JP2010270257A - 多孔質膜形成用塗料及び多孔質膜 - Google Patents

多孔質膜形成用塗料及び多孔質膜 Download PDF

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Abstract

【課題】高い捕集効率と低い圧力損失とを両立する多孔質膜を形成可能な多孔質膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】フィルタ基体11にフィルタ基体11の平均気孔径よりも小さな平均気孔径を有する多孔質膜13を形成するための塗料であって、少なくとも貴金属と酸化物とを含有する微粒子と分散媒とを含有しており、貴金属は、Pt、Pd、Rhの群から選択される1種または2種以上の貴金属であり、酸化物微粒子は、Al、Zr、Ti、Ce、La、Fe、Si、Zn、Mg、Mn、Coの群から選択される元素を含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子を含み、少なくとも貴金属と酸化物とを含有する微粒子は、比表面積が1m/g以上125m/g以下、タップかさ密度が0.1g/cm以上2.0g/cm以下、分散媒中の平均二次粒子径が0.1μm以上10μm以下、塗料の粘度は2mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、ハニカム構造を有するフィルタ体に関するものであって、特に自動車のディーゼルエンジン等から排出される排ガスから粒子状物質を除去する際に用いて好適な排ガス浄化フィルタに関し、更に詳しくは、排ガス浄化フィルタを構成するセラミックスからなる多孔質支持体の表面に、粒子状物質(PM)、および一酸化炭素(CO)並びに炭化水素(HC)に対する酸化触媒特性を有する多孔質膜を形成した排ガス浄化フィルタに関するものである。
自動車等のエンジン、特にディーゼルエンジンから排出される排ガス中に含まれる様々な物質は、大気汚染の原因となり、これまでに様々な環境問題を引き起こしている。特に、排ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)は、喘息や花粉症等のアレルギー性疾患を引き起こす要因とも言われている。ディーゼルエンジンの排ガス中には、粒径が10μm以下の微細な粒子状物質が多く含まれており、これら微細な粒子状物質は大気中に長く浮遊することから、健康被害を引き起こしやすいため、排出を抑制するための種々の対策が検討されている。
一般に、自動車用ディーゼルエンジンでは、これらの粒子状物質を捕集し排出を抑制するために排ガス浄化フィルタを設けている。例えば、セラミックス製の目封じタイプのハニカム構造体を有するDPF(Diesel Particulate Filter)が使用されている(例えば特許文献1、2)。
この目封じタイプのハニカム構造体とは、セラミックス製のハニカム構造体のセル(ガス流路)の両端を市松模様に目封じしたものであり、このハニカム構造体の一方の端面からセルに取り入れられた粒子状物質を含む排ガスは、セル間の隔壁中の細孔を通過する際に粒子状物質が捕集されて浄化ガスとなり、この浄化ガスがハニカム構造体の他方の端面から排出される。
DPFでは、特に健康被害を引き起こしやすいサブミクロン径の粒子状物質の捕集特性を向上させることが要求されている。そして、現在用いられているDPFでは、捕集特性が、使用に伴い隔壁に付着堆積する粒子状物質の量に影響を受けることが知られている。
すなわち、従来のDPFでは、隔壁の平均気孔径が5μm〜50μm程度であり、使用当初の隔壁に粒子状物質が堆積していない状態でのDPFにおける捕集効率(粒子状物質の質量基準)は90%に達していない。ところが、DPFの使用を続けると、隔壁の排ガス流入面に粒子状物質が堆積して、徐々に隔壁の排ガス流入面に粒子状物質の層が形成される。すると、この粒子状物質の層に新しい粒子状物質が捕集されることでDPFにおける捕集効率が向上し、捕集効率が100%に近付いていくという現象が観察される。
従来のDPFは、上述のようなメカニズムにより高い捕集効率を実現しているため、粒子状物質の層が形成された後の捕集効率は高いものの、粒子状物質の堆積量が少ない状態での捕集効率は必ずしも満足できるものではない(非特許文献1)。
ここで、粒子状物質の堆積量が少ない状態で捕集効率を高めるためには、DPFにおける隔壁の細孔径を小さくするのが有効であることが知られている。しかしながら、細孔径を小さくすると、DPF中のガス透過性が低下するために圧力損失が上昇してしまい、十分な排ガス流量を得ることができないという課題が発生する。
このように、従来の技術では、粒子状物質の堆積量が少ない状態での高い捕集効率と低い圧力損失を両立することができず、これら両方の性能を満たす技術が求められている。
また、自動車の走行時には、常にエンジンから粒子状物質が排出されるために、DPFのハニカム構造体のセル中には粒子状物質が徐々に蓄積される。この蓄積が進行し粒子状物質の堆積量が過大になると、いわゆる「目詰まり」の状態となり、DPFにおける圧力損失が上昇することとなるため、この粒子状物質を何らかの方法で定期的に除去することで、DPFの圧力損失を低減させる必要がある。
このため、従来のDPFでは、粒子状物質が所定量堆積した時点で排ガス温度を上昇させて粒子状物質を燃焼させる「再生」と称される操作を行い、DPFの圧力損失を低減させている。しかしこの方法では、排ガスの温度を上昇させるため、DPF前段の排ガス中に燃料を噴射させる必要がある。この再生に用いられる燃料は自動車の走行に全く寄与しないため、燃料のエネルギーを有効利用するとともに燃料消費率を向上させるという観点から、再生にかかる時間が短く、再生時に使用する燃料が少なくてすむ、いわゆる再生効率の良い排ガス浄化フィルタが求められていた。
これまで、DPFにおける再生効率を改善させる方法としては、酸化触媒である白金や銀等の貴金属微粒子あるいは酸化セリウム等の酸化物微粒子をDPFの隔壁に担持させ、粒子状物質の酸化を促進させる方法が提案されている(例えば特許文献3、4)。これらの方法を用いると、隔壁に担持させた酸化触媒の作用により、DPF再生時に必要となる温度の低下、ないしは再生のための高温保持時間の短縮ができ、DPF自体の熱劣化も低減することができる。
DPFの隔壁に酸化触媒を担持させる方法としては、酸化触媒の微粒子を含むスラリー中にDPFのハニカム構造体自体を含浸させ、DPFの隔壁に酸化触媒を付着させる方法(例えば特許文献3、4)や、酸化触媒金属化合物を含有する溶液中にDPFのハニカム構造体を含浸した後、DPFの隔壁に付着した成分を還元して金属微粒子化することで、DPFの隔壁に酸化触媒を付着させる方法(例えば特許文献4)等が提案されている。
ここで、使用時の圧力損失が低くかつ微粒子の捕集効率が高いフィルタとしては、多孔質支持体の表面に、該多孔質支持体の気孔よりも小さい径の気孔を有し、厚みの薄い多孔質膜を積層した構成のフィルタが知られている。このようなフィルタとしては、支持体および多孔質膜の材質として多孔質セラミックスを用いたセラミックスフィルタが挙げられる。
このようなセラミックスフィルタでは、多孔質セラミックスからなる支持体の表面に、セラミックス粒子を積層させて積層体を形成し、この積層体を熱処理することにより多孔質膜を形成する。このようなセラミックスフィルタでは、多孔質膜の気孔径が形成材料であるセラミックス粒子の粒子径によって制御可能であり、捕集する粒子の大きさに合わせて多孔質膜の気孔径を制御することにより、粒子状物質の好適な捕集を実現できるとされている。
ところが、多孔質セラミックスからなる支持体の表面に、多孔質セラミックスの気孔よりも小さい気孔を有する多孔質膜の薄膜を形成する場合には、多孔質膜を構成するセラミックス粒子の粒子径を多孔質セラミックスの気孔径よりも小さくする必要があった。そのため、多孔質膜を形成する際に、セラミックス粒子が多孔質セラミックスの気孔内に入り、多孔質薄膜の形成が難しくなるという問題が生じるおそれがあった。
そこで、このような問題を解決するための様々な方法が提案されている。
例えば、セラミックスからなる多孔質支持体を疎水化処理するとともに、粒子径の小さいセラミックス粒子を水系スラリーにして用いることにより、この水系スラリー(すなわちセラミック粒子)が支持体の気孔内へ入らないようにする方法が提案されている(例えば特許文献5)。
他にも、粒子径の小さいセラミックス粒子(一次粒子)を、予め多孔質支持体の気孔径と同等もしくはそれ以上の大きさの二次粒子としておき、この二次粒子を含むスラリーを用いて多孔質膜を形成することで、セラミック粒子が支持体の気孔内へ入らないようにする方法が提案されている。この二次粒子の製造方法としては、セラミックス粒子を予め仮焼する方法(例えば特許文献6)や、スラリーに凝集剤を加えて、セラミックス粒子を凝集させる方法(例えば特許文献7)が提案されている。
更に、多孔質支持体の気孔に除去可能な物質を充填して、この気孔を塞いだ後、多孔質支持体の表面に粒子径の小さいセラミックス粒子を含むスラリーを塗布することで、セラミック粒子が支持体の気孔内へ入らないようにする方法が提案されている。気孔を塞ぐ方法としては、除去可能な物質として可燃性物質を用い、この可燃性物質を後の焼成工程により燃焼除去する方法(例えば特許文献8)が提案されている。
また、水やアルコール等の溶媒を多孔質支持体の気孔に充填した後、多孔質支持体の表面に粒子径の小さいセラミックス微粒子を含むスラリーを塗布し、その後溶媒を除去することで、均質な膜を形成する方法(例えば特許文献9、10)も提案されている。
特開平5−23512号公報 特開平9−77573号公報 特開2005−7259号公報 特開2001−73748号公報 特開2000−218114号公報 特開平11−33322号公報 特開平11−188217号公報 特開平1−274815号公報 特公昭63−66566号公報 特開2000−288324号公報
SAEテクニカルペーパー 980545 米国自動車技術者協会 1998年発行(SAE Technical Paper 980545, Society of Automotive Engineers (1998))
