JP2013134871A - 正極活物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】出力特性に優れ、かつ複数の添加元素を互いに異なる分布で含有する正極活物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】Ni,Co,Mnの少なくとも一種の元素Mを含むリチウム遷移金属酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなし、さらに添加元素EおよびEを含む中空構造の正極活物質を製造する方法が提供される。その方法は、MとEとを含む水溶液aqと、Eを含む水溶液aqとを、アルカリ性条件下で混合して水酸化物を析出させる核生成段階(S140)と、該水酸化物を上記核生成段階よりもpHの低いアルカリ性条件下で成長させる粒子成長段階(S150)と、上記水酸化物とリチウム化合物とを混合する工程(S170)と、その混合物を焼成してリチウム遷移金属酸化物を生成させる工程(S180)とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池用の正極活物質および該活物質を備えたリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として利用されている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用の高出力電源(例えば、車両の駆動輪に連結されたモータを駆動させる電源)として、その重要性がますます高まっている。リチウム二次電池に用いられる正極活物質の代表例として、リチウム(Li)と少なくとも一種の遷移金属元素とを含む複合酸化物(以下、リチウム遷移金属酸化物ともいう。)が挙げられる。例えば特許文献1には、WおよびNbを含有するリチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物を正極活物質として用いることにより、優れた出力特性を有し、ガス発生の少ない非水電解質二次電池が提供されることが記載されている。この特許文献1には、また、WおよびNbに加えて更にZrを含有させた正極活物質も記載されている。
特開2009−140787号公報
ところで、リチウム二次電池を広いSOC(充電状態;State of charge)幅で使用すると、該電池の単位体積または単位質量から取り出して有効に利用し得るエネルギー量はより多くなり得る。このことは、例えば、高出力および高エネルギー密度が求められる車両搭載用電池(例えば車両駆動電源用電池)において特に有意義である。しかし、一般にリチウム二次電池はSOCが低くなると出力(例えば低温における出力;以下「低温低SOC出力」ともいう。)が小さくなる。そのため、単純にSOC幅を広くするだけでは、該SOC幅の全体に亘って確保し得る出力値が小さくなってしまう。また、より広いSOC幅で電池を使用すると、充放電サイクルによる耐久性が低くなる(例えば容量の低下等、電池の性能が劣化しやすくなる)傾向にある。特に、車両駆動用電源において要求されるような急速(ハイレート)充電または急速放電を伴う使用条件では電池が劣化しやすかった。
正極活物質としてのリチウム遷移金属酸化物に添加元素を含有させることは、リチウム二次電池の各種性能の向上(例えば、後述する低温低SOC出力の向上、容量維持率の向上等)に役立ち得る。しかし、正極活物質中における添加元素の存在部位(分布)によっては、期待した性能向上効果が発揮されなかったり、他の性能に不利な影響を及ぼす等の背反が生じたりする場合があった。特に、二種類以上の添加元素を組み合わせて含む組成の正極活物質では、各添加元素の存在部位をそれぞれ制御することが困難であり、このため上記添加元素を組み合わせることの効果が十分に発揮され難くなる場合があった。
本発明の一つの目的は、出力特性に優れ、かつ複数の添加元素を互いに異なる分布で含有する正極活物質を効果的に製造する方法を提供することである。関連する他の目的は、かかる正極活物質を備えたリチウム二次電池を提供することである。
本発明によると、殻部と、その内部に形成された中空部と、を有する中空構造の正極活物質の製造方法が提供される。上記正極活物質は、Ni,CoおよびMnのうち少なくとも一種の金属元素Mを含むリチウム遷移金属酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなす。該正極活物質は、さらに、添加元素として元素Eおよび元素Eを含有する。かかる正極活物質製造方法は、前記Mと前記Eとを含む水溶液aqと、前記Eを含む水溶液aqとを混合して、前記M、前記Eおよび前記Eを含む水酸化物を生成させる水酸化物生成工程を含む。その水酸化物生成工程は、アルカリ性条件下(すなわち、pHが7を超える条件下)において、前記水溶液aqと前記水溶液aqとを混合し、該混合溶液から前記水酸化物を析出させる核生成段階を含む。また、前記混合溶液を前記核生成段階よりもpHの低いアルカリ性に維持しつつ、前記析出した水酸化物を成長させる粒子成長段階を含む。例えば、上記混合溶液に上記水溶液aqおよび上記水溶液aqをさらに供給して、上記析出した水酸化物を成長させる。上記正極活物質製造方法は、さらに、前記水酸化物とリチウム化合物とを混合する混合工程を含み得る。また、その混合物を焼成して前記リチウム遷移金属酸化物を生成させるリチウム遷移金属酸化物生成工程を含み得る。
かかる方法によると、中空構造を有し、かつ添加元素EおよびEの分布が互いに異なる正極活物質が好適に製造され得る。例えば、Eが一次粒子の表面に偏って存在(分布)する一方、Eは少なくともEに比べて偏りの程度が低い(好ましくは、一次粒子の全体に亘って概ね均一に存在する)正極活物質が製造され得る。そのような正極活物質は、上記添加元素がそれぞれ適切な位置に配置されており、かつ該活物質が中空構造を有することから、より高性能なリチウム二次電池を与えるものとなり得る。例えば、低SOCにおける出力(特に、低温低SOC出力)が高く、かつ耐久性(特に、ハイレート充放電サイクルに対する容量維持率)のよいリチウム二次電池が実現され得る。
なお、本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン二次電池と称される電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、本明細書において「活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(すなわち、ここではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および脱離)可能な物質をいう。また、本明細書において「SOC」とは、特記しない場合、電池が通常使用される電圧範囲を基準とする、該電池の充電状態をいうものとする。例えば、端子間電圧(開回路電圧(OCV))が4.1V(上限電圧)〜3.0V(下限電圧)の条件で測定される定格容量(典型的には、後述する評価試験用電池の定格容量測定と同様の条件で特定される定格容量)を基準とする充電状態をいうものとする。また、本明細書において「中空構造の正極活物質」とは、前記正極活物質をランダムな位置で切断した断面の平均において、該活物質の見かけの断面積のうち前記中空部が占める割合(後述する粒子空孔率)が5%以上である正極活物質を指すものとする。
使用開始後の電池のSOCは、例えば以下の手順で行われるSOC−OCV測定を通じて把握することができる。
[ステップ1:残容量の放電]25℃において、1CでCCV放電を2時間行い、3Vでカットする。
[ステップ2:CC充電]ステップ1終了後の電池に対し、0.1Cで30分間充電する操作と、20分間休止する操作とを2〜3回繰り返し、4.1Vでカットする。
[ステップ3:CCCV充電]ステップ2終了後の電池に対し、0.4Cで1時間CCV充電し、20分間休止する。
[ステップ4:CC放電]ステップ3終了後の電池に対し、0.1Cで30分間放電させる操作と、20分間休止する操作とを2〜3回繰り返し、3.0Vでカットする。
前記Eとしては、例えば、Zr,Mg,Ca等から選択される一種または二種以上を好ましく採用し得る。また、前記Eとしては、例えば、W,Mo等から選択される一種または二種以上を好ましく採用し得る。かかるEとEとを組み合わせて用いることにより、より高性能な(例えば、低温低SOC出力が高く、かつ容量維持率の高い)リチウム二次電池を実現可能な正極活物質が製造され得る。EとEとの好ましい組合せの一例として、ZrとWとの組合せが挙げられる。
ここに開示される方法は、前記リチウム遷移金属酸化物が層状の結晶構造を有する正極活物質の製造に好ましく適用され得る。また、前記Mが少なくともNiを含む正極活物質(より好ましくは、Ni,CoおよびMnを含む正極活物質)の製造に好ましく適用され得る。かかる正極活物質によると、より高性能なリチウム二次電池が実現され得る。
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの方法により製造された正極活物質が提供される。好ましい一態様に係る正極活物質は、前記活物質全体での原子数比(平均原子数比)Rに対する該活物質の表面における原子数比(表面原子数比)Rの比(R/R)により表される表面偏在度が、前記Eについて1.3以下(例えば0.8〜1.3)である。上記表面偏在度は、前記Eについては1.5以上(例えば1.5〜3.0)である。かかる正極活物質によると、EとE(例えばZrとW)とを組み合わせて添加したことの効果が特によく発揮され、より高性能なリチウム二次電池が実現され得る。
好ましい一態様では、前記正極活物質に含まれる前記Eのモル数mEBに対する前記Eのモル数mEAの比(mEA/mEB)が0.05〜2.0である。かかる正極活物質によると、より高性能なリチウム二次電池が実現され得る。mEA/mEBの値が上記範囲よりも大きすぎるかまたは小さすぎると、EとE(例えばZrとW)とを組み合わせて添加したことの効果が十分に発揮され難くなる場合がある。
ここに開示される技術における正極活物質は、前記正極活物質をランダムな位置で切断した断面の平均において、該活物質の見かけの断面積のうち前記中空部が占める割合(粒子空孔率)が10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。好ましい一態様に係る正極活物質は、上記粒子空孔率が20%以上である。かかる正極活物質によると、より高性能な(例えば、より出力性能のよい)リチウム二次電池が実現され得る。
上記正極活物質は、前記殻部の厚さが2.5μm以下であることが好ましく、通常は2.2μm以下(典型的には1.0μm〜2.2μm)であることがより好ましい。かかる正極活物質によると、より高性能な(例えば、より出力性能のよい)リチウム二次電池が実現され得る。
本発明によると、ここに開示されるいずれかの方法により製造された正極活物質が提供される。また、本発明によると、ここに開示される正極活物質(ここに開示されるいずれかの方法により製造された正極活物質であり得る。)を備えたリチウム二次電池用正極が提供される。さらに、かかる正極を備えるリチウム二次電池が提供される。
上述のように、ここに開示されるリチウム二次電池(典型的には、リチウムイオン二次電池)は、低SOC領域においても良好な出力が得られ、しかも充放電サイクルに対する耐久性に優れるので、より広いSOC範囲において、動力源等として好適に利用することができる。したがって、本発明の他の側面として、例えば図9に示すように、ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池100(複数個の電池が典型的には直列に接続された組電池の形態であり得る。)を備えた車両1が提供される。特に、かかるリチウム二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が好ましい。また、本発明によると、車両駆動電源用のリチウム二次電池100が提供される。
なお、一般的なハイブリット自動車(HV)は、動力源としてエンジン(内燃機関)とモータ駆動とを併用し、要求出力に応じた動力源の最適化を行う。エンジンは化石燃料、モータは電池をエネルギー源とする。上記HVは、要求出力に応じて上記電池にモータアシスト回生充電を行い得るように構成され得る。また、上記電池は、中心SOC付近からの出力(放電)、入力(充電)を繰り返す態様で使用される傾向にある。一方、プラグインハイブリッド自動車(PHV)は、上記HVモード(ハイブリッド自動車モード)に加え、あらかじめ家庭用電源など外部電源に接続して充電した該電池のみを用いるEVモード(電気自動車モード)を備えており、いずれかのモードで走行可能なように設計されている。このようにPHV用の電池は従来のHV用の電池と使用方法が異なるため、要求される性能も従来の電池とは大きく異なる。例えば、PHV用の電池ではEVモードでの使用(すなわち、あらかじめ充電した電気のみで走行すること)を考慮しなければならない。またPHV用の電池やEV用の電池は、充電容量が少なくなっても自動的に充電が行われることはない。このため、SOCが低い領域においても、例えば自動車の加速の際等に、ハイレート(急速)放電が頻繁に行われ得る。また、充電のために外部電源への接続を要することから、ハイレートで充電して充電時間を短縮することが求められる。したがって、幅広いSOC範囲でのハイレート充電にも対応し得る必要がある。上記のように、PHV用またはEV用の電池には、従来にない厳しい使用態様における耐久性の向上が求められている。また、HVのなかにもEVモードを備えたものがあり、その場合には、例えばエンジンの始動時等に、HV用電池においても低SOCからのハイレート放電性能が重要となる。
