次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して基板に電子部品を半田接合により実装して実装基板を製造する機能を有する電子部品実装システム1の構成について説明する。図1において電子部品実装システム1は、スクリーン印刷装置M1、印刷検査装置M2、電子部品実装装置M3、リフロー装置M4の各装置を連結して成る電子部品実装ラインを通信ネットワーク2によって接続し、全体を管理コンピュータ3によって制御する構成となっている。
スクリーン印刷装置M1は、作業対象の基板に電子部品接合用のペースト状の半田(クリーム半田)をスクリーン印刷する。印刷検査装置M2は、印刷後の個片基板における印刷状態の良否判定のための印刷検査とともに、印刷位置ずれ補正のために電子部品実装装置M3にフィードフォワードされる位置ずれ補正データを作成する処理を行う。電子部品実装装置M3は、半田が印刷された個片基板に電子部品を実装する。リフロー装置M4は、電子部品実装後の個片基板を加熱することにより、半田を加熱溶融させて電子部品を個片基板に半田接合する。
ここで、電子部品実装システム1の作業対象となる基板の形態について図2を参照して説明する。本実施の形態においては、図2(a)に示すように、個片基板5を板状部材に複数枚保持させた形態のキャリア4が作業対象となっている。個片基板5は携帯電話などのモバイル機器に用いられる薄型基板であり、半導体装置などのファインピッチ部品が高密度に実装される。キャリア4には対角位置にキャリア認識マーク4mが形成されており、電子部品実装システム1の各装置においてキャリア認識マーク4mを光学的に位置認識することにより、キャリア4の位置決めが行われる。
図2(b)に示すように、個片基板5の表面には、複数種類の電子部品接合用の電極7A〜7Dが、接合対象の電子部品の種類・サイズに応じた形状・配列で形成されている。ここでは、電極7Bに接合される電子部品はファインピッチ部品であり、電極7Bは他の電極と比較してサイズが小さい微細電極となっている。そして個片基板5の表面および電極7A〜7Dを部分的に覆って、個片基板5の表面を保護する保護膜であるレジスト膜6が形成されており、個片基板5の対角位置には位置認識用の基板認識マーク5mが形成されている。
図2(c)に示すように、個片基板5の表面においてレジスト膜6はそれぞれの電極7の位置に対応してレジスト膜6に設定された開口部8を除く範囲に形成されている。すなわちそれぞれの電極7は、開口部8のみを介して個片基板5の表面に露呈される。電極7にこのような開口部8を設けることにより、電極間のピッチが従来と比較してより狭小な個片基板5を作業対象とする場合にあっても、スクリーン印刷時に隣接する電極間でクリーム半田が滲みにより過度に接近して印刷されることによる不具合を防止することができる。ここで、開口部8のサイズは、対応する電極7のサイズに応じて設定されており、微細電極である電極7Bに対応する開口部8は、開口部8のうち開口サイズがより小さい微細開口部8Bとなっている。
このように個片基板5をレジスト膜6で覆うことにより電極7毎に開口部8を形成する過程においては、必ずしも図2(c)(イ)に示すように、電極7の電極中心7cと開口部8の開口中心8cとが一致するとは限らず、一般には図2(c)(ロ)に示すように、電極7の電極中心7cと開口部8の開口中心8cとはある位置ずれ量(Δx,Δy)で位置ずれ状態にある。このような位置ずれは、レジスト膜6の形成過程において種々の要因によって生じ、しかも個々の個片基板5によって,また同一の個片基板5内でも電極7の配置位置によって位置ずれ量(Δx,Δy)がばらついている場合がある。
そしてこのように電極7に対して開口部8が位置ずれしている状態の個片基板5を対象として、従来技術による部品実装方法,すなわち半田印刷や部品実装において個片基板5における電極7の位置を基準とする方法を適用すると、本来半田接合部位として機能すべき開口部8から位置ずれした部位を基準として半田印刷や部品実装が行われることなり、半田位置不良や実装位置不良を招く要因となる。
