JP2013195811A - 光拡散素子の製造方法および光拡散素子 - Google Patents

光拡散素子の製造方法および光拡散素子 Download PDF

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Abstract

【課題】ヘイズ値が高く、強い拡散性を有し、かつ、表面が平滑で後方散乱が抑制された光拡散素子を低コストかつ高生産性(短時間)で製造し得る光拡散素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光拡散素子の製造方法は、光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合して混合液を調製し、該光拡散性微粒子を膨潤させる工程Aと、該混合液と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合する工程Bと、該樹脂成分の前駆体を重合して、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを形成する工程Cと、を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、光拡散素子の製造方法および光拡散素子に関する。
光拡散素子は、照明カバー、プロジェクションテレビのスクリーン、面発光装置(例えば、液晶表示装置)などに広く利用されている。近年では、光拡散素子は、液晶表示装置などの表示品位の向上、視野角特性の改善等への利用が進んでいる。光拡散素子としては、微粒子を樹脂シートなどのマトリクス中に分散させたものなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような光拡散素子においては、入射した光の大部分は前方(出射面側)に散乱するが、一部は後方(入射面側)に散乱する。微粒子とマトリクスとの屈折率差が大きいほど拡散性(例えば、ヘイズ値)は大きくなるが、一方で、屈折率差が大きいと後方散乱が増大してしまう。後方散乱が大きいと、光拡散素子を液晶表示装置に用いた場合に、液晶表示装置に外光が入射したときに画面が白っぽくなるので、コントラストのある映像や画像の表示が困難である。
上記のような後方散乱を解決する手段として、微粒子の中心部から外側に向かって連続的に屈折率が変化するいわゆるGRIN(gradient index)微粒子などの屈折率傾斜微粒子を樹脂中に分散させた光拡散素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、GRIN微粒子は、通常の微粒子よりも製造プロセスが複雑なため生産性が不十分であり、実用的ではない。
また、上記GRIN微粒子を含む光拡散素子においては、連続的に屈折率を変化させる手段として、マトリクス樹脂成分を重合する前に、微粒子にマトリクス樹脂成分の前駆体(例えば、モノマー)を浸透させる技術が提案されている(特許文献3参照)。しかし、このような技術でも、高ヘイズな光拡散性を得ようとすると、マトリクス樹脂成分の前駆体を浸透させるのに長時間を要したり、高温で加熱することを要し、生産性の点ではいまだ改善の余地がある。
特許第3071538号 特開2002−214408号公報 特許第4756100号
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ヘイズ値が高く、強い拡散性を有し、かつ、表面が平滑で後方散乱が抑制された光拡散素子を低コストかつ高生産性(短時間)で製造し得る光拡散素子の製造方法を提供することにある。
本発明の光拡散素子の製造方法は、光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合して混合液を調製し、該光拡散性微粒子を膨潤させる工程Aと、該混合液と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合する工程Bと、該樹脂成分の前駆体を重合して、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを形成する工程Cと、を含む。
好ましい実施形態においては、上記樹脂成分の前駆体の分子量が、100〜700である。
好ましい実施形態においては、上記有機溶剤の沸点が、70℃以上である。
好ましい実施形態においては、上記有機溶剤が、第1の有機溶剤と第2の有機溶剤との混合溶剤であり、
該第1の有機溶剤は、該第2の有機溶剤よりも前記光拡散性微粒子に浸透しやすく、かつ、該第2の有機溶剤よりも揮発性が高い。
好ましい実施形態においては、本発明の光拡散素子の製造方法は、上記混合液と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合して得られた分散液を、加熱する工程をさらに含み、加熱温度が80℃以下である。
好ましい実施形態においては、上記工程Cにおいて、前記マトリクスと前記光拡散性微粒子との界面近傍に、該光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて該超微粒子成分の重量濃度が高くなる実質的に球殻状の濃度変調領域を形成させる。
本発明の別の局面によれば、光拡散素子が提供される。この光拡散素子は、上記の方法によって得られ、ヘイズ値が70%以上である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、十点平均表面粗さRzが、0.20μm未満である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、平均傾斜角度θaが、0.5°未満である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、算術平均表面粗さRaが、0.05mm未満である。
本発明によれば、光拡散性微粒子、超微粒子成分および樹脂成分を含む光拡散素子の製造において、先に光拡散性微粒子に有機溶剤を含有させ、あらかじめ光拡散性微粒子を膨潤させた後、当該光拡散性微粒子と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合することにより、上記光拡散性微粒子に上記前駆体を短時間で浸透させることができる。また、本発明の製造方法によれば、この光拡散性微粒子に浸透した前駆体と浸透していない前駆体とを重合することにより、特別な処理や操作を必要とせずに光拡散素子を製造することができる。本発明においては、上記光拡散性微粒子に上記前駆体を短時間で浸透させることができるので、生産性に優れ、かつ、光拡散性微粒子および超微粒子成分の凝集を防いで平滑性に優れる光拡散素子を製造することができる。さらに、製造工程において、上記各成分を含む塗工液を塗布・乾燥させる際、膨潤させた光拡散性微粒子は、塗工液中で流動性を有し、乾燥時の塗工面の変化に追従することができるので、平滑性に優れる光拡散素子を製造することができる。
本発明の製造方法で得られる光拡散素子は、光拡散性微粒子の表面近傍に、該光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて超微粒子成分の重量濃度が高くなる実質的に球殻状の濃度変調領域が形成され得、当該濃度変調領域では屈折率が変調するので、光拡散素子とマトリクスとの界面近傍において屈折率を段階的または実質的に連続的に変化させることができる。したがって、マトリクスと光拡散性微粒子との界面の反射を良好に抑えることができ、後方散乱を抑制することができる。さらに、本発明によれば、特定の屈折率および樹脂成分に対する特定の相溶性を有する超微粒子成分を用いることにより、マトリクスの屈折率を容易に調整することができる。特に、本発明によれば、樹脂成分が光拡散性微粒子内部に浸透することにより、マトリクス中の超微粒子成分の濃度を高くすることができるので、マトリクスと光拡散性微粒子との屈折率差を容易に大きくすることができる。その結果、本発明の製造方法で得られる光拡散素子は、ヘイズ値が高く、強い拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制されている。
