JP2013063420A - 排ガス浄化フィルタ - Google Patents

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宣浩 日▲高▼
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Abstract

【課題】圧力損失の上昇を抑制しつつ、耐久性の向上と粒子状物質の燃焼温度の低下が可能であり、フィルタの連続再生が可能な排ガス浄化フィルタを提供する。
【解決手段】排ガスに含まれる粒子状物質を多孔質体からなるフィルタ基体11を通過させることにより捕集し浄化する排ガス浄化フィルタ10であり、フィルタ基体11は、多孔質体からなる隔壁14と、隔壁14により形成された流入セル12A及び流出セル12Bと、を備え、排ガスGの上流側端部が開放された流入セル12Aの内壁面12aには、隔壁14より小さな気孔径を有し、炭化ケイ素粒子と貴金属微粒子とを含み、炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子は、酸化物層により覆われた状態で担持されている多孔質膜13が形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車のディーゼルエンジン等から排出される排ガスから粒子状物質を除去する際に用いて好適な排ガス浄化フィルタに関し、更に詳しくは、粒子状物質の捕集性を向上させつつ圧力損失の上昇を抑制し、さらには、フィルタを再生する際の粒子状物質の燃焼温度を低下させることにより、フィルタの耐久性の向上や連続再生をも可能とする排ガス浄化フィルタに関するものである。
自動車のエンジン、特にディーゼルエンジンから排出される排ガス中に含まれる様々な物質は、大気汚染の原因となり、これまでに様々な環境問題を引き起こしている。特に、排ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)は、喘息や花粉症等のアレルギー性疾患を引き起こす要因とも言われている。
一般に、自動車用ディーゼルエンジンでは、粒子状物質を捕集するための排ガス浄化フィルタとして、セラミックス製の目封じタイプのハニカム構造体を有するDPF(Diesel Particulate Filter)が使用されている。このDPFは、セラミックス製のハニカム構造体のセル(ガス流路)の両端を市松模様に目封じしたものであり、このセルの隔壁の細孔を排ガスが通過する際、PMが捕集される(例えば、特許文献1、2参照)。
ところで、自動車の走行時には、常にエンジンからPMが排出されるために、上記のDPFの隔壁の細孔ならびにその細孔の上には、PMが層状に堆積することとなる。
自動車の走行に伴って、このPMの堆積によって、DPFの圧力損失が上昇し、自動車の走行に負荷が生じる。そこで、このDPFに堆積したPMを何らかの手段で定期的に除去して再生する必要がある。そこで、従来では、DPFの圧力損失が上昇した場合に、このDPFに高温の排ガスを流して堆積したPMを燃焼させることで、DPFを再生することが行われている。しかしながら、この再生方法では、堆積したPMは600℃から700℃の高温で燃焼することとなり、特に再生初期には、さらに高い温度で燃焼することとなるので、この燃焼時に生じる熱応力により、DPFの隔壁が破損され易い。したがって、隔壁の破損を防止するためには、PMを燃焼させる際に生じる熱応力を小さくする必要がある。
そこで、DPFにおいて、粒子状物質の捕集性を向上させつつ圧力損失の上昇を抑制するためと熱応力を小さくするために、DPFの隔壁に炭化ケイ素の多孔質から成るフィルタを形成することで、初期の燃焼での暴走を抑制することにより、DPFの急激な温度上昇を防止し、破損を防止することができる排ガス浄化フィルタが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、この方法では、炭化ケイ素多孔質フィルタにより表層ろ過で捕集されたPMが、多孔質フィルタ上で均一な加熱燃焼をすることでPMの燃焼温度を低下させることはできるものの、定期的なDPFの再生処理工程を省くことはできない。
そこで、DPFの再生処理工程を省くために、堆積したPMの燃焼温度を低下させて、排ガス温度でPMを燃焼除去することにより、DPFを連続的に再生する方法が提案されている。例えば、PMの効率的な燃焼方法を実現したDPFとして、DPFの隔壁に希土類酸化物触媒を担持させるとともに、この隔壁の前段に貴金属を担持した構造のDPF(特許文献4)、また、DPFの隔壁に希土類酸化物コート層を形成し、この希土類酸化物コート層上に貴金属を担持した構造のDPF(特許文献5)が提案されている。
特開平5−23512号公報 特開平9−77573号公報 国際公開第2009/133857号 特開2007−253144号公報 特開2006−272288号公報
ところで、従来の特許文献4、5に記載されたDPFを連続的に再生する方法では、ディーゼルエンジンからの通常走行域での排ガス温度が150℃〜350℃と低く、堆積させたPMを排ガス中で燃焼させてDPFを再生するためには、低い排ガス温度領域で高い酸化速度が必要となるために、DPFにおけるPMの酸化速度を高くする必要があり、したがって、DPFにおける貴金属の担持量を多くせざるを得なくなり、その結果、DPFの価格が高くなってしまうという問題点があった。
さらには、DPFにおける貴金属の担持量を多くした結果、貴金属粒子のシンタリング(粒成長)が促進され、よって、低い排ガス温度領域における酸化速度の低下とともに酸化浄化性能が低下するという新たな問題点も生じている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、粒子状物質の捕集性を向上させつつ圧力損失の上昇を抑制し、耐久性の向上と粒子状物質の燃焼温度の低下が可能であり、その結果、フィルタの連続再生をも可能とする排ガス浄化フィルタを提供することを目的とする。
本発明者等は、排ガス浄化フィルタを構成する多孔質体からなるフィルタ基体について鋭意検討を重ねた結果、フィルタ基体を構成する隔壁の少なくとも流入側ガス流路側の表面に形成される多孔質膜を炭化ケイ素粒子により構成し、この炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子を、酸化物層により覆われた状態で担持させれば、粒子状物質の捕集性を向上させつつ圧力損失の上昇を抑制し、さらには、粒子状物質の燃焼温度の低下が可能であり、その結果、フィルタの耐久性を向上させるだけではなく、フィルタの連続再生をも可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の排ガス浄化フィルタは、排ガスに含まれる粒子状物質を多孔質体からなるフィルタ基体を通過させることにより捕集し前記排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、前記フィルタ基体は、多孔質体からなる隔壁と、該隔壁により形成されるとともに粒子状物質を含む排ガスの流入側端部が開放された流入側ガス流路と、前記フィルタ基体の前記流入側ガス流路と異なる位置に設けられ、前記隔壁により形成されるとともに排ガスの流出側端部が開放された流出側ガス流路と、を備え、前記隔壁の少なくとも前記流入側ガス流路側の表面に、前記隔壁より小さな気孔径を有する多孔質膜が形成され、前記多孔質膜は、炭化ケイ素粒子と貴金属微粒子とを含み、前記炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子は、酸化物層により覆われた状態で担持されていることを特徴とする。
前記酸化物層は、非晶質のSiO(ただし、0<x≦3)および非晶質のSiO(ただし、0<y≦3、0<z≦3)の群から選択される1種または2種からなることが好ましい。
前記酸化物層は、さらに、SiO、SiO、SiOC、SiOおよびSiOCの群から選択される1種または2種以上を含む結晶質を含有していてもよい。
前記炭化ケイ素粒子の平均一次粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。
前記貴金属粒子の平均一次粒子径は1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。
前記多孔質膜の平均気孔径は0.05μm以上かつ3μm以下であり、かつ平均気孔率は50%以上かつ90%以下であることが好ましい。
本発明の排ガス浄化フィルタによれば、多孔質体からなるフィルター基体を、多孔質体からなる隔壁と、該隔壁により形成されるとともに粒子状物質を含む排ガスの流入側端部が開放された流入側ガス流路と、前記フィルタ基体の前記流入側ガス流路と異なる位置に設けられ、前記隔壁により形成されるとともに排ガスの流出側端部が開放された流出側ガス流路と、を備えたものとし、前記隔壁の少なくとも前記流入側ガス流路側の表面に、前記隔壁より小さな気孔径を有する多孔質膜を形成し、この多孔質膜を、炭化ケイ素粒子と貴金属微粒子とを含むものとし、前記炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子を、酸化物層により覆われた状態で担持させたので、フィルタ基体におけるPM捕集性を向上させつつ圧力損失の上昇を抑制し、さらには粒子状物質の燃焼温度を低下させることができる。したがって、排ガス浄化フィルタの耐久性を向上させることができ、さらには連続再生をも行うことができる。
これらの効果により、エンジンに対して過剰な負荷を掛けることがなく、燃費を悪化させることもなく、良好な特性を有する排ガス浄化フィルタを提供することができる。
本発明の一実施形態の排ガス浄化フィルタの一例であるDPFを示す一部破断斜視図である。 本発明の一実施形態の排ガス浄化フィルタの一例であるDPFの隔壁構造を示す断面図である。 本発明の一実施形態の排ガス浄化フィルタの一例であるDPFの多孔質膜の構造の一例を示す断面図である。 本発明の実施例1の多孔質膜の走査型電子顕微鏡像(SEM像)である。 本発明の実施例1の多孔質膜の電界放出型透過電子顕微鏡像(FE−TEM像)である。 図5の多孔質膜の構造を説明するための説明図である。
本発明の排ガス浄化フィルタを実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[排ガス浄化フィルタ]
本発明の一実施形態の排ガス浄化フィルタについて説明する。ここでは、自動車用ディーゼルエンジンに用いられる排ガス浄化フィルタであるセラミックス製の目封じタイプのハニカム構造体を有するDPFを例にとり説明する。
本実施形態の排ガス浄化フィルタは、排ガスに含まれる粒子状物質を多孔質体からなるフィルタ基体を通過させることにより捕集し前記排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、前記フィルタ基体は、多孔質体からなる隔壁と、該隔壁により形成されるとともに粒子状物質を含む排ガスの流入側端部が開放された流入側ガス流路と、前記フィルタ基体の前記流入側ガス流路と異なる位置に設けられ、前記隔壁により形成されるとともに排ガスの流出側端部が開放された流出側ガス流路と、を備え、前記隔壁の少なくとも前記流入側ガス流路側の表面に、前記隔壁より小さな気孔径を有する多孔質膜が形成され、前記多孔質膜は、炭化ケイ素粒子と貴金属微粒子を含み、前記炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子は、酸化物層により覆われた状態で担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
