以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
本願における半導体基板とは、半導体集積回路の製造に用いるシリコンその他の半導体単結晶基板、石英基板、サファイア基板、ガラス基板、その他の絶縁基板、または半導体基板など、並びにそれらの複合的基板を指すものとする。
本実施の形態の半導体装置は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製造された、超音波探触子(CMUT:Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducer)などの超音波送受信センサである。
図1は、本実施の形態の半導体装置を構成する半導体チップ1の全体平面図である。半導体チップ1は、厚さ方向に沿って互いに反対側に位置する第1主面(上面、表面)および第2主面(下面、裏面)を有している。図1は、半導体チップ1の第1主面側の平面図(すなわち上面図)が示されている。
図1に示すように、半導体チップ1の平面形状は、例えば長方形状、つまり矩形の形状に形成されている。半導体チップ1の長手方向(第2方向Y)の長さは、例えば4cm程度、半導体チップ1の短方向(第1方向X)の長さは、例えば1cm程度である。ただし、半導体チップ1の平面寸法は、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば長手方向(第2方向Y)の長さが8cm程度、短方向(第1方向X)の長さが1.5cm程度など、大小様々な寸法とすることができる。
半導体チップ1の第1主面には、センサ領域(センサセルアレイ、振動子アレイ)SAと、複数のボンディングパッド(以下、パッドという)BP1、BP2とが配置されている。
センサ領域SAには、複数の下部電極配線M0と、これに直交する複数の上部電極配線M1と、複数の振動子(センサセル、後述する振動子20に対応)とが配置されている。
複数の下部電極配線M0は、それぞれ、半導体チップ1の長手方向(第2方向Y)に沿って延在するように形成されており、半導体チップ1の短方向(第1方向X)に例えば16チャネル(channel:以下、chとも記す)並んで配置されている。
下部電極配線M0は、それぞれ、パッドBP1に電気的に接続されている。パッドBP1は、センサ領域SAの外周であって、半導体チップ1の長手方向(第2方向Y)の両端近傍に、下部電極配線M0に対応するように、半導体チップ1の短辺に沿って複数並んで配置されている。
複数の上部電極配線M1は、それぞれ、半導体チップ1の短方向(第1方向X)に沿って延在するように形成されており、半導体チップ1の長手方向(第2方向Y)に例えば192ch並んで配置されている。
上部電極配線M1は、それぞれ、パッドBP2に電気的に接続されている。パッドBP2は、センサ領域SAの外周であって、半導体チップ1の短方向(第1方向X)の両端近傍に、上部電極配線M1に対応するように、半導体チップ1の長辺に沿って複数並んで配置されている。
上記振動子(後述する振動子20に対応)は、例えば静電型可変容量を構成しており、上記下部電極配線M0と、上記上部電極配線M1との交点に配置されている。すなわち、複数の振動子(後述する振動子20に対応)が、センサ領域SA内にマトリクス(行列、アレイ)状に規則的に並んで配置されている。センサ領域SA内においては、下部電極配線M0と上部電極配線M1との交点には、例えば50個の振動子が並列に配置されている。
したがって、センサ領域SAは、複数のセンサセル(後述する振動子20に対応)が形成されたセンサ領域であり、半導体チップ1は、複数のセンサセル(後述する振動子20に対応)が形成されたセンサ領域SAを主面(第1主面)に有する半導体装置である。
次に、図2は上記半導体チップ1(図1参照)の要部平面図(要部拡大平面図)である。図2および図3には、半導体チップ1の本体領域(センサ領域SAとパッドBP1、BP2形成領域とを合わせた領域)の要部平面図および要部断面図が示されている。図3は、図2のX1−X1線の断面図にほぼ対応する。なお、図2は下部電極配線M0と上部電極配線M1との交点に1個の振動子を配置した場合の平面図を示している。簡便のため、図2(本体領域)には、下部電極配線M0が2ch、上部電極配線M1が3chで、各下部電極配線M0と各上部電極配線M1との各交点に位置する振動子20が1個の場合の平面図が示されている。
図2および図3に示すように、半導体チップ1(図1参照)を構成する半導体基板1Sは、例えばシリコン(Si)単結晶からなり、厚さ方向に沿って互いに反対側に位置する第1主面(上面、表面)1Saおよび第2主面(下面、裏面)1Sbを有している。半導体基板1Sの第1主面1Sa上には、例えば酸化シリコン(SiO2等)などからなる絶縁膜2を介して上記複数の振動子20が配置(形成)されている。ここでは、絶縁膜2はTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate、テトラエトキシシラン)膜であり、絶縁膜2を主に構成するのはSiOまたはSiO2などである。
図2に示すように、複数の振動子20は、それぞれ、例えば平面六角形状に形成されており、例えばハニカム状に配置されている。これにより、複数の振動子20を高密度に配置することができるので、センサ性能を向上させることができる。なお、平面視における振動子20の形状は六角形に限らず、例えば矩形であってもよい。
図3に示すように、各振動子20は、下部電極M0Eと、下部電極M0Eに対向するように設けられた上部電極M1Eと、これら電極間に介在された空洞部(第1空洞部)VR1とを有している。空洞部VR1の高さ、すなわち空洞部VR1の底面であるエッチングストッパ膜5の上面から、空洞部VR1の上面であるエッチングストッパ膜7の下面までの間の距離は200nmよりも大きく、ここでは例えば230nmである。つまり、ここでいう空洞部VR1の高さとは、半導体基板1Sの第1主面に対して垂直な方向における、空洞部VR1の底面から上面までの長さをいうものである。
上記下部電極M0Eは、上記下部電極配線M0において上記上部電極配線M1が平面的に重なる部分に形成されている。すなわち、各振動子20の下部電極M0Eは、下部電極配線M0の一部により形成されており、下部電極配線M0のうち、上部電極配線M1と平面的に重なる部分(すなわち上部電極配線M1の下方に位置する部分)が、下部電極M0Eとなる。下部電極M0Eおよび下部電極配線M0は導体膜3からなり、例えばタングステン(W)膜からなるものである。なお、導体膜3はタングステン(W)膜ではなく窒化チタン(TiN)膜からなる膜であってもよい。また、導体膜3はタングステン膜または窒化チタン膜を含む複数の導体膜からなる積層構造を有していてもよい。
