JP2013099284A - 細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法 - Google Patents

細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温度応答性ポリマーを利用した細胞培養支持体の品質を保証するために必要な洗浄工程における洗浄条件を、簡便に決定する方法を提供すること。
【解決手段】基材面上に、ポリマー形成材料の重合反応により形成された温度応答性ポリマーが共有結合により固定化されている細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法であって、前記細胞培養支持体を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の細胞培養支持体を、前記基材面上に固定化されていない非固定化物質を抽出し得る条件にて、液体に浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程後の液体の吸光度を測定する吸光度測定工程と、前記吸光度測定工程にて得られた吸光度の測定値から非固定化物質の量を算出し、当該算出した非固定化物質の量と、予め設定した非固定化物質の量の閾値と、を比較する比較工程と、を含み、前記比較工程での比較結果に基づいて、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を選定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、細胞培養支持体の洗浄条件の決定方法に関し、特に温度応答性ポリマーを利用した細胞培養支持体の洗浄条件の決定方法に関する。
近年、再生医療分野において患者から採取した細胞を生体外で培養してシート状の細胞集合体(以下、細胞シートという。)を作製し、この細胞シートを生体内へ移植することで医療効果を高める試みがなされている。
細胞シートは、シャーレなどの支持体上で細胞培養を行うことにより得られるが、支持体上で形成された細胞シートは接着分子などを介して支持体表面と強固に結合しているため、細胞−細胞間の結合を壊さずに細胞培養基材から細胞シートを剥離することは容易ではない。そこで、細胞培養基材から細胞シートを効率的に剥離する方法が検討されてきた。
細胞−細胞間の結合を壊さず非侵襲的に細胞培養基材から細胞シートを剥離する技術としては、細胞の接着度合いが環境温度で変化するポリ−N−イソプロピルアクリルアミドなどの温度応答性ポリマーを用いた細胞培養支持体が報告されている。例えば、特許文献1では、基材上にアクリルアミドモノマーを含む溶液を展開し、これに電子線照射することにより上記モノマーをグラフト重合させ、温度応答性ポリマーであるポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを固定化させた細胞培養支持体が報告されている。
特開平5―192130号公報
ところで、電子線照射などにより重合反応させて形成された温度応答性ポリマーの膜には、未反応のモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが残留する。そのため、通常、温度応答性ポリマーの膜が形成された細胞培養支持体は、種々の条件の洗浄工程を経る。しかしながら、洗浄条件を決定する方法はこれまで確立されていなかった。細胞培養支持体の品質保証を的確に行なうために、好適な洗浄条件を決定する方法の早期確立が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、温度応答性ポリマーを利用した細胞培養支持体の品質を保証するために必要な洗浄工程における洗浄条件を、簡便に決定する方法を提供することである。
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1) 基材面上に、ポリマー形成材料の重合反応により形成された温度応答性ポリマーが共有結合により固定化されている細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法であって、上記細胞培養支持体を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の細胞培養支持体を、上記基材面上に固定化されていない非固定化物質を抽出し得る条件にて、液体に浸漬させる浸漬工程と、上記浸漬工程後の液体の吸光度を測定する吸光度測定工程と、上記吸光度測定工程にて得られた吸光度の測定値から非固定化物質の量を算出し、当該算出した非固定化物質の量と、予め設定した非固定化物質の量の閾値と、を比較する比較工程と、を含み、上記比較工程での比較結果に基づいて、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を選定することを特徴とする、上記方法。
(2) 上記ポリマー形成材料は、少なくともN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを含む、(1)に記載の方法。
本発明の方法によれば、温度応答性ポリマーを利用した細胞培養支持体の品質を保証するために必要な洗浄工程における洗浄条件を、簡便に決定することができる。
図1は、未洗浄の細胞培養支持体を浸漬させた液の吸光スペクトルを示すグラフである。 図2は、未洗浄の細胞培養支持体を浸漬させた液の波長190nmにおける吸光度変化を示すグラフである。 図3(A)はN−イソプロピルアクリルアミド溶液、図3(B)はポリ−N−イソプロピルアクリルアミド溶液の濃度毎の吸光スペクトルを示すグラフである。 図4は、未洗浄の細胞培養支持体を浸漬させた液の吸収スペクトルと、N−イソプロピルアクリルアミド及びポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを含む溶液の吸光スペクトルとのフィッティング結果を示すグラフである。 図5は、未洗浄又は洗浄後の細胞培養支持体を浸漬させた液の吸光スペクトルを示すグラフである。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
本発明の方法は、基材面上に、ポリマー形成材料の重合反応により形成された温度応答性ポリマーが共有結合により固定化されている細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法である。電子線照射などにより重合反応させて形成された温度応答性ポリマーの膜には、未反応のモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが残留するため、温度応答性ポリマーの膜が形成された細胞培養支持体は、通常、その残留物を除去するための洗浄工程を経る。本発明は、これまで確立されていなかった、上記のような細胞培養支持体の品質を保証するために必要な洗浄工程における洗浄条件を、簡便に決定することができる方法を初めて見出した点に意義がある。
[細胞培養支持体]
まず、本発明における細胞培養支持体について説明する。本発明において、細胞培養支持体は、基材面上に、ポリマー形成材料の重合反応により形成された温度応答性ポリマーが共有結合により固定化されている。すなわち、本発明における細胞培養支持体では、基材の表面上に温度応答性ポリマー層が形成されている。
<基材>
基材は、一方の表面に後述する温度応答性ポリマー層を形成することが可能であり、細胞培養の際に耐え得る耐水性を有していれば、材料の種類は特に限定されない。典型的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル等が挙げられる。
基材の温度応答性ポリマー層が形成される側の表面は、易接着処理されていてもよい。易接着処理としては、例えば、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の易接着剤による処理が挙げられる。
基材層の厚みは、特に制限は無いが可撓性を付与する厚さであることが好ましく、例えば10〜300μm、好ましくは30〜250μmである。
(温度応答性ポリマー)
温度応答性ポリマーは、所定の温度によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化することが可能な表面を有し、所定の温度によって表面の細胞の接着度合いが変化するポリマーである。温度応答性ポリマーとしては、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、作製した細胞シートを剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いるとよい。例えば、温度応答性ポリマーは、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着し難くする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものがよい。このような臨界溶解温度は、下限臨界溶解温度と呼ばれる。下限臨界溶解温度Tが0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜50℃である温度応答性ポリマーを用いることが好ましい。Tが0℃〜80℃であると、細胞を安定に培養できるからである。
好適な温度応答性ポリマーとしては、アクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられ、具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)などが挙げられる。
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体等が挙げられる。モノマーが一種類単独で使用された場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーを複数種組み合わせて使用した場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなる。
温度応答性ポリマー層の厚みは、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましい。膜厚を0.5nm〜300nmの範囲とすることで細胞の接着と剥離の両立が容易となる。
温度応答性ポリマー層は、重合して目的の温度応答性ポリマーを形成し得る上述のモノマーと、該モノマーを溶解し得る溶媒とを含む温度応答性ポリマー層形成用塗工液を調製し、次に、慣用の方法にしたがって、該塗工液を基材の表面に塗工して塗膜を形成させ、放射線照射などの適当な手段により塗膜中のモノマーを重合させてポリマーを形成させるとともに、基材の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより形成することができる。
