本開示は、一般に、制御システムに関し、より詳細には、荷重調節式の機械のエコノミー動作モードを有する制御システムに関する。
ブルドーザ、ホイールローダ、モータグレーダ、および他の種類の重機を含む移動式機械を、種々の仕事に用いることが可能である。これらの仕事を遂行するため、機械は、典型的には、機械を推進させるために機械の牽引装置に連結された内燃エンジンなどの原動機を含む。また、原動機は、機械に取り付けられた1つ以上の工事器具を駆動するように連結することも可能である。
移動式機械の一種は、「高アイドル」機械として既知である。高アイドル機械の動作中、原動機の回転数は、一般に、牽引装置および工事器具により要求される可能性がある最大パワー出力を速やかに発生させるために十分なレベルに設定される。すなわち、すべての条件下で機械および工事工具を移動させるために十分なパワーを機械が有することを保証することを助けるため、原動機は、機械により遂行されている現在の仕事が、原動機に少ないパワーを要求する場合であっても、所定の高い回転数に設定される。変化する要求に対する応答性は非常に高いかもしれないが、このような高いレベルの出力は、いくつかの状況において非効率的であるかもしれず、高い燃料消費、過度の排気排出、上昇した温度、および高いレベルのエンジンノイズを結果的に生じさせる可能性がある。
高アイドル機械に関連付けられた燃料消費、排気排出、温度、およびノイズを低下させる1つの方法が、2009年7月2日に公開されたRoth他による「特許文献1」(’446号公報)に開示されている。「特許文献1」は、機械の走行方向を監視するとともに走行方向に基づいて機械のエンジン回転数を選択的に調節する制御システムを有する高アイドル機械を開示している。特に、制御システムが機械の後進駆動方向を検出すると、制御システムは、機械のエンジン回転数を高アイドル回転数から低下させる。後進方向への駆動中、機械の工事工具は、非活動状態であるか、または地面との係合が減少した状態であり、従ってエンジンへ要求されるパワーが低下する。そのため、エンジン回転数を後進走行中に低下させることにより、機械の応答性に大きい負の影響を与えることなく、燃料消費、排出、およびノイズを改善することが可能である。
開示の制御システムは、上記の問題および/または従来技術の他の問題の1つ以上を克服することを目的とするものである。
一態様において、本開示は、移動式機械のための制御システムを目的とする。制御システムは、移動式機械を推進させるように構成されたエンジンと、所望されるエンジン回転数および所望される動作モードを指示するように構成された少なくとも1つのオペレータ入力装置と、エンジンおよび少なくとも1つのオペレータ入力装置と通信するコントローラとを含んでもよい。コントローラは、エンジンの現在のトルクを利用可能なトルクと比較するとともに、所望される動作モードおよび比較結果に基づいてエンジンの回転数を所望されるエンジン回転数から選択的に調節するように構成されてもよい。
別の態様において、本開示は、移動式機械を制御する方法を目的とする。方法は、移動式機械の所望されるエンジン回転数および移動式機械の所望される動作モードを指示する入力を受信するステップを含んでもよい。また、方法は、移動式機械の現在のエンジントルクを利用可能なトルクと比較するステップと、所望される動作モードおよび比較結果に基づいて、移動式機械のエンジン回転数を所望されるエンジン回転数から選択的に調節するステップとを含んでもよい。
例示的な開示の機械の略図である。
図1の機械とともに用いてもよい例示的な開示のパワーシステムの概略図である。
図2に示すパワーシステムの例示的な動作を示すフローチャートである。
図1は、機械10の例示的な実施形態を示す。機械10は、採鉱、建設、農業、または当該技術において既知の別の産業などの産業に関連付けられた何らかの種類の動作を行う移動式機械であってもよい。例えば、機械10は、ドーザ、ホイールローダ、掘削機、バックホー、モータグレーダ、または他のいずれかの好適な動作を行う機械などの土木機械であってもよい。機械10は、パワートレイン12と、パワートレイン12を制御するために用いられるオペレータステーション14とを含んでもよい。いくつかの実施形態において、機械10は、パワートレイン12の一部により駆動され、また、オペレータステーション14により制御される1つ以上の工事工具15を含んでもよい。