この下部電極M0Eおよび下部電極配線M0の側面には、下部電極M0Eおよび下部電極配線M0の厚さによる段差を減少させる観点などから、例えば酸化シリコンなどの絶縁体からなるサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)SWが形成されている。下部電極M0E、下部電極配線M0、絶縁膜2およびサイドウォールSWの表面は、例えばアモルファス(非晶質)シリコンなどからなるエッチングストッパ膜5によって覆われている。
エッチングストッパ膜5上には、例えばアモルファスシリコンなどからなるエッチングストッパ膜7が堆積されている。エッチングストッパ膜7上には絶縁膜8aが形成され、絶縁膜8a上には、上記上部電極M1Eが下部電極M0Eに対向するように設けられている。エッチングストッパ膜5、7のそれぞれの膜厚は例えば100nmとする。
エッチングストッパ膜5、7はいずれも不純物が導入されていない真性半導体を主に含んでいる。例えば、エッチングストッパ膜5、7はノンドープのシリコン(Si)により形成されている。このようにエッチングストッパ膜5、7に不純物を導入していないのは、エッチングストッパ膜5、7が下部電極M0Eまたは上部電極M1Eと導通し、振動子20が動作しなくなることを防ぐためである。つまり、エッチングストッパ膜5、7を真性半導体膜とし、抵抗値を上げることで、エッチングストッパ膜5、7の絶縁性を高めている。また、エッチングストッパ膜5、7中に電荷トラップが形成されることを防ぐことで、エッチングストッパ膜5、7中に電荷が蓄積されることを防いでいる。なお、ここではエッチングストッパ膜5、7の材料をシリコン(Si)とする場合について説明するが、エッチングストッパ膜5、7を構成する材料は窒化シリコン(Si3N4等)、炭化シリコン(SiC)または炭窒化シリコン(SiCN)などであってもよい。
絶縁膜8aは例えば酸化シリコン膜からなり、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間の耐圧を保つために設けられており、上部電極M1Eとエッチングストッパ膜7とを絶縁する役割を有している。つまり、絶縁膜8aは下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間にリーク電流が流れることを防ぐために設けられており、その膜厚は例えば100〜200nmである。ここでは、絶縁膜8aはTEOS膜であり、絶縁膜8aを主に構成するのはSiOまたはSiO2である。下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間隔は例えば500nm程度であり、振動子20を動作させて超音波を発生させる際には、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間に例えば最大300V程度の電位差を発生させることで、メンブレンを振動させる。
なお、ここでいうメンブレンとは、振動子20の動作時に撓む(振動する)領域のことであり、図2では空洞部VR1の直上のエッチングストッパ膜7、絶縁膜8a、上部電極M1E、絶縁膜9および絶縁膜(パッシベーション膜)11などを指す。
上部電極M1Eは、上記上部電極配線M1において上記下部電極配線M0が平面的に重なる部分に形成されている。すなわち、各振動子20の上部電極M1Eは、上部電極配線M1の一部により形成されており、上部電極配線M1のうち、下部電極配線M0と平面的に重なる部分(すなわち下部電極配線M0の上方に位置する部分)が、上部電極M1Eとなる。上部電極M1Eの平面形状は略六角形状または矩形に形成されており、上部電極配線M1において、第1方向Xに延在して上部電極M1E同士の間を連結する連結部M1Cよりも幅広のパターンで形成されている。このように、上部電極配線M1は、複数の上部電極M1Eと、第1方向Xに隣り合う上部電極M1E同士の間を連結する連結部M1Cとを有している。
上部電極M1Eおよび連結部M1Cを含む上部電極配線M1は導体膜(第2導体膜)8からなり、例えばタングステン(W)膜からなるものである。なお、導体膜8はタングステン(W)膜ではなく窒化チタン(TiN)膜からなる膜であってもよい。また、導体膜8はタングステン膜または窒化チタン膜を含む複数の導体膜からなる積層構造を有していてもよい。
このような下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間(エッチングストッパ膜5とエッチングストッパ膜7との間)には、上記空洞部VR1が形成されている。空洞部VR1の平面形状は、例えば六角形状または矩形に形成されている。空洞部VR1の底面にはエッチングストッパ膜5の表面が露出しており、空洞部VR1の側面および上面にはエッチングストッパ膜7の表面が露出している。つまり、空洞部VR1の形状は主にエッチングストッパ膜5、7により規定されており、空洞部VR1内にはエッチングストッパ膜5、7が露出している。
上記エッチングストッパ膜7上には、上部電極M1Eおよび連結部M1Cを含む上部電極配線M1を覆うように、例えば酸化シリコン(SiO2等)膜などからなる絶縁膜9が堆積されている。ここでは、絶縁膜9はTEOS膜であり、絶縁膜9を主に構成するのはSiOまたはSiO2である。エッチングストッパ膜7、絶縁膜8aおよび絶縁膜9において、上記空洞部VR1の六角部の近傍には、空洞部VR1に達する孔(開口部、コンタクトホール、スルーホール)10が形成されている。孔10は、後述するように、エッチングストッパ膜5、7間の犠牲パターン(後述する犠牲パターン6)をエッチングして空洞部VR1を形成するための孔(空洞部VR1形成用の孔)である。空洞部VR1は、エッチングストッパ膜5、7を殆ど溶解しない溶液を用いて、エッチングストッパ膜5、7に囲まれた前記犠牲パターンを除去することで形成される空間であるため、空洞部VR1内では、エッチングストッパ膜5、7の表面が露出している。
上記絶縁膜9上には、例えば窒化シリコン(Si3N4等)膜などからなる絶縁膜(パッシベーション膜)11が堆積されている。この絶縁膜11の一部は、上記孔10内に入り込んでおり、これにより、孔10は塞がれている。絶縁膜11は振動子20の動作時に撓む領域(メンブレン)の強度を補うために設けられた膜ではなく、単にパッシベーション用に形成された膜である。絶縁膜11は水分などから半導体装置を保護する役割を有するため、その材料として、ここでは酸化シリコンなどよりも緻密性が高い窒化シリコンを用いている。
