JP2012179738A - 平版印刷版用支持体、および平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム板と、その上にアルミニウムの陽極酸化皮膜とを備え、陽極酸化皮膜中にアルミニウム板とは反対側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有する平版印刷版用支持体であって、マイクロポアが大径孔部と樹枝状の小径孔部とから構成されあることを特徴とする平版印刷版用支持体。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
前記マイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ5〜60nm(深さA)の位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ900〜2000nmの位置まで分岐しながらのびる樹枝状の小径孔部とから構成され、
前記大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(大径孔部径)が10〜100nmで、前記大径孔部径と深さAとが(深さA/大径孔部径)=0.1〜4.0の関係を満たし、
前記小径孔部の前記連通位置における平均径(小径孔部径)が0より大きく20nm未満であり、
前記大径孔部径と前記小径孔部径との比(小径孔部径/大径孔部径)が0.85以下である平版印刷用支持体。
(3) 前記連通位置での陽極酸化皮膜断面における前記小径孔部の密度が、100〜3000個/μm2である、(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板とその上に形成される陽極酸化皮膜とを備え、陽極酸化皮膜中のマイクロポアが、平均径の大きい大径孔部と、平均径の小さい樹枝状の小径孔部とが深さ方向(皮膜の厚み方向)に沿って連結して構成される形状を有する。特に、本発明においては、マイクロポア中の平均径の大きい大径孔部の深さを制御すると共に、小径孔部が樹枝状の形状を有することから、トレードオフの関係とされていた放置払い性と耐刷性、または、機上現像性と耐刷性との関係を、より高いレベルで両立することができる。
同図に示す平版印刷版用支持体10は、アルミニウム板12とアルミニウムの陽極酸化皮膜14とをこの順で積層した積層構造を有する。陽極酸化皮膜14は、その表面からアルミニウム板12側に向かってのびるマイクロポア16を有し、マイクロポア16は大径孔部18と樹枝状の小径孔部20とから構成される。なお、ここではマイクロポアという用語は、陽極酸化皮膜中のポアを表す一般的に使われる用語であり、ポアのサイズを規定するものではない。
まず、アルミニウム板12および陽極酸化皮膜14について詳述する。
本発明に用いられるアルミニウム板12(アルミニウム支持体)は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、またはアルミニウム(合金)がラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムもしくは紙の中から選ばれる。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートでもかまわない。
陽極酸化皮膜14は、陽極酸化処理によってアルミニウム板12の表面に一般的に作製される、皮膜表面に略垂直であり、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア16を有する陽極酸化アルミニウム皮膜を指す。該マイクロポア16は、アルミニウム板12とは反対側の陽極酸化皮膜表面から厚み方向(アルミニウム板12側)に沿ってのびる。
以下に、大径孔部18と小径孔部20について詳述する。
大径孔部18の陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、10〜100nmである。該範囲であれば、該平版印刷版用支持体を用いて得られる平版印刷版の優れた耐刷性、放置払い性、および該支持体を用いて得られる平版印刷版原版の優れた機上現像性が達成される。該平版印刷版用支持体を用いて得られる平版印刷版の耐刷性がより優れる点で、平均径は10〜50nmであることが好ましく、15〜50nmであることがより好ましく、20〜50nmであることがさらに好ましい。
平均径が10nm未満の場合、十分なアンカー効果が得られず、平版印刷版の耐刷性向上が得られない。また、平均径が100nmを超える場合、粗面化した砂目を壊してしまい、耐刷性や放置払い性などの各種性能の向上が得られない。
なお、画像上の大径孔部18の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの当該円の直径である。
深さが5nm未満の場合、十分なアンカー効果が得られず、平版印刷版の耐刷性向上が得られない。深さが60nmを超える場合、平版印刷版の放置払い性または平版印刷版原版の機上現像性が劣る。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜14の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部の深さを測定し、平均した値である。
(深さA/大径孔部径)が0.1未満の場合、平版印刷版の耐刷性向上が得られない。(深さA/大径孔部径)が4.0を超える場合、平版印刷版の放置払い性と平版印刷版原版の機上現像性が劣る。
平版印刷版用支持体10a中の大径孔部18aの径(内径)は、陽極酸化皮膜表面からアルミニウム板側に向かって漸増する。大径状部18aの形状は、上記径の条件を満たしていれば特に制限されないが、略円錐状、略釣鐘状である。大径孔部が上記構造をとることにより、平版印刷版の耐刷性、放置払い性、インキ払い性などの諸特性に優れる。
小径孔部20は、図1に示すように、大径孔部18の底部と連通して、連通位置Cよりさらに深さ方向(厚み方向)に分岐しながらのびる樹枝状の孔部である。ひとつの小径孔部20は、通常ひとつの大径孔部18と連通するが、2つ以上の小径孔部20がひとつの大径孔部18の底部と連通していてもよい。
小径孔部20の連通位置Cにおける平均径(小径孔部径)は0より大きく20nm未満である。放置払い性、機上現像性の点で、平均径は15nm以下が好ましく、13nm以下がより好ましく、5〜10nmが特に好ましい。
平均径が20nm以上の場合、本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の放置払い性や、平版印刷版原版の機上現像性が劣る。
なお、画像上で小径孔部20の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの当該円の直径である。
深さが900nm未満の場合、平版印刷版用支持体の耐傷性が劣る。深さが2000nmを超える場合、処理時間が長期化し、生産性および経済性に劣る。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜14の断面の写真(5万倍)をとり、25個以上の小径孔部の深さを測定し、平均した値である。
平均径の比が0.85を超えると、耐刷性と放置払い性/機上現像性との両立が取れない。
図1において、小径孔部20が分岐点において二股に分岐しているが、分岐枝数は特に制限されない。例えば、分岐点から3つに分岐していてもよい。
陽極酸化皮膜の深さ方向(厚み方向)における分岐点間の距離は特に制限されず、適宜調整可能である。
図3に示すように、小径孔部の好適態様として、その端部に拡径された拡径孔部30を有する小径孔部20aが挙げられる。図3においては、拡径孔部30以外の小径孔部20aを構成する部分を主孔部32と称する。小径孔部20aは、陽極酸化皮膜16の厚み方向に沿って、主孔部32と拡径孔部30とが連結して構成される。小径孔部が該構成であると、該平版印刷版用支持体を用いて得られる平版印刷版の耐ポツ汚れ性がより優れる。
拡径孔部30の最大径の平均値は、6nm以上が好ましく、8〜30nm以上がより好ましい。
拡径孔部30の最大径と主孔部30の内径の最大値との差の平均値としては、3nm以上が好ましく、6〜25nmがより好ましい。
以下に、上記平版印刷版用支持体の製造方法について説明する。平版印刷版用支持体の製造方法は特に限定されないが、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
(粗面化処理工程)アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
(第1陽極酸化処理工程)粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(ポアワイド処理工程)第1陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させ、該陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
(第2陽極酸化処理工程)ポアワイド処理工程で得られたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(第3陽極酸化処理工程)第2陽極酸化処理工程で得られたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(親水化処理工程)第2陽極酸化処理工程で得られたアルミニウム板に親水化処理を施す工程
以下に上記各工程について詳述する。なお、粗面化処理工程、ポアワイド処理工程、第3陽極酸化処理工程、および親水化処理工程は、必要がなければ実施しなくてもよい。
また、図4において、第1陽極酸化処理工程から第3陽極酸化処理工程までを工程順に示す基板および陽極酸化皮膜の模式的断面図を示す。
粗面化処理工程は、上述したアルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。該工程は、後述する第1陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を施すのが好ましい。
本発明においては、機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されないが、例えば、特公昭50−40047号公報に記載されている方法に従って施すことができる。機械的粗面化処理は、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン処理により施したり、転写方式で施したりすることができる。
また、化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従って施すことができる。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、平版印刷版の耐汚れ性を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子等の不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
また、各アルカリ剤は、アルミニウムイオンを含有してもよい。アルカリ溶液の濃度は、0.01質量%以上であるのが好ましく、3質量%以上であるのがより好ましく、また、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましい。
更に、アルカリ溶液の温度は室温以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、80℃以下であるのが好ましく、75℃以下であるのがより好ましい。
また、処理時間は、エッチング量に対応して2秒〜5分であるのが好ましく、生産性向上の点から2〜10秒であるのがより好ましい。
酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。酸性溶液の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。また、酸性溶液の温度は、20〜80℃であるのが好ましい。酸性溶液の濃度および温度がこの範囲であると、本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の耐ポツ状汚れ性がより向上する。
電気化学的粗面化処理は、硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、直流または交流を用いて行われる。
また、電気化学的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を行わない場合においても、スマットを効率よく除去するため、デスマット処理を行うのが好ましい。
第1陽極酸化処理工程は、上述した粗面化処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム板表面に深さ方向(厚み方向)にのびるマイクロポアを有するアルミニウムの酸化皮膜を形成する工程である。この第1陽極酸化処理により、図4(A)に示されるように、アルミニウム板12の表面に、マイクロポア16aを有するアルミニウムの陽極酸化皮膜14aが形成される。
具体的には、第1陽極酸化処理工程において形成されるマイクロポア16aの平均径(平均開口径)は、通常、5〜40nm程度であり、好ましくは、7〜20nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポア16が形成しやすく、得られる平版印刷版および平版印刷版原版の性能もより優れる。
また、マイクロポア16aの深さは、通常、10nm以上100nm未満程度であり、好ましくは20〜60nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポア16が形成しやすく、得られる平版印刷版および平版印刷版原版の性能もより優れる。
さらに、第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、0.1〜0.3g/m2が好ましく、より好ましくは0.12〜0.25g/m2である。上記範囲内であれば、該工程を経て得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の耐刷性および放置払い性、並びに、平版印刷版原版の機上現像性に優れる。
なお、電解浴にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1〜10g/Lが好ましい。
ポアワイド処理工程は、上述した第1陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。このポアワイド処理により、図4(B)に示されるように、マイクロポア16aの径が拡大され、より大きな平均径を有するマイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bが形成される。
このポアワイド処理により、マイクロポア16bの平均径は、10〜100nmの範囲まで拡大される。なお、このマイクロポア16bは、上述した大径孔部18に該当する部分となる。
また、該処理により、マイクロポア16bの表面からの深さは、上述した深さAと同程度となるように調整することが好ましい。
なお、アルカリ水溶液のpHを11〜13に調整した後、10〜70℃(好ましくは20〜50℃)の条件下で、アルミニウム板をアルカリ水溶液に1〜300秒(好ましくは1〜50秒)接触させることが適当である。
この際、アルカリ処理液中に炭酸塩、硼酸塩、燐酸塩等の多価弱酸の金属塩を含んでもよい。
なお、酸水溶液の液温5〜70℃(好ましくは10〜60℃)の条件下で、アルミニウム板を酸水溶液に1〜300秒(好ましくは1〜150秒)接触させることが適当である。
なお、アルカリ水溶液または酸水溶液中にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1〜10g/Lが好ましい。
第2陽極酸化処理工程は、上述したポアワイド処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、より深さ方向(厚み方向)にのびたマイクロポアを形成する工程である。この第2陽極酸化処理工程により、図4(C)に示されるように、深さ方向にのびたマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cが形成される。
この第2陽極酸化処理工程によって、平均径が拡大されたマイクロポア16bの底部に連通し、連通位置における平均径がマイクロポア16b(大径孔部18に該当)の平均径より小さく、連通位置から深さ方向に分岐しながらのびる新たな樹枝状の孔部が形成される。該孔部が、上述した小径孔部20に該当する。
第2陽極酸化処理工程の条件は上記樹枝状の孔部が形成される条件であれば特に制限されないが、例えば、電流密度を漸減させながら処理を行う方法が挙げられる。該処理では、走査波形は単純減少のパターンを示す。なお、その際の初期電流密度は使用される電解液の種類によっても異なるが、10〜30A/dm2程度の場合が多い。
また、電流密度の漸減の程度は特に制限されないが、小径孔部の分岐点がより多くなる点より、初期電流密度の25〜95%程度(30〜60%程度が好ましい)になるまで電流密度を漸減させることが好ましい。
また、走査時間は使用される電解液の種類などによって異なるが、0.1〜30秒程度であることが好ましい。
また、第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、通常、2.2〜5.4g/m2であり、好ましくは2.2〜4.0g/m2である。上記範囲内であれば、該工程を経て得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の耐刷性および放置払い性、並びに、平版印刷版原版の機上現像性に優れる。
なお、第2陽極酸化処理工程において印加する電圧を増加させることにより、得られる小径孔部の底部とアルミニウム板との間にある陽極酸化皮膜の厚みが増加する傾向がある。上記のような処理を施すことにより、小径孔部の底部とアルミニウム板との間にある陽極酸化皮膜が所定の厚みになる場合は、後述する第3陽極酸化処理工程は実施しなくてもよい。
第3陽極酸化処理工程は、上述した第2陽極酸化処理が施されたアルミニウム板にさらに陽極酸化処理を施すことにより、主に、小径孔部の底部とアルミニウム板との間に位置する陽極酸化皮膜の厚み(バリア層の厚み)を大きくする工程である。この第3陽極酸化処理工程により、図4(D)に示されるように、厚みXが所定の大きさになる。
なお、上述したように、第2陽極酸化処理工程において、すでに所望の形状のマイクロポアが得られている場合は、第3陽極酸化処理工程は実施しなくてもよい。
。
また、使用される電解液の種類も特に限定されず、上述した電解液を使用することができる。例えば、ホウ酸を含む水溶液を電解浴として用いることにより、第2陽極酸化処理で得られた小径孔部の形状を変えることなく、効率よく厚みXを大きくすることができる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、上述した第3陽極酸化処理工程の後、親水化処理を施す親水化処理工程を有していてもよい。なお、親水化処理としては、特開2005−254638号公報の段落[0109]〜[0114]に開示される公知の方法が使用できる。
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(4)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(8)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(9)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第3デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理、第3陽極酸化処理)
(11)親水化処理
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理、第3陽極酸化処理)
(11)親水化処理
ここで、上記(1)〜(12)における機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、化学エッチング処理、陽極酸化処理および親水化処理は、上述した処理方法、条件と同様の方法で行うことができるが、以下に説明する処理方法、条件で施すのが好ましい。
研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。
スラリー液の比重は1.05〜1.3が好ましい。勿論、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いる方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式などを用いてもよい。
アルカリ水溶液としては、特に苛性ソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温〜95℃で、1〜120秒間処理するのが好ましい。
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うのが好ましい。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001〜30g/m2であるのが好ましく、0.1〜4g/m2であるのがより好ましく、0.2〜1.5g/m2であるのが更に好ましい。
第3アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001〜30g/m2であるのが好ましく、0.01〜0.8g/m2であるのがより好ましく、0.02〜0.3g/m2であるのが更に好ましい。
酸性水溶液の濃度は0.5〜60質量%が好ましい。
また、酸性水溶液中にはアルミニウムおよびアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜5質量%溶解していてもよい。
また、液温は常温から95℃で実施され、処理時間は1〜120秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うのが好ましい。
第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。
また、硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5〜2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
また、温度は10〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
また、塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、塩酸0.5〜2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
また、温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
一方、B態様における塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0〜30g/L添加して使用することができる。また、この溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。
また、塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5〜2質量%水溶液中に、アルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いるのが好ましい。
また、温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
図5において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1〜10msecが好ましい。電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが1未満であると電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる。10msecより大きくなると、電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり均一な粗面化が行われにくくなる。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1〜20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3〜20、アノード反応時間taが5〜1000msec、の範囲にあるのが好ましい。tc/taは2.5〜15であるのがより好ましい。Qc/Qaは2.5〜15であるのがより好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10〜200A/dm2が好ましい。Ic/Iaは0.3〜20の範囲にあるのが好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は25〜1000C/dm2が好ましい。
図6は、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図6において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a,53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a、53bにより電解処理される。電解液55は電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a、53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは次いで補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
上述した工程により得られた平版印刷版用支持体を得た後、後述する画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させる処理(乾燥工程)を施すのが好ましい。
乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラーで液切りしてから行うのが好ましい。具体的な条件としては特に制限されないが、熱風(50〜200℃)、または、冷風自然乾燥法等で乾燥することが好ましい。
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層は特に限定されないが、例えば、特開2003−1956号公報の段落[0042]〜[0198]に記載される、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、機上現像可能な無処理タイプが好適に挙げられる。
以下、好適な画像記録層について、詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版に用いることができる好ましい画像記録層としては、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能なものであり、具体的には、赤外線吸収剤と、重合開始剤と、重合性化合物を有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層が好ましい。
本発明の平版印刷版原版においては、赤外線の照射により画像記録層の露光部が硬化して疎水性(親油性)領域を形成し、かつ、印刷開始時に未露光部が湿し水、インキまたは湿し水とインキとの乳化物によって支持体上から速やかに除去される。
以下、画像記録層の各構成成分について説明する。
本発明の平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源として画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いる。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)に電子移動/エネルギー移動する機能を有する。
本発明において使用することができる赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。例えば、特開2009-255434号公報の段落[0096]〜[0107]に開示される染料を好適に使用することができる。
上記重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物であり、本発明においては、熱によりラジカルを発生する化合物(熱ラジカル発生剤)を使用するのが好ましい。
上記重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
重合開始剤としては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0115]〜[0141]に記載される重合開始剤などが利用できる。
重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選択される。本発明においては、このような化合物は本発明の技術分野において広く知られるものを特に限定無く用いることができる。
重合性化合物としては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0142]〜[0163]に例示される重合性化合物などが使用できる。
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
本発明においては、画像記録層には、画像記録層の皮膜形成性を向上させるためバインダーポリマーを用いることができる。
バインダーポリマーは従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーとしては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
バインダーポリマーとしては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0165]〜[0172]に開示されるバインダーポリマーを使用することもできる。
また、重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0175]〜[0179]に開示される界面活性剤などを使用できる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶かして塗布液を調製した後、該塗布液を支持体上に塗布することにより形成される。ここで、使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
塗布する方法としては、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
本発明の平版印刷版原版においては、上述した画像記録層と平版印刷版用支持体との間に下塗り層を設けることが望ましい。
基板吸着性基、重合性基および親水性基を有するポリマーとしては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、および、重合性反応基(架橋性基)を有するモノマーを共重合した下塗り層用高分子樹脂を挙げることができる。
下塗り層用高分子樹脂に使用できるモノマーとしては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0197]〜[0210]などに記載されるモノマーが挙げられる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜50mg/m2であるのがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版においては、画像記録層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像記録層の上に保護層を設けることができる。
保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書および特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
また、保護層に用いられる材料としては、例えば、特開2009-255434号公報の段落[0213]〜[02227]などに記載される材料(水溶性高分子化合物、無機質の層状化合物など)を用いることができる。
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、下記(a)〜(n)の処理を施し、平版印刷版用支持体を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
図7に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図7において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。
機械的粗面化処理は、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/m2であった。
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/m2であった。
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、60℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2であり、塩酸電解における電気量(C/dm2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/m2であった。
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具体的には、陽極酸化処理工程で使用する硫酸水溶液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
図8に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
なお、陽極酸化処理装置610において、アルミニウム板616は、図8中矢印で示すように搬送される。電解液618が貯溜された給電槽612にてアルミニウム板616は給電電極620によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板616は、給電槽612においてローラ622によって上方に搬送され、ニップローラ624によって下方に方向変換された後、電解液626が貯溜された電解処理槽614に向けて搬送され、ローラ628によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板616は、電解電極630によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽614を出たアルミニウム板616は後工程に搬送される。陽極酸化処理装置610において、ローラ622、ニップローラ624およびローラ628によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板616は、給電槽612と電解処理槽614との槽間部において、前記ローラ622、624および628により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極620と電解電極630とは、直流電源634に接続されている。
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表1に示す条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
なお、該処理は実施例1〜6、13〜14、17〜19、および比較例1、3〜9では実施しなった。
図8に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
なお、使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
図8に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第3段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
なお、該処理は実施例4〜20、比較例1〜9で実施した。
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/m2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
なお、マイクロポアの深さ(大径孔部および小径孔部の深さ)は、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE−SEMで観察し(大径孔部深さ観察:15万倍、小径孔部深さ観察:5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
また、表2中、「連通部密度」は、小径孔部と大径孔部との連通位置Cでの陽極酸化皮膜断面における小径孔部の密度を意味する。「中心部密度」は、小径孔部の深さ方向(陽極酸化皮膜の厚み方向)における中心位置での陽極酸化皮膜断面における小径孔部の密度を意味する(図1中の中心位置Pに該当)。大径孔部欄の「形状」は大径孔部の形状を意味し、略直管状の場合を「直管状」と表記し、陽極酸化皮膜表面からアルミニウム板側に向かって径が大きくなる場合(略円錐状の場合)を「円錐状」と表記する。小径孔部欄の「形状」は小径孔部の形状を意味し、分岐点を有する場合を「樹枝状」、分岐点がなく略直管状の場合を「直管状」として表記する。
なお、大径孔部の形状が円錐状である場合、大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(大径孔部径)は表層平均径に該当する。
なお、比較例10〜14の製造条件は、特開平11−219657号公報の段落[0136]に記載の実施例1〜5の製造条件と同じである。比較例10〜14では、略直管状の小径孔部を有するマイクロポアが形成された。
上記で製造した各平版印刷版用支持体に対し、下記下塗り層用塗布液を乾燥塗布量が28mg/m2になるよう塗布して、下塗り層を設けた。
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
全ての画像記録層塗布液は、各感光液およびミクロゲル液を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.24g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・重合性化合物 トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(NKエステルA−9300、新中村化学社製) 0.192g
・低分子親水性化合物トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.052g
・感脂化剤
ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・ベタイン化合物(C−1)〔下記構造〕 0.010g
・フッ素系界面活性剤(1)(平均重量分子量:1万)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(タケネートD−110N、三井武田ケミカル社製)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(SR444、日本化薬社製)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂社製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを上記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(CKS50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300、日本合成化学工業社製)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール(PVA−405、けん化度81.5モル%、重合度500、クラレ社製)6質量%水溶液 0.03g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン社製)1質量%水溶液
8.60g
・イオン交換水 6.0g
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
(機上現像性)
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像および20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
50%網点チャートの未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、網点非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。機上現像性のよい方から順に、◎(損紙20枚以下)、○(損紙21〜30枚)、△(損紙31〜40枚)、×(損紙41枚以上)で表した。結果を表3に示す。なお、実用上、×でないことが好ましい。
上記機上現像終了後、良好な印刷物が得られるようになった後に、印刷を一旦停止し、25℃、湿度50%の部屋において、印刷機上で1時間放置して、印刷を再開した時に、汚れのない良好な印刷物が得られるまでに要した印刷用紙の損紙枚数を評価した。放置払い性のよい方から順に、◎(損紙75枚以下)、○(損紙76〜200枚)、△(損紙201〜300枚)、×(損紙301枚以上)で表した。結果を表3に示す。なお、実用上、×でないことが好ましい。
上記同様の印刷機及び手法で機上現像したのち、さらに印刷を続けた。ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。印刷枚数が1万枚未満のものを×××、1万枚以上1万5千枚未満のものを××、1万5千枚以上2万枚未満のものを×、2万枚以上2万5千枚未満のものを○、2万5千枚以上3万枚未満のものを◎、3万枚以上のものを◎◎とした。結果を表3に示す。
なお、実用上、「×××」「××」「×」でないことが好ましい。
平版印刷版用支持体の耐傷性は、得られた平版印刷版用支持体表面の引っ掻き試験により評価した。
引っ掻き試験は、連続加重式引っ掻き強度試験器(SB−53、新東科学社製)を用いて、サファイヤ針0.4mmφ、針の移動速度10cm/秒の条件下、加重100gで行った。
その結果、針によるキズがアルミニウム合金板(素地)の表面に達していないものを耐傷性に優れるものとして「○」と評価し、達しているものを「×」と評価した。なお、加重値が100gで耐傷性に優れる平版印刷版用支持体は、平版印刷版原版にしたときの巻き取り時および積層中における画像記録層へのキズの転写を抑制でき、非画像部の汚れを抑制することができる。
なお、実施例1〜6、13〜14、17〜19において得られたマイクロポアを構成する大径孔部の形状は、陽極酸化皮膜表面からアルミニウム板側に向かって径が大きくなる(表層平均径より底部平均径がより大きい)略円錐状であった。なお、該実施例において、底部平均径と表層平均径との差は約25nm程度であった。
また、実施例5〜12、15〜16、20において得られたマイクロポアを構成する大径孔部の形状は、略直管状であった。
さらに、実施例1〜20においては、小径孔部の形状は樹枝状であった。なお、実施例4〜20においては、小径孔部は図3に示すように略直管状の主孔部と、略円錐状の拡径孔部とか構成されていた。拡径孔部の最大値は主孔部の最大値より1〜8nm程度大きかった。さらに、小径孔部の全深さの内、主孔部の占める割合は90%程度であった。
特に、特開平11−291657号公報において具体的に開示されている実施例1〜5を再現した比較例10〜14においては、放置払い性、機上現像性、および耐傷性に劣る結果が得られた。
得られた平版印刷版原版を、25℃、70%RHの環境下で1時間、合紙と共に調湿し、アルミクラフト紙で包装した後、60℃に設定したオーブンで10日間加熱を行った。
その後、室温まで温度を下げてから、上記同様の印刷機及び手法で機上現像したのち、印刷を500枚行った。500枚目の印刷物を目視により確認し、80cm2当たりの、20μm以上の印刷汚れの個数を算出した。その結果を表3に示す。
ポツ状汚れが、250個以上のものを「××」、150個以上250個未満のものを「×」、150個未満のものを「○」とした。
なお、実用上、「××」「×」でないことが好ましい。
実施例4〜20で得られた平版印刷原版を用いて上記耐ポツ状汚れ性を評価したところ、実施例4〜20では「○」であった。
一方、比較例10および13で得られた平版印刷原版を用いて耐ポツ状汚れ性を評価したところ、比較例10では「×」で、比較例13では「××」であった。
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
ta アノード反応時間
tc カソード反応時間
tp 電流が0からピークに達するまでの時間
Ia アノードサイクル側のピーク時の電流
Ic カソードサイクル側のピーク時の電流
10、10a、10b 平版印刷版用支持体
14、14a、14b、14c、14d アルミニウム陽極酸化皮膜
16、16a、16b、16c、16d マイクロポア
18、18a 大径孔部
20、20a 小径孔部
30 拡径孔部
32 主孔部
50 主電解槽
51 交流電源
52 ラジアルドラムローラ
53a,53b 主極
54 電解液供給口
55 電解液
56 補助陽極
60 補助陽極槽
W アルミニウム板
610 陽極酸化処理装置
612 給電槽
614 電解処理槽
616 アルミニウム板
618、626 電解液
620 給電電極
622、628 ローラ
624 ニップローラー
630 電解電極
632 槽壁
634 直流電源
Claims (5)
- アルミニウム板と、その上にアルミニウムの陽極酸化皮膜とを備え、前記陽極酸化皮膜中に前記アルミニウム板とは反対側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有する平版印刷版用支持体であって、
前記マイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ5〜60nm(深さA)の位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ900〜2000nmの位置まで分岐しながらのびる樹枝状の小径孔部とから構成され、
前記大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(大径孔部径)が10〜100nmで、前記大径孔部径と深さAとが(深さA/大径孔部径)=0.1〜4.0の関係を満たし、
前記小径孔部の前記連通位置における平均径(小径孔部径)が0より大きく20nm未満であり、
前記大径孔部径と前記小径孔部径との比(小径孔部径/大径孔部径)が0.85以下である平版印刷用支持体。 - 前記小径孔部の底部と前記アルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚みが20nm以上である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
- 前記連通位置での陽極酸化皮膜断面における前記小径孔部の密度が、100〜3000個/μm2である、請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
- 前記小径孔部の深さ方向における中心位置での陽極酸化皮膜断面における前記小径孔部の密度(密度B)が、前記連通位置での陽極酸化皮膜断面における前記小径孔部の密度(密度A)より大きく、前記密度Bが300〜9000個/μm2である、請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
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