本発明は、哺乳動物における造血系腫瘍の治療に有用な組成物を同定するための方法、組成物、キットおよび製品、ならびにそのための物質の組成物の使用方法を提供する。
これらの方法、組成物、キッドおよび製品の詳細は、本明細書中で提供される。
I.一般技法
本発明の実行は、別記しない限り、当該技術分野内である分子生物学(例えば組換え技術)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の慣用的技法を用いる。このような技法は、文献中で、例えば“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, second edition (Sambrook et al., 1989);“Oligonucleotide Synthesis” (M. J. Gait, ed., 1984);“Animal Cell Culture” (R. I. Freshney, ed., 1987);“Methods in Enzymology” (Academic Press, Inc.); “Current Protocols in Molecular Biology” (F. M. Ausubel et al., eds., 1987および定期的最新版);“PCR: The Polymerase Chain Reaction”, (Mullis et al., ed., 1994); “A Practical Guide to Molecular Cloning” (Perbal Bernard V., 1988);“Phage Display: A Laboratory Manual” (Barbas et al., 2001)で詳細に説明されている。
II.定義
本明細書を説明するために、以下の定義が適用され、適切な場合はいつも、単数で用いられるよう語は複数も含み、その逆でもある。記述される任意の定義が参照により本明細書中で援用される任意の文書と矛盾する場合、以下で記述される定義が統制する。
「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」は、本明細書中では、それと結合するアンタゴニスト、例えばB細胞表面抗原あるいは天然B細胞抗原とのリガンドの結合を拮抗し得る可溶型B細胞表面抗原に対する抗体(これらに限定されない)で標的化され得るB細胞の表面で発現される抗原である。B細胞表面マーカーの例としては、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86白血球表面マーカーが挙げられる(説明に関しては、The Leukocyte Antigen Facts Book, 2nd Edition. 1997, ed. Barclay et al. Academic Press, Harcourt Brace & Co., New York参照)。他のB細胞表面マーカーとしては、RP105、FcRH2、B細胞 CR2、CCR6、P2X5、HLA−DOB、CXCR5、FCER2、BR3、BAFF、BLyS、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMAおよび239287が挙げられる。特に興味深いB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞上で優先的に発現され、前駆体B細胞および成熟B細胞の両方で発現され得る。
「FcRH5」という用語は、本明細書中で用いる場合、別記しない限り、任意の脊椎動物供給源、例えば哺乳類、例えば霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))ならびに齧歯類(例えば、マウスおよびラット)からの任意のネイティブFcRH5を指す。ヒトFcRH5は、本明細書中では、「TAHO18」または「PRO85143」(配列番号2)とも呼ばれ、そしてヌクレオチド配列(配列番号1)(本明細書中では「DNA340394」とも呼ばれる)によりコードされる。カニクイザルFcRH5は、本明細書中では、「cynoFcRH5」としても言及される。「FcRH5」という用語は、「全長」非加工処理FcRH5、ならびに細胞中でのプロセシングに起因する任意の型のFcRH5を包含する。当該用語は、FcRH5の天然変異体、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体およびアイソフォームも包含する。本明細書中に記載されるFcRH5ポリペプチドは、種々の供給源、例えばヒト組織型から、または別の供給源から単離され得るし、あるいは組換えまたは合成方法から調製され得る。「ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド」は、天然物由来の対応するFcRH5ポリペプチドと同一アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このようなネイティブ配列FcRH5ポリペプチドは、天然物から単離され得るし、あるいは組換えまたは合成手段により生産され得る。「ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド」という用語は、具体的には、天然切頭化または分泌型の特定FcRH5ポリペプチド(例えば細胞外ドメイン配列)、天然変異体型(例えば選択的スプライス化型)およびポリペプチドの天然対立遺伝子変異体を包含する。本発明のある実施形態では、本明細書中に開示されるネイティブ配列FcRH5ポリペプチドは、添付の図面中に示される全長アミノ酸配列を含む成熟または全長ネイティブ配列ポリペプチドである。開始および終止コドンは(示される場合には)、図中で太字で、下線を付して示される。添付の図面で「N」として示される核酸残基は、任意の核酸残基である。しかしながら、添付の図面で開示されるFcRH5ポリペプチドは図中のアミノ酸位置1と本明細書中で呼ばれるメチオニン残基で開始すると示されているが、しかしそれは、図中のアミノ酸位置1から上流または下流に位置する他のメチオニン残基がFcRH5ポリペプチドのための開始アミノ酸残基として用いられ得る、と想像され得るし、あり得ることである。
「mu7D11」または「MA7D11」または「ネズミFcRH5(7D11)抗体」または「ネズミ抗FcRH5(7D11)抗体」は、本明細書中では、ネズミ抗FcRH5モノクローナル抗体に特定的に言及するために用いられるが、この場合、ネズミ抗FcRH5モノクローナル抗体は、図9(配列番号18)の軽鎖可変ドメインおよび図10(配列番号20)の重鎖可変ドメインを含む。ネズミ抗FcRH5モノクローナル抗体は、商業的供給元から購入され得る。
「ch13G9」または「chMAFcRH5(13G9)」または「キメラMAFcRH5(13G9))抗体」は、本明細書中では、キメラ抗ヒトFcRH5(13G)抗体に特定的に言及するために用いられるが、この場合、キメラ抗FcRH5抗体は配列番号 の軽鎖(図6)を含み、これは、ヒトIgG1の軽鎖定常ドメインを含む。キメラ抗FcRH5(13G9))抗体はさらに、配列番号 の重鎖(図8)を含み、これは、ヒトIgG1の定常ドメインを含む。
「抗cynoFcRH5」または「抗cyno FcRH5」は、本明細書中では、cyno FcRH5と結合する抗体に言及するために用いられる。
「13G9移植片」または「13G9移植「ヒト化」抗体」または「hu13G9移植片」は、本明細書中では、ネズミ13G9抗FcRH5抗体(MA7D11)からの超可変領域を、R71A、N73TおよびL78Aで受容体ヒト共通VLカッパ(huKI)およびヒト亜群III共通VH(huIII)中に移植することにより生成される移植片に特定的に言及するために用いられる((Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992))(実施例第1節ならびに図9〜12参照)。「hu13G9」または「hu13G9v1」または「hu13G9v3」または「hu13G9v8」は、ヒト化13G9抗体に特定的に言及するために用いられる。
アミノ酸残基/位置の「修飾」は、本明細書中で用いる場合、出発アミノ酸配列と比較した場合の一次アミノ酸配列の変化を指すが、この場合、変化は、上記アミノ酸残基/位置に関連した配列変更に起因する。例えば典型的修飾としては、別のアミノ酸残基による当該残基(または上記位置)の置換(例えば保存的または非保存的置換)、上記残基/位置に隣接する1つ以上の(一般的には5または3より少ない)アミノ酸の挿入、ならびに上記残基/位置の欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」またはその変形は、異なるアミノ酸残基による予定(出発)アミノ酸配列中の現存アミノ酸残基の取替えを指す。一般的には、そして好ましくは、修飾は、出発(または「野生型」)アミノ酸配列を含むポリペプチドと比較して、変異体ポリペプチドの少なくとも1つの物理生物化学的活性における変更を生じる。例えば抗体の場合、変更される物理生物化学的活性は、結合親和力、結合能力および/または標的分子に及ぼす結合作用であり得る。
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、具体的には、例えば単一抗FcRH5モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長または無傷モノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗FcRH5抗体組成物、ポリクローナル抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成される多重特異性抗体(それらが所望の生物学的活性を示す限り。例えば二重特異性抗体)、一本鎖抗FcRH5抗体、ならびに抗FcRH5抗体の断片(下記参照)、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)(それらが所望の生物学的または免疫学的活性を示す限り)を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書中では抗体と互換的に用いられる。抗体は、ヒト、ヒト化および/または親和性成熟抗体であり得る。
「抗FcRH5抗体」または「FcRH5と結合する抗体」という用語は、FcRH5をターゲッティングするに際して、診断および/または治療薬として抗体が有用であるよう十分な親和力でFcRH5を結合し得る抗体を指す。好ましくは、抗FcRH5抗体と非関連、非FcRH5タンパク質とが結合する程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合に、抗体とFcRH5との結合の約10%未満である。ある実施形態では、FcRH5と結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数を有する。ある実施形態では、抗FcRH5抗体は、異なる種からのFcRH5間で保存されるFcRH5のエピトープと結合する。
「単離抗体」は、その天然環境の構成成分から同定され、分離され、および/または回収されたものである。その天然環境の夾雑物成分は、抗体に関する治療的使用を妨げる物質であり、例としては、酵素、ホルモンおよびその他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法により測定した場合に、95重量%より高い抗体に、最も好ましくは99重量%より以上に、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端または内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、あるいは(3)クーマシーブルー、好ましくは銀染色を用いて、還元または非還元条件下でSDS−PAGEにより均質になるまで、精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分は存在しないため、単離抗体はin situで組換え細胞内の抗体を含む。しかしながら、普通は、単離抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
基本4鎖抗体単位は、2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、5つの基本へテロ四量体単位に、J鎖と呼ばれる付加的ポリペプチドを伴って構成され、10の抗原結合部位を含有するが、一方、分泌IgA抗体は重合して、J鎖を伴う2〜5つの基本4鎖単位を含む多価集合物を形成する)。IgGの場合、4鎖単位は、一般的に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によりH鎖に連結されるが、一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプによって、1つ以上のジスルフィド結合により互いに連結される。各HおよびL鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に、可変ドメイン(VH)を、その後に、αおよびγ鎖の各々に関する3つの定常ドメイン(CH)、ならびにμおよびεアイソタイプに関する4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に、可変ドメイン(VL)を、その後に、その他端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと一列に並べられ、そしてCLは重鎖の第一定常ドメイン(CH1)と一列に並べられる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間に界面を形成すると考えられる。VHおよびVLの対合は、一緒になって単一抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性に関しては、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照されたい。
任意の脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる重鎖を有する5つのクラスの免疫グロブリンがある:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM。γおよびαクラスは、C配列および機能の相対的に小さい差に基づいてさらにサブクラスに分けられ、例えばヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」として言及され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」として言及され得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最大の可変部分であり、抗原結合部位を含有する。
「可変」という用語は、可変ドメインのあるセグメントが抗体間の配列で大きく異なる、という事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定抗原に対する特定抗体の特異性を限定する。しかしながら、変異性は、可変ドメインの110アミノ酸スパンを通して等しく分布するわけではない。その代わりに、V領域は、各々9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極端な変異性を有するより短い領域により分離される15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変のストレッチからなる。ネイティブ重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、βシート構造を結合し、いくつかの場合にはその一部を構成するループを形成する3つの超可変領域により連結される、主にβシート形状を採る4つのFRを含む。各鎖中の超可変領域は、FRにより、他の鎖からの超可変領域とぴったり近接して一緒に保持されて、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接的に関与しないが、しかし、抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)に抗体が関わるといったような種々のエフェクター機能を示す。
「無傷」抗体は、抗原結合部位、ならびにCLおよび少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含むものである。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、無傷抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
本明細書中の目的のための「裸の抗体」は、細胞傷害性部分または放射性ラベルと接合されない抗体である。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは無傷抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2; Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]参照); 一本鎖抗体分子;および多抗体断片から形成される重特異性抗体が挙げられる。一実施形態では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片および残留「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映する呼称)と呼ばれる2つの同一抗原結合断片を産生する。Fab断片は、H鎖(VH)の可変領域ドメインならびに1つの重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を伴う完全L鎖からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、それは単一抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一大型F(ab’)2断片を生じるが、これは二価抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結Fab断片にほぼ対応し、そして依然として抗原を架橋し得る。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含めてCH1ドメインのカルボキシ末端に付加的な少数の残基を有する点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保有するFab’に関する本明細書中での呼称である。F(ab’)2抗体断片は、本来は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生される。抗体断片の他の化学的対合も既知である。
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持される両H鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域(この領域は、ある型の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)により認識される部分でもある)中の配列により決定される。
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、堅い非共有的会合で、1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種の場合と類似の「二量体」構造で会合し得るよう、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインは、柔軟なペプチドリンカーにより共有結合され得る。これらのフォールディングから、2つのドメインは、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(HおよびL鎖からの各々3つのループ)を生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖に連結されるVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはさらに、VHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーを含み、これが抗原結合のための所望の構造をsFvに形成させる。sFvの再検討に関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); Borrebaeck 1995(下記)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、この断片は、同一ポリペプチド鎖で軽鎖可変ドメイン(VL)と連結される重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。小抗体断片は、Vドメインの鎖間対合は達成されるが、鎖内対合は達成されず、二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片を生じるよう、VHおよびVLドメイン間に短いリンカー(約5〜10残基)を用いてsFv断片(前段落参照)を構築することにより調製される。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えばEP 404,097;WO 93/11161;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。トリアボディおよびテトラボディも、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、実質的に均質の抗体の一集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得るおそらくは天然の突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的で、単一抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物に対比して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対して向けられる。それらの特異性のほかに、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体の夾雑を伴わずに合成され得る点で有益である。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定方法による抗体の産生を要すると意図されるべきでない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により調製され得るし、あるいは細菌、真核生物動物または植物細胞において組換えDNA法を用いて作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
モノクローナル抗体は、本明細書中では、重鎖および/または軽鎖の一部が特定種に由来するかまたは特定抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同であるが、一方、鎖(複数可)の残り部分は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、ならびにこのような抗体の断片中の対応する配列と同一であるかまたは相同である「キメラ」抗体を包含する(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)参照)。本明細書中の当該キメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、類人猿等)由来の可変ドメイン抗原結合配列、およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を包含する。
「ヒト化」型の非ヒト(例えば齧歯類)抗体は、非ヒト抗体由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。大体において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類の超可変領域からの残基に取って代わられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に取って代わられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中に、またはドナー抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するためになされる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含み、この場合、超可変ループの全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてFRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意に、(典型的にはヒト免疫グロブリンの)免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。以下の再検討論文およびそこに引用された参考文献も参照されたい:Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma and Immunol., 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions, 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech., 5:428-433 (1994)。
「チオ」は、抗体に言及するために本明細書中で用いる場合、操作システイン操作された抗体を指すが、一方、「hu」は、抗体に言及するために本明細書中で用いる場合、ヒト化抗体を指す。
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を保有するものであるか、および/または本明細書中に開示されるようなヒト抗体を作製するための技法のいずれかを用いて作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法、例えばファージ表示ライブラリーを用いて産生され得る(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載された方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう修飾されたが、その内在遺伝子座は無能力化されたトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに、抗原を投与することにより調製され得る(ゼノマウス(商標)技術に関しては、例えば、米国特許第6,075,181号および第6,150,584号参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関しては、例えば、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)参照。
「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、本明細書中で用いる場合、配列中で超可変性であるか、および/または構造的に限定されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、以下の6つの超可変領域を含む:VH中に3つ(H1、H2、H3)、およびVL中に3つ(L1、L2、L3)。多数の超可変領域概要説明が使われており、本明細書中に包含されている。カバト相補性決定領域(CDR)は配列変異性に基づいており、最も一般的に用いられるものである(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。コチアは、そうではなくて、構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。コチアCDR−H1ループの末端は、カバト番号付け規約を用いて番号付けされる場合、ループの長さによってH32〜H34の間で変わる(これは、カバト番号付けスキームがH35AおよびH35Bで挿入物を配置するためである;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終わる;35Aのみが存在する場合、ループは33で終わる;35Aおよび35Bがともに存在する場合、ループは34で終わる)。AbM超可変領域はカバトCDRおよびコチア構造ループ間の中間物を表わし、そしてOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより用いられる。「接触」超可変領域は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づいている。これらの超可変領域の各々からの残基を、以下に示す。
超可変領域は、以下のような「伸長された超可変領域」を含み得る:VL中の24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびにVH中の26〜35B(H1)、50〜65、47〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102または95〜102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々に関して、Kabat et al.(上記)に従って番号付けされる。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書中で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「カバトにおけるような可変ドメイン残基番号付け」または「カバトにおけるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、ならびにその変形は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)における抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに関して用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはその中への挿入に対応して、より少ないかまたは付加的なアミノ酸を含有し得る。例えば重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一アミノ酸挿入物(カバトによると残基52a)を、ならびに重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えばカバトによると残基82a、82bおよび82c等)を含み得る。残基のカバト番号付けは、「標準」カバト番号付けされた配列との抗体の配列の相同性の領域でのアラインメントにより所定の抗体に関して決定され得る。
カバト番号付けシステムは、可変ドメイン中の一残基を指す場合(大体、軽鎖の残基1〜107および重鎖の残基1〜113)、一般的に用いられる(例えば、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域中の一残基に言及する場合、一般的に用いられる(例えばKabat et al.(上記)で報告されるEUインデックス)。「カバトにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で別記しない限り、抗体の可変ドメイン中の残基数への言及は、カバト番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書中で別記しない限り、抗体の定常ドメイン中の残基数への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、EU番号付けに関しては、例えば米国特許仮出願60/640,323号の図面を参照)。
「親和性成熟」抗体は、それらの変更(複数可)を保有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性における改良を生じるその1つ以上のHVRにおける1つ以上の変更を有するものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモル親和性を、またはピコモル親和性さえ有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野で既知の手法により産生される。Marks et al. Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載する。HVRおよび/またはフレームワーク残基の無作為突然変異誘発は、Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813 (1994);Schier et al. Gene 169:147-155 (1995);Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995);Jackson et al., J. Immunol. 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)により記載されている。
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を抑制するかまたは低減するものである。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に抑制する。
「アゴニスト抗体」は、本明細書中で用いる場合、当該ポリペプチドの機能活性のうちの少なくとも1つを模倣する抗体である。
「種依存性抗体」、例えば哺乳類抗ヒトIgE抗体は、第二哺乳動物種からのその抗原の相当物に対してそれが有するより強い、第一哺乳動物種からの抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常は、種依存性抗体は、ヒト抗原と「特異的に結合する」(すなわち、約1x10−7M以下、好ましくは約1x10−8以下、最も好ましくは約1x10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、しかしヒト抗原に対するその結合親和性の少なくとも約50分の1、または少なくとも約500分の1、または少なくとも約1000分の1である第二非ヒト哺乳動物種からの抗原の相当物に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上記のような抗体の種々の型のうちのいずれかのものであり得るが、しかし好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
「結合親和性」は、一般的に、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合相手(例えば抗原)との間の非共有的相互作用の総和の強度を指す。別記しない限り、本明細書中で用いる場合、「結合親和性」は、結合対の成員(例えば抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、その相手Yに対する親和力は、一般的に、解離定数(Kd)により表され得る。親和力は、本明細書中に記載されるものを含めて当該技術分野で既知の一般方法により、測定され得る。低親和性抗体は一般的に、抗減をゆっくり結合し、そして容易に解離する傾向があるが、一方、高親和性抗体は一般的に、より速く抗原を結合し、そしてより長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法は当該技術分野で既知であり、これらのいずれかが、本発明の目的のために用いられ得る。具体的な例示的実施形態は、以下で記載される。
「あるいはより良好な」は、結合親和性に言及するために本明細書中で用いられる場合、分子とその結合相手との間のより強力な結合を指す。「あるいはより良好な」は、本明細書中で用いる場合、より小さい数値のKdにより表されるより強力な結合を指す。例えば、「.6nMまたはより良好な」抗原に対する親和性を有する抗体では、抗原に対する抗体の親和力は、<.6nM、すなわち、.59nM、.58nM、.57nMなどまたは.6nM未満の任意の値である。
一実施形態では、本発明による「Kd」または「Kd値」は、非ラベル抗原の滴定シリーズの存在下で、Fabを最小濃度の(125I)−ラベル抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体被覆プレートで結合抗原を捕捉することにより抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する以下の検定により記載されるように、当該抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される放射能ラベル抗原結合検定(RIA)により測定される(Chen, et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881)。検定のための条件を確立するために、微量滴定プレート(Dynex)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩被覆し、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで、室温(約23℃)で2〜4時間、遮断する。非吸着プレート(Nunc #269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]−抗原を、当該Fabの連続希釈液と混合する(例えば、Presta et al., (1997) Cancer Res. 57:4593-4599における抗VEGF抗体の査定と一致)。次いで、当該Fabを一晩インキュベートする;しかしながら、平衡に到達したことを保証するために、インキュベーションはより長い期間(例えば65時間)継続し得る。その後、室温でのインキュベーションのために、混合物を捕捉プレートに移す(例えば、1時間)。次に、溶液を除去し、プレートをPBS中の0.1%トゥイーン−20で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MicroScint-20;Packard)を付加し、Topcountガンマ計数器(Packard)で10分間、プレートを計数する。20%以下の最大結合を生じる各Fabの濃度を、競合結合検定に用いるために選択する。
別の実施形態によれば、KdまたはKd値は、約10応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップとともに25CでBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いて、表面プラズモン共鳴検定を用いることにより測定される。要するに、カルボキシメチル化デキストラン・バイオセンサーチップ(CM5、BIAcore, Inc.)は、供給元の使用説明書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5ug/mg(〜0.2uM)に希釈された後、5ul/分の流量で注入して、約10応答単位(RU)の共役タンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入して、非反応基を遮断する。動態測定のため、Fabの2倍連続希釈(0.78nM〜500nM)が、25℃で約25ul/分の流量で、0.05%トゥイーン20(PBST)とともにPBS中で注入される。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時適合させることにより、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluationソフトウェア、バージョン3.2)を用いて算定される。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算定される(例えばChen, Y., et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881参照)。オンレートが上記の表面プラズモン共鳴検定により106M−1S−1を超える場合には、オンレートは、分光計、例えばストップフロー分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌赤色キュベットを有する8000系SLM−アミノ分光光度計(ThermoSpectronic)で測定されるような、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS、pH7.2中の20nM抗抗原抗体(Fab型)ノ25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)における増大または低減を測定する蛍光クエンチ技法を用いることにより、決定され得る。
本発明による「オンレート」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」は、上記のBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いて、上記の同一表面プラズモン共鳴検定でも確定され得る。
「実質的に類似の」または「実質的に同一の」という語句は、本明細書中で用いる場合、上記の値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特質の状況内で生物学的および/または統計学的意義をほとんどまたは全く有さない2つの値間の差を当業者が考察するよう、2つの数値(一般的に、本発明の抗体と関連したものと、参照/比較抗体と関連した他のもの)間の十分に高度の類似性を意味する。上記2つの値の間の差は、参照/比較抗体に関する値の一関数として、好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
「実質的に低減される」または「実質的に異なる」という語句は、本明細書中で用いる場合、上記の値(例えばKd値、HAMA応答)により測定される生物学的特質の状況内で統計学的意義を有すべき2つの値間の差を当業者が考察するよう、2つの数値(一般的に、本発明の抗体と関連したものと、参照/比較抗体と関連した他のもの)間の十分に高度の差を意味する。上記2つの値の間の差は、参照/比較抗体に関する値の一関数として、好ましくは約10%より高く、好ましくは約20%より高く、好ましくは約30%より高く、好ましくは約40%より高く、好ましくは約50%より高い。
「抗原」は、抗体が選択的に結合し得る予定抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテンまたは他の天然または合成化合物であり得る。好ましくは、標的抗原はポリペプチドである。
本明細書中の目的のための「受容体ヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク由来の、あるいはヒト共通フレームワーク由来のVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒト共通フレームワーク「由来の」受容体ヒトフレームワークは、その同一アミノ酸配列を含み得るし、あるいは先在性アミノ酸配列変化を含有し得る。先在性アミノ酸変化が存在する場合、好ましくは、5以下、好ましくは4以下、または3以下の先在性アミノ酸変化が存在する。先在性アミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましくはそれらの変化は、位置71H、73Hおよび78Hのうちの3、2または1つだけである;例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73Tおよび/または78Aであり得る。一実施形態では、VL受容体ヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒト共通フレームワーク配列と配列が同一である。
「ヒト共通フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も普通に出現するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の亜群からである。一般的に、配列の亜群は、Kabat et al.におけるような亜群である。一実施形態では、VLに関しては、亜群は、Kabat et al.におけるような亜群カッパIである。一実施形態では、VHに関しては、亜群は、Kabat et al.におけるような亜群IIIである。
「VH亜群III共通フレームワーク」は、Kabat et al.の可変重鎖亜群III中のアミノ酸配列から得られる共通配列を含む。一実施形態では、VH亜群III共通フレームワークアミノ酸配列は、以下の配列の各々の少なくとも一部または全部を含む:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号14)−H1−WVRQAPGKGLEWV(配列番号15)−H2−RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号16)−H3−WGQGTLVTVSS(配列番号17)。
「VL亜群I共通フレームワーク」は、Kabat et al.の可変軽鎖カッパ亜群I中のアミノ酸配列から得られる共通配列を含む。一実施形態では、VL亜群I共通フレームワークアミノ酸配列は、以下の配列の各々の少なくとも一部または全部を含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号43)−L1−WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号44)−L2−GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号45)−L3−FGQGTKVEIKR(配列番号46)。
「非修飾ヒトフレームワーク」は、受容体ヒトフレームワークと同一アミノ酸配列を有するヒトフレームワークであり、例えば、受容体ヒトフレームワーク中のヒト−非ヒトアミノ酸置換(複数可)を欠いている。
本明細書中の目的のための「変更超可変領域」は、その中に1つ以上(例えば1〜約16)のアミノ酸置換(複数可)を含む超可変領域である。
本明細書中の目的のための「非修飾超可変領域」は、それが由来する非ヒト抗体と同一アミノ酸配列を有する超可変領域、すなわち、その中に1つ以上のアミノ酸置換を欠くものである。
当該抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原標的を「結合する」抗体は、抗体が、抗原を発現する細胞または組織をターゲッティングするに際して治療薬として有用であり、そして他のタンパク質と有意に交差反応しないよう、十分な親和性で抗原を結合するものである。このような実施形態では、抗体と「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射免疫沈降法(RIA)により確定した場合、抗体とその特定標的タンパク質との結合の約10%未満である。抗体と標的分子との結合に関して、特定ポリペプチドまたは特定ポリペプチド標的上のエピトープ「の特異的結合」または、「と特異的に結合する」または「に対して特異的」であるという用語は、非特異的相互作用とは測定可能的に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的に、結合活性を有さない類似の構造の分子である対照分子の結合と比較して、一分子の結合を確定することにより測定され得る。例えば、特異的結合は、標的、例えば過剰量の非ラベル標的と類似する対照分子との競合により確定され得る。この場合、特異的結合は、ラベル標的とプローブとの結合が過剰量の非ラベル標的により競合的に抑制される場合に、示される。本明細書中で用いられるような特定ポリペプチドまたは特定ポリペプチド標的上のエピトープ「の特異的結合」または、「と特異的に結合する」または「に対して特異的」であるという用語は、例えば、少なくとも約10−4M、代替的には少なくとも約10−5M、代替的には少なくとも約10−6M、代替的には少なくとも約10−7M、代替的には少なくとも約10−8M、代替的には少なくとも約10−9M、代替的には少なくとも約10−10M、代替的には少なくとも約10−11M、代替的には少なくとも約10−12Mまたはそれ以上の標的に対するKdを有する分子により示され得る。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープと実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定ポリペプチド上のエピトープと一分子が結合する場合の結合を指す。
「FcRH5ポリペプチドを発現する腫瘍細胞の増殖を抑制する」抗体または「増殖抑制」抗体は、適切なFcRH5ポリペプチドを発現するかまたは過剰発現する癌細胞の測定可能な増殖抑制を生じるものである。FcRH5ポリペプチドは、癌細胞の表面で発現される膜貫通ポリペプチドであり得るし、あるいは癌細胞により産生され、分泌されるポリペプチドであり得る。好ましい増殖抑制抗FcRH5抗体は、適切な対照(対照は、典型的には、試験されている抗体で処置されない腫瘍細胞である)と比較した場合、20%より大きく、好ましくは約20%〜約50%、さらに好ましくは50%より大きく(例えば約50%〜約100%)、FcRH5発現腫瘍細胞の増殖を抑制する。一実施形態では、増殖抑制は、細胞培養中約0.1〜30μg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度で測定され得るし、この場合、増殖抑制は、抗体に腫瘍細胞を曝露後1〜10日目に確定される。in vivoでの腫瘍細胞の増殖抑制は、以下の実験実施例の項に記載されるような種々の方法で確定され得る。約1μg/体重1kg〜約100mg/kgでの抗FcRH5抗体の投与が、抗体の初回投与から約5日ないし3ヶ月以内、好ましくは約5〜30日以内に腫瘍サイズまたは腫瘍細胞増殖の低減を生じる場合、抗体はin vivoで増殖抑制性である。
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞縮み、小胞体の拡張、細胞断片化および/または膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により確定されるようなプログラムされた細胞死を誘導するものである。細胞は、通常は、FcRH5ポリペプチドを過剰発現するものである。好ましくは、細胞は、腫瘍細胞、例えば造血系細胞、例えばB細胞、T細胞、好塩基球、好酸球、好中球、単球、血小板または赤血球である。アポトーシスに関連した細胞事象を評価するために、種々の方法が利用可能である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位は、アネキシン結合により測定され得る;DNA断片化は、DNA梯子形成により評価され得る;そしてDNA断片化を伴う核/クロマチン縮合は、低二倍体細胞中での任意の増加により評価され得る。好ましくは、アポトーシスを誘導する抗体は、アネキシン結合検定における非処置細胞に比して、アネキシン結合の、約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍の誘導を生じるものである。
「細胞死を誘導する」抗体は、生存細胞を非生存性にさせるものである。当該細胞は、FcRH5ポリペプチドを発現するものであり、FcRH5ポリペプチドを特異的に発現するかまたは過剰発現する細胞型を有する。当該細胞は、特定細胞型の癌性または正常細胞であり得る。FcRH5ポリペプチドは、癌細胞の表面で発現される膜貫通ポリペプチドであり得るし、あるいは癌細胞により産生され、分泌されるポリペプチドであり得る。当該細胞は、癌細胞、例えばB細胞またはT細胞であり得る。in vitroでの細胞死は、補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で確定されて、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)により誘導される細胞死を区別し得る。したがって、細胞死に関する検定は、熱不活性化血清を用いて(すなわち、補体の非存在下で)、そして免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。抗体が細胞死を誘導し得るか否かを確定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore et al. Cytotechnology 17: 1-11 (1995)参照)または7AADの取込みにより評価されるような膜完全性の損失が、非処置細胞と比較して、査定され得る。好ましい細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取込み検定においてPI取込みを誘導するものである。
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因すると考えられる生物学的活性を指し、抗体アイソタイプに伴って変わる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;およびB細胞活性化が挙げられる。
「Fc領域」という用語は、本明細書中では、例えばネイティブ配列Fc領域および変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域、を意味するために用いられる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変わり得るが、しかしヒトIgG重鎖Fc領域は、通常は、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端へのストレッチと定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば抗体の産生または精製中に、あるいは抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することにより、除去され得る。したがって、無傷抗体の組成物は、除去される全てのK447残基を伴う抗体集団、除去されるK447残基を有さない抗体集団、ならびにK447残基を伴うかまたは伴わない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。
「機能性Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。「エフェクター機能」の例としては、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方調節等が挙げられる。このようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組合されることを要し、、例えば本明細書中の定義に開示されるような種々の検定を用いて査定され得る。
「ネイティブ配列Fc領域」は、現実に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。ネイティブ配列ヒトFc領域としては、ネイティブ配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);ネイティブ配列ヒトIgG 2Fc領域;ネイティブ配列ヒトIgG3 Fc領域;およびネイティブ配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにその天然変異体が挙げられる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)に基づいてネイティブ配列Fc領域のものと異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域と、または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばネイティブ配列Fc領域における、または親ポリペプチドのFc領域における、約1〜約10のアミノ酸置換、好ましくは約1〜約5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域と、および/または親ポリペプチドのFc領域と、好ましくは少なくとも約80%の相同性を、最も好ましくはそれと少なくとも約90%の相同性を、さらに好ましくはそれと少なくとも約95%の相同性を保有する。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」または「ADCC」は、ある細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合される分泌Igがこれらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原保有標的細胞と特異的に結合させ、その後、細胞毒で標的細胞を殺害させる細胞傷害性の一形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「武装させ」、このような殺害のために絶対的に必要とされる。ADCCを媒介するための第一細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。当該分子のADCC活性を査定するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているようなin vitroADCC検定が実施され得る。このような検定のための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的には、または付加的には、当該分子のADCC活性は、例えばClynes et al. (USA) 95:652-656 (1998)に開示されたような動物モデルにおいて、in vivoで査定され得る。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を表す。好ましいFcRは、ネイティブ配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体を結合するもの(ガンマ受容体)であり、例としては、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIII亜群、例えば対立遺伝子変異体、ならびに代替的にはスプライス化型のこれらの受容体が挙げられる。FcγRII受容体としては、FcγRIIA([活性化受容体])およびFcγRIIB(「抑制受容体」)が挙げられ、これらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)のレビューMを参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)で再検討されている。他のFcR、例えば将来的に同定されるべきものは、本明細書中の「FcR」という用語に包含される。当該用語は、母親のIgGが胎仔に移入するのに関与する新生児受容体FcRnも包含する(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
ヒトFcRnとのin vivoでの結合、ならびにヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清中寿命は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスまたはトランスフェクト化ヒト細胞株において、あるいは変異体Fc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類において、検定され得る。WO 2000/42072(Presta)は、FcRとの結合を改良されるかまたは減少された抗体変異体を記載する(例えばShields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001)も参照)。
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実施する白血球である。好ましくは、当該細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられる;PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、ネイティブ供給源から、例えば血液から単離され得る。
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系(Clq)の第一構成成分と、それらのコグネイト抗原と結合される(適切なサブクラスの)抗体との結合により開始される。補体活性化を査定するために、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されたようなCDC検定が実施され得る。変更されたFc領域アミノ酸配列を有するポリペプチド変異体(変異体Fc領域を有するポリペプチド)、ならびに増大されたまたは低減されたClq結合能力は、例えば米国特許第6,194,551 B1号およびWO 1999/51642に記載されている。例えば、Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照されたい。
「Fc領域包含抗体」という用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば抗体の精製中に、あるいは抗体をコードする核酸を組換え操作することにより、除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、K447を有する、除去される全てのK447残基を有する抗体、あるいはK447残基を有する抗体および有さない抗体の混合物を含み得る。
FcRH5ポリペプチド「細胞外ドメイン」または「ECD」は、膜貫通および細胞質ドメインを本質的に有さないFcRH5ポリペプチドの一形態を指す。普通は、FcRH5ポリペプチドECDは、1%未満のこのような膜貫通および/または細胞質ドメインを有し、好ましくは0.5%未満のこのようなドメインを有する。本発明のFcRH5ポリペプチドに関して同定される任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのその型を同定するために当該技術分野でルーチンに用いられる判定基準に従って同定される、と理解される。膜貫通ドメインの正確な境界は、ほとんど、本明細書中で最初に同定されるようなドメインのいずれかの末端の約5以下のアミノ酸だけ変わり得る。したがって、任意に、FcRH5ポリペプチドの細胞外ドメインは、実施例または明細書中で同定されるような膜貫通ドメイン/細胞外ドメイン境界のいずれかの側に約5またはそれより少ないアミノ酸を含有し得るし、このようなポリペプチドは、関連シグナルペプチドおよびそれらをコードする核酸を有しても、有さなくても、本発明により意図される。
本明細書中に開示されるFcRH5ポリペプチドの「シグナルペプチド」のおよその位置は、本明細書中および/または添付の図面に示され得る。しかしながら、シグナルペプチドのC末端境界は変わり得るが、しかしほとんど、本明細書中で最初に同定されるようなシグナルペプチドC末端境界のいずれかの側の約5以下のアミノ酸である、ということが注目されるが、この場合、シグナルペプチドのC末端境界は、その型のアミノ酸配列素子を同定するために当該技術分野でルーチンに用いられる判定基準に従って同定され得る(例えば、Nielsen et al., Prot. Eng. 10:1-6 (1997)およびvon Heinje et al., Nucl. Acids. Res. 14:4683-4690 (1986))。さらに、いくつかの場合、分泌ポリペプチドからのシグナル配列の切断は完全に均一であるわけではなく、1つより多い分泌種を生じる、ということも認められる。これらの成熟ポリペプチドは、シグナルペプチドが、本明細書中で同定されるようなシグナルペプチド、およびそれらをコードするポリヌクレオチドのC末端境界のいずれかの側で約5以下のアミノ酸内で切断される場合、本発明により意図される。
「FcRH5ポリペプチド変異体」は、本明細書中に開示されるような全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書中に記載されるようなFcRH5ポリペプチド、好ましくは活性FcRH5ポリペプチド、本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠いているFcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるような、シグナルペプチドを伴うかまたは伴わないFcRH5ポリペプチドの細胞外ドメイン、あるいは、本明細書中に開示されるような全長FcRH5ポリペプチド配列の任意の他の断片(例えば、全長FcRH5ポリペプチドに関する完全コード配列の一部のみを表す核酸によりコードされるもの)を意味する。このようなFcRH5ポリペプチド変異体としては、例えば、全長ネイティブアミノ酸配列のN−またはC末端で、1つ以上のアミノ酸残基が付加されるかまたは欠失されるFcRH5ポリペプチドが挙げられる。普通は、FcRH5ポリペプチド変異体は、本明細書中に開示されるような全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠いているFcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるような、シグナルペプチドを伴うかまたは伴わないFcRH5ポリペプチドの細胞外ドメイン、あるいは、本明細書中に開示されるような全長FcRH5ポリペプチド配列の任意の他の具体的に限定される断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、代替的には少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有する。普通は、FcRH5変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、代替的には少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸長またはそれ以上である。任意に、FcRH5変異体ポリペプチドは、ネイティブFcRH5ポリペプチド配列と比較して、1つ以下の保存的アミノ酸置換を、代替的には、ネイティブFcRH5ポリペプチド配列と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9または10以下の保存的アミノ酸置換を有する。
ペプチドまたはポリペプチド配列、すなわち本明細書中で同定されるFcRH5ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を一列に並べ、必要な場合はギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成し、そして配列同一性の一部として如何なる保存的置換も考慮に入れない工程後の、特定ペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列、すなわちFcRH5ポリペプチド配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当該技術分野内である種々の方法で、例えば、公的に入手可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて、達成され得る。アラインメントを測定するための適切なパラメーターを、例えば、比較されている配列の全長に亘って最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを、当業者は決定し得る。しかしながら、本明細書中の目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を用いてアミノ酸配列同一性%値が得られるが、この場合、ALIGN−2プログラムに関する完全なソースコードは、以下の表1に提示される。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムはGenentech, Inc.により著されており、以下の表1に示されたソースコードは、米国著作権局(U.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559)において、ユーザー文書とともにファイルされている(それは、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている)。ALIGN−2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaを介して公的に入手可能であり、あるいは以下の表1に提示されるソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで用いるためにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN−2プログラムにより設定され、変わらない。
ALIGN−2がアミノ酸配列比較のために用いられる場合、所定のアミノ酸配列Aの、所定のアミノ酸配列Bとの、それに関するまたはそれに対するアミノ酸配列同一性%(代替的には、所定のアミノ酸配列Bと、それに関して、またはそれに対してある%のアミノ酸配列同一性を有するかまたは含む所定のアミノ酸配列Aとして表され得る)は、以下のように算定される:
100×分画X/Y
(式中、Xは、AおよびBのそのプログラムのアラインメント中で配列アラインメントプログラムALIGN−2により同一整合性とスコアされたアミノ酸残基の数であり、そしてYは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さはアミノ酸配列Bの長さと等しくなく、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくない、と理解される。
「FcRH5変異体ポリヌクレオチド」または「FcRH5変異体核酸配列」は、本明細書中で定義されるようなFcRH5ポリペプチド、好ましくは活性FcRH5ポリペプチドをコードする、そして本明細書中に開示されるような全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠く全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるような、シグナルペプチドを伴うかまたは伴わないFcRH5ポリペプチドの細胞外ドメイン、あるいは、本明細書中に開示されるような全長FcRH5ポリペプチド配列の任意の他の断片(例えば、全長FcRH5ポリペプチドに関する完全コード配列の一部のみを表す核酸によりコードされるもの)をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子を意味する。普通は、FcRH5変異体ポリペプチドは、本明細書中に開示されるような全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠いている全長ネイティブ配列FcRH5ポリペプチド配列、本明細書中に開示されるような、シグナルペプチドを伴うかまたは伴わないFcRH5ポリペプチドの細胞外ドメイン、あるいは、本明細書中に開示されるような全長FcRH5ポリペプチド配列の任意の他の断片と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、代替的には少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の核酸配列同一性を有する。変異体は、ネイティブヌクレオチド配列を包含しない。
普通は、FcRH5変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約5ヌクレオチド長、代替的には少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1200、1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290または1300ヌクレオチド長であり、この状況において、「約」という用語は、言及ヌクレオチド配列長+または−言及長の10%を意味する。
本明細書中で同定されるFcRH5コード核酸配列に関する「核酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を一列に並べ、必要な場合はギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成する工程後の、当該FcRH5核酸配列中のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。核酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当該技術分野内である種々の方法で、例えば、公的に入手可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて、達成され得る。しかしながら、本明細書中の目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を用いて核酸配列同一性%値が得られるが、この場合、ALIGN−2プログラムに関する完全なソースコードは、以下の表1に提示される。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムはGenentech, Inc.により著されており、以下の表1に示されたソースコードは、米国著作権局(U.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559)において、ユーザー文書とともにファイルされている(それは、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている)。ALIGN−2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaを介して公的に入手可能であり、あるいは以下の表1に提示されるソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで用いるためにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN−2プログラムにより設定され、変わらない。
ALIGN−2が核酸配列比較のために用いられる場合、所定の核酸配列Cの、所定の核酸配列Dとの、それに関するまたはそれに対する核酸配列同一性%(代替的には、所定の核酸配列Dと、それに関して、またはそれに対してある%の核酸配列同一性を有するかまたは含む所定の核酸配列Cとして表され得る)は、以下のように算定される:
100×分画W/Z
(式中、Wは、CおよびDのそのプログラムのアラインメント中で配列アラインメントプログラムALIGN−2により同一整合性とスコアされた核酸の数であり、そしてZは、D中のヌクレオチドの総数である)。核酸配列Cの長さは核酸配列Dの長さと等しくなく、Dに対するCの核酸配列同一性%は、Cに対するDの核酸配列同一性%と等しくない、と理解される。別記しない限り、本明細書中で用いられる核酸配列同一性%値は、ALIGN−2コンピュータープログラムを用いて、直前の段落で記載されたようにして得られる。
他の実施形態では、FcRH5変異体ポリヌクレオチドは、FcRH5ポリペプチドをコードし、好ましくは緊縮ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、本明細書中に開示されるような全長FcRH5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズすることが可能である核酸分子である。FcRH5変異体ポリペプチドは、FcRH5変異体ポリヌクレオチドによりコードされるものであり得る。
「全長コード領域」という用語は、FcRH5ポリペプチドをコードする核酸に言及するに際して用いられる場合、本発明の全長FcRH5ポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列を指す(これはしばしば、添付の図面における出発および停止コドン(それを含める)間に示される)。「全長コード領域」という用語は、ATCC寄託核酸に言及するに際して用いられる場合、ATCCに寄託されたベクター中に挿入されるcDNAのFcRH5ポリペプチドコード部分を指す(これはしばしば、添付の図面における開始および停止コドン(それを含める)間に示される)(開始および停止コドンは、図中で太字で示され、下線を付される)。
「単離される」は、本明細書中に開示される種々のFcRH5ポリペプチドを記述するために用いられる場合、同定され、そしてその天然環境の構成成分から分離され、および/または回収されるポリペプチドを意味する。その天然環境の夾雑成分は、典型的には、ポリペプチドに関する治療的使用を妨げる物質であり、例としては、酵素、ホルモンならびにその他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端または内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、あるいは(2)クーマシーブルー、好ましくは銀染色を用いて、非還元または還元条件下でSDS−PAGEにより均質になるまで、精製される。FcRH5ポリペプチド天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないため、単離ポリペプチドはin situで組換え細胞内にポリペプチドを含む。しかしながら、普通は、単離ポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離」FcRH5ポリペプチドコード核酸または他のポリペプチドコード核酸は、それが、同定され、普通は、ポリペプチドコード核酸の天然供給源中で会合される少なくとも1つの夾雑核酸分子から分離される核酸分子である。単離ポリペプチドコード核酸分子は、それが実際に見出される形態または設定と異なって存在する。したがって、単離ポリペプチドコード核酸分子は、それが天然細胞中に存在するような特定のポリペプチドコード核酸分子と区別される。しかしながら、単離ポリペプチドコード核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色***置で存在するポリペプチドを普通は発現する細胞中に含入されるポリペプチドコード核酸分子を包含する。
「制御配列」という用語は、特定宿主生物体中での操作可能的に連結されるコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適している制御配列としては、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に配置される場合、「操作可能的に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダーに関するDNAは、それがポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドに関するDNAと操作可能的に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列と操作可能的に連結され;あるいはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促すよう置かれる場合、コード配列と操作可能的に連結される。一般的に、「操作可能的に連結される」は、連結されているDNA配列が連続しており、そして分泌リーダーの場合、連続的で且つ読取り枠内にある、ということを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続でなければならないというわけではない。連結は、都合のよい制限部位での結紮により成し遂げられる。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーが、慣用的実施に従って用いられる。
ハイブリダイゼーション反応の「緊縮性」は、当業者により容易に確定され、一般的に、プローブ長、洗浄温度および塩濃度に依存する経験的算定である。概して、プローブが長いほど、適正なアニーリングにはより高い温度を要するが、一方、プローブが短いほど、より低い温度を要する。ハイブリダイゼーションは、一般的には、相補鎖がそれらの融解温度より低い環境中に存在する場合、再アニーリングする変性DNAの能力によって決まる。プローブとハイブリダイズ可能配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、用いられ得る相対温度は高い。その結果、相対温度が高いほど反応条件は緊縮性が高くなりがちであるが、一方、温度が低いとそれは生じにくい。ハイブリダイゼーション反応についてのさらなる詳細ならびに緊縮性の説明に関しては、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers (1995)を参照されたい。
「緊縮条件」または「高緊縮性条件」は、本明細書中で定義される場合、(1)洗浄のために低イオン強度および高温を用いる、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(50EC);(2)ハイブリダイゼーション中、変性剤、例えばホルムアミド、例えば50%(v/v)ホルムアミドを0.1%ウシ結成アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5(750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)とともに用いる(42EC);あるいは(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハード溶液、音波処理サケ***DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストラン(42EC)を用いて溶液中で一晩ハイブリダイゼーションし、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42ECで10分間洗浄後、0.1×SSC含有EDTA(55EC)からなる高緊縮性洗浄液で10分間洗浄する、ということにより確認され得る。
「中等度緊縮条件」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989により記載されたように確認され得るし、洗浄溶液、および上記のものより低緊縮性のハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を包含する。中等度緊縮条件の一例は、溶液(20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード溶液、10%硫酸デキストランおよび20mg/ml変性剪断サケ***DNA)中での37ECでの一晩インキュベーションと、その後の1×SSC(約37〜50EC)中でのフィルターの洗浄である。プローブ長等のような因子を考慮することが必要である場合、温度、イオン強度等を調整する方法を当業者は理解する。
「タグされるエピトープ」という用語は、本明細書中で用いる場合、「タグポリペプチド」と融合されるFcRH5ポリペプチドまたは抗FcRH5抗体を含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、抗体が作られ得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、さらに、それが融合されるポリペプチドの活性を妨げないよう、十分に短い。タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないよう、かなり独特でもある。適切なタグポリペプチドは、一般的に、少なくとも6個のアミノ酸残基を、通常は約8〜50個のアミノ酸残基(好ましくは約10〜20個のアミノ酸残基)を有する。
本明細書中の目的のための「活性な」または「活性」は、天然FcRH5の生物学的および/または免疫学的活性を保持するFcRH5ポリペプチドの形態(複数可)を指し、この場合、「生物学的」活性は、ネイティブまたは天然FcRH5により保有される抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の、ネイティブまたは天然FcRH5により引き起こされる生物学的機能(抑制的または刺激的)を指し、そして「免疫学的」活性は、ネイティブまたは天然FcRH5により保有される抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
「アンタゴニスト」という用語は、最も広い意味で用いられ、ネイティブFcRH5ポリペプチドの生物学的活性を、部分的にまたは完全に、遮断し、抑制し、または中和する任意の分子を包含する。同様に、「アゴニスト」という用語は、最も広い意味で用いられ、ネイティブFcRH5ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を包含する。適切なアゴニストまたはアンタゴニスト分子は、具体的には、アゴニストまたはアンタゴニスト抗体または抗体断片、ネイティブFcRH5ポリペプチド、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小有機分子の断片またはアミノ酸配列変異体等を包含する。FcRH5ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法は、FcRH5ポリペプチドを、候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させること、そしてFcRH5ポリペプチドと普通は関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することからなる。
「精製される」は、分子が、それが含有される試料の少なくとも95重量%または少なくとも98重量%の濃度で存在する、ということを意味する。
「単離される」核酸分子は、例えばその天然環境中で、それが普通に会合される少なくとも1つの他の核酸分子から分離される核酸分子である。単離核酸分子は、さらに、核酸分子を普通に発現する細胞中に含入される核酸分子を包含するが、しかし核酸分子は、染色体外に、あるいはその天然染色***置とは異なる染色***置に存在する。
「ベクター」という用語は、本明細書中で用いる場合、それが連結された別の核酸を運搬し得る核酸分子を指す。ベクターの一型は「プラスミド」であり、これは、付加的DNAセグメントが結紮され得る環状二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは、ファージベクターである。別の型のベクターは、ウイルスベクターであって、この場合、付加的DNAセグメントはウイルスゲノムに結紮され得る。あるベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製し得る(例えば、複製の細菌性起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入時に宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それにより宿主ゲノムとともに複製される。さらに、あるベクターは、それらが操作可能的に連結される遺伝子の発現を指図し得る。このようなベクターは、「組換え発現ベクター」(または単に「組換えベクター」)として本明細書中で言及される。概して、組換えDNA技術において有用性を有する発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる形態であるので、互換的に用いられ得る。
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書中で互換的に用いられる場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼにより、あるいは合成反応により、ポリマー中に組み入れられ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの集合の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分により遮られ得る。ポリヌクレオチドは、合成後、例えばラベルとの結合により、さらに修飾され得る。他の型の修飾としては、例えば「キャップ」、類似体による1つ以上の天然ヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電性結合によるもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)および荷電性結合によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分を含有するもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシン等)、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレン等)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合によるもの(例えば、アルファ・アノマー核酸等)、ならびに非修飾形態のポリヌクレオチド(複数可)が挙げられる。さらに、糖中に普通に存在するヒドロキシル基のいずれかが、例えばホスホネート基、ホスフェート基により取って代わられ、標準的保護基により保護され、あるいは付加的ヌクレオチドとの付加的結合を調製するために活性化され得るし、あるいは固体または半固体支持体と結合され得る。5’および3’末端OHは、リン酸化され得るし、あるいは1〜20個の炭素原子を有するアミンまたは有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルも、標準保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、一般的に当該技術分野で既知である類似形態のリボースまたはでオキシリボース糖も含有し、例としては、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似体、アルファ−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体および非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが挙げられる。1つ以上のホスホジエステル結合が、代替的連結基に取って代わられ得る。これらの代替的連結基としては、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR.sub.2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH.sub.2(「ホルムアセタル」)(式中、RまたはR’は、各々独立して、H、あるいは置換または非置換アルキル(1〜20C)である)(任意に、エーテル(−O−)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含有する)に取って代わられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。前記説明は、RNAおよびDNAを含めて、本明細書中で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で用いる場合、一般的に(しかし必ずというわけではない)約200ヌクレオチド長未満である短い、一般的に一本鎖の、一般的に合成のポリヌクレオチドを一般的に指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく且つ十分にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
「癌」および「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは説明する。癌の例としては、造血系癌または血液関連癌、例えばリンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されず、脾臓の癌およびリンパ節の癌も、そして癌腫、芽細胞腫および肉腫も含まれる。癌のさらに特定の例としては、B細胞関連癌、例えば高度、中等度および低度リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、例えば粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫、および非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、び漫性大細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ならびにホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫)、ならびに白血病(例えば二次性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えばB細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、骨髄性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)および骨髄形成異常)、ならびにその他の血液学的および/またはB細胞またはT細胞関連癌が挙げられる。付加的な造血系細胞、例えば多形核白血球、例えば好塩基球、好酸球、好中球および単球、樹状細胞、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞の癌も包含される。以下から選択される癌性B細胞増殖性障害も包含される:リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫。B細胞癌の起源としては、以下のものが挙げられる:辺縁帯B細胞リンパ腫は辺縁帯における記憶B細胞中で始まり、濾胞性リンパ腫およびび漫性大B細胞リンパ腫は胚中心の明帯の中心細胞で生じ、慢性リンパ球性白血病および小リンパ球性白血病はB1細胞(CD5+)で生じ、マントル細胞リンパ腫はマントル帯中のナイーブB細胞で生じ、バーキットリンパ腫は胚中心の暗帯の中心芽細胞で生じる。本明細書中で「造血細胞組織」と呼ばれる造血細胞を含む組織としては、胸腺および骨髄、ならびに末梢リンパ様組織、例えば脾臓、リンパ節、粘膜と関連したリンパ様組織、例えば腸関連リンパ様組織、扁桃、パイエル板および虫垂、ならびに他の粘膜に関連したリンパ様組織、例えば気管支内層が挙げられる。さらにこのような癌の特定の例としては、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、白血病およびその他のリンパ増殖性障害、ならびに種々の型の頭および首部癌が挙げられる。
「B細胞悪性腫瘍」としては、本明細書中では、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば低度/濾胞性NHL、小リンパ球性(SL)NHL、中等度/濾胞性NHL、中等度び漫性NHL、高度免疫芽細胞性NHL、高度リンパ芽球性NHL、高度小非開裂細胞NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫およびワルデンシュトローム・マクログロブリネミア、非ホジキンリンパ腫(NHL)、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、無痛性NHL、例えば再発性無痛性NHLおよびリツキシマブ難治性無痛性NHL;白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽細胞性白血病;マントル細胞リンパ腫;ならびにその他の血液学的悪性腫瘍が挙げられる。このような悪性腫瘍は、FcRH5のようなB細胞表面マーカーに対して向けられる抗体で処置され得る。このような疾患は、B細胞表面マーカー、例えばFcRH5に対して向けられる抗体の投与により処置されるよう本明細書中で意図され、そして、非接合(「裸」)抗体、または本明細書中で開示されるような細胞傷害剤と接合される抗体の投与を包含する。このような疾患は、本発明の抗FcRH5抗体または抗FcRH5抗体薬剤接合体を、同時に、または連続して投与される別の抗体または抗体薬剤接合体、別の細胞傷害剤、放射線照射またはその他の処置と組合せて包含する併用療法により処置されることも本明細書中で意図される。本発明の例示的治療方法において、本発明の抗FcRH5抗体は、抗CD20抗体、免疫グロブリンまたはそのCD20結合断片と組合せて、一緒にまたは逐次的に、投与される。抗CD20抗体は、裸抗体または抗体薬剤接合体であり得る。併用療法の一実施形態では、抗FcRH5抗体は本発明の一抗体であり、抗CD20抗体はリツキサン(登録商標)(リツキシマブ)である。
「非ホジキンリンパ腫」または「NHL」という用語は、本明細書中で用いる場合、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を指す。ホジキンリンパ腫は、一般的に、ホジキンリンパ腫におけるリード・シュテンベルク細胞の存在、ならびに非ホジキンリンパ腫における上記細胞の非存在により、非ホジキンリンパ腫と区別され得る。本明細書中で用いられる場合の当該用語に包含される非ホジキンリンパ腫の例としては、当該技術分野で既知の分類スキーム、例えば、Color Atlas of Clinical Hematology (3rd edition), A. Victor Hoffbrand and John E. Pettit (eds.) (Harcourt Publishers Ltd., 2000)に記載されたような改訂欧州米国リンパ腫(REAL)スキームに従って当業者(例えば、癌学者または病理学者)により同定される任意のものが挙げられる。特に、図11.57、11.58および11.59の一覧を参照されたい。さらに具体的な例としては、再発性または難治性NHL、最前線低度NHL、III/IV期NHL、化学療法抵抗性NHL、前駆体Bリンパ芽球白血病および/またはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病および/または前リンパ球性白血病および/または小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫、および/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、節外辺縁帯−MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫および/または形質細胞性骨髄腫、低度/濾胞性リンパ腫、中等度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中等度び漫性NHL、び漫性大B細胞リンパ腫、攻撃性NHL(例えば、攻撃性最前線NHL、および攻撃性再発性NHL)、自系幹細胞移植後に再発するかまたはそれに対して難治性のNHL、原発性縦隔大B細胞リンパ腫、原発性滲出リンパ腫、高度免疫芽細胞NHL、高度リンパ芽球NHL、高度小非開裂細胞NHL、大腫瘤病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(末梢性)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫および/またはセザリー症候群、皮膚リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
形質細胞障害は、形質細胞クローンの非制御***または増殖に起因する。形質細胞は、活性化Bリンパ球(すなわち、B細胞)から生じる。各B細胞は、B細胞受容体として既知であり、外来物質、すなわち抗原に特異的なその細胞表面に並べられる独自の受容体を産生する。B細胞受容体がそのコグネイト抗原と結合すると、受容体を発現している細胞は活性化されて細胞周期に再び入って、それ自体の多数のクローンコピーを産生する。クローンは、主に骨髄中に存在する、そして抗体として血流中に放出されるB細胞受容体のコピーを産生するよう特殊化される形質細胞に成熟する。形質細胞障害では、形質細胞または親B細胞は遺伝子損害を蒙って、細胞の***および/または活性の抑制、あるいはそれに関する正常な制御に対する非感受性を生じる。このような細胞に由来する娘形質細胞は、それらが抑制なく***し、および/または過剰量の同一免疫グロブリン(抗体)を生成し得るという点で悪性である。しばしば、産生される免疫グロブリンは不完全であり、あるいは血清、組織または器官(特に腎臓)中でのタンパク質(具体的障害によって、モノクローナルタンパク質、Mタンパク質、異常タンパク質またはアミロイドタンパク質としても知られている)の蓄積を引き起こして、器官の機能障害および/または不全をもたらし得る。形質細胞障害としては、意義不明のモノクローナルガンマグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫(MM)、マクログロブリン血症、重鎖病および全身性軽鎖アミロイドーシス(AL)が挙げられ、これらはクローンの増殖性、骨髄関与の程度、ならびに発現されたMタンパク質の型に基づいて識別される。付加的形質細胞障害は、孤立性形質細胞腫、骨髄外形質細胞腫、多発性孤立性形質細胞腫、形質細胞白血病、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、B細胞非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病である。新規の免疫療法、例えばリツキシマブおよびアレムツヅマブは、いくつかのB細胞悪性腫瘍において改善された無病および全体的生存を示すが、しかし、標的抗原(それぞれCD20およびCD52)は悪性クローン性形質細胞により十分に発現されないため、このような療法は一部は形質細胞障害の治療に有効であると立証されていない。したがって、形質細胞障害の改善された療法の確認および開発が必要である(米国特許公開出願20080166742および20080317745(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)参照)。
B細胞、形質細胞および多発性骨髄腫細胞(例えばMM患者試料からの細胞)上のFcRH5(IRTA2)の発現は、従来、示されている(米国特許公開出願20060251662(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)参照)。したがって、多発性骨髄腫試料におけるFcRH5発現パターンの点から見て、形質細胞傷害、例えば本明細書中に記載されたもの(すなわち多発性骨髄腫)、ならびに抗体分泌に関連した疾患、例えばアレルギーまたは自己免疫疾患を含めた哺乳動物における腫瘍の療法のための優れた一標的である。
「障害」は、本発明の物質/分子または方法を用いた処置から利益を得る任意の症状である。これは、慢性および急性の障害または疾患、例えば哺乳動物が当該障害に罹りやすくする病理学的状態を包含する。本明細書中で処置されるべき障害の例としては、癌性症状、例えば悪性および良性腫瘍;非白血病およびリンパ性悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部およびその他の腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性および胞胚腔性障害;ならびに炎症性、免疫学的、およびその他の血管新生関連障害が挙げられるが、これらに限定されない。障害としては、さらに、癌性症状、例えばB細胞増殖性障害および/またはB細胞腫瘍、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常細胞増殖に関連した障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は癌である。
「腫瘍」は、本明細書中で用いる場合、悪性であれ、良性であれ、全ての新生物性細胞成長および増殖を、ならびに全ての前癌性および癌性細胞および組織を指す。
「自己免疫疾患」は、本明細書中では、個体自身の組織または器官、あるいは共分離物またはその症状発現、あるいはそれから結果的に生じる症状から生じ、それに対して向けられる疾患または障害である。これらの自己免疫性および炎症性障害の多くにおいて、多数の臨床的および実験室マーカー、例えば高ガンマグロブリン血症、高レベルの自己抗体、組織中の抗原−抗体複合体沈殿物、コルチコステロイドまたは免疫抑制処置からの利益、ならびに罹患組織中のリンパ様細胞凝集体(これらに限定されない)が存在し得る。B細胞媒介性自己免疫性疾患に関するいずれか1つの理論に限定せずに考えると、B細胞は、多数の機械学的経路、例えば自己抗体産生、免疫複合体形成、樹状細胞およびT細胞活性化、サイトカイン合成、直接的ケモカイン放出、ならびに異所性新リンパ球生成のための病巣の提供によりヒト自己免疫疾患における病原性作用を実証する。これらの経路は各々、自己免疫疾患の病態に、異なる程度に関与し得る。
「自己免疫疾患」は、器官特異的疾患であり(すなわち、免疫応答は、内分泌系、造血系、皮膚、心臓肺系、胃腸および肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経形等のような器官系に特異的に向けられる)、あるいは多数の器官系に影響を及ぼし得る全身性疾患(例えば、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、関節リウマチ、多発性筋炎等)であり得る。好ましいこのような疾患としては、自己免疫性リウマチ学的障害(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、狼瘡、例えばSLEおよび狼瘡性腎炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、寒冷グロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群ならびに乾癬性関節炎)、自己免疫性胃腸および肝臓障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性結腸炎およびクローン病)、自己免疫性胃炎および悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ならびにセリアック病)、血管炎(例えば、ANCA陰性血管炎およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス血管炎、ウェーゲナー肉芽腫症および顕微鏡的多発性血管炎)、自己免疫性神経学的障害(例えば、多発性硬化症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病および自己免疫性多発性神経障害)、腎臓障害(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群およびベルガー病)、自己免疫性皮膚科学的障害(例えば、乾癬、蕁麻疹、蕁麻疹、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および皮膚紅斑性狼瘡)、血液学的障害(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病および自己免疫性溶血性貧血)、アテローム硬化症、ブドウ膜炎、自己免疫性聴覚疾患(例えば、内耳疾患および聴力損失)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植および自己免疫性内分泌障害(例えば、糖尿病関連自己免疫疾患、例えばインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、アジソン病、ならびに自己免疫性甲状腺疾患(例えば、グレーブス病および甲状腺炎))が挙げられる。さらに好ましいこのような疾患としては、例えば関節リウマチ、潰瘍性結腸炎、ANCA関連血管炎、狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎および糸球体腎炎が挙げられる。
いくつかの場合に上記のものを包含する本明細書中で限定されるような他の自己免疫疾患の具体的例としては、関節炎(急性および慢性の関節リウマチ、例えば若年発症性関節リウマチ、ならびにリウマチ性滑膜炎、痛風または通風性関節炎、急性免疫学的関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、II型コラーゲン誘発性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、骨関節炎、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、更年期関節炎、エストロゲン欠乏性関節炎、および強直性脊椎炎/リウマチ様脊椎炎)、自己免疫性リンパ増殖性疾患、炎症性過増殖性皮膚疾患、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬および爪の乾癬、アトピー、例えば花粉症およびヨブ症候群のようなアトピー性疾患、皮膚炎、例えば接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、剥離性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、蕁麻疹、疱疹性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激性接触性皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、x連鎖型高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹および慢性特発性蕁麻疹、例えば慢性自己免疫性蕁麻疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(例えば全身性強皮症)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎−眼MS、原発性進行性MS(PPMS)および再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫性媒介性消化器疾患、消化器炎症、結腸炎、例えば潰瘍性結腸炎、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的結腸炎、コラーゲン結腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎および経壁結腸炎、ならびに自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎症、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば成人性または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ブドウ膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液学的障害、移植片対宿主病、血管性浮腫、例えば遺伝性血管浮腫、髄膜炎におけるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢の掻痒、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫症状のための突発性聴覚損失、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎および辺縁系および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎または自己免疫性ブドウ膜炎、糸球体腎炎(GN)(ネフローゼ症状を伴う場合と伴わない場合)、例えば慢性または急性糸球体腎炎、例えば原発性GN、免疫媒介性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、膜性または膜性増殖性GN(MPGN)、例えばI型およびII型ならびに急速進行性GN(RPGN)、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭***炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、層状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前癌性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー性症状および応答、食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、希少性アレルギー性障害、例えば肥満細胞症、アレルギー反応、湿疹、例えばアレルギー性またはアトピー性湿疹、乾皮性湿疹、発汗異常性湿疹および水疱性掌蹠湿疹、喘息、例えば気管支喘息、気管支喘息および自己免疫性喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症性応答を伴う症状、妊娠中の胎児A−B−O血液型のような外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着欠乏症、狼瘡、例えば狼瘡性腎炎、狼瘡性脳炎、小児狼瘡、非腎性狼瘡、腎臓外狼瘡、円板状狼瘡、円板状紅斑性狼瘡、狼瘡性脱毛症、SLE、例えば皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLE、新生児狼瘡症候群(NLE)および播種性紅斑性狼瘡、若年発症性(I型)真性糖尿病、例えば、小児IDDM、成人発症型真性糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性結腸炎、糖尿病性大型動脈障害サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延性過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、非顆粒球増加症、血管炎(例えば、大型血管の血管炎、例えばリウマチ性多発性筋痛および巨細胞(高安)動脈炎、中型血管の血管炎、例えば川崎病および結節性多発性動脈炎/結節性動脈周囲炎、免疫血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、壊死性血管炎、例えばフィブリン様壊死性血管炎、および全身性壊死性血管炎、ANCA陰性血管炎、およびANCA関連血管炎、例えばチャーグ・ストラウス症候群(CSS)、ウェーゲナー肉芽腫症、ならびに顕微鏡的多発性血管炎)、一過性動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血または免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(anemia perniciosa)、アジソン病、真正赤血球性貧血または無形成(PRCA)、第III因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、血球減少症、例えば汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷または出血に派生するもの、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、単神経炎、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スチーブン・ジョンソン症候群、類天疱瘡または天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡、瘢痕性(粘膜)類天疱瘡、皮膚類天疱瘡、尋常性天疱瘡、腫瘍随伴天疱瘡、落葉性天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡および紅斑性天疱瘡、後天性表皮水疱症、眼性炎症、好ましくはアレルギー性眼性炎症、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病または症候群、自己免疫性症状のための熱損傷、子癇前症、免疫複合体障害、例えば免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、神経炎症性障害、多発性神経障害、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経障害またはIgM媒介性神経障害、血小板減少症(例えば、心筋梗塞患者が発症)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン誘発性血小板減少症および自己免疫性または免疫媒介性血小板減少症、例えば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、例えば慢性または急性ITP、強膜炎、例えば特発性角−強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫性疾患、例えば自己免疫性***および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、上皮小体機能低下症、自己免疫性内分泌疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)または亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、グレーブス眼性疾患(眼症または甲状腺関連眼症)、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群、例えばI型(または多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴性症候群、例えば神経学的腫瘍随伴性症候群、例えばランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群、スティフマンまたはスティフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎またはアレルギー性脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経ミオトニー、眼球クローヌスまたは眼球クローヌス・筋クローヌス症候群(OMS)および感覚性神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、類狼瘡性肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、肺炎、例えばリンパ性間質性肺炎(LIP)、閉鎖性細気管支炎(非移植性)対NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球皮膚症、角層下膿疱性皮膚炎、一過性棘融解性皮膚炎、肝硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変および肺肝硬変、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、寒冷グロブリン血症、例えば混合寒冷グロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性聴覚損失、多発性軟骨炎、例えば難治性または再発性または再発性多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、角膜炎、例えばコーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増加症、原発性リンパ球増加症(これはモノクローナルB細胞リンパ球増加症、例えば良性モノクローナル高ガンマグロブリン血症および意義未確定のモノクローナル高ガンマグロブリン血症(MGUS)を含む)、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャンネル病、例えば癲癇、片頭痛、不整脈、筋障害、難聴、失明、周期性麻痺およびCNSのチャンネル病、自閉症、炎症性筋障害、病巣性または分節性あるいは病巣性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓学的障害、繊維筋痛、多発性内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例えば自己免疫性脱髄性疾患および慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭部脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症および末梢血管拡張症)、(抗精原細胞抗体のための)雄性および雌性自己免疫性不妊症、混合型結合組織疾患、シャガス病、リウマチ熱、反復性流産、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎および繊維化性肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、寄生虫性疾患、例えばリーシュマニア症、kypanosomiasis、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋繊維症、び漫性間質性肺繊維症、間質性肺繊維症、繊維化縦隔炎、肺繊維症、特発性肺繊維症、嚢胞性繊維症、眼内炎、持久性***性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、あるいはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染、敗血症(全身性炎症性応答症候群(SIRS))、内毒素血症、膵炎、甲状腺機能亢進症、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン・バーウイルス感染、おたふく風邪、エバンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄ろう、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛症、慢性過敏性肺炎、結膜炎、例えば春季カタル、乾性角結膜炎および流行性角結膜炎、特発性ネフローゼ症候群、微小変化ネフローゼ、良性家族性および虚血再還流損傷、移植臓器再還流、自己免疫性網膜症、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害(脳血管機能不全)、例えば動脈硬化性脳症および動脈硬化性網膜症、***形成欠如(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、寒冷グロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylactica)、アレルギー性