また、空洞部VR1の直上の領域におけるエッチングストッパ膜7、絶縁膜8aおよび上部電極M1Eのそれぞれの底面は、いずれも凹凸がなく、平坦な面となっている。これは、後述するように、空洞部VR1を形成するための犠牲パターン(図示しない)を酸化シリコン膜により構成することに起因する。
上記エッチングストッパ膜5、7、および絶縁膜8a、9、11には、下部電極配線M0の一部に達する開口部12aが形成されている。この開口部12aから露出する下部電極配線M0の一部が上記パッドBP1になっている。また、上記絶縁膜9、11には、上部電極配線M1の一部に達する開口部12bが形成されている。この開口部12bから露出する上部電極配線M1の一部が上記パッドBP2になっている。
上記絶縁膜11上には、例えばネガ型の感光性ポリイミド膜などからなる絶縁膜(保護膜)13が堆積されている。
絶縁膜13には、開口部14a、14bが形成されている。このうち、開口部14aは、上記開口部12aを平面的に内包する位置および平面寸法で形成されており、開口部14aから露出する下部電極配線M0の一部が上記パッドBP1になっている。また、開口部14bは、上記開口部12bを平面的に内包する位置および平面寸法で形成されており、開口部14bから露出する上部電極配線M1の一部が上記パッドBP2になっている。なお、パッドBP1、BP2は、半導体チップ1の入出力用の端子であり、パッドBP1、BP2には、ボンディングワイヤなどが電気的に接続される。
絶縁膜13は、半導体ウエハから半導体チップ1を切り出すためのダイシング工程などにおいて、半導体チップ1の第1主面上の複数の振動子20を保護する保護膜としての機能を有している。不要であれば、絶縁膜13の形成を省略し、上記絶縁膜11を最上層膜(保護膜)とすることもできる。半導体チップ1(図1参照)において、上記のような振動子20は、センサ領域SAに形成されている。
このように、図1〜図3に示す本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)1は、複数のセンサセル(振動子20)が形成されたセンサ領域SAを主面に有する半導体装置であり、半導体基板1Sと、半導体基板1S上に、半導体基板1Sの主面(1Sa)側から順に形成された下部電極(導体膜)M0E、エッチングストッパ膜5、エッチングストッパ膜7、上部電極(導体膜)M1Eを有している。半導体基板1Sと下部電極M0Eとの間には絶縁膜2が形成され、エッチングストッパ膜7と上部電極M1Eとの間には絶縁膜8aが形成され、エッチングストッパ膜7上には絶縁膜9が上部電極M1Eを覆うように形成され、絶縁膜9上には絶縁膜(パッシベーション膜)11が形成されている。
半導体チップ1の上記複数のセンサセル(振動子20)の各々は、センサ領域SAに、エッチングストッパ膜5とエッチングストッパ膜7との間に形成された空洞部VR1と、上部電極M1Eと、下部電極M0Eとを有している。半導体チップ1の複数のセンサセル(振動子20)の各々は、下部電極M0E(第1電極)と、上部電極M1E(第2電極)と、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間の絶縁膜8a、エッチングストッパ膜5、空洞部VR1およびエッチングストッパ膜7を含む可変容量センサである。
このような構成の超音波送受信センサにおいては、下部電極配線M0(下部電極M0E)および上部電極配線M1(上部電極M1E)に直流および交流の電圧を重畳印加することにより静電気力が働き、各振動子20のメンブレン(空洞部VR1の上方に位置する膜)が、メンブレンのバネの力との釣り合いにより、共振周波数付近で半導体基板1Sの第1主面1Saに交差する(直交する)方向(図3の上下方向)に振動する。このとき、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間の最大の電位差は例えば300Vとする。これにより、数MHzの超音波(超音波パルス)を発生するようになっている。
また、受信の場合は、各振動子20のメンブレンに到達した超音波の圧力によりメンブレンが振動し、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間の静電容量が変化することで、超音波を検出することができる。すなわち、反射波による下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間隔の変位を静電容量(各振動子20の静電容量)の変化として検出するようになっている。このような送受信を行うことにより、例えば生体組織の断層像を撮像することができる。
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法を図4〜図15により説明する。図4〜図15は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。なお、図4〜図15の断面図は、図3の断面図の左側の領域に対応する部分のみを示すものである。
半導体チップ1を製造するには、まず、図4に示すように、半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体薄板)1Sを用意する。半導体基板1Sは、例えばシリコン単結晶からなり、厚さ方向に沿って互いに反対側に位置する第1主面(上面、表面)1Saおよび第2主面(下面、裏面)1Sbを有している。
次に、半導体基板1Sの第1主面1Saの全面上に、例えば酸化シリコン(SiO2等)膜などからなる絶縁膜2を形成(堆積)する。絶縁膜2の膜厚は、例えば厚さ400nm程度とすることができる。絶縁膜2は、例えばプラズマCVD法を用い、比較的低い温度(例えば200℃程度)で形成されたTEOS膜により構成される。つまり、絶縁膜2を構成するTEOS膜は、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとして用いるプラズマCVD法により、成膜温度200℃程度、またはそれ以下の温度で形成された酸化シリコン膜である。TEOS膜は、主にSiOまたはSiO2を含む絶縁膜である。
次に、絶縁膜2上にタングステン(W)膜を含む導体膜(第1導体膜)3を形成する。導体膜(第1導体膜)3は、例えばスパッタリング法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて形成することができる。なお、導体膜3はタングステン膜ではなく窒化チタン(TiN)膜により形成してもよい。また、導体膜3は、半導体基板1Sの第1主面1Saの全面上に順に形成した、タングステン膜または窒化チタン膜などを含む複数の金属膜からなる積層膜であってもよい。