本発明の好ましい実施形態による製造方法により得られる光拡散素子におけるマトリクスの樹脂成分および光拡散性微粒子の分散状態を説明するための模式図である。 本発明の光拡散素子における光拡散性微粒子近傍を拡大して説明する模式図である。 マトリクス中の超微粒子成分の面積比率を説明するための透過型電子顕微鏡画像である。 本発明の光拡散素子における光拡散性微粒子中心部からマトリクスまでの屈折率変化を説明するための概念図である。 (a)は、実施例1で得られた光拡散素子の断面を示す透過型顕微鏡写真である。(b)は、比較例1で得られた光拡散素子の断面を示す透過型顕微鏡写真である。(c)は、比較例4で得られた光拡散素子の断面を示す透過型顕微鏡写真である。
A.光拡散素子の製造方法
本発明の一つの実施形態による光拡散素子の製造方法は、光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合して混合液を調製し、該光拡散性微粒子を膨潤させる工程(工程Aとする)と、該混合液と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合する工程(工程Bとする)と、該樹脂成分の前駆体を重合して、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを形成する工程(工程Cとする)とを含む。
A−1.工程A
工程Aにおいては、光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合して混合液が調製される。光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合することにより、光拡散性微粒子の少なくとも一部に有機溶剤を含有させ、当該光拡散性微粒子を膨潤させる。光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合した後、所定時間経過させることにより、光拡散性微粒子に有機溶剤を含有させることができる。例えば、15分〜90分経過させることにより、光拡散性微粒子に有機溶剤を含有させることができる。混合液は、例えば、有機溶剤中で光拡散性微粒子を撹拌することにより、調製してもよい。
A−1−1.光拡散性微粒子
上記光拡散性微粒子は、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記光拡散性微粒子は、その屈折率が下記式(1)の関係を満足する。
0<|n−n|・・・(1)
式(1)中、nはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nは光拡散性微粒子の屈折率を表す。|n−n|は、好ましくは0.01〜0.10であり、さらに好ましくは0.01〜0.06であり、特に好ましくは0.02〜0.06である。|n−n|が0.01未満であると、濃度変調領域が形成されない場合がある。|n−n|が0.10を超えると、後方散乱が増大するおそれがある。なお、本明細書において、「濃度変調領域」とは、光拡散素子中のマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍において、超微粒子成分の重量濃度が変調する領域をいう。「濃度変調領域」においては、光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて、超微粒子成分の重量濃度が高くなる(必然的に、樹脂成分の重量濃度が低くなる)。また、「濃度変調領域」においては、屈折率が実質的に連続的に変化する。詳細は後述する。
好ましくは、光拡散性微粒子は、後工程Bで投入されるマトリクスの樹脂成分と同系の化合物で構成される。さらに好ましくは、光拡散性微粒子は、マトリクスの樹脂成分と同系の化合物の中でも相溶性の高い化合物で構成される。後工程(例えば、工程B)において、マトリクスの樹脂成分の前駆体が、光拡散性微粒子に浸透しやすくなるからである(詳細は、後述する)。なお、本明細書において「同系」とは、化学構造や特性が同等または類似であることをいい、「異なる系」とは、同系以外のものをいう。同系か否かは、基準の選択の仕方によって異なり得る。例えば、有機か無機かを基準にした場合、有機化合物同士は同系の化合物であり、有機化合物と無機化合物とは異なる系の化合物である。ポリマーの繰り返し単位を基準にした場合、例えばアクリル系ポリマーとエポキシ系ポリマーとは有機化合物同士であるにもかかわらず異なる系の化合物であり、周期律表を基準にした場合、アルカリ金属と遷移金属とは無機元素同士であるにもかかわらず異なる系の元素である。
上記光拡散性微粒子を構成する材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、およびこれらの共重合体、ならびにそれらの架橋物が挙げられる。また、光拡散性微粒子を構成する材料として、シリカ系の粒子を用いることもできる。PMMAおよびPMAとの共重合成分としては、ポリウレタン、ポリスチレン(PSt)、メラミン樹脂が挙げられる。特に好ましくは、光拡散性微粒子は、PMMAで構成される。後工程Bで投入されるマトリクスの樹脂成分との屈折率や熱力学的特性の関係が適切であるからである。さらに、好ましくは、光拡散性微粒子は、架橋構造(三次元網目構造)を有する。架橋構造を有する光拡散性微粒子は膨潤可能である。したがって、このような光拡散性微粒子は、緻密または中実な無機粒子と異なり、適切な相溶性を有する樹脂成分の前駆体をその内部に良好に浸透させることができる。光拡散性微粒子の架橋密度は、好ましくは、所望の浸透範囲(後述)が得られる程度に小さい(粗である)。
上記光拡散性微粒子は、平均粒径(膨潤前の粒径(直径))が、好ましくは1.0μm〜5.0μmであり、より好ましくは1.5μm〜4.0μmであり、さらに好ましくは2.0μm〜3.0μmである。光拡散性微粒子の平均粒径は、好ましくは、光拡散素子の厚みの1/2以下(例えば、1/2〜1/20)である。光拡散素子の厚みに対してこのような比率を有する平均粒径であれば、光拡散性微粒子を光拡散素子の厚み方向に複数配列することができるので、入射光が光拡散素子を通過する間に当該光を多重に拡散させることができ、その結果、十分な光拡散性が得られ得る。
上記混合液中の光拡散性微粒子の重量平均粒径分布の標準偏差は、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下であり、特に好ましくは0.1μm以下である。また、上記混合液中の拡散性微粒子は単分散状態であることが好ましく、例えば、重量平均粒径分布の変動係数((粒径の標準偏差)×100/(平均粒径))が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。重量平均粒径に対して粒径の小さい光拡散性微粒子が多数混在していると、拡散性が増大しすぎて後方散乱を良好に抑制できない場合がある。重量平均粒径に対して粒径の大きい光拡散性微粒子が多数混在していると、光拡散素子の厚み方向に複数配列することができず、多重拡散が得られない場合があり、その結果、光拡散性が不十分となる場合がある。
上記光拡散性微粒子の形状としては、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、真球状、燐片状、板状、楕円球状、不定形が挙げられる。多くの場合、上記光拡散性微粒子として真球状微粒子が用いられ得る。
上記光拡散性微粒子の屈折率は、好ましくは1.30〜1.70であり、さらに好ましくは1.40〜1.60である。
上記混合液における上記光拡散性微粒子の配合量は、形成されるマトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜100重量部であり、より好ましくは15重量部〜40重量部である。例えばこのような配合量で上記好適範囲の平均粒径を有する光拡散性微粒子を含有させることにより、非常に優れた光拡散性を有する光拡散素子が得られ得る。
上記のように、光拡散性微粒子は、有機溶剤と混合されることにより、膨潤する。工程Bの直前、すなわち、光拡散性微粒子が樹脂成分の前駆体と接触する直前における、光拡散性微粒子の膨潤度は、好ましくは、105%〜200%である。また、工程Aにおいて、光拡散性微粒子は、最大限に膨潤し、それ以上膨潤しなくなる状態にあることが好ましい。光拡散性微粒子が、十分に膨潤していれば、次工程Bにおいて、光拡散性微粒子に樹脂成分の前駆体を浸透させやすい。なお、本明細書において、「膨潤度」とは、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
