JP2013235149A - 映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置、映写用スクリーンの製造方法 - Google Patents

映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置、映写用スクリーンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】映写面へのマーカーを用いた書き込みやマーカーインクの消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を提供する。
【解決手段】前記スクリーンは、基材の表面に形成された塗膜層が、バインダー樹脂と、複数の微粒子と、表面調整剤とを含み、前記表面調整剤が、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含み、前記塗膜層の前記基材と接する面とは反対側の露出面が、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成された構成を有する。これにより、微粒子の上部がなだらかに覆われて滑らかな表面凹凸形状を実現でき、マーカーインクの消去性が特に良好なものとなる。そして、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像が得られるとともに、映写面へのマーカーを用いた書き込みやマーカーインクの消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を実現することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、映写面にマーカーによる書き込みや消去ができる映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置、映写用スクリーンの製造方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータ等に接続されたプロジェクター装置からのデータを映写するとともに、ホワイトボード用マーカーによる書き込み及び消去を行うことができるホワイトボード装置が利用されている。
この種のホワイトボード装置は、特徴として、映写面を観やすくするためにプロジェクターからの映写光を拡散反射させる表面加工が施されたスクリーンを有する。この種のホワイトボードに適した映写用スクリーンとして、ホワイトボードとして使用できるとともに、映写スクリーンとしても使用できるホワイトボード及び映写スクリーン兼用フィルムについて、表面の光沢を少なくし、かつ、映写面にマーカーで書き込みや消去ができるように、白色合成樹脂フィルムの表面を微細凹凸面に形成し、この微細凹凸面に硬質ハードコート層を被覆したものがある(特許文献1参照)。
このような構成を有するフィルムは、表面が微細凹凸面であるために、光の拡散反射性に優れており、鮮明な映写画像を得ることができる。しかしながら、ホワイトボードとして用いた場合、マーカーのインクが表面の微細凹部に残存してしまい、ホワイトボード上の筆記データ(マーカーインク)をきれいに消去することが困難であった。この結果、繰り返し使用するうちに、完全に拭き取れなかったインクの蓄積により、ホワイトボードが汚れてしまい、使用に耐えなくなるという問題があった。
消去性を良好にするためには、表面凹凸をより平坦にすればよい。例えば筆記シートとして、エンボス加工による凹凸を有する表面クリア層、ベースフィルム層、及び粘着剤層からなるものがある(特許文献2参照)。このようにエンボス加工されたシートは、先の特許文献1に開示されているフィルムのように、表面が微細な凹凸面とはならないので、消去性が改善される。そして、表面の凹凸を適度に形成すれば、従来のプロジェクター装置においては、防眩性についても改善することができた。
特開平11−277984号公報 特開2010−046961号公報
しかしながら、近年、プロジェクター装置の光源が高輝度化している。以前のプロジェクター装置であれば、設置している会場の照明を消さないと、映写画像は観にくかった。これに対して、近年の高輝度なプロジェクター装置を用いれば、特に会場の照明を消さなくても、映写画像を快適に観ることができる。そうなると再び、映し出された映像の中央にプロジェクターの光源が明るいスポット状に見える現象、いわゆるホットスポットが発生し、映写性が低下してしまう。以前の低い輝度でしか映写できないプロジェクター装置であれば防眩性に問題が無かったとしても、高輝度のプロジェクター装置に対しては、さらに高い防眩性が要求される。
このように、ホワイトボードの表面を映写面として利用する場合には、防眩性を高いレベルで実現しなければならない。それのみならず、マーカー筆記を行った場合には、当然のことながら、イレーサーによりマーカーインクを完全に除去できるようにしなければならない。
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、映写に適した光の拡散反射性を有し、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得ることができ、特に、高輝度のプロジェクター装置に対しても十分な光の拡散性を有し、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得ることができるとともに、映写面へのマーカーを用いた書き込みやマーカーインクの消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を提供することを目的としている。