腸炎、ライ性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハンマン・リッチ病、感覚神経性聴覚損失、発作性ヘモグロビン尿症(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、限局性回腸炎、白血球減少症、感染性単核球症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経性眼炎(交感神経性眼炎)、新生児眼炎、視神経炎、肉芽腫性***、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルヴァン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮症、非悪性胸腺腫、リンパ濾胞性胸腺炎、白斑、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球接着欠乏症、サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延性過敏症に関連した免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、自己免疫性多発性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合型結合組織疾患、ネフローゼ症候群、膵島炎、多発性内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群、例えばI型多腺性症候群、成人発症型特発性上皮小体機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば遅延性心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、血色素症、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、アレルギー性副鼻腔炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、好酸球増加−筋痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球増加性肺炎、局所性肺好酸球増加症、気管支アスペルギルス症、アスペルギルス腫または好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、脊椎関節症、血清反応陰性脊椎関節症、多発性内分泌性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性粘膜皮層カンジダ症、ブルトン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッヒ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、コラーゲン性疾患に関連した自己免疫性障害、リウマチ、例えば慢性関節リウマチ、リンパ腺炎、血圧応答の低下、血管機能不全、組織損傷、心臓血管性虚血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、および血管新生を伴う疾患、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再還流損傷、虚血性再還流障害、心筋または他の組織の再還流損傷、リンパ腫様気管気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性成分を伴う皮膚疾患、多臓器不全、水疱性疾患、腎臓皮質壊死、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症性障害、眼および眼窩の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、ナルコレプシー、急性重篤性炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎および子宮内膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。このような疾患は、本明細書中では、B細胞表面マーカー、例えばFcRH5と結合する抗体の投与、例えば、非接合(「裸」)抗体または本明細書中で開示されるような細胞傷害剤と接合された抗体の投与により処置されるよう意図される。このような疾患は、本明細書中では、本発明の抗FcRH5抗体または抗FcRH5抗体薬剤接合体を、同時にまたは順次投与される別の抗体または抗体薬剤接合体、別の細胞傷害剤、放射線、またはその他の処置と組合せて包含する併用療法により処置されるようにも意図される。
「処置すること」または「処置」または「軽減」は、療法的処置および予防的または防止的測定の両方を指し、この場合、目的は、標的病理学的状態または障害を防止するかまたは遅らせる(低下させる)ことである。処置を必要とする者としては、障害を既に有する者、ならびに障害を有する傾向がある者または障害が防止されるべきであるものが挙げられる。対象または哺乳動物は、本発明の方法に従って治療的量の抗FcRH5抗体を投与後に、以下のうちの1つ以上における観察可能なおよび/または測定可能な低減または非存在を患者が示す場合、FcRH5ポリペプチド発現性癌に対して首尾よく「処置」される:癌細胞の数の低減または癌細胞の非存在;腫瘍サイズの低減;末梢器官中への癌細胞浸潤、例えば柔組織または骨への癌の蔓延の抑制(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止する);腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止する);腫瘍増殖のある程度の抑制;および/または特定の癌に関連した症候のうちの1つ以上のある程度の軽減;罹患率および死亡率の低減、ならびに生活の質問題の改善。抗FcRH5抗体が癌細胞の増殖を防止しおよび/または存在する癌細胞を殺害し得た結果、それは細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。
疾患の上首尾の処置および改善を査定するための上記のパラメーターは、医者によく知られた慣用的手法により容易に測定可能である。癌療法に関しては、例えば、疾患進行までの時間(TTP)を査定し、および/または応答速度(RR)を決定することにより、効率が測定され得る。転移は、段階区分試験により、ならびに骨への蔓延を確定するためのカルシウムレベルおよびその他の酵素に関する骨のスキャンおよび試験により確定され得る。領域中の骨盤およびリンパ節への拡散を探すために、CTスキャンも実行され得る。胸部X線撮影ならびに既知の方法による肝臓酵素レベルの測定を用いて、それぞれ肺および肝臓への転移を探す。疾患をモニタリングするためのその他の慣例的方法としては、経直腸的超音波検査(TRUS)および経直腸的針生検(TRNB)が挙げられる。
より限局性の癌である膀胱癌に関して、疾患の進行を確定するための方法としては、膀胱鏡検査による尿の細胞学的評価、尿中の血液の存在に関するモニタリング、超音波検査または静脈内腎盂X線像、コンピューター断層撮影(CT)および磁気共鳴画像処理(MRI)による尿路上皮の可視化が挙げられる。遠隔転移の存在は、腹部のCT、胸部X線または骨格の放射性核種画像処理により査定され得る。
「長期」投与は、長期間、初期治療効果(活性)を保持するために、短期方式とは対照的に、連続方式での作用物質(複数可)の投与を指す。「間欠的」投与は、中断せずに連続して実行されるわけではなく、むしろ事実上周期的である処置である。
「個体」は、脊椎動物である。ある実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物としては、農場動物(例えば雌牛)、競技動物、ペット(例えばネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、哺乳動物はヒトである。
癌の処置の(癌の症候の軽減する)目的のための「哺乳動物」は、哺乳類として分類される任意の動物、例えばヒト、飼育および農場動物、ならびに動物園、競技またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ等を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
1つ以上のさらなる治療薬「と組合せた」投与は、同時的(共存的)、ならびに任意の順序での連続的投与を包含する。
「担体」は、本明細書中で用いる場合、用いられる投与量および濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に対して非毒性である製薬上許容可能な担体、賦形剤または安定剤を包含する。しばしば、生理学的に許容可能な担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容可能な担体の例としては、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン;単糖、二糖およびその他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびプルロニック(登録商標)が挙げられる。
「固相」または「固体支持体」とは、本発明の抗体が接着するかまたは結合し得る非水性マトリックスを意味する。本明細書中に包含される固相の例としては、ガラス(例えば制御多孔質ガラス)、多糖(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンの一部または全部を形成するものが挙げられる。ある実施形態では、状況によって、固相は検定プレートのウェルを含み得る;他の場合、それは精製カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)である。この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されているものと同様の、離散粒子の不連続固相も包含する。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤(例えばFcRH5抗体)の送達のために有用である種々の型の脂質、リン脂質および/または界面活性剤からなる小胞である。リポソームの構成成分は、一般に、生物学的膜の脂質配列と類似の二重層形成で整列される。
「小」分子または「小」有機分子は、約500ダルトンより小さい分子量を有すると本明細書中では定義される。
「個体」、「対象」または「患者」は、脊椎動物である。ある実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物としては、農場動物(例えば雌牛)、競技動物、ペット(例えばネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、哺乳動物はヒトである。
「薬学的処方物」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態であり、そして処方物が投与される対象に対して非許容的に有毒である付加的構成成分を含有しない調製物を指す。このような処方物は、滅菌性であり得る。
「滅菌性」処方物は、全ての生きている微生物およびそれらの胞子を含有しない無菌性である。
本明細書中に開示されるような抗体の「有効量」は、具体的に記述される目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、実験的にならびに慣例的方法で、記述される目的に関して確定され得る。
「治療的有効量」という用語は、対象または哺乳動物における疾患または障害を「処置する」ために有効な抗体または他の薬剤の量を指す。癌の場合、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を低減し;腫瘍サイズを低減し;周囲器官への癌細胞浸潤を抑制し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止する);腫瘍転移を抑制し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止する);腫瘍増殖をある程度抑制し;および/または癌に関連した症候のうちの1つ以上をある程度軽減する。「処置する」についての本明細書中の定義を参照されたい。ある程度、薬剤は、増殖を防止し、および/または存在する癌細胞を殺害し得る。それは、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するのに必要な投与量で必要な時間で有効な量を指す。典型的には(しかし必ずというわけではないが)、予防的用量は疾患の前または早期段階で対象に用いられるため、予防的有効量は治療的有効量より少ない。
抗FcRH5抗体の「増殖抑制量」は、in vitroまたはin vivoで、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖を抑制し得る量である。新生物細胞増殖を抑制する目的のための抗FcRH5抗体の「増殖抑制量」は、実験的にまたは慣例的方法で決定され得る。
抗FcRH5抗体の「細胞傷害量」は、in vitroまたはin vivoで、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の破壊を引き起こし得る量である。新生物細胞増殖を抑制する目的のための抗FcRH5抗体の「細胞傷害量」は、実験的にまたは慣例的方法で決定され得る。
「FcRH5発現細胞」は、細胞表面に、または分泌形態で、内因性またはトランスフェクト化FcRH5ポリペプチドを発現する細胞である。「FcRH5発現癌」は、細胞表面に存在するFcRH5ポリペプチドを有するか、あるいはFcRH5ポリペプチドを産生または分泌する細胞を含む癌である。「FcRH5発現癌」は、任意に、抗FcRH5抗体をそれと結合し得る、そして癌に関して治療的効果を有するよう、十分なレベルのFcRH5ポリペプチドをその細胞表面に産生する。別の実施形態では、「FcRH5発現癌」は、任意に、抗FcRH5抗体アンタゴニストがそれと結合し得る、そして癌に関して治療的効果を有するよう、十分なレベルのFcRH5ポリペプチドを産生し、分泌する。後者に関しては、アンタゴニストは、腫瘍細胞による分泌FcRH5ポリペプチドの産生および分泌を低減し、抑制し、または防止するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。FcRH5ポリペプチドを「過剰発現する」癌は、同一組織型の非癌性細胞と比較して、有意に高レベルのFcRH5ポリペプチドをその細胞表面に有するものである。このような過剰発現は、遺伝子増幅により、あるいは転写または翻訳増大により引き起こされ得る。FcRH5ポリペプチド過剰発現は、細胞の表面に存在するかまたは細胞により分泌されるFcRH5タンパク質のレベル増大を評価することにより(例えば、FcRH5ポリペプチドをコードする単離核酸から組換えDNA技法を用いて調製され得る単離FcRH5ポリペプチドに対して調製される抗FcRH5抗体を用いる免疫組織化学検定;FACS分析等により)、検出または予後検定で確定され得る。代替的には、または付加的には、例えば、FcRH5コード核酸またはその相補体に対応する核酸ベースのプローブを用いる蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH:WO98/45479(1998年10月公開)参照)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法、例えば実時間定量的PCR(RT−PCR)により、細胞中のFcRH5ポリペプチドコード核酸またはmRNAのレベルを測定し得る。例えば抗体ベースの検定を用いて、生物学的流体、例えば血清中のシェッド(shed)抗原を測定することにより、FcRH5ポリペプチド過剰発現を試験することもある(例えば米国特許第4,933,294号(1990年6月12日発行);WO91/05264(1991年4月18日公開);米国特許第5,401,638号(1995年3月28日発行);およびSias et al., J. Immunol. Methods 132: 73-80 (1990)も参照)。上記検定のほかに、種々のin vivo検定が当業者に利用可能である。例えば、検出可能なラベル、例えば放射性同位体で任意にラベルされる抗体に患者の身体内の細胞を曝露し得るし、そして患者における細胞と抗体との結合は、例えば放射能に関する外部スキャニングにより、あるいは抗体に予め曝露された患者から採取された生検を分析することにより、評価され得る。
本明細書中で用いる場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを併有する抗体様分子を意味する。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、「異種」である)所望の結合特異性を有するアミノ酸配列、ならびに免疫グロブリン定常ドメイン配列の融合物からなる。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的には、受容体またはリガンドの少なくとも結合部位を含む連続アミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3またはIgG−4サブタイプ、IgA(例えばIgA−1およびIgA−2)、IgE、IgDまたはIgMから得られる。
「ラベル」という語は、本明細書中で用いる場合、「ラベル化」抗体を生じるよう、抗体と直接または間接的に接合される検出可能な化合物または組成物を指す。ラベルは、それ自体により検出可能であり得る(例えば、放射性同位体ラベルまたは蛍光ラベル)し、あるいは、酵素的ラベルの場合、検出可能である基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し得る。
「細胞傷害剤」という用語は、本明細書中で用いる場合、細胞の機能を抑制するかまたは防止する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。本用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位体)、化学療法薬、例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポキシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、またはその他の挿入剤、酵素およびその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、ならびに細菌、真菌、植物または動物起源の毒素、例えば小分子毒素または酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)、ならびに以下に開示される種々の抗腫瘍または抗癌剤を包含するよう意図される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「毒素」は、細胞の成長または増殖に及ぼす有害作用を有し得る物質である。
「化学療法薬」は、作用メカニズムに関係なく、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法薬のクラスの例としては、アルキル化剤、抗代謝物質、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤およびキナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。化学療法薬は、「標的化療法」および慣用的化学療法に用いられる化合物を含む。化学療法薬の例としては、以下のものが挙げられる:エルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(タキソテレ(登録商標)、Sanofi-Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS No.51−21−8)、ゲンシタビン(ゲムザール(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS No.391210−10−9、Pfizer)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、トラスツズマブ(ヘルセプチン(登録商標)、Genentech)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−と離縁−9−カルボキサミド、CAS No.85622−93−1、テモダール(登録商標)、テモダル(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブト−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル−エタンアミン、ノルバデクス(登録商標)、イスツバル(登録商標)、バロデクス(登録商標))、およびドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、Akti−1/2、HPPDおよびラパマイシン。
化学療法薬のさらなる例としては、以下のものが挙げられる:オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(ベルカデ(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(スニチニブ(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(フェマラ(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシラート(グリーベク(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、WO 2007/044515)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma, Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(ファスロデクス(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(葉酸)、ラパマイシン(シロリムス、ラパムン(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(タイケルブ(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(サラザール(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(カンプトサル(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、チピファルニブ(ザルネストラ(商標)、Johnson & Johnson)、アブラキサン(登録商標)(クレモフォール無含有)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子処方物(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Il)、バンデタニブ(rINN、ザクチマ(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(トリセル(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスファミド(テルシタ(登録商標)、Telik)、チオテパおよびシクロホスファミド(サイトキサン(登録商標)、ネオサル(登録商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパおよびウレドーパ;エチレンイミンおよびメチルアメラミン、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチルオロメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(例えば、合成類似体トポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(例えば、そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば、合成類似体、KW−2189およびCB1−TM1);エレウセロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマIIおよびカリケアマイシンオメガII(例えばAgnew, Chem Intl. Ed. Engl., (1994) 33: 183-186);ダイネマイシン、ダイネマイシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン・クロモフォアおよび関連クロモプロテインエンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ブテルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝産物、例えばメトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充物、例えばフロリン酸;アセグラクトン;アルドホスファミドグルコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えばマイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベルラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(キセロダ(登録商標)、Roche);イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチン酸;ならびに上記のいずれかの製薬上許容可能な塩、酸または誘導体が挙げられる。
「化学療法薬」の定義には、以下のものも含まれる:(i)腫瘍に及ぼすホルモン作用を調節するかまたは抑制するよう作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、例えば、タモキシフェン(例えば、ノルバデックス(登録商標):タモキシフェンクエン酸塩)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケトキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびファレストン(登録商標)(トレミフィンクエン酸塩);(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを抑制するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、メガーゼ(登録商標)(メゲストロールアセテート)、アロマシン(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタン、ファドロゾール、リビソール(登録商標)(ボロゾール)、フェマラ(登録商標)(レトロゾール;Novartis)およびアリミデクス(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca);(iii)抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤、例えばMEK阻害剤(WO 2007/044515);(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異所性細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC−α、RafおよびH−Ras、例えば、オブリメルセン(ゲナセンセ(登録商標)、Genta Inc.);(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、アンギオザイム(登録商標)およびHER2発現阻害剤;(viii)ワクチン、例えば遺伝子療法ワクチン、例えばアロベクチン(登録商標)、ロイベクチン(登録商標)およびバキシド(登録商標);プロロイキン(登録商標)rIL−2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えばルルトテカン(登録商標);アバレリクス(登録商標)rmRH;(ix)抗血管新生剤、例えばベカシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech)、ならびに上記のいずれかの製薬上許容可能な塩、酸または誘導体。
アレムツズマブ(カンパス)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(エルビツクス(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクチビクス(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(オムニタルグ(登録商標)、2C4、Genentech)、トラツズマブ(ヘルセプチン(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(ベクサール、Corixia)、ならびに抗体薬剤接合体、ゲムツズマブ オゾガミシン(ミロタルグ(登録商標)、Wyeth)のような治療薬も、「化学療法薬」の定義に含まれる。
「増殖阻害剤」は、本明細書中で用いる場合、in vitroまたはin vivoで、細胞、特にFcRH5発現癌細胞の増殖を抑制する化合物または組成物を指す。したがって増殖阻害剤は、S期におけるFcRH5発現細胞のパーセンテージを有意に低減するものであり得る。増殖阻害剤の例としては、(S期以外の箇所で)細胞周期進行を遮断する作用物質、例えば、G1期停止およびM期停止を誘導する作用物質が挙げられる。古典的M期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシンが挙げられる。G1期を停止する作用物質、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシルおよびアラ−Cは、S期停止ももたらす。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, eds., Chapter 1, entitled “Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs” by Murakami et al. (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特にp. 13に見出され得る。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、常緑樹であるイチイからともに得られる抗癌薬である。セイヨウイチイから得られるドセタキセル(タキソテレ(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルはチューブリン二量体からのマイクロチューブの集合を促し、脱重合を防止することにより微小管を安定化して、これが、細胞における有糸***の抑制を生じる。
「ドキソルビシン」は、アントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの正式化学名は、(8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセネジオンである。
「サイトカイン」という用語は、細胞間媒介物質として別の細胞に作用する一細胞集団により放出されるタンパク質に関する一般名である。このようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカインおよび伝統的ポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;上皮小体ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH);肝細胞増殖因子;繊維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子αおよびβ;ミュラー抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経増殖因子、例えばNGF−β;血小板増殖因子;形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β;インスリン様成長因子−IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨形成誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、βおよびγ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12;腫瘍壊死因子、例えばTNF−αまたはTNF−β;ならびにその他のポリペプチド因子、例えばLIFおよびキットリガンド(KL)である。本明細書中で用いる場合、サイトカインという用語は、天然供給源からの、または組換え細胞培養からのタンパク質、ならびにネイティブ配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を包含する。
「パッケージ挿入物」という用語は、治療用製品の市販パッケージ中に慣例的に含まれる使用説明書であって、このような治療用製品の使用に関する適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌、および/または警告についての情報を含有する使用説明書を指すために用いられる。
「細胞内代謝産物」という用語は、抗体−薬剤接合体(ADC)に関する細胞内の代謝過程または反応から生じる化合物を指す。代謝過程または反応は、酵素的過程、例えば、ADCのペプチドリンカーのタンパク質分解的切断、あるいはヒドラゾン、エステルまたはアミドのような官能基の加水分解であり得る。細胞内代謝産物としては、細胞中への進入、拡散、取込みまたは運搬後に細胞内切断を受けた抗体および遊離薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「細胞内で切断される」および「細胞内切断」という用語は、薬剤部分(D)と抗体(Ab)との間の共有結合、すなわちリンカーが分断されて、細胞内に抗体から解離された遊離薬剤を生じる、抗体−薬剤接合体(ADC)に関する細胞内の代謝過程または反応を指す。したがって、ADCの切断部分は、細胞内代謝産物である。
「生物学的利用能」という用語は、患者に投与された所定量の薬剤の全身的利用能(すなわち、血液/血漿レベル)を指す。生物学的利用能は、投与された剤形から全身循環に達する時間(速度)および総量(程度)の測定値を示す絶対項である。
「細胞傷害活性」という用語は、ADCまたはADCの細胞内代謝産物の細胞殺害、細胞増殖抑制または成長抑制作用を指す。細胞傷害活性はIC50値として表され、これは、半数の細胞が生き残る単位容積当たりの濃度(モルまたは質量)である。
「アルキル」という用語は、本明細書中で用いる場合、1〜12個の炭素原子(C1〜C12)を有する飽和線状または分枝鎖一価炭化水素ラジカルを指す(ここで、アルキルラジカルは、任意に、下記の1つ以上の置換基で独立して置換され得る)。別の実施形態では、アルキルラジカルは、1〜8個の炭素原子(C1〜C8)または1〜6個の炭素原子(C1〜C6)である。アルキル基の例としては、メチル(Me、−CH3)、エチル(Et、−CH2CH3)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CH2CH2CH3)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH3)2)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CH2CH2CH2CH3)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CH2CH(CH3)2)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH3)CH2CH3)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH3)3)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CH2CH2CH2CH2CH3)、2−ペンチル(−CH(CH3)CH2CH2CH3)、3−ペンチル(−CH(CH2CH3)2)、2−メチル−2−ブチル(−C(CH3)2CH2CH3)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH3)CH(CH3)2)、3−メチル−1−ブチル(−CH2CH2CH(CH3)2)、2−メチル−1−ブチル(−CH2CH(CH3)CH2CH3)、1−ヘキシル(−CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2−ヘキシル(−CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3−ヘキシル(−CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CH3)2CH2CH2CH3)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH3)(CH2CH3)2)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH3)C(CH3)3、1−ヘプチル、1−オクチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
「アルケニル」という用語は、不飽和(すなわち、炭素−炭素、sp2二重結合)の少なくとも1つの部位を有する2〜8個の炭素原子(C2〜C8)を有する線状または分枝鎖一価炭化水素ラジカルを指し(ここで、アルケニルラジカルは、任意に、本明細書中に記載される1つ以上の置換基で独立して置換され得る)、「シス」および「トランス」配向を、あるいは代替的には「E」および「Z」配向を有するラジカルを包含する。例としては、エチレニルまたはビニル(−CH=CH2)、アリル(−CH2CH=CH2)等が挙げられるが、これらに限定されない。
「アルキニル」という用語は、不飽和(すなわち、炭素−炭素、sp三重結合)の少なくとも1つの部位を有する2〜8個の炭素原子(C2〜C8)を有する線状または分枝鎖一価炭化水素ラジカルを指す(ここで、アルキニルラジカルは、任意に、本明細書中に記載される1つ以上の置換基で独立して置換され得る)。例としては、エチニル(−C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、−CH2CH≡CH)等が挙げられるが、これらに限定されない。
「炭素環」、「カルボシクリル」、「単環式環」および「シクロアルキル」という用語は、単環式環として3〜12個の炭素原子(C3〜C12)または二環式環として7〜12個の炭素原子を有する一価非芳香族、飽和または一部不飽和の環を指す。7〜12個の炭素原子を有する二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として並べられ、そして9〜10個の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]または[6,6]系として、あるはビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンおよびビシクロ[3.2.2]ノナンのような架橋系として、並べられる。単環式炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
「アリール」は、親芳香族環系の単一炭素原子から1つの水素原子を除去することにより得られる6〜20個の炭素原子(C6〜C20)の一価芳香族炭化水素基を意味する。いくつかのアリール基は、「Ar」として例示的構造で表される。アリールは、飽和一部不飽和環と縮合された芳香族環、または芳香族炭素環式環からなる二環式ラジカルを含む。典型的アリール基としては、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等に由来するラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、任意に、本明細書中に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
「複素環」、「ヘテロシクリル」および「複素環式環」という用語は、本明細書中で互換的に用いられ、少なくとも1つの環原子が窒素、酸素、リンおよびイオウから選択される異種原子であり、残りの環原子がCである3〜20個の環原子を有する飽和または一部不飽和(すなわち、1つ以上の二重および/または三重結合を環内に有する)単環式ラジカルを指し、この場合、1つ以上の環原子は任意に、下記の1つ以上の置換基で独立して置換される。複素環は、3〜7個の環成員(2〜6個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜4個の異種原子)を有する単環、あるいは7〜10個の環成員(4〜9個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜6個の異種原子)を有する二環、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系であり得る。複素環は、Paquette, Leo A.; “Principles of Modern Heterocyclic Chemistry” (W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に第1、3、4、6、7および9章;“The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs” (John Wiley & Sons, New York, 1950提供)、特に、Volumes 13、14、16、19および28;ならびにJ. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566に記載されている。「ヘテロシクリル」は、複素環ラジカルが飽和一部不飽和環、あるいは芳香族炭素環式または複素環式環と縮合されたラジカルも包含する。複素環式環の例としては、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラ
ニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリルキノリジニルおよびN−ピリジル尿素が挙げられるが、これらに限定されない。スピロ部分も、この定義の範囲内に含まれる。2個の環炭素原子がオキソ(=O)部分で置換される複素環式基の例は、ピリミジノニルおよび1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書中の複素環基は、任意に、本明細書中に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
「ヘテロアリール」という用語は、5、6または7員環の一価芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素およびイオウから独立して選択される1つ以上の異種原子を含有する5〜20個の原子を有する縮合環系(そのうちの少なくとも1つは芳香族である)を包含する。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2−ヒドロキシピリジニル)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4−ヒドロキシピリミジニル)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニルおよびフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、任意に、本明細書中に記載される1つ以上の置換基で独立して置換される。
複素環またはへテロアリール基は、考え得る場合、結合された炭素(炭素結合)または窒素(窒素結合)であり得る。例として(しかしこれらに限定されない)、炭素結合複素環またはへテロアリールは、ピリジンの位置2、3、4、5または6、ピリダジンの位置3、4、5または6、ピリミジンの位置2、4、5または6、ピラジンの位置2、3、5または6、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの位置2、3、4または5、オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの位置2、4または5、イソキサゾール、ピラゾールまたはイソチアゾールの位置3、4または5、アジリジンの位置2または3、アゼチジンの位置2、3または4、キノリンの位置2、3、4、5、6、7または8、イソキノリンの位置1、3、4、5、6、7または8で結合される。
例として(しかしこれらに限定されない)、窒素結合複素環またはへテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの位置1、イソインドールまたはイソインドリンの位置2、モルホリンの位置4、ならびにカルバゾールまたはβ−カルボリンの位置9で結合される。
「アルキレン」は、1〜18個の炭素原子を有し、親アルカンの同一のまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子の除去により得られる2つの一価ラジカル中心を有する飽和、分枝鎖または直鎖あるいは環状炭化水素ラジカルを指す。典型的アルキレンラジカルとしては、メチレン(−CH2−)1,2−エチル(−CH2CH2−)、1,3−プロピル(−CH2CH2CH2−)、1,4−ブチル(−CH2CH2CH2CH2−)等が挙げられるが、これらに限定されない。
「C1〜C10アルキレン」は、式−(CH2)1−10−の直鎖飽和炭化水素基である。C1〜C10アルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレンおよびデカレンが挙げられる。
「アルケニレン」は、2〜18個の炭素原子を有し、親アルケンの同一のまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子の除去により得られる2つの一価ラジカル中心を有する不飽和、分枝鎖または直鎖あるいは環状炭化水素ラジカルを指す。典型的アルケニレンラジカルとしては、1,2−エチレン(−CH=CH−)が挙げられるが、これらに限定されない。
「アルキニレン」は、2〜18個の炭素原子を有し、親アルキンの同一のまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子の除去により得られる2つの一価ラジカル中心を有する不飽和、分枝鎖または直鎖あるいは環状炭化水素ラジカルを指す。典型的アルキニレンラジカルとしては、アセチレン
、プロパルギル
および4−ペンチニル
が挙げられるが、これらに限定されない。
「アリーレン」は、2つの共有結合を有し、以下の構造で示されるようなオルト、メタまたはパラ立体配置で存在し得るアリール基である:
(この場合、フェニル基は、4個までの基、例えば−C
1〜C
8アルキル、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−aryl、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH
2、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)
2−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、−ハロゲン、−N
3、−NH
2、−NH(R’)、−N(R’)
2および−CN(ここで、R’は、各々独立して、H、−C
1〜C
8アルキルおよびアリールから選択される)で非置換または置換され得る。
「アリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端またはsp3炭素原子と結合される水素原子のうちの1つがアリールラジカルと取り替えられる非環式アルキルラジカルを指す。典型的アリールアルキル基としては、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イル等が挙げられるが、これらに限定されない。アリールアルキル基は6〜20個の炭素原子を含み、例えばアリールアルキル基のアルキル部分、(アルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含めて)は、1〜6個の炭素原子であり、アリール部分は5〜14個の炭素原子である。
「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端またはsp3炭素原子と結合される水素原子のうちの1つがヘテロアリールラジカルに取って代わられる非環式アルキルラジカルを指す。典型的へテロアリールアルキル基としては、2−ベンズイミダゾリルメチル、2−フリルエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリールアルキル基は6〜20個の炭素原子を含み、例えばへテロアリールアルキル基のアルキル部分(アルカニル、アルケニルまたはアルキニル基を含めて)は、1〜6個の炭素原子であり、ヘテロアリール部分は5〜14個の炭素原子、ならびにN、OPおよびSから選択される1〜3個の異種原子である。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分は、3〜7個の環成員(2〜6個の炭素原子)を有する単環、あるいは7〜10個の環成員(4〜9個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個の異種原子)を有する二環、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系であり得る。
「プロドラッグ」という用語は、本出願中で用いられる場合、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対して低細胞傷害性であり、酵素的に活性化され得るかまたはより活性な親形態に転換され得る薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman, “Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)およびStella et al., “Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意置換化フェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意置換化フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよびその他の5−フルオロウリジンプロドラッグ(より活性な無細胞傷害性薬剤に転化され得る)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いるためのプロドラッグに誘導され得る細胞傷害性薬剤の例としては、上記の化学療法薬が挙げられるが、これらに限定されない。
「代謝産物」は、特定化合物またはその塩の身体中での代謝により産生される生成物である。化合物の代謝産物は、当該技術分野で既知の慣例的技法を用いて同定され、それらの活性は本明細書中に記載されるような試験を用いて確定され得る。このような生成物は、例えば、投与化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等から生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物の代謝産物、例えば、本発明の化合物を、その代謝生成物を産生するのに十分な時間、哺乳動物と接触させることを包含する過程により産生される化合物を包含する。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤の送達に有用である種々の型の脂質、リン脂質および/または界面活性剤からなる小胞である。リポソームの構成成分は、一般に、生物学的膜の脂質配列と類似の二重層形成で整列される。
「リンカー」は、共有結合あるいは抗体を薬剤部分と共有的に結合する原子の鎖からなる化学的部分を指す。種々の形態において、リンカーとしては、二価ラジカル、例えば、アルキルジイル、アリールジイル、ヘテロアリールジイル、以下の:−(CR2)nO(CR2)n−、アルキルオキシの反復単位(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、ジェフアミン(商標)のような部分;ならびに二酸エステルおよびアミド、例えばスクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネートおよびカプロアミドが挙げられる。
「キラル」という用語は、鏡像相手の重ね合わせ出来ない特性を有する分子を指し、一方、「アキラル」という用語は、それらの鏡像相手に重ね合わせ可能な分子を指す。
「立体異性体」という用語は、同一の化学的構成を有するが、しかし空間中の原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
「ジアステレオマー」は、キラルの2つ以上の中心を有し、その分子が互いに鏡像でない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば融点、沸点、スペクトル特性および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、高分解能分析手法、例えば電気泳動およびクロマトグラフィー下で分離され得る。
「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせ出来ない化合物の2つの立体異性体を指す。
本明細書中で用いられる立体化学的定義および慣例は、一般的に、S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York;およびEliel, E. and Wilen, S., Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに従う。多数の有機化合物は光学的活性形態で存在し、すなわち、それらは、平面−偏光の平面を回転させる能力を有する。光学的活性化合物を記述する場合、接頭辞DおよびL、またはRおよびSは、そのキラル中心(複数可)についての分子の絶対的立体配置を意味する。接頭辞dおよびl、または(+)および(−)は、化合物による平面−偏光の回転の符号を示すために用いられ、(−)またはlは、化合物が左旋性である、ということを意味する。(+)またはdの接頭辞を付された化合物は、右旋性である。所定の化学構造に関して、これらの立体異性体は、それらが互いに鏡像であることを除いて、同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーとしても言及され得るし、このような異性体の混合物はしばしば、エナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体として言及され、これは、化学的反応または工程において立体選択または立体選択性でなかった場合に生じ得る。「ラセミ混合物」および「ラセミ体」という用語は、光学活性を欠く2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
「互変異性体」または「互変異性形態」という用語は、低エネルギーバリアを介して相互交換可能である異なるエネルギーを有する構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(向プロトン性互変異性体としても既知である)としては、プロトンの移動を介した相互変換、例えばケト−エノールおよびイミン−エナミン異性体化が挙げられる。原子価互変異性体は、結合電子のいくつかの再編成による相互変換を包含する。
「製薬上許容可能な塩」という語句は、本明細書中で用いる場合、本発明の化合物の製薬上許容可能な有機または無機塩を指す。例示的塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩が挙げられるが、これらに限定されない。製薬上許容可能な塩は、別の分子、例えば酢酸塩イオン、コハク酸塩イオンまたは他の対イオンの含入を伴い得る。対イオンは、親化合物における電化を安定化する任意の有機または無機部分であり得る。さらに、製薬上許容可能な塩は、その構造中に1つより多い変化した原子を有し得る。多数の変化した原子が製薬上許容可能な塩の一部である例は、多重対イオンを有し得る。それゆえ、製薬上許容可能な塩は、1つ以上の変化した原子および/または1つ以上の対イオンを有し得る。
本発明の化合物が塩基である場合、所望の製薬上許容可能な塩は、当該技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸等による、あるいは有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸またはガラクツロン酸、アルファヒドロキシ酸、例えばクエン酸または酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸または肉桂酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸等による遊離塩基の処理により調製され得る。
本発明の化合物が酸である場合、所望の製薬上許容可能な塩は、任意の適切な方法、例えば無機または有機塩基、例えばアミン(第一級、第二級または第三級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物等による遊離酸の処理により調製され得る。適切な塩の例証例としては、アミノ酸、例えばグリシンおよびアルギニン、アンモニア、第一級、第二級および第三級アミン、ならびに環状アミン、例えばピペリジン、モルホリンおよびピペラジン由来の有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウム由来の無機塩が挙げられるが、これらに限定されない。
「製薬上許容可能な」という語句は、物質または組成物は処方物を含む他の成分と化学的および/または毒物学的に適合性でなければならず、および/または哺乳動物はそれで処置される、ということを示す。
「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と本発明の化合物の集合物または複合物を指す。溶媒和物を構成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
「保護基」という用語は、化合物上の他の官能基に反応しながら、特定の官能基を遮断するかまたは保護するために一般に用いられる置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物中のアミノ官能基を遮断するかまたは保護するアミノ基と結合される置換基である。適切なアミノ保護基としては、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)および9−フルオレニルメチレンおきしカルボニル(Fmoc)が挙げられる。同様に、「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基を遮断するかまたは保護するヒドロキシ基の置換基を指す。適切な保護基としては、アセチルおよびシリルが挙げられる。「カルボキシ保護基」は、カルボキシ官能基を遮断するかまたは保護するカルボキシ基の置換基を指す。一般的カルボキシ保護基としては、フェニルスルホニルエチル、シアノエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、2−(p−トルエンスルホニル)エチル、2−(p−ニトロフェニルスルフェニル)エチル、2−(ジフェニルホスフィノ)−エチル、ニトロエチル等が挙げられる。保護基およびそれらの使用についての一般的記述に関しては、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
「脱離基」は、別の官能基により置換され得る官能基を指す。ある脱離基は当該技術分野で周知であり、例としては、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、メタンスルホニル(メシル)、p−トルエンスルホニル(トシル)、トリフルオロメチルスルホニル(トリフラート)およびトリフルオロメチルスルホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
略号
リンカー構成成分:
MC=6−マレイミドカプロイル
Val−Citまたは「vc」=バリン−シトルリン(プロテアーゼ切断可能リンカー中の例示的ジペプチド)
シトルリン=2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸
PAB =p−アミノベンジルオキシカルボニル(「自壊的」リンカー構成成分の一例)
Me−Val−Cit=N−メチル−バリン−シトルリン(この場合、リンカーペプチド結合は、カテプシンBによるその切断を防止するよう修飾されている)
MC(PEG)6−OH=マレイミドカプロイル−ポリエチレングリコール(抗体システインと結合され得る)。
細胞傷害性薬剤:
MMAE=モノ−メチルアウリスタチンE(分子量 718)
MMAF=薬剤のC末端にフェニルアラニンを有するアウリスタチンEの変異体(MMAE)(分子量 731.5)
MMAF−DMAEA=C末端フェニルアラニンとのアミド結合中にDMAEA(ジメチルアミノエチルアミン)を有するMMAF(分子量 801.5)
MMAF−TEG=フェニルアラニンにエステル化されるテトラエチレングリコールを有するMMAF
MMAF−NtBu=アミドとしてMMAFのC末端に結合されるN−t−ブチル
DM1=N(2’)−デアセチル−N(2’)−(3−メルカプト−1−オキソピル)−マイタンシン
DM3=N(2’)−デアセチル−N2−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン
DM4=N(2’)−デアセチル−N2−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−マイタンシン
さらなる略号を、以下に示す:AEはアウリスタチンEであり、BocはN−(t−ブトキシカルボニル)であり、citはシトルリンであり、dapはドラプロリンであり、DCCは1,3−次シクロヘキシルカルボジイミドであり、DCMはジクロロメタンであり、DEAはジエチルアミンであり、DEADはジエチルアゾジカルボキシレートであり、DEPCはジエチルホスホリルシアニデートであり、DIADはジイソプロピルアゾジカルボキシレートであり、DIEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、dilはドライソロイシンであり、DMAはジメチルアセトアミドであり、DMAPは4−ジメチルアミノピリジンであり、DMEはエチレングリコールジメチルエーテル(または1,2−ジメトキシエタン)であり、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、doeはドラフェニンであり、dovはN,N−ジメチルバリンであり、DTNBは5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)であり、DTPAはジエチレントリアミン五酢酸であり、DTTはジチオトレイトールであり、EDCIは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩であり、EEDQは2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンであり、ES−MSは電気噴霧質量分光分析であり、EtOAcは酢酸エチルであり、FmocはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)であり、glyはグリシンであり、HATUはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェートであり、HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、HPLCは高圧液体クロマトグラフィーであり、ileはイソロイシンであり、lysはリシンであり、MeCNは(CH3CN)はアセトニトリルであり、MeOHはメタノールであり、Mtrは4−アニシルジフェニルメチル(または4−メトキシトリチル)であり、norは(1S,2R)−(+)−ノルエフェドリンであり、PBSはリン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.4)であり、PEGはポリエチレングリコールであり、Phはフェニルであり、Pnpはp−ニトロフェニルであり、MCは6−マレイミドカプロイルであり、pheはL−フェニルアラニンであり、PyBropはブロモとリス−ピロリジノホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェートであり、SECはサイズ排除クロマトグラフィーであり、Suはスクシンイミドであり、TFAはトリフルオロ酢酸であり、TLCは薄層クロマトグラフィーであり、UVは紫外線であり、そしてvalはバリンである。
「遊離システインアミノ酸」は、親抗体で操作され、チオール官能基(−SH)を有し、分子内または分子間ジスルフィド架橋として対合されないシステインアミノ酸残基を指す。
「チオール反応性値」という用語は、遊離システインアミノ酸の反応性の定量的特性化である。チオール反応性値は、チオール反応性試薬と反応する操作システイン操作された抗体中の遊離システインアミノ酸のパーセンテージであり、最大値1に換算される。例えば、チオール反応性試薬、例えばビオチン−マレイミド試薬と収率100%で反応してビオチンラベル抗体を生成する操作システイン操作された抗体上の遊離システインアミノ酸は、1.0というチオール反応性値を有する。チオール反応性試薬と収率80%で反応する同一のまたは異なる親抗体で操作される別のシステインアミノ酸は、0.8のチオール反応性値を有する。チオール反応性試薬と全く反応できない同一のまたは異なる親抗体で操作される別のシステインアミノ酸は、チオール反応性値は0である。特定のシステインのチオール反応性値の決定は、ELISA検定、質量分光分析、液体クロマトグラフィー、オートラジオグラフィーまたは他の定量的分析試験により実行され得る。
「親抗体」は、1つ以上のアミノ酸残基が1つ以上のシステイン残基に取って代わられるアミノ酸配列を含む抗体である。親抗体は、ネイティブまたは野生型配列を含み得る。親抗体は、他のネイティブ、野生型または修飾形態の抗体に比して、先在アミノ酸配列修飾(例えば、付加、欠失および/または置換)を有し得る。親抗体は、当該標的抗原、例えば生物学的に重要なポリペプチドに対して向けられ得る。非ポリペプチド抗原(例えば、腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5091178号参照)に対して向けられる抗体も意図される。
表1
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III. 本発明の組成物および方法
本発明は、抗FcRH5抗体またはその機能性断片、ならびに造血系腫瘍の処置におけるそれらの使用方法を提供する。
一態様において、本発明は、上記または下記のポリペプチドのいずれかと、好ましくは特異的に結合する抗体を提供する。任意に、抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗FcRH5ポリペプチド抗体とそのそれぞれの抗原エピトープとの結合を競合的に抑制する抗体である。本発明の抗体は、任意に、増殖阻害剤または細胞傷害性物質、例えば毒素、例えばアウリスタチン、マイタンシノイド、ドロスタチン誘導体またはカリケアマイシン、抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素等と接合され得る。本発明の抗体は、任意に、CHO細胞または細菌細胞中で産生され得るし、好ましくはそれらが結合する細胞の死を誘導する。検出目的のために、本発明の抗体は、検出可能的にラベルされ、固体支持体と結合され得る。
一態様では、本発明は、FcRH5に対する抗体の一価親和力(例えば、FcRH5に対するFab断片としての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)に示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、ネズミ抗体(例えばFcRH5に対するFab断片としてのネズミ抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するFab断片としてのキメラ抗体の親和力)の一価親和力と実質的に同一であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対する抗体の一価親和力(例えば、FcRH5に対するFab断片としての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)に示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、ネズミ抗体(例えばFcRH5に対するFab断片としてのネズミ抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するFab断片としてのキメラ抗体の親和力)の一価親和力より低い、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55または60分の1より低いヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対する抗体の一価親和力(例えば、FcRH5に対するFab断片としての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)で示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、ネズミ抗体(例えばFcRH5に対するFab断片としてのネズミ抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するFab断片としてのキメラ抗体の親和力)の一価親和力より高い、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍より高いヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
一態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)で示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、その二価型でのネズミ抗体(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するFab断片としてのキメラ抗体の親和力)の親和力と実質的に同一であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)で示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、その二価型でのネズミ抗体(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するIgGとしてのキメラ抗体の親和力)の親和力より低い、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55または60分の1より低いヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対する二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)で示されるような軽鎖および重鎖可変ドメイン配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、その二価型でのネズミ抗体(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)またはキメラ抗体(例えば、FcRH5に対するIgGとしてのキメラ抗体の親和力)の親和力より高い、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍より高いヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.4nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。さらなる態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.4nM+/−0.04であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.3nMまたはそれ良好であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.32nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.36nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.4nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.44nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.48nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.5nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.3nM〜0.5nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.32nM〜0.48nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.36nM〜0.44nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.2nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。さらなる態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.2nM+/−0.02であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.1nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.12nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.14nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.16nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.18nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.2nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.22nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.24nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.26nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.28nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.30nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.1nM〜0.3nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.12nM〜0.28nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.14nM〜0.26nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.16nM〜0.24nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.18nM〜0.22nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.5nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。さらなる態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.5nM+/−0.01であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.4nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.5nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.6nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.7nMまたはそれ以上であるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えばFcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.3nM〜0.7nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.4nM〜0.6nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。別の態様では、本発明は、FcRH5に対するその二価型の抗体の親和力(例えば、FcRH5に対するIgGとしての抗体の親和力)が0.5nM〜0.55nMであるヒト化抗FcRH5抗体を提供する。
一態様では、FcRH5に対するネズミ抗体の一価親和力は、図9(配列番号18)および図10(配列番号20)の可変ドメイン配列を含むFab断片の結合親和力と実質的に同一である。
当該技術分野で十分に確立されているように、その受容体に対するリガンドの結合親和力は、種々の検定のいずれかを用いて決定され、種々の定量的値に換算して表され得る。したがって、一実施形態では、結合親和力は、Kd値として表され、固有の結合親和力を反映する(例えば、最小化結合活性作用を伴う)。無細胞であるかまたは細胞関連設定であるか否かにかかわらず、一般的に且つ好ましくは、結合親和力はin vitroで測定される。本明細書中でさらに詳細に記載されるように、結合親和力おける倍差は、ヒト化抗体(例えばFab形態)の一価結合親和力値と参照/比較抗体(例えばFab形態)(例えば、ドナー超可変領域配列を有するネズミ抗体)の一価結合親和力値との比に換算して定量され得るが、この場合、結合親和力は類似の検定条件下で決定される。したがって、一実施形態では、結合親和力における倍差は、Fab形態のヒト化抗体と上記参照/比較Fab抗体のKd値の比として決定される。例えば、一実施形態では、本発明の抗体(A)が参照抗体(M)の親和力より「3倍低い」親和力を有する場合には、Aに関するKd値が3×である場合、MのKd値は1×であり、AのKd対MのKdの比は3:1である。逆に、一実施形態では、本発明の抗体(C)が参照抗体(R)の親和力より「3倍高い」親和力を有する場合には、Cに関するKd値が1×である場合、RのKd値は3×であり、CのKd対RのKdの比は1:3である。本明細書中に記載されるものを含めて当該技術分野で既知の多数の検定、例えばBiacore、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびELISAを用いて、結合親和力測定値を得ることができる。
一態様では、FcRH5と結合する抗体であって、以下のものを含む抗体が提供される:
(a)以下のからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5または6つのHVR:
(i)配列KASQNVGSNVA(配列番号28)を含むHVR−L1
(ii)配列SASYRYS(配列番号29)を含むHVR−L2
(iii)配列QQYKTWT(配列番号30)を含むHVR−L3
(iv)配列GYTFTYGMN(配列番号37)を含むHVR−H1
(v)配列NTYTGEPTYTDDFKG(配列番号38)を含むHVR−H2
(vi)配列ARRSIPYYYAMDY(配列番号39)を含むHVR−H3。
一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L1は、配列番号28の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L2は、配列番号29の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L3は、配列番号30の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H1は、配列番号37の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H2は、配列番号38の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H3は、配列番号39の配列を含む。一実施形態では、(本明細書中に記載されるような組合せで)これらの配列を含む本発明の抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
一態様では、FcRH5と結合する抗体であって、以下のものを含む抗体が提供される:
(a)以下のを含むHVR−H3
からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5または6つのHVR:
(i)配列KASQNVGSNVA(配列番号28)を含むHVR−L1
(ii)配列SASYRYS(配列番号29)を含むHVR−L2
(iii)配列QQYKTWT(配列番号30)を含むHVR−L3
(iv)配列GYTFTYGMN(配列番号37)を含むHVR−H1
(v)配列NTYTGEPTYTDDFKG(配列番号38)を含むHVR−H2
(vi)配列ARRSIPYYYAMDY(配列番号39);ならびに
(b)少なくとも1つの変異体HVR(ここで、変異体HVR配列は、配列番号28、29、30、37、38または39で示される配列の少なくとも1つの残基の修飾を含む)。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L1は、配列番号28の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L2は、配列番号29の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−L3は、配列番号30の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H1は、配列番号37の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H2は、配列番号38の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR−H3は、配列番号39の配列を含む。一実施形態では、(本明細書中に記載されるような組合せで)これらの配列を含む本発明の抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。
一態様では、本発明は、1、2、3、4、5または6つのHVRを含む抗体を提供するが、この場合、各HVRが配列番号28、29、30、37、38または39からなる群から選択される配列を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。
本発明の抗体中の変異体HVRは、HVR内に1つ以上の残基の修飾を有し得る。
一態様では、本発明は、図9〜12に示されたHVR配列のうちの1、2、3、4、5または全てを含む抗体を提供する。
宿主対象中で用いるための治療薬は、好ましくは、上記対象中の作用物質に対して免疫原性応答をほとんどまたは全く引き出さない。一実施形態では、本発明は、このような作用物質を提供する。例えば、一実施形態では、本発明は、宿主対象中の配列番号18&20の配列を含む抗体と比較して、実質的低レベルで、ヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を引き出すか、および/または引き出すよう予測されるヒト化抗体を提供する。別の例では、本発明は、ヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を最小度に引き出すかまたは全く引き出さない、および/または最小度に引き出すかまたは全く引き出さないよう予測されるヒト化抗体を提供する。一例では、本発明の抗体は、臨床的に許容可能なレベルで、またはそれより低いレベルである抗マウス抗体応答を引き出す。
本発明のヒト化抗体は、その重鎖および/または軽鎖可変ドメイン中に、1つ以上のヒトおよび/またはヒトコンセンサス非超可変領域(例えば、フレームワーク)配列を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の付加的修飾が、ヒトおよび/またはヒトコンセンサス非超コンセンサス領域配列内に存在する。一実施形態では、本発明の抗体の重鎖可変ドメインは、ヒトコンセンサスフレームワーク配列を含み、これは、一実施形態では、亜群IIIコンセンサスフレームワーク配列である。一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも1つのアミノ酸位置で修飾された変異体亜群IIIコンセンサスフレームワーク配列を含む。例えば、一実施形態では、変異体亜群IIIコンセンサスフレームワーク配列は、位置71、73および/または78のうちの1つ以上で置換を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体の軽鎖可変ドメインはヒトコンセンサスフレームワーク配列を含み、これは、一実施形態では、κIコンセンサスフレームワーク配列である。一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも1つのアミノ酸位置で修飾された変異体κIコンセンサスフレームワーク配列を含む。
当該技術分野で既知であるように、且つ以下の本明細書中で詳細に記載されるように、抗体の超可変領域を描くアミノ酸位置/境界は、(下記のような)当該技術分野で既知の状況および種々の定義によって、変化し得る。可変ドメイン内のいくつかの位置は、これらの位置が一組の判定基準下では超可変領域内にあると思われるが、一方、異なる組の判定基準下では超可変領域の外側にあると思われ得るハイブリッド超可変位置として見られ得る。これらの位置のうちの1つ以上は、(以下でさらに記載されるような)延長超可変領域中にも見出され得る。本発明は、これらのハイブリッド超可変位置における修飾を含む抗体を提供する。一実施形態では、これらの超可変位置としては、重鎖可変ドメイン中の1つ以上の位置26〜30、33〜35B、47〜49、57〜65、93、94および101〜102が挙げられる。一実施形態では、これらのハイブリッド超可変位置としては、軽鎖可変ドメイン中の位置24〜29、35〜36、46〜49、56および97のうちの1つ以上が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗体は、1つ以上のハイブリッド超可変位置で修飾されたヒト変異体ヒト亜群コンセンサスフレームワーク配列を含む。
本発明の抗体は、任意の適切なヒトまたはヒトコンセンサス軽鎖フレームワーク配列を含み得るが、但し、抗体は所望の生物学的特質(例えば、所望の結合親和力)を示す。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトκ軽鎖のフレームワーク配列の少なくとも一部(または全部)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトκ亜群Iフレームワークコンセンサス配列の一部(または全部)を含む。
一態様では、本発明の抗体は、細胞傷害性物質と接合されるヒト化抗FcRH5抗体である。一態様では、細胞傷害性物質と接合されるヒト化抗FcRH5抗体は、異種移植片における腫瘍進行を抑制する。
一態様では、ヒト化抗体およびキメラ抗体はともに一価である。一実施形態では、ヒト化およびキメラ抗体はともに、Fc領域と連結される単一Fab領域を含む。一実施形態では、参照キメラ抗体は、ヒトFc領域と結合される図9(配列番号18)および図10(配列番号20)に示された可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、ヒトFc領域は、IgGのもの(例えば、IgG1、2、3または4)である。
一態様では、本発明の抗体は、親抗体の1つ以上のアミノ酸がWO2006/034488;US2007/0092940(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に開示されたような遊離システインアミノ酸に取って代わられる操作システイン操作された抗体を包含する。任意の形態の抗FcRH5抗体が、そのように操作され、すなわち突然変異化され得る。例えば、親Fab抗体断片は、「チオFab」として本明細書中で言及されるシステイン操作Fabを形成するよう操作され得る。同様に、親モノクローナル抗体は、「チオMab」を形成するよう操作され得る。単一の部位突然変異がチオFab中で単一の操作システイン残基を生じるが、一方、IgG抗体の二量体的性質のため、単一の部位突然変異がチオab中では2つの操作システイン残基を生じる、ということに留意すべきである。本発明の操作システイン操作された抗FcRH5抗体としては、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラモノクローナル抗体、ならびに抗体の抗原結合断片、融合ポリペプチド、および細胞関連FcRH5ポリペプチドを優先的に結合する類似体が挙げられる。操作システイン操作された抗体は、代替的には、ファージ表示抗体設計および選択による、あるいは軽鎖および/または重鎖フレームワーク配列および定常領域のde novo設計による、といったような親抗体を変更することを必ずしも伴わずに、抗体の配列設計および/または選択に起因する抗体またはFab中に本明細書中に開示される位置にシステインを含む抗体を含み得る。操作システイン操作された抗体は、0.6〜1.0;0.7〜1.0または0.8〜1.0の範囲のチオール反応性値を有する1つ以上の遊離システインアミノ酸を含む。遊離システインアミノ酸は、親抗体で操作され、ジスルフィド架橋の一部でないシステイン残基である。操作システイン操作された抗体は、例えばマレイミドまたはハロアセチルを介した操作操作されたシステインの部位での細胞傷害性および/または画像処理化合物の結合のために有用である。マレイミド基に対するCys残基のチオール官能基の求核的反応性は、リシン残基のアミノ基、あるいはN末端アミノ基のようなタンパク質中の任意の他のアミノ酸官能基と比較して、約1000倍高い。ヨードアセチルおよびマレイミド試薬中のチオール特異的官能基はアミン基と反応し得るが、しかしより高いpH(>9.0)およびより長い反応時間が必要とされる(Garman, 1997, Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London)。
一態様では、本発明の操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、任意の適切な位置に操作操作されたシステインを含み、この場合、その位置は、軽鎖においてはKabat等に従って(Kabat et al (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD参照)、重鎖(Fc領域を含めて)においてはEU番号付け(Kabat et al. (1991)、上記参照)に従って、番号付けされる。
ある態様では、本発明は、本明細書中に開示されるような全長アミノ酸配列を有する操作システイン操作された抗体、または本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠く操作システイン操作された抗体アミノ酸配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、代替的には少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む操作システイン操作された抗FcRH5抗体に関する。
さらなる態様では、本発明は、以下の:(a)本明細書中に開示されるような全長アミノ酸配列を有する操作システイン操作された抗体、(b)本明細書中に開示されるようなシグナルペプチドを欠く操作システイン操作された抗体アミノ酸配列、(c)本明細書中に開示されるような、シグナルペプチドを有するかまたは有さない、膜貫通操作システイン操作された抗体の細胞外ドメイン、(d)本明細書中に開示される核酸配列のいずれかによりコードされるアミノ酸配列、あるいは(e)本明細書中に開示されるような全長操作システイン操作された抗体アミノ酸配列の任意の他の特異的限定断片:をコードするDNA分子の相補体とハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む単離操作システイン操作された抗FcRH5抗体に関する。
具体的態様では、本発明は、N末端シグナル配列を有さないか、および/または開始メチオニンを有さない、そして本明細書中に記載されるようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされる、単離操作システイン操作された抗FcRH5抗体を提供する。同一物を産生するための工程も本明細書中に記載されており、その工程は、操作システイン操作された抗体の発現に適した条件下で適切なコード核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養すること、ならびに細胞培養から操作システイン操作された抗体を回収することを包含する。
本発明の別の態様は、膜貫通ドメイン欠失されるかまたは膜貫通ドメイン不活性化される単離操作システイン操作された抗FcRH5抗体を提供する。同一物の産生工程も本明細書中に記載されており、その工程は、操作システイン操作された抗体の発現に適した条件下で適切なコード核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養すること、ならびに細胞培養から操作システイン操作された抗体を回収することを包含する。
他の態様では、本発明は、異種(非FcRH5)ポリペプチドと融合される本明細書記載の操作システイン操作された抗体のいずれかを含む単離抗FcRH5キメラ操作システイン操作された抗体を提供する。このようなキメラ分子の例は、例えばエピトープタグ配列または免疫グロブリンのFc領域のような異種ポリペプチドと融合される本明細書記載の操作システイン操作された抗体のいずれかを含む。
操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗FcRH5ポリペプチド抗体とそのそれぞれの抗原エピトープとの結合を競合的に抑制する抗体であり得る。本発明の抗体は、任意に、増殖阻害剤または細胞傷害性物質、例えば毒素、例えばアウリスタチン、マイタンシノイド、ドロスタチン誘導体、カリケアマイシン、抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素等と接合され得る。本発明の抗体は、任意に、CHO細胞または細菌細胞中で産生され得るし、好ましくはそれらが結合する細胞の成長または増殖を抑制し、あるいはその死を誘導する。検出目的のために、本発明の抗体は、検出可能的にラベルされ、固体支持体と結合され得る。
本発明の他の態様において、本発明は、本明細書記載の抗FcRH5抗体および抗FcRH5操作システイン操作された抗体のいずれかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のこのようなベクターを含む宿主細胞も、提供される。例として、宿主細胞は、CHO細胞、大腸菌細胞、酵母細胞であり得る。本明細書記載のポリペプチドのいずれかを産生する工程がさらに提供され、所望のポリペプチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養すること、ならびに細胞培養から所望のポリペプチドを回収することを包含する。
操作システイン操作された抗体は癌の治療に有用であり、細胞表面および膜貫通受容体、ならびに腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体を包含する。このような抗体は、裸抗体(薬剤またはラベル部分と接合されない)として、または抗体−薬剤接合体(ADC)として用いられ得る。本発明の操作システイン操作された抗体は、チオール反応性試薬と部位特異的におよび効率的に結合され得る。チオール反応性試薬は、多機能性リンカー試薬、捕捉ラベル試薬、蛍光体試薬または薬剤−リンカー中間体であり得る。操作システイン操作された抗体は、固相支持体上に固定され、および/または薬剤部分と接合される検出可能なラベルでラベルされ得る。チオール反応性は、反応性システインアミノ酸によるアミノ酸の置換が以下のアミノ酸範囲:L10〜L20、L105〜L115、L109〜L119、L116〜L126、L122〜L132、L163〜L173、L200〜L210から選択される軽鎖中の範囲内、ならびに以下のアミノ酸範囲:H1〜H10、H18〜H28、H79〜H89、H107〜H117、H109〜H119、H111〜H121から選択される重鎖中の範囲内で、ならびにH270〜H280、H366〜H376、H391〜401から選択される範囲内のFc領域でなされ得る任意の抗体に一般化され得るが、この場合、アミノ酸位置の番号は、カバト番号付けシステム(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD)の位置1で始まり、その後、WO2006034488;US 2007/0092940に開示されたように順次、続く。チオール反応性は、さらにまた、抗体のあるドメイン、例えば軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3に一般化され得る。0.6以上のチオール反応性値を生じるシステイン置換は、無傷抗体:それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、例えばIgGサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2の重鎖定常ドメインα、δ、ε、γおよびμでなされ得る。このような抗体およびそれらの使用は、WO2006034488;US 2007/0092940に開示されている。
本発明の操作システイン操作された抗体は、好ましくは、それらの野生型親抗体対応物の抗原結合能力を保持する。したがって、操作システイン操作された抗体は、好ましくは、抗原と特異的に結合し得る。このような抗原としては、例えば腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質およびその他の細胞表面分子、膜貫通タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞生存調節因子、細胞増殖調節因子、組織発生または分化(に機能的に関与することが既知であるかまたは疑われる)に関連する分子、リンフォカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関与する分子、血管形成に関与する分子、ならびに血管新生(に機能的に関与することが既知であるかまたは疑われる)に関連した分子が挙げられる。腫瘍関連抗原は、クラスター分化因子(すなわち、CDタンパク質、例えばFcRH5(これに限定されない))であり得る。本発明の操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、それらの親抗FcRH5抗体対応物の抗原結合能力を保持する。したがって、本発明の操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、細胞、例えばB細胞(これに限定されない)の表面で抗原が発現される場合を含めて、ヒト抗FcRH5アイソフォームβおよび/またはαを含めたFcRH5抗原と好ましくは特異的に結合し得る。
一態様では、本発明の抗体は、反応性部分、活性化部分または反応性システインチオール基を介して抗体と共有結合され得る任意のラベル部分と接合され得る(Singh et al (2002) Anal. Biochem. 304:147-15; Harlow E. and Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Lundblad R.L. (1991) Chemical Reagents for Protein Modification, 2nd ed. CRC Press, Boca Raton, FL)。結合ラベルは、(i)検出可能シグナルを提供し;(ii)第二ラベルと相互作用して、第一または第二ラベルにより提供される検出可能シグナルを修飾し、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を生じ;(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定化し、それらとの結合親和力を増大し;(iv)電荷、親水性、形状またはその他の物理的パラメーターにより移動度、例えば電気泳動移動度または細胞透過性に作用し、あるいは(v)リガンド親和力、抗体/抗原結合またはイオン錯体形成を調整するために捕捉部分を提供するよう機能し得る。
ラベル化操作システイン操作された抗体は、例えば、具体的細胞、組織または血清における当該抗原の発現を検出するための診断検定に有用であり得る。診断用途に関しては、抗体は、典型的には、検出可能部分でラベルされる。以下の部類に一般的に群分けされ得る多数のラベルが利用可能である:
放射性同位体(放射性核種)、例えば3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Ga、86Y、99Tc、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211Atまたは213Bi。放射性同位体ラベル抗体は、受容体標的化画像処理実験で有用である。抗体は、放射性同位体金属を結合し、キレート化し、またはそうでなければ錯体形成するリガンド試薬でラベルされ得るが、この場合、試薬は抗体の操作操作されたシステインチオールと反応性であり、Current Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen et al, Ed. Wiley-Interscience, New York, NY, Pubs. (1991)に記載された技法を用いる。金属イオンと錯体形成し得るキレートリガンドとしては、DOTA、DOTP、DOTMA、DTPAおよびTETA(Macrocyclics, Dallas, TX)が挙げられる。放射性核種は、本発明の抗体−薬剤接合体による錯体形成を介して標的化され得る(Wu et al (2005) Nature Biotechnology 23(9):1137-1146)。
リンカー試薬、例えばDOTA−マレイミド(4−マレイミドブチルアミドベンジル−DOTA)は、Axworthy et al (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(4):1802-1807の手順に従って、アミノベンジル−DOTAと、イソプロピルクロロホルメート(Aldrich)で活性化される4−マレイミド酪酸(Fluka)との反応により調製され得る。DOTA−マレイミド試薬は、操作システイン操作された抗体の遊離システインアミノ酸と反応し、抗体上に金属錯体形成リガンドを提供する(Lewis et al (1998) Bioconj. Chem. 9:72-86)。キレートリンカーラベル化試薬、例えばDOTA−NHS(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル))は、市販されている(Macrocyclics, Dallas, TX)。放射性核種ラベル化抗体を用いた受容体標的画像処理は、腫瘍組織中の抗体の漸進的蓄積の検出および定量化による経路活性化のマーカーを提供し得る(Albert et al (1998) Bioorg. Med. Chem. Lett. 8:1207-1210)。接合放射性金属は、リソソーム分解後に細胞内に残留し得る。
画像処理実験のための抗体ラベルとして適している金属キレート化合物錯体が開示されている:US5342606; US5428155; US5316757; US5480990; US5462725; US5428139; US5385893; US5739294; US5750660; US5834456;Hnatowich et al (1983) J. Immunol. Methods 65:147-157; Meares et al (1984) Anal. Biochem. 142:68-78; Mirzadeh et al (1990) Bioconjugate Chem. 1:59-65; Meares et al (1990) J. Cancer1990, Suppl. 10:21-26; Izard et al (1992) Bioconjugate Chem. 3:346-350; Nikula et al (1995) Nucl. Med. Biol. 22:387-90; Camera et al (1993) Nucl. Med. Biol. 20:955-62; Kukis et al (1998) J. Nucl. Med. 39:2105-2110; Verel et al (2003) J. Nucl. Med. 44:1663-1670; Camera et al (1994) J. Nucl. Med. 21:640-646; Ruegg et al (1990) Cancer Res. 50:4221-4226; Verel et al (2003) J. Nucl. Med. 44:1663-1670; Lee et al (2001) Cancer Res. 61:4474-4482; Mitchell, et al (2003) J. Nucl. Med. 44:1105-1112; Kobayashi et al (1999) Bioconjugate Chem. 10:103-111; Miederer et al (2004) J. Nucl. Med. 45:129-137; DeNardo et al (1998) Clinical Cancer Research 4:2483-90; Blend et al (2003) Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18:355-363; Nikula et al (1999) J. Nucl. Med. 40:166-76; Kobayashi et al (1998) J. Nucl. Med. 39:829-36; Mardirossian et al (1993) Nucl. Med. Biol. 20:65-74; Roselli et al (1999) Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals, 14:209-20.
