ところで、BDやDVDに対して情報の記録/再生を行える光ピックアップ装置において、従来から使用されていた据え置き型レコーダ等に搭載される、いわゆるハーフハイトと呼ばれる比較的厚めのタイプに対し、ノート型PCや薄形テレビの背面等に搭載される、いわゆるスリムタイプと呼ばれる比較的薄めの光ピックアップ装置が開発されている。スリムタイプの光ピックアップ装置では、従来のハーフハイトタイプに比べ、対物レンズの有効径及び焦点距離を縮小してコンパクト化を図る必要がある。
ここで、特許文献1に開示された3種類の実施例では、対物レンズの有効径φ3mmであり、DVD使用時のワーキングディスタンスは0.284mm〜0.330mmを確保している。φ3mmというのは、上述したハーフハイトタイプに用いられることが多い大きさの対物レンズである。しかるに、特許文献1の対物レンズを、スリムタイプの光ピックアップ装置に搭載できるよう単純に有効径を縮小すると、それに応じてDVD使用時のワーキングディスタンスも短くなり、回転する光ディスクに反りなどがあると、対物レンズとの干渉を招く恐れがある。又、有効径がφ3mm以上の対物レンズにおいても、DVD使用時のワーキングディスタンスを更に長くしたい場合もある。そのような有効径に比してワーキングディスタンスが長めの対物レンズを設計しようとした場合、DVDの使用時に必要開口数外の光束がなかなかうまくフレアにならず、良好な光学性能を得にくいという課題を見出した。更に、特許文献1に開示されているような対物レンズは、プラスチック製である場合に、温度変化が起きた時に球面収差を良好に補正できないという問題がある。
本発明は、上述の課題を解決することを目的としたものであり、BDとDVDという2つの異なる光ディスクを互換使用する場合において、特にDVDに対して十分なワーキングディスタンスを確保でき、温度変化時においても安定した性能を有しながらも、波長特性を大きく悪化させることなく、DVD使用時のフレアも良好に発生させることができ、良好な光学性能を得られる光ピックアップ装置用の対物レンズ並びに光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の対物レンズは、第1波長λ1(nm)(390≦λ1≦415)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(nm)(630≦λ2≦670)の第2光束を射出する第2光源とを有し、前記BDを用いて厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、
前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの周辺領域とを有し、
前記中央領域は、第1光路差付与構造を有し、
前記周辺領域は、第2光路差付与構造を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物レンズは、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記第1光路差付与構造は、前記第1光路差付与構造を通過した第1光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1光路差付与構造を通過した第2光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第2光路差付与構造は、前記第2光路差付与構造を通過した第1光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2光路差付与構造を通過した第2光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることを特徴とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、前記第1光路差付与構造において最も多く発生する第1光束の回折光の回折次数と、第2光束の回折光の回折次数とを同じ次数にすることにより、負の近軸パワーを与えることが可能となり、ひいては、BDとDVDの2互換を達成しつつ、更に、DVD使用時においても、ワーキングディスタンスを伸ばすことができることを見出した。これにより、特にφ3m以下の有効径を有する対物レンズにおいても、DVD使用時の十分なワーキングディスタンスを確保できるという効果がある。又、本発明では、第1光路差付与構造を、複数の光路差付与構造が重畳した構造としなくても、即ち、比較的単純な光学面形状で製造容易な対物レンズとしても、前記第1光路差付与構造において発生する同次数の回折光を用いることで、波長が長波長に変化した際の球面収差をアンダーにでき、対物レンズがプラスチック製であったとしても、環境温度が変化した時に発生する球面収差を良好に維持できることが判明した。さらに、このように温度特性を良好にしながらも、波長特性を大きく悪化させることがないという効果を有することも本発明者は見出した。
ところで、特許文献1の対物レンズにおいては、周辺領域が光路差付与構造を有さない非球面形状を有しているが、中央領域に上記第1光路差付与構造を用いた場合には、周辺領域を光路差付与構造を有さない非球面形状として、DVDにおいてフレア出しを行おうとした際に、うまくフレア出しが行えない、又は、光学性能に悪影響が発生する等の課題が発生することを見出した。従って、周辺領域にも光路差付与構造を設けて開口絞り機能を強化したいが、いかなる次数の回折光を発生する光路差付与構造とすべきかという課題がある。本発明者は、更に鋭意研究の結果、上述の第1光路差付与構造を中央領域に設けた場合には、前記第2光路差付与構造において第1光束の5次回折光と第2光束の3次回折光と発生させることで、DVDのフレア状態を良好なものとし、十分な開口絞りの効果を与えることができることを見出したのである。
更に、重畳した光路差付与構造を用いずに、第1光路差付与構造と第2光路差付与構造とを単一の構造とすることもでき、対物レンズの設計及び製造が容易になる。
請求項2に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明において、前記第1光路差付与構造は、複数の光路差付与構造を重畳した構造ではないことを特徴とする。本発明により、単純な形状の製造しやすい対物レンズを得ることが可能となる。
請求項3に記載の対物レンズは、請求項2に記載の発明において、前記第1光路差付与構造はブレーズ型構造のみからなることを特徴とする。
請求項4に記載の対物レンズは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、|N|=1であることを特徴とする。本発明により、第1光路差付与構造の段差の高さを低くできるため、製造が容易な対物レンズが得られると共に、波長変動時の回折効率の変動を低く抑えることができる。
請求項5に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明において、N=+1であることを特徴とする。前記第1光路差付与構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1光路差付与構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくしたときが、最も高い回折効率を得られるからである。本発明者の検討結果によれば、第1光路差付与構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1光路差付与構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくしたときに、第1光束の1次の回折光の回折効率は89.54%であり、第2光束の1次の回折光の回折効率は78.17%であった。これに対し、第1光路差付与構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1光路差付与構造を通過した第2光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくした第1光路差付与構造に設計変更すると、第1光束の2次の回折光の回折効率は76.17%であり、第2光束の2次の回折光の回折効率は47.21%であった。回折効率は、回折次数が高くなるに連れて低下することがわかる。
請求項6に記載の対物レンズは、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
0.9・λ1/(n−1)≦d≦2.2・λ1/(n−1) (3)
但し、
d:前記第1光路差付与構造の光軸方向の段差量d(nm)
n:前記第1波長λ1における前記対物レンズの屈折率
本発明により、第1光路差付与構造の段差の高さを低くできるため、製造が容易な対物レンズが得られると共に、波長変動時の回折効率の変動を低く抑えることができる。
請求項7に記載の対物レンズは、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記第1光路差付与構造の、少なくとも光軸に最も近い段差が光軸とは逆の方向を向いていることを特徴とする。本発明によって、近軸パワーの値を負にすることができるため、BDとDVDの2互換を達成しつつ、DVD使用時においても、ワーキングディスタンスを伸ばすことができる。
請求項8に記載の対物レンズは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記第1光路差付与構造の前記第2波長λ2における近軸パワーの値が負であることを特徴とする。
請求項9に記載の対物レンズは、請求項8に記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
−0.44≦P0・f≦―0.06 (4)
但し、
P0:前記第1光路差付与構造の前記第2波長λ2における近軸パワー
(4)式の値が上限以下であれば、第1光路差付与構造のピッチが小さくなり過ぎないので製造し易い対物レンズとなり、また軸上色収差が大きくなりすぎることを防止できる。一方、(4)式の値が下限以上であれば、第2光ディスク使用時のワーキングディスタンスを確保できるので、光ディスクと対物レンズとが干渉する恐れを軽減できる。
請求項10に記載の対物レンズは、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
0.75≦dx/f≦1.70 (5)
但し、
dx:前記対物レンズの軸上厚
(5)式の値が上限以下であれば、環境温度変化に対する球面収差劣化を抑えることができ、又、光路差付与構造のピッチが小さくなりすぎず、製造し易い対物レンズとなり、更に第2光ディスク使用時のワーキングディスタンスを確保できる。一方、(5)式の値が下限以上であれば、BDのような短波長、高NAの光ディスク使用時においても、製造誤差に起因して生じる対物レンズの光源側光学面と光ディスク側光学面の光軸偏心に対する光学特性の劣化が大きくなりすぎず、また、非点収差が大きくなることも防止でき、更には対物レンズの光学面の縁厚が薄くなり過ぎないから、射出成形などでは素材の流動を円滑に行うことができ、成形が容易になる。
請求項11に記載の対物レンズは、請求項1〜11に記載の発明において、前記中央領域を通過した前記第2光束の集光位置と、前記周辺領域を通過した前記第2光束の集光位置との光軸方向の距離Δが0.005mm以上であることを特徴とする。
図1の縦球面収差図を例に取ると、中央領域を通過した第2光束BM1の集光位置を基点とし、周辺領域を通過した第2光束BM2の最も近い集光位置までの光軸方向の距離をΔとすると、Δが0.005mm以上であれば、両者がかぶることがなく、開口制限の機能を有効に持たせることが出来る。
請求項12に記載の対物レンズは、請求項1〜11のいずれかに記載の発明において、前記第2光路差付与構造は、複数の光路差付与構造を重畳した構造ではないことを特徴とする。本発明により、単純な形状の製造しやすい対物レンズを得ることが可能となる。
請求項13に記載の対物レンズは、請求項12に記載の発明において、前記第2光路差付与構造はブレーズ型構造のみからなることを特徴とする。
請求項14に記載の対物レンズは、請求項1〜13のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
0.9・5・λ1/(n−1)≦d2≦2.5・5・λ1/(n−1) (6)
但し、
