本発明は、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプの制御方法、ならびに高圧燃料供給ポンプを制御する制御装置に関する。さらに、本発明は、高圧燃料供給ポンプを制御するように特にエンジン制御部等の制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。
具体的には、本発明は、常時閉型の電磁吸気弁のソレノイドへの通電によって磁力により開かれ、かつ/または開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸気弁を備える高圧燃料供給ポンプの制御方法および制御装置に関する。これは、常時開型の電磁吸気弁への通電によって磁力により閉じられかつ/または閉じたまま保持される、常時開型の電磁吸気弁を備える高圧燃料供給ポンプと区別される。
本発明は、制御電圧または制御電流を印加することによって電磁吸気弁を開くために電磁吸気弁の制御電流を制御することに関し、電磁吸気弁の制御電流の制御は、制御電流を電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させること、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内において上死点(TDC)と下死点(BDC)との間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸気行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させることを含む。
加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプは、噴射器によって内燃機関の燃焼室内へ燃料が直接噴射される直接噴射運転に基づいた燃料供給系に使用することができる。内燃機関の燃焼室内へ直接噴射される加圧燃料は、高圧燃料供給ポンプによって加圧される。
例えば、特許文献1において、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給系であって、電磁吸気弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸気弁を備える供給系が知られている。ここで常時閉弁とは、遮断状態すなわち制御電流/制御電圧が電磁吸気弁のソレノイドに印加されていないときは、閉じている型の弁を指す。
特許文献1では、常時閉電磁吸気弁の運転ノイズを低減するという課題に取り組んでおり、電磁吸気弁のソレノイドに通電する前に、流体力によって弁を開くための弁の上流側と下流側との間の流体圧差を利用することが提案された。しかし、常時閉電磁吸気弁の運転ノイズをさらに低減し信頼性の高い運転を可能にするための、さらなる最適化の方策および最適化の方法を見出す努力が継続されている。
従来技術において、電磁吸気弁が既に開いた後、すなわち電磁吸気弁が既に全開位置に達した後に制御電流を低減することによって、ソレノイドの熱的過負荷を回避するためにソレノイドに供給される制御電流が低減される技術が存在する。この様な制御方法では、電磁吸気弁を開くために制御電流を制御するステップでは制御電流はまだ低減されず、常時閉電磁吸気弁が磁力によって既に全閉のまま保持されている運転行程の間、例えば、高圧燃料供給ポンプの吐出弁を通して加圧燃料を出力する行程の間にのみ制御電流が低減される(例えば、特許文献2を参照)。
EP1898085A2公報
DE102004016554A1公報
従来の高圧燃料供給系では、例えば内燃機関のアイドル運転中など、モータが低回転速度条件にあるとき、主要な運転ノイズは電磁吸気弁から発せられるノイズであり、このノイズは、特に弁を開閉するとき例えば電磁吸気弁の吸気弁部材が弁の全閉位置にある弁座と接触したときに発生する。したがって、運転ノイズを低減させることができる、電磁吸気弁を有する燃料供給系を提供することが望ましい。
本発明の目的は、加圧燃料を内燃機関に供給するように構成され、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸気弁を備える高圧燃料供給ポンプの運転ノイズを低減することである。
[1]本発明の第1の態様によれば、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプを制御するための、高圧燃料供給ポンプの制御方法が提案される。高圧燃料供給ポンプは、電磁吸気弁を開き、かつ/または開いたまま保持されるため、特に制御電圧または制御電流を電磁吸気弁に印加したときに磁力によって開かれ、かつ/または開いたまま保持されるように構成され、一方、流体圧が電磁吸気弁に作用せず、かつ制御電圧または制御電流が電磁吸気弁に印加されないときは、付勢部材によって電磁吸気弁が閉じたままである常時閉型の電磁吸気弁を備える。
本発明によれば、高圧燃料供給ポンプの制御方法は、制御電圧または制御電流を電磁吸気弁に印加することによって電磁吸気弁を開くため電磁吸気弁の制御電流を制御することを含み、電磁吸気弁の制御電流の制御は、制御電流を電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させること、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸気行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させることを含む。
本発明によれば、電磁吸気弁を開くため電磁吸気弁の制御電流を制御することは、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸気行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値へ低減することを含む。
したがって、電磁吸気弁の運転ノイズを低減するため、常時閉型の電磁吸気弁を開くための制御電流は、最初は電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加し、その後、より低い第2の制御電流値へ再び低減されるように制御される。電磁吸気弁のソレノイド内の制御電流を減少させることによって電磁吸気弁に作用する磁力が低減するので、電磁吸気弁の閉方向で作用する常時閉型の電磁吸気弁の付勢部材の付勢力を用いて、開方向での電磁吸気弁の移動を減速させることができる。
開位置への電磁吸気弁の移動速度の減速によって、例えば全開位置にある制限部材、ストッパー、または弁座などの機械的係止部に全開位置で当たるときの電磁吸気弁の速度を低減することができるので、発生する衝撃ノイズをさらに低減することができる。換言すれば、例えば弁座などの機械的係止部に電磁吸気弁が滑らかに着地することができるように、電磁吸気弁の開方向での移動を減速する(または全開位置へ向かう加速を少なくとも低減する)ことができ、それによって衝撃ノイズを大幅に低減することが可能になる。
電磁吸気弁を開くため、最初に第1の制御電流値へ増加させ、その後、より低い第2の制御電流値へ減少させるように制御電流を制御することによって、運転ノイズを低減することは、高圧燃料供給ポンプの機械的設計の修正を必要とすることなく、単に印加電流制御を修正することによって運転ノイズを低減することができるという利点を有する。機械的設計に対する変更および修正は、通常、開発または実現するのにコストが非常に掛かり、かつ労力を有するので、ソレノイドの電流制御の修正によるノイズの低減は、機械的設計に修正を加えるよりも大幅なコスト削減となる。これは、自動車産業での部品の大量生産における多量の生産数を考えると特に有利である。
特に、今日の高圧燃料供給ポンプは、一般に、電子エンジン制御装置によって自動的に制御されるので、エンジン制御装置を再プログラムするかまたは構成させること例えばソフトウェアの修正によって、電流制御の最適化されたアルゴリズムを既存の高圧燃料供給ポンプの制御において実現することができる。
さらに、電磁吸気弁のソレノイドに印加される制御電流を精密に制御することによって、ソレノイドに供給されるエネルギー量を、開方向での移動中における電磁吸気弁の加速および/または減速を精密に制御することができる。つまり、制御電流の制御によって発生する磁気付勢力の量に直接影響を及ぼすことが可能になるので、例えば電磁吸気弁に作用する流体力の増加または減少に基づいて、磁気付勢力の増加および/または減少を制御することができる。
本発明の意味での「電流制御」は、例えばPWM制御または閾値電流制御などの電流制御の様々な方法よって実現することができる。本発明の基本概念は、最初に制御電流をソレノイドに通電するための第1の制御電流値へ増加させ、その後、特に電磁吸気弁が全開位置に達する前に、制御電流を電磁吸気弁の移動を減速するかまたは少なくともその加速を低減するためのより低い第2の制御電流値へ減少させることによって、電磁吸気弁を開くために制御電流が制御される限り、制御電流の制御の具体的な構成に限定されるものではない。
例えば、制御電流の制御は、PWM制御電圧を電磁吸気弁のソレノイドに印加することによって行うことができ、その際、ソレノイドにおける制御電流の値および/または変化は、PWM制御電圧信号のデューティサイクルによって制御することができる。
また、PWM制御信号の周波数を変更することによって、ソレノイドに印加される制御電流を制御することが可能である。したがって、PWM電圧制御信号のデューティサイクルとPWM制御の周波数の変更とを組み合わせることによって、制御電流を制御するためにPWM制御を使用することが可能である。
PWM電圧制御を用いて制御電流を制御できることに加えて、例えば連続的に印加される制御電圧を用いて制御電圧または制御電流のいずれかを制御することによって、例えば増幅器を用いてアナログ的に制御電流を直接制御することもできる。例えば、電圧信号のパルス幅変調などの変調を必要とすることなく、電流が特定の閾値に調節される閾値電流制御を用いて電流制御を達成することができる。制御電流の値は、集積回路を用いて直接調節することもできる。
これらの従来技術とは対照的に、本発明によれば、第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値への制御電流の減少は、電磁吸気弁を開くために制御電流を制御して高圧燃料供給ポンプの運転ノイズの低減を可能にするステップにおいて行われる。
一方、特許文献1に記載されているような制御方法は、電磁吸気弁が既に全開位置に達した後にしか制御電流が低減されず、弁が全開位置にある弁座または機械的機械的係止部と接触するときの、電磁吸気弁の開動作の終了時における衝撃が既に起こっているので、運転ノイズを低減するのには全く適していない。
[2]好ましくは、制御電流は、電磁吸気弁が全開する前に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが吸気行程の終了時にBDCに達する前に、第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減される。
[3]本発明によれば、第2の制御電流値は第1の制御電流値より低く、かつ第1の制御電流値より低い非ゼロ電流値であってもよい。
あるいは圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸気弁が全開することを確保するため、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが吸気行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流がゼロまたはほぼゼロまで低減されてもよい。
[4]本発明の一実施形態によれば、電磁吸気弁を開くための電磁吸気弁の電流制御は、さらに、圧縮プランジャがBDCに達する前に制御電流を第2の制御電流値からより高い第3の制御電流値へ増加させることを含む。この態様によれば、標準的な大量生産品の高圧燃料供給ポンプおよび電磁吸気弁の運転ノイズを大幅に低減することが可能であるとともに、大量生産によるばらつきが生じている場合でも、特に圧縮行程が始まる前に確実に全開位置に達するように一連の大量生産品を制御できる。
つまり、本発明の基礎となる高圧燃料供給ポンプおよび電磁吸気弁は、一般に、多量の生産数で生産されている標準的な大量生産品からなる。そのような大量生産品に関して、各製品間で少なくとも小規模な生産のばらつきが生じる可能性がある。本発明によれば、例えば大量生産品の標準的な電磁吸気弁に基づいて、電磁吸気弁の制御電流の制御を最適化することが可能であり、制御電流を第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加させることを含む、本発明の上述の態様では、大量生産品同士で小規模な大量生産によるばらつきが生じる可能性を考慮した場合であっても、運転制御の信頼性をより高めることができる。
例えば、最小制御電流値を、圧縮プランジャがBDCに達する前に大量生産品の標準的な電磁吸気弁を開くのに十分であって、圧縮プランジャがTDCに向かって上向きに再び移動し始めるよりも前に、大量生産品の標準的な電磁吸気弁が全開位置に達することができるように制御する。すなわち電磁吸気弁が、実際に全開位置になった後に圧縮室内の燃料を加圧する圧縮行程が始まり電磁吸気弁を全開位置で開いたまま保持されることができるように、第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値に最小制御電流値を制御することが可能である。
圧縮プランジャがBDCからTDCへの移動を開始するときに圧縮室内の燃料を加圧し始める時点で、電磁吸気弁が既に全開位置にない場合、圧縮プランジャがTDCに向かって移動しているとき、燃料圧が電磁吸気弁に電磁吸気弁の磁力と逆向きの閉方向に作用するため、標準的な電磁吸気弁に対する最小制御電流値が、電磁吸気弁を全開させ開いたまま保持させるのに十分ではないことがある。
具体的には、圧縮プランジャの速度が増加するとともに圧縮室内の燃料圧が増加することがあり燃料が部分的に開いた電磁吸気弁から漏れ出す。例えば部分的に開いた電磁吸気弁のコアとアンカーとの間の間隙が原因で磁力が低減され、磁力が電磁吸気弁を開いたまま保持されるのに十分ではないことがある。
この場合、大量生産品に起こり得るばらつきを考慮した上で高圧燃料供給ポンプの運転の信頼性高い制御を可能にするため、大量生産によるばらつきが原因でより低い第2の制御電流値が電磁吸気弁を全開するのに十分ではない場合に、制御電流を第2からさらに第3の制御電流値へ増加させて磁力を増加させることによって、圧縮行程が始まる時点の前に電磁吸気弁の全開を確実にするように、制御電流が第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加されることが好ましい。
したがって、第2の制御電流値を設定する基本となる標準的な大量生産品からなる電磁吸気弁を大幅に低減された運転ノイズで運転することができるとともに、大量生産によるばらつきがある場合であっても、大量生産品からなる電磁吸気弁を信頼性高く全開位置へ開くことができる。
[5]好ましくは、高圧燃料供給ポンプはさらに、圧縮室と、電磁吸気弁が全閉であり、圧縮プランジャがTDCに向かって移動するとき、圧縮室内の燃料を加圧するため、圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャとを備える。
好ましくは、圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸気弁が全開になることを確保するため、制御電流を第2の制御電流値から第3の制御電流値への増加が、圧縮プランジャがBDCに達する前に行われる。したがって、圧縮プランジャがBDCからTDCに向かって移動する圧縮行程の開始前に、電磁吸気弁が全開位置にあることを確保することができる。
[6]本発明の一実施形態によれば、第3の制御電流値は、電磁吸気弁を全開のまま保持されるための目標制御電流値であり、特に第3の制御電流値は、圧縮プランジャがBDCに達した後に電磁吸気弁を全開のまま保持されるための目標制御電流値である。したがって、第3の制御電流値は、高圧燃料供給ポンプの吐出弁を通して内燃機関のコモンレールへ加圧燃料が吐出される出力行程を開始するために閉じられるときまで、電磁吸気弁を全開位置で保持されるために維持される目標制御電流値である。
ポンプ設計によっては、制御電流を第3の制御電流値へ増加させるステップは、圧縮行程中(すなわち圧縮プランジャがBDCに達しTDCに向かって再び移動開始した後)に燃料圧が増加するのに対抗して電磁吸気弁を開いたまま保持されることを保証する。
あるいは、電磁吸気弁の制御電流の制御は、エネルギー消費を低減するために電磁吸気弁を全開したまま保持されるため、電磁吸気弁が全開した後に第3の制御電流値から目標制御電流値へ低減することを含み、電磁吸気弁の制御電流の制御は、圧縮プランジャがBDCに達した後に電磁吸気弁を全開のまま保持されるため、圧縮プランジャがBDCに達した後の第3の制御電流値を、電磁吸気弁が全開した後の目標制御電流値へ低減させることを含む。
エネルギー消費を低減するため、目標制御電流値は第3の制御電流値よりも低く、好ましくは、圧縮行程中(すなわち、圧縮プランジャがBDCに達し、TDCに向かって再び移動開始した後)に電磁吸気弁が開いたままの状態を確保するのに十分である。
したがって、上述したように圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸気弁が全開位置に達することを確保するために増加させた制御電流値である第3の制御電流値は、次に、加圧燃料が吐出弁を介して圧縮室から吐出される出力行程を開始するために電磁吸気弁を閉じるべきときまで全開のまま保持されるように維持される、より低い目標制御電流値へ再び低減される。
これによって、漏出行程(spill phase)の間維持される目標制御電流値は第3の制御電流値よりも低いので、高圧燃料供給ポンプのエネルギー消費を低減することが可能になる。目標制御電流値は第2の制御電流値に等しくてもよい。また、圧縮プランジャがBDCに達した後に、制御電流は再び第3の制御電流値から目標制御電流値へ低減されるので、ソレノイドの熱的過負荷を効率的に回避することができる。
ここで、漏出行程とは、圧縮行程において圧縮プランジャが既にTDCに向かって移動している場合に、電磁吸気弁が全開位置で保持されており燃料が電磁吸気弁を通して圧縮室から電磁吸気弁を通って漏れ出しており、それによって燃料が加圧されず加圧燃料が電磁吸気弁の吐出弁を通して放出されないようにされる運転行程を指す。
[7]電磁吸気弁の制御電流の制御は、電磁吸気弁に供給されるPWM電圧信号のデューティサイクルを制御し、電磁吸気弁に供給されるPWM電圧信号のデューティサイクルおよび周波数を制御することによって、または、電磁吸気弁に供給されるPWM電圧信号の値を制御すること、例えば増幅器手段を用いて電磁吸気弁に供給されるPWM電圧信号の値を直接制御することによって行われてもよい。
上述したように、本発明の基本的な考え方は、電磁吸気弁のソレノイドに供給される制御電流を制御することに関し、電磁吸気弁がPWM制御によって制御されるときにPWM電圧信号のデューティサイクルを制御することによって、または、PWM制御のPWM電圧信号の周波数およびデューティサイクルを制御することによって、制御電流を制御する様々なやり方で実現することができる。
PWM制御を用いて電圧信号を制御できることに加えて、制御電流は、例えば増幅器および/または集積回路を用いて、制御電圧および/または制御電流を直接調節することによって直接制御することもできる。電圧閾値制御によって制御電流を直接制御することが可能であり、制御電流は例えば集積回路によって直接制御される。
増幅器または集積回路による制御電流の直接的な調節は、電流を精密に制御できるが、PWM電圧信号のオンオフ切替えが原因で、PWM制御が制御電流の漸進的変化におけるリップルにつながることがある。しかし、PWM電圧信号によって制御される制御電流のリップルの影響は、PWM電圧信号の周波数を増加させることにより効率的に低減することもできる。PWM制御の別の利点は簡単に実現できることであり、PWM制御信号を供給するために共通の電子エンジン制御装置が既に製造されており、例えばソフトウェアおよび/またはハードウェアの修正によって、本発明による制御を行うように簡単に構成させることができる。
[8]好ましくは、電磁吸気弁の制御電流の制御はさらに、制御電流を第1の制御電流値へ好ましくは迅速に増加させるため初期電圧パルスを印加すること、ならびに、制御電流を第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減するため、初期電圧パルスを印加した後に第1のPWM電圧信号を印加することを含む。
初期電圧パルスは、初期電圧パルスを具体化する短く印加される定電圧信号によって、または初期電圧パルスを具体化する初期PWM電圧信号として具体化することができ、初期PWM電圧信号のデューティサイクルは、好ましくは第1のPWM電圧信号のデューティサイクルよりも大きい。特に、初期PWM電圧信号のデューティサイクルは、100%または少なくともほぼ100%であってもよい。
この実施形態によれば、PWM制御は電磁吸気弁に供給された制御電流を制御するために使用される。最初は、制御電流を第1の制御電流値まで増加させるため、制御電流を増加させるための初期電圧パルスを印加することができる。PWM制御を使用するとき、初期電圧パルスは、100%または少なくともほぼ100%のデューティサイクルを有するPWM電圧信号パルスによって実現されてもよい。この初期電圧パルスを印加した後、好ましくは100%未満の(特に初期電圧パルスのデューティサイクルよりも小さい)デューティサイクルを有する第1のPWM電圧信号が印加され、特に、電磁吸気弁のソレノイドに印加される制御電流を第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値へ低減することができるように構成される。