蛍光ラベル、例えば希土類キレート化合物(ユーロピウムキレート化合物)、フルオレセイン型、例えばFITC、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン;ローダミン型、例えばTAMRA;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;ならびにその類似体。蛍光ラベルは、例えばCurrent Protocols in Immunology(上記)に開示された技法を用いて、抗体と接合され得る。蛍光染料および蛍光ラベル試薬は、Invitrogen/Molecular Probes (Eugene, OR)およびPierce Biotechnology, Inc. (Rockford, IL)から市販されているものを包含する。
種々の酵素−基質ラベルが利用可能であり、または開示されている(US4275149)。酵素は、一般的に、種々の技法を用いて測定され得る色原性基質の化学的変更を触媒する。例えば、酵素は、基質における色変化を触媒し、これは、分光分析的に測定され得る。代替的には、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変更し得る。蛍光の変化を定量するための技法は、上記されている。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起されるようになり、次いで、(例えば、化学発光計を用いて)測定され得る光を出すか、または蛍光受容体にエネルギーを供与し得る。酵素ラベルの例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ライソザイム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等が挙げられる。酵素を抗体に接合するための技法は、O’Sullivan et al (1981) “Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay”, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic Press, New York, 73:147-166に記載されている。
酵素−基質組合せの例としては、例えば以下のものが挙げられる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを伴うホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)。この場合、水素ペルオキシダーゼは染料前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジン塩酸塩(TMB))を酸化する。
(ii)色原性基質としてパラ−ニトロフェニルホスフェートを伴うアルカリ性ホスファターゼ(AP);ならびに
(iii)色原性基質(例えば、P−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光原基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼを伴うβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)。
多数の他の酵素−基質組合せは、当業者に利用可能である。一般的再検討に関しては、米国特許第4275149号および米国特許第4318980号を参照されたい。
ラベルは、アミノ酸側鎖、活性化アミノ酸側鎖、操作システイン操作された抗体等と間接的に接合され得る。例えば、抗体はビオチンと接合され得るし、上記ラベルの3つの広範な部類のいずれかはアビジンまたはストレプトアビジンと接合され得るし、その逆も言える。ビオチンはストレプトアビジンと選択的に結合し、したがって、ラベルはこの間接的方式で抗体と接合され得る。代替的には、ポリペプチド変異体とのラベルの間接的接合を達成するために、ポリペプチド変異体は小ハプテン(例えば、ジゴキシン)と接合され、異なる型の上記のラベルのうちの1つは抗ハプテンポリペプチド変異体(例えば、抗ジゴキシン抗体)と接合される。したがって、ポリペプチド変異体とのラベルの間接的接合が達成され得る(Hermanson, G. (1996) in Bioconjugate Techniques Academic Press, San Diego)。
本発明の抗体は、任意の既知の検定方法で、例えばELISA、競合的結合検定、直接および間接的サンドイッチ検定、ならびに免疫沈降検定で用いられ得る(Zola, (1987) Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158, CRC Press, Inc.)。
検出ラベルは、結合または認識事象を限定し、可視化し、定量するために有用であり得る。本発明のラベル化抗体は、細胞表面受容体を検出し得る。検出可能的にラベルされた抗体に関する別の用途は、ビーズベースの免疫捕捉方法であって、ビーズを蛍光ラベル化抗体と接合させること、リガンドの結合時に蛍光シグナルを検出することを包含する方法である。類似の結合検出方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)作用を利用して、抗体−抗原相互作用を測定し、検出する。
検出ラベル、例えば蛍光染料および化学発光染料(Briggs et al (1997) “Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,” J. Chem. Soc., Perkin-Trans. 1:1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、一般的に、好ましくは以下の特性を有する抗体をラベルするのに適用可能である:(i)少量の抗体が無細胞および細胞ベースの検定の両方で、高感度で検出され得るよう、ラベル化抗体は低バックグラウンドで非常に高いシグナルを生じるべきであり;(ii)蛍光シグナルが、有意の光漂白を伴わずに、観察され、モニタリングされ、記録されるよう、ラベル化抗体は光安定性であるべきである。膜または細胞表面、特に生細胞とのラベル化抗体の細胞表面結合を包含する適用に関して、ラベルは、好ましくは(iii)有効な接合体濃度および検出感度を達成するために良好な水溶性を有し、ならびに(iv)細胞の正常な代謝過程を崩壊し、早発性細胞死を引き起こすことのないよう、生きている細胞に対して非毒性である。
細胞蛍光強度の直接的定量および蛍光的ラベル化事象、例えばペプチド−染料接合体の細胞表面結合の計数は、生細胞またはビーズを用いた混合および読取式非放射性検定を自動化する系(FMAT(登録商標)8100 HTSシステム、Applied Biosystems, Foster City, Calif.)で実行され得る(Miraglia, “Homogeneous cell- and bead-based assays for high throughput screening using fluorometric microvolume assay technology”, (1999) J. of Biomolecular Screening 4:193-204)。ラベル化抗体の用途としては、細胞表面受容体結合検定、免疫捕捉検定、蛍光結合免疫吸着検定(ELISA)、カスパーゼ切断(Zheng, “Caspase-3 controls both cytoplasmic and nuclear events associated with Fas-mediated apoptosis in vivo”, (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:618-23;US 6372907)、アポトーシス(Vermes, “A novel assay for apoptosis. Flow cytometric detection of phosphatidylserine expression on early apoptotic cells using fluorescein labelled Annexin V” (1995) J. Immunol. Methods 184:39-51)、および細胞傷害性検定も挙げられる。蛍光定量的微量検定技法を用いて、細胞表面を標的にする分子による上方または下方調節を同定し得る(Swartzman, “A homogeneous and multiplexed immunoassay for high-throughput screening using fluorometric microvolume assay technology”, (1999) Anal. Biochem. 271:143-51)。
本発明のラベル化抗体は、生物医学および分子画像処理の以下のような種々の方法および技法により、画像処理バイオマーカーおよびプローブとして有用である:(i)MRI(磁気共鳴画像処理);(ii)MicroCT(コンピューター断層撮影);(iii)SPECT(単光子放射型コンピューター断層撮影);(iv)PET(陽電子放射断層撮影)Chen et al (2004) Bioconjugate Chem. 15:41-49;(v)生物発光;(vi)蛍光;および(vii)超音波。免疫シンチグラフィーは、放射性物質でラベルされる抗体が動物またはヒト患者に投与され、抗体が局在する身体中の部位についての像が撮影される画像処理手法である。(米国特許第6528624号)。画像処理バイオマーカーは、正常の生物学的過程、病理学的過程、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され、評価され得る。バイオマーカーは、いくつかの型を有し得る:0型は、疾患の自然発達歴マーカーであり、既知の臨床的指標、例えば関節リウマチにおける滑膜炎症のMRI査定と長期間に亘って相関する;I型マーカーは、作用機序に従って介入の効果を捕捉するが、当該機序は臨床結果を伴わない場合もある;II型マーカーは、代理エンドポイントとして機能し、この場合、バイオマーカーにおける電荷またはそれからのシグナルが標的化応答、例えばCTによる関節リウマチにおいて測定される骨侵食を「認定する」ための臨床的利益を予測する。したがって、画像処理バイオマーカーは、以下の事柄についての薬力学的(PD)治療情報を提供し得る:(i)標的タンパク質の発現、(ii)治療薬と標的タンパク質との結合、すなわち、選択性、ならびに(iii)クリアランスおよび半減期薬物動態データ。実験室ベースのバイオマーカーと比較したin vivo画像処理バイオマーカーの利点としては、以下のものが挙げられる:非侵襲性処置、定量可能な、全身査定、反復用量投与および査定、すなわち多重時点、ならびに前臨床(小動物)から臨床(ヒト)結果への潜在的に転化可能な作用。いくつかの適用に関して、生体画像処理は、前臨床試験における動物実験に取って代わるかまたはその数を最小限にする。
ペプチドラベル方法がよく知られている。Haugland, 2003, Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Inc.; Brinkley, 1992, Bioconjugate Chem. 3:2;Garman, (1997) Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London; Means (1990) Bioconjugate Chem. 1:2;Glazer et al (1975) Chemical Modification of Proteins. Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology (T. S. Work and E. Work, Eds.) American Elsevier Publishing Co., New York; Lundblad, R. L. and Noyes, C. M. (1984) Chemical Reagents for Protein Modification, Vols. I and II, CRC Press, New York; Pfleiderer, G. (1985) “Chemical Modification of Proteins”, Modern Methods in Protein Chemistry, H. Tschesche, Ed., Walter DeGryter, Berlin and New York;およびWong (1991) Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking, CRC Press, Boca Raton, Fla.);De Leon-Rodriguez et al (2004) Chem.Eur. J. 10:1149-1155; Lewis et al (2001) Bioconjugate Chem. 12:320-324;Li et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:110-115;Mier et al (2005) Bioconjugate Chem. 16:240-237を参照。
2つの部分、すなわち十分に近接した蛍光レポーターおよび失活剤でラベルされるペプチドおよびタンパク質は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を受ける。レポーター基は、典型的には、ある波長の光により励起され、最大の明るさでの放射のために適切なストークシフトで、受容体または死活剤基にエネルギーを移す蛍光染料である。蛍光染料としては、拡張芳香族性を有する分子、例えばフルオレセインおよびローダミン、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。蛍光レポーターは、無傷ペプチド中の失活剤部分により部分的にまたは有意にクエンチされ得る。ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるペプチドの切断時に、蛍光の検出可能な増大が測定され得る(Knight, C. (1995) “Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes”, Methods in Enzymology, Academic Press, 248:18-34)。
本発明のラベル化抗体は、アフィニティー精製剤としても用いられ得る。この工程において、ラベル化抗体は、当該技術分野で周知の方法を用いて、セファデックス樹脂または濾紙のような固相上に固定される。固定抗体は、精製されるべき抗原を含有する試料と接触され、その後、支持体は、精製されるべき抗原(これは固定ポリペプチド変異体と結合される)を除いて試料中の実質的に全ての物質を除去する適切な溶媒で洗浄される。最後に、支持体は、別の適切な溶媒、例えばグリシン緩衝液、pH5.0で洗浄され、ポリペプチド変異体から抗原が放出される。
ラベル試薬は、典型的には、反応性官能基を保有し、これは、(i)操作システイン操作された抗体のシステインチオールと直接反応して、ラベル化抗体を形成し、(ii)リンカー試薬と反応して、リンカーラベル中間体を形成し、または(iii)リンカー抗体と反応してラベル化抗体を形成し得る。ラベル試薬の反応性官能基としては、以下の:マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシンイミジルエステル(例えば、NHS、N−ヒドロキシスクシンイミド)、イソチオシアネート、塩化スルホニル、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステルおよびホスホルアミダイトが挙げられるが、しかし他の官能基も用いられ得る。
例示的反応性官能基は、検出可能ラベル、例えばビオチンまたは蛍光染料のカルボキシル基置換基のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)である。ラベルのNHSエステルは、予め形成され、単離され、精製されるかおよび/または特性化され、あるいはそれは、in situで形成され、抗体の求核性基と反応され得る。典型的には、カルボキシル型のラベルは、カルボジイミド試薬、例えばジクロロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、あるいはウロニウム試薬、例えばTSTU(O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)またはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、活性剤、例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ならびにN−ヒドロキシスクシンイミドのいくつかの組合せと反応することにより活性化されて、ラベルのNHSエステルを生じる。いくつかの場合、ラベルおよび抗体は、ラベルのin situ活性化ならびに抗体との反応によりカップリングされて、ラベル−抗体接合体を一段階で形成し得る。その他の活性化およびカップリング試薬としては、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾ−1−いる)−1−1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TFFH(N,N’,N”,N’”−テトラメチルウロニウム2−フルオロ−ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、EEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジクロロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、ならびにアリールスルホニルハリド、例えば、トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリドが挙げられる。
本発明のアルブミン結合ペプチド−Fab化合物
一態様において、本発明の抗体は、アルブミン結合タンパク質と融合される。血漿−タンパク質結合は、短命分子の薬物動態特性を改良する有効な手段であり得る。アルブミンは、血漿中で最も豊富なタンパク質である。血清アルブミン結合ペプチド(ABP)は、組織取込み、移行および拡散を含めて、融合活性ドメインタンパク質の薬力学を変更し得る。これらの薬力学的パラメーターは、適切な血清アルブミン結合ペプチド配列の特定の選択により調整され得る(US 20040001827)。一連のアルブミン結合ペプチドは、ファージ表示スクリーニングにより同定された(Dennis et al. (2002) “Albumin Binding As A General Strategy For Improving The Pharmacokinetics Of Proteins” J Biol Chem. 277:35035-35043;WO 01/45746)。本発明の化合物としては、(i)Dennis et al (2002) J Biol Chem. 277:35035-35043 at Tables III and IV, page 35038;(ii)US 20040001827([0076] 配列番号9〜22);および(iii)WO 01/45746(12〜13ページ)(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される)により教示されたABP配列が挙げられる。アルブミン結合(ABP)−Fabは、1:1化学量比(1 ABP/1 Fab)で、アルブミン結合ペプチドをFab重鎖のC末端に融合することにより、操作される。アルブミンとこれらのABP−Fabとの会合は、抗体半減期をウサギおよびマウスの25倍以上に増大する、ということが示された。したがって、上記の反応性Cys残基は、これらABP−Fab中に導入され、細胞傷害性薬剤との部位特異的接合と、その後のin vivo動物試験のために用いられ得る。
アルブミン結合ペプチド配列の例としては、配列番号47〜51で列挙されたアミノ酸配列が挙げられるが、これらに限定されない:
CDKTHTGGGSQRLMEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号47
QRLMEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号48
QRLIEDICLPRWGCLWEDDF 配列番号49
RLIEDICLPRWGCLWEDD 配列番号50
DICLPRWGCLW 配列番号51
抗体−薬剤接合体
別の態様では、本発明は、細胞傷害性物質、例えば化学療法薬、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素、またはその断片)、あるいは放射性同位体(すなわち、放射性接合体)と接合される抗体を含む免疫接合体、または抗体−薬剤接合体(ADC)を提供する。別の態様では、本発明はさらに、免疫接合体の使用方法を提供する。一態様では、免疫接合体は、細胞傷害性物質または検出可能作用物質と共有結合される上記抗FcRH5抗体のいずれかを含む。
一態様では、本発明のFcRH5抗体は、別のFcRH5抗体により結合されるFcRH5上の同一エピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のFcRH5抗体は、別のFcRH5抗体(すなわち、市販の抗FcRH5抗体)により結合されるFcRH5上の同一エピトープに結合する。
別の態様では、本発明のFcRH5抗体は、別のFcRH5抗体により結合されるエピトープとは異なるFcRH5上のエピトープと結合する。別の実施形態では、本発明のFcRH5抗体は、別のFcRH5抗体(すなわち、市販の抗FcRH5抗体)により結合されるFcRH5上のエピトープとは異なるFcRH5上のエピトープに結合する。
一態様では、本発明の抗体は、第一動物種のFcRH5と特異的に結合し、第二動物種のFcRH5と特異的に結合しない。一実施形態では、第一動物種はヒトおよび/または霊長類(例えば、カニクイザル)であり、第二動物種はネズミ(例えば、マウス)および/またはイヌである。一実施形態では、第一動物種はヒトである。一実施形態では、第一動物種は、霊長類、例えばカニクイザルである。一実施形態では、第二動物種はネズミ、例えばマウスである。一実施形態では、第二動物種はイヌである。
一態様では、本発明は、本発明の1つ以上の抗体、および担体を含む組成物を提供する。一実施形態では、担体は製薬上許容可能である。
一態様では、本発明は、本発明のFcRH5抗体をコードする核酸を提供する。
一態様では、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
一態様では、本発明は、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。ベクターは、任意の型のもの、例えば組換えベクター、例えば発現ベクターであり得る。種々の宿主細胞のいずれかが用いられ得る。一実施形態では、宿主細胞は、原核生物細胞、例えば大腸菌である。一実施形態では、宿主細胞は、真核生物細胞、例えば哺乳類細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
一態様では、本発明は、本発明の抗体の作製方法を提供する。例えば本発明は、FcRH5抗体(本明細書中で定義されるように、全長およびその断片を含む)の作製方法であって、上記抗体(またはその断片)をコードする本発明の組換えベクターを適切な宿主細胞中で発現すること、および上記抗体を回収することを包含する方法を提供する。
一態様では、本発明は、容器、容器内に含入される組成物を含む製品であって、組成物が1つ以上の本発明のFcRH5抗体を含む製品を提供する。一実施形態では、組成物は、本発明の核酸を含む。一実施形態では、抗体を含む組成物は、さらに、担体を含み、これはいくつかの実施形態では、製薬上許容可能である。一実施形態では、本発明の製品はさらに、対象に組成物(例えば、抗体)を投与するための使用説明書を包含する。
一態様では、本発明は、本発明の1つ以上のFcRH5抗体を含む組成物を含む第一容器;および緩衝剤を含む第二容器を包含するキットを提供する。一実施形態では、緩衝液は製薬上許容可能である。一実施形態では、アンタゴニスト抗体を含む組成物はさらに担体を含み、これは、いくつかの実施形態では、製薬上許容可能である。一実施形態では、キットはさらに、対象に組成物(例えば、抗体)を投与するための使用説明書を包含する。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明のFcRH5抗体の使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明の核酸の使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明の発現ベクターの使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明の宿主細胞の使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明の製品の使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、疾患、例えば癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害の治療的および/または予防的処置のための医薬剤の調製における本発明のキットの使用を提供する。一実施形態では、癌、腫瘍および/または細胞増殖性障害は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。
一態様では、本発明は、FcRH5を発現する細胞の増殖の抑制方法であって、上記細胞を本発明の抗体と接触させ、それにより上記細胞の増殖の抑制を引き起こすことを包含する方法を提供する。一実施形態では、抗体は、細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
一態様では、本発明は、FcRH5を発現する細胞を含む癌性腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置する方法であって、治療的有効量の本発明の抗体を上記哺乳動物に投与し、それにより上記哺乳動物を有効に処置することを包含する方法を提供する。一実施形態では、抗体は細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
一態様では、本発明は、FcRH5の発現増大と関連した細胞増殖性障害を処置するかまたは防止するための方法であって、このような処置を必要とする対象に有効量の本発明の抗体を投与し、それにより上記細胞増殖性障害を効果的に処置または防止することを包含する方法を提供する。一実施形態では、上記増殖性障害は癌である。一実施形態では、抗体は細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
一態様では、本発明は、細胞の増殖を抑制するための方法であって、上記細胞の増殖が少なくとも一部は、FcRH5の増殖増強作用に依っている方法であって、上記細胞を有効量の本発明の抗体と接触させ、それにより上記細胞の増殖を抑制することを包含する方法を提供する。一実施形態では、抗体は細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
一態様では、本発明は、哺乳動物における腫瘍を治療的に処置する方法であって、上記腫瘍の増殖が少なくとも一部は、FcRH5の増殖増強作用に依っている方法であって、上記細胞を有効量の本発明の抗体と接触させ、それにより上記腫瘍を有効に処置することを包含する方法を提供する。一実施形態では、抗体は細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
一態様では、本発明は、本明細書中に記載される免疫接合体、許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む薬学的処方物を患者に投与することを包含する癌の処置方法を提供する。一実施形態では、癌は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。一実施形態では、患者は、細胞傷害性物質を、抗体−薬剤接合体化合物と組合せて投与される。
一態様では、本発明は、B細胞増殖の抑制方法であって、免疫接合体とFcRH5との結合を許容する条件下で、方法の抗体を含む免疫接合体に細胞を曝露することを包含する方法を提供する。一実施形態では、B細胞増殖は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫から選択される。一実施形態では、B細胞は異種移植片である。一実施形態では、曝露はin vitroで起こる。一実施形態では、曝露はin vivoで起こる。
一態様では、本発明は、FcRH5を含有することが疑われる試料中のFcRH5の存在を確定する方法であって、上記試料を本発明の抗体に曝露すること、そして上記抗体と上記試料中のFcRH5との結合を確定することを包含する方法を提供するが、この場合、上記抗体と上記試料中のFcRH5との結合は、上記試料中の上記タンパク質の存在を示す。一実施形態では、試料は生物学的試料である。さらなる実施形態では、生物学的試料は、B細胞を含む。一実施形態では、生物学的試料は、B細胞障害および/またはB細胞増殖性障害、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫(これらに限定されない)を経験しているかまたはその疑いがある哺乳動物からである。
一態様では、FcRH5を発現する細胞、例えばB細胞の増大に関連した細胞増殖性障害の診断方法であって、生物学的試料中の試験細胞を上記抗体のいずれかと接触させること;抗体とFcRH5との結合を検出することにより試料中の試験細胞と結合される抗体のレベルを確定すること;そして対照試料中の細胞と結合される抗体のレベルを比較することを包含する方法が提供されるが、この場合、結合される抗体のレベルは試験および対照試料中のFcRH5発現細胞の数に正規化され、そして対照試料と比較した場合の試験試料中の結合される抗体の高レベルは、FcRH5を発現する細胞と関連した細胞増殖性障害の存在を示す。
一態様では、血液または血清中の可溶性FcRH5の検出方法であって、B細胞増殖性障害の疑いがあるかまたはそれを経験している哺乳動物からの血液または血清の試験試料を本発明の抗FcRH5抗体と接触させること、そして正常哺乳動物からの血液または血清の対照試料と比較して試験試料中の可溶性FcRH5の増大を検出することを包含する方法が提供される。一実施形態では、検出方法は、哺乳動物の血液または血清中の可溶性FcRH5の増大に関連したB細胞増殖性障害の診断方法として有用である。
一態様では、本発明の抗体とFcRH5を発現する細胞との結合方法であって、上記細胞を本発明の抗体と接触させることを包含する方法が提供される。一実施形態では、抗体は細胞傷害性物質と接合される。一実施形態では、抗体は増殖阻害剤と接合される。
本発明の方法は、任意の適切な病理学的状態、例えばFcRH5の発現と関連した細胞および/または組織に作用するために用いられ得る。一実施形態では、本発明の方法において標的にされる細胞は、造血系細胞である。例えば造血系細胞は、リンパ球、白血球、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択されるものであり得る。一実施形態では、本発明の方法において標的にされる細胞は、B細胞またはT細胞である。一実施形態では、本発明の方法において標的にされる細胞は、癌細胞である。例えば癌細胞は、リンパ腫細胞、白血病細胞または骨髄腫細胞からなる群から選択されるものであり得る。
本発明の方法は、さらに、付加的処置段階を包含する。例えば、一実施形態では、方法はさらに、標的化細胞および/または組織(例えば癌細胞)が放射線処置または化学療法薬に曝露される段階を包含する。
一態様では、本発明は、有効量の抗FcRH5抗体を、有効量の別の治療薬(例えば、抗血管新生薬、別の抗体、化学療法薬、細胞傷害性物質、免疫抑制薬、プロドラッグ、サイトカイン、細胞傷害性放射線療法、コルチコステロイド、抗嘔吐薬、癌ワクチン、鎮痛薬または増殖阻害薬)と組合せて投与することを包含する方法を提供する。例えば、抗FcRH5抗体または免疫接合体は、抗癌薬または抗血管新生薬と組合せて用いられて、種々の新生物または非新生物性症状を処置する。特定の例では、抗FcRH5抗体は、ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)、レブリミド(登録商標)(レナリドミド)、タモキシフェン、レトロゾール、エキセメスタン、アナストロゾール、イリノテカン、セツキシマブ、フルベストラント、ビノレルビン、ベカシズマブ、ビンクリスチン、シスプラチン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ビンブラスチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ペメトレキセド、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン、メルファラン、プレドニソン、ビンクリスチン、サリドマイドと組合せて用いられる。
処置されるべき特定の癌適応症に依存して、本発明の併用療法は、付加的治療薬、例えば化学療法薬、または付加的療法、例えば放射線療法または外科手術と組合せられ得る。多数の既知の化学療法薬が、本発明の併用療法に用いられ得る。好ましくは、具体的適応症の処置のための標準である化学療法薬が用いられる。組合せに用いられるべき各治療薬の投与量または頻度は、好ましくは、他の作用物質(複数可)を伴わずに用いられる場合の、対応する作用物質の投与量または頻度と同じであるかまたはそれより少ない。
本明細書中に記載されるように、FcRH5(またはIRTA2)発現は、多発性骨髄腫およびバーキットリンパ腫細胞株において脱制御されることが観察されている。したがって、本発明の方法の一実施形態では、標的にされる細胞(例えば、癌細胞)は、FcRH5を発現しない細胞と比較して、FcRH5が発現されるものである。さらなる実施形態では、標的化細胞は、同一組織型の正常非癌細胞と比較した場合、FcRH5発現が増強される癌細胞である。一実施形態では、本発明の方法は、標的化細胞の死を引き起こす。
本発明の他の態様では、本発明は、本明細書中に記載される抗体のいずれかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のこのようなベクターを含む宿主細胞も、提供される。例として、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌細胞または酵母細胞であり得る。本明細書中に記載される抗体のいずれかの産生方法がさらに提供され、所望の抗体の発現に適した条件下で宿主細胞を培養すること、そして細胞培養から所望の抗体を回収することを包含する。
さらなる態様では、本発明は、本明細書中に記載されるような抗FcRH5抗体を、担体と組合せて含む物質の組成物に関する。任意に、担体は製薬上許容可能な担体である。
本発明の別の態様は、抗FcRH5ポリペプチド抗体に応答性である症状の処置に有用な医薬剤の調製のための、本明細書中に記載されるような抗FcRH5抗体の使用に向けられる。
本発明の別の態様は、抗体当たりの平均薬剤負荷率が約2〜約5、または約3〜約4である式Iの抗体−薬剤化合物の混合物を含む組成物である。
本発明の別の態様は、式I ADC化合物、式I ADC化合物の混合物、あるいはその製薬上許容可能な塩または溶媒和物、ならびに製薬上許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む薬学的組成物である。
別の態様は、式I ADC化合物、および抗癌特性またはその他の治療的作用を有する第二化合物を含む薬学的組合せを提供する。
別の態様は、腫瘍細胞または癌細胞を殺害するかまたはその増殖を抑制するための方法であって、腫瘍細胞または癌細胞を殺害するかまたはその増殖を抑制するのに有効である量の式Iの抗体−薬剤接合体、あるいはその製薬上許容可能な塩または溶媒和物で細胞を処置することを包含する方法である。
別の態様は、癌の処置方法であって、治療的有効量の薬学的組成物(式I ADCを含む)を患者に投与することを包含する方法である。
別の態様は、製品、すなわち、抗体−薬剤接合体、容器、および処置を指示する包装挿入物またはラベルを包含するキットを含む。
本発明の一態様は、式Iの抗体薬剤接合体化合物の製造方法であって、以下の:(a)操作システイン操作された抗体の操作操作されたシステイン基をリンカー試薬と反応させて抗体−リンカー中間体Ab−Lを形成すること;そして(b)Ab−Lを活性化薬剤部分Dと反応させて、それにより抗体−薬剤接合体が形成されるステップを包含するか、あるいは(c)薬剤部分の求核性基をリンカー試薬と反応させて、薬剤−リンカー中間体D−Lを形成すること;そして(d)D−Lを操作システイン操作された抗体の操作操作されたシステイン基と反応させて、それにより抗体−薬剤接合体を形成するステップを包含する方法である。
本発明の一態様は、癌細胞を検出するための検定であって、以下の:(a)操作システイン操作された抗FcRH5抗体−薬剤接合体に細胞を曝露すること;そして(b)操作システイン操作された抗FcRH5抗体−薬剤接合体化合物と細胞との結合の程度を確定することを包含する検定である。
A. 抗FcRH5抗体
一実施形態では、本発明は、治療薬として本明細書中で用途を見出し得る抗FcRH5抗体を提供する。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性および異種接合体抗体が挙げられる。
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原およびアジュバントの多数回皮下(sc)
または腹腔内(ip)注射により、動物中に産生される。それは、免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質に対する関連抗原(特に、合成ペプチドが用いられる場合)を接合するために有用であり得る。例えば、抗原は、二重機能性または誘導剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して接合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシン阻害剤と接合され得る。
動物は、例えば(それぞれウサギまたはマウスに関して)100μgまたは5μgのタンパク質または接合体を、3容積のフロイント完全アジュバントと組合せ、多重部位で皮膚内に溶液を注射することにより、抗原、免疫学的接合体または誘導体に対して免疫化される。1ヵ月後、動物は、多重部位での皮下注射により、フロイント完全アジュバント中の元の量の1/5〜1/10のペプチドまたは接合体を追加免疫される。7〜14日後、動物は採血され、抗体力価に関して血清が検定される。動物は、力価がプラトーになるまで、追加免疫される。接合体は、タンパク質融合物として組換え細胞培養中で作られ得る。さらにまた、凝集剤、例えば明礬は、免疫応答を増強するために適切に用いられる。
2. モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得るし、あるいは組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)により作製され得る。
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターが上記のように免疫化されて、免疫化のために用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球を引き出す。代替的には、リンパ球は、in vitroで免疫化され得る。免疫化後、リンパ球は単離され、次いで、適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、適切な培地中に植えつけられ、増殖されるが、この培地は、好ましくは、非融合親骨髄腫細胞(融合相手とも呼ばれる)の増殖または生存を抑制する1つ以上の物質を含有する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマに関する選択的培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含み、この物質はHGPRT欠乏細胞の増殖を防止する。
好ましい融合相手骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択抗体産生細胞により抗体の安定高レベル産生を支持し、そして非融合親細胞に対して選択する選択培地に感受性であるものである。好ましい骨髄腫細胞株は、ネズミ骨髄腫株、例えばSalk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に、ならびにAmerican Type Culture Collection, Manassas, Virginia, USAから入手可能なSP−2および誘導体、例えばX63−Ag8−653細胞に由来するものである。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトへテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);およびBrodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の産生に関して検定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、またはin vitro結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着検定(ELISA)により確定される。
モノクローナル抗体の結合親和力は、例えば、Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)に記載されたスカッチャード解析により決定され得る。
所望の特異性、親和性および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマが一旦同定されると、クローンは希釈手順を限定することによりサブクローニングされ、標準方法により増殖され得る(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための適切な培地としては、例えばD−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、例えば、マウス中への細胞の腹腔内注射により、動物中の腹水腫瘍としてin vivoで増殖され得る。
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、慣用的抗体精製手法、例えばアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAまたはプロテインG−セファロースを使用)、またはイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析等により、培地、腹水または血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用的手法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、DNAは発現ベクター中に入れられ、これは次に、別の状況では抗体タンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中でトランスフェクトされて、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する検討文献としては、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993)およびPluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188 (1992)が挙げられる。
さらなる実施形態では、モノクローナル抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技法を用いて生成される抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを用いた、それぞれネズミおよびヒト抗体の単離を記載する。その後の出版物は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としての組合せ感染およびin vivo組換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))を記載する。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的モノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に代わる実行可能な技法である。
抗体をコードするDNAは、例えば、相同ネズミ配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメイン(CHおよびCL)配列に置換することにより(米国特許第4,816,567号;およびMorrison, et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))、あるいは免疫グロブリンコード配列を、非免疫グロブリンポリペプチド(非相同ポリペプチド)に関するコード配列の全部または一部と融合することにより、キメラまたは融合抗体ポリペプチドを産生するよう修飾され得る。非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインにとって代わり得るし、あるいはそれらは抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置き換えられて、一抗原に対する特異性を有するある抗原結合部位および異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
3. ヒトおよびヒト化抗体
本発明の抗FcRH5抗体は、さらに、ヒト化抗体またはヒト抗体を含み得る。ヒト化型の非ヒト(例えばネズミ)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体のその他の抗原結合配列)で、これは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有する。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および容量を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラットまたはウサギのCDRからの残基に取って代わられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基に取って代わられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、輸入CDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基も含み得る。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、この場合、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体はさらにまた、最適には、免疫グロブリンの、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で周知である。一般的には、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「輸入」残基として言及され、これは、典型的には「輸入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、ウィンターと共同研究者の方法[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)]に従って、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに置換することにより、実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であって、この場合、実質的に無傷とは言えないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似部位からの残基により置換されるヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製するのに用いられるべき、軽鎖および重鎖の両方の、ヒト可変ドメインの選択は、抗体がヒト療法的使用を意図される場合、抗原性およびHAMA応答(ヒト抗マウス抗体)を低減するために非常に重要である。HAMA応答の低減または排除は、適切な治療薬の臨床的開発の有意の一局面である(例えば、Khaxzaeli et al., J. Natl. Cancer Inst. (1988), 80:937;Jaffers et al., Transplantation (1986), 41:572;Shawler et al., J. Immunol. (1985), 135:1530;Sears et al., J. Biol. Response Mod. (1984), 3:138;Miller et al., Blood (1983), 62:988;Hakimi et al., J. Immunol. (1991), 147:1352;Reichmann et al., Nature (1988), 332:323;Junghans et al., Cancer Res. (1990), 50:1495参照)。本明細書中に記載されるように、本発明は、HAMA応答が低減されるかまたは排除されるよう、ヒト化される抗体を提供する。当該技術分野で既知の慣例的方法を用いて、これらの抗体の変異体がさらに得られるが、それらのいくつかはさらに以下に記載される。いわゆる「最良適合」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに関してスクリーニングされる。齧歯類のものに最も近いヒトVドメイン配列が同定され、その中のヒトフレームワーク領域(FR)はヒト化抗体に関して許容される(Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993);Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の亜群の全てのヒト抗体の共通配列由来の特定フレームワーク領域を用いる。同一フレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体のために用いられ得る(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993))。
例えば、本明細書中に記載されるような抗体からのアミノ酸配列は、フレームワークおよび/または超可変配列(複数可)の多様化のための出発(親)配列として役立ち得る。出発超可変配列が連結される選択フレームワーク配列は、本明細書中では受容体ヒトフレームワークとして言及される。受容体ヒトフレームワークはヒト免疫グロブリン(そのVLおよび/またはVH領域)からであるかまたはそれに由来し得るが、このようなフレームワークはヒト患者において最小の免疫原性を有するかまたはまったく有さないことが実証されているので、好ましくは受容体ヒトフレームワークは、ヒト定常フレームワーク配列からであるかまたはそれに由来する。
受容体がヒト免疫グロブリンに由来する場合、ヒトフレームワーク配列のコレクション中にドナーフレームワーク配列と種々のヒトフレームワーク配列を一列に並べることによりドナーフレームワーク配列とのその相同性に基づいて選択されるヒトフレームワークを任意に選択し、受容体として最も相同のフレームワーク配列を選択し得る。
一実施形態では、本明細書中のヒトコンセンサスフレームワークは、VH亜群IIIおよび/またはVLκ亜群Iコンセンサスフレームワーク配列からであるかまたはそれらに由来する。
それがヒト免疫グロブリンからであれ、ヒト定常フレームワークからであれ、受容体は選択されるヒトフレームワーク配列と配列が同一であるが、受容体配列は、ヒト免疫グロブリン配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列に比して、先在するアミノ酸配列を含み得る、と本発明は意図する。これらの先在置換は、ヒト免疫グロブリン配列またはコンセンサスフレームワーク配列に比して、好ましくは最小であり;通常は4、3、2または1つのアミノ酸の差のみである。
非ヒト抗体の超可変領域残基は、VLおよび/またはVH受容体ヒトフレームワーク中に組み入れられる。例えば、カバトCDR残基、チョチア超可変ループ残基、Abm残基および/または接触残基に対応する残基を組み入れ得る。任意に、以下のような拡大超可変領域残基が組み入れられる:24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、26〜35B(H1)、50〜65、47〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102または95〜102(H3)。
超可変領域残基の「組み入れ」は本明細書中で考察されているが、これは種々の方法で達成され、例えば、そのフレームワーク残基が受容体ヒトフレームワーク残基に変えられるよう、マウス可変ドメイン配列をコードする核酸を突然変異化することにより、あるいは超可変ドメイン残基が非ヒト残基に変えられるよう、ヒト可変ドメイン配列をコードする核酸を突然変異化することにより、あるいは所望の配列をコードする核酸を合成すること等により、所望の核酸配列をコードする核酸が生成され得る、と理解されるべきである。
本明細書中の例では、超可変領域移植変異体は、各超可変領域に関して別個のオリゴヌクレオチドを用いて、ヒト受容体配列をコードする核酸のクンケル突然変異誘発により生成された(Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987))。適正な超可変領域−抗原相互作用を補正し、再確立するために、慣例的技法を用いて、適切な変化がフレームワークおよび/または超可変領域内に導入され得る。
ファージ(ミド)表示(いくつかの状況ではファージ表示としても、本明細書中で言及される)は、配列無作為化により生成されるライブラリー中の多数の異なる潜在的変異体抗体を生成し、スクリーニングするための便利な且つ迅速な方法として用いられ得る。しかしながら、変更抗体を作製し、スクリーニングするための他の方法は、当業者に利用可能である。
ファージ(ミド)表示技法は、抗原のようなリガンドと結合する新規のタンパク質を生成し、選択するための強力なツールを提供している。ファージ(ミド)表示の技法の使用は、高親和力で標的分子と結合する配列に関して迅速に分類され得るタンパク質変異体の大型ライブラリーの生成を可能にする。変異体ポリペプチドをコードする核酸は、一般的に、ウイルス外殻タンパク質、例えば遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質をコードする核酸配列と融合される。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列が遺伝子IIIタンパク質の一部をコードする核酸配列と融合される一価ファージミド表示系が、開発されている(Bass, S., Proteins, 8:309 (1990);Lowman and Wells, Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 3:205 (1991))。一価ファージミド表示系では、粒子の感染性が保持されるよう、遺伝子融合は低レベルで発現され、そして野生型遺伝子IIIタンパク質も発現される。ペプチドライブラリーを生成し、それらのライブラリーをスクリーニングする方法は、多数の特許で開示されている(例えば、米国特許第5,723,286号、米国特許第5,432,018号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,427,908号および米国特許第5,498,530号)。
抗体または抗原結合ポリペプチドのライブラリーは、多数の方法で、例えば無作為DNA配列を挿入することにより単一遺伝子を変更することにより、または関連遺伝子のファミリーをクローニングすることにより、調製されている。ファージ(ミド)表示を用いて抗体または抗原結合断片を表示するための方法は、米国特許第5,750,373号、第5,733,743号、第5,837,242号、第5,969,108号、第6,172,197号、第5,580,717号および第5,658,727号に記載されている。次いでライブラリーは、所望の特性を有する抗体または抗原結合タンパク質の発現に関してスクリーニングされる。
鋳型核酸中の選り抜きの核酸の置換方法は当該技術分野で十分に確立されており、そのいくつかは、本明細書中に記載されている。例えば、超可変領域残基は、クンケル法を用いて置換され得る(例えば、Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987)参照)。
オリゴヌクレオチドの配列は、変更されるべき超可変領域残基に関して設計されたコドン組のうちの1つ以上を含む。コドン組は、所望の変異体アミノ酸をコードするために用いられる異なるヌクレオチドトリプレット配列の一組である。コドン組は、IUBコードに従って以下に示されるような特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの等モル混合物を意味するための記号を用いて表され得る。
IUBコード
G グアニン
A アデニン
T チミン
C シトシン
R (AまたはG)
Y (CまたはT)
M (AまたはC)
K (GまたはT)
S (CまたはG)
W (AまたはT)
H (AまたはCまたはT)
B (CまたはGまたはT)
V (AまたはCまたはG)
D (AまたはGまたはT)H
N (AまたはCまたはGまたはT)
例えば、コドン組DVKでは、DはヌクレオチドAまたはGまたはTであり得る;VはAまたはGまたはCであり得る;そしてKはGまたはTであり得る。このコドン組は、18の異なるコドンを示し得るし、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、GlyおよびCysをコードし得る。
オリゴヌクレオチドまたはプライマー組は、標準方法を用いて合成され得る。オリゴヌクレオチドの一組は、例えば、固相合成により合成され、コドン組により提供されるヌクレオチド三つ組の全ての考え得る組合せを表し、そしてアミノ酸の所望の群をコードする配列を含有する。ある位置に選択ヌクレオチド「縮重」を有するオリゴヌクレオチドの合成は、当該技術分野で周知である。あるコドン組を有するヌクレオチドのこのような組は、市販の核酸合成機(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CAから入手可能)を用いて合成され得るし、あるいは商業的に得られる(例えば、Life Technologies, Rockville, MDから)。したがって、特定のコドン組を有して合成されるオリゴヌクレオチドの一組は、典型的には、その差が全体の配列内のコドン組により確立される異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、本発明にしたがって用いられる場合、可変ドメイン核酸鋳型とのハイブリダイゼーションを可能にし、クローニング目的のための制限酵素部位も含み得る配列を有する。
一方法において、変異体アミノ酸をコードする核酸配列は、オリゴヌクレオチド媒介性突然変異誘発により作られ得る。この技法は、Zoller et al. Nucleic Acids Res. 10:6487-6504(1987)に記載されているように、当該技術分野で周知である。要するに、変異体アミノ酸をコードする核酸配列は、所望のコドン組をコードするオリゴヌクレオチドをDNA鋳型とハイブリダイズすることにより作成されるが、この場合、鋳型は、可変領域核酸鋳型配列を含有するプラスミドの一本鎖型である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを用いて、鋳型の完全第二相補鎖を合成し、したがって、これは、オリゴヌクレオチドプライマーを組み入れ、オリゴヌクレオチド組により提供されるようなコドン組を含有する。
一般的に、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが用いられる。最適オリゴヌクレオチドは、突然変異(複数可)をコードするヌクレオチド(複数可)のいずれかの側の上の鋳型と完全に相補的である12〜15ヌクレオチドを有する。これは、オリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子と適正にハイブリダイズする、ということを保証する。オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知の技法、例えば、Crea et al., Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 75:5765 (1978)に記載されたような技法を用いて容易に合成される。
DNA鋳型は、バクテリオファージM13ベクター(市販のM13mp18およびM13mp19ベクターが適している)、またはViera et al., Meth. Enzymol., 153:3 (1987)により記載されるような一本鎖ファージ複製起点を含有するベクターであるベクターにより生成される。したがって、突然変異化されるべきであるDNAは、一本鎖鋳型を生成するために、これらのベクターの1つに挿入され得る。一本鎖鋳型の産生は、Sambrook et al.(上記)の第4.21〜4.41章に記載されている。
ネイティブDNA配列を変更するために、オリゴヌクレオチドは、適切なハイブリダイゼーション条件下で一本鎖鋳型とハイブリダイズされる。DNA重合酵素、通常はT7 DNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼIのクレノウ断片が次に付加されて、合成のためのプライマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて、鋳型の相補鎖を合成する。したがって、DNAの1つの鎖が突然変異型の遺伝子1をコードし、他方の鎖(元の鋳型)が遺伝子1のネイティブ非変更配列をコードするよう、ヘテロ二重鎖分子が形成される。このヘテロ二重鎖分子は、次に、適切な宿主細胞、通常は原核生物、例えば大腸菌JM101で形質転換される。細胞の増殖後、それらはアガロースプレート上に載せられて、32−ホスフェートで放射能ラベルされたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングされて、突然変異化DNAを含有する細菌コロニーを同定する。
直前に記載された方法は、プラスミドの両方の鎖が突然変異(複数可)を含有するホモ二重鎖分子が生成されるよう修飾され得る。修飾を、以下に示す:一本鎖オリゴヌクレオチドが上記のように一本鎖鋳型とアニーリングされる。3つのデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)およびデオキシリボチミジン(dTT)の混合物が、dCTP−(aS)(Amershamから入手可能)と呼ばれる修飾化チオデオキシリボシトシンと併合される。この混合物は、鋳型−オリゴヌクレオチド複合体に付加される。この混合物へのDNAポリメラーゼの付加時に、突然変異化塩基以外は鋳型と同一であるDNAの鎖が生成される。さらに、DNAのこの新規の鎖はdCTPの代わりにdCTP−(aS)を含入し、これは、制限エンドヌクレアーゼ消化からそれを保護するのに役立つ。二本鎖へテロ二重鎖の鋳型鎖が適切な制限酵素で切れ目を入れられた後、鋳型鎖は、突然変異化されるべき部位(複数可)を含有する領域の先を、ExoIIIヌクレアーゼまたは別の適切なヌクレアーゼで消化され得る。次いで、反応が停止されて、一部分だけ一本鎖である分子が後に残る。次に、4つのデオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、ATPおよびDNAリガーゼの全ての存在下で、DNAポリメラーゼを用いて、完全二本鎖DNAホモ二重鎖が形成される。このホモ二重鎖分子は次に、適切な宿主細胞中で形質転換され得る。
前記のように、オリゴヌクレオチド組の配列は、鋳型核酸とハイブリダイズするのに十分な長さを有し、そして制限部位も含有する(しかし、必ずというわけではない)。DNA鋳型は、バクテリオファージM13ベクター、またはViera et al. Meth. Enzymol., 153:3 (1987)により記載されたような一本鎖ファージ複製起点を含有するベクターに由来するベクターにより生成され得る。したがって、突然変異化されるべきであるDNAは、一本鎖鋳型を生成するために、これらのベクターの1つに挿入されなければならない。一本鎖鋳型の産生は、Sambrook et al.(上記)の第4.21〜4.41章に記載されている。
別の方法によれば、抗原結合は、修復された超可変領域の選択を介して抗体のヒト化中に回復され得る(出願番号11/061,841(2005年2月18日出願)参照)。当該方法は、受容体フレームワーク上に非ヒト超可変領域を組み入れること、さらに、受容体フレームワーク配列を修飾せずに1つ以上の超可変領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することを包含する。代替的には、1つ以上のアミノ酸置換の導入は、受容体フレームワーク配列中の修飾により成し遂げられ得る。
別の方法によれば、オリゴヌクレオチドの配列内に提供されるコドン組により確立される異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを各組が有する上流および下流オリゴヌクレオチド組を提供することにより、ライブラリーが生成され得る。上流および下流オリゴヌクレオチド組は、可変ドメイン鋳型核酸配列とともに、ポリメラーゼ連鎖反応に用いられて、PCR産物の「ライブラリー」を生成する。PCR産物は、それらが確立された分子生物学技法を用いて、他の関連または非関連核酸配列、例えばウイルス外殻タンパク質および二量体化ドメインと融合され得る場合、「核酸カセット」として言及され得る。
PCRプライマーの配列は、超可変領域中の溶媒露出および高多様性位置に関する意図されたコドン組のうちの1つ以上を包含する。上記のように、コドン組は、所望の変異体アミノ酸をコードするために用いられることなるヌクレオチドトリプレット配列の一組である。
所望の判定基準を満たす抗体選択体は、適切なスクリーニング/選択ステップを介して選択される場合、標準組換え技法を用いて単離され、クローン化され得る。
さらに、抗原に対する高結合親和性およびその他の好ましい生物学的特性の保持を伴って抗体がヒト化される、ということは重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従って、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析のプロセスにより、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者に熟知されている。選択候補免疫グロブリン配列の見込みがある三次元立体配座構造を例証し、表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の考え得る役割の分析、すなわち、その抗原と結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、所望の抗体特質、例えば標的抗原(複数可)に対する親和性増大が達成されるよう、レシピエントおよび輸入配列からFR残基が選択され、組合され得る。概して、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすに際して、直接的に且つ最も実質的に関与する。
種々の型のヒト化抗FcRH5抗体が意図される。例えば、ヒト化抗体は、免疫接合体を生成するために、1つ以上の細胞傷害剤(複数可)と任意に接合される抗体断片、例えばFabであり得る。代替的には、ヒト化抗体は、無傷抗体、例えば無傷IgG1抗体であり得る。
ヒト化に代わるものとして、ヒト抗体が生成され得る。例えば今度は、免疫化時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、全レパートリーのヒト抗体を産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全抑制を生じる、ということが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウス中へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原投与時にヒト抗体の産生を引き起こす(例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann et al., Year in Immuno. 7:33 (1993);米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,591,669号(全てGenPharm);第5,545,807;およびWO 97/17852参照)。
代替的には、ファージ表示技法(McCafferty et al., Nature 348:552-553 [1990])を用いて、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体および抗体断片を産生し得る。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージの大または小外殻タンパク質遺伝子、例えばM13またはfd中にイン・フレームでクローン化され、ファージ粒子の表面に機能性抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能性に基づいた選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じる。したがって、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージ表示は、種々のフォマットで実施され得る(例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)で再検討されている)。V−遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージ表示のために用いられ得る。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)は、免疫化マウスの脾臓由来のV遺伝子の小型無作為組合せライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーが構築され、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体が、Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)またはGriffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993)により記載された技法に本質的に従って、単離され得る。米国特許第5,565,332号および第5,573,905号も参照されたい。
上記のように、ヒト抗体は、in vitro活性化B細胞によっても生成され得る(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号参照)。
4. 抗体断片
ある環境では、全抗体というよりむしろ、抗体断片を用いることに利点がある。サイズの小さい断片は迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍への接近改良をもたらし得る。
抗体断片の産生のために、種々の技法が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解的消化により得られた(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)参照)。しかしながら、これらの断片は、目下、組換え宿主細胞により直接産生され得る。Fab、FvおよびScFv抗体断片は、全て、大腸菌中で発現され、それから分泌され、したがって、大量のこれらの断片の手軽な産生を可能にする。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリーから単離され得る。代替的には、Fab’−SH断片は大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングされて、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離され得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むin vivo半減期増大を示すFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかである。他の実施形態では、選りすぐりの抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である(WO 93/16185;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号参照)。FvおよびsFvは、定常領域を欠く無傷結合部位を有する唯一の種である;したがって、それらは、vivo使用中の非特異的結合低減に適している。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノまたはカルボキシ末端でのエフェクタータンパク質の融合を生じるよう構築され得る(Antibody Engineering, ed. Borrebaeck(上記)参照)。抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているように、「線状抗体」でもあり得る。このような線状抗体断片は、一重特異性または二重特異性であり得る。
5. 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるようなFcRH5タンパク質の2つの異なるエピトープと結合し得る。他のこのような抗体は、別のタンパク質に対する結合部位を有するFcRH5結合部位を併有し得る。代替的には、抗FcRH5アームは、FcRH5発現細胞に細胞性防御機序を集中し、限局するために、T細胞受容体分子(例えば、CD3)、あるいはIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)のような白血球上のトリガー分子と結合するアームと組合され得る。二重特異性抗体は、FcRH5を発現する細胞に細胞傷害剤を限局するためにも用いられ得る。これらの抗体は、FcRH5結合アーム、ならびに細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、シリンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)を結合するアームを保有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。
WO 96/16673は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体を記載し、そして米国特許第5,837,234号は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体を開示する。二重特異性抗ErbB2/抗Fcα抗体は、WO98/02463に示されている。米国特許第5,821,337号および第6,407,213号は、二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体を教示する。CD3抗原上のエピトープおよび第二エピトープと結合する付加的二重特異性抗体が記載されている。例えば、米国特許第5,078,998号(抗−CD3/腫瘍細胞抗原);第5,601,819号(抗−CD3/IL−2R;抗−CD3/CD28;抗−CD3/CD45);第6,129,914号(抗−CD3/悪性疾患B細胞抗原);第7,112,324号(抗−CD3/CD19);第6,723,538号(抗−CD3/CCR5);第7,235,641号(抗−CD3/EpCAM);第7,262,276号(抗−CD3/卵巣腫瘍抗原);および第5,731,168号(抗−CD3/CD4IgG)を参照されたい。
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で既知である。全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、この場合、2つの鎖は異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち、1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィー段階により実行される正しい分子の精製は、かなり厄介であり、その生成収率は低い。類似の手順は、WO 93/08829に、そしてTraunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合される。好ましくは、融合は、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含むIg重鎖定常ドメインを伴う。融合の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第一重鎖定常領域(CH1)を有することは、好ましい。免疫グロブリン重鎖融合を、そして所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主に同時トランスフェクトされる。これは、構築に用いられる不等比の3つのポリペプチド鎖が所望の二重特異性抗体の最適産生を提供する場合の実施形態において3つのポリペプチド断片の相互割合を調整するに際して、より大きな柔軟性を提供する。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率を生じる場合、あるいは所望の鎖の組合せの収率に比率が有意の影響を及ぼさない場合、単一発現ベクター中に3つのポリペプチド鎖のうちの2つまたは全てに関するコード配列を挿入することが可能である。
このアプローチの好ましい一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに第一結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、ならびに他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二結合特異性を提供する)からなる。二重特異性分子の半分だけに免疫グロブリン軽鎖が存在することが分離の容易な方法を提供するので、この不斉構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を促す、ということが判明した。このアプローチは、WO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成についてのさらなる詳細に関しては、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号に記載された別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするよう操作され得る。好ましい界面は、CH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの1つ以上の小アミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に取って代わられる。大型アミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)に取り替えることにより、大きい側鎖(複数可)と同一または類似のサイズの代償性「空洞」が第二抗体分子の界面上に作られる。これは、ホモ二量体のような他の望ましくない最終産物を上回るヘテロ二量体の産生を増大するための機序を提供する。このアプローチに従って産生される二重特異性抗体は、本明細書中では「空洞への***」抗体として言及される。
