以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
図1の太陽電池モジュール用フロントシート1は、シート状の基材層2と、この基材層2の表面に積層される光学層3とを備えている。この光学層3は、その表面にマイクロレンズアレイ4を有している。当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、表面のマイクロレンズアレイ4により、表面側から入射する光線に対して優れた低反射性、法線方向側への変角性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能を有している。
基材層2は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明のガラス又は合成樹脂から形成されている。かかる基材層2に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。上記樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有するポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、基材層2とマイクロレンズアレイ4とを一体成形する場合、マイクロレンズアレイ4の成形性に優れる紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂が好ましい。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
上記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
上記放射線硬化型樹脂としては、紫外線、電子線等の放射線の照射によって架橋硬化する樹脂であり、光重合性プレポリマーを含む樹脂組成物から形成される。この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましい。このアクリル系プレポリマーとしては、例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用される。
上記放射線硬化型樹脂を形成する樹脂組成物には、基材層2の硬度を調整する目的で、光重合性モノマーを添加することができる。この光重合性モノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能モノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
また、上記放射線硬化型樹脂を形成する樹脂組成物には、紫外線照射により硬化させる場合、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含有することが好ましい。この光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させて硬化速度を速めることができるものであり、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。
上記放射線硬化型樹脂を形成する樹脂組成物に放射線を照射する方法としては、(a)例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等を用いた紫外線照射方法、(b)例えばコックロフトワルトン型、バンデルグラフ型、共変圧器型、絶縁コア変圧器型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子加速器を用いた電子線照射方法が採用される。
なお、基材層2の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、基材層2の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料、フィラー、可塑剤、劣化防止剤、分散剤等が挙げられる。上記基材層2の成形方法としては、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。
基材層2の厚み(平均厚み)の下限としては、10μmが好ましく、20μmが特に好ましい。一方、基材層2の厚みの上限としては、250μmが好ましく、188μmが特に好ましい。基材層2の厚みが上記下限未満であると、耐熱性、熱的寸法・形状安定性、保護性、耐衝撃性、堅牢性等が低下するおそれがある、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材層2の厚みが上記上限を超えると、太陽電池モジュールの薄型化及び軽量化の要請に反することになる。また、ガラス製の基材層2の厚さとしては、一般的には3mm程度とされている。
マイクロレンズアレイ4は、多数のマイクロレンズ5から構成されている。このマイクロレンズ5は、半球状(半球に近似した形状を含む)とされ、基材層2の表面に突設されている。マイクロレンズ5は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。このマイクロレンズ5を形成する合成樹脂としては、基材層2と同様の合成樹脂が用いられる。
マイクロレンズ5は、基材層2の表面に比較的密にかつ幾何学的に配設されている。具体的にはマイクロレンズ5は、基材層2の表面において正三角形格子パターンで配設されている。従って、マイクロレンズ5のピッチ(P)及びレンズ間距離(S)は全て一定である。この配設パターンは、マイクロレンズ5を最も密に配設することができる。なお、マイクロレンズ5の配設パターンとしては、稠密充填可能な上記正三角形格子パターンに限定されず、例えば正方形格子パターンやランダムパターンも可能である。このランダムパターンによれば、当該太陽電池モジュール用フロントシート1を他の光学部材と重ね合わせた際にモアレの発生が低減される。