[9]好ましくは、電磁吸気弁の制御電流の制御はさらに、制御電流を第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加させるため、第1のPWM電圧信号を印加した後に第2のPWM電圧信号を印加することを含み、特に、第1のPWM電圧信号は第2のPWM電圧信号よりも小さいデューティサイクルを有する。第2のPWM電圧信号は、100%以下またはほぼ100%以下のデューティサイクルを有してもよい。
この実施形態によれば、例えば、大量生産によるばらつきなどがある場合であっても、圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸気弁が全開位置に達するのを確保するため、第2の制御電流値から第3の制御電流値へ再び増加するように制御電流を制御するために、第1のPWM電圧信号よりも大きいデューティサイクルを有するさらなる第2のPWM電圧信号を、電圧電流を再び増加させるために印加することができる。
第2のPWM電圧信号は、制御電流が目標制御電流値に達するように、または、圧縮室内の燃料を加圧し高圧燃料供給ポンプの吐出弁を介して加圧燃料を吐出するために電磁吸気弁を閉じるべきときまで、圧縮プランジャがTDCに向かう上向きの行程で上向きに移動する漏出行程の間、電磁吸気弁を全開位置で保持されるための最終目標制御電流よりも大きい電流に達するように設定することができる。
[10]第1のPWM電圧信号は第2のPWM制御電圧信号に切り替えられてもよい。本発明の別の実施形態によれば、第1のPWM電圧信号は、段階的PWM制御によって第2のPWM電圧信号に変更されてもよい。次に、第1のPWM電圧信号の後、かつ第2のPWM電圧信号の前に、少なくとも第3のPWM電圧信号が印加されてもよい。その結果、第3のPWM電圧信号のデューティサイクルは、第1のPWM制御電圧信号のデューティサイクルよりも大きく、かつ第2のPWM制御電圧信号のデューティサイクルよりも小さくてもよい。
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1のPWM電圧信号のデューティサイクルは、漸増的PWM制御によって、第2のPWM制御電圧信号へ連続的または反復的に増加されてもよい。
制御電流が第2の制御電流値から第3の制御電流値まで迅速に増加される場合、標準的な大量生産品の高圧燃料供給ポンプは、第2の制御電流値を印加する行程の間または少なくともその直後に既に全開位置に達しているが、大量生産によるばらつきが原因で電磁吸気弁が全開位置に達しておらず、制御電流が第2から第3の制御電流値へ増加されることによって全開するという状況が起こることがある。第2から第3の制御電流値へのこの増加が迅速に行われると、電磁吸気弁が高速で弁座または機械的係止部に当たり、それによって稀に望ましくない衝撃ノイズが発生する。
しかし、段階的または漸増的PWM制御によって、第2から第3の制御電流値への制御電流の増加がより低速で滑らかに行われる上述の実施形態によれば、この様な状況であっても、電磁吸気弁は低速で全開位置に達するので、第2の制御電流値に対応する制御電流によって電磁吸気弁が全開しない稀な場合であっても、衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
段階的PWM制御を利用する一実施形態によれば、第1のPWM電圧信号を印加した後、制御電流を第3の制御電流値へよりゆっくりと増加させるためにPWM制御電圧のデューティサイクルを反復的に増加させるため、以前の各PWM制御信号のデューティサイクルに比べてデューティサイクルがそれぞれ増加した複数のPWM制御信号を印加することができる。
代替実施形態によれば、制御電流を第3の制御電流値へ増加させるため、印加されるPWM電圧信号のデューティサイクルが連続的または反復的に増加する漸増的PWM制御を利用することによって、PWM制御を行うことができる。これは、例えば、オン状態にあるPWM制御の持続時間が連続的もしくは反復的に増加し、かつ/またはオフ状態にあるPWM制御の持続時間が連続的もしくは持続的に減少するという点で達成することができる。
さらに、第2の制御電流値から第3の制御電流値への制御電流のほぼ連続的な増加はまた、PWM制御信号の周波数を連続的もしくは反復的に変更するか、または、PWM電圧信号のデューティサイクルの連続的もしくは反復的な変更とPWM電圧信号の周波数の連続的もしくは反復的な変更との組み合わせによっても達成されてもよい。
例えば、増幅器および/または集積回路を用いた上述の閾値電流制御による直流制御の場合、制御電流は、例えば、圧縮プランジャがBDCに達するタイミングまたはほぼそのタイミング(好ましくはその前もしくは直前)で、第3の制御電流値に達するように、より小さい傾斜で増加させることができる。
[11]好ましくは、電磁吸気弁の制御電流の制御はさらに、初期電圧パルスの印加を開始するタイミングを設定すること、初期電圧パルスを印加する持続時間を設定すること、ならびに第1のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または第1のPWM電圧信号を印加する持続時間を設定することの少なくとも1つを含んでもよい。初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、電磁吸気弁の開方向に作用する流体力と、電磁吸気弁の閉方向で作用する付勢力とに応じて、電磁吸気弁の磁力を制御するために行われてもよい。
制御電流を制御するためにPWM制御を利用するとき、制御は簡単に行うことができ、制御を最適化するため、複数の制御パラメータを設定し、かつ/または電磁吸気弁が全閉位置に達するときの衝撃ノイズを制限するように最適化することができる。制御パラメータは、好ましくは、磁力(すなわち、電磁吸気弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力)と、常時閉電磁吸気弁では一般的であるような弁を閉じる方向で電磁吸気弁を付勢する付勢力(すなわち、圧縮プランジャがBDCに向かう下向きの行程にあるときの電磁吸気弁の上流および下流の圧力差によって発生する流体力であって、それによって圧縮室の容積を増加させるとともにその中の圧力を減少させ、電磁吸気弁の開方向で作用する電磁吸気弁に対する流体力が発生する)とが平衡し、電磁吸気弁が全開位置に達するときの衝撃ノイズを低減するために最適化されるように設定される。
例えば、流体力の振幅は、一般に、圧縮室内の圧縮プランジャの移動速度に依存し、圧縮プランジャは最初に、下死点に近付くときに再び減速するまで、TDCから移動する間に加速し、すなわち、圧縮プランジャの移動速度は、圧縮プランジャを駆動する回転カムのプロファイルに依存する周期関数例えば正弦波にほぼ対応し、最大速度はTDCとBDCとの間のほぼ中間に達してもよい(正弦波の場合、最大速度はTDCとBDCとの間の中間に生じる)。
他方で、電磁吸気弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力は、一般に、印加される制御電流、ならびに例えば電磁吸気弁のアンカーおよびコアなど、磁力によって引き付けられる部品間の距離に依存する。他方で、付勢力は電磁吸気弁の位置に依存し、一般に、全閉位置から全開位置へ線形的に増加してもよい。
電磁吸気弁の移動は、上述の力の合計、すなわち付勢力、流体力、および磁力の合計によって得られる。流体力ならびに磁力は電磁吸気弁の開方向で作用してもよく、例えばバネ力などの付勢力は電磁吸気弁の閉方向で作用してもよい。
好ましくは、圧縮プランジャがTDCからBDCへ移動するとき、磁力の時間的変化は流体力の時間的変化と平衡され、その際、本発明による方法は、好ましくは、例えば制御電流の増加を開始するタイミングを設定すること、第1の制御電流値に達するタイミングを設定すること、および/または第1の制御電流値の値を設定することなど、制御パラメータを設定することを含む。
例えば、PWM制御を利用するとき、電磁吸気弁を全開位置に向かって変位させながら、好ましくは流体力および磁力を線形的に増加する付勢力と付加的に平衡させることを含む、流体力および磁力の時間的変化を平衡させるため、初期電圧パルスの印加を開始する時点、初期電圧パルスの印加の持続時間、ならびに第1のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/またはその持続時間の少なくとも1つを設定することができる。
上述のタイミングおよび/または持続時間を設定することによって、高圧燃料供給ポンプの運転ノイズを低減するように、全開位置に達するときの平均衝撃速度を最小限に抑える(すなわち、全開位置における電磁吸気弁の軟着陸を確保する)ための最適化が可能になる。さらに、例えば、カムのプロファイル、ならびに高圧燃料供給ポンプに供給される低圧燃料のフィード圧など、ポンプ設計のパラメータは、流体力およびその挙動に影響する可能性があるので、それらのパラメータが最適化のために考慮されてもよい。
好ましくは、上述のタイミングおよび持続時間の設定は、流体力、磁力、および付勢力の合計である合力が、電磁吸気弁を全開位置で保持されるのに適した閾値力の値(例えば、大量生産品の一般的な標準的電磁吸気弁が全開位置に達した後に、その弁を開いたまま保持されるのに十分な力)よりも高い、弁を開く方向で作用する合力であるようにして行われる。
下向きの行程中における圧縮室の移動速度が最大である時点で、すなわちTDCとBDCとの間のほぼ中間で流体力が最大値を有し、その後、流体力が全体的に再び減少することを考慮するのが必要なことがある。その結果、例えば大量生産によるばらつきが原因で、BDCに向かう圧縮プランジャの移動速度の減少によって電磁吸気弁の開方向に作用する流体力が再び減少する時点で、電磁吸気弁が全開位置に達していない場合、電磁吸気弁を全開位置まで依然として移動させるためにより大きな磁力が必要となる。
一実施形態によれば、この様な状況であっても、初期電圧パルスを印加するタイミングがより初期の値に、例えば流体力が最大値に達する前のタイミングに設定されている場合、大幅に低減された衝撃速度と低減された衝撃ノイズとを達成することができる。
したがって、圧縮プランジャの下向きの行程中における初期の時点では、電磁吸気弁の開方向に作用する流体力が、圧縮プランジャがTDCとBDCとの間のほぼ中間にある行程の最中のこのタイミングにおいて大きいので、電磁吸気弁を全開位置まで移動させるのにより小さな磁力で十分なことがある。
[12]好ましくは、電磁吸気弁の制御電流の制御はさらに、第2のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または第2のPWM電圧信号を印加する持続時間を設定することを含んでもよい。初期電圧パルス、第1のPWM電圧信号、および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、流体力および付勢力に応じて磁力を制御するために行われてもよい。
制御電流を第2の制御電流値から第3の制御電流値へ再び増加させるために第2のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または持続時間を設定することによって、高圧燃料供給ポンプおよび/または電磁吸気弁の大量生産によるばらつきがある場合であっても、電磁吸気弁が全開位置に常に達することを確保することができる。
[13]好ましくは、初期電圧パルスを印加するタイミングは、電磁吸気弁の開方向に作用する最大流体力が生じる前に設定されてもよい。換言すれば、初期電圧パルスを印加するタイミングは、BDCに向かう方向で高圧燃料供給ポンプの圧縮室内で往復運動する圧縮プランジャの移動の最大速度が生じる前に設定されてもよい。
上述のパラメータのタイミングおよび持続時間の設定は、好ましくは、全開位置に達するタイミングが、流体力が最大値のときに、例えばBDCに向かう圧縮プランジャの移動速度がほぼ最大であるタイミングで生じるように設定される。初期電圧パルスを印加するタイミングは、流体力が最大値に達する前の、換言すれば、BDCに向かう圧縮プランジャの移動速度が最大になる前のタイミングに設定される。
さらに、初期電圧パルスを印加する持続時間(および/または後述するような第1のPWM電圧信号を印加する時点)は、流体力が最大値の時点で、または換言すればBDCに向かう圧縮プランジャの移動が行程の最中に最大値に達するタイミングで、電磁吸気弁が全開位置にほぼ近付くように設定される。その後、制御電流は第1のPWM制御信号を印加することによって低減され(制御電流はゼロもしくはほぼゼロまでも低減することができる)、それによって、ソレノイドによって発生する磁力は制御電流の減少によって低減されるので、電磁吸気弁に作用する合力は、全開位置に向かう速度が減速されるか、またはその加速が大幅に減少されるように変動される。
[14]好ましくは、初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号または第1および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、PWM制御が低電流条件にある、例えば電磁吸気弁に印加されるPWM信号のオフ状態のタイミングで電磁吸気弁がその全開状態に達するように設定される。これは、例えば単一スイッチのPWM制御で最も一般的に使用されるような、低周波のPWM制御にとって(例えば、約100〜1000Hz、好ましくは200〜600Hz、好ましくはほぼ400Hzの範囲のPWM制御周波数において)特に有利である。
制御信号がPWM制御によって制御される場合、少なくとも低周波のPWM制御が使用される場合、PWM電圧信号のオンオフの切替えによって制御電流の漸進的変化にリップルが生じることがあり、その際、好ましくは、初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号または第1および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、制御電流のリップルが低電流条件である、すなわち制御電流がPWM制御による平均制御電流値よりもわずかに低い条件である電流平均値よりも低いタイミングで、換言すれば、ソレノイドに印加されるPWM信号がほぼオフ状態のとき、電磁吸気弁が全開位置に達するように設定される。
[15]好ましくは、電磁吸気弁に通電するために制御電流を第1の制御電流値へ増加させるのを開始するタイミングは、電磁吸気弁の開方向に作用する最大流体力が生じる前のタイミングに設定される。これは、例えばPWM制御、または電流閾値制御など上述した直接調節する電流制御等の別のタイプの電流制御のための、上述したような初期電圧パルスのタイミングと持続時間を設定することによって達成することができる。
これは、例えば単一スイッチのPWM制御で最も一般的に使用されるような、低周波のPWM制御にとって(例えば、約100〜1000Hz、好ましくは200〜600Hz、さらに好ましくはほぼ400Hzの範囲のPWM制御周波数において)特に有利である。
[16]一実施形態によれば、電磁吸気弁は、単位体として形成された吸気弁部材および吸気弁プランジャ、すなわち、互いに固定されるか一体的に形成された吸気弁部材および吸気弁プランジャを有する、統合型の電磁吸気弁である。代替実施形態によれば、電磁吸気弁はまた、別個の部材として形成された吸気弁部材および吸気弁プランジャを有する、分離型の電磁吸気弁であることができる。その結果、電磁吸気弁の磁力は好ましくは吸気弁プランジャに作用する。
分離型の電磁吸気弁の場合、電磁吸気弁に通電するために制御電流の第1の制御電流値への増加を開始するタイミングは、吸気弁部材の開方向に作用する流体力によって吸気弁部材が移動を開始した後のタイミングに設定され、特にそれによって、吸気弁プランジャは、吸気弁部材が吸気弁部材の開方向で移動すると、吸気弁部材と接触するようになる。
統合型の電磁吸気弁では、磁力は、好ましくは吸気弁プランジャに作用するが、電磁吸気弁の開方向で吸気弁部材にも作用してもよく、一方、統合型のソレノイド電磁吸気弁を閉じるための付勢力は、電磁吸気弁の閉方向で吸気弁プランジャおよび/または吸気弁部材に作用してもよく、流体力は主に吸気弁部材に作用してもよい。磁力、流体力、および付勢力によって得られる合力は、一体的に形成された吸気弁部材ならびに吸気弁プランジャを備える単一体に、または互いに固定された吸気弁プランジャおよび吸気弁部材を備える単一体に作用してもよい。したがって、合力は、吸気弁部材ならびに吸気弁プランジャがともに移動するように作用してもよい。
代替実施形態によれば、本発明はまた、互いに独立して変位させることができる別個の部材としての吸気弁プランジャおよび吸気弁部材を有する、分離型の電磁吸気弁を制御するのに適用することができる。この様な分離型の電磁吸気弁では、流体力は、一般に吸気弁部材に作用し、磁力は一般に電磁吸気弁を開く方向で吸気弁プランジャに作用する。少なくとも、吸気弁部材を閉方向に付勢する付勢部材が提供されても良く、別の付勢部材が吸気弁プランジャに作用してもよい。吸気弁プランジャに作用する付勢部材は、電磁吸気弁の閉方向または開方向のいずれかで作用する付勢力を発生させるように構成することが可能である。
分離型の電磁吸気弁は、本発明による常時閉電磁吸気弁として実現されるので、付勢部材が吸気弁部材に作用する場合、弁を開く方向で作用する付勢力を発生させてもよい。吸気弁プランジャに作用する付勢部材が開方向で作用する場合、吸気弁部材に作用する付勢部材は、大きな(特に、吸気弁プランジャに作用する付勢力よりも大きな)付勢力を発生させ、それによって、吸気弁部材および吸気弁プランジャが互いに接触し、流体力または磁力がない状況において付勢力全体が閉方向に作用して、吸気弁プランジャに作用する付勢力に対抗して吸気弁部材が全閉位置で保持されるように構成されてもよい。
分離型の電磁吸気弁の場合、流体力は、一般に、上述したように吸気弁部材のみに作用し、その結果、吸気弁部材が電磁吸気弁の開方向に移動する。特に、付勢力が弁を閉じる方向で吸気弁プランジャに作用する、分離型の電磁吸気弁構成の場合、制御電流の増加を開始するタイミングは、例えば初期電圧パルスのタイミングを設定することによって、流体力によって吸気弁部材が弁を開く方向での移動を既に開始した後のタイミングに設定されてもよい。それによって、増加する磁力によって弁を開く方向で移動されている吸気弁プランジャは、吸気弁部材が既に流体力によって開方向で移動しているとき、吸気弁部材と接触するようになる。
したがって、そのような分離型の電磁吸気弁において、吸気弁プランジャが吸気弁部材と接触するときに一般的に発生する第1の衝撃ノイズを、大幅に低減することができる。吸気弁部材が吸気弁プランジャとともに全開位置に達するときに発生する第2の衝撃ノイズは、本発明の上述の態様の少なくとも一つによって、電磁吸気弁のソレノイドに印加される制御電流を制御することによって、大幅に低減することができる。
[17]本発明の第2の態様によれば、加圧燃料を内燃機関に供給する、高圧燃料供給ポンプを制御する制御装置が提案される。本発明の第2の態様による制御装置は、本発明の第1の態様による上述の実施形態の少なくとも1つによって、電磁吸気弁を開くための電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成される。
具体的には、本発明の制御装置は、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプを制御するように構成される。高圧燃料供給ポンプは、特に、電磁吸気弁を開くかまたは開いたまま保持されるために制御電圧を電磁吸気弁に印加したとき、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持され、一方、流体圧が電磁吸気弁に作用せず、制御電圧が電磁吸気弁に印加されないとき、電磁吸気弁は付勢部材によって閉じたままでいる、常時閉型の電磁吸気弁を備える。
本発明によれば、本発明の制御装置は、制御電圧を電磁吸気弁に印加することによって電磁吸気弁を開くため、電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成される。本発明の第2の態様による制御装置は、制御電流が電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加されるように、電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成される。
特に、制御電流は、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸気行程の終了時に下死点(BDC)に達する前に、電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加される。
本発明の制御装置は、制御電流が第1の制御電流値から第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値へ低減されるように、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸気行程の終了時にBDCに達する前に制御電流が第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減されるように電磁吸気弁を開くため、電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成される。
さらに、本発明の制御装置は、さらに、本発明の第1の態様の上述した実施形態の少なくとも一つによって、電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成されてもよい。
[18]本発明の第3の態様によれば、制御装置が、本発明の第1の態様と関連して記載した実施形態の少なくとも一つによって、電磁吸気弁を開くために電磁吸気弁の制御電流を制御するように構成されるように、制御装置を、特にエンジン制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを備える、コンピュータプログラム製品が提案される。つまり、コンピュータプログラム製品は、制御装置が本発明の第2の態様と関連して上述したような制御装置を具体化するように、制御装置、特にエンジン制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを備える。