二重特異性抗体としては、架橋または「ヘテロ接合体」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロ接合体での抗体の一方はアビジンと、他方はビオチンと結合され得る。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に向けることが(米国特許第4,676,980号)、ならびにHIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)、提案されている。ヘテロ接合体は、任意の便利な架橋法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は当該技術分野で周知であり、多数の架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製され得る。Brennan et al., Science 229:81 (1985)は、無傷抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab’)2断片を生成する手法を記載する。これらの断片は、ジチオール錯化剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。生成されたFab’断片は次に、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転化される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの1つは、メルカプトエチルアミンを用いた還元によりFab’−チオールに再転化され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定のための作用物質として用いられ得る。
近年の進歩は、二重特異性抗体を形成するために化学的に結合され得る大腸菌からのFab’−SH断片の直接的回収を助長した。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175: 217-225 (1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の生成を記載している。各Fab’断片は、大腸菌から別々に分泌され、in vitroで指向性化学結合を施されて、二重特異性抗体を形成した。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞と結合し、ならびにヒト乳癌標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し、単離するための種々の技法も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている(Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992))。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーは、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモ二量体はヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、次いで、再酸化されて、抗体へテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用され得る。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記載された「ダイアボディ」技法は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによりVLに連結されたVHを含む。したがって、一断片のVHおよびVLドメインは別の断片の相補的VLおよびVHと強いて対合され、それにより2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も、報告されている(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)参照)。
2より大きい力価を有する抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る(Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991))。
6. ヘテロ接合体抗体
ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である。ヘテロ接合体抗体は、2つの共有結合抗体からなる。このような抗体は、、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に向けることが(米国特許第4,676,980号)、ならびにHIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)、提案されている。抗体は、架橋剤を伴うものを含めて、合成タンパク質化学における既知の方法を用いて、in vitroで調製され得るということが意図される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することにより、構築され得る。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、ならびに例えば米国特許第4,676,980号に開示されたものが挙げられる。
7. 多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体より速く内在化(および/または異化)され得る。本発明の抗体は、3つ以上の抗原結合部位(例えば、四価抗体)を有する多価抗体(IgMクラス以外)であり、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に産生され得る。多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つ以上の抗原結合部位を含み得る。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれらからなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域、ならびにFc領域に対してアミノ末端である3つ以上の抗原結合部位を含む。好ましい多価抗体は、本明細書中では、3〜約8、しかし好ましくは4つの、抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、この場合、ポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fc(式中、VD1は第一可変ドメインであり、VD2は第二可変ドメインであり、FcはFc領域の一ポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、そしてnは0または1である)を含み得る。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、以下の:VH−CH1−可動性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖;またはVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含み得る。多価抗体は、本明細書中では、好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。多価抗体は、本明細書中では、例えば、約2〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含み得る。本明細書中で意図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意にCLドメインをさらに含む。
8. エフェクター機能操作操作
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい。これは、抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより達成され得る。代替的には、または付加的には、システイン残基(複数可)はFc領域に導入され、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にし得る。このようにして生成されるホモ二量体抗体は、インターナライゼーション能力を改良され、および/または補体媒介性細胞殺害および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大し得た(Caron et al., J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)参照)。抗腫瘍活性増強を示すホモ二量体抗体は、Wolff et al., Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されたようなヘテロ二機能性架橋剤を用いても調製され得る。代替的には、抗体は操作され、これは、二元性Fc領域を有し、それにより、増強された補体溶解およびADCC能力を有し得る(Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)参照)。抗体の血清半減期を増大するために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されたような抗体(特に抗体断片)中にサルベージ受容体結合エピトープを組み入れ得る。本明細書中で用いる場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期を増大するのに関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
9. 免疫接合体
本発明は、細胞傷害性物質、例えば化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素、あるいはその断片)、あるいは放射性同位体(すなわち、放射性接合体)と接合された抗体を含む免疫接合体(「抗体−薬剤接合体」、または「ADC」として互換的に言及される)にも関する。
ある実施形態では、免疫接合体は、抗体および化学療法薬またはその他の毒素を含む。このような免疫接合体の生成に有用な化学療法薬は、上記されている。用いられ得る酵素的活性毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンが挙げられる。種々の放射性核種が、放射性接合抗体の産生のために利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reが挙げられる。抗体および細胞傷害剤の接合体は、種々の二機能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート HCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science, 238: 1098 (1987)に記載されたように調製され得る。炭素−14−ラベル1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種と抗体との接合のためのキレート剤の一例である(WO94/11026参照)。
抗体、ならびに1つ以上の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、アウリスタチンペプチド、例えばモノメチルアウリスタチン(MMAE)(ドラスタチンの合成類似体)、マイタンシノイド、例えばDM1、トリコテセンおよびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体も、本明細書中で意図される。
例示的免疫接合体−抗体−薬剤接合体
本発明の免疫接合体(または「抗体−薬剤接合体」(「ADC」))は、以下の式Iを有し、この場合、抗体は、任意のリンカー(L)を介して1つ以上の薬剤部分(D)と接合(すなわち、共有的に結合)される。
Ab-(L-D)p I
したがって、抗体は、直接的にまたはリンカーを介して、薬剤と接合され得る。式Iにおいて、pは抗体当たりの薬剤部分の平均数であり、これは、例えば約1〜約20薬剤部分/抗体であり、ある実施形態では、1〜約8薬剤部分/抗体である。本発明は、平均薬剤負荷/抗体が約2〜約5、または約3〜約4である式Iの抗体−薬剤化合物の混合物を含む組成物を包含する。
a. 例示的リンカー
リンカーは、1つ以上のリンカー構成成分を含み得る。例示的リンカー構成成分としては、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」または「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)およびリンカー試薬との接合に起因するもの:N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート形成リンカー部分 4−メルカプトペンタン酸(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート形成リンカー部分 4−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)メチル)シクロヘキサンカルボン酸(「SMCC」、本明細書中では「MCC]とも呼ばれる)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブタノエート形成リンカー部分 4−メルカプトブタン酸(「SPDB」)、N−スクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)、エチレンオキシ−CH2CH2O−(1つ以上の反復単位として)(「EO」または「PEO」)が挙げられる。付加的リンカー構成成分は当該技術分野で既知であり、いくつかは本明細書中に記載される。種々のリンカー構成成分が当該技術分野知られており、そのいくつかを以下に記載する。
リンカーは、「開裂可能リンカー」であって、細胞中の薬剤の放出を助長し得る。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);米国特許第号5,208,020号)が用いられ得る。
ある実施形態では、リンカーは、以下の式IIで示されるようなリンカーである:
-Aa-Ww-Yy- II
(式中、Aはストレッチャー単位であり、aは0〜1の整数であり;Wはアミノ酸単位であり、そしてwは0〜12の整数であり;Yはスペーサー単位であり、そしてyは0、1または2であり;Ab、Dおよびpは式Iに関して上記と同様に定義される)。このようなリンカーの例示的実施形態は、US 2005−0238649 A1(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
いくつかの実施形態では、リンカー構成成分は、抗体を別のリンカー構成成分に、あるいは薬剤部分に連結する「ストレッチャー単位」を含み得る。例示的ストレッチャー単位は、以下に示される(この場合、波線は抗体との共有結合の部位を示す):
いくつかの実施形態では、リンカー構成成分はアミノ酸単位を含み得る。このような一実施形態では、アミノ酸単位はプロテアーゼによるリンカーの開裂を可能にし、それにより、細胞内プロテアーゼ、例えばリソソーム酵素への曝露時に免疫接合体からの薬剤の放出を助長する(例えば、Doronina et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21:778-784参照)。例示的アミノ酸単位としては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドおよびペンタペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的ジペプチドとしては、以下のものが挙げられる:バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe);フェニルアラニン−リシン(fkまたはphe−lys);あるいはN−メチル−バリン−シトルリン(Me−val−cit)。例示的トリペプチドとしては、以下のものが挙げられる:グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)。アミノ酸単位は、天然で生じるアミノ酸残基、ならびに小アミノ酸および非天然アミノ酸類似体、例えばシトルリンを含み得る。アミノ酸単位は、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、CおよびD、またはプラスミンプロテアーゼによる酵素的開裂のために、設計され、それらの選択性を最適化され得る。
いくつかの実施形態では、リンカー構成成分は、直接的に、またはストレッチャー単位および/またはアミノ酸単位により、抗体を薬剤部分に連結する「スペーサー」単位を含み得る。スペーサー単位は、「自壊的」または「非自壊的」であり得る。「非自壊的」スペーサー単位は、スペーサー単位の一部または全部が、ADCの酵素的(例えば、タンパク質分解的)開裂時に薬剤部分と結合されたままであるものである。非自壊的スペーサー単位の例としては、グリシンスペーサー単位およびグリシン−グリシンスペーサー単位が挙げられるが、これらに限定されない。配列特異的酵素的開裂を受け易いペプチドスペーサーの他の組合せも意図される。例えば、腫瘍細胞関連プロテアーゼによるグリシン−グリシンスペーサー単位を含有するADCの酵素的開裂は、残りのADCからのグリシン−グリシン−薬剤部分の放出を生じる。このような一実施形態では、グリシン−グリシン−薬剤部分は、次に、腫瘍細胞中で別個の加水分解ステップに付され、したがって、薬剤部分からグリシン−グリシンスペーサー単位を開裂する。
「自壊的」スペーサー単位は、別個の加水分解ステップなしに、薬剤部分の放出を可能にする。ある実施形態では、リンカーのスペーサー単位は、p−アミノベンジル単位を含む。このような一実施形態では、p−アミノベンジルアルコールは、アミド結合によりアミノ酸単位と結合され、そしてカルバメート、メチルカルバメートまたはカルボネートがベンジルアルコールと細胞傷害性物質との間に作られる(例えば、Hamann et al. (2005) Expert Opin. Ther. Patents (2005) 15:1087-1103参照)。一実施形態では、スペーサー単位はp−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。ある実施形態では、p−アミノベンジル単位のフェニレン部分はQmで置換され、この場合、Qは−C1〜C8アルキル、−O−(C1〜C8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロまたは−cyanoであり;そしてmは0〜4の範囲の整数である。自壊的スペーサー単位の例としては、さらに、p−アミノベンジルアルコールと電子工学的に類似する芳香族化合物(例えばUS 2005/0256030 A1参照)、例えば2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)およびオルト−またはパラ−アミノベンジルアセタルが挙げられるが、これらに限定されない。置換および非置換4−アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al., Chemistry Biology, 1995, 2, 223);適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm, et al., J. Amer. Chem. Soc., 1972, 94, 5815);および2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry, et al., J. Org. Chem., 1990, 55, 5867)のような、アミド結合加水分解時に環化を受けるスペーサーが用いられ得る。グリシンのa−位置で置換されるアミン含有薬剤の排除(Kingsbury, et al., J. Med. Chem., 1984, 27, 1447)も、ADCに有用な自壊的スペーサーの例である。
一実施形態では、スペーサー単位は、下記のような分枝鎖ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)単位であって、これは、多数の薬剤を組み入れ、放出するために用いられ得る。
(式中、Qは−C
1〜C
8アルキル、アルキル、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロまたは−シアノであり;mは0〜4の範囲の整数であり;nは0または1であり;そしてpは1〜約20の範囲である)。
別の実施形態では、リンカーLは、分枝鎖多機能性リンカー部分を介して1つより多い薬剤部分を抗体に共有結合するための樹状型リンカーであり得る(Sun et al (2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sun et al (2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768)。樹状リンカーは、薬剤対抗体のモル比、すなわち負荷を増大し、これは、ADCの効能と関連づけられる。したがって、操作システイン操作された抗体が1つの反応性システインチオール基のみを保有する場合、多数の薬剤部分は樹状リンカーを介して結合され得る。
例示的リンカー構成成分およびその組合せは、式IIのADCの状況で以下に示される:
リンカー構成成分、例えばストレッチャー、スペーサーおよびアミノ酸単位は、当該技術分野で既知の方法、例えばUS 2005−0238649 A1に記載された方法により、合成され得る。
b. 例示的薬剤部分
(1)マイタンシンおよびマイタンシノイド
いくつかの実施形態では、免疫接合体は、1つ以上のマイタンシノイド分子と接合される抗体を含む。マイタンシノイドは、チューブリン重合を抑制することにより作用する有糸***阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの低木であるマイテヌス・セラッタ(Maytenus serrata)から最初に単離された(米国特許第3896111号)。その後、ある微生物もマイタンシノイド、例えばマイタンシノールおよびC−3マイタンシノールエステルを産生する、ということが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成マイタンシノール、ならびにその誘導体および類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;第4,248,870号;第4,256,746号;第4,260,608号;第4,265,814号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,308,268号;第4,308,269号;第4,309,428号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,317,821号;第4,322,348号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,364,866号;第4,424,219号;第4,450,254号;第4,362,663号;および第4,371,533号に開示されている。
マイタンシノイド薬剤部分は、(i)発酵産物の発酵または化学的修飾または誘導体化により調製するために相対的に接触可能であり、(ii)ジスルフィドおよび非ジスルフィドリンカーを介して抗体と接合するのに適した官能基での誘導体化が容易であり、(iii)血漿中で安定であり、ならびに(iv)種々の腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体−薬剤接合体中の魅力的薬剤部分である。
マイタンシノイド薬剤部分として用いるのに適したマイタンシン化合物は当該技術分野で周知であり、既知の方法に従って天然供給源から単離され得るし、あるいは遺伝子操作および発酵技法を用いて産生され得る(US6790952;US2005/0170475;Yu et al (2002) PNAS 99:7968-7973)。マイタンシノールおよびマイタンシノール類似体も、既知の方法に従って合成的に調製され得る。
例示的マイタンシノイド薬剤部分としては、修飾芳香族環を有するもの、例えば:C−19−デクロロ(米国特許第4256746号)(アンサミトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製);C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4361650号および第4307016号)(ストレプトミセスまたはアクチノミセスを用いた脱メチル化、またはLAHを用いた脱塩素化により調製);およびC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化により調製)ならびに他の位置に修飾を有するものが挙げられる。
例示的マイタンシノイド薬剤部分としては、修飾を有するもの、例えば:C−9−SH(米国特許第4424219号)(マイタンシノールとH2SまたはP2S5との反応により調製);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4331598号);C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2OAc)(米国特許第4450254号)(ノカルジア属から調製);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4364866号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの転化により調製);C−15−メトキシ(米国特許第4313946号および第4315929号)(トレウィア・ヌドロフローラ(Trewia nudlflora)から単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4362663号および第4322348号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの脱メチル化により調製);および4,5−デオキシ(米国特許第4371533号)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製)も挙げられる。
マイタンシン化合物上の多数の位置は、連結の型によって、結合位置として有用であることが知られている。例えば、エステル結合を形成するためには、ヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位置、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位置、およびヒドロキシル基を有するC−20位置は、全て適している(US 5208020;US RE39151;US 6913748;US 7368565;US 2006/0167245;US 2007/0037972)。
マイタンシノイド薬剤部分としては、以下の構造を有するものが挙げられる:
(式中、波線はマイタンシノイド薬剤部分とADCのリンカーとの共有結合を示す。Rは、独立して、HまたはC
1〜C
6アルキルである。アミド基をイオウ原子と結合するアルキレン鎖は、メチル、エチルまたはプロピルであり、すなわち、mは1、2または3である (米国特許第633410号;米国特許第5208020号;米国特許第7276497号;Chari et al (1992) Cancer Res. 52:127-131;Liu et al (1996) Proc. Natl. Acad. Sci USA 93:8618-8623))。
マイタンシノイド薬剤部分の全ての立体異性体、すなわち、Dのキラル炭素でのRおよびS立体は位置の任意の組合せが、本発明の化合物に関して意図される。一実施形態では、マイタンシノイド薬剤部分は、以下の立体化学を有する:
マイタンシノイド薬剤部分の例示的実施形態としては、以下の構造を有するDM1;DM3およびDM4が挙げられる:
(式中、波線は、抗体−薬剤接合体の薬剤のイオウ原子とリンカー(L)との共有結合を示す)(WO 2005/037992;US 2005/0276812 A1)。
他の例示的マイタンシノイド抗体−薬剤接合体は、以下の構造および略号を有する(式中、Abは抗体であり、pは1〜約8である):
Ab-SMCC-DM1
一実施形態では、DM4がSPDBリンカーを介して抗体のチオール基に連結される抗体−薬剤接合体が形成される(米国特許第6913748号および第7276497号参照、これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
DM1がBMPEOリンカーを介して抗体のチオール基に連結される例示的抗体−薬剤接合体は、以下の構造および略号を有する:
(式中、Abは抗体であり;nは0、1または2であり;そしてpは1、2、3または4である)。
マイタンシノイドを含有する免疫接合体、その製造方法、およびそれらの治療的使用は、例えば、Erickson, et al (2006) Cancer Res. 66(8):4426-4433;米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、US 2005/0276812 A1および欧州特許EP 0 425 235 B1に開示されている(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
抗体−マイタンシノイド接合体は、抗体またはマイタンシノイドの生物学的活性を有意に減少させることなく、マイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合することにより、抗体−マイタンシノイド接合体が調製される(例えば、米国特許第5,208,020号参照(この記載内容は参照により本明細書中で援用される))。マイタンシノイドは、既知の技法により合成され、あるいは天然供給源から単離され得る。適切なマイタンシノイド、例えばマイタンシノール、ならびにマイタンシノール分子の芳香族環中で、または他の位置で修飾されたマイタンシノール類似体、例えば種々のマイタンシノールエステルは、例えば米国特許第5,208,020号に、ならびに本明細書中の上記で言及された他の特許および非特許出版物に開示されている。
抗体−マイタンシノイド接合体、例えば米国特許第5208020号または欧州特許第0 425 235 B1号;Chari et al. Cancer Research 52:127-131 (1992);およびUS 2005/016993 A1(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に開示されたものを製造するための、当該技術分野で既知の多数の連結基が存在する。リンカー構成成分SMCCを含む抗体−マイタンシノイド接合体は、US 2005/0276812 A1(“Antibody-drug conjugates and Methods.”)に開示されたように調製され得る。リンカーは、上記特許に開示されたようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基またはエステラーゼ不安定基を含む。付加的リンカーは、本明細書中に記載され、例示されている。
抗体とマイタンシノールの接合体は、種々の二機能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート HCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製され得る。ある実施形態では、カップリング剤は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 (1978))またはN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)であって、ジスルフィド結合を提供する。
リンカーは、連結の型によって、種々の位置でマイタンシノイド分子と結合され得る。例えば、エステル結合は、慣用的カップリング技法を用いて、ヒドロキシル基との反応により形成され得る。反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位置、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位置、およびヒドロキシル基を有するC−20位置で起こり得る。一実施形態では、結合は、マイタンシノールまたはマイタンシノール類似体のC−3位置に形成される。
(2)アウリスタチンおよびドラスタチン
いくつかの実施形態では、免疫接合体は、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチド類似体または誘導体、例えばある理スタチンと接合された抗体を含む(米国特許第5635483号;第5780588号)。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管動力学、GTP加水分解、ならびに核および細胞***を妨げ(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗癌(米国特許第5663149号)および抗真菌活性(Pettit et al (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチンまたはアウリスタチン薬剤部分は、ペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体と結合され得る(WO 02/088172)。
例示的アウリスタチン実施形態としては、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤部分DEおよびDFが挙げられる(US 2005/0238649、Senter et al, Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623, presented March 28, 2004に開示)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
ペプチド薬剤部分は、以下の式D
EおよびD
Fから選択され得る:
(式中、D
EおよびD
Fの波線は、抗体または抗体−リンカー構成成分との、各位置で独立した、共有結合を示し;
R
2は、HおよびC
1〜C
8alkylから選択され;
R
3は、H、C
1〜C
8アルキル、アルキル、C
3〜C
8炭素環、アリール、C
1〜C
8アルキル−アリール、C
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8炭素環)、C
3〜C
8複素環およびC
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8複素環)から選択され;
R
4は、H、C
1〜C
8アルキル、C
3〜C
8炭素環、アリール、C
1〜C
8アルキル−アリール、C
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8炭素環)、C
3〜C
8複素環およびC
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8複素環)から選択され;
R
5は、Hおよびメチルから選択され;
あるいは、R
4およびR
5は、一緒になって炭素環式環を形成し、そして式−(CR
aR
b)
n−(ここで、R
aおよびR
bは、独立して、H、C
1〜C
8アルキルおよびC
3〜C
8炭素環から選択され、nは2、3、4、5および6から選択される)を有し;
R
6は、HおよびC
1〜C
8アルキルから選択され;
R
7は、H、C
1〜C
8アルキル、C
3〜C
8炭素環、アリール、C
1〜C
8アルキル−アリール、C
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8炭素環)、C
3〜C
8複素環およびC
1〜C
8アルキル−(C
3〜C
8複素環)から選択され;
R
8は、各々独立して、H、OH、C
1〜C
8アルキル、C
3〜C
8炭素環およびO−(C
1〜C
8アルキル)から選択され;
R
9は、HおよびC
1〜C
8アルキルから選択され;
R
10は、アリールまたはC
3〜C
8複素環から選択され;
Zは、O、S、NHまたはNR
12(ここで、R
12はC
1〜C
8アルキルである)であり;
R
11は、H、C
1〜C
20アルキル、アリール、C
3〜C
8複素環、−(R
13O)
m−R
14または−(R
13O)
m−CH(R
15)
2から選択され;
mは、1〜1000の範囲の整数であり;
R
13は、C
2〜C
8アルキルであり;
R
14は、HまたはC
1〜C
8アルキルであり;
R
15の各存在は、独立して、H、COOH、-(CH
2)
n−N(R
16)
2、-(CH
2)
n−SO
3Hまたは-(CH
2)
n−SO
3−C
1〜C
8アルキルであり;
R
16の各存在は、独立して、H、C
1〜C
8アルキルまたは−(CH
2)
n−COOHであり;
R
18は、-C(R
8)
2-C(R
8)
2-aryl、-C(R
8)
2-C(R
8)
2-(C
3−C
8複素環)および-C(R
8)
2-C(R
8)
2-(C
3〜C
8炭素環)から選択され;そして
nは、0〜6の範囲の整数である)。
一実施形態では、R3、R4およびR7は、独立して、イソプロピルまたはsec−ブチルであり、R5は−Hまたはメチルである。例示的一実施形態では、R3およびR4は、各々、イソプロピルであり、R5は−Hであり、そしてR7はsec−ブチルである。
さらに別の実施形態では、R2およびR6は、各々、メチルであり、そしてR9はis−Hである。
さらに別の実施形態では、R8の各存在は−OCH3ある。
例示的一実施形態では、R3およびR4は、各々、イソプロピルであり、R2およびR6は、各々、メチルであり、R5は−Hであり、R7はsec−ブチルであり、R8の各存在は−OCH3であり、そしてR9は−Hである。
一実施形態では、Zは−O−または−NH−である。
一実施形態では、R10はアリールである。
例示的一実施形態では、R10は−phenylである。
例示的一実施形態では、Zが−O−である場合、R11は−H、methylまたはt−ブチルである。
一実施形態では、Zが−NHである場合、R11は−CH(R15)2(ここで、R15は−(CH2)n−N(R16)2であり、そしてR16は−C1〜C8アルキルまたは−(CH2)n−COOHである)である。
別の実施形態では、Zが−NHである場合、R11は−CH(R15)2(ここで、R15は−(CH2)n−SO3Hである)である。
式D
Eの例示的アウリスタチン実施形態は、MMAEである(式中、波線は、抗体−薬剤接合体のリンカー(L)との共有結合を示す):
式D
Fの例示的アウリスタチン実施形態は、MMAFである(式中、波線は、抗体−薬剤接合体のリンカー(L)との共有結合を示す)(US2005/0238649およびDoronina et al. (2006) Bioconjugate Chem. 17:114-124参照):
他の例示的実施形態としては、ペンタペプチドアウリスタチン薬剤部分のC末端にフェニルアラニンカルボキシ修飾を有するモノメチルバリン化合物(WO 2007/008848)、およびペンタペプチドアウリスタチン薬剤部分のC末端にフェニルアラニン側鎖修飾を有するモノメチルバリン化合物(WO 2007/008603)が挙げられる。
他の薬剤部分としては、以下のMMAF誘導体(式中、波線は、抗体−薬剤接合体のリンカー(L)との共有結合を示す)が挙げられる:
一態様では、上記のようなトリエチレングリコールエステル(TEG)を含めた(これらに限定されない)親水性基は、R11で薬剤部分と結合され得る。任意の特定の理論に縛られることなく、親水性基は、薬剤部分のインターナライゼーションおよび非凝集を手助けする。
アウリスタチン/ドラスタチンまたはその誘導体を含む式IのADCの例示的実施形態は、US 2005−0238649およびDoronina et al. (2006) Bioconjugate Chem. 17:114-124(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。MMAEまたはMMAFおよび種々のリンカー構成成分を含む式IのADCの例示的実施形態は、以下の構造および略号を有する(「Ab」は抗体であり;pは1〜約8で有り、「Val−Cit」または「vc」はバリン−シトルリン・ジペプチドであり;そして「S」はイオウ原子である)。本明細書中のイオウ連結ADCのある構造説明において、抗体は、イオウ連結特徴を示し、そして特定のイオウ原子が多重リンカー−薬剤部分を保有するということを示さないために単に「Ab−S」として表される、ということは注目される。以下の構造の左括弧はさらにまた、AbおよびS間のイオウ原子の左に置かれ、これは、本明細書全体を通して記載される本発明のADCについても同じ説明である。
Ab-MC-MMAF
MMAFおよび種々のリンカー構成成分を含む式IのADCの例示的実施形態としては、さらに、Ab−MC−PAB−MMAFおよびAb−PAB−MMAFが挙げられる。興味深いことに、タンパク質分解的に開裂可能でないリンカーにより抗体と結合されるMMAFを含む免疫接合体は、タンパク質分解的に開裂可能なリンカーにより抗体に結合されたMMAFを含む免疫接合体に匹敵する活性を保有することが示されている(Doronina et al. (2006) Bioconjugate Chem. 17:114-124参照)。このような場合、薬剤放出は、細胞中での抗体分解により実行されると考えられる(同上)。
典型的には、ペプチドベースの薬剤部分は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片間にペプチド結合を形成することにより調製され得る。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知である液相合成法(E. Schroder and K. Lubke, “The Peptides”, volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Press参照)によって調製され得る。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤部分は、以下の方法に従って調製され得る:US 2005−0238649 A1;米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;Pettit et al (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465;Pettit et al (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., et al. Synthesis, 1996, 719-725;Pettit et al (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863;およびDoronina (2003) Nat. Biotechnol. 21(7):778-784。
特に、式DFのアウリスタチン/ドラスタチン薬剤部分、例えばMMAFおよびその誘導体は、US 2005−0238649 A1およびDoronina et al. (2006) Bioconjugate Chem. 17:114-124に記載された方法を用いて調製され得る。式DEのアウリスタチン/ドラスタチン薬剤部分、例えばMMAEおよびその誘導体は、Doronina et al. (2003) Nat. Biotech. 21:778-784に記載された方法を用いて調製され得る。薬剤−リンカー部分MC−MMAF、MC−MMAE、MC−vc−PAB−MMAFおよびMC−vc−PAB−MMAEは、例えばDoronina et al. (2003) Nat. Biotech. 21:778-784および特許出願公開番号US2005/0238649A1に記載されたような慣例的方法により好都合に合成され、次いで、当該抗体と接合され得る。
(3)カリケアマイシン
他の実施形態では、免疫接合体は、1つ以上のカリケアマイシン分子と接合された抗体を含む。カリケアマイシンファミリーの抗体は、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断を生じ得る。カリケアマイシンファミリーの接合体の調製に関しては、米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、第5,877,296号(全て、American Cyanamid Company)を参照されたい。用いられ得るカリケアマイシンの構造類似体としては、γ1 I、α2 I、α3 I、N−アセチル−γ1 I、PSAGおよびθI 1が挙げられるが、これらに限定されない(Hinman et al., Cancer Research 53:3336-3342 (1993)、Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1998)およびAmerican Cyanamidに対する上記の米国特許)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体が接合される別の抗腫瘍薬はQFAであって、これは抗葉酸剤である。カリケアマイシンおよびQFAはともに、作用の細胞内部位を有し、原形質膜と容易に交差しない。したがって、抗体媒介性インターナライゼーションを介したこれらの作用物質の細胞取込みは、素あれらの細胞傷害作用を大いに増強する。
c. 他の細胞傷害性物質
抗体と接合され得るその他の抗腫瘍薬としては、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチンおよび5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、第5,770,710号に記載されたLL−E33288複合体として集合的に知られている作用物質のファミリー、ならびにエスペラミシン(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
用いられ得る酵素的に活性な毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンが挙げられる(例えばWO 93/21232(1993年10月28日公開))。
本発明はさらに、抗体と、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばでオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫接合体を意図する。
ある実施形態では、免疫接合体は、高放射性原子を含み得る。放射性接合抗体の産生のために、種々の放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が挙げられる。免疫接合体が検出のために用いられる場合、それは、シンチグラフィー試験のための放射性原子、例えばtc99mまたはI123、あるいは核磁気共鳴(NMR)画像処理(磁気共鳴画像処理 mriとしても知られている)のためのスピンラベル、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含み得る。
放射性またはその他のラベルは、既知の方法で免疫接合体中に組み入れられ得る。例えば、ペプチドは、生合成され得るし、あるいは適切なアミノ酸前駆体(例えば水素の代わりにフッ素−19を含む)を用いた化学的アミノ酸合成により合成され得る。ラベル、例えばtc99mまたはI123、Re186、Re188およびIn111は、ペプチド中のシステイン残基を介して結合され得る。イットリウム−90は、リシン残基を介して結合され得る。IODOGEN法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)は、ヨウ素−123を組み入れるために用いられ得る。「「免疫シンチグラフィーにおけるモノクローナル抗体(“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”)」(Chatal, CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に記載する。
ある実施形態では、免疫接合体は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法薬、WO 81/01145参照)を活性薬剤、例えば抗癌薬に転化するプロドラッグ活性化酵素と接合される抗体を含み得る。このような免疫接合体は、抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)に有用である。抗体と接合され得る酵素としては、アルカリ性ホスファターゼ(これは、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);アリールスルファターゼ(スルフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);シトシンデアミナーゼ(非毒性5−フルオロシトシンを抗癌薬、5フルオロウラシルに転化するために有用である);プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL)(ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);D−アラニルカルボキシペプチダーゼ(D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを転化するために有用である);炭水化物開裂酵素、例えばβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ(グリコシル化プロドラッグを遊離プロドラッグに転化するために有用である);β−ラクタマーゼ(β−ラクタムで誘導体化される薬剤を遊離薬剤に転化するために有用である);ならびにペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼおよびペニシリンGアミダーゼ(それぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基によりそれらのアミン窒素で誘導体化される薬剤を遊離薬剤に転化するために有用である)が挙げられるが、これらに限定されない。酵素は、当該技術分野で周知の組換えDNA技法により抗体と共有結合され得る(例えば、Neuberger et al., Nature 312:604-608 (1984)参照)。
d. 薬剤負荷
薬剤負荷は、式Iの分子中の抗体当たりの薬剤部分の平均数 pにより表わされる。薬剤負荷は、1〜20薬剤部分(D)/抗体の範囲であり得る。式IのADCは、1〜20の一連の薬剤部分で接合される抗体のコレクションを包含する。接合反応からのADCの調製における薬剤部分の平均数/抗体は、慣用的手段、例えば質量分光分析、ELISA検定およびHPLCにより特性化され得る。pに換算するADCの定量的分布も確定される。いくつかの場合、他の薬剤負荷を伴うADCからの、pがある値である同種ADCの分離、精製および特性化は、逆相HPLCまたは電気泳動のような手段により達成され得る。したがって、式I抗体−薬剤接合体の薬学的処方物は、このような接合体と、1、2、3、4またはそれ以上の薬剤部分と連結された抗体との異種混合物であり得る。
いくつかの抗体−薬剤接合体に関しては、pは、抗体上の結合部位の数により限定され得る。例えば、結合がシステインチオールである場合、上記の例示的実施形態における場合と同様に、抗体は、それを介してリンカーが結合され得る1つだけまたは数個のシステインチオール基を有し得るか、あるいは1つだけまたは数個の十分に反応性のチオール基を有し得る。ある実施形態では、薬剤負荷が高いほど、例えば、p>5であると、ある抗体−薬剤接合体の凝集、不溶性、毒性または細胞透過性損失を引き起こし得る。ある実施形態では、本発明のADCに関する薬剤負荷は、1〜約8;約2〜約6;または約3〜約5の範囲である。実際、あるADCに関して、薬剤部分/抗体の最適比率は8未満であり、約2〜約5であり得る、ということが示されている(US 2005−0238649 A1参照)。
ある実施形態では、接合反応中、理論的最大値より少ない薬剤部分が抗体と接合される。抗体は、以下で考察されるように、例えば、薬剤−リンカー中間体またはリンカー試薬と反応しないリシン残基を含有し得る。一般的に、抗体は、薬剤部分と連結され得る多数の遊離および反応性システインチオール基を含有しない;実際、抗体中のほとんどのシステインチオール残基がジスルフィド架橋として存在する。ある実施形態では、抗体は、部分的または全体的還元条件下で、還元剤、例えばジチオトレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)で還元されて、反応性システインチオール基を生成し得る。ある実施形態では、抗体は変性条件に付されて、反応性求核性基、例えばリシンまたはシステインを明示する。
ADCの負荷(薬剤/抗体比)は、異なる方法で、例えば(i)抗体に比してモル過剰量の薬剤−リンカー中間体またはリンカー試薬を限定し、(ii)接合反応時間または温度を限定し、ならびに(iii)システインチオール修飾のための還元条件を部分的にするかまたは限定することにより制御され得る。
1つより多い求核性基が薬剤−リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、その後、薬剤部分試薬と反応する場合、その結果生じる生成物はADC化合物と、抗体と結合された1つ以上の薬剤部分の分布物との混合物である、と理解されるべきである。抗体当たりの薬剤の平均数は、抗体に特異的であり且つ薬剤に特異的であるELISA抗体検定により混合物から算定され得る。個々のADC分子は、質量分光分析により混合物中で道程され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分離され得る(例えば、McDonagh et al (2006) Prot. Engr. Design & Selection 19(7):299-307;Hamblett et al (2004) Clin. Cancer Res. 10:7063-7070;Hamblett, K.J., et al. “Effect of drug loading on the pharmacology, pharmacokinetics, and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate,” Abstract No. 624, American Association for Cancer Research, 2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004;Alley, S.C., et al. “Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates,” Abstract No. 627, American Association for Cancer Research, 2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004参照)。ある実施形態では、単一負荷値を有する同種ADCは、電気泳動またはクロマトグラフィーにより、接合混合物から単離され得る。
e. 免疫接合体を調製するためのある方法
式IのADCは、当業者に既知の有機化学反応、条件および試薬を用いるいくつかの経路、例えば:(1)抗体の求核性基を二価リンカー試薬と反応させて共有結合を介してAb−Lを形成し、その後、薬剤部分と反応させる;ならびに(2)薬剤部分の求核性基を二価リンカー試薬と反応させて、共有結合を解してD−Lを形成し、その後、抗体の求核性基と反応させることにより調製され得る。後者の経路により式IのADCを調製するための方法の例は、US 2005−0238649 A1(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
抗体上の求核性基としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、ならびに(iv)糖ヒドロキシルまたはアミノ基(この場合、抗体はグリコシル化される)。アミン、チオールおよびヒドロキシル基は、共有結合を形成するためにリンカー部分およびリンカー試薬の上の求電子性基、例えば:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基と反応し得る。ある抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体が完全にまたは部分的に還元されるよう、抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)で処理することにより、リンカー試薬との接合のために反応性にされ得る。したがって各システイン架橋は、理論的に2つの反応性チオール求核性基を形成する。リシン残基の修飾を介して、例えばリシン残基を2−イミノチオラン(トラウト試薬)と反応させて、チオールへのアミンの転化を生じることにより、付加的求核性基が抗体中に導入され得る。反応性チオール基は、1、2、3、4またはそれ以上のシステイン残基を導入することにより(例えば、1つ以上の非ネイティブシステインアミノ酸残基を含む変異体抗体を調製することにより)、抗体中に導入され得る。
本発明の抗体−薬剤接合体は、抗体上の求電子性基、例えばアルデヒドまたはケトンカルボニル基と、リンカー試薬または薬剤上の求核性基との反応によっても生成され得る。リンカー試薬上の有用な求核性基としては、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジドが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、抗体は、リンカー試薬または薬剤上の求核性置換基と反応し得る求電子性部分を導入するよう修飾される。別の実施形態では、グリコシル化抗体の糖は、例えばペルオキシデート酸化試薬で酸化されて、アルデヒドまたはケトン基を形成し、これが、リンカー試薬または薬剤部分のアミン基と反応し得る。その結果生じるイミン・シッフ塩基基は、安定結合を形成し得るし、あるいは、例えば水素化ホウ素試薬により還元されて、安定アミン結合を形成し得る。一実施形態では、グリコシル化抗体の炭水化物部分とガラクトースオキシダーゼまたはナトリウムメタペリオデートとの反応は、抗体中にカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基を生じ、これが薬剤上の適切な基と反応し得る(Hermanson, Bioconjugate Techniques)。別の実施形態では、N末端セリンまたはトレオニン残基を含有する抗体は、ナトリウムメタペリオデートと反応して、第一アミノ酸の代わりにアルデヒドを産生する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分またはリンカー求核性基と反応され得る。
薬剤部分上の求核性基としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジド基。これらは、共有結合を形成するためにリンカー部分およびリンカー試薬の上の求電子性基、例えば:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基と反応し得る。
本発明の化合物は、特に、以下の架橋試薬を用いて調製されるADCを意図するが、これらに限定されない:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCCおよびスルホ−SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)(市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから;Applications Handbook and Catalog; 467-498, 2003-2004参照))。
抗体および細胞傷害性物質を含む免疫接合体は、種々の二機能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート HCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いても作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)に記載されたように調製され得る。炭素−14ラベル化1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種と抗体との接合のための例示的キレート剤である(WO94/11026参照)。
代替的には、抗体および細胞傷害性物質を含む融合タンパク質は、例えば、組換え技法またはペプチド合成により作製され得る。組換えDNA分子は、互いに隣接するかまたは接合体の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離される接合体の抗体および細胞傷害性部分をコードする領域を含み得る。
さらに別の実施形態では、抗体は、腫瘍前標的化に利用するために「受容体」(例えばストレプトアビジン)と接合され、この場合、抗体−受容体接合体は患者に投与され、その後、清澄剤を用いて循環から非結合接合体が除去され、次いで、細胞傷害性物質(例えば放射性核種)と接合される「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。
例示的免疫接合体 − チオ−抗体薬剤接合体
a.操作システイン操作された抗FcRH5抗体の調製
本発明の操作システイン操作された抗FcRH5抗体および親抗FcRH5抗体のアミノ酸配列変異体をコードするDNAは、種々の方法、例えば、ポリペプチドをコードする早期調製DNAの、天然供給源からの単離(天然アミノ酸配列変異体の場合)、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介性)突然変異誘発による調製(Carter (1985) et al Nucleic Acids Res. 13:4431-4443;Ho et al (1989) Gene (Amst.) 77:51-59;Kunkel et al (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488;Liu et al (1998) J. Biol. Chem. 273:20252-20260)、PCR突然変異誘発(Higuchi, (1990) in PCR Protocols, pp.177-183, Academic Press;Ito et al (1991) Gene 102:67-70;Bernhard et al (1994) Bioconjugate Chem. 5:126-132;およびVallette et al (1989) Nuc. Acids Res. 17:723-733)、ならびにカセット突然変異誘発(Wells et al (1985) Gene 34:315-323)(これらに限定されない)により調製される。突然変異誘発プロトコール、キットおよび試薬は、市販されている(例えば、クイックチェンジ(QuikChange)(登録商標)多部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA))。単一突然変異は、PCRベースの突然変異誘発により鋳型として二本鎖プラスミドDNAを用いるオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によっても生成される(Sambrook and Russel, (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;Zoller et al (1983) Methods Enzymol. 100:468-500;Zoller, M.J. and Smith, M. (1982) Nucl. Acids Res. 10:6487-6500)。組換え抗体の変異体は、制限断片操作により、または合成オリゴヌクレオチドを用いた重複伸長PCRによっても構築され得る。突然変異誘発性プライマーは、システインコドン置換(複数可)をコードする。標準突然変異誘発技法は、このような突然変異体システイン操作抗鯛をコードするDNAを生成するために用いられ得る(Sambrook et al Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;およびAusubel et al Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, N.Y., 1993)。
ファージ表示技法(McCafferty et al (1990) Nature 348:552-553)は、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroで抗FcRH5ヒト抗体および抗体断片を産生するために用いられ得る。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージの大または小外殻タンパク質遺伝子、例えばM13またはfd中にイン・フレームでクローン化され、ファージ粒子の表面に機能性抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能性に基づいた選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じる。したがって、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。(Johnson et al (1993) Current Opinion in Structural Biology 3:564-571;Clackson et al (1991) Nature, 352:624-628;Marks et al (1991) J. Mol. Biol. 222:581-597; Griffith et al (1993) EMBO J. 12:725-734;米国特許第5565332号;米国特許第5573905号;米国特許第5567610号;米国特許第5229275号)。
抗FcRH5抗体は、既知のオリゴペプチド合成方法を用いて化学的に合成され得るし、あるいは組換え技法を用いて調製され、精製され得る。適切なアミノ酸配列またはその一部は、固相技法を用いて直接ペプチド合成により産生され得る(Stewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis, (1969)W.H. Freeman Co., San Francisco, CA;Merrifield, (1963) J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154)。in vitroタンパク質合成は、手動技法を用いて、または自動化により実施され得る。自動化固相合成は、例えば、t−BOCまたはFmoc保護化アミノ酸を用いて、ならびにメーカーの使用説明書を用いるApplied Biosystems ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、成し遂げられ得る。抗FcRH5抗体またはFcRH5ポリペプチドの種々の部分は、化学的または酵素的方法を用いて、別個に化学的に合成され、ならびに組合されて、所望の抗FcRH5抗体またはFcRH5ポリペプチドを産生し得る。
抗体断片の産生のために、種々の技法が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解的消化により得られ(Morimoto et al. (1992), Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117;およびBrennan et al. (1985), Science, 229:81)、あるいは組換え宿主細胞により直接産生され得る。Fab、FvおよびScFv抗体断片は、全て、大腸菌中で発現され、それから分泌され、したがって、大量のこれらの断片の手軽な産生を可能にする。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリーから単離され得る。代替的には、Fab’−SH断片は大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングされて、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al. (1992), Bio/Technology 10:163-167)し、あるいは組換え宿主細胞培養から直接単離され得る。抗FcRH5抗体は、(scFv)一本鎖Fv断片であり得る(WO 93/16185;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号)。抗FcRH5抗体断片は、「線状抗体」でもあり得る(米国特許第5,641,870号)。このような線状抗体断片は、一重特異性または二重特異性であり得る。
以下の説明は、主に、抗FcRH5抗体コード核酸を含有するベクターで形質転換されるかまたはトランスフェクトされた細胞を培養することによる抗FcRH5抗体の産生に関する。抗FcRH5抗体をコードするDNAは、抗FcRH5抗体mRNAを保有し、検出可能レベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されるcDNAライブラリーから得られる。したがって、ヒト抗FcRH5抗体またはFcRH5ポリペプチドDNAは、ヒト組織から調製されるcDNAライブラリーから好都合に得られる。抗FcRH5抗体コード遺伝子は、ゲノムライブラリーから、あるいは既知の合成手法(例えば、自動核酸合成)によっても得られる。
本発明の設計、選択および調製方法は、求電子性官能基と反応性である操作システイン操作された抗FcRH5抗体を作動させる。これらの方法はさらに、抗体接合体化合物、例えば意図され、設計された、選択部位に薬剤分子を有する抗体−薬剤接合体(ADC)化合物を作動させる。抗体表面の反応性システイン残基は、マレイミドまたはハロアセチルのようなチオール反応基を介して薬剤部分を特異的に接合させる。マレイミド基に対するCys残基のチオール官能基の求核的反応性は、リシン残基のアミノ基、あるいはN末端アミノ基のようなタンパク質中の任意の他のアミノ酸官能基と比較して、約1000倍高い。ヨードアセチルおよびマレイミド試薬中のチオール特異的官能基はアミン基と反応し得るが、しかしより高いpH(>9.0)およびより長い反応時間が必要とされる(Garman, 1997, Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London)。タンパク質中の遊離チオールの量は、標準エルマン検定により概算され得る。免疫グロブリンMはジスルフィド結合五量体の一例であるが、一方、免疫グロブリンGは、サブユニットを一緒に結合する内部ジスルフィド架橋を有するタンパク質の一例である。このようなタンパク質では、ジチオトレイトール(DTT)またはセレノール(Singh et al (2002) Anal. Biochem. 304:147-156)のような試薬によるジスルフィド結合の還元が、反応性遊離チオールを生成するために必要とされる。このアプローチは、抗体三次構造および抗原結合特異性の損失を生じ得る。
PHESELECTOR(反応性チオールの選択のためのファージELISA)検定は、ELISAファージフォーマット中の抗体中の反応性システイン基の検出を可能にし、それにより操作システイン操作された抗体の設計を手助けする(Junutula, J.R. et al. (2008) J Immunol Methods 332:41-52;WO 2006/034488;US 2007/0092940)。操作システイン操作された抗体は、ウェル表面に被覆され、その後、ファージ粒子とともにインキュベートされ、HRPラベル化第二抗体を付加され、そして吸光度を検出される。ファージ上に表示される突然変異体タンパク質は、迅速な、堅牢且つ高処理量の方法で、スクリーニングされ得る。操作システイン操作された抗体のライブラリーは、抗体または他のタンパク質の無作為タンパク質−ファージライブラリーからの遊離Cys組入れの適切に反応性の部位を同定するための同一アプローチを用いて、産生され、結合選択に付され得る。この技法は、ファージ上に表示されるシステイン突然変異体タンパク質を、チオール反応性でもあるアフィニティー試薬またはレポーター基と反応させることを包含する。
PHESELECTOR検定は、抗体中の反応性チオール基のスクリーニングを可能にする。この方法によるA121C変異体の同定は、例示的である。全Fab分子は、有効に検索されて、反応性チオール基を有するより多くのThioFabを同定し得る。一パラメーターである分別的表面接近可能性は、ポリペプチド中のアミノ酸残基に対する溶媒の接近可能性を同定し、定量するために用いられた。表面接近可能性は、溶媒分子、例えば水により接触され得る表面積(Å2)として表され得る。水の占有空間は、1.4 Å半径球として概算される。ソフトウェアは、既知のX線結晶学由来座標でタンパク質の各アミノ酸の表面接近可能性を算定するためのアルゴリズムを用いる結晶学プログラムのCCP4組(“The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography” (1994) Acta. Cryst. D50:760-763)として、自由に利用可能であるかまたは認可可能である(Secretary to CCP4, Daresbury Laboratory, Warrington, WA4 4AD, United Kingdom, Fax: (+44) 1925 603825、またはinternet: www.ccp4.ac.uk/dist/html/INDEX.html)。表面接近可能性計算を実施する2つの例示的ソフトウェアモジュールは、B.Lee and F.M.Richards (1971) J.Mol.Biol. 55:379-400のアルゴリズムに基づいた「AREAIMOL」および「SURFACE」である。AREAIMOLは、それがタンパク質のファンデルワールス表面上を回転する場合、プローブ球面の中心の座(溶媒分子を表す)としてタンパク質の溶媒接近可能表面を定義する。AREAIMOLは、各原子について拡張された球の上に表面点を作成し(原子およびプローブ半径の和と等しい原子中心からの距離で)、隣接原子と関連する等価の球内にあるものを除外することにより、溶媒接近可能表面積を算定する。AREAIMOLは、PDB座標ファイル中に原子の溶媒接近可能面積を見出し、残基による、鎖による、そして全分子に関する接近可能面積を要約する。個々の原子に関する接近可能面積(または面積差)は、偽PDB出力ファイルに書き込まれ得る。AREAIMOLは、各元素に関する単一半径を推定し、限定数の異なる元素を認識するだけである。
AREAIMOLおよびSURFACEは、絶対接近可能性、すなわち平方オングストローム(Å)の数を報告する。分別表面接近可能性は、ポリペプチド内のアミノ酸に関連する標準状態を参照することにより算定される。参照状態は、トリペプチドGly−X−Gly(ここで、Xは当該アミノ酸である)であり、参照状態は「拡大化」立体配座、すなわち、β鎖のものと同様であるべきである。拡大化立体配座は、Xの接近可能性を最大にする。算定接近可能面積を、Gly−X−Glyトリペプチド参照状態における接近可能面積で割り、その商が、分別接近可能性である。接近可能性パーセントは、分別接近可能性に100を掛けた値である。表面接近可能性を算定するための別の例示的アルゴリズムは、プログラムxsae(Broger, C., F. Hoffman-LaRoche, Basel)のSOLVモジュールを基礎にしており、これは、ポリペプチドのX線座標に基づいた水球へのアミノ酸残基の分別接近可能性を算定する。抗体中の全てのアミノ酸に関する分別表面接近可能性は、利用可能な結晶構造情報を用いて算定され得る(Eigenbrot et al. (1993) J Mol Biol. 229:969-995)。
操作システイン操作された抗体をコードするDNAは、慣用的手法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供給源として役立つ。一旦単離されると、DNAは、発現ベクター中に入れられて、これは次に、別の状況では抗体タンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはその他の哺乳類宿主細胞、例えば骨髄腫細胞中にトランスフェクトされて(米国特許第5807715号;US 2005/0048572;US 2004/0229310)、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成を得る。
設計および選択後、操作システイン操作された抗体、例えば、高反応性非対合Cys残基、「遊離システインアミノ酸」を有するThiOFabsは、(i)細菌、例えば大腸菌系(Skerra et al (1993) Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262;Pluckthun (1992) Immunol. Revs. 130:151-188)、または哺乳類細胞培養系(WO 01/00245)、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)における発現;ならびに(ii)一般タンパク質精製技法(Lowman et al (1991) J. Biol. Chem. 266(17):10982-10988)を用いた精製により産生され得る。
操作操作されたCysチオール基は、求電子性リンカー試薬および薬剤−リンカー中間体と反応して、操作システイン操作された抗体薬剤接合体およびその他のラベル化操作システイン操作された抗体を形成する。操作システイン操作された抗体の、そして親抗体中に存在するCys残基(対合され、鎖間および鎖内ジスルフィド結合を形成する)は、(還元剤で処理されない限り)任意の反応性チオール基を有し、求電子性リンカー試薬または薬剤−リンカー中間体と反応しない。新たに操作されたCys残基は、非対合のままであり、求電子性リンカー試薬または薬剤−リンカー中間体、例えば薬剤−マレイミドと反応する、すなわち接合し得る。例示的薬剤−リンカー中間体としては、以下のものが挙げられる:MC−MMAE、MC−MMAF、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−vc−PAB−MMAF。重鎖および軽鎖の操作Cys残基の構造位置は、連続番号付けシステムに従って番号付けされる。この連続番号付けシステムは、カバト番号付けシステム(Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD)と相関して、N末端で開始して、a、b、cにより注を付けられた挿入によりカバト番号付けスキーム(最下行)と異なる。カバト番号付けシステムを用いて、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはそれらへの挿入に対応するより少ないかまたは付加的なアミノ酸を含有し得る。システイン操作された操作重鎖変異体部位は、連続番号付けおよびカバト番号付けスキームにより同定される。
一実施形態では、操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、以下の:
(a)親抗FcRH5抗体の1つ以上のアミノ酸残基をシステインに置き換えること;そして
(b)操作システイン操作された抗体をチオール反応性試薬と反応させることにより、操作システイン操作された抗FcRH5抗体のチオール反応性を確定すること
を包含する工程により調製される。
操作システイン操作された抗体は、チオール反応性試薬に関して親抗体より反応性になり得る。
遊離システインアミノ酸残基は、重鎖または軽鎖中に、あるいは定常または可変ドメイン中に突き止められ得る。抗体断片、例えばFabも、1つ以上のシステインアミノ酸で操作されて、抗体断片のアミノ酸を置き換えて、操作システイン操作された抗体断片を形成し得る。
本発明の別の実施形態は、操作システイン操作された抗FcRH5抗体の調製(製造)方法であって、以下の:
(a)操作システイン操作された抗FcRH5抗体を生成するために、親抗FcRH5抗体中に1つ以上のシステインアミノ酸を導入すること;
(b)チオール反応性試薬との操作システイン操作された抗体のチオール反応性を確定することを包含する方法を提供するが、この場合、操作システイン操作された抗体は、チオール反応性試薬に関して親抗体より反応性である。
操作システイン操作された抗体の調製方法のステップ(a)は、以下の:
(i)操作システイン操作された抗体をコードする核酸配列を突然変異誘発すること;
(ii)操作システイン操作された抗体を発現すること;ならびに
(iii)操作システイン操作された抗体を単離し、精製すること
を包含し得る。
操作システイン操作された抗体の調製方法のステップ(b)は、ファージまたはファージミド粒子から選択されるウイルス粒子上に操作システイン操作された抗体を発現することを包含し得る。
操作システイン操作された抗体の調製方法のステップ(b)は、以下の:
(i)操作システイン操作された抗体をチオール反応性親和性試薬と反応させて、親和性ラベル化操作システイン操作された抗体を生成すること;ならびに