上述したように、従来のDPFでは、隔壁の平均気孔径が5μm〜50μm程度とミクロン径のオーダーであるために、この平均気孔径より径の小さなサブミクロン径の粒子状物質を捕集することは容易ではないという問題点があった。
サブミクロン径の粒子状物質の捕集特性を向上させるためには、DPFにおける隔壁の平均気孔径を縮小することも一つの方法であるが、隔壁の平均気孔径を縮小すると、サブミクロン径の粒子状物質の捕集特性は向上するものの、DPFとしての通気性が低下し、圧力損失が増加するという不具合が生じることとなる。すなわち、従来のDPFでは、特にPM堆積量が少ない状態における高い捕集効率と低い圧力損失(十分な排ガス流量)を両立できておらず、この両方の性能を満たす材料が求められていた。
そこで、DPFにおける隔壁の平均気孔径を5μm以上かつ50μm以下のままとし、この隔壁の表面に平均気孔径が数10nm〜5μmの多孔質膜を形成することが考えられている。この多孔質膜を形成する場合には、上述した従来技術を適用することが考えられる。
しかしながら、このような多孔質膜を有するDPFにおいても、次のような問題点がある。すなわち、サブミクロン径の粒子状物質を好適に捕集するため、例えば、平均気孔径が100nmの多孔質膜を形成するためには、多孔質膜を構成する粒子の一次粒子径を数十nm程度とする必要がある。この粒子径は、DPFの平均気孔径の数百分の1程度であり非常に小さい。そのため、DPFの隔壁に多孔質膜を形成する際に、従来技術をそのまま適用しても、多孔質膜を構成する粒子の一部が隔壁の気孔内に流入することを避けるのが難しい。
更に、DPFの主要部であるハニカム構造体は、それぞれのセルが、例えば一端が封止された断面1mm角、長さ150mmの細長い筒状をなしており、さらに、これらのセルは、隣接するセルの封止端部の位置が互いに逆方向となるように交互に封止端部が設けられ、重ねられてハニカム状とされた特殊な形状を有している。対して、上述の従来技術における隔壁は、板状または直径がセンチメートルのオーダーの筒状である。したがって、DPFの主要部であるハニカム構造体の隔壁に多孔質膜を形成する際に、上記の従来技術を適用しようとしても、ハニカム構造体が有する特殊形状のために、形状が大幅に異なり適用が難しい。また、従来技術が適用可能であったとしても、工程が複雑になり、用いる材料等も工夫する必要があり、製造コストが高くなるおそれがある。
このように、DPFの主要部であるハニカム構造体の隔壁の表面に多孔質膜を形成する技術については、いまだに確立されていないのが現状である。
加えて、DPFの隔壁に酸化触媒微粒子を担持させる場合、従来方法では酸化触媒微粒子が隔壁の表面だけでなく隔壁の気孔内部にまで入り込むため、酸化触媒微粒子は隔壁の全体にわたって存在することになる。一方、このDPFを用いて排ガス中の粒子状物質を捕集する場合、粒子状物質はDPFの隔壁の表面に層状に堆積し、気孔内部にはあまり浸入しない。特に粒子状物質がある程度堆積した後は、この傾向が強くなる(非特許文献1参照)。
すると、気孔内部に存在する酸化触媒微粒子は、DPFの隔壁表面に局在する粒子状物質と接することが無く、粒子状物質の酸化除去にはほとんど寄与しないこととなる。したがって、酸化触媒微粒子を隔壁の表面に選択的に担持させることができれば、固着した酸化触媒のほとんどが粒子状物質の酸化除去に寄与するために、酸化触媒の性能を有効に引き出すことができるが、このような方法はまだ開示されていない。
また更に、DPFには、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質中の可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOF)や炭化水素、一酸化炭素などを酸化浄化する機能が求められる場合がある。例えば、DPFの前段(エンジン側)に設置される酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:DOC)で、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素を酸化しきれない場合に、これらをDPFで酸化することにより、排ガス中に含まれる可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素を減らすことができるからである。これらの酸化には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属を触媒として好適に用いることができることが知られている。
しかし、これらの貴金属触媒は、エンジンの運転条件によりDPFが高温になった場合に、貴金属同士が熱で接合して肥大化するシンタリングと呼ばれる現象により、表面積が減少し、触媒活性が低下してしまうことが一般的である。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、DPF等の排ガス浄化フィルタを構成するハニカム構造型フィルタの隔壁の表面に、粒子状物質の堆積量が少ない状態でも粒子状物質の高い捕集効率が得られ、しかも圧力損失も低い多孔質膜を形成することが可能な多孔質膜形成用塗料を提供することを目的とする。
また、隔壁における酸化触媒の担持方法を改善することにより、再生処理時に隔壁の表面に堆積する粒子状物質の燃焼時間を短縮し、再生処理時の排ガス温度上昇に必要な燃料の使用を低減し、燃料消費率の低下及びフィルタ機能の劣化防止を図ることができるDPF等のハニカム構造型フィルタ用の多孔質膜を提供することを、あわせて目的とする。
更には、この酸化触媒を一酸化炭素や炭化水素に対する酸化触媒性能を有するものとすることで、これらの有害なガスを浄化するハニカム構造型フィルタ用の多孔質膜を提供することをあわせて目的とする。
また更には、高温環境化においても、白金、パラジウム等の貴金属を形成材料とする触媒の触媒活性が低下しないハニカム構造型フィルタを提供することをあわせて目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、DPFのハニカム構造体の隔壁に、少なくとも白金、パラジウム、ロジウム(Rh)からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属およびアルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)のうち1種または2種以上の元素を含む酸化物、またはこれらの元素のうち少なくとも1種の元素を含む複合酸化物とを含有する微粒子を含み、かつ所定の膜厚、平均気孔径及び平均気孔率を有する多孔質膜を設けることにより、粒子状物質の堆積量が少ない状態でも高い捕集効率が得られると同時に圧力損失の上昇を抑制することができ、しかもDPFの再生時においては、従来のDPFに比べて隔壁に堆積する粒子状物質の燃焼時間を短縮することができ、高温が負荷されても一酸化炭素や炭化水素の浄化性能が低下しにくくなることを見出した。
そして、DPFのハニカム構造体の隔壁に多孔質膜を形成する場合に、比表面積、タップかさ密度及び塗料中の平均二次粒子径が制御されるとともに、少なくとも白金、パラジウム、ロジウムの群から選択される1種または2種以上の貴金属およびアルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトのうち1種または2種以上の元素を含む酸化物、または2種以上の前記酸化物の混合物、を形成材料とする酸化物微粒子を含有する微粒子と、分散媒とを含有し、その粘度が2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下に制御された多孔質膜形成用塗料を用いれば、隔壁である多孔質支持体の表面に貴金属と酸化物とを含有する微粒子を成分とする多孔質膜を形成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の多孔質膜形成用塗料は、ハニカム構造型フィルタの多孔質支持体の表面に、この多孔質支持体の平均気孔径よりも小さな平均気孔径を有する多孔質膜を形成するための塗料であって、前記塗料は、少なくとも、白金、パラジウム、ロジウムからなる群から選択される1種または2種以上からなる貴金属と酸化物とを含有する微粒子と、該微粒子を分散する分散媒と、を含有しており、前記微粒子は、比表面積が1m/g以上かつ125m/g以下、タップかさ密度が0.1g/cm以上かつ2.0g/cm以下、前記分散媒中の平均二次粒子径が0.1μm以上かつ10μm以下であり、前記塗料の粘度は2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下であることを特徴とする。
前記酸化物は、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物または複合酸化物であることが望ましい。
前記貴金属を含む貴金属微粒子と、前記酸化物を含む酸化物微粒子とが金属・酸化物複合微粒子を形成しており、該酸化物微粒子に対する貴金属の割合が、0.1質量%以上かつ30質量%以下であることが望ましい。
本発明の多孔質膜は、本発明の多孔質膜形成用塗料を塗布した後に熱処理して得ることを特徴とする。
本発明の多孔質膜形成用塗料によれば、分散媒に分散する微粒子の比表面積、タップかさ密度、平均二次粒子径、塗料の粘度を上述の値に制御することで、排ガス浄化フィルタを構成するハニカム構造型フィルタの多孔質支持体の表面に塗布した際に、粒子が多孔質支持体の気孔内に侵入するのを抑制することができる。したがって、ハニカム構造型フィルタの多孔質支持体の表面に、貴金属と酸化物とを含み、多孔質支持体の平均気孔径より小さな平均気孔径を有し、しかも均質性に優れた多孔質膜を容易に形成することができる。
また、この多孔質膜形成用塗料を多孔質支持体の表面に塗布し熱処理するだけで多孔質膜を形成することができるので、いかなる形状の多孔質支持体であっても、多孔質支持体の形状等の制約を受けることなく、その表面に均質性に優れた多孔質膜を容易に形成することができる。
本発明の多孔質膜によれば、本発明の多孔質膜形成用塗料を塗布して得られた塗布膜を熱処理したので、ハニカム構造型フィルタの多孔質支持体の平均気孔径より小さな微小径の気孔を有し、微小径の微細粒子の捕集特性が向上した多孔質膜を得ることができる。