次に、図5に示すように、導体膜3を、リソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてパターニング(加工、選択的に除去)する。パターニングされた導体膜3により、下部電極配線M0(下部電極M0E)が形成される。このようにして、半導体基板1S上(すなわち絶縁膜2上)に下部電極配線M0が形成される。なお、リソグラフィ法(フォトリソグラフィ法)は、レジスト膜(フォトレジスト膜)の塗布、露光および現像の一連の工程によりレジスト膜を所望のパターン(レジストパターン)にパターニングする方法である。
次に、図6に示すように、半導体基板1S(半導体ウエハ)の第1主面1Sa上の全面(すなわち絶縁膜2上)に、下部電極配線M0の表面を覆うように、例えば酸化シリコンを主に含む絶縁膜を堆積し、この絶縁膜を異方性のドライエッチング法によりエッチバック(全面エッチング)する。これにより、下部電極配線M0(下部電極M0E)の側面(側壁)に絶縁膜を残存させて自己整合的にサイドウォール(側壁絶縁膜)SWを形成するとともに、下部電極配線M0の上面を露出させる。
次に、図7に示すように、半導体基板1Sの第1主面1Sa上の全面(すなわち絶縁膜2上)に、下部電極配線M0(下部電極M0E)およびサイドウォールSWの表面を覆うように、エッチングストッパ膜5を形成(堆積)する。エッチングストッパ膜5は、例えばアモルファス(非晶質)状態のシリコン膜などからなり、比較的低温のプラズマCVD法などを用いて形成することができる。エッチングストッパ膜5の厚さ(膜厚)は、例えば100nm程度とする。
続いて、半導体基板1Sの第1主面1Saのエッチングストッパ膜5上の全面に、例えば酸化シリコン膜からなる犠牲膜6bを形成(堆積)する。犠牲膜6bは、例えばプラズマCVD法により形成でき、その厚み(堆積厚み、膜厚)は、200nmよりも大きい膜厚とし、例えば230nm程度とする。犠牲膜6bは、例えばTEOS膜により構成される。
ここで、犠牲膜6bを形成する方法として低温でのプラズマCVD法を用いているのは、過剰に高い熱に起因して、下部電極M0Eに用いているタングステン(W)膜にクリープ現象が生じ、タングステン膜の組成変化、変形または破断などが起こることを防ぐためである。したがって、犠牲膜6bの形成に用いる方法として、熱CVD法などは適さないが、200℃程度またはそれ以下の低温であれば、プラズマCVD法に限らず他の方法を用いてもよい。
次に、図8に示すように、犠牲膜6bをリソグラフィ法およびドライエッチング法によりパターニングすることにより、パターニングされた犠牲膜6bからなる犠牲パターン(空洞部形成用の犠牲パターン)6を形成する。犠牲パターン6は上記空洞部VR1を形成するためのパターンであり、センサ領域SAに形成される。このため、犠牲パターン6の平面形状は、空洞部VR1と同じ平面形状に形成されている。つまり、本体領域のセンサ領域SAの空洞部VR1形成予定領域に犠牲パターン6を形成する。
なお、犠牲パターン6は酸化シリコン膜などの絶縁膜により構成されているため、結晶性を有するタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜を用いて犠牲膜6bを形成する場合に比べて、犠牲パターン6の上面を平坦に形成することができる。タングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜は複数のグレイン(結晶)により構成されているため、その表面には凹凸が生じ易いのに対し、酸化シリコン膜などの絶縁膜は非晶質の膜であるため、その上面を平坦に形成することが容易である。つまり、前記導体膜の表面モフォロジーは悪化し易いが、酸化シリコン膜などの絶縁膜は表面モフォロジーが良好であり、当該絶縁膜を用いて犠牲パターン6を形成することで、犠牲パターン6の表面およびその上部に形成する膜の表面を平坦な形状で形成することができる。
次に、図9に示すように、半導体基板1Sの第1主面1Sa上の全面(すなわちエッチングストッパ膜5上)に、犠牲パターン6の表面を覆うように、エッチングストッパ膜7を形成(堆積)する。エッチングストッパ膜7は、例えばアモルファス(非晶質)状態のシリコン膜などからなり、比較的低温のプラズマCVD法などを用いて形成することができる。エッチングストッパ膜7の厚さ(膜厚)は、例えば100nm程度とする。上述したように、犠牲パターン6の上面が平坦に形成されているため、犠牲パターン6の上面に接するエッチングストッパ膜7の底面は高い平坦性を有している。
なお、下部電極M0Eにはアルミニウム(Al)膜が含まれる場合も考えられるため、エッチングストッパ膜5、7および犠牲膜6bは、アルミニウム(Al)の融点より低い温度で形成する必要がある。エッチングストッパ膜5、7は、後の工程において犠牲パターン6を除去する際に行うウェットエッチングなどにより、犠牲パターン6以外の構造体が除去されることを防ぐためのストッパ膜である。
次に、エッチングストッパ膜7上に絶縁膜8aおよびタングステン(W)膜を順次形成する。これにより、タングステン膜からなる導体膜(第2導体膜)8がエッチングストッパ膜7上に絶縁膜8aを介して形成される。絶縁膜8aは例えばプラズマCVD法により形成でき、その厚み(堆積厚み、膜厚)は、例えば100〜200nm程度とする。絶縁膜8aは、例えばTEOS膜により構成される酸化シリコン膜であり、主にSiOまたはSiO2を含んでいる。絶縁膜8aは、後述する上部電極M1E(導体膜8)と下部電極M0E(導体膜3)との間の耐圧を確保するための絶縁膜であり、絶縁膜8aの膜厚の大きさを適宜決定することで、前記耐圧を調節することができる。
ここで、絶縁膜8aを形成する方法として低温でのプラズマCVD法を用いているのは、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eに用いているタングステン膜にクリープ現象が生じることを防ぐためである。したがって、絶縁膜8aの形成に用いる方法はプラズマCVD法に限らず、200℃程度またはそれ以下の低温であれば他の方法を用いてもよい。
前記タングステン膜は、例えばスパッタリング法またはCVD法などを用いて形成することができる。なお、導体膜8はタングステン膜ではなく窒化チタン(TiN)膜により形成してもよい。また、導体膜8は、タングステン膜または窒化チタン膜などを含む複数の金属膜からなる積層膜であってもよい。