図1は、本発明の一実施形態の排ガス浄化フィルタの一例であるDPFを示す一部破断斜視図であり、図2は、図1中符号βで示す面におけるDPFの隔壁構造を示す断面図である。
このDPF10は、図1に示すように、多数の細孔(気孔)を有する円柱状の多孔質セラミックスからなるフィルタ基体11に排ガスGを通過させることにより、排ガスGに含まれる粒子状物質(PM)を捕集し、排ガスGを浄化する排ガス浄化フィルタである。なお、DPFは円柱状である必要は無く、角柱状や楕円柱状のような形状でもよい。
このフィルタ基体11にはガス流路12が形成され、このガス流路12は、排ガスGの流れ方向(長手方向)から見た場合に、上流側端部と下流側端部とが交互に閉塞された構造、すなわち、排ガスGの流入側である粒子状物質を含む排ガスGの流入側端部が開放された流入セル(流入側ガス流路)12Aと、この流入セル12Aと異なる位置に形成されて排ガスGの流出側端部が開放された流出セル(流出側ガス流路)12Bとにより構成され、ガス流路12のうち排ガスGの上流側端部(流入側端部)が開放された流入セル12Aの内壁面12aには多孔質膜13が形成されている。
なお、フィルタ基体11の軸方向の両端面のうち一方の端面αが、粒子状物質を含む排ガスGが流入する流入面であり、他方の端面γが、上記の排ガスGから粒子状物質を取り除いた浄化ガスCを排出する排出面である。
このDPF10における排ガスの流れを示すと、図2に示すようになる。
流入面側、すなわち端面α側から流入したPM30を含む排ガスGは、流入面に開口している流入セル12AからDPF10内に流入し、流入セル12A内を端面α側から端面γ側へと流れる過程で、フィルタ基体11の隔壁14を通過する。この際、排ガスG中に含まれるPM30は、流入セル12Aの内壁面12a(流入セル12Aを構成する隔壁14の表面)に設けられた多孔質膜13により捕集されて除去され、粒子状物質30が除去された浄化ガスCは、流出セル12B内を端面α側から端面γ側へと流れ、流出セル12Bの開口端(端面γ)からフィルタ外へ排出される。
フィルタ基体11は、炭化ケイ素、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素等の耐熱性の多孔質セラミックスからなるハニカム構造体である。フィルタ基体11には、排ガスGの流れ方向である軸方向に沿って延びる隔壁14が形成されており、隔壁14により囲まれた軸方向の中空の領域が多数の流入セル12A及び流出セル12Bからなるセル状のガス流路12とされている。
ここで、本実施形態における「ハニカム構造」とは、フィルタ基体11に複数の流入セル12A及び流出セル12Bが互い平行となるように、かつ流入セル12Aと流出セル12Bとは一方が他方を囲むとともに一方の開口端と他方の開口端とが互いに反対方向となるように形成された構造である。
流入セル12A及び流出セル12B、すなわちガス流路12の軸方向に直交する方向の断面形状は、ここでは四角形状としたが、四角形状に限らず、六角形状等の多角形状、円形状、楕円形状等、種々の断面形状とすることができる。また、フィルタ基体11の外周付近に形成されたガス流路12は、断面形状の一部が円弧状となっているが、これはフィルタ基体11の外周付近まで隙間無くガス流路12を配置するために、フィルタ基体11の外形状に倣う断面形状のガス流路12としたものである。
多孔質セラミックスからなる隔壁14の平均気孔径は、5μm以上かつ50μmであることが好ましい。平均気孔径が5μmを下回ると、隔壁14自体による圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、平均気孔径が50μmを上回ると、隔壁14の強度が十分でなくなる虞があり、また、隔壁14上に多孔質膜13を形成するのが困難になるので好ましくない。
また、多孔質膜13は、流入セル12Aの内壁面12aに形成され、隔壁14の気孔径よりも小さい気孔径の多孔質膜であり、フィルタ基体11の隔壁14を構成する多孔質セラミックスの細孔内にあまり入り込むことなく、流入セル12Aの内壁面12a上に独立した膜として形成されている。すなわち、多孔質膜13は、隔壁14に形成されている気孔の入口部分までしか侵入しない状態で流入セル12Aの内壁面12aに形成されている。そして、多孔質膜13は、多数の気孔を有することにより、これらの気孔が連通し、結果として、貫通孔を有するフィルタ状多孔質となっている。
次に、この多孔質膜13について詳細に説明する。
図3は、本実施形態の多孔質膜13を示す模式図であり、この多孔質膜13は、複数種の貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21b及び表面被覆炭化ケイ素粒子25が集合して全体が多孔質の膜状となったものである。
ここで、貴金属担持炭化ケイ素粒子21aは、炭化ケイ素粒子22の表面に貴金属粒子23が担持されており、この貴金属粒子23は、酸化物層24により覆われた状態で炭化ケイ素粒子22の表面に担持されている。
また、貴金属担持炭化ケイ素粒子21bは、炭化ケイ素粒子22の表面に2個の貴金属粒子23が担持されており、これらの貴金属粒子23は、酸化物層24により覆われた状態で炭化ケイ素粒子22の表面に担持されている。
貴金属担持炭化ケイ素粒子の担持する貴金属粒子23の数は、上記の1個または2個の他、3個以上も担持可能である。
一方、表面被覆炭化ケイ素粒子25は、炭化ケイ素粒子22の表面が酸化物層24により覆われたもので、この炭化ケイ素粒子22の表面には貴金属粒子23は担持されていない。
この多孔質膜13は、上記のように、貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bと貴金属粒子23が担持されていない表面被覆炭化ケイ素粒子25との混合物で構成されていてもよく、貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bのみで構成されていてもよく、貴金属粒子23が3個以上担持された貴金属担持炭化ケイ素粒子を含んでいてもよい。
さらに、貴金属担持炭化ケイ素粒子や表面被覆炭化ケイ素粒子には、必要に応じて、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)等の3族元素−14族元素から選ばれた少なくとも1種類の元素またはそれらの酸化物、炭化物、窒化物を単独または複合させて含有することもできる。なお、他成分を含む場合の炭化ケイ素の割合は、80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましい。
この貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bは、DPF10の再生時に、捕集されたPMを燃焼除去する際の燃焼触媒として作用し、燃焼温度の低下や燃焼時間の短縮といった燃焼効率の向上効果を有する。
従来より、貴金属粒子がこの触媒作用を有することが知られている。また、詳細は後述するが、酸化物層24を構成する「炭化ケイ素酸化物」は酸素放出を示すことが知られており、やはり同様の触媒作用を有する。従って、貴金属粒子23と酸化物層24とが合わさることにより、より高い触媒作用、すなわち燃焼温度のさらなる低下や燃焼時間のさらなる短縮という効果を生じると考えられる。
この燃焼触媒作用の点からは、貴金属粒子が担持されていない表面被覆炭化ケイ素粒子31が存在する場合においても、その表面には酸化物層24が形成されていることが好ましい。
このような触媒効果を奏するという効果においては、多孔質膜13は必ずしも完全な膜状でなくともよく、多孔質の凝集体状を含んでいてもよい。また、多孔質膜13中には、貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bが分散して配置されていてもよく、凝集した形状として配置されてもよく、連続した膜状の構造体として配置されてもよい。いずれの場合も触媒層として働くことには変わりがない。また、貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bのみではなく、他の触媒粒子や、無機粒子、金属粒子を含んでいてもよい。
一方、本実施形態の排ガス浄化フィルタ(DPF10)においては、この多孔質膜13においてPMを捕集することが好ましい。多孔質膜13でPMを捕集すれば、捕集されたPMと、PM燃焼触媒である貴金属担持炭化ケイ素粒子21a、21bが近接することから、触媒作用を効果的に発現できるからである。
このような多孔質膜13としては、上述した通りフィルタ基体11の隔壁14を構成する多孔質セラミックスの細孔内にあまり入り込むことなく、流入セル12Aの内壁面12a上に独立した膜として形成される必要がある。また、多孔質膜13は、隔壁14の平均気孔径より小さな平均気孔径を有する必要があり、具体的には0.05μm以上かつ3μm以下であることが好ましく、0.07μm以上かつ2.5μm以下であればより好ましい。これは、多孔質膜13の平均気孔径が0.05μm未満では、粒子状物質30を含む排ガスが排ガス浄化フィルタ(DPF10)内に流入した場合に圧力損失が大きくなるからであり、一方、多孔質膜13の平均気孔径が3μmを超えると、多孔質膜13の気孔径と隔壁14の気孔径とが実質的の同等となり、多孔質膜13でのPM捕集性が低下するほか、DPF10の再生処理を行う場合、PM燃焼効率の向上が見られないからである。
また、多孔質膜13の平均気孔率は50%以上かつ90%以下であることが好ましく、60%以上かつ85%以下であればより好ましい。これは、多孔質膜13の平均気孔率が50%未満では、多孔質膜13の平均気孔率が隔壁14の気孔率と同等か低くなるために圧力損失の上昇を招くからであり、一方、多孔質膜の平均気孔率が90%を超えると、多孔質膜の構造や強度を維持することが困難となる虞があるからである。
多孔質膜13の厚み(膜厚)は、内壁面12aにて隔壁14が有する空孔部と平面的に重なる箇所においては60μm以下であり、かつ内壁面12aにて隔壁14の固体部と平面的に重なる箇所においては5μm以上かつ60μm以下であることが好ましい。
ここで「空孔部」とは、隔壁14における気孔が、内壁面12a上に開口している開口部を示し、多孔質膜13の下には膜を保持する基材が無い部分である。また「固体部」とは、空孔部を除いた部分、すなわち隔壁14を構成するセラミックス材料が、内壁面12a上に存在する部分を示している。
これは、多孔質膜13の膜厚がこの範囲内であれば、多孔質膜内の細孔(気孔)が十分に存在することにより、多孔質膜表面における気流が隔壁14の状態によらずほぼ均一になり、よって、圧力損失が低減され、またPM30が多孔質膜13上に均一に捕集されるので、良好なフィルタ特性が維持されるからである。
さらに、フィルタの再生処理時においても、捕集されたPM30を燃焼させるための燃焼ガスが、堆積したPM30に対して均一に流れることができるので、燃焼効率の向上が図れるからである。
しかしながら、多孔質膜13の厚みが5μm未満では、多孔質膜13の厚みが薄いために多孔質膜13中の細孔数が実質的に少なくなる結果、多孔質膜13が隔壁14の固体部と平面的に重なる箇所における多孔質膜13表面の気流量が減少し、多孔質膜表面における気流が不均一となり、その結果、圧力損失の増加やPM30の捕集が不均一となり、捕集効率の低下や再生処理回数の増加をまねく虞がある。
