JP2005281476A - 樹脂ビーズ含有塗料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくともバインダ樹脂と樹脂ビーズと溶剤とを含有した塗料において、樹脂ビーズを溶剤で70%以上膨潤させておく。その結果、一定した品質で安定して塗工することができ、その塗膜の形成された各製品の品質を均質化できる。
【選択図】 図3
Description
携帯端末用ディスプレイとしては、軽量かつコンパクトであり、また汎用性等を有するLCDが有力である。これらの携帯端末は、屋外で使用されるケースが多いことから、屋外で良好な画像表示を実現するため、ディスプレイに入射した太陽光等の外部光の反射を極力抑える必要がある。従って、ディスプレイへの太陽光や蛍光灯等の外部光の映り込みを防止すること、すなわち、ディスプレイ画面の防眩に対する要求が強くなってきた。
さらに、最近、タッチパネル等のディスプレイに直接指等を触れて操作するものが市販されるようになったことから、ディスプレイ表面には、耐磨耗性および耐薬品性を有するとともに、指触等による汚染防止への要求も高まってきた。
防眩性に関しては、従来、この種の防眩を実現するために、磨きガラスのように、光を散乱もしくは拡散させて像をぼかす手法が一般的に行われている。通常、光を散乱もしくは拡散させるためには、光の入射する基体面を粗面化させることが基本となっており、この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面を直接粗面化する方法、基体表面にフィラーを含有させた塗工層を設ける方法及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等が採用されている。
また、ディスプレイの解像度が向上するに伴い、粗面の凹凸の高さや間隔にも緻密化が要求されるようになってきた。画像の高精細化は、主に画像ドットを高密度にすることにより達成されるものであるが、上記凹凸の間隔が、この画像ドットのピッチより大きい場合には干渉によるギラツキが発生するという問題がある。そこで、防眩性が良好であり、ギラツキのない鮮明な画像を得るためには、上記凹凸の高さ及び間隔を小さくするとともに、ばらつきがないようにコントロールしなければならない。
現在、基体表面にフィラーを含有させた塗工層を設ける方法が、フィラーの粒径により粗面の凹凸の大きさを比較的容易にコントロールできること及び製造が容易であること等の利点があることから、好適に用いられている。塗料に使用する樹脂としては、透明性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性等の諸性質に優れているものが望まれるが、基体が耐熱性に乏しい高透明なプラスチックフィルムである場合が多いため、紫外線硬化型樹脂が好んで使用されている。その例として、紫外線硬化型樹脂およびシリカ顔料を用いる方法が、特許文献1、2に提案されている。
しかしながら、上記文献等に使用されている紫外線硬化型樹脂は、一般的に紫外線を照射するまで液体状態にあるため、塗料を基体に塗布した後、紫外線を照射するまでの間に塗工層中のフィラーが凝集して、オレンジピールを形成するという問題を有していた。特に、塗工層表面に凹凸を緻密化させる目的でフィラーの含有量を増加させたり、フィラーを塗工層面から突出させる目的で溶剤等を用いて希釈する場合には、オレンジピールが特に顕著に現れた。従って、ディスプレイの高解像度化に適合した粗面の凹凸形成については、満足なものではなかった。
また、上記文献に記載のように、シリカ顔料として吸油性の高い無定形シリカを使用すると、このシリカ顔料は油分等を吸収し易いものであるため、指紋等で粗面が汚染されるという欠点があった。
この種の汚れは、アルコール等の溶媒を染み込ませた布で拭いても除去し難いものである上に、拭き取った部分は、布の繊維が付着したり、顔料が削り取られたりして白色化するため、ディスプレイ用途では画像のコントラストが低下するという問題も有していた。
また、塗料中で、シリカは沈降しやすく、作業性に難があった。
そこで、これらの問題を解決すべく、ディスプレイへの太陽光及び蛍光灯等の外部光の映り込みを防止することにより、優れた防眩特性を発揮し、かつ、ギラツキ等のない鮮明な画像及び高精細画像を得ることができるとともに、さらに優れた耐磨耗性、耐薬品性を有するディスプレイ、特に、フルカラー液晶ディスプレイに好適で、作業性にも優れた防眩材料が特許文献3に記載されている。
これは、透明基体に粗面化層を設ける為の防眩材料において、アクリル系紫外線硬化型樹脂および粒径が0.5〜6.0μmの範囲にある架橋アクリルビーズを含有する塗料を用いるものである。
そこで、この不安定性を解消すべく、本発明の樹脂ビーズ含有塗料は、少なくともバインダ樹脂と樹脂ビーズと溶剤とを含有した塗料において、樹脂ビーズが溶剤で70%以上膨潤していることを特徴とするものである。
本発明の樹脂ビーズ含有塗料の製造方法は、少なくともバインダ樹脂と樹脂ビーズと溶剤とを含有した塗料の製造方法において、樹脂ビーズを溶剤中に分散させて樹脂ビーズを70%以上膨潤させた後にバインダ樹脂と混合することを特徴としたものである。
本発明は防眩材料に特に好適である。
