JP2012031456A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】風車用軸受や建設機械用軸受のように、組織変化型剥離が生じ易い条件で使用する転がり軸受の転動疲労寿命を長くする。
【解決手段】内輪1を、〔C〕:0.95〜1.1質量%、〔Si〕:0.20〜0.70質量%、〔Mn〕:0.30〜1.2質量%、〔Cr〕:0.90〜1.6質量%、〔Mo〕:0.30質量%以下、〔Ni〕と〔Cu〕:0.20質量%以下、〔S〕:0.02質量%以下、〔P〕:0.02質量%以下、〔O〕:12ppm以下の合金鋼で、直径10μm以上の酸化物系介在物:10個/320mm2 の素材を用い、浸炭または浸炭窒化と焼入れ焼戻しを行って、軌道面の1%D位置で、〔C+N〕:1.10〜1.50質量%、Hv:700〜800、残留オーステナイト量:20〜40体積%、圧縮残留応力:50〜200MPa、表面粗さ:粗さ曲線の最大山高さ(Rp)で1.0μm以下とする。
【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受に関する。
風力発電用風車(以下、単に「風車」と称する。)の回転軸(翼が取り付けられたロータの主軸、ロータと発電機との間に配置された変速機の入力軸および出力軸)を支持する転がり軸受としては、例えば、外径が180mm以上(特に280mm以上)である大型のころ軸受が使用されている。
転がり軸受の軌道輪と転動体は、両者の接触部に高い面圧が発生し、内部に高い剪断応力が発生するため、これに耐え得る硬さとなっている必要がある。特に、大型の軸受では、剪断応力が内部の深くまで作用するため、深い位置まで硬くなっていることが要求される。また、ころ軸受は、軌道輪と転動体の接触面積が大きいため、剪断応力が作用する領域が大きい。玉軸受の場合でも、玉(転動体)の直径が30mm以上である大形の転がり軸受では、剪断応力が作用する領域が大きい。
風車用軸受は、軌道輪と転動体の間に滑りが発生しやすい条件下で使用される。軌道輪と転動体の間に大きな滑りが発生すると、転動体と軌道輪との間に膜状に存在する潤滑油(油膜)が切れ易くなり、切れた部分で金属接触が生じる。金属接触が生じると一時的に金属の新生面が形成され、化学的に活性な状態となるため、潤滑油が分解して水素が発生し易くなり、発生した水素が軌道輪および転動体をなす鋼に侵入し易くなる。
また、風車用軸受は回転速度が変わりやすい。そして、回転速度が変わりやすい用途では、軌道輪と転動体の間に油膜を安定して形成するために、鉱油ではなく、ポリアルキレングリコール系などの合成油が用いられることがある。合成油のなかには、鉱油より水素を発生しやすいものがある。
潤滑油から発生した水素は、軌道輪および転動体をなす鋼に侵入して、転がり軸受の組織変化型剥離を加速させる要因となると考えられている。組織変化型剥離とは、鋼の金属組織がマルテンサイトから超微細なフェライトに変化し、フェライトになった部分が起点となって疲労亀裂が生じ、剥離に至る現象である。
建設機械の車軸や変速機の入出力軸を支持する転がり軸受においても、例えば、外径が180mm以上である大型の玉軸受およびころ軸受が使用されている。
建設機械は、前進と後進を繰り返しながら使用されるため、転がり軸受の回転方向もその度毎に変化する。回転方向が頻繁に変化すると、転動体と軌道輪との間の油膜が切れ易くなり、切れた部分で金属接触が生じるため、前述のように、潤滑油が分解して水素が発生し易くなり、発生した水素が軌道輪および転動体をなす鋼に侵入し易くなる。
このように、風車用軸受や建設機械用軸受には組織変化型剥離が生じ易い。
従来より、転がり軸受の組織変化型剥離を抑制するための提案がなされている(特許文献1〜3等を参照)。特許文献1および2は、エンジン補機用の転がり軸受に関するものであり、使用する鋼のクロム含有率が2.5〜17%、3〜9%と高いことで、コストが高くなるとともに、熱処理特性と加工性の低下に伴って生産性が低くなる。