工程Bの直前における、上記光拡散性微粒子の有機溶剤含有比率は、好ましくは10%〜100%であり、より好ましくは70%〜100%である。本明細書において、「光拡散性微粒子の有機溶剤含有比率」とは、光拡散性微粒子中で有機溶剤の含有が飽和状態となる場合の有機溶剤の含有量(最大含有量)に対する、光拡散性微粒子の有機溶剤含有比率を意味する。
A−1−2.有機溶剤
上記有機溶剤としては、上記光拡散性微粒子を所望の程度に膨潤させ、かつ、光拡散性微粒子および後工程Bで投入される各成分を溶解または均一に分散し得るかぎりにおいて、任意の適切な有機溶剤が採用され得る。有機溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、トルエン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、水等が挙げられる。
一つの実施形態においては、上記有機溶剤の沸点は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは110℃以上であり、最も好ましくは120℃以上である。比較的揮発性の低い有機溶剤を用いることにより、有機溶剤を乾燥させる際に、急な揮発を防止することができ、平滑性に優れる光拡散素子を得ることができる。
別の実施形態においては、上記有機溶剤として、混合溶剤が用いられる。混合溶剤としては、例えば、上記光拡散性微粒子に浸透しやすい(第1の有機溶剤)と、揮発性の低い有機溶剤(第2の有機溶剤)とを混合した溶剤が用いられる。好ましくは、上記第1の有機溶剤は、第2の有機溶剤よりも、光拡散性微粒子に浸透しやすく、かつ、揮発性が高い。好ましくは、上記第2の有機溶剤は、第1の有機溶剤よりも、光拡散性微粒子に浸透し難く、かつ、揮発性が低い。このような混合溶剤を用いれば、光拡散性微粒子の膨潤を促進し(すなわち、製造工程を短時間化し)、かつ、有機溶剤の急な揮発を防止して、より平滑性に優れる光拡散素子を得ることができる。上記第1の有機溶剤の沸点は、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは70℃〜80℃である。上記第2の有機溶剤の沸点は、好ましくは80℃より高く、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、最も好ましくは120℃以上である。なお、有機溶剤の浸透しやすさは、例えば、光拡散性微粒子の当該有機溶剤に対する膨潤度により比較することができ、光拡散性微粒子をより高膨潤度で膨潤させる有機溶剤は光拡散性微粒子に浸透しやすい有機溶剤といえる。また、溶解性パラメータ(SP値)が、光拡散性微粒子のSP値に近い有機溶媒は、光拡散性微粒子に浸透しやすい傾向がある。上記第1の有機溶剤のSP値と光拡散性微粒子のSP値との差は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.1〜0.4である。上記第2の有機溶剤のSP値と光拡散性微粒子のSP値との差は、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7〜2.0である。また、分子量の低い有機溶剤は、光拡散性微粒子に浸透しやすい傾向がある。上記第1の有機溶剤の分子量は、好ましくは80以下であり、より好ましくは75以下であり、さらに好ましくは50〜75である。上記第2の有機溶剤の分子量は、好ましくは80より高く、より好ましくは100以上であり、さらに好ましくは110〜140である。
上記混合液は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、開始剤、分散剤、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、変色防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤が挙げられる。
A−2.工程B
工程Bにおいては、上記工程Aにおいて調製された混合液と、樹脂成分の前駆体(モノマー)および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合して、上記有機溶剤中に、膨潤した光拡散性微粒子、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を溶解または分散させた塗工液(分散液)が調製される。代表的には、当該塗工液は、前駆体および有機溶剤中に、超微粒子成分および光拡散性微粒子が分散した分散体である。超微粒子成分および光拡散性微粒子を分散させる手段としては、任意の適切な手段(例えば、撹拌処理)が採用され得る。
好ましくは、工程B以降の工程により、樹脂成分の前駆体の少なくとも一部が光拡散性微粒子の内部に浸透する。一つの実施形態においては、工程Bにおいて、樹脂成分の前駆体の少なくとも一部が光拡散性微粒子の内部に浸透していると考えられる。本発明においては、上記工程Aにおいて光拡散性微粒子をあらかじめ膨潤させておくことにより、短時間で、樹脂成分の前駆体を光拡散性微粒子の内部に浸透させることができる。例えば、工程Bにおいて、上記塗工液を15分〜30分間、撹拌することにより、樹脂成分の前駆体を光拡散性微粒子の内部に浸透させることができると考えられる。このように調製した塗工液は、撹拌後すぐに、すなわち静置することなく、後工程Cに供することができる。そのため、上記光拡散性微粒子および超微粒子成分が凝集することを防止することができ、平滑性に優れ、超微粒子成分の疎密がなく、かつ、後方散乱の少ない光拡散素子を得ることができる。
光拡散性微粒子中の上記前駆体の浸透範囲は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは80%〜100%である。このような範囲であれば、濃度変調領域が良好に形成されて、後方散乱を抑制することができる。本発明においては、光拡散素子の製造時に、光拡散性微粒子を有機溶剤により十分に膨潤させた後に、マトリクス中の樹脂成分を重合することにより、樹脂成分を光拡散性微粒子に十分に浸透させることができる。浸透範囲は、樹脂成分および光拡散性微粒子の材料、光拡散性微粒子の架橋密度、製造時に使用する有機溶剤の種類等を調整することにより制御することができる。
上記塗工液の固形分濃度は、好ましくは10重量%〜70重量%程度となるように調整され得る。このような固形分濃度であれば、塗工容易な粘度を有する塗工液が得られ得る。
A−2−1.樹脂成分
上記樹脂成分は、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、樹脂成分は、その屈折率が上記式(1)の関係を満足する。
好ましくは、樹脂成分は、光拡散性微粒子と同系の化合物で構成される。さらに好ましくは、樹脂成分は、光拡散性微粒子と同系の化合物の中でも相溶性の高い化合物で構成される。これにより、樹脂成分は、光拡散性微粒子と同系材料であることに起因して、その前駆体が光拡散性微粒子内部に浸透し得る。当該前駆体が後述の重合工程により重合した結果、濃度変調領域をマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に良好に形成することができる。例えば、マトリクスの樹脂成分を構成する樹脂がアクリレート系樹脂である場合には、光拡散性微粒子もまたアクリレート系樹脂で構成されることが好ましい。
上記樹脂成分は、好ましくは有機化合物で構成され、より好ましくは電離線硬化型樹脂で構成される。電離線硬化型樹脂は、塗膜の硬度に優れている。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線が挙げられる。好ましくは紫外線であり、したがって、樹脂成分は、特に好ましくは紫外線硬化型樹脂で構成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂(エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、エーテルアクリレート)などのラジカル重合型モノマーもしくはオリゴマーなどが挙げられる。アクリレート樹脂を構成するモノマー成分(前駆体)の具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)が挙げられる。このようなモノマー成分(前駆体)は、光拡散性微粒子の内部に浸透するに適切な分子量および立体構造を有するので好ましい。
