JP2012206160A - 連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パウダー自身の剥離性を向上させることに加えて、鋳型の下流側に設置された冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を調整することにより、鋳片の幅方向の冷却を安定させ、過冷却により発生する鋳片の表面割れを抑制して、良質の鋳片を製造可能な連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m以上0.6kg/m以下にする連続鋳造方法において、パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下として、鋳型の下流側に設置された二次冷却帯のうち、鋳型の直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲で、二次冷却帯に設けられた多数の冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を400リットル/m/分以上700リットル/m/分以下とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、鋳型に溶鋼を供給して鋳片を製造する連続鋳造方法に関する。
従来、Siを1.0質量%以上含有する電磁鋼を連続鋳造機で鋳造する際に、二次冷却帯で発生する鋳片の幅方向の不均一冷却に起因した鋳片の表面温度の低下により、鋳片に表面割れが発生している。この割れは、鋳片の過冷却に起因するものであり、通常、二次冷却帯での注水量を減らすことで対応している。しかし、Si含有量が高い電磁鋼では、二次冷却帯での注水量を減らすと、製品の表面欠陥の原因となるロール間のバルジングに起因した鋳片の内部割れが発生する。
このため、二次冷却帯での注水量の調整では、冷却不足に起因する内部割れと過冷却に起因する表面割れの両立が困難であった。なお、鋳片の表面温度を均一化する方法としては、上記した注水量の調整以外に、鋳型直下で鋳片表面からパウダー(モールドパウダー又はモールドフラックスともいう)を剥離させることが、既に知られている。
例えば、特許文献1には、鋳型から最初のサポートロールまでの間で、鋳片表面に付着したモールドフラックスと酸化皮膜を除去する連続鋳造方法が記載されている。なお、この除去は、高圧水スプレーノズルを用いて、鋳片表面に10N/cm以上の衝突圧で水噴流を衝突させることにより行っている。
また、特許文献2には、鋳型の出側における凝固シェルの表面温度と、鋳型内の溶鋼に投入されるモールドフラックスの凝固温度と、モールドフラックスの化学成分の含有量とを用いて算出されるβ値が、1.5以下又は2.5以上を満足するように鋳造速度を調整して連続鋳造を行う方法が記載されている。
特開2003−275852号公報 特開2005−324214号公報
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1の方法では、高圧水スプレーノズルによる10N/cm以上の注水を行うと、特にSi含有量の高い電磁鋼(例えば、無方向性電磁鋼)などでは、過冷却による鋳片の表面割れが発生する可能性が高く、適用が難しい。
また、特許文献2の方法を用いる場合、鋳型直下ではスプレー水の流量が非常に多いため、鋳型下端で鋳片の表面温度を連続的に測定することが困難である。なお、鋳片の表面温度を鋳造速度で調整すると、Si含有量の高い電磁鋼の場合、凝固シェルのバルジングに伴う内部割れが発生し、製品の表面欠陥の原因となる。
更に、特許文献1、2の方法は、基本的にパウダーが付着することで冷却が阻害されるという考え方に基づいて、パウダーの剥離により高速鋳造(Vc≧2.0m/分)領域での冷却能力の向上を図るものであるため、鋳片の幅方向の不均一冷却による鋳片の表面割れの解決は困難であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、パウダー自身の剥離性を向上させることに加えて、鋳型の下流側に設置された冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を調整することにより、鋳片の幅方向の冷却を安定させ、過冷却により発生する鋳片の表面割れを抑制して、良質の鋳片を製造可能な連続鋳造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る連続鋳造方法は、Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、該鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m以上0.6kg/m以下にする連続鋳造方法において、