バインダ樹脂は、その塗料の用途によるが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。特に、防眩材料用としては、アクリル系紫外線硬化型樹脂、例えば、アクリルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ウレタンアクリレート系等の光重合性モノマーやオリゴマーと、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の光重合開始剤を用いて合成される紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
このような架橋アクリルビーズは、球状であり、吸油性が小さいものであるから、粗面化層に使用すると優れた耐汚染性を発現することができる。また、この架橋アクリルビーズは、アクリル系紫外線硬化型樹脂への分散性に優れているため、オレンジピールが発生し難いという利点を有している。また、樹脂への分散性をより一層向上させるために、油脂類、シランカップリング剤、金属酸化物等の有機材料や無機材料等による表面改質を行ってもよい。
架橋アクリルビーズの粒径としては、0.5〜6.0μmの範囲のものが好適である。特に、1.5μmを中心として、1.0〜3.0μmの範囲のものが好ましい。粒径が、0.5μmより小さい場合は防眩性が低下し、また、6.0μmより大きい場合はディスプレイの画像コントラストが低下し、ギラツキが発生する。
ここで、膨潤度70%とは、適用する樹脂ビーズと溶剤の組合せにおいて、その樹脂ビーズを溶剤中に10日間(常温)浸漬させて十分に膨潤させた樹脂ビーズの粒径を100%とし、その70%の粒径に膨潤させた状態を意味する。即ち、膨潤度(Sn)は次式により求まる。
Sn=(dn−d0)/(d10−d0) ×100
Sn:n日浸漬時の膨潤度(%)
dn:n日浸漬時の粒子径(μm)
ここで、S10を100%としたのは、殆どの場合における塗料に用いる樹脂ビーズ及び溶剤においては、10日浸漬させることで膨潤は飽和に達するとみなせられるからである。
本発明のように、予め樹脂ビーズを溶剤で膨潤させておくことにより、その後も溶剤中に浸漬させておいても、樹脂ビーズの膨潤度の変化が小さくなる。即ち、塗料のロットや保管期間の影響を受けることなく、樹脂ビーズの膨潤度がほぼ一定の塗料となる。従って、樹脂ビーズの粒径が安定化し、その結果、塗膜の透明性や、塗料粘度が一定となり、成膜された膜の品質が均一なものとなる。
また、塗料の塗布方法も特に制限されるものではなく、例えば、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等が用いられる。また、フレキソ印刷等の凸版印刷、ダイレクトグラビア印刷、オフセットグラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等も適用できる。
ここで、透明基体としては、従来公知の透明なフィルム、ガラス等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂フィルム、および石英ガラス、ソーダガラス等のガラス基材等が好適に使用される。
これらの透明基体は、透明性の高いものほど好適であるが、光線透過率(JIS C−6714)としては80%以上のもの、好ましくは90%以上のものである。また、その透明基体を小型軽量の液晶ディスプレイに用いる場合には、透明基体はフィルムであることがより好ましい。透明基体の厚さは、軽量化の観点からすると薄い方が望ましいが、その生産性を考慮すると、1μm〜5mmの範囲のものを使用することが好ましい。
また、透明基体の表面には、粗面化層との密着性を向上させるために、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理等の表面処理、シランカップリング剤の塗布またはSi蒸着等の表面改質処理を行うことが、粗面化層と透明基体との密着性を向上する点から好ましい。
このような透明基体の片面または両面に粗面化層を設ける方法としては、上述の本発明の塗料をコーティングや印刷により、透明基体の片面または両面上に単層もしくは多層に分けて設ける方法等が挙げられる。
粗面化層の厚さは、0.5〜10μmの範囲であり、好ましくは1〜5μmの範囲である。粗面化層の厚さが0.5μmより薄いと、粗面化層の耐磨耗性が悪くなったり、紫外線硬化型樹脂が酸素阻害を受け易くなり、硬化不良が発生する。一方、10μmより厚くすると紫外線硬化型樹脂の硬化収縮により、カールが発生したり、粗面化層にマイクロクラックが発生したり、粗面化層と透明基体との密着性が低下する。
防眩材料は、ヘイズ値(JISK7105)が、3〜30の範囲にあることが好ましい。この場合、この値が3未満では防眩性が不良となり、一方、30を越えて大きいと画像コントラストが悪く、視認性不良となり、ディスプレイとしての機能低下を招くことから好ましくない。なお、ヘイズ値(曇価)は、積分球式光線透過率測定装置を用いて、拡散透過率(Hd%)と全光線透過率(Ht%)を測定し、下記式により算出される。
ヘイズ値=Hd/Ht×100
これをそのまま10日間、静置した後、アクリルビーズ顔料の粒径を測定したところ、3.8μmであった。以下、粒径3.8μmを膨潤度100%とする。
尚、粒径の測定は、光学顕微鏡観察(1000倍)によるもので、粒子50個の平均値である(以下同様)。
上記同様の架橋アクリルビーズ顔料5質量部を有機溶剤50質量部中に添加し、サンドミルで30分間混合し、分散させた。
これをそのまま3日間、静置し、アクリルビーズ顔料の粒径を測定したところ、3.6μmであり、膨潤度75%であった。