次に、図10に示すように、導体膜8を、リソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてパターニング(加工、選択的に除去)する。パターニングされた導体膜(第2導体膜)8により、上部電極配線M1が形成される。上部電極配線M1は、上部電極M1Eおよび連結部M1C(図3参照)を含んでいる。ここでは、下部電極M0Eの直上の領域の上部電極配線M1の一部を上部電極M1Eと呼ぶ。これにより、エッチングストッパ膜7上に絶縁膜8aを介して上部電極配線M1が形成される。上部電極配線M1は、エッチングストッパ膜7上に形成され、パターニングされた導体膜8からなる。
なお、上記した上部電極M1Eおよび下部電極M0Eとしては、タングステン(W)膜以外にアルミニウム(Al)膜などを用いることも考えられる。ただし、アルミニウム膜はタングステン膜よりも低い温度でクリープ現象が発生する虞が高く、高熱によりアルミニウム膜が金属疲労を起こすと、メンブレンが撓んだ際に電極が元の形状に戻らず、振動子が振動しなくなる場合がある。そのため、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eは、主にタングステン(W)を含む膜により構成することが望ましい。
次に、図11に示すように、半導体基板1Sの第1主面1Sa上の全面に(すなわちエッチングストッパ膜7上に)、上部電極配線M1(上部電極M1E、パターン化された導体膜8)を覆うように、絶縁膜9を形成(堆積)する。絶縁膜9は、例えばプラズマCVD法により形成でき、その厚み(堆積厚み、膜厚)は、例えば1500nm程度とする。絶縁膜9は、例えばTEOS膜により構成される酸化シリコン膜であり、主にSiOまたはSiO2を含んでいる。絶縁膜9は、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eと、後述する絶縁膜(パッシベーション膜)11との間の距離を大きくすることを目的として設けられているため、比較的厚い膜厚で形成する。絶縁膜9の形成に用いる方法はプラズマCVD法に限らず、200℃程度またはそれ以下の低温であれば他の方法を用いてもよい。
次に、図12に示すように、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、絶縁膜9、8aおよびエッチングストッパ膜7に、上記犠牲パターン6に到達して犠牲パターン6の一部を露出するような孔(開口部)10を形成する。孔10は、犠牲パターン6に平面的に重なる位置に形成され、孔10の底部では、犠牲パターン6の一部が露出される。
次に、孔10を通じて、犠牲パターン6を、例えばフッ酸(フッ化水素)の水溶液などを用いて選択的に除去する。これにより、図13に示すように、犠牲パターン6が除去され、エッチングストッパ膜5とエッチングストッパ膜7との間に空洞部VR1が形成される。犠牲パターン6が存在していた領域が空洞部VR1となる。
すなわち、本体領域のセンサ領域SAにおいて、下部電極配線M0(下部電極M0E)と上部電極配線M1(上部電極M1E)との対向面間(犠牲パターン6の除去領域)に空洞部VR1が形成される。このように、孔10を通じて犠牲パターン6を選択的にエッチングすることにより、空洞部VR1を形成することができる。このとき、犠牲パターン6を覆い、シリコン(Si)からなるエッチングストッパ膜5、7はフッ酸に対して殆ど溶けない性質を有しているため、酸化シリコンからなる犠牲パターン6を選択的に除去することができる。
なお、下部電極配線M0において、空洞部VR1を介して上部電極配線M1と対向する部分が下部電極M0Eであり、上部電極配線M1において、空洞部VR1を介して下部電極配線M0と対向する部分が上部電極M1Eである。
次に、図14に示すように、半導体基板1Sの第1主面1Sa上の全面(すなわち絶縁膜9上)に、絶縁膜(パッシベーション膜)11を形成(堆積)する。これにより、絶縁膜11の一部を孔10内に埋め込み、孔10を塞ぐことができる。絶縁膜11は、例えば窒化シリコン(Si3N4)膜などからなり、プラズマCVD法などを用いて形成することができる。また、絶縁膜11の厚み(膜厚)は、例えば400nm程度とすることができる。
ここでは、絶縁膜11により孔10を埋め込んでいるが、孔10の形成後であって絶縁膜11の形成前に、絶縁膜9上に例えば酸化シリコン膜を形成し、当該酸化シリコン膜により孔10を埋め込んでもよい。この場合には、前記酸化シリコン膜上に絶縁膜11を形成する。
次に、図15に示すように、絶縁膜11、9、8aおよびエッチングストッパ膜7、5に下部電極配線M0の一部が露出する開口部12aを、また、絶縁膜11、9に上部電極配線M1の一部が露出するような開口部12b(図15では図示せず)を、リソグラフィ法およびドライエッチング法により形成する。このようにして、静電型可変容量構成の振動子20が形成される。
次に、図3に示すように、半導体基板1Sの第1主面1Sa上の全面に(すなわち絶縁膜11上に)、例えばネガ型の感光性ポリイミド膜などからなる絶縁膜13を形成する。その後、露光および現像処理などにより、絶縁膜13に下部電極配線M0および上部電極配線M1の一部が露出するような開口部14a、14bを形成する。開口部14a、14bから露出する下部電極配線M0および上部電極配線M1の一部が上記パッドBP1、BP2になる。
その後、半導体基板1S(半導体ウエハ)から個々のチップ領域を、ダイシング処理により切り出すことで上記半導体チップ1を製造することができる。これにより、半導体チップ1を含む本実施の形態の半導体装置が完成する。
次に、本実施の形態の半導体装置およびその製造方法の効果について説明する。
本実施の形態では、図3に示す空洞部VR1を形成するための犠牲パターン6の材料にTEOSなどの酸化シリコンを用い、犠牲パターン6を覆うエッチングストッパ膜5、7の材料にアモルファスシリコンを用いている。これに対し、犠牲パターン6の材料にタングステン(W)または窒化チタン(TiN)などを用い、エッチングストッパ膜の材料に酸化シリコン(SiO2等)を用いることが考えられるが、これらの材料を用いた場合、以下に説明するような問題が生じる。
酸化シリコン(SiO2等)膜は窒化シリコン(TiN)膜またはシリコン(Si)膜などに比べてヤング率が小さい性質を有する。このため、振動子の振動部分(メンブレン)を構成するエッチングストッパ膜を酸化シリコン膜により構成すると、メンブレンのヤング率が低くなり、メンブレンが振動によって撓みやすくなる。メンブレンのヤング率が低下すると、振動時の空洞部VR1(図3参照)のマージン、すなわち、空洞部VR1を挟んで設けられたエッチングストッパ膜5とエッチングストッパ膜7との間の距離が小さくなり、エッチングストッパ膜を介して上部電極と下部電極との間にリーク電流が流れる虞が高くなる。このとき、酸化シリコン膜からなるエッチングストッパ膜中を電子が移動することで、エッチングストッパ膜の膜質劣化が起きる。