本発明の多孔質膜形成用塗料が適用可能なDPFを示す一部破断斜視図である。 本発明の多孔質膜形成用塗料が適用可能なDPFの隔壁を示す断面図である。
以下、図1〜図2を参照しながら、本発明のハニカム構造型フィルタについて説明する。以下の説明では、ハニカム構造型フィルタとして、自動車用ディーゼルエンジンに用いられる排ガス浄化フィルタであるDPFを例にとり説明するが、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。なお以下の説明においては、DPFを例とする関係上、ハニカム構造型フィルタを排ガス浄化フィルタと称する。また、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
初めに、本発明の内容をより理解し易くするために、本発明の多孔質膜形成用塗料を用いることで形成が可能となる排ガス浄化フィルタについて説明する。
[排ガス浄化フィルタ(ハニカム構造型フィルタ)]
図1は、本発明のハニカム構造型フィルタの一実施形態であり、排ガス浄化フィルタであるDPFを示す一部破断斜視図、図2は同DPFの隔壁構造を示す断面図であり、図1において符号βで示す面を拡大した図である。
DPF10は、多数の細孔(気孔)を有する円柱状の多孔質セラミックスからなるフィルタ基体11と、このフィルタ基体11内に形成されたガス流路12と、ガス流路12の内壁面に設けられた多孔質膜13と、により概略構成されている。
フィルタ基体11は、炭化ケイ素、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素等の耐熱性の多孔質セラミックスからなるハニカム構造体であり、排ガスGの流れ方向である軸方向に沿い、多孔質セラミックスからなる隔壁14によりハニカム構造とされ、この隔壁14により囲まれた軸方向の中空の領域が多数のセル状のガス流路12とされている。
このフィルタ基体11の軸方向の両端面のうち一方の端面αが、粒子状物質を含む排ガスGが流入する流入面とされ、他方の端面γが、上記の排ガスGから粒子状物質を取り除いた浄化ガスCを排出する排出面とされている。
ここで、本実施形態における「ハニカム構造」とは、フィルタ基体11に複数のガス流路12を互いに平行となるように形成した構造である。図では、ガス流路12の軸方向に直交する断面の形状を四角形として示しているが、これに限らず、多角形、円形、楕円形など様々な断面形状とすることができる。また、フィルタ基体11の外周付近に配置したガス流路12は、断面形状の一部が円弧状となっているが、これはフィルタ基体11の形状に合わせた便宜上のものであり、このような形状とすることで、フィルタ基体11の外周付近にまで隙間無くガス流路12を配置したハニカム構造としている。
この隔壁14の平均気孔径は5μm以上かつ50μm以下であることが好ましい。
平均気孔径が5μmを下回ると、隔壁14自体による圧力損失が大きくなるため好ましくない。逆に平均気孔径が50μmを上回ると、隔壁14の強度が十分でなくなり、隔壁14上に多孔質膜13を形成するのが困難になるため好ましくない。
ガス流路12は、排ガスGの流れ方向(長手方向)から見た場合に、上流側端部と下流側端部とが交互に閉塞された構造、すなわち、排ガスGの流入側である上流側端部が開放された流入セル12Aと、浄化ガスCを排出する側である下流側端部が開放された流出セル12Bとにより構成されている。
この流入セル12Aの内壁面(隔壁14の流入セル12A側表面)12aには、多孔質膜13が形成されている。
なお、この多孔質膜13は、流入セル12Aの内壁面だけでなく、流出セル12Bの内壁面(隔壁14の流出セル12B側表面)にも設けられていて構わない。ただし、以下の記載では、流入セル12Aの内壁面に設けられたものとして説明する。
図2は、DPF10における排ガスの流れを示す説明図である。DPF10は、フィルタ基体11における軸方向の両端面のうち、一方の端面αが、粒子状物質を含む排ガスGが流入する流入面とされ、他方の端面γが、排ガスGから粒子状物質を取り除いた浄化ガスCを排出する排出面とされている。
図に示すように、端面α側から流入した粒子状物質30を含む排ガスGは、流入セル12Aを、端面α側から端面γ側へと流れる過程で、フィルタ基体11の隔壁14が有する細孔を通過する。この際、排ガスG中に含まれる粒子状物質30は、隔壁14、特に隔壁14の流入セル12A側の内壁面12aに形成された多孔質膜13により捕集されて除去され、粒子状物質30が除去された浄化ガスCとなる。浄化ガスCは、流出セル12Bを端面α側から端面γ側へと流れ、端面γ側から排出される。
このように、隔壁14が有する細孔はガス流路12の一部を成すため、隔壁14の平均細孔径は、5μm以上かつ50μm以下であることが好ましい。平均細孔径が5μm未満であると、隔壁14自体による圧力損失が大きくなるので好ましくなく、一方、平均細孔径が50μmを超えると、隔壁14が強度不足となりやすく、隔壁14上に多孔質膜13を形成するのが困難になる等の不具合を生じるので好ましくない。
本実施形態の多孔質膜13を有するDPF10の概略構成は、以上のようになっている。
[多孔質膜]
多孔質膜13は、フィルタ基体11の隔壁14を構成する多孔質セラミックスの細孔内に実質的に入り込むことなく、内壁面12a上にて独立した膜となっている。すなわち、多孔質膜13は、隔壁14の内部への侵入が抑制された状態で流入セル12Aの内壁面12aに形成されており、隔壁14に形成されている気孔を塞ぐことはない。この多孔質膜13は、互いに連通する多数の気孔を有しており、結果として貫通孔を有するフィルタ状の多孔質となっている。粒子状物質は、隔壁14に入り込む前に多孔質膜13によって捕集されることとなる。
また、多孔質膜13は、流入セル12Aの内壁面(隔壁14の流入セル12A側の表面)12aに、本発明の多孔質膜形成用塗料を塗布し、その後熱処理して得られた膜である。本発明の多孔質膜13は、少なくとも白金、パラジウム、ロジウムからなる群から選択される1種または2種以上の貴金属、および、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物、または2種以上の前記酸化物の混合物、を形成材料とする酸化物微粒子を成分として有する。
更に、多孔質膜13は、平均気孔径が0.05μm以上かつ5μm以下、平均気孔率が35%以上かつ90%以下、平均膜厚は、40μm以下となっている。
[多孔質膜の構造]
まず、多孔質膜13の構造について詳細に説明する。多孔質膜13が高い捕集効率と低い圧力損失とを両立するために、多孔質膜13の平均気孔径、平均気孔率、平均膜厚が、所定の範囲内となっていることが求められる。
多孔質膜13が有する多数の気孔の平均気孔径は、0.05μm以上かつ5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上かつ3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上かつ2μm以下である。この気孔径は、隔壁14の気孔径、すなわち従来のDPFの平均気孔径である5μm〜50μmよりも小さくなっている。このため、粒子状物質30は、多孔質膜13によって捕集され、隔壁14には入り込まないため、高い捕集効率を得ることができる。
ここで、多孔質膜13の平均気孔径が0.05μm未満となると、多孔質膜13により発生する圧力損失が高くなり、一方、平均気孔径が5μmを超えると、多孔質膜13と隔壁14の気孔径とに実質的な差がなくなり、粒子状物質30の捕集率が低下するために、いずれも多孔質膜13としては好ましくない。また、平均気孔径が5μmを超える場合、特に粒子状物質の堆積量が少ない状態では、高い捕集効率が得難くなり、DPF10の再生処理を行う場合に粒子状物質の燃焼効率の向上が見られないため好ましくない。
また、多孔質膜13の平均気孔率は、35%以上かつ90%以下であることが好ましく、50%以上かつ90%以下であればより好ましく、60%以上かつ90%以下であればさらに好ましい。多孔質膜の平均気孔率が35%未満では、多孔質膜により発生する圧力損失が大きくなり、一方、平均気孔率が90%を超えると多孔質膜の強度が低下するおそれがあるため好ましくない。
また、多孔質膜13の平均膜厚は、40μm以下であることが好ましい。
多孔質膜13の平均膜厚が40μmを超えると、多孔質膜13により発生する圧力損失が大きくなるからである。なお、多孔質膜13は、粒子状物質30を捕集することができ、かつ実質的に粒子状物質30が隔壁14の細孔に入り込まなければよく、この条件を満たす限り、平均膜厚の下限に特に制限はない。
以上のような構造の多孔質膜13は、平均気孔径が隔壁14の気孔径よりも小さいこと、一方その膜厚はフィルタ基体の一般的な厚みである200〜400μmよりも薄く、かつ気孔率も高いことから、高い捕集効率を備え、また圧力損失が低く十分な排ガス流を得ることができる。
更に、多孔質膜13を設けることにより、粒子状物質30が堆積していく際に隔壁14の細孔内に粒子状物質30が入り込みにくい。このため、多孔質膜が付与されていない場合に比べて、粒子状物質30が隔壁14の細孔を閉塞しにくくなるため、粒子状物質40が堆積した後の圧力損失上昇を抑えることができる。
これらによって、本発明の多孔質膜が形成された排ガス浄化フィルタでは、粒子状物質30の堆積量が少ない状態からの高い捕集効率と低い圧力損失を両立することができる。
また、多孔質膜13の存在により、フィルタの再生時に、粒子状物質30を燃焼させるための酸素が粒子状物質層中に均等に流通するようになる。これにより、粒子状物質30全体に対して確実に酸素が供給され、酸素が供給され難い粒子状物質30が減るため、粒子状物質30の酸化が均等に進み、結果として粒子状物質30の燃焼時間を短縮することができる。
[多孔質膜の構成と材料]
次に、多孔質膜13を構成する材料について詳細に説明する。この多孔質膜13は、白金、パラジウム、ロジウムから構成される群の中から選択される1種又は2種以上の貴金属を有している。これらの貴金属は、粒子状物質の燃焼促進に対して触媒作用があるため、多孔質膜中に上述の貴金属を含有することにより、多孔質膜の効果に加え、触媒作用の効果も得ることが可能となる。例えば、白金は排ガス中に含まれる一酸化窒素を二酸化窒素に酸化し、二酸化窒素が粒子状物質を強力に酸化する作用を有するため、粒子状物質の酸化触媒として広く用いられている。