(ii)親和性ラベル化操作システイン操作された抗体と捕捉培地との結合を測定すること
も包含し得る。
本発明の別の実施形態は、チオール反応性に関して高反応性非対合システインアミノ酸を有する操作システイン操作された抗体をスクリーニングする方法であって、以下の:
(a)操作システイン操作された抗体を生成するために、親抗体中に1つ以上のシステインアミノ酸を導入すること;
(b)操作システイン操作された抗体をチオール反応性親和性試薬と反応させて親和性ラベル化操作システイン操作された抗体を生成すること;ならびに
(c)親和性ラベル化操作システイン操作された抗体と捕捉培地との結合を測定すること;そして
(d)チオール反応性試薬との操作システイン操作された抗体のチオール反応性を確定すること
を包含する方法である。
操作システイン操作された抗体をスクリーニングする方法のステップ(a)は、以下の:
(i)操作システイン操作された抗体をコードする核酸配列を突然変異誘発すること;
(ii)操作システイン操作された抗体を発現すること;ならびに
(iii)操作システイン操作された抗体を単離し、精製すること
を包含し得る。
操作システイン操作された抗体のスクリーニング方法のステップ(b)は、ファージまたはファージミド粒子から選択されるウイルス粒子上に操作システイン操作された抗体を発現することを包含し得る。
操作システイン操作された抗体のスクリーニング方法のステップ(b)は、以下の:
(i)操作システイン操作された抗体をチオール反応性親和性試薬と反応させて、親和性ラベル化操作システイン操作された抗体を生成すること;ならびに
(ii)親和性ラベル化操作システイン操作された抗体と捕捉培地との結合を測定すること
も包含し得る。
b. 抗FcRH5IgG変異体のシステイン操作操作
システインを、本明細書中に記載されるシステイン操作操作方法により、重鎖118(EU番号付け)(連続番号付け重鎖位置118と同等)(図13に示されているような)部位で、全長キメラ親モノクローナル抗FcRH5抗体中に、あるいは軽鎖205(カバト番号付け)(図14に示されるような)部位で、全長キメラ親モノクローナル抗FcRH5抗体中に導入した。
生成された重鎖118(EU番号付け)にシステインを有する操作システイン操作された抗体は、(a)重鎖配列(配列番号60)および軽鎖配列(配列番号59)を有するチオ−hu13G9−HC−A118Cであった(図13)。
生成された軽鎖205(カバト番号付け)にシステインを有する操作システイン操作された抗体は、(a)重鎖配列(配列番号62)および軽鎖配列(配列番号61)を有するチオ−hu13G9−LC−V205Cであった(図14)。
c. ラベル化操作システイン操作された抗FcRH5抗体
操作システイン操作された抗FcRH5抗体は、チオール反応性試薬と部位特異的に且つ効率的にカップリングされ得る。チオール反応性試薬は、多機能性リンカー試薬、捕捉、すなわち親和性ラベル試薬(例えば、ビオチン−リンカー試薬)、検出ラベル(例えば、蛍光体試薬)、固相固定化試薬(例えば、セファロース(商標)、ポリスチレンまたはガラス)、または薬剤−リンカー中間体であり得る。チオール反応性試薬の一例は、N−エチルマレイミド(NEM)である。例示的一実施形態では、ThioFabとビオチン−リンカー試薬との反応はビオチニル化ThioFabを提供し、これにより操作操作されたシステイン残基の存在および反応性が検出され、測定され得る。ThioFabと多機能性リンカー試薬との反応は多機能性化リンカーを有するThioFabを提供し、これはさらに薬剤部分試薬または他のラベルと反応させ得る。ThioFabと薬剤−リンカー中間体との反応は、ThioFab薬剤接合体を提供する。
本明細書中に記載される例示的方法は、一般的に、抗体の同定および酸性に、さらに一般的には、本明細書中に記載される設計およびスクリーニングステップの適用により他のタンパク質に適用され得る。
このようなアプローチは、反応性基が、例えばマレイミド、ヨードアセトアミド、ピリジルジスルフィドまたは他のチオール反応性接合相手である他のチオール反応性試薬の接合に適用され得る(Haugland, 2003, Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Inc.;Brinkley, 1992, Bioconjugate Chem. 3:2;Garman, 1997, Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London;Means (1990) Bioconjugate Chem. 1:2;Hermanson, G. in Bioconjugate Techniques (1996) Academic Press, San Diego, pp. 40-55, 643-671)。チオール反応性試薬は、薬剤部分、蛍光体、例えば蛍光染料、例えばフルオレセインまたはローダミン、画像処理のためのキレート剤または放射線治療用金属、ペプチジルまたは非ペプチジルラベルまたは検出タグ、あるいはクリアランス改質剤、例えばポリエチレングリコールの種々の異性体、第三の構成成分と結合するペプチド、あるいは別の炭水化物または親油性物質であり得る。
d. 操作システイン操作された抗FcRH5抗体の使用
操作システイン操作された抗FcRH5抗体およびその接合体は、治療薬および/または診断薬としての用途を見出し得る。本発明はさらに、B細胞関連障害を伴う1つ以上の症候を防止し、管理し、処置し、または改善する方法を提供する。特に本発明は、細胞増殖性障害、例えば癌、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫に関連した1つ以上の症候を防止し、管理し、処置し、または改善する方法を提供する。本発明はさらに、FcRH5関連障害またはこのような障害を発症する素因を診断するための方法、ならびにB細胞関連FcRH5ポリペプチドを優先的に結合する抗体および抗体の抗原結合断片を同定するための方法を提供する。
本発明の別の実施形態は、B細胞関連障害に応答性である症状の処置に有用な医薬剤の調製のための操作システイン操作された抗FcRH5抗体の使用に向けられる。
e. 操作システイン操作された抗体薬剤接合体(チオ−抗体薬剤接合体(TDC))
本発明の別の態様は、操作システイン操作された抗FcRH5抗体(Ab)およびアウリスタチン薬剤部分(D)を含む抗体−薬剤接合体化合物であって、この場合、操作システイン操作された抗体は、リンカー部分(L)により、1つ以上の遊離システインアミノ酸を介して、式I:
Ab−(L−D)p I
(式中、pは、1、2、3または4である)を有する化合物であるDと結合され;そして操作システイン操作された抗体は、親抗FcRH5抗体の1つ以上のアミノ酸残基を1つ以上の遊離システインアミノ酸で置き換えることを包含する方法により調製される。
本発明の別の態様は、式Iの抗体−薬剤化合物の混合物を含む組成物であって、この場合、抗体当たりの平均薬剤負荷は約2〜約5、または約3〜約4である。
操作システイン操作された抗FcRH5抗体薬剤接合体の考え得る利点としては、改良された安全性(より大きな治療指数)、改良されたPKパラメーター、抗体鎖間ジスルフィド結合が保持されて、これが接合体を安定化し、その活性結合立体配座を保持し得ること、薬剤接合体の部位が限定され、そして薬剤−リンカー試薬との操作システイン操作された抗体の接合から操作システイン操作された抗体薬剤接合体が調製されることがより均質な生成物を生じること、が挙げられる。
リンカー
「リンカー」、「リンカー単位」または「リンク」は、共有結合、または抗体を薬剤部分と共有的に結合する原子の鎖を含む化学的部分を意味する。種々の実施形態では、リンカーは、Lとして明記される。「リンカー」(L)は、1つ以上の薬剤部分(D)および抗体単位(Ab)を連結して、式Iの抗体−薬剤接合体(ADC)を形成するために用いられ得る二機能性または多機能性部分である。抗体−薬剤接合体(ADC)は、薬剤との、および抗体との結合のために反応性官能化を有するリンカーを用いて好都合に調製され得る。操作システイン操作された抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカー試薬の求電子性官能基、薬剤部分または薬剤−リンカー中間体との結合を形成し得る。
一態様では、リンカーは、抗体上に存在する求核性システインと反応性である求電子性基を有する。抗体のシステインチオールは、リンカー上の求電子性基と反応性であり、リンカーと共有結合を形成する。有用な求電子性基としては、マレイミドおよびハロアセトアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。
リンカーとしては、二価ラジカル、例えばアルキルジイル、アリーレン、ヘテロアリーレン、以下のような部分:−(CR2)nO(CR2)n−、アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、ジェファミン(商標))の反復単位;ならびに二酸エステルおよびアミド、例えばスクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネートおよびカプロアミドが挙げられる。
操作システイン操作された抗体は、Klussman, et al (2004), Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773の766ページの接合方法に従って、求電子性官能基、例えばマレイミドまたはα−ハロカルボニルを有するリンカー試薬または薬剤−リンカー中間体と反応する。
リンカーは、1つ以上のリンカー構成成分からなる。リンカー構成成分の例としては、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」または「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」または「af」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「SMCC」)、N−スクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)、エチレンオキシ−CH2CH2O−(1つ以上の反復単位として)(「EO」または「PEO」)が挙げられる。付加的リンカー構成成分は当該技術分野で既知であり、いくつかは本明細書中に記載される。
一実施形態では、ADCのリンカーLは、次式を有する:
-Aa-Ww-Yy-
(式中、Aは、抗体(Ab)のシステインチオールと共有結合されるストレッチャー単位であり;
aは0〜1であり;
−W−は、各々独立して、アミノ酸単位であり、
wは、独立して、0〜12の整数であり;
−Y−は、薬剤部分と共有結合されるスペーサー単位であり;そして
yは、0、1または2である)。
ストレッチャー単位
ストレッチャー単位(−A−)は、存在する場合、抗体単位をアミノ酸単位(−W−)と連結し得る。この点で、抗体(Ab)は、ストレッチャーの官能基との結合を形成し得る官能基を有する。天然にまたは化学的操作により抗体上に存在し得る有用な官能基としては、スルフヒドリル(−SH)、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、炭水化物のアノマーヒドロキシル基、およびカルボキシルが挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、抗体官能基は、スルフヒドリルまたはアミノである。スルフヒドリル基は、抗体の分子内ジスルフィド結合の還元により生成され得る。代替的には、スルフヒドリル基は、2−イミノチオラン(トラウト試薬)または別のスルフヒドリル生成試薬を用いて、抗体のリシン部分のアミノ基の反応により生成され得る。一実施形態では、抗体(Ab)は、ストレッチャー単位の求電子性官能基と結合を形成し得る遊離システインチオール基を有する。式I接合体中の例示的ストレッチャー単位は、式IIおよびIIIで示される(式中、Ab−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは上記の定義と同様であり、そしてR17は、(CH2)r、C3〜C8カルボシクリル、O-(CH2)r、アリーレン、(CH2)r-アリーレン、-アリーレン-(CH2)r-、(CH2)r-(C3〜C8カルボシクリル)、(C3〜C8カルボシクリル)-(CH2)r、C3〜C8ヘテロシクリル、(CH2)r-(C3〜C8ヘテロシクリル)、-(C3〜C8ヘテロシクリル)-(CH2)r-、-(CH2)rC(O)NRb(CH2)r-、-(CH2CH2O)r-、-(CH2CH2O)r-CH2-、-(CH2)rC(O)NRb(CH2CH2O)r-、-(CH2)rC(O)NRb(CH2CH2O)r-CH2-、-(CH2CH2O)rC(O)NRb(CH2CH2O)r-、-(CH2CH2O)rC(O)NRb(CH2CH2O)r-CH2-および-(CH2CH2O)rC(O)NRb(CH2)r-から選択される二価ラジカルであり;Rbは、H、C1〜C6アルキル、フェニルまたはベンジルであり;そしてrは、独立して、1〜10の範囲の整数である)。
アリーレンは、芳香族環系から2個の水素原子を除去することにより得られる炭素原子数6〜20の二価芳香族炭化水素ラジカルを包含する。典型的アリーレン基としては、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等から得られるラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。
ヘテロシクリル基は、1つ以上の環原子が、異種原子、例えば窒素、酸素およびイオウである環系を包含する。ヘテロシクリルラジカルは、1〜20個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個の異種原子を含む。複素環は、3〜7個の環成員(2〜6個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個の異種原子)を有する単環、あるいは7〜10個の環成員(4〜9個の炭素原子、ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個の異種原子)を有する二環、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系であり得る。複素環は、Paquette, Leo A.; “Principles of Modern Heterocyclic Chemistry” (W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に第1、3、4、6、7および9章;“The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs” (John Wiley & Sons, New York, 1950提供)、特に、Volumes 13、14、16、19および28;ならびにJ. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566に記載されている。
複素環式環の例としては、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、イオウ酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス−テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4Ah−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシンドリル、ベンズオキサゾリニルおよびイサチノイルが挙げられるが、これらに限定されない。
カルボシクリル基は、単環として3〜7個の炭素原子、または二環として7〜12個の炭素原子を有する飽和または不飽和環を包含する。単環式炭素環は、3〜6個の環原子、さらに典型的には5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として整列される7〜12個の環原子、あるいは[5,6]または[6,6]系として整列される9または10個の環原子を有する。単環式炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキ−1−エニル、1−シクロヘキ−2−エニル、1−シクロヘキ−3−エニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
式I ADCのすべての例示的実施形態、例えばII〜VIから、特に意味しない場合でも、操作操作されたシステイン残基の数によって、1〜4の薬剤部分が抗体に連結される(p=1〜4)、と理解されるべきである。
例証的式IIストレッチャー単位は、マレイミド−カプロイル(MC)から得られる(式中、R
17は−(CH
2)
5−である):
式IIの例証的ストレッチャー単位は、マレイミド−プロパノイル(MP)から得られる(式中、R
17は−(CH
2)
2−である):
式IIの別の例証的ストレッチャー単位(式中、R
17は−(CH
2CH
2O)
r−CH
2−であり、rは2である):
式IIの別の例証的ストレッチャー単位(式中、R
17は-(CH
2)
rC(O)NR
b(CH
2CH
2O)
r-CH
2-(ここで、R
bはHである)であり、rは2である):
式IIIの例証的ストレッチャー単位(式中、R
17は−(CH
2)
5−である):
別の実施形態では、ストレッチャー単位は、抗体の操作操作されたシステインイオウ原子とストレッチャー単位のイオウ原子との間のジスルフィド結合を介して操作システイン操作された抗FcRH5抗体と連結される。この実施形態の代表的ストレッチャー単位は、式IV(式中、R
17、Ab−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは上記の定義と同じである)で示される。
さらに別の実施形態では、ストレッチャーの反応性基は、遊離システインチオールと結合を形成し得るチオール反応性官能基を含有する。チオール反応性官能基の例としては、マレイミド、α−ハロアセチル、活性化エステル、例えばスクシンイミドエステル、4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、スルホニル塩化物、イソシアネートおよびイソチオシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。この実施形態の代表的ストレッチャー単位は、式V
aおよびV
bで示される(式中、R
17、Ab−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは上記の定義と同じである):
別の実施形態では、リンカーは、分枝鎖多機能性リンカー部分を介して1つより多い薬剤部分を抗体に共有結合するための樹状型リンカーであり得る(Sun et al (2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sun et al (2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768;King (2002) Tetrahedron Letters 43:1987-1990)。樹状リンカーは、薬剤対抗体のモル比、すなわち負荷を増大し、これは、ADCの効能と関連づけられる。したがって、操作システイン操作された抗体が1つの反応性システインチオール基のみを保有する場合、多数の薬剤部分は樹状リンカーを介して結合され得る。
アミノ酸単位
リンカーは、アミノ酸残基を含み得る。アミノ酸単位(−Ww−)は、存在する場合、抗体を、本発明の操作システイン操作された抗体−薬剤接合体(ADC)の薬剤部分(D)に連結する。
−W
w−は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドまたはドデカペプチド単位である。アミノ酸単位を含むアミノ酸残基は、天然のもの、ならびに小アミノ酸および非天然アミノ酸類似体、例えばシトルリンを包含する。−W−単位は、各々独立して、角括弧中の下記の式を有し、wは0〜12の範囲の整数である:
(式中、R
19は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、−CH
2OH、−CH(OH)CH
3、−CH
2CH
2SCH
3、−CH
2CONH
2、−CH
2COOH、−CH
2CH
2CONH
2、−CH
2CH
2COOH、−(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、−(CH
2)
3NH
2、−(CH
2)
3NHCOCH
3、−(CH
2)
3NHCHO、−(CH
2)
4NHC(=NH)NH
2、−(CH
2)
4NH
2、−(CH
2)
4NHCOCH
3、−(CH
2)
4NHCHO、−(CH
2)
3NHCONH
2、−(CH
2)
4NHCONH
2、−CH
2CH
2CH(OH)CH
2NH
2、2−ピリジルメチル−、3−ピリジルメチル−、4−ピリジルメチル−、フェニル、シクロヘキシル、
である)。
R19が水素以外である場合、R19が結合される炭素原子はキラルである。R19が結合される炭素原子は、各々独立して、(S)または(R)立体配置であるか、あるいはラセミ混合物である。したがって、アミノ酸単位は、エナンチオマー的に純粋であるか、ラセミであるかまたはジアステレオマー性であり得る。
−Ww−アミノ酸単位の例としては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドが挙げられる。ジペプチドの例としては、以下のものが挙げられる:バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe)。トリペプチドの例としては、以下のものが挙げられる:グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)。アミノ酸リンカー構成成分を含むアミノ酸残基は、天然のもの、ならびに小アミノ酸および非天然アミノ酸類似体、例えばシトルリンを包含する。
アミノ酸単位は、1つ以上の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼにより酵素的に開裂されて、薬剤部分(−D)を遊離し、これは、一実施形態では、放出時にin vivoでプロトン化されて、薬剤(D)を提供する。アミノ酸リンカーは、特定酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、CおよびD、またはプラスミンプロテアーゼによる酵素的開裂のために、それらの選択性で設計され、最適化され得る。
スペーサー単位
スペーサー単位(−Yy−)は、存在する場合(y=1または2)、アミノ酸単位が存在すると(w=1〜12)、アミノ酸単位(−Ww−)を薬剤部分と連結する。代替的には、スペーサー単位は、アミノ酸単位が存在しない場合には、ストレッチャー単位を薬剤単位と連結する。スペーサー単位はさらにまた、アミノ酸単位とストレッチャー単位がともに存在しない場合(w、y=0)、薬剤部分を抗体と連結する。スペーサー単位は、以下の2つの一般的型を有する:自壊的および非自壊的。非自壊的スペーサー単位は、スペーサー単位の一部または全部が、特に酵素的に、抗体−薬剤接合体または薬剤部分−リンカーからアミノ酸単位が開裂された後に、薬剤部分に結合されたままであるものである。グリシン−グリシンスペーサー単位またはグリシンスペーサー単位を含有するADCが腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼまたはリンパ球関連プロテアーゼによる酵素的開裂を受ける場合、グリシン−グリシン−薬剤部分またはグリシン−薬剤部分はAb−Aa−Ww−から解離される。一実施形態では、個々の加水分解反応は標的細胞内で起きて、グリシン−薬剤部分結合を開裂し、薬剤を遊離する。
別の実施形態では、−Yy−はp−アミノベンジルカルバモイル(PAB)単位であって、そのフェニレン部分はQm(ここで、QはC1〜C8アルキル、−O−(C1〜C8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロまたは−シアノであり;そしてmは0〜4の範囲の整数である)で置換される。
非自壊的スペーサー単位(−Y−)の例示的実施形態は:−Gly−Gly−;−Gly−;−Ala−Phe−;−Val−Cit−である。
一実施形態では、スペーサー単位が存在しない(y=0)ADCの薬剤部分−リンカー、あるいはその製薬上許容可能な塩または溶媒和物が提供される。
代替的には、自壊的スペーサー単位を含有するADCは、−Dを放出し得る。一実施形態では、−Y−はPAB基であって、これは、PAB基のアミノ窒素原子を介して−W
w−と連結され、そしてカルボネート、カルバメートまたは他の基を介して−Dに直接結合されるが、この場合、ADCは以下の例示的構造を有する:
(式中、Qは、C
1〜C
8アルキル、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロまたは−シアノであり;そしてmは0〜4の範囲の整数であり、そしてpは1〜4の範囲である)。
自壊的スペーサーの他の例としては、PAB基と電子的に類似する芳香族化合物、例えば2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)、複素環式PAB類似体(US 2005/0256030)、β−グルクロニド(WO 2007/011968)およびオルトまたはパラ−アミノベンジルアセタルが挙げられるが、これらに限定されない。置換および非置換4−アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al (1995) Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al (1972) J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)ならびに2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry, et al (1990) J. Org. Chem. 55:5867)のような、アミド結合加水分解時に環化を受けるスペーサーが用いられ得る。グリシンで置換されるアミン含有薬剤の除去(Kingsbury et al (1984) J. Med. Chem. 27:1447)も、ADCに有用な自壊的スペーサーの例である。
例示的スペーサー単位(−Y
y−)は、式X〜XIIで表される:
樹状リンカー
別の実施形態では、リンカーLは、分枝鎖多機能性リンカー部分を介して1つより多い薬剤部分を抗体に共有結合するための樹状型リンカーであり得る(Sun et al (2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sun et al (2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768)。樹状リンカーは、薬剤対抗体のモル比、すなわち負荷を増大し、これは、ADCの効能と関連づけられる。したがって、操作システイン操作された抗体が1つの反応性システインチオール基のみを保有する場合、多数の薬剤部分は樹状リンカーを介して結合され得る。分枝鎖樹状リンカーの例示的実施形態としては、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールおよび2,4,6−トリス(ひどろきしっメチル)−フェノールデンドリマー単位が挙げられる(WO 2004/01993;Szalai et al (2003) J. Amer. Chem. Soc. 125:15688-15689;Shamis et al (2004) J. Amer. Chem. Soc. 126:1726-1731;Amir et al (2003) Angew. Chem. Int. Ed. 42:4494-4499)。
一実施形態では、スペーサー単位は、分枝鎖ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)であって、これは、多数の薬剤を組入れ、放出するために用いられ、以下の構造を有し:
2−(4−アミノベンジリデン)プロパン−1,3−ジオール・デンドリマー単位(WO 2004/043493;de Groot et al (2003) Angew. Chem. Int. Ed. 42:4490-4494)を含む(式中、Qは−C
1〜C
8アルキル、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−ハロゲン、−ニトロまたは−シアノであり;mは0〜4の範囲の整数であり;nは0または1であり;そしてpは1〜4の範囲である)。
式I抗体−薬剤接合体化合物の例示的実施形態としては、XIIIa(MC)、XIIIb(val−cit)、XIIIc(MC−val−cit)およびXIIId(MC−val−cit−PAB)が挙げられる:
式Ia抗体−薬剤接合体化合物の他の例示的実施形態としては、XIVa〜eが挙げられる:
そしてRは、独立して、XまたはC
1〜C
6アルキルであり;nは、1〜12である)。
別の実施形態では、リンカーは、抗体上に存在する求電子性基と反応性である求核性基を有する反応性官能基を有する。抗体上の有用な求電子性基としては、アルデヒドおよびケトンカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されない。リンカーの求核性基の異種原子は、抗体上の求電子性基と反応し、抗体単位と共有結合を形成し得る。リンカー上の有用な求核性基としては、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジドが挙げられるが、これらに限定されない。抗体上の求電子性基は、リンカーとの結合のための好都合な部位を提供する。
典型的には、ペプチド型リンカーは、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片間にペプチド結合を形成することにより調製され得る。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知である液相合成法(E. Schroder and K. Lubke, “The Peptides”, volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Press)によって調製され得る。リンカー中間体は、スペーサー、ストレッチャーおよびアミノ酸単位を含めた反応の任意の組合せまたは順序で組み立てられ得る。スペーサー、ストレッチャーおよびアミノ酸単位は、求電子性、求核性または遊離ラジカルの性質を有する反応性官能基を用い得る。反応性官能基としては、カルボキシル、ヒドロキシル、パラ−ニトロフェニルカルボネート、イソチオシアネートおよび脱離基、例えばO−メシル、O−トシル、−Cl、−Br、−I;またはマレイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、荷電置換基、例えばスルホネート(−SO3 −)またはアンモニウムは、試薬の水溶性を増大し、リンカー試薬と抗体または薬剤部分とのカップリング反応を助長し、あるいは、ADCを調製するために用いられる合成経路によって、Ab−L(抗体−リンカー中間体)とDとの、またはD−L(薬剤−リンカー中間体)とAbとのカップリング反応を促し得る。
リンカー試薬
抗体およびアウリスタチンの接合体は、種々の二機能性リンカー試薬、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデート HCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製され得る。
抗体薬剤接合体は、リンカー試薬:BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCCおよびスルホ−SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)、ならびにビス−マレイミド試薬:DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEO)
2)および1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(BM(PEO)
3)を含めて用いて調製され得る(これらは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL.およびその他の試薬供給元から))。ビス−マレイミド試薬は、操作システイン操作された抗体のチオール基を、チオール含有薬剤部分、ラベルまたはリンカー中間体と、逐次または同時的に結合させる。操作システイン操作された抗体、薬剤部分、ラベルまたはリンカー中間体のチオール基と反応性であるマレイミドの他の官能基としては、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルスルフィド、イソシアネートおよびイソチオシアネートが挙げられる。
有用なリンカー試薬は、他の商業的供給元、例えばMolecular Biosciences Inc.(Boulder, CO)により入手され得るし、あるいはToki et al (2002) J. Org. Chem. 67:1866-1872;Walker, M.A. (1995) J. Org. Chem. 60:5352-5355;Frisch et al (1996) Bioconjugate Chem. 7:180-186;米国特許第6214345号;WO 02/088172;米国特許第2003130189号;米国特許第2003096743号;WO 03/026577;WO 03/043583;およびWO 04/032828に記載された手法に従って合成され得る。
式(IIIa)のストレッチャーは、以下のリンカー試薬とアミノ酸単位のN末端との反応により、リンカー中に導入され得る:
ストレッチャー単位は、以下の二機能性試薬をアミノ酸単位のN末端と反応させることによりリンカー中に導入され得る:
(式中、XはBrまたはIである)。
式のストレッチャー単位は、以下の二機能性試薬をアミノ酸単位のN末端と反応させることによっても、リンカー中に導入され得る:
マレイミドストレッチャーおよびパラ−アミノベンジルカルバモイル(PAB)自壊的スペーサーを有する例示的バリン−シトルリン(val−citまたはvc)ジペプチドリンカー試薬は、以下の構造を有する:
マレイミドストレッチャー単位およびPAB自壊的スペーサー単位を有する例示的phe−lys(Mtr、モノ−4−メトキシトリチル)ジペプチドリンカー試薬は、Dubowchik, et al. (1997) Tetrahedron Letters, 38:5257-60に従って調製され得るし、そして以下の構造を有する:
操作システイン操作された抗FcRH5抗体−薬剤接合体の調製
式IのADCは、当業者に既知の有機化学反応、条件および試薬、例えば:(1)操作システイン操作された抗体のシステイン基とリンカー試薬を反応させて、共有結合により抗体−リンカー中間体Ab−Lを形成し、その後、活性化薬剤部分と反応させること;ならびに(2)薬剤部分の求核性基をリンカー試薬と反応させて、共有結合により薬剤−リンカー中間体D−Lを形成し、その後、操作システイン操作された抗体のシステイン基と反応させることを用いて、いくつかの経路により調製され得る。接合方法(1)および(2)は、種々の操作システイン操作された抗体、薬剤部分およびリンカーとともに用いて、式Iの抗体−薬剤接合体を調製し得る。
抗体システインチオール基は、求核性であり、リンカー試薬上の求電子性基および薬剤−リンカー中間体との共有結合、例えば:(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基;ならびに(iv)ジスルフィド、例えばピリジルジスルフィド(スルフィド交換による)を形成するよう反応し得る。薬剤部分上の求核性基としては、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性基と共有結合を形成するよう反応し得る以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジド基。
操作システイン操作された抗体は、還元剤、例えばDTT(クレランド試薬、ジチオトレイトール)またはTCEP(トリ(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド;Getz et al (1999) Anal. Biochem. Vol 273:73-80; Soltec Ventures, Beverly, MA)で処置し、その後、再酸化して、鎖間および鎖内ジスルフィド結合を再形成することによりリンカー試薬との接合のために反応性にされ得る(実施例5)。例えば、CHO細胞中で発現される全長システイン操作モノクローナル抗体(ThioMab)は、約50倍モル過剰量のTCEPを用いて、37℃で3時間還元されて、新規に導入されるシステイン残基と培地中に存在するシステインとの間に形成され得るシステイン付加物中のジスルフィド結合を還元する。還元ThioMabは、希釈され、10mM酢酸ナトリウム、pH5中のHiTrap Sカラム上に載せられて、0.3M塩化ナトリウムを含有するPBSで溶離される。ジスルフィド結合は、室温で一晩、希釈(200nM)水性硫酸銅(CuSO4)を用いて、親Mab中に存在するシステイン残基間に再確立された。代替的には、デヒドロアスコルビン酸(DHAA)は、システイン付加物の還元的開裂後に操作システイン操作された抗体の鎖内ジスルフィド基を再確立するための有効な酸化剤である。当該技術分野で既知の他の酸化剤すなわち酸化物質および酸化条件が、用いられ得る。周囲空気酸化も有効である。この低刺激性部分的再酸化工程は、高忠実度で効率的に鎖内ジスルフィドを形成し、そして新規に導入されるシステイン残基のチオール基を保存する。約10倍過剰量の薬剤−リンカー中間体、例えばMC−vc−PAB−MMAEが付加され、混合され、室温で約1時間放置されて、接合を実行し、抗FcRH5抗体−薬剤接合体を形成した。接合混合物は、ゲル濾過され、負荷され、HiTrap Sカラムを通して溶離されて、過剰量の薬剤−リンカー中間体および他の不純物を除去した。
接合のために細胞培養から発現される操作システイン操作された抗体を調製するための一般的工程を、以下に示す。細胞培地がシステインを含有する場合、ジスルフィド付加物は、新規導入システインアミノ酸と培地からのシステインとの間に形成され得る。図23における例示的ThioMabで円として示される(左)これらのシステイン付加物は、還元されて、接合に対して反応性である操作システイン操作された抗体を生成しなければならない。システイン付加物(おそらくは種々の鎖間ジスルフィド結合を伴う)は、還元剤、例えばTCEPを用いて還元的に開裂されて、還元型の抗体を生じる。対合システイン残基間の鎖間ジスルフィド結合は、硫酸銅、DHAA、あるいは周囲酸素への曝露を用いて、部分酸化条件下で、再形成される。新規導入操作および非対合システイン残基は、本発明の抗体接合体を形成するためのリンカー試薬または薬剤−リンカー中間体との反応に依然として利用可能である。哺乳類細胞株中で発現されるThioMabは、−S−S−結合形成により操作Cysへの外部接合Cys付加物を生じる。それゆえ、精製ThioMabは還元および再酸化手順で処置されて、反応性ThioMabを産生する。これらのThioMabは、マレイミド含有細胞傷害性物質、蛍光体およびその他のラベルと接合するために用いられる。
10. 免疫リポソーム
本明細書中に開示される抗FcRH5抗体は、免疫リポソームとしても処方され得る。「リポソーム」は、哺乳動物に薬剤を送達するために有用である種々の型の脂質、リン脂質および/または界面活性剤からなる小型小胞である。リポソームの構成成分は、一般に、生物学的膜の脂質配列と同様に、二重膜形成で整列される。抗体を含有するリポソームは、当該技術分野で既知の方法、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;およびWO97/38731(1997年10月23日公開)に記載された方法により調製される。循環時間増大を示すリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、限定孔サイズのフィルターを通して押出されて、所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明の抗体のFab’断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin et al., J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されたようなリポソームと接合され得る。化学療法薬は、任意に、リポソーム内に含有される(Gabizon et al., J. National Cancer Inst. 81(19):1484 (1989)参照)。
B. 抗体製造のある種の方法
1. 所望の特性を有する抗FcRH5抗体のスクリーニング
FcRH5ポリペプチドと結合する抗体を生成するための技法は、上記されている。さらに、所望される場合、ある種の生物学的特質を有する抗体を選択し得る。
本発明の抗FcRH5抗体の増殖抑制作用は、当該技術分野で既知の方法により、例えば内因的に、またはFcRH5遺伝子によるトランスフェクション後にFcRH5ポリペプチドを発現する細胞を用いて、査定され得る。例えば適切な腫瘍細胞株およびFcRH5トランスフェクト化細胞は、種々の濃度の本発明の抗FcRH5モノクローナル抗体で数日間(例えば、2〜7日)、処置され、クリスタルバイオレットまたはMTTで染色され、あるいはいくつかの他の比色検定により分析され得る。増殖を測定する別の方法は、本発明の抗FcRH5抗体の存在下または非存在下で処置された細胞による3H−チミジン取込みを比較することによる。処置後、細胞は収穫され、DNA中に組込まれた放射能の量が、シンチレーション計数器で定量される。適切な陽性対照は、その細胞株の増殖を抑制することが知られている増殖抑制抗体での選択細胞株の処理を包含する。in vivoでの腫瘍細胞の増殖抑制は、当該技術分野で既知の種々の方法で確定され得る。腫瘍細胞は、FcRH5ポリペプチドを過剰発現するものである。抗FcRH5抗体は、非処理腫瘍細胞と比較して、約25〜100%、さらに好ましくは約30〜100%、さらに好ましくは約50〜100%または70〜100%、一実施形態では、約0.5〜30μg/mlの抗体濃度で、in vitroまたはin vivoでFcRH5発現腫瘍細胞の細胞増殖を抑制する。増殖抑制は、細胞培養中に約0.5〜30μg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度で測定され得るが、この場合、増殖抑制は、抗体への腫瘍細胞の曝露後1〜10日目に測定される。約1μg/体重1kg〜約100mg/kgでの抗FcRH5抗体の投与が、抗体の最初の投与から約5日〜3ヶ月以内、好ましくは約5〜30日以内に、腫瘍サイズの低減または腫瘍細胞増殖の低減を生じる場合、抗体はin vivoで増殖抑制性である。
細胞死を誘導する抗FcRH5抗体に関して選択するために、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルーまたは7AAD取込みにより示されるような膜完全性の損失が、対照に比して査定され得る。PI取込み検定は、補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。FcRH5ポリペプチド発現腫瘍細胞は、培地単独と、あるいは適切な抗FcRH5抗体(例えば、約10μg/mlで)を含有する培地とともにインキュベートされる。細胞は、3日間、インキュベートされる。各処置後、細胞は洗浄され、細胞凝集塊の除去のために、35mm濾し蓋付き12×75管中にアリコート化(1ml/管、3管/処置群)する。次いで、管に、PI(10μg/ml)を入れる。試料は、FACSCAN(登録商標)フローサイトメトリーおよびFACSCONVERT(登録商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析され得る。PI取込みにより確定されるような統計学的有意レベルの細胞死を誘導する抗FcRH5抗体は、細胞死誘導性抗FcRH5抗体として選択され得る。
当該抗体により結合されるFcRH5ポリペプチド上のエピトープと結合する抗体に関してスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されているような慣例的交差遮断検定が実施され得る。この検定は、試験抗体が、既知の抗FcRH5抗体と同一部位で結合するか、エピトープで結合するかを確定するために用いられ得る。代替的には、または付加的には、エピトープマッピングが、当該技術分野で既知の方法により実施され得る。例えば、抗体配列は、例えばアラニンスキャニングにより突然変異化されて、接触残基を同定し得る。突然変異体抗体は、最初に、ポリクローナル抗体との結合に関して試験されて、適正なフォールディングを保証する。異なる方法では、FcRH5ポリペプチドの異なる領域に対応するペプチドが、試験抗体との、または試験抗体および特性化または既知のエピトープを有する抗体との競合検定で用いられ得る。
2. ある種のライブラリースクリーニング方法
本発明の抗FcRH5抗体は、所望の複数可の活性を有する抗体に関してスクリーニングするための組合せライブラリーを用いることにより、作製され得る。例えば、ファージ表示ライブラリーを生成し、所望の結合特質を保有する抗体に関してこのようなライブラリーをスクリーニングするための、種々の方法が当該技術分野で知られている。このような方法は、Hoogenboom et al. (2001) in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ)に一般的に、ならびにある実施形態では、Lee et al. (2004) J. Mol. Biol. 340:1073-1093に記載されている。
原則として、合成抗体クローンは、ファージ外殻タンパク質と融合された抗体可変領域の種々の断片(Fv)を表示するファージを含有するファージライブラリーを巣にすることにより選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対してアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原と結合し得るFv断片を発現するクローンは、抗原に吸着され、したがって、ライブラリー中の非結合クローンから分離される。結合クローンは、次に、抗原から溶離され、抗原吸着/溶離の付加的周期によりさらに濃化され得る。当該ファージクローンに関して選択するための適切な抗原スクリーニング手法を設計し、その後、当該ファージクローンからのFv配列ならびにKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に記載された適切な定常領域(Fc)配列を用いて、全長抗FcRH5抗体クローンを構築することにより、本発明の抗FcRH5抗体のいずれかが得られる。
ある実施形態では、抗体の抗原結合ドメインは、3つの超可変ループ(HVR)または相補性決定領域(CDR)をともに示す、各々、軽鎖(VL)および重鎖(VH)からの、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域から形成される。可変ドメインは、一本鎖Fv(scFv)断片(VHおよびVLは短い、可動性ペプチドを介して共有結合される)として、またはFab断片(各々、定常ドメインと融合され、非共有的に相互作用する)として、ファージ上に機能的に表示され得る(Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載)。本明細書中で用いる場合、scFvコードファージクローンおよびFabコードファージクローンは、集合的に、「Fvファージクローン」または「Fvクローン」として言及される。
VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローン化され、ファージライブラリー中で無作為に再び組合せられ、これは次に、抗原結合クローンに関して検索される(Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載)。免疫化供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に高親和性抗体を提供する。代替的には、ナイーブレパートリーがクローン化されて、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されたような如何なる免疫化も伴わずに、ヒト抗体の単一供給源を、広範囲の非自己抗原に、そして自己抗原にも提供する。最後に、ナイーブライブラリーは、幹細胞からの非整列V遺伝子セグメントをクローニングすることにより、そして無作為配列を含有するPCRプライマーを用いて高度可変CDR3領域をコードし、in vitroでの再整列を成し遂げることによっても、合成的に作製され得る(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)記載)。
ある実施形態では、小外殻タンパク質pIIIとの融合により抗体断片を表示するために、糸状ファージが用いられる。抗体断片は一本鎖Fv断片として表示され、この場合、VHおよびVLドメインは、可動性ポリペプチドスペーサーにより(例えば、Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載)、またはFab断片として、同一ポリペプチド上に連結され、この場合、一方の鎖はpIIIと融合され、他方は宿主細胞周縁質中に分泌され、ここで、Fab−外殻タンパク質構造の集合体は、野生型タンパク質のいくつかを置き換えることによりファージ表面に表示されるようになる(Hoogenboom et al., Nucl. Acids Res., 19: 4133-4137 (1991)に記載)。
概して、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒトまたは動物から採取された免疫細胞から得られる。抗FcRH5クローンに有利に偏向されたライブラリーが所望される場合、対象はFcRH5で免疫化されて抗体応答を生じ、そして脾臓細胞および/または循環B細胞または末梢血リンパ球(PBL)がライブラリー構築のために回収される。好ましい実施形態では、FcRH5免疫化がFcRH5に対するヒト抗体を産生するB細胞を生じるよう、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを保有する(そして機能的な委員性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおいて抗FcRH5抗体応答を生じさせることにより、抗FcRH5クローンに有利に偏向されたヒト抗体遺伝子断片ライブラリーが得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの生成は、以下に記載される。
抗FcRH5反応性細胞集団に関する付加的濃化は、例えば、FcRH5アフィニティークロマトグラフィーを用いる細胞分離により、または蛍光色素ラベルFcRH5への細胞の吸着とその後の流動活性化細胞分取(FACS)により、FcRH5特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離するための適切なスクリーニング手法を用いることにより得られる。
代替的には、非免疫化ドナーからの脾臓細胞および/またはB細胞または他のPBLの使用は、考え得る抗体レパートリーのより良好な提示を提供し、そしてFcRH5が抗原性でない任意の動物(ヒトまたは非ヒト)種を用いた抗体ライブラリーの構築も可能にする。抗体遺伝子構築をin vitroで組入れるライブラリーに関して、幹細胞は対象から採取されて、非整列抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。当該免疫細胞は、種々の動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ、オオカミ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマおよび鳥類種等から得られる。
抗体可変遺伝子セグメント(例えば、VHおよびVLセグメント)をコードする核酸は、当該細胞から回収され、増幅される。再整列VHおよびVL遺伝子ライブラリーの場合、リンパ球からゲノムDNAまたはmRNAを単離し、その後、Orlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載されるような再整列VHおよびVL遺伝子の5’および3’末端と整合するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に付して、それにより発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することにより、所望のDNAが得られる。V遺伝子は、成熟Vドメインをコードするエキソンの5’末端に逆向プライマーを、そしてJ−セグメント内に順向プライマーを有する、cDNAおよびゲノムDNAから増幅される(Orlandi et al. (1989)に、そしてWard et al., Nature, 341: 544-546 (1989)に記載)。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、逆向プライマーは、リーダーエキソン中(Jones et al., Biotechnol., 9: 88-89 (1991))、ならびに順向プライマーは定常領域中(Sastry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 5728-5732 (1989))にも置かれ得る。相補性を最大にするために、縮重がプライマー中に組入れられ得る(Orlandi et al. (1989)またはSastry et al. (1989)に記載)。ある実施形態では、免疫細胞核酸試料中に存在する全ての利用可能なVHおよびVL整列を増幅するために、各V遺伝子ファミリーに対して標的化されるPCRプライマーを用いることにより、ライブラリー多様性は最大化される(Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)の方法に記載、またはOrum et al., Nucleic Acids Res., 21: 4491-4498 (1993)の方法に記載)。発現ベクター中に増幅DNAをクローニングするために、一端にタグとしてPCRプライマー内に(Orlandi et al. (1989))、あるいはタグ化プライマーによるさらなるPCR増幅により(Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991))、稀少な制限部位が導入され得る。
合成的に再整列されるV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからin vitroで得られる。ヒトVH遺伝子セグメントのほとんどは、クローン化され、配列決定され(Tomlinson et al., J. Mol. Biol., 227: 776-798 (1992)で報告されている)、そしてマッピングされている(Matsuda et al., Nature Genet., 3: 88-94 (1993)で報告されている);これらのクローン化セグメント(H1およびH2ループの主要立体配座を全て含む)を用いて、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)に記載されるような多様な配列および長さのH3ループをコードするPCRプライマーを有する多様なVH遺伝子レパートリーを生成し得る。VHレパートリーは、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461 (1992)に記載されるような単一長の長いH3ループに集中される全ての配列多様性を有しても作製される得る。ヒトVκおよびVλセグメントは、クローン化され、配列決定されており(Williams and Winter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461 (1993)で報告された)、合成軽鎖レパートリーを作製するために用いられ得る。一連のVHおよびVLフォールドならびにL3およびH3長に基づいた合成V遺伝子レパートリーは、かなりの構造的多様性を有する抗体を子dする。V遺伝子コードDNAの増幅後、生殖系列V遺伝子セグメントは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)の方法に従ってin vitroで再整列され得る。
抗体断片のレパートリーは、VHおよびVL遺伝子レパートリーをいくつかの方法で一緒に組合せることにより構築され得る。各レパートリーは異なるベクター中に作製され、ベクターは、in vitroで(例えばHogrefe et al., Gene, 128: 119-126 (1993)に記載)、または組合せ感染によりin vivoで(例えば、Waterhouse et al., Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266 (1993)に記載されたloxP系)、組換えられ得る。in vivo組合せアプローチは、Fab断片の二鎖性を利用して、大腸菌形質転換効率により課せられるライブラリーサイズの限界を克服する。ナイーブVHおよびVLレパートリーは、一方はファージミドに、他方はファージベクター中に、別個にクローン化される。次に、各サボが異なる組合せを含有し、ライブラリーサイズが存在する細胞の数(約1012クローン)によってのみ限定されるよう、2つのライブラリーは、ファージミド含有細菌のファージ感染により組合される。VHおよびVL遺伝子が単一レプリコン上で組換えられ、ファージビリオン中に同時パッケージングされるよう、ベクターはともに、in vivoで組換えシグナルを含有する。これらの巨大ライブラリーは、良好な親和力(約10−8MのKd −1)を有する多数の多様な抗体を提供する。
代替的には、レパートリーは、同一ベクター中で順次クローン化される(例えばBarbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982 (1991)に記載)か、あるいはPCRにより一緒に集合され、次いでクローン化される(例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)に記載)。PCRアセンブリーは、VHおよびVL DNAを、可動性ペプチドスペーサーをコードするDNAと連結して、一本鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するためにも用いられ得る。さらに別の技法では、「細胞内PCRアセンブリー」は、PCRによりリンパ球内のVHおよびVL遺伝子を、次いで、連結遺伝子のクローンレパートリーを組合せるために用いられる(Embleton et al., Nucl. Acids Res., 20: 3831-3837 (1992)に記載)。
ナイーブライブラリー(天然または合成)により産生される抗体は、中等度の親和力(約106〜107M―1のKd −1)を有するが、しかし親和性成熟も、第二ライブラリーから構築し、再選択することによりin vitroで模倣され得る(Winter et al. (1994)(上記)に記載)。例えば、突然変異は、Hawkins et al., J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992)の方法において、またはGram et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580 (1992)の方法において、誤りがちなポリメラーゼ(Leung et al., Technique, 1: 11-15 (1989)で報告されている)を用いることにより、in vitroで無作為に導入され得る。付加的には、親和性成熟は、1つ以上のCDRを無作為に突然変異化することにより、例えば、選択された個々のFvクローンにおいて、当該CDRをスパニングする無作為配列を保有するプライマーを伴うPCRを用い、そしてより高い親和性クローンに関してスクリーニングすることにより、実施され得る。WO 9607754(1996年3月14日公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域における突然変異誘発を誘導して、軽鎖遺伝子のライブラリーを作製するための方法を記載した。別の有効なアプローチは、非免疫化ドナーから得られる天然Vドメイン変異体のレパートリーを用いてファージ表示により選択されるVHまたはVLドメインを組換えて、数回の鎖再シャッフリングにおけるより高い親和性に関してスクリーニングすることである(Marks et al., Biotechnol., 10: 779-783 (1992)に記載)。この技法は、約10−9M以下の親和力を有する抗体および抗体断片の産生を可能にする。
ライブラリーのスクリーニングは、当該技術分野で既知の種々の技法により成し遂げられ得る。例えば、FcRH5は、吸着プレートのウェルを被覆するために用いられ、吸着プレートに固着される宿主細胞上で発現され、または細胞選別に用いられ、あるいはストレプトアビジン被覆ビーズで捕捉するためにビオチンに接合され得るし、あるいはファージ表示ライブラリーをパニングするための任意の他の方法に用いられ得る。
ファージライブラリー試料は、ファージ粒子の少なくとも一部を吸着剤と結合するのに適した条件下で、固定化FcRH5と接触される。常態では、pH、イオン強度、温度等を含めた条件は、生理学的条件を模倣するよう選択される。固相と結合されるファージは、洗浄され、次いで、酸により(例えば、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 88: 7978-7982 (1991)に記載)、またはアルカリにより(例えば、Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載)、またはFcRH5抗原競合により(例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)の抗原競合法と類似の手法で)、溶離される。ファージは、単一回の選択で20〜1000倍濃化され得る。さらに、濃化ファージは、細菌培養中で増殖され、さらなる回数の選択に付される。
選択の効率は、洗浄中の解離の動力学、ならびに単一ファージ上の多数の抗体が同時に抗原と結合するか否か、を含めた多数の因子に依っている。迅速解離動力学(および弱い結合親和力)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージ表示、ならびに固相中の抗原の高被覆密度の使用により保持され得る。高密度は、多価相互作用を介してファージを安定化するだけでなく、解離されたファージの再結合を助ける。遅い解離動力学(および良好な結合親和力)を有する抗体の選択は、長時間洗浄および一価ファージ表示(Bass et al., Proteins, 8: 309-314 (1990)に、およびWO 92/0969に記載)、ならびに抗原の低被覆密度(Marks et al., Biotechnol., 10: 779-783 (1992)に記載)の使用により促進され得る。
FcRH5に関してわずかに異なる親和性でも、異なる親和性を有するファージ抗体間で選択することが可能である。しかしながら、選択抗体の無作為突然変異(例えば、いくつかの親和性成熟技法で実施される)は、多数の突然変異体、抗原とのほとんどの結合、およびより高い親和力を有する2〜3のものを生じると思われる。FcRH5を制限すると、稀少な高親和性ファージは完全に競合され得る。全ての高親和性突然変異体を保持するために、ファージは過剰量のビオチニル化FcRH5とともにインキュベートされ得るが、しかしビオチニル化FcRH5の濃度はFcRH5に関する標的モル親和性定数より低いモル数である。次いで、高親和性結合ファージは、ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズにより捕捉され得る。このような「平衡捕捉」は、それらの結合親和力に従って抗体を選択させ、感度は、低親和性を有する大過剰量のファージから2倍高いだけの親和性を有する突然変異体クローンの単離を可能にする感度であった。固相に結合されたファージを洗浄するのに用いられる条件は、さらにまた、解離動力学に基づいて識別するよう操作され得る。
抗FcRH5クローンは、活性に基づいて選択され得る。ある実施形態では、本発明は、天然でFcRH5を発現する生きている細胞と結合する抗FcRH5抗体を提供する。一実施形態では、、本発明は、FcRH5リガンドとFcRH5との間の結合を遮断するが、しかしFcRH5リガンドと第二タンパク質との間の結合を遮断しない抗FcRH5抗体を提供する。このような抗FcRH5抗体に対応するFvクローンは、(1)上記のようにファージライブラリーから抗FcRH5クローンを単離すること、任意に、適切な細菌宿主中の集団を増殖させることによりファージクローンの単離集団を増幅すること;(2)それぞれ活性の遮断および非遮断が望ましいFcRH5および第二タンパク質を選択すること;(3)抗FcRH5ファージクローンを吸着して、FcRH5を固定化すること;(4)過剰量の第二タンパク質を用いて、第二タンパク質の結合決定基と重複するかまたは共有されるFcRH5結合決定基を認識する任意の望ましくないクローンを溶離すること;ならびに(5)ステップ(4)後に吸着されたままであるクローンを溶離することにより選択され得る。任意に、所望の遮断/非遮断特性を有するクローンはさらに、本明細書中に記載される選択手順を1回以上反復することにより、濃化され得る。
本発明のハイブリドーマ由来モノクローナル抗体またはファージ表示FvクローンをコードするDNAは、慣用的手法を用いて(例えば、ハイブリドーマまたはファージDNA鋳型から当該重鎖および軽鎖コード領域を特異的に増幅するよう意図されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)、容易に単離され、配列決定される。一旦単離されると、DNAは発現ベクター中に入れられ、これは次に、別の状況では免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中でトランスフェクトされて、組換え宿主細胞中での所望のモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する検討文献としては、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5:256 (1993) および Pluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188 (1992)が挙げられる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖および/または軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列と組合されて(例えば、適切なDNA配列は、Kabat et al(上記)から得られる)、完全または部分長重鎖および/または軽鎖をコードするクローンを形成し得る。任意のアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域はこの目的のために用いられ得る、そしてこのような定常領域は任意のヒトまたは動物種から得られる、と理解される。一動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得られ、次いで、別の動物種の定常領域DNAと融合されて、「ハイブリッド」全長重鎖および/または軽鎖に関するコード配列(複数可)を形成するFvクローンは、本明細書中で用いられるような「キメラ」および「ハイブリッド」の定義に含まれる。ある実施形態では、ヒト可変DNAに由来するFvクローンは、ヒト定常領域DNAと融合されて、全長または部分長ヒト重鎖および/または軽鎖に関するコード配列(複数可)を形成する。
ハイブリドーマに由来する抗FcRH5抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローンから得られる相同ネズミ配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常領域のコード配列を置き換えることによっても修飾され得る(例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984)の方法)。ハイブリドーマ−またはFvクローン由来の抗体または断片をコードするDNAはさらに、非免疫グロブリンポリペプチドに関するコード配列の全部または一部である免疫グロブリンコード配列との共有結合により、修飾され得る。このようにして、本発明のFvクローンまたはハイブリッドクローン由来抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
C. 抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(ADEPT)
プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法薬、WO 81/01145参照)を活性抗癌薬に転化するプロドラッグ活性化酵素と抗体を接合することにより、本発明の抗体はADEPTにも用いられ得る(例えば、WO 88/07378および米国特許第4,975,278号参照)。
ADEPTに有用な免疫接合体の酵素構成成分としては、それをそのより活性な細胞傷害形態に転化するような方法でプロドラッグに作用し得る任意の酵素が挙げられる。
本発明の方法に有用である酵素としては、アルカリ性ホスファターゼ(これは、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);アリールスルファターゼ(スルフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);シトシンデアミナーゼ(非毒性5−フルオロシトシンを抗癌薬、5フルオロウラシルに転化するために有用である);プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL)(ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に転化するために有用である);D−アラニルカルボキシペプチダーゼ(D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを転化するために有用である);炭水化物開裂酵素、例えばβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ(グリコシル化プロドラッグを遊離プロドラッグに転化するために有用である);β−ラクタマーゼ(β−ラクタムで誘導体化される薬剤を遊離薬剤に転化するために有用である);ならびにペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼおよびペニシリンGアミダーゼ(それぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基によりそれらのアミン窒素で誘導体化される薬剤を遊離薬剤に転化するために有用である)が挙げられるが、これらに限定されない。代替的には、酵素活性を有する抗体(「アブザイム」としても当該技術分野で知れらている)は、本発明のプロドラッグを遊離活性薬剤に転化するために用いられ得る(例えば、Massey, Nature 328:457-458 (1987)参照)。抗体−アブザイム接合体は、腫瘍細胞集団にアブザイムを送達するために、本明細書中に記載されるように調製され得る。
本発明の酵素は、当該技術分野で周知の技法により、例えば上記のヘテロ二機能性架橋試薬を用いて、抗FcRH5抗体と共有結合され得る。代替的には、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部分と連結された本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、当該技術分野で周知の組換えDNA技法を用いて構築され得る(例えば、Neuberger et al., Nature 312:604-608 (1984)参照)。
D. 抗FcRH5抗体
本明細書中に記載される抗FcRH5抗体のほかに、抗FcRH5抗体変異体が調製され得る、ということが意図される。抗FcRH5抗体変異体は、適切なヌクレオチド変化をコードDNA中に導入することにより、および/または所望の抗体またはポリペプチドの合成により、調製され得る。アミノ酸変化は抗FcRH5抗体の翻訳後プロセスを変更し得る、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変える、あるいは膜固着特質を変更する、と当業者は理解する。
本明細書中に記載される抗FcRH5抗体における変異は、例えば米国特許第5,364,934号に記述された保存的および非保存的突然変異に関する技法および指針のいずれかを用いて作製され得る。変異は、ネイティブ配列抗体またはポリペプチドと比較した場合にアミノ酸配列における変化を生じる抗体またはポリペプチドをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失または挿入であり得る。任意に、変異は、抗FcRH5抗体のドメインのうちの1つ以上における、任意の他のアミノ酸による少なくとも1つのアミノ酸の置換による。所望の活性に悪影響を及ぼさずに、どのアミノ酸残基が挿入され、置換され、または欠失され得るかを決定するに際しての指針は、抗FcRH5抗体の配列を、同種のの既知のタンパク質分子のものと比較し、高相同性を有する領域でなされるアミノ酸配列変化の数を最小限にすることにより見出され得る。アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換える、例えばロイシンをセリンに置換する、すなわち保存的アミノ酸置換の結果であり得る。挿入または欠失は、任意に、約1〜5つのアミノ酸の範囲であり得る。可能にされる変異は、配列中のアミノ酸の挿入、欠失または置換を系統的に作製し、その結果生じる変異体を、全長または成熟ネイティブ配列により示される活性に関して試験することにより決定され得る。
抗FcRH5抗体断片が、本明細書中で提供される。このような断片は、N末端またはC末端で切頭化され得るか、あるいは例えば、全長ネイティブ抗体またはタンパク質と比較した場合、内部残基を欠くことがある。ある断片は、抗FcRH5抗体の所望の生物学的活性に不可欠でないアミノ酸残基を欠く。
抗FcRH5抗体断片は、多数の慣用的技法のうちのいずれかにより調製され得る。所望のペプチド断片は、化学的に合成され得る。代替的一アプローチは、酵素的消化により、例えば特定のアミノ酸残基により限定される部位でタンパク質を切断することが既知である酵素でタンパク質を処理することにより、あるいは適切な制限酵素でDNAを消化し、所望の断片を単離することにより、抗体またはポリペプチド断片を生成することを包含する。さらに別の適切な技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望の抗体またはポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し、増幅することを包含する。DNA断片の所望の末端を限定するオリゴヌクレオチドは、PCRにおける5’および3’末端に用いられる。好ましくは、抗FcRH5抗体断片は、本明細書中に開示されるネイティブ抗FcRH5抗体と少なくとも1つの生物学的および/または免疫学的活性を共有する。
特定の実施形態では、当該保存的置換は、好ましい置換の見出し下で、表8に示される。このような置換が生物学的活性の変化を生じる場合には、表8で例示的置換と呼ばれる、あるいはアミノ酸クラスに関して以下でさらに説明される、より実質的な変化が導入され、生成物がスクリーニングされる。
抗FcRH5抗体の機能または免疫学的同一性における実質的修飾は、(a)例えば、シートまたは螺旋立体配座のような置換の領域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の大部分を保持するのに及ぼすそれらの作用が有意に異なる置換を選択することにより成し遂げられる。天然残基は、共通の側鎖特性に基づいた群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性疎水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;ならびに
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの一成員を別のクラスのものに交換するということを引き起こす。このような置換残基は、保存的置換部位に、さらに好ましくは残りの(非保存)部位にも導入され得る。
変異は、当該技術分野で既知の方法を用いて、例えばオリゴヌクレオチド媒介性(部位特異的)突然変異誘導、アラニンスキャニング、およびPCR突然変異誘発によりなされ得る。部位特異的突然変異誘発[Carter et al., Nucl. Acids Res., 13:4331 (1986);Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10:6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells et al., Gene, 34:315 (1985)]、制限選択突然変異誘発[Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317:415 (1986)]あるいは他の既知の技法は、クローン化DNA上で実施されて、抗FcRH5抗体変異体DNAを産生し得る。
スキャニングアミノ酸分析は、連続配列に沿って1つ以上のアミノ酸を同定するためにも用いられ得る。好ましいスキャニングアミノ酸は、相対的に小際、中性のアミノ酸である。このようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリンおよびシステインが挙げられる。β−炭素以上に側鎖を排除し、変異体の主鎖立体配座を余り変更しないと思われるため、アラニンは、典型的には、この群の間で好ましいスキャニングアミノ酸である[Cunningham and Wells, Science, 244:1081-1085 (1989)]。アラニンは、さらにまた、最も一般的なアミノ酸であるため、典型的には選択される。さらに、それは、埋没および露呈位置の両方で高頻度に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1 (1976)]。アラニン置換が適量の変異体を生じない場合、等配電子体的アミノ酸が用いられ得る。
抗FcRH5抗体の適性立体配座を保持するのに関与しない任意のシステインも、一般的にセリンで置換されて、分子の参加的安定性を改良し、異所性架橋を防止し得る。逆に、システイン結合(複数可)は、抗FcRH5抗体に付加されて、その安定性を改良し得る(特に、抗体が抗体断片、例えばFv断片である場合)。
特に好ましい型の置換性変異体は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを包含する。一般的に、さらなる開発のために選択された結果的に生じる変異体(複数可)は、それらが生成される親抗体に比して、改良された生物学的特性を有する。このような置換性変異体を生成するための好都合な方法は、ファージ表示を用いる親和性成熟を包含する。要するに、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7部位)は、各部位での全ての考え得るアミノ置換を生じるよう突然変異化される。このように生成される抗体変異体は、各粒子内にパッケージされるM13の遺伝子III産物との融合体として、糸状ファージ粒子から多価方式で表示される。ファージ表示変異体は、次に、本明細書中に開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。修飾に関して候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発が実施されて、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定し得る。代替的には、または付加的には、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体およびFcRH5ポリペプチド間の接触点を同定することは有益である。このような接触残基および隣接残基は、本明細書中で遂行される技法による置換のための候補である。このような変異体が一旦生成されると、変異体のパネルは本明細書中に記載されるようなスクリーニングに付されて、1つ以上の関連検定における優位の特性を有する抗体が、さらなる開発のために選択され得る。
抗FcRH5抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で既知の種々の方法により調製される。これらの方法としては、天然供給源からの単離(天然アミノ酸配列変異体の場合)、ならびにオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、および抗FcRH5抗体の早期調製変異体または非変異体バージョンのカセット突然変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