マイクロレンズ5の直径(D)の下限としては、10μm、特に100μm、さらに特に200μmが好ましい。一方、マイクロレンズ5の直径(D)の上限としては、1000μm、特に700μmが好ましい。マイクロレンズ5の直径(D)が10μmより小さいと、回析の影響が大きくなり、上記光学的機能の低下や色分解が起こり易く、品質の低下を招来する。一方、マイクロレンズ5の直径(D)が1000μmを超えると、厚さの増大や輝度ムラが生じやすく、品質の低下を招来する。また、マイクロレンズ5の直径(D)を100μm以上とすることで、単位面積当たりのマイクロレンズ5が少なくなる結果、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の大面積化が容易になり、製造時の技術的かつコスト的な負担が軽減される。
マイクロレンズ5の表面粗さ(Ra)の下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmが特に好ましい。一方、マイクロレンズ5の表面粗さ(Ra)の上限としては、0.1μmが好ましく、0.07μmが特に好ましい。このようにマイクロレンズ5の表面粗さ(Ra)を上記下限以上とすることで、当該太陽電池モジュール用フロントシート1のマイクロレンズアレイ4の成形性が比較的容易になり、製造面での技術的及びコスト的負担が軽減される。一方、マイクロレンズ5の表面粗さ(Ra)を上記上限未満とすることで、マイクロレンズ5表面での光の散乱が低減される結果、マイクロレンズ5による集光機能や法線方向側への屈折機能が高められ、かかる良好な光学的機能に起因して発電効率の向上が促進される。
マイクロレンズ5の高さ(H)の曲率半径(R)に対する高さ比(H/R)の下限としては、5/8が好ましく、3/4が特に好ましい。一方、この高さ比(H/R)の上限としては1が好ましい。このようにマイクロレンズ5の高さ比(H/R)を上記範囲とすることで、マイクロレンズ5におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の低反射性、法線方向側への変角性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能が格段に向上する。
マイクロレンズ5のレンズ間距離(S;P−D)の直径(D)に対する間隔比(S/D)の上限としては1/2が好ましく、1/5が特に好ましい。このようにマイクロレンズ5のレンズ間距離(S)を上記上限以下とすることで、光学的機能に寄与しない平坦部が低減され、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の上記光学的機能が格段に向上する。
マイクロレンズ5の充填率の下限としては40%が好ましく、60%が特に好ましい。このようにマイクロレンズ5の充填率を上記下限以上とすることで、マイクロレンズ5の占有面積を高め、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の上記光学的機能が格段に向上する。
マイクロレンズアレイ4を構成する素材の屈折率の下限としては1.3が好ましく、1.45が特に好ましい。一方、マイクロレンズアレイ4を構成する素材の屈折率の上限としては1.8が好ましく、1.6が特に好ましい。この範囲の中でも、マイクロレンズアレイ4を構成する素材の屈折率としては1.5が最も好ましい。このようにマイクロレンズアレイ4を構成する素材の屈折率を上記範囲とすることで、マイクロレンズ5におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の上記光学的機能がさらに高められる。
当該太陽電池モジュール用フロントシート1の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。当該太陽電池モジュール用フロントシート1の製造方法としては、基材層2を作製した後にマイクロレンズアレイ4を別に形成する方法と、基材層2とマイクロレンズアレイ4とを一体成形する方法とが可能であり、具体的には、
(a)マイクロレンズアレイ4表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすこと当該太陽電池モジュール用フロントシート1を形成する方法、
(b)マイクロレンズアレイ4表面の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、
(c)シート化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(d)マイクロレンズアレイ4表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(e)基材層に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、基材層で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
上記マイクロレンズアレイ4の反転形状を有する型(モールド)の製造方法としては、例えば基材上にフォトレジスト材料により斑点状の立体パターンを形成し、この立体パターンを加熱流動化により曲面化することで、マイクロレンズアレイ模型を作製し、このマイクロレンズアレイ模型の表面に電鋳法により金属層を積層し、この金属層を剥離することで製造することができる。
上記製造方法によれば、任意形状のマイクロレンズアレイ4が容易かつ確実に形成される。そのため、マイクロレンズアレイ4を構成するマイクロレンズ5の直径(D)、高さ比(H/R)、間隔比(S/D)、充填率等が容易かつ確実に調整され、その結果当該太陽電池モジュール用フロントシート1の上記光学的機能が容易かつ確実に制御される。