エッチングストッパ膜に膜質劣化が生じると、エッチングストッパ膜同士が接触、または近接した状態で動かなくなり、上下の電極、つまり上部電極および下部電極に電圧を印加してもメンブレンが振動しなくなる問題が発生する。また、エッチングストッパ膜に膜質劣化が生じると、エッチングストッパ膜の耐圧が低下し、リーク電流の発生がより顕著になる問題が発生する。
このため、空洞部を囲むエッチングストッパ膜の材料にヤング率の低い酸化シリコンを用いた場合、図17に示すように、エッチングストッパ膜7aを含むメンブレンの剛性を高めることを目的として、メンブレン内の、例えば上部電極M1E上に窒化シリコン膜からなる絶縁膜8bを形成することが考えられる。窒化シリコン膜はヤング率が酸化シリコン膜よりも高い膜であるため、絶縁膜8bを800nm程度の膜厚で形成することにより、メンブレンの剛性を保つことができる。これにより、メンブレンが過剰に振動することを防ぎ、エッチングストッパ膜中の電子が移動するようなリーク電流の発生を防ぐことが考えられる。
なお、図17は比較例として示す振動子20aを含む半導体装置の要部断面図であり、図15に示す断面図と似た構造を示している。つまり、空洞部VR1を挟むように、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eが対向するように設けられており、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eと空洞部VR1との間には、エッチングストッパ膜5a、7aがそれぞれ形成されている。ただし、図17に示す振動子20aは図15に示す構造と異なり、TEOS膜(酸化シリコン膜)からなるエッチングストッパ膜5a、7aを有し、上部電極M1E上には絶縁膜8aが設けられておらず、上部電極M1E上には剛性確保のための絶縁膜8bが形成されている。絶縁膜8b上には、酸化シリコン膜からなる絶縁膜21、および窒化シリコン膜からなるパッシベーション膜である絶縁膜11aが順に形成されている。
なお、図17に示す空洞部VR1は、図7および図8を用いて説明した工程で形成した犠牲パターン6を、酸化シリコン膜ではなくタングステン(W)膜または窒化チタン(TiN)膜もしくはそれらの積層膜により形成し、その後、図17に示す孔10から硫酸加水または水酸化カリウムなどを含む溶液を注入して犠牲パターンを除去することで形成している。
図17に示すように、絶縁膜8bを設けることで、メンブレンの剛性を補い、振動幅を小さくしてエッチングストッパ膜5a、7aの劣化を抑えることができると考えられるが、窒化シリコン膜は電荷を蓄積し易く、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eに電圧を印加した際に、絶縁膜8bに電子がトラップされ、駆動電圧が変化する問題がある。メンブレンの剛性を保つために形成する絶縁膜8bは絶縁膜11aなどと比べて膜厚が厚く、電荷の蓄積量が非常に大きくなる。このため、絶縁膜8bに電荷が蓄積されると、振動子20aが振動する電圧(しきい値電圧)が小さくなり、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間により高い電位差を生じさせなければ、振動子20aを動作させることができなくなる。しかし、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eに印加する電圧が大きくなれば、絶縁膜8bに蓄積される電荷も大きくなり、また、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間にエッチングストッパ膜5a、7aを介してリーク電流が流れ、エッチングストッパ膜5a、7aの劣化が顕著になる。
このように、エッチングストッパ膜5a、7aを酸化シリコン膜により構成し、その剛性を補うためにメンブレン内に窒化シリコン膜からなる絶縁膜8bを設けると、電荷の蓄積により振動子20aの駆動電圧がシフトし、振動子20aの寿命が低下するため、半導体装置の信頼性が低下する問題が生じる。この問題は、上部電極M1Eと絶縁膜8bとを離間する目的で、上部電極M1Eと絶縁膜8bとの間に酸化シリコン膜などからなる絶縁膜を設けたとしても生じる。
また、TEOS膜などの酸化シリコン膜は、製造方法に起因して、その内部に炭素(C)などの不純物を含んでいる場合がある。このように不純物を含む酸化シリコン膜は、電荷をトラップし易い性質を有する。図17に示すように、振動子20aの空洞部VR1を囲むエッチングストッパ膜5a、7aとしてTEOS膜などの酸化シリコン膜を用いた場合、TEOS膜中に不純物である炭素(C)が存在することで、上部電極M1Eおよび下部電極M0Eに電圧を印加した際にエッチングストッパ膜5a、7aに電荷が蓄積され、エッチングストッパ膜5a、7aの絶縁性が低下する。このため、メンブレンの振動時に上部電極M1Eおよび下部電極M0Eが接近すると、電荷が蓄積されたエッチングストッパ膜5a、7aにリークパスが生じ、リーク電流が流れることでエッチングストッパ膜5a、7aが劣化する問題が生じる。
これらの課題に対し、本実施の形態の半導体装置では、図3に示すエッチングストッパ膜5、7の材料に、酸化シリコンよりもヤング率が高いシリコン(Si)を用いることによりメンブレンの剛性を確保している。これにより、図17の比較例に示す絶縁膜8bを設けてメンブレンの剛性を補う必要がなくなる。したがって、上部電極の近傍に絶縁膜8bを設けなくても、シリコン膜からなるエッチングストッパ膜5、7の剛性により、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間にリーク電流が流れることを防ぐことができる。つまり、エッチングストッパ膜5、7中を電子が移動してエッチングストッパ膜5、7の膜質が劣化し、振動子20が動作しなくなることを防ぐことができる。
なお、図3に示す絶縁膜11は、図17に示す絶縁膜8bと同様に窒化シリコン膜により構成されているが、絶縁膜11は絶縁膜8bに比べて膜厚が十分に薄く、また、図3に示す絶縁膜9を介在させることにより、絶縁膜11と上部電極M1Eおよび下部電極M0Eと離間させることができるため、図17を用いて説明したように窒化シリコン膜に電荷が蓄積されることを防ぐことができる。
また、酸化シリコンよりもヤング率が高いシリコン(Si)を用いることにより、絶縁膜8bのような膜厚の大きい窒化シリコン膜を設ける必要がなくなるため、窒化シリコン膜への電荷蓄積に起因する振動子のしきい値電圧の変動を防ぐことができる。