このような不都合を解消するため、本実施の形態に示す電子部品実装システム1では、以下に説明する構成によって電極7に対する開口部8の位置ずれに起因する不都合を抑制するようにしている。すなわち図1に示す電子部品実装システム1において、個片基板5の電子部品接合用の電極7に半田を印刷する機能を有するスクリーン印刷装置M1を、開口部位置ずれ計測部M1Aとスクリーン印刷部M1Bとで構成するようにしている。
開口部位置ずれ計測部M1Aは、開口部8の位置を光学的に認識することにより、電極7の正規位置と開口部8の実際の位置との位置ずれ量(図2(c)(ロ)に示す位置ずれ量(Δx,Δy)参照)を求める位置ずれ計測処理を行う。電極7の正規位置は、設計上の電極位置を示す基板データと基板認識マーク5mの認識結果から求められる。ここで、図3を参照して、開口部位置ずれ計測部M1Aの構成を説明する。なお、本実施の形態においては、開口部位置ずれ計測部M1A,印刷検査装置M2として同様の構成・機能を有する検査装置を用いていることから、図3にてこれら開口部位置ずれ計測部M1A,印刷検査装置M2を併せて説明する。
図3において、テーブル駆動部12によって水平方向および上下方向に駆動される位置決めテーブル11上にはキャリア保持部10が配置されている。キャリア保持部10には、開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては上流側装置から搬入され複数の個片基板5を保持したキャリア4が、また印刷検査装置M2においては半田印刷後の複数の個片基板5を保持したキャリア4が、それぞれ保持される。
キャリア保持部10の上方にはカメラ13が撮像方向を下向きにして配設されている。カメラ13は開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては上流側装置から搬入された半田印刷前の複数の個片基板5を、また印刷検査装置M2においては半田印刷後の複数の個片基板5をそれぞれ撮像する。検査制御部14は、テーブル駆動部12、カメラ13を制御することにより、検査動作を制御する。検査制御部14によってテーブル駆動部12を制御して位置決めテーブル11を駆動することにより、キャリア4の任意位置をカメラ13の直下に位置させて撮像することができる。
撮像によって取得した画像データは画像認識部15によって認識処理され、これにより、キャリア4に形成されたキャリア認識マーク4m、さらに複数の個片基板5のそれぞれに形成された基板認識マーク5mの位置を認識することが可能となっている。そしてこの基板認識マーク5mのマーク位置認識結果より取得された位置基準に基づき、以下の位置ずれデータ取得が行われる。
すなわち開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては、取得した画像データを認識処理することにより、キャリア4に保持された複数の個片基板5において、電極7に形成された開口部8の実際の位置が認識される。また、印刷検査装置M2においては、取得した画像データを認識処理することにより、スクリーン印刷装置M1によってキャリア4に保持された複数の個片基板5において各電極に印刷された半田の位置が認識される。
検査処理部16は、開口部位置ずれ計測部M1A,印刷検査装置M2のそれぞれに割り当てられた検査処理を実行する。すなわち開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては、上述の開口部8の位置が許容範囲内であるか否かを判定する。また印刷検査装置M2においては、印刷された半田の位置認識結果に基づき、半田印刷量の過不足や位置ずれなどの半田印刷状態を良否判定する印刷検査を行う。
位置ずれ算出部17は、画像認識部15が画像データを認識処理することによって得られたマーク位置認識結果、開口部位置認識結果および半田位置認識結果に基づいて、開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては電極7の正規位置と当該電極7に形成された開口部8の実際の位置との位置ずれ量を、また印刷検査装置M2においては各個片基板5における半田Sの位置ずれを示す半田位置ずれ量を、各個片基板5毎に算出する処理を行う。