図2に示すように、パワートレイン12は、エンジン16、少なくとも1つの牽引装置18、およびエンジン16と牽引装置18との間に接続された変速機20を含んでもよい。エンジン16は、燃料と空気との混合物を燃焼させることで、速度成分とトルク成分とを含むパワー出力を生成してもよい。変速機20は、機械10を所望される速度で推進させるために牽引装置18に送られるエンジン16により生成された速度成分とトルク成分との比を調節してもよい。また、エンジン16は、工事工具15を操作するために要求されるパワーを提供するために用いてもよい。
エンジン16は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガス燃料エンジン(例えば、天然ガスエンジン)、または当業者に明白な他のいずれかの種類の燃焼エンジンを具現化してもよい。エンジン16は、エンジン16内で燃焼される燃料および空気の量によりパワー出力を発生させてもよい。特に、所与のエンジン回転数のために、および十分な空気の供給がある状態で、エンジン16は、最大でトルク限界量までの燃料を提供されてもよい。所与のエンジン回転数のための燃料の量がトルク限界量であるとき、エンジン16は、その回転数についての最大量のトルクを発生させ得る。トルク限界量未満の燃料がエンジン16内で燃焼されているとき、エンジン16は、利用可能な追加のトルク出力容量を有し得る。1つ以上のセンサ22をエンジン16に関連付け、現在のエンジン回転数およびエンジン16の現在のトルクを監視させ、対応する信号を生成するように構成してもよい。一例において、現在のトルクに対応するエンジン16の現在の燃料設定を監視することにより、現在のトルクを監視してもよい。
機械10は、高アイドル機械であってもよい。特に、機械10は、高アイドルとして既知の上昇したエンジン回転数において通常動作するように設計されてもよい。例えば工事工具15および/または牽引装置18経由で、機械10に荷重が印加されると、エンジン16のトルク出力が増加される間、機械10はぎくしゃくし、エンジン16の回転数は上昇したエンジン回転数から下降し得る。機械10への荷重が除去されると、機械10は、将来の荷重イベントを見込んで高アイドルエンジン回転数を回復するように試みてもよい。一実施形態において、機械10の高アイドルエンジン回転数は、約2100rpmであってもよい。
エンジン16の所望される回転数は、オペレータステーション14内に配置された入力装置23を介してオペレータにより設定されてもよい。一例において、入力装置23は、約750rpmの低アイドル回転数に対応する最も左の位置から高アイドル回転数に対応する最も右の位置まで移動可能なダイヤルであってもよい。入力装置23は、低アイドルと高アイドルとの間の異なる回転数に対応する移動範囲を通じて、連続的に、または別個のステップで、移動されてもよい。図2の例において、入力装置23は、複数の高アイドル位置、例えば通常の高アイドル位置23a、第1のエコノミーモード高アイドル位置23b、および第2のエコノミーモード高アイドル位置23cを有してもよい。以下でより詳細に説明するように、エンジン16は、入力装置23の高アイドル位置に依存して、異なるように制御されてもよい。通常の高アイドルモードは、機械10の標準的な動作を可能にしてもよい。第1および第2のエコノミーモードは、エンジン回転数を選択的に低下させることにより、改善されたレベルの燃料消費、排気排出、エンジンノイズなどを提供してもよい。
変速機20は、無限に可変の出力比範囲を有する無段変速機(CVT)を具現化してもよい。CVTは、一般に、駆動要素、従動要素、および比コントローラで構成されている。変速機20は、油圧式CVTとして図2に示されており、駆動要素は、可変容量ポンプなどのポンプ24であり、従動要素は、可変容量モータなどのモータ26であり、比コントローラは、ポンプ24およびモータ26の一方または両方に関連付けられた可変容量機構28で構成されている。ポンプ24は、エンジン16により駆動されることで流体を加圧し、かかる流体は、次いで、モータ26に方向付けられ、モータ26を回転させることにより牽引装置18を駆動する。ポンプ24および/またはモータ26の容量を、容量機構28を介して選択的に調節することにより、変速機20の比を調節し(すなわち、エンジン16により生成され牽引装置18に送られるパワーにおける速度成分対トルク成分比を変更し)得る。