上記樹脂成分の前駆体(モノマー)の分子量は、好ましくは100〜700であり、さらに好ましくは200〜600であり、特に好ましくは200〜500である。このような範囲であれば、樹脂成分の前駆体(モノマー)が、光拡散性微粒子の内部に浸透しやすく、拡散性に優れる光拡散素子を得ることができる。
上記樹脂成分の屈折率は、好ましくは1.40〜1.60である。
上記塗工液における上記樹脂成分の配合量は、形成されるマトリクス100重量部に対して、好ましくは20重量部〜80重量部であり、より好ましくは45重量部〜65重量部である。
上記樹脂成分は、上記電離線硬化型樹脂以外に別の樹脂成分を含んでいてもよい。別の樹脂成分は、電離線硬化型樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。別の樹脂成分の代表例としては、脂肪族系(例えば、ポリオレフィン)樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。別の樹脂成分を用いる場合、その種類や配合量は、上記濃度変調領域が良好に形成され、かつ、屈折率が上記式(1)の関係を満足するよう調整され得る。
A−2−2.超微粒子成分
上記超微粒子成分は、代表的には、マトリクスの屈折率を調整する成分として機能し得る。超微粒子成分を用いることにより、マトリクスの屈折率を容易に調整することができ、光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすることができる。特に、本発明によれば、樹脂成分が光拡散性微粒子内部に浸透することにより、マトリクス中の超微粒子成分の濃度を高くすることができるので、マトリクスと光拡散性微粒子との屈折率差を容易に大きくすることができる。その結果、薄膜でありながら高ヘイズ値(強い拡散性)を有する光拡散素子を得ることができる。好ましくは、超微粒子成分は、その屈折率nが下記式(2)を満たす:
0<|n−n|<|n−n|・・・(2)
式(2)において、nおよびnは上記のとおりである。|n−n|は、好ましくは0.10〜1.50であり、さらに好ましくは0.20〜0.80である。|n−n|が0.10未満であると、ヘイズ値が90%以下となる場合が多く、その結果、液晶表示装置に組み込んだ場合に光源からの光を十分に拡散できず、視野角が狭くなるおそれがある。|n−n|が1.50を超えると、後方散乱が増大するおそれがある。また、好ましくは、上記樹脂成分、上記超微粒子成分および上記光拡散性微粒子の屈折率は、下記式(3)を満足する。より好ましくは、上記樹脂成分、上記超微粒子成分および上記光拡散性微粒子の屈折率は、上記式(2)および下記式(3)を満足する。上記樹脂成分、上記超微粒子成分および上記光拡散性微粒子の屈折率がこのような関係にあれば、高いヘイズを維持しつつ、後方散乱が抑制された光拡散素子を得ることができる。
|n−n|<|n−n|・・・(3)
好ましくは、超微粒子成分は、上記樹脂成分および光拡散性微粒子とは異なる系の化合物で構成され、より好ましくは無機化合物で構成される。好ましい無機化合物としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56〜2.62)、酸化チタン(屈折率:2.49〜2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25〜1.46)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム(屈折率:1.37)、フッ化カルシウム(屈折率:1.40〜1.43)が挙げられる。これらの金属酸化物および金属フッ化物は、光の吸収が少ない上に、電離線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂などの有機化合物では発現が難しい屈折率を有しているので、光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすることができる。しかも、これらの金属酸化物および金属フッ化物は、樹脂成分との分散性が適切であることに起因して、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面近傍に、良好に濃度変調領域を形成することができ、後方散乱を抑制することができる。特に好ましい無機化合物は、酸化ジルコニウムである。光拡散性微粒子との屈折率差が大きく、かつ、樹脂成分との分散性が適切であるので、所望の特性(または構造)を有する濃度変調領域を良好に形成することができるからである。
上記超微粒子成分の屈折率は、好ましくは1.40以下または1.60以上であり、さらに好ましくは1.40以下または1.70〜2.80であり、特に好ましくは1.40以下または2.00〜2.80である。屈折率が1.40を超えまたは1.60未満であると、光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差が不十分となり、得られる光拡散素子をコリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置に用いた場合に、コリメートバックライトからの光を十分に拡散できず視野角が狭くなるおそれがある。
上記超微粒子成分は、多孔質化することにより、屈折率を下げてもよい。
上記超微粒子成分の平均粒径は、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜80nmであり、さらに好ましくは20nm〜70nmである。このように、光の波長より小さい平均粒径の超微粒子成分を用いることにより、超微粒子成分と樹脂成分との間に幾何光学的な反射、屈折、散乱が生じず、光学的に均一なマトリクスを得ることができる。その結果、光学的に均一な光拡散素子を得ることができる。
上記超微粒子成分は、上記樹脂成分との分散性が良好であることが好ましい。本明細書において「分散性が良好」とは、上記樹脂成分と超微粒子成分と有機溶剤とを混合して得られた塗工液を塗布し、溶剤を乾燥除去して得られた塗膜が透明であることをいう。
好ましくは、上記超微粒子成分は、表面改質がなされている。表面改質を行うことにより、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させることができ、かつ、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面近傍に、良好に濃度変調領域を形成することができる。表面改質手段としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な手段が採用され得る。代表的には、表面改質は、超微粒子成分の表面に表面改質剤を塗布して表面改質剤層を形成することにより行われる。好ましい表面改質剤の具体例としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤、脂肪酸系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。このような表面改質剤を用いることにより、樹脂成分と超微粒子成分との濡れ性を向上させ、樹脂成分と超微粒子成分との界面を安定化させ、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させることができる。
上記塗工液における上記超微粒子成分の配合量は、形成されるマトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜70重量部であり、より好ましくは30重量部〜60重量部である。
A−3.工程C
代表的には、工程C(前駆体を重合させる工程)の前に、上記塗工液が基材に塗布される。基材としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なフィルムが採用され得る。具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、ラクトン変性アクリルフィルムなどが挙げられる。上記基材は、必要に応じて、易接着処理などの表面改質がなされていてもよく、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていてもよい。
上記塗工液の基材への塗布方法としては、任意の適切なコーターを用いた方法が採用され得る。コーターの具体例としては、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターが挙げられる。