したがって、カメラ13、画像認識部15、位置ずれ算出部17は、スクリーン印刷部M1Bによって開口部8を目標位置として半田を印刷した後に、印刷された半田Sを光学的に認識することにより、半田Sの位置と開口部8の位置との半田位置ずれ量を求める半田位置ずれ計測部を構成する。
位置ずれデータ記憶部18は、位置ずれ算出部17によって算出された位置ずれデータ、すなわち開口部位置ずれ計測部M1Aにおいては開口部8の位置ずれ量を示す開口部位置ずれデータ、また印刷検査装置M2においては半田Sの位置ずれ量を示す半田位置ずれデータをそれぞれ記憶する。したがって、開口部位置ずれ計測部M1Aにおける位置ずれデータ記憶部18は、求められた開口部8の電極7に対する位置ずれ量を開口部位置データとして記憶する開口部位置データ記憶部となっている。
また印刷検査装置M2においては、位置ずれデータ記憶部18は、スクリーン印刷装置M1によって開口部8を目標位置として半田を印刷した後に、印刷された半田を光学的に認識することにより求められた半田の位置と開口部8の位置との半田位置ずれ量を半田位置データとして記憶する半田位置データ記憶部となっている。
次に図4を参照して、スクリーン印刷部M1Bの構成および機能を説明する。図4において、テーブル駆動部22によって水平方向および上下方向に駆動される位置決めテーブル21上には、キャリア保持部20が配設されている。キャリア保持部20は複数の個片基板5を保持するキャリア4をクランパ20aによって両側から挟み込んで保持する。キャリア保持部20の上方には、スクリーンマスク23が配設されており、スクリーンマスク23にはキャリア4に保持された個片基板5における開口部8に対応したパターン孔(図7,図8に示すパターン孔23a参照)が設けられている。
テーブル駆動部22によって位置決めテーブル21を駆動することにより、キャリア4はスクリーンマスク23に対して水平方向および垂直方向に相対移動し、これにより個片基板5はスクリーンマスク23に対して位置合わせされる。すなわち位置決めテーブル21およびテーブル駆動部22は、個片基板5とスクリーンマスク23とを相対的に位置合わせする位置合わせ機構となっている。
スクリーンマスク23の上方にはスクリーン印刷機構24が配置されている。スクリーン印刷機構24は、スキージ24cをスクリーンマスク23に対して昇降させるとともにスクリーンマスク23に対して所定押圧力で押し付ける昇降押圧機構24b、スキージ24cを水平移動させるスキージ移動機構24aより成る。昇降押圧機構24b、スキージ移動機構24aは、スキージ駆動部25により駆動される。
スクリーン印刷機構24は、スクリーンマスク23に個片基板5を当接させ、スクリーンマスク23上に半田Sが供給された状態でスキージング動作を行うことにより個片基板5の開口部8に半田Sを印刷する機能を有している。すなわち、キャリア4に保持された複数の個片基板5をスクリーンマスク23の下面に当接させた状態で、半田Sが供給されたスクリーンマスク23の表面に沿ってスキージ24cを所定速度で水平移動させることにより、各個片基板5のそれぞれに形成された複数の開口部8に、半田Sがパターン孔23aを介して一括して印刷される。
このスクリーン印刷作業は、スクリーン印刷機構24と前述の位置合わせ機構を印刷制御部26が制御することによって行われる。この制御に際しては、データ記憶部27に記憶されたデータが参照される。すなわちデータ記憶部27には開口部位置ずれ計測部M1Aによって計測された開口部8の位置ずれ状態を示す開口部位置データ27aおよび当該個片基板5においてパターン孔23aと開口部8との位置合わせをどのように行うかを明確にするために予め設定された位置合わせ指針27bが記憶されている。そして複数の個片基板5とスクリーンマスク23とを位置合わせする際には、位置合わせ指針27bに規定された位置合わせ優先度にしたがって、開口部8とパターン孔23aとの位置合わせを行う。