ここに開示されるリチウム二次電池(ここに開示されるいずれかの方法により製造されたリチウム二次電池であり得る。)は、比較的ハイレート(典型的には2C以上、例えば4C程度)で、かつ広範囲(例えばSOC0%〜100%の範囲)での充放電サイクルに対しても、優れた耐久性を示すものであり得る。したがって、かかる特徴を活かして、ハイブリッド自動車(HV、特にEV走行モードを備えたHV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)または電気自動車(EV)の駆動電源として特に好適に利用され得る。
一実施形態に係る正極活物質製造方法の概略を示すフロー図である。 孔空き中空構造の正極活物質を例示する断面SEM画像である。 粒子空孔率の求め方を説明するための模式的断面図である。 リチウム二次電池の一構成例を模式的に示す斜視図である。 図4のV−V線断面図である。 サンプルP1に係る正極活物質について、WおよびZrの濃度分布を示す特性図である。 サンプルP19に係る正極活物質について、WおよびZrの濃度分布を示す特性図である。 Wの含有量に対するZrの含有量の比(mZr/m)と低温低SOC出力との関係を示す特性図である。 リチウム二次電池を搭載した車両を示す模式的側面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
≪正極活物質の概要≫
ここに開示される方法は、金属元素Mを含むリチウム遷移金属酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなし、さらに添加元素EおよびEを含有する正極活物質の製造に好ましく適用され得る。上記金属元素Mは、Ni,CoおよびMnの少なくとも一種である。ここに開示される技術は、かかる正極活物質を備えたリチウム二次電池用正極、該正極を構成要素とする種々のリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)等に適用され得る。
上記正極活物質におけるNi,CoおよびMnの合計含有量(すなわち、Mの含有量)は、該正極活物質に含まれるリチウム以外の金属元素の総量を100モル%として、そのうち例えば85モル%以上(好ましくは90モル%以上、典型的には95モル%以上)であり得る。少なくともNiを含む正極活物質が好ましく、例えば、該正極活物質に含まれるリチウム以外の金属元素の総量を100モル%として、Niを10モル%以上(より好ましくは25モル%以上)含有する正極活物質が好ましい。
上記リチウム遷移金属酸化物の一好適例として、上記MがNi,CoおよびMnを含むリチウム遷移金属酸化物(以下「LNCM酸化物」と表記することもある。)が挙げられる。例えば、Ni,CoおよびMnの合計量(原子数基準)を1として、Ni,CoおよびMnの量がいずれも0を超えて0.7以下(例えば、0.1を超えて0.6以下、典型的には0.3を超えて0.5以下)であるLNCM酸化物を好ましく採用し得る。Ni,Co,Mnのうちの第一元素(原子数基準で最も多く含まれる元素)は、Ni,CoおよびMnのいずれであってもよい。好ましい一態様では、上記第一元素がNiである。好ましい他の一態様では、Ni,CoおよびMnの量(原子数基準)が概ね同程度である。かかる三元系のリチウム遷移金属酸化物(LNCM酸化物)は、正極活物質として優れた熱安定性を示すので好ましい。
前記Eとしては、例えば、Zr,Mg,Ca等から選択される一種または二種以上を好ましく採用し得る。なかでも好ましいEとして、Zr,Mgが挙げられる。ここに開示される技術は、Eが少なくともZrを含む態様(例えば、Eが実質的にZrからなる態様)で好ましく実施され得る。また、前記Eとしては、例えば、W,Mo等から選択される一種または二種以上を好ましく採用し得る。ここに開示される技術は、Eが少なくともWを含む態様(例えば、Eが実質的にWからなる態様)で好ましく実施され得る。
上記正極活物質は、殻部とその内部に形成された中空部(空洞部)とを有する中空構造の粒子形態をなす。好ましい一態様において、上記殻部は、粒子外部と上記中空部とを連通させる貫通孔を有する(以下、殻部に上記貫通孔を有する中空構造を「孔空き中空構造」ということがある。)。なお、このような中空構造(特記しない限り、孔空き中空構造を包含する意味である。)の粒子と対比されるものとして、一般的な多孔質構造の粒子が挙げられる。ここで多孔質構造とは、実体のある部分と空隙部分とが粒子全体にわたって混在している構造(スポンジ状構造)を指す。多孔質構造を有する活物質粒子の代表例として、いわゆる噴霧焼成法(スプレードライ製法と称されることもある。)により得られた活物質粒子が挙げられる。ここに開示される中空構造の活物質粒子は、実体のある部分が殻部に偏っており、上記中空部にまとまった空間が確保されているという点で、上記多孔質構造の活物質粒子とは、構造上、明らかに区別されるものである。
≪正極活物質の製造≫
以下、リチウム遷移金属酸化物がLNCM酸化物であり、添加元素EがZrであり、添加元素EがWである場合を主な例として、ここに開示される正極活物質製造方法の好ましい一態様を説明するが、本発明をかかる具体的態様に限定する意図ではない。
≪水溶液aq
図1に示すように、本実施態様に係る正極活物質製造方法は、M(ここではNi,CoおよびMn)およびE(ここではZr)を含む水溶液(典型的には酸性、すなわちpH7未満の水溶液)aqを準備することを含む(ステップS110)。好ましい一態様において、上記水溶液aqは、E(ここではW)を実質的に含有しない組成物である。上記水溶液aqに含まれる各金属元素の量比は、目的物たる正極活物質の組成に応じて適宜設定することができる。例えば、Ni,CoおよびMnのモル比を、上記正極活物質におけるこれらの元素のモル比と概ね同程度とすることができる。また、水溶液aqに含まれるNi,CoおよびMnの合計モル数mMTとEのモル数mEAとの比(Eが複数の元素EA1,EA2・・・からなる場合には、各Eのモル数mEA1,mEA1・・・とmMTとの比)は、上記正極活物質におけるこれらのモル比と概ね同程度とすることができる。なお、水溶液aqは、全てのMおよび全てのEを含む一種類の水溶液であってもよく、組成の異なる二種類以上の水溶液であってもよい。例えば、全てのMを含みEを含まない水溶液aqA1と、全てのEを含みMを含まない水溶液aqA2との二種類を、上記aqとして使用してもよい。また、例えばEが二種類の元素EA1,EA2からなる場合において、全てのMおよびEA1を含まない水溶液aqA1と、EA2を含みMおよびEA1を含まない水溶液aqA2との二種類を、上記aqとして使用してもよい。好ましい一態様として、全てのMおよび全てのEを含む一種類の水溶液を用いる態様が例示される。かかる態様は、製造装置の複雑化を避ける、製造条件の制御が容易である、等の観点から好ましく採用され得る。
がZrである場合、上記水溶液aqは、例えば、適当なNi化合物、Co化合物、Mn化合物およびZr化合物のそれぞれ所定量を水性溶媒に溶解させて調製することができる。これらの金属化合物としては、各金属の塩(すなわち、Ni塩、Co塩、Mn塩およびZr塩)を好ましく使用することができる。これらの金属塩を水性溶媒に添加する順序は特に制限されない。また、一部のまたは全部の金属を水溶液の形態で混合することにより水溶液aqを調製してもよい。例えば、Ni塩、Co塩、Mn塩を含む水溶液に、Zr塩の水溶液を混合してもよい。これらの金属塩(Ni塩、Co塩、Mn塩、Zr塩)におけるアニオンは、それぞれ、該塩が所望の水溶性となるように選択すればよい。例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン等であり得る。すなわち、上記金属塩は、それぞれ、Ni,Co,Mn,Zrの硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、水酸化物等であり得る。これら金属塩のアニオンは、全てまたは一部が同じであってもよく、互いに異なってもよい。これらの塩は、それぞれ、水和物等の溶媒和物であってもよい。図1には、各金属の硫酸塩を用いる例を示している。水溶液aqの濃度は、例えば、M(ここではNi,Co,Mn)の合計が1.0〜2.2mol/L程度となる濃度とすることができる。
≪水溶液aq
本態様の正極活物質製造方法は、また、E(ここではW)を含む水溶液aqを準備することを含む(ステップS120)。この水溶液aqは、典型的には、MおよびEを実質的に含有しない(これらの金属元素を少なくとも意図的には含有させないことをいい、不可避的不純物等として混入することは許容され得る。)組成物である。例えば、金属元素として実質的にWのみを含む水溶液aqを好ましく使用し得る。水溶液aqは、上述した水溶液aqと同様に、所定量のE化合物を水性溶媒に溶解させて調製することができる。EがWである場合、上記E化合物として各種のW塩を用いることができる。好ましい一態様では、タングステン酸(Wを中心元素とするオキソ酸)の塩を使用する。上記W塩におけるカチオンは、該塩が水溶性となるように選択することができ、例えばアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等であり得る。好ましく使用し得るW塩の一例として、パラタングステン酸アンモニウム(5(NHO・12WO)が挙げられる(図1)。上記W塩は、水和物等の溶媒和物であってもよい。水溶液aqにおけるWの濃度は、例えば、W元素基準で0.01〜1mol/L程度とすることができる。
上記水溶液aq,aqの調製に用いる水性溶媒は、典型的には水であり、水を主成分とする混合溶媒であってもよい。この混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール等)が好適である。好ましい一態様では、上記水性溶媒として水を用いる。使用する各塩金属化合物の溶解性によっては、溶解性を向上させる試薬(酸、塩基等)を含む水性溶媒を用いてもよい。
≪アルカリ性水溶液≫
ここに開示される正極活物質製造方法では、MおよびEを含む水溶液aqと、Eを含む水溶液aqとを、別々の水溶液として準備し、かつ、aqとaqとをアルカリ性条件下(すなわち、pHが7を超える条件下)で混合する。そして、この混合溶液からM,EおよびEを含む水酸化物(以下、「遷移金属水酸化物」または「前駆体水酸化物」ということがある。)を析出させる(水酸化物生成工程)。
かかるアルカリ性条件を実現するために、本態様に係る方法は、アルカリ性水溶液aqを準備することを含み得る。このアルカリ性水溶液aqは、典型的には、水性溶媒にアルカリ剤(液性をアルカリ側に傾ける作用のある化合物)が溶解した水溶液である。上記アルカリ剤としては、強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物)および弱塩基(アンモニア、アミン等)のいずれも使用可能である。少なくともアンモニアを含むアルカリ性水溶液aqの使用が好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様では、弱塩基および強塩基の両方を含むアルカリ性水溶液aqを使用する。例えば、アンモニアと水酸化ナトリウムとを含むアルカリ性水溶液aqを好ましく使用し得る。組成の異なる複数のアルカリ性水溶液(例えば、アンモニア水と、水酸化ナトリウム水溶液との二種類)を、あらかじめ混合して(ステップS130)、あるいはそれぞれ独立した溶液として使用(典型的には、反応容器に供給)することができる。
≪核生成段階≫
好ましい一態様では、上記水酸化物生成工程が、上記aqおよびaqを含む混合溶液から上記遷移金属水酸化物の核を析出させる段階(核生成段階)と、その核を成長させる段階(粒子成長段階)とを含む。好ましい一態様において、上記核生成段階および上記粒子成長段階は、いずれもアンモニアの存在下で行われる。少なくとも上記粒子成長段階は、上記溶液中のアンモニア濃度を制御しつつ(例えば、所定値以下に制御しつつ)行うことが特に好ましい。また、上記粒子成長段階は、上記核生成段階におけるpHより低pHであって且つアルカリ性の条件下で実施することが好ましい。