次いで、上記前駆体を重合する。重合方法は、樹脂成分(したがって、その前駆体)の種類に応じて任意の適切な方法が採用され得る。例えば、樹脂成分が電離線硬化型樹脂である場合には、電離線を照射することにより前駆体を重合する。電離線として紫外線を用いる場合には、その積算光量は、好ましくは200mJ〜400mJである。電離線の光拡散性微粒子に対する透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。また例えば、樹脂成分が熱硬化型樹脂である場合には、加熱することにより前駆体を重合する。加熱温度および加熱時間は、樹脂成分の種類に応じて適切に設定され得る。好ましくは、重合は電離線を照射することにより行われる。電離線照射であれば、屈折率分布構造(濃度変調領域)を良好に保持したまま塗膜を硬化させることができるので、良好な拡散特性の光拡散素子を作製することができる。好ましくは、前駆体を重合することにより、マトリクスが形成されると同時に、光拡散性微粒子の表面近傍に、該光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて該超微粒子成分の重量濃度が高くなる実質的に球殻状の濃度変調領域が形成される。すなわち、本発明の製造方法によれば、光拡散性微粒子内部に浸透した前駆体と光拡散性微粒子に浸透しなかった前駆体とを同時に重合することにより、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に、上記濃度変調領域を形成すると同時に、マトリクスを形成することができる。
本発明の光拡散素子の製造方法が、上記工程A〜工程Cに加えて、任意の適切な時点で任意の適切な工程、処理および/または操作を含み得ることは言うまでもない。そのような工程等の種類およびそのような工程等が行われる時点は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、本発明の光拡散素子の製造方法は、必要に応じて、基材上に塗布された塗工液を加熱する工程をさらに含む。一つの実施形態においては、当該加熱により塗工液を乾燥させることができる。このような加熱は、例えば、重合工程の前に行ってもよく重合工程の後に行ってもよい。塗工液の加熱は、好ましくは重合工程の前に行われる。加熱により、樹脂成分の前駆体の光拡散性微粒子への浸透を促進させることができるからである。上記塗工液の加熱方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。加熱温度は、例えば、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは50℃〜70℃であり、加熱時間は、例えば30秒〜5分である。本発明の製造方法によれば、低温での加熱であっても、樹脂成分の前駆体の光拡散性微粒子への浸透を促進させることができ、拡散性の強い光拡散素子を得ることができる。
以上のようにして、光拡散素子が基材上に形成される。本発明の製造方法により製造された光拡散素子は、強い拡散性を有し、かつ、平滑性に優れる。平滑性に優れる光拡散素子が得られるメカニズムは、以下のように推定される。有機溶剤を十分に含み膨潤した光拡散性微粒子は、塗工液中で流動性を有し、塗工液面の変化(例えば、乾燥による塗工液面の変化)に追従することができる。その結果、本発明における光拡散性微粒子が塗膜から突出することを防止して、平滑性に優れる光拡散素子を得ることができる。一方、光拡散性微粒子に有機溶剤を十分に含有させることなく製造された従来の光拡散素子においては、光拡散性微粒子は塗工液中での流動性が低い。このような光拡散性微粒子を含む塗工液を乾燥工程に供した場合、光拡散性微粒子は塗工液面の変化に追従することができない。その結果、光拡散性微粒子が塗膜から突出してしまい、光拡散素子の表面に凹凸が生じてしまう。
また、上記のように光拡散性微粒子をあらかじめ膨潤させることにより、樹脂成分の前駆体が光拡散性微粒子内部に浸透しやすくなる。樹脂成分の前駆体の浸透により、光拡散性微粒子は、さらに膨潤し、平均粒子径がさらに増大する。光拡散性微粒子の平均粒子径が大きければ、少ない光拡散性微粒子数で、強い光拡散性を発現させることができる。含まれる光拡散性微粒子の数が少ない光拡散素子は、後方散乱が抑制される。本発明においては、光拡散性微粒子の周囲に存在する樹脂成分の前駆体が光拡散性微粒子に浸透するため、基材に塗布された塗工液中、光拡散性微粒子の塗工液面に略接する部分には、樹脂成分の前駆体が浸透しない。その結果、光拡散性微粒子が塗膜から突出して増大することを防ぐことができ、平滑性を損なうことなく、平均粒子径の大きい光拡散性微粒子を存在させることができる。
得られた光拡散素子は、基材から剥離して単一部材として用いてもよく、基材付光拡散素子として用いてもよく、基材から偏光板等に転写して複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いてもよく、基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いてもよい。基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いる場合には、当該基材は偏光板の保護層として機能し得る。
B.光拡散素子
本発明の光拡散素子は、上記A−1項〜A−3項に記載の方法によって得られ得る。本発明の光拡散素子は、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスと、該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有する。本発明の光拡散素子は、マトリクスと光拡散性微粒子の屈折率差により、光拡散機能を発現する。図1は、本発明の好ましい実施形態による製造方法により得られる光拡散素子におけるマトリクスの樹脂成分および光拡散性微粒子の分散状態を説明するための模式図である。本発明の光拡散素子100は、樹脂成分11および超微粒子成分12を含むマトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。好ましくは、マトリクスの樹脂成分および光拡散性微粒子は、それらの屈折率が下記式(1)を満たす:
0<|n−n|・・・(1)
上記超微粒子成分は、好ましくは、その屈折率が下記式(2)および(3)を満たす:
0<|n−n|<|n−n|・・・(2)
|n−n|<|n−n|・・・(3)
上記式(1)の関係を有するマトリクスの樹脂成分および光拡散性微粒子を用い、ならびに、上記式(2)および(3)の関係を有する超微粒子成分を用いることにより、高いヘイズを維持しつつ、後方散乱が抑制された光拡散素子を得ることができる。
好ましくは、図1および図2に示すように、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に、該光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて該超微粒子成分の重量濃度が高くなる実質的に球殻状の濃度変調領域30が形成されている。したがって、マトリクスは、光拡散性微粒子との界面近傍の濃度変調領域30と、当該濃度変調領域30の外側(光拡散性微粒子から離れた側)の濃度一定領域とを有する。好ましくは、マトリクスにおける濃度変調領域30以外の部分は、実質的には濃度一定領域である。濃度変調領域30においては、屈折率が実質的に連続的に変化する。本明細書において「マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍」とは、光拡散性微粒子表面、表面付近の外部および表面付近の内部を包含する。