本発明による方法の上述した特徴および態様、並びにその好ましい特徴および態様は、上述した制御装置ならびにコンピュータプログラム製品にも当てはまり、方法の態様に記載したような利点もやはり当てはまり、それらは本明細書を簡潔にする目的で省略される。上述の好ましい特徴および態様は、任意のやり方で修正し、または組み合わせることができる。
本発明は、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される常時閉型の電磁吸気弁を有し、電磁吸気弁を開くために電磁吸気弁の制御電流を制御するステップを含み、電磁吸気弁の制御電流を制御するステップが、制御電流を電磁吸気弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させるステップを含む、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプの制御方法において、電磁吸気弁を開くために電磁吸気弁の制御電流を制御するステップが、さらに制御電流を第1の制御電流値から第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値へ低減するステップを含むことにより、
開位置への電磁吸気弁の移動速度の減速によって機械的係止部に全開位置で当たるときの電磁吸気弁の速度を低減することができるので、発生する衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
常時閉電磁吸気弁を備える内燃機関に高圧燃料を供給するための高圧燃料供給ポンプを備える燃料供給系の一例を示す模式図。
全閉位置にある常時閉電磁吸気弁の一例を示す模式図。
全開位置にある図2Aの常時閉電磁吸気弁を示す模式図。
従来例の、常時閉電磁吸気弁の一例を示す説明図。
従来例の、常時閉電磁吸気弁を備える高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
ソレノイドに適用されるPWM制御のための2つのスイッチを有する系を示す回路図。
図5Aのソレノイドに供給されるPWM制御信号、およびそれから得られる制御電流を示すタイムチャート。
ソレノイドに適用されるPWM制御のための1つのスイッチを有する系を示す回路図。
図6Aのソレノイドに供給されるPWM制御信号と制御電流を示すタイムチャート。
本発明の第1の実施形態による方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第1の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第2の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第2の実施形態による制御電流および弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第3の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第4の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第4の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
従来の制御方法と本発明の一実施形態を比較するタイムチャート。
分離型の電磁吸気弁の一例を示す模式図。
従来例の、分離型の電磁吸気弁に関する、常時閉電磁吸気弁の一例を示す概略図。
本発明の第5の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第6の実施形態による方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
PWM電圧制御信号の代替例の漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の好ましい実施形態を図面を参照して以下に記載する。実施形態の特徴および態様は、本発明のさらなる実施形態を形成するために修正されるか、または組み合わされてもよい。好ましい実施形態の記載において、制御電流およびこの様な制御電流を発生させるPWM電圧信号が例示的に示される。しかし、電流制御のためのあらゆる方法を使用することによって、PWM制御または直流制御を使用できる。
実際の電流プロファイルは、電磁吸気弁が機械的係止部と衝突したときの電流リップル(特にPWM制御に伴う)または電流の低下などの特性を呈することがあるが、この様な特性は図面では省略されており、平均電流のみが示される。
〔第1の実施形態〕
図1は、常時閉電磁吸気弁を備えた高圧燃料供給ポンプを備える燃料供給系の一例を示す。高圧燃料供給ポンプ100は、加圧燃料を内燃機関の燃焼室内へ直接噴射するため、高圧燃料を内燃機関に供給するように構成される。
燃料供給系は、吸気管300を介して高圧燃料供給ポンプ100に燃料タンクから低圧燃料を供給するため、燃料タンク600および低圧燃料ポンプ200を備える。高圧燃料供給ポンプ100内の燃料を加圧した後、加圧燃料は、吐出管400を介してコモンレール800に供給され、次に4つの噴射器810a、810b、810c、および810dを用いて内燃機関の圧縮室内へ直接噴射される。
本発明は4つの噴射器を有する燃料供給系に限定されず、一般に、少なくとも一つの噴射器をそれぞれ有する少なくとも一つのコモンレールを備えた燃料供給系に適用することができる。
高圧燃料供給ポンプは、常時閉型の電磁吸気弁110と、圧縮室120と、圧縮室120内においてTDCとBDCとの間で往復運動する圧縮プランジャ130とを備える。
高圧燃料供給ポンプはさらに、吐出弁座140aと、吐出弁部材140bと、吐出弁140の閉方向で吐出弁部材140bに作用する付勢力を発生させる吐出弁バネ140cとを備える吐出弁140を備え、吐出弁140が全閉状態のとき、吐出弁部材140bは吐出弁座140aと接触している。
圧縮プランジャ130の往復運動はカム500の回転によって駆動される。圧縮プランジャがTDCからBDCに向かって移動すると、圧縮室120の容積が増加し、圧縮プランジャ130はBDCに達した後、TDCに向かって再び移動し始め、それによって圧縮室120の容積が再び減少し、圧縮プランジャ130がTDCに達した時に最小となる。
低圧燃料は、常時閉電磁吸気弁110を介して低圧燃料管300から圧縮室120に入れられ、吐出弁140によって高圧燃料管400を介して高圧で吐出される。吐出される加圧燃料の量およびタイミングは、エンジン制御装置700によって制御される電磁吸気弁110のソレノイドに印加される制御電流を制御することによって制御される。
図2Aおよび2Bは、常時閉型の電磁吸気弁110の一例の異なる状態を示す。
図2Aでは、電磁吸気弁110は、全閉状態すなわち制御電圧または制御電流がソレノイド112に印加されず電磁吸気弁110が遮断状態にあるので電磁吸気弁に作用する磁力がなく、弁の上流と下流との間で圧力差がないので流体力が弁に作用しないときの状態で示される。その結果、電磁吸気弁110は、例えばバネ113などの付勢部材によって発生する、電磁吸気弁の閉方向に作用する付勢力によって閉じたまま保持される。
図2Bでは、電磁吸気弁110は、例えば弁を全開位置で保持されるため、制御電圧または制御電流がソレノイド112に印加されたときの開状態で示される。
図2Aおよび図2Bの電磁吸気弁110は、吸気弁プランジャ111aおよび吸気弁部材111eを備える。図2Aおよび2Bでは、吸気弁プランジャ111aおよび吸気弁部材111eは単一体として例示的に形成されているが、別体として形成することもできる(例えば、図15を参照)。
アンカー111bは、吸気弁プランジャ111aの他端に、吸気弁プランジャ111aの吸気弁部材111eとは反対側の端部に設けられる。電流がソレノイド112に印加されると、ソレノイド弁のアンカー111bとコア114とは磁力によって互いに引き付けられるので、アンカー111bおよびコア114が接触して変位が制限されるまで吸気弁プランジャ111aが弁を開く方向に変位する。アンカー111bおよびコア114が接触し、それによって吸気弁プランジャ111aの変位が制限される電磁吸気弁の位置は、電磁吸気弁がそれ以上開くことができないので、全開位置と呼ばれる。
電流がソレノイド112に印加されている限り、アンカー111bおよびコア114は接触状態に互いに引き付けられ、それによって弁を開いたまま保持されることができ、吸気弁部材111eは吸気弁座111dから離れて保持される。したがって、矢印によって示されるように、低圧燃料を吸気通路117を介して低圧系から取り出し、吸気ポート118を介して高圧燃料供給ポンプの圧縮室120へ給送することができる。
電流をソレノイド112に印加することによって弁が開いたまま保持されている限り、圧縮室120内の圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を減少させる上向きの行程にあるとき、非加圧燃料が、吸気通路117を介して吸気ポート118から低圧燃料系へ逆向きに漏出する場合もある。
電流がソレノイド112に印加されていないとき、バネ113は、図2Aに示されるように弁を閉じるために吸気弁部材111eが吸気弁座111dと接触するまで、吸気弁プランジャ111aを付勢する。したがって、圧縮室120内における圧縮プランジャ130の上向きの行程では、燃料は吸気ポート118を通って漏出することはできず、燃料が圧縮室120内で加圧され吐出弁140を通して高圧で吐出される。
他方で、電流がソレノイド112に印加されておらず、かつ圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を増加させるように吸気行程(下向きの行程)にあるとき、圧縮室120内の燃料圧は、低圧燃料系に接続された吸気通路117内の燃料の圧力と比べて減少するので、ソレノイド112に電流が印加されなくても、バネ113の付勢力に対抗して弁を開く方向で吸気弁部材111eの変位を生じさせる流体力が発生する。流体力は、アンカー111bがコア114と接触するまで、吸気弁プランジャ111aおよび/または吸気弁部材111eの十分な変位、あるいは、アンカー111bがコア114と接触するまでの十分な変位には至らない変位を生じさせることができる。
その後、電流がソレノイド112に印加されると磁力によって弁が開かれ、かつ/または開いたまま保持される。特に、電流がソレノイド112に印加される前に、吸気弁プランジャ111aは吸気弁部材111eとともに変位される、図2Aおよび2Bに示されるような構造では、電磁吸気弁110の運転中にノイズレベルおよび振動を効率的に低減させることができる。ここで、吸気弁プランジャ111aおよび吸気弁部材111eは一体として形成される。
吸気弁プランジャ111aおよび吸気弁部材111eは、互いに固定された別個の本体として形成することもできる。または吸気弁部材111eが流体力によって弁を開く方向に変位されたとき、吸気弁プランジャ111aおよび吸気弁部材111eが付勢メカニズムによって弁を閉じる方向に付勢され、吸気弁プランジャ111aが弁を開く方向に変位されるように吸気弁部材111eの方向にさらに付勢される、別体として形成することもできる。
〔従来の高圧燃料供給ポンプの制御方法〕
図3は、常時閉電磁吸気弁110を備える高圧燃料供給ポンプ100の従来の制御を示す。図3の最上列には、圧縮プランジャ130の移動の時間的変化(プランジャリフト)が示される。圧縮プランジャ130は、正弦波(または他の周期関数)に類似した動作を行い、TDCとBDCとの間で往復運動する。したがって、図3の上から2列目に示されるように、圧縮プランジャ130の速度は、圧縮プランジャ130がTDCまたはBDCにある時点では、圧縮プランジャ130がゼロの速度を有する。
圧縮プランジャ130の動作の速度の最大値は圧縮プランジャ130の行程の中間で得られ、圧縮プランジャ130はこの実施形態では正弦波によって移動するので、TDCとBDCとの間、またはBDCとTDCとの間の中間で速度の最大値に達する。TDCとBDCとの間での圧縮プランジャ130の移動は下向き行程または吸気行程と呼ばれ、BDCとTDCとの間での圧縮プランジャ130の移動は上向き行程、出力行程、または吐出行程と呼ばれる。
図3の下から2列目に示されるように、吐出行程の開始時に電磁吸気弁110を開き、開いたまま保持されるため、下向きの行程で圧縮プランジャ130がBDCに達する前に(図3では「ON」と呼ばれる)電圧制御信号VCが印加され、それによって、圧縮室120の容積が減少されることにより(圧縮室120内の燃料をほぼ加圧することなく)、燃料は電磁吸気弁110を介して圧縮室120から漏出する。
図3の最下列には、電磁吸気弁110(特に吸気弁部材111e)の弁移動の時間的変化が示される。圧縮プランジャ130がTDCに達し、BDCに向かって再び移動し始めた直後、圧縮室120の容積は低減され、それによって電磁吸気弁110の吸気弁部材111eの上流と下流との圧力差が生じる。圧力差によって発生した流体力がバネ113の付勢力を上回るとすぐに、吸気弁部材111eを電磁吸気弁110の開方向に変位させることによって、流体力が電磁吸気弁110を開くように作用する。
流体力の振幅は圧縮プランジャ130の移動速度に依存し、圧縮プランジャ130の移動速度の最大値に達するまで増加するが、その後流体力は再び減少するので、電磁吸気弁110のソレノイド112に供給される制御電圧信号をオンにして通電するまで、流体力が減少するとともにバネ113の付勢力によって吸気弁部材111eが弁を閉じる方向に再び変位する。
電圧制御信号VCをオンにすると、ソレノイド112の制御電流は電磁吸気弁110に作用する磁力を発生させる。発生した磁力によって、吸気弁部材111eが吸気弁座111dと接触するようになる全開位置まで吸気弁部材111が変位され、それによって、例えばアイドル条件など内燃機関の低回転速度条件において、常時閉電磁吸気弁110を有する高圧燃料供給ポンプの運転における主要なノイズである衝撃ノイズが発生する。
電磁吸気弁110は、アンカー111bおよびコア114を引き付ける磁力によって全開位置で保持され、ソレノイド112に供給される制御電圧VCがオフに切り替えられるまで、燃焼室120内の燃料が全開状態の電磁吸気弁110を介して圧縮室120から漏出する。その後、バネ113によって発生する電磁吸気弁110の閉方向の付勢力と、流体力とによって電磁吸気弁が閉じる。
電磁吸気弁110が全閉位置に達する時点で、加圧燃料を吐出弁140を介して圧縮室120から内燃機関へ吐出するための出力行程が始まる。具体的には、圧縮プランジャ130が依然としてTDCに向かって移動しており、圧縮室120の容積がさらに低減されるが、圧縮室120内の燃料の圧力は、吐出弁140の閉方向に作用する吐出弁バネ140cの付勢力を克服するまで増加し、それによって吐出弁140が開くので、吐出弁140および吐出管400を介して加圧燃料をコモンレール800へ給送することができる。
吐出弁140を介して加圧燃料を吐出する出力行程は、圧縮プランジャ130がTDCに達するとすぐに終わる。圧縮プランジャ130がBDCの方向に再び移動し始めるとすぐに、次の吸気行程が始まる。
図4は、圧縮プランジャ130が図3に示されるように下死点BDCに達する前に、常時閉電磁吸気弁を開くための従来のPWM制御を示す。図4の上の列は、電磁吸気弁のソレノイドに印加される制御電圧信号VCが、最小および最大制御電圧値の間でオンオフが切り替わることを示す(最小値はゼロであってもよく最大値よりも低い非ゼロ値であってもよい)。
図4の下の列は、図4の上の列における制御電圧信号VCに対応する制御電流ICの漸進的変化を示す。最初に、初期電圧パルスIVPはタイミングt1でオンに切り替わり、時間t2まで電磁吸気弁110のソレノイド112に印加される。ここで、t1およびt2は、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点の前の時間である。時間t2までに、PWM制御信号VCFが100%未満のデューティサイクルで印加されて、ほぼ一定の電流制御目標値ITで電磁吸気弁110のソレノイド112に制御電流ICが供給され続け、それが次に、上述の漏出行程の間、電磁吸気弁110を全開位置で保持されるためのほぼ一定の磁力を発生させるのに使用される。
ここで、時間t1およびt2の間に印加される初期電圧パルス信号IVP(例えば、100%またはほぼ100%のデューティサイクルのPWM信号)によって、ソレノイドに高速で通電され、一方、ソレノイドの熱的過負荷および場合によっては電気エネルギーの浪費に結び付く可能性があり得る振幅まで、制御電流が増加されるのを回避するため、PWM電圧信号VCFが100%未満のデューティサイクルで印加される。
〔PWM制御方法〕
図5Aは、電磁吸気弁110のソレノイド112をPWM制御するための一般的な系を示す。PWM制御系は、エンジン制御装置700の処理装置であるCPU710から出される信号1、2によって制御される2つのスイッチS1およびS2を備える。スイッチS1およびS2は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)、すなわち、CPU710によって制御される電界効果トランジスタのゲート電極に電圧信号を印加することによって切り替えることができる電子スイッチによって具体化されてもよい。図5Bは信号1、2およびソレノイド電流を示す。
一般的には、2つのスイッチを有するこの様なPWM制御系は、通常、パルス幅変調PWMの高い周波数(一般的に、1〜10kHzの範囲、好ましくは2〜6kHzの範囲、最も一般的には約4kHz)で制御され、1つのスイッチ(図5AではS2)は、必要なパルス幅変調によってソレノイド112に印加されるPWM信号のオンオフ切替えに使用される。系は、電池(電池電圧VBAT)および接地電位(GND)に接続され、または、電池の2つの極に接続されてもよい。スイッチS1はPWM制御を行うために使用され、スイッチS2は、ソレノイドを高速で遮断するのに、すなわち電圧を迅速に一定して下降させるのに使用される。
図6Aは、電磁吸気弁110のソレノイド112をPWM制御するための代替の一般的な系を示す。PWM制御系は、エンジン制御装置700の処理装置710(例えば、CPU)からの信号1によって制御される1つのスイッチS1を備える。スイッチS1は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)、すなわちCPU710によって制御される電界効果トランジスタのゲート電極に電圧信号を印加することによって切り替えることができる電子スイッチによって具体化されてもよい。図6Bは信号1およびソレノイド電流を示す。
一般的には、1つのスイッチを有するこの様なPWM制御系は、通常、パルス幅変調PWMの低い周波数(一般的に、100〜1000Hzの範囲、好ましくは200〜600Hzの範囲、最も一般的には約400Hz)で制御される。系は、電池(電池電圧VBAT)および接地電位(GND)に接続され、または、電池の2つの極に接続されてもよい。
図7は、本発明の第1の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸気弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図7の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
時間t1の最初のポイントで、圧縮プランジャ130がBDCに達する前、かつ時間t2までは(t2−t1=ΔT1)、制御電流ICを、電磁吸気弁110に通電して弁を開くための制御電流値IC1へ増加させるため、初期電圧信号IVPが電磁吸気弁110のソレノイド112に供給される(例えば、100%デューティサイクルを有するPWM電圧信号)。
時間t2からは、電磁吸気弁110のソレノイド112に、100%未満のデューティサイクルを有する、特に制御電流が制御電流値IC1からより低い制御電流値IC2へ低減されるように、かつ弁を全開位置まで開くため、制御電流ICがこの制御電流値IC2でほぼ保持されるように設定されたデューティサイクルを有するPWM電圧信号VCFが印加される。
圧縮プランジャ130がBDCからTDCに向かって移動し始める圧縮行程の開始時に、電磁吸気弁を全開のまま保持されるため、制御電流値IC2が維持され、すなわち、本発明の第1の実施形態における制御電流値IC2は、燃料が全開の電磁吸気弁110を通して高圧燃料供給ポンプ100の圧縮チャンバ120から漏れ出すことができるように、圧縮行程の開始時に圧縮プランジャ130がBDCに達した後に、電磁吸気弁110を全開位置で保持されるための目標制御電流値ITを表す。
図8は、第1の実施形態による電流制御と、図4に述べた従来例の電流制御との比較を示す。上述したように、従来の電流制御によれば(図8の破線を参照)、制御電流ICは最初に目標制御値ITまで増加され、その後、目標制御電流ITでほぼ一定して保持される。それとは対照的に、本発明によれば、制御電流ICは電流制御値IC1まで増加され、その後目標制御電流値ITである制御電流値IC2まで再び減少される。
特に、図8では、制御電流ICの制御電流IC1から制御電流値IC2への低減は、電磁吸気弁が全閉位置から全開位置に向かって移動し始めた後に行われる。しかし、図8の下の列に見られるように、制御電流ICを低減することにより、全開位置に向かう電磁吸気弁の移動速度は従来の電流制御による弁移動に比べて減速される。これによって、吸気弁部材111eが時間N2において吸気弁座111dと接触するとき、全開位置におけるより軟らかい着陸を達成することができる。時間N2の後、電磁吸気弁は、ソレノイド112の制御電流IC2によって誘導される磁力によって全閉位置で保持される。
従来の電流制御によれば、吸気弁部材111eは、初期の時間N1ではより高速で弁座111dに当たり、それによって大幅に大きい衝撃ノイズが生成される。第1の実施形態による制御によれば、吸気弁部材111eが全開位置に達するとき(弁座111dと接触するとき)に発生する衝撃ノイズを有効に低減することができる。
〔第2の実施形態〕