図2では油圧式CVTとして示したが、代替として、変速機20は、所望される場合、電気式CVTを具現化することも可能であると考えられる。電気式CVTは、発電機と、発電機からの電流を受ける電気モータと、変速機20のパワー出力における速度対トルク比を調節する比コントローラとして機能する電子回路とを含んでもよい。また、代替として、変速機20は、所望される場合、機械式有段変速機を具現化するか、または追加的に組み込むことも可能であると考えられる。
変速機20は、ニュートラルギア比、無限の組み合わせの前進ギア比、および無限の組み合わせの後進ギア比を含んでもよい。オペレータ入力装置30からの信号に基づいて、容量機構28は、変速機20をニュートラルギア比からいずれかの組み合わせの前進または後進ギア比にシフトさせてもよい。例えば、オペレータは、入力装置30を前進(F)、ニュートラル(N)、または後進(R)に対応する方向に傾けることで、所望される走行方向を選択してもよい。オペレータは、次いで、入力装置30上のボタンを押圧することで、所望される走行方向における変速機20の所望されるギア比を指示してもよい。所望されるギア比は、入力装置23経由で受信された所望されるエンジン回転数とともに、機械10の所望される走行速度を少なくとも部分的に定義してもよい。所望される走行方向、ギア比、および走行速度は、所望される場合、上記以外の方法で選択されてもよいと考えられる。また、所望される場合、オペレータ入力装置30は、機械10の操舵および/または工事工具15の移動など、追加の動作を制御するために用いてもよいと考えられる。
1つ以上のセンサ32を変速機20に関連付けることで、変速機20の現在のギア比を指示する信号を生成してもよい。センサ32は、例えば、変速機20の回転数入力(例えば、ポンプ24の回転数)および回転数出力(例えば、モータ26の回転数)を監視するように構成された回転数センサを具現化してもよい。回転数入力および回転数出力に基づいて、変速機20の現在のギア比を計算してもよい。変速機20の現在のギア比は、所望される場合、ポンプ24およびモータ26の容量を監視するなど、別の方法で判定してもよいと考えられる。
牽引装置18は、変速機20により提供される回転運動を機械10の並進運動に変換してもよい。図1の実施形態において、牽引装置18は、機械10の各側に配置された軌道を含む。代替として、牽引装置18は、車輪、ベルト、または他の従動牽引装置を含んでもよい。牽引装置18は、変速機20により駆動されることで、モータ26の出力回転により回転してもよい。所望される場合、最終減速ギアセット(不図示)をモータ26と牽引装置18との間に配置してもよいと考えられる。
数多くの異なる工事工具15を、単一の機械10に取り付け可能であり、オペレータステーション14を介して制御可能であってもよい。工事工具15は、リッパ、バケット、ブレード、ショベル、または当該技術において既知の他のいずれかの仕事を行う装置など、特定の仕事を行うために用いられるいずれの装置を含んでもよい。工事工具15は、直結ピボットを介して、結合システムを介して、1つ以上の油圧シリンダを介して、モータを介して、または他のいずれかの適切な方法により、機械10に接続されてもよい。工事工具15は、枢動、回転、摺動、揺動、リフト、または当該技術において既知のいずれかの方法で機械10に対して移動してもよい。
工事工具15は、エンジン16により駆動されてもよい。一例において、工事工具15は、エンジン16に接続されるとともにエンジン16により駆動されるポンプ33から高圧流体を受ける、例えばシリンダまたはモータである、油圧アクチュエータを含んでもよい。高圧流体は、工事工具15が土と係合する際に工事工具15のための作動力を提供するために用いてもよい。このようにして、工事工具15の係合は、ポンプ33を介してエンジン16に荷重するように機能し得る。
オペレータステーション14は、そこからオペレータが機械10を制御する場所であってもよい。オペレータステーション14は、機械10上または機械10外に配置され、入力装置23および入力装置30などの1つ以上のオペレータ入力装置を含んでもよい。オペレータ入力装置23、30は、オペレータの座席に近接して配置されてもよく、コンソールに関連付けられても関連付けられなくてもよい。所望される場合、追加の入力装置(不図示)をオペレータステーション14内に配置し、例えば、単軸または多軸ジョイスティック、ホイール、ノブ、プッシュプル装置、ボタン、ペダル、スイッチ、および当該技術において既知の他の入力装置を具現化してもよい。オペレータステーション14の入力装置により生成された信号を用いて、工事工具15、エンジン16、および/または変速機20の動作を調整してもよい。