また、上述の貴金属は、粒子状物質に付着した可溶性有機成分や炭化水素あるいは一酸化炭素を酸化し、二酸化炭素と水とに分解する酸化分解反応に対する触媒作用も有する。そのため、上述の貴金属を有する多孔質膜は、粒子状物質の良好な捕集性能、および粒子状物質の燃焼触媒の効果に加え、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の燃焼を促進する効果も得ることができる。
粒子状物質や可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の個々の酸化反応は、貴金属の種類に起因する触媒反応の速度が異なるため、浄化すべき排ガス組成に応じて多孔質膜中に含有する貴金属の種類や量を適宜選択すると良い。
また、これら貴金属は単体で存在するだけでなく、2種以上の貴金属からなる合金でも良い。合金化させることで、例えば、熱によるシンタリングを抑制し、高い比表面積を維持することが可能であり、触媒活性を維持することができるといった効果を得ることができる。また、これら貴金属は、価数が0価の金属状態のものだけではなく、貴金属の表面が酸化されたもの等、価数が0価以外のものを含んでいても構わない。上述の貴金属の中でも、白金、パラジウムのいずれか一方または両方を用いることがより好ましい。
一方、多孔質膜13は、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子を含有している。これらの酸化物を構成する金属の中でも、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄がより好ましく、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、ランタンがさらに好ましい。
ここで、本発明の酸化物微粒子とは、1種の金属イオンを含む酸化物であっても良く、2種以上の金属イオンを含む複合酸化物であっても良い。
ここで、微粒子の成分を前記の酸化物または複合酸化物とした理由は、この多孔質膜の耐熱性を十分に確保することができるからである。例えば、DPF等のセラミックフィルタの場合、排ガスの温度が1000℃以上にまで上昇することがあるので、多孔質膜の材料に対しても1000℃以上までの耐熱性が必要になる。多孔質膜をこれらの酸化物微粒子で構成することにより、多孔質膜及び多孔質膜付き排ガス浄化フィルタの耐熱性を十分なものとすることができる。
また、これらの酸化物または複合酸化物は化学的安定性にも優れているため、多孔質膜をこれらの酸化物または複合酸化物の微粒子で構成することにより、多孔質膜及び多孔質膜付き排ガス浄化フィルタの化学的安定性を十分なものとすることができる。
このような耐熱性や化学的安定性に特に優れているものとしては、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムを挙げることができる。
[貴金属の保持方法]
多孔質膜13において上述の貴金属が有効な触媒作用を示すためには、貴金属の表面積が大きく、かつ被酸化物質と有効に接触することが好ましい。すなわち、貴金属を含む貴金属微粒子が極微粒子の状態で、酸化物微粒子または複合酸化物微粒子の表面に分散していることが好ましい。一方、貴金属微粒子がシンタリングにより凝集、焼結されて粗大粒子化すると触媒活性が低下することが知られている。そこで、貴金属極微粒子が酸化物微粒子または複合酸化物微粒子と一体化した、金属・酸化物複合微粒子となっていることが好ましい。これらの貴金属極微粒子が酸化物微粒子表面に固定化されることにより、貴金属のシンタリングを抑制し、触媒作用の低下を抑制することができる。特に酸化セリウムは、表面に一体化(担持)された貴金属微粒子が酸化物表面を移動することを抑制し、貴金属のシンタリングを抑えるので好ましい。
この点から、貴金属微粒子と酸化物微粒子または複合酸化物微粒子を単純に混合して多孔質膜13を形成することは好ましくない。
なお、酸化物微粒子または複合酸化物微粒子の粒子径を、貴金属微粒子と同程度まで小さくすることも可能であるが、このような金属・酸化物複合微粒子の場合も、貴金属の極微粒子が酸化物微粒子または複合酸化物微粒子と一体化することで貴金属の移動が抑制されるから、同様にシンタリング抑制効果を得ることができる。
多孔質膜を構成する酸化物微粒子への貴金属微粒子の一体化方法としては、予め貴金属が微粒子と酸化物微粒子とを一体化した金属・酸化物複合微粒子を作製した後、金属・酸化物複合微粒子が分散した塗布液をフィルタ基体に塗布することで、金属・酸化物複合微粒子からなる多孔質膜を形成してもよい。または、酸化物微粒子が分散した塗布液をフィルタ基体に塗布し、酸化物微粒子からなる多孔質膜を形成した後に、貴金属微粒子が分散した塗布液、または貴金属の塩が溶解した塗布液を酸化物多孔質膜付きフィルタ基体に塗布し、貴金属微粒子と酸化物微粒子が一体化した多孔質膜を形成してもよい。本実施形態では、予め貴金属微粒子と酸化物微粒子とを一体化させた金属・酸化物複合微粒子を作製した後、金属・酸化物複合微粒子からなる多孔質膜を形成している。
ここで、金属・酸化物複合微粒子における貴金属が、良好に酸化触媒活性を発現するためには、金属・酸化物複合微粒子中の酸化物に対する貴金属の比率が、所定の範囲内となっていることが求められる。
金属・酸化物複合微粒子中の酸化物に対する貴金属の比率、すなわち酸化物100質量部に対する貴金属の割合は、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下が最も好ましい。
酸化物に対する貴金属の割合が0.1質量部を下回ると、粒子状物質、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の酸化触媒性能を持つ貴金属の微粒子中の量が少なくなってしまい、貴金属が粒子状物質の燃焼性向上に実質的に寄与しなくなってしまうため好ましくない。一方、酸化物に対する貴金属の割合が30質量部を上回ると、貴金属同士の融着が進みやすくなり、貴金属と酸化物を含有する微粒子の粒子状物質、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の酸化触媒性能が劣化しやすくなったりするため好ましくない。
以上のような構成の多孔質膜13は、以下のような効果を有する。
まず、多孔質膜13は、形成材料として白金、パラジウム、ロジウムの群から選択される1種または2種以上の貴金属を含有しており、これら多孔質膜13の成分である貴金属は酸化触媒特性、すなわち粒子状物質30の燃焼触媒作用を有している。したがって、貴金属を含有することにより、排ガス浄化フィルタの再生処理時に、その隔壁に堆積する粒子状物質の燃焼時間を短縮して、再生処理に排ガス温度上昇に必要な燃料の使用を低減して燃料消費率の低下を図ることができ、さらには排ガス浄化フィルタ自体の劣化を抑制することができる。
また、多孔質膜13が含有する貴金属は、一酸化炭素、炭化水素を酸化し二酸化炭素、水に変換する反応に対する触媒作用も有しているため、これらの燃焼を促進する効果も得ることができる。
次に、本発明の貴金属は、酸化物微粒子に担持され多孔質膜13の形をとって隔壁14の表面に存在している。本発明における多孔質膜13は、平均気孔径が0.05μm以上かつ5μm以下であり、粒子状物質30は上述のように主に多孔質膜13により捕集される。従って、粒子状物質30は、多孔質膜13が有する貴金属を近接した状態で捕集される。このため、本発明の構造であれば、貴金属の触媒性能をより迅速に発揮できる。
更に、多孔質膜13は支持体11を構成する多孔質セラミックスの細孔内に実質的に入り込んでいないので、そのほとんど全てが粒子状物質30の酸化除去に寄与することができる。すなわち、貴金属がフィルタの気孔内部に入り込み、その結果として、貴金属が粒子状物質30の酸化除去にほとんど寄与しなくなる(無駄となる)ということがない。
そして、多孔質膜13が、酸化物微粒子を含有することで、フィルタ基体の隔壁に貴金属を直接固着させる場合と比べ、フィルタに高温がかかった時の貴金属のシンタリングに起因した、多孔質膜及び排ガス浄化フィルタの気孔径分布変化や酸化触媒成分の劣化が抑制される。これは、酸化物、特に酸化セリウムは担持した貴金属に移動抑制効果を有すること、また多孔質膜中に多数の気孔を有することで貴金属担持酸化物微粒子同士の間隙が多いためと考えられ、この結果として、高温での粒子状物質30の燃焼特性の変化を抑制することができる。
これらの各効果を総合することにより、本発明の排ガス浄化フィルタ(ハニカム構造型フィルタ)においては、粒子状物質30の捕集特性に優れ圧力損失が低減されるほか、多孔質膜による酸素の供給均等化作用や貴金属の燃焼触媒作用による再生時の粒子状物質30の燃焼促進、燃焼温度の低下、燃焼特性の変化の抑制により、再生処理時間がさらに短縮されることにより、再生処理時に必要な燃料の使用量をより低減させることや、排ガス浄化フィルタ自体の劣化をより抑制することができる。更に、貴金属を含有する排ガス浄化フィルタの熱による粒子状物質、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の燃焼性能の劣化を抑制して、フィルタ自体の性能を持続させることができる。
[多孔質膜形成用塗料]
次に、上述したDPF10が有する多孔質膜13、および多孔質膜13を形成するための多孔質膜用塗料について説明する。ここでは、まず多孔質膜形成用塗料について説明した後に、当該塗料を用いて形成する多孔質膜13について説明する。
本実施形態の多孔質膜形成用塗料は、少なくとも白金、パラジウム、ロジウムからなる群から選択される1種または2種以上からなる貴金属と酸化物とを含有する微粒子と、分散媒とを含有しており、前記微粒子は、比表面積が1m/g以上かつ125m/g以下、タップかさ密度が0.1g/cm以上かつ2.0g/cm以下、前記分散媒中の平均二次粒子径が0.1μm以上かつ10μm以下であり、前記塗料の粘度は2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下である。
ここで、貴金属と酸化物とを含有する微粒子を塗料として用いて良好な多孔質膜を得るためには、貴金属と酸化物とを含有する微粒子の比表面積、およびタップかさ密度が、所定の範囲内となっていることが求められる。