前記パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下として、前記鋳型の下流側に設置された二次冷却帯のうち、前記鋳型の直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲で、前記二次冷却帯に設けられた多数の冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を400リットル/m/分以上700リットル/m/分以下とする。
ここで、凝固温度とは、パウダーを加熱溶融させた後、温度を降下させる過程で、結晶が晶出し始める温度であり、結晶化温度とは、溶融スラグを急冷固化させると生成するガラスを焼鈍した際に、結晶が析出し始める温度である。
本発明に係る連続鋳造方法は、鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m以上0.6kg/m以下にするので、パウダーの鋳片への適切な付着厚さを確保し、鋳型直下でのパウダーの剥離を防止でき、しかもパウダー付着の有無により冷却能の大小関係が変わる点付近(例えば、後述する図1の交点A付近)で、パウダーを剥離させることができるため、鋳片の過冷却を防止することができる。
また、パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下とするので、鋳型と凝固シェルとの間に形成されるスラグフィルムを構成する液相、結晶相、及びガラス相の各厚みを調整できる。これにより、鋳型と凝固シェルとの間からのスラグフィルムの脱落を防止できるので、鋳型と凝固シェルとの焼き付きを抑制できる。
更に、二次冷却帯のうち、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの範囲で、鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を400リットル/m/分以上700リットル/m/分以下とすることで、鋳片表面に付着するパウダーの剥離の開始と完了を制御することができ、パウダー付着の有無による鋳片の幅方向及び長手方向の温度偏差を抑制できる。
従って、Siを1.0質量%以上含有する溶鋼(例えば、無方向性電磁鋼等の電磁鋼)を連続鋳造するに際し、連続鋳造時の焼き付きによるブレークアウトを防止しつつ、表面割れを抑制でき、幅方向及び長手方向に均質な高品質の鋳片を安定して製造することができる。
パウダーの付着の有無による鋳片の冷却能指数と鋳型直下からの距離との関係を示す説明図である。 (A)、(B)はそれぞれパウダーの凝固温度と結晶化温度を変化させた場合に溶鋼と銅板との間に形成されるスラグフィルムを模式的に示した説明図である。 凝固温度と結晶化温度が連続鋳造に及ぼす影響を示した説明図である。 鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの範囲における冷却水の水量密度と鋳片表面温度のバラツキとの関係を示すグラフである。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係る連続鋳造方法は、Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m以上0.6kg/m以下にする方法であって、パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下として、鋳型の下流側に設置された二次冷却帯のうち、鋳型の直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲で、二次冷却帯に設けられた多数(複数)の冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水(スプレー水)の水量密度を400リットル/m/分以上700リットル/m/分以下とする方法である。
以下、本発明に想到した経緯について説明する。
連続鋳造機(以下、連鋳機ともいう)は、鋳型と、鋳型直下から鋳造方向に渡って配置された二次冷却帯とを有し、二次冷却帯には、鋳片を冷却するための複数の冷却用ノズルが配置されている。この連続鋳造機を使用して、Siを1.0質量%以上(上限は、例えば4質量%)含有する電磁鋼を連続鋳造する場合、この電磁鋼は高温で脆化し易いため、二次冷却帯に配置されたロール間で溶鋼静圧により鋳片が膨れる際に発生する歪により、凝固界面で内部割れが発生する。この割れを防止するためには、二次冷却帯に配置された冷却用ノズルからの水量を増やし、凝固シェルの厚みを厚くすることで、ロール間でのバルジングを抑制する必要がある。