本発明の映写用スクリーンは、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜層とを有する映写用スクリーンであって、前記塗膜層が、バインダー樹脂と、複数の微粒子と、表面調整剤とを含み、前記表面調整剤が、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含み、前記塗膜層の前記基材と接する面とは反対側の露出面が、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成される構成とする。
本発明によれば、塗膜層に複数の微粒子が含まれており、映写面となる塗膜層の露出面において、塗膜層の露出面近傍に微粒子が存在する部分が凸状となり、露出面近傍に微粒子が存在しない部分が凹状となることにより、その凹凸形状により塗膜層の露出面からなる映写面の光の拡散性を得ることができる。複数の微粒子の径や凹凸形状における山間隔などを調整することにより高輝度のプロジェクター装置に対する十分な光の拡散性を得ることができる。そして、微粒子の露出面側はバインダー樹脂により覆われるが、バインダー樹脂に、アクリル基を有するシリコン系重合物を表面調整剤として添加することで、微粒子の上部がなだらかに覆われた凹凸形状が形成されることが見出された。このことにより、露出面の十分な滑らかさが確保される。これにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。
本発明の一実施例におけるホワイトボード装置の概略構成図 本発明の一実施例における映写用スクリーンの断面構成を示す概略図 本発明の映写用スクリーンの製造工程を示すフロー図 (a)基材の下地処理を示す要部拡大断面図、(b)塗膜層の積層後の要部拡大断面図、(c)塗膜層の溶媒除去後の要部拡大断面図、(d)スクリーン面の形成後の要部拡大断面図 マーカー筆記消去性の検査要領を示す図 表面調整剤の違いによる消去性の評価を示す表 (a)アクリル基を有するシリコン系重合物およびアクリル系重合物により表面調整剤を構成した場合の表面の写真、(b)表面調整剤を添加剤として含まない場合の表面の写真 (a)図6(b)のイレーサーにより1回消去した場合の表面の写真、(b)表面調整剤を添加剤として含まない場合の表面の(a)に対応する写真 (a)反応性OH基含有シリコン系重合物を表面調整剤とした場合の表面の写真、(b)非反応性シリコン系重合物を表面調整剤とした場合の表面の写真、(c)アクリル基含有フッ素系重合物を表面調整剤とした場合の表面の写真
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、基材と、前記基材の表面に形成された塗膜層とを有する映写用スクリーンであって、前記塗膜層が、バインダー樹脂と、複数の微粒子と、表面調整剤とを含み、前記表面調整剤が、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含み、前記塗膜層の前記基材と接する面とは反対側の露出面が、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成される構成とする。
これによると、塗膜層に複数の微粒子が含まれており、映写面となる塗膜層の露出面において、塗膜層の露出面近傍に微粒子が存在する部分が凸状となり、露出面近傍に微粒子が存在しない部分が凹状となることにより、その凹凸形状により塗膜層の露出面からなる映写面の光の拡散性を得ることができる。複数の微粒子の径や凹凸形状における山間隔などを調整することにより高輝度のプロジェクター装置に対する十分な光の拡散性を得ることができる。そして、微粒子の露出面側はバインダー樹脂により覆われるが、バインダー樹脂に、アクリル基を有するシリコン系重合物を表面調整剤として添加することで、微粒子の上部がなだらかに覆われ、特に滑らかな凹凸形状が形成される。このことにより、露出面の十分な滑らかさが確保される。これにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。
また、第2の発明は、前記第1の発明において、さらにアクリル系重合物を有する構成とする。アクリル基を有するシリコン系重合物を表面調整剤として有することにより上記したように十分な露出面の滑らかさが得られ、マーカーインクの良好な消去性が得られるが、さらにアクリル系重合物を表面調整剤として有することにより、より一層マーカーインク消去性が向上し得る。
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記表面調整剤の前記塗工用原液に対する含有率が、0.05〜4%wtである構成とする。これによると、十分な表面調整効果(レベリング性)が得られ、また、映写面に対するマーカーインクの適度な親和性や、映写面の均一な表面状態を確保することができる。
また、第4の発明は、前記第2または第3の発明において、前記アクリル基を有するシリコン系重合物に対する前記アクリル系重合物の重量配合比が、前記アクリル基を有するシリコン系重合物を1とした場合に0を超え1以下である構成とする。これによると、特に、マーカーを用いた筆記消去性の十分な性能を確保し得る。