ここで「タップかさ密度」とは、日本工業規格のJISR1628−1997「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定されている「タップかさ密度」のことである。また、上記の規格には、タップかさ密度の測定方法についても規定されている。
この微粒子のタップかさ密度が真密度(真比重)より小さくなる原因は、微粒子間に空隙が生じるからである。すなわち、タップかさ密度(ρt)が小さくなるほど、微粒子間の空隙率が大きくなることを示している。
ここで、タップかさ密度を決定付ける主要因は、微粒子の一次粒子径と粒子形状である。粒子形状に差異が無い場合には、微粒子の平均一次粒子径が小さいほどタップかさ密度は小さくなり、得られる多孔質膜の気孔率は増大するが、気孔径は小さくなる。また、微粒子の一次粒子径が等しい場合には、微粒子の形状異方性が高いほどタップかさ密度は小さくなり、得られる多孔質膜の気孔率が増大し気孔径も大きくなる。
したがって、本実施形態の多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子の一次粒子径とタップかさ密度とを規定することにより、本実施形態の塗料を用いて形成される多孔質膜の気孔径と気孔率とを制御することが可能となる。
以上の点を考慮すると、この微粒子のタップかさ密度は、0.1g/cm以上かつ2.0g/cm以下が好ましく、より好ましくは0.3g/cm以上かつ1.8g/cm以下、さらに好ましくは0.5g/cm以上かつ1.5g/cm以下である。
また、多孔質膜の気孔径と気孔率とを所望の値とするためには、タップかさ密度と併せて多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子の比表面積を調整することが望ましく、その値は1m/g以上かつ125m/g以下が好ましく、より好ましくは3m/g以上かつ100m/g以下、さらに好ましくは3m/g以上かつ80m/g以下である。
これは、多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子の比表面積とタップかさ密度とを上記の範囲に限定すれば、本発明の目的とする平均気孔径が0.05μm以上かつ5μm以下、気孔率が35%以上かつ90%以下の多孔質膜を形成することができることを示している。また、必要に応じて、上記の範囲内で比表面積とタップかさ密度が異なる複数種の微粒子を混合して用いることにより、多孔質膜の気孔径を所望の値に制御することができる。
すなわち、多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子の比表面積が125m/gを上回るか、またはタップかさ密度が0.1g/cmを下回ると、粒子径が過小となり、多孔質膜を得難くなったり、多孔質の平均気孔径が微粒子の形状に因らず小さくなるため平均気孔径を0.05μm以上に保つことが難しくなり、多孔質膜により生じる圧力損失が大きくなるので好ましくない。また、このような粒子は量産性良く生産するのが難しいため、好ましくない。
一方、比表面積が1m/gを下回るか、またはタップかさ密度が2.0g/cmを超えると、多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子の粒子径が過大となるために、平均気孔径が5μm以下の多孔質膜を得にくくなるほか、さらに塗料の安定性が低下して良好な塗料を得るのが難しくなるので、好ましくない。
多孔質膜形成用塗料に含まれる貴金属としては、白金、パラジウム、ロジウムから構成される群の中から選択される1種または2種以上の貴金属を用いる。これらの中でも、白金、パラジウムのうちいずれか一方または両方を用いることがより好ましい。
また、多孔質膜形成用塗料に含まれる酸化物としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子を含有している微粒子を用いる。これらの酸化物を構成する金属の中でも、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄がより好ましく、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、ランタンがさらに好ましい。特に酸化セリウムは、表面に一体化(担持)された貴金属微粒子が酸化物表面を移動することを抑制し、貴金属のシンタリングを抑えるので好ましい。
この多孔質膜形成用塗料に含まれる微粒子中の、酸化物に対する貴金属の比率は0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が最も好ましい。酸化物に対する貴金属の質量比が0.1%を下回ると、粒子状物質、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の酸化触媒性能を持つ貴金属の微粒子中の量が少なくなってしまい、貴金属が粒子状物質の燃焼性向上に実質的に寄与しなくなってしまうため好ましくない。一方、酸化物に対する貴金属の質量比が30%を上回ると、貴金属微粒子同士の融着が進みやすくなり、貴金属と酸化物を含有する微粒子の粒子状物質、可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の酸化触媒性能が劣化しやすくなったりするため好ましくない。
このような微粒子を分散媒中に分散させて、多孔質膜形成用塗料とする。この分散工程は、湿式法によることが好ましい。また、この湿式法で用いられる分散機としては、開放型、密閉型のいずれも使用可能であり、例えば、ボールミル、攪拌ミル、ジェットミル、振動ミル、アトライター、高速ミル、ハンマーミル、等が好適に用いられる。ボールミルとしては、転動ミル、振動ミル、遊星ミル等が挙げられ、また、攪拌ミルとしては、塔式ミル、攪拌槽型ミル、流通管式ミル、管状ミル等が挙げられる。
この分散媒としては、水または有機溶媒が好適に用いられる。その他、必要に応じて、高分子モノマーやオリゴマーの単体もしくはこれらの混合物も用いることができる。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
また、上記の高分子モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。また、上記のオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
これらの分散媒のうち、塗料用として好ましいものは、水、アルコール類、ケトン類であり、これらの中でも、水、アルコール類がより好ましく、水が最も好ましい。
この塗料では、微粒子と分散媒との親和性を高めるために、微粒子の表面改質を行っても良い。この微粒子は酸化物を成分とするから、表面改質剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、システアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、アミノエタンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、用いる微粒子の表面に吸着する官能基を有し、かつ分散媒と親和性を有する末端基を有する表面改質剤であれば良い。
またここで、貴金属と酸化物とを含有する微粒子を良好な塗料とするためには、貴金属と酸化物とを含有する微粒子の塗料中の平均二次粒子径、および塗料の粘度が、所定の範囲内となっていることが求められる。
まず、塗料中の微粒子の平均二次粒子径は、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ8μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上かつ6μm以下である。
塗料中の微粒子の平均二次粒子径を上記の範囲に限定した理由は、塗料中の微粒子の平均二次粒子径が0.1μmを下回ると、この塗料を5μm以上かつ50μm以下の平均気孔径を有する排ガス浄化フィルタの多孔質支持体の表面に塗布した場合に、この塗料が多孔質支持体の内部に浸入し易くなり、多孔質支持体の表面に多孔質膜を形成することが難くなるので好ましくないからである。また、微粒子の平均二次粒子径が10μmを超えると、塗料の分散安定性を確保するのが困難になり、均質な多孔質膜を得難くなるので好ましくないからである。
次に、塗料の粘度は、2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは2mPa・s以上かつ500mPa・s以下、さらに好ましくは2mPa・s以上かつ300mPa・s以下である。
塗料の粘度を上記の範囲に限定した理由は、粘度が2mPa・sを下回ると、この塗料を、5μm以上かつ50μm以下の平均気孔径を有する排ガス浄化フィルタの多孔質支持体の表面に塗布した場合に、この塗料が多孔質支持体の気孔内に浸入し易くなり、多孔質支持体の表面に多孔質膜を形成することが難しくなるので好ましくないからである。また、粘度が1000mPa・sを超えると、排ガス浄化フィルタのセルの内部に塗料を十分に浸透させることができなくなったり、排ガス浄化フィルタのセル中の余分な塗料を除去するのが困難になる等のため、所望の多孔質膜が形成されなかったり、均一な厚みの多孔質膜が形成し難くなったりするので好ましくないからである。
この塗料中の微粒子の含有率は、塗料の粘度、塗料中の微粒子の平均二次粒子径が本発明の範囲内となるように適宜選択することができるが、好ましくは2質量%以上かつ60質量以下、より好ましくは3質量%以上かつ50質量以下、さらに好ましくは5質量%以上かつ40質量以下である。
ここで、塗料中の微粒子の含有率が2質量%を下回ると、塗料の粘度が2mPa・sを下回り易くなり、所望の膜厚を得るために塗工回数を増やす必要が生じる等により、生産性が劣る虞があるので好ましくない。また、微粒子の含有率が60質量%を超えると、塗料の分散安定性を確保するのが困難になり、均一な多孔質膜を得難くなるので好ましくない。
この塗料は、微粒子と、例えばDPFの隔壁等の多孔質支持体との間にバインダー機能を持たせる等のために、親水性あるいは疎水性の高分子等を適宜含有してもよい。この高分子等は、上記の分散媒に溶解し、かつ塗料中の微粒子の平均二次粒子径、塗料の粘度が所望の値になる範囲で適宜選択することができる。