また、同様に、多孔質膜13中の細孔数が少ないことから、フィルタの再生処理時においても、捕集されたPM30を燃焼させるための燃焼ガスの流れが不均一となり、PM30の燃焼効率向上が図れない虞がある。
一方、多孔質膜13の厚みが60μmを超えると、多孔質膜13による圧力損失が過大となるために、エンジンの出力低下等を招く虞があり好ましくない。
この多孔質膜13の厚みは、空孔部で35μm以下であり、固体部で7μm以上かつ35μm以下であればより好ましく、空孔部で30μm以下であり、かつ固体部で10μm以上かつ30μm以下であればさらに好ましい。
ここで、多孔質膜13を形成する炭化ケイ素粒子22としては、平均一次粒子径の下限値が0.01μmであることが好ましい。これは、炭化ケイ素粒子の平均一次粒子径が0.01μm未満では、得られる多孔質膜13の気孔径が小さくなりすぎるために、DPF10における圧力損失が大きくなる虞があること、また、高温下での排ガス浄化フィルタの使用中に炭化ケイ素粒子同士のシンタリング(粒成長)が進行して粒子径が大きくなり、その結果、触媒活性点が減少するので好ましくないからである。この下限値は0.02μmであればより好ましく、0.035μmであればさらに好ましい。
一方、平均一次粒子径の最大値を規定するための条件は2種類あり、フィルタとしての特性を主体とする場合と、燃焼触媒作用を主体とする場合で、その値が異なる。
まず、フィルタ特性を主体とする場合には、平均一次粒子径の最大値は10μmであることが好ましい。これは、平均一次粒子径の最大値が10μmを越えると、得られる多孔質膜13の気孔径が大きくなりすぎるために、PM30の捕集性が低下したり、PM30が多孔質膜13を通過して隔壁14の気孔内で捕集されるためにフィルタの再生処理時における燃焼効率の向上が見られなくなり、好ましくないからである。フィルタ特性を主体とした場合の上限値は、好ましくは7μmであり、より好ましくは5μmである。
次に、燃焼触媒作用を主体とする場合には、平均一次粒子径の最大値は5μmであることが好ましい。これは、平均一次粒子径が5μmを越えると、炭化ケイ素粒子22の比表面積が減少するために、貴金属粒子を担持した際に、貴金属粒子間距離が短くなり、その結果、高温下での排ガス浄化フィルタの使用中に貴金属粒子同士のシンタリング(粒成長)が進行し、触媒活性が低下するので好ましくないからである。
燃焼触媒作用を主体とした場合の上限値は、好ましくは3μmであり、より好ましくは1μmである。
従って、平均一次粒子径の最大値は、DPF10の用途や目的に合わせて選定すればよい。
このような炭化ケイ素粒子の内、ナノメートルサイズの粒子を得る方法としては、非酸化性雰囲気下にて、高温、高活性を有し、高速冷却プロセスの導入が容易である熱プラズマを利用した熱プラズマ法が挙げられる。この製造方法は、平均一次粒子径が5nm〜100nm程度の結晶性に優れた炭化ケイ素ナノ粒子を製造する方法として有用であり、高純度の原料を選択することにより、不純物の含有量が極めて少ない炭化ケイ素ナノ粒子を得ることが可能である。
また、シリカ前駆体焼成法も挙げることができる。この方法は、有機ケイ素化合物、ケイ素ゾル、ケイ酸ヒドロゲル等のケイ素を含む物質と、フェノール樹脂等の炭素を含む物質と、炭化ケイ素の粒成長を抑制するリチウム等の金属化合物とを含む混合物を、非酸化雰囲気下にて焼成することにより、炭化ケイ素粒子を得る方法である。
また、サブミクロンからミクロン(マイクロメートル)サイズの炭化ケイ素粒子を得る方法としては、アチソン法、シリカ還元法、シリコン炭化法などの工業的製法を挙げることができる。なおこれらの方法は、既に工業的に確立していることから、その説明は省略する。
この炭化ケイ素粒子21の表面に担持される貴金属粒子23としては、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の群から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましい。
この貴金属粒子23の平均一次粒径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上かつ30nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ10nm以下である。
ここで、平均一次粒径を1nm以上かつ50nm以下と限定した理由は、平均一次粒径が1nm未満では、粒子径が小さすぎて表面活性が強くなりすぎてしまい、凝集し易くなるので、好ましくないからである。一方、平均一次粒径が50nmを超えると、貴金属粒子が炭化ケイ素粒子表面の酸化物層により覆いきれなくなり、酸化物層から突出して露出するようになるために、触媒特性が低下する虞があり、また、低温時における触媒活性が低下するので好ましくない。
酸化物層24は、貴金属粒子23を炭化ケイ素粒子22の表面に担持させるとともに、酸化性雰囲気中にて酸化することにより、貴金属粒子23及び炭化ケイ素粒子22上に生成する酸化物層である。
この酸化物層24は、貴金属粒子23を炭化ケイ素粒子22の表面に保持する機能を有するので、高温環境下における貴金属粒子23の移動を抑制し、貴金属粒子23のシンタリング(粒成長)による表面積の低下を防止することができる。
この酸化物層24としては、非晶質のSiO(ただし、0<x≦3)および非晶質のSiO(ただし、0<y≦3、0<z≦3)の群から選択される1種または2種からなることが好ましい。なお、非晶質のSiOおよび非晶質のSiOとも単一組成である必要はなく、酸化物層24の各部分において、x、y、zは前記の範囲内で任意に変動していてもかまわない。さらに、SiO(シリカ)、SiO、SiOC、SiO、SiOCの群から選択される1種または2種以上の結晶質を含んでいてもよい。ただし、酸化物層24は厚みが薄くかつ量的にも微量であるから、この酸化物層24中に結晶質が含まれていることを確認することは難しい。なお、以下の説明においては、これらの酸化物層24を形成する物質をまとめて「炭化ケイ素酸化物」と表記する場合がある。
これら炭化ケイ素酸化物の中でも、貴金属粒子と結合を形成し易いケイ素炭化酸化物、すなわちケイ素と炭素と酸素をともに含む化合物を含むことが好ましい。これらのケイ素炭化酸化物が貴金属粒子と結合を形成することによって、貴金属粒子の移動抑制、シンタリング抑制効果がより向上する。また、貴金属粒子23は、微細化により融点が低下することが知られているが、これらのケイ素炭化酸化物が貴金属粒子と結合を形成することにより、貴金属粒子23の融解を抑制することができる。
このようなケイ素炭化酸化物としては、非晶質のSiO(ただし、0<y≦3、0<z≦3)のほか、結晶質のSiOC、SiO、SiOCを挙げることができる。なお、このケイ素炭化酸化物としては、ケイ素と炭素と酸素をともに含んでいればよく、上記以外の組成のものを含む場合がある。
また、酸化物層24を構成する炭化ケイ素酸化物は酸素放出を示すことが知られており、担持された貴金属粒子23が炭化ケイ素酸化物の酸素放出量の増加と酸素放出温度の低温化を促進すると考えられる。したがって、触媒反応の反応速度が活性点の数に依存する低温領域においても、炭化ケイ素酸化物から放出される酸素が貴金属粒子の補助的な作用により活性点として作用しやすくなり、結果として高い燃焼触媒活性が得られることから、低温領域でのPM燃焼性が向上すると考えられる。
[排ガス浄化フィルタの製造方法]
本実施形態の排ガス浄化フィルタの製造方法は、母材となる炭化ケイ素粒子を準備する母材準備工程、この炭化ケイ素粒子上に貴金属粒子を担持する貴金属粒子担持工程、この炭化ケイ素粒子をフィルタ基体を構成する多孔質体からなる隔壁へ担持させ多孔質を形成する多孔質膜形成工程、この炭化ケイ素粒子表面に酸化物層を形成する酸化物層形成工程、を有する。
これら4工程の順番は、母材準備工程は当然ながら最初でなければならないこと、酸化物層形成工程は貴金属粒子が担持された炭化ケイ素粒子に対して行う必要があること(炭化ケイ素粒子だけでは不可であること)、という条件を満たす限り、任意の順番を選択することができる。なお、ここで、酸化物層形成工程を貴金属粒子が担持された炭化ケイ素粒子に対して行う必要がある理由は、炭化ケイ素粒子に酸化物層を形成した後貴金属粒子を担持しても十分な酸化触媒特性が得られないからである。
また、貴金属粒子担持工程と多孔質膜形成工程は、共に、溶媒(分散媒)への溶解または分散、溶媒(分散媒)の乾燥除去、熱処理、という類似の作業内容を有するので、両工程を同時に並行して行うことができる。
以上のことから、本実施形態における排ガス浄化フィルタの製造方法では、次のような4種の工程順を選択することができる。なお、ここでは、母材準備工程を[A]、貴金属粒子担持工程を[B]、多孔質膜形成工程を[C]、酸化物層形成工程を[D]とする。
また、ある工程の後に次の工程を行う場合は「→(右矢印)」で、2つの工程を同時に行う場合は「=」で示すこととする。
(1)[A]→[B]→[C]→[D]
貴金属粒子を担持した炭化ケイ素粒子を形成し、この炭化ケイ素粒子を用いて多孔質膜を形成した後、表面酸化物層を形成する方法である。
(2)[A]→[B]→[D]→[C]
貴金属粒子を担持し表面酸化物層が形成された炭化ケイ素粒子を形成した後、この炭化ケイ素粒子を用いて多孔質膜を形成する方法である。
(3)[A]→[C]→[B]→[D]
母材炭化ケイ素粒子により多孔質膜を形成した後、この多孔質膜に貴金属粒子を担持させ、その後表面酸化物層を形成する方法である。
(4)[A]→[B]=[C]→[D]
母材炭化ケイ素粒子への貴金属粒子担持と、母材炭化ケイ素粒子による多孔質膜形成を同時に行った後、得られた貴金属粒子担持炭化ケイ素多孔質膜に表面酸化物層を形成する方法である。
次に、各工程について詳細に説明する。
「母材準備工程」
母材となる炭化ケイ素粒子を準備する工程である。
炭化ケイ素粒子の平均一次粒子径は、要求される排ガス浄化フィルタの特性に合わせて0.01μmから10μmの範囲で選定すればよい。この炭化ケイ素粒子は、既述の方法、すなわちナノメートルサイズの粒子であれば、熱プラズマ法やシリカ前駆体焼成法等、サブミクロンからミクロン(マイクロメートル)サイズの炭化ケイ素粒子であれば、アチソン法、シリカ還元法、シリコン炭化法等を用いて得ることができる。
「貴金属粒子担持工程」
母材となる炭化ケイ素粒子の表面、あるいは炭化ケイ素粒子から形成された多孔質膜中の炭化ケイ素粒子表面に貴金属粒子を担持し、貴金属担持炭化ケイ素粒子、あるいは貴金属担持炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜とする工程である。
初めに、貴金属源となる貴金属の塩類を溶解した溶液、あるいは貴金属化合物微粒子を分散させた分散液を作製する。溶媒や分散媒は水が好適であるが、貴金属源が水で分解・沈殿するような場合には、有機溶媒を用いてもよい。この有機溶媒としては極性溶媒が好ましく、アルコール類、ケトン類等が用いられる。
次いで、この溶液や分散液中に、炭化ケイ素粒子を浸漬・分散させる、あるいは炭化ケイ素粒子から形成された多孔質膜を浸漬した後、60℃ないし250℃程度の温度でこの水や分散媒を除去して乾燥する。これにより、炭化ケイ素粒子(多孔質膜を形成しているものを含む)の表面に貴金属の塩類や貴金属化合物微粒子を付着させることができる。