また、第5の発明は、筆記消去を行うボード面が請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の映写用スクリーンにより形成された構成とする。これにより、上記の効果を得ることができる実用的に優れたホワイトボード装置を得ることができる。
また、第6の発明は、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含む表面調整剤と、バインダー樹脂と、複数の微粒子とを含む塗工用原液を作製する工程と、基材の表面に前記塗工用原液を塗工する工程と、前記塗工された前記塗工用原液を硬化させて、前記塗工用原液の前記基材と接する面とは反対側の露出面に、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成された映写面を形成する工程とを有する構成とする。これにより、基材の表面に塗工用原液を塗工し、塗工された塗工用原液を硬化させるという簡単な工程により、基材の表面に形成された塗膜層の露出面からなる映写面を、複数の微粒子によって凹凸形状に形成することができるため、その複数の微粒子の径や凹凸形状における山間隔などを調整することにより、高輝度のプロジェクター装置に対する十分な光の拡散性を得ることができる。そして、微粒子の露出面側はバインダー樹脂により覆われるが、バインダー樹脂に、アクリル基を有するシリコン系重合物を表面調整剤として添加することで、微粒子の上部がなだらかに覆われ、特に滑らかな凹凸形状が形成される。このことにより、露出面の十分な滑らかさが確保される。これにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。
以下、本発明の映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置の一実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例におけるホワイトボード装置の概略構成図である。ホワイトボード装置本体1は、本発明の映写用スクリーンにより表層を形成したボード面2を有している。ボード面2は、パーソナルコンピュータ3等に接続されたプロジェクター装置4からの映写画像を映すプロジェクター用スクリーンとしての適正を有するとともに、ホワイトボード用マーカー5及びイレーサー6を用いた筆記消去に対する適正を有する。続いて、本発明の映写用スクリーンについて説明する。
図2は、本発明の一実施例におけるボード面2を形成する映写用スクリーンの断面構成を示す概略図である。基材7は、後述する球状微粒子8とバインダー樹脂としてのマトリックス樹脂9により構成される塗膜層10の形成及び保持、ならびに、ホワイトボード面としての使用に際して、支障が無い程度の強度を有するものである。ただし、この基材7においては、塗膜層を形成する基材の塗工面に対して、いわゆる「下地荒らし処理」を施し、下地荒らし表層11を設けることにより、付加的に映写用スクリーンの光沢度を下げるようにしている。この点については、後ほど詳細に述べる。
基材7の材料としては、プラスチック、鋼板、木板、ガラス板、樹脂化粧版等を挙げることができる。また、基材の厚さも特に制限されず、ホワイトボード装置の構成やボード面の製造方法に合わせ、フィルム状の物や板状のものを用いることができる。特に、シート状の映写用スクリーンを製造する場合には、厚さ20〜200μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーカーボネートフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを好適に用いることができる。
基材7は、塗膜層10に透明性を有する材料を用いる場合、塗膜層10を透過した映写光の反射層及びボード面の色彩を決定する層としても機能するため、その場合は、白色もしくは白色に近い淡色であることが好ましい。
塗膜層10は、マトリックス樹脂9に球状微粒子8及び後述する主添加剤12aと副添加剤12bとにより構成される表面調整剤12を内包する形で構成され、マトリックス樹脂9で被覆された球状微粒子8の上部(図における上側)表面とその間を埋めるマトリックス樹脂9によって、本発明の特徴である後述のような寸法形状のなめらかな表面凹凸が形成される。なお、主添加剤12aおよび副添加剤12bは、それぞれ液状の化合物であるため、図には描かれない。塗膜層10の厚さは、マトリックス樹脂9と球状微粒子8の組み合わせと工法を用いて、後述のような寸法形状の表面凹凸を形成できれば特に限定されるものではないが、3〜30μm程度が好適範囲となる。また、ボード面2としての強度と耐久性を確保するため、鉛筆硬度でB以上の表面硬度を有することが好ましい。
球状微粒子8は、マトリックス樹脂9との組み合わせにより、塗膜層10の基材7と接する面とは反対側の露出面としての表面10aに後述のような寸法形状の滑らかな凹凸を形成するために配合される。また、球状微粒子8は、光反射性とボード面の色彩への影響とを考慮して、無色もしくは白色であることが好ましい。
従来のホワイトボード装置における映写用スクリーンでは、粉砕型シリカ等、ランダム形状で、粒子径が比較的小さい微粒子が用いられることが多い。このような微粒子を用いた場合、凹凸形状がより細かく不規則になりやすいため、拡散反射性が高く、プロジェクター映写性に優れた表面形状を形成しやすく、また、原料コスト的に優位である等の利点がある。しかしながら、細かく鋭いカーブを有する凹凸形状が発生しやすく、また、複雑な形状の細かい粒子と樹脂との界面が表面10aに露出して形成されてしまう場合があること等により、表面10aに付着したマーカーインクがイレーサーで完全に拭き取れない場合が多く、十分なマーカー筆記消去性が確保しにくい。