すなわちキャリア4に保持された複数の個片基板5における開口部8の配置が全て設計データ通りであって、スクリーンマスク23におけるパターン孔23aの形状・配置を示すガーバーデータと一致している場合には、単にスクリーンマスク23,キャリア4に設定された基準位置(例えばマスクセンター位置、キャリアセンター位置)を合致させればよいが、実際には様々な要因により、特に個片基板5における開口部8の位置は、正規位置から位置ずれしている場合が多い。
このため本実施の形態においては、位置合わせ指針27bにて当該個片基板5に形成された開口部8のうち、必要とされる実装精度の観点から位置合わせにおいてより優先される開口部8を予め特定しておくようにしている。ここでは、電極7Bに対応する開口部8のように、開口サイズがより小さい微細開口部をより優先して位置合わせするように、位置合わせ指針27bが設定されている。通信部28は通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3や電子部品実装ラインを構成する他装置との間でのデータ授受を行う。なお位置合わせ指針27bの内容としては、上述方式以外にも、基板種や部品種、半田の種類などに応じて、各種の位置合わせ指針を設定することができる。
次に図5を参照して、電子部品実装装置M3(電子部品実装部)の構成および機能を説明する。図5において,テーブル駆動部32によって水平方向および上下方向に駆動される位置決めテーブル31上には、キャリア保持部30が配設されている。キャリア保持部30は印刷検査装置M2から搬送され、半田印刷後の複数の個片基板5が保持されたキャリア4を保持する。キャリア保持部30の上方には、ヘッド移動機構33によって移動する実装ヘッド34およびカメラ35が配設されている。
実装ヘッド34は電子部品を吸着するノズル34aを備えており、実装ヘッド34は部品供給部(図示省略)から電子部品9をノズル34aによって吸着保持して取り出す。そして実装ヘッド34をキャリア4上に移動させて、キャリア4に対して下降させることにより、ノズル34aに保持した電子部品をキャリア4に保持された複数の個片基板5に実装する。実装ヘッド34、ヘッド移動機構33および実装ヘッド駆動部36は、部品供給部から実装ヘッド34によって電子部品をピックアップし、半田が印刷された各個片基板5にここでは実装する部品実装機構を構成する。
カメラ35はキャリア4の上面を撮像し、カメラ35によって取得された画像データは画像認識部38によって認識処理される。これにより、キャリア4に形成されたキャリア認識マーク4m、さらに複数の個片基板5のそれぞれに形成された基板認識マーク5mの位置を認識することが可能となっている。したがって、カメラ35,画像認識部38は、キャリア認識マークおよび基板認識マークの位置を認識可能な第2のマーク位置認識部となっている。
ヘッド移動機構33、位置決めテーブル31はそれぞれ実装ヘッド駆動部36、テーブル駆動部32によって駆動される。データ記憶部39には、作業対象となるキャリア4に保持された個片基板5おける実装位置座標を示す実装位置データが実装データとして記憶されるほか、開口部位置データ39a、半田位置データ39bが記憶されている。開口部位置データ39aは、開口部位置ずれ計測部M1Aによって取得されたデータが通信ネットワーク2および通信部40を介して転送され、データ記憶部39記憶される。半田位置データ39bは、印刷検査装置M2によって取得されたデータが同様に通信ネットワーク2および通信部40を介して転送され、データ記憶部39記憶される。
実装ヘッド34による部品実装動作において、実装制御部37がこの実装データに基づき、キャリア認識マーク4m、基板認識マーク5mの位置認識結果を加味して、テーブル駆動部32、実装ヘッド駆動部36を制御することにより、キャリア4に保持された個片基板5の実装位置へ電子部品が実装される。