次に、当該太陽電池モジュール用フロントシート1の光学的機能を図2を参照しつつ説明する。当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、光学層3の表面のマイクロレンズ5によって仰角が小さい斜め方向の入射光線Aも入射角が大きくなり、反射率が格段に低減される。つまり、当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、特に朝夕の際の仰角が小さい太陽光線に対しても効率良く入射させることができる。また、当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、マイクロレンズ5の表面でのレンズ的屈折作用によって入射光線Aを法線方向側に屈折し、太陽電池セルに到達する光量を増大させることができる。さらに、当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、マイクロレンズ5の表面でのレンズ的屈折作用によって仰角が大きい正面方向の入射光線Bが集光され、太陽電池セルに到達する光強度を増大させることができる。従って、当該太陽電池モジュール用フロントシート1は、入射光線に対する低反射性、法線方向側への屈折性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能を有し、発電効率を促進することができる。
次に、シミュレーションにより、当該太陽電池モジュール用フロントシート1において高さ比(H/R)、間隔比(S/D)及び充填率を変化させた場合に正面輝度がどのように変化するかを示す。このシミュレーションにおける輝度の解析は、モンテカルロ法を用いたノンシーケンシャル光線追跡で行う。得られる正面輝度相対値は、各パラメーターを変化させた場合の相対的な正面輝度を示すものである。
高さ比(H/R)と正面輝度相対値との関係を下記表1及び図3のグラフに示す。この表1及び図3のグラフは、高さ比(H/R)が5/8以上で正面輝度相対値が高くなり、高さ比(H/R)が3/4以上で特に高くなることを示している。また、高さ比(H/R)が1に近づくほど正面輝度相対値の増加量が低下している。
間隔比(S/D)と正面輝度相対値との関係を下記表2及び図4のグラフに示す。この表2及び図4のグラフは、間隔比(S/D)が1/2以下で正面輝度相対値が高くなり、間隔比(S/D)が1/5以下で特に高くなることを示している。
レンズ充填率と正面輝度相対値との関係を下記表3及び図5のグラフに示す。この表3及び図5のグラフは、レンズ充填率が40%以上で正面輝度相対値が正面輝度相対値が高くなり、レンズ充填率が60%以上でより高くなり、レンズ充填率が75%以上で特に高くなることを示している。
図6の太陽電池モジュール用フロントシート11は、シート状の基材層2と、この基材層2の表面に積層される光学層12とを備えている。この基材層2は、上記太陽電池モジュール用フロントシート1の基材層2と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
光学層12は、表面にマイクロレンズアレイ13を有している。このマイクロレンズアレイ13は、多数の半球状かつ凹状のマイクロレンズ14から構成されている。つまり、このマイクロレンズ14は、半球状凹レンズとされている。このマイクロレンズアレイ13の素材、マイクロレンズ14の直径(D)、高さ比(H/R)、間隔比(S/D)、充填率、製造方法等は、上記太陽電池モジュール用フロントシート1のマイクロレンズアレイ4と同様である。
当該太陽電池モジュール用フロントシート11も、上記太陽電池モジュール用フロントシート1と同様に、表面のマイクロレンズアレイ13によって表面側から入射する光線に対して優れた低反射性、法線方向側への変角性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能を有している。
図7の太陽電池モジュール用フロントシート21は、シート状の基材層2と、この基材層2の表面に積層される光学層22とを備えている。この基材層2は、上記太陽電池モジュール用フロントシート1の基材層2と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
光学層22は、基材層2表面に略均一に配設される複数の光拡散剤23と、その複数の光拡散剤23のバインダー24とを備えている。かかる複数の光拡散剤23は、バインダー24で被覆されている。このように複数の光拡散剤23によって光学層22の表面に微細な凹凸(好ましくは、マイクロレンズ状の凸部又は/及び凹部)が略均一に形成されている。なお、光学層22の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
光拡散剤23は、透明材料、特に好ましくは無色透明材料から形成される粒子である。光拡散剤23を形成する材料としては、無機材料と有機材料に大別される。無機材料としては、例えばガラス、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物及びアルミニウム酸化物等が挙げられる。有機材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
光拡散剤23の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、紡錘形状、針状、棒状、立方状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光学層22表面にマイクロレンズ状の凹凸が形成される球状のビーズが好ましい。
光拡散剤23の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましい。一方、光拡散剤23の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。光拡散剤23の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤23によって形成される光学層22表面の凹凸が小さくなり、入射光線に対する低反射性、法線方向側への屈折性、太陽電池セルへの集光性等の上記光学的機能が低下するおそれがある。逆に、光拡散剤23の平均粒子径が上記範囲を越えると、太陽電池モジュール用フロントシート21の厚さが増大し、かつ、上記光学的機能の均一性が低下するおそれがある。
光拡散剤23の配合量(バインダー24の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤23の配合量が上記範囲未満であると、上記光学的機能が低下するおそれがあり、一方、光拡散剤23の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤23を固定する効果が低下することからである。