このような理由から、本発明では、より滑らかなカーブによる凹凸を形成し、好適なプロジェクター映写性とマーカーによる筆記消去性を両立させるため、略球状の微粒子を用いることが好ましい。また、後述のような寸法形状の凹凸表面を形成するためには、平均粒径が3〜30μm、好ましくは5〜20μmの範囲にある略球状微粒子を用いるのがよい。ここで言う平均粒径とは体積平均径のことであり、コールターカウンタ(コールター社製)を使用して測定したものである。平均粒径が3μmより小さい場合、もしくは、30μmより大きい場合は、後述のような寸法範囲の凹凸形状を形成することが困難になり、良好な映写性と筆記消去性を両立できなくなる。球状微粒子8としては、樹脂充填用や表面処理用に用いられる種々のガラスビーズ、球状シリカ微粒子、球状アルミナ微粒子、球状樹脂微粒子等を用いることができる。
ガラスビーズの例としては、ソーダ石灰ガラスや低アルカリガラスを用いた球状ガラスビーズがあり、市販品の例としては、ポッターズ・バロティーニ株式会社製のフィラー用ガラスビーズ、株式会社ユニオン製のユニビーズ(商品名)シリーズがある。球状シリカ微粒子の例としては、球状溶融シリカ微粒子、球状合成シリカ微粒子があり、市販品の例としては、株式会社トクヤマ製のエクセリカ(商品名)シリーズ、株式会社龍森製の高純度真球状シリカ、電気化学工業株式会社製の溶融シリカ球状タイプがある。球状アルミナ微粒子の市販品の例としては、電気化学工業株式会社製の球状アルミナ、昭和電工株式会社製のアルナビーズ(商品名)、株式会社アドマテックスのアドマファイン(商品名)、株式会社マイクロン製の球状アルミナ微粒子がある。球状樹脂微粒子の例としては、球状アクリル樹脂微粒子、球状ポリスチレン微粒子、球状ポリアクリロニトリル微粒子、球状ナイロン微粒子などがあり、市販品の例としては、綜研化学株式会社製のケミスノー(商品名)シリーズ、東洋紡績株式会社製のタフチック(商品名)シリーズ、住友精化製のフロービーズ(商品名)シリーズ、積水化成品工業株式会社製のテクポリマー(商品名)シリーズがある。
上記のような球状微粒子の中でも、球状樹脂微粒子は、特に、平滑な表面を有し、形状が均一で、また、比重や熱膨張係数等の物理的特性、粒子表面の化学的性状等の点で、後述するマトリックス樹脂9との組み合わせにより塗膜層10を形成する上で有利であることから、本発明において特に好適に用いることができる。
マトリックス樹脂9は、球状微粒子8を内包し、後述のような寸法形状の滑らかな凹凸を形成するとともに、映写用スクリーンの最表面の物理的、化学的性状を支配的に決定するものである。このため、(1)単独、もしくは溶剤との混合により基材7上に塗膜形成が可能、(2)球状微粒子8の表面を被覆しながら、球状微粒子8の平均粒子径や塗膜層10中における配合比(例えば重量配合比)を調整することにより、所望の凹凸形状を形成することが可能、(3)映写用スクリーンの表面層として十分な強度と耐久性を有する塗膜層10を形成可能、(4)マーカーインクに対する適度な親和性、界面張力を有すること、(5)透明もしくは淡色であること、といった基本的な性能を有していることが必要である。この要求を満たすものであれば、マトリックス樹脂9は特に限定されるものでは無く、各種公知の塗料用樹脂やコーティング用樹脂を用いることができる。このような塗料用樹脂やコーティング樹脂の例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂及びこれらの変性樹脂や共重合体樹脂があり、多種多様な製品が上市されている。
これらの樹脂を基材上に成膜する方法としては、例えば、(1)紫外線硬化型、電子線硬化型もしくは熱硬化型のモノマー、オリゴマー、樹脂等を含む反応性樹脂原料混合物を用いて、塗工後に光もしくは熱により樹脂原料を硬化させ、塗膜を形成する方法、(2)樹脂を溶剤に溶解もしくは分散した状態で基材上に塗工後、溶剤を揮発させることにより塗膜を形成する方法、(3)熱可塑性樹脂を押出成型等によりシート状に形成する方法がある。このうち、紫外線硬化型の樹脂を用いる方法は、前記のような基本的な性能を有するマトリックス樹脂9を形成するのに適しており、また、原料の選択肢が多い、原料混合物の物性調整が容易、樹脂の硬化反応が短時間で完了するといった点で、生産性の面でも有利であり、特に好ましい。
以上のような観点から、マトリックス樹脂9の原料として特に好ましいものとして、アクリル系、エポキシ系、及びそれらの変性化合物や共重合化合物を主成分とするモノマー、オリゴマー、樹脂を主成分とする紫外線硬化型樹脂が挙げられる。このような紫外線硬化型樹脂原料であるエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、各種モノマーは、例えば、根上工業株式会社、新中村化学工業株式会社、共栄社化学株式会社、サートマー・ジャパン株式会社、東亞合成株式会社、日本化薬株式会社より上市されている。