図9は、本発明の第2の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による電磁吸気弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図9の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
第1の実施形態と同様に、時間t2までの時間t1では、ソレノイド112の制御電流ICを制御電流値IC1まで増加させるための初期電圧パルスIVPが供給される。第1の実施形態と同様に、時間t2から開始して制御電流ICを制御電流値IC2へ減少させるためのPWM電圧制御信号VC1が印加される。これは、全開位置に向かう吸気弁部材111eの移動が時間t2の後に減速され、または少なくともその加速が低減されるという効果を有する。
全開位置へ向かう吸気弁部材111eの移動の最適な減速を達成するため、制御電流IC2が、大量生産品による標準的な電磁吸気弁110を開き、かつ開いたままで保持されるのに十分な(すなわち、標準的な大量生産の電磁吸気弁が圧縮行程中、弁を開いたまま保持されることに適した)ほぼ最小値であるように、電圧制御信号VC1のデューティサイクルを設定することができる。
その際、大量生産によるばらつきが原因で、電磁吸気弁の開方向に作用する磁力が小さくなり過ぎることがあり、開方向に作用する流体力がすぐに小さくなり過ぎ、かつ/または閉方向に作用する付勢力が大きくなり過ぎるため、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点の前に、電圧制御信号VC1および制御電流値IC2が吸気弁部材111eを全開位置まで移動させるのに十分ではないという状況が生じることがある。
その結果、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点でアンカー111bとコア114との間に起こり得る間隙が原因で、磁力が圧縮プランジャ130がTDCに向かって再び上向きに移動し始めるとき、電磁吸気弁110を開いたまま保持されるのに十分ではないことがある。燃料が吸気ポート118を通って吸気弁部材111eに向かって流れ、それによって吸気ポート118および吸気通路117を通って圧縮室120から漏出するとすぐに、閉方向で吸気弁部材111eに作用する流体力が発生しうる。
第2の実施形態では、時間t3では、PWM電圧制御信号VC1に比べてより高いデューティサイクルのさらなるPWM電圧制御信号VCFが、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に制御電流ICをより高い制御電流値IC3まで再び増加させるために印加される。これによって、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、電磁吸気弁110の全開が確保される。
大量生産品の標準的な電磁吸気弁110の場合、制御電流IC2は、時間t2およびt3の間の行程で既に、全開位置で弁座111d上に吸気弁部材111eを滑らかに着陸させるのに十分であって、それによってアンカー111bとコア114との間に間隙がないように設定されてもよい。その結果、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、開方向に作用する流体力が再び低減するときであっても、ソレノイド112の制御電流IC2によって生じる磁力は電磁吸気弁を全開のまま保持されるのに十分である。この様な標準的構成では、制御電流ICを制御電流値IC2から制御電流値IC3へ増加させることによって、電磁吸気弁110が全開位置でさらに保持され、それによって衝撃ノイズは発生しない。
大量生産によるばらつきが原因で、時間t2およびt3の間の行程中に電磁吸気弁110が全開しなかった場合、制御電流を制御電流値IC2から制御電流値IC3へ増加させることによって、吸気弁部材111eを全開位置まで変位するように、アンカー111bおよびコア114を引き付ける磁力が増加する。これは、時間t2とt3との間で既に全開した、大量生産によるばらつきがない標準的な電磁吸気弁110に比べて、より大きな衝撃ノイズに結び付くことがある。
しかし、第2の実施形態では、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、電磁吸気弁110が全開位置に達することを確保することが可能なので、大量生産によるばらつきがある場合であっても開いたまま保持されることができる。
図10は、本発明の第2の実施形態による制御電流および弁移動の漸進的変化を概略的に示す。図10は、制御電流ICが最初に制御電流値IC1へ増加され、次に、電磁吸気弁の移動の開始後に制御電流値IC2へ減少され、さらに、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、圧縮プランジャ130が下死点BDCに達した後に電磁吸気弁を全開位置で保持されるための最終目標制御電流値ITである電流制御値IC3へ再び増加される電流制御を示す。
図10の下の列では、制御電流値IC2を印加する行程の間(図9の時間t2およびt3の間)は全閉されず、圧縮プランジャ130がBDCに達する直前に減少される流体力により、全閉位置に向かって再び移動する電磁吸気弁に関する弁移動が示される。しかし、圧縮プランジャ130がBDCに達する直前に、制御電流ICが電流制御値IC2から制御電流値IC3へ増加するため、依然として全開位置まで変位させることができる。ここで、時間N3では、電磁吸気弁が全開位置に達するときに衝撃ノイズが発生する。しかし、大量生産によるばらつきがある場合であっても、圧縮プランジャ130がBDCに達した後、電磁吸気弁を全開位置で保持されることを確保できる。
図10に示されるように、第2の実施形態による制御を使用する場合であっても、標準的な大量生産品の電磁吸気弁110は図8に示されるのと同じ挙動を示し、すなわち、制御電流ICが制御電流値IC1から制御電流値IC2へ減少することに起因して、衝撃ノイズを大幅に低減して時間N2の全開位置での軟着陸を達成することが可能である。図10の破線はやはり、図4に記載したような従来例の電流制御に対応する。
上述したように、第2の実施形態による電流制御によれば、大量生産によるばらつきがある場合、電磁吸気弁110が低減された電流制御値IC2によって全開せず、その後、制御電流ICを再びより高い目標制御電流値ITへ増加させることによって全開させるため、場合によってはより大きな衝撃ノイズが生成されるものの、制御の信頼性は高まる。
〔第3の実施形態〕
図11は、本発明の第3の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸気弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図11の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
第3の実施形態によれば、圧縮プランジャ130がBDCに達した後に電磁吸気弁を全開のまま保持されるための、制御電流ICの電流制御値IC2から最終目標制御電流値ITへの増加は、第2の実施形態に上述した大量生産によるばらつきがある場合であっても、全開位置での軟着陸を確保するため、徐々にしか増加されない。
第3の実施形態によれば、図11の上の列に示されるように、複数のPWM電圧制御VC1、VC2、VC3、およびVCFは、時間t2、t3、t4、t5で初期電圧パルスIVPの後に印加される。ここで、PWM電圧制御信号VC1から最終電圧制御信号VCFへの複数のPWM電圧制御信号のデューティサイクルは、圧縮プランジャ130がBDCに達した後で電磁吸気弁110を全開のまま保持されるために、制御電流ICを制御電流値IC2から制御電流値IC3へ、制御電流値IC4へ、また最終目標制御電流値ITへ連続的に増加させるため、段階的PWM制御によって徐々に増加される。
〔第4の実施形態〕
図12は、本発明の第4の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸気弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図12の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
図12によれば、制御電流ICは制御電流値IC2から最終目標制御電流値ITへ増加される。しかし、図11に上述した第3の実施形態とは異なり、初期電圧パルスIVPと最終PWM電圧制御信号VCFとの間で、PWM電圧制御信号VC1のデューティサイクルは、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、制御電流値IC2を最終目標制御電流値ITへ連続的に(あるいはオン状態の持続時間の増加および/またはオフ状態の持続時間の減少を反復させる)増加させるように、時間t2と時間t3(t3−t2=ΔT2)との間で連続的に増加される。
本発明の第4の実施形態による電磁吸気弁110のソレノイド112の制御電流ICの制御の影響が図13に示される。図13は、制御電流値IC2が最終目標制御電流値ITまで連続的に増加されることを上の列に示す。破線はやはり、図4のような従来の制御を指す。図13の下の列では、大量生産品の標準的な電磁吸気弁110が図8に上述したのと同様の挙動を示すことが示される。
しかし、第2の制御電流値IC2が電磁吸気弁110を全開するのに十分ではないことがある、大量生産によるばらつきがある場合、制御電流を連続的に増加させることで、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、時間N4において電磁吸気弁が依然として全開位置に達して、第2の実施形態に比べて衝撃速度がより低くなることが確保される。
制御電流値の制御電流値IC2から目標制御電流値ITへの連続的な増加によって、吸気弁座111dにある吸気弁部材111eの時間N4における滑らかな着陸が可能になり、それによって、大量生産によるばらつきがある場合でも確実に衝撃ノイズを大幅に低減することが可能になる。制御電流の制御電流値IC2から目標制御電流値ITへの増加が第2の実施形態による場合よりも低速で行われるので、段階的PWM電圧制御を使用することは同様の利点を有する。
図14は、図3に示されるような従来の制御方法と、本発明の第4の実施形態による制御方法との比較を示す。図14で「A」と表示された破線の曲線は、全開位置において衝撃ノイズが大幅に低減されて滑らかに着陸するように制御される、標準的な大量生産品の弁移動を示す。図12および13に示されるように制御電流値IC2が減少することによって、全開位置に達する前の電磁吸気弁の移動速度を減速することができる。「B」と表示された破線の曲線は、低減された制御電流値IC2によってまだ全開されていないが、その直後に制御電流が目標制御電流値ITへ増加されることによって全開される電磁吸気弁の弁移動を示す。
〔プランジャ分離型の電磁吸気弁〕
図15は、分離型の電磁吸気弁210の例を概略的に示す。図2Aおよび2Bに示される電磁吸気弁110とは異なり、電磁吸気弁210の吸気弁部材211eおよび吸気弁プランジャ211aは、独立して移動することができる別個の本体として形成される。吸気弁プランジャ211aは、付勢部材、例えばバネ213aによって閉方向に付勢され、吸気弁部材211eは、別の付勢部材、例えばバネ213bによって閉方向に付勢される。
アンカー211bは、吸気弁プランジャ211aの一端に、すなわち、吸気弁プランジャ211aが吸気弁部材211eと接触することができる側とは反対側の吸気弁プランジャ211aの端部に設けられる。電流がソレノイド212に印加されると、ソレノイド弁のアンカー211bおよびコア214は磁力によって互いに引き付けられるので、アンカー211bおよびコア214が接触するようになって、変位が制限されるまで吸気弁プランジャ2111aは弁を開く方向で変位される。この位置では、吸気弁プランジャ211aは、バネ213aおよび213bの付勢力に対抗して、吸気弁部材211eを全開位置で保持されることができる。
電流がソレノイド212に印加されている限り、アンカー211bおよびコア214は接触したままであるように互いに引き付けられたままであり、それによって弁を開いたまま保持されることができ、吸気弁部材211eは吸気弁座211dから離れて保持される。したがって、矢印によって示されるように、低圧燃料を吸気通路217を介して低圧系から取り出し、矢印によってさらに示されるように、吸気ポート218を介して高圧燃料供給ポンプの圧縮室120へ給送することができる。
電流をソレノイド212に印加することによって弁が開いたまま保持されている限り、圧縮室120内の圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を減少させる上向きの行程にあるとき、非加圧燃料が、吸気通路217を介して吸気ポート218から低圧燃料系へ逆向きに漏出する場合もある。
しかし、電流がソレノイド212に印加されていないとき、バネ213aおよび213bは、弁を閉じるために吸気弁部材211eが吸気弁座211dと接触するまで、吸気弁プランジャ211aおよび吸気弁部材213bを弁を閉じる方向に付勢する。吸気弁プランジャ211aは、バネ213aの付勢力によって閉方向にさらに変位されてもよい。
圧縮室120内における圧縮プランジャ130の上向きの行程では、燃料は吸気ポート218を通って漏出することはできず、吐出弁140を通して高圧で吐出されるように燃料が圧縮室120内で加圧される。他方で、電流がソレノイド212に印加されておらず、かつ圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を増加させるように吸気行程(下向きの行程)にあるとき、圧縮室120内の燃料圧は、低圧燃料系に接続された吸気通路217内の燃料の圧力と比べて減少するので、ソレノイド212に電流が印加されなくても、バネ213bの付勢力に対抗して弁を開く方向で吸気弁部材211eの変位を生じさせることができる流体力が発生する。流体力は、吸気弁部材211eの十分な変位を、あるいは、全開位置への吸気弁部材211eの十分ではない変位を生じさせることができる。
電流がソレノイド212に印加され通電されると、磁力によって吸気弁プランジャ211aが弁の開方向に変位される。その結果、一般に、この様な分離型の電磁吸気弁の従来の制御によれば、2つの衝撃ノイズが生じる。第1の衝撃ノイズは吸気弁プランジャ211aが吸気弁部材211eに当たるときに発生し、第2の衝撃ノイズは電磁吸気弁が全開位置に達したときに発生する。
図16は、分離型の電磁吸気弁に対する本発明の背景に関連した、常時閉電磁吸気弁の従来の制御の一例を示す。最上列は、TDCとBDCとの間での圧縮プランジャの移動を示す。上から2列目は制御電流ICの漸進的変化を示し、最下列は吸気弁部材211eおよび吸気弁プランジャ211aの対応する移動を示す。図16は、時間N5およびN6において連続的に生成される2つの衝撃ノイズの発生を示す。
時間N6における、すなわち電磁吸気弁が全開位置に達したときの衝撃ノイズは、上述したような本発明による、特に上述の実施形態のいずれかによる電流制御によって大幅に低減することができる。さらに、以下に、吸気弁プランジャ211aが吸気弁部材211eに当たるときに生成される第1の衝撃ノイズも低減することを付加的に可能にする、別の実施形態が記載される。
〔第5の実施形態〕
図17は、本発明の第5の実施形態による、制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を概略的に示す。最上列は、TDCとBDCとの間での圧縮プランジャの移動を示す。上から2列目は制御電流ICの漸進的変化を示し(破線は、図16に上述した従来の制御に対応する)、最下列は吸気弁部材111eおよび吸気弁プランジャ111aの対応する移動を示す。
圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、制御電流は制御電流値IC1へ増加され、次に制御電流値IC2へ減少され、その後、第2の実施形態による制御電流と同様に、最終目標制御電流値ITへ再び増加される。あるいは、第1、第3、または第4の実施形態による制御電流を使用することができる。
さらに、例えば上述したように初期電圧パルスIVPのタイミングを設定することによる、制御電流ICの増加を開始するタイミングは、吸気弁部材111eが、流体力によって既に開方向でのその移動を開始した後のタイミングに設定される。図17に示されるように、制御電流ICの増加を開始するタイミングは、磁力の増加によって開方向に変位されている吸気弁プランジャ111aが、流体力によって開方向で既に移動しているときの吸気弁部材111eと接触するように設定される。したがって、一般に吸気弁プランジャ111aが吸気弁部材111eに当たると発生する、第1の衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
〔第6の実施形態〕
図18は、本発明の第6の実施形態によるソレノイド112の制御電流を制御する制御方法を示す。図18において圧縮プランジャ130がBDCに達する時点より前の制御は、本発明の第2の実施形態に関して図9に記載したような制御に完全に対応する。
しかし、圧縮プランジャ130がBDCに達した後、TDCに向かって再び上へ移動するとき、第6の実施形態による制御方法、はさらに圧縮プランジャ130がBDCに達した後の時間t4において、図18の制御電流IC3を、圧縮プランジャ130がTDCに向かって移動する圧縮行程中であっても電磁吸気弁を全開位置で保持されるのには依然として十分である、より低い目標制御電流値ITへ減少させるため、それ以前に印加されたPWM電圧制御信号VC2よりも小さなデューティサイクルを有する最終PWM制御信号VCFを印加するステップを含む。
第2の実施形態の利点に加え、第6の実施形態によって、エネルギー消費を低減するとともに、電磁吸気弁を全開位置で保持されるように維持される減少された目標制御電流値ITに起因する、ソレノイド112の熱的過負荷をさらに回避することが可能になる。
図19は、PWM電圧制御信号の代替例の漸進的変化を示す。上述の実施形態では、ソレノイド(1つもしくは複数)のPWM制御は、単一スイッチまたは二重スイッチのPWM制御によって例示的に達成された。単一スイッチ制御が使用されるとき、PWM周波数は一般に非常に低く、一般的には100〜800Hz、好ましくは300〜600Hz、より好ましくは400Hzに等しいか少なくとも約400Hz(2.5msの周期と等価)である。
これは、電磁吸気弁の機械的動作に比べて比較的低速なので、一般的に、電磁吸気弁は最初の数回のPWM周期後に機械的係止部に達する。そのような場合、全開位置における電磁吸気弁の「軟着陸」(すなわち、衝撃速度がほぼゼロに減速されることによって衝撃ノイズがほとんどない)も実現することができる。これは、最初の数サイクルに対して異なるデューティサイクルを使用し、その後、圧縮行程が始まる前に電磁吸気弁が全開位置に達することを確保するため、BDCに達する前にデューティサイクルを増加させることによって達成できる。
最初のPWM周期の実際の値は、いわゆるP_ONタイミング(すなわち、ポンプのTDCの時点に対する、ソレノイド(1つもしくは複数)の初期の通電を開始する時点)とエンジン速度とを考慮に入れて、各運転条件に対して決定することができる。ノイズ発生を最小限にするため、電磁吸気弁は、好ましくは、PWM電圧制御信号がオフ状態にある時点の間に、またはパルスの開始時に機械的係止部に達する。
上述の方法は、較正プロセス中に使用して、全開位置にある電磁吸気弁が着陸する瞬間の決定を可能にすることができる。任意の条件では、圧縮サイクルの開始前により高いPWMデューティサイクルへの(BDCとTDCとの間の)切替えによって、運転条件のいかなる変更にも関わらず、または大量生産によるばらつきにも関わらず、電磁吸気弁が全開位置に達することが確保される。
較正手順は、(最初の数サイクルに対して)いくつかの別個のPWMデューティサイクルを決定することを伴ってもよい。図10では、例示的に、4つのデューティサイクル「Duty1」、「Duty2」、「Duty3」、および「Duty4」が示される(「初期PWM」と表示される)。一般的に、電磁吸気弁は、値が低すぎない限り、最初の2サイクル、3サイクル、または4サイクル以内で全開位置に達することができ、値が低い場合は、十分に高いデューティサイクルを、好ましくは約95%のデューティサイクルを有する最終PWMデューティサイクルによって全開位置へ移動させられる。
したがって、1つの可能な構成は段階的PWM制御を使用することであり、初期PWM全体の持続時間に関しては、「Duty1」=「Duty2」=「Duty3」=「Duty4」である(例えば、75%デューティサイクル)。また、最終PWMのデューティサイクルは約95%(または85%〜100%デューティサイクル、好ましくは90%〜100%デューティサイクルの、別の十分に高い値)である。
別の可能な構成は、初期PWM持続時間におけるPWM電圧信号デューティサイクルを一定して上昇させるか、または大きな最初のデューティサイクル(初期電圧パルスなど)と、それに続いて第2の周期(Duty2)により低いデューティサイクルとを使用するものなどである。圧縮行程の開始前に電磁吸気弁が確実に全開していることを保証するため、BDCに達する前に大きなデューティサイクルを使用すべきである。このアルゴリズムは、次のように一般化することができる。
Duty1
Duty2=Duty1+a
Duty3=Duty2+b
Duty4=Duty3+c
ここで、a、b、c、…は較正プロセス中に決定することができる(一般的に±約5%)。次に、BDCに達する前に、一定した大きなデューティサイクルが使用される。
Duty最終=DutyF(例えば、95%デューティサイクル)
上述の実施形態の構造の特徴、構成要素、および特定の詳細を入れ替えるか、または組み合わせて、個々の用途に向けて最適化されたさらなる実施形態を形成することができる。それらの修正が当業者には明白である限り、あらゆる可能な組み合わせを明示的に指定することなく、上述の記載によって暗示的に開示されているものとする。
100:高圧燃料供給ポンプ
110:電磁吸気弁
111a:吸気弁プランジャ
111e:吸気弁部材
120:圧縮室
130:圧縮プランジャ
700:制御装置