ここで、水を分散媒とした場合、親水性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸ポリビニルビロリドン、ポリアリルアミン等の合成高分子;セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプン、キトサン、ペクチン、アガロース、カラギーナン、キチン、マンナン等の多糖類及び多糖類由来の物質等の天然高分子;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン等のタンパク質及びタンパク質由来の物質等を用いることができる。
また、これら合成高分子、多糖類、タンパク質等を由来とするゲル、ゾル等の物質を用いることもできる。
なお、この塗料における上記の微粒子の質量に対する親水性高分子の質量の比(高分子の質量/微粒子の質量)は、塗料中の微粒子の平均二次粒子径及び塗料の粘度が所望の値になる範囲で適宜選択することができるが、1以下の範囲が好ましく、0.8以下の範囲がより好ましく、0.5以下の範囲が最も好ましい。
用いる親水性高分子は、最終的に熱処理によって焼失し、多孔質膜には残存しない成分であるから、上記の比が1を超えると、高分子の含有率が高すぎてしまい、コストの上昇を招くことになり好ましくないためである。なお、親水性高分子は必ずしも用いる必要はないため、範囲の下限値は0となる。
この塗料の分散安定性を確保したり、あるいは塗布性を向上させたりするために、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を適宜添加してもよい。これらは、塗料中の微粒子の平均二次粒子径及び塗料の粘度が所望の範囲になるように適宜選択することができる。これら界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等の添加量に特に制限はなく、塗料の粘度及び塗料中の微粒子の平均二次粒子径が本発明の範囲内となるように、添加する目的に応じて加えればよい。
このように、貴金属と酸化物とを含有する微粒子を分散媒中に分散させ、必要に応じ、親水性あるいは疎水性の高分子、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を加えて混合し、多孔質膜形成用塗料とする。
以上のような構成の多孔質膜形成用塗料によれば、本発明の目的とする排ガス浄化フィルタに好適に用いられる、貴金属と酸化物とを含有する微粒子を成分とし、平均気孔径が0.05μm以上かつ5μm以下、気孔率が35%以上かつ90%以下であり、均質性に優れた多孔質膜を容易に形成することができる。この多孔質膜形成用塗料は、塗布するだけで塗布膜を形成することができるので、対象物の形状等の制約を受けることなく、その表面に均質性に優れた多孔質膜を容易に形成することができる。
なお、既に述べたように、多孔質膜13において上述の貴金属が有効な触媒作用を示すためには、貴金属を含む貴金属微粒子が極微粒子の状態で、酸化物微粒子または複合酸化物微粒子の表面に分散し、かつ一体化した、金属・酸化物複合微粒子となっていることが好ましい。このような金属・酸化物複合微粒子による多孔質膜13を形成するためには、塗料中の微粒子があらかじめ金属・酸化物複合微粒子となっていることが好ましい。
すなわち、塗料中の貴金属と酸化物とを含有する微粒子としては、貴金属微粒子と酸化物微粒子が単に混合された混合粒子や、あるいは貴金属微粒子と酸化物微粒子は一体化しているが貴金属微粒子が粗大なものではなく、貴金属極微粒子が酸化物微粒子表面に一体化して固定化された金属・酸化物複合微粒子であることが好適である。
この金属・酸化物複合微粒子を作製する方法としては、含浸法、共沈法、沈着法、混練法、イオン交換法、溶融法等の中から適宜選択される方法により貴金属および酸化物を含有する中間体を調製し、その後必要に応じ水洗等の洗浄をした後、乾燥や焼成をするといった方法を例示することができる。
[多孔質膜の製造方法]
次いで、上記の多孔質膜形成用塗料を用いた多孔質膜の製造方法について説明する。本実施形態の多孔質膜は、上記の多孔質膜形成用塗料を多孔質支持体の表面に塗布し熱処理することにより、得ることができる。
例えばDPF10においては、ガス流路12のうち、排気上流側端部が開放された流入セル12Aの内壁面(隔壁14の流入セル12A側表面)12aの表面に、上記の多孔質膜形成用塗料を塗布して、微粒子等の固形成分の他溶媒等の液体成分も多く含む塗布膜を形成し、得られた塗布膜を乾燥後、熱処理して多孔質膜13を形成することができる。
塗布方法については、多孔質支持体の形状や材質に合わせて適宜選択すればよく、特に制限はないが、ウォッシュコート、ディップコート等、通常のウエットコート法を用いることができる。また、塗布した後に、圧縮空気等を用いて、所望の膜厚を得るのに必要な量以上の余分な塗布液を除去する等の工程を行ってもよい。
なお、塗布時においては、この多孔質支持体は乾燥した状態でもよいが、この多孔質支持体を溶媒に浸漬し、この多孔質支持体の気孔内の空気を予め溶媒で置換した状態としたものが好ましい。このようにする理由は、多孔質支持体の気孔内に残留している空気が、塗布工程中あるいはその後に多孔質支持体から気泡となって放出され、多孔質膜が部分的に形成されなくなるといった事態を抑制し、均一な多孔質膜が得られる効果があるからである。
このように、塗布膜や多孔質支持体に溶媒が多く含まれているので、熱処理前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥条件は溶媒の種類や使用量によるため一概には規定できないが、例えば水の場合では50℃以上かつ200℃以下にて15分以上かつ10時間以下程度であることが好ましい。
なおこの乾燥工程は、次に述べる熱処理工程と併せて行なってもよい。例えば、乾燥工程終了後そのまま昇温させて熱処理工程を行なってもよい。また、熱処理工程における昇 温条件を調整し、熱処理工程中の昇温段階と乾燥工程とを兼ねさせることで、実質的に乾 燥工程を省略することもできる。
この塗布膜には、分散剤の他、必要に応じて上記の高分子、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等が添加されているので、これらを除去し、かつ塗布膜に微細孔構造を形成する等のために熱処理を行う。
熱処理温度は、200℃以上かつ2000℃以下が好ましく、より好ましくは300℃以上かつ1700℃以下である。また、熱処理時間は、0.25時間以上かつ10時間以下が好ましく、より好ましくは0.5時間以上かつ5時間以下である。この熱処理の際の雰囲気は、特に限定されず、大気等の酸化性雰囲気、窒素、アルゴン、ネオン、キセノン等の不活性雰囲気、水素、一酸化炭素等の還元性雰囲気、等の雰囲気中にて行うことができる。
なお、形成される多孔質膜の特性が十分得られる以上に熱処理温度を高くしたり熱処理時間を延ばすことは、塗布膜中に含まれる貴金属微粒子のシンタリングを進めることになるため好ましくないので、熱処理温度、時間、雰囲気の選定には十分注意する必要がある。
そして、本実施形態の多孔質膜を、平均気孔径が5μm以上かつ50μm以下の多孔質セラミックスからなる多孔質支持体の表面に形成することにより、上述した排ガス浄化フィルタを得ることができる。
また、本実施形態の多孔質膜形成用塗料は、粘度が2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下、含まれる微粒子の平均二次粒子径が0.1μm以上かつ10μm以下であるから、この多孔質膜形成用塗料を多孔質支持体の表面に直接塗布した場合においても、塗料が支持体の気孔内に実質的に浸入することなく、多孔質支持体の表面に均質な塗布膜を形成することができる。
以上のようにして、本実施形態の多孔質膜形成用塗料を用いて多孔質支持体の表面に直接塗布膜を形成し、この塗布膜を熱処理することにより、上述した多孔質膜を備えた排ガス浄化フィルタ(ハニカム構造型フィルタ)を得ることができる。
以上のようにして製造される多孔質膜においては、既に述べたように、従来の排ガス浄化フィルタと比べて粒子状物質の捕集特性に優れ、再生時の粒子状物質の燃焼特性、および可溶性有機成分、一酸化炭素、炭化水素の酸化浄化性能に優れており非常に優れた特性を有するものである。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
[CZ(CeO−ZrO)/Pt複合微粒子の作製]
まず、セリウムとジルコニウムの組成比が1:1である複合酸化物(Ce0.5Zr0.5)微粒子(以下、CZ微粒子と記載する)100gを、白金換算で濃度1質量%のジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液300gに含浸させた。その後、CZ微粒子と硝酸溶液とを150℃に加熱して蒸発乾固させ、更に大気中において500℃で2時間焼成を行い、CZ/Pt複合微粒子−1を調製した。
このCZ/Pt複合微粒子−1の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.1g/cmであった。
なお、ここでCe0.5Zr0.5と示すものは、あくまで微粒子全体としてのセリウムとジルコニウムの組成比が1:1の酸化物ということであって、セリウムとジルコニウムが1:1の組成比で完全に固溶した複合酸化物であるCeZrOだけではなく、セリウムとジルコニウムの組成比が異なる複合酸化物や、酸化セリウム単体を含有するものも含まれている場合がある。
[多孔質膜形成用塗料の作製]
CZ/Pt複合微粒子−1を90g、ポリカルボン酸系分散剤9g、水201gをボールミルで2時間混合し、固形分が30質量%のCZ/Pt分散液Aを得た。作成したCZ/Pt分散液A167gに、メチルセルロースA(25℃における2%水溶液の粘度が5mPa・s)を15質量%含む水溶液67g、水16gを加えてマグネチックスターラーを用いて1時間攪拌し、水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例1の塗料Aを得た。