本実施の形態においては、さらにデータ記憶部39にフィードフォワードされ記憶された位置補正データとを加味して動作制御を行うようにしている。すなわち、実装制御部37は内部処理機能として実装位置演算部37aを備えており、実装位置演算部37aは画像認識部38によるキャリア認識マーク4m、基板認識マーク5mの位置認識結果とフィードフォワードされた開口部位置データ39aおよび半田位置データ39bとを加味して、適正な実装位置を演算する処理を行う。そして部品実装機構による電子部品の実装動作においては、実装制御部37は実装位置演算部37aによって演算された実装位置に着地させるようになっている。通信部40は通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3や電子部品実装ラインを構成する他装置との間で、上述の開口部位置データ39aおよび半田位置データ39bなどの各種のデータ授受を行う。
なお上記電子部品実装システム1の構成においては、個別の開口部位置ずれ計測部M1Aとスクリーン印刷部M1Bとでスクリーン印刷装置M1を構成した例を示したが、開口部位置ずれ計測部M1Aの機能を同一装置でスクリーン印刷部M1Bに組み込んでスクリーン印刷装置M1を構成してもよい。また電子部品実装システム1ではスクリーン印刷装置M1と電子部品実装装置M3との間に独立して設けられた印刷検査装置M2を挟んだ構成となっているが、印刷検査装置M2の機能をスクリーン印刷装置M1もしくは電子部品実装装置M3に付属させるようにしてもよい。
すなわちスクリーン印刷装置M1において印刷後のキャリア4を対象として撮像が可能なようにカメラ13を配設し、位置ずれ算出部17,検査処理部16,画像認識部15、検査制御部14の機能をスクリーン印刷装置M1の制御機能に付加する。これにより、印刷後のキャリア4を対象としてスクリーン印刷装置M1内部で同様の検査処理および演算処理を行うことができる。電子部品実装装置M3にこれらの機能を付属させる場合においても同様であり、この場合には電子部品実装装置M3の内部において、スクリーン印刷装置M1から直接搬入されたキャリア4に対して同様の検査が部品実装動作に先立って実行される。また位置ずれ算出部17の演算機能のみを、電子部品実装装置M3によって実行させるようにしてもよい。
この電子部品実装システム1は上記の様に構成されており、以下この電子部品実装システム1によって実行される電子部品実装方法について、図6のフローに沿って各図を参照しながら説明する。上流側の基板供給部(図示省略)から供給され複数の個片基板5が保持されたキャリア4は、まずスクリーン印刷装置M1に受け渡される。ここではキャリア4はスクリーン印刷部M1Bによる半田印刷に先立って開口部位置ずれ計測部M1Aに搬入され、開口部位置ずれ計測が実行される(ST1)。
すなわち、図7(a)に示すように、キャリア保持部10に保持されたキャリア4の上方にカメラ13を位置させ、複数の個片基板5を順次撮像する。そして個別の個片基板5毎に、基板認識マーク5mの位置を基準として求められる電極7の正規位置と開口部8の実際の位置との開口位置ずれ量を求める。ここでは、図7(b)に示すように、電極7の正規位置の中心点を示す電極中心7cと開口部8の中心点を示す開口中心8cとの位置ずれ量(Δx、Δy)を画像認識により求める。
そして求められた位置ずれ量(Δx、Δy)を、開口部位置データとして位置ずれデータ記憶部18に記憶するとともに、スクリーン印刷部M1Bにフィードフォワードしてデータ記憶部27に開口部位置データ27aとして記憶させる(ST2)(開口部位置データ記憶工程)。
次いでキャリア4はスクリーン印刷部M1Bに搬入され、半田印刷が実行される。ここではまず一括して印刷の対象となる複数の個片基板5とスクリーンマスク23との位置合わせが行われる(位置合わせ工程)(ST3)。ここでは、データ記憶部27に記憶された開口部位置データ27aおよび予め設定された位置合わせ指針27bに基づいて、図7(c)に示すように、スクリーンマスク23のパターン孔23aと電極7に対応して形成された開口部8との位置合わせを実行する。
ここで図8を参照して、開口部位置データ27aおよび位置合わせ指針27bに基づく位置合わせの具体例について説明する。ここでは、前述のように、図2(b)に示す構成の個片基板5において、微細電極である電極7Bに対応する微細開口部8Bをより優先して位置合わせするように位置合わせ指針27bが設定された例について説明する。