次いで、貴金属の塩類や貴金属化合物微粒子が付着した炭化ケイ素粒子あるいは多孔質膜を、水素や一酸化炭素などの還元雰囲気中や、窒素、アルゴン、ネオン、キセノン等の不活性雰囲気中で熱処理することにより、貴金属の塩類や貴金属化合物を還元・分解させて貴金属微粒子を形成する。熱処理温度や時間は、貴金属源の種類や雰囲気条件等により適宜選択すればよいが、通常、500℃以上かつ1500℃以下、10分以上かつ24時間以下の範囲である。なお、必要以上の温度や時間は、炭化ケイ素粒子の焼結や生成した貴金属粒子のシンタリングを誘発する虞があるので好ましくない。以上の工程により、貴金属微粒子が表面に担持された炭化ケイ素粒子、あるいは貴金属微粒子が表面に担持された炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜を得ることができる。
この工程で用いられる貴金属源としては、貴金属粒子である白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の群から選択される1種または2種以上の貴金属元素を含む塩類や化合物、例えば塩化物、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、錯体(錯塩)、水酸化物等が挙げられる。
「多孔質膜形成工程」
この多孔質膜形成工程は、母材となる炭化ケイ素粒子、貴金属粒子を担持させた炭化ケイ素粒子、貴金属粒子が担持され表面酸化層が形成された炭化ケイ素粒子、のいずれかを分散媒中に分散させ、炭化ケイ素粒子分散液を作製する工程と、この炭化ケイ素粒子分散液をフィルタ基体を構成する多孔質体からなる隔壁へ塗布(コート)した後乾燥し、さらに炭化ケイ素粒子を部分焼結して多孔質膜を形成させる工程とからなる。
まず、既述の炭化ケイ素粒子、貴金属粒子を担持させた炭化ケイ素粒子、貴金属粒子が担持され表面酸化層が形成された炭化ケイ素粒子、のいずれかを、分散媒中に分散させ、炭化ケイ素粒子分散液を作製する。
この分散媒としては、炭化ケイ素粒子を均一に分散させることのできるものであればよく、水または有機溶媒が好適に用いられる。また、必要に応じて、高分子モノマーやオリゴマーの単体もしくはこれらの混合物を用いてもよい。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
上記の高分子モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等を用いることができる。また、上記のオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等を用いることができる。
この分散液は、分散安定性を確保したり、あるいは塗布性を向上させたりするために、分散剤(表面処理剤)、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を適宜添加してもよい。これらの分散剤、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等の添加量に特に制限はなく、添加する目的に応じて加えればよい。
この担体準備工程に適用可能な装置としては、ニーダ、ロールミル、ピンミル、サンドミル、ボールミル、遊星ボールミル等があるが、炭化ケイ素粒子を分散媒体を用いて分散媒中に分散させるためには、サンドミル、ボールミル、遊星ボールミル等が好適である。 また、ボール等の分散媒体としては、スチール、鉛等の金属類が芯材となっている樹脂被覆体、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物焼結体、窒化ケイ素等の窒化物焼結体、炭化ケイ素等のケイ化物焼結体、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等のガラス類等が挙げられるが、本実施形態にて用いられる分散媒体としては、混合・分散効率の点から、比重が6以上の、ジルコニアや、スチールが芯材となっている樹脂被覆体等が好ましい。
次いで、上記の炭化ケイ素粒子分散液を多孔質体からなる隔壁上に塗布、乾燥させ、隔壁上に塗膜を形成する。あるいは、多孔質体からなる隔壁を、炭化ケイ素粒子分散液中に浸漬し、引き上げた後、乾燥させて塗膜を形成してもよい。
分散液の塗布方法としては、バーコート法、スリップキャスト法、ウォッシュコート法、ディップコート法等、分散液を被処理物の表面に塗布する通常のウェットコート法等を用いることができる。
この際、分散液の粘度、隔壁に対する濡れ性、炭化ケイ素粒子の凝集状態等を制御することにより、分散液が隔壁の気孔の内部にあまり入り込まないようにすることで、隔壁上に、炭化ケイ素粒子からなる独立した多孔質膜を形成することができる。なお、分散液が隔壁の気孔の内部に入り込むと、隔壁における気孔径や気孔率の減少を招き、圧力損失が上昇する等の問題が生じるので、好ましくない。
また、乾燥、すなわち水や有機溶媒の除去は、大気雰囲気中、100℃ないし250℃程度の温度で行えばよい。
次いで、この炭化ケイ素粒子の塗膜を形成した多孔質体からなる隔壁を、窒素、アルゴン、ネオン、キセノン等の不活性雰囲気下、あるいは水素や一酸化炭素などの還元性雰囲気下にて、500℃以上かつ1500℃以下、好ましくは600℃以上かつ1100℃以下にて熱処理する。
この熱処理により、塗膜中の分散媒、すなわち残留している水や有機溶媒、あるいは乾燥膜中の高分子モノマーやオリゴマーや、分散剤、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤が散逸するとともに、炭化ケイ素粒子同士が部分的に焼結して、粒子同士が結合したネック部分が形成され、多孔質状に接合された多孔質膜が形成される。
なお、分散液の乾燥は、熱処理工程の前段階として熱処理工程と一体化してもよい。
この熱処理工程は、酸化物層形成工程における熱処理条件を調整することにより、炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層を生成させると共に炭化ケイ素粒子同士を部分的に焼結させることができれば、省略することができる。
(貴金属粒子担持工程と多孔質膜形成工程を同時に行う場合)
上記の貴金属粒子担持工程と多孔質膜形成工程は、類似した作業内容を有するため、両工程を同時並行して行うことができる。
まず、貴金属粒子担持工程においては、貴金属源となる貴金属の塩類を溶解した溶液、あるいは貴金属化合物微粒子を分散させた分散液を作製する工程と、多孔質膜形成工程において分散媒を準備する工程と、が類似する。また、貴金属粒子担持工程においては、溶液や分散液中に炭化ケイ素粒子を浸漬・分散させる工程と、多孔質膜形成工程において炭化ケイ素粒子分散液を作製する工程と、が類似する。
従って、多孔質膜形成工程における炭化ケイ素粒子分散媒中に、貴金属源を溶解ないしは分散させることにより、これらの各工程を併せて単一の工程とすることができる。
なお、この分散媒としては貴金属源が容易に溶解ないしは分散する物質を選択する必要があり、特に水を好適に用いることができる。一方、有機溶媒等を用いる場合には、この有機溶媒等に容易に分散する貴金属源を選択すればよい。
次に、多孔質膜形成工程においては、炭化ケイ素粒子分散液をフィルタ基体を構成する多孔質体からなる隔壁へ塗布(コート)する工程があるが、貴金属粒子担持工程においては相当する工程はない。
次に、貴金属粒子担持工程においては、溶媒である水や分散媒を除去して乾燥する工程と、多孔質膜形成工程において炭化ケイ素粒子分散液を塗布した多孔質体からなる隔壁を乾燥させる工程と、が類似する。
この両工程は乾燥工程であり、実質的に同一であるから、単一の工程とすることができる。乾燥温度は、両工程に共通する範囲、すなわち100℃ないし250℃程度の温度で行えばよい。
次に、貴金属粒子担持工程においては、還元雰囲気中や不活性雰囲気中で熱処理することにより貴金属微粒子を形成する工程と、多孔質膜形成工程において塗布乾燥膜を形成した多孔質体からなる隔壁を還元雰囲気中や不活性雰囲気中で熱処理して部分的に焼結し、多孔質膜を形成する工程と、が類似する。
この両工程は、還元雰囲気中や不活性雰囲気中で熱処理するという点で実質的に同一であるから、単一の工程とすることができる。熱処理温度や時間は、両工程に共通する範囲内から、貴金属粒子の生成条件や多孔質膜の形成条件を考慮して選択すればよい。
以上の工程、すなわち分散媒中に貴金属源を溶解ないしは分散させる工程、当該分散媒中に炭化ケイ素粒子を分散させる工程、得られた炭化ケイ素粒子分散液をフィルタ基体を構成する多孔質体からなる隔壁へ塗布する工程、得られた塗布膜を乾燥させる工程、得られた塗布乾燥膜を熱処理する工程、を行うことにより、多孔質膜形成工程中に貴金属粒子担持工程を組み込み、貴金属粒子担持工程と多孔質膜形成工程とを一体化した同時並行の工程として行うことができる。
「酸化物層形成工程」
貴金属粒子を担持させた炭化ケイ素粒子、あるいは貴金属粒子担持炭化ケイ素粒子から形成された多孔質膜を酸化処理して、貴金属粒子担持炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層を形成させる工程である。
酸化処理としては、上記の貴金属担持炭化ケイ素粒子自体、あるいは貴金属粒子担持炭化ケイ素粒子から形成された多孔質膜、すなわち貴金属担持炭化ケイ素粒子同士が部分的に焼結した層を有する多孔質体からなる隔壁を、大気、酸素等の酸化性雰囲気下、600℃以上かつ1000℃以下、好ましくは650℃以上かつ800℃以下の温度にて、0.5時間以上かつ36時間以下、好ましくは4時間以上かつ12時間以下、酸化処理し、炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層を生成させる。
これにより、炭化ケイ素粒子の表面に貴金属粒子が担持され、かつこの貴金属粒子が酸化物層により覆われた状態となっている炭化ケイ素触媒粒子、あるいは炭化ケイ素粒子の表面に貴金属粒子が担持され、かつこの貴金属粒子が酸化物層により覆われた状態となっている炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜、を形成することができる。すなわち、酸化物層をこの条件で形成するとともに、貴金属粒子の平均一次粒径が50nm以下であれば、貴金属粒子が酸化物層から突出することなく完全に覆われた、高い触媒活性を有す触媒粒子を形成することができる。
以上により、本実施形態の排ガス浄化フィルタであるDPFを作製することができる。
以上説明したように、本実施形態の排ガス浄化フィルタによれば、多孔質体からなる隔壁14の流入セル12A側の内壁面12aに、炭化ケイ素粒子22と貴金属粒子23とを有し、この貴金属粒子23が酸化物層24により覆われた状態で炭化ケイ素粒子21の表面に担持された多孔質膜13を形成している。また、この多孔質膜13は、隔壁14より小さな気孔径を有するとともに、高い気孔率と所定の膜厚を有している。これらの作用効果により、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、以下に示すような高い性能を有している。
まず、この多孔質膜13では、貴金属粒子23が高分散(大きな比表面積)で微細な粒子として存在しており、この貴金属粒子23は微細粒子特有の触媒活性を発現することができる。
ここで、微細な貴金属粒子は、通常であればより低温から粒成長が進行するが、本実施形態の貴金属粒子23は、炭化ケイ素粒子22表面の酸化物層24により覆われている。
この酸化物層24は、上記の「炭化ケイ素酸化物」からなり、貴金属粒子との結合が可能であることから、貴金属粒子のシンタリング(粒成長)を抑制することができる。特に、貴金属粒子との結合を形成しやすい「ケイ素炭化酸化物」が含まれることにより、貴金属粒子のシンタリング抑制効果がより強くなる。
また、微細な貴金属粒子23は、融点が低下することが知られているが、酸化物層24、特にSiOxCyケイ素炭化酸化物との化学的な結合により、貴金属粒子23の融解を抑制することができる。