なお、以後の実施例、比較例においては、原則として「分散液」とは分散媒(溶媒)中に貴金属と酸化物部粒子または複合酸化物微粒子を分散させただけのもの、「塗料」とはこの分散液に液の安定性や塗布性を考慮して各種の添加物を加えたものを示す。ただし、分散液自体が安定で塗布性に優れていれば、分散液をそのまま塗料とする場合がある。
[塗料の平均二次粒子径測定]
塗料Aの25℃における粘度を、B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。また、塗料A中のCZ/Pt複合微粒子の平均二次粒子径を、測定装置HPPS(Malvern Instruments社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
[評価1:塗料を用いた多孔質膜の作製]
上記の塗料A中に、隔壁が多孔質支持体となっている炭化ケイ素(SiC)製ハニカム構造体(DPF、平均気孔径:10μm、平均気孔率:42%)を浸漬させた後に引き上げるディップコートを3回繰り返し行い、ハニカム構造体の隔壁表面にCZ/Pt複合微粒子からなる塗布膜を形成した。なお、ハニカム構造体は予め純水に浸漬し、気孔内に水を充填保持させておいた。
次いで、ディップコート後のハニカム構造体を150℃で1時間乾燥させ、さらに大気中において500℃で2時間熱処理し、ハニカム構造体の隔壁表面にCZ/Pt複合微粒子からなる多孔質膜を形成した。
[評価2:作製した多孔質膜の評価]
(2−1)電子顕微鏡による外観観察
上述のように多孔質膜を形成したハニカム構造体を、ハニカム構造体の隔壁毎に小さく破断し、多孔質膜の表面及び多孔質膜が形成された隔壁の断面を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−4000(日立計測器サービス(株)社製)を用いて観察した。
(2−2)多孔質膜の平均気孔径及び気孔率の測定
上述のように形成した多孔質膜の平均気孔径及び気孔率を、水銀ポロシメーター AutoPoreIV 9505(島津製作所社製)を用いて、水銀圧入法により測定した。なお、この測定結果は、多孔質膜と隔壁(多孔質支持体)を合わせたものとなるので、多孔質膜が形成されていないSiC製のハニカム構造体を対照として同様に測定し、両者の結果から多孔質膜の平均気孔径及び気孔率を算出した。
(2−3)多孔質膜の膜厚測定
排ガス浄化フィルタの隔壁を破断し、この隔壁断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−4000(日立計測器サービス社製)により観察することにより、多孔質膜の膜厚を測定した。
[実施例2]
実施例1で作製したCZ/Pt分散液A167g、メチルセルロースB(25℃における2%水溶液の粘度が20mPa・s)を15質量%含む水溶液18g、水65gを、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌することで混合し、水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例2の塗料Bを得た。この塗料Bについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例3]
実施例1で作製したCZ/Pt分散液A167g、メチルセルロースBを15質量%含む水溶液67g、水16gを、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌することで混合し、水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例3の塗料Cを得た。この塗料Cについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例4]
実施例1で作製したCZ/Pt分散液A167g、メチルセルロースC(25℃における2%水溶液の粘度が100mPa・s)を15質量%含む水溶液67g、水16gを、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌することで混合し、水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例4の塗料Dを得た。この塗料Dについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例5]
実施例1で用いたCZ微粒子100gを、白金換算で濃度0.5質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液100gに含浸させた後に150℃で蒸発乾固させ、更に大気中500℃で2時間焼成を行い、CZ/Pt複合微粒子−2を調整した。
このCZ/Pt複合微粒子−2の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.1g/cmであった。
微粒子としてこのCZ/Pt複合微粒子−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、固形分が30質量%のCZ/Pt分散液Eおよび水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例5の塗料Eを得た。この塗料Eについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例6]
実施例1で用いたCZ微粒子100gを、白金換算で濃度2質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液500gに含浸させた後に150℃で蒸発乾固させ、更に大気中500℃で2時間焼成を行い、CZ/Pt微粒子−3を調整した。
このCZ/Pt複合微粒子−3の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.2g/cmであった。
微粒子としてこのCZ/Pt複合微粒子−3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、固形分が30質量%のCZ/Pt分散液Fおよび水中にCZ/Pt複合微粒子が分散した実施例6の塗料Fを得た。この塗料Fについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例7]
実施例1で用いたCZ微粒子100gを、白金換算で濃度1質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液150gおよびパラジウム換算で濃度1質量%の硝酸パラジウム水溶液150gに含浸させた後に150℃で蒸発乾固させ、更に大気中500℃で2時間焼成を行い、CZ/Pt−Pd複合微粒子−4を調整した。
このCZ/Pt−Pd複合微粒子−4の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.1g/cmであった。
微粒子としてこのCZ/Pt−Pd複合微粒子−4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、固形分が30質量%のCZ/Pt−Pd分散液Gおよび水中にCZ/Pt−Pd微粒子が分散した実施例7の塗料Gを得た。この塗料Gについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例8]
実施例1で用いたCZ微粒子100gを、パラジウム換算で濃度1質量%の硝酸パラジウム水溶液300gに含浸させた後に150℃で蒸発乾固させ、更に大気中500℃で2時間焼成を行い、CZ/Pd複合微粒子−5を調整した。
このCZ/Pd複合微粒子−5の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.1g/cmであった。
微粒子としてこのCZ/Pd複合微粒子−5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、固形分が30質量%のCZ/Pd分散液Hおよび水中にCZ/Pd複合微粒子が分散した実施例8の塗料Hを得た。この塗料Hについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例9]
微粒子としてランタンドープ酸化セリウム(La−CeO)微粒子(セリウムとランタンの組成比は9:1(Ce0.9La0.12−X))を用いた他は実施例1と同様にしてCe0.9La0.12−X/Pt複合微粒子−6を得た。
このCe0.9La0.12−X/Pt複合微粒子−6の比表面積は50m/g、タップかさ密度は1.1g/cmであった。
なお、ここでCe0.9La0.12−Xと示すものは、あくまで微粒子全体としてのセリウムとランタンの組成比が9:1の酸化物ということであって、酸化セリウム中に酸化ランタンが固溶した複合酸化物だけではなく、セリウムとジルコニウムの組成比が異なる複合酸化物や、酸化セリウム単体を含有するものも含まれている場合がある。
このCe0.9La0.12−X/Pt複合微粒子−6を用いた他は実施例1と同様にして固形分が30質量%のCe0.9La0.12−X/Pt分散液Iを得た。このCe0.9La0.12−X/Pt分散液Iを用いた他は実施例1と同様にして、水中にCe0.9La0.12−X/Pt複合微粒子が分散した実施例9の塗料Iを得た。この塗料Iについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例10]
微粒子として酸化セリウム微粒子−7を用いた他は実施例1と同様にしてCeO/Pt複合微粒子−7を得た。
このCeO/Pt複合微粒子−7の比表面積は3m/g、タップかさ密度は2.0g/cmであった。
このCeO/Pt複合微粒子−7を用いた他は実施例1と同様にして固形分が30質量%のCeO/Pt分散液Jを得た。このCeO/Pt分散液Jを用いた他は実施例1と同様にして、水中にCeO/Pt複合微粒子が分散した実施例10の塗料Jを得た。この塗料Jについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例11]
微粒子として酸化アルミニウム微粒子−8を用いた他は実施例1と同様にしてAl/Pt複合微粒子−8を得た。
このAl/Pt複合微粒子−8の比表面積は125m/g、タップかさ密度は0.1g/cmであった。