上記核生成段階(ステップS140)は、例えば、初期pHが11〜14(典型的には11.5〜12.5、例えば12.0前後)程度のアルカリ性水溶液を反応槽内に用意し、この初期pHを維持しつつ、該反応槽に水溶液aqおよびW水溶液aqを適切な速度で供給して撹拌混合する態様で好ましく実施することができる。このとき、上記初期pHを維持するために、必要に応じて上記反応槽にアルカリ性水溶液を追加供給するとよい。
バラツキの少ない(例えば、粒径や粒子構造等が平均から大きく外れた粒子の個数割合が少ない)中空活物質粒子が得られやすいという観点から、上記核生成段階では、上記混合溶液から短時間のうちに(例えば、ほぼ同時に)多数の核を析出させることが好ましい。例えば、上記遷移金属水酸化物が過飽和の状態にある溶液から(例えば、該溶液を臨界過飽和度に到達させることにより)上記核を析出させるとよい。かかる析出態様を好適に実現するためには、上記核生成段階をpH12.0以上(典型的にはpH12.0以上14.0以下、例えばpH12.2以上13.0以下)の条件で行うことが有利である。
核生成段階でアンモニアを含むアルカリ性水溶液を用いる態様において、反応液中のアンモニア濃度は特に限定されないが、通常は凡そ25g/L以下とすることが適当であり、例えば3〜25g/L(好ましくは10〜25g/L)程度とするとよい。上記pHおよびアンモニア濃度は、上記アンモニア水の使用量と、他のアルカリ剤の使用量とを、適切にバランスさせることにより調整することができる。上記使用量は、例えば、反応系への供給レートとしても把握し得る。上記「他のアルカリ剤」としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を、典型的には水溶液の形態で用いることができる。好ましい一態様では、上記他のアルカリ剤として水酸化ナトリウムを使用する。
なお、本明細書中において、pHの値は、液温25℃を基準とするpH値をいうものとする。また、反応液のアンモニア濃度は、例えば、イオンクロマト法、イオン電極法等により等により測定することができる。測定には、市販のイオンクロマトグラフ装置、電極式アンモニア計等を用いることができる。
≪粒子成長段階≫
上記粒子成長段階(ステップS150)では、核生成段階で析出した遷移金属水酸化物の核(典型的には粒子状)を、好ましくは該核生成段階よりも低pH域のアルカリ性条件下で成長させる。例えば、pH12.0未満(典型的にはpH10.0以上12.0未満、好ましくはpH10.0以上11.8以下、例えばpH11.0以上11.8以下)で粒子成長させるとよい。この粒子成長段階を経て得られる遷移金属水酸化物粒子(前駆体水酸化物粒子)は、典型的には、該粒子の外表面部の密度に比べて、該粒子の内部の密度が低い構造を有する。アンモニアを含むアルカリ性水溶液を用いる態様において、かかる構造の遷移金属水酸化物粒子を安定して得るためには、該粒子成長段階における液中アンモニア濃度を高くしすぎない(低く抑える)ことが肝要である。このことによって、上記遷移金属水酸化物の析出速度が速くなり、中空構造(好ましくは孔空き中空構造)の活物質粒子の形成に適した前駆体水酸化物を効果的に生成させ得る。なお、遷移金属水酸化物の析出速度は、例えば、反応液に供給される金属イオン(例えば、M,EおよびEのイオン)の合計モル数に対して、反応液の液相中に含まれる該金属イオンの合計モル数(合計イオン濃度)の推移を調べることにより把握され得る。
粒子成長段階におけるアンモニア濃度は、例えば25g/L以下とすることができ、通常は20g/L以下とすることが適当であり、好ましくは15g/L以下、より好ましくは10g/L以下(例えば8g/L以下)である。液中アンモニア濃度の下限は特に限定されないが、製造条件の管理しやすさ、品質安定性、生産性、得られる活物質粒子の機械的強度(例えば硬度)等の観点から、通常は、アンモニア濃度を概ね1g/L以上(好ましくは3g/L以上)とすることが適当である。粒子成長段階におけるpHおよびアンモニア濃度は、核生成段階と同様にして調整することができる。粒子成長段階における液中アンモニア濃度は、核生成段階におけるアンモニア濃度と概ね同程度としてもよく、核生成段階におけるアンモニア濃度より低くしてもよい。好ましい一態様では、粒子成長段階における液中アンモニア濃度を、核生成段階におけるアンモニア濃度よりも低く(典型的には75%以下、例えば50%以下の濃度に)制御する。
ここに開示される技術を実施するにあたり、上記のように粒子成長段階におけるアンモニア濃度を低く抑えることによって中空構造(好ましくは孔空き中空構造)の活物質の形成に適した前駆体水酸化物が得られる理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、上記混合溶液(反応液)中では、例えば以下の平衡反応が生じている。下記式1,2におけるMは遷移金属(例えばNi)である。
ここで、反応液中のアンモニア濃度を低くすると、式1の平衡が左に移動してM 2+の濃度が上がるため、式2の平衡が右に移動し、M(OH)の生成が促進される。換言すれば、M(OH)が析出しやすくなる。このようにM(OH)が析出しやすい状況では、M(OH)の析出は、主に、既に析出している遷移金属水酸化物(上記核生成段階で生じた核、または粒子成長段階の途上にある遷移金属水酸化物粒子)の外表面近傍において起こり、上記析出物の内部において析出するM(OH)は少なくなる。その結果、外表面部の密度に比べて内部の密度が低い構造の前駆体水酸化物粒子(中空構造の活物質粒子の形成に適した遷移金属水酸化物粒子であって、該活物質粒子の前駆体粒子としても把握され得る。)が形成されるものと推察される。一方、粒子成長段階におけるアンモニア濃度が高すぎると、M(OH)の析出速度が小さくなるため、外表面近傍における析出量と内部における析出量との差が小さくなり、上記構造の前駆体水酸化物粒子が形成されにくくなる傾向となるものと推察される。
また、このように、MおよびEを含む水溶液aqと、Eを含む水溶液aqとを、別個の水溶液として準備し、これらをアルカリ性条件下で混合することにより、EおよびEがそれぞれ適切な部位に存在(分布)した正極活物質(例えば、一次粒子の内部全体にEが存在する一方、一次粒子の表面に偏ってEが存在する正極活物質)の製造に適した前駆体水酸化物粒子が生成し得る。これは、MおよびEを含む水溶液aqが中和された後にEと混合されることにより、まずMおよびEを含む水酸化物が析出し始め、その析出物に接触することでEが析出しやすくなるためと考えられる。
核生成段階および粒子成長段階のそれぞれにおいて、反応液の温度は、凡そ20℃〜60℃(例えば30℃〜50℃)の範囲のほぼ一定温度(例えば、所定の温度±1℃)に制御することが好ましい。核生成段階と粒子成長段階とで反応液の温度を同程度としてもよい。反応液および反応槽内の雰囲気は、核生成段階および粒子成長段階を通じて非酸化性雰囲気(例えば、酸素濃度が概ね10%以下、好ましくは5%以下の非酸化性雰囲気)に維持することが好ましい。単位容積の反応液に含まれるMイオン,EイオンおよびEイオンの合計モル数(合計イオン濃度)は、核生成段階および粒子成長段階を通じて、例えば凡そ0.5〜2.5モル/Lとすることができ、通常は凡そ1.0〜2.2モル/Lとすることが好ましい。かかる濃度が維持されるように、遷移金属水酸化物の析出速度に合わせて水溶液aq,aqを補充(典型的には連続供給)するとよい。
上記前駆体水酸化物の析出反応を継続する時間は、目的とする正極活物質の粒子径(典型的には平均粒子径)に応じて適宜設定することができる。傾向としては、より粒子径の大きな正極活物質を得るためには、より反応時間を長くするとよい。このようにして生成した遷移金属水酸化物粒子(ここでは、Ni,Co,Mn,ZrおよびWを含む複合水酸化物粒子)は、晶析終了後、反応液から分離し、洗浄(典型的には水洗)して乾燥させ、所望の粒径を有する粒子状に調製するとよい(ステップS160)。
≪混合工程≫
本態様に係る正極活物質製造方法は、上記前駆体水酸化物とリチウム化合物(リチウム源)とを混合する混合工程を含み得る(ステップS170)。上記リチウム化合物としては、リチウムを含む酸化物を用いてもよく、加熱により酸化物となり得る化合物(リチウムの炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アンモニウム塩、ナトリウム塩等)を用いてもよい。好ましいリチウム化合物として、炭酸リチウム、水酸化リチウム等を例示することができる。かかるリチウム化合物は、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。上記前駆体水酸化物とリチウム化合物との混合は、湿式混合法および乾式混合法のいずれの態様で行ってもよい。簡便性やコスト性等の観点から、乾式混合法を好ましく採用することができる。前駆体水酸化物とリチウム化合物との混合比は、目的とする正極活物質において所望のモル比が実現されるように決定することができる。例えば、リチウムと他の金属元素とのモル比が上記正極活物質におけるモル比と同程度となるように、上記前駆体水酸化物とリチウム化合物とを混合するとよい。
≪焼成工程≫
そして、上記混合物を焼成してリチウム遷移金属酸化物を生成させる(ステップS180)。この焼成工程は、典型的には酸化性雰囲気中(例えば大気中)で行われる。好ましくは、かかる焼成工程後に焼成物を解砕し、必要に応じて篩分けを行なって正極活物質の粒径を調整する。焼成温度は、凡そ700〜1000℃の範囲とすることが好ましい。焼成は、同じ温度で一度に行ってもよく、異なる温度で段階的に行ってもよい。焼成時間は、適宜選択することができる。例えば、800〜1000℃程度で2〜24時間程度焼成してもよく、あるいは、700〜800℃程度で1〜12時間程度焼成した後、800〜1000℃程度で2〜24時間程度焼成してもよい。より高い出力を得るためには、最高焼成温度を850℃〜980℃(より好ましくは850℃〜950℃)の範囲とすることが好適である。かかる焼成条件は、例えばハイブリッド自動車のように、出力性能を高めることが重視される用途向けのリチウム二次電池に用いられる正極活物質の製造において好ましく採用され得る。また、所望の出力を発揮し得るSOCの範囲をより広くするためには、最高焼成温度を900℃〜1000℃の範囲とすることが好適である。かかる焼成条件は、例えば電気自動車のように、取り出し得る電気量を多くすることが重視される用途向けのリチウム二次電池に用いられる正極活物質の製造において好ましく採用され得る。
ここに開示される製造方法において、EおよびEは、いずれも、これらの元素およびMを含む反応液から水酸化物を生成させる方法(共沈法)で添加される。したがって、各添加元素の分布において局所的な凝集が生じる事象が防止された正極活物質を得ることができる。例えばMを含む水酸化物にリチウム化合物とEおよびEとを混合して焼成する方法(乾式混合法)に比べて、活物質粒子全体または一次粒子の表面において、より均一に添加元素を存在させた正極活物質を得ることができる。
≪E,Eの分布≫
ここに開示される製造方法によると、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなし、該一次粒子の表面(粒界)に偏ってE(ここではW)が存在する正極活物質を得ることができる。ここで、Eが「一次粒子の表面に偏って存在する」とは、一次粒子の表面(粒界)に、ある程度集中してEが存在(分布)していることを意味し、Eが粒界のみに存在する(換言すれば、一次粒子の内部には全く存在しない)態様のみを意味するものではない。Eが一次粒子の表面に偏って存在していることは、例えば、活物質粒子(二次粒子)についてエネルギー分散型X線分光法(EDX;Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いてEの分布をマッピングし、そのマッピング結果においてEが粒界に集中して存在する(一次粒子の内部に比べて粒界では面積当たりのE存在量が多い)様子が認められることにより把握することができる。上記粒界(一次粒子の表面)の位置は、例えば、上記断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により把握することができる。EDXを備えたTEMを好ましく使用し得る。
一方、ここに開示される方法により製造された正極活物質に含まれるE(ここではZr)は、典型的には、上記一次粒子の内部に広がって存在(分布)している。例えば、一次粒子内部のほぼ全体に亘って(より好ましくは略均一に)Eが存在することが好ましい。ここで、Eが「一次粒子の内部全体に存在する」とは、Eが正極活物質の全体に、目立った偏りを示すことなく存在(分布)していることを意味する。少なくともEに比べて表面への偏りの程度が低いことが好ましい。好ましい一態様では、Eの一次粒子表面への偏りが認められない。Eの分布に偏りのないことは、例えば、活物質粒子(二次粒子)をEDXにてライン分析し、粒界に対応する位置への濃縮がないことを通じて把握することができる。また、Eの場合と同様にEの分布をマッピングし、粒界への集中が見られないことによっても把握され得る。好ましい一態様では、上記ライン分析の結果が、一次粒子の内部全体を通じて(例えば、活物質粒子の全体を通じて)略均一である。