この分散液をエポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂(商品名:KR−566、固形95%溶液、旭電化工業(株)製)45部とサンドミルで30分間混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を膜厚80μm、透過率92%のトリアセチルセルロースからなる透明基体の片面上にロッドコータで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、120W/cm集光型高圧水銀灯1灯を用いて紫外線照射(照射距離10cm、照射時間30秒)することにより、厚さ3.2μmの塗膜を硬化させた。
得られた塗膜について、JISK7105に基づいて、透明性(ヘイズ値)を測定した。
[実施例2]
上記同様の架橋アクリルビーズ顔料5質量部を有機溶剤50質量部中に添加し、サンドミルで30分間混合し、分散させた。
これをそのまま4日間、静置し、アクリルビーズ顔料の粒径を測定したところ、3.7μmであり、膨潤度88%であった。
この分散液をエポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂(商品名:KR−566、固形95%溶液、旭電化工業(株)製)45部とサンドミルで30分間混合し、分散させて塗料を製造した。
実施例1と同様に、この塗料を用いてロッドコータで塗膜を成膜した。
得られた塗膜について、JISK7105に基づいて、透明性(ヘイズ値)を測定した。
実施例1と同様に架橋アクリルビーズ顔料5質量部を有機溶剤50質量部中に添加し、サンドミルで30分間混合し、分散させた。
これをそのまま5日間、静置し、アクリルビーズ顔料の粒径を測定したところ、3.7μmであり、膨潤度88%であった。
この分散液をエポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂(商品名:KR−566、固形95%溶液、旭電化工業(株)製)45部とサンドミルで30分間混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜した。
得られた塗膜について、透明性(ヘイズ値)を測定した。
[実施例4]
架橋アクリルビーズ顔料と有機溶剤からなる分散液を6日間、静置したこと以外は実施例1と同様にして、粒径3.7μm、膨潤度88%のアクリルビーズを含有した分散液を調製した。その後、実施例1と同様にして、エポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂と混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜し、透明性(ヘイズ値)を測定した。
[実施例5]
上記10日間、静置して、アクリルビーズ顔料を100%膨潤させた分散液を実施例1と同様に、エポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂と混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜し、透明性(ヘイズ値)を測定した。
[実施例6]
架橋アクリルビーズ顔料と有機溶剤からなる分散液を14日間、静置したこと以外は実施例1と同様にして、粒径3.8μm、膨潤度100%のアクリルビーズを含有した分散液を調製した。その後、実施例1と同様にして、エポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂と混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜し、透明性(ヘイズ値)を測定した。
架橋アクリルビーズ顔料と有機溶剤からなる分散液を混合してすぐエポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂と混合し、分散したこと以外は実施例1と同様にして、粒径3.0μm、膨潤度0%のアクリルビーズを含有した分散液を調製した。その後、実施例1と同様にして、塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜し、透明性(ヘイズ値)を測定した。
[比較例2]
架橋アクリルビーズ顔料と有機溶剤からなる分散液を2日間、静置したこと以外は実施例1と同様にして、粒径3.4μm、膨潤度50%のアクリルビーズを含有した分散液を調製した。その後、実施例1と同様にして、エポキシアクリレート系紫外線硬化型樹脂と混合し、分散させて塗料を製造した。
この塗料を用いて実施例1と同様に塗膜を成膜し、透明性(ヘイズ値)を測定した。
図2、3から、実施例1〜6のように膨潤度を70%以上にしておくことで、各塗料のヘイズ値がほぼ一定になっており、透明性が安定していることがわかる。他方、比較例1、2の塗料は、実施例の塗料よりもヘイズ値が低く、比較例1、2の塗料を保管することにより、透明性の異なる塗料に変化してしまうことがわかる。
Claims (3)
- 少なくともバインダ樹脂と樹脂ビーズと溶剤とを含有した塗料において、
樹脂ビーズが溶剤で70%以上膨潤していることを特徴とする樹脂ビーズ含有塗料。 - 防眩材料用であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ビーズ含有塗料。
- 少なくともバインダ樹脂と樹脂ビーズと溶剤とを含有した塗料の製造方法において、
樹脂ビーズを溶剤中に分散させて樹脂ビーズを70%以上膨潤させた後にバインダ樹脂と混合することを特徴とする樹脂ビーズ含有塗料の製造方法。
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