特許文献3には、風車の回転軸を支持する用途に好適なころ軸受として、内輪、外輪、およびころの何れかを、下記の構成(a) を満たす合金鋼、または構成(a) と構成(b) の両方を満たす合金鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭または浸炭窒化を行わず、焼入れ焼戻しを行って得られたものが記載されている。
(a) 炭素含有率〔C〕が0.90質量%以上1.2質量%以下、珪素含有率〔Si〕が0.20質量%以上0.70質量%以下、マンガン含有率〔Mn〕が0.30質量%以上1.2質量%以下、クロム含有率〔Cr〕が0.90質量%以上1.6質量%以下、モリブデン含有率〔Mo〕が0.30質量%以下、残部が鉄(Fe)および不可避不純物であり、下記の(1)式で表されるDI値が5.0以上9.0以下を満たす。
DI=(0.18〔C〕+0.16)(0.7〔Si〕+1.0)(3.4〔Mn〕+1.0)(2.2〔Cr〕+1.0)(3.0〔Mo〕+1.0)‥‥(1)
(b) 転走部(内輪および外輪の軌道面部、ころの転動面部)の最大厚さをt(mm)とした時に下記の(2)式を満たす。DI/t≧0.20‥‥(2)
特許文献3に記載された発明では、軌道輪および転動体の内部に不完全焼入れ組織があると、潤滑油の分解で生じた水素をトラップして金属組織の変化が生じやすく、これを起点とした剥離が生じて、転動疲労寿命の低下の原因となるため、軌道輪および転動体に不完全焼入れ組織が生じないようにしている。
特開2005−163893号公報 特許第4273609号公報 特開2010−31307号公報
しかしながら、特許文献3に記載された転がり軸受には、組織変化型剥離が生じ易い条件で使用した場合の転動疲労寿命を長くするという点でさらなる改善の余地がある。
この発明の課題は、風車用軸受や建設機械用軸受のように、組織変化型剥離が生じ易い条件で使用する転がり軸受の転動疲労寿命を、より一層長くすることである。
上記課題を解決するために、この発明の転がり軸受は、内輪、外輪、および転動体の少なくとも何れかが、下記の構成(1) および(2) を有することを特徴とする。また、下記の構成(1) 〜(3) を有することが好ましい。
(1) 炭素含有率〔C〕が0.95質量%以上1.10質量%以下、珪素含有率〔Si〕が0.20質量%以上0.70質量%以下、マンガン含有率〔Mn〕が0.30質量%以上1.2質量%以下、クロム含有率〔Cr〕が0.90質量%以上1.6質量%以下、モリブデン含有率〔Mo〕が0.25質量%以下、ニッケル含有率〔Ni〕が0.20質量%以下、銅含有率〔Cu〕が0.20質量%以下、硫黄含有率〔S〕が0.02質量%以下、リン含有率〔P〕が0.02質量%以下、酸素含有率〔O〕が12質量ppm以下、残部が鉄(Fe)および不可避不純物である合金鋼からなり、任意の切断面で面積320mm2 当たりに存在する直径10μm以上の酸化物系介在物が10個以下である素材を所定形状に加工した後、浸炭または浸炭窒化と焼入れ焼戻しを行って得られる。
(2) 転がり面の表面(内外輪の軌道面、転動体の転動面)から転動体の直径の0.01倍に相当する深さの位置で、炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕が1.10質量%以上1.50質量%以下、ビッカース硬さ(Hv)が700以上800以下であり、残留オーステナイト量が20体積%以上40体積%以下であり、圧縮残留応力が50MPa以上200MPa以下である。
(3) 転がり面(内外輪の軌道面、転動体の転動面)の表面粗さが、粗さ曲線の最大山高さ(Rp)で1.0μm以下である。
[構成(1) で使用する合金鋼の組成について]
〔C〕を0.95質量%以上1.10質量%以下とする理由は以下の通りである。
炭素(C)は、焼入れによって基地(マトリックス)に固溶し、組織をマルテンサイト化することで鋼を強化する元素である。また、他の合金元素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成させ、耐摩耗性を向上させる作用も有する。さらに、オーステナイトを安定化する元素であるため、残留オーステナイト量を多くする作用も有する。
残留オーステナイトの存在により鋼に侵入した水素が拡散し難くなるため、残留オーステナイト量が多いほど、水素が局所に集積し難くなって、鋼の組織変化が生じることを抑制できる。
これらの作用を得るために、炭素含有率を0.95質量%以上とする。
ただし、炭素含有率が1.10質量%を超えると、鋼中に粗大な炭化物が生成しやすくなり、靱性および加工性が不十分となる。
〔Si〕を0.20質量%以上0.70質量%以下とする理由は以下の通りである。
珪素(Si)は、精鋼時に脱酸剤として作用する。また、基地に固溶して焼入れ性を向上させる作用を有する。さらに、マルテンサイトを安定化する元素であるため、水素によるマルテンサイトからフェライトへの組織変化を抑制する作用を有する。珪素含有率が0.20質量%未満であると、その作用が実質的に得られない。好ましくは0.50質量%以上とする。
ただし、珪素含有率が0.70質量%を超えると、靱性、冷間加工性および被削性が不十分となる。
〔Mn〕を0.30質量%以上1.2質量%以下とする理由は以下の通りである。
マンガン(Mn)は、基地に固溶して焼入れ性を向上させる作用を有する。また、マルテンサイトを安定化する元素であるため、水素によるマルテンサイトからフェライトへの組織変化を抑制する作用を有する。さらに、オーステナイトを安定化する元素でもあるため、鋼の組織変化の原因となる水素の局所集積を抑制する残留オーステナイト量を多くする作用も有する。マンガン含有率が0.30質量%未満であると、その作用が実質的に得られない。好ましくは0.90質量%以上とする。
ただし、マンガン含有率が1.2質量%を超えると、残留オーステナイト量が多くなり過ぎて寸法安定性が低下する。
〔Cr〕を0.90質量%以上1.6質量%以下とする理由は以下の通りである。
クロム(Cr)は、基地に固溶して焼入れ性を向上させる作用を有する。また、炭素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる作用を有する。また、マルテンサイトを安定化する元素であるため、水素によるマルテンサイトからフェライトへの組織変化を抑制する作用を有する。クロム含有率が0.90質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られない。
ただし、クロムは高価な元素であるため含有率は少ない方が好ましい。また、クロム含有率が1.6質量%を超えると、化学的に安定した炭化物を形成するために焼入れ温度を高くする必要があるため、生産性が低下する。
〔Mo〕を0.25質量%以下とする理由は以下の通りである。
モリブデン(Mo)は、基地に固溶して焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用を有する。また、炭素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる作用を有する。また、マルテンサイトを安定化する元素であるため、水素によるマルテンサイトからフェライトへの組織変化を抑制する作用を有する。さらに、オーステナイトを安定化する元素でもあるため、鋼の組織変化の原因となる水素の局所集積を抑制する残留オーステナイト量を多くする作用も有する。
モリブデンは高価な元素であり、必須成分ではないが、その含有率が0.01質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られないため、モリブデンを含有させる場合にはその含有率を0.01質量%以上とする。
ただし、モリブデン含有率が0.25質量%を超えると、冷間加工性および被削性が不十分となって、生産性が低下する。
〔Ni〕を0.20質量%以下とする理由は以下の通りである。
ニッケル(Ni)は、基地に固溶して焼入れ性および靱性を向上させる作用を有する。また、オーステナイトを安定化する元素であるため、鋼の組織変化の原因となる水素の局所集積を抑制する残留オーステナイト量を多くする作用を有する。
ニッケルは高価な元素であるため、含有率を0.20質量%以下とする。また、ニッケルは必須成分ではないが、その含有率が0.01質量%未満であると、これらの作用が実質的に得られないため、ニッケルを含有させる場合にはその含有率を0.01質量%以上とする。
〔Cu〕を0.20質量%以下とする理由は以下の通りである。
銅(Cu)は、基地に固溶して焼入れ性および粒界強度を向上させる作用を有する。銅は必須成分ではないが、その含有率が0.02質量%未満であるとこれらの作用が実質的に得られないため、銅を含有させる場合にはその含有率を0.02質量%以上とする。
ただし、銅の含有率が0.20質量%を超えると、熱間鍛造性が不十分となって、生産性が低下する。
〔S〕を0.02質量%以下とする理由は以下の通りである。
硫黄(S)は、マンガン(Mn)と結合してMnSを形成し、介在物となるため、その含有率を0.02質量%以下にする。
〔P〕を0.02質量%以下とする理由は以下の通りである。
リン(P)は、結晶粒界に偏析して、粒界強度や破壊靱性を低下させるため、その含有率を0.02質量%以下にする。
〔O〕を12質量ppm以下とする理由は以下の通りである。
酸素(O)は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等と結合してAl2 3 、MgO、CaO等の酸化物を形成する。これらの酸化物は介在物となり、剥離の起点となるため、その含有率を12質量ppm以下にする。
[構成(1) で使用する素材に存在する酸化物系介在物について]
鋼に大きな非金属介在物が存在すると、介在物の周りに応力が集中して、介在物を起点とした疲労亀裂が生じ、剥離の原因となる。また、鋼に侵入した水素は応力集中部に集積し易いため、大きな非金属介在物の周りには鋼の組織変化も生じ易い。
非金属介在物のうち、Al2 3 、MgO、CaO等の酸化物系介在物であって、大きさが直径10μm以上であるものは、亀裂の起点となり易い。酸化物系介在物の大きさが10μm未満の場合は、介在物を起点とした亀裂が生じる前に、鋼の基地組織が水素で変化し、これに伴う亀裂が生じる。よって、直径10μm未満の酸化物系介在物が存在していても実質的に有害にならない。
これらの観点から、介在物を起点とした疲労亀裂が生じることを抑制するために、任意の切断面で面積320mm2 当たりに存在する直径10μm以上の酸化物系介在物が10個以下である素材を用いている。
[構成(2) について]
前記構成(1) の素材に対して浸炭または浸炭窒化と焼入れ焼戻しを行うことで、軸受部品(内輪、外輪、転動体のいずれか)の表層部に炭素または炭素と窒素が導入される。構成(2) は、この表層部の性状を特定している。
先ず、表層部の性状を特定する位置を、転がり面の表面から転動体の直径(ころの場合は、最大直径)の0.01倍に相当する深さ(以下、「1%D」と称する。)に設定している。
1%D位置の周辺は、軌道輪と転動体との接触部の材料内部に生じる剪断応力が最大になる位置であって、水素の局所集積が生じ易いため、この位置での性状を水素による組織変化が生じないように特定する。
1%D位置での炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕を1.10質量%以上1.50質量%以下とする理由は以下の通りである。
1%D位置での炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕を1.10質量%以上とすることで、転がり面に必要な硬さを得るとともに、表層部の残留オーステナイト量を多くして組織変化の抑制作用を得る。1%D位置での炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕が1.50質量%を超えると、転がり面に必要な靱性が不足する。
1%D位置でのビッカース硬さ(Hv)を700以上800以下とする理由は以下の通りである。
1%D位置でのビッカース硬さ(Hv)を700以上とすることで、鋼に水素が侵入した場合でも局所的な塑性変形が生じ難くなるため、水素による組織変化を抑制できる。これは、水素による組織変化が鋼に局所的な塑性変形が生じることで引き起こされるという知見に基づく。1%D位置でのビッカース硬さが800を超えると、転がり面に必要な破壊靱性値が得られない。
1%D位置での残留オーステナイト量を20体積%以上40体積%以下とする理由は以下の通りである。
1%D位置での残留オーステナイト量を20体積%以上とすることで、残留オーステナイトによる鋼の組織変化を抑制する作用を得る。1%D位置での残留オーステナイト量が40体積%を超えると、寸法安定性が不良となる。
1%D位置での圧縮残留応力を50MPa以上200MPa以下とする理由は以下の通りである。
1%D位置に存在する圧縮残留応力は、水素による組織変化から生じた亀裂の進展を抑制する作用を有する。50MPa未満ではこの作用が実質的に得られず、200MPaを超えると、圧縮残留応力と釣り合う大きさで内部に発生する引張残留応力の作用によって、亀裂の進展が促進される場合がある。
[構成(3) について]
転がり面の表面粗さが粗いと、油膜が切れ易くなり、油膜が切れた部分で軌道輪と転動体が金属接触し、組織変化の原因となる潤滑油の分解や水素の侵入が生じ易くなる。通常、転がり軸受の転がり面の表面粗さは算術平均粗さ(Ra)で管理されているが、粗さ曲線の最大山高さ(Rp)の方が油膜の切れ易さの指標としては適している。そして、転がり面の表面粗さが粗さ曲線の最大山高さ(Rp)で1.0μmを超えると、油膜が切れて部分的な金属接触が生じ易くなるため、1.0μm以下とした。
転がり面の表面粗さの粗さ曲線の最大山高さ(Rp)を1.0μm以下とすることは、研削加工で、砥石の種類、研削速度等の加工条件を最適化することにより達成できる。また、転がり面の(転がり面が玉の表面の場合は円周方向で、それ以外の場合は軸方向で)5〜10箇所について測定を行い(粗さ曲線を得)、その中での粗さ曲線の最大山高さ(Rp)が1.0μm以下となるようにする。
[好適な用途]
転動体の直径が30mm以上の転がり軸受は、軌道輪と転動体の接触面積が大きいため油膜が安定して形成されにくくなり、局所的に金属接触が生じやすいことに起因して、潤滑油が分解して水素が発生し易くなり、発生した水素が軌道輪および転動体をなす鋼に侵入し易くなる。
また、歯車で動力を伝達する変速機の軸を支持し、軸に作用するトルクの方向が一時的に変化する用途では、転動体と軌道輪との間に大きな滑りが発生するため、潤滑膜が切れやすくなって金属接触が生じることに起因して、潤滑油が分解して水素が発生し易くなり、発生した水素が軌道輪および転動体をなす鋼に侵入し易くなる。
転がり軸受の回転方向が頻繁に変化する用途では、転動体と軌道輪との間の油膜が切れ易くなり、切れた部分で金属接触が生じるため、潤滑油が分解して水素が発生し易くなり、発生した水素が軌道輪および転動体をなす鋼に侵入し易くなる。
この発明の転がり軸受は組織変化型剥離が生じ難いものであるため、転動体の直径(ころの場合は、最大直径)が30mm以上の大形の転がり軸受として好適であり、風力発電用風車の回転軸を支持する用途、建設機械の回転軸を支持する用途で好適に使用される。より具体的には、風力発電用風車の主軸や増速機(変速機)の回転軸を支持する用途、建設機械の車軸や変速機の回転軸を支持する用途で好適に使用される。
また、風力発電用風車の変速機の入出力軸(増速機の回転軸)を支持する用途は、歯車で動力を伝達する変速機の軸を支持し、軸に作用するトルクの方向が一時的に変化する用途に含まれ、建設機械の車軸を支持する用途は、転がり軸受の回転方向が頻繁に変化する用途に含まれる。
この発明の転がり軸受によれば、風車用軸受や建設機械用軸受のように、組織変化型剥離が生じ易い条件で使用した場合の転動疲労寿命を長くすることができる。