また、酸化物層24中に含まれる炭化ケイ素酸化物は酸素放出を示すことが知られており、担持された貴金属粒子23が炭化ケイ素酸化物の酸素放出量の増加と酸素放出温度の低温化を促進すると考えられる。したがって、触媒反応の反応速度が活性点の数に依存する低温領域においても、炭化ケイ素酸化物から放出される酸素が貴金属粒子の補助的な作用により、活性点として作用しやすくなると考えられる。
さらに、炭化ケイ素は高温においても安定で、酸化物粒子と比較して粒成長が生じ難い。これにより、炭化ケイ素酸化物の表面積は容易に維持され、酸素放出量の低下が生じない。その結果、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、高温で長時間使用された後においても、その触媒活性を維持することが容易である。
以上により、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、PMの燃焼に対して高い触媒効果を有するとともに、その燃焼触媒効果を長期間にわたって維持することができる。
次に、この多孔質膜13はPM30の捕集性が高く、ほとんどのPM30が多孔質膜13の表面で捕集され、多孔質膜13や隔壁14中の気孔内に入り込むことがない。すなわち、PM30はそのほとんどが表層ろ過により捕集され、深層ろ過で捕集されることがない。従って、PMによる気孔の目詰まりを防ぐことができ、PMの捕集効率を維持しつつ、目詰まりによる圧力損失の上昇を抑えることができる。
また、所定の厚みの多孔質膜13の存在により、多孔質膜13表面における排ガスGの気流が隔壁14の状態によらずほぼ均一になり、PM30が多孔質膜13上に均一に捕集される。従って、圧力損失が低減され、良好なフィルタ特性が維持される。
以上により、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、高いPM捕集性と低い圧力損失を有するとともに、この特性を維持することができる。
次に、本実施形態の排ガス浄化フィルタ中に捕集堆積されたPM30を燃焼除去する再生処理においては、PM30は燃焼触媒効果を有する多孔質膜13上に直接捕集されており、またPM30と多孔質膜13との接触面積も大きいことから、その触媒効果を十分に受けることができる。さらに、PM30が多孔質膜13上に均一に捕集されているので、燃焼ガスが堆積したPMに均一に供給され、PMが均一に燃焼する。これにより、低温かつ短時間でのPM燃焼除去を行うことができる。
特に、その触媒効果が高ければ、ディーゼルエンジンの通常運転時における排ガス温度でのPM燃焼が可能となり、再生処理のための特別な操作が不要となるPM連続燃焼をも行うことが可能となる。
さらに、多孔質膜13や隔壁14中の気孔中に捕集されたPM30は急激な燃焼を生じさせ、排ガス浄化フィルタの部分的な温度の急上昇を生じさせるために、排ガス浄化フィルタの劣化や破損を誘発するが、本実施形態の排ガス浄化フィルタでは、PM30は表層ろ過により捕集され、多孔質膜13や隔壁14中の気孔中には存在しないので、このような問題が発生することもない。
以上により、本実施形態の排ガス浄化フィルタは、PMの高い捕集性を維持しつつ圧力損失の上昇抑制が可能であり、さらにはフィルタを再生する際のPM燃焼温度の低下や燃焼時間の短縮を図れるので、フィルタの耐久性が向上し、さらには連続再生をも可能となる。
従って、本実施形態の排ガス浄化フィルタを装着した自動車においては、高いPM捕集性と低い圧力損失を抑制維持しつつ、PM燃焼の効率性を維持したまま、PMを連続的に燃焼することができる。その結果、排ガス浄化性に優れ、低燃費・低コストで、運転性能にも優れた自動車を提供することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の各実施例及び比較例における炭化ケイ素製ハニカム構造の基材は、隔壁における平均気孔径が12μm、平均気孔率が45%のものを使用した。
[各測定・評価方法]
始めに、実施例及び比較例の排ガス浄化フィルタにおける評価方法を示す。
(1)酸化物層の組成
フィルタ基体における多孔質膜をハニカム基材毎切り出し、X線光電子分析装置(XPS/ESCA)Sigma Probe(VG−Scientific社製)を用いて測定し、多孔質膜を形成するSiC粒子表面の組成分析を行なった。
(2)貴金属粒子の担持状態及び平均一次粒子径
フィルタ基体における多孔質膜をハニカム基材ごと切り出し、電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)JEM−2100F(日本電子社製)により観察することにより、貴金属粒子の担持状態を評価した。
また、貴金属粒子の平均一次粒子径は、同様にして得られた観察画像中から無作為に選択した500個の貴金属粒子の一次粒子径を測定し、その平均値を貴金属粒子の平均一次粒子径とした。
(3)多孔質膜の気孔径および平均気孔率
水銀ポロシメータ装置 Pore Master 60GT(Quantachrome社製)を用いて、フィルタ基体における多孔質膜部分の気孔径分布を測定し、水銀進入容積の50%累積を多孔質膜の平均気孔径とした。また、同装置を用いて多孔質膜の平均気孔率を測定した。
(4)PM燃焼試験
(A)評価試料の作製
フィルタ基体から、ダイヤモンドカッターを用いて4.5mm×4.5mm×7mmの試験片を切り出した。この試験片は、ハニカム体のセル開口部(ガス流路の断面方向)が4.5mm×4.5mm、ハニカム体のセル長(ガス流路長)が7mmであり、これは9(3×3)本のガス流路により構成されるものである。また、9本のガス流路中、中央及び四隅の計5本のガス流路には多孔質膜が存在せず、残余の4本のガス流路を形成する隔壁の表面には多孔質膜が形成されている。
次に、この試験片のガス流路のうち、隔壁の表面に多孔質膜が形成されたガス流路については排ガスの出口側を、多孔質膜が形成されていないガス流路については排ガスの入口側を耐熱シール材で塞ぎ、排ガス浄化フィルタの形態とすることで、評価試料とした。
(B)PM捕集
PM発生源として、ディーゼルオイルを満たしたランプを用いた。炎を安定化させた後、拡散火炎の根元部分よりPMを含む排気を吸引し、この排気を前記評価試料に通過させることで、評価試料にPMを堆積させた。
(C)PM燃焼試験
PMを堆積させた評価試料に、高温の酸素と窒素の混合気体を流し、評価試料の温度を上昇させることで、評価試料中のPMを燃焼させた。
混合気体中の酸素と窒素の各流量は、マスフローメーターを用いて制御した。流量はそれぞれ酸素200ml/分、窒素2800ml/分(共に室温状態)に設定した。この混合気体を775〜850℃に加熱した後、評価試料を通過させた。
評価試料通過後のガスについて、赤外線式ガス濃度測定装置により、COおよびCO2量を連続測定し、PM燃焼に伴うガス分析を行った。また、評価試料の排気側ガス流路中に熱電対を挿入し、評価試料の温度を測定した。
これらの結果より、COおよびCO2濃度が最大になるときの評価試料温度をPM燃焼温度とした。
(5)酸素脱離温度
実施例及び比較例の排ガス浄化フィルタの多孔質膜を形成する、貴金属粒子が担持され酸化物層が形成された炭化ケイ素粒子における酸素吸着/脱離挙動を確認する目的で、酸素脱離温度を測定した。ここでは、粉体試料とするために、ハニカム構造の基材上に多孔質膜を形成するための工程(塗布液の形成および基材上への塗膜形成)を除いては、実施例及び比較例と同様にして作製した各試料について、次の2方法を用いて測定を行った。
(A)水素昇温脱離法(H−TPR)
触媒評価装置 Bell CAT B(日本ベル社製)を用いて、炭化ケイ素粒子からの酸素脱離温度を測定した。始めに、試料を酸素5体積%−ヘリウム(残部)の混合ガス中、800℃にて1時間の前処理を行い、炭化ケイ素粒子に酸素を吸着させた。その後、室温まで降温させた。次いで、この試料を水素5体積%−アルゴン(残部)の混合ガス中、昇温速度10℃/分にて800℃まで昇温し、熱伝導度検出器を用いて発生ガスを分析することにより、炭化ケイ素粒子における水素消費(酸素脱離)温度を測定した。
(B)真空昇温脱離法(TDS)
炭化ケイ素粒子の真空中での酸素脱離挙動を確認する手法として、昇温脱離ガス分析を行った。始めに、試料を酸素10体積%−窒素(残部)の混合ガス中にて1時間の前処理を行い、炭化ケイ素粒子に酸素を吸着させた。ここでは、吸着温度を25℃、600℃の2通りとした。その後、600℃にて前処理した試料については、室温まで降温した。次いで、それぞれの試料を測定容器中に配置し、真空中、昇温速度40℃/分にて1100℃まで昇温させ、四重極形質量分析計を用いて発生する酸素量を測定することで、酸素脱離挙動の温度依存性を確認した。
[実施例1]
平均一次粒子径が0.035μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.01gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、白金塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、白金塩担持炭化ケイ素粒子の含有率が10.0体積%、水の含有率が87.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを秤量した。次いで、上記の白金塩担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて12時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、実施例1の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に白金塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=980℃、保持時間=80分、 雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=730℃、保持時間=360分、雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、炭化ケイ素粒子表面に担持されているジニトロ白金酸塩の還元・分解による白金(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例1のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径3nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が白金微粒子を覆っていた。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.1μm、平均気孔率は75%であった。
また、H−TPRによる酸素脱離温度は335℃、PM燃焼温度は350℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
図4は、実施例1の多孔質膜の走査型電子顕微鏡像(SEM像)であり、図5は、この多孔質膜のFE−TEM像であり、図6は、図5の多孔質膜の構造を説明するための説明図である。
これらの図によれば、貴金属担持炭化ケイ素粒子は、炭化ケイ素粒子の表面に貴金属粒子(白金粒子)が担持され、この貴金属粒子(白金粒子)は、酸化物層(酸化膜)により覆われた状態で炭化ケイ素粒子の表面に担持されていることが分かる。また、FE−TEM像においては、酸化物層(酸化膜)に結晶格子像が認められなかったので、この酸化物層(酸化膜)は非晶質であることが分かった。
[実施例2]
平均一次粒子径が0.030μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して銀が0.1gとなるように硝酸銀水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、銀塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、銀塩担持炭化ケイ素粒子の含有率が10.0体積%、水の含有率が87.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の銀塩担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて12時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、実施例2の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に銀塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=500℃、保持時間=60分、 雰囲気=窒素
第二段階:温度=600℃、保持時間=36時間、雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、炭化ケイ素粒子表面に担持されている硝酸銀の還元・分解による銀(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例2のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径50nmの銀微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が銀微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.30μm、平均気孔率は71%であった。
また、H−TPRによる酸素脱離温度は335℃、PM燃焼温度は300℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[実施例3]
平均一次粒子径が0.015μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.05gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、白金塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、この白金塩担持炭化ケイ素粒子を以下の条件で熱処理を施した。なお、第一段階は乾燥工程に相当する。
第一段階:温度=120℃、保持時間=24時間、雰囲気=空気
第二段階:温度=600℃、保持時間=90分、 雰囲気=アルゴン
第三段階:温度=700℃、保持時間=60分、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子表面に担持されているジニトロ白金酸塩の還元・分解による白金(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子を形成した。
次いで、この酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子の含有率が6.0体積%、水の含有率が93.0体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が1.0体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、実施例3の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材に酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=1000℃、保持時間=30分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=700℃、 保持時間=12時間、雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例3のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径10nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が白金微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.08μm、平均気孔率は89%であった。
また、PM燃焼温度は450℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[実施例4]
平均一次粒子径が0.04μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して銀が0.01gとなるように硝酸銀水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、銀塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、この銀塩担持炭化ケイ素粒子を以下の条件で熱処理を施した。なお、第一段階は乾燥工程に相当する。
第一段階:温度=120℃、保持時間=24時間、雰囲気=空気
第二段階:温度=600℃、保持時間=90分、 雰囲気=アルゴン
第三段階:温度=700℃、保持時間=60分、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子表面に担持されてい硝酸銀の還元・分解による銀(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子を形成した。
次いで、この酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子の含有率が22体積%、水の含有率が75.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、実施例4の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材に酸化物層形成・貴金属担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=900℃、保持時間=120分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=600℃、保持時間=24時間、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例4のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径30nmの銀微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が銀微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.2μm、平均気孔率は62%であった。
また、PM燃焼温度は410℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[実施例5]
平均一次粒子径が0.030μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.1gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、スラリーとした。
得られたスラリーに、平均一次粒子径が0.8μmの炭化ケイ素粒子を加え、スラリー中の炭化ケイ素粒子1gに対する白金量が0.01gとなるように調整した混合液を作製した。
この混合液に、炭化ケイ素粒子の含有率が20.5体積%、水の含有率が77.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように水とゼラチンを加え、実施例5の炭化ケイ素粒子分散液を調整した。初めに、上記混合液に界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、上記割合となるために必要な分量の水を加え、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して、分散液とした。次に、この分散液に、上記割合となるために必要なゼラチンを添加して20分間混合することで、実施例5の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に白金塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=900℃、保持時間=120分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=600℃、保持時間=480分、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、炭化ケイ素粒子表面に担持されているジニトロ白金酸塩の還元・分解による白金(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例5のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径5nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が白金微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は1.0μm、平均気孔率は68%であった。
また、TDSによる酸素脱離温度は721℃、PM燃焼温度は430℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[実施例6]
平均一次粒子径が0.06μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対してパラジウムが0.1gとなるように硝酸パラジウム水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、スラリーとした。
得られたスラリーに、平均一次粒子径が5.0μmの炭化ケイ素粒子を加え、スラリー中の炭化ケイ素粒子1gに対するパラジウム量が0.01gとなるように調整した混合液を作製した。