≪表面偏在度≫
,Eの分布の一次粒子表面への偏りの程度は、以下に説明する表面偏在度を通じて定量的に把握することができる。すなわち、Eの表面偏在度δEBは以下のようにして求められる。例えば、EがWである場合、XPS(X線光電子分光法)測定により、活物質粒子の表面(一次粒子の表面でもある。)におけるWの原子数比Rを求める(例えば、アルバック・ファイ社のXPS装置、型式「PHI−5700」を用いることができる。)。また、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析により、活物質全体の平均としてのWの原子数比Rを求める(例えば、島津製作所のICP発光分光分析装置、型式「ICPE−9000」を用いることができる。)。そして、表面原子数比Rと平均原子数比Rとから、次式:R/R;によりWの表面偏在度δを算出することができる。E(例えばZr)についても同様にして表面偏在度δEAを算出することができる。ここに開示される技術は、例えば、δEAおよびδEBがいずれも5.0以下(典型的には0.1〜5.0、好ましくは0.1〜3.0)であり、かつδEA<δEBである正極活物質およびその製造に好ましく適用され得る。
の表面偏在度δEAは、1.3以下(典型的には0.5〜1.3)であることが好ましく、0.8〜1.3であることがより好ましい。δEAが大きすぎると、一次粒子の内部においてEの存在量が不足してその添加効果が十分に発揮され難くなったり、あるいは一次粒子の表面におけるEの存在量が過剰となって他の性能に不利な影響を与えたりすることがあり得る。Eが複数の元素を含む場合には、それらのうち少なくとも一種が上記表面偏在度δEAを満たすことが好ましい。例えば、少なくともZrの上記表面偏在度δZrが上記好ましい範囲を満たす正極活物質が好ましい。ここに開示されるいずれかの正極活物質製造方法によると、上記表面偏在度δEA(例えばδZr)を満たす正極活物質が好適に製造され得る。
の表面偏在度δEBは、1.5以上(典型的には1.5〜10.0)であることが好ましく、通常は1.5〜5.0(例えば1.5〜3.0)であることがより好ましい。δEBが小さすぎると、一次粒子の表面においてEの存在量が不足してその添加効果が十分に発揮され難くなったり、あるいは一次粒子の内部におけるEの存在量が過剰となって他の性能に不利な影響を与えたりすることがあり得る。Eが複数の元素を含む場合には、それらのうち少なくとも一種が上記表面偏在度δEBを満たすことが好ましい。例えば、少なくともWの上記表面偏在度δが上記好ましい範囲を満たす正極活物質が好ましい。ここに開示されるいずれかの正極活物質製造方法によると、上記表面偏在度δEB(例えばδ)を満たす正極活物質が好適に製造され得る。
上述した好ましい表面偏在度でEおよびE(例えば、ZrおよびW)を含む正極活物質によると、EおよびEがそれぞれ適切な位置において各々の機能を果たすことができるので、これらの元素を組み合わせて含有させることの効果がよりよく発揮され得る。例えば、低SOC領域における出力(特に低温出力)を効果的に向上させ、かつ充放電サイクルに対する耐久性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
≪E,Eの含有量≫
正極活物質に含まれるEのモル数mEAは、該活物質に含まれるNi,CoおよびMnの合計モル数mMTに対して、例えば0.005〜5.0モル%(すなわち、(mEA/mMT)×100=0.005〜5.0)とすることができ、通常は0.01〜3.0モル%(例えば0.02〜2.0モル%)とすることが好ましい。例えば、EとしてのZrを上記のモル比で含有する正極活物質が好ましい。Eの含有量が少なすぎると、十分な添加効果が発揮され難くなる場合があり得る。Eの含有量が多すぎると、Eの添加による背反(トレードオフ)が生じやすくなることがあり得る。
正極活物質に含まれるEのモル数mEBは、該活物質に含まれるNi,CoおよびMnの合計モル数mMTに対して、例えば0.005〜3.0モル%とすることができ、通常は0.01〜2.0モル%(例えば0.02〜1.0モル%)とすることが好ましい。例えば、EとしてのWを上記のモル比で含有する正極活物質が好ましい。Eの含有量が少なすぎると、十分な添加効果が発揮され難くなる場合があり得る。Eの含有量が多すぎると、Eの添加による背反が生じやすくなることがあり得る。
正極活物質に含まれるEのモル数mEBに対するEのモル数mEAの比(mEA/mEB)は、例えば0.01〜10.0程度とすることができ、通常は0.05〜5.0(好ましくは0.1〜2.0、例えば0.2〜1.7)程度とすることが適当である。例えば、EがZrであり、EがWである場合において、これらのモル比(mZr/m)が上記範囲にある正極活物質が好ましい。かかる組成の正極活物質によると、特に高性能なリチウム二次電池が実現され得る。
ここに開示される技術を実施するにあたり、EとEとがそれぞれ上記のように分布した中空構造(好ましくは、孔空き中空構造)の正極活物質を用いることによりリチウム二次電池の性能を向上させ得る理由を明らかにする必要はないが、EがZrでありEがWである場合を例として説明すれば、例えば以下のような推察が可能である。
すなわち、低SOC領域での出力を向上させる一つの手法として、該低SOC領域における正極の放電深度を浅くすることが考えられる。正極の放電深度が浅いとは、電池のSOCを基準として、所定のSOCにおいて正極活物質が受け入れ可能なLiイオンの量が多い(Liイオンを受け入れる余裕が大きい)ことを意味する。受け入れ可能なLiイオン量が多くなると、正極活物質の固体内におけるLiの移動性(拡散性)は高くなる傾向にある。したがって、低SOC領域における正極の放電深度を浅くすることにより、低SOC領域における出力(特に、Li拡散性の影響を受けやすい低温出力)が向上し得る。
低SOC領域における正極の放電深度を浅くするには、正極の初回充放電効率を高めることが有効である。ここに開示される正極活物質において、一次粒子の表面(粒子界面)に存在するWは、例えば、自身の価数変化によって電池の充放電に寄与することにより、初期充放電効率の向上に役立ち得る。これにより低SOC領域における出力が向上するものと考えられる。上記Wは、正極活物質の反応抵抗を低下させる効果をも発揮し得る。一方、正極活物質に含まれるZrは、充放電による結晶構造変化を安定化することにより、初期充放電効率の向上に役立ち得る。Zrが一次粒子の内部全体に存在(典型的には、略均一に分布)している正極活物質では、上記安定化の効果がよりよく発揮され得る。このように、正極活物質のなかでWおよびZrが各々適した位置に配置されていることにより、該正極活物質を用いた電池において、低SOC領域における出力が効果的に改善されるものと考えられる。
また、中空構造(特に、孔空き中空構造)の正極活物質は、電解液と直接接触し得る表面積が広いため、該電解液との間でリチウムイオンを効率よく移動させ得る。このことは、リチウム二次電池のハイレート充電特性およびハイレート放電特性(出力特性)の向上に有利である。粒子空孔率の大きな正極活物質では、かかる効果が特によく発揮され得る。そして、正極活物質の一次粒子の表面に存在するWは、粒界強度の向上にも役立ち得る。粒界強度が高くなると、二次粒子(正極活物質)の強度が向上する。これにより、ハイレート充放電に対しても(例えば、充放電に伴う膨張収縮に耐えて)初期の粒子構造をよりよく維持することができ、充放電サイクルに伴う正極活物質の劣化(容量低下等)が高度に抑制され得るものと考えられる。
≪正極活物質の組成≫
ここに開示される技術の好ましい一態様に係る正極活物質は、Liと、Oと、MとしてのNi,CoおよびMnとを含み、添加元素として少なくともZrおよびWを含む。上記正極活物質は、さらに、他の一種または二種以上の金属元素および/または非金属元素Mをさらに含むことができる。かかる元素Mは、例えば、Al,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Mo,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La,Ce,Ca,FおよびBから選択される一種または二種以上の元素であり得る。Mの含有量(二種以上を含む場合、各々の含有量)は、例えば、各元素の含有量を、Mの含有量の1モル%以下(典型的には1モル%未満)とすることができ、通常は0.1モル%以下(典型的には0.1モル%未満)とすることが好ましい。二種以上の元素Mを含む場合には、それらの合計量を、Mの含有量の2モル%以下(典型的には2モル%未満)とすることができ、通常は0.2モル%以下(典型的には0.2モル%未満)とすることが好ましい。あるいは、Li,Ni,Co,Mn,Zr,W,O以外の元素Mを実質的に含有しない(かかる元素Mを少なくとも意図的には含ませないことをいい、該元素Mが非意図的又は不可避的に含まれることは許容され得る。)リチウム遷移金属酸化物であってもよい。
上記正極活物質は、例えば、以下の式(I)で表される組成(該正極活物質全体の平均組成をいう。)を有する材料であり得る。
Li1+αNiCoMnZr γ (I)
上記式(I)において、αは、0≦α≦0.2(例えば0.05≦α≦0.2)であり得る。上記式中のxは、0.1<x≦1(好ましくは0.1<x<0.9、例えば0.3<x<0.6)であり得る。yは、0≦y≦0.5(好ましくは0.1<y<0.5、例えば0.3<q<0.5)であり得る。zは、0≦r≦0.5(好ましくは0.1<r<0.5、好ましくは0.3<z<0.5)であり得る。Mは、Al,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Mo,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La,Ce,Ca,FおよびBから選択される一種または二種以上であり得る。aは、0<a≦2.0×10−2(例えば0.01×10−2≦a≦1.0×10−2)であり得る。bは、0<b≦4.0×10−2(例えば0.1×10−2≦a≦1.0×10−2)であり得る。γは、0≦γ≦1.0×10−2であり得る。γが実質的に0(すなわち、Mを実質的に含有しない酸化物)であってもよい。a/bは、0.05≦(a/b)≦2.0(例えば0.1≦(a/b)≦1.0)であり得る。好ましくは、x+y+z+a+b+γ≦1(典型的には0.8≦x+y+z+a+b+γ≦1、例えば0.9≦x+y+z+a+b+γ≦1)である。
なお、上記式(I)は、電池構築時における正極活物質(換言すれば、電池の製造に使用される正極活物質)全体の平均組成を指す。この組成は、通常、該電池の完全放電時の組成と概ね同じである。ここに開示される技術は、上記式(I)で表される平均組成を有し、かつδZrおよびδが上述した好ましい範囲にある正極活物質(より好ましくは、mZr/mが上述した好ましい範囲にある正極活物質)の製造、かかる正極活物質を用いた正極の製造(例えば、該正極活物質を非水溶媒に分散させた分散液を適当な正極集電体に付与して乾燥させることを含み得る。)、その正極を用いたリチウム二次電池の製造、等に好ましく適用され得る。
≪正極活物質の構造≫
ここに開示される方法により製造された正極活物質の代表的な構造を、図2に示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を参照しつつ説明する。この活物質粒子610は、殻部612と、中空部614と、殻部612を貫通して粒子610の中空部614と殻部612の外部(粒子610の外部)とを空間的に連続させる貫通孔616と、を有する孔空き構造を呈する。この図3に示す活物質粒子610の構成材質は、LNCM酸化物である。好ましい一態様では、図2に示すように、殻部612は貫通孔616以外の部分では緻密に焼結しており、この部分には殻部612の内外を貫く隙間は認められない。
≪粒子空孔率≫
ここに開示される技術における正極活物質は、粒子空孔率が5%以上の中空構造(典型的には、孔空き中空構造)を有する。粒子空孔率が10%以上である正極活物質が好ましく、より好ましくは15%以上である。粒子空孔率が小さすぎると、中空構造とすることの利点が十分に発揮されにくくなる場合があり得る。粒子空孔率が20%以上(典型的には23%以上、好ましくは30%以上)であってもよい。粒子空孔率の上限は特に限定されないが、活物質粒子の耐久性(例えば、電池の製造時や使用時に加わり得る圧縮応力等に耐えて中空形状を維持する性能)や製造容易性等の点から、通常は95%以下(典型的には90%以下、例えば80%以下)とすることが適当である。ここに開示されるいずれかの正極活物質製造方法において、上記粒子空孔率の調節は、例えば、粒子成長工程を継続する時間、粒子成長工程における遷移金属水酸化物の析出速度(例えば、アンモニア濃度)等を通じて行うことができる。