IC:制御電流
IC1:第1の制御電流値
IC2:第2の制御電流値
IC3:第3の制御電流値
IT:目標制御電流値
TDC:上死点
BDC:下死点
VC:電磁吸気弁の電圧信号
IVP:初期電圧パルス
VC1:第1のPWM電圧信号
VC2;VC3;VCF:第2のPWM電圧信号
ΔT1:初期電圧パルス(IVP)を印加する持続時間
ΔT2:第1のPWM電圧信号(VC1)を印加する持続時間
t1:初期電圧パルス(IVP)を印加し始めるタイミング
t2:第1のPWM電圧信号(VC1)を印加する持続時間(ΔT2)のタイミング
t3;t4;t5:第2のPWM電圧信号を印加するタイミング
ΔT3;ΔT4:第2のPWM電圧信号を印加する持続時間
本発明は、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプの制御方法、ならびに高圧燃料供給ポンプを制御する制御装置に関する。さらに、本発明は、高圧燃料供給ポンプを制御するように特にエンジン制御部等の制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。
具体的には、本発明は、常時閉型の電磁吸入弁のソレノイドへの通電によって磁力により開かれ、かつ/または開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸入弁を備える高圧燃料供給ポンプの制御方法および制御装置に関する。これは、常時開型の電磁吸入弁への通電によって磁力により閉じられかつ/または閉じたまま保持される、常時開型の電磁吸入弁を備える高圧燃料供給ポンプと区別される。
本発明は、制御電圧または制御電流を印加することによって電磁吸入弁を開くために電磁吸入弁の制御電流を制御することに関し、電磁吸入弁の制御電流の制御は、制御電流を電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させること、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内において上死点(TDC)と下死点(BDC)との間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸入行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させることを含む。
加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプは、噴射器によって内燃機関の燃焼室内へ燃料が直接噴射される直接噴射運転に基づいた燃料供給系に使用することができる。内燃機関の燃焼室内へ直接噴射される加圧燃料は、高圧燃料供給ポンプによって加圧される。
例えば、特許文献1において、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給系であって、電磁吸入弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸入弁を備える供給系が知られている。ここで常時閉弁とは、遮断状態すなわち制御電流/制御電圧が電磁吸入弁のソレノイドに印加されていないときは、閉じている型の弁を指す。
特許文献1では、常時閉電磁吸入弁の運転ノイズを低減するという課題に取り組んでおり、電磁吸入弁のソレノイドに通電する前に、流体力によって弁を開くための弁の上流側と下流側との間の流体圧差を利用することが提案された。しかし、常時閉電磁吸入弁の運転ノイズをさらに低減し信頼性の高い運転を可能にするための、さらなる最適化の方策および最適化の方法を見出す努力が継続されている。
従来技術において、電磁吸入弁が既に開いた後、すなわち電磁吸入弁が既に全開位置に達した後に制御電流を低減することによって、ソレノイドの熱的過負荷を回避するためにソレノイドに供給される制御電流が低減される技術が存在する。この様な制御方法では、電磁吸入弁を開くために制御電流を制御するステップでは制御電流はまだ低減されず、常時閉電磁吸入弁が磁力によって既に全閉のまま保持されている運転行程の間、例えば、高圧燃料供給ポンプの吐出弁を通して加圧燃料を出力する行程の間にのみ制御電流が低減される(例えば、特許文献2を参照)。
EP1898085A2公報
DE102004016554A1公報
従来の高圧燃料供給系では、例えば内燃機関のアイドル運転中など、モータが低回転速度条件にあるとき、主要な運転ノイズは電磁吸入弁から発せられるノイズであり、このノイズは、特に弁を開閉するとき例えば電磁吸入弁の吸入弁部材が弁の全閉位置にある弁座と接触したときに発生する。したがって、運転ノイズを低減させることができる、電磁吸入弁を有する燃料供給系を提供することが望ましい。
本発明の目的は、加圧燃料を内燃機関に供給するように構成され、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される、常時閉型の電磁吸入弁を備える高圧燃料供給ポンプの運転ノイズを低減することである。
[1]本発明の第1の態様によれば、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプを制御するための、高圧燃料供給ポンプの制御方法が提案される。高圧燃料供給ポンプは、電磁吸入弁を開き、かつ/または開いたまま保持されるため、特に制御電圧または制御電流を電磁吸入弁に印加したときに磁力によって開かれ、かつ/または開いたまま保持されるように構成され、一方、流体圧が電磁吸入弁に作用せず、かつ制御電圧または制御電流が電磁吸入弁に印加されないときは、付勢部材によって電磁吸入弁が閉じたままである常時閉型の電磁吸入弁を備える。
本発明によれば、高圧燃料供給ポンプの制御方法は、制御電圧または制御電流を電磁吸入弁に印加することによって電磁吸入弁を開くため電磁吸入弁の制御電流を制御することを含み、電磁吸入弁の制御電流の制御は、制御電流を電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させること、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸入行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させることを含む。
本発明によれば、電磁吸入弁を開くため電磁吸入弁の制御電流を制御することは、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸入行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流を第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値へ低減することを含む。
したがって、電磁吸入弁の運転ノイズを低減するため、常時閉型の電磁吸入弁を開くための制御電流は、最初は電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加し、その後、より低い第2の制御電流値へ再び低減されるように制御される。電磁吸入弁のソレノイド内の制御電流を減少させることによって電磁吸入弁に作用する磁力が低減するので、電磁吸入弁の閉方向で作用する常時閉型の電磁吸入弁の付勢部材の付勢力を用いて、開方向での電磁吸入弁の移動を減速させることができる。
開位置への電磁吸入弁の移動速度の減速によって、例えば全開位置にある制限部材、ストッパー、または弁座などの機械的係止部に全開位置で当たるときの電磁吸入弁の速度を低減することができるので、発生する衝撃ノイズをさらに低減することができる。換言すれば、例えば弁座などの機械的係止部に電磁吸入弁が滑らかに着地することができるように、電磁吸入弁の開方向での移動を減速する(または全開位置へ向かう加速を少なくとも低減する)ことができ、それによって衝撃ノイズを大幅に低減することが可能になる。
電磁吸入弁を開くため、最初に第1の制御電流値へ増加させ、その後、より低い第2の制御電流値へ減少させるように制御電流を制御することによって、運転ノイズを低減することは、高圧燃料供給ポンプの機械的設計の修正を必要とすることなく、単に印加電流制御を修正することによって運転ノイズを低減することができるという利点を有する。機械的設計に対する変更および修正は、通常、開発または実現するのにコストが非常に掛かり、かつ労力を有するので、ソレノイドの電流制御の修正によるノイズの低減は、機械的設計に修正を加えるよりも大幅なコスト削減となる。これは、自動車産業での部品の大量生産における多量の生産数を考えると特に有利である。
特に、今日の高圧燃料供給ポンプは、一般に、電子エンジン制御装置によって自動的に制御されるので、エンジン制御装置を再プログラムするかまたは構成させること例えばソフトウェアの修正によって、電流制御の最適化されたアルゴリズムを既存の高圧燃料供給ポンプの制御において実現することができる。
さらに、電磁吸入弁のソレノイドに印加される制御電流を精密に制御することによって、ソレノイドに供給されるエネルギー量を、開方向での移動中における電磁吸入弁の加速および/または減速を精密に制御することができる。つまり、制御電流の制御によって発生する磁気付勢力の量に直接影響を及ぼすことが可能になるので、例えば電磁吸入弁に作用する流体力の増加または減少に基づいて、磁気付勢力の増加および/または減少を制御することができる。
本発明の意味での「電流制御」は、例えばPWM制御または閾値電流制御などの電流制御の様々な方法よって実現することができる。本発明の基本概念は、最初に制御電流をソレノイドに通電するための第1の制御電流値へ増加させ、その後、特に電磁吸入弁が全開位置に達する前に、制御電流を電磁吸入弁の移動を減速するかまたは少なくともその加速を低減するためのより低い第2の制御電流値へ減少させることによって、電磁吸入弁を開くために制御電流が制御される限り、制御電流の制御の具体的な構成に限定されるものではない。
例えば、制御電流の制御は、PWM制御電圧を電磁吸入弁のソレノイドに印加することによって行うことができ、その際、ソレノイドにおける制御電流の値および/または変化は、PWM制御電圧信号のデューティサイクルによって制御することができる。
また、PWM制御信号の周波数を変更することによって、ソレノイドに印加される制御電流を制御することが可能である。したがって、PWM電圧制御信号のデューティサイクルとPWM制御の周波数の変更とを組み合わせることによって、制御電流を制御するためにPWM制御を使用することが可能である。
PWM電圧制御を用いて制御電流を制御できることに加えて、例えば連続的に印加される制御電圧を用いて制御電圧または制御電流のいずれかを制御することによって、例えば増幅器を用いてアナログ的に制御電流を直接制御することもできる。例えば、電圧信号のパルス幅変調などの変調を必要とすることなく、電流が特定の閾値に調節される閾値電流制御を用いて電流制御を達成することができる。制御電流の値は、集積回路を用いて直接調節することもできる。
これらの従来技術とは対照的に、本発明によれば、第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値への制御電流の減少は、電磁吸入弁を開くために制御電流を制御して高圧燃料供給ポンプの運転ノイズの低減を可能にするステップにおいて行われる。
一方、特許文献1に記載されているような制御方法は、電磁吸入弁が既に全開位置に達した後にしか制御電流が低減されず、弁が全開位置にある弁座または機械的機械的係止部と接触するときの、電磁吸入弁の開動作の終了時における衝撃が既に起こっているので、運転ノイズを低減するのには全く適していない。
[2]好ましくは、制御電流は、電磁吸入弁が全開する前に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが吸入行程の終了時にBDCに達する前に、第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減される。
[3]本発明によれば、第2の制御電流値は第1の制御電流値より低く、かつ第1の制御電流値より低い非ゼロ電流値であってもよい。
あるいは圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸入弁が全開することを確保するため、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが吸入行程の終了時にBDCに達する前に、制御電流がゼロまたはほぼゼロまで低減されてもよい。
[4]本発明の一実施形態によれば、電磁吸入弁を開くための電磁吸入弁の電流制御は、さらに、圧縮プランジャがBDCに達する前に制御電流を第2の制御電流値からより高い第3の制御電流値へ増加させることを含む。この態様によれば、標準的な大量生産品の高圧燃料供給ポンプおよび電磁吸入弁の運転ノイズを大幅に低減することが可能であるとともに、大量生産によるばらつきが生じている場合でも、特に圧縮行程が始まる前に確実に全開位置に達するように一連の大量生産品を制御できる。
つまり、本発明の基礎となる高圧燃料供給ポンプおよび電磁吸入弁は、一般に、多量の生産数で生産されている標準的な大量生産品からなる。そのような大量生産品に関して、各製品間で少なくとも小規模な生産のばらつきが生じる可能性がある。本発明によれば、例えば大量生産品の標準的な電磁吸入弁に基づいて、電磁吸入弁の制御電流の制御を最適化することが可能であり、制御電流を第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加させることを含む、本発明の上述の態様では、大量生産品同士で小規模な大量生産によるばらつきが生じる可能性を考慮した場合であっても、運転制御の信頼性をより高めることができる。
例えば、最小制御電流値を、圧縮プランジャがBDCに達する前に大量生産品の標準的な電磁吸入弁を開くのに十分であって、圧縮プランジャがTDCに向かって上向きに再び移動し始めるよりも前に、大量生産品の標準的な電磁吸入弁が全開位置に達することができるように制御する。すなわち電磁吸入弁が、実際に全開位置になった後に圧縮室内の燃料を加圧する圧縮行程が始まり電磁吸入弁を全開位置で開いたまま保持されることができるように、第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値に最小制御電流値を制御することが可能である。
圧縮プランジャがBDCからTDCへの移動を開始するときに圧縮室内の燃料を加圧し始める時点で、電磁吸入弁が既に全開位置にない場合、圧縮プランジャがTDCに向かって移動しているとき、燃料圧が電磁吸入弁に電磁吸入弁の磁力と逆向きの閉方向に作用するため、標準的な電磁吸入弁に対する最小制御電流値が、電磁吸入弁を全開させ開いたまま保持させるのに十分ではないことがある。
具体的には、圧縮プランジャの速度が増加するとともに圧縮室内の燃料圧が増加することがあり燃料が部分的に開いた電磁吸入弁から漏れ出す。例えば部分的に開いた電磁吸入弁のコアとアンカーとの間の間隙が原因で磁力が低減され、磁力が電磁吸入弁を開いたまま保持されるのに十分ではないことがある。
この場合、大量生産品に起こり得るばらつきを考慮した上で高圧燃料供給ポンプの運転の信頼性高い制御を可能にするため、大量生産によるばらつきが原因でより低い第2の制御電流値が電磁吸入弁を全開するのに十分ではない場合に、制御電流を第2からさらに第3の制御電流値へ増加させて磁力を増加させることによって、圧縮行程が始まる時点の前に電磁吸入弁の全開を確実にするように、制御電流が第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加されることが好ましい。
したがって、第2の制御電流値を設定する基本となる標準的な大量生産品からなる電磁吸入弁を大幅に低減された運転ノイズで運転することができるとともに、大量生産によるばらつきがある場合であっても、大量生産品からなる電磁吸入弁を信頼性高く全開位置へ開くことができる。
[5]好ましくは、高圧燃料供給ポンプはさらに、圧縮室と、電磁吸入弁が全閉であり、圧縮プランジャがTDCに向かって移動するとき、圧縮室内の燃料を加圧するため、圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャとを備える。
好ましくは、圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸入弁が全開になることを確保するため、制御電流を第2の制御電流値から第3の制御電流値への増加が、圧縮プランジャがBDCに達する前に行われる。したがって、圧縮プランジャがBDCからTDCに向かって移動する圧縮行程の開始前に、電磁吸入弁が全開位置にあることを確保することができる。
[6]本発明の一実施形態によれば、第3の制御電流値は、電磁吸入弁を全開のまま保持されるための目標制御電流値であり、特に第3の制御電流値は、圧縮プランジャがBDCに達した後に電磁吸入弁を全開のまま保持されるための目標制御電流値である。したがって、第3の制御電流値は、高圧燃料供給ポンプの吐出弁を通して内燃機関のコモンレールへ加圧燃料が吐出される出力行程を開始するために閉じられるときまで、電磁吸入弁を全開位置で保持されるために維持される目標制御電流値である。
ポンプ設計によっては、制御電流を第3の制御電流値へ増加させるステップは、圧縮行程中(すなわち圧縮プランジャがBDCに達しTDCに向かって再び移動開始した後)に燃料圧が増加するのに対抗して電磁吸入弁を開いたまま保持されることを保証する。
あるいは、電磁吸入弁の制御電流の制御は、エネルギー消費を低減するために電磁吸入弁を全開したまま保持されるため、電磁吸入弁が全開した後に第3の制御電流値から目標制御電流値へ低減することを含み、電磁吸入弁の制御電流の制御は、圧縮プランジャがBDCに達した後に電磁吸入弁を全開のまま保持されるため、圧縮プランジャがBDCに達した後の第3の制御電流値を、電磁吸入弁が全開した後の目標制御電流値へ低減させることを含む。
エネルギー消費を低減するため、目標制御電流値は第3の制御電流値よりも低く、好ましくは、圧縮行程中(すなわち、圧縮プランジャがBDCに達し、TDCに向かって再び移動開始した後)に電磁吸入弁が開いたままの状態を確保するのに十分である。
したがって、上述したように圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸入弁が全開位置に達することを確保するために増加させた制御電流値である第3の制御電流値は、次に、加圧燃料が吐出弁を介して圧縮室から吐出される出力行程を開始するために電磁吸入弁を閉じるべきときまで全開のまま保持されるように維持される、より低い目標制御電流値へ再び低減される。
これによって、漏出行程(spill phase)の間維持される目標制御電流値は第3の制御電流値よりも低いので、高圧燃料供給ポンプのエネルギー消費を低減することが可能にな
る。目標制御電流値は第2の制御電流値に等しくてもよい。また、圧縮プランジャがBDCに達した後に、制御電流は再び第3の制御電流値から目標制御電流値へ低減されるので、ソレノイドの熱的過負荷を効率的に回避することができる。
ここで、漏出行程とは、圧縮行程において圧縮プランジャが既にTDCに向かって移動している場合に、電磁吸入弁が全開位置で保持されており燃料が電磁吸入弁を通して圧縮室から電磁吸入弁を通って漏れ出しており、それによって燃料が加圧されず加圧燃料が電磁吸入弁の吐出弁を通して放出されないようにされる運転行程を指す。
[7]電磁吸入弁の制御電流の制御は、電磁吸入弁に供給されるPWM電圧信号のデューティサイクルを制御し、電磁吸入弁に供給されるPWM電圧信号のデューティサイクルおよび周波数を制御することによって、または、電磁吸入弁に供給されるPWM電圧信号の値を制御すること、例えば増幅器手段を用いて電磁吸入弁に供給されるPWM電圧信号の値を直接制御することによって行われてもよい。
上述したように、本発明の基本的な考え方は、電磁吸入弁のソレノイドに供給される制御電流を制御することに関し、電磁吸入弁がPWM制御によって制御されるときにPWM電圧信号のデューティサイクルを制御することによって、または、PWM制御のPWM電圧信号の周波数およびデューティサイクルを制御することによって、制御電流を制御する様々なやり方で実現することができる。
PWM制御を用いて電圧信号を制御できることに加えて、制御電流は、例えば増幅器および/または集積回路を用いて、制御電圧および/または制御電流を直接調節することによって直接制御することもできる。電圧閾値制御によって制御電流を直接制御することが可能であり、制御電流は例えば集積回路によって直接制御される。
増幅器または集積回路による制御電流の直接的な調節は、電流を精密に制御できるが、PWM電圧信号のオンオフ切替えが原因で、PWM制御が制御電流の漸進的変化におけるリップルにつながることがある。しかし、PWM電圧信号によって制御される制御電流のリップルの影響は、PWM電圧信号の周波数を増加させることにより効率的に低減することもできる。PWM制御の別の利点は簡単に実現できることであり、PWM制御信号を供給するために共通の電子エンジン制御装置が既に製造されており、例えばソフトウェアおよび/またはハードウェアの修正によって、本発明による制御を行うように簡単に構成させることができる。
[8]好ましくは、電磁吸入弁の制御電流の制御はさらに、制御電流を第1の制御電流値へ好ましくは迅速に増加させるため初期電圧パルスを印加すること、ならびに、制御電流を第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減するため、初期電圧パルスを印加した後に第1のPWM電圧信号を印加することを含む。
初期電圧パルスは、初期電圧パルスを具体化する短く印加される定電圧信号によって、または初期電圧パルスを具体化する初期PWM電圧信号として具体化することができ、初期PWM電圧信号のデューティサイクルは、好ましくは第1のPWM電圧信号のデューティサイクルよりも大きい。特に、初期PWM電圧信号のデューティサイクルは、100%または少なくともほぼ100%であってもよい。