しかし、冷却水量を増加すると冷却能が向上し、鋳片に過冷却及び表面割れが発生する。この傾向は、特にSiが2.8質量%以上(更には3.5質量%以上)になると顕著になる。そのため、二次冷却帯における水量調整では、冷却不足に起因する内部割れと過冷却に起因する表面割れの両立が困難である。
そこで、本発明者らは、二次冷却帯での冷却に与える因子として、鋳片表面からのパウダー(モールドパウダー)の剥離性に着目し、鋳片の均一冷却化を図るために必要なパウダー物性の検討を行った。
一般に、溶鋼の接触面側が銅板(銅製又は銅合金製)で構成された鋳型内に供給するパウダーは、SiO、CaO、F、NaOなどからなる人工スラグで、溶鋼上に散布されると溶鋼の熱で溶融する。このように溶融したパウダーは、連続鋳造機の鋳型と凝固シェル(凝固した鋼)との間に流入し、鋳型と凝固シェルとの焼き付きを防止する潤滑剤の役割を果たす。
このパウダーは、鋳片表面に付着した状態で二次冷却帯で冷却されると、鋳片の冷却能力が低下するという報告が多数なされている。これは、鋳片と比べて熱伝導が低いパウダーが熱抵抗になり、鋳片自体の抜熱を阻害することを根拠としていることによる。
しかし、本発明者らが調査した結果、鋳片表面にパウダーが付着すると、逆に冷却能が向上する場合があることが判明した。以下、本発明者らが、ラボ試験により、パウダー付着の有無が鋳片の冷却能へ及ぼす影響を調査した結果について説明する。
まず、ラボ試験では、熱電対を埋め込んだ鋼材を1200℃以上に加熱した後、これを冷却用ノズルで冷却し、パウダー付着の有無による鋼材の冷却速度の影響を調査した。続いて、このラボ試験の結果と伝熱解析モデルを用いて、パウダー付着の有無が鋳片の冷却能へ及ぼす影響を調査した。なお、使用した伝熱解析モデルは、例えば、鉄と鋼、第60巻(1974年)、1023頁に示される一般的な手法を用いた。
ここで、解析を行った連続鋳造機の構成、鋳造条件、及び冷却条件を、以下に示す。
・連続鋳造機の鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでのロールのピッチ:200mm
・鋳型直下から曲げ戻し部までの距離:16m
・鋳造条件:鋳造速度1.3m/分、鋳造幅(鋳片の幅)1300mm、鋳造厚み(鋳片の厚み)250mm
・冷却条件:鋳型直下から、鋳造方向に2.0mまでの範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を、鋳片の表面積1mあたり、450リットル/分(以下、L/m/分ともいう)で一定。
この解析結果を、図1に示す。
図1の横軸は、鋳型直下から鋳造方向の距離(m)を示している。なお、図1においては、鋳型直下(横軸の値が0.0m:鋳片の表面温度が600℃付近)から、鋳造方向の距離が2.0m(鋳片表面温度900℃付近)までの範囲を図示している。
また、図1の縦軸は、パウダーの付着ありを前提とした鋳片を冷却した際に、鋳造方向の距離が1.2m相当位置の鋳片の熱伝達係数を1として、パウダーの付着なし(図1中の実線)と付着あり(図1中の点線)の場合の鋳片の各熱伝達係数を、それぞれ指数化(冷却能指数)した値を図示している。
まず、図1から得られた知見を以下に示す。
・パウダー付着の有無によらず、鋳造の進行(横軸の増加)と共に、冷却能が低下した。
・パウダー付着の有無による冷却能の大小関係は存在するが、横軸の位置(鋳片の表面温度が異なる位置)によって、大小関係が異なる場合があった。
・鋳型直下付近(例えば、0.2m位置)では、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が約30%大きくなった。
・鋳型直下から鋳造方向に1.2mの位置を超える(例えば、1.4m位置)と、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が20%を超えて小さくなった。
このように、鋳型直下から同じ距離でも、パウダー付着の有無により、交点Aを境として、冷却能の大小関係が変わることが判った。つまり、鋳片表面にパウダーが付着することで、鋳片の表面温度の低下や、幅方向の温度偏差が拡大し、内部割れと表面割れの一方又は双方が発生する。
実機の鋳造試験では、パウダーの消費量が0.2kg/m未満となると、鋳片の幅方向の温度偏差が大きくなり、鋳片の表面割れが発生した。これは、パウダーの消費量が少なくなると、鋳型直下で鋳片表面に付着するパウダーの厚みが薄くなり、鋳片に吹き付けられる冷却水の圧力により、パウダーが鋳片表面から剥離し易くなるためと推定した。