E. 抗FcRH5抗体の修飾
抗FcRH5抗体の共有的修飾は、本発明の範囲内に含まれる。共有的修飾の一型は、抗FcRH5抗体の標的化アミノ酸残基を、抗FcRH5抗体の選択側鎖あるいはN−またはC末端残基と反応し得る有機誘導体化剤と反応させることを包含する。二機能性作用物質による誘導体化は、例えば、抗FcRH5抗体を、抗FcRH5抗体を精製するための方法に用いるための水不溶性支持マトリックスまたは表面に架橋する(その逆も)ために有用である。一般に用いられる架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル、ホモ二機能性イミドエステル、例えば、ジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、二機能性マレイミド、例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタンおよびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような作用物質が挙げられる。
他の修飾としては、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基へのそれぞれグルタミニルおよびアスパラギニル残基の脱アミド、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
本発明の範囲内に含まれる抗FcRH5抗体の別の型の共有的修飾は、抗体またはポリペプチドのネイティブグリコシル化パターンを変更することを包含する。「ネイティブグリコシル化パターンを変更すること」は、ネイティブ配列抗FcRH5抗体中に見出される1つ以上の炭水化物を欠失すること(基本的グリコシル化部位を除去することによるかまたは化学的および/または酵素的手段によりグリコシル化を欠失することによる)、および/またはネイティブ配列抗FcRH5抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味するよう、本明細書中の目的のために意図される。さらに、その語句は、存在する種々の炭水化物部分の性質および割合の変化を含めたネイティブタンパク質のグリコシル化における定量的変化を包含する。
抗体およびその他のポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結である。N連結は、炭水化物部分とアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。トリペプチド配列 アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分とアスパラギン側鎖との酵素的結合に関する認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列の存在は、潜在的グリコシル化部位を作り出す。O連結グリコシル化は、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つとヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンとの結合を指すが、しかし5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも用いられ得る。
抗FcRH5抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N連結グリコシル化部位に関して)上記トリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するよう、アミノ酸配列を変更することにより好都合に成し遂げられる。変更は、(O連結グリコシル化部位に関して)元の抗FcRH5抗体の配列に対する1つ以上のセリンまたはトレオニン残基による付加または置換によってもなされ得る。抗FcRH5抗体アミノ酸配列は、任意に、DNAレベルでの変化を通して、特に、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが生成されるよう、予め選択された塩基で抗FcRH5抗体をコードするDNAを突然変異化することにより、変更され得る。
抗FcRH5抗体上の炭水化物部分の数を増大する別の手段は、グリコシドとポリペプチドとの化学的または酵素的カップリングによる。このような方法は、当該技術分野で、例えばWO 87/05330(1987年9月11日公開)に、およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
抗FcRH5抗体上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にまたは酵素的に、あるいはグリコシル化のための標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異的置換により、成し遂げられ得る。化学的脱グリコシル化技法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、ならびにEdge et al., Anal. Biochem., 118:131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、種々のエンド−およびエキソ−グリコシダーゼの使用により達成され得る(Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138:350 (1987)に記載)。
抗FcRH5抗体の別の型の共有的修飾は、抗体を、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンのうちの1つと連結することを包含する(米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号または第4,179,337号に記載)。抗体は、例えば、コアセルベーション技法によりまたは界面重合により、調製されるマイクロカプセル中に(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド薬剤送達系中に(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、あるいはマクロエマルション中にも包括され得る。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A., Ed., (1980)に開示されている。
本発明の抗FcRH5抗体は、別の非相同ポリペプチドまたはアミノ酸配列と融合される抗FcRH5抗体を含むキメラ分子を形成する方法でも修飾され得る。
一実施形態では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの抗FcRH5抗体の融合体を含む。エピトープタグは、一般的に、抗FcRH5抗体のアミノ−またはカルボキシル末端に配置される。このようなエピトープタグ化形態の抗FcRH5抗体の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出され得る。さらにまた、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体またはエピトープタグと結合する別の型の親和性マトリックスを用いるアフィニティー精製により、抗FcRH5抗体を容易に精製させる。種々のタグポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は、当該技術分野で周知である。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグ;flu HAタグポリペプチドおよびその抗体 12CA5[Field et al., Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]が挙げられる。他のタグポリペプチドとしては、Flag−ペプチド[Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science, 255:192-194 (1992)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]が挙げられる。
代替的実施形態では、キメラ分子は、抗FcRH5抗体と免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定領域との融合を含み得る。二価形態のキメラ分子(「免疫アドヘシン」としても言及される)に関して、このような融合は、IgG分子のFc領域に対してであり得る。Ig融合は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりの可溶性(欠失されるかまたは不活性化された膜貫通ドメイン)形態の抗FcRH5抗体の置換を包含する。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合は、IgG1分子のヒンジ、CH2およびCH3、あるいはヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域を包含する。免疫グロブリン融合の生成に関しては、米国特許第5,428,130号(1995年6月27日発行)も参照されたい。
F. 抗FcRH5抗体の調製
以下の説明は、主に、抗FcRH5抗体コード核酸を含有するベクターで形質転換されるかまたはトランスフェクトされた細胞を培養することによる抗FcRH5抗体の産生に関する。もちろん、当該技術分野で周知である代替的方法が、抗FcRH5抗体を調製するために用いられ得る、と意図される。例えば、適切なアミノ酸配列またはその部分は、固相技法を用いて直接ペプチド合成により産生され得る[例えば、Stewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969); Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。in vitroタンパク質合成は、手動技法を用いて、または自動化により実施され得る。自動化合成は、例えば、メーカーの使用説明書を用いるApplied Biosystems ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、成し遂げられ得る。抗FcRH5抗体の種々の部分は、化学的または酵素的方法を用いて、別個に化学的に合成され、ならびに組合されて、所望の抗FcRH5抗体を産生し得る。
1. 抗FcRH5抗体をコードするDNAの単離
抗FcRH5抗体をコードするDNAは、抗FcRH5抗体mRNAを保有し、それを検出可能レベルで発現すると思われる組織から調製されたcDNAライブラリーから得られる。したがって、ヒト抗FcRH5抗体DNAは、ヒト組織から調製されるcDNAライブラリーから好都合に得られる。抗FcRH5抗体コード遺伝子も、ゲノムライブラリーから、または既知の合成手法(例えば、自動核酸合成)により得られる。
ライブラリーは、当該遺伝子またはそれによりコードされるタンパク質を同定するよう設計されたプローブ(例えば、少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)でスクリーニングされ得る。選択プローブによるcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されたような標準手法を用いて実行され得る。抗FcRH5抗体をコードする遺伝子を単離するための代替的手段は、PCR法[Sambrook et al.、上記;Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]を用いることである。
cDNAライブラリーをスクリーニングするための技法は、当該技術分野で周知である。プローブとして選択されるオリゴヌクレオチド配列は、十分な長鎖を有し、且つ擬陽性が最小限にされるよう十分に非多義的であるべきである。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、それがスクリーニングされているライブラリー中でDNAとのハイブリダイゼーション時に検出され得るよう、ラベルされる。ラベル方法は、当該技術分野で周知であり、放射性ラベル、例えば32Pラベル化ATP、ビオチニル化または酵素ラベルの使用を包含する。ハイブリダイゼーション条件、例えば中等度の緊縮性および高緊縮性は、Sambrook et al.(上記)で提供されている。
このようなライブラリースクリーニング方法で同定される配列は、公的データベース、例えばGenBankまたは他の私的配列データベースに寄託され、利用可能である他の既知の配列と比較され、並べられ得る。分子の限定領域内または全長配列を通しての配列同一性(アミノ酸またはヌクレオチドレベルでの)は、当該技術分野で既知の、ならびに本明細書中に記載されるような方法を用いて確定され得る。
タンパク質コード配列を有する核酸は、初めて本明細書中に開示された推定アミノ酸配列を用いて、そして必要な場合は、Sambrook et al.(上記)に記載されたような慣用的プライマー伸長手法を用いて、選択cDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングして、前駆体を検出し、cDNAに逆転写されていないかもしれないmRNAの中間体をプロセシングすることにより、得られる。
2. 宿主細胞の選択および形質転換
抗FcRH5抗体産生のために本明細書中に記載される発現またはクローニングベクターで、宿主細胞はトランスフェクトされ、または形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切であるよう修飾された慣用的栄養培地中で培養される。培養条件、例えば培地、温度、pH等は、過度の実験をせずに当業者が選択し得る。概して、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコールおよび実行技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler, ed. (IRL Press, 1991)およびSambrook et al.(上記)に記されている。
染色体外としてまたは染色体統一体によりDNAが複製可能であるよう宿主中にDNAを導入することを意味する真核生物細胞トランスフェクションおよび原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl2、CaPO4、リポソーム媒介性、ポリエチレングリコール/DMSOおよび電気穿孔は、当業者に既知である。用いられる宿主細胞によって、形質転換は、このような細胞に適した標準技法を用いて実施される。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理(Sambrook et al.(上記)に記載)、または電気穿孔は、一般的に原核生物のために用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる感染は、ある小物細胞の形質転換のために用いられる(Shaw et al., Gene, 23:315 (1983)およびWO 89/05859(1989年6月29日公開))。このような細胞壁を有さない哺乳類細胞に関しては、Graham and van der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられ得る。哺乳類細胞宿主系トランスフェクションの一般的態様は、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母細胞中での形質転換は、典型的には、Van Solingen et al., J. Bact., 130:946 (1977)およびHsiao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実行される。しかしながら、細胞中にDNAを導入するための他の方法、例えば核マイクロインジェクション、電気穿孔、無傷細胞との細菌原形質体融合、あるいはポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチンによる方法も用いられ得る。哺乳類細胞を形質転換するための種々の技法に関しては、Keown et al., Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)およびMansour et al., Nature, 336:348-352 (1988).を参照されたい。
本明細書中のベクター中でDNAをクローニングし、または発現するための適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母または高等真核生物細胞が挙げられる。
a. 原核生物宿主細胞
適切な原核生物としては、古細菌および真正細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性細菌、例えば腸内細菌科、例えば大腸菌が挙げられるが、これらに限定されない。種々の大腸菌株、例えば大腸菌K12菌株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌W3110株(ATCC 27,325)およびK5 772(ATCC 53,635)が公的に入手可能である。その他の適切な原核生物宿主細胞としては、腸内細菌科、例えば大腸菌属、例えば大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えば霊菌、および赤痢菌属、ならびにバシラス属、例えば枯草菌およびバシラス・リケニフォルミス(例えば、DD 266,710(1989年4月12日公開)に開示されたバシラス・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌、根粒菌属、ビトレオシラ属、パラコッカス属、およびストレプトミセス属が挙げられる。これらの例は、限定例というよりむしろ例示的例である。菌株W3110は、組換えDNA産物発酵のための一般的宿主であるため、特に好ましい宿主または親宿主の一つである。好ましくは、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、菌株W3110(Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), pp. 1190-1219; ATCC Deposit No. 27,325)は、宿主に対して内因性であるタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子突然変異を実行するよう修飾され、このような宿主の例としては、大腸菌W3110菌株1A2(完全遺伝子型tonA を有する);大腸菌W3110菌株9E4(完全遺伝子型tonA ptr3を有する);大腸菌W3110菌株27C7(ATCC 55,244)(完全遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT kanrを有する);大腸菌W3110菌株37D6(完全遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT
rbs7 ilvG kanrを有する);大腸菌W3110菌株40B4(非カナマイシン耐性degP 欠失突然変異を有する菌株37D6である);大腸菌W3110菌株33D3(遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE) degP41 kanR を有する)(米国特許第5,639,635号)、ならびに、米国特許第4,946,783号(1990年8月7日発行)に開示された突然変異体細胞周縁プロテアーゼを有する大腸菌W3110菌株が挙げられる。他の菌株およびその誘導体、例えば大腸菌294(ATCC 31,446)、大腸菌B、大腸菌λ 1776(ATCC 31,537)および大腸菌RV308(ATCC 31,608)も適している。これらの例は、限定例というよりむしろ例示的例である。限定遺伝子型を有する上記の細菌のいずれかの誘導体を構築するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Bass et al., Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。細菌の細胞中のレプリコンの複製可能性を考慮しながら、適切な細菌を選択することが、一般的に必要である。例えば、大腸菌、セラチア、またはサルモネラ種は、レプリコンを供給するために周知のプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410が用いられる場合、宿主として適切に用いられる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきであり、そして付加的プロテアーゼ阻害剤が、望ましくは細胞培養中に組入れられ得る。代替的には、クローニングのin vitro方法、例えばPCRまたは他の核酸ポリメラーゼ連鎖反応が適している。
特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質が細菌中で産生され得る。全長抗体は、より大きな循環中半減期を有する。大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高い。細菌中での抗体断片およびポリペプチドの発現に関しては、例えばU.S. 5,648,237 (Carter et. al.)、 U.S. 5,789,199 (Joly et al.)およびU.S. 5,840,523 (Simmons et al.)(これは、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)および シグナル配列を記載する)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。発現後、抗体は可溶性分画中の大腸菌細胞ペーストから単離され、例えば、アイソタイプによってプロテインAまたはGカラムを通して精製され得る。最終精製は、例えばCHO細胞中で発現される抗体を精製するためのプロセスと同様に実行され得る。
b. 真核生物宿主細胞
原核生物のほかに、真核生物性微生物、例えば糸状真菌または酵母が、抗FcRH5抗体コードベクターのための適切なクローニングまたは発現宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)は、一般に用いられる下等真核生物宿主微生物である。他の例としては、***酵母(Schizosaccharomyces pombe (Beach and Nurse, Nature, 290: 140 [1981];EP 139,383(1985年5月2日公開));エタノール発酵酵母(Kluyveromyces )宿主(米国特許第4,943,529号;Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991))、例えばクリュイベロミセス・ラクティス(K. lactis)(MW98−8C、CBS683、CBS4574;Louvencourt et al., J. Bacteriol., 154(2):737-742 [1983])、クリュイベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、クリュイベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus )(ATCC 16,045)、クリュイベロミセス・ウィケラミ(K. wickeramii )(ATCC 24,178)、クリュイベロミセス・ワルティ(K. waltii )(ATCC 56,500)、クリュイベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum )(ATCC 36,906、 Van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990))、クリュイベロミセス・テルモトレランス(K. thermotolerans)およびクリュイベロミセス・マルキシアヌス;ヤロウィア(K. marxianus; yarrowia )(EP 402,226);メタノール資化酵母(Pichia pastoris )(EP 183,070;Sreekrishna et al., J. Basic Microbiol., 28:265-278 [1988]);カンジダ属;トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesia )(EP 244,234);アカパンカビ(Neurospora crassa )(Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 [1979]);シュワニオミセス属、例えばシュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis )(EP 394,538(1990年10月31日公開);および糸状真菌、例えばアカパンカビ属、ペニシリン属、トリポクラジウム属(WO 91/00357(1991年1月10日公開))およびアスペルギルス属宿主、例えばアスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans )(Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 [1983];Tilburn et al., Gene, 26:205-221 [1983];Yelton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])およびクロカビ(A. niger )(Kelly and Hynes, EMBO J., 4:475-479 [1985])が挙げられる。メタノール資化酵母は、本明細書中で適しており、例としては、ハンセヌラ、カンジダ、クロエケラ、ピキア、サッカロミセス、トルロプシスおよびロドトルラからなる属から選択されるメタノール上での増殖が可能な酵母が挙げられるが、これらに限定されない。このクラスの酵母の例である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記されている。
グリコシル化抗FcRH5抗体の発現のための適切な宿主細胞は、多細胞生物から得られる。無脊椎動物細胞の例としては、昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2およびヨトウガSf9、ならびに植物細胞、例えばワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコが挙げられる。ヨトウガ(Spodoptera frugiperda )(キャタピラー)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti (カ))、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus (カ))、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster (ショウジョウバエ))、およびカイコガ(Bombyx mori )のような宿主からの多数のバキュロウイルス系統および変異体、ならびに対応する許容昆虫宿主が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス系統、例えばキンウワバ科のアウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica )NPVのL−1変異体、およびカイコガNPVのBm−5系統は、公的に利用可能であり、このようなウイルスは、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、本発明にしたがって本明細書中のウイルスとして用いられ得る。
しかしながら、最大の関心は脊椎動物細胞に向けられ、培養(組織培養)中の脊椎動物細胞の増殖は、慣例的手法になっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CVI株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養中での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977));仔ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、 Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウス・セルトリ細胞(TM4、 Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC−5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫株(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗FcRH5抗体産生のために上記発現またはクローニングベクターで形質転換され、そして、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切であるよう改質された慣用的栄養培地中で培養される。
3. 複製可能ベクターの選択および使用
本発明の抗体の組換え産生のために、それをコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)が単離され、さらなるクローニングのために(DNAの増幅)または発現のために、複製可能ベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、慣用的手法を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、配列決定される。多数のベクターが利用可能である。ベクターの選択は、一部は、用いられる宿主細胞によって決まる。一般的に、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般的に哺乳類)起源のものである。
ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス粒子またはファージの形態であり得る。適切な核酸配列は、種々の手法によりベクター中に挿入され得る。概して、DNAは、当該技術分野で既知の技法を用いて、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)中に挿入される。ベクター構成成分としては、一般的に、シグナル配列、複製の起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー素子、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。これらの構成成分のうちの1つ以上を含有する適切なベクターの構築は、当業者に既知である標準結紮技法を用いる。
FcRH5は、直接的にだけでなく、シグナル配列または、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的開裂部位を有する他のポリペプチドであり得る非相同ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、組換え的に産生され得る。概して、シグナル配列は、ベクターの一構成成分であり得るし、あるいはそれは、ベクター中に挿入される抗FcRH5抗体コードDNAの一部であり得る。シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性腸毒素IIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であり得る。酵母分泌に関して、シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(例えば、サッカロミセスおよびクリュイベロミセスα因子リーダー(後者は、米国特許第5,010,182号に記載されている))、または酸性ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス・グルコアミラーゼリーダー(EP362,179(1990年4月4日公開))、あるいはWO 90/13646(1990年11月15日公開)であり得る。哺乳類細胞発現において、哺乳類シグナル配列は、同一または関連種の分泌ポリペプチドからのシグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌を指図するために用いられ得る。
a. 原核生物宿主細胞
本発明の抗体のポリペプチド構成成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準組換え技法を用いて得られる。所望のポリヌクレオチド配列は、抗体産生細胞、例えばハイブリドーマ細胞から単離され、配列決定され得る。代替的には、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技術を用いて合成され得る。一旦得られたら、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主中で非相同ポリヌクレオチドを複製し、発現しうる組換えベクター中に挿入される。利用可能であり、当該技術分野で既知の多数のベクターが、本発明の目的のために用いられ得る。適切なベクターの選択は、主に、ベクター中に挿入されるべき核酸のサイズ、ならびにベクターで形質転換されるべき特定宿主細胞に依っている。各ベクターは、その機能(非相同ポリヌクレオチドの増幅または発現、あるいは両方)、ならびにそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性によって、種々の構成成分を含有する。
概して、宿主細胞と適合性である種から得られるレプリコンおよび対照配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主と関連して用いられる。発現およびクローニングベクターはともに、1つ以上の選択宿主細胞中でベクターを複製させる核酸配列を含有し、ならびに、形質転換細胞中での表現型選択を提供し得る配列を作製する。このような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスに関して周知である。アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供するするプラスミドpBR322からの複製の起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド起点は酵母のために適しており、そして種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳類細胞中のクローニングベクターに有用である。pBR322、その誘導体、あるいは他の微生物プラスミドまたはバクテリオファージも、内因性タンパク質の発現のために微生物により用いられ得るプロモーターを、含有するか、または含有するよう修飾され得る。特定の抗体の発現のために用いられるpBR322誘導体の例は、米国特許第5,648,237号(Carter等)に詳細に記載されている。
さらに、レプリコン、および宿主微生物と適合性である対照配列を含有するファージベクターは、これらの宿主と関連した形質転換ベクターとして用いられ得る。例えば、λGEM.TM.−11のようなバクテリオファージは、大腸菌LE392のような感受性宿主細胞を形質転換するために用いられ得る組換えベクターを作製するのに利用され得る。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター−シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調整するシストロンに対して上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、誘導性と構成性の2つのクラスに属する。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば栄養素の存在または非存在、あるいは温度の変化に応答してその制御下でシストロンの増大レベルの転写を開始するプロモーターである。
種々の潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。選択プロモーターは、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを取り出し、単離プロモーター配列を本発明のベクター中に挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAと操作可能的に連結され得る。ネイティブプロモーター配列および多数の非相同プロモーターはともに、標的遺伝子の増幅および/または発現を指図するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、ネイティブ標的ポリペプチドプロモーターと比較して、発現標的遺伝子のより大きな転写およびより高い収率を一般的に可能にするため、非相同プロモーターが利用される。
種々の潜在的宿主細胞により認識されるプロモーターが周知である。原核生物宿主とともに用いるのに適したプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系[Chang et al., Nature, 275:615 (1978);Goeddel et al., Nature, 281:544 (1979)]、アルカリ性ホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980);EP 36,776]およびハイブリッドプロモーター、例えばtac[deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]またはtrcプロモーターが挙げられる。細菌系で用いるためのプロモーターは、FcRH5抗体をコードするDNAと操作可能的に連結されるシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列も含有する。しかしながら、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば、他の既知の細菌またはファージプロモーター)も同様に適している。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それにより、当業者は、リンカーまたはアダプタを用いて、それらを、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロン(Siebenlist et al. (1980) Cell 20: 269)と操作可能的に結紮して、任意の必要な制限部位を供給することが出来る。
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を通した発現ポリペプチドの転位を指図する分泌シグナル配列構成成分を含む。概して、シグナル配列はベクターの一構成成分であり得るし、あるいはそれは、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものであるべきである。非相同ポリペプチドに固有のシグナル配列を認識もプロセシングもしない原核生物宿主細胞に関しては、シグナル配列は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性腸毒素II(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。本発明の一実施形態では、発現系の両シストロンに用いられるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異体である。
別の態様では、本発明による免疫グロブリンの産生は宿主細胞の細胞質中で生じ、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その点で、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、発現され、フォールディングされ、集合されて、細胞質内に機能性免疫グロブリンを形成する。ある宿主系統(例えば大腸菌trxB株)は、ジスルフィド結合形成に好都合な細胞質状態を提供し、それにより発現タンパク質サブユニットの適正なフォールディングおよびアセンブリーを可能にする(Proba and Pluckthun Gene, 159:203 (1995))。
本発明は、本発明の分泌され且つ適性に集合された抗体の収率を最大にするために、発現ポリペプチド構成成分の定量的比率が調整され得る発現系を提供する。このような調整は、少なくとも一部は、ポリペプチド構成成分に関する翻訳強度を同時的に調整することにより成し遂げられる。
翻訳強度を調整するための一技法は、米国特許第5,840,523号(Simmons等)に開示されている。それは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異体を利用する。所定のTIRに関して、一連のアミノ酸または核酸配列変異体が、一連の翻訳強度で作製され、それにより、この因子を特定鎖の所望の発現レベルに調整するための便利な手段を提供する。TIR変異体は、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化を生じる慣用的突然変異誘発技法により生成され得るが、しかしヌクレオチド配列における無症候性変化が好ましい。TIRにおける変更としては、例えば、シグナル配列における変更とともに、シャイン・ダルガーノ配列の数または間隔における変更が挙げられる。突然変異体シグナル配列を生成するための一方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変えない(すなわち、変化は無症候性である)コード配列の開始での「コドンバンク」の生成である。これは、各コドンの第三ヌクレオチド位置を変えることにより成し遂げられ得る;さらに、いくつかのアミノ酸、例えばロイシン、セリンおよびアルギニンは、バンクを作製するに際して複雑性を付加し得る多重第一および第二位置を有する。突然変異誘発のこの方法は、Yansura et al. (1992) METHODS: A Companion to Methods in Enzymol. 4:151-158に詳細に記載されている。
好ましくは、一組のベクターは、その中の各シストロンに関して一連のTIR強度で生成される。この限定組は、種々のTIR強度組合せ下で、各鎖の発現レベルならびに所望の抗体産物の収率の比較を提供する。TIR強度は、米国特許第5,840,523号(Simmons等)に詳細に記載されるようなレポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定され得る。翻訳強度比較に基づいて、所望の個々のTIRは、本発明の発現ベクター構築物に組合せられるよう選択される。
b.真核生物宿主細胞
ベクター構成成分としては、一般的に、以下のもののうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない:シグナル配列、複製の起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー素子、プロモーター、および転写終結配列。
(1)シグナル配列構成成分
真核生物宿主細胞中で用いるためのベクターは、シグナル配列、あるいは成熟タンパク質または当該ポリペプチドのN末端に特異的開裂部位を有する他のポリペプチドも含有し得る。選択される非相同シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。哺乳類細胞発現において、哺乳類シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
このような前駆体領域に関するDNAは、抗体をコードするDNAと、読取り枠内で結紮される。
(2)複製の起点
一般的に、複製の起点構成成分は、哺乳類発現ベクターに必要とされない。例えば、SV40起点は、典型的には、それが初期プロモーターを含有するだけのために、用いられ得る。
(3)選択遺伝子構成成分
発現およびクローニングベクターは、典型的には、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有する。典型的選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与し、(b)栄養要求性欠乏を補足し、あるいは(c)複合場位置から得られない重要栄養素を供給するタンパク質をコードし、例としてはバシラス属に関するD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を阻止する薬剤を利用する。非相同遺伝子で首尾よく形質転換される細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって、選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例は、薬剤 ネオマイシン、ミコフェノール酸およびヒグロマイシンを用いる。
哺乳類細胞に関する適切な選択可能マーカーの例は、抗FcRH5抗体コード核酸、例えばDHFRまたはチミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンでアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等を取り上げるための細胞構成成分の同定を可能にするものである。野生型DHFRが用いられる場合の適切な宿主細胞は、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)により記載されたように調製され、増殖されるDHFR活性を欠くCHO細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)である。例えば、DHFR選択遺伝子でトランスフェクトされる細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培地中で形質転換体の全てを培養することにより、先ず同定される。代替的には、抗体、野生型DHFR、タンパク質、ならびに別の選択可能マーカー、例えばアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換されるかまたは同時形質転換される宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418のような選択可能マーカーに関する選択作用物質を含有する培地中での細胞増殖により、選択され得る(米国特許第4,965,199号参照)。
酵母で用いるための適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRP7中に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb et al., Nature, 282:39 (1979); Kingsman et al., Gene, 7:141 (1979);Tschemper et al., Gene, 10:157 (1980)]。trp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の突然変異株(例えば、ATCC番号 44076またはPEP−1)に関する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
(4)プロモーター構成成分
発現およびクローニングベクターは、通常は、抗FcRH5抗体コード核酸配列と操作可能的に連結されるプロモーターを含有して、mRNA合成を指図する。種々の潜在的宿主細胞により認識されるプロモーターは、周知である。
事実上すべての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置する富AT領域を有する。多数の遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nは任意のヌクレオチド)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端はAATAAA配列であり、これは、コード配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得る。これらの配列の全てが、真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。
酵母宿主とともに用いるための適切なプロモーター配列の例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ[Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]または他の解糖酵素[Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900 (1978)]、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートでカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼに関するプロモーターが挙げられる。
増殖条件により制御される転写の付加的利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連した分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素に関するプロモーター領域である。酵母発現に用いるための適切なベクターおよびプロモーターは、欧州特許第73,657号にさらに記載されている。
哺乳類宿主細胞中のベクターからの抗FcRH5抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(英国特許第2,211,504号、1989年7月5日公開)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、鳥肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから、非相同哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、ならびに熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより、制御されるが、但し、このようなプロモーターは宿主細胞系と適合性である。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、複製のSV40ウイルス起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの即初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを用いる哺乳類宿主中のDNAを発現する系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞中のヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関しては、Reyes et al., Nature 297:598-601 (1982)も参照されたい。代替的には、ラウス肉腫ウイルス長末端反復が、プロモーターとして用いられ得る。
(5)エンハンサー素子構成成分
高等真核生物による抗FcRH5抗体をコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することにより増大され得る。エンハンサーは、その転写を増大するためにプロモーター上で作用する、通常は約10〜300bpのDNAのシス作用素子である。多数のエンハンサー配列が、目下、哺乳類遺伝子から既知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトタンパク質およびインスリン)。しかしながら、典型的には、真核生物細胞ウイルスからのエンハンサーを用いる。例としては、複製の起点の後期側上のSV40エンハンサー(bp 100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側上のポリオーマエンハンサー、およびあでのウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサー素子に関しては、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)も参照されたい。エンハンサーは、抗FcRH5抗体コード配列に対して5’または3’位置でベクターにスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’部位に位置する。
(6)転写終結構成成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物からの有核細胞)中で用いられる発現ベクターは、転写の終結のために、ならびにmRNAを安定化するために必要な配列も含有する。このような配列は、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’、時として3’非翻訳領域から一般に入手可能である。これらの領域は、抗FcRH5抗体をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。有用な転写終結構成成分の1つは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026、ならびにそこに開示された発現ベクターを参照されたい。
組換え脊椎動物細胞培養中での抗FcRH5抗体の合成に適応するために適したさらに他の方法、ベクターおよび宿主細胞は、Gething et al., Nature, 293:620-625 (1981);Mantei et al., Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117,060号;および欧州特許第117,058号に記載されている。
4. 宿主細胞の培養
本発明の抗FcRH5抗体を産生するために用いられる宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。
a. 原核生物宿主細胞
本発明のポリペプチドを産生するために用いられる原核生物細胞は、当該技術分野で既知の、そして選択宿主細胞の培養に適した培地中で増殖される。適切な培地の例としては、ルリアブロス(LB)+必要な栄養素補足物が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は、発現ベクターの構築に基づいて選ばれる選択作用物質も含有して、発現ベクターを含有する原核生物細胞の増殖を選択的に可能にする。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために培地に付加される。
炭素、窒素および無機リン酸塩供給源のほかの任意の必要な補足物も適切な濃度で含まれ、単独で、あるいは別の補足物または培地、例えば複合窒素供給源との混合物として導入される。任意に、培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコラート、ジチオエリトリトールおよびジチオトレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含有し得る。
原核生物宿主細胞は、適切な温度で培養される。例えば大腸菌増殖に関しては、好ましい温度は約20℃〜約39℃、さらに好ましくは約25℃〜約37℃の範囲、さらに好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物によって、約5〜約9の範囲の任意のpHである。大腸菌に関して、pHは、好ましくは約6.8〜約7.4、さらに好ましくは約7.0である。
誘導性プロモーターが本発明の発現ベクター中で用いられる場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。本発明の一態様では、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写を制御するために用いられる。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸塩制限培地中で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al., J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147参照)。当該技術分野で既知であるように、用いられるベクター構築物によって、種々の他の誘導物質が用いられ得る。
一実施形態では、本発明の発現ポリペプチドは、宿主細胞の周縁質中で分泌され、そこから回収される。タンパク質回収は典型的には、一般的に浸透圧性ショック、音波処理または溶解のような手段により微生物を崩壊することを伴う。一旦細胞が崩壊されると、細胞破砕屑または全細胞が、遠心分離または濾過により除去される。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによりさらに精製され得る。代替的には、タンパク質は培地中に運搬され、そこで単離され得る。細胞は培養から除去され、培養上清が濾過されて、生成されたタンパク質のさらなる精製のために濃縮される。発現ポリペプチドは、一般に既知の方法、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロット検定を用いて同定され得る。
本発明の一態様では、抗体産生は、発酵工程により大量に実行される。種々の大規模流加回分発酵手法は、組換えタンパク質の産生のために利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000〜100,000リットルの容量を有する。これらの発酵器は、酸素および栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分布させるための撹拌器羽根車を使用する。小規模発酵は、一般的に、容積で約100リットル以下であり、そして約1リットル〜約100リットルの範囲であり得る発酵器中での発酵を指す。
発酵工程において、タンパク質発現の誘導は、典型的には、適切な条件下で、所望の密度、例えば約180〜220のOD550に細胞が増殖した後に開始され、この段階で、細胞は初期定常期である。当該技術分野で既知であり、そして上記されたように、用いられるベクター構築物に従って、種々の誘導物質が用いられ得る。細胞は、誘導前に短期間増殖され得る。細胞は、通常は、約12〜50時間誘導されるが、しかしより長いかまたはより短い誘導時間が用いられ得る。
本発明のポリペプチドの産生収率および質を改良するために、種々の発酵条件が改質され得る。例えば、分泌抗体ポリペプチドの適正なアセンブリーおよびフォールディングを改良するために、シャペロンタンパク質、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbDおよび/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロピル シス、トランス−イソメラーゼ)を過剰発現する付加的ベクターが用いられて、宿主原核生物細胞を同時形質転換し得る。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞中で産生される異種タンパク質の適正なフォールディングおよび溶解度を助長することが実証されている(Chen et al. (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;米国特許第6,083,715号(Georgiou等);米国特許第6,027,888号(Georgiou等);Bothmann and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie et al. (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210))。
発現異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性であるもの)のタンパク質分解を最小限にするために、タンパク質分解酵素を欠くある宿主株が本発明のために用いられ得る。例えば、宿主細胞株は、既知の細菌プロテアーゼ、例えばプロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびその組合せをコードする遺伝子における遺伝子突然変異(複数可)を実行するよう修飾され得る。いくつかの大腸菌プロテアーゼ欠乏株が利用可能であり、例えば、Joly et al. (1998)、上記;米国特許第5,264,365号(Georgiou等);米国特許第5,508,192号(Georgiou等);Hara et al., Microbial Drug Resistance, 2:63-72 (1996)に記載されている。
一実施形態では、タンパク質分解酵素を欠き、1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌株は、本発明の発現系における宿主細胞として用いられる。
b. 真核生物宿主細胞
市販の培地、例えばハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPM1−1640(Sigma)およびダルベッコの変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)は、宿主細胞を培養するために適している。さらに、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979)、 Barnes et al., Anal. Biochem.102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;または第5,122,469号;WO 90/03430;WO 87/00195;または米国特許Re.30,985に記載された培地のいずれかが、宿主細胞のための培地として用いられ得る。これらの培地のいずれかは、必要な場合、ホルモンおよび/またはその他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮細胞成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗体(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(通常はマイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは等価エネルギー源を補足され得る。任意の他の必要な補足物も、当業者に既知である適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば温度、pH等は、発現のために選択される宿主細胞とともに予め用いられるものであり、当業者には明らかである。
5. 遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子増幅および/または発現は、例えば、mRNAの転写を定量するための慣用的サザンブロッティング、ノーザンブロッティング[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980)]、ドットブロッティング(DNA分析)、または本明細書中で提供される配列に基づいて適切にラベルされたプローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより、直接的に試料中で測定され得る。代替的には、特定の二重鎖、例えばDNA二重鎖、RNA二重鎖およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖を認識し得る抗体が用いられ得る。抗体は、次いで、ラベルされ、検定が実行されるが、この場合、表面上の二重鎖の形成時に、二重鎖と結合される抗体の存在が検出され得るよう、二重鎖は表面と結合される。
遺伝子発現は、代替的には、免疫学的方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織化学的染色、ならびに細胞培養または体液の検定により測定されて、遺伝子産物の発現を直接的に定量し得る。免疫組織化学的染色および/または試料液の検定のために有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得るし、任意の哺乳動物で調製され得る。便宜上、抗体は、ネイティブ配列FcRH5ポリペプチドに対して、または本明細書中に提供されるDNA配列を基礎にした合成ペプチドに対して、あるいはFcRH5DNAと融合され、特定抗体エピトープをコードする外因性配列に対して、調製され得る。
6. 抗FcRH5抗体の精製
抗FcRH5抗体の形態は、培地から、または宿主細胞溶解物から回収され得る。膜結合される場合、それは、適切な洗剤溶液(例えば、トリトン−X100)を用いて、または酵素的開裂により、膜から放出され得る。抗FcRH5抗体の発現に用いられる細胞は、種々の物理的または化学的手段、例えば凍結−解凍周期、音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤により崩壊される。
組換え細胞タンパク質またはポリペプチドから抗FcRH5抗体を精製することが望ましい。以下の手法は、適切な精製手法の例である:イオン交換カラム上での分別;エタノール沈降;逆相HPLC;シリカ上または陽イオン交換樹脂、例えばDEAE上でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈降;例えばセファデックスG−75を用いたゲル濾過;IgGのような夾雑物を除去するためのプロテインAセファロースカラム;ならびにエピトープ標的化形態の抗FcRH5抗体を結合するための金属キレート化カラム。タンパク質精製の種々の方法が用いられ、このような方法は、当該技術分野で既知であり、例えばDeutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載されている。選択される精製ステップ(複数可)は、例えば、用いられる精製工程の性質ならびに産生される特定の抗FcRH5抗体に依っている。
組換え技法を用いる場合、抗体は、細胞膜周辺腔中で細胞内で産生され得るし、あるいは培地中に直接分泌され得る。抗体が、第一ステップとして、細胞内で産生される場合、微粒子破砕屑(宿主細胞または溶解断片)は、例えば遠心分離または限外濾過により除去される。Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手法を記載する。要するに、細胞ペーストは、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間掛けて解凍される。細胞破砕屑は、遠心分離により除去され得る。抗体が培地中に分泌される場合、このような発現系からの上清は、一般的に、先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮される。プロテアーゼ阻害剤、例えばPMSFを、タンパク質分解を抑制するために前記ステップのいずれにも含めることができ、抗生物質を、偶発的夾雑物の増殖を防止するために含めることができる。
細胞から調製される抗体組成物は、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製され得るし、アフィニティークロマトグラフィーは好ましい精製技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依っている。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖を基礎にした抗体を精製するために用いられ得る(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプに関して、ならびにヒトγ3に関して推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、最も高頻度であるのはアガロースであるが、しかし他のマトリックスが利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースを用いて達成され得るより早い流動速度およびより短いプロセシング時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製のために有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えばイオン交換カラム上での分別、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリン・セファロース(商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)上でのクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈降も、回収される抗体によって利用可能である。
任意の予備精製ステップ(複数可)後、当該抗体および夾雑物を含む混合物は、約2.5〜4.5のpHで溶離緩衝液を用いて低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付され得るし、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で実施され得る。
G. 薬学的処方物
本発明の抗体−薬剤接合体(ADC)は、処置される症状に適した任意の経路で投与され得る。ADCは、典型的には、非経口的に、すなわち、注入、皮下、筋内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外に投与される。
これらの癌を処置するために、一実施形態では、静脈内注入を介して抗体−薬剤接合体が投与される。注入を介して投与される投薬量は、約1μg/m2〜約10,000μg/m2/用量、一般的には、1、2、3または4用量の全体に関して、1回用量投与/週の範囲である。代替的には、投薬量範囲は、約1μg/m2〜約1000μg/m2、約1μg/m2〜約800μg/m2、約1μg/m2〜約600μg/m2、約1μg/m2〜約400μg/m2、約10 μg/m2〜約500μg/m2、約10μg/m2〜約300μg/m2、約10μg/m2〜約200μg/m2、および約1μg/m2〜約200μg/m2のものである。用量投与は、疾患の症候を軽減するかまたは緩和するために、1回/日、1回/週、多数回/週、しかし1回未満/日、多数回/月、しかし1回未満/日、多数回/月、しかし1回未満/週、1回/月または間欠的に施され得る。投与は、処置されている腫瘍あるいはリンパ腫、白血病の症候の寛解まで、開示された間隔のいずれかで継続し得る。投与は、症候の寛解または軽減が達成された後、継続し得るが、この場合、このような寛解または軽減はこのような継続投与により延長される。
本発明は、自己免疫疾患の緩和方法であって、自己免疫疾患に罹患している患者に、治療的有効量の前記実施形態のいずれか1つのヒト化13G9抗体−薬剤接合体を投与することを包含する方法も提供する。好ましい実施形態では、抗体は、静脈内にまたは皮下に投与される。抗体−薬剤接合体は、約1μg/m2〜約100mg/m2/用量投与の範囲の投薬量で静脈内投与され、特定の一実施形態では、投薬量は1μg/m2〜約500μg/m2である。用量投与は、疾患の症候を軽減するかまたは緩和するために、1回/日、1回/週、多数回/週、しかし1回未満/日、多数回/月、しかし1回未満/日、多数回/月、しかし1回未満/週、1回/月または間欠的に施され得る。投与は、処置されている自己免疫疾患の症候の軽減または緩和まで、開示された間隔のいずれかで継続し得る。投与は、症候の軽減または緩和が達成された後、継続し得るが、この場合、このような緩和または軽減はこのような継続投与により延長される。
本発明は、B細胞障害の治療方法であって、B細胞障害、例えばB細胞増殖性障害(例えば、リンパ腫および白血病(これらに限定されない))または自己免疫疾患に罹患している患者に、治療的有効量の前記実施形態のいずれかのヒト化13G9抗体を投与することを包含する方法を提供するが、この場合、抗体は細胞傷害性分子または検出可能分子と接合されない。抗体は、典型的には、約1μg/m2〜約1000mg/m2の投与量範囲で投与される。
一態様では、本発明はさらに、本発明の少なくとも1つの抗FcRH5抗体、および/または少なくとも1つのその免疫接合体および/または少なくとも1つの本発明の抗FcRH5抗体−薬剤接合体を含む薬学的処方物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的処方物は、(1)本発明の抗体および/またはその免疫接合体、ならびに(2)製薬上許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態では、薬学的処方物は、(1)本発明の抗体および/またはその免疫接合体、そして任意に、(2)少なくとも1つの付加的治療薬を含む。付加的治療薬としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。ADCは、典型的には、非経口的に、すなわち、注入、皮下、筋内、静脈内、皮内、くも膜下腔および硬膜外に投与される。
本発明に従って用いられる、抗FcRH5抗体またはFcRH5免疫接合体を含む治療用処方物は、所望の純度を有する活性成分(例えば、抗体または免疫接合体)を、任意の製薬上許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で、貯蔵のために調製される。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、例としては、緩衝剤、例えば酢酸塩、トリス、リン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスタミン、アルギニンまたはリシン;単糖、二糖およびその他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;等張剤、例えばトレハロースおよび塩化ナトリウム;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;界面活性剤、例えばポリソルベート;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(登録商標)、プルロニック(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。in vivo投与のために用いられるべき薬学的処方物は、一般的に滅菌性である。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に成し遂げられる。
本明細書中の処方物は、処置されている特定の適応症のために必要な場合、1つより多い活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。例えば、抗FcRH5抗体のほかに、一処方物中に、付加的抗体、例えば、FcRH5ポリペプチド上の異なるエピトープを結合する第二抗FcRH5抗体、あるいはいくつかの他の標的、例えば特定の癌の増殖に影響を及ぼす増殖因子に対する抗体を含むことが望ましい。代替的には、または付加的には、組成物はさらに、化学療法薬、細胞傷害性物質、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤および/または心臓保護剤を含み得る。このような分子は、意図される目的のために有効である量で、組合せて適切に存在する。
活性成分も、例えばコアセルベーション技法により、または界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)に、マクロエマルション中にも入れられ得る。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
徐放性調製物が、調製され得る。徐放性調製物の適切な例としては、抗体を含有する個体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、造形品、例えば皮膜またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートからなる注入可能マイクロスフェア)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニル酢酸および乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日を超える間、分子の放出を可能にするが、一方、ある種のヒドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。封入免疫グロブリンが長時間身体中に残存する場合、それらは、37℃で水分に曝露された結果として変性するかまたは凝集して、生物学的活性を損失し、免疫原性が変わることがある。関与する機序によって、安定化のための合理的戦略が考案され得る。例えば、凝集機序がチオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合形成であることが発見された場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、含水量を制御し、適切な添加剤を用い、そして特定ポリマーマトリックス組成物を開発することにより、安定化が達成され得る。
抗体は、標的細胞/組織への送達のための任意の適切な形態で処方され得る。例えば、抗体は、免疫リポソームとして処方され得る。「リポソーム」は、哺乳動物に薬剤を送達するために有用である種々の型の脂質、リン脂質および/または界面活性剤からなる小型小胞である。リポソームの構成成分は、一般に、生物学的膜の脂質配列と同様に、二重膜形成で整列される。抗体を含有するリポソームは、当該技術分野で既知の方法、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;およびWO97/38731(1997年10月23日公開)に記載された方法により調製される。循環時間増大を示すリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、限定孔サイズのフィルターを通して押出されて、所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明の抗体のFab’断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin et al., J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されたようなリポソームと接合され得る。化学療法薬は、任意に、リポソーム内に含有される(Gabizon et al., J. National Cancer Inst. 81(19):1484 (1989)参照)。
in vivo投与のために用いられるべき処方物は、滅菌性でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して容易に成し遂げられる。
H. 抗FcRH5抗体による処置
癌におけるFcRH5発現を確定するために、種々の検出検定が利用可能である。一実施形態では、FcRH5ポリペプチド過剰発現は、免疫組織化学(IHC)により分析され得る。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片をIHC検定に付して、以下のようなFcRH5タンパク質染色強度判定基準を付与される:
スコア0 :染色が観察されないか、または膜染色が、腫瘍細胞の10%未満で観察される。
スコア1+ :かすかな/わずかに認知可能な膜染色が、腫瘍細胞の10%より多くで観察される。細胞は、それらの膜の一部で染色されるだけである。
スコア2+ :弱〜中等度の完全膜染色が、腫瘍細胞の10%より多くで観察される。
スコア3+ :中等度〜強度の完全膜染色が、腫瘍細胞の10%より多くで観察される。
FcRH5ポリペプチド発現に関して0または1+スコアを有する腫瘍はFcRH5を過剰発現しないと特性化され、一方、2+または3+スコアを有する腫瘍はFcRH5を過剰発現すると特性化され得る。
代替的には、または付加的には、FISH検定、例えばインフォーム(登録商標)(販売:Ventana, Arizona)またはパスビジョン(登録商標)(Vysis, Illinois)は、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織に関して実行されて、腫瘍中のFcRH5過剰発現の程度(もしあれば)を確定し得る。