好ましくは、上記濃度変調領域30は、マトリクス10中の超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配により形成されている。具体的には、濃度変調領域30においては、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて、超微粒子成分12の分散濃度(代表的には、重量濃度で規定される)が高くなる(必然的に、樹脂成分11の重量濃度が低くなる)。言い換えれば、濃度変調領域30における光拡散性微粒子20の最近接領域には、超微粒子成分12が相対的に低濃度で分散しており、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて超微粒子成分12の濃度が増大する。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)画像によるマトリクス10中の超微粒子成分12の面積比率は、光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、マトリクス10に近接する側では大きく、当該面積比率は光拡散性微粒子側からマトリクス側(濃度一定領域側)に実質的な勾配を形成しながら変化する。その代表的な分散状態を表すTEM画像を図3に示す。本明細書において、「透過型電子顕微鏡画像によるマトリクス中の超微粒子成分の面積比率」とは、光拡散性微粒子の直径を含む断面の透過型電子顕微鏡画像において、所定範囲(所定面積)のマトリクスに占める超微粒子成分の面積の比率をいう。当該面積比率は、超微粒子成分の3次元的な分散濃度(実際の分散濃度)に対応する。当該超微粒子成分の面積比率は、任意の適切な画像解析ソフトにより求めることができる。なお、上記面積比率は、代表的には、超微粒子成分の各粒子間の平均最短距離に対応する。具体的には、超微粒子成分の各粒子間の平均最短距離は、濃度変調領域においては光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて短くなり、濃度一定領域において一定となる(例えば、平均最短距離は、光拡散性微粒子の最近接領域では3nm〜100nm程度であり、濃度一定領域においては1nm〜20nmである)。平均最短距離は、図3のような分散状態のTEM画像を二値化し、例えば画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング社製)の重心間距離法を用いて算出することができる。以上のように、本発明の製造方法によれば、超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配を利用してマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に濃度変調領域30を形成することができるので、煩雑な製造方法でGRIN微粒子を製造して当該GRIN微粒子を分散させる場合に比べて、格段に簡便な手順で、かつ、格段に低コストで光拡散素子を製造することができる。さらに、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配を利用して濃度変調領域を形成することにより、濃度変調領域30と濃度一定領域との境界において屈折率を滑らかに変化させることができる。さらに、樹脂成分および光拡散性微粒子と屈折率が大きく異なる超微粒子成分を用いることにより、光拡散性微粒子とマトリクス(実質的には、濃度一定領域)との屈折率差を大きく、かつ、濃度変調領域の屈折率勾配を急峻にすることができる。
上記濃度変調領域は、マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分ならびに光拡散性微粒子の構成材料、ならびに化学的および熱力学的特性を適切に選択することにより形成することができる。例えば、樹脂成分および光拡散性微粒子を同系材料の中でも相溶性の高い材料同士で構成することにより、濃度変調領域を良好に形成することができる。また、濃度変調領域30は、例えば、上記A−1項〜A−3項で説明したように、樹脂成分11の前駆体(モノマー)が光拡散性微粒子20内部に浸透した後重合することにより形成される。濃度変調領域の厚みおよび濃度勾配は、マトリクスの樹脂成分および光拡散性微粒子の化学的および熱力学的特性を調整することにより制御することができる。
濃度変調領域30においては、上記のように、屈折率が実質的に連続的に変化する。好ましくは、これに加えて、上記濃度変調領域の最外部の屈折率と上記濃度一定領域の屈折率とが実質的に同一である。言い換えれば、上記光拡散素子においては、濃度変調領域から濃度一定領域にかけて屈折率が連続的に変化し、好ましくは光拡散性微粒子(より好ましくは、光拡散性微粒子の表面付近の内部)から濃度一定領域にかけて屈折率が連続的に変化する(図4)。好ましくは、当該屈折率変化は、図4に示すように滑らかである。すなわち、濃度変調領域と濃度一定領域との境界において、屈折率変化曲線に接線が引けるような形状で変化する。好ましくは、濃度変調領域において、屈折率変化の勾配は、上記光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて大きくなる。本発明の光拡散素子によれば、光拡散性微粒子とマトリクスの樹脂成分と超微粒子成分とを適切に選択することにより、実質的に連続的な屈折率変化を実現することができる。その結果、マトリクス10(実質的には、濃度一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくしても、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面の反射を抑えることができ、後方散乱を抑制することができる。さらに、濃度一定領域では、光拡散性微粒子20とは屈折率が大きく異なる超微粒子成分12の重量濃度が相対的に高くなるので、マトリクス10(実質的には、濃度一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくすることができる。その結果、薄膜であっても高いヘイズ(強い拡散性)を実現することができる。本明細書において「屈折率が実質的に連続的に変化する」とは、濃度変調領域において少なくとも光拡散性微粒子から濃度一定領域まで屈折率が実質的に連続的に変化すればよいことを意味する。したがって、例えば、光拡散性微粒子と濃度変調領域との界面、および/または、濃度変調領域と濃度一定領域との界面において所定の範囲内(例えば、屈折率差が0.05以下)の屈折率ギャップが存在しても、当該ギャップは許容され得る。
上記濃度変調領域30の厚み(濃度変調領域最内部から濃度変調領域最外部までの距離)は、一定であってもよく(すなわち、濃度変調領域が光拡散性微粒子の周囲に同心球状に拡がってもよく)、光拡散性微粒子表面の位置によって厚みが異なっていてもよい(例えば、金平糖の外郭形状のようになっていてもよい)。好ましくは、濃度変調領域30の厚みは、光拡散性微粒子表面の位置によって異なっている。このような構成であれば、濃度率変調領域30において、屈折率をより滑らかに連続的に変化させることができる。
上記濃度変調領域30の平均厚みは、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは12nm〜400nm、さらに好ましくは15nm〜300nmである。平均厚みが5nm未満であると、後方散乱が大きくなる場合がある。平均厚みが500nmを超えると、拡散性が不十分となる場合がある。このように、本発明の光拡散素子は、濃度変調領域30の平均厚みが非常に薄いにもかかわらず、ヘイズ値が高く、強い拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された薄膜の光拡散素子を実現することができる。上記平均厚みは、濃度変調領域30の厚みが光拡散性微粒子表面の位置によって異なる場合の平均厚みであり、厚みが一定である場合にはその厚みである。
上記光拡散素子は、ヘイズ値が高ければ高いほど好ましく、具体的には、好ましくは70%以上であり、より好ましくは90〜99.5%であり、さらに好ましくは92〜99.5%であり、特に好ましくは95〜99.5%であり、最も好ましくは97〜99.5%である。ヘイズ値が70%以上であることにより、コリメートバックライトフロント拡散システムにおけるフロント光拡散素子として好適に用いることができる。なお、コリメートバックライトフロント拡散システムとは、液晶表示装置において、コリメートバックライト光(一定方向に集光された、輝度半値幅の狭いバックライト光)を用い、上側偏光板の視認側にフロント光拡散素子を設けたシステムをいう。
上記光拡散素子の拡散特性は、光拡散半値角で示すならば、好ましくは10°〜150°(片側5°〜75°)であり、より好ましくは10°〜100°(片側5°〜50°)であり、さらに好ましくは30°〜80°(片側15°〜40°)である。