この混合液に、炭化ケイ素粒子の含有率が35.0体積%、水の含有率が63.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が1.5体積%となるように水とゼラチンを加え、実施例6の炭化ケイ素粒子分散液を調整した。初めに、上記混合液に界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、上記割合となるために必要な分量の水を加え、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して、分散液とした。次に、この分散液に、上記割合となるために必要なゼラチンを添加して20分間混合することで、実施例6の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上にパラジウム塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=850℃、保持時間=240分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=800℃、保持時間=360分、雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、炭化ケイ素粒子表面に担持されている硝酸パラジウムの還元・分解によるパラジウム(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例6のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径20nmのパラジウム微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層がパラジウム微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は2.0μm、平均気孔率は55%であった。
また、H−TPRによる酸素脱離温度は498℃、PM燃焼温度は470℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[実施例7]
平均一次粒子径が0.030μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.1gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、スラリーとした。
得られたスラリーに、平均一次粒子径が10.0μmの炭化ケイ素粒子を加え、スラリー中の炭化ケイ素粒子1gに対する白金量が0.005gとなるように調整した混合液を作製した。
この混合液に、炭化ケイ素粒子の含有率が30.0体積%、水の含有率が67.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように水とゼラチンを加え、実施例7の炭化ケイ素粒子分散液を調整した。初めに、上記混合液に界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、上記割合となるために必要な分の水を加え、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して、分散液とした。次に、この分散液に、上記割合となるために必要なゼラチンを添加して20分間混合することで、実施例7の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に白金塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=1000℃、保持時間=120分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=730℃、 保持時間=60分、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜の形成、炭化ケイ素粒子表面に担持されているジニトロ白金酸塩の還元・分解による白金(貴金属)微粒子の形成、及び炭化ケイ素粒子の表面酸化物層形成を行い、実施例7のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径1nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されており、この酸化物層が白金微粒子を覆っていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は3.0μm、平均気孔率は51%であった。
また、PM燃焼温度は500℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例1]
平均一次粒子径が0.035μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.01gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、白金塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、白金塩担持炭化ケイ素粒子の含有率が10.0体積%、水の含有率が87.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の白金塩担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて12時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、比較例1の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に白金塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施し、比較例1のフィルタ基体を作製した。
第一段階:温度=980℃、保持時間=70分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=450℃、保持時間=30分、雰囲気=空気
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径1nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、酸化物層が形成されておらず、したがって、上記の白金微粒子も酸化物層には覆われていなかった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.05μm、平均気孔率は73%であった。
また、PM燃焼温度は590℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例2]
平均一次粒子径が0.04μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.05gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、白金塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、この白金塩担持炭化ケイ素粒子を以下の条件で熱処理を施し、炭化ケイ素粒子表面に担持されているジニトロ白金酸塩の還元・分解による白金(貴金属)微粒子の形成を行い、貴金属担持炭化ケイ素粒子を形成した。なお、第一段階は乾燥工程に相当する。
第一段階:温度=120℃、 保持時間=24時間、雰囲気=空気
第二段階:温度=1000℃、保持時間=30分、 雰囲気=アルゴン
第三段階:温度=450℃、 保持時間=240分、雰囲気=空気
次いで、この貴金属担持炭化ケイ素粒子の含有率が23.0体積%、水の含有率が76.0体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が1.0体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の貴金属担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、比較例2の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材に貴金属担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施し、比較例2のフィルタ基体を作製した。
第一段階:温度=1000℃、保持時間=30分、 雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=550℃、 保持時間=120分、雰囲気=空気
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径1.5nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、酸化物層が形成されておらず、したがって、上記の白金微粒子も酸化物層には覆われていなかった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.04μm、平均気孔率は68%であった。
また、PM燃焼温度は600℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例3]
平均一次粒子径が0.030μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して白金が0.1gとなるようにジニトロ白金酸塩水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、スラリーとした。
得られたスラリーに、平均一次粒子径が10.0μmの炭化ケイ素粒子を加え、スラリー中の炭化ケイ素粒子1gに対する白金量が0.005gとなるように調整した混合液を作製した。
この混合液に、炭化ケイ素粒子の含有率が30.0体積%、水の含有率が67.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように水とゼラチンを加え、比較例3の炭化ケイ素粒子分散液を調整した。初めに、上記混合液に界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、上記割合となるために必要な分量の水を加え、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して、分散液とした。次に、この分散液に、上記割合となるために必要なゼラチンを添加して20分間混合することで、比較例3の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に白金塩担持炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施し、比較例3のフィルタ基体を作製した。
第一段階:温度=1000℃、保持時間=360分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=500℃、 保持時間=360分、雰囲気=空気
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径3nmの白金微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、酸化物層が形成されておらず、したがって、上記の白金微粒子も酸化物層には覆われていなかった。
また、多孔質膜の平均気孔径は3.0μm、平均気孔率は51%であった。
また、PM燃焼温度は620℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例4]
平均一次粒子径が0.04μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、炭化ケイ素粒子1gに対して銀が0.01gとなるように硝酸銀水溶液を加え、再度分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を30分間行い、その後蒸発乾固し、銀塩担持炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、この銀塩担持炭化ケイ素粒子を以下の条件で熱処理を施し、炭化ケイ素粒子表面に担持されている硝酸銀の還元・分解による銀(貴金属)微粒子の形成を行い、貴金属担持炭化ケイ素粒子を形成した。なお、第一段階は乾燥工程に相当する。