バインダー24は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を硬化させることで形成されている。このバインダー24によって基材層2表面に光拡散剤23が略等密度に配置固定される。なお、このバインダー24を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマーの他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光学層22を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー24に用いられる基材ポリマーは、光線の透過性を高める観点から透明とされており、無色透明が特に好ましい。
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
また上記ポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー24は耐候性が高く、光学層22の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
バインダー24を形成するポリマー組成物中に微小無機充填剤を含有するとよい。このバインダー24中に微小無機充填剤を含有することで、光学層22ひいては太陽電池モジュール用フロントシート21の耐熱性が向上する。この微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。この無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。また無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また、微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、太陽電池モジュール用フロントシート21の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、太陽電池モジュール用フロントシート21の耐熱性等の上記効果を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光学層22の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
上記微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー24中での分散性やバインダー24との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
上記有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上記ポリマー組成物の基材ポリマーと相溶性を有する樹脂が好ましく、従ってポリマー組成物に含まれる基材ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー24を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー24中での分散性を向上させることができる。
上記アルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
有機ポリマーを固定した微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
微小無機充填剤に固定する上記有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー24を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー24のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
上記多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族及びその他の多官能イソシアネート化合物やこれらの変性化合物を挙げることができる。この多官能イソシアネート化合物の具体例としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体等の3量体等;これらの多官能イソシアネート類とプロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの反応により生成される2個以上のイソシアネート基が残存する化合物;これらの多官能イソシアネート化合物をエタノール、ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトオキシム、メチルエチルケトキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、γ−カプロラクタム等のラクタム類等のブロック剤で封鎖したブロックド多官能イソシアネート化合物などを挙げることができる。なお、上記多官能イソシアネート化合物は1種又は2種以上混合して使用することができる。中でも、被膜の黄変色を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性多官能イソシアネート化合物が好ましい。
上記メラミン化合物としては、例えばジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、イソブチルエーテル型メラミン、n−ブチルエーテル型メラミン、ブチル化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