このため、鋳片の幅方向の温度偏差を低下させるには、パウダーの消費量を0.2kg/m以上とすればよいが、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの範囲における冷却水の水量密度を400L/m/分以上700L/m/分以下(好ましくは、下限を450L/m/分、更には500L/m/分、上限を650L/m/分、更には600L/m/分)の範囲内に設定することにより、温度偏差が更に低下することが分かった。
また、同じ水量密度でも、パウダーの消費量が0.6kg/mを超える場合、鋳片の幅方向の温度偏差の抑制効果が飽和してしまうため、それ以上パウダーの消費量を増やす必要性は低い。
以上のことから、パウダーの消費量(供給量)を0.2kg/m以上0.6kg/m以下(好ましくは、下限を、0.25kg/m、更には0.3kg/m、上限を、0.55kg/m、更には0.5kg/m)とすることで、鋳片への適切な付着厚さを確保し、鋳片の冷却を安定化させることが可能となる。
このパウダーの消費量の調整は、主にパウダー中のCaO、SiO、F、NaOの量を変化させ、粘度をコントロールすることで実現した。この粘度は、後述する凝固温度や結晶化温度を固定したまま、任意の値に調整することが可能である。
なお、パウダーの消費量(kg/m)は、以下のように定義している。
{パウダーの消費量(kg/m)}
={鋳造時間中にメニスカスへ投入したパウダーの量(kg)}
/{鋳造速度(m/分)×{鋳片の幅(m)+鋳片の厚み(m)}×2×鋳造時間(分)}
ここで、鋳造時間とは、例えば、150〜350トン程度の1チャージの溶鋼を鋳造する時間や、複数チャージの溶鋼を鋳造する時間を意味する。
以上に示したように、パウダーの消費量をコントロールすることで、鋳片の幅方向の冷却の均一化は可能になったが、鋳型と凝固シェルとの間の焼き付きが多発するため、安定鋳造という観点から課題が残っていた。
そこで、鋳型と凝固シェルとの間の焼き付き抑制を目的として、パウダー物性の調整を行った。本実施の形態では、パウダーを評価する指標として、凝固温度と結晶化温度を用いた。この凝固温度とは、パウダーを加熱溶融させた後、温度を降下させる過程で、結晶が晶出し始める温度であり、結晶化温度とは、溶融スラグを急冷固化させると生成するガラスを焼鈍した際に、結晶が析出し始める温度である。
図2(A)、(B)に、連続鋳造機の鋳型(銅板)と凝固シェルとの間に流入した溶融スラグ、即ちスラグフィルムの状態を、模式的に示す。なお、図2(A)、(B)においては、溶鋼のスラグフィルム側に形成される凝固シェルは、図示していない。
図2に示すように、一般的に、スラグフィルムは、鋳型側からガラス相、結晶相、及び液相(溶融状態)の順に、3相に分かれて形成されている。ここで、凝固温度(B.P)は、スラグフィルムを構成する液相と結晶相の境界を、また結晶化温度(Tc)は、スラグフィルムを構成する結晶相とガラス相の境界を、それぞれ表している。
そこで、本実施の形態では、液相、結晶相、及びガラス相の3相の厚みをコントロールすることで、高Si鋼の鋳造安定化を図った。なお、結晶化温度及び凝固温度の調整は、パウダー中のCaO、SiO、F、NaO、LiO、Alの配合を変更することで行い、今回、実施した範囲では、粘度、結晶化温度、及び凝固温度を、任意にコントロールすることが可能であった。
まず、はじめに、パウダーの結晶化温度(Tc)を、パウダー中のNaOとFの量を主として増減させることで調整した。この結晶化温度は、凝固温度に比べ、成分変更により制御できる範囲が小さい。また、図2から明らかなように、凝固温度を一定とした場合、結晶化温度を低下させるとガラス相が減少し、結晶相の厚みが増大する。
実機試験の結果では、結晶化温度が500℃よりも低い場合、結晶相の厚みが増大し、結晶相に対する液相の厚みが相対的に減少して、スラグフィルムと鋳片との摩擦抵抗が大きくなるため、例えば、鋳型のオシレーションの際に、鋳型と凝固シェルとの間からスラグフィルムが脱落する。その結果、鋳型と凝固シェルとが接触状態になるため、鋳型内の抜熱挙動が不安定となり、拘束性のブレークアウトなどの操業トラブルが発生した。
一方、結晶化温度が600℃を超えると、結晶相の厚みが薄くなると共にガラス相の厚みが厚くなり、鋳型直下でのパウダーの破砕性が低下するため、鋳片表面からの剥離性が悪化し、鋳片に過冷却が発生した。
以上のことから、結晶化温度を500℃以上600℃以下の範囲に規定して、凝固温度を調整した。
パウダーの物性においては、凝固温度が1200℃を超えると、拘束性のブレークアウトが発生する。これは、結晶相が厚くなると共に液相が薄くなるため、鋳型と凝固シェルとの間の潤滑性が悪化し、スラグフィルムの脱落が発生して、鋳型と凝固シェルとが接触状態になるためだと推定される。