FcRH5過剰発現または増幅は、in vivo検出検定を用いて、例えば検出されるべき分子を結合し、検出可能ラベル(例えば、放射性同位体または蛍光ラベル)でタグ化される分子(例えば、抗体)を投与し、そしてラベルの局財政に関して患者を外部スキャニングすることにより、評価され得る。
上記のように、本発明の抗FcRH5抗体は、種々の非治療用途を有する。本発明の抗FcRH5抗体は、FcRH5ポリペプチド発現癌の段階分けのために有用であり得る(例えば、放射線画像処理)。抗体は、他の細胞の精製における一ステップとして、混合細胞の集団からFcRH5発現細胞を殺害し、排除するために、例えばELISAまたはウェスタンブロットにおけるin vitroでのFcRH5ポリペプチドの検出または定量のための細胞からのFcRH5ポリペプチドの精製または免疫沈降にも有用である。
一般に、癌の段階によって、癌治療は、以下の療法のうちの1つまたはその組合せを包含する:癌性組織を除去するための外科手術、放射線療法および化学療法。抗FcRH5抗体療法は、化学療法の毒性および副作用に十分に耐容しない高齢患者において、そして放射線療法が有用性限定を示す転移疾患において、特に望ましい。本発明の腫瘍ターゲッティング抗FcRH5抗体は、疾患の初期診断時または再発中に、FcRH5発現癌を軽減するために有用である。治療的適用に関して、抗FcRH5抗体は、単独で、あるいは、例えばホルモン、抗血管新生薬または放射能ラベル化合物との、もしくは外科手術、低温療法、および/または放射線療法との併用療法で用いられ得る。抗FcRH5抗体処置は、他の形態の慣用的療法と一緒に、慣用的療法と連続して、その前に、またはその後に、施され得る。化学療法薬、例えばタキソテレ(登録商標)(ドセタキセル)、タキソール(登録商標)(パクリタキセル)、エストラムスチンおよびミトキサントロンは、癌を治療するのに、特に危険度の低い患者において、用いられる。癌を治療または緩和するための本発明のこの方法では、癌患者は、前記化学療法薬のうちの1つ以上による処置と一緒に、抗FcRH5抗体を投与され得る。特に、パクリタキセルおよび改質誘導体との併用療法(例えば欧州特許第0600517号参照)が意図される。抗FcRH5抗体は、治療的有効用量の化学療法薬とともに投与される。別の実施形態では、抗FcRH5抗体は、化学療法と一緒に施されて、化学療法薬、例えばパクリタキセルの活性および効力を増強する。医師用添付文書集(PDR)は、種々の癌の処置に用いられてきたこれらの薬剤の投与量を開示する。治療的に有効なこれらの前記化学療法薬の用量投与レジメンおよび投与量は、処置されている特定の癌、疾患の程度、ならびに当業者の意思に周知の他の因子に依っており、医師により決定され得る。
特定の一実施形態では、細胞傷害性物質と接合された抗FcRH5抗体を含む接合体が患者に投与される。好ましくは、FcRH5タンパク質と結合された免疫接合体は、細胞により内在化されて、それが結合する癌細胞を殺害するに際して免疫接合体の治療効力を増大する。好ましい一実施形態では、細胞傷害性物質は、癌細胞中の核酸を標的にするかまたはそれを妨害する。このような細胞傷害性物質の例は上記されており、例えばマイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼおよびDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
抗FcRH5抗体またはその毒素接合体は、既知の方法、例えば静脈内投与により、例えばボーラス投与として、または一定時間に亘る連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入経路により、ヒト患者に投与される。抗体の静脈内または皮下投与が好ましい。
ex-vivo戦略も、治療的適用のために用いられ得る。ex-vivo戦略は、FcRH5アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドを用いて対象から得られる細胞をトランスフェクトするかまたは形質導入することを包含する。次いで、トランスフェクト化または形質導入化細胞は、対象に戻される。細胞は、広範囲の型のうちのいずれか、例えば、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞またはB細胞)、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイトまたは筋細胞(これらに限定されない)であり得る。
例えば、FcRH5アンタゴニストが抗体または免疫接合体である場合、アンタゴニストは、任意の適切な手段により、例えば、非経口、皮下、腹腔内、肺内および鼻内、そして局所的免疫抑制治療のために所望される場合には病巣内投与により、投与される。非経口的注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が挙げられる。さらに、アンタゴニストは、特に抗体の用量を減少して、パルス注入により適切に投与される。好ましくは、用量投与は、一部は投与が短期であるかまたは長期であるかによって、注射により、最も好ましくは静脈内または皮下注射により施される。
別の例では、FcRH5アンタゴニスト化合物は、局所的に、例えば障害または腫瘍の位置が許す場合は、直接注射により投与され、そして注射は定期的に反復され得る。FcRH5アンタゴニストはさらにまた、局所的再発または転移を防止するかまたは低減するために、対象に全身的に、あるいは腫瘍細胞に直接的に、例えば腫瘍または腫瘍の外科的切除後の腫瘍床に送達され得る。
組合せた治療薬の投与は、典型的には、限定期間(通常は、選択される組合せによって、分、時間、日または週)実行される。併用療法は、逐次的方法でのこれらの治療薬の投与(すなわち、この場合、各治療薬は異なる時間に投与される)、ならびに実質的に同時方式での、これらの治療薬、または治療薬のうちの少なくとも2つの投与を包含するよう意図される。
治療薬は、同一経路により、または異なる経路により、投与され得る。例えば、組合せにおける抗FcRH5抗体または免疫接合体は静脈内注射により投与され得、一方組合せた化学療法薬は経口的に投与され得る。代替的には、例えば、特定の治療薬によって、治療薬の両方が経口的に投与されるか、あるいは両治療薬は静脈内注射により投与され得る。治療薬が投与される順序も、具体的作用物質によって変わる。
例えば1つ以上の別個の投与によるか、あるいは連続注入によるかにかかわらず、疾患の種類および重症度によって、約1μg/kg〜100mg/kgの各治療薬が、患者への投与のための初回候補投与量である。典型的1日投与量は、上記因子によって、約1μg/kg〜約100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。数日間またはそれ以上に亘る反復投与に関しては、条件によって、上記の方法により測定した場合に癌が処置されるまで、処置は持続される。しかしながら、他の投与量レジメンが有用なこともある。
本発明の適用は、遺伝子療法による抗FcRH5抗体の投与を意図する。例えば、細胞内抗体を産生するための遺伝子療法の使用に関するWO96/07321(1996年3月14日公開)を参照されたい。
他の治療レジメンが、抗FcRH5抗体の投与と併用され得る。併用投与としては、別個の処方物または単一薬学的処方物を用いる同時投与、ならびにいずれかの順序での連続投与(この場合、好ましくは、その間に、両方の(またはすべての)活性作用物質が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間がある)が挙げられる。好ましくは、このような併用療法は、相乗的治療効果を生じる。
複数可の抗FcRH5抗体の投与と、特定の癌に関連した別の腫瘍抗原に対して向けられる抗体の投与を組合せることも望ましい。
別の実施形態では、本発明の治療的処置方法は、抗FcRH5抗体(複数可)、ならびに1つ以上の化学療法薬または阻害剤の併用投与、例えば異なる化学療法薬または他の細胞傷害性物質(複数可)あるいは腫瘍増殖も抑制する他の治療薬(複数可)のカクテルの同時投与を包含する。化学療法薬としては、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素およびヒドロキシ尿素タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドキセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗生物質が挙げられる。このような化学療法薬に関する調製および用量投与スケジュールは、メーカーの使用説明書に従って、あるいは熟練従事者により経験的に決定されるものと同様に用いられ得る。このような化学療法薬の調製および用量投与スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。抗体は、抗ホルモン性化合物:例えば抗エストロゲン化合物、例えばタモキシフェン;抗プロゲステロン、例えばオナプリストン(欧州特許第616812号参照);または抗アンドロゲン、例えばフルタミドと、このような分子に関して既知の投与量で、組合され得る。処置されるべき癌がアンドロゲン非依存性癌である場合、患者は予め抗アンドロゲン療法を施され、癌がアンドロゲン非依存性になった後、抗FcRH5抗体(そして任意に本明細書中に記載されるような他の作用物質)が患者に投与され得る。
時として、心臓保護剤(療法に伴う心筋機能不全を防止するかまたは低減するため)または1つ以上のサイトカインを同時投与することも有益であり得る。上記の治療レジメンのほかに、癌細胞の外科的除去および/または放射線療法(例えば、外部放射線照射または放射能ラベル物質、例えば抗体を用いた療法)を、抗体療法の前に、同時に、または後に、患者は施され得る。上記同時投与作用物質のいずれかに関する適切な投与量は、現在用いられているものであり、そして作用物質および抗FcRH5抗体の併用作用(相乗的)のために低減されることもある。
本発明の抗体組成物は、良好な医療実施と一致する方式で、処方され、用量され、投与され得る。この状況で考慮すべき因子としては、処置されている特定の障害、作用物質の送達部位、投与方法、投与スケジュール、ならびに医療従事者に既知のその他の因子が挙げられる。抗体はその必要はないが、しかし任意に、当該障害を防止するかまたは治療するために一般に用いられる1つ以上の作用物質とともに処方される。このような他の作用物質の有効量は、処方物中に存在する本発明の抗体の量、障害または処置の種類、ならびに上記の他の因子によって決まる。これらは一般的に、前記本明細書中で用いたものと同一投与量で、そして同様の投与経路で、あるいは前記本明細書中で用いられた投与量の約1〜99%で、用いられる。
疾患の防止または治療のために、投与量および投与方式は、既知の判定基準に従って医師により選択される。抗体の適切な投与量は、上記のような処置されるべき疾患の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的で投与されるのか、治療目的か、過去の療法、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに担当医師の判断によって決まる。抗体は、1回で、または一連の処置を通して、患者に適切に投与される。好ましくは、抗体は、静脈内注入により、または皮下注射により、投与される。疾患の種類および重症度によって、約1μg/kg〜約50mg/体重1kg(例えば、約0.1〜15mg/kg/用量投与)の抗体が、1回以上の別個の投与によるか、あるいは連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初回候補投与量である。用量投与レジメンは、初回負荷用量約4mg/kg、その後、毎週維持用量約2mg/kgの抗FcRH5抗体を投与することを包含し得る。しかしながら、他の投与量レジメンも有用であり得る。典型的1日投与量は、上記の因子によって、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。数日以上に亘る反復投与に関しては、条件によって、処置は疾患症候の所望の抑制が生じるまで、持続される。この療法の進行は、慣用的方法および検定により、医師または他の当業者に既知の判定基準に基づいて、容易にモニタリングされ得る。
患者への抗体タンパク質の投与のほかに、本出願は、遺伝子療法による抗体の投与を意図する。抗体をコードする核酸のこのような投与は、「治療的有効量の抗体を投与する」という表現に包含される。細胞内抗体を産生するための遺伝子療法の使用に関しては、例えば、WO96/07321(1996年3月14日公開)を参照されたい。
患者の細胞に核酸(任意にベクター中に含入される)を運ぶためには、in vivoとex-vivoの主に2つのアプローチがある。in vivo送達に関しては、核酸は、患者に、通常は、抗体が必要とされる部位に、直接注入される。Ex-vivo処置に関しては、患者の細胞が取り出され、核酸がこれらの単離細胞中に導入され、そして修飾化細胞が、患者に直接的に注入されるか、または例えば多孔性膜内に封入されて、これが患者に植え込まれる(例えば、米国特許第4,892,538号および第5,283,187号参照)。生きている細胞中に核酸を導入するために利用可能な種々の技法がある。技法は、核酸がin vitroで倍様細胞中に移されるか、あるいは意図された宿主の細胞にin vivoで移されるかによって変わる。in vitroで哺乳動物細胞中に核酸を運搬するのに適した技法としては、リポソームの使用、電気穿孔、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、燐酸カルシウム沈降法等がある。遺伝子の送達のために一般に用いられるベクターは、レトロウイルスベクターである。
一般的に好ましいin vivo核酸移入技法としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、またはアデノ随伴ウイルス)ならびに脂質ベースの系(遺伝子の脂質媒介性移入のための有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPEおよびDC−Cholである)を用いたトランスフェクションが挙げられる。一般に既知の遺伝子ラベルおよび遺伝子療法プロトコールの再検討に関しては、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)を参照されたい。WO 93/25673およびそこに引用された参考文献も参照されたい。
本発明の抗FcRH5抗体は、本明細書中の「抗体」の定義に包含される種々の形態で存在し得る。したがって、抗体は、全長または無傷抗体、抗体断片、ネイティブ配列抗体またはアミノ酸変異体、ヒト化、キメラまたは融合抗体、免疫接合体、ならびにその機能的断片を包含する。融合抗体では、抗体配列は異種ポリペプチド配列と融合される。抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。
一実施形態では、抗体は本発明の抗体と同一のエピトープとの結合にまたは実質的に結合することに関して競合する。本発明の抗FcRH5抗体の生物学的特質、例えば具体的にはin vivo腫瘍ターゲッティングおよび任意の細胞増殖抑制または細胞傷害特質を有する抗体も意図される。
上記抗体を産生する方法は、本明細書中で詳細に記載されている。
本発明の抗FcRH5抗体は、FcRH5発現癌を処置するために、または哺乳動物における癌の1つ以上の症候を緩和するために有用である。このような癌としては、造血系癌または血液関連癌、例えばリンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されず、脾臓の癌およびリンパ節の癌も含まれる。癌のさらに特定の例としては、B細胞関連癌、例えば高度、中等度および低度リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、例えば粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫、および非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、び漫性大細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ならびにホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫)、ならびに白血病(例えば二次性白血病、慢性リンパ性白血病、例えばB細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、骨髄性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病および骨髄形成異常)、ならびにその他の血液学的および/またはB細胞またはT細胞関連癌が挙げられる。癌は、前記のいずれかの転移性癌を包含する。抗体は、哺乳動物においてFcRH5ポリペプチドを発現する癌細胞の少なくとも一部と結合し得る。好ましい一実施形態では、抗体は、FcRH5発現腫瘍細胞を破壊するかまたは殺害するのに、あるいは、細胞上のFcRH5ポリペプチドとの結合時に、in vitroまたはin vivoで、このような腫瘍細胞の増殖を抑制するのに有効である。このような抗体としては、裸抗FcRH5抗体(如何なる作用物質とも接合されない)が挙げられる。細胞傷害性または細胞増殖抑制特性を有する裸抗体は、さらに、細胞傷害性物質と繋がれて、腫瘍細胞崩壊をより強力にされる。細胞傷害特性は、例えば抗体を細胞傷害性物質と接合して、本明細書中に記載されるような免疫接合体を形成することにより、抗FcRH5抗体に付与される。細胞傷害性物質または増殖阻害剤は、好ましくは小分子である。毒素、例えばカリケアマイシンまたはマイタンシノイドおよびそれ類似体または誘導体が好ましい。
本発明は、本発明の抗FcRH5抗体ならびに担体を含む組成物を提供する。癌を処置する目的のために、組成物は、このような処置を必要とする患者に投与され得るが、この場合、組成物は、免疫接合体として、または裸抗体として存在する1つ以上の抗FcRH5抗体を含み得る。さらなる一実施形態では、組成物は、これらの抗体を、他の治療薬、例えば細胞傷害性物質または増殖阻害剤、例えば化学療法薬と組合せて含み得る。本発明は、本発明の抗FcRH5抗体、ならびに担体を含む処方物も提供する。一実施形態では、処方物は、製薬上許容可能な担体を含む治療用処方物である。
本発明の別の態様は、抗FcRH5抗体をコードする単離核酸である。HおよびL鎖の両方、特に、超可変領域残基、ネイティブ配列抗体ならびに変異体、修飾およびヒト化バージョンの抗体をコードする鎖をコードする核酸が包含される。
本発明は、FcRH5ポリペプチド発現癌を処置するために、または哺乳動物における癌の1つ以上の症候を緩和するために有用な方法であって、治療的有効量の抗FcRH5抗体を哺乳動物に投与することを包含する方法も提供する。抗体治療用組成物は、医師により指図されるように、短期間(急性)または長期間、あるいは間欠的に投与され得る。FcRH5ポリペプチド発現細胞の増殖を抑制し、それを殺害する方法も提供される。
本発明は、少なくとも1つの抗FcRH5抗体を含むキットおよび製品も提供する。抗FcRH5抗体を含有するキットは、例えばFcRH5細胞殺害検定のために、細胞からのFcRH5ポリペプチドの精製または免疫沈降のために、用途を見出す。例えば、FcRH5の単離および精製のために、キットは、ビーズ(例えばセファロースビーズ)と結合された抗FcRH5抗体を含有し得る。例えばELISAまたはウェスタンブロットにおける、in vitroでのFcRH5の検出および定量のための抗体を含有するキットが提供される。検出のために有用なこのような抗体は、蛍光または放射能ラベルのようなラベルとともに提供され得る。
I. 抗体−薬剤接合体治療
本発明の抗体−薬剤接合体(ADC)は、例えば腫瘍抗原の過剰発現により特性化される種々の疾患または障害を処置するために用いられ得る、と意図される。例示的症状または過剰増殖性障害としては、良性または悪性腫瘍:白血病およびリンパ性悪性腫瘍が挙げられる。他の例としては、ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部、腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性、胞胚腔性、炎症性、血管新生性、免疫学的、例えば自己免疫の障害が挙げられる。
動物モデルおよび細胞ベースの検定において同定されるADC化合物は、さらに、腫瘍保有高等霊長類およびヒト臨床試験で検査され得る。ヒト臨床試験は、B細胞増殖性障害、例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫(これらに限定されない)の病歴がある患者における本発明の抗FcRH5モノクローナル抗体または免疫複合体の効力を試験するよう意図され得る。臨床試験は、既知の治療レジメン、例えば放射線および/または化学療法(既知の化学療法薬および/または細胞傷害性物質を含めて)と組合せたADCの効力を評価するよう意図され得る。
一般的に、処置されるべき疾患または障害は、過増殖性疾患、例えばB細胞増殖性障害および/またはB細胞癌である。本明細書中で処置されるべき癌の例としては、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫(これらに限定されない)から選択されるB細胞増殖性障害が挙げられる。
癌は、本発明のADCが癌細胞と結合し得るよう、FcRH5発現細胞を含み得る。癌におけるFcRH5発現を確定するために、種々の診断/予後検定が利用可能である。一実施形態では、FcRH5過剰発現は、IHCにより分析され得る。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片はIHC検定に付されて、検査される腫瘍細胞の染色程度および比率に関して、FcRH5タンパク質染色強度判定基準を付与される。
疾患の予防または治療に関して、ADCの適切な投与量は、上記のような処置されるべき疾患の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的で投与されるのか、治療目的か、過去の療法、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに担当医師の判断によって決まる。分子は、1回で、または一連の処置を通して、患者に適切に投与される。疾患の種類および重症度によって、約1μg/kg〜約15mg/kg(例えば、約0.1〜20mg/kg)の分子が、例えば1回以上の別個の投与によるか、あるいは連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初回候補投与量である。典型的1日投与量は、上記の因子によって、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。患者に投与されるべきADCの例示的投与量は、約0.1〜約10mg/患者の体重1kgの範囲である。
数日以上に亘る反復投与に関しては、条件によって、処置は疾患症候の所望の抑制が生じるまで、持続される。用量投与レジメンの一例は、初回負荷用量約4mg/kg、その後の毎週保持用量 約2mg/kgの抗FcRH5抗体を投与することを包含する。他の投与量レジメンが有用なこともある。この療法の進行は、慣用的技法および検定により、容易にモニタリングされ得る。
J. 併用療法
本発明の抗体−薬剤接合体(ADC)は、薬学的組合せ処方物中で、あるいは併用療法としての用量投与レジメンにおいて、抗癌特性を有する第二の化合物と組合され得る。薬学的組合せ処方物または用量投与レジメンの第二化合物は、好ましくは、それらが互いに悪影響を及ぼさないよう、組合せのADCに対する相補的活性を有する。
第二化合物は、化学療法薬、細胞傷害性物質、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤および/または心臓保護剤を含み得る。このような分子は、意図される目的のために有効である量で、組合せて適切に存在する。本発明のADCを含有する薬学的組成物は、治療的有効量の化学療法薬、例えばチューブリン形成阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤またはDNA結合剤も有し得る。
一態様では、第一化合物は本発明の抗FcRH5ADCであり、第二化合物は抗CD20抗体(裸抗体またはADC)である。一実施形態では、第二化合物は抗CD20抗体リツキシマブ(リツキサン(登録商標)または2H7(Genentech, Inc., South San Francisco, CA)である。本発明の抗FcRH5ADCとの併用免疫療法のために有用な別の抗体としては、VEGF(例えば、アバスチン(登録商標))が挙げられるが、これに限定されない。
他の治療レジメンは、本発明に従って同定される抗癌性作因、例えば放射線療法、および/または骨髄および末梢血移植物、および/または細胞傷害性物質、化学療法薬、または増殖阻害剤(これらに限定されない)の投与と組合され得る。このような実施形態の1つでは、化学療法薬は、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(オンコビン(商標))、プレドニソロン、CHOP、CVPまたはCOP、あるいは免疫療法薬、例えば抗CD20(例えばリツキサン(登録商標))または抗VEGF(例えばアバスチン(登録商標))のような作用物質または作用物質の組合せである。
併用療法は、同時的または逐次的レジメンとして施される。逐次的に投与される場合、組合せは、2回以上の投与で投与され得る。組合せ投与は、同時投与、別個の処方物または単一薬学的処方物の使用、ならびにいずれかの順序での連続投与を含むが、この場合、好ましくは、その間に、両方の(またはすべての)活性作用物質が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間がある。
一実施形態では、ADCによる処置は、本明細書中で同定される抗癌剤、および1つ以上の化学療法薬または増殖阻害剤の組合せ投与、例えば異なる治療薬のカクテルの同時投与を包含する。化学療法薬としては、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗生物質が挙げられる。このような化学療法薬に関する調製および用量投与スケジュールは、メーカーの使用説明書に従って、あるいは熟練従事者により経験的に決定されるものと同様に用いられ得る。このような化学療法薬の調製および用量投与スケジュールは、“Chemotherapy Service”, (1992) Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, Mdにも記載されている。
上記同時投与剤のいずれかに関する適切な投与量は、現在用いられているものであり、そして新規に同定された作用物質および他の化学療法薬または処置の併用作用(相乗的)のために低減されることもある。
併用療法は、「相乗作用」を提供し、「相乗的」であることを立証し得る。すなわちその作用は、一緒に用いられた活性成分が、別個に化合物を用いて生じる作用の和より大きい場合に達成される作用である。相乗作用は、活性成分が:(1)併合単位投与量処方物中に同時処方され、同時的に投与され、または送達される場合;(2)交互にまたは別個の処方物と平行して送達される場合;あるいは(3)いくつかの他のレジメンによる場合に獲得され得る。交替療法で送達される場合、相乗作用は、例えば、別個の注射器での異なる注射により、化合物が逐次的に投与され、送達される場合にうのられる。概して、交替療法中は、有効投与量各活性成分が逐次的に、すなわち、順次投与され、一方、併用療法では、有効投与量の2つ以上の活性成分が一緒に投与される。
本発明の併用療法は、さらに、1つ以上の化学療法薬(複数可)を含み得る。組合せ投与は、同時投与または共存投与、別個の処方物または単一薬学的処方物の使用、ならびにいずれかの順序での連続投与を含むが、この場合、好ましくは、その間に、両方の(またはすべての)活性作用物質が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間がある。
化学療法薬は、投与される場合、通常はその既知の投与量で投与され、任意に、抗代謝物質化学療法薬の投与に起因し得る薬剤の併合作用または負の副作用のため、低減される。このような化学療法薬に関する調製および用量投与スケジュールは、メーカーの使用説明書に従って、あるいは熟練従事者により経験的に決定されるものと同様に用いられ得る。
組合され得る種々の化学療法薬が、本明細書中に開示されている。
いくつかの実施形態では、組合され得る化学療法薬は、免疫調節薬(IMids)(例えば、サリドマイドおよびレブリミド(登録商標)(レナリドミド))、プロテオソーム阻害剤(例えば、ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)およびPS342)、boraタキソイド(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル)、ビンカ(例えば、ビノレルビンまたはビンブラスチン)、プラチナ化合物(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストラゾールまたはエキセメスタン)、抗エストロゲン(例えば、フルベストラントまたはタモキシフェン)、エトポシド、チオテパ、シクロホスファミド、ペメトレキセド、メトトレキサート、リポソーム・ドキソルビシン、ペギル化リポソーム・ドキソルビシン、カペシタビン、ゲンシタビン、メルタリン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、またはステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびプレドニソン)からなる群から選択される。いくつかの実施形態(例えば、多発性骨髄腫の処置を包含する実施形態)では、デキサメタゾンおよびレナリドミド、またはデキサメタゾン、またはボルテゾミブ、またはビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾン、またはサリドマイドおよびデキサメタゾン、またはリポソーム・ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびデキサメタゾン、またはレナリドミドおよびデキサメタゾン、またはボルテゾミブおよびデキサメタゾン、またはボルテゾミブ、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンが組合される。
いくつかの実施形態では、組合されるべき化学療法薬は、レブリミド(登録商標)(レナリドミド))、プロテオソーム阻害剤(例えば、ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)およびPS342)、boraタキソイド(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル)、ビンカ(例えば、ビノレルビンまたはビンブラスチン)、プラチナ化合物(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストラゾールまたはエキセメスタン)、抗エストロゲン(例えば、フルベストラントまたはタモキシフェン)、エトポシド、チオテパ、シクロホスファミド、ペメトレキセド、メトトレキサート、リポソーム・ドキソルビシン、ペギル化リポソーム・ドキソルビシン、カペシタビン、ゲンシタビン、メルタリン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、またはステロイド(例えば、デキサメタゾンおよびプレドニソン)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態(例えば、悪性骨髄腫の処置を包含する実施形態)では、デキサメタゾンおよびレナリドミド、またはデキサメタゾンおよびボルテゾミブが組合される。
他の一実施形態では、併用療法は、抗体または免疫接合体および1つより多い化学療法薬を含む。例えば、抗体または免疫接合体は、(i)ビンクリスチン、ドキソルビシン(リポソーム性または非リポソーム性処方物中)およびデキサメタゾン;(ii)サリドマイドおよびデキサメタゾン;(iii)ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)、ドキソルビシンおよびデキサメタゾン;(iv)ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)、サリドマイドおよびデキサメタゾン;(v)メルファランおよびプレドニソン;(vi)メルファラン、プレドニソンおよびサリドマイド;(vii)メルファラン、プレドニソンおよびベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ);(viii)ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾン;あるいは(ix)サリドマイドおよびデキサメタゾンと組合せられ得る。
一実施形態では、併用療法は、本明細書中に記載される抗体または免疫接合体、ならびに(i)ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)、(ii)デキサメタゾン、(iii)レブリミド(登録商標)(レナリドミド)のうちの1つ以上を含み得る。別の実施形態では、併用療法は、抗体または免疫接合体、ならびにデキサメタゾンおよびレブリミド(登録商標)(レナリドミド)の両方、またはベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)およびデキサメタゾンの両方を含む。他の一実施形態では、併用療法は、抗体または免疫接合体、ならびにベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)、デキサメタゾンおよびレブリミド(登録商標)(レナリドミド)の各々を含む。
K. 製品およびキット
本発明の別の実施形態は、FcRH5発現癌の治療、予防および/または診断のために有用な物質を含有する製品である。製品は、容器、ならびに容器の上または容器に伴うラベルまたは包装挿入物を含む。適切な容器としては、例えば瓶、バイアル、注射器等が挙げられる。容器は、種々の材料、例えばガラスまたはプラスチックから成形され得る。容器は、癌症状を治療し、予防し、および/または診断するために有効である組成物を保持し、そして滅菌性アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液袋、または皮下注射針により貫通可能な栓を有するバイアルである)。組成物中の少なくとも1つの活性作用物質は、本発明の抗FcRH5抗体である。ラベルまたは包装挿入物は、組成物が癌を処置するために用いられることを示す。ラベルまたは包装挿入物は、さらに、癌患者に抗体組成物を投与するための使用説明書を含む。付加的には、製品は、さらに、製薬上許容可能な緩衝液、例えば注射用の静菌性水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二容器を含み得る。それはさらに、商業的ならびにユーザーの見地から望ましいその他のもの、例えばその他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針および注射器を包含し得る。
種々の目的のために、例えば、FcRH5発現細胞殺害検定のため、細胞からのFcRH5ポリペプチドの精製または免疫沈降のために有用であるキットも提供される。FcRH5ポリペプチドの単離および精製のために、キットは、ビーズ(例えばセファロースビーズ)と結合された抗FcRH5抗体を含有し得る。例えばELISAまたはウェスタンブロットにおける、in vitroでのFcRH5の検出および定量のための抗体を含有するキットが提供される。製品の場合と同様に、キットは、容器、ならびに容器の上または容器に伴うラベルまたは包装挿入物を含む。容器は、本発明の少なくとも1つの抗FcRH5抗体を含む組成物を保持する。例えば希釈液または緩衝液、対照抗体を含有する付加的抗体が包含され得る。ラベルまたは包装挿入物は、組成物についての記述、ならびに意図されたin vitroまたは検出用途に関する使用説明書を提供し得る。
L. FcRH5ポリペプチドに関する用途
本発明は、FcRH5ポリペプチドを模倣する(アゴニスト)、またはFcRH5ポリペプチドの作用を防止する(アンタゴニスト)ものを同定するために化合物をスクリーニングする方法を包含する。アンタゴニスト薬剤候補に関するスクリーニング検定は、本明細書中で同定される遺伝子によりコードされるFcRH5ポリペプチドを結合するかまたは錯化する、あるいは、そうでなければコードポリペプチドと他の細胞性タンパク質との相互作用を妨害する、例えば細胞からのFcRH5ポリペプチドの発現を抑制する化合物を同定するよう意図される。このようなスクリーニング検定は、化学物質ライブラリーの高処理量スクリーニングが容易にできて、小分子薬候補を同定するのに特に適するようにする検定を包含する。
検定は、種々のフォーマットで、例えばタンパク質−タンパク質結合検定、生化学的スクリーニング検定、イムノアッセイ、および細胞ベースの検定(これらは当該技術分野で十分に特性化されている)で実施され得る。
アンタゴニストに関する検定は全て、2つの化合物を相互作用させるのに十分な条件下で、十分な時間の間、薬剤候補と、本明細書中で同定される核酸によりコードされるFcRH5ポリペプチドとを接触させることを必要とする、という点で共通である。
結合検定では、相互作用は結合であり、形成される錯体は反応混合物中で単離され、検出され得る。特定の一実施形態では、本明細書中で同定される遺伝子によりコードされるFcRH5ポリペプチド、または薬剤候補は、共有的または非共有的結合により、固相上に、例えば微量滴定プレート上に固定される。非共有結合は、一般的に、固体表面をFcRH5ポリペプチドの溶液で被覆し、乾燥することにより成し遂げられる。代替的には、固定されるべきFcRH5ポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体は、それを固体表面に固着するために用いられ得る。検定は、非固定化構成成分(検出可能ラベルによりラベルされ得る)を、固定化構成成分、例えば固着構成成分を含有する被覆表面に付加することにより実施される。反応が完了したら、非反応構成成分は、例えば線状により除去され、固体表面に固着された錯体が検出される。元々の固定化構成成分が検出可能ラベルを保有する場合、表面に固定されたラベルの検出は、錯体形成が起きたことを示す。元々の非固定化構成成分がラベルを保有しない場合、例えば、固定化索体を特異的に結合するラベル化抗体を用いることにより、錯体形成が検出され得る。
候補化合物が、本明細書中で同定される遺伝子によりコードされる特定のFcRH5ポリペプチドと相互反応するが、しかし結合しない場合、そのポリペプチドとのその相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出することがよく知られた方法により、検定され得る。このような検定としては、伝統的アプローチ、例えば架橋、同時免疫沈降、ならびに勾配またはクロマトグラフィーカラムによる同時精製が挙げられる。さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、Fields and co-workers (Fields and Song, Nature (London), 340:245-246 (1989);Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582 (1991))により記載され、Chevray and Nathans, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5789-5793 (1991)により開示されたような酵母ベースの遺伝子系を用いることにより、モニタリングされ得る。多くの転写活性剤、例えば酵母GAL4は、2つの物理的に異なるもモジュラードメイン(すなわち、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する)からなる。上記の出版物に記載された酵母発現系(一般的に「2−ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性を利用し、2つのハイブリッドタンパク質(一方は、標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインと融合され、もう一つは、候補活性化タンパク質が活性化ドメインと融合される)を用いる。GAL4活性化プロモーターの制御下でのGAL1−lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成によって決まる。相互作用ポリペプチドを含有するコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する色素産生基質で検出される。2−ハイブリッド技法を用いる2つの特定タンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定するための完全キット(MATCHMAKER(商標))は、Clonetechから市販されている。この系は、特定タンパク質相互作用に関与するタンパク質ドメインをマッピングするために、ならびにこれらの相互作用に重要なアミノ酸残基を特定するためにも、拡張され得る。
本明細書中で同定されるFcRH5ポリペプチドをコードする遺伝子と他の細胞内または細胞外構成成分との相互作用を妨げる化合物は、以下のように試験され得る:通常、遺伝子の産物ならびに細胞内または細胞外構成成分を含有する反応混合物が、2つの産物の相互作用および結合を可能にする条件下で、それを可能にする時間の間、調製される。結合を抑制する候補化合物の能力を試験するために、反応は、試験化合物の非存在下および存在下で実行される。さらに、プラセボが第三の反応混合物に付加されて、陽性対照として役立ち得る。混合物中に存在する試験化合物と細胞内または細胞外構成成分との結合(錯体形成)は、本明細書中で上記したようにモニタリングされる。対照反応(複数可)では錯体が形成されるが、試験化合物を含有する反応混合物中では形成されないことは、試験化合物が試験化合物とその反応相手との相互作用を妨げることを示す。
アンタゴニストに関して検定するために、特定の活性に関してスクリーニングされるべき化合物とともに、FcRH5ポリペプチドが細胞に付加され、そして、FcRH5ポリペプチドの存在下で当該活性を抑制する化合物の能力は、化合物がFcRH5ポリペプチドに対するアンタゴニストであることを示す。代替的には、アンタゴニストは、競合的抑制検定のための適切な条件下で、FcRH5ポリペプチドおよび潜在的アンタゴニストを、膜結合FcRH5ポリペプチド受容体または組換え受容体と組合せることにより検出され得る。受容体と結合されるFcRH5ポリペプチド分子の数が潜在的アンタゴニストの有効性を確定するために用いられ得るよう、FcRH5ポリペプチドは、例えば放射能によりラベルされ得る。受容体をコードする遺伝子は、当業者に既知の多数の方法、例えばリガンドパニングおよびFACS選別により、同定され得る(Coligan et al., Current Protocols in Immun., 1(2): Chapter 5 (1991))。好ましくは、ポリアデニル化RNAがFcRH5ポリペプチドに応答性の細胞から調製され、このRNAから作製されるcDNAライブラリーがプールに分けられて、COS細胞またはFcRH5ポリペプチドに応答性でない他の細胞をトランスフェクトするために用いられる発現クローニングが用いられる。ガラススライド上で増殖されるトランスフェクト化細胞は、ラベル化FcRH5ポリペプチドに曝露される。FcRH5ポリペプチドは、部位特異的プロテインキナーゼに関する認識部位のヨウ素化または含入を含めた種々の手段によりラベルされ得る。固定およびインキュベーション後、スライドはオートラジオグラフィー分析に付される。陽性プールが同定され、サブプールが調製され、相互作用的サブプール化および再スクリーニング工程を用いて再トランスフェクトされ、最後は、推定受容体をコードする単一クローンを産生する。
受容体同定のための代替的アプローチとして、ラベル化FcRH5ポリペプチドは、細胞膜または受容体分子を発現する抽出調製物と光親和性連結され得る。架橋物質は、PAGEにより分割され、X線フィルムに曝露される。受容体を含有するラベル化錯体は、切り出され、ペプチド断片に分割され、タンパク質マイクロ配列決定に付される。マイクロ配列決定から得られたアミノ酸配列は、推定受容体をコードする遺伝子を同定するためのcDNAライブラリーをスクリーニングするよう、一組の縮重オリゴヌクレオチドプローブを設計するために用いられる。
アンタゴニストに関する別の検定では、哺乳類細胞、または受容体を発現する膜調製物は、候補化合物の存在下でラベル化FcRH5ポリペプチドとともにインキュベートされる。次いで、この相互作用を増強するかまたは遮断する化合物の能力が測定され得る。
潜在的アンタゴニストのさらに具体的な例としては、免疫グロブリンとFcRH5ポリペプチドとの融合物と結合するオリゴヌクレオチド、特に抗体、例えば、ポリ−およびモノクローナル抗体および抗体断片、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、およびこのような抗体または断片のキメラまたはヒト化バージョン、ならびにヒト抗体および抗体断片(これらに限定されない)が挙げられる。代替的には、潜在的アンタゴニストは、密接に関連するタンパク質、例えば受容体を認識するがしかし作用を付与せず、それによりFcRH5ポリペプチドの作用を競合的に抑制する突然変異化型のFcRH5ポリペプチドであり得る。
本明細書中で同定されるFcRH5ポリペプチドを、ならびに本明細書中の上記で開示されたスクリーニング検定により同定される他の分子を特異的に結合する抗体は、薬学的組成物の形態で、種々の障害、例えば癌の治療のために投与され得る。
FcRH5ポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、内在化抗体が好ましい。しかしながら、リポフェクションまたはリポソームも用いられて、抗体または抗体断片を細胞中に送達し得る。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインと特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列を基礎にして、標的タンパク質配列を結合する能力を保持するペプチド分子が意図され得る。このようなペプチドは、化学的に合成され得るか、および/または組換えDNA技術により産生され得る(例えば、Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)参照)。
本明細書中の処方物は、処置されている特定の適応症のために必要とされる場合、1つより多くの活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。代替的には、またはさらに、組成物は、その機能を増強する作用物質、例えば細胞傷害性物質、サイトカイン、化学療法薬または増殖阻害剤を含み得る。このような分子は、意図される目的のために有効である量で、組合せ中に適切に存在する。
M. 抗体誘導体
本発明の抗体は、さらに、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能である付加的非タンパク質様部分を含有するよう修飾され得る。好ましくは、抗体の誘導体化のために適した部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにその混合物。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量を有し得るし、分枝鎖または非分枝鎖であり得る。抗体に結合されるポリマーの数は変わり得るし、もし2つより多くのポリマーが結合される場合、それらは同一または異なる分子であり得る。概して、誘導体化のために用いられるポリマーの数および/または種類は、抗体誘導体が限定条件下で治療に用いられるか等にかかわらず、改良されるべき抗体の特定の特性または機能(これらに限定されない)を含めた考察に基づいて確定される。
N. スクリーニング方法
本発明のさらに別の実施形態は、FcRH5ポリペプチドを含有することが疑われる試料中のFcRH5ポリペプチドの存在を確定する方法であって、FcRH5ポリペプチドと結合するその抗体薬剤接合体に試料を曝露すること、そしてその抗体薬剤接合体と試料中のFcRH5ポリペプチドとの結合を確定すること(ここで、このような結合の存在は、試料中のFcRH5ポリペプチドの存在を示す)を包含する方法に向けられる。任意に、試料は、FcRH5ポリペプチドを発現すると思われる細胞(癌細胞であり得る)を含有し得る。当該方法に用いられるその抗体薬剤接合体は、任意に、検出可能的にラベルされ、固体支持体等に結合される。
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法であって、(a)哺乳動物から得られる組織細胞を含む試験試料を、FcRH5ポリペプチドと結合するその抗体薬剤接合体と接触させること、ならびに(b)その抗体薬剤接合体と試験試料中のFcRH5ポリペプチドとの間の複合体の形成を検出することを包含する方法に向けられるが、この場合、複合体の形成は哺乳動物における腫瘍の存在を示す。任意に、その抗体薬剤接合体は、検出可能的にラベルされ、固体支持体等と結合され、および/または組織細胞の試験試料が、癌性腫瘍を有すると思われる個体から得られる。
IV. 抗FcRH5抗体および免疫接合体のさらなる使用方法
A. 診断方法および検出方法
一態様では、本発明の抗FcRH5抗体および免疫接合体は、生物学的試料中のFcRH5の存在を検出するために有用である。「検出する」という用語は、本明細書中で用いる場合、定量的または定性的検出を包含する。ある実施形態では、生物学的試料は、細胞または組織を含む。ある実施形態では、このような組織としては、正常、および/または他の組織に比して高レベルでFcRH5を発現する癌性組織、例えばB細胞および/またはB細胞関連組織が挙げられる。
一態様では、本発明は、生物学的試料中のFcRH5の存在を検出する方法を提供する。ある実施形態では、当該方法は、生物学的試料を、抗FcRH5抗体とFcRH5との結合を許容する条件下で抗FcRH5抗体と接触し、そして抗FcRH5抗体およびFcRH5間に錯体が形成されるか否かを検出することを包含する方法を提供する。
一態様では、本発明は、FcRH5の発現増大と関連する障害の診断方法を提供する。ある実施形態では、当該方法は、試験細胞を抗FcRH5抗体と接触させること;抗FcRH5抗体とFcRH5との結合を検出することにより試験細胞によるFcRH5の発現のレベル(定量的または定性的に)を確定すること;そして試験細胞によるFcRH5の発現のレベルを、対照細胞(例えば、標的細胞と同一組織起源の正常細胞、あるいはこのような正常細胞に匹敵するレベルでFcRH5を発現する細胞)によるFcRH5の発現のレベルと比較することを包含する方法を提供するが、この場合、対照細胞と比較して高レベルのFcRH5発現は、FcRH5発現の増大と関連する障害の存在を示す。ある実施形態では、試験細胞は、FcRH5の発現増大に関連した障害を有すると思われる個体から得られる。ある実施形態では、障害は、細胞増殖性障害、例えば癌または腫瘍である。
本発明の抗体を用いて診断され得る細胞増殖性障害の例としては、B細胞障害および/またはB細胞増殖性障害、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫(これらに限定されない)が挙げられる。
ある実施形態では、例えば上記のような診断または検出方法は、抗FcRH5抗体と、細胞の表面またはその表面にFcRH5を発現する細胞から得られる膜調製物中で発現されるFcRH5戸の結合を検出することを包含する。ある実施形態では、当該方法は、抗FcRH5抗体とFcRH5との結合を許容する条件下で、細胞を抗FcRH5抗体と接触させること、そして抗FcRH5抗体と細胞表面のFcRH5との間に複合体が形成されたか否かを検出することを包含する。抗FcRH5抗体と細胞表面で発現されるFcRH5との結合を検出するための例示的検定は、「FACS」検定である。
ある種の他の方法は、抗FcRH5抗体とFcRH5との結合を検出するために用いられ得る。このような方法としては、当該技術分野で周知である抗原結合検定、例えばウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降検定、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイおよび免疫組織化学(IHC)が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施形態では、抗FcRH5抗体はラベルされる。ラベルとしては、ラベル、または直接的に検出される部分(例えば、蛍光性、色原性、高電子密度性、化学発光性および放射性レベル)、ならびに、例えば酵素反応または分子相互作用により、間接的に検出される、酵素またはリガンドのような部分が挙げられるが、これらに限定されない。ラベルの例としては、放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、蛍光体、例えば希土類キレート化合物またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ライソザイム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、複素環式オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ(HRPのような染料前駆体を酸化するために過酸化水素を用いる酵素と結合される)、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定遊離ラジカル等が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施形態では、抗FcRH5抗体は、不溶性マトリックス上に固定される。固定化は、溶液中で遊離したままである任意のFcRH5から抗FcRH5抗体を分離することを伴う。これは、慣用的には、水不溶性マトリックスまたは表面への吸着による(Bennich et al.、米国特許第3,720,760号)ように、検定手順前に抗FcRH5抗体を不溶性にすることにより、あるいは共有結合することにより(例えば、グルタルアルデヒド架橋を用いて)、あるいは抗FcRH5抗体およびFcRH5間に錯体を形成後に抗FcRH5抗体を不溶性にすることにより、例えば、免疫沈降により、成し遂げられ得る。
診断または検出の上記実施形態のいずれかは、抗FcRH5抗体の代わりに、またはそのほかに、本発明の免疫接合体を用いて、実行され得る。
B. 治療方法
本発明の抗体または免疫接合体は、例えば、in vitro、ex-vivoおよびin vivo治療方法で用いられ得る。一態様では、本発明は、in vivoまたはin vitroで細胞の成長または増殖を抑制する方法であって、免疫接合体とFcRH5との結合を許容する条件下で、抗FcRH5抗体またはその免疫接合体に細胞を曝露することを包含する方法を提供する。「細胞の成長または増殖を抑制する」は、細胞の成長または増殖を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%低減することを意味し、細胞死を誘導することを包含する。ある実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。ある実施形態では、細胞はB細胞である。ある実施形態では、細胞は、例えば本明細書中で例示されるような異種移植片である。
一態様では、本発明の抗体または免疫接合体は、B細胞増殖性障害を治療または予防するために用いられる。ある実施形態では、細胞増殖性障害は、FcRH5の発現および/または活性増大と関連する。例えば、ある実施形態では、B細胞増殖性障害は、B細胞の表面でのFcRH5の発現増大と関連する。ある実施形態では、B細胞増殖性障害は腫瘍または癌である。本発明の抗体または免疫接合体により処置されるべきB細胞増殖性障害の例としては、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
一態様では、本発明は、B細胞増殖性障害の治療方法であって、有効量の抗FcRH5抗体またはその免疫接合体を個体に投与することを包含する方法を提供する。ある実施形態では、B細胞増殖性障害の治療方法は、抗FcRH5抗体または抗FcRH5免疫接合体、および任意に少なくとも1つの付加的治療薬、例えば以下で提示されるものを含む有効量の薬学的処方物を、個体に投与することを包含する。ある実施形態では、細胞増殖性障害の治療方法は、1)抗FcRH5抗体および細胞傷害性物質を含む免疫接合体、そして任意に、2)少なくとも1つの付加的治療薬、例えば以下で提示されるものを含む有効量の薬学的処方物を、個体に投与することを包含する。
一態様では、本発明の抗体または免疫接合体のうちの少なくともいくつかは、ヒト以外の種からのFcRH5を結合し得る。したがって、本発明の抗体または免疫接合体を用いて、例えば、ヒトにおいて、または本発明の抗体または免疫接合体が交差反応するFcRH5を有する他の哺乳動物(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよびアカゲザル、ブタまたはマウス)において、FcRH5を含有する細胞培養中で、FcRH5を結合し得る。一実施形態では、抗FcRH5抗体または免疫接合体は、免疫接合体の接合細胞毒素が細胞の内部に到達するよう、抗体または免疫接合体をFcRH5と接触させて、抗体または免疫接合体−抗原錯体を形成することにより、B細胞上のFcRH5を標的にするために用いられ得る。一実施形態では、FcRH5はヒトFcRH5である。
一実施形態では、抗FcRH5抗体または免疫接合体は、FcRH5発現および/または活性増大に関連した障害に罹患している個体におけるFcRH5の結合方法であって、個体中のFcRH5が結合されるよう、抗体または免疫接合体を個体に投与することを包含する方法に用いられ得る。一実施形態では、結合抗体または免疫接合体は、FcRH5を発現するB細胞中に内在化される。一実施形態では、FcRH5はヒトFcRH5であり、個体はヒト個体である。代替的には、個体は、抗FcRH5抗体が結合するFcRH5を発現する哺乳動物であり得る。さらに、個体は、(例えば、FcRH5の投与により、またはFcRH5をコードする導入遺伝子の発現により)FcRH5が導入された哺乳動物であり得る。
抗FcRH5抗体または免疫接合体は、治療目的のためにヒトに投与され得る。さらに、抗FcRH5抗体または免疫接合体は、獣医学的目的のために、またはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するFcRH5を発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、ラットまたはマウス)に投与され得る。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体または免疫接合体の治療効能を評価する(例えば、投与量および投与の時間経過の試験)ために有用であり得る。
本発明の抗体または免疫接合体は、単独で、または他の組成物と組合せて、治療に用いられ得る。例えば、本発明の抗体または免疫接合体は、少なくとも1つの付加的治療薬および/またはアジュバントと同時投与され得る。ある実施形態では、付加的治療薬は、細胞傷害性物質、化学療法薬または増殖阻害剤である。このような実施形態のうちの1つにおいて、化学療法薬は、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(オンコビン(商標))、プレドニソロン、CHOP、CVPまたはCOP、あるいは免疫療法薬、例えば抗CD20(例えばリツキサン(登録商標))または抗VEGF(例えばアバスチン(登録商標))のような作用物質または作用物質の組合せであって、この場合、併用療法は、癌および/またはB細胞障害、例えばB細胞増殖性障害、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫の処置に有用である。
上記のような併用療法は、組合せ投与(この場合、2つ以上の治療薬が同一のまたは別個の処方物中に含まれる)、および別個の投与(この場合、本発明の抗体または免疫接合体の投与は、付加的治療薬および/またはアジュバントの投与の前、同時的および/または後に生じる)を包含する。本発明の抗体または免疫接合体は、放射線療法と組合せても用いられ得る。
本発明の抗体または免疫接合体(および任意の付加的療法薬またはアジュバント)は、任意の適切な手段により、例えば、非経口、皮下、腹腔内、肺内および鼻内、そして局所的治療のために所望される場合には病巣内投与により、投与され得る。非経口的注入としては、筋肉内、静脈内、関節内、腹腔内または皮下投与が挙げられる。さらに、抗体または免疫接合体は、特に抗体または免疫接合体の用量を減少して、パルス注入により適切に投与される。用量投与は、一部は投与が短期であるかまたは長期であるかによって、注射により、例えば静脈内または皮下注射により、任意の適切な経路で施される。
本発明の抗体または免疫接合体は、良好な医療実施と一致する方式で、処方され、用量され、投与され得る。この状況で考慮すべき因子としては、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、作用物質の送達部位、投与方法、投与スケジュール、ならびに医療従事者に既知のその他の因子が挙げられる。抗体または免疫接合体は、その必要はないが、しかし任意に、当該障害を防止するかまたは治療するために一般に用いられる1つ以上の作用物質とともに処方される。このような他の作用物質の有効量は、処方物中に存在する本発明の抗体または免疫接合体の量、障害または処置の種類、ならびに上記の他の因子によって決まる。これらは一般的に、前記本明細書中で用いたものと同一投与量で、そして同様の投与経路で、あるいは前記本明細書中で用いられた投与量の約1〜99%で、あるいは適切であると経験的/臨床的に確定される任意の投与量および任意の経路で、用いられる。
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体または免疫接合体の適切な投与量は(単独で、または1つ以上の他の付加的治療薬、例えば化学療法薬と組合せて用いられる場合)、処置されるべき疾患の種類、抗体または免疫接合体の種類、疾患の重症度および経過、抗体または免疫接合体が予防目的で投与されるのか、治療目的か、過去の療法、患者の臨床歴および抗体または免疫接合体に対する応答、ならびに担当医師の判断によって決まる。抗体または免疫接合体は、1回で、または一連の処置を通して、患者に適切に投与される。疾患の種類および重症度によって、約1μg/kg〜約100mg/kg(例えば、約0.1〜20mg/kg)の抗体または免疫接合体が、例えば1回以上の別個の投与によるか、あるいは連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初回候補投与量であり得る。典型的1日投与量は、上記の因子によって、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。数日以上に亘る反復投与に関しては、条件によって、処置は一般的に、疾患症候の所望の抑制が生じるまで、持続される。抗体または免疫接合体の例示的一投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはその任意の組合せ)の抗体または免疫接合体の1回以上の用量投与が、患者に施され得る。このような用量投与は、間欠的に、例えば毎週または3週間毎(例えば、約2〜約20、または例えば約6用量の抗体または免疫接合体を患者が摂取するように)、施され得る。初回高負荷用量と、その後の1回以上の低用量が、投与され得る。例示的用量投与レジメンは、約4mg/kgの初回負荷用量と、その後の約2mg/kgの抗体の毎週維持用量を投与することを包含する。しかしながら、他の投与量レジメンが有用なこともある。この療法の進行は、慣用的方法および検定により、容易にモニタリングされ得る。
C. 活性検定
本発明の抗FcRH5抗体および免疫接合体は、それらの物理的/化学的特性、および/または生物学的活性に関して、当該技術分野で既知の種々の検定により特性化され得る。
1. 活性検定
一態様では、生物学的活性を有する抗FcRH5抗体またはその免疫接合体を同定するための検定が提供される。生物学的活性としては、例えば、細胞の成長または増殖を抑制する能力(例えば、「細胞殺害」活性)、または細胞死、例えばプログラムされ多細胞死(アポトーシス)を誘導する能力が挙げられ得る。in vivoおよび/またはin vitroでこのような生物学的活性を有する抗体または免疫接合体も提供される。
ある実施形態では、抗FcRH5抗体またはその免疫接合体は、in vitroでの細胞の成長または増幅を抑制するその能力に関して試験される。細胞の成長または増殖の抑制に関する検定は、当該技術分野で周知である。本明細書中に記載される「細胞殺害」検定により例示される細胞増殖に関するある検定は、細胞生存度を測定する。このような検定の一つが、CellTiter-Glo(商標)発光細胞生存度検定であり、これは、Promega (Madison, WI)から市販されている。その検定は、代謝的活性細胞の指標であるATPの存在量に基づいて、培養中の生存可能細胞の数を確定する(Crouch et al (1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88、米国特許第6602677号参照)。検定は、96または384ウェル・フォーマットで実行されて、自動化高処理量スクリーニング(HTS)を容易にする(Cree et al (1995) AntiCancer Drugs 6:398-404参照)。検定手順は、単一試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を、培養細胞に直接付加することを包含する。これは、細胞溶解を引き起こし、ルシフェラーゼ反応により生成される発光シグナルを生じる。発光シグナルは、存在するATPの量に比例し、これは、培養中に存在する生存可能細胞の数に直接比例する。データは、ルミノメーターまたはCCDカメラ画像処理装置により記録され得る。発光出力は、相対発光単位(RLU)として表される。
細胞増殖に関する別の検定は、ミトコンドリアレダクターゼによるフォルマザンへの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドの酸化を測定する比色検定である「MTT」検定である。CellTiter-Glo(登録商標)検定と同様に、この検定は、細胞培養中に存在する代謝的活性細胞の数を示す(例えば、Mosmann (1983) J. Immunol. Meth. 65:55-63、およびZhang et al. (2005) Cancer Res. 65:3877-3882参照)。
一態様では、抗FcRH5抗体は、in vitroでの細胞死を誘導するその能力に関して試験される。細胞死の誘導に関する検定は、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、このような検定は、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore et al. (1995) Cytotechnology, 17:1-11参照)または7AADの取込みにより示されるような膜完全性の損失を測定する。例示的PI取込み検定では、細胞は、ダルベッコの変法イーグル培地(D−MEM):ハムF12(50:50)(10%熱不活性化FBS(Hyclone)および2mM L−グルタミンを補足)中で培養される。したがって、検定は、補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で実施される。細胞は、100×20mm皿中に3×106/皿の密度で植えつけられ、一晩結合させる。培地が除去され、新たな培地のみと、または種々の濃度の抗体または免疫接合体を含有する培地と取り替えられる。細胞は、3日間、インキュベートされる。処理後、単一層がPBSで洗浄され、トリプシン処理により剥がされる。次いで、細胞は、4℃で5分間、1200rpmで遠心分離され、ペレットが3mlの冷Ca2+結合緩衝液(10mM Hepes、pH 7.4、140mM NaCl、2.5mM CaCl2)中に再懸濁されて、35mm濾し蓋付き12×75mm管中にアリコート化(1ml/管、3管/処置群)して、細胞塊を取り出す。次いで、管に、PI(10μg/ml)を入れる。試料は、FACSCAN(登録商標)フローサイトメトリーおよびFACSCONVERT(登録商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析され得る。PI取込みにより確定されるような統計学的有意レベルの細胞死を誘導する抗体または免疫接合体が、このようにして同定される。
一態様では、抗FcRH5抗体または免疫接合体は、in vitroでアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導するその能力に関して試験される。アポトーシスを誘導する抗体または免疫接合体に関する例示的検定は、アネキシン結合検定である。例示的アネキシン検定では、細胞は、前段落で考察されたように皿中で培養され、植えつけられる。培地が除去され、新たな培地のみと、または0.001〜10μg/mlの抗体または免疫接合体を含有する培地と取り替えられる。3日間のインキュベーション期間後、単一層がPBSで洗浄され、トリプシン処理により剥がされる。次いで、細胞は、前段落で考察されたようにCa2+結合緩衝液中に再懸濁され、試験管中にアリコート化される。次いで試験管にラベル化アネキシン(例えば、アネキシンV−FITC)(1μg/ml)を入れる。試料は、FACSCAN(登録商標)フローサイトメトリーおよびFACSCONVERT(登録商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析され得る。対照に比して統計学的に有意レベルのアネキシン結合を誘導する抗体または免疫接合体が、このようにして同定される。アポトーシスを誘導する抗体または免疫接合体に関する別の例示的検定は、ゲノムDNAのヌクレオソーム間分解を検出するためのヒストンDNA ELISA比色検定である。このような検定は、例えば、細胞死検出ELISAキット(Roche, Palo Alto, CA)を用いて実施され得る。
in vitro検定において上記のいずれかで用いるための細胞としては、天然にFcRH5を発現するか、またはFcRH5を発現するよう操作された細胞または細胞株が挙げられる。このような細胞としては、同一組織起源の正常細胞に比してFcRH5を過剰発現する腫瘍細胞が挙げられる。このような細胞としては、さらにまた、FcRH5を発現する細胞株(腫瘍細胞株を含む)、ならびにFcRH5を普通は発現しないが、しかしFcRH5をコードする核酸でトランスフェクトされた細胞株が挙げられる。
一態様では、抗FcRH5抗体またはその免疫接合体は、in vivoでの細胞の成長または増殖を抑制するその能力に関して試験される。ある実施形態では、抗FcRH5抗体またはその免疫接合体は、in vivoでの腫瘍増殖を抑制するその能力に関して試験される。in vivoモデル系、例えば異種移植片モデルは、このような試験のために用いられ得る。例示的異種移植片系では、ヒト腫瘍細胞が適切に免疫無防備状態にされた非ヒト動物、例えばSCIDマウス中に導入される。本発明の抗体または免疫接合体が、動物に投与される。腫瘍増殖を抑制するかまたは低減する抗体または免疫接合体の能力が、測定される。上記異種移植片系のある実施形態では、ヒト腫瘍細胞は、ヒト患者からの腫瘍細胞である。異種移植片モデルを調製するために有用なこのような細胞は、ヒト白血病およびリンパ腫細胞株を包含し、その例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:BJAB−luc細胞(ルシフェラーゼレポーター遺伝子でトランスフェクトされたEBV−陰性バーキットリンパ腫細胞株)、ラモス細胞(ATCC、Manassas,VA、CRL−1923)、SuDHL−4細胞(DSMZ、Braunschweig, Germany, AAC 495)、DoHH2細胞(Kluin-Neilemans, H.C. et al., Leukemia 5:221-224 (1991)、およびKluin-Neilemans, H.C. et al., Leukemia 8:1385-1391 (1994)参照)、Granta−519細胞(Jadayel, D.M. et al, Leukemia 11(1):64-72 (1997)参照)。ある実施形態では、ヒト腫瘍細胞は、皮下注射により、または***脂肪パッドのような適切な部位への移植により、適切に免疫無防備常態にされた非ヒト動物に導入される。
2.結合検定およびその他の検定
一態様では、抗FcRH5抗体は、その抗原結合活性に関して試験される。例えば、ある実施形態では、抗FcRH5抗体は、細胞の表面に発現されるFcRH5と結合するその能力に関して試験される。FACS検定が、このような試験のために用いられ得る。
一態様では、競合検定を用いて、FcRH5との結合に関してネズミ13G9抗体(mu13G9)、ヒト化13G9抗体および/またはヒト化13G9.v1、および/またはヒト化13G9.v3および/またはヒト化13G9.v8抗体と競合するモノクローナル抗体を特定し得る。ある実施形態では、このような競合抗体は、ネズミ13G9抗体、ヒト化13G9.v1抗体、および/またはヒト化13G9.v3抗体および/またはヒト化13G9.v8により結合される同一エピトープ(例えば、線状または立体配座エピトープ)に結合する。例示的競合検定としては、慣例的検定、例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)に提示されたような検定が挙げられるが、これらに限定されない。抗体が結合するエピトープのマッピング方法の詳細な例は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に示されている。2つの抗体は、各々が他の結合を50%より多く遮断する場合、同一エピトープと結合するといわれている。
例示的競合検定では、固定化FcRH5は、FcRH5と結合する第一ラベル化抗体(例えば、ネズミ13G9抗体(mu13G9)、キメラ13G9抗体(ch13G9)および/またはヒト化13G9抗体(hu13G9)、およびFcRH5との結合に関して第一抗体と競合するその能力に関して試験されている第二非ラベル化抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第二抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化FcRH5が、第一ラベル化交代を含むが第二非ラベル化抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第一抗体とFcRH5との結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰量の非結合抗体が除去され、固定化FcRH5と会合したラベルの量が測定される。固定化FcRH5と会合したラベルの量が、対照試料に比して試験試料中で実質的に減少されている場合には、それは、第二抗体がFcRH5との結合に関して第一抗体と競合している、ということを示す。ある実施形態では、固定化FcRH5は、細胞の表面に存在するか、あるいはその表面にFcRH5を発現する細胞から得られた膜調製物中に存在する。
一態様では、精製抗FcRH5抗体は、さらに、一連の検定、例えばN末端配列決定、アミノ酸分析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分光分析、イオン交換クロマトグラフィーおよびパパイン消化(これらに限定されない)により特性化され得る。
一実施形態では、、本発明は、in vivoでの抗体の半減期が重要である多数の用途のための望ましい候補にそれをする、いくつかの(しかし全てではない)エフェクター機能を保有する変更された抗体を意図するが、しかしある種のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)は必要でないかまたは有害である。ある実施形態では、抗体のFc活性は、所望の特性のみが維持される、ということを保証するために測定される。in vitroおよび/またはin vivo細胞傷害性検定は、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確証するために実行され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合検定は、抗体がFcγR結合を欠く(それゆえ、ADCC活性を欠くと思われる)が、しかしFcRn結合能力を保持する、ということを保証するために実行され得る。ADCCを媒介するための一次細胞、NK細胞はFc(RIII)のみを発現するが、一方、単球はFc(RI)、Fc(RII)およびFc(RIII)を発現する。造血系細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。当該分子のADCC活性を査定するためのin vitro検定の一例は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されている。このような検定のために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的には、または付加的には、当該分子のADCC活性は、in vivoで、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されたような動物モデルで査定され得る。C1q結合検定は、抗体がC1qを結合できず、それゆえCDC活性を欠く、ということを確証するためにも用いられ得る。補体活性化を査定するために、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されたようなCDC検定が実施され得る。FcRn結合およびin vivoクリアランス/半減期確定も、当該技術分野で既知の方法を用いて実施され得る。
例証目的のために以下の実施例を提示するが、これらは、如何なる点でも本発明の範囲を限定するものではない。
本明細書中で引用される特許および参考文献は全て、これらの記載内容が参照により本明細書中で援用される。
実施例で言及される市販の試薬は、別記しない限り、メーカーの使用説明書に従って用いた。実施例中で用いた抗体は、市販の抗体または本明細書中で記載される抗体である。以下の実施例で、ならびに本明細書全体を通して、ATCC寄託番号により同定される細胞の供給源は、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection, Manassas, VA)である。
実施例1:FcRH5を結合する抗体の調製
この実施例は、FcRH5を特異的に結合し得るモノクローナル抗体の調製を例証する。
モノクローナル抗体を産生するための技法は当該技術分野で既知であり、例えば、Goding(上記)に記載されている。用いられ得る免疫原としては、精製FcRH5、FcRH5を含有する融合タンパク質、ならびに細胞表面に組換えFcRH5を発現する細胞が挙げられる。免疫原の選択は、過度の実験を伴なわずに、当業者によりなされ得る。
マウス(例えばBalb/c)は、完全フロイントアジュバント中で乳化され、そして1〜100マイクログラムの量で皮下または腹腔内に注射されるFcRH5免疫原を用いて免疫化される。代替的には、免疫原は、MPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research, Hamilton, MT)中で乳化され、動物の後足蹠に注射される。次いで、10〜12日後に、選択アジュバント中で乳化した付加的免疫原を用いて、免疫化マウスに追加免疫する。その後、数週間、マウスを付加的免疫化注射で追加免疫する。抗FcRH5抗体を検出するために、ELISA検定で試験するための眼窩後方採血により、マウスから定期的に試料を採取し得る。
適切な抗体力価を検出後、抗体に関して「陽性」である動物に、免疫原の最終静脈内注射を注入し得る。3〜4日後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を採取する。次に、脾臓細胞を、(35%ポリエチレングリコールを用いて)選択ネズミ骨髄腫細胞株、例えばP3X63AgU.1(ATCC番号 CRL 1597から入手可能)と融合する。融合によりハイブリドーマ細胞を得て、これを次に、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)培地を含入する96ウェル組織培養プレート中で平板化して、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッドおよび脾臓細胞ハイブリッドの増殖を抑制し得る。