温度応答性ポリマー層形成用塗工液中のモノマーの含有量は、5〜70重量%であることが好ましい。また、塗布用組成物中には、モノマーに加えて、複数個のモノマーが重合したオリゴマー又はプレポリマーが含まれてもよい。温度応答性ポリマー層の被覆量は、グラフトされたポリマーが温度応答性を発揮する必要な塗布量であればよく、例えば、5〜80μg/cmであり、10〜50μg/cmであることが好ましい。
モノマーを重合させるために使用する放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などが挙げられる。照射工程後は、必要に応じて塗膜を乾燥させ、上記溶媒を除去する。
[細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法]
本発明の方法は、上記細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法である。上記のようにして作製された細胞培養支持体は、その品質を保証する観点から洗浄工程を経る。グラフト重合後の温度応答性ポリマー層の表面上には、共有結合により固定化されたポリマーだけでなく、固定化されていない遊離のポリマーや、未反応のモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが存在していると考えられる。これら遊離のポリマーや未反応物など(以下、非固定化物質という。)は、細胞の生育に何らかの影響を与えるおそれがあり、除去することが好ましい。例えば、温度応答性ポリマーを形成し得るモノマーとして一般的に選択されるN−イソプロピルアクリルアミドには、毒性があることが知られており、その残留はできるだけ避けたい。そこで、洗浄によって非固定化物質を除去している。本発明の方法によれば、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を簡便に決定することができる。
本発明の方法は、洗浄工程と、浸漬工程と、吸光度測定工程と、比較工程とを含み、該比較工程での比較結果に基づいて、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を選定するものである。
<洗浄工程>
洗浄工程は、細胞培養支持体を洗浄する工程である。この洗浄工程では、候補となり得る洗浄条件を1つ以上選択し、細胞培養支持体を洗浄する。この洗浄工程における洗浄方法は、特に限定されず、例えば、細胞培養支持体の洗浄工程において、通常行なわれる方法を選択するとよい。例えば、浸漬洗浄、揺動洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。また、洗浄液としては、典型的には、各種水系、アルコール系、炭化水素系、塩素系、酸・アルカリ洗浄液が使用される。洗浄方法と洗浄液との組み合わせは、特に限定されず、細胞培養支持体に応じて、適宜、選択するとよい。一例としては、基材上に被覆されたポリマーを膨潤させるために十分な温度の脱イオン水を使用し、超音波洗浄する方法が挙げられる。
<浸漬工程>
浸漬工程は、上記洗浄工程にて洗浄後の細胞培養支持体を、基材面上に固定化されていない非固定化物質を抽出し得る条件にて、液体に浸漬させる工程である。この浸漬工程では、上記洗浄工程で選択した洗浄条件で除去できなかった、細胞培養支持体に残留する非固定化物質を抽出する。浸漬させる液体としては、例えば、水、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられ、これらの中から適宜、選択すればよい。液温は、特に限定されないが、好ましくは固定化された温度応答性ポリマーの転移温度以下である。転移温度以下では温度応答性ポリマーが親水性となるため、固定化されていない温度応答性ポリマーが溶媒中に溶出しやすいと考えられるからである。浸漬時間も特に限定されないが、水に浸漬させる場合には、4時間以上であることが好ましい。水への浸漬時間が4時間に満たないと、非固定化物質の抽出が不十分となる場合がある。
<吸光度測定工程>
吸光度測定工程は、上記浸漬工程後の液体の吸光度を測定する工程である。この吸光度測定工程では、上記浸漬工程にて細胞培養支持体を浸漬させた後の液体の吸光度を測定する。測定には、紫外・可視分光分析法を用いる。測定装置は、典型的には、紫外・可視分光光度計を用いる。紫外・可視分光分析法は、原子核、あるいは分子を周回している電子が、エネルギーの低い起動からよりエネルギーの高い軌道へ遷移する際の光の吸収を測定する方法である。紫外・可視分光分析法は、公知の手法であるので、本明細書では簡単にその説明を行う。可視光〜紫外光の領域の波長を有する光源を配置し、光源から出射された光を分光器による波長分解し、ビームスプリットなどで光量の変動をモニターする光と、試料の光吸収量をサンプリングすると、に分割する。光吸収量をサンプリングする光は、分析試料が入ったガラス、石英などの透明なセルを透過する。最終的に光は受光素子により光量計測される。波長ごとの光の吸収量を計測して吸収スペクトルを得る。吸光度の測定波長は、温度応答性ポリマーの種類に応じて、すなわち、残留し得る非固定化物質の種類に応じて、適宜、選択するとよい。好ましくは、残留し得る非固定化物質の極大吸収波長付近を選択するとよい。比較工程における比較がしやすいからである。