図8(a)は、レジスト膜6で被覆された個片基板5をスクリーンマスク23の下面に当接させて位置合わせした状態を示している。ここで、図8(a)は、通常サイズの電極7に対応する開口部8、電極7Bに対応する微細開口部8Bに、パターン孔23aが位置合わせされた状態をそれぞれ示している。すなわち、図8(a)(ロ)では、微細開口部8Bは優先して位置合わせする対象となることから、パターン孔23aと開口部8とが極力一致するように、印刷制御部26によってテーブル駆動部22を制御する。このとき、優先して位置合わせする対象とならない他の開口部8については、図8(a)(イ)に示すように、対応するパターン孔23aと位置が完全には一致せず、位置ずれが残留した状態となる。
このようにして個片基板5との位置合わせが完了したならば、スクリーン印刷が実行される(ST4)。すなわち開口部8に対応してパターン孔23aが設けられたスクリーンマスク23に個片基板5を当接させ、スクリーンマスク23上に半田Sが供給された状態で、スキージ24cを摺動させるスキージング動作を行う。これにより、個片基板5に形成された電極7上の開口部8に半田Sを印刷する(スクリーン印刷工程)。
すなわち、図8(b)(ロ)では、パターン孔23aと微細開口部8Bとが高精度で一致していることから、半田Sは微細開口部8Bを正しく充たした状態で印刷される。これに対し図8(b)(イ)では、パターン孔23aと開口部8とが一致していないことから、半田Sは開口部8から位置ずれした状態で印刷される。
このようにして印刷が完了した後、印刷後の複数の個片基板5を保持したキャリア4は印刷検査装置M2に搬入され、印刷状態の検査とともに半田位置計測が行われる(ST5)。ここでは、図8(c)に示すように、カメラ13を半田印刷後の個片基板5の上方へ位置させ、複数の個片基板5を順次撮像する。これにより、図8(d)に示すように、個片基板5においてそれぞれの開口部8に半田Sが印刷された画像が取得される。
そしてこの画像を認識処理することにより、開口部8の開口中心8cと半田Sの半田中心Scとの位置との半田位置ずれ量ΔSx,ΔSyとが求められ、半田位置データとして位置ずれデータ記憶部18に記憶されるとともに、フィードフォワードデータとして通信ネットワーク2を介して電子部品実装装置M3に伝達される。すなわち、ここではスクリーン印刷装置M1によって開口部8を目標位置として半田Sを印刷した後に、印刷された半田Sを光学的に認識することにより求められた半田Sの位置と開口部8の位置との半田位置ずれ量を半田位置データとして記憶する(ST6)(半田位置データ記憶工程)。
ここで図8(d)(イ)では、パターン孔23aと開口部8との位置ずれに応じた半田位置ずれ量ΔSx,ΔSyが取得され、また図8(d)(ロ)では、パターン孔23aと微細開口部8Bとが高精度で一致していることから、開口中心8cと半田中心Scとはほとんど重なった状態となり、位置ずれ量はきわめて小さい。
そして半田位置計測後の個片基板5を保持したキャリア4は電子部品実装装置M3に搬入され、部品実装機構による部品実装作業の対象となる。この部品実装作業は、電子部品9を実装ヘッド34によって個片基板5へ移送搭載する部品実装機構を、データ記憶部39に記憶された開口部位置データ39a、半田位置データ39bに基づき実装制御部37によって制御することによって実行される(ST7)(実装制御工程)。
この実装制御工程においては、実装位置演算部37aによって開口部位置データ39a、半田位置データ39bに基づき、実装対象の電子部品9を個片基板5に着地させるべき実装位置を設定する演算を行い、設定された実装位置に実装ヘッド34によって電子部品9を着地させる。図9は、この実装位置演算の実行例を示している。ここでは、個片基板5に形成された1対の電極7のそれぞれに対応する開口部8に、方形チップ型の電子部品9の両端部に形成された端子部9aを半田Sを介して着地させる実装形態を対象としている。
なお、開口部位置データ39a、半田位置データ39bのデータ形態として、ここでは位置ずれ量を用いているが、当該個片基板5における座標値、すなわち基板認識マーク5mを基準とする基板座標系における座標値によって開口部位置、半田位置を特定するようにしてもよい。いずれの方法によっても実質的に等価の演算結果を得ることができる。