コントローラ34を機械10に関連付け、機械10の他のコンポーネントと通信させることで、機械10の性能に影響を与えてもよい。特に、コントローラ34は、センサ22および32、入力装置23および30、ならびに容量機構28とともに、制御システム36を形成してもよく、かかる制御システム36は、以下でより詳細に説明するように、オペレータ入力および感知された機械のパラメータに応答して、エンジン16の回転数を選択的に低下させ、および/または、変速機20のギア比を変更するように機能してもよい。
コントローラ34は、エンジン16、センサ22および32、入力装置23および30、容量機構28、ならびに機械10の他のコンポーネントから受信された信号に応答してエンジン16および/または変速機20の動作を制御するための手段を含む、単一または複数のマイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)などを具現化してもよい。数多くの市販のマイクロプロセッサを、コントローラ34の機能を行うように構成することが可能である。コントローラ34は、他の性能に関係するパワーシステムの機能を制御するマイクロプロセッサとは別のマイクロプロセッサを容易く具現化することが可能であるか、または、コントローラ34は、一般パワーシステムのマイクロプロセッサと一体的であるとともに数多くのパワーシステムの機能および動作モードを制御可能であることが、理解されるべきである。一般パワーシステムのマイクロプロセッサと別であれば、コントローラ34は、データリンクを介してまたは他の方法により一般パワーシステムのマイクロプロセッサと通信してもよい。電力供給回路、信号処理回路、アクチュエータドライバ回路(すなわち、ソレノイド、モータ、または圧電アクチュエータを駆動する回路)、および通信回路を含む他の様々な既知の回路を、コントローラ34に関連付けてもよい。
コントローラ34は、内部メモリ内に格納された1つ以上のマップを含んでもよいと考えられる。これらのマップの各々は、数ある中でも、燃料限界(例えば、トルク燃料限界、スモーク限界等)、異なる動作モード(例えば、通常、第1のエコノミー、第2のエコノミー等)、走行方向(例えば、F、N、R)、および変速比を、異なる所望されるエンジン回転数、走行速度、トルク比、および燃料設定に関係付けるために用いてもよいテーブル、グラフ、および/または数式の形態におけるデータの集合を含んでもよい。これらのマップの各々は、コントローラ34による使用のために自動的に選択されるか、またはオペレータにより手動で選択され、機械10の性能に基づいて周期的に更新されてもよい。
入力装置30を介して選択可能な各動作モードは、機械10の調整中にコントローラ34により用いられてもよい条件および限界値のマッピングされたセットに対応してもよい。条件は、1つ以上の所定のアルゴリズムを介して測定値またはシミュレート値を限界値と比較することにより満たされてもよい。限界値は、コントローラ34のマップに格納されてもよいし、および/または、オペレータにより供給されてもよい。限界値は、例えば、機械10の走行方向、機械10の走行速度、エンジン16の最小および/または最大許容回転数、エンジン16の現在のまたは利用可能なトルク出力(すなわち、現在の燃料設定または燃料限界)、ならびに変速機20の現在の、所望される、および/または最大のギア比を含んでもよい。限界値は、コントローラ34により単体またはいずれかの組み合わせで用いられてもよい。
また、各選択可能な動作モードは、コントローラ34が所望される動作モードのためにエンジン回転数および/または変速機のギア比を調整するために用いてもよい設定点値に対応してもよい。例えば、通常の高アイドルモードのための設定点値は、約2100rpmの所望されるエンジン回転数に対応してもよい。第1および第2のエコノミーモードのための設定点値は、約1600rpmの所望されるエンジン回転数に対応してもよい。動作モード間の自動的な遷移をトリガする設定点値は、トルク閾値、例えば、利用可能なトルク出力(すなわち、トルク限界燃料設定)よりも約10%小さい現在のエンジントルク(すなわち、現在の燃料設定)に対応する第1のトルク閾値、および利用可能なトルクの95%にほぼ等しい現在のエンジントルクに対応する第2のトルク閾値に関連付けられてもよい。エコノミーモードの解除をトリガする、またはエコノミーモードの完全な使用を制限する追加の設定点値は、変速機20の最大許容ギア比、例えば約1.6のギア比、および対応する走行速度、例えば約10km/hに関連付けられてもよい。