このAl/Pt複合微粒子−8を45g計量し、これとポリカルボン酸系分散剤4.5g、水250gをボールミルで2時間混合し、固形分が15質量%のAl/Pt分散液Kを得た。このAl/Pt分散液K167gに、メチルセルロースAを15質量%含む水溶液30g、水53gを加えてマグネチックスターラーを用いて1時間攪拌し、水中にAl/Pt複合微粒子が分散した実施例11の塗料Kを得た。この塗料Jについて、実施例1と同様にして塗料の評価を行った。
多孔質膜の作製としては、上記の塗料J中に、SiC製ハニカム構造体を塗料Kに浸漬させた後に引き上げるディップコートを3回繰り返し行った。次いで、このディップコートを行ったハニカム構造体を150℃にて1時間乾燥させ、さらに大気中500℃にて2時間熱処理した。このディップコート3回+150℃乾燥+500℃熱処理の工程をもう一度繰り返して行い、ハニカム構造体の隔壁表面にAl/Pt複合微粒子からなる多孔質膜を形成した。得られた多孔質膜について、実施例1と同様にして評価を行った。
[実施例12]
微粒子として酸化アルミニウム微粒子−9を用いた他は実施例1と同様にしてAl/Pt複合微粒子−9を得た。
このAl/Pt複合微粒子−9の比表面積は15m/g、タップかさ密度は0.8g/cmであった。
このAl/Pt複合微粒子−9を用いた他は実施例1と同様にして固形分が30質量%のAl/Pt分散液Lを得た。このAl/Pt分散液Lを用いた他は実施例1と同様にして、水中にAl/Pt複合微粒子が分散した実施例12の塗料Lを得た。この塗料Lについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[実施例13]
微粒子として酸化アルミニウム微粒子−10を用いた他は実施例1と同様にしてAl/Pt複合微粒子−10を得た。
このAl/Pt複合微粒子−10の比表面積は1m/g、タップかさ密度は1.3g/cmであった。
このAl/Pt複合微粒子−10を用いた他は実施例1と同様にして固形分が30質量%のAl/Pt分散液Mを得た。このAl/Pt分散液Mを用いた他は実施例1と同様にして、水中にAl/Pt複合微粒子が分散した実施例13の塗料Mを得た。この塗料Mについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価、多孔質膜の評価を行った。
[比較例1]
実施例1で作製したCZ/Pt分散液A83g、メチルセルロースD(25℃における2%水溶液の粘度が2mPa・s)を15質量%含む水溶液8g、水159gを、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌することで混合し、水中にCZ/Pt微粒子が分散した比較例1の塗料Oを得た。この塗料Oについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価を行った。
[比較例2]
実施例1で作製したCZ/Pt分散液A167g、メチルセルロースE(25℃における2%水溶液の粘度が200mPa・s)を15質量%含む水溶液67g、水16gを、手振りにて攪拌することで混合し、水中にCZ/Pt微粒子が分散した比較例2の塗料Pを得た。この塗料Pについて、実施例1と同様にして多孔質膜の形成、塗料の評価を行った。
[比較例3]
実施例11で用いたAl/Pt複合微粒子−8(比表面積125m/g)45g、水250g、ポリカルボン酸系分散剤4.5gをジルコニアビーズを用いたビーズミルで4時間分散処理し、固形分が15質量%のAl/Pt分散液Qを得た。このAl/Pt分散液Q167gに、メチルセルロースAを15質量%含む水溶液30g、水53gを加えてマグネチックスターラーを用いて1時間攪拌し、水中にAl/Pt複合微粒子が分散した比較例3の塗料Qを得た。この塗料Qについて、実施例11と同様にして多孔質膜の形成を行い、また実施例1と同様にして塗料の評価を行った。
[比較例4]
微粒子として酸化セリウム微粒子−11を用いた他は実施例1と同様にしてCeO/Pt複合微粒子−11を得た。
このCeO/Pt複合微粒子−11の比表面積は0.5m/g、タップかさ密度は2.4g/cmであった。
このCeO/Pt複合微粒子−11を90g、水201g、ポリカルボン酸系分散剤9gを、ボールミルを用いて2時間混合し、固形分が30質量%のCeO/Pt分散液Rを得た。このCeO/Pt分散液R167gに、メチルセルロースAを15質量%含む水溶液67g、水16gを加えてマグネチックスターラーを用いて1時間攪拌し、水中にCeO/Pt複合微粒子が分散した比較例4の塗料Rを得た。
この塗料Rは、撹拌を停止すると、直ちにCeO/Pt複合微粒子の沈降が始まり、短時間でCeO/Pt複合微粒子の沈殿物と上澄み液との2層に分離してしまった。これにより、この塗料Rは多孔質膜形成用塗料として適さないことが分かった。
[比較例5]
微粒子として酸化アルミニウム微粒子−11を用いた他は実施例11と同様にしてAl/Pt複合微粒子−11を得た。
このAl/Pt微粒子−11の比表面積は250m/g、タップかさ密度は0.07g/cmであった。
このAl/Pt複合微粒子−11を用いた他は実施例11と同様にして固形分が15質量%のAl/Pt分散液Sを得た。このAl/Pt分散液Sを用いた他は実施例11と同様にして、水中にAl/Pt複合微粒子が分散した比較例5の塗料Sを得た。この塗料Sについて、実施例11と同様にして多孔質膜の形成を行い、また実施例1と同様にして塗料の評価を行った。
以上の実施例および比較例について、塗料および多孔質膜の作製条件を表1に、得られた塗料および多孔質膜の評価結果を表2に示す。
Figure 2010270257
Figure 2010270257
まず、電子顕微鏡観察の結果によれば、実施例1〜13の隔壁の表面には、塗料に分散した微粒子からなる多孔質膜が形成されており、また、多孔質膜の主成分である微粒子は、隔壁の気孔内部にはほとんど存在していなかった。
また、表1,2の評価結果に示されるように、実施例1〜13の塗料は、貴金属と酸化物とを含有する微粒子と分散媒とを含有しており、微粒子の比表面積、タップかさ密度および塗料中の平均二次粒子径、ならびに塗料の粘度が適切に制御されていることから、SiC製のハニカム構造体の隔壁(多孔質支持体)表面に、多孔質支持体の平均気孔径よりも小さな平均気孔径を有する多孔質膜を形成することができた。
一方、比較例1では、多孔質膜作製後のハニカム構造体の隔壁を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−4000(日立計測器サービス(株)社製)により観察したところ、隔壁の表面に多孔質膜が形成されていなかったことを確認した。これは、塗料の粘度が低すぎたために、この塗料が多孔質支持体の気孔内に入り込んでしまい、多孔質膜を形成することができなかったものと考えられる。
比較例2では、多孔質膜作製後のハニカム構造体の隔壁を比較例1と同様に観察したところ、ハニカム構造体の内部(DPFのセル内部)に塗料Pが浸透せず、隔壁の表面に多孔質膜を形成されていないことを確認した。これは、塗料の粘度が高過ぎたために、塗料をSiC製のハニカム構造体の内部に行き渡らせることができず、この内部隔壁(多孔質支持体)の表面に塗布膜を形成することができなかったものと考えられる。
比較例3では、多孔質膜作製後のハニカム構造体の隔壁を比較例1と同様に観察したところ、隔壁の気孔中にAl/Pt微粒子が入り込み、この隔壁の表面には多孔質膜が形成されていなかった。これは、貴金属と酸化物とを含有する微粒子の二次粒子径が小さすぎたために、塗料が隔壁(多孔質支持体)の気孔内に入り込んでしまい、多孔質膜を形成することができなかったと考えられる。
比較例4では、貴金属と酸化物とを含有する微粒子の比表面積が小さすぎ、タップかさ密度が大きすぎたために、塗料自体を作製することができなかった。
比較例5では、貴金属と酸化物とを含有する微粒子の比表面積が大きく、微粒子の二次粒子径が小さすぎたために、塗料がSiC製のハニカム構造体の隔壁(多孔質支持体)の気孔内に入り込んでしまい、多孔質膜を形成することができなかった。
以上の結果より、本発明の多孔質膜形成用塗料を用いると、良好に多孔質膜が形成できることが確かめられ、本発明の有用性が確かめられた。
10 DPF
11 フィルタ基体
12 ガス流路
12A 流入セル
12B 流出セル
13 多孔質膜
14 隔壁
30 粒子状物質
α、γ 端面
G 排ガス
C 浄化ガス

Claims (4)

  1. ハニカム構造型フィルタの多孔質支持体の表面に、この多孔質支持体の平均気孔径よりも小さな平均気孔径を有する多孔質膜を形成するための塗料であって、
    前記塗料は、少なくとも、白金、パラジウム、ロジウムからなる群から選択される1種または2種以上からなる貴金属と酸化物とを含有する微粒子と、該微粒子を分散する分散媒と、を含有しており、
    前記微粒子は、比表面積が1m/g以上かつ125m/g以下、タップかさ密度が0.1g/cm以上かつ2.0g/cm以下、前記分散媒中の平均二次粒子径が0.1μm以上かつ10μm以下であり、
    前記塗料の粘度は2mPa・s以上かつ1000mPa・s以下であることを特徴とする多孔質膜形成用塗料。
  2. 前記酸化物は、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セリウム、ランタン、鉄、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物または複合酸化物であることを特徴とする請求項1記載の多孔質膜形成用塗料。
  3. 前記貴金属を含む貴金属微粒子と、前記酸化物を含む酸化物微粒子とが金属・酸化物複合微粒子を形成しており、該酸化物微粒子に対する貴金属の割合が、0.1質量%以上かつ30質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし2に記載の多孔質膜形成用塗料。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の多孔質膜形成用塗料を塗布した後に熱処理して形成することを特徴とする多孔質膜。
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