また、エッチングストッパ膜5、7に不純物(例えばC(炭素))を含む虞が高いTEOS膜などの酸化シリコン膜を用いていないため、エッチングストッパ膜5、7に電荷が蓄積することを抑えることができ、振動子のしきい値電圧の変動を抑えることができる。また、エッチングストッパ膜5、7を、不純物を含まないアモルファスの真性半導体とすることで絶縁性を向上させている。以上により、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
また、図17に示す空洞部VR1を形成するための犠牲パターンとしてタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜を用いた場合、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間の距離を十分に離すことができず、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間にリーク電流が流れやすくなる問題がある。前記リーク電流が発生すると、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間の静電容量の変化を読み取ることができず、振動子20aが正常に動作しない問題の他に、上述したようにエッチングストッパ膜中において電子が移動することでエッチングストッパ膜の膜質が劣化し、振動子20aが動作しなくなる問題が生じる。
犠牲パターンにタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜を用いた場合に上下の電極間の距離を十分に離すことができない理由の一つに、タングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜は、厚膜化が困難である点が挙げられる。これは、タングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜を一定の厚さ以上の大きさの膜厚で形成すると、導体膜中で生じる応力が大きくなり、導体膜が剥がれる問題、または導体膜が割れる問題が生じるためである。したがって、前記導体膜の膜厚には限界がある。
空洞部VR1の高さ、すなわち空洞部VR1の直下のエッチングストッパ膜の上面から空洞部VR1の直上のエッチングストッパ膜の下面までの距離は、上部電極M1Eと下部電極M0Eとの間にリーク電流が流れることを防ぐために、230nm以上である必要がある。つまり、犠牲パターンとして形成する膜の膜厚は、230nm以上とする必要がある。しかし、例えばCVD法を用いて形成するタングステン膜の膜厚は、最大で200nm程度が限界であり、タングステン膜を犠牲パターンとして用いて空洞部VR1を形成した場合、上下の電極間のマージンが確保できず、リーク電流が発生する虞が高くなる。
また、スパッタリング法によりタングステン膜からなる導体膜を形成した場合、またはスパッタリング法により窒化チタン膜およびタングステン膜を半導体基板側から順に積層した積層膜を形成した場合、導体膜の膜厚は60〜200nm程度が限界であり、これらの導体膜を犠牲パターンとして用いて空洞部を形成しても、空洞部の高さを十分に大きくすることができない。なお、窒化チタンは硫酸加水に対して溶解し難い性質を有しているが、窒化チタン膜に接するタングステン膜が硫酸加水により溶解すると、当該窒化チタン膜も溶解し易くなる。そのため、窒化チタン膜を犠牲パターンに用いる場合は、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層した積層膜を犠牲パターンとして用いることが考えられる。
これに対し、本実施の形態では、図7および図8を用いて説明したように、犠牲パターン6に絶縁膜である酸化シリコン膜を用いている。酸化シリコン膜は上述したタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜に比べて、大きい膜厚で形成しても膜中に生じる応力が小さいため、例えばCVD法を用いることにより、1μm程度まで厚膜化することが可能である。
本実施の形態では、犠牲パターン6の材料に酸化シリコンを用いることで、犠牲パターン6を230nm以上に厚膜化し、図13を用いて説明した工程において犠牲パターン6を除去することで、高さが230nm以上の空洞部VR1を形成することを可能としている。このようにして、底面から上面までの距離(高さ)が大きい空洞部VR1を形成することが可能となり、メンブレンが振動した際に、下部電極M0Eおよび上部電極M1Eのそれぞれに接するエッチングストッパ膜5、7同士が近接することを防ぐことができる。このため、エッチングストッパ膜5、7を介して下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間にリーク電流が流れることを防ぐことができ、エッチングストッパ膜5、7の膜質の劣化を防ぐことができる。
また、犠牲パターンにタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜を用いた場合に上下の電極間の距離を十分に離すことができない他の理由として、タングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜は上面に凹凸が発生し易いため、図17に示すエッチングストッパ膜7aおよび上部電極M1Eのそれぞれの底面を平坦に形成することが困難であることが挙げられる。上記導体膜の上面に凹凸が発生し易いのは、タングステン膜または窒化チタン膜などが結晶性を有する導体膜であり、前記導体膜を構成する複数のグレイン(結晶粒)のそれぞれの高さが均一でなく、また複数のグレインのそれぞれの上面が平坦ではないためである。なお、図17ではエッチングストッパ膜7aおよびその上部の膜のそれぞれの表面の凹凸形状は示していない。
犠牲パターンの上面が平坦ではなく凹凸がある(表面モフォロジーが悪い)場合、その上部に形成するエッチングストッパ膜7aおよび上部電極M1Eのそれぞれの底面も凹凸を有する形状で形成される。この場合、上部電極M1Eに接するエッチングストッパ膜7aの下面であって、空洞部VR1において露出する表面が、全体的に下部電極M0Eおよび下部電極M0Eに接するエッチングストッパ膜5aに対して均一な距離で形成されず、場所によって下部電極M0Eに対する距離にばらつきが生じることとなる。
このような振動子20aの上部電極M1Eおよび下部電極M0Eに電圧を印加すると、凹凸形状を有するエッチングストッパ膜7aの下面の一部に電界が集中し、局所的にエッチングストッパ膜5a、7aを介してリーク電流が流れ易くなる。前記リーク電流が発生すると、下部電極M0Eと上部電極M1Eとの間の静電容量の変化を読み取ることができず、振動子20aが正常に動作しない問題の他に、上述したようにエッチングストッパ膜中において電子が移動することでエッチングストッパ膜の膜質が劣化し、振動子20aが動作しなくなる問題が生じる。