通常、紫外線硬化型樹脂を作製する場合には、上記モノマー、オリゴマー、樹脂等に加えて、光重合開始剤を配合する必要がある。光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系等のラジカル重合開始剤、ヨードニウム塩系、スルホニウム塩系等のカチオン重合開始剤が挙げられ、市販品の例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のIRGACURE(商品名)シリーズ、DAROCURE(商品名)シリーズ、日本化薬株式会社製のKAYACURE(商品名)シリーズ、三新化学工業株式会社製のサンエイドSI(商品名)シリーズがある。
上記のような配合を基本として、塗料やコーティング用として調製された紫外線硬化型の樹脂原料混合物も各種上市されており、本発明に好適に用いることができる。市販品の例としては、日本合成化学株式会社製の紫光(商品名)シリーズ、株式会社ADEKA製のアデカオプトマー(商品名)シリーズ、荒川化学工業株式会社製のビームセット(商品名)シリーズ、DIC株式会社のユニディック(商品名)シリーズがある。
また、球状微粒子8との混合や塗布工程を行いやすくするため、揮発性有機溶剤を混合して樹脂溶液の粘度調整を行ってもよく、その場合は、基材7上に原料混合物を塗工後、紫外線照射を行う前に、加熱処理等により揮発性有機溶剤を除去する必要がある。好適な揮発性有機溶剤の例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールがある。
表面調整剤12は、乾燥過程を経て、塗膜層10の表面張力を下げる効果や、レベリング性を向上させる効果、基材への濡れ性を向上させる、成膜性や密着性を向上させる効果、乾燥後の塗膜層10の撥水・撥油性を上げる効果、表面の摩擦係数を下げることにより、すべり性を上げる効果を発現する。ここで、本発明者らは、表面調整剤12として、アクリル基を有するシリコン系重合物を用いることで、球状微粒子8の上部がなだらかに覆われ、特に滑らな表面凹凸形状を実現できることを見出した。このことにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。この様な構成により、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得ることができるとともに、映写面へのマーカーを用いた書き込みやマーカーインクの消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を実現することができる。さらに、これに加えて、アクリル系重合物を添加することにより、より一層マーカーインク消去性が向上し得る。
アクリル基を有するシリコン系重合物としては、例えば、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等の、アクリル基を有する変性ポリジメチルシロキサン(シリコンアクリレート)を好適に用いることができる。また、アクリル系重合物としては、塗料添加用のアクリル系共重合物を用いることができる。
以上のような構成材料を用い、後述のような製造工程により、本発明の映写用スクリーンを作製することができる。
塗膜層10の表面10aの凹凸形状に関する各計測パラメータは、JIS B 0601:2001に規定されている。前記のような材料構成により表面塗膜層を形成し、さらに、JIS B 0601:2001に規定されている算術平均粗さRaが0.3≦Ra≦4(μm)の範囲にあり、JIS B 0601:2001に規定されている平均山間隔Sm(μm)を、算術平均粗さRaで割った値Sm/Raが、およそ30≦Sm/Ra≦150の範囲にあるような表面凹凸形状とすることにより、ホットスポットを抑制するための光散乱性と、マーカーインクの拭き取り性(消去性)を確保することができる。
算術平均粗さRaが0.3(μm)以下になると塗膜層10の表面10aの光沢度が急速に上昇し、その60°鏡面光沢度(後記するJIS Z 8741に基づく)を40以下にすることが困難となる。また、算術平均粗さRaが4以上になると、塗膜層10の表面10aの凹凸が大きくなるので、塗膜層10の表面10aに筆記されたマーカーインクの消去が困難となる。さらに、フェルトで構成されたマーカーペンの先端の磨耗が早くなり、マーカーペンの寿命が著しく短くなる場合が生じる。
Sm/Raの値は、70程度が最も望ましい。これに対して、Sm/Raが150以上になると、光拡散反射性が小さくなりすぎ、ホットスポットが生じることにより、映写性が低下する。また、Sm/Raが30以下になると、マーカーインクの消去性が低下する。
以上のような凹凸を形成するために、先に述べたように、基材7の塗工面、すなわち下地荒らし表層11の上に形成されている塗膜層10には、マトリックス樹脂9に加えて、映写面となる表層に凹凸を形成するための複数の球状微粒子8、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物からなる表面調整剤12、そして揮発性溶剤が含まれている。
図2に示されるように、塗膜層10の表面10aすなわち筆記面より入射する光(矢印L)は、塗膜層10の表面10aで反射される1次反射光(矢印L1)と、塗膜層10を透過し、基材7の塗工面(すなわち、基材7の塗膜層10との接触面)で反射し、再び塗膜層10を透過して出射する2次反射光(矢印L2)とに、大きく分かれる。