この実施形態によれば、PWM制御は電磁吸入弁に供給された制御電流を制御するために使用される。最初は、制御電流を第1の制御電流値まで増加させるため、制御電流を増加させるための初期電圧パルスを印加することができる。PWM制御を使用するとき、初期電圧パルスは、100%または少なくともほぼ100%のデューティサイクルを有するPWM電圧信号パルスによって実現されてもよい。この初期電圧パルスを印加した後、好ましくは100%未満の(特に初期電圧パルスのデューティサイクルよりも小さい)デューティサイクルを有する第1のPWM電圧信号が印加され、特に、電磁吸入弁のソレノイドに印加される制御電流を第1の制御電流値からより低い第2の制御電流値へ低減することができるように構成される。
[9]好ましくは、電磁吸入弁の制御電流の制御はさらに、制御電流を第2の制御電流値から第2の制御電流値よりも高い第3の制御電流値へ増加させるため、第1のPWM電圧信号を印加した後に第2のPWM電圧信号を印加することを含み、特に、第1のPWM電圧信号は第2のPWM電圧信号よりも小さいデューティサイクルを有する。第2のPWM電圧信号は、100%以下またはほぼ100%以下のデューティサイクルを有してもよい。
この実施形態によれば、例えば、大量生産によるばらつきなどがある場合であっても、圧縮プランジャがBDCに達する前に電磁吸入弁が全開位置に達するのを確保するため、第2の制御電流値から第3の制御電流値へ再び増加するように制御電流を制御するために、第1のPWM電圧信号よりも大きいデューティサイクルを有するさらなる第2のPWM電圧信号を、電圧電流を再び増加させるために印加することができる。
第2のPWM電圧信号は、制御電流が目標制御電流値に達するように、または、圧縮室内の燃料を加圧し高圧燃料供給ポンプの吐出弁を介して加圧燃料を吐出するために電磁吸入弁を閉じるべきときまで、圧縮プランジャがTDCに向かう上向きの行程で上向きに移動する漏出行程の間、電磁吸入弁を全開位置で保持されるための最終目標制御電流よりも大きい電流に達するように設定することができる。
[10]第1のPWM電圧信号は第2のPWM制御電圧信号に切り替えられてもよい。本発明の別の実施形態によれば、第1のPWM電圧信号は、段階的PWM制御によって第2のPWM電圧信号に変更されてもよい。次に、第1のPWM電圧信号の後、かつ第2のPWM電圧信号の前に、少なくとも第3のPWM電圧信号が印加されてもよい。その結果、第3のPWM電圧信号のデューティサイクルは、第1のPWM制御電圧信号のデューティサイクルよりも大きく、かつ第2のPWM制御電圧信号のデューティサイクルよりも小さくてもよい。
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1のPWM電圧信号のデューティサイクルは、漸増的PWM制御によって、第2のPWM制御電圧信号へ連続的または反復的に増加されてもよい。
制御電流が第2の制御電流値から第3の制御電流値まで迅速に増加される場合、標準的な大量生産品の高圧燃料供給ポンプは、第2の制御電流値を印加する行程の間または少なくともその直後に既に全開位置に達しているが、大量生産によるばらつきが原因で電磁吸入弁が全開位置に達しておらず、制御電流が第2から第3の制御電流値へ増加されることによって全開するという状況が起こることがある。第2から第3の制御電流値へのこの増加が迅速に行われると、電磁吸入弁が高速で弁座または機械的係止部に当たり、それによって稀に望ましくない衝撃ノイズが発生する。
しかし、段階的または漸増的PWM制御によって、第2から第3の制御電流値への制御電流の増加がより低速で滑らかに行われる上述の実施形態によれば、この様な状況であっても、電磁吸入弁は低速で全開位置に達するので、第2の制御電流値に対応する制御電流によって電磁吸入弁が全開しない稀な場合であっても、衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
段階的PWM制御を利用する一実施形態によれば、第1のPWM電圧信号を印加した後、制御電流を第3の制御電流値へよりゆっくりと増加させるためにPWM制御電圧のデューティサイクルを反復的に増加させるため、以前の各PWM制御信号のデューティサイクルに比べてデューティサイクルがそれぞれ増加した複数のPWM制御信号を印加することができる。
代替実施形態によれば、制御電流を第3の制御電流値へ増加させるため、印加されるPWM電圧信号のデューティサイクルが連続的または反復的に増加する漸増的PWM制御を利用することによって、PWM制御を行うことができる。これは、例えば、オン状態にあるPWM制御の持続時間が連続的もしくは反復的に増加し、かつ/またはオフ状態にあるPWM制御の持続時間が連続的もしくは持続的に減少するという点で達成することができる。
さらに、第2の制御電流値から第3の制御電流値への制御電流のほぼ連続的な増加はまた、PWM制御信号の周波数を連続的もしくは反復的に変更するか、または、PWM電圧信号のデューティサイクルの連続的もしくは反復的な変更とPWM電圧信号の周波数の連続的もしくは反復的な変更との組み合わせによっても達成されてもよい。
例えば、増幅器および/または集積回路を用いた上述の閾値電流制御による直流制御の場合、制御電流は、例えば、圧縮プランジャがBDCに達するタイミングまたはほぼそのタイミング(好ましくはその前もしくは直前)で、第3の制御電流値に達するように、より小さい傾斜で増加させることができる。
[11]好ましくは、電磁吸入弁の制御電流の制御はさらに、初期電圧パルスの印加を開始するタイミングを設定すること、初期電圧パルスを印加する持続時間を設定すること、ならびに第1のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または第1のPWM電圧信号を印加する持続時間を設定することの少なくとも1つを含んでもよい。初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、電磁吸入弁の開方向に作用する流体力と、電磁吸入弁の閉方向で作用する付勢力とに応じて、電磁吸入弁の磁力を制御するために行われてもよい。
制御電流を制御するためにPWM制御を利用するとき、制御は簡単に行うことができ、制御を最適化するため、複数の制御パラメータを設定し、かつ/または電磁吸入弁が全閉位置に達するときの衝撃ノイズを制限するように最適化することができる。制御パラメータは、好ましくは、磁力(すなわち、電磁吸入弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力)と、常時閉電磁吸入弁では一般的であるような弁を閉じる方向で電磁吸入弁を付勢する付勢力(すなわち、圧縮プランジャがBDCに向かう下向きの行程にあるときの電磁吸入弁の上流および下流の圧力差によって発生する流体力であって、それによって圧縮室の容積を増加させるとともにその中の圧力を減少させ、電磁吸入弁の開方向で作用する電磁吸入弁に対する流体力が発生する)とが平衡し、電磁吸入弁が全開位置に達するときの衝撃ノイズを低減するために最適化されるように設定される。
例えば、流体力の振幅は、一般に、圧縮室内の圧縮プランジャの移動速度に依存し、圧縮プランジャは最初に、下死点に近付くときに再び減速するまで、TDCから移動する間に加速し、すなわち、圧縮プランジャの移動速度は、圧縮プランジャを駆動する回転カムのプロファイルに依存する周期関数例えば正弦波にほぼ対応し、最大速度はTDCとBDCとの間のほぼ中間に達してもよい(正弦波の場合、最大速度はTDCとBDCとの間の中間に生じる)。
他方で、電磁吸入弁のソレノイドへの通電によって発生する磁力は、一般に、印加される制御電流、ならびに例えば電磁吸入弁のアンカーおよびコアなど、磁力によって引き付けられる部品間の距離に依存する。他方で、付勢力は電磁吸入弁の位置に依存し、一般に、全閉位置から全開位置へ線形的に増加してもよい。
電磁吸入弁の移動は、上述の力の合計、すなわち付勢力、流体力、および磁力の合計によって得られる。流体力ならびに磁力は電磁吸入弁の開方向で作用してもよく、例えばバネ力などの付勢力は電磁吸入弁の閉方向で作用してもよい。
好ましくは、圧縮プランジャがTDCからBDCへ移動するとき、磁力の時間的変化は流体力の時間的変化と平衡され、その際、本発明による方法は、好ましくは、例えば制御電流の増加を開始するタイミングを設定すること、第1の制御電流値に達するタイミングを設定すること、および/または第1の制御電流値の値を設定することなど、制御パラメータを設定することを含む。
例えば、PWM制御を利用するとき、電磁吸入弁を全開位置に向かって変位させながら、好ましくは流体力および磁力を線形的に増加する付勢力と付加的に平衡させることを含む、流体力および磁力の時間的変化を平衡させるため、初期電圧パルスの印加を開始する時点、初期電圧パルスの印加の持続時間、ならびに第1のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/またはその持続時間の少なくとも1つを設定することができる。
上述のタイミングおよび/または持続時間を設定することによって、高圧燃料供給ポンプの運転ノイズを低減するように、全開位置に達するときの平均衝撃速度を最小限に抑える(すなわち、全開位置における電磁吸入弁の軟着陸を確保する)ための最適化が可能になる。さらに、例えば、カムのプロファイル、ならびに高圧燃料供給ポンプに供給される低圧燃料のフィード圧など、ポンプ設計のパラメータは、流体力およびその挙動に影響する可能性があるので、それらのパラメータが最適化のために考慮されてもよい。
好ましくは、上述のタイミングおよび持続時間の設定は、流体力、磁力、および付勢力の合計である合力が、電磁吸入弁を全開位置で保持されるのに適した閾値力の値(例えば、大量生産品の一般的な標準的電磁吸入弁が全開位置に達した後に、その弁を開いたまま保持されるのに十分な力)よりも高い、弁を開く方向で作用する合力であるようにして行われる。
下向きの行程中における圧縮室の移動速度が最大である時点で、すなわちTDCとBDCとの間のほぼ中間で流体力が最大値を有し、その後、流体力が全体的に再び減少することを考慮するのが必要なことがある。その結果、例えば大量生産によるばらつきが原因で、BDCに向かう圧縮プランジャの移動速度の減少によって電磁吸入弁の開方向に作用する流体力が再び減少する時点で、電磁吸入弁が全開位置に達していない場合、電磁吸入弁を全開位置まで依然として移動させるためにより大きな磁力が必要となる。
一実施形態によれば、この様な状況であっても、初期電圧パルスを印加するタイミングがより初期の値に、例えば流体力が最大値に達する前のタイミングに設定されている場合、大幅に低減された衝撃速度と低減された衝撃ノイズとを達成することができる。
したがって、圧縮プランジャの下向きの行程中における初期の時点では、電磁吸入弁の開方向に作用する流体力が、圧縮プランジャがTDCとBDCとの間のほぼ中間にある行程の最中のこのタイミングにおいて大きいので、電磁吸入弁を全開位置まで移動させるのにより小さな磁力で十分なことがある。
[12]好ましくは、電磁吸入弁の制御電流の制御はさらに、第2のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または第2のPWM電圧信号を印加する持続時間を設定することを含んでもよい。初期電圧パルス、第1のPWM電圧信号、および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、流体力および付勢力に応じて磁力を制御するために行われてもよい。
制御電流を第2の制御電流値から第3の制御電流値へ再び増加させるために第2のPWM電圧信号を印加するタイミングおよび/または持続時間を設定することによって、高圧燃料供給ポンプおよび/または電磁吸入弁の大量生産によるばらつきがある場合であっても、電磁吸入弁が全開位置に常に達することを確保することができる。
[13]好ましくは、初期電圧パルスを印加するタイミングは、電磁吸入弁の開方向に作用する最大流体力が生じる前に設定されてもよい。換言すれば、初期電圧パルスを印加するタイミングは、BDCに向かう方向で高圧燃料供給ポンプの圧縮室内で往復運動する圧縮プランジャの移動の最大速度が生じる前に設定されてもよい。
上述のパラメータのタイミングおよび持続時間の設定は、好ましくは、全開位置に達するタイミングが、流体力が最大値のときに、例えばBDCに向かう圧縮プランジャの移動速度がほぼ最大であるタイミングで生じるように設定される。初期電圧パルスを印加するタイミングは、流体力が最大値に達する前の、換言すれば、BDCに向かう圧縮プランジャの移動速度が最大になる前のタイミングに設定される。
さらに、初期電圧パルスを印加する持続時間(および/または後述するような第1のPWM電圧信号を印加する時点)は、流体力が最大値の時点で、または換言すればBDCに向かう圧縮プランジャの移動が行程の最中に最大値に達するタイミングで、電磁吸入弁が全開位置にほぼ近付くように設定される。その後、制御電流は第1のPWM制御信号を印加することによって低減され(制御電流はゼロもしくはほぼゼロまでも低減することができる)、それによって、ソレノイドによって発生する磁力は制御電流の減少によって低減されるので、電磁吸入弁に作用する合力は、全開位置に向かう速度が減速されるか、またはその加速が大幅に減少されるように変動される。
[14]好ましくは、初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号または第1および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、PWM制御が低電流条件にある、例えば電磁吸入弁に印加されるPWM信号のオフ状態のタイミングで電磁吸入弁がその全開状態に達するように設定される。これは、例えば単一スイッチのPWM制御で最も一般的に使用されるような、低周波のPWM制御にとって(例えば、約100〜1000Hz、好ましくは200〜600Hz、好ましくはほぼ400Hzの範囲のPWM制御周波数において)特に有利である。
制御信号がPWM制御によって制御される場合、少なくとも低周波のPWM制御が使用される場合、PWM電圧信号のオンオフの切替えによって制御電流の漸進的変化にリップルが生じることがあり、その際、好ましくは、初期電圧パルスおよび第1のPWM電圧信号または第1および第2のPWM電圧信号のタイミングと持続時間の設定は、制御電流のリップルが低電流条件である、すなわち制御電流がPWM制御による平均制御電流値よりもわずかに低い条件である電流平均値よりも低いタイミングで、換言すれば、ソレノイドに印加されるPWM信号がほぼオフ状態のとき、電磁吸入弁が全開位置に達するように設定される。
[15]好ましくは、電磁吸入弁に通電するために制御電流を第1の制御電流値へ増加させるのを開始するタイミングは、電磁吸入弁の開方向に作用する最大流体力が生じる前のタイミングに設定される。これは、例えばPWM制御、または電流閾値制御など上述した直接調節する電流制御等の別のタイプの電流制御のための、上述したような初期電圧パルスのタイミングと持続時間を設定することによって達成することができる。
これは、例えば単一スイッチのPWM制御で最も一般的に使用されるような、低周波のPWM制御にとって(例えば、約100〜1000Hz、好ましくは200〜600Hz、さらに好ましくはほぼ400Hzの範囲のPWM制御周波数において)特に有利である。
[16]一実施形態によれば、電磁吸入弁は、単位体として形成された吸入弁部材および吸入弁プランジャ、すなわち、互いに固定されるか一体的に形成された吸入弁部材および吸入弁プランジャを有する、統合型の電磁吸入弁である。代替実施形態によれば、電磁吸入弁はまた、別個の部材として形成された吸入弁部材および吸入弁プランジャを有する、分離型の電磁吸入弁であることができる。その結果、電磁吸入弁の磁力は好ましくは吸入弁プランジャに作用する。
分離型の電磁吸入弁の場合、電磁吸入弁に通電するために制御電流の第1の制御電流値への増加を開始するタイミングは、吸入弁部材の開方向に作用する流体力によって吸入弁部材が移動を開始した後のタイミングに設定され、特にそれによって、吸入弁プランジャは、吸入弁部材が吸入弁部材の開方向で移動すると、吸入弁部材と接触するようになる。
統合型の電磁吸入弁では、磁力は、好ましくは吸入弁プランジャに作用するが、電磁吸入弁の開方向で吸入弁部材にも作用してもよく、一方、統合型のソレノイド電磁吸入弁を閉じるための付勢力は、電磁吸入弁の閉方向で吸入弁プランジャおよび/または吸入弁部材に作用してもよく、流体力は主に吸入弁部材に作用してもよい。磁力、流体力、および付勢力によって得られる合力は、一体的に形成された吸入弁部材ならびに吸入弁プランジャを備える単一体に、または互いに固定された吸入弁プランジャおよび吸入弁部材を備える単一体に作用してもよい。したがって、合力は、吸入弁部材ならびに吸入弁プランジャがともに移動するように作用してもよい。
代替実施形態によれば、本発明はまた、互いに独立して変位させることができる別個の部材としての吸入弁プランジャおよび吸入弁部材を有する、分離型の電磁吸入弁を制御するのに適用することができる。この様な分離型の電磁吸入弁では、流体力は、一般に吸入弁部材に作用し、磁力は一般に電磁吸入弁を開く方向で吸入弁プランジャに作用する。少なくとも、吸入弁部材を閉方向に付勢する付勢部材が提供されても良く、別の付勢部材が吸入弁プランジャに作用してもよい。吸入弁プランジャに作用する付勢部材は、電磁吸入弁の閉方向または開方向のいずれかで作用する付勢力を発生させるように構成することが可能である。
分離型の電磁吸入弁は、本発明による常時閉電磁吸入弁として実現されるので、付勢部材が吸入弁部材に作用する場合、弁を開く方向で作用する付勢力を発生させてもよい。吸入弁プランジャに作用する付勢部材が開方向で作用する場合、吸入弁部材に作用する付勢部材は、大きな(特に、吸入弁プランジャに作用する付勢力よりも大きな)付勢力を発生させ、それによって、吸入弁部材および吸入弁プランジャが互いに接触し、流体力または磁力がない状況において付勢力全体が閉方向に作用して、吸入弁プランジャに作用する付勢力に対抗して吸入弁部材が全閉位置で保持されるように構成されてもよい。
分離型の電磁吸入弁の場合、流体力は、一般に、上述したように吸入弁部材のみに作用し、その結果、吸入弁部材が電磁吸入弁の開方向に移動する。特に、付勢力が弁を閉じる方向で吸入弁プランジャに作用する、分離型の電磁吸入弁構成の場合、制御電流の増加を開始するタイミングは、例えば初期電圧パルスのタイミングを設定することによって、流体力によって吸入弁部材が弁を開く方向での移動を既に開始した後のタイミングに設定されてもよい。それによって、増加する磁力によって弁を開く方向で移動されている吸入弁プランジャは、吸入弁部材が既に流体力によって開方向で移動しているとき、吸入弁部材と接触するようになる。
したがって、そのような分離型の電磁吸入弁において、吸入弁プランジャが吸入弁部材と接触するときに一般的に発生する第1の衝撃ノイズを、大幅に低減することができる。
吸入弁部材が吸入弁プランジャとともに全開位置に達するときに発生する第2の衝撃ノイズは、本発明の上述の態様の少なくとも一つによって、電磁吸入弁のソレノイドに印加される制御電流を制御することによって、大幅に低減することができる。
[17]本発明の第2の態様によれば、加圧燃料を内燃機関に供給する、高圧燃料供給ポンプを制御する制御装置が提案される。本発明の第2の態様による制御装置は、本発明の第1の態様による上述の実施形態の少なくとも1つによって、電磁吸入弁を開くための電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成される。
具体的には、本発明の制御装置は、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプを制御するように構成される。高圧燃料供給ポンプは、特に、電磁吸入弁を開くかまたは開いたまま保持されるために制御電圧を電磁吸入弁に印加したとき、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持され、一方、流体圧が電磁吸入弁に作用せず、制御電圧が電磁吸入弁に印加されないとき、電磁吸入弁は付勢部材によって閉じたままでいる、常時閉型の電磁吸入弁を備える。
本発明によれば、本発明の制御装置は、制御電圧を電磁吸入弁に印加することによって電磁吸入弁を開くため、電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成される。本発明の第2の態様による制御装置は、制御電流が電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加されるように、電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成される。
特に、制御電流は、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸入行程の終了時に下死点(BDC)に達する前に、電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加される。
本発明の制御装置は、制御電流が第1の制御電流値から第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値へ低減されるように、特に、高圧燃料供給ポンプの圧縮室内においてBDCとTDCとの間で往復運動する圧縮プランジャが、圧縮プランジャの吸入行程の終了時にBDCに達する前に制御電流が第1の制御電流値から第2の制御電流値へ低減されるように電磁吸入弁を開くため、電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成される。
さらに、本発明の制御装置は、さらに、本発明の第1の態様の上述した実施形態の少なくとも一つによって、電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成されてもよい。
[18]本発明の第3の態様によれば、制御装置が、本発明の第1の態様と関連して記載した実施形態の少なくとも一つによって、電磁吸入弁を開くために電磁吸入弁の制御電流を制御するように構成されるように、制御装置を、特にエンジン制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを備える、コンピュータプログラム製品が提案される。つまり、コンピュータプログラム製品は、制御装置が本発明の第2の態様と関連して上述したような制御装置を具体化するように、制御装置、特にエンジン制御装置を構成させるコンピュータプログラムコードを備える。