この実装形態では、図9(a)に示すように、図8(c)、(d)において求められた1対の開口部8の重心位置8*と、半田Sの重心位置S*とに基づいて電子部品9を着地させるべき実装位置を求める。すなわち、重心位置8*と重心位置S*との中点を求め、この中点を実装位置PMに設定して実装座標を求める。そして個片基板5に電子部品9を実装する際には、このようにして演算された実装位置PMを目標として、実装ヘッド34の位置制御を行う。
実装位置PMを上記のような方法で設定することにより、以下に説明するような効果を得る。すなわち、半田Sの印刷位置が開口部8の位置と一致せずに位置ずれ生じている場合において、開口部8の位置を基準として電子部品9を実装してリフローに送った場合には、半田の表面張力の不均一によって「チップ立ち」が発生しやすい。また、検出された半田位置を基準にして電子部品9を実装してリフローに送った場合には、溶融半田が隣接する電極に吸い寄せられることによって「ブリッジ」が発生しやすい。これに対し、実装位置PMを上記方法で設定することにより、「チップ立ち」のような開口部位置基準において発生しやすい実装不良の発生確率を低減させるともに、「ブリッジ」のような半田位置基準において発生しやすい実装不良の発生確率を低減することができ、全体としての実装不良の発生率を低く抑えることが可能となる。
なお上記実施の形態では、実装位置PMを開口部8の重心位置8*と半田Sの重心位置S*との中点に設定する例を示しているが、基板・電子部品・半田の種類の組み合わせに応じて、実装位置PMを開口部8の重心位置8*と半田Sの重心位置S*のいずれか側に偏った位置に設定してもよい。この場合には、基板の電極形状や電子部品のサイズ・形状、半田Sの粘度などの組み合わせによって、個別の実装不良の発生度数分布は種々異なることから、実装位置PMを小刻みにずらして実装を試行し、実装位置PMの位置と実装不良の発生度合いとの関連を予め実験的に求めておく。そして全体としての実装不良の発生が最も少なくなるような位置に実装位置PMを設定する。
この後、電子部品が実装された個片基板5を保持したキャリア4はリフロー装置M4に搬入される。そしてここで所定の温度プロファイルに従って個片基板5を加熱することにより、半田S中の半田成分が溶融し、電子部品9の端子部9aは開口部8内で露呈された電極7に半田接合される。これにより電子部品実装システム1による電子部品実装処理の一連の作業処理が完了し、その後必要に応じて実装後検査が実行される。
上記説明したように本実施の形態では、レジスト膜6が電極7に設定された開口部8を除く範囲に形成された形態の個片基板5を対象とするスクリーン印刷において、開口部8の位置を光学的に認識して電極7の正規位置と開口部8の実際の位置との位置ずれ量を開口部位置データとして求めておき、スクリーン印刷に先立って実行される個片基板5とスクリーンマスク23とを位置合わせする位置合わせ工程において、開口部位置データに基づいて位置合わせを実行するようにしている。これにより、開口部8の位置ずれに起因する印刷不良を排除して良好な印刷位置精度を確保することができる。
また、スクリーン印刷部M1Bによる半田印刷に先立って開口部8を光学的に認識することにより求められた電極7の正規位置と開口部8の実際の位置との開口位置ずれ量を開口部位置データとして記憶させ、さらにスクリーン印刷部M1Bによって開口部8を目標位置として半田Sを印刷した後に、印刷された半田Sを光学的に認識することにより求められた半田Sの位置と開口部8の位置との半田位置ずれ量を半田位置データとして記憶させ、電子部品9を実装ヘッド34によって個片基板5へ移送搭載する部品実装機構を制御する実装制御工程において、開口部位置データおよび半田位置データに基づいて部品搭載機構を制御することにより、電子部品9を開口部8と印刷された半田Sとの間に設定された実装位置に着地させるようにしている。これにより、レジスト膜6が電極7に設定された開口部8を除く範囲に形成された形態の個片基板5を対象として、良好な実装位置精度を確保することができる。