塗膜層10の表面10aには、先に述べたような凹凸が形成されているため、1次反射光(L1)は完全な正反射とはならず、ある程度拡散された状態となる。同時に、塗膜層10の内部に入射する光も、ある程度拡散されて入射する。塗膜層10の内部において、それを構成する球状微粒子8、表面調整剤12及びそれらを被覆するマトリックス樹脂9は、互いにその材質が異なるため、光の屈折率も異なる。したがって、球状微粒子8、表面調整剤12、マトリックス樹脂9のそれぞれの間の界面において、2次反射光(L2)の屈折や散乱が発生する。そのように屈折や散乱がなされた2次反射光(L2)は、塗膜層10の表面10aより出射する際に、その凹凸により、さらに拡散される。このようにして、1次反射光(L1)及び2次反射光(L2)が二重、三重あるいはそれ以上に拡散されるので、映し出された映像の中央にプロジェクターの光源が明るいスポット状に見える現象、いわゆるホットスポットの発生を低減することができる。
上記の様な構成に加えて、本実施形態の映写用スクリーンにおいては、入射光の散乱性をより高めるため、基材7の塗膜層10が形成される面である塗工面(すなわち、基材7の塗膜層10との接触面)に対して、いわゆる「下地荒らし処理」を施している。図示例では、図2に示すように、基材7の塗工面には、微細な凹凸形状となる下地荒らし表層11が形成される。この「下地荒らし処理」は、サンドブラスト処理、酸化チタンや炭酸カルシウムなどの顔料や微粒子を用いたマット塗工などにより行われる。それらの工法のいずれを選択するかは、基材7の材質や、形成する下地荒らし表層11の光沢度により決定される。
なお、サンドブラスト処理を選択した場合には、基材7の下地荒らし処理を施す面に当てる砂の粒径、数、形状、当てるスピード等を調整することにより、下地光沢度を変更することができる。そして、マット塗工を選択した場合には、酸化チタンや炭酸カルシウムなどの粒径や含有量などを変更することにより、下地光沢度を変更することができる。また、図2における下地荒らし表層11は、基材7と全く別の層として記載されているが、これはマット塗工の場合である。サンドブラスト処理などのように、基材7の表面に対して処理を施す工法の場合は、当然のことながら、基材7と下地荒らし表層11とは一体化している。いずれの場合においても、図2においては、下地荒らし表層11が存在することを認識しやすくするために、基材7との間に境界線を記載している。
このような下地荒らし表層11を形成することにより、塗膜層10を透過し、基材7の下地荒らし表層11上で反射する2次反射光はさらに拡散される。すなわち、光拡散反射性がさらに上積みされる。したがって、高輝度のプロジェクター装置においても、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得る効果がより高まる。
本発明の映写用スクリーンは、前記のような材料構成により、種々公知の樹脂混合方法ならびに塗工方法を用いて製造することが可能であるが、以下に、製造方法の一実施例を説明する。
図3は、本発明の映写用スクリーンの製造工程を示すフロー図であり、図4は、図3のフロー図の工程に伴うスクリーン面の形成過程を示す図である。まず、基材7の塗工面に塗布し凹凸を形成するための、紫外線硬化型の塗工用原液を作製する(工程ST1−1)。これに際して、始めにウレタンアクリレートまたはエポキシアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂溶液を作製する。このとき、適量の揮発性有機溶剤を混合し、塗工に適した溶液粘度に調整することが好ましい。ここで、樹脂の混合には、各種公知のミキサー、シェイカー等を用いることができる。続いて、紫外線硬化型樹脂溶液に所定の平均粒径を有する球状アクリル樹脂微粒子8と、本発明の特徴であるアクリル基を有するシリコン系重合物、並びに、アクリル系重合物を混合する。なお、混合には、各種公知のミキサー、シェイカー等を用いることができる。以上のようにして、塗工用原液が得られる。
これと並行、または前後して、基材7の塗工面(すなわち、下地荒らし表層11の塗膜層10との接触面)に対して、いわゆる「下地荒らし処理」を施して、下地荒らし面11aを形成しておく(工程ST1−2,図4(a))。先に述べたように、この「下地荒らし処理」は、サンドブラスト処理やマット塗工などにより行われる。そして、それらの工法のいずれを選択するかは、基材7の材質や、形成する下地荒らし表層11の光沢度により決定される。なお、図4(a)は、図2で示したマット塗工の例であり、図2と同様の部分には同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
このようにして下地荒らし処理が施された白色のPETからなる基材7の塗工面(下地荒らし面11a)に対して、工程ST1−1において作製された塗工用原液21を塗布する(工程ST2、図4(b))。塗工用原液21の塗布には、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーターなど、公知の塗工装置を用いることができる。続いて、塗工後の基材をオーブン等で加熱し、揮発性有機溶剤を蒸発させる(工程ST3,図4(c))。ここで、先に例示したような揮発性有機溶剤を使用した場合には、例えば、80℃、数分程度の条件で加熱乾燥を行えばよい。このとき、揮発性有機溶剤の蒸発に伴い、前記のような表面凹凸形状がほぼ形成される。
さらに、塗工用原液21の揮発性有機溶剤が蒸発した後の凹凸形状となった塗工凹凸面21aに上部(図における上方)より紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂を硬化させることにより、塗膜層10が完成する(工程ST4,図4(d))。このとき、紫外線硬化型樹脂は重合反応に伴う硬化収縮により、若干収縮している。紫外線照射には、種々公知の紫外線照射用光源装置を用いることができ、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ、クセノンランプ、LEDランプ等がある。紫外線の照射量は、一般的なウレタンアクリレート系樹脂の場合、波長365nmで計測した積算光量が、100〜2000mJ/cm2程度となるようにすればよい。