また、逆に、凝固温度が1050℃を下回ると、湯面変動が顕著になる上、鋳片の表面割れが多発した。これは、凝固温度が低くなると、液相が厚くなると共に結晶相が薄くなるため、凝固シェルと鋳型との間の輻射伝熱が増大し、鋳型内の冷却能が向上して、初期凝固が不安定化し、凝固シェルの成長が不均一になることによる。
凝固初期に発生した不均一凝固は、二次冷却帯で助長され、ロール間のバルジングによる湯面変動の原因となる。また、鋳片の表面割れは、液相が厚くなり過ぎると、鋳片表面へのパウダーの付着量が増加し、剥離性が阻害されるためだと推定される。
上記した湯面変動、ブレークアウト、鋳片の表面割れなどの操業トラブルに対しては、鋳造速度を0.6m/分未満まで落とすことで、ある程度抑制することは可能であるが、生産性を阻害する要因となるため問題である。
そこで、上記した物性のパウダーを適用することで、生産性に影響を及ぼすことなく、0.6m/分以上の鋳造速度で、安定鋳造が可能になる。なお、鋳造速度の上限値については規定していないが、現状では、溶鋼の鋳造速度を3.0m/分にして行った場合もある。
以上のことから、実際の連続鋳造機を用いて実施した試験の結果から、凝固温度を1050℃以上1200℃以下(好ましくは、下限を1080℃、更には1100℃、上限を1170℃、更には1150℃)、結晶化温度を500℃以上600℃以下(好ましくは、下限を520℃、上限を580℃)とすることで、鋳造を安定化できることが判った。
Siを1.0質量%以上含有する電磁鋼を連続鋳造機で鋳造するに際しては、凝固シェルに付着するパウダーを効果的に剥離させることで、二次冷却帯において発生する幅方向の不均一冷却に起因する鋳片の表面割れが発生する。
しかし、前記した物性のパウダーを使用することで、矯正点(湾曲部から水平部への矯正を行う位置)での鋳片の表面温度が600〜900℃になり、鋳片表面割れ防止と内部割れ防止の両立が可能になる。これは、鋳片の表面温度が600℃を下回ると、鋳片に表面割れが発生し、一方、900℃を超えると、鋳片の内部割れが、製品に影響を及ぼすレベルまで悪化することによる。
以上に示したように、鋳片品位の安定化のためには、鋳片の表面温度の変動を抑制することが重要であるが、更に、上記したパウダーを使用して、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲における冷却水の水量密度を、400L/m/分以上700L/m/分以下とする。
これにより、鋳片表面の幅方向における温度偏差を、最大300℃から最大100℃以下になるまで大きく改善することができ、その結果、鋳片品位を安定化させることが可能になる。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、Siを3.0質量%以上含有する電磁鋼を連続鋳造機でテスト鋳造するに際し、凝固温度と結晶化温度を種々変更したパウダーを鋳型内に供給して、その評価を行った。
なお、使用した連続鋳造機は、鋳型の下流側に、鋳造方向に渡って多数の分割ロールが配置された垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機である。この鋳型内には、各種パウダーを、その消費量が0.2kg/m以上0.6kg/m以下の範囲内になるように供給し、スラブの鋳造速度を0.8〜1.5m/分に調整した。また、鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでの範囲における冷却水の水量密度は500L/m/分に設定した。
鋳造したスラブの断面サイズは、厚み:252mm、幅:1000〜1500mm、である。
このテスト鋳造に使用したパウダーの種類と鋳造結果を、表1と図3に示す。
Figure 2012206160
この表1において、実施例1〜6のパウダーは、凝固温度を1050℃以上1200℃以下の範囲内で、かつ結晶化温度を500℃以上600℃以下の範囲内に、調整したものである(図3の斜線領域内)。一方、従来例と比較例1〜5の各パウダーは、凝固温度又は結晶化温度が、上記した範囲外のものである(図3の斜線領域外)。なお、従来例のパウダーは既存のパウダーである。
また、表1には、焼き付き、湯面変動、及び過冷却の各評価結果を示している。この各評価については、連続鋳造を0.6m/分以上の鋳造速度で継続して実施できた場合を「○」印で示し、一方、焼き付き、湯面変動、又は表面割れが発生し、0.6m/分以上の鋳造速度を継続して実施することが困難と判断され、鋳造速度を0.6m/分未満に低下させる必要があった場合を「×」印で示した。
そして、表1に示した判定は、連続鋳造を0.6m/分以上の鋳造速度で継続して実施できた場合を「○」印で、一方、0.6m/分未満の鋳造速度に低下させる必要があった場合を「×」印で、それぞれ示している。
表1と図3より、既存のパウダーを使用した従来例では、鋳片の過冷却によるスラブ割れが発生した。