上記アミノプラスト樹脂としては、例えばアルキルエーテル化メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ、これらのアミノプラスト樹脂の単体又は2種以上の混合物もしくは共縮合物を使用できる。このアルキルエーテル化メラミン樹脂とは、アミノトリアジンをメチロール化し、シクロヘキサノールまたは炭素数1〜6のアルカノールでアルキルエーテル化して得られるものであり、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合メラミン樹脂が代表的なものである。また硬化を促進させるためのスルホン酸系触媒、例えばパラトルエンスルホン酸及びそのアミン塩等を使用することができる。
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー24を構成する基材ポリマーとしてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー24の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該太陽電池モジュール用フロントシート21の耐撓み性、寸法安定性等が改善され、加えて光学層22の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、ポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光学層22の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、ポリマー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いると、ポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、帯電防止剤として微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系のものを使用しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができる。また、かかるポリマー組成物の硬化反応速度の向上はバインダー中への微小無機充填剤の均一分散性に寄与する。その結果、当該太陽電池モジュール用フロントシート21の熱、紫外線等による撓みや黄変を格段に抑制することができる。
当該太陽電池モジュール用フロントシート21の製造工程としては、一般的には、(a)バインダー24を構成するポリマー組成物に光拡散剤23を混合することで光学層用組成物を製造する工程と、(b)この光学層用組成物を基材層2の表面に積層し、硬化させることで光学層22を形成する工程とを有している。上記光学層用組成物の積層手段としては、特に限定されるものではなく、例えばバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いたコーティング等が採用される。
当該太陽電池モジュール用フロントシート21は、上述のように光学層22の表面に凹凸が形成されるため、上記太陽電池モジュール用フロントシート1と同様に入射光線に対する低反射性、法線方向側への屈折性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能を有している。また、当該太陽電池モジュール用フロントシート21は、光学層22内の光拡散剤23の界面でもレンズ的屈折作用が奏され、その結果上記光学的機能が高められている。
図8の太陽電池モジュール31は、当該太陽電池モジュール用フロントシート1と、充填剤層32と、複数枚の太陽電池セル33と、充填剤層34と、バックシート35とが表面側からこの順に積層されている。
上記充填剤層32及び充填剤層34は、太陽電池モジュール用フロントシート1及びバックシート35間における太陽電池セル33の周囲に充填されており、太陽電池モジュール用フロントシート1及びバックシート35との接着性や、太陽電池セル33を保護するための耐スクラッチ性、衝撃吸収性等を有している。なお、太陽電池セル33の表面に積層される充填剤層32は、上記諸機能に加え、太陽光を透過する透明性を有している。
充填剤層32及び充填剤層34の形成材料としては、例えばフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等に優れるフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂又はエチレン−酢酸ビニル系樹脂が好ましい。
また、充填剤層32及び充填剤層34の形成材料としては、特開2000−34376公報に示される熱可逆架橋性オレフィン系重合体組成物、具体的には(a)不飽和カルボン酸無水物と不飽和カルボン酸エステルとによって変性された変性オレフィン系重合体であって、1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均結合数が1個以上で、かつ該変性オレフィン系重合体中のカルボン酸無水物基数に対するカルボン酸エステル基数の比が0.5〜20である変性オレフィン系重合体と、(b)1分子当たりの水酸基の平均結合数が1個以上の水酸基含有重合体とを含み、(a)成分のカルボン酸無水物基数に対する(b)成分の水酸基数の比が0.1〜5のものなども使用される。
なお、充填剤層32及び充填剤層34の形成材料には、耐候性、耐熱性、ガスバリア性等の向上を目的として例えば架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。また充填剤層32及び充填剤層34の厚さ(平均厚さ)としては、特に限定されるものではないが、200μm以上1000μm以下が好ましく、350μm以上600μm以下が特に好ましい。
上記太陽電池セル33は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子であり、充填剤層32及び充填剤層34間に配設されている。複数枚の太陽電池セル33は、略同一平面内に敷設され、図示していないが直列又は並列に配線されている。この太陽電池セル33としては、例えば単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型やタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等の第3〜第5族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等の第2〜第6族化合物半導体太陽電子素子等を使用することができ、それらのハイブリット素子も使用することができる。なお、複数枚の太陽電池セル33間にも充填剤層32又は充填剤層34が隙間なく充填されている。