本発明による方法の上述した特徴および態様、並びにその好ましい特徴および態様は、上述した制御装置ならびにコンピュータプログラム製品にも当てはまり、方法の態様に記載したような利点もやはり当てはまり、それらは本明細書を簡潔にする目的で省略される。上述の好ましい特徴および態様は、任意のやり方で修正し、または組み合わせることができる。
本発明は、磁力によって開かれるかまたは開いたまま保持される常時閉型の電磁吸入弁を有し、電磁吸入弁を開くために電磁吸入弁の制御電流を制御するステップを含み、電磁吸入弁の制御電流を制御するステップが、制御電流を電磁吸入弁に通電するための第1の制御電流値へ増加させるステップを含む、加圧燃料を内燃機関に供給する高圧燃料供給ポンプの制御方法において、電磁吸入弁を開くために電磁吸入弁の制御電流を制御するステップが、さらに制御電流を第1の制御電流値から第1の制御電流値よりも低い第2の制御電流値へ低減するステップを含むことにより、
開位置への電磁吸入弁の移動速度の減速によって機械的係止部に全開位置で当たるときの電磁吸入弁の速度を低減することができるので、発生する衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
常時閉電磁吸入弁を備える内燃機関に高圧燃料を供給するための高圧燃料供給ポンプを備える燃料供給系の一例を示す模式図。
全閉位置にある常時閉電磁吸入弁の一例を示す模式図。
全開位置にある図2Aの常時閉電磁吸入弁を示す模式図。
従来例の、常時閉電磁吸入弁の一例を示す説明図。
従来例の、常時閉電磁吸入弁を備える高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
ソレノイドに適用されるPWM制御のための2つのスイッチを有する系を示す回路図。
図5Aのソレノイドに供給されるPWM制御信号、およびそれから得られる制御電流を示すタイムチャート。
ソレノイドに適用されるPWM制御のための1つのスイッチを有する系を示す回路図。
図6Aのソレノイドに供給されるPWM制御信号と制御電流を示すタイムチャート。
本発明の第1の実施形態による方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第1の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第2の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第2の実施形態による制御電流および弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第3の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第4の実施形態による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の第4の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
従来の制御方法と本発明の一実施形態を比較するタイムチャート。
分離型の電磁吸入弁の一例を示す模式図。
従来例の、分離型の電磁吸入弁に関する、常時閉電磁吸入弁の一例を示す概略図。
本発明の第5の実施形態による制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を示す概略図。
本発明の第6の実施形態による方法による、電圧制御信号VCの漸進的変化および制御電流ICの漸進的変化を示すタイムチャート。
PWM電圧制御信号の代替例の漸進的変化を示すタイムチャート。
本発明の好ましい実施形態を図面を参照して以下に記載する。実施形態の特徴および態様は、本発明のさらなる実施形態を形成するために修正されるか、または組み合わされてもよい。好ましい実施形態の記載において、制御電流およびこの様な制御電流を発生させるPWM電圧信号が例示的に示される。しかし、電流制御のためのあらゆる方法を使用することによって、PWM制御または直流制御を使用できる。
実際の電流プロファイルは、電磁吸入弁が機械的係止部と衝突したときの電流リップル(特にPWM制御に伴う)または電流の低下などの特性を呈することがあるが、この様な特性は図面では省略されており、平均電流のみが示される。
〔第1の実施形態〕
図1は、常時閉電磁吸入弁を備えた高圧燃料供給ポンプを備える燃料供給系の一例を示す。高圧燃料供給ポンプ100は、加圧燃料を内燃機関の燃焼室内へ直接噴射するため、高圧燃料を内燃機関に供給するように構成される。
燃料供給系は、吸入管300を介して高圧燃料供給ポンプ100に燃料タンクから低圧燃料を供給するため、燃料タンク600および低圧燃料ポンプ200を備える。高圧燃料供給ポンプ100内の燃料を加圧した後、加圧燃料は、吐出管400を介してコモンレール800に供給され、次に4つの噴射器810a、810b、810c、および810dを用いて内燃機関の圧縮室内へ直接噴射される。
本発明は4つの噴射器を有する燃料供給系に限定されず、一般に、少なくとも一つの噴射器をそれぞれ有する少なくとも一つのコモンレールを備えた燃料供給系に適用することができる。
高圧燃料供給ポンプは、常時閉型の電磁吸入弁110と、圧縮室120と、圧縮室120内においてTDCとBDCとの間で往復運動する圧縮プランジャ130とを備える。
高圧燃料供給ポンプはさらに、吐出弁座140aと、吐出弁部材140bと、吐出弁140の閉方向で吐出弁部材140bに作用する付勢力を発生させる吐出弁バネ140cとを備える吐出弁140を備え、吐出弁140が全閉状態のとき、吐出弁部材140bは吐出弁座140aと接触している。
圧縮プランジャ130の往復運動はカム500の回転によって駆動される。圧縮プランジャがTDCからBDCに向かって移動すると、圧縮室120の容積が増加し、圧縮プランジャ130はBDCに達した後、TDCに向かって再び移動し始め、それによって圧縮室120の容積が再び減少し、圧縮プランジャ130がTDCに達した時に最小となる。
低圧燃料は、常時閉電磁吸入弁110を介して低圧燃料管300から圧縮室120に入れられ、吐出弁140によって高圧燃料管400を介して高圧で吐出される。吐出される加圧燃料の量およびタイミングは、エンジン制御装置700によって制御される電磁吸入弁110のソレノイドに印加される制御電流を制御することによって制御される。
図2Aおよび2Bは、常時閉型の電磁吸入弁110の一例の異なる状態を示す。
図2Aでは、電磁吸入弁110は、全閉状態すなわち制御電圧または制御電流がソレノイド112に印加されず電磁吸入弁110が遮断状態にあるので電磁吸入弁に作用する磁力がなく、弁の上流と下流との間で圧力差がないので流体力が弁に作用しないときの状態で示される。その結果、電磁吸入弁110は、例えばバネ113などの付勢部材によって発生する、電磁吸入弁の閉方向に作用する付勢力によって閉じたまま保持される。
図2Bでは、電磁吸入弁110は、例えば弁を全開位置で保持されるため、制御電圧または制御電流がソレノイド112に印加されたときの開状態で示される。
図2Aおよび図2Bの電磁吸入弁110は、吸入弁プランジャ111aおよび吸入弁部材111eを備える。図2Aおよび2Bでは、吸入弁プランジャ111aおよび吸入弁部材111eは単一体として例示的に形成されているが、別体として形成することもできる(例えば、図15を参照)。
アンカー111bは、吸入弁プランジャ111aの他端に、吸入弁プランジャ111aの吸入弁部材111eとは反対側の端部に設けられる。電流がソレノイド112に印加されると、ソレノイド弁のアンカー111bとコア114とは磁力によって互いに引き付けられるので、アンカー111bおよびコア114が接触して変位が制限されるまで吸入弁プランジャ111aが弁を開く方向に変位する。アンカー111bおよびコア114が接触し、それによって吸入弁プランジャ111aの変位が制限される電磁吸入弁の位置は、電磁吸入弁がそれ以上開くことができないので、全開位置と呼ばれる。
電流がソレノイド112に印加されている限り、アンカー111bおよびコア114は接触状態に互いに引き付けられ、それによって弁を開いたまま保持されることができ、吸入弁部材111eは吸入弁座111dから離れて保持される。したがって、矢印によって示されるように、低圧燃料を吸入通路117を介して低圧系から取り出し、吸入ポート118を介して高圧燃料供給ポンプの圧縮室120へ給送することができる。
電流をソレノイド112に印加することによって弁が開いたまま保持されている限り、圧縮室120内の圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を減少させる上向きの行程にあるとき、非加圧燃料が、吸入通路117を介して吸入ポート118から低圧燃料系へ逆向きに漏出する場合もある。
電流がソレノイド112に印加されていないとき、バネ113は、図2Aに示されるように弁を閉じるために吸入弁部材111eが吸入弁座111dと接触するまで、吸入弁プランジャ111aを付勢する。したがって、圧縮室120内における圧縮プランジャ130の上向きの行程では、燃料は吸入ポート118を通って漏出することはできず、燃料が圧縮室120内で加圧され吐出弁140を通して高圧で吐出される。
他方で、電流がソレノイド112に印加されておらず、かつ圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を増加させるように吸入行程(下向きの行程)にあるとき、圧縮室120内の燃料圧は、低圧燃料系に接続された吸入通路117内の燃料の圧力と比べて減少するので、ソレノイド112に電流が印加されなくても、バネ113の付勢力に対抗して弁を開く方向で吸入弁部材111eの変位を生じさせる流体力が発生する。流体力は、アンカー111bがコア114と接触するまで、吸入弁プランジャ111aおよび/または吸入弁部材111eの十分な変位、あるいは、アンカー111bがコア114と接触するまでの十分な変位には至らない変位を生じさせることができる。
その後、電流がソレノイド112に印加されると磁力によって弁が開かれ、かつ/または開いたまま保持される。特に、電流がソレノイド112に印加される前に、吸入弁プランジャ111aは吸入弁部材111eとともに変位される、図2Aおよび2Bに示されるような構造では、電磁吸入弁110の運転中にノイズレベルおよび振動を効率的に低減させることができる。ここで、吸入弁プランジャ111aおよび吸入弁部材111eは一体として形成される。
吸入弁プランジャ111aおよび吸入弁部材111eは、互いに固定された別個の本体として形成することもできる。または吸入弁部材111eが流体力によって弁を開く方向に変位されたとき、吸入弁プランジャ111aおよび吸入弁部材111eが付勢メカニズムによって弁を閉じる方向に付勢され、吸入弁プランジャ111aが弁を開く方向に変位されるように吸入弁部材111eの方向にさらに付勢される、別体として形成することもできる。
〔従来の高圧燃料供給ポンプの制御方法〕
図3は、常時閉電磁吸入弁110を備える高圧燃料供給ポンプ100の従来の制御を示す。図3の最上列には、圧縮プランジャ130の移動の時間的変化(プランジャリフト)が示される。圧縮プランジャ130は、正弦波(または他の周期関数)に類似した動作を行い、TDCとBDCとの間で往復運動する。したがって、図3の上から2列目に示されるように、圧縮プランジャ130の速度は、圧縮プランジャ130がTDCまたはBDCにある時点では、圧縮プランジャ130がゼロの速度を有する。
圧縮プランジャ130の動作の速度の最大値は圧縮プランジャ130の行程の中間で得られ、圧縮プランジャ130はこの実施形態では正弦波によって移動するので、TDCとBDCとの間、またはBDCとTDCとの間の中間で速度の最大値に達する。TDCとBDCとの間での圧縮プランジャ130の移動は下向き行程または吸入行程と呼ばれ、BDCとTDCとの間での圧縮プランジャ130の移動は上向き行程、出力行程、または吐出行程と呼ばれる。
図3の下から2列目に示されるように、吐出行程の開始時に電磁吸入弁110を開き、開いたまま保持されるため、下向きの行程で圧縮プランジャ130がBDCに達する前に(図3では「ON」と呼ばれる)電圧制御信号VCが印加され、それによって、圧縮室120の容積が減少されることにより(圧縮室120内の燃料をほぼ加圧することなく)、燃料は電磁吸入弁110を介して圧縮室120から漏出する。
図3の最下列には、電磁吸入弁110(特に吸入弁部材111e)の弁移動の時間的変化が示される。圧縮プランジャ130がTDCに達し、BDCに向かって再び移動し始めた直後、圧縮室120の容積は低減され、それによって電磁吸入弁110の吸入弁部材111eの上流と下流との圧力差が生じる。圧力差によって発生した流体力がバネ113の付勢力を上回るとすぐに、吸入弁部材111eを電磁吸入弁110の開方向に変位させることによって、流体力が電磁吸入弁110を開くように作用する。
流体力の振幅は圧縮プランジャ130の移動速度に依存し、圧縮プランジャ130の移動速度の最大値に達するまで増加するが、その後流体力は再び減少するので、電磁吸入弁110のソレノイド112に供給される制御電圧信号をオンにして通電するまで、流体力が減少するとともにバネ113の付勢力によって吸入弁部材111eが弁を閉じる方向に再び変位する。
電圧制御信号VCをオンにすると、ソレノイド112の制御電流は電磁吸入弁110に作用する磁力を発生させる。発生した磁力によって、吸入弁部材111eが吸入弁座111dと接触するようになる全開位置まで吸入弁部材111が変位され、それによって、例えばアイドル条件など内燃機関の低回転速度条件において、常時閉電磁吸入弁110を有する高圧燃料供給ポンプの運転における主要なノイズである衝撃ノイズが発生する。
電磁吸入弁110は、アンカー111bおよびコア114を引き付ける磁力によって全開位置で保持され、ソレノイド112に供給される制御電圧VCがオフに切り替えられるまで、燃焼室120内の燃料が全開状態の電磁吸入弁110を介して圧縮室120から漏出する。その後、バネ113によって発生する電磁吸入弁110の閉方向の付勢力と、流体力とによって電磁吸入弁が閉じる。
電磁吸入弁110が全閉位置に達する時点で、加圧燃料を吐出弁140を介して圧縮室120から内燃機関へ吐出するための出力行程が始まる。具体的には、圧縮プランジャ130が依然としてTDCに向かって移動しており、圧縮室120の容積がさらに低減されるが、圧縮室120内の燃料の圧力は、吐出弁140の閉方向に作用する吐出弁バネ140cの付勢力を克服するまで増加し、それによって吐出弁140が開くので、吐出弁140および吐出管400を介して加圧燃料をコモンレール800へ給送することができる。
吐出弁140を介して加圧燃料を吐出する出力行程は、圧縮プランジャ130がTDCに達するとすぐに終わる。圧縮プランジャ130がBDCの方向に再び移動し始めるとすぐに、次の吸入行程が始まる。
図4は、圧縮プランジャ130が図3に示されるように下死点BDCに達する前に、常時閉電磁吸入弁を開くための従来のPWM制御を示す。図4の上の列は、電磁吸入弁のソレノイドに印加される制御電圧信号VCが、最小および最大制御電圧値の間でオンオフが切り替わることを示す(最小値はゼロであってもよく最大値よりも低い非ゼロ値であってもよい)。
図4の下の列は、図4の上の列における制御電圧信号VCに対応する制御電流ICの漸進的変化を示す。最初に、初期電圧パルスIVPはタイミングt1でオンに切り替わり、時間t2まで電磁吸入弁110のソレノイド112に印加される。ここで、t1およびt2は、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点の前の時間である。時間t2までに、PWM制御信号VCFが100%未満のデューティサイクルで印加されて、ほぼ一定の電流制御目標値ITで電磁吸入弁110のソレノイド112に制御電流ICが供給され続け、それが次に、上述の漏出行程の間、電磁吸入弁110を全開位置で保持されるためのほぼ一定の磁力を発生させるのに使用される。
ここで、時間t1およびt2の間に印加される初期電圧パルス信号IVP(例えば、100%またはほぼ100%のデューティサイクルのPWM信号)によって、ソレノイドに高速で通電され、一方、ソレノイドの熱的過負荷および場合によっては電気エネルギーの浪費に結び付く可能性があり得る振幅まで、制御電流が増加されるのを回避するため、PWM電圧信号VCFが100%未満のデューティサイクルで印加される。
〔PWM制御方法〕
図5Aは、電磁吸入弁110のソレノイド112をPWM制御するための一般的な系を示す。PWM制御系は、エンジン制御装置700の処理装置であるCPU710から出される信号1、2によって制御される2つのスイッチS1およびS2を備える。スイッチS1およびS2は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)、すなわち、CPU710によって制御される電界効果トランジスタのゲート電極に電圧信号を印加することによって切り替えることができる電子スイッチによって具体化されてもよい。図5Bは信号1、2およびソレノイド電流を示す。
一般的には、2つのスイッチを有するこの様なPWM制御系は、通常、パルス幅変調PWMの高い周波数(一般的に、1〜10kHzの範囲、好ましくは2〜6kHzの範囲、最も一般的には約4kHz)で制御され、1つのスイッチ(図5AではS2)は、必要なパルス幅変調によってソレノイド112に印加されるPWM信号のオンオフ切替えに使用される。系は、電池(電池電圧VBAT)および接地電位(GND)に接続され、または、電池の2つの極に接続されてもよい。スイッチS1はPWM制御を行うために使用され、スイッチS2は、ソレノイドを高速で遮断するのに、すなわち電圧を迅速に一定して下降させるのに使用される。
図6Aは、電磁吸入弁110のソレノイド112をPWM制御するための代替の一般的な系を示す。PWM制御系は、エンジン制御装置700の処理装置710(例えば、CPU)からの信号1によって制御される1つのスイッチS1を備える。スイッチS1は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)、すなわちCPU710によって制御される電界効果トランジスタのゲート電極に電圧信号を印加することによって切り替えることができる電子スイッチによって具体化されてもよい。図6Bは信号1およびソレノイド電流を示す。
一般的には、1つのスイッチを有するこの様なPWM制御系は、通常、パルス幅変調PWMの低い周波数(一般的に、100〜1000Hzの範囲、好ましくは200〜600Hzの範囲、最も一般的には約400Hz)で制御される。系は、電池(電池電圧VBAT)および接地電位(GND)に接続され、または、電池の2つの極に接続されてもよい。
図7は、本発明の第1の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸入弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図7の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
時間t1の最初のポイントで、圧縮プランジャ130がBDCに達する前、かつ時間t2までは(t2−t1=ΔT1)、制御電流ICを、電磁吸入弁110に通電して弁を開くための制御電流値IC1へ増加させるため、初期電圧信号IVPが電磁吸入弁110のソレノイド112に供給される(例えば、100%デューティサイクルを有するPWM電圧信号)。
時間t2からは、電磁吸入弁110のソレノイド112に、100%未満のデューティサイクルを有する、特に制御電流が制御電流値IC1からより低い制御電流値IC2へ低減されるように、かつ弁を全開位置まで開くため、制御電流ICがこの制御電流値IC2でほぼ保持されるように設定されたデューティサイクルを有するPWM電圧信号VCFが印加される。
圧縮プランジャ130がBDCからTDCに向かって移動し始める圧縮行程の開始時に、電磁吸入弁を全開のまま保持されるため、制御電流値IC2が維持され、すなわち、本発明の第1の実施形態における制御電流値IC2は、燃料が全開の電磁吸入弁110を通して高圧燃料供給ポンプ100の圧縮チャンバ120から漏れ出すことができるように、圧縮行程の開始時に圧縮プランジャ130がBDCに達した後に、電磁吸入弁110を全開位置で保持されるための目標制御電流値ITを表す。
図8は、第1の実施形態による電流制御と、図4に述べた従来例の電流制御との比較を示す。上述したように、従来の電流制御によれば(図8の破線を参照)、制御電流ICは最初に目標制御値ITまで増加され、その後、目標制御電流ITでほぼ一定して保持される。それとは対照的に、本発明によれば、制御電流ICは電流制御値IC1まで増加され、その後目標制御電流値ITである制御電流値IC2まで再び減少される。
特に、図8では、制御電流ICの制御電流IC1から制御電流値IC2への低減は、電磁吸入弁が全閉位置から全開位置に向かって移動し始めた後に行われる。しかし、図8の下の列に見られるように、制御電流ICを低減することにより、全開位置に向かう電磁吸入弁の移動速度は従来の電流制御による弁移動に比べて減速される。これによって、吸入弁部材111eが時間N2において吸入弁座111dと接触するとき、全開位置におけるより軟らかい着陸を達成することができる。時間N2の後、電磁吸入弁は、ソレノイド112の制御電流IC2によって誘導される磁力によって全閉位置で保持される。
従来の電流制御によれば、吸入弁部材111eは、初期の時間N1ではより高速で弁座111dに当たり、それによって大幅に大きい衝撃ノイズが生成される。第1の実施形態による制御によれば、吸入弁部材111eが全開位置に達するとき(弁座111dと接触するとき)に発生する衝撃ノイズを有効に低減することができる。
〔第2の実施形態〕
図9は、本発明の第2の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による電磁吸入弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図9の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