また、比較例1、2、4、5では、鋳片の表面割れの発生は抑制できたが、鋳型内での焼き付きが発生し、ブレークアウトの前駆現象(溶鋼の鋳片表面への染み出し)の発生が見られる場合もあった。なお、比較例3では、鋳型内での焼き付きの発生はなかったが、湯面変動が大きく操業性が悪かった。
このため、従来例と比較例1〜5では、鋳造速度を0.6m/分未満に低下させる必要があった。
一方、実施例1〜6では、鋳片の過冷却の発生を抑制でき、鋳型抜熱量の変動による操業トラブルも認められず、連続鋳造を0.6m/分以上の鋳造速度で続けることが可能であった。
なお、スラブの幅を1000〜1500mmの範囲でテスト鋳造したが、鋳造速度を変更することなく連続鋳造を実施できた。特に、焼き付きや湯面変動が起こり易い、1200〜1500mmの幅が広いスラブを鋳造した場合の改善効果は著しかった。
以上のことから、凝固温度と結晶化温度を調整したパウダーを使用することで、焼き付き、湯面変動、過冷却などの操業トラブルを回避し、鋳片の生産性の向上が図れることを確認できた。
一方で、鋳片品質の安定化の観点から見ると、上記した構成のパウダーの適用だけでは、更なる改善の余地があり、鋳片表面の幅方向の温度(以下、単に鋳片表面温度ともいう)のバラツキ(即ち、標準偏差:σ)が250℃程度発生する場合があった。このバラツキは、最終製品の特性や表面品位に影響を及ぼすため、バラツキを100℃以下まで低減することで、更に均質で良質の製品を製造できる。
鋳片表面温度のバラツキを低減するには、鋳片表面からのパウダーの剥離を、適切な位置で開始し完了させることが重要である。そこで、パウダーの特性値に加え、二次冷却帯における冷却水の水量密度を制御することで、鋳片表面への冷却水の衝突圧を制御し、鋳片表面からパウダーが剥離する位置を最適化した。
ここで、前記した実施例2及び実施例4のパウダーを用いて、連続鋳造機内に位置する二次冷却帯のうち、鋳型直下から1.2mまでの範囲における冷却水の水量密度を変更した際の鋳片表面温度のバラツキを、図4に示す。なお、図4には、実施例1〜6のうち、鋳片表面からパウダーが、最も剥離し易く冷却が安定化した実施例2と、最も剥離しにくい実施例4を、代表例として記載した。このため、他の実施例1、3、5、6の結果は、図4中の2つの実施例のバラツキの範囲内にある。
図4に示すように、水量密度Wを適正範囲である400L/m/分以上700L/m/分以下とすることで、鋳片表面温度のバラツキを100℃以下に抑制することができた。
なお、鋳型直下から1.2mまでの範囲における冷却水の水量密度Wが400L/m/分未満の場合、水量密度Wが小さ過ぎて、図1中の交点Aより下流側で鋳片表面からパウダーが剥離するため、鋳片表面温度のバラツキが大きくなる傾向がある。また、水量密度Wが700L/m/分を超える場合、水量密度Wが大き過ぎて、図1中の交点Aより上流側で鋳片表面からパウダーが剥離するため、幅方向の温度バラツキは小さくなるものの、冷却能が向上した結果、鋳片の過冷却に起因する表面割れが発生した。なお、この表面割れは、鋳造速度の調整により回避できる程度である。
以上のことから、本発明の連続鋳造方法、即ち凝固温度と結晶化温度を調整したパウダーを使用し、更に、冷却水の水量密度を調整することで、連続鋳造時の焼き付きによるブレークアウトを防止しつつ、過冷却により発生する鋳片の表面割れを抑制して、幅方向及び長手方向に均質な高品質の鋳片を製造できることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の連続鋳造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。

Claims (1)

  1. Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、該鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m以上0.6kg/m以下にする連続鋳造方法において、
    前記パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下として、前記鋳型の下流側に設置された二次冷却帯のうち、前記鋳型の直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲で、前記二次冷却帯に設けられた多数の冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を400リットル/m/分以上700リットル/m/分以下とすることを特徴とする連続鋳造方法。
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