バックシート35は、太陽電池モジュール51の裏面側を保護するものであり、ガスバリア性、耐候性、耐久性、耐衝撃性等が要求されている。かかるバックシート35としては、上記保護性及びガスバリア性を有していれば特に限定されず、公知の種々のものが用いられる。具体的には、ポリフッ化ビニルフィルム、耐熱・耐候性プラスチックフィルム等からなる一対の合成樹脂フィルムでアルミニウム箔、無機酸化物薄膜層等のガスバリア層をサンドイッチした構造のバックシートが使用される。
当該太陽電池モジュール31の製造方法としては、特に限定されるもではないが、一般的には(1)太陽電池モジュール用フロントシート1、充填剤層32、複数枚の太陽電池セル33、充填剤層34及びバックシート35をこの順に積層する工程と、(2)それらを真空吸引により一体化して加熱圧着する真空加熱ラミネーション法等により一体成形するラミネート工程とを有している。かかる太陽電池モジュール31の製造方法において、各層間の接着性等を目的として(a)加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等を塗工すること、(b)各積層対向面にコロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化処理、プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理等を施すことなどが可能である。
当該太陽電池モジュール31は、上述のように太陽電池モジュール用フロントシート1が入射光線に対する低反射性、法線方向側への屈折性、太陽電池セルへの集光性等の光学的機能を有することから、太陽電池セル33に積極的に太陽光線を集め、発電効率を向上させることができる。特に、当該太陽電池モジュール31は、朝夕の際の仰角の小さい太陽光線でも発電効率が向上し、日中を通じての起電力差を低減させることができる。そのため、当該太陽電池モジュール31は、屋根据え置き型の太陽電池や、腕時計や電卓等の小型電気機器用の太陽電池などに好適に使用することができる。
なお、本発明の太陽電池モジュール用フロントシート及び太陽電池モジュールは上記実施形態に限定されるものではない。具体的には、光学層は、表面に微細な凸部又は凹部を略均一に有すれば上記マイクロレンズアレイやビーズ塗工層を有するものに限定されず、例えば合成樹脂フィルムの表面に任意形状のエンボス加工を施したもの等も可能である。また、当該太陽電池モジュール用フロントシートは、ガスバリア性等を向上させる目的で上記PVD法又はCVD法により酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の透明蒸着膜を積層することも可能である。
また、基材層2、光学層3又は光学層22(好ましくはバインダー24)中に紫外線吸収剤を含有するとよい。このように紫外線吸収剤を含有することで、当該太陽電池モジュール用フロントシートの耐候性及び耐久性を向上することができる。この紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーに変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。中でも、紫外線吸収機能が高く、上記基材ポリマーとの相溶性が良好で、基材ポリマー中に安定して存在するサリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また、紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)も好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、基材層2等を構成するポリマーとの相溶性が高く、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。
上記紫外線吸収剤の含有量の下限としては0.1質量%、特に1質量%、さらに特に3質量%が好ましく、紫外線吸収剤の含有量の上限としては10質量%、特に8質量%、さらに特に5質量%が好ましい。紫外線吸収剤の配合量が上記下限より小さいと、当該太陽電池モジュール用フロントシートの紫外線吸収機能を効果的に奏することができないおそれがあり、逆に、紫外線吸収剤の配合量が上記上限を超えると、マトリックスポリマーに悪影響を及ぼし、基材層2等の強度、耐久性等の低下をもたらすおそれがある。
また、基材層2、光学層3又は光学層22(好ましくはバインダー24)中に紫外線安定剤又は分子鎖に紫外線安定基が結合したポリマーを含有することも可能である。この紫外線安定剤又は紫外線安定基により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、太陽電池モジュール用フロントシートの紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。かかる紫外線安定剤又は紫外線安定基としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤又はヒンダードアミン系紫外線安定基が好適に用いられる。
さらに、基材層2、光学層3又は光学層22(好ましくはバインダー24)中に帯電防止剤を含有するとよい。このように帯電防止剤を含有することで、当該太陽電池モジュール用フロントシートに帯電防止効果が発現され、その結果ゴミを吸い寄せる、太陽電池モジュールを構成する各層の重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また、帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このように基材層2等の中に含有することでかかる弊害は低減される。この帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。