以上のような材料構成と工法により、塗膜層10の表面10a及び下地荒らし面11aにおける光の拡散反射性がさらに向上するので、高輝度のプロジェクター装置においても、映し出された映像の中央にプロジェクターの光源が明るいスポット状に見える現象、いわゆるホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得ることができる、映写面へのマーカーの書き込みや消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を提供することができる。
以下、本発明の実施例を示す。上記したようにして作製された各映写用スクリーンサンプルについて、ホワイトボードマーカーを用いた筆記消去性を評価した。それらの評価方法について次に述べる。
(1)マーカー筆記消去性
図5に示されるように、黒色の市販ホワイトボード用マーカー(パナソニック電子黒板用マーカー、黒)を用いて、映写面(表面10a)における約100mm×150mmの範囲31に縦長の楕円を横方向に5個連続した模様32を描き、1分間の放置後に、市販のホワイトボード用イレーサー(パナソニック電子黒板用イレーサー)33を横方向に往復させて拭き取った。この表面について、描画部のマーカーインクの残り具合を目視で評価した。なお、その評価基準としての「消去性」をA〜Dの4段階で評価した。消去性「A」は、イレーサーの2往復以内での完全に拭き取り可能になったもの、消去性「B」は、イレーサーの4往復以内での完全に拭き取り可能になったもの、消去性「C」は、イレーサーを4往復した状態で一部(半分未満)にインクの残りがあるもの、消去性「D」は、イレーサーを4往復した状態で半分以上にインクの残りがあるものである。
(実施例1:サンプル1)
図6に、上記評価の結果を表1として示す。表1に示されるように、表面調整剤12として、アクリル基を有するシリコン系重合物12aとアクリル系重合物12bとの両添加剤を添加して塗膜層10を形成した場合の消去性の評価はAであった。この両添加剤12a・12bを添加した塗膜層10の表面10aの写真を図7(a)に示す。微粒子の上部がなだらかに覆われ、特に滑らかな凹凸形状が形成される。このことにより、露出面の十分な滑らかさが確保される。これにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。また、主添加剤(アクリル基を有するシリコン系重合物)12aと副添加剤(アクリル系重合物)12bとの重量配合比は、1.0:0〜0.5:0.5の範囲が好ましい。この配合比は、塗工用原液21に使用する樹脂および微粒子の種類やそれらの配合比に合わせて調整するとよい。
主添加剤12aに用いられるアクリル基を有するシリコン系重合物の含有率は、塗工用原液21における全配合のうち0.05〜4%wtの範囲であるとよく、より好ましくは0.1〜2%wtの範囲である。含有率が0.05%wtを下回ると、十分な表面調整効果が得られない。また、4%wtを超えると、表面調整効果は飽和し、さらにマーカーインクをはじく効果や不均一な表面状態が発生し易くなる。なお、この含有率は、上記と同様に、塗工用原液21に使用する樹脂および微粒子の種類やそれらの配合比に合わせて調整するとよい。
また、前記アクリル系重合物12bの含有率は、塗工用原液21における全配合のうち0.05〜2%wtの範囲であるとよく、より好ましくは0.1〜1%wtの範囲である。含有率が0.05%wtを下回ると、十分な表面調整効果が得られない。また、2%wtを超えると、表面調整効果は飽和し、さらに不均一な表面状態が発生し易くなる。なお、この含有率も、上記と同様に、塗工用原液21に使用する樹脂および微粒子の種類やそれらの配合比に合わせて調整するとよい。
(実施例2:サンプル2)
表1に示されるように、上記アクリル基を有するシリコン系重合物12aのみで表面調整剤12を構成した場合についても、良好なマーカーインク消去性が得られる。この場合の表面形状は、先の図7(a)に示したものと同様の凹凸形状である。すなわち、アクリル基を有するシリコン系重合物とアクリル系重合物とを表面調整剤として添加した場合と同様に、微粒子の上部がなだらかに覆われ、特に滑らかな凹凸形状が形成される。このことにより、露出面の十分な滑らかさが確保される。これにより、映写面にマーカーにより書き込まれた線を消去する場合に、マーカーインクが残存することなく、良好に消去することができる。上記評価の検査における消去後の表面10aの写真を図8(a)に示す。図8(a)は、評価基準で述べたようにホワイトボード用マーカーで描いた線(二点鎖線)をイレーサーで拭き取った状態の表面10aの拡大写真である。図8(a)で明らかなように、ホワイトボードマーカーで描いた線は完全に消去された。なお、この場合の消去性の評価はBであった。このように、アクリル基を有するシリコン系重合物のみで表面調整剤12を構成した場合でも、十分な消去性が得られることが確認された。