なお、犠牲パターンの上面に凹凸が生じることで、空洞部VR1上のエッチングストッパ膜7aおよび上部電極M1Eの表面に凹凸が生じたとしても、空洞部VR1の高さを十分に大きくすることで、上記のように電界集中によってリーク電流が発生することを防ぐことができる。しかし、上述したように、犠牲パターンをタングステン膜または窒化チタン膜などの導体膜で形成した場合には、犠牲パターンの厚膜化が困難であるため、空洞部VR1の高さを十分に大きくすることはできない。
つまり、空洞部VR1の上面または下面、すなわちエッチングストッパ膜5の上面またはエッチングストッパ膜7の下面に凹凸が生じていても、前述したように厚膜化が可能な犠牲パターン6を用いれば、底面から上面までの距離(高さ)が大きい空洞部VR1を形成することができ、メンブレンの振動マージンが大きくなる。このため、エッチングストッパ膜7の下面の、前記凹凸が生じている領域の一部に電界が集中することに起因するリーク電流の発生を防ぐことができる。したがって、エッチングストッパ膜5、7をポリシリコン膜などにより構成することで、これらの膜の表面に凹凸が生じたとしても、振動マージンが大きければリーク電流の発生を防ぐことができるため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
これに対し、本実施の形態では、図7および図8を用いて説明したように、犠牲パターン6として絶縁膜である酸化シリコン膜を用いている。酸化シリコン膜は結晶性を有していない非晶質の絶縁膜であり、グレインにより構成される膜ではないため、その上面を平坦な形状で形成することができる。したがって、犠牲パターン6上に形成するエッチングストッパ膜7(図3参照)の下面および上部電極M1E(図3参照)の下面を平坦に形成することができるため、エッチングストッパ膜および上部電極の底面の凹凸形状に起因した電界集中によるリーク電流の発生を防ぐことができる。これにより、エッチングストッパ膜5、7の劣化を防ぐことができるため、半導体装置の信頼性を向上することができる。
上述したように、本実施の形態では、空洞部を形成するための犠牲パターン6(図12参照)を酸化シリコン膜により構成し、エッチングストッパ膜5、7(図12参照)をシリコン膜により構成しているが、犠牲パターン6、エッチングストッパ膜5および7の組み合わせはこれに限らず、エッチングストッパ膜5、7と犠牲パターン6とが互いに高いエッチング選択比を有していれば、他の材料を用いてもよい。つまり、ウェットエッチング法などを用いて犠牲パターン6を除去する際に、エッチングストッパ膜5、7の部材が当該ウェットエッチングに用いる溶液に対して溶けにくい性質を有していればよい。このように、エッチングに関して選択性のある材料でれば、他の材料を用いてエッチングストッパ膜5、7および犠牲パターン6を形成しても構わない。
例えば、犠牲パターン6を窒化シリコン(Si3N4等)膜とし、エッチングストッパ膜5、7をシリコンゲルマニウム(SiGe)膜とすることができる。この場合、図13を用いて説明した工程では、熱リン酸の溶液を用いて犠牲パターン6を除去する。
また、犠牲パターン6を酸化シリコン膜とする場合には、エッチングストッパ膜5、7を構成する膜の種類として、窒化シリコン(Si3N4等)膜、シリコンゲルマニウム(SiGe)膜、炭化シリコン(SiC)膜または炭窒化シリコン(SiCN)膜などを用いることが可能である。なお、上記のような材料を用いて犠牲パターン6およびエッチングストッパ膜5、7をそれぞれ形成する場合も、導体膜(電極など)の劣化を防ぐため、各膜は低温の成膜方法(プラズマCVD法等)を用いて形成する必要がある。
エッチングストッパ膜5、7を構成する膜として用いることができるシリコン(Si)膜、窒化シリコン(Si3N4等)膜、シリコンゲルマニウム(SiGe)膜、炭化シリコン(SiC)膜または炭窒化シリコン(SiCN)膜のうち、シリコン膜およびシリコンゲルマニウム膜は、窒化シリコン膜、炭化シリコン膜または炭窒化シリコン膜に比べて内部に電荷トラップが少なく、電荷を蓄積しにくいという利点がある。したがって、エッチングストッパ膜5、7にシリコン膜またはシリコンゲルマニウム膜を用いた場合は、エッチングストッパ膜5、7に窒化シリコン膜、炭化シリコン膜または炭窒化シリコン膜を用いた場合に比べ、エッチングストッパ膜5、7を介したリーク電流の発生を防ぐことができ、また、エッチングストッパ膜5、7に電荷が蓄積されることに起因して振動子20の特性が劣化することを防ぐことができる。
次に、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ1)を、例えば超音波エコー診断装置に適用した場合について、図16を用いて説明する。図16は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ1)を含む超音波エコー診断装置の模式図である。
超音波エコー診断装置は、音波の透過性を利用し、外から見ることのできない生体内部を、可聴音領域を超えた超音波を用いてリアルタイムで画像化して目視可能にした医療用診断装置である。この超音波エコー診断装置のプローブ(探触子)30を図16に示す。
プローブ30は、超音波の送受信部である。図16に示すように、プローブ30を形成するプローブケース30aの先端面には上記半導体チップ1がその第1主面(複数の振動子20の形成面)を外部に向けた状態で取り付けられている。さらに、この半導体チップ1の第1主面側には、音響レンズ30bが取り付けられている。
超音波診断に際しては、上記プローブ30の先端(音響レンズ30b側)を生体の表面に当てた後、これを徐々に微少位置ずつずらしながら走査する。この時、体表に当てたプローブ30から生体内に数MHzの超音波パルスを送波し、音響インピーダンスの異なる組織境界からの反射波(反響またはエコー)を受波する。これにより、生体組織の断層像を得て、診断対象に関する情報を知ることができるようになっている。超音波を送波してから受波するまでの時間間隔によって反射体の距離情報が得られる。また、反射波のレベルまたは外形から反射体の存在または質に関する情報が得られる。
このような超音波エコー診断装置のプローブ30に本実施の形態の半導体チップ1を用いることにより、プローブ30の信頼性を向上させることができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。