第一段階:温度=120℃、保持時間=24時間、雰囲気=空気
第二段階:温度=650℃、保持時間=90分、 雰囲気=アルゴン
第三段階:温度=450℃、保持時間=60分、 雰囲気=空気
次いで、この貴金属担持炭化ケイ素粒子の含有率が31.5体積%、水の含有率が66.0体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを計量した。次いで、上記の貴金属担持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、比較例4の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材に貴金属担持炭化ケイ素粒子からなる塗布乾燥膜を形成した。
次いで、この塗布乾燥膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施し、比較例4のフィルタ基体を作製した。
第一段階:温度=900℃、保持時間=120分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=520℃、保持時間=90分、 雰囲気=空気
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、平均一次粒子径10nmの銀微粒子が担持されていた。さらに、この炭化ケイ素粒子の表面には、酸化物層が形成されておらず、したがって、上記の銀微粒子も酸化物層には覆われていなかった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.5μm、平均気孔率は58%であった。
また、PM燃焼温度は570℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例5]
平均一次粒子径が0.035μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間施した。
得られたスラリーを蒸発乾固し、表面処理炭化ケイ素粒子を作製した。
次いで、この表面処理炭化ケイ素粒子の含有率が10.0体積%、水の含有率が87.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように、それぞれを秤量した。次いで、上記の表面処理持炭化ケイ素粒子と水とを、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて12時間混合して分散液とした後、得られた分散液に上記のゼラチンを添加して20分間混合し、比較例5の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=980℃、保持時間=80分、 雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=730℃、保持時間=360分、雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜が形成されるとともに、炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層が形成された比較例5のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.1μm、平均気孔率は75%であった。
また、H−TPRによる酸素脱離温度は453℃、PM燃焼温度は500℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
[比較例6]
平均一次粒子径が0.030μmの炭化ケイ素粒子15gを、純水80gに界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムおよび消泡剤を溶解した分散媒に添加し、この状態で、分散媒体としてジルコニアビーズを用いた分散処理を180分間実施した。
得られたスラリーに、平均一次粒子径が0.8μmの炭化ケイ素粒子135gを加えて混合し、混合液を作製した。
この混合液に、炭化ケイ素粒子の含有率が20.5体積%、水の含有率が77.5体積%、ゲル化剤として用いるゼラチンの含有率が2.5体積%となるように水とゼラチンを加え、比較例6の炭化ケイ素粒子分散液を調整した。
ここでは、初めに、上記の混合液に界面活性剤としてポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、上記割合となるために必要な分量の水を加え、鉄芯入り樹脂ボールを用いたボールミルにて220rpmの回転速度にて48時間混合し、分散液とした。次いで、この分散液に、上記割合となるために必要なゼラチンを添加して20分間混合することで、比較例6の炭化ケイ素粒子分散液(塗布液)を得た。
次いで、この炭化ケイ素粒子分散液に炭化ケイ素製ハニカム構造の基材を浸漬したのち引き上げ、100℃にて12時間乾燥させ、この基材上に炭化ケイ素粒子からなる塗膜を形成した。
次いで、この塗膜が形成された基材に、以下の条件で熱処理を施した。
第一段階:温度=900℃、保持時間=120分、雰囲気=アルゴン
第二段階:温度=600℃、保持時間=480分、 雰囲気=空気
この熱処理により、炭化ケイ素粒子の部分焼結による多孔質膜が形成されるとともに、炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層が形成された比較例6のフィルタ基体を作製した。
得られたフィルタ基体は、ハニカム基材上に炭化ケイ素粒子からなる多孔質膜が形成され、この炭化ケイ素粒子の表面には、ケイ素と酸素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<x≦3)と、ケイ素と酸素と炭素をともに含む非晶質の化合物(SiO、ただし、0<y≦3、0<z≦3)とからなる酸化物層が形成されていた。なお、この酸化物層が非晶質であることは、実施例1と同様、FE−TEM像により分かった。
また、多孔質膜の平均気孔径は0.1μm、平均気孔率は68%であった。
また、TDSによる酸素脱離温度は735℃、PM燃焼温度は550℃であった。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
以上の結果によれば、実施例1〜7のフィルタ基体では、炭化ケイ素粒子の表面にナノメートルサイズの貴金属微粒子が担持され、炭化ケイ素粒子の表面には酸化物層が形成されるとともに、この酸化物層が貴金属微粒子を覆っていた。
この実施例1〜7におけるPM燃焼温度は300℃〜500℃と低く、PM燃焼に対する十分な触媒効果が得られていた。また、H−TPRによる酸素脱離温度もPM燃焼温度の値に近く、PM燃焼に対する触媒効果を裏付けていた。なお、実施例2では、H−TPRによる酸素脱離温度がPM燃焼温度と比べて高いが、これはPMに対する銀の酸素供与性が水素と比べて高いことによると考えられる。
一方、比較例1〜4のフィルタ基体では、炭化ケイ素粒子の表面に、実施例と同様にナノメートルサイズの貴金属微粒子が担持されているものの、炭化ケイ素粒子の表面には酸化物層が形成されておらず、したがって、炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属微粒子も、酸化物層で覆われることなくむき出しの状態であった。
これら比較例1〜4におけるPM燃焼温度は570℃〜620℃と実施例に比べて100〜300℃程度高いことから、PM燃焼に対する十分な触媒効果が得られていないことが分かった。
また、比較例5、6のフィルタ基体では、炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層は形成されているが、貴金属微粒子は担持されていなかった。
これら比較例5、6のフィルタ基体におけるPM燃焼温度は500℃〜550℃と比較例1〜4に比べれば低いものの、同等の炭化ケイ素粒子を有しかつ貴金属として白金を有する実施例1、5と比較してPM燃焼温度が120℃〜150℃高く、PM燃焼に対する触媒効果は不十分なものであった。
さらに、TDSによる酸素脱離温度は、実施例5、比較例6ともに、PM燃焼温度やH−TPRによる酸素脱離温度の値と比べて高い値を示していた。これは、TDSによる酸素脱離温度では、酸素が真空中に単に脱離するだけであるのに対し、PM燃焼やH−TPRによる酸素脱離温度では、PM(カーボン)や水素といった酸素受容体(被酸化物)が存在し、これらの物質が脱離酸素と反応し、その結果、酸素の脱離性が容易になったことによると考えられる。
10 排ガス浄化フィルタ
11 フィルタ基体
12 ガス流路
12A 流入セル
12B 流出セル
13 多孔質膜
14 隔壁
21a、21b 貴金属担持炭化ケイ素粒子
22 炭化ケイ素粒子
23 貴金属粒子
24 酸化物層
25 表面被覆炭化ケイ素粒子
30 粒子状物質
α、γ 端面
G 排ガス
C 浄化ガス

Claims (6)

  1. 排ガスに含まれる粒子状物質を多孔質体からなるフィルタ基体を通過させることにより捕集し前記排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、
    前記フィルタ基体は、多孔質体からなる隔壁と、該隔壁により形成されるとともに粒子状物質を含む排ガスの流入側端部が開放された流入側ガス流路と、前記フィルタ基体の前記流入側ガス流路と異なる位置に設けられ、前記隔壁により形成されるとともに排ガスの流出側端部が開放された流出側ガス流路と、を備え、
    前記隔壁の少なくとも前記流入側ガス流路側の表面に、前記隔壁より小さな気孔径を有する多孔質膜が形成され、
    前記多孔質膜は、炭化ケイ素粒子と貴金属微粒子とを含み、前記炭化ケイ素粒子の表面に担持された貴金属粒子は、酸化物層により覆われた状態で担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  2. 前記酸化物層は、非晶質のSiO(ただし、0<x≦3)および非晶質のSiO(ただし、0<y≦3、0<z≦3)の群から選択される1種または2種からなることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化フィルタ。
  3. 前記酸化物層は、さらに、SiO、SiO、SiOC、SiOおよびSiOCの群から選択される1種または2種以上を含む結晶質を含有してなることを特徴とする請求項2記載の排ガス浄化フィルタ。
  4. 前記炭化ケイ素粒子の平均一次粒子径は0.01μm以上かつ10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の排ガス浄化フィルタ。
  5. 前記貴金属粒子の平均一次粒子径は1nm以上かつ50nm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の排ガス浄化フィルタ。
  6. 前記多孔質膜の平均気孔径は0.05μm以上かつ3μm以下であり、かつ平均気孔率は50%以上かつ90%以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の排ガス浄化フィルタ。
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