この発明の第1実施形態に相当する玉軸受を示す断面図である。
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態の玉軸受を示す断面図である。この玉軸受は、内輪1、外輪2、ボール(転動体)3、および保持器4で構成されている。
図1の形状の玉軸受として、呼び番号「6317」の玉軸受(内径:85mm、外径:180mm、幅:41mm、ボール直径:30.2mm)を作製する。
外輪2とボール3は、SUJ2製の素材を用い、通常の方法で作製した。内輪1は以下の方法で作製した。内輪1用の素材として、表1の鋼種A〜Mからなる円柱状の素材をそれぞれ用意した。なお、鋼種HはSUJ2である。
また、各素材の径方向を10等分にした各箇所の切断面を鏡面に研磨して、研磨面を光学顕微鏡で観察することにより、複数箇所の任意の断面で、面積320mm2 当たりに存在する「直径10μm以上の酸化物系介在物」の数を調べた。そして、この数の複数箇所の断面における最大値を、「介在物の数」として表1に示した。
Figure 2012031456
先ず、円柱状の各素材を所定長さに切断した後、熱間ローリング加工、球状化焼鈍、および旋削加工を行って、内輪1の形状とした。次に、以下にア〜ウで示す種類の熱処理を行った。次いで、研削加工を行った。
<熱処理ア:浸炭→焼入れ焼戻し>
780〜880℃の各温度に調整されたRxガス+エンリッチガス雰囲気に8時間保持する浸炭処理を行った後、油冷する焼入れを行い、次いで160〜240℃の各温度で2時間保持する焼戻しを行った後、空冷する。
<熱処理イ:浸炭窒化→焼入れ焼戻し>
780〜880℃の各温度に調整されたRxガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気に8時間保持する浸炭窒化処理を行った後、油冷する焼入れを行い、次いで160〜240℃の各温度で2時間保持する焼戻しを行った後、空冷する。
<熱処理ウ:焼入れ焼戻し>
840℃のRxガス雰囲気に1時間保持した後、油冷する焼入れを行い、次いで180℃で2時間保持する焼戻しを行った後、空冷する。
得られた内輪1、外輪2、ボール3と、一般的な鋼板の打ち抜き形の保持器4を用いて、図1の玉軸受を各3体組み立てて、以下の条件で回転試験を行い、内輪1、外輪2、ボール3のいずれかに剥離等の破壊が生じるまでの時間(寿命)を調べた。また、剥離が生じている面に組織変化が有るかどうかを光学顕微鏡で観察した。
<試験条件>
ラジアル荷重:66.2kN
回転速度:2000min-1
潤滑剤:高トラクション油(分解して水素が生じ易い潤滑油)
各サンプルの3体の軸受寿命の平均値(平均寿命)を算出し、各サンプルの平均寿命から、サンプルNo. 1−11の平均寿命を「1」とした相対値を算出した。その結果も表2に併せて示す。
また、得られた内輪1について、軌道面の1%D位置での炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕を、電子線マイクロアナライザ (EPMA)で測定した。
また、得られた内輪1の軌道面を含む一部を切り出し、切断面を鏡面に研磨してビッカース硬さ測定用の試験片を作製した。この試験片を用い、マイクロビッカース硬さ測定機により、軌道面の1%D位置のビッカース硬さを10カ所で測定し、10カ所の測定値の平均値を算出した。
また、得られた内輪1の軌道面を含む一部を切り出し、軌道面を電解研磨して1%D位置の残留オーステナイト量(体積%)と圧縮残留応力をX線回折装置により測定した。この測定を1%D位置の3カ所以上で行い、平均値を算出した。
また、得られた内輪1の軌道面の表面粗さを、軸方向の8カ所で、軸方向に各4mmの長さで測定し、算術平均粗さ(Ra)と粗さ曲線の最大山高さ(Rp)を調べた。
これらの結果を表2に併せて示す。
なお、表2の「寿命(相対値):5.0以上」は、サンプルNo. 1−11の寿命の5.0倍以上の時間が経過しても剥離が生じなかったため、試験を打ち切ったことを示す。また、剥離は全て内輪に生じ、剥離が生じていた軌道面には組織変化が生じていた。