ここで、「粒子空孔率」とは、正極活物質をランダムな位置で切断した断面の平均において、該活物質の見かけの断面積のうち中空部が占める割合をいう。この割合は、例えば、正極活物質粒子または該活物質粒子を含む材料(例えば、図5に示す正極活物質層34)の適当な断面における走査型電子顕微鏡(SEM)画像を通じて把握することができる。かかる断面SEM画像は、例えば、正極活物質粒子または該活物質粒子を含む材料を適当な樹脂(好ましくは熱硬化性樹脂)で固めたサンプルを切断し、その断面をSEM観察することにより得ることができる。該断面SEM画像では、例えば図2に示すように、色調あるいは濃淡の違いによって、活物質粒子610の殻部612と、中空部614と、貫通孔616とを区別することができる。図3に示すように、上記サンプルの任意の断面SEM画像に表れた複数の活物質粒子610について、それらの活物質粒子610の中空部614が占める面積A(網掛け部の合計面積)と、それらの活物質粒子610が見かけの上で占める断面積Bとの比(A/B)を得る。ここで、活物質粒子610が見かけの上で占める断面積Bとは、活物質粒子610の殻部612、中空部614および貫通孔616が占める断面積(斜線部の合計面積)を指す。かかる比(A/B)によって、活物質粒子610の見かけの体積のうち中空部614が占める割合(すなわち粒子空孔率)が概ね求められる。
好ましくは、上記サンプルの任意の複数の断面SEM画像について、上記比(A/B)の値を算術平均する。このようにして比(A/B)を求める断面SEM画像の数が多くなるほど、また比(A/B)を算出する基礎とする活物質粒子610の数が多くなるほど、上記比(A/B)の算術平均値は収束する。通常は、少なくとも10個(例えば20個以上)の活物質粒子610に基づいて粒子空孔率を求めることが好ましい。また、少なくともサンプルの任意の3箇所(例えば5箇所以上)の断面におけるSEM画像に基づいて粒子空孔率を求めることが好ましい。
≪殻部の厚さ≫
上記殻部の厚さは、通常、3.0μm以下であることが好ましく、2.5μm以下(例えば2.2μm以下)であることがより好ましい。ここで、殻部の厚さとは、正極活物質または該活物質粒子を含む材料の断面SEM画像において、殻部612の内側面612a(ただし、貫通孔616に相当する部分は内側面612aに含めない。)の任意の位置kから殻部612の外側面への最短距離T(k)の平均値を指す。より具体的には、殻部612の内側面612aの複数の位置について上記最短距離T(k)を求め、それらの算術平均値を算出するとよい。この場合、殻部612の内側面612aで上記最短距離T(k)を求める位置を多くすればするほど、殻部612の厚さTが平均値に収束し、殻部612の厚さを反映させることができる。通常は、少なくとも10個(例えば20個以上)の活物質粒子610に基づいて殻部の厚さを求めることが好ましい。また、少なくともサンプルの任意の3箇所(例えば5箇所以上)の断面におけるSEM画像に基づいて殻部の厚さを求めることが好ましい。
本発明者の知見によれば、正極活物質粒子610の殻部612の厚さが薄いほど、充電時には活物質粒子610の殻部612の内部からもリチウムイオンが放出され易く、放電時にはリチウムイオンが正極活物質粒子610の殻部612の内部まで吸収され易い。したがって、所定の条件において単位質量の活物質粒子610が吸蔵および放出し得るリチウムイオンの量を多くできるとともに、活物質粒子610がリチウムイオンを吸蔵したり放出したりする際の抵抗を軽減し得る。かかる活物質粒子610を用いてなるリチウム二次電池は、低SOCにおいても出力低下の少ないものとなり得る。
殻部の平均厚さの下限値は特に限定されない。例えば、殻部の平均厚さが概ね0.1μm以上であるとよい。これにより正極活物質粒子に所要の強度が得られる。例えば、Liイオンの吸蔵および放出に伴う膨張および収縮に対して、より高い強度が確保され得る。したがって、正極活物質粒子の耐久性が向上し、リチウム二次電池の性能が経時的に安定し得る。内部抵抗低減効果と耐久性とを両立させる観点からは、殻部の平均厚さが凡そ0.1μm〜2.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.2μm〜2.0μmであり、特に好ましくは0.5μm〜1.5μmである。
活物質粒子610の断面SEM画像に表れている殻部612の周回長さのうち、貫通孔616の占める長さ(殻部612の厚みの中央における該貫通孔616の差渡し長さに相当する。一つの断面に2以上の貫通孔616が表れている場合には、それらの貫通孔616の差し渡し長さを合計する。)の割合は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。ここで、上記「周回長さ」とは、殻部612の厚みT(k)の中央に沿って粒子610の断面を一周する長さをいう。貫通孔616により殻部612が途切れている部分は、その両側の殻部612の形状から補完するものとする。貫通孔616の占める長さが大きすぎると、粒子610の耐久性(例えば、電池の製造時や使用時に加わり得る圧縮応力等に耐えて孔空き中空形状を維持する性能)が低下傾向となり得る。一方、貫通孔616の占める長さが小さすぎると、粒子610の中空部614が有効に活用されにくくなり、孔空き中空構造とすることの利点が十分に発揮されにくくなる場合があり得る。したがって、上記貫通孔616の占める長さは0.5%以上であることが好ましく、1%以上(例えば3%以上)であることがより好ましい。
好ましい一態様では、殻部612の周回長さのうち、一繋がりの(貫通孔616で途切れることなく連続した)殻部612の平均長さは、貫通孔616の平均差渡し長さの3倍以上(例えば3倍〜100倍)であり、より好ましくは5倍以上(例えば5倍〜50倍)である。上記殻部612の周回長さのうち貫通孔616の占める長さの割合、一繋がりの殻部612の平均長さと貫通孔616の平均差渡し長さとの関係は、通常、少なくとも10個(例えば20個以上)の活物質粒子610に基づく算術平均値として求めることが好ましい。また、少なくとも任意の3箇所(例えば5箇所以上)における正極活物質層の断面SEM画像に基づいて求めることが好ましい。
このような活物質粒子610は、例えば、平均粒径(二次粒径)が2μm〜20μm(より好ましくは2μm〜10μm、例えば4μm〜8μm)程度であることが好ましい。上記平均粒径の調節は、例えば、核生成段階におけるpH、粒子成長工程を継続する時間、粒子成長工程における遷移金属水酸化物の析出速度等を通じて行うことができる。遷移金属水酸化物の析出速度は、例えば、上記式1または式2に関係する一または二以上の化学種の濃度、pH、反応系の温度等を通じて調節することができる。あるいは、一般的な篩い分けにより粒子を選別して平均粒子径を調節してもよい。このような平均粒径調節手法は、単独で、あるいは適宜組み合わせて実施することができる。
なお、本明細書中において「平均粒径」とは、特記しない場合、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布から導き出せるメジアン径(50%体積平均粒子径;以下「D50」と表記することもある。)をいう。
活物質粒子610のBET比表面積は、凡そ0.3〜3.0m/g程度であることが好ましく、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは0.8m/g以上である。また、活物質粒子610のBET比表面積は、例えば、凡そ2.0m/g以下とすることができ、1.5m/g以下であってもよい。好ましい一態様に係る正極活物質は、BET比表面積が概ね0.5〜2.0m/gの範囲にある。
上記正極活物質を構成する一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡(透過型(TEM)および走査型(SEM)のいずれも使用可能である。)を用いて、少なくとも5個(例えば5個〜10個程度)の一次粒子について一定方向に対する直径(最長の差渡し長さ)を測定し、それらを算術平均することにより把握することができる。通常は、上記一次粒子の平均粒径が0.1μm〜1.0μm(例えば0.2μm〜0.7μm)である正極活物質が好ましい。
≪貫通孔≫
正極活物質粒子610の有する貫通孔616の数は、該活物質粒子610の一粒子当たりの平均として、凡そ1〜10個程度(例えば1〜5個)であることが好ましい。上記平均貫通孔数が多すぎると、中空形状を維持し難くなることがある。ここに開示される好ましい平均貫通孔数の活物質粒子610によると、活物質粒子610の強度を確保しつつ、孔開き中空構造を有することによる電池性能向上効果(例えば、出力を向上させる効果)を、良好に、且つ安定して発揮することができる。
ここに開示される活物質粒子610の典型的な態様では、貫通孔616が、平均で、最も狭い部分でも凡そ0.01μm以上の差渡し長さ(すなわち開口サイズ)を有する。この平均開口サイズが凡そ0.02μm以上であることが好ましく、凡そ0.05μm以上であることが更に好ましい。かかる開口サイズの貫通孔616を有することにより、孔開き中空構造を有することによる電池性能向上効果を適切に発揮することができる。一方、平均開口サイズが大きすぎると、活物質粒子610の強度が低下しやすくなる場合がある。好ましい平均開口サイズの上限は、活物質粒子610の平均粒径によっても異なり得る。通常は、平均開口サイズが活物質粒子610の平均粒径の凡そ1/2以下であることが好ましく、凡そ1/3以下(例えば凡そ1/4以下)であることがより好ましい。また、活物質粒子610の平均粒径に関わらず、貫通孔616の平均開口サイズが凡そ2.5μmを超えないことが好ましい。このような平均開口サイズは、平均貫通孔数が凡そ1〜20個程度(好ましくは1〜10個程度)の活物質粒子610において特に好適である。
なお、上記平均貫通孔数、平均開口サイズ等の特性値は、例えば、活物質粒子の断面をSEMで観察することにより把握することができる。例えば、活物質粒子または該活物質粒子を含む材料を適当な樹脂(好ましくは熱硬化性樹脂)で固めたサンプルを、適当な断面で切断し、その切断面を少しづつ削りながらSEM観察を行うとよい。あるいは、通常は上記サンプル中において活物質粒子の向き(姿勢)は概ねランダムであると仮定できることから、単一の断面または2〜10箇所程度の比較的少数の断面におけるSEM観察結果を統計的に処理することによっても上記特性値を算出し得る。
ここに開示される活物質粒子の典型的な態様では、上記活物質粒子を構成する一次粒子が互いに焼結している。かかる活物質粒子は、形状維持性が高い(崩れにくいこと;例えば平均硬度が高いこと、圧縮強度が高いこと等に反映され得る。)ものとなり得る。したがって、かかる活物質粒子によると、良好な電池性能をより安定して発揮することができる。好ましい一態様では、図2に示すように、殻部612を構成する一次粒子が緻密に焼結している。例えば、SEM観察において、一次粒子の粒界に実質的に隙間が存在しないように焼結していることが好ましい。かかる活物質粒子610は、特に形状維持性の高いものとなり得るので好ましい。
また、上記のように一次粒子が緻密(典型的には、少なくとも一般的な非水電解液を通過させない程度に緻密に)に焼結した孔開き中空構造の活物質粒子610では、該粒子610の外部と中空部614との間で電解液が流通し得る箇所が、貫通孔616のある箇所に制限される。このことは、ここに開示される活物質粒子610によってリチウム二次電池のハイレートサイクル特性向上効果が発揮される一つの要因となり得る。すなわち、例えば活物質を主成分とする正極活物質層がシート状の集電体に保持された構成の正極がシート状のセパレータおよび負極とともに捲回された電極体を備える電池において、該電池の充放電を繰り返すと、充放電に伴う活物質の膨張収縮によって電極体(特に正極活物質層)から電解液が絞り出され、これにより電極体の一部で電解液が不足して電池性能(例えば出力性能)が低下することがあり得る。上記構成の活物質粒子によると、貫通孔以外の部分では中空部内の電解液の流出が阻止されるので、正極活物質層において電解液が不足する事象を防止または軽減することができる。これにより、ハイレートサイクルにおける抵抗上昇を抑制することができる。一粒子当たりの平均貫通孔数が1〜20個(好ましくは1〜10個)程度である活物質粒子によると、かかる効果が特によく発揮され得る。
≪正極活物質の硬度≫