上記光拡散素子の厚みは、目的や所望の拡散特性に応じて適切に設定され得る。具体的には、上記光拡散素子の厚みは、好ましくは4μm〜50μm、より好ましくは4μm〜20μmである。本発明によれば、このように非常に薄い厚みにもかかわらず、上記のような非常に高いヘイズを有する光拡散素子が得られ得る。
本発明の製造方法によれば、平滑性に優れる光拡散素子が得られる。このように平滑性に優れる光拡散素子は、後方散乱が少ない。
上記光拡散素子の算術平均表面粗さRaは、好ましくは0.05mm未満であり、より好ましくは0.04mm以下であり、さらに好ましくは0.03mm以下である。光拡散素子の算術平均表面粗さRaは、小さければ小さいほど好ましいが、実用的な下限値は、例えば0.001mmである。なお、本明細書において、「算術平均表面粗さRa」は、JIS B 0601(1994年版)に規定される算術平均表面粗さRaである。
上記光拡散素子の十点平均表面粗さRzは、好ましくは0.20μm未満であり、より好ましくは0.17μm未満であり、さらに好ましくは0.15μm未満である。光拡散素子の十点平均粗さRzは、小さければ小さいほど好ましいが、実用的な下限値は、例えば0.005μmである。なお、本明細書において、「十点平均表面粗さRz」は、JIS B 0601(1994年版)に規定される十点平均表面粗さRzである。
上記光拡散素子の平均傾斜角度θaは、好ましくは0.50°未満であり、より好ましくは0.45°未満であり、さらに好ましくは0.40°以下である。光拡散素子の平均傾斜角度θaは、小さければ小さいほど好ましいが、実用的な下限値は、例えば0.01°である。なお、本明細書において、平均傾斜角度θaは、下記式(4)により定義される。
θa=tan−1Δa ・・・(4)
上記式(1)において、Δaは、下記数式(5)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L ・・・(5)
一つの実施形態においては、上記光拡散素子は、十点平均表面粗さRzが好ましくは0.20μm未満、より好ましくは0.17μm未満、さらに好ましくは0.15μm未満であり、かつ、平均傾斜角度θaが好ましくは0.5°未満、より好ましくは0.45°未満、さらに好ましくは0.40°以下である。
上記光拡散素子は、液晶表示装置の視認側部材、液晶表示装置のバックライト用部材、照明器具(例えば、有機EL、LED)用拡散部材に好適に用いられ、コリメートバックライトフロント拡散システムのフロント拡散素子として特に好適に用いられる。上記光拡散素子は、単独でフィルム状または板状部材として提供してもよく、任意の適切な基材や偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい。また、光拡散素子の上に反射防止層が積層されてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は下記の通りである。また、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)光拡散素子の厚み
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて基材と光拡散素子との合計厚みを測定し、当該合計厚みから基材の厚みを差し引き、光拡散素子の厚みを算出した。
(2)ヘイズ値
JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN−150」)を用いて測定した。
(3)後方散乱率
実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を、透明粘着剤を介して黒アクリル板(住友化学社製、商品名「SUMIPEX」(登録商標)、厚み2mm)の上に貼り合わせ、測定試料とした。この測定試料の積分反射率を分光光度計(日立計測器社製、商品名「U4100」)にて測定した。一方、上記光拡散素子用塗工液から微粒子を除去した塗工液を用いて、基材と透明塗工層との積層体を作製して対照試料とし、上記と同様にして積分反射率(すなわち、表面反射率)を測定した。上記測定試料の積分反射率から上記対照試料の積分反射率(表面反射率)を差し引くことにより、光拡散素子の後方散乱率を算出した。
(4)十点平均表面粗さRz、算術平均表面粗さRaおよび平均傾斜角度θa
十点平均表面粗さRz、算術平均表面粗さRaおよび平均傾斜角度θaを微細形状測定機(小坂研究所社製、商品名「サーフコーダ ET−4000」)を用いて測定した。
(5)超微粒子成分の疎密
実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を液体窒素で冷却しながら、ミクロトームにて0.1μmの厚さにスライスして測定試料とした。当該測定試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所製、商品名「H−7650」、加速電圧100kV)を用いて2次元画像を観察し、当該測定試料の光拡散素子内の粗密の発生を確認した。直接倍率×1,200、MAGNIFICATION×10,000の測定視野(13.9μm×15.5μm)において、マトリクス中で超微粒子成分が存在せず白点として観察される部分(すなわち、測定視野内における、光拡散性微粒子由来の白い部分以外の白点)の数をカウントした。実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体それぞれについて、20箇所、上記のように白点の数をカウントし、その平均値を算出した。表1には当該平均値を示す。白点の数が多いほど、超微粒子成分の疎密が多いと評される。
(6)明所でのコントラスト
(液晶表示装置の作製)
マルチドメイン型VAモードの液晶セルを備える市販の液晶テレビ(SONY社製、ブラビア20型、商品名「KDL20J3000」)から液晶セルを取り出した当該液晶セルの両側に、市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NPF−SEG1423DU」)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交するようにして貼り合わせた。より具体的には、バックライト側偏光板の偏光子の吸収軸方向が垂直方向(液晶パネルの長辺方向に対して90°)となり、視認側偏光板の偏光子の吸収軸方向が水平方向(液晶パネルの長辺方向に対して0°)となるようにして貼り合わせた。さらに、視認側偏光板の外側に、実施例および比較例の光拡散素子を基材から転写して貼り合わせ、液晶パネルを作製した。
一方、PMMAシートの片面に、レンチキュラーレンズのパターンを、転写ロールを用いて溶融熱転写した。レンズパターンが形成された面とは反対側の面(平滑面)に、レンズの焦点のみ光が透過するよう、アルミニウムのパターン蒸着を行い、開口部の面積比率7%(反射部の面積比率93%)の反射層を形成した。このようにして、集光素子を作製した。バックライトの光源として冷陰極蛍光ランプ(ソニー社製、BRAVIA20JのCCFL)を用い、当該光源に集光素子を取り付けて、コリメート光を出射する平行光光源装置(バックライトユニット)を作製した。
上記液晶パネルに上記バックライトユニットを組み込み、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置を作製した。
(コントラストの測定)
出射光が、液晶表示装置の鉛直方向となす角度が15°で入射するように、蛍光ランプ(200lx:照度計IM−5での測定値)を配置し、照射し、黒表示および白表示の輝度をAUTRONIC MELCHERS社製コノスコープにて測定して、コントラストを評価した。
<実施例1>
光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.49)15部と、有機溶剤としての酢酸ブチルおよびMEKの混合溶媒(重量比50/50)30部とを混合し、60分間撹拌して、混合液を調製した。
次いで、得られた混合液に、超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均粒径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52、分子量298)22部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名「イルガキュア907」)0.5部およびレベリング剤(DIC社製、商品名「GRANDIC PC 4100」)0.5部を添加し、ディスパーを用いて15分間撹拌して、塗工液を調製した。