<比較工程>
比較工程は、上記吸光度測定工程にて得られた吸光度の測定値から非固定化物質の量を算出し、当該算出した非固定化物質の量と、予め設定した非固定化物質の量の閾値と、を比較する工程である。非固定化物質の濃度と、吸光度との間には相関性がある。したがって、本発明の方法では、例えば、まず想定される非固定化物質を所定の濃度で含有するサンプルにつき、吸光度を測定して1以上の吸光スペクトルを得る。次に、上記吸光度測定工程にて得られた吸光スペクトルに、上記1以上の吸光スペクトルをフィッティングさせるように、上記1以上の吸光スペクトルのフィッティング係数を設定する。該フィッティング係数と、上記所定の濃度の値から、上記吸光度測定工程に供した液体に含まれる非固定化物質の量を算出する。次に、細胞毒性などの実験結果に基づき、上記非固定化物質の許容限度濃度を調べる。そして、その許容限度濃度に基づき、上記非固定化物質の閾値を決定し、該閾値と、上記吸光度測定工程に供した液体に含まれる非固定化物質の量とを比較することで、洗浄工程における洗浄条件の良否の判断が可能となる。
例えば、浸漬工程後の液体の吸光度の測定値から算出した非固定化物質の量が、予め決定した閾値未満の場合には、洗浄工程における洗浄条件が適切であると判断することができ、閾値を超える場合には、洗浄工程における洗浄条件が適切でないと判断することができる。本発明の方法では、このようにして、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を選定することができる。
[細胞培養支持体の製造方法]
本発明の細胞培養支持体の製造方法は、基材面上に温度応答性ポリマーを固定化させる固定化工程と、該温度応答性ポリマーが固定化された基材面を洗浄する洗浄工程とを含み、該洗浄工程では、上記方法により決定した条件にて細胞培養支持体を洗浄することを特徴とする。固定化工程において基材面上に温度応答性ポリマーを固定化させる方法については、上記にて既に説明しているので省略する。本発明の細胞培養支持体の製造方法では、上記本発明の方法(細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法)において適切であると判断し、洗浄工程の洗浄条件として決定した条件にて、作製した細胞支持体を洗浄する。
本発明の細胞培養支持体の製造方法によれば、上記本発明の方法によって予め決定した、非固定化物質が許容限度濃度未満となる適切な洗浄条件にて、作製後の細胞培養支持体を洗浄する工程を含むので、未反応のモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの非固定化物質の量が許容限度値未満の品質の保証された細胞培養支持体を得ることができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
[製造例1]
(細胞培養支持体の製造)
N−イソプロピルアクリルアミドを、最終濃度40重量%になるようにイソプロピルアルコール(IPA)に溶解させてN−イソプロピルアクリルアミド溶液を調製した。基材として、ポリスチレンフィルムシート(OPSシート,SUNDIC社製)を準備した。このポリスチレンフィルムシートに、上記N−イソプロピルアクリルアミド溶液を展開し、ミヤバーNO.4でコーティングした。電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて電子線照射を行い、ポリスチレンフィルムシート表面にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドをグラフト重合により形成した。このときの電子線照射線量は300kGyであった。そして、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが結合されたポリスチレンフィルムシートを円形に切り出し、試験用の細胞培養支持体とした。
<試験1>
製造例1にて得た細胞培養支持体(表面積:84.6cm)をディッシュ(組織培養用ディッシュ、直径:15cm、IWAKI社製)の底面に貼付し、純水を添加し、3日間浸漬した。浸漬は、37℃のインキュベーター内で行なった。そして、経時的に浸漬中の液を採取し、その吸光度を紫外・可視分光光度計(UV−3100PC、測定波長:190〜220nm、島津製作所社製)により測定した。その結果を図1に示す。
図1に示すように、細胞培養支持体を浸漬させた液の吸光度は、浸漬時間の経過に伴い、高くなる傾向を示し、波長190〜220nmの測定範囲では、特に190nmにおいて、その傾向が強かった。波長190nmにおける吸光度の経時的変化を図2に示す。細胞培養支持体を水中に浸漬させると、波長190nmにおける吸光度が浸漬時間の経過に伴い、増加することが確認された。このことから、細胞培養支持体から抽出される非固定化物質は、少なくとも波長190nm付近に強い吸収を有するものと推測された。
<試験2>