一方、表面調整剤を添加剤として含まない場合の塗膜層の表面の写真を図7(b)に示す。この場合には、球状粒子8の一部が表面から露出している。この塗膜層の表面に対して、同様にイレーサーで拭き取った状態の表面の写真を図8(b)に示す。図8(b)のものでは、マーカーインクがほとんど消去されず、大部分が残存している。このように、図8(a)と図8(b)とを比較すれば、アクリル基を有するシリコン系重合物(主添加剤12a)を含む表面調整剤12を用いることにより、塗膜層10の表面10aに対するマーカーインク消去性の顕著な効果が得られることは明らかである。
(比較例1:サンプル4)
また、上記実施例2のアクリル基を有するシリコン系重合物に代えて反応性OH基を有するシリコン系重合物を表面調整剤とした場合の表面10aの写真を図9(a)に示す。この場合には、球状微粒子8の表面側部分はマトリックス樹脂9により覆われて隠れているが、マーカーインクとの相性が悪く、消去性をチェックしたところ、評価はCであった。
(比較例2:サンプル5)
また、上記実施例2のアクリル基を有するシリコン系重合物に代えて非反応性シリコン系重合物を表面調整剤とした場合の表面10aの写真を図9(b)に示す。この場合には、球状微粒子8の表面側部分の一部がマトリックス樹脂9により覆われず、表面10aに露出している。この場合の消去性をチェックしたところ、評価はDとなり、上記表面調整剤12が添加されない場合のものと同程度であった。
(比較例3:サンプル3)
なお、上記実施例2のアクリル基を有するシリコン系重合物に代えてアクリル基を有するフッ素系重合物を表面調整剤とした場合の表面10aの写真を図9(c)に示す。この場合には、球状微粒子8の表面側部分の一部にマトリックス樹脂9により完全には覆われていない部分があったが、消去性の評価はBとなった。しかしながら、表面10aに顕著な模様が現れるとともに、マーカーインクを弾いてしまい、良好な筆記ができなかった。
以上、実施例1・2及び比較例1〜3により、マーカーインクに対する消去性を満足し(評価A・B)、さらにマーカーインクの弾き防止性も考慮すると、表面調整剤12として、少なくとも、アクリル基を有するシリコン系重合物を用いることで、球状微粒子8の上部がなだらかに覆われ、特に滑らかな表面凹凸形状を実現できることにより、マーカーインクの消去性が特に良好なものとなる。この様な構成により、ホットスポットを生じない鮮明な映写画像を得ることができるとともに、映写面へのマーカーを用いた書き込みやマーカーインクの消去が可能な映写用スクリーン及びこれを用いたホワイトボード装置を実現することができる。さらに、これに加えて、アクリル系重合物を添加することにより、より一層マーカーインク消去性が向上し得る。
以上、本発明を、その好適形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、例えば電子黒板装置にも適用し得る。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
本発明のマーカーインクによる筆記消去が可能な投影用スクリーンによれば、特に消去性に優れ、かつ高輝度のプロジェクター装置においても鮮明な映写画像を得ることができるので、ホワイトボード用の投影用スクリーンとして有用である。
1 ホワイトボード装置本体
2 ボード面
3 パーソナルコンピュータ
4 プロジェクター装置
5 マーカー
6 イレーサー
7 基材
8 球状微粒子
9 マトリックス樹脂
10 塗膜層
12 表面調整剤
12a 主添加剤(表面調整剤)
12b 副添加剤(表面調整剤)

Claims (6)

  1. 基材と、前記基材の表面に形成された塗膜層とを有する映写用スクリーンであって、
    前記塗膜層が、バインダー樹脂と、複数の微粒子と、表面調整剤とを含み、
    前記表面調整剤が、少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含み、
    前記塗膜層の前記基材と接する面とは反対側の露出面が、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成されることを特徴とする映写用スクリーン。
  2. 前記表面調整剤が、さらにアクリル系重合物を有することを特徴とする請求項1に記載の映写用スクリーン。
  3. 前記表面調整剤の前記塗工用原液に対する含有率が、0.05〜4%wtであることを特徴とする請求項1に記載の映写用スクリーン。
  4. 前記アクリル基を有するシリコン系重合物に対する前記アクリル系重合物の重量配合比が、前記アクリル基を有するシリコン系重合物を1とした場合に0を超え1以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の映写用スクリーン。
  5. 筆記消去を行うボード面が、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の映写用スクリーンにより形成されたことを特徴とするホワイトボード装置。
  6. 少なくともアクリル基を有するシリコン系重合物を含む表面調整剤と、バインダー樹脂と、複数の微粒子とを含む塗工用原液を作製する工程と、
    基材の表面に前記塗工用原液を塗工する工程と、
    前記塗工された前記塗工用原液を硬化させて、前記塗工用原液の前記基材と接する面とは反対側の露出面に、前記複数の微粒子によって凹凸形状に形成された映写面を形成する工程とを有することを特徴とする映写用スクリーンの製造方法。
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