当該塗工液を調製後ただちに、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」)上に塗工し、60℃にて1分間加熱後、積算光量300mJの紫外線を照射し、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。さらに、光拡散素子断面のTEM写真を図5(a)に示す。
なお、暗所における白輝度を300cd/mと設定したところ、黒輝度は0.3cd/mとなり、暗所におけるコントラストは1000であった。
<実施例2>
脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52、分子量298)に代えて、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「NKエステル」、屈折率1.52、分子量632)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
<実施例3>
有機溶剤としての酢酸ブチルおよびMEKの混合溶媒(重量比50/50)30部に代えて、MEK30部を用いた以外は、実施例1と同様にして、光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
<比較例1>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均粒径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%MEK溶液を11部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「GRANDIC PC 4100」)を0.5部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.49)を15部添加した。この混合物を5分間超音波処理し、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。当該塗工液を24時間静置した後、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」)上に塗工し、60℃にて1分間加熱後、積算光量300mJの紫外線を照射し、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を、表1に示す。さらに、光拡散素子断面のTEM写真を図5(b)に示す。
<比較例2>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均粒径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%酢酸ブチル溶液を11部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「GRANDIC PC 4100」)を0.5部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.49)を15部添加した。この混合物を5分間超音波処理し、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。当該塗工液を72時間静置した後、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」)上に塗工し、60℃にて1分間加熱後、積算光量300mJの紫外線を照射し、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を、表1に示す。
<比較例3>
塗工液を調製後、静置せずにただちに塗工した以外は、比較例1と同様にして、光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
<比較例4>
塗工液を調製後、静置せずにただちに塗工し、加熱温度を100℃とした以外は、比較例1と同様にして、光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、光拡散素子断面のTEM写真を図5(c)に示す。
実施例から明らかなように、本発明の光拡散素子の製造方法によれば、塗工液を調製した直後に、塗工しても、ヘイズ値が高く、強い拡散性を有する光拡散素子を製造することができる。また、本発明の製造方法で得られた光拡散素子は、表面平滑性に優れ、後方散乱が少ない。超微粒子成分の疎密が少ないことからも明らかなように、本発明の光拡散素子の製造方法によれば、光拡散性微粒子および超微粒子成分の凝集が起こりにくいため、上記のような優れた特性を有する光拡散素子が得られると考えられる。さらに、樹脂成分の前駆体として低分子量モノマーを用いた場合は、光拡散性により優れる光拡散素子を得ることができる(実施例1と2との比較)。混合液の有機溶媒として、沸点の高い溶媒を用いた場合は、表面平滑性により優れる光拡散素子を得ることができる(実施例1と3との比較)。一方、比較例に示すように、光拡散性微粒子、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を同時に混合した場合は、塗工液を所定時間静置するか、塗工後の加熱温度を高くしなければ、十分なヘイズ値が得られない(比較例3)。また、塗工液を所定時間静置した場合および塗工後の加熱温度を高くした場合、光拡散性微粒子および/または超微粒子成分の凝集により、後方散乱の多い光拡散素子しか得られない(比較例1、2および4)。
本発明の製造方法により得られる光拡散素子は、液晶表示装置の視認側部材、液晶表示装置のバックライト用部材、照明器具(例えば、有機EL、LED)用拡散部材に好適に用いられ、コリメートバックライトフロント拡散システムのフロント拡散素子として特に好適に用いられ得る。
10 マトリクス
11 樹脂成分
20 光拡散性微粒子
30 濃度変調領域
100 光拡散素子

Claims (10)

  1. 光拡散性微粒子と有機溶剤とを混合して混合液を調製し、該光拡散性微粒子を膨潤させる工程Aと、
    該混合液と、樹脂成分の前駆体および超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合する工程Bと、
    該樹脂成分の前駆体を重合して、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを形成する工程Cと、を含む、
    光拡散素子の製造方法。
  2. 前記樹脂成分の前駆体の分子量が、100〜700である、請求項1に記載の光拡散素子の製造方法。
  3. 前記有機溶剤の沸点が、70℃以上である、請求項1または2に記載の光拡散素子の製造方法。
  4. 前記有機溶剤が、第1の有機溶剤と第2の有機溶剤との混合溶剤であり、
    該第1の有機溶剤は、該第2の有機溶剤よりも前記光拡散性微粒子に浸透しやすく、かつ、該第2の有機溶剤よりも揮発性が高い、
    請求項1または2に記載の光拡散素子の製造方法。
  5. 前記混合液と、前記樹脂成分の前駆体および前記超微粒子成分を含むマトリクス形成材料とを混合して得られた分散液を、加熱する工程をさらに含み、加熱温度が80℃以下である、請求項1から4のいずれかに記載の光拡散素子の製造方法。
  6. 前記工程Cにおいて、前記マトリクスと前記光拡散性微粒子との界面近傍に、該光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて該超微粒子成分の重量濃度が高くなる実質的に球殻状の濃度変調領域を形成させる、請求項1から5のいずれかに記載の光拡散素子の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得られる光拡散素子であって、ヘイズ値が70%以上である、光拡散素子。
  8. 十点平均表面粗さRzが、0.20μm未満である、請求項7に記載の光拡散素子。
  9. 平均傾斜角度θaが、0.50°未満である、請求項7または8に記載の光拡散素子。
  10. 算術平均表面粗さRaが、0.05mm未満である、請求項7から9のいずれかに記載の光拡散素子。
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