N−イソプロピルアクリルアミド(モノマー)を純水に溶解させ、種々の濃度(1ppm、10ppm、100ppm、0.1質量%、1質量%、5質量%)の液を調製した。これらの溶液の吸光度を紫外・可視分光光度計(UV−3100PC、測定波長:190〜220nm、島津製作所社製)により測定した。その結果を図3(A)に示す。また、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(ポリマー)を純水に溶解させ、種々の濃度(100ppm、0.1質量%、1質量%、5質量%)の液を調製した。これらの溶液についても同様に吸光度を測定した。その結果を図3(B)に示す。
図3(A)及び(B)に示すように、上記モノマー及びポリマーともに、波長190nm付近に強い吸収を有していた。また、上記モノマー及びポリマーの波長190nm付近における吸光度と濃度との間には、相関性が認められた。
<試験3>
製造例1にて得た細胞培養支持体(表面積:150cm)をディッシュ(組織培養用ディッシュ、直径:15cm、IWAKI社製)の底面に貼付し、純水を添加し、24時間浸漬した。浸漬は、37℃のインキュベーター内で行なった。そして、浸漬後の液を採取し、その吸光度を紫外・可視分光光度計(UV−3100PC、測定波長:190〜220nm、島津製作所社製)により測定した。この浸漬後の液が示す吸光度は、非固定化物質によるものであり、反応系から推測される非固定化物質は、N−イソプロピルアクリルアミド(モノマー)及びポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(ポリマー)である。一方、ランベルト・ベールの法則によれば、吸光度は、溶液中の溶質濃度に比例し、上記試験2においてもこの法則に従った結果が得られた。そこで、試験2の結果に基づき、上記モノマー及びポリマーの種々の濃度における吸光スペクトルを算出し、上記浸漬後の液の吸光スペクトルと一致する濃度を調べた。フィッティング結果を図4に示す。
その結果、上記浸漬後の液の吸光スペクトルは、上記ポリマーの吸光スペクトルと良好に一致する傾向を示した(図示せず)。このことから、上記浸漬後の液の主成分は上記ポリマーであることが示唆された。次に、上記ポリマーに極少量の上記モノマーを加えた場合の吸光スペクトルを算出したところ、図4に示すように、吸光スペクトルがより一致した。
<試験4>
N−イソプロピルアクリルアミドをシグマ社製ダルベッコ改変イーグル培地に溶解させ、種々の濃度(10−6、10−5、10−4、10−3、10−2、10−1、1、10mg/ml)の液を調製した。得られた液を用いて、BD falcon社製の35mmディッシュにてウシ血管内皮細胞をコンフルエントまで培養し、観察した。
その結果、1mg/ml以上で細胞の培養形態に異常が観察され、0.1mg/ml〜1mg/mlの範囲に毒性の閾値があることが明らかとなった。ただし、毒性への感度は細胞種によって大きく異なるため、安全面を考慮し、閾値としては試験4で得られた濃度の下限(0.1mg/ml)に比べて二桁低い1μg/mlを細胞培養支持体におけるN−イソプロピルアクリルアミドの残留値の許容値に設定した。
<試験5>
製造例1にて得た細胞培養支持体を、20℃の水道水にて流水洗浄した。洗浄は、10秒間、30秒間、2分間の3条件にて行なった。洗浄後の各細胞培養支持体を乾燥させた後、ディッシュ(組織培養用ディッシュ、直径:15cm、IWAKI社製)の底面に貼付し、純水20mlを添加し、3日間浸漬した。浸漬は、37℃のインキュベーター内で行なった。浸漬後の液を採取し、その吸光度を紫外・可視分光光度計(UV−3100PC、測定波長:190〜220nm、島津製作所社製)により測定した。また、製造例1にて得た細胞培養支持体を、洗浄せずに、ディッシュ(組織培養用ディッシュ、直径:15cm、IWAKI社製)の底面に貼付し、純水20mlを添加し、3日間浸漬したものについても、同様の方法にて吸光度を測定した。その結果を図5に示す。
20℃の水道水で10秒間以上流水洗浄した細胞培養支持体を、3日間浸漬して得られた液の吸光度から算出したN−イソプロピルアクリルアミドの濃度は、0.5μg/mlであり、N−イソプロピルアクリルアミドの許容値に基づいて、あらかじめ設定した閾値(1μg/ml)を下回った。このことから、細胞培養支持体を20℃の水道水で10秒間以上流水洗浄すると、N−イソプロピルアクリルアミドが閾値未満まで除去できることが確認された。

Claims (2)

  1. 基材面上に、ポリマー形成材料の重合反応により形成された温度応答性ポリマーが共有結合により固定化されている細胞培養支持体の洗浄条件を決定する方法であって、
    前記細胞培養支持体を洗浄する洗浄工程と、
    洗浄後の細胞培養支持体を、前記基材面上に固定化されていない非固定化物質を抽出し得る条件にて、液体に浸漬させる浸漬工程と、
    前記浸漬工程後の液体の吸光度を測定する吸光度測定工程と、
    前記吸光度測定工程にて得られた吸光度の測定値から非固定化物質の量を算出し、当該算出した非固定化物質の量と、予め設定した非固定化物質の量の閾値と、を比較する比較工程と、を含み、
    前記比較工程での比較結果に基づいて、細胞培養支持体の適切な洗浄条件を選定することを特徴とする、前記方法。
  2. 前記ポリマー形成材料は、少なくともN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
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