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、平均硬度が概ね0.5MPa以上(典型的には1.0MPa以上、例えば2.0〜10MPa)である正極活物質粒子が製造され得る。ここで「平均硬度」とは、直径50μmの平面ダイヤモンド圧子を使用して、負荷速度0.5mN/秒〜3mN/秒の条件で行われるダイナミック微小硬度測定により得られる値をいう。かかるダイナミック微小硬度測定には、例えば、株式会社島津製作所製の微小硬度計、型式「MCT−W500」を用いることができる。より多くの活物質粒子について上記硬度測定を行うほど、それらの活物質の硬度の算術平均値は収束する。上記平均硬度としては、少なくとも3個(好ましくは5個以上)の活物質粒子に基づく算術平均値を採用することが好ましい。核生成段階と粒子成長段階とを包含する上述した孔空き活物質粒子製造方法は、かかる平均硬度を有する孔空き活物質粒子の製造方法として好適である。この方法により得られた孔空き中空構造の活物質粒子は、例えば噴霧焼成製法等により得られた一般的な多孔質構造の正極活物質粒子に比べて、より硬く(平均硬度が高く)、形態安定性に優れたものとなり得る。
本発明によると、ここに開示されるいずれかの正極活物質を有する正極が提供される。また、上記正極を備えたリチウムイオン二次電池が提供される。かかるリチウムイオン二次電池の一実施形態について、捲回型の電極体と非水電解液とを扁平な角型形状の電池ケースに収容した構成のリチウムイオン二次電池を例にして詳細に説明するが、ここに開示される技術の実施形態を限定する意図ではない。
≪リチウムイオン二次電池≫
ここに開示される技術の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、例えば図4および図5に示されるように、捲回電極体20が、非水電解液90とともに、該電極体20の形状に対応した扁平な箱状の電池ケース10に収容された構成を有する。ケース10の開口部12は蓋体14により塞がれている。蓋体14には、外部接続用の正極端子38および負極端子48が、それら端子の一部が蓋体14から電池の外方に突出するように設けられている。かかる構成のリチウムイオン二次電池100は、例えば、ケース10の開口部12から電極体20を内部に収容し、該ケース10の開口部12に蓋体14を取り付けた後、蓋体14に設けられた電解液注入孔(図示せず)から電解液90を注入し、次いで上記注入孔を塞ぐことによって構築することができる。
電極体20は、正極活物質を含む正極活物質層34が長尺シート状の正極集電体32に保持された正極シート30と、負極活物質を含む負極活物質層44が長尺シート状の負極集電体42に保持された負極シート40とを重ね合わせて捲回し、得られた捲回体を側面方向から押圧して拉げさせることによって扁平形状に成形されている。典型的には、正極活物質層34と負極活物質層44との間は、両者の直接接触を防ぐ絶縁層が配置されている。好ましい一態様では、上記絶縁層として2枚の長尺シート状のセパレータ50を使用する。例えば、これらのセパレータ50を正極シート30および負極シート40とともに捲回して電極体20が構成される。上記絶縁層は、また、正極活物質層34および負極活物質層44の一方または両方の表面にコートされていてもよい。
≪正極シート≫
正極シート30は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極活物質層34が設けられておらず正極集電体32が露出するように形成されている。同様に、負極シート40は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極活物質層44が設けられておらず負極集電体42が露出するように形成されている。そして、正極集電体32の上記露出端部に正極端子38が、負極集電体42の上記露出端部には負極端子48がそれぞれ接合されている。正負極端子38、48と正負極集電体32、42との接合は、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等により行うことができる。
正極シート30は、ここに開示されるいずれかの正極活物質を、必要に応じて用いられる導電材、バインダ(結着剤)等とともに適当な溶媒に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物(正極活物質層形成用の分散液)を正極集電体32に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。上記溶媒としては、水性溶媒および有機溶媒のいずれも使用可能である。正極活物質に含まれるWが上記溶媒に溶出する事態をより高度に防止するという観点からは、上記溶媒として有機溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP))を用いることが好ましい。
導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等の導電性粉末材料が好ましく用いられる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末等が好ましい。導電材は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記バインダの例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC;典型的にはナトリウム塩)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。このようなバインダは、一種を単独で、または二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。かかるバインダは、正極活物質組成物の増粘剤としても機能し得る。
正極活物質層全体に占める正極活物質の割合は、凡そ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)とすることが適当であり、通常は凡そ70〜95質量%であることが好ましい。導電材を使用する場合、正極活物質層全体に占める導電材の割合は、例えば凡そ2〜20質量%とすることができ、通常は凡そ2〜15質量%とすることが好ましい。バインダを使用する場合には、正極活物質層全体に占めるバインダの割合を例えば凡そ0.5〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1〜5質量%とすることが適当である。
正極集電体32としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。正極集電体32の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態のように捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100では、厚み10μm〜30μm程度のアルミニウムシート(アルミニウム箔)を正極集電体32として好ましく使用し得る。
正極集電体32に付与した分散液の乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。乾燥後、必要に応じて全体をプレスしてもよい。正極集電体32の単位面積当たりに設けられる正極活物質層34の質量(正極集電体32の両面に正極活物質層34を有する構成では両面の合計質量)は、例えば5〜40mg/cm(典型的には5〜20mg/cm)程度とすることが適当である。正極活物質層34の密度は、例えば1.0〜3.0g/cm(典型的には1.5〜3.0g/cm)程度とすることができる。
≪負極シート≫
負極シート40は、例えば、負極活物質を、必要に応じて用いられるバインダ等とともに適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(負極活物質層形成用の分散液)を負極集電体42に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる材料の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適な負極活物質として炭素材料が挙げられる。少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を有する粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が好ましい。いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもののいずれの炭素材料も好適に使用され得る。なかでも特に、天然黒鉛等のグラファイト粒子を好ましく使用することができる。グラファイトの表面に非晶質(アモルファス)カーボンが付与されたカーボン粒子等であってもよい。負極活物質層全体に占める負極活物質の割合は特に限定されないが、通常は凡そ50質量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ90〜99質量%(例えば凡そ95〜99質量%)である。
バインダとしては、上述した正極と同様のものを、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。バインダの添加量は、負極活物質の種類や量に応じて適宜選択すればよく、例えば、負極活物質層全体の1〜5質量%程度とすることができる。
負極集電体42としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金を用いることができる。また、負極集電体42の形状は、正極集電体32と同様に、種々の形態であり得る。本実施形態のように捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100では、厚み5μm〜30μm程度の銅製シート(銅箔)を、負極集電体42として好ましく使用し得る。
負極集電体42に付与した分散液の乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。乾燥後、必要に応じて全体をプレスしてもよい。負極集電体42の単位面積当たりに設けられる負極活物質層44の質量(両面の合計質量)は、例えば3〜30mg/cm(典型的には3〜15mg/cm)程度とすることが適当である。負極活物質層44の密度は、例えば0.8〜2.0g/cm(典型的には1.0〜2.0g/cm)程度とすることができる。
≪正極と負極との容量比≫
特に限定するものではないが、正極の初期容量(C)に対する負極の初期容量(C)の比(C/C)は、通常、例えば1.0〜2.0とすることが適当であり、1.2〜1.9とすることが好ましい。C/Cが小さすぎると、電池の使用条件によっては(例えば、急速充電時等に)、金属リチウムが析出しやすくなる等の不都合が生じ得る。C/Cが大きすぎると、電池のエネルギー密度が低下しやすくなることがある。
≪セパレータ≫
正極シート30と負極シート40との間に介在されるセパレータ50としては、当該分野において一般的なセパレータと同様のものを特に限定なく用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。好適例として、一種または二種以上のポリオレフィン樹脂を主体に構成された単層または多層構造の多孔性シート(微多孔質樹脂シート)が挙げられる。例えば、PEシート、PPシート、PE層の両側にPP層が積層された三層構造(PP/PE/PP構造)のシート等を好適に使用し得る。セパレータの厚みは、例えば、凡そ10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。ここに開示される技術におけるセパレータは、上記多孔質シート、不織布等の片面または両面(典型的には片面)に、多孔質の耐熱層を備える構成のものであってもよい。かかる多孔質耐熱層は、例えば、無機材料(アルミナ粒子等の無機フィラー類を好ましく採用し得る。)とバインダとを含む層であり得る。
≪電解液≫
非水電解液90としては、非水溶媒(有機溶媒)中に電解質(支持塩)を含むものが用いられる。上記非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒の一種または二種以上を適宜選択して使用することができる。特に好ましい非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。例えば、ECとEMCとDMCとを3:3:4の体積比で含む混合溶媒を好ましく用いることができる。
上記電解質としては、一般的なリチウムイオン二次電池において電解質として用いられるリチウム塩の一種または二種以上を、適宜選択して使用することができる。かかるリチウム塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiEBF、Li(CFSON、LiCFSO等が例示される。特に好ましい例として、LiPFが挙げられる。非水電解液90は、例えば、電解質濃度が0.7〜1.3mol/L(典型的には1.0〜1.2mol/L)の範囲内となるように調製することが好ましい。