Figure 2012031456
No. 1−1〜1−10とNo. 1−15とNo. 1−20は、No. 1−11の3.0倍以上の寿命が得られた。このうち、No. 1−15とNo. 1−20は、内輪軌道面の1%D位置での残留オーステナイト量が40を超えており、寸法安定性の点で問題がある。
No. 1−1〜1−10は前記構成(1) および(2) を満たすものであるが、このうち鋼種A〜Cからなる素材を用いたNo. 1−1〜1−6は、鋼種A〜Cが〔Si〕と〔Mn〕の両方が好ましい範囲(0.50質量%≦〔Si〕≦0.70質量%、0.90質量%≦〔Mn〕≦1.20質量%)を満たすため、No. 1−11の5.0倍以上の寿命が得られた。
No. 1−1〜1−6のうち、粗さ曲線の最大山高さ(Rp)が1.0μmを超える(前記構成(3) を満たさない)No. 1−1,1−3,1−5は、軌道面に組織変化が見られたが、粗さ曲線の最大山高さ(Rp)が1.0μm以下である(前記構成(3) を満たす)No. 1−2,1−4,1−6には軌道面に組織変化が見られなかった。したがって、試験を打ち切らずに続行した場合、No. 1−1,1−3,1−5はNo. 1−2,1−4,1−6より寿命が短くなると推定される。
以上の結果から、ボール3の直径が30.2mmである図1の玉軸受であって、前記構成(1) および(2) を満たす軸受は、前記構成(1) および(2) のいずれかを満たさない軸受よりも、水素が侵入し易い条件で使用した時の寿命が長く、特に前記構成(1) 〜(3) の全てを満たす軸受は、水素が侵入し易い条件(潤滑剤の種類と転動体の直径が30mm以上であること)で使用した時の寿命をさらに長くできることが分かる。
なお、この実施形態では玉軸受について説明しているが、この発明の転がり軸受はころ軸受も含むことは言うまでもない。また、この実施形態の玉軸受やこれと同程度の寸法の玉軸受やころ軸受は、風車の増速機(変速機)の回転軸を支持する用途や、建設機械の車軸および変速機の回転軸を支持する用途で使用される。
1 内輪
2 外輪
3 ボール(転動体)
4 保持器

Claims (5)

  1. 内輪、外輪、および転動体の少なくとも何れかは、
    炭素含有率〔C〕が0.95質量%以上1.1質量%以下、珪素含有率〔Si〕が0.20質量%以上0.70質量%以下、マンガン含有率〔Mn〕が0.30質量%以上1.2質量%以下、クロム含有率〔Cr〕が0.90質量%以上1.6質量%以下、モリブデン含有率〔Mo〕が0.30質量%以下、ニッケル含有率〔Ni〕が0.20質量%以下、銅含有率〔Cu〕が0.20質量%以下、硫黄含有率〔S〕が0.02質量%以下、リン含有率〔P〕が0.02質量%以下、酸素含有率〔O〕が12ppm以下、残部が鉄(Fe)および不可避不純物である合金鋼からなり、任意の断面で面積320mm2 当たりに存在する直径10μm以上の酸化物系介在物が10個以下である素材を所定形状に加工した後、浸炭または浸炭窒化と焼入れ焼戻しを行って得られ、
    転がり面の表面から転動体の直径の0.01倍に相当する深さの位置で、炭素と窒素の合計含有率〔C+N〕が1.10質量%以上1.50質量%以下、ビッカース硬さ(Hv)が700以上800以下であり、残留オーステナイト量が20体積%以上40体積%以下であり、圧縮残留応力が50MPa以上200MPa以下であることを特徴とする転がり軸受。
  2. 転がり面の表面粗さが粗さ曲線の最大山高さ(Rp)で1.0μm以下である請求項1記載の転がり軸受。
  3. 転動体の直径が30mm以上である請求項1または2記載の転がり軸受。
  4. 風力発電用風車の回転軸を支持する用途で使用される請求項1または2記載の転がり軸受。
  5. 建設機械の回転軸を支持する用途で使用される請求項1または2記載の転がり軸受。
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