第1の実施形態と同様に、時間t2までの時間t1では、ソレノイド112の制御電流ICを制御電流値IC1まで増加させるための初期電圧パルスIVPが供給される。第1の実施形態と同様に、時間t2から開始して制御電流ICを制御電流値IC2へ減少させるためのPWM電圧制御信号VC1が印加される。これは、全開位置に向かう吸入弁部材111eの移動が時間t2の後に減速され、または少なくともその加速が低減されるという効果を有する。
全開位置へ向かう吸入弁部材111eの移動の最適な減速を達成するため、制御電流IC2が、大量生産品による標準的な電磁吸入弁110を開き、かつ開いたままで保持されるのに十分な(すなわち、標準的な大量生産の電磁吸入弁が圧縮行程中、弁を開いたまま保持されることに適した)ほぼ最小値であるように、電圧制御信号VC1のデューティサイクルを設定することができる。
その際、大量生産によるばらつきが原因で、電磁吸入弁の開方向に作用する磁力が小さくなり過ぎることがあり、開方向に作用する流体力がすぐに小さくなり過ぎ、かつ/または閉方向に作用する付勢力が大きくなり過ぎるため、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点の前に、電圧制御信号VC1および制御電流値IC2が吸入弁部材111eを全開位置まで移動させるのに十分ではないという状況が生じることがある。
その結果、圧縮プランジャ130がBDCに達する時点でアンカー111bとコア114との間に起こり得る間隙が原因で、磁力が圧縮プランジャ130がTDCに向かって再び上向きに移動し始めるとき、電磁吸入弁110を開いたまま保持されるのに十分ではないことがある。燃料が吸入ポート118を通って吸入弁部材111eに向かって流れ、それによって吸入ポート118および吸入通路117を通って圧縮室120から漏出するとすぐに、閉方向で吸入弁部材111eに作用する流体力が発生しうる。
第2の実施形態では、時間t3では、PWM電圧制御信号VC1に比べてより高いデューティサイクルのさらなるPWM電圧制御信号VCFが、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に制御電流ICをより高い制御電流値IC3まで再び増加させるために印加される。これによって、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、電磁吸入弁110の全開が確保される。
大量生産品の標準的な電磁吸入弁110の場合、制御電流IC2は、時間t2およびt3の間の行程で既に、全開位置で弁座111d上に吸入弁部材111eを滑らかに着陸させるのに十分であって、それによってアンカー111bとコア114との間に間隙がないように設定されてもよい。その結果、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、開方向に作用する流体力が再び低減するときであっても、ソレノイド112の制御電流IC2によって生じる磁力は電磁吸入弁を全開のまま保持されるのに十分である。この様な標準的構成では、制御電流ICを制御電流値IC2から制御電流値IC3へ増加させることによって、電磁吸入弁110が全開位置でさらに保持され、それによって衝撃ノイズは発生しない。
大量生産によるばらつきが原因で、時間t2およびt3の間の行程中に電磁吸入弁110が全開しなかった場合、制御電流を制御電流値IC2から制御電流値IC3へ増加させることによって、吸入弁部材111eを全開位置まで変位するように、アンカー111bおよびコア114を引き付ける磁力が増加する。これは、時間t2とt3との間で既に全開した、大量生産によるばらつきがない標準的な電磁吸入弁110に比べて、より大きな衝撃ノイズに結び付くことがある。
しかし、第2の実施形態では、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、電磁吸入弁110が全開位置に達することを確保することが可能なので、大量生産によるばらつきがある場合であっても開いたまま保持されることができる。
図10は、本発明の第2の実施形態による制御電流および弁移動の漸進的変化を概略的に示す。図10は、制御電流ICが最初に制御電流値IC1へ増加され、次に、電磁吸入弁の移動の開始後に制御電流値IC2へ減少され、さらに、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、圧縮プランジャ130が下死点BDCに達した後に電磁吸入弁を全開位置で保持されるための最終目標制御電流値ITである電流制御値IC3へ再び増加される電流制御を示す。
図10の下の列では、制御電流値IC2を印加する行程の間(図9の時間t2およびt3の間)は全閉されず、圧縮プランジャ130がBDCに達する直前に減少される流体力により、全閉位置に向かって再び移動する電磁吸入弁に関する弁移動が示される。しかし、圧縮プランジャ130がBDCに達する直前に、制御電流ICが電流制御値IC2から制御電流値IC3へ増加するため、依然として全開位置まで変位させることができる。ここで、時間N3では、電磁吸入弁が全開位置に達するときに衝撃ノイズが発生する。しかし、大量生産によるばらつきがある場合であっても、圧縮プランジャ130がBDCに達した後、電磁吸入弁を全開位置で保持されることを確保できる。
図10に示されるように、第2の実施形態による制御を使用する場合であっても、標準的な大量生産品の電磁吸入弁110は図8に示されるのと同じ挙動を示し、すなわち、制御電流ICが制御電流値IC1から制御電流値IC2へ減少することに起因して、衝撃ノイズを大幅に低減して時間N2の全開位置での軟着陸を達成することが可能である。図10の破線はやはり、図4に記載したような従来例の電流制御に対応する。
上述したように、第2の実施形態による電流制御によれば、大量生産によるばらつきがある場合、電磁吸入弁110が低減された電流制御値IC2によって全開せず、その後、制御電流ICを再びより高い目標制御電流値ITへ増加させることによって全開させるため、場合によってはより大きな衝撃ノイズが生成されるものの、制御の信頼性は高まる。
〔第3の実施形態〕
図11は、本発明の第3の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸入弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図11の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
第3の実施形態によれば、圧縮プランジャ130がBDCに達した後に電磁吸入弁を全開のまま保持されるための、制御電流ICの電流制御値IC2から最終目標制御電流値ITへの増加は、第2の実施形態に上述した大量生産によるばらつきがある場合であっても、全開位置での軟着陸を確保するため、徐々にしか増加されない。
第3の実施形態によれば、図11の上の列に示されるように、複数のPWM電圧制御VC1、VC2、VC3、およびVCFは、時間t2、t3、t4、t5で初期電圧パルスIVPの後に印加される。ここで、PWM電圧制御信号VC1から最終電圧制御信号VCFへの複数のPWM電圧制御信号のデューティサイクルは、圧縮プランジャ130がBDCに達した後で電磁吸入弁110を全開のまま保持されるために、制御電流ICを制御電流値IC2から制御電流値IC3へ、制御電流値IC4へ、また最終目標制御電流値ITへ連続的に増加させるため、段階的PWM制御によって徐々に増加される。
〔第4の実施形態〕
図12は、本発明の第4の実施形態による高圧燃料供給ポンプの制御方法による、電磁吸入弁110の制御電流ICの制御を示す。上の列は、図12の下の列の様に制御電流ICを制御するためのPWM制御電圧信号VCを示す。
図12によれば、制御電流ICは制御電流値IC2から最終目標制御電流値ITへ増加される。しかし、図11に上述した第3の実施形態とは異なり、初期電圧パルスIVPと最終PWM電圧制御信号VCFとの間で、PWM電圧制御信号VC1のデューティサイクルは、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、制御電流値IC2を最終目標制御電流値ITへ連続的に(あるいはオン状態の持続時間の増加および/またはオフ状態の持続時間の減少を反復させる)増加させるように、時間t2と時間t3(t3−t2=ΔT2)との間で連続的に増加される。
本発明の第4の実施形態による電磁吸入弁110のソレノイド112の制御電流ICの制御の影響が図13に示される。図13は、制御電流値IC2が最終目標制御電流値ITまで連続的に増加されることを上の列に示す。破線はやはり、図4のような従来の制御を指す。図13の下の列では、大量生産品の標準的な電磁吸入弁110が図8に上述したのと同様の挙動を示すことが示される。
しかし、第2の制御電流値IC2が電磁吸入弁110を全開するのに十分ではないことがある、大量生産によるばらつきがある場合、制御電流を連続的に増加させることで、圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、時間N4において電磁吸入弁が依然として全開位置に達して、第2の実施形態に比べて衝撃速度がより低くなることが確保される。
制御電流値の制御電流値IC2から目標制御電流値ITへの連続的な増加によって、吸入弁座111dにある吸入弁部材111eの時間N4における滑らかな着陸が可能になり、それによって、大量生産によるばらつきがある場合でも確実に衝撃ノイズを大幅に低減することが可能になる。制御電流の制御電流値IC2から目標制御電流値ITへの増加が第2の実施形態による場合よりも低速で行われるので、段階的PWM電圧制御を使用することは同様の利点を有する。
図14は、図3に示されるような従来の制御方法と、本発明の第4の実施形態による制御方法との比較を示す。図14で「A」と表示された破線の曲線は、全開位置において衝撃ノイズが大幅に低減されて滑らかに着陸するように制御される、標準的な大量生産品の弁移動を示す。図12および13に示されるように制御電流値IC2が減少することによって、全開位置に達する前の電磁吸入弁の移動速度を減速することができる。「B」と表示された破線の曲線は、低減された制御電流値IC2によってまだ全開されていないが、その直後に制御電流が目標制御電流値ITへ増加されることによって全開される電磁吸入弁の弁移動を示す。
〔プランジャ分離型の電磁吸入弁〕
図15は、分離型の電磁吸入弁210の例を概略的に示す。図2Aおよび2Bに示される電磁吸入弁110とは異なり、電磁吸入弁210の吸入弁部材211eおよび吸入弁プランジャ211aは、独立して移動することができる別個の本体として形成される。吸入弁プランジャ211aは、付勢部材、例えばバネ213aによって閉方向に付勢され、吸入弁部材211eは、別の付勢部材、例えばバネ213bによって閉方向に付勢される。
アンカー211bは、吸入弁プランジャ211aの一端に、すなわち、吸入弁プランジャ211aが吸入弁部材211eと接触することができる側とは反対側の吸入弁プランジャ211aの端部に設けられる。電流がソレノイド212に印加されると、ソレノイド弁のアンカー211bおよびコア214は磁力によって互いに引き付けられるので、アンカー211bおよびコア214が接触するようになって、変位が制限されるまで吸入弁プランジャ2111aは弁を開く方向で変位される。この位置では、吸入弁プランジャ211aは、バネ213aおよび213bの付勢力に対抗して、吸入弁部材211eを全開位置で保持されることができる。
電流がソレノイド212に印加されている限り、アンカー211bおよびコア214は接触したままであるように互いに引き付けられたままであり、それによって弁を開いたまま保持されることができ、吸入弁部材211eは吸入弁座211dから離れて保持される。したがって、矢印によって示されるように、低圧燃料を吸入通路217を介して低圧系から取り出し、矢印によってさらに示されるように、吸入ポート218を介して高圧燃料供給ポンプの圧縮室120へ給送することができる。
電流をソレノイド212に印加することによって弁が開いたまま保持されている限り、圧縮室120内の圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を減少させる上向きの行程にあるとき、非加圧燃料が、吸入通路217を介して吸入ポート218から低圧燃料系へ逆向きに漏出する場合もある。
しかし、電流がソレノイド212に印加されていないとき、バネ213aおよび213bは、弁を閉じるために吸入弁部材211eが吸入弁座211dと接触するまで、吸入弁プランジャ211aおよび吸入弁部材213bを弁を閉じる方向に付勢する。吸入弁プランジャ211aは、バネ213aの付勢力によって閉方向にさらに変位されてもよい。
圧縮室120内における圧縮プランジャ130の上向きの行程では、燃料は吸入ポート218を通って漏出することはできず、吐出弁140を通して高圧で吐出されるように燃料が圧縮室120内で加圧される。他方で、電流がソレノイド212に印加されておらず、かつ圧縮プランジャ130が圧縮室120の容積を増加させるように吸入行程(下向きの行程)にあるとき、圧縮室120内の燃料圧は、低圧燃料系に接続された吸入通路217内の燃料の圧力と比べて減少するので、ソレノイド212に電流が印加されなくても、バネ213bの付勢力に対抗して弁を開く方向で吸入弁部材211eの変位を生じさせることができる流体力が発生する。流体力は、吸入弁部材211eの十分な変位を、あるいは、全開位置への吸入弁部材211eの十分ではない変位を生じさせることができる。
電流がソレノイド212に印加され通電されると、磁力によって吸入弁プランジャ211aが弁の開方向に変位される。その結果、一般に、この様な分離型の電磁吸入弁の従来の制御によれば、2つの衝撃ノイズが生じる。第1の衝撃ノイズは吸入弁プランジャ211aが吸入弁部材211eに当たるときに発生し、第2の衝撃ノイズは電磁吸入弁が全開位置に達したときに発生する。
図16は、分離型の電磁吸入弁に対する本発明の背景に関連した、常時閉電磁吸入弁の従来の制御の一例を示す。最上列は、TDCとBDCとの間での圧縮プランジャの移動を示す。上から2列目は制御電流ICの漸進的変化を示し、最下列は吸入弁部材211eおよび吸入弁プランジャ211aの対応する移動を示す。図16は、時間N5およびN6において連続的に生成される2つの衝撃ノイズの発生を示す。
時間N6における、すなわち電磁吸入弁が全開位置に達したときの衝撃ノイズは、上述したような本発明による、特に上述の実施形態のいずれかによる電流制御によって大幅に低減することができる。さらに、以下に、吸入弁プランジャ211aが吸入弁部材211eに当たるときに生成される第1の衝撃ノイズも低減することを付加的に可能にする、別の実施形態が記載される。
〔第5の実施形態〕
図17は、本発明の第5の実施形態による、制御電流ICおよび弁移動の漸進的変化を概略的に示す。最上列は、TDCとBDCとの間での圧縮プランジャの移動を示す。上から2列目は制御電流ICの漸進的変化を示し(破線は、図16に上述した従来の制御に対応する)、最下列は吸入弁部材111eおよび吸入弁プランジャ111aの対応する移動を示す。
圧縮プランジャ130がBDCに達する前に、制御電流は制御電流値IC1へ増加され、次に制御電流値IC2へ減少され、その後、第2の実施形態による制御電流と同様に、最終目標制御電流値ITへ再び増加される。あるいは、第1、第3、または第4の実施形態による制御電流を使用することができる。
さらに、例えば上述したように初期電圧パルスIVPのタイミングを設定することによる、制御電流ICの増加を開始するタイミングは、吸入弁部材111eが、流体力によって既に開方向でのその移動を開始した後のタイミングに設定される。図17に示されるように、制御電流ICの増加を開始するタイミングは、磁力の増加によって開方向に変位されている吸入弁プランジャ111aが、流体力によって開方向で既に移動しているときの吸入弁部材111eと接触するように設定される。したがって、一般に吸入弁プランジャ111aが吸入弁部材111eに当たると発生する、第1の衝撃ノイズを大幅に低減することができる。
〔第6の実施形態〕
図18は、本発明の第6の実施形態によるソレノイド112の制御電流を制御する制御方法を示す。図18において圧縮プランジャ130がBDCに達する時点より前の制御は、本発明の第2の実施形態に関して図9に記載したような制御に完全に対応する。
しかし、圧縮プランジャ130がBDCに達した後、TDCに向かって再び上へ移動するとき、第6の実施形態による制御方法、はさらに圧縮プランジャ130がBDCに達した後の時間t4において、図18の制御電流IC3を、圧縮プランジャ130がTDCに向かって移動する圧縮行程中であっても電磁吸入弁を全開位置で保持されるのには依然として十分である、より低い目標制御電流値ITへ減少させるため、それ以前に印加されたPWM電圧制御信号VC2よりも小さなデューティサイクルを有する最終PWM制御信号VCFを印加するステップを含む。
第2の実施形態の利点に加え、第6の実施形態によって、エネルギー消費を低減するとともに、電磁吸入弁を全開位置で保持されるように維持される減少された目標制御電流値ITに起因する、ソレノイド112の熱的過負荷をさらに回避することが可能になる。
図19は、PWM電圧制御信号の代替例の漸進的変化を示す。上述の実施形態では、ソレノイド(1つもしくは複数)のPWM制御は、単一スイッチまたは二重スイッチのPWM制御によって例示的に達成された。単一スイッチ制御が使用されるとき、PWM周波数は一般に非常に低く、一般的には100〜800Hz、好ましくは300〜600Hz、より好ましくは400Hzに等しいか少なくとも約400Hz(2.5msの周期と等価)である。
これは、電磁吸入弁の機械的動作に比べて比較的低速なので、一般的に、電磁吸入弁は最初の数回のPWM周期後に機械的係止部に達する。そのような場合、全開位置における電磁吸入弁の「軟着陸」(すなわち、衝撃速度がほぼゼロに減速されることによって衝撃ノイズがほとんどない)も実現することができる。これは、最初の数サイクルに対して異なるデューティサイクルを使用し、その後、圧縮行程が始まる前に電磁吸入弁が全開位置に達することを確保するため、BDCに達する前にデューティサイクルを増加させることによって達成できる。
最初のPWM周期の実際の値は、いわゆるP_ONタイミング(すなわち、ポンプのTDCの時点に対する、ソレノイド(1つもしくは複数)の初期の通電を開始する時点)とエンジン速度とを考慮に入れて、各運転条件に対して決定することができる。ノイズ発生を最小限にするため、電磁吸入弁は、好ましくは、PWM電圧制御信号がオフ状態にある時点の間に、またはパルスの開始時に機械的係止部に達する。
上述の方法は、較正プロセス中に使用して、全開位置にある電磁吸入弁が着陸する瞬間の決定を可能にすることができる。任意の条件では、圧縮サイクルの開始前により高いPWMデューティサイクルへの(BDCとTDCとの間の)切替えによって、運転条件のいかなる変更にも関わらず、または大量生産によるばらつきにも関わらず、電磁吸入弁が全開位置に達することが確保される。
較正手順は、(最初の数サイクルに対して)いくつかの別個のPWMデューティサイクルを決定することを伴ってもよい。図10では、例示的に、4つのデューティサイクル「Duty1」、「Duty2」、「Duty3」、および「Duty4」が示される(「初期PWM」と表示される)。一般的に、電磁吸入弁は、値が低すぎない限り、最初の2サイクル、3サイクル、または4サイクル以内で全開位置に達することができ、値が低い場合は、十分に高いデューティサイクルを、好ましくは約95%のデューティサイクルを有する最終PWMデューティサイクルによって全開位置へ移動させられる。
したがって、1つの可能な構成は段階的PWM制御を使用することであり、初期PWM全体の持続時間に関しては、「Duty1」=「Duty2」=「Duty3」=「Duty4」である(例えば、75%デューティサイクル)。また、最終PWMのデューティサイクルは約95%(または85%〜100%デューティサイクル、好ましくは90%〜100%デューティサイクルの、別の十分に高い値)である。
別の可能な構成は、初期PWM持続時間におけるPWM電圧信号デューティサイクルを一定して上昇させるか、または大きな最初のデューティサイクル(初期電圧パルスなど)と、それに続いて第2の周期(Duty2)により低いデューティサイクルとを使用するものなどである。圧縮行程の開始前に電磁吸入弁が確実に全開していることを保証するため、BDCに達する前に大きなデューティサイクルを使用すべきである。このアルゴリズムは、次のように一般化することができる。
Duty1
Duty2=Duty1+a
Duty3=Duty2+b
Duty4=Duty3+c
ここで、a、b、c、…は較正プロセス中に決定することができる(一般的に±約5%)。次に、BDCに達する前に、一定した大きなデューティサイクルが使用される。
Duty最終=DutyF(例えば、95%デューティサイクル)
上述の実施形態の構造の特徴、構成要素、および特定の詳細を入れ替えるか、または組み合わせて、個々の用途に向けて最適化されたさらなる実施形態を形成することができる。それらの修正が当業者には明白である限り、あらゆる可能な組み合わせを明示的に指定することなく、上述の記載によって暗示的に開示されているものとする。
100:高圧燃料供給ポンプ
110:電磁吸入弁
111a:吸入弁プランジャ
111e:吸入弁部材
120:圧縮室
130:圧縮プランジャ
700:制御装置
IC:制御電流
IC1:第1の制御電流値
IC2:第2の制御電流値
IC3:第3の制御電流値
IT:目標制御電流値
TDC:上死点
BDC:下死点
VC:電磁吸入弁の電圧信号
IVP:初期電圧パルス
VC1:第1のPWM電圧信号
VC2;VC3;VCF:第2のPWM電圧信号
ΔT1:初期電圧パルス(IVP)を印加する持続時間
ΔT2:第1のPWM電圧信号(VC1)を印加する持続時間
t1:初期電圧パルス(IVP)を印加し始めるタイミング
t2:第1のPWM電圧信号(VC1)を印加する持続時間(ΔT2)のタイミング
t3;t4;t5:第2のPWM電圧信号を印加するタイミング
ΔT3;ΔT4:第2のPWM電圧信号を印加する持続時間