d2:前記第2光路差付与構造の光軸方向の段差量d(nm)
n:前記第1波長λ1における前記対物レンズの屈折率
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜14のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項15に記載の発明であって、スリムタイプであることを特徴とする。
請求項17に記載の光情報記録再生装置は、請求項15又は16に記載の光ピックアップ装置を有することを特徴とする。
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1光源と第2光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束をBDの情報記録面上に集光させ、第2光束をDVDの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、BD又はDVDの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さ(t1)が0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、波長630〜670nm程度の光束、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.5〜0.7mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVDの順に低い。
本明細書において、第1光源、第2光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)は、λ1は、390nm以上、415nm以下であって、λ2は、630nm以上、670nm以下である。
また、第1光源、第2光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいう。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。対物レンズは、二つ以上の複数のレンズ及び/又は光学素子から構成されていてもよいし、単玉のレンズのみからなっていてもよいが、好ましくは単玉の凸レンズからなる対物レンズである。また、対物レンズは、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂などで光路差付与構造を設けたハイブリッドレンズであってもよい。対物レンズが複数のレンズを有する場合は、ガラスレンズとプラスチックレンズを混合して用いてもよい。対物レンズが複数のレンズを有する場合、光路差付与構造を有する平板光学素子と非球面レンズ(光路差付与構造を有していてもいなくてもよい)の組み合わせであってもよい。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
また、対物レンズをガラスレンズとする場合は、ガラス転移点Tgが500℃以下、更に好ましくは400℃以下であるガラス材料を使用することが好ましい。ガラス転移点Tgが500℃以下であるガラス材料を使用することにより、比較的低温での成形が可能となるので、金型の寿命を延ばすことが出来る。このようなガラス転移点Tgが低いガラス材料としては、例えば(株)住田光学ガラス製のK−PG325や、K−PG375(共に製品名)がある。
ところで、ガラスレンズは一般的に樹脂レンズよりも比重が大きいため、対物レンズをガラスレンズとすると、重量が大きくなり対物レンズを駆動するアクチュエータに負担がかかる。そのため、対物レンズをガラスレンズとする場合には、比重が小さいガラス材料を使用するのが好ましい。具体的には、比重が4.0以下であるのが好ましく、更に好ましくは比重が3.0以下であるものである。
加えて、ガラスレンズを成形して製作する際に重要となる物性値の一つが線膨脹係数aである。仮にTgが400℃以下の材料を選んだとしても、プラスチック材料と比較して室温との温度差は依然大きい。線膨脹係数aが大きい硝材を用いてレンズ成形を行った場合、降温時に割れが発生しやすくなる。硝材の線膨脹係数aは、200(10E−7/K)以下にあることが好ましく、さらに好ましくは120以下であることである。
プラスチックとしては、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
対物レンズについて、以下に記載する。対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの周辺領域とを有する。中央領域は、対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図2に示されるように、中央領域CN、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。中央領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。中央領域には第1光路差付与構造が設けられている。周辺領域には第2光路差付与構造が設けられていることが好ましい。
対物レンズの中央領域は、BD及びDVDの記録/再生に用いられる共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とDVDの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
対物レンズの周辺領域は、BDの記録/再生に用いられ、DVDの記録/再生に用いられないBD専用領域と言える。即ち、対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの周辺領域を通過する第2光束は、DVDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。対物レンズを通過した第2光束がDVDの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部を有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、対物レンズの周辺領域を通過した第2光束は、DVDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