非水電解液90は、本発明の目的を大きく損なわない限度で、必要に応じて任意の添加剤を含んでもよい。かかる添加剤は、例えば、電池100の出力性能の向上、保存性の向上(保存中における容量低下の抑制等)、サイクル特性の向上、初期充放電効率の向上、等の一または二以上の目的で使用され得る。好ましい添加剤の例として、フルオロリン酸塩(好ましくはジフルオロリン酸塩。例えば、LiPOで表されるジフルオロリン酸リチウム)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)等が挙げられる。非水電解液90における各添加剤の濃度は、通常、0.20mol/L以下(典型的には0.005〜0.20mol/L)とすることが適当であり、例えば0.10mol/L以下(典型的には0.01〜0.10mol/L)とすることができる。好ましい一態様として、LiPOおよびLiBOBの両方を、それぞれ0.01〜0.05mol/L(例えば、それぞれ0.025mol/L)の濃度で含む非水電解液90が挙げられる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
≪製造例1≫
(サンプルP1〜P5;共沈法によるZr,W添加)
硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)および硫酸ジルコニウムを水に溶解させて、(Ni+Co+Mn):Zrのモル比が100:0.2であり、Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1であり、かつ、これら金属(Ni,Co,MnおよびZr)の合計濃度が1.8mol/Lである水溶液aqを調製した。
また、パラタングステン酸アンモニウム(5(NHO・12WO)を水に溶解させて、タングステン(W)濃度が0.05mol/Lの水溶液aq(W水溶液)を調製した。
攪拌装置および窒素導入管を備えた反応槽に、その容量の半分程度の水を入れ、攪拌しながら40℃に加熱した。該反応槽を窒素置換した後、窒素気流下、反応槽内の空間を酸素濃度2.0%の非酸化性雰囲気に維持しつつ、25%(質量基準)水酸化ナトリウム水溶液と25%(質量基準)アンモニア水とをそれぞれ適量加えて、液温25℃を基準とするpHが12.0であり、液相のアンモニア濃度が15g/Lであるアルカリ性水溶液(NH・NaOH水溶液)を調製した。
上記反応槽中のアルカリ性水溶液に、上記でそれぞれ調製した水溶液aqと、水溶液aqと、25%水酸化ナトリウム水溶液と、25%アンモニア水とを、一定速度で供給することにより、反応液をpH12.0以上(具体的にはpH12.0〜14.0)、かつアンモニア濃度15g/Lに維持しつつ、該反応液から水酸化物を晶析させた(核生成段階)。
次いで、上記反応槽への各液の供給速度を調節して反応液のpH12.0未満(具体的には、pH10〜11.9に調整し、液相のアンモニア濃度を1〜10g/Lの範囲の所定濃度に制御しつつ、上記で生成した核の粒子成長反応を行った(粒子成長段階)。生成物を反応槽から取り出し、水洗し、乾燥させて、(Ni+Co+Mn),ZrおよびWを100:0.2:0.5のモル比で含む複合水酸化物(前駆体)を得た。この前駆体に、大気雰囲気中、150℃で12時間の熱処理を施した。
その後、上記前駆体とLiCO(リチウム源)とを、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この混合物を、大気雰囲気中、950℃で約10時間焼成した。上記粒子成長段階における反応時間およびアンモニア濃度をそれぞれ適切に設定することにより、Li1.14Ni1/3Co1/3Mn1/3Zr0.0020.005で表される平均組成を有し(すなわち、mZr/m=0.4)、表1に示す粒子形状を有する正極活物質サンプルP1〜P5を得た。
≪製造例2≫
(サンプルP6〜10;共沈法によるZr,W添加)
製造例1において、水溶液aqの組成比(Zrのモル比)および水溶液aqにおけるWの濃度を異ならせて、(Ni+Co+Mn)のモル数に対して表1に示す割合でZrおよびWを含み、表1に示す粒子径状を有する正極活物質サンプルP6〜P10を得た。なお、粒子成長段階における反応時間およびアンモニア濃度は、いずれも、製造例1のサンプルP2と同様とした。
≪製造例3≫
(サンプルP11;共沈法によるW添加)
製造例1において、Zrを含まない水溶液aqAを使用することにより、(Ni+Co+Mn)のモル数に対して表1に示す割合でWを含み、Zrを含有しない正極活物質サンプルP6〜P10を得た。粒子成長段階における反応時間およびアンモニア濃度は、製造例1のサンプルP2と同様とした。
これらの正極活物質サンプルP1〜P11の断面SEM観察を行ったところ、いずれのサンプルも、一次粒子が集まった二次粒子の形態であって、明確な殻部と中空部とを備えていた。該殻部には、いくつかの(一粒子当たり平均1つ以上の)貫通孔が形成され、その貫通孔以外の部分では殻部が緻密に焼結していることが確認された。SEM画像から求めた一次粒子の平均粒径は、いずれも、約0.1μm〜0.6μmの範囲にあった。上記一次粒子の平均粒径は、約10個の一次粒子について、一定方向に対する直径(最長の差渡し長さ)を測定し、それらを算術平均して求めた。また、サンプルP1〜P11の平均硬度を上述した方法により測定したところ、いずれも0.5MPa〜10MPaの範囲にあることが確認された。また、サンプルP1〜P11のBET比表面積は、いずれも0.5〜2.0m/gの範囲にあった。
≪製造例4≫
(サンプルP12;乾式混合法によるW添加)
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを水に溶解させて、Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1であり、かつ、これら金属(Ni,CoおよびMn)の合計濃度が1.8mol/Lである水溶液を調製した。
製造例1と同様にして、反応槽内にpH12.0、アンモニア濃度15g/Lのアルカリ性水溶液を用意した。ここに上記水溶液と25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水とを一定速度で供給することにより、反応液をpH12.5、アンモニア濃度15g/Lに維持しつつ、該反応液から水酸化物を晶析させた(核生成段階)。
次いで、上記反応槽への各液の供給速度を調節して反応液のpHを11.5に調整し、液相のアンモニア濃度を1〜10g/Lの範囲の所定濃度に制御しつつ、上記で生成した核の粒子成長反応を行った(粒子成長段階)。生成物を反応槽から取り出し、水洗し、乾燥させて、Ni,CoおよびMnを含み且つZrおよびWのいずれも含まない複合水酸化物(前駆体)を得た。粒子成長段階における反応時間およびアンモニア濃度は、製造例1のサンプルP2と同様とした。この前駆体に、大気雰囲気中、150℃で12時間の熱処理を施した。
上記前駆体と、酸化タングステン(WO)粉末とを、LiCO(リチウム源)とを、(Ni+Co+Mn):Wのモル比が100:0.5となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この混合物を、大気雰囲気中、950℃で約10時間焼成した。このようにして、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP12を得た。
(サンプルP13;乾式混合法によるW,Zr添加)
サンプルP12と同様にして得られた前駆体と、酸化ジルコニウム(ZrO)粉末と、WO粉末と、LiCOとを、(Ni+Co+Mn):Zr:Wのモル比が100:0.05:0.5となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この混合物をサンプルP12と同様に焼成して、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP13を得た。
(サンプルP14〜P17;乾式混合法によるW,Zr添加)
サンプルP12と同様にして合成した前駆体と、ZrO粉末と、WO粉末と、LiCOとを、(Ni+Co+Mn)のモル数に対するZrおよびWのモル数が表1に示す割合となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この混合物をサンプルP12と同様に焼成して、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP14〜17を得た。
≪製造例5≫
(サンプルP18;乾式混合法によるW,Zr添加)
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを水に溶解させて、Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1であり、かつ、これら金属(Ni,CoおよびMn)の合計濃度が1.8mol/Lである水溶液を調製した。
製造例1と同様にして、反応槽内にpH12.0、アンモニア濃度15g/Lのアルカリ性水溶液を用意した。ここに上記水溶液と25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水とを一定速度で供給することにより、反応液をpH13.0、アンモニア濃度15g/Lに維持しつつ、該反応液から水酸化物を連続的に晶析させた(晶析終了まで上記pHおよびアンモニア濃度を維持した。)。生成物を反応槽から取り出し、水洗し、乾燥させて、Ni,CoおよびMnを含み且つZrおよびWのいずれも含まない複合水酸化物(前駆体)を得た。この前駆体に、大気雰囲気中、150℃で12時間の熱処理を施した。
上記前駆体と、ZrO粉末と、WO粉末と、LiCOとを、(Ni+Co+Mn):Zr:Wのモル比が100:0.2:0.5となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この混合物をサンプルP12と同様に焼成して、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP18を得た。
(サンプルP19;乾式混合法によるW,Zr添加)
サンプルP18に係る前駆体の製造において、水酸化物晶析時に反応液を維持するpHを12.5に変更した。その他の点についてはサンプルP18と同様にして、複合水酸化物(前駆体)を得た。この前駆体を用いた他はサンプルP18と同様にして、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP19を得た。なお、サンプルP19の空孔率がサンプルP18よりも大きくなったのは、晶析時のpHを13.0から12.5に変更したことにより若干溶解度が上がったためと考えられる。
(サンプルP20;乾式混合法によるW,Zr添加)
サンプルP18に係る前駆体の製造において、水酸化物晶析時に反応液を維持するpH11.5に変更し、アンモニア濃度を11g/Lに変更した。その他の点についてはサンプルP18と同様にして、複合水酸化物(前駆体)を得た。この前駆体を用いた他はサンプルP18と同様にして、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP20を得た。
≪製造例6≫
(サンプルP21;乾式混合法によるW添加)
サンプルP19と同様にして得られた前駆体と、WO粉末と、LiCOとを、(Ni+Co+Mn):Wのモル比が100:0.5となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この前駆体を用いた他はサンプルP18と同様にして、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP21を得た。
(サンプルP22,P23;乾式混合法によるW,Zr添加)
サンプルP19と同様にして得られた前駆体と、ZrO粉末と、WO粉末と、LiCOとを、(Ni+Co+Mn)のモル数に対するZrおよびWのモル数が表1に示す割合となり、かつ、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合した。この前駆体を用いた他はサンプルP18と同様にして、表2に示す粒子形状の正極活物質サンプルP22,P23を得た。
≪WおよびZrの分布≫
上記XPS測定およびICP発光分光分析測定により、各サンプルにおけるZr,Wの表面偏在度δZr,δを求めた。上記ICP発光分光分析には、島津製作所の型式「ICPE−9000」を使用した。上記XPS測定は、アルバック・ファイ社の型式「PHI−5700」を使用し、X線源:AlKαモノクロ、φ0.8mm、出力350ワットの条件で行った。得られた結果を表1および表2に示す。
さらに、サンプルP1およびP19について、以下の条件で表面を少しづつ削りながら適宜XPS測定を行うことにより、ZrおよびWの深さ方向の濃度分布を調べた。
スパッタ条件:
3kV、Ar、4×4mm照射、レート1.0nm/min(SiO換算)
図6は、サンプルP1についてのZrおよびWの濃度分布チャートである。図示されるように、Zrの分布は深さに対してほぼ一定(δZr=1.0)であるのに対して、Wの濃度は表面付近で明らかに高くなっている(δ=1.8)。このように、Zr,Wのいずれも共沈法により添加したにも拘わらず、Zrは一次粒子の内部まで均一に存在し、Wは表面に偏在した正極活物質粒子が得られた。