入力装置30を介して受信された入力に応答して、コントローラ34は、機械10の動作を1つの動作モードから別の動作モードに(例えば、通常の高アイドルモードから第1または第2のエコノミーモードに)変更してもよい。各動作モード内において、コントローラ34は、監視された入力、格納されたマップからのデータ、内部アルゴリズム、および格納された設定点値に基づいてエンジン16の回転数設定および変速機20のギア比を調節してもよい。コントローラ34は、例えばエンジン16の利用可能な燃料および/または空気流入量を低下または増加させる(すなわち、利用可能な潜在的なエネルギーを変更する)ことにより、エンジン16の回転数を調整してもよい。変速機20のギア比の修正は、例えば容量機構28を介してポンプ24および/またはモータ26の容量を選択的に増加または減少させることにより、達成してもよい。この調整により、コントローラ34は、変化する機械10に対する荷重、走行条件、および機械のオペレータの要望に効率的に応答することが可能になり得る。コントローラ34は、バングバング制御、比例制御、比例積分微分制御、適応制御、モデルベース制御、論理ベース制御、および当該技術において既知の他のいずれかの制御方法など、いずれの制御アルゴリズムを用いてもよい。コントローラ34は、フィードフォワードおよび/またはフィードバック制御を用いてもよい。
図3は、コントローラ34により実施されてもよい機械10を制御する例示的な方法を略示する。図3は、以下で詳細に検討する。
開示の制御システムは、燃料消費、排気排出、エンジン温度、およびエンジンノイズのより大きい制御が所望されるいずれの機械にも適用可能であってもよい。特に、開示の制御システムは、各モードがエンジンおよび関連付けられた変速機の動作に異なる影響を与える、2つのエコノミーモードを含む複数の選択可能な動作モードを提供してもよい。さらに、開示の制御システムは、機械の荷重および所望される走行速度に基づいてエンジンおよび変速機を自動的に調整してもよい。機械の荷重および所望される走行速度によるこの調整は、機械の応答性に大きい影響を与えることなく、燃料消費、排気排出、エンジン温度、およびエンジンノイズを全体的に低下させ得る。ここで、機械10の動作について説明する。
機械10は、高アイドル機械であってもよく、そのため、高トルク出力を要求する機械10を用いる工事を始める前に、オペレータは、機械10のスロットル位置を高アイドル回転数に設定してもよい。オペレータは、次いで、前進走行(F)、後進走行(R)、またはニュートラル(N)を含む機械10の所望される走行方向を選択し、選択された走行方向における所望されるギア比を選択してもよい。上記のように、機械10のスロットル位置は、入力装置23を介して、所望される走行方向およびギア比は、入力装置30を介して、設定されてもよい。所望されるスロットル位置およびギア比は、ともに、機械10の所望される走行速度を定義してもよい。コントローラ34は、スロットル設定、所望される走行方向、および所望されるギア比を受信し(ステップ100)、次いで、いずれかの高アイドル動作モードがオペレータにより選択されたかを受信された入力に基づいて判定してもよい(ステップ120)。
オペレータが通常の動作モードを選択すると、コントローラ34は、エンジン16の現在の回転数を選択された高アイドル回転数の2100rpmに設定し(ステップ130)、制御をステップ100に戻してもよい。オペレータは、機械10の高い応答性と引き替えに経済性を犠牲にしてもよい仕事について通常の動作モードを選択してもよい。コントローラ34は、オペレータが新しい動作モードを選択するまで通常モードのままであってもよい。
オペレータが第1のエコノミー動作モードを選択すると(ステップ120:モード1)、コントローラ34は、入力装置30と通信することで、オペレータにより現在要請されている所望される走行方向に関するデータを受信してもよい。すなわち、コントローラ34は、前進、ニュートラル、または後進がオペレータにより入力装置30を介して選択されたことを判定してもよい(ステップ140)。第1のエコノミーモードとともに前進走行方向が選択されたら、コントローラ34は、現在のエンジン回転数を選択されたスロットル設定により設定し(ステップ150)、制御をステップ100に戻してもよい。