第1光路差付与構造は、対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光源側レンズ面に回折構造を設けた単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって回折構造からの出射角とレンズに入射するまでの光路長が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
ブレーズ型構造とは、図3(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図3の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図3(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量dという。(図3(a)参照)
また、階段型構造とは、図3(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。
例えば、図3(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図3(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。2レベルの階段型構造について、以下に説明する。光軸を中心とした同心円状の複数の輪帯を含み、対物レンズの光軸を含む複数の輪帯の断面の形状は、光軸に平行に延在する複数の段差面Pa、Pbと、隣接する段差面Pa、Pbの光源側端同士を連結する光源側テラス面Pcと、隣接する段差面Pa、Pbの光ディスク側端同士を連結する光ディスク側テラス面Pdとから形成され、光源側テラス面Pcと光ディスク側テラス面Pdとは、光軸に交差する方向に沿って交互に配置される。
また、階段型構造において、1つの階段単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図3(c)、(d)参照)また、階段の光軸に平行方向の段差の長さを段差量B1,B2という。3レベル以上の階段型構造の場合、大段差量B1と小段差量B2とが存在することになる。(図3(c)参照)
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
光路差付与構造が、ブレーズ型構造を有する場合、単位形状である鋸歯状の形状が繰り返された形状となる。図3(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図3(b)に示されるように、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状のピッチが長くなっていく形状、又は、ピッチが短くなっていく形状であってもよい。加えて、ある領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。なお、このようにブレーズ型構造の段差の向きを途中で切り替える構造にする場合、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の製造誤差による透過率低下を抑制できる。
光路差付与構造が、階段型構造を有する場合、図3(c)で示されるような5レベルの階段単位が、繰り返されるような形状等があり得る。さらに、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に階段単位のピッチが長くなっていく形状や、徐々に階段単位のピッチが短くなっていく形状であってもよい。
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、及び第2光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、及び第2光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。
第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造であると好ましい。また、第1光路差付与構造は、一種類のブレーズ型構造のみからなり、他の構造を重畳されていないことが好ましい。また、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1光路差付与構造を通過した第2光束のN次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。即ち、第1光路差付与構造を通過した第1光束において最も多く発生する回折光の次数と、第1光路差付与構造を通過した第2光束において最も多く発生する回折光の次数とが、等しい。回折効率の高さ、製造の容易さ、波長変動時の回折効率変動の小ささ等の観点から、Nの絶対値は1であると好ましい。また、Nは+1であることがより好ましい。
|N|=1である場合、第1光路差付与構造の段差量は以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.9・λ1/(n−1)≦d≦2.2・λ1/(n−1) (3)
但し、dは、第1光路差付与構造の光軸方向の段差量d(nm)であり、nは、第1波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。条件式(3)において上限に2.2を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。第1光路差付与構造の全ての段差において条件式(3)を満たすことが好ましい。
また、第1光路差付与構造のブレーズ化波長λB(理論上、当該第1光路差付与構造において回折効率が100%になる波長)は、λ1より大きく、λ2より小さい波長であることが好ましい。より好ましくは、470nm以上、550nm以下である。さらに好ましくは、480nm以上、530nm以下である。
