタノール、エタノール、メチルエチルケトンを用いて溶解性を評価した結果、溶媒群1ではいずれも「○」、溶媒群2ではいずれも「△」の判定結果であった。
リグニン中の硫黄原子の含有率は、燃焼分解-イオンクロマトグラフ法により定量した。装置は株式会社三菱化学アナリテック製自動試料燃焼装置(AQF−100)及び日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフ(ICS−1600)であり、上記リグニン中の硫黄原子の含有率は0.2質量%であった。さらに示差屈折計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてリグニンの分子量を測定した。多分散度の小さいポリスチレンを標準試料として用い、移動相をテトラヒドロフランとして使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製ゲルパックGL−A120SとGL−A170Sとを直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は2400であった。
上記で得られたリグニン(有機溶媒可溶リグニン)の水酸基当量は無水酢酸−ピリジン法により水酸基価、電位差滴定法により酸価を測定し求めた(下記の水酸基当量及びエポキシ当量の単位は、グラム/当量であって以下g/eq.で表わす。)。アセトン抽出竹由来リグニンの水酸基当量は140g/eq.であった。リグニンのフェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比(以下P/A比)を以下の方法で決定した。リグニン2gのアセチル化処理を行い、未反応のアセチル化剤を留去し、乾燥させたものを、重クロロホルムに溶解させ、1H−NMR(BRUKER社製、V400M、プロトン基本周波数400.13MHz)により測定した。アセチル基由来のプロトンの積分比(フェノール性水酸基に結合したアセチル基由来:2.2〜3.0ppm、アルコール性水酸基に結合したアセチル基由来:1.5〜2.2ppm)からモル比を決定したところ、P/A比は2.2/1.0であり、フェノール性水酸基当量は202g/eq.であった。
前記リグニン101g、複数のオキサゾリン環を含む化合物として2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン53g、触媒として塩化−n−オクチル0.36g、充填剤として溶融シリカ150g、水酸化アルミニウム30gを混合し、二軸式のロールミルで90℃にて均一なシートになるまで混練し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を50×10mmまたは130mm×13mmの金型に充填し、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、160℃、10分プレスした後、オーブンで200℃、2時間硬化させ、成形体を得た。
作製した成形体の曲げ強度及び曲げ弾性率はテンシロン(株式会社オリエンテック製)を用い、3点曲げ試験により評価した。50×10×1mmの試験片を用い、支点間距離30mm、試験速度1mm/分で測定した。その結果、曲げ強度は80MPa、曲げ弾性率は5.5GPaであった。
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の動的粘弾性スペクトロメータ(EXSTARDMS6100)を用いて貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)を測定した。試験片40×5×1mm、チャック間距離20mm、測定温度範囲25〜300℃、昇温速度5℃/分、引張りモードの条件で測定し、1Hz時のtanδのピーク温度をガラス転移点としたところその値は210℃であった。
(抗菌性試験)
JIS Z2801に準じて、黄色ぶどう球菌に対する抗菌性を評価した。試験片上に菌液(生菌数2.5〜10×10の5乗個/mL)0.4mLを播き、35℃±1℃、24時間培養した。試験片上の生菌数を測定するため、サンプリングし、サンプルを適宜希釈し、寒天平板培養にて35℃±1℃、48時間培養して生菌数を得た。
R=[Log(B/A)−Log(C/A)]=[Log(B/C)]
R:抗菌活性値
A:無加工試験片における接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
抗菌活性値2以上を抗菌性ありとした。形成された被膜の抗菌活性値は黄色ブドウ球菌に対して4.9であった。
JIS Z2801に準じて、黄色ぶどう球菌に対する抗菌性を評価した。試験片上に菌液(生菌数2.5〜10×10の5乗個/mL)0.4mLを播き、35℃±1℃、24時間培養した。試験片上の生菌数を測定するため、サンプリングし、サンプルを適宜希釈し、寒天平板培養にて35℃±1℃、48時間培養して生菌数を得た。
R=[Log(B/A)−Log(C/A)]=[Log(B/C)]
R:抗菌活性値
A:無加工試験片における接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片における24時間後の生菌数の平均値(個)
抗菌活性値2以上を抗菌性ありとした。形成された被膜の抗菌活性値は黄色ブドウ球菌に対して4.9であった。
難燃性の評価としては、UL燃焼性試験規格(UL94)に準じて行った。試験片として実施例1の成形体(厚さ3mm、長さ130mm、幅13mm)の大きさで作製したものを使用した。垂直燃焼試験にて残炎時間は5秒以下であり、V−0レベルと判定された。
(比較例1)
リグニンとしてリグニンスルホン酸塩(バニレックスN、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、スルホン化度 0.13、日本製紙ケミカル株式会社製)を用い、樹脂組成物の作製を試みた。前記リグニンスルホン酸100g、2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン53g、塩化−n−オクチル0.36gに対し溶融シリカ150gと水酸化アルミニウム30gを混合し、90℃にて二軸式のロールミルで混練したが、樹脂組成物の混合が悪く均一なシートは得られなかった。
リグニンとしてリグニンスルホン酸塩(バニレックスN、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、スルホン化度 0.13、日本製紙ケミカル株式会社製)を用い、樹脂組成物の作製を試みた。前記リグニンスルホン酸100g、2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン53g、塩化−n−オクチル0.36gに対し溶融シリカ150gと水酸化アルミニウム30gを混合し、90℃にて二軸式のロールミルで混練したが、樹脂組成物の混合が悪く均一なシートは得られなかった。
この樹脂組成物を50×10mmまたは130mm×13mmの金型に充填し、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、180℃、10分プレスしたが、脆い固形物となり成形体を得ることができなかった。
本発明では、複数のオキサゾリン環を含む化合物と有機溶媒可溶なリグニンを硬化させるので、リグニンとヘキサミン等の硬化剤にて硬化させたときのようにガスの発生がない機械強度、耐熱性、難燃性、抗菌性に優れたリグニンを用いた熱硬化性樹脂を提供することができる。
本発明では、複数のオキサゾリン環を含む化合物と有機溶媒可溶なリグニンを硬化させるので、リグニンとヘキサミン等の硬化剤にて硬化させたときのようにガスの発生がない機械強度、耐熱性、難燃性、抗菌性に優れたリグニンを用いた熱硬化性樹脂を提供することができる。
Claims (6)
- 複数のオキサゾリン環を含む化合物と有機溶媒可溶なリグニンを含有する熱硬化性樹脂組成物。
- 複数のオキサゾリン環を含む化合物が2,2´(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリンである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記リグニンの重量平均分子量が、100〜7000である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記リグニン中の硫黄原子の含有率が、2質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- リグニンが、水のみを用いた処理方法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- リグニンが、植物原料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することで植物原料を爆砕する水蒸気爆砕法によりセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させることにより得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
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EP3633005A1 (en) | 2018-10-05 | 2020-04-08 | Aarhus Universitet | An aqueous adhesive composition for lignocellulosic materials such as wood and a method of production |
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- 2012-09-25 JP JP2012210750A patent/JP2014065779A/ja active Pending
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