しかし、コントローラ34がステップ120においてエコノミーモード1であると判定し、ステップ140において後進またはニュートラルが選択されたと判定したら、コントローラ34は、現在のエンジントルクの利用可能なエンジントルクに対する比を監視してもよい(ステップ170)。上記のように、エンジントルクは、所与のエンジン回転数における燃料量により表され得る。従って、現在のエンジントルクの利用可能なエンジントルクに対する比は、現在の燃料設定のエンジン16の所与の回転数についてのトルク燃料限界に対する比にほぼ等しくなり得る。コントローラ34は、このトルク比を閾値比と比較し(ステップ180)、比較結果に基づいて、機械の応答性に大きい負の影響を与えることなく、エンジン回転数の低下を生じさせることが可能であるかを判定してもよい。現在のエンジントルクの現在のエンジン回転数における利用可能なエンジントルクに対する比が約90%よりも大きければ(すなわち、エンジン16のトルク出力量が利用可能なトルク出力に近ければ)(ステップ180:No)、コントローラ34は、何も低下させることなく、現在のエンジン回転数を選択されたスロットル設定により設定してもよい(ステップ150)。この特定の状況において、エンジン回転数を低下させると、エンジントルク出力がオペレータまたは機械の要求を満たすために不十分なものとなる場合があり、そのため、コントローラ34がこの状況において現在のエンジン回転数を低下させない場合がある。
しかし、現在のエンジントルクが利用可能なエンジントルクに約10%以上満たない場合(ステップ180:Yes)、コントローラ34は、エンジン16の現在の回転数を所望されるエンジン回転数から(すなわち、高アイドルのスロットル設定から約1600rpmまで)低下させ、低下したエンジン回転数において機械10の所望される走行速度を維持するように変速機20の比を調節してもよい(ステップ190)。例えば、高アイドルエンジン回転数の2100rpmを所望されるギア比に組み合わせた結果、機械の走行速度が後進方向に2km/hとなる場合、コントローラ34が現在のエンジン回転数を1600rpmに低下させるとき、コントローラ34は、低下したエンジン回転数において結果的に生じる機械の走行速度がやはり2km/hであるように、対応する量だけ変速機20のギア比を同時に増加させてもよい。このようにして、機械の性能に負の影響を与えることなく、恐らくはオペレータがエンジン回転数の変化に気付くことさえなく、燃料効率、排出、ノイズなどを改善し得る。オペレータは、燃料消費、温度、ノイズなどの低下が所望されるが高い性能がやはり要求される仕事について、第1のエコノミー動作モードを選択してもよい。
第1のエコノミーモードにおける動作中、現在のエンジントルクの利用可能なエンジントルクに対する比が増加する(すなわち、現在のエンジン燃料設定が増加してトルク燃料限界に近付く)ことが可能であり得る。この理由のため、コントローラ34は、現在対利用可能エンジントルク比を監視し続け(ステップ200)、比較結果に基づいて選択的にエンジン回転数を再設定してもよい(ステップ210)。すなわち、第1のエコノミーモードにおける機械10の動作中、現在対利用可能エンジントルク比が約95%に到達するかまたは約95%を超過するとき、コントローラ34は、エンジン16の回転数を1600rpmから2100rpmまで増加させてもよい。代替として、上昇するトルク値に起因するエンジン回転数の増加は、漸増的であり、高アイドル未満のエンジン回転数が結果的に生じてもよいと考えられる。例えば、現在のトルク対利用可能なトルクの比が約95%を超過するとき、第1のエコノミーモード中の後進走行速度の増加は、1600rpmから1800rpmのみへの増加であってもよく、いくつかの状況において、比が約100%に到達する際、2100rpmまでさらに増加してもよい。
オペレータが第2のエコノミー動作モードを選択すると(ステップ120:モード2)、制御は、機械10が後進方向に走行しているかを確認することなく、ステップ170に直接進行してもよい。すなわち、2100rpmから1600rpmまでの上記のエンジン回転数の低下は、機械10の走行方向に関わらず、現在対利用可能エンジントルク比が90%未満であればいつでも実施されてもよい。第2のエコノミー動作モードは、燃料消費、ノイズ、温度などを最大限に低下させるために選択されてもよい。