図7は、ZrおよびWをいずれも乾式混合法により添加したサンプルP19についての濃度分布チャートである。図示されるように、このサンプルP19では、ZrおよびWがいずれも表面に偏在した分布となっており、Zrを内部まで行き渡らせることはできなかった。また、このサンプルP19のEPS測定を行ったところ、ZrおよびWのいずれについても、活物質粒子表面の一部において局所的な凝集がみられた。かかる凝集は、サンプルP1では、ZrおよびWのいずれについても認められなかった。
≪評価用電池の作製≫
上記正極活物質サンプルP1〜23をそれぞれ使用して、概略図4、図5に示す構造のリチウムイオン二次電池(評価用電池)100を作製した。以下、これらの電池を、使用した正極活物質サンプルP1〜23に対応づけて、電池1〜23ということがある。
上記正極活物質サンプルと、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてのPVDFとを、これらの質量比が90:8:2となるようにNMPと混合して、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を、厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)32の両面に、乾燥後の質量(目付量)が両面の合計で11.8mg/cmとなるように塗布した。乾燥後、圧延プレス機によりプレスして、正極活物質層34の密度を2.1g/cmに調整した。このようにして正極シート30を作製した。
負極活物質としては、グラファイト粒子の表面にアモルファスカーボンがコートされた構造のカーボン粒子を使用した。より具体的には、天然黒鉛粉末とピッチとを混合して該黒鉛粉末の表面にピッチを付着させ(天然黒鉛粉末:ピッチの質量比は96:4とした。)、不活性雰囲気下において1000℃〜1300℃で10時間焼成した後、篩いにかけて、平均粒子径(D50)8〜11μm、比表面積3.5〜5.5m/gの負極活物質を得た。この負極活物質とCMCとSBRとを、これらの質量比が98.6:0.7:0.7となるようにイオン交換水と混合して、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を、厚さ10μmの銅箔(負極集電体)42の両面に、乾燥後の質量(目付量)が両面の合計で7.5mg/cmとなるように塗布した。乾燥後、圧延プレス機によりプレスして、負極活物質層44の密度を1.0〜1.2g/cmに調整した。このようにして負極シート40を作製した。
正極シート30と負極シート40とを、2枚の多孔質ポリエチレンシート50(厚さ20μm)とともに捲回し、扁平形状に成形して電極体20を作製した。正極端子38および負極端子48を蓋体14に取り付け、これらの端子38、48を電極体20端部において露出した正極集電体32および負極集電体42にそれぞれ溶接した。このようにして蓋体14と連結された電極体20を、ケース10の開口部12からその内部に収容し、該ケース10の開口部12に蓋体14をレーザ溶接した。
蓋体14に設けられた電解液注入孔(図示せず)から非水電解液90を注入した。非水電解液90としては、ECとEMCとDMCとの体積比3:3:4の混合溶媒中に、支持塩としてのLiPFを1.1mol/L(1.1M)の濃度で含むものを使用した。その後、上記注入孔を塞いで、評価用のリチウムイオン二次電池100を構築した。この電池100は、正極の充電容量と負極の充電容量とから算出される対向容量比が1.5〜1.9に調整されている。電池100の容量は概ね4Ahである。
次に、上記のように構築した評価試験用の電池について行われるコンディショニング工程および定格容量の測定、ならびに評価方法につき説明する。
≪コンディショニング≫
コンディショニング工程は、次の手順1〜2によって行った。
[手順1]1Cの定電流(1Cは、満充電状態の電池を1時間で放電終止電圧まで放電させる電流値を意味する。放電時間率と称されることもある。)にて端子間電圧が4.1Vに到達するまで充電(CC充電)した後、5分間休止する。
[手順2]手順1の後、定電圧で1.5時間充電(CV充電)し、5分間休止する。
≪定格容量の測定≫
評価試験用電池の定格容量は、上記コンディショニング工程後の評価試験用電池について、温度25℃において、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、次の手順1〜3に従って測定した。
[手順1]1Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧にて2時間放電し、その後、10秒間休止する。
[手順2]1Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電にて2.5時間充電し、その後、10秒間休止する。
[手順3]0.5Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10秒間停止する。
上記手順3における、定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を、定格容量とする。
≪低温低SOC出力の測定≫
以下の手順1〜5により、低SOC(ここでは27%)に調整された評価用電池の−30℃における出力を測定した。その結果を表1および表2に示す。
[手順1;SOC調整]上記コンディショニング工程および定格容量測定後の電池を、常温(ここでは25℃)の温度環境にて、1Cの定電流で3VからSOC27%まで充電(CC充電)し、次いで同電圧で2.5時間充電(CV充電)する。
[手順2;低温に保持]手順1後の電池を、−30℃の恒温槽内に6時間保持する。
[手順3;定ワット放電]手順2後の電池を、−30℃の温度環境において定ワット(W)にて放電し、放電開始から電圧が2.0V(放電カット電圧)になるまでの秒数を測定する。
[手順4;繰り返し]手順3の定ワット放電における放電出力(定ワット放電の放電電力量)を80W〜200Wの間で異ならせて、上記手順1〜3を繰り返す。より具体的には、手順3の定ワット放電における放電出力を、1回目80W、2回目90W、3回目100W・・・と10Wづつ上げながら、該ワット数が200Wになるまで上記手順1〜3を繰り返す。
[手順5;出力値の算出]手順4において各定ワット放電において測定された電圧2.0Vまでの秒数を横軸にとり、そのときの定ワット放電出力を縦軸にとったプロットの近似曲線から、電圧2.0Vまでの秒数が2秒となるときの出力値(低温低SOC出力)を求める。
なお、ここでは手順4において定ワット放電出力を80Wから200Wまで10Wづつ上げていきながら手順1〜3を繰り返したが、低温低SOC出力の測定条件はこれに限られず、例えば、定ワット放電出力を80Wから上記とは異なる一定のワット数づつ(例えば、5Wづつ、あるいは15Wづつ)上げていってもよいし、200Wから一定のワット数づつ(例えば、5Wづつ、10Wづつ、あるいは15Wづつ)下げていってもよい。
上記低温低SOC出力は、27%という低SOCで、しかも−30℃という極めて低い温度環境に所定時間放置された場合にも、評価用電池が発揮し得る出力を示している。この出力値(ワット数)が高いほど、評価用電池が、かかる厳しい使用条件においても高い出力を発揮し得ることを示している。
≪高温ハイレート充放電サイクル試験≫
電池2,8,14,16,19および23について、高温ハイレート充放電サイクル試験に対する耐久性を評価した。すなわち、上記コンディショニング工程および定格容量測定後の電池をSOC100%に調整し、温度60℃にて1000サイクルの充放電に供した。1サイクルは、4Cのレートで電圧が3VとなるまでCC放電させる操作と、次いで4Cのレートで電圧が4.1VとなるまでCC充電する操作とした。1000サイクル完了時点において、4Cのレートで電圧が3VとなるまでCC放電させ、このときの放電容量を測定した。1サイクル目の4C−CC放電容量(初期4C−CC容量)に対するサイクル終了後の放電容量(耐久後4C−CC容量)の百分率を、容量維持率として求めた。その結果を表1および表2に示す。
また、Zr/Wのモル比(mZr/m)と低温低SOC出力との関係を図8に示す。黒丸で示したプロットはサンプルP1〜P10を用いた電池に、三角のプロットはサンプルP12〜P17を用いた電池に、菱形のプロットはサンプルP18〜P23を用いた電池に、それぞれ対応している。
これらの図表に示されるように、ZrおよびWをいずれも共沈法により添加してなり、δZrが1.3以下かつδが1.5以上であって粒子空孔率が20%以上の孔空き中空構造を有する正極活物質サンプルP1〜P10によると、出力(低温低SOC出力)が高く、かつ容量維持率に優れた電池が得られた。これらの電池1〜10によると、添加元素としてWのみを用いたサンプル11に係る電池に比べて、より高い出力が得られた。
これらの電池1〜10の顕著な優位性は、中空構造または貫通孔を有しないサンプルP18〜P23に係る電池との出力および容量維持率の比較から明らかである。また、サンプルP1〜P10に係る電池は、孔空き中空構造を有するがZrおよびWを乾式混合法により添加したサンプルP12〜P17に係る電池に比べても、出力および容量維持率のいずれの点でもより優れた性能を示した。これは、サンプルP1〜P10ではZrおよびWがそれぞれ適切な分布で配置されていることによるものと考えられる。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 車両
10 電池ケース
12 開口部
14 蓋体
20 捲回電極体
30 正極シート(正極)
32 正極集電体
34 正極活物質層
38 正極端子
40 負極シート(負極)
42 負極集電体
44 負極活物質層
48 負極端子
50 セパレータ
90 非水電解液
100 リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)
610 正極活物質粒子(正極活物質)
612 殻部
612a 殻部の内側面
614 中空部
616 貫通孔

Claims (10)

  1. 殻部とその内部に形成された中空部とを有する中空構造の正極活物質であって、Ni,CoおよびMnのうち少なくとも一種の金属元素Mを含むリチウム遷移金属酸化物の一次粒子が集まった二次粒子の形態をなし、さらに添加元素EおよびEを含む正極活物質を製造する方法であって:
    前記Mと前記Eとを含む水溶液aqと、前記Eを含む水溶液aqとを混合して、前記M、前記Eおよび前記Eを含む水酸化物を生成させる水酸化物生成工程;
    前記水酸化物とリチウム化合物とを混合する混合工程;および、
    その混合物を焼成して前記リチウム遷移金属酸化物を生成させるリチウム遷移金属酸化物生成工程;
    を包含し、
    前記水酸化物生成工程は、
    アルカリ性条件下において、前記水溶液aqと前記水溶液aqとを混合し、該混合溶液から前記水酸化物を析出させる核生成段階と、
    前記混合溶液を前記核生成段階よりもpHの低いアルカリ性に維持しつつ、前記析出した水酸化物を成長させる粒子成長段階と、
    を含む、正極活物質製造方法。
  2. 前記Eは、Zr,MgおよびCaから選択される一種または二種以上であり、
    前記Eは、WおよびMoから選択される一種または二種以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リチウム遷移金属酸化物は、層状の結晶構造を有し、前記MはNi,CoおよびMnを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の方法により製造された、正極活物質。
  5. 前記活物質全体での原子数比Rに対する該活物質の表面における原子数比Rの比(R/R)により表される表面偏在度が、前記Eについては1.3以下であり、かつ前記Eについては1.5以上であることを特徴とする、請求項4に記載の正極活物質。
  6. 前記正極活物質に含まれる前記Eのモル数mEBに対する前記Eのモル数mEAの比(mEA/mEB)が0.05〜2.0である、請求項4または5に記載の正極活物質。
  7. 前記正極活物質をランダムな位置で切断した断面の平均において、該活物質の見かけの断面積のうち前記中空部が占める割合が20%以上である、請求項4から6のいずれか一項に記載の正極活物質。
  8. 前記殻部の厚さは2.5μm以下である、請求項4から7のいずれか一項に記載の正極活物質。
  9. 請求項4から8のいずれか一項に記載の正極活物質を備える、リチウム二次電池。
  10. 車両の駆動用電源として用いられる、請求項9に記載のリチウム二次電池。
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