免疫原に対する反応性に関して、ELISAでハイブリドーマ細胞をスクリーニングする。免疫原に対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の確定は、当該技術分野の技術の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系Balb/cマウス中に腹腔内注射して、抗免疫原モノクローナル抗体を含有する腹水を産生し得る。代替的には、組織培養フラスコまたは回転ボトル中で、ハイブリドーマ細胞を増殖させ得る。硫酸アンモニウム沈降を用い、その後、ゲル排除クロマトグラフィーを用いて、腹水中に産生されるモノクローナル抗体の精製を成し遂げ得る。代替的には、抗体とプロテインAまたはプロテインGとの結合を基礎にしたアフィニティークロマトグラフィーを用い得る。
この技法(複数可)を用いて、本明細書中に開示されるFcRH5ポリペプチドに対して向けられる抗体を、首尾よく産生し得る。さらに具体的には、FcRH5タンパク質を認識し、結合し得る機能性モノクローナル抗体(標準ELISA、FACS選別分析および/または免疫組織化学分析により測定)を、本明細書中に開示されるような以下のFcRH5タンパク質に対して首尾よく生成し得る:PRO820(DNA56041)、PRO52387(DNA257845)。
本明細書中に記載されるようなFcRH5ポリペプチドに対して向けられるモノクローナル抗体の調製のほかに、当該FcRH5ポリペプチドを(in vitroおよびin vivoの両方で)発現する細胞(または組織)に対して細胞毒素を向けるに際して用いるために、モノクローナル抗体の多くを細胞毒素と首尾よく接合し得る。例えば、毒素(例えば、DM1)誘導体化モノクローナル抗体を、本明細書中に記載されるような以下のFcRH5ポリペプチドに対して首尾よく生成し得る:PRO820(DNA56041)、PRO52387(DNA257845)。
A. FcRH5/IRTA2(PRO820、PRO52387)安定細胞株の生成
FcRH5抗体をスクリーニングするための細胞株を作製するために、タグ化および非タグ化FcRH5/IRTA2を安定的に発現するSVT2マウス繊維芽細胞株を生成した。FcRH5/IRTA2 cDNAを脾臓細胞ライブラリーからPCR増幅し、TAをpCR4中でクローン化した(Invitrogen)。非タグ化発現構築物を作製するために、PCRを用いて、制限部位を付加し、PCR産物を消化し、ベクターと結紮することにより、哺乳類発現ベクターpCMV.PD.nbe中にオープンリーディングフレーム(ORF)をクローン化した。シグナル配列を伴わずにFcRH5/IRTA2 ORFsを増幅し、PCR産物をgDタグおよびシグナル配列(MGGTAARLGAVILFVVIVGHGVRGKYALADASLKMADPNRFRGKDLPVLDQLL)(配列番号1)を含有するpMSCVneo(Clonetech)ベクターに結紮することにより、N末端タグ化発現構築物を作製した。各FcRH5/IRTA2に関して、FACS特異的反応性ならびにFcRH5/IRTA間の交差反応性に関してモノクローナル抗体をスクリーニングするのに用いるために、2つの安定細胞株を確立した。標準リポフェクトアミン2000(Invitrogen, Carlsbad, Ca)プロトコールにより、gD−タグ化および非タグ化発現ベクターをSVT2中でトランスフェクトした(高グルコースDMEM+10%FBS+2mM L−グルタミン中で細胞を増殖)。gDタグ化トランスフェクト体を、1週間、0.5mg/mlゲネチシン(Invitrogen, Carlsbad, Ca)選択下に置き、次に、gD−タグ特異的モノクローナル抗体(gD:952、Genentech; South San Francisco)を用いて単一細胞FACS選別して、最高発現クローンを得た。コロニーが可視的に成長するまで、非タグ化トランスフェクト体を5.0ug/mlプロマイシン(Calbiochem; La Jolla, Ca)選択下に置いた。標準Trizola(Invitrogen; Carlsbad, Ca)プロトコールにより各コロニーからRNAを単離して、TaqMana(ABI; Foster City, Ca)を実行して、最高産生クローンを確定した。
B. FcRH5/IRTA2(PRO820、PRO52387)に対するモノクローナル抗体の生成
ヒトFcRH5を結合し得るネズミモノクローナル抗体を調製した。
FcRH5/IRTA2のHis−タグ化細胞外ドメイン(ECD)を発現するベクターの、CHO細胞中での一過性トランスフェクションにより、マウスの免疫化のためのタンパク質を生成した。ニッケルカラム上でトランスフェクト化細胞上清からタンパク質を精製し、タンパク質の同一性を、N末端配列決定により確証した。
Ribiアジュバント(Ribi Immunochem Research, Inc., Hamilton, MO)中の組換えポリヒスチジンタグ化(HIS6(配列番号69))タンパク質を用いて、10匹のBalb/cマウス(Charles River Laboratories, Hollister, CA)を超免疫化した。直接ELISAにより免疫原に対する高抗体力価を実証する、そしてFACSにより当該FcRHを安定的に発現するSVT2マウス繊維芽細胞と特異的に結合するマウスからのB細胞を、前に記載されたもの(Kohler and Milstein, 1975; Hongo et al., 1995)と類似の変法プロトコールを用いて、マウス骨髄腫細胞(X63.Ag8.653;American Type Culture Collection, Rockville, MD)と融合させた。10〜12日後、上清を採取し、直接ELISAおよびFACSにより、抗体産生および結合に関してスクリーニングした。限定希釈による2回目サブクローニング後に最高免疫結合を示す陽性クローンを展開し、さらなる特性化、例えばFcRH1、−2、−3、−4および−5特異性ならびに交差反応性のために培養した。各ハイブリドーマ系統から採取した上清を、以前記載されたもの(Hongo et al., 1995)と類似の変法プロトコールを用いて、アフィニティークロマトグラフィー(Pharmacia fast protein liquid chromatography [FPLC]; Pharmacia, Uppsala, Sweden)により精製した。次に、精製抗体調製物を滅菌濾過し(孔サイズ0.2μm;Nalgene, Rochester NY)、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に4℃で保存した。
FcRH5タンパク質を認識し、結合し得るモノクローナル抗体(標準ELISA、FACS選別分析および/または免疫組織化学分析により測定)を、PRO52837(FcRH5/IRTA2c)に対して首尾よく生成し、以下のように命名した:
抗FcRH5−9E2(本明細書中では9E2または9E2.1.1と呼ばれる)(ATCC番号 PTA−7207、2005年11月9日寄託)、
抗FcRH5−1H4(本明細書中では1H4または1H4.1.1と呼ばれる)(ATCC番号 PTA−7208、2005年11月9日寄託)、
抗FcRH5−13G9(本明細書中では13G9または13G9.1.1と呼ばれる)(本明細書中に記載)、
抗FcRH5−4D10(本明細書中では4D10または4D10.1.1と呼ばれる)(ATCC番号 PTA−7210、2005年11月9日寄託)、
抗−FcRH5−6H1(本明細書中では6H1または6H1.1.1と呼ばれる)(ATCC番号 PTA−7211、2005年11月9日寄託)、
抗FcRH5−8H6(本明細書中では8H6または8H6.1.1と呼ばれる)(ATCC番号 PTA−7212、2005年11月9日寄託)、
抗FcRH5−7D11(本明細書中では7D11または7D11.1.1と呼ばれる)(本明細書中に記載)、
抗FcRH5−10A8(本明細書中では10A8または10A8.1.1と呼ばれる)(米国特許仮出願61/211,695号(2009年4月1日出願)、61/166,217(2009年4月2日出願)および61/266,972(2009年12月4日出願)に記載)。
1. 親和力確定 (Biacore解析)
Biacore 2000表面プラズモン共鳴システム(BIAcore, Inc.)を用いて測定される会合および解離速度定数から、IgGのFcRH結合親和力を算定した。供給元の使用説明書(BIAcore, Inc.)に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて、抗ネズミIgG(BR−1008−338)の共有結合のために、バイオセンサーチップを活性化した。要するに、動力学分析の各周期に関して、5ulの100nM IgGをチップ上に捕捉し、種々のFcRHの2倍連続希釈液を、20ul/分の流量で150秒間、注入した。抗原解離を180秒間モニタリングした後、再生させた。1:1ラングミュア結合モデルとデータを適合させることにより、25℃での平衡解離定数を算定した。実行緩衝液は、0.05%トゥイーン−20を含有するPBSであった。結果を、以下の表9に示す。抗体は全て、治療薬として用いられるのに十分な親和力で抗原を結合した。
C. キメラ抗ヒトFcRH5抗体の構築および配列決定
1. キメラ 抗ヒトFcRH5抗体7D11 (ch7D11)
キメラ7D11 IgG1の構築のために、Qiagen RNeasyミニキット(カタログ番号74104)およびメーカー提示プロトコールを用いて、7D11ハイブリドーマ細胞から総RNAを抽出した。7D11モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖に関して得たN末端アミノ酸配列を用いて、各鎖に特異的なPCRプライマーを設計した。RT−PCRのための逆向プライマーを、N末端配列に対応する遺伝子ファミリーのフレームワーク4と整合するよう設計した。クローニングのための所望の制限部位を付加するためにも、プライマーを設計した。軽鎖に関しては、これらはN末端でEcoRV、ならびにフレームワーク4の3’でKpnIであった。重鎖に関しては、付加した部位は、N末端にBsiWI、ならびにVH−CH1接合部のわずかに下流のApaIであった。プライマー配列を以下に示す:
7D11LCF.EcoRV (7D11 軽鎖順向プライマー):
5’- GATCGATATCYTGCTSACMCARTGTCCAGC - 3’ (配列番号2)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=A/C, R=A/G, D=G/A/T. S=G/C, H=A/T/C)
C7F7LCR.KpnI (7D11 軽鎖逆向プライマー):
5’- TTTDAKYTCCAGCTTGGTACC- 3’ (配列番号3)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=A/C, R=A/G, D=G/A/T. S=G/C, H=A/T/C)
1D1(IIID-2)HCF.BsiWI (7D11 重鎖順向プライマー):
5’- GATCGACGTACGCTGARGTGCARYTGGTGGARTCTGG- 3’ (配列番号4)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=A/C, R=A/G, D=G/A/T. S=G/C, H=A/T/C)
C7F7HCR.ApaI (7D11 重鎖逆向プライマー):
5’- ACAGTGGGCCCTTGGTGGAGGCTGMRGAGACDGTGASHRDRGT- 3’ (配列番号5)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=A/C, R=A/G, D=G/A/T. S=G/C, H=A/T/C)
QiagenワンステップRT−PCRキット(カタログ番号210210)ならびに示唆された反応混合物および条件を用いて、軽鎖および重鎖に関するRT−PCR反応を実行した。IgGの哺乳動物細胞発現のためのpRKベクターは、前に記載されている(Gorman et al., DNA Prot Eng Tech 2:3-10 (1990))。ベクターを修飾し、あるエンドヌクレアーゼ制限酵素認識部位を組入れて、クローニングおよび発現を助長した(Shields et al., J Biol Chem 2000; 276: 6591-6604)。増幅VLを、ヒトκ定常ドメインを含有するpRK哺乳動物細胞発現ベクター(pRK.LPG3.HumanKappa)中でクローン化した。増幅VHを、全長ヒトIgG1定常ドメインをコードするpRK哺乳動物細胞発現ベクター(pRK.LPG4.HumanHC)に挿入した。
抗ヒトFcRH5に関する結果的に生じたネズミ−ヒトキメラ軽鎖(図1)および重鎖(図3)の全コード領域に関して、DNA配列を得た(ch7D11)。DNAによりコードされるネズミ−ヒトキメラ軽鎖および重鎖に関するコード化ポリペプチドを、それぞれ図2および図4に示す。DNA配列決定後、プラスミドの発現を分析した。
293(アデノウイルス形質転換ヒト胚性腎臓細胞株(Graham et al., J. Gen. Virol., 36: 59-74 (1977))中で、プラスミドを一時的にトランスフェクトした。具体的には、トランスフェクション前日に、293細胞をばらばらにして、血清含有培地中に平板化した。翌日、リン酸カルシウム沈降物として調製した二本鎖DNAを付加し、その後、pAdVAntage(商標)DNA(Promega, Madison, WI)を付加して、37℃で一晩、細胞をインキュベートした。無血清培地中で細胞を培養し、4日後に採取した。プロテインAカラム上のトランスフェクト化細胞上清から抗体タンパク質を精製し、次いで、緩衝液を10mMコハク酸ナトリウム、140mM NaCl、pH6.0に交換して、Centricon−10(Amicon)を用いて濃縮した。N末端配列決定により、タンパク質の同一性を確証した。定量的アミノ酸分析により、タンパク質濃度を確定した。以下で説明するように、SVT2細胞中でFACSにより、ヒトFcRH5との結合に関して抗体を試験した。
2. キメラ抗ヒトFcRH5抗体10A8 (ch10A8)
抗ヒトFcRH5ハイブリドーマのパネルの一成員として、抗体10A8を得た。RT−PCRを用いてこれらの抗体のマウス/ヒト・キメラを構築して、基質として全mRNAを用いてハイブリドーマ軽鎖および重鎖の可変ドメインを増幅した。軽鎖可変ドメインを、ヒト定常κドメインを含有するベクターpRK.LPG3.HumanKappa中でクローン化し、一方、重鎖可変ドメインを、全長ヒトIgG1定常ドメインをコードするベクターpRK.LPG4.HumanHC中でクローン化した。DNA配列決定は、可変ドメインのフレームワークおよびCDR領域の特定を可能にする。10A8のキメラおよびヒト化バージョンは、米国特許仮出願61/211,695号(2009年4月1日出願)、61/166,217(2009年4月2日出願)および61/266,972(2009年12月4日出願)(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
3. キメラ抗ヒトFcRH5抗体13G9 (ch13G9)
抗ヒトFcRH5ハイブリドーマのパネルの一成員として、抗体13G9を得た。上記のようにRT−PCRを用いてこれらの抗体のマウス/ヒト・キメラを構築して、基質として全mRNAを用いてハイブリドーマ軽鎖および重鎖の可変ドメインを増幅した。軽鎖可変ドメインを、ヒト定常κドメインを含有するベクターpRK.LPG3.HumanKappa中でクローン化し、一方、重鎖可変ドメインを、全長ヒトIgG1定常ドメインをコードするベクターpRK.LPG4.HumanHC中でクローン化した。抗ヒトFcRH5に関する結果的に生じたネズミ−ヒトキメラ軽鎖(図5)および重鎖(図7)の全コード領域に関して、DNA配列を得た(ch13G9)が、これが、可変ドメインのフレームワークおよびCDR領域の同定を可能にした。DNAによりコードされる13G9ネズミ−ヒトキメラ軽鎖および重鎖に関するコード化ポリペプチドを、それぞれ図6および図8に示す。
RT−PCRのために用いられるプライマーの配列を以下に示す:
13G9LCF.EcoRV (13G9 軽鎖順向プライマー):
5’- GGAGTACATTCAGATATCGTGATGACCCARTCTCAGAAAATCATG- 3’ (配列番号6)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=AZ\/C, R=A/G. D=G/A/T. S=G/C, H-A/T/C)
CA1808 RsrII (13G9軽鎖逆向プライマー):
5’- GGTGCAC^CACGGTCCGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCTCCACC- 3’ (配列番号7)
MM102hc.f. PvuII (13G9重鎖順向プライマー):
5r- GGA GTA CAT TCA CAG ATC CAG CTG GTG CAG TCT GGA CCT GAG CTT AAG AAG- 3’ (配列番号8)
CA2l72.ApaI (13G9重鎖逆向プライマー):
5’-GACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACGGTGASTGWGGTTCC- 3’ (配列番号9)
(B=G/T/C , K=G/T, Y=C/T, M=A/C, R=A/G, D=G/A/T. S=G/C. H=A/T/C)
D. ヒト化抗ヒトFcRH5抗体13G9の生成
残基番号は、カバト(Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))に従った。一文字アミノ酸記号を用いる。IUBコードを用いて、DNA縮重を表す(N=A/C/G/T、D=A/G/T、V=A/C/G、B=C/G/T、H=A/C/T、K=G/T、M=A/C、R=A/G、S=G/C、W=A/T、Y=C/T)。
1.ヒト化抗-FcRH5抗体移植片
種々のヒト化抗FcRH5抗体を生成した。ネズミFcRH5抗体(13G9)からのVLおよびVHドメインを、ヒト共通VLカッパ(huKI)およびヒト亜群III共通VH(huIII)ドメインと整列させた。ヒト共通配列カッパIを伴うネズミ13G9(mu13G9)の軽鎖可変ドメインのアラインメントを、図9に示す。哺乳類シグナル配列、ヒトVカッパI可変ドメインに関する共通配列、およびヒト定常カッパIドメインを含有する哺乳類発現ベクター上に、13G9のCDRを操作操作した。Kunkle突然変異誘発プロトコールに従って、各CDRをコードする単一オリゴヌクレオチド、および受容体プラスミドのssDNAを用いて、CDRを移入した。フレームワーク2中の1つのネズミ残基であるアラニン46、バーニア残基も、ドナーmAbから受容体プラスミドに移した。移植した残基、ならびにその結果生じたヒト13G9バージョン一軽鎖可変ドメインを、図9に示す。
同様に、哺乳類シグナル配列、ヒト重鎖亜群IIIの共通配列、および全長ヒトIgG1定常ドメインをコードする配列を含有するベクター上に、ネズミ13G9の重鎖可変ドメインのCDRを操作操作した。CDRの立体配座に影響を及ぼすことが知られているいくつかのバーニア残基でネズミ対比と残基に差異は認められなかったため、位置6、69、71、73、76および78でのネズミフレームワーク残基も、ドナーから受容体プラスミドに移した。ネズミ13G9重鎖可変ドメイン、ヒト亜群III可変ドメインのアラインメント、ならびにその結果生じたヒト13G9バージョン1(hu13G9.v1)重鎖可変ドメインを、図10に示す。
上記と同様に13G9のキメラおよびバージョン1を、293細胞中で発現させて、精製した。その結果生じたタンパク質の結合を、FACSおよびスカチャード分析により分析した(下記参照)。13G9のバージョン1(hu13G9.v1)のFcRH5を発現する細胞への結合はキメラと本質的に等価であり、したがって、バージョン1を接合試験のために次に進めた。
ヒト化13G9の発現は比較的低い、ということがみとめられた。ネズミ13G9のフレームワーク配列といくつかのヒト亜群共通配列との比較は、13G9が、亜群IIIよりヒト亜群VIIおよびIIによりよく似ている、ということを示した。これは、FcRH5への高親和性結合する場合でも、13G9のCDRが亜群IIIのフレームワークに対してヒト化されると、おそらくはタンパク質フォールディングは最適でない、ということを示唆した。したがって、発現を改良するために、フレームワークの改変を23G9バージョン1に対して行い、亜群VIIへの相同性を増大させた。バージョン1、バージョン3およびバージョン8の重鎖の可変ドメインのアラインメントを、図11に示す。行った置換を、以下に示す:バージョン3(hu13G9.v3)に関しては、V12K、V13K、V78A(フレームワーク中)。CDR H1では、置換M34Iも行い、パッキングを改良した。バージョン8(hu13G9.v8)に関しては、置換はL11V、V12K、V13K、L18V、R19K、L20V、K75V、V78A、N82I、N82aS、R83KおよびM34Iである。
2. IgG産生
293(アデノウイルス形質転換ヒト胚性腎臓細胞株(Graham et al., J. Gen. Virol., 36: 59-74 (1977))中で、プラスミドを一時的にトランスフェクトした。具体的には、トランスフェクション前日に、293細胞をばらばらにして、血清含有培地中に平板化した。翌日、リン酸カルシウム沈降物として調製した二本鎖DNAを付加し、その後、pAdVAntage(商標)DNA(Promega, Madison, WI)を付加して、37℃で一晩、細胞をインキュベートした。無血清培地中で細胞を培養し、4日後に採取した。プロテインAカラム上でトランスフェクト化細胞上清から抗体タンパク質を精製し、次いで、緩衝液を10mMコハク酸ナトリウム、140mM NaCl、pH6.0に交換して、Centricon−10(Amicon)を用いて濃縮した。N末端配列決定により、タンパク質の同一性を確証した。定量的アミノ酸分析により、タンパク質濃度を確定した。以下で説明するように、SVT2細胞中でFACSにより、ヒトFcRH5との結合に関して抗体を試験した。
3. 結合分析(FACS分析)
FcRH5抗体の交差反応性を確定するために、IgG変異体とヒトFcRH1〜6を発現するSVT2細胞との結合を、FACS分析を用いて分析した。
要するに、100μl中でgDタグ化huFcRH1〜6を安定的に発現する約106細胞のSVT2細胞を、1.0ugのネズミまたはキメラAb[Mu抗−gD(陽性対照)、Mu抗−FcRH5(1H4)(“mu1H4”)、Mu抗−FcRH5(4D10)(“mu4D10”)、Mu抗−FcRH5(6H1)(“mu6H1”)、Mu抗−FcRH5(7D11)(“mu7D11”)、Ch抗−FcRH5(7D11)(“ch7D11”)、Mu抗−FcRH5(8H6)(“mu8H6”)、Mu抗−FcRH5(9E2)(“mu9E2”)またはMu抗−FcRH5(13G9)(“mu13G9”)]とともにインキュベートした。空ベクターを安定的に発現するSVT2細胞のインキュベーションを、同一抗体とともにインキュベートして、陰性対照として用いた。PE接合ラット抗−MuIgG1、ラット抗−MuIgG2a+bまたはMu抗−HuIgGを、第二検出抗体として用いた。結果を、図15に示す。試験抗体は全て、FcRH5に特異的に結合するが、但し、mu6H1に関しては、FcRH1と交差反応する。mu8H6は、FACS分析によると、弱いが、しかしFcRH5特異的な抗体である。
マウスFcRH5抗体の結合をさらに確定するために、ヒトFcRH5を発現するRaji細胞およびカニクイザルFcRH5を発現する293T細胞とのIgG変異体の結合を、FACS分析を用いて分析した。
要するに、約106個の、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされるRaji細胞およびgDタグ化cynoFcRH5で一時的にトランスフェクトされる293T細胞を、1.0μgのビオチニル化マウスアイソタイプ対照、ビオチニル化mu抗gD、ビオチニル化mu6H1、ビオチニル化mu13G9またはビオチニル化mu7D11とともに100μlFACS緩衝液(PBS、0.5%BSA、0.05%アジ化ナトリウム)中でインキュベートする。PE接合ストレプトアビジンを、第二検出試薬として用いた。結果を、図16および17に示す。
FcRH5抗体のさらなるFACS分析のために、1.0mg、0.1mgまたは0.01mgの抗体を、huFcRH5を安定的に発現するBJAB細胞およびcynoFcRH5を安定的に発現するSVT2細胞の100万個当たりで滴定した。要するに、100μl中約106細胞を、huFcRH5を安定的に発現するBJAB細胞、およびcynoFcRH5を安定的に発現するSVT2細胞の100万個当たり種々の量(1.0mg、0.1mgまたは0.01mg)のネズミAb(mu1H4、mu4D10、mu6H1、mu7D11、mu9E2、mu10A8、mu10F5またはmu13G9)/100万個細胞のBJAB細胞(huFcRH5を安定的に発現する)およびSVT2細胞(cynoFcRH5を安定的に発現する)とともにインキュベートした。1.0ug/106細胞の適切なMu IgGアイソタイプ対照を伴うインキュベーションを、陰性対照として用いた。PE接合ラット抗−MuIgG1またはラット抗−MuIgG2a+bを、第二検出抗体として用いた。結果を、図18および19に示す。Mu抗FcRH5(1H4)、Mu抗FcRH5(6H1)、Mu抗FcRH5(7D11)、Mu抗FcRH5(10A8)、Mu抗FcRH5(10F5)またはMu抗FcRH5(13G9)は、FACS分析により、カニクイザルFcRH5と交差反応し、それらは、前臨床安全性試験に用いられて、標的依存性毒性を査定する。
4. 親和力確定 (スカチャード分析)
FcRH5ネズミ抗体およびIgGクローンの結合、ヨウ素化IgG変異体と、ヒトFcRH5を発現するOPM2細胞およびカニクイザルFcRH5を発現するSVT2細胞との結合をさらに確定するために、スカチャード分析を実施した(図9A)。
スカチャード分析のために、0.5nM I
125ラベル化ネズミまたはIgGクローン抗−FcRH5を、ヒトFcRH5を安定的に発現するトランスフェクト化OPM2株およびカニクイザルFcRH5を安定的に発現するトランスフェクト化SVT2株の存在下で、それぞれ、50〜0.02nM(12ステップ 1:2連続希釈液)の範囲の、非ラベルネズミまたはIgGクローン抗FcRH5に対して競合させた。4℃で4時間インキュベーション後、細胞を洗浄し、細胞ペレット数をガンマ計数器(1470 WIZARD Automatic Gamma Counter; Perkin Elmer, Walthem, MA)で読み取った。全ての点を三重反復試験で実行し、10分間計数した。New Ligand (Genentech, South San Francisco, CA)プログラムを用いて、Kd算定のために平均CPMを用いた。結果を表9Aに示す。
実施例2: 抗FcRH5抗体薬剤接合体(ADC)の生成
抗ヒトFcRH5に関する抗体薬剤接合体(ADC)の生成のために用いられる薬剤は、マイタンシノイドDM1およびDM4ならびにドラスタチン10誘導体モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を包含した(US20050276812(2005年5月31日出願)およびUS20050238649(2004年11月5日出願)(これらの記載内容はともに、参照により本明細書中で援用される)参照)。MMAFは、MMAE、DM1およびDM4と違って、中性pHで比較的膜不透過性であり、したがって、遊離薬剤として比較的低い活性を有するが、しかし、それは、一旦細胞中にあると、非常に強力である(Doronina et al., Bioconjug. Chem., 17:114-123 (2006))。DM1、DM4、MMAEおよびMMAFは、NHLの化学療法的処置に用いられるビンカアルカロイド有糸***阻害剤より少なくとも100倍以上細胞傷害性である有糸***阻害剤である(Doronina et al., Bioconjug. Chem., 17:114-123 (2006);Doronina et al., Nat. Biotechnol., 21: 778-784 (2003);Erickson et al., Cancer Res., 66: 4426-4433 (2006))。ADCの生成のために用いられるリンカーは、DM1に対するSMCC、DM4に対するSPDB、ならびにMMAEおよびMMAFに対するMCまたはMC−vc−PABであった。DM1およびDM4に関しては、抗体は、安定チオエステルリンカーSMCC(接合後はMCCと呼ばれる)を用いて、リシンのε−アミノ基を介してDM1およびDM4と連結された。代替的には、DM4に関して、抗体は、SPDBリンカーを用いて、リシンのe−アミノ基を介してDM4と連結された。SMCCリンカーにより結合されるDM1は、還元状態での開裂に耐性である。さらに、ADCが内在化され、リソソームに対して標的にされて、細胞内部では有効な抗有糸***剤であるリシン−Nε−DM1の放出を引き起こす場合、SMCC−DM1およびSPDB−DM4 ADCは、細胞毒性を誘導するが、細胞から放出される場合、リシン−Nε−DM1は非毒性である(
Erickson et al., Cancer Res., 66: 4426-4433 (2006))。MMAEおよびMMAFに関して、抗体は、マレイミドカプロイル−バリン−シトルリン(vc)−p−アミノベンジルオキシカルボニル(MC−vc−PAB)によりシステインを介してMMAEまたはMMAFに連結された。MMAFに関して、抗体は、代替的には、マレイミドカプロイル(MC)リンカーによりシステインを介してMMAFに連結される。MC−vc−PABリンカーは、細胞間プロテアーゼ、例えばカテプシンBにより切断可能であり、そして切断されると、遊離薬剤を放出する(Doronina et al., Nat. Biotechnol., 21: 778-784 (2003))が、一方、MCリンカーは、細胞内プロテアーゼによる切断に耐性である。
米国特許出願11/141,344(2005年5月31日出願)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載された手法と同様に、SMCC−DM1を用いて、抗ヒトFcRH5に関する抗体薬剤接合体(ADC)を生成した。抗ヒトFcRH5精製抗体を、50mMリン酸カリウムおよび2mM EDTA、pH 7.0を含有する溶液中に緩衝液交換した。SMCC(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を、ジメチルアセトアミド(DMA)中に溶解し、抗体溶液に付加して、最終SMCC/Abモル比を10:1とした。混合しながら、室温で3時間、反応を進行させた。その後、SMCC修飾抗体を、150mM NaClおよび2mM EDTA、pH6.0を有する35mMクエン酸ナトリウム中で平衡させたGE Healthcare HiTrap脱塩カラム(G−25)上で精製した。DMA中に溶解したDM1を、SMCC抗体調製物に付加して、DM1対抗体のモル比を10:1とした。混合しながら、室温で4〜20時間、反応を進行させた。DM1修飾抗体溶液を、20容積のPBSで透析濾過して、非反応DM1を除去し、滅菌濾過して、4℃で保存した。典型的には、この工程により、抗体の収率は40〜60%に達した。調製物は、ゲル濾過およびレーザー光散乱により査定した場合、通常は、>95%単量体物質であった。DM1は252nmで吸収最大を示すため、抗体と結合される薬剤の量は、252および280nmでの示差吸収測定により確定され得る。典型的には、薬剤体抗体比は、3:4であった。
3〜4つの薬剤/Abを用いて、抗ヒトFcRH5 SPDB DM4抗体−薬剤接合体を生成するために、抗体を、先ず、SPDB[4−(2−ピリジルジチオ)酪酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル]で修飾して、ジチオピリジル基を生成した。抗体に対して4〜6倍モル過剰量のSPDBを付加し、室温で90分間反応させた。5〜10mg/mlの抗体濃度で、50mM NaCl、2mM EDTAを有する50mMリン酸カリウム、pH7中で、反応を実行する。SPDB反応後、エタノールを付加して、最終濃度を5%V/Vとして、チオール含有DM4薬剤を、SPDBより1.7倍モル過剰量で付加した。室温で16時間、インキュベーションを実行する。透析濾過、ゲル濾過、または陽イオン交換クロマトグラフィーにより、接合体を精製する。
米国特許出願10/983,340(2004年11月5日出願)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載された手法と同様に、MC−val−cit(vc)−PAB−MMAE薬剤リンカーを用いて、抗ヒトFcRH5に関する抗体薬剤接合体(ADC)を生成した。精製抗ヒトFcRH5抗体を、500mMホウ酸ナトリウムおよび500mM塩化ナトリウム、pH8.0中に溶解し、さらに、余分量の100MMジチオトレイトール(DTT)で処理した。37℃で約30分間インキュベーション後、セファデックスG25樹脂上での溶離により緩衝液を交換し、1mM DTPAを含有するPBSで溶離した。溶液の280nmでの吸光度からの還元抗体濃度、ならびにDTNB(Aldrich, Milwaukee, WI)との反応によるチオール濃度を確定すること、ならびに412での吸光度の確定により、チオール/Ab値を調べた。PBS中に溶解した還元抗体を、氷上で冷やした。DMSO中の薬剤リンカーMC−val−cit(vc)−PAB−MMAEをアセトニトリルおよび水中に溶解し、PBS中の冷却還元抗体に付加した。1時間インキュベーション後、余分量のマレイミドを付加して、反応をクエンチし、任意の非反応抗体チオール基をキャップした。反応混合物を遠心式限外濾過により濃縮し、PBS中のG25樹脂を通した溶離により、抗体−薬剤接合体を精製し、脱塩して、滅菌条件下で0.2μmフィルターを通して濾過し、凍結保存した。
実施例3: 操作システイン操作された抗FcRH5抗体の調製
本明細書中に開示されたように、操作システイン操作された抗FcRH5抗体の調製を実施した。システイン残基を抗体の軽鎖、重鎖またはFc領域に付加して、種々の薬剤との接合を可能にし得る。システイン抗FcRH5抗体13G9の調製に際しては、軽鎖をコードするDNAを突然変異化して、図14に示すようにカバト位置205のバリンをシステインに置換した。重鎖をコードするDNAを突然変異化して、図13に示すように、重鎖中のEU位置118(順次位置118、カバト番号114)のアラニンをシステインに置換した。抗FcRH5抗体のFc領域を突然変異化して、重鎖Fc領域中のEU位置400(順序位置400;カバト番号396)のセリンをシステインに置換し得る。
実施例4: ネズミ抗FcRH5抗体薬剤接合体を用いたin vivo腫瘍細胞殺害検定
A. 異種移植片
種々の抗FcRH5抗体の効力を試験するために、ネズミ抗ヒト抗体をDM1と接合し、マウスにおける腫瘍に及ぼす接合変異体の作用を分析した。
具体的には、BJAB−ルシフェラーゼ細胞(ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクト化されるバーキットリンパ腫細胞株)における腫瘍を退行させる抗体の能力。
BJAB−ルシフェラーゼ細胞中でのpRK.CMV.PD.nbe.FcRH5のトランスフェクションおよびプロマイシン(Calbiochem, San Diego, CA)選択後、生存細胞を、抗FcRH5抗体(7D11)を用いて中範囲発現体に関してFACS自己クローン化した。自己クローン化後、FACSにより確定した場合に、形質細胞発現に最も良く似ているFcRH5を発現するBJAB−ルシフェラーゼ細胞株を、抗FcRH5抗体(7D11)を用いてFACS分析により選択した。陰性対照として、空ベクターpRK.CMV.PD.nbeで、同じ方法でトランスフェクト化されたBJAB−ルシフェラーゼを用いた。
マウス抗体の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢 Charles Rivers Laboratories; Hollister, CA)に、2×107BJAB−FcRH5細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均128mm3に増殖させた。0日目は、腫瘍が平均100〜250mm3になった日であり、以下で別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施された場合を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。抗FcRH5 ADCまたは対照抗体−薬剤接合体を用いて、マウス8匹の群を、400μgの抗体結合薬剤/マウス1m3(約8〜10mg ADC/マウス1kgに対応する)の単一回静脈内(i.v.)用量で処置した。実験中は週2回、腫瘍を測定した。実験中、週1回、マウスの体重を測定した。腫瘍が2000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示した場合、マウスを安楽死させた。動物プロトコールは全て、動物実験委員会(IACUC)により認可された。
用いた動物および毒素間のリンカーは、DM1に関するチオエーテル架橋剤SMCCであった。付加的リンカーとしては、ジスルフィドリンカーSPPまたはDM1に関するチオエステル架橋剤SMCC、あるいはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)に関するマレイミド構成成分およびパラアミノベンジルカルバモイル(PAB)自壊的構成成分を有するMCまたはMC−バリン−シトルリン(vc)−PABまたは(バリン−シトルリン(vc))ジペプチドリンカー試薬であった。用いられる毒素は、DM1であった。付加的毒素としては、MMAEまたはMMAFが挙げられる。
この実験のための抗体は、Chang et al. PCT/US2004/043514(WO 2005/063299)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されたmu7D11、ならびに本明細書中に記載される抗FcRH5を包含した(実施例1B参照、例えばmu7D11、mu6H11、mu10A8、mu13G9およびmu9E2)。
陰性対照は、抗gp−120ベースの接合体(SMCC−DM1)を包含した。
B. 結果
1. BJAB-FcRH5 異種移植片
示されているような薬剤接合体および用量による48日時間変化で、mu7D11、mu6H1、mu10A8、mu13G9およびmu9E2 ADCは、陰性対照 抗gp−120 SMCC−DM1と比較して、BJAB−FcRH5腫瘍を有するSCIDマウスにおける腫瘍増殖の抑制を示した。ADCおよび対照のすべてに関して、0日目および7日目に、2つの用量(下記の表10に示す)でADCを投与した。具体的には、抗FcRH5 ADCの全てが、腫瘍増殖を有意に抑制した(図20)。
さらに、同一試験において、最初の17日の体重変化%を、各投与量群で確定した。結果(図21)は、これらのネズミ抗FcRH5 ADCの投与がこの時間中に体重の有意の減少または重量損失を引き起こさなかったことを示した。
さらに、表10において、部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0mm
3に低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数が示されている(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例5: マウス抗FcRH5Mab薬剤接合体によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
−SPDB−DM4、SMCC−DM1、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−MMAFを有するmu13G9薬剤接合体の効力を試験するために、マウスの腫瘍に及ぼすmu13G9薬剤接合体の作用を分析した。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたOPM2細胞(多発性骨髄腫細胞)における腫瘍を退行させる抗体の能力を検査した。
OPM2細胞中への線状化pRK.CMV.PD.nbe.FcRH5のトランスフェクションおよびプロマイシン(Calbiochem, San Diego, CA)選択後、生存細胞を、ビオチン(Pierce Biotechnology, Rockford, Il)ラベルラベル化抗FcRH5抗体(7D11)、およびMACS LSカラム(Miltenyi Biotec, Auburn, Ca)上のMACS抗ビオチンマイクロビーズを用いて、FcRH5発現細胞に関して分離した。分離後、FcRH5発現を、抗FcRH5抗体(10A8)および(13G9)を用いてFACSにより確証し、そしてOPM2細胞株を、同様にして、陰性対照として、空ベクターpRK.CMV.PD.nbeでトランスフェクトした。
SPD−D4、SMCC−DM1、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−MMAFを有するmu13G9薬剤接合体の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107OPM2−FcRH5細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均215mm3に増殖させた。0日目は、腫瘍が平均100〜250mm3になった日であり、以下で別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施された時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。抗FcRH5 ADCまたは対照抗体−薬剤接合体を用いて、マウス8匹の群を、10mg ADC/マウス1kgの1回静脈内(i.v.)用量で処置した。実験中は週2回、腫瘍を測定した。実験中、週1回、マウスの体重を測定した。腫瘍が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示した場合、マウスを安楽死させた。動物プロトコールは全て、動物実験委員会(IACUC)により認可された。
陰性対照は、抗gp−120ベースの接合体(SPDB−DM4、SMCC−DM1、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−MMAF)を包含した。
B. 結果
1. OPM2-FcRH5 異種移植片
表11に示されているような薬剤接合体および用量による50日時間変化で、mu13G9SPDB−DM4、SMCC−DM1、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−MMAF ADCは、陰性対照gp−120 SPDB−DM4、SMCC−DM1、MC−vc−PAB−MMAEおよびMC−MMAF ADCと比較して、OPM−FcRH5腫瘍を有するSCIDマウスにおける腫瘍増殖の抑制を示した。ADCおよび対照のすべてに関して、0および7日目に、2用量でADCを投与した。具体的には、抗FcRH5 ADCの全てが、腫瘍増殖を有意に抑制した(図22)。
さらに、同一試験において、最初の14日の体重変化%を、各投与量群で確定した。結果(図23)は、これらのネズミ抗FcRH5 ADCの投与がこの時間中に体重の有意の減少または重量損失を引き起こさなかったことを示した。
さらに、表11において、部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0
3mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数が示されている(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例6: 抗FcRH5 Mab薬剤接合体によるin vitro細胞増殖低減に関する検定
mu13G9薬剤接合体(例えば、mu抗FcRH5(13G9)−裸、mu抗FcRH5(13G9)−SMCC−DM1、mu抗FcRH5(13G9)−SPDB−DM4、mu抗FcRH5(13G9)−MC−vc−PAB−MMAE)およびmu抗FcRH5(13G9)−MC−MMAF)のin vitro効能を、ヒトFcRH5を安定的に発現するトランスフェクト化OPM株(OPM2.CMV.PD.FcRH5.SP.2)を用いて、細胞増殖検定により、測定した。CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存度検定は、市販の(Promega Corp., Madison, WI)、鞘翅目ルシフェラーゼの組換え発現を基礎にした同種の検定である(米国特許第5583024号;米国特許第5674713号;米国特許第5700670号)。この細胞増殖検定は、代謝的活性細胞の指標であるATPの存在量に基づいて、培養中の生存可能細胞の数を確定する(Crouch et al (1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88、米国特許第6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)検定は、964ウェル・フォーマットで実行されて、自動化高処理量スクリーニング(HTS)を容易にする(Cree et al., AntiCancer Drugs 6:398-404 (1995))。同種の検定手順は、単一試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を、血清補足培地中で培養される細胞に直接付加することを包含する。
同種の「付加−混合−測定」フォーマットは、存在するATPの量に比例して、細胞溶解ならびに発光シグナルの生成を生じる。基質である甲虫シフェラーゼは、組換えホタルルシフェラーゼにより酸化的に脱カルボキシル化され、ATPのAMPへの転化、ならびに光子の生成を伴う。生存可能細胞は、相対的発光単位(RLU)で反映される。データは、ルミノメーターまたはCCDカメラ画像処理装置により記録され得る。発光出力は、RLUとして表され、長時間測定される。%RLUは、「非薬剤接合体」対照と比較した正規化RLUパーセンテージである。代替的には、ルシフェラーゼからの光子は、シンチラントの存在下で、シンチレーション計数器で計数され得る。その場合、光単位はCPS(計数/秒)として表され得る。
CellTiter Glo発光細胞生存度検定(Promega Corp. Technical bulletin TB288; Mendoza et al., Cancer Res., 62: 5485-5488 (2002))から適合される以下のプロトコールを用いて、細胞増殖検定により、ヒト化抗体−薬剤接合体の効力を測定した:
1. 約75,000のOPM2.CMV.PD.FcRH5.SP.2細胞を培地中に含有する細胞培養の50μlのアリコートを、96ウェル不透明壁プレートの各ウェル中に入れた。
2. mu13G9 AbまたはADC(50μl)を、三重反復実験ウェルに付加して、最終濃度を10000、3333、1111、370、123、41、14、4.6または1.5ng/mLとし、「無薬剤接合体」対照ウェルには培地のみを入れて、3日間インキュベートした。
3. プレートを、室温で約30分間平衡させた。
4. CellTiter−Glo試薬(100μl)を付加した。
5. 内容物を回旋振盪器上で2分間混合して、細胞溶解を誘導した。
6. プレートを、室温で10分間インキュベートして、発光シグナルを安定化した。
7. %RLU(相対発光単位)として発光を記録し、報告した。
8. 対照として、同一細胞株を、無関係非結合マウス抗GP120 AbまたはADC(例えば、mu抗GP120−裸、mu抗GP120−SMCC−DM1、mu抗GP120−SPDB−DM4、mu抗GP120−MC−vc−PAB−MMAEおよびmu抗GP120−MC−MMAF)と平行して試験した。
培地: OPM2.CMV.PS.FcRH5.SP.2細胞は、RPMI1640/20%FBS/2mM グルタミン/1.0μg/ml プロマイシン中で育つ。
マウス抗体−薬剤接合体の効力を、図24〜25に示す。この検定の結果は、IC50としてmg/mlで記述される。IC50は、細胞増殖における50%抑制に必要とされる抗体またはADCの濃度である。
前記明細書は、当業者が本発明を実行するのには十分であると考えられる。寄託実施形態は本発明のある態様の単一例証として意図されるため、本発明は寄託された構築物により範囲を限定されるものではなく、機能的に等価である任意の構築物は本発明の範囲内である。本明細書中の物質の寄託は、本明細書中に含入される書かれた説明が、本発明の任意の態様、例えばその最良の方式の実行を可能にするのに不適切であるということの容認を与えないし、あるいは、それが表す特定の例証に本発明の範囲を限定するものでもない。実際、本明細書中に示され、記載されたもののほかに、本発明の種々の修正がなされることは、前記の説明から当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲にも記載されている。
実施例7: ヒト化抗FcRH5薬剤接合体およびベルケイド(登録商標)によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
ベルケイド(登録商標)(ボルテゾミブ)と組合せた、MC−vc−PAB−MMAEとのヒト化(13G9)薬剤接合体の効力を試験するために、マウスにおける腫瘍(多発性骨髄腫 OPM2−FcRH5異種移植片)に及ぼす接合化抗体の、単独の、およびベルケイド(登録商標)と組合せた作用を分析する。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたOPM2細胞(多発性骨髄腫細胞)における腫瘍を退行させる抗体およびベルケイド(登録商標)の能力を検査する。OPM2細胞中での線状化pRK.CMV.PD.nbe.FcRH5のトランスフェクションおよびプロマイシン(Calbiochem, San Diego, CA)選択後、生存細胞を、ビオチン(Pierce Biotechnology, Rockford, Il)ラベルラベル化抗FcRH5(7D11)、およびMACS LSカラム(Miltenyi Biotec, Auburn, Ca)上のMACS抗ビオチンマイクロビーズを用いて、FcRH5発現細胞に関して分離した。分離後、FcRH5発現を、抗FcRH5抗体(13G9)を用いてFACSにより確証し、そしてOPM2細胞株を、同様にして、陰性対照として、空ベクターpRK.CMV.PD.nbeでトランスフェクトする。
MC−vc−PAB−MMAE単独で、およびベルケイド(登録商標)と組合せて接合されたhu抗FcRH513G9の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107OPM2−FcRH5細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均331mm3に増殖させる。0日目は、腫瘍が平均172〜511mm3になった日であり、別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施される時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。マウスを各々約9匹の9つの群に無作為化して、用量投与する。群1には、ビヒクル対照として、0日目にヒスチジンの単一回静脈内(IV)注射+2週間、0、3、7および10日目に週2回の0.9%塩化ナトリウム(食塩水)のIV注射を施す。群2には、接合体対照として、0日目に、10mg/kg Hu抗−Her2トラスツズマブ−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1135の単一回IV注射を施す。群3には、2週間、0、3、7および10日目に週2回の1mg/kgのベルケイド(登録商標)を施す。群4〜5には、0日目に、それぞれ4または10 mg/kgのチオhu抗−FcRH5(13G9)−HC−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1465の0単一回IV注射を施す。群6〜7には、0日目に、それぞれ4または10mg/kgのhu抗−FcRH5(13G9)−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1575の単一回IV注射を施す。群8には、0日目に4mg/kgのhu抗−FcRH5(13G9)−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1575の単一回IV注射+2週間、0、3、7および10日目に週2回の1mg/kgのベルケイド(登録商標)IV注射を施す。実験中は週2回、腫瘍を測定する。最初の3週間、週2回、マウスの体重を測定した。腫瘍が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示す場合、マウスを安楽死させる。動物プロトコールは全て、動物実験委員会(IACUC)により認可される。
陰性対照は、抗HER2(ヘルセプチン(登録商標))(トラスツズマブ))ベースの接合体(MC−vc−PAB−MMAE)を包含する。
B. 結果
1. OPM2-FcRH5 異種移植片
薬剤接合体単独およびベルケイド(登録商標)と組合せて用いた試験の終了時に、MC−vc−PAB−MMAEと接合されたhu13G9をベルケイド(登録商標)と組合せたものは、陰性対照、MC−vc−PAB−MMAEと接合されたヒト化抗−Her2(Hu−抗−Her2トラスツズマブ−MC−vc−PAB−MMAE)と比較して、OPM2−FcRH5腫瘍を有するSCIDマウスにおける腫瘍増殖の抑制に関して検定する。さらに、最初の24日の任意の体重変化%を、各投与群で確定する。部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が03mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数も確定される(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例9: ヒト化抗FcRH5薬剤接合体によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
ベルケイド(登録商標)と組合せた−SPDB−DM4とのヒト化(13G9)薬剤接合体の効力を試験するために、マウスにおける腫瘍(多発性骨髄腫 OPM2−FcRH5異種移植片)に及ぼす接合化抗体の、単独の、およびベルケイド(登録商標)と組合せた作用を分析する。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたOPM2細胞(多発性骨髄腫細胞)における腫瘍を退行させる抗体およびベルケイド(登録商標)の能力を検査する。OPM2細胞中での線状化pRK.CMV.PD.nbe.FcRH5のトランスフェクションおよびプロマイシン(Calbiochem, San Diego, CA)選択後、生存細胞を、ビオチン(Pierce Biotechnology, Rockford, Il)ラベルラベル化抗FcRH5(7D11)、およびMACS LSカラム(Miltenyi Biotec, Auburn, Ca)上のMACS抗ビオチンマイクロビーズを用いて、FcRH5発現細胞に関して分離する。分離後、FcRH5発現を、抗FcRH5抗体(13G9)を用いてFACSにより確証し、そしてOPM2細胞株を、同様にして、陰性対照として、空ベクターpRK.CMV.PD.nbeでトランスフェクトする。
SPDB−DM4単独で、およびベルケイド(登録商標)と組合せて接合されたHu抗FcRH5 13G9の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107OPM2−FcRH5細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均306mm3に増殖させる。0日目は、腫瘍が平均197〜499mm3になった日であり、別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施される時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。マウスを各々約9匹の6つの群に無作為化して、用量投与する。群1には、2週間、0、3、7および10日目に週2回の1mg/kgのベルケイド(登録商標)の静脈内(IV)注射を施す。群2には、ビヒクル対照として、0日目にヒスチジンの単一回IV注射+2週間、0、3、7および10日目に週2回の0.9%塩化ナトリウム(食塩水)のIV注射を施す。群3には、接合体対照として、0日目に、4mg/kg Hu抗−Her2トラスツズマブ−SPDB−DM4、CNJ 1433の単一回IV注射を施す。群4には、0日目に、4mg/kg Hu抗−FcRH513G9 SPDB−DM4、CNJ 1503の単一回IV注射を施す。群5には、0日目に、4mg/kg Hu抗−Her2トラスツズマブ−SPDB−DM4、CNJ 1433の単一回IV注射+2週間、0、3、7および10日目に週2回の1mg/kgのベルケイド(登録商標)のIV注射を施す。群6には、0日目に、4mg/kg Hu抗−FcRH513G9 SPDB−DM4、CNJ 1503の単一回IV注射+2週間、0、3、7および10日目に週2回の1mg/kgのベルケイド(登録商標)のIV注射を施す。実験中は週2回、腫瘍を測定する。最初の3週間、週2回、マウスの体重を測定する。腫瘍が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示す場合、マウスを安楽死させる。動物プロトコールは全て、動物実験委員会(IACUC)により認可される。
陰性対照は、抗HER2(ヘルセプチン(登録商標))(トラスツズマブ))ベースの接合体(SPDB−DM4)を包含する。
B. 結果
1. OPM2-FcRH5 異種移植片
薬剤接合体単独およびベルケイド(登録商標)と組合せて用いた試験の終了時に、ベルケイド(登録商標)と組合せた−SPDB−DM4と接合されたヒト化抗FcRH5(13G9)を、陰性対照、−SPDB−DM4と接合されたヒト化抗−Her2(Hu−抗−Her2トラスツズマブ−SPDB−DM4)と比較して、OPM2−FcRH5腫瘍を有するSCIDマウスにおける腫瘍増殖の抑制に関して検定する。さらに、最初の21日の任意の体重変化%を、各投与群で確定する。部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が03mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数も確定される(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例10: ヒト化抗FcRH5薬剤接合体によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
レブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せた、−MC−vc−PAB−MMAEとのヒト化(13G9)薬剤接合体の効力を試験するために、マウスにおける腫瘍(多発性骨髄腫 OPM2−FcRH5異種移植片)に及ぼすレブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せた接合化抗体の作用を分析する。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたOPM2細胞(多発性骨髄腫細胞)における腫瘍を退行させる抗体の、レブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せた能力を調べる。OPM2細胞中での線状化pRK.CMV.PD.nbe.FcRH5のトランスフェクションおよびプロマイシン(Calbiochem, San Diego, CA)選択後、生存細胞を、ビオチン(Pierce Biotechnology, Rockford, Il)ラベルラベル化抗FcRH5抗体(7D11)、およびMACS LSカラム(Miltenyi Biotec, Auburn, Ca)上のMACS抗ビオチンマイクロビーズを用いて、FcRH5発現細胞に関して分離する。分離後、FcRH5発現を、抗FcRH5抗体(13G9)を用いてFACSにより確証し、そしてOPM2細胞株を、同様にして、陰性対照として、空ベクターpRK.CMV.PD.nbeでトランスフェクトする。
MC−vc−PAB−MMAEと接合されたHu抗FcRH5 13G9の、レブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せた効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107OPM2−FcRH5細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均446mm3に増殖させる。0日目は、腫瘍が平均263〜630mm3になった日であり、別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施される時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。マウスを各々約8匹の9つの群に無作為化して、用量投与する。群1には、ビヒクル対照として、0〜13日目にDMSOおよびMCTの混合物の腹腔内(IP)注射を毎日施す。群2には、接合体対照として、0日目に、6mg/kg Hu抗−Her2トラスツズマブ−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1135の単一回静脈内(IV)注射を施す。群3には、接合体対照として、0日目に、6mg/kgのHu抗−FcRH513G9−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1672の単一回IV注射を施す。群4には、0〜13日目に50mg/kgのレブリミド(登録商標)のIP注射を毎日施す。群5には、0〜3および7〜10日目に4日間3mg/kgのデキサメタゾンの毎日経口(PO)用量投与と、その後の、3日間隔を置いて2サイクルの投与を施す。群6には、0〜13日目に50mg/kgのレブリミド(登録商標)のIP注射を毎日+0〜3および7〜10日目に4日間3mg/kgのデキサメタゾンの毎日PO用量投与と、その後の、3日間隔を置いて2サイクルの投与を施す。群7には、0日目に、6mg/kgのHu抗−Her2トラスツズマブ−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1135の単一回IV注射+0〜13日目に50mg/kgのレブリミド(登録商標)のIP注射を毎日ならびに0〜3および7〜10日目に4日間3mg/kgのデキサメタゾンの毎日PO用量投与と、その後の、3日間隔を置いて2サイクルの投与を施す。群8には、0日目に、6mg/kgのHu抗−FcRH5 13G9−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1672の単一回IV注射+0〜13日目に50mg/kgのレブリミド(登録商標)のIP注射を毎日、ならびに0〜3および7〜10日目に4日間3mg/kgのデキサメタゾンの毎日PO用量投与と、その後の、3日間隔を置いて2サイクルの投与を施す。群9には、0日目に、6mg/kgのHu抗−FcRH5 13G9−MC−vc−PAB−MMAE、CNJ 1672の単一回IV注射+0〜13日目に50mg/kgのレブリミド(登録商標)のIP注射を毎日を施す。実験中は週2回、腫瘍を測定した。実験中、週2回、マウスの体重を測定した。マウスが、0日目の体重と比較して15%より大きい体重損失を経験する場合、重量が再び増えるまで、または体重損失が20%より上に達するまで、毎日計量する。0日目の体重と比較して体重損失が20%より大きくなる場合、腫瘍容積が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示す場合、マウスを安楽死させる。動物プロトコールは全て、動物実験委員会(IACUC)により認可される。
陰性対照は、抗HER2(ヘルセプチン(登録商標))(トラスツズマブ))ベースの接合体(MC−vc−PAB−MMAE)を包含した。
B. 結果
1. OPM2-FcRH5 異種移植片
薬剤接合体を、レブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せて用いた試験の終了時に、MC−vc−PAB−MMAEと接合されたヒト化抗FcRH5(13G9)をレブリミド(登録商標)およびレブリミド(登録商標)+デキサメタゾンと組合せたものを、陰性対照、−MC−vc−PAB−MMAEと接合されたヒト化抗HER2(Hu抗−Her2トラスツズマブ−MC−vチャフPAB−MMAE)と比較して、OPM2−FcRH5腫瘍を有するSCIDマウスにおける腫瘍増殖の抑制に関して検定する。さらに、最初の17日の体重変化%を、各投与量群で確定する。部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が03mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数も確定される(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例11: FcRH5二重特異性抗体の産生および特性化
抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の構築および産生 FcRH5二重特異性抗体、具体的には抗CD3/FcRH5 空洞への***二重特異性抗体の構築を、以下に記載する。
種々の空洞への***二重特異性抗体は、以前に記載されている(例えば米国特許第5,731,168号および第7,183,076号;Ridgway et al., Prot. Eng. 9:617-621 (1996);Atwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchant et al., Nat. Biotechn. 16:677-681 (1998)参照)。ある場合には、Chamow et al. J. Immunol. 153:4268 (1994)により前に記載されたヒト化抗CD3/CD4−IgGキメラ間のCH3界面を操作して、発現構築物で同時トランスフェクトされた哺乳類細胞株から回収され得るヘテロ多量体のパーセンテージを最大にした。本明細書中で用いる場合、「ヘテロ多量体」は、少なくとも第一ポリペプチドおよび第二ポリペプチド(ここで、第二ポリペプチドはアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が第一ポリペプチドと異なる)を含む分子、例えば二重特異性抗体を指す。
前段落中で引用した文書に記載されているように、ヘテロ多量体形成を行なうために用いる戦略は、第一ポリペプチド、例えば抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の「***」を導入すること、そしてさらにまた、第二ポリペプチド、例えば第二抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の対応する「空洞」を導入することに頼っている。「***」突然変異は、小アミノ酸をより大きいものに置き換え、そして「空洞」突然変異は、大型アミノ酸をより小さいものに置き換えた。さらに、***および空洞突然変異のほかに、遊離チオール含有残基が2つのポリペプチド、例えば2つのCH3ドメインの界面に導入されたが、これは、ヘテロ多量体の形成を増強することが示された。ポリペプチド界面に導入される種々の例示的空洞への***突然変異および遊離チオール含有残基が記載されている。例えば米国特許第5,731,168号および第7,183,076号;Ridgway et al., Prot. Eng. 9:617-621 (1996);Atwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchant et al., Nat. Biotechn. 16:677-681 (1998)を参照されたい。
以下の工程を実行して、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体を産生した。ネズミ抗CD3モノクローナルAb UCHT1のヒト化抗CD3軽鎖(L)および重鎖(H)変異体をコードする大腸菌発現プラスミド(米国特許第5,821,337号および第6,407,213号;Shalaby et al., J. Exp. Med. 175: 217 [1992]およびRodrigues et al., Int. J. Cancer (Suppl.) 7: 45 [1992]))を構築する。多数の適切な大腸菌発現プラスミド、例えばpAK19が、当該技術分野で既知である(Carter et al., Bio/Tehcnology 10:163-167 (1992))。ヒト化抗CD3H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に***または空洞を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により成される。種々の部位特異的突然変異誘発方法が、当該技術分野で周知である(例えばKunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987)参照)。さらに、ヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖、例えば本明細書中に記載されるようなヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖をコードする大腸菌発現プラスミドが、構築される。ヒト化抗FcRH5H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に対応する空洞(抗CD3ドメインが***突然変異を有する場合)または対応する***(抗CD3ドメインが空洞突然変異を有する場合)を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により作製される。
二重特異性抗CD3/FcRH5抗体は、当該技術分野で既知の方法を用いて、上記のような大腸菌発現プラスミドを、適切な大腸菌株、例えば33B6中で形質転換することにより産生される(例えばRodrigues et al., Cancer Res. 55:63-70 (1995)参照)。前に記載されたように、10L発酵器中で増殖させた形質転換大腸菌により、抗体は分泌される(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。当該技術分野で既知の手法を用いて、抗体は精製され、分析される(例えばAtwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997)参照)。
細胞結合検定:B細胞およびT細胞を結合する抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の能力を査定するために、当該技術分野で既知の標準手法に従ってフィコール勾配を用いて、ヒト末梢白血球を健常ドナーからの全血から単離する。約100万個の細胞を、PBS中に0.5%BSAおよび2mMのEDTAを含有する緩衝液中で氷上で、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体とともにインキュベートする。次いで、細胞を洗浄し、メーカーのプロトコールに従って、抗CD8−APCおよび抗CD138−PEおよび抗CD38−PerCP−Cy5抗体とともにFITC接合ヤギ(Fab’)2抗ヒトIgGで染色し(BD Biosciences, San Diego, CA)た。FACSCalibur(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences, San Diego, CA)を用いてFACSベースの検定で査定し、Flowjoソフトウェア(Tree Star, Ashland, OR)を用いて分析を実行する。
in vitro細胞殺害検定:EJM−FcRH5.LSP.2多発性骨髄腫細胞(ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたEJM細胞、DSMZ ACC−560)を標的細胞として用いて、総ヒト末梢白血球またはCD8+T細胞と同時培養する。CD8+T細胞を用いる場合、96ウェル丸底プレート中でCD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を用いて、陰性選別により、ヒトPBMCからそれらを精製する。20,000EJM−FcRH5.LSP.2細胞を、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体とともに、または伴わずに、標的:エフェクター細胞=1:10の比率でウェル当たりで付加する。約19時間後、メーカーのプロトコール(BD Biosciences, San Diego, CA)に従って、細胞をラベルラベル化抗CD38−FITCおよび抗CD138−PEで染色し、Fluoresbrite(登録商標)較正等級6.0ミクロンYGマイクロスフェア(Polysciences, Inc., Warrington, PA)と混合する。前方/側方散乱のゲーティングおよびCD38−CD138染色により、FACS分析を実行する。標準手法によりヨウ化プロピジウム染色を用いて、死細胞を排除する。以下の方程式に従って、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の特異的殺害活性を算定する:特異的殺害%=(1−処理を受けた生EJM−FCRH5.LSP.2細胞の数/エフェクター中の生EJM−FCRH5.LSP.2細胞&抗−CD3/FcRH5二重特異性抗体を伴わないEJM−FCRH5.LSP.2の数)x100)。
in vivo効力:EJM−FcRH5.LSP.2多発性骨髄腫細胞を、末梢血単核球と混合し、雌NOD.CD17−Prkdcscid/Jマウス(Charles Rivers Laboratories, Wilmington, MA)の右胸脇腹部に皮下注射する。次いで、接種マウスを対照および処置群に無作為に分ける。対照群には、ビヒクルまたは抗CD3/Her2対照二重特異性抗体を投与する。処置群には、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体を投与する。二重特異性抗体を0.01〜10mg/kgの範囲で投与する。細胞接種後1〜2時間以内に、対照および処置群に静脈内投与し、5連続日の間、毎日反復する。週2回、カリパスを用いて、2つの寸法(長さおよび幅)で腫瘍を測定する。週2回、マウスを臨床的にモニタリングする。実験終了時に、対照−処置動物の腫瘍サイズを、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体処置動物の腫瘍サイズと比較して、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体処置の効力を査定する。
実施例12: ヒト化抗FcRH5薬剤接合体によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
種々の投与量でのMC−vc−PAB−MMAEとのhu13G9薬剤接合体の効力を試験するために、マウスの腫瘍に及ぼす接合抗体の作用を分析する。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたEJM細胞(多発性骨髄腫細胞株)における腫瘍を退行させる抗体の能力を検査する。
EJM(ACC−560)細胞は、DSMZ(ドイツ)から得られる市販ヒト多発性骨髄腫細胞株である。EJM細胞はFcRH5を内因的に発現せず、EJMをヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトすると、EJM.CMV.PD.FcRH5.LSP.2細胞株を生じた。
MC−vc−PAB−MMAEとのhu13G9薬剤接合体の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107EJM−FcRH5.LSP.2細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均134mm3に増殖さる。0日目は、腫瘍が平均100〜250mm3になった日であり、以下で別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施される時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表される。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表される。抗FcRH5 ADCまたは対照抗体−薬剤接合体(ADC)を用いて、マウスの群を、1〜8mg ADC/kgの範囲の用量で、1回静脈内(i.v.)処置する。実験中は週2回、腫瘍を測定する。2週間の間、週1回、マウスの体重を測定する。腫瘍が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示した場合、マウスを安楽死させる。陰性対照は、抗HER2(ヘルセプチン(登録商標)(トラスツズマブ))ベースの接合体を包含する。
B. 結果
1. EJM-FcRH5.LSP.2異種移植片
実験終了時に、対照処置動物における腫瘍サイズを、抗FcRH5 ADC処置動物の腫瘍サイズと比較して、抗FcRH5 ADC処置の効力を査定する。具体的には、部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が03mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数も確定する(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
実施例13: ヒト化抗FcRH5薬剤接合体によるin vivo腫瘍増殖の抑制に関する検定
A. 異種移植片
種々の投与量でのSPDB−DM4とのhu13G9薬剤接合体の効力を試験するために、マウスにおける腫瘍に及ぼす接合抗体の作用を分析する。
具体的には、ヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトされたEJM細胞(多発性骨髄腫細胞株)における腫瘍を退行させる抗体の能力を検査する。
EJM(ACC−560)細胞は、DSMZ(ドイツ)から得られる市販ヒト多発性骨髄腫細胞株である。EJM細胞はFcRH5を内因的に発現せず、EJMをヒトFcRH5で安定的にトランスフェクトすると、EJM.CMV.PD.FcRH5.LSP.2細胞株を生じた。
SPDB−DM4とのhu13G9薬剤接合体の効力の分析のため、雌CB17 ICR SCIDマウス(6〜8週齢;Charles Rivers Laboratories; Hollister, CAから)に、2×107EJM−FcRH5.LSP.2細胞を、CB17 ICR SCIDマウスの脇腹に注射により皮下接種して、異種移植片腫瘍を、平均134mm3に増殖させる。0日目は、腫瘍が平均100〜250mm3になった日であり、別記しない限り、初回の、または1回だけの用量の処置が施される時を指す。カリパスを用いて測定した2つの寸法に基づいて、腫瘍容積を算定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)に従って、mm3で表す。各実験群から収集したデータは、平均±標準誤差として表す。抗FcRH5 ADCまたは対照抗体−薬剤接合体(ADC)を用いて、マウスの群を、2〜8mg ADC/マウス1kgの範囲の1回静脈内(i.v.)用量で処置する。実験中は週2回、腫瘍を測定する。2週間の間、週1回、マウスの体重を測定する。腫瘍が3000mm3に達する前、または腫瘍が切迫潰瘍の符号を示す場合、マウスを安楽死させる。陰性対照は、抗HER2(ヘルセプチン(登録商標))(トラスツズマブ))ベースの接合体(SPDB−DM4)を包含した。
B. 結果
1. EJM-FcRH5.LSP.2 異種移植片
実験終了時に、対照処置動物における腫瘍サイズを、抗FcRH5 ADC処置動物の腫瘍サイズと比較して、抗FcRH5 ADC処置の効力を査定する。具体的には、部分退行(PR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が0日目に測定された腫瘍容積の50%より低下した場合)、完全寛解(CR;投与後、任意の時点での腫瘍容積が03mmに低下した場合)を示す試験した総数からのマウスの数も確定する(NA=適用できない);(TI=試験終了時に観察可能な腫瘍の数)。
前記明細書は、当業者が本発明を実行するのには十分であると考えられる。寄託実施形態は本発明のある態様の単一例証として意図されるため、本発明は寄託された構築物により範囲を限定されるものではなく、機能的に等価である任意の構築物は本発明の範囲内である。本明細書中の物質の寄託は、本明細書中に含入される書かれた説明が、本発明の任意の態様、例えばその最良の方式の実行を可能にするのに不適切であるということの容認を与えないし、あるいは、それが表す特定の例証に本発明の範囲を限定するものでもない。実際、本明細書中に示され、記載されたもののほかに、本発明の種々の修正がなされることは、前記の説明から当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲にも記載されている。