JP2012131968A - 金属膜を形成した反射板 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形加工性、金属膜の密着性、耐落球衝撃性の優れた、金属膜を形成した反射板を得ることを課題とする。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂、(b)非晶性樹脂、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を形成し、前記(b)非晶性樹脂が数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満で分散した分散相(島相)を形成するとともに、前記(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下である金属膜を形成した反射板。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板であって、成形品に金属膜を直接形成することが可能であると共に、成形加工性、金属膜の密着性、耐落球衝撃性の優れた、金属膜を形成した反射板に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、射出成形、押出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などに使用されている。
具体的に、PPS樹脂は前記した特徴から光反射部品として使用されているが、寸法安定性を向上する目的で多量の無機充填材を配合する必要があるため、表面平滑性が悪化してしまい、金属膜を形成する以前に、アンダーコートと言われる下地処理を必要とすると共に、溶融粘度が高くなることによって成形加工性の劣る欠点があり、その改良が強く望まれている。
これまで、PPS樹脂とポリエーテルイミド(以下PEIと略すことがある)樹脂もしくはポリエーテルスルホン(以下PESと略することがある)樹脂からなる金属膜を形成した反射板に関連した、いくつかの報告がなされている。
例えば特許文献1には、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、アミノアルコキシシランもしくはエポキシアルコキシシランからなる樹脂組成物、および該樹脂組成物を用いたランプリフレクターが開示されている。しかし、イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を相溶化剤として用いることについては何ら記載されていない。また、ポリエーテルイミドを数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満の範囲で微分散化するとともに、粒子径が1000nm以上のポリエーテルイミド粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることによって成形品の寸法安定性が飛躍的に向上することから、無機充填材を多量に添加する必要が無く、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成できる様になることについては何ら記載されていない。その他、混練方法については、一般的な手法が記載されているのみであり、この場合、ポリエーテルイミドを数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満の範囲で微分散化するとともに、粒子径が1000nm以上のポリエーテルイミド粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることは実質的に困難である。
特許文献2には、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルイミド、カーボンブラック、繊維状充填材からなる樹脂組成物、および該樹脂組成物を用いたランプリフレクターが開示されている。しかし、特許文献2では、繊維状充填材が少なくとも25重量部以上と多量に含まれることから、成形品の表面平滑性が悪化し、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成することはできない。また、ポリエーテルイミドを数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満の範囲で微分散化するとともに、粒子径が1000nm以上のポリエーテルイミド粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることによって、成形品の寸法安定性は飛躍的に向上するため、無機充填材を多量に添加する必要が無くなり、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成できる様になることについては何ら記載されていない。
特許文献3には、ポリアリーレンサルファイド、ガラス転移温度140℃以上の非晶性熱可塑性樹脂、黒鉛、繊維状フィラーからなる樹脂組成物、および該樹脂組成物からなるランプリフレクターが開示されている。しかし、特許文献3では、繊維状充填材が少なくとも15重量部以上と多量に含まれることから、成形品の表面平滑性が悪化し、金属膜を直接形成することは困難である。また、非晶性樹脂を数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満の範囲で微分散化するとともに、粒子径が1000nm以上の非晶性樹脂粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることによって成形品の寸法安定性は飛躍的に向上するため、無機充填材を多量に添加する必要が無くなり、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成できる様になることについては何ら記載されていない。
特許文献4には、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂、イソシアネート基含有アルコキシシランからなり、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂の数平均分散粒子径が1000nm以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が開示されている。しかし、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂の分散粒子について、粒子径が1000nm以上の粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることによって成形品の寸法安定性は飛躍的に向上するため、無機充填材を多量に添加する必要が無くなり、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成できる様になることについては何ら記載されていない。また、この様にポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂の分散粒子を制御することによって、成形体と金属膜との接着強度が向上すること、落球衝撃強度が改善されることについては何ら記載されていなかった。
この様に、いずれの特許文献においても、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂を数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満の範囲で微分散化するとともに、粒子径が1000nm以上のポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂粒子の数を全粒子数の1.0%以下とすることによって成形品の寸法安定性は飛躍的に向上し、無機充填材を多量に添加する必要が無くなることから表面平滑性が飛躍的に向上して、アンダーコートすることなしに金属膜を直接形成できる様になるという技術思想については何ら記載されていない。また、金属膜との密着性に優れ、落球衝撃強度も向上する他、無機充填材を多量添加する必要が無いため、溶融流動性が改善し、成形加工性が向上することについては何ら記載されていなかった。
特開平4−130158号公報(特許請求の範囲) 特開2003−147200号公報(特許請求の範囲) 特開2003−268236号公報(特許請求の範囲) 国際公開2007/108384号(特許請求の範囲)
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度を損なうことなく、寸法安定性が飛躍的に向上することから、無機充填材を全くもしくは多量に添加する必要が無いため、成形品に金属膜を直接形成することが可能であると共に、成形加工性、金属膜の密着性、耐落球衝撃性の優れた、金属膜を形成した反射板を得ることを課題とする。
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、相溶化剤としてイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を用い、ポリフェニレンスルフィド樹脂中に、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化させると共に、ポリエーテルイミド樹脂またはポリエーテルスルホン樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下になるよう制御することにより、無機充填材を含まないかあるいは極少量の添加であっても、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形体の寸法安定性が飛躍的に向上することから、アンダーコート無しに金属膜を直接的に形成できる様になることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を0.1〜10重量部配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、そのモルフォロジーにおいて前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を形成し、前記(b)非晶性樹脂が数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満で分散した分散相(島相)を形成するとともに、前記(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下であることを特徴とする、金属膜を形成した反射板、
2.前記(b)非晶性樹脂が、数平均分散粒子径1nm以上500nm未満で分散していることを特徴とする1に記載の金属膜を形成した反射板、
3.さらに(d)無機フィラーを、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対して、0重量部超15重量部未満の範囲で配合してなることを特徴とする1〜2のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板、
4.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度(300℃、剪断速度1000/sの条件下)が300Pa・s以下であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板、
5.前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のペレットを真空下、350℃で30分間加熱溶融した際に発生する、炭素数が1〜4の低級アルコール量が、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の重量に対して0.6mmol%以下であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板、
6.前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂90〜1重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂10〜99重量%、さらに(a)と(b)の合計100重量部に対して前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物0.1〜10重量部からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とさらに溶融混練したものである1〜5のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板、
7.(a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂90〜1重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂10〜99重量%、さらに(a)と(b)の合計100重量部に対して前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物0.1〜10重量部からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とさらに溶融混練することにより、(a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を0.1〜10重量部配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製造し、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してから金属膜を形成することを特徴とする1〜5のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板の製造方法、
である。
本発明によれば、寸法安定性が飛躍的に向上することから、無機充填材を全くあるいは多量に添加する必要がないため、アンダーコートすることなしに金属膜を直接的に形成可能であると共に、成形加工性、金属膜の密着性、耐落球衝撃性に優れた、金属膜を形成した反射板を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 2012131968
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また(a)PPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2012131968
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂の溶融粘度に制限はないが、薄肉の射出成形体が得られやすい観点から、300Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)以下であることが好ましく、200Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下がさらに好ましい。下限については、溶融成形加工性やガス発生量の観点から1Pa・s以上であることが好ましい。
なお、本発明における溶融粘度は、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(a)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(a)PPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成する(a)PPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度の(a)PPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られる(a)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(a)PPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(a)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(a)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比が選ばれる。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、配光性能に優れた反射板を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水洗浄を数回繰り返すことにより、曇りや表面固着などの原因となる残留オリゴマーを除去する方法が好ましい。また、相溶化剤である(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物との反応性が向上する観点から、酸処理する方法が好ましい。
その他、(a)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
但し、(a)PPS樹脂は、本発明の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。また本発明では、溶融粘度の異なる複数の(a)PPS樹脂を混合して使用しても良い。
(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂
非晶性樹脂としては、ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することができる。本発明で言うポリエーテルイミドとは、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーで有れば特に限定されない。また、本発明の効果を阻害しない範囲で有れば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル結合以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。
具体的なポリエーテルイミドとしては、下記一般式で示されるポリマーが好ましく使用される。
Figure 2012131968
(但し、上記式中R1は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、R2は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を有するものが好ましく使用される。
Figure 2012131968
本発明では、溶融成形性やコストの観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましく使用される。このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商標でSABICイノベーティブプラスチックス社から市販されている。
Figure 2012131968
Figure 2012131968
ポリエーテルイミドの分子量について特に制限はないが、重量平均分子量が30,000以上、好ましくは50,000以上、更には60,000以上であることが、本発明における樹脂組成物成形品の表面外観を向上させ、最終的に得られる金属膜を形成した反射板の配向性能を高品位化できる観点から好適である。重量平均分子量の上限については、溶融成形加工が可能な範囲で有れば特に制限はなく、100,000以下であることが好ましい。
なお、ここで言う重量平均分子量とは、島津製作所社製LC−10ADvp装置を用い、移動相をジメチルホルムアミド/塩化リチウム(95.5wt%/0.5wt%)、固定相をSHODEX KF−805Lカラム2本とし、PMMAを標準物質として算出した相対平均分子量である。
本発明で言うポリエーテルスルホンとは、繰り返し骨格中に、スルホン結合とエーテル結合を有する樹脂である。代表的な構造として下記を例示できる。
Figure 2012131968
一般に“ビクトレックス”PES、“スミカエクセル”の商標で市販されている。
(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物
本発明では、(b)非晶性樹脂を、(a)PPS樹脂中に1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化させることにより、成形品の寸法安定性が飛躍的に向上するものである。かかる数平均分散粒子径で(b)非晶性樹脂を微分散化するためには、相溶化剤として、イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を添加する必要がある。
本発明に有用なイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物としては、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどを例示することができる。
中でも(a)PPS樹脂、(b)非晶性樹脂との反応性に優れることから、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
本発明における(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の配合割合は、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)/(b)=99〜60重量%/1〜40重量%の範囲であり、(a)/(b)=97〜70重量%/3〜30重量%の範囲がより好ましく、(a)/(b)=95〜80重量%/5〜20重量%の範囲がさらに好ましい。(b)非晶性樹脂が1重量%未満では十分な寸法安定性は得られず、(b)非晶性樹脂が40重量%を越える範囲では溶融流動性が著しく阻害される他、材料コストが上昇してしまうために好ましくない。
本発明における(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合量は、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、0.05〜10重量部の範囲であり、0.1〜5重量部の範囲がより好ましく、0.2〜3重量部の範囲がさらに好ましい。(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合量が0.05重量部を下回る場合、(b)非晶性樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化することが難しくなる。一方、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合量が10重量部を越える範囲では、溶融流動性が著しく阻害されてしまう他、材料コストが上昇してしまうために好ましくない。
本発明の金属膜を形成した反射板は、寸法安定性が飛躍的に向上すると共に、金属膜との密着性、耐落球衝撃性に優れた反射板である。かかる特性を発現させるためには、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジー(相構造)において、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(b)非晶性樹脂が島相(分散相)を形成する必要がある。
また、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径が1nm以上1000nm未満である必要があり、より好ましくは10nm以上500nm未満、更には50nm以上300nm未満であることが特に好ましい。(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径が1000nm以上の範囲であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した成形品の寸法安定性向上効果が不十分となるため、反り変形が起こり易くなる。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物における(b)非晶性樹脂の比表面積は小さくなる結果、金属膜と接触可能な(b)非晶性樹脂の割合が減少して金属膜との密着性が低下してしまう他、十分な衝撃強度向上効果が得られないために、落下や衝撃が加わった際に割れ易くなってしまう。一方、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径が1nm未満である場合は、生産性の観点から好ましくない。
なおここでいう数平均分散粒子径は、(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+40℃の成形温度で(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mm(ゲート形状:フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面角板を成形し、その中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断した断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)非晶性樹脂の分散部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値を求めた数平均分散粒子径である。
さらに、本発明の金属膜を形成した反射板では、無機充填材が含まれていないかあるいは特定量以下の少量であっても寸法安定性が飛躍的に向上したものである。かかる特性を発現するためには、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下である必要があり、0.5%以下であることが好ましく、さらには0%で有ることが最も好ましい。(b)非晶性樹脂の分散不十分や溶融成形加工時に凝集・合体して粒子径1000nm以上の粒子の数が1.0%を越える範囲になってしまうと、仮に数平均分散粒子径が1nm以上1000nm未満の範囲であっても、成形品の寸法安定性向上効果は不十分となってしまい、特に熱処理した後の反り変形が起こり易くなる。
なお、粒子径1000nm以上の(b)非晶性樹脂粒子の数については、前述した数平均分散粒子径同様、(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+40℃の成形温度で(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mm(ゲート形状:フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面角板を成形し、その中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断した断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定してその平均値を分散粒子径とし、そのうち前記分散粒子径が1000nm以上である粒子の数の百分率として定義したものである。
その他、本発明の金属膜を形成した反射板では、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジー(相構造)が安定していることが望ましい。即ち、一度射出成形した後にその成形片を粉砕し、再び射出成形を行った成形片においても、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(b)非晶性樹脂が島相(分散相)を形成することが好ましい。また、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径が1nm以上1000nm未満であることが好ましく、より好ましくは10nm以上500nm未満、更には50nm以上300nm未満であることが特に好ましい。さらに、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下、より好ましくは0.5%以下であり、さらには0%で有ることが最も好ましい。
本発明に用いられるPPS樹脂組成物の相構造については、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂に共通する可溶溶媒などに溶解して一旦分子相溶させた後、スピノーダル分解することにより、(b)非晶性樹脂の分散粒子径を均一に制御する手法も例示できるが、生産性の観点からは、スピノーダル分解を経由せず、溶融混練によって(b)非晶性樹脂の分散粒子径が特定の分布を有するように相構造を制御する方法が好ましい。
(d)無機フィラー
本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるPPS樹脂組成物には、(d)無機フィラーを配合して使用することも可能である。かかる(d)無機フィラーの具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、中でもシリカ、炭酸カルシウム、マイカが好ましく、さらに炭酸カルシウムやマイカが、樹脂成形品の表面平滑性と機械物性のバランスを両立する観点から好ましい。またこれらの(d)無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの(d)無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
かかる(d)無機フィラーの配合量は、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、0重量部超15重量部未満の範囲が好ましく、0重量部超10重量部以下の範囲がより好ましく、0重量部超5重量部以下が更に好ましい。(d)無機フィラーの配合は寸法安定性、耐熱性、剛性を向上するのに有効である反面、15重量部以上の多量の配合は、表面平滑性を悪化させるため、アンダーコートが必要となり、金属膜を直接形成することが出来なくなるため好ましくない。また、無機フィラーの添加により、溶融粘度が上昇するため、成形加工性が悪化して、特に薄肉の成形品を得ることが難しくなるため好ましくない。
その他の添加物
さらに、本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、(b)非晶性樹脂以外の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エチレン・1−ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、ポリエチレンワックス、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると(a)PPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物については、真空下、350℃で30分間加熱溶融した際に発生する、炭素数が1〜4の低級アルコール量が、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の重量に対して、0.6mmol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.4mmol%以下、更に好ましくは0.3mmol%以下、更には0.25mmol%以下であることが特に好ましい。なお、ここで言う炭素数が1〜4の低級アルコールとは、相溶化剤として添加している(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物中の未反応アルコキシシランが加水分解することにより生成するものである。アルコール発生量を0.6mmol%以下とすることで、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形する際に発生する揮発成分が減少し、成形品表面に平滑性、鏡面性を付与することが可能となる。アルコール発生量が0.6mmol%を超える範囲では、成形品表面の平滑性、鏡面性が得られないばかりか、形成したボイドによって、成形品表面と金属膜との密着性が低下してしまうため好ましくない。
なお、前記アルコール発生量は、130℃で一晩熱風乾燥したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物ペレットをガラスアンプルに真空封入し、これを管状炉で加熱することにより捕集して定量する。ガラスアンプルには、腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのものを使用する。具体的なアルコール発生量の定量方法としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物ペレット3gを真空封入したガラスアンプルの腹部のみを、350℃の管状炉(アサヒ理化製作所社製セラミックス電気管状炉ARF−30K)に挿入して30分間加熱することにより、管状炉によって加熱されていないアンプルの首部で、揮発したガスが冷却されて付着する。この首部を切り出した後、付着したガスをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)4gに溶解して回収する。次いで、捕集ガスのNMP溶液を島津製作所製GC−14Aを用いたガスクロマトグラフ法により分離、定量することでアルコール発生量とする。
樹脂組成物の製造方法
本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法としては、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原料を供給して、(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。この際、二軸の押出機を使用し、せん断力を比較的強くすることが、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径を1nm以上1000nm未満の範囲に微分散化させる点で好ましい。具体的には、L/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)が20以上、好ましくは30以上であり、ニーディング部をスクリュー1本当たり3箇所以上、更に好ましくは5箇所以上有する二軸押出機を使用し、スクリュー回転数を200〜1000回転/分、好ましくは300〜1000回転/分として、混合時の樹脂温度が(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+10〜70℃となるように混練する方法などを好ましく用いることができる。L/Dの上限については特に制限しないが、60以下が経済性の観点から好ましい。また、ニーディング部箇所の上限についても特に制限しないが、生産性の観点から10箇所以下であることが好ましい。
また、本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法として、伸張流動しつつ溶融混練することも好ましい手法として例示することが出来る。ここで、伸張流動とは、反対方向に流れる2つの流れの中で、溶融した樹脂が引き伸ばされる流動方法のことである。一方、一般的に用いられる剪断流動とは、同一方向で速度の異なる2つの流れの中で、溶融した樹脂が変形を受ける流動方法のことである。
伸張流動では、溶融混練時に一般的に用いられる剪断流動と比較し、分散効率が高いことから、特に(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の様に、本質的には非相溶な樹脂同士をアロイ化、島成分を高度に微分散化させたい場合、例えば何らかの反応を伴わせることが必要であり、伸張流動法では、それを効率的に行うことが可能である。
かかる伸張流動しつつ溶融混練させる方法としては、押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられ、押出機の例としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸以上の多軸押出機が挙げられるが、中でも単軸押出機と二軸押出機が好ましく用いられ、特に二軸押出機が好ましく用いられる。またかかる二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できるが、混練性、反応性の観点から、好ましくは、完全噛み合い型である。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでも良いが、混練性、反応性の観点から、好ましくは同方向回転である。また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下が10〜1000kg/cmであることが好ましい。かかる伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下とは、伸張流動ゾーン手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで求めることができる。伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が10kg/cm未満である場合には、伸張流動ゾーン内での伸張流動の形成される割合が低く、また圧力分布の不均一化が生じるため好ましくない。また伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が1000kg/cmより大きい場合には、押出機内での背圧が大きくなりすぎるため安定的な製造が困難となるため好ましくない。また伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下は、30〜600kg/cmの範囲が好ましく、50〜600kg/cmの範囲がより好ましく、さらには100〜500kg/cmの範囲が最も好ましい。
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、本発明に適した伸張流動場を付与するためには、押出機のスクリューの全長に対する伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の合計の長さの割合が、5〜60%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜55%、さらに好ましくは、15〜50%の範囲である。
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、押出機のスクリューにおける一つの伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の長さをLkとし、スクリュー直径をDとすると、混練性、反応性の観点から、Lk/D=0.2〜10であることが好ましい。より好ましくは0.3〜9、さらに好ましくは0.5〜8である。また、本発明において、二軸押出機の伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)は、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。特に伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)は押出機スクリュー内の3箇所以上に配置されることが混練性、反応性の観点からより好ましい。
押出機を用いて溶融混練を行う場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーンの具体的な方法としては、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクであることや、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて断面積が縮小されてなる樹脂通路が形成されていることや、押出機中に溶融樹脂の通過する断面積が暫時減少させた樹脂通路からなることが好ましい例として挙げられる。
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、スクリュー1rpmに対する熱可塑性樹脂組成物の押出量が、0.01kg/h以上であることが好ましい。かかる押出量とは、押出機から吐出される熱可塑性樹脂組成物の押出速度のことであり、1時間当たりに押出される重量(kg)のことである。スクリュー1rpmに対する熱可塑性樹脂組成物の押出量が、0.01kg/h未満であると、回転数に対する押出量が十分ではなく、押出機中での滞留時間が長くなりすぎて、熱劣化の原因となると共に、押出機中での樹脂の充満率が小さくなり、十分な混練ができないという問題が生じる可能性がある。また、スクリューの回転速度としては、上記範囲内であれば特に制限はないが、通常10rpm以上、好ましくは50rpm以上、さらに好ましくは80rpm以上である。また、押出量としては、上記範囲内であれば特に制限はないが、通常0.1kg/h以上、好ましくは0.15kg/h以上、さらに好ましくは0.2kg/h以上である。
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、熱可塑性樹脂組成物の押出機中での滞留時間が0.1〜20分であることが好ましい。かかる滞留時間とは、原料が供給されるスクリュー根本の位置から、原料と共に、着色剤等を投入し、着色剤等を投入した時点から、熱可塑性樹脂組成物が押出機の吐出口より押出され、その押出物への着色剤による着色度が最大となる時点までの時間のことである。滞留時間が0.1分未満である場合、押出機中での反応時間が短く、十分に反応が促進されず、熱可塑性樹脂組成物の特性(寸法安定性、機械特性など)の向上が実現されにくい。滞留時間が20分より長い場合、滞留時間が長いことによる樹脂の熱劣化が起こるという問題が生じる可能性がある。本発明における滞留時間としては、好ましくは0.3〜15分、さらに好ましくは0.5〜5分である。
原料の混合順序については、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などが挙げられるが、本発明の寸法安定性が飛躍的に向上した金属膜を形成した反射板を得るためには、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練して(b)非晶性樹脂の高濃度物を調製した後、(a)PPS樹脂とさらに溶融混練して希釈することが重要である。
(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の配合割合は、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)/(b)=90〜1重量%/10〜99重量%の範囲であり、(a)/(b)=85〜10重量%/15〜90重量%の範囲が好ましく、(a)/(b)=80〜30重量%/20〜70重量%の範囲がより好ましく、(a)/(b)=70〜50重量%/30〜50重量%の範囲がさらに好ましい。(b)非晶性樹脂が10重量%未満では、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物との反応が十分に進行せず、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%を越えやすくなるため好ましくない。
また、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(a)PPS樹脂の溶融粘度については特に制限しないが、混練時に剪断力が係りやすくなる観点から、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることが更に好ましい。なお、ここで言う溶融粘度とは、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合割合は、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、0.05〜10重量部の範囲であり、0.1〜5重量部の範囲がより好ましく、0.2〜3重量部の範囲がさらに好ましい。(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合量が0.05重量部を下回る場合、(b)非晶性樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化することが難しくなる。一方、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の配合量が10重量部を越える範囲では、ガスが多発する他、溶融流動性が著しく阻害されてしまうために好ましくない。
予め溶融混練した樹脂組成物と(a)PPS樹脂とをさらに溶融混練する際の(a)PPS樹脂の配合量は、最終的に得られるPPS樹脂組成物が、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)非晶性樹脂1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物が0.1〜10重量部となれば特に制限はない。
また、この際、予め溶融混練した樹脂組成物とさらに溶融混練する(a)PPS樹脂の溶融粘度は自由に選択でき、これによって最終的に生成するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の流動性を制御することも可能である。良流動化により薄肉成形性を向上する観点に立てば、さらに溶融混練する際の(a)PPS樹脂の溶融粘度は、150Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下が更に好ましい。なお、ここで言う溶融粘度とは、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
なお、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、(a)PPS樹脂とさらに溶融混練するのに際し、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練してペレット化した後、(a)PPS樹脂と配合してさらに溶融混練しても良いし、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練中に、サイドフィーダーを用いて(a)PPS樹脂を押出機の途中から供給してさらに溶融混練することも可能である。
また、(d)無機フィラーを配合する場合、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際、あるいは(a)PPS樹脂とさらに溶融混練する際のいずれにおいても配合可能であるが、(b)非晶性樹脂の分散性を向上する観点からは、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂と(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物を予め溶融混練してから、(a)PPS樹脂とさらに溶融混練する際に配合することが好ましい。
本発明の金属膜を形成した反射板に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物については、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径を1nm以上1000nm未満の範囲に微分散化させる観点から、さらには真空下、350℃で30分間加熱溶融した際に発生する、炭素数が1〜4の低級アルコール量を、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の重量に対して、0.6mmol%以下に低減する観点から、一度溶融混練した後に、さらに一回以上溶融混練することが、好ましい製造方法として挙げられる。混練回数の上限については特に限定しないが、一度溶融混練した後に、さらに一回〜三回混練することが、(b)非晶性樹脂の微分散化とアルコール低減効果および経済性の面から好ましい。
さらに、アルコール発生量の少ないポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得る観点から、溶融混練する際に、(a)PPS樹脂と(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対して、水を0.02部以上添加する手法も好ましい製造方法として挙げられる。この方法により、アルコキシシラン化合物の加水分解が促進される結果、得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から発生するアルコール量をさらに低減することができる。また、アルコール量のみならず、オリゴマーや副生成物に由来する不純物が脱揮除去されやすくなるため、溶融成形加工性、成形品の表面粗さ、鏡面性、金属膜との密着性がさらに向上する。水の添加方法としては、特に限定しないが、押出機の途中からギヤポンプ、プランジャーポンプなどの送液装置を使用して水をサイドフィードする手法や、一度溶融混練した後に、さらに一回以上溶融混練する際に、水を配合もしくは押出機の途中からサイドフィードする手法が好ましい方法として挙げられる。
水の添加量については、0.02部以上が好ましく、より好ましくは0.5部以上、さらには1.0部以上が好ましい。水の添加量の上限については、特に限定しないが、混練性や水蒸気による押出機内の圧力上昇の点から、5部未満が好ましい。
水を添加する時期としては、特に限定しないが、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物が、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂や(b)非晶性樹脂と反応した後が好ましく、一度溶融混練した後に、さらに一回以上溶融混練する際に添加することが特に好ましい。
なお、アルコール発生量の少ないポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得るためには、ニーディング部を5カ所以上配して混練力を強化する手法や、混練長の長い押出機を使用する手法なども好ましく、必ずしも二回以上混練する手法や水を添加する手法には限定されない。
本発明では、(a)PPS樹脂中に、(b)非晶性樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化させると共に、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下になるよう制御することにより、無機充填材を含まないかあるいは極少量の添加であっても、寸法安定性が飛躍的に向上することから、アンダーコート無しに金属膜を直接的に形成できることを見出したものである。かかる特性を発現するためには、金属膜を形成する前のPPS樹脂組成物鏡面成形品(金型鏡面粗度:0.03s)を180℃で24時間処理した後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが40nm以下であることが好ましい。180℃で24時間処理した熱処理後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが40nmを越える場合には、金属膜を形成した反射板を使用環境下に晒した際の反り変形が大きくなることを意味しており、金属膜を折角直接的に形成しても優れた配向性能(写像性)が得られないため好ましくない。表面粗さ(中心線平均粗さ)の下限値は特に制限しないが1nm以上が好ましい範囲として例示できる。
なお、表面粗さ(中心線平均粗さ)Raは、(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mmの鏡面角板を180℃×24hrの条件で加熱処理した後、鏡面角板の鏡面部分について、任意の10箇所をミツトヨ(株)製の表面粗さ測定器にて、JISB0601に規定されている中心線平均粗さRaを測定し、その平均値を熱処理後の表面粗さとした。
本発明では、(a)PPS樹脂中に、(b)非晶性樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化させると共に、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下になるよう制御することにより、寸法安定性が飛躍的に向上することから、無機充填材を含まないかあるいは添加しても極少量で十分反り変形を抑制出来るため、溶融流動性に優れる特徴がある。かかる特性を発現するためには、樹脂温度320℃における棒流動長が50mm以上であることが好ましく、より好ましい範囲としては70mm以上であり、90mm以上がさらに好ましい。棒流動長が50mmを下回る場合には、PPS樹脂組成物の溶融流動性が低いことを意味しており、薄肉の成形品が得られにくく、軽量化の観点から不利である。棒流動長の上限値については特に制限しないが、150mm以下が好ましい範囲として例示できる。
なお、棒流動長は、住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃、射出速度設定99%、射出圧力設定45%とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)12.6mm×(厚み)0.5mm(ゲート位置:成形片の幅側、ゲート形状:フィルムゲート)の成形片を連続的に10回射出成形した際の、ゲート位置側から長手方向における充填末端長さを測定し、その平均値を棒流動長としたものである。
金属膜の形成
本発明の金属膜を形成した反射板は、前述したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形などの公知の方法により成形した成形品に金属膜を形成した反射板であるが、中でも280℃〜340℃の温度範囲で射出成形により成形した成形品に金属膜を形成した反射板であることが好ましい。
金属膜を形成する方法としては、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、ニッケル−コバルト合金、銀などの金属を、電気めっき、無電解めっきなどの湿式法や、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの乾式法により膜形成する方法が挙げられるが、中でもイソプロピルアルコールなどで成形品表面を脱脂した後、真空蒸着する手法がコストや作業性の観点から好ましい。
本発明の金属膜を形成した反射板に用いるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物成形品は、無機充填材を含まないあるいは特定量以下の少量であるため、表面平滑性に優れることから、直接金属膜を形成することが可能であるが、必要に応じてプライマー(アンダーコート)処理や表面粗化処理を行っても良い。プライマーとしては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、メラミン系などが挙げられる。表面粗化処理としては、UV処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などが例示できる。
また、必要によっては、金属膜の上に耐熱性が良好な透明保護膜を施しても良い。具体的な保護膜としては、塗装タイプのトップコート、プラズマ重合膜、蒸着膜などが挙げられる。
本発明の金属膜を形成した反射板は、寸法安定性に優れると共に、溶融成形加工性、金属膜との密着性、耐落球衝撃性が良好であるという未知なる属性を有することから、家電照明器具用のダウンライトカバーやリフレクター、投影機等の反射板やランプカバー、LEDパッケージ内に用いるリフレクターやランプ部品、液晶テレビや液晶表示板などのバックライト集光用リフレクター、誘導灯や広告灯などの表示灯に用いるリフレクター、自動四輪車や自動二輪車のヘッドランプ、フォグランプあるいはリヤランプ用のランプリフレクター、ルームランプ用のリフレクター、ランプハウジング、ランプユニット、医療機器の照明用リフレクター、UVスポット照射器などの理化学機器用のリフレクター、撮影用照明器具(ストロボ)のリフレクター、照光式プッシュスイッチや光電スイッチ用のリフレクターなどに有用である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により評価した。
[角板の射出成形]
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mm(ゲート形状:フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面角板を成形した。
[数平均分散粒子径]
前記射出成形した角板の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所社製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の(b)非晶性樹脂の分散部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値である数平均分散粒子径を求めた。
[粒子径1000nm以上の非晶性樹脂粒子数(%)]
前記射出成形した角板の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に拡大して観察した際の任意の100個の、(b)非晶性樹脂の分散粒子について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、そのうち前記分散粒子径が1000nm以上である粒子の数の、全粒子数に対する百分率を求めた。
[アルコール発生量]
腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプルに、130℃で一晩熱風乾燥したPPS樹脂組成物ペレット3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの腹部のみを、アサヒ理化製作所社製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して350℃で30分間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず、揮発ガスの付着したアンプルの首部をヤスリで切り出した。次いで付着ガスを4gのNMPに溶解して回収した後、島津製作所社製GC−14Aを用いたガスクロマトグラフ法により、アルコール量を見積もった。
[表面外観]
前記射出成形した鏡面角板を目視観察することにより、以下の通り優劣を判断した。
◎曇り、フィラーなどの浮きが無く良好。
○実用レベルであるが、目立たない曇り、フィラーなどの浮きが認められる。
×曇り、フィラーなどの浮きがあり、実用性が低い。
[熱処理前表面粗さ(中心線平均粗さRa)]
前記射出成形した鏡面角板の鏡面部分について、任意の10箇所をミツトヨ(株)製の表面粗さ測定器にて、JISB0601に規定されている中心線平均粗さRaを測定し、その平均値を熱処理前の表面粗さとした。該数値が低いほど、表面平滑性に優れる。
[熱処理後表面粗さ(中心線平均粗さRa)]
前記射出成形した鏡面角板を180℃の熱風乾燥機中、24時間加熱処理した後、鏡面角板の鏡面部分について、任意の10箇所をミツトヨ(株)製の表面粗さ測定器にて、JISB0601に規定されている中心線平均粗さRaを測定し、その平均値を熱処理後の表面粗さとした。該数値が低いほど、表面平滑性に優れると共に、熱処理前表面粗さとの差が小さいほど、加熱処理時の反り変形が抑制されていることを意味する。
[アルミニウム蒸着]
前記射出成形した鏡面角板の鏡面部分について、イソプロピルアルコールで脱脂した後、日立製作所社製真空蒸着装置を用い、金属アルミニウムの蒸着を行った。金属膜の厚みはおよそ0.1μmであった。
[未処理品密着性試験]
前記金属アルミニウムを蒸着した鏡面角板成形品の蒸着表面を、市販のNTカッター(幅9mm、35°傾斜の刃)を用いて、1mm間隔のマス目が100個出来るよう、生地に達する深さで切り傷を入れた後、マス目にテープ(粘着力3.4〜3.9N/cmのニチバン製セロテープ(登録商標)、幅18mm)を十分に密着させ、テープの両端を持ち垂直方向に瞬間的に引き剥がした。この際に剥離せずに残ったマス目の数により、以下の通り優劣を判断した。
◎100〜91
○90〜81
△80〜41
×40〜0。
[冷熱処理品密着性試験]
前記金属アルミニウムを蒸着した鏡面角板成形品を、90℃×1時間→室温×15分→−20℃×1時間→室温×15分を1サイクルとして3サイクル冷熱処理してから、室温で12時間放置した後、前記した未処理品密着性試験と同様にして密着性の優劣を判断した。
[湿熱処理品密着性試験]
前記金属アルミニウムを蒸着した角板成形品を、60℃、相対湿度95%に設定した高湿高温槽中にて100時間処理してから、室温で12時間放置した後、前記した未処理品密着性試験と同様にして密着性の優劣を判断した。
[落球衝撃試験]
前記金属アルミニウムを蒸着した角板成形品を、(縦)70mm×(横)70mm×(高さ)50mmの受け台上に置き、100cmの高さより200gの剛球を前記成形品の真ん中に落下させ、割れや亀裂発生の有無を確認することにより、以下の通り優劣を判断した。
○破壊無し。
△ひびのみ。
×ひびと共に破壊。
[棒流動長評価]
住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃、射出速度設定99%、射出圧力設定45%とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)12.6mm×(厚み)0.5mm(ゲート位置:成形片の幅側、ゲート形状:フィルムゲート)の成形片を連続的に10回射出成形した。得られた成形片それぞれの、ゲート位置側から長手方向における充填末端長さを測定し、その平均値を棒流動長とした。棒流動長の値が大きいほど、樹脂組成物の流動性は高いことを意味する。
[ポリエーテルイミドの重量平均分子量測定]
島津製作所社製LC−10ADvp装置を用い、移動相をジメチルホルムアミド/塩化リチウム(95.5wt%/0.5wt%)、固定相をSHODEX KF−805Lカラム2本とし、PMMAを標準物質に用いてポリエーテルイミドの重量平均分子量(相対平均)を測定した。
[参考例1](a)PPS樹脂の重合(a−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂a−1は、溶融粘度が60Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例2](a)PPS樹脂の重合(a−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂a−2は、溶融粘度が200Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例3](b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂
b−1:重量平均分子量53,000のポリエーテルイミド樹脂(SABICイノベーティブプラスチックス社製“ULTEM”1010)
b−2:ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学社製“スミカエクセル”3600G)
b−3:重量平均分子量62,000のポリエーテルイミド樹脂(SABICイノベーティブプラスチックス社製“ULTEM”1000)
[参考例4](c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物
c−1:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−9007)
[参考例5]イソシアネート基を有していないアルコキシシラン化合物
c’−1:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−903)
c’−2:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−303)
[参考例6](d)無機フィラー
d−1:炭酸カルシウム(カルファイン社製KSS−1000)
[実施例1〜6]
表1,表2中の1回目混練に示す各成分を、表1,表2に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。次いでこのペレット(1回目混練樹脂組成物)と、(a)PPS樹脂を表1,表2の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした後、前記した同様の条件でさらに溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表1,表2中の最終組成に示す通りであった。130℃で一晩乾燥した樹脂組成物ペレットのアルコールガス発生量、棒流動長を評価すると共に、射出成形により得られた鏡面角板成形品における数平均分散粒子径、1000nm超の粒子数、表面外観、表面粗さを評価した。また、アルミ蒸着した鏡面角板成形品の各種密着性試験、落球衝撃試験を行った。結果は表1,表2に示すとおりであった。
[実施例7]
表2中の1回目混練に示す各成分を、表2に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。なお、スクリュー全長に対する伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の合計長さの割合(%)は、(伸張流動ゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100と定義し、29%とした。また、スクリュー構成として、L/D=14、23、30の位置から、それぞれ、Lk/D=4.0、4.0、5.0としたニーディングディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に20°としたツイストニーディングディスクを設けた(本スクリュー構成をA−1とした)。また、ツイストニーディングディスクの手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで、伸張流動ゾーン前後での流入効果圧力降下を求めた結果、120Kg/cmであった。次いでこのペレット(1回目混練樹脂組成物)と、(a)PPS樹脂を表2の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした後、前記した同様の条件でさらに溶融混練した。ダイスから吐出するストランドは水浴中で急冷してから、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットは、不透明であった。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表2の最終組成に示す通りであり、実施例2と同様にして各種評価を実施した。結果は表2に示すとおりであった。
[実施例8]
2回目混練において、1回目混練で得られた樹脂組成物(1回目混練樹脂組成物)と、(a)PPS樹脂に加え、イオン交換水を表2の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした以外は、実施例2と同様に溶融混練してPPS樹脂組成物を得た。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表2の最終組成に示す通りであり、実施例2と同様にして各種評価を実施した。結果は表2に示すとおりであった。
[実施例9]
2回目混練において、1回目混練で得られた樹脂組成物(1回目混練樹脂組成物)と、(a)PPS樹脂に加え、(d)無機フィラーを表2の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした以外は、実施例2と同様に溶融混練してPPS樹脂組成物を得た。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表2の最終組成に示す通りであり、実施例2と同様にして各種評価を実施した。結果は表2に示すとおりであった。
[比較例1]
表3中の1回目混練に示す各成分を、表3に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表3中の最終組成に示す通りであり、実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例2]
表3中の1回目混練に示す各成分を、表3に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。次いでこのペレット(1回目混練樹脂組成物)をそのまま、前記した条件でさらに溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表3中の最終組成に示す通りであり、実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例3]
1回目混練、2回目混練のいずれにおいても、溶融混練条件をニーディング部2箇所、スクリュー回転数150rpmとした以外は、実施例2と同様にして溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表3中の最終組成に示す通りであり、実施例2と同様にして各種評価を実施した。結果は表3に示すとおりであった。
[比較例4、5]
(c)相溶化剤種をそれぞれc’−1、c’−2とした以外は、実施例2と同様にして溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表3,表4中の最終組成に示す通りであり、実施例2と同様にして各種評価を実施した。結果は表3、表4に示すとおりであった。
Figure 2012131968
Figure 2012131968
Figure 2012131968
Figure 2012131968
上記実施例1〜9と比較例1〜5の結果を比較して説明する。
いずれの実施例においても、予め(a)PPS樹脂、(b)非晶性樹脂、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物とを溶融混練した後、さらに(a)PPS樹脂と溶融混練する手法を採用することにより、表面外観が良好であると共に、熱処理した後も表面粗さが小さく平滑性に優れており、アンダーコート無しに金属膜を直接形成させても、光反射鏡面として実用出来るレベルのものであった。
実施例1〜6では、相溶化剤としてイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を用い、高剪断条件下で溶融混練した結果、(b)非晶性樹脂が数平均分散粒子径1000nm未満に微分散化していた。特に、1回目混練において使用する(a)PPS樹脂として、a−2を用いた実施例2〜6では、実施例1に比較して(b)非晶性樹脂がさらに微分散化すると共に、1000nmを越える粒子径の(b)非晶性樹脂数は0%となり、熱処理後の表面粗さも小さく、寸法安定性に優れる結果であった。
実施例7では、さらに伸張流動の手法を組み合わせることにより、実施例2に比較して(b)非晶性樹脂がさらに微分散化すると共に、アルコールガス発生量が減少して、表面粗さも小さくなった。
実施例8では、2回目混練の際に水を添加することにより、実施例2に比較してアルコールガス発生量が減少し、表面粗さは小さくなった。
実施例9では、熱処理後の表面粗さが熱処理前の表面粗さと同等となり、実施例2に比較して寸法安定性はさらに向上した。この様に極少量のフィラー添加でさらに寸法安定性を向上させることができることから、表面外観は良好なままであった。
一方、単純に(a)PPS樹脂、(b)非晶性樹脂、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を溶融混練した比較例1では、対応する実施例1に比較して(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径は大きくなり、また、1000nmを越える粒子径の(b)非晶性樹脂数も1.0%を越える結果、熱処理後の表面粗さRaが大きく、寸法安定性に劣る結果であった。
(a)PPS樹脂、(b)非晶性樹脂、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を単純に2回溶融混練した比較例2では、比較例1に比較して、若干(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径は小さくなったものの、1000nmを越える粒子径の(b)非晶性樹脂数は依然として1.0%を越えていた。このため、熱処理後の表面粗さRaが大きく、寸法安定性に劣る結果であった。
比較例3では、実施例2同様、予め(a)PPS樹脂、(b)非晶性樹脂、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物とを溶融混練した後、さらに(a)PPS樹脂と溶融混練する手法を採用したものの、混練力が小さいため、(b)非晶性樹脂の数平均分散粒子径は大きく、1000nmを越える粒子径の(b)非晶性樹脂数も多かった。
比較例4、5では、実施例2とは異なり、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の代わりにc’−1:アミノシラン、c’−2:エポキシシランを使用した結果、1000nmを越える粒子径の(b)非晶性樹脂数が増加し、熱処理後の表面粗さRaは大きくなった。

Claims (7)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(a)と(b)の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を0.1〜10重量部配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、そのモルフォロジーにおいて前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を形成し、前記(b)非晶性樹脂が数平均分散粒子径1nm以上1000nm未満で分散した分散相(島相)を形成するとともに、前記(b)非晶性樹脂の分散粒子について、粒子径1000nm以上の粒子の数が全粒子数の1.0%以下であることを特徴とする、金属膜を形成した反射板。
  2. 前記(b)非晶性樹脂が、数平均分散粒子径1nm以上500nm未満で分散していることを特徴とする請求項1に記載の金属膜を形成した反射板。
  3. さらに(d)無機フィラーを、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)非晶性樹脂の合計100重量部に対して、0重量部超15重量部未満の範囲で配合してなることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板。
  4. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度(300℃、剪断速度1000/sの条件下)が300Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板。
  5. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のペレットを真空下、350℃で30分間加熱溶融した際に発生する、炭素数が1〜4の低級アルコール量が、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の重量に対して0.6mmol%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板。
  6. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、(a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂90〜1重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂10〜99重量%、さらに(a)と(b)の合計100重量部に対して前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物0.1〜10重量部からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とさらに溶融混練したものである請求項1〜5のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板。
  7. (a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂90〜1重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂10〜99重量%、さらに(a)と(b)の合計100重量部に対して前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物0.1〜10重量部からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂とさらに溶融混練することにより、(a)と(b)の合計を100重量%として、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂99〜60重量%、前記(b)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂1〜40重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、前記(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を0.1〜10重量部配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製造し、該ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してから金属膜を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属膜を形成した反射板の製造方法。
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