上昇する現在対利用可能エンジントルク比に応答したステップ210後のエンジン回転数の再設定は、所望される場合、第2のエコノミーモード中に機械10の走行方向に依存して異なってもよいと考えられる。すなわち、第2のエコノミーモードにおける機械10の前進走行中に比が95%を上回って増加するとき、エンジン回転数は、1600rpmから高アイドル回転数の2100rpmに再設定されてもよい。しかし、第2のエコノミーモードにおける機械10の後進走行中、エンジン回転数は、上昇するトルク比に応答してより少ない量だけ、例えば1600rpmから1800rpmのみに、上昇させてもよい。
また、エコノミーモードの使用中、変速機20のギア比および/または機械10の走行速度に最大限界が課されてもよい。特に、変速機20のギア比を増加させることで低下したエンジン回転数において所望される走行速度を維持する際、ギア比は、最終的に閾値に到達してもよい。変速機20のギア比を、閾値を越えて増加させると、変速機20のギア比および/または機械10の走行速度が許容可能な限界を越えて増加することが可能であり得る。この理由のため、エコノミー動作モードは、最大の変速機のギア比の約1.6および/または最大の走行速度の約10km/hに制限されてもよい。
いくつかの状況において、最大のギア比/走行速度の限界により、第1または第2のエコノミーモード中にエンジン回転数の低下がほとんどまたはまったく生じない結果となり得る。例えば、機械10が2100rpmにおいて1.4のギア比で走行している場合、低下したエンジン回転数の1600rpmにおいて同じ走行速度を維持するために、ギア比は、約1.84に増加する必要があろう。しかし、変速機のギア比が1.6に制限され得るため、エンジン16を低下させることが可能な最低の速度は、約1837rpmであろう。そのため、この状況において、コントローラ34は、現在対利用可能トルク比が90%を下回って下降するときにエンジン16の回転数を低下させ得るが、回転数の低下量は、約260rpmのみであり得る。
他の状況において、ステップ190におけるエンジン回転数の低下後、オペレータは、機械10の増加した走行速度への要望を指示してもよい。走行速度の所望される増加に応答して、コントローラ34は、変速機20の最大のギア比が到達されるまで変速機20のギア比を増加させてもよい。一旦変速機20の最大のギア比が到達されても、所望される走行速度の増加に達していなければ、コントローラ34は、次いで、エンジン16の回転数を1600rpmから上昇させ始めてもよい。
また、通信不全の状況において、エコノミー動作モード中にトルク比(すなわち、現在のトルクの利用可能なトルクに対する比)以外の入力を利用して機械10を制御してもよいと考えられる。例えば、現在のトルクの信号が利用不可能なとき、現在のエンジン回転数を所望されるエンジン回転数と比較し、エコノミー動作モードが実施されるべきかを判定することが可能であり得る。すなわち、高アイドル回転数の2100rpmに設定されている場合、機械10のエンジン16がぎくしゃくして1900rpmになると、対応するトルク比は、100%で計算されているだろうと判定することが可能である。この状況において、エコノミー動作モードは、許容されなくてもよい。
荷重調節式エコノミーモードシステムのいくつかの利点を実現してもよい。特に、開示のシステムは、複数の選択可能な機械動作モードを提供し、エコノミーモード中に荷重が大パワーを要求するときにエンジン回転数および変速機のギア比を自動的に変調させてもよい。選択可能なエコノミーモードと変速機の調節とのこの組み合わせは、機械の応答性を大きく損なうことなく、増加した効率を提供し得る。
本発明の範囲から逸脱することなく開示の制御システムに様々な修正および変形を行うことが可能であることが、当業者には明白であろう。明細書を検討し、本明細書中に開示の制御システムを実施することにより、制御システムの他の実施形態が当業者には明白であろう。例えば、コントローラ34は、所望される場合、特定の走行方向の選択後、エンジン回転数の低下を行う前の期間を遅延させてもよいと考えられる。明細書および例は、例示のみのためのものであると考えられるべきであり、真の範囲は、後続の請求項およびそれらの均等物により指示されることが意図される。