第2光路差付与構造は、ブレーズ型構造であると好ましい。また、第2光路差付与構造は、一種類のブレーズ型構造のみからなり、他の構造を重畳されていないことが好ましい。また、第2光路差付与構造は、第2光路差付与構造を通過した第1光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2光路差付与構造を通過した第2光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。特に、第1光路差付与構造の|N|が1である場合に、このような第2光路差付与構造を採用すると、DVD使用時に適切なフレア出しができるため好ましい。
第2光路差付与構造の段差量は以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.9・5・λ1/(n−1)≦d2≦2.5・5・λ1/(n−1) (6)
但し、d2は、第2光路差付与構造の光軸方向の段差量d(nm)であり、nは、第1波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。条件式(6)において上限に2.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。第2光路差付与構造の全ての段差において条件式(6)を満たすことが好ましいが、対物レンズの非球面形状によっては、周辺領域の光軸から離れた側にある第2光路差付与構造の段差量が条件式(6)の上限を超える可能性もある。
尚、DVD使用時に良好なフレア出しを行うためには、中央領域を通過した第2光束の集光位置と、周辺領域を通過した第2光束の集光位置との光軸方向の距離Δが0.005mm以上であることが好ましい。
また、第1光路差付与構造は、第2波長λ2において負の近軸パワーを持つことが好ましい。特に好ましくは、以下の式を満たすことである。
−0.44≦P0*f≦−0.06 (4)
但し、
P0:前記第1光路差付与構造のパワー
f:対物レンズの焦点距離
尚、以下の式を満たすとより好ましい。
−0.44≦P0*f≦−0.14 (4’)
基板厚さが厚めのDVD使用時におけるワーキングディスタンスを伸ばすため、第1光路差付与構造が第2光束に対して負の近軸パワーを持つ(本明細書ではパワーを持つともいう)ことが好ましい。ここで、「近軸パワーを持つ」とは、第1光路差付与構造の光路差関数を後述する数2式で表した場合、C1h2が0でないことを意味する。回折構造における近軸パワーPは、一般的に以下の式で表せる。「負の近軸パワーを持つ」とは、この値が負の値であることを意味する。但し、C1は光路差関数係数であり、mは回折次数、λ2は光ピックアップ装置で使用されている第2光源の波長、λBは第1光路差付与構造のブレーズ化波長(その回折構造において回折効率が100%となる波長)である。
P=−2×m×(λ2/λB)×C1 (8)
第1光路差付与構造が第2光束に対して負の近軸パワーを有する場合、第1光路差付与構造の、少なくとも光軸に最も近い段差が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸とは逆の方向を向いている」とは、図63(b)のような状態を言う。なお、図63(a)は、段差が光軸の方向を向いている状態を示している。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と周辺領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する段差が、光軸とは逆の方向を向いていることである。
例えば、第1光路差付与構造が光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、周辺領域付近では第1光路差付与構造の段差が光軸の方を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第1光路差付与構造の全ての段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
第1光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、第2光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。
対物レンズの中央領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
更に、本発明の対物レンズは、以下の式を満たすと更に好ましい。
1.7≦φ1≦2.9 (1)
0.10≦WD2/f≦0.42 (2)
但し、φ1は、BD使用時の有効径(mm)を表し、WD2は、DVD使用時の対物レンズのワーキングディスタンス(mm)を表し、fは、第1光束における対物レンズの焦点距離(mm)を表す。さらに、以下の式を満たすとより好ましい。
1.7≦φ1≦2.4 (1’)
0.10≦WD2/f≦0.32 (2’)
特に、第1光束及び第2光束が共に、略平行光(対物レンズの結像倍率が、−0.01〜0.01程度)又は平行光として対物レンズに入射する場合、上記条件式(2’)を満たすことが好ましい。より好ましくは、以下の式を満たすことである。
0.18≦WD2/f≦0.24 (2’’)
条件式の上限下限の意義を説明すると、(1)式の値が上限以下であれば、いわゆるスリムタイプの光ピックアップ装置に好適な対物レンズとなり、一方、(1)式の値が下限以上であれば、第2光ディスク使用時のワーキングディスタンスが短くなりすぎることを防ぐことができる。また、(2)式の値が上限以下であれば、第1光路差付与構造のピッチが小さくなり過ぎないので製造し易い対物レンズとなり、また軸上色収差が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。一方、(2)式の値が下限以上であれば、第2光ディスク使用時のワーキングディスタンスを確保できるので、光ディスクと対物レンズとの干渉する恐れを軽減できる。
また、対物レンズは、以下の条件式(5)を満たすことが好ましい。
0.75≦dx/f≦1.70 (5)
但し、dxは、対物レンズの光軸上の厚さ(mm)を表し、fは、第1光束における対物レンズの焦点距離(mm)を表す。
(5)式の値が上限以下であれば、環境温度変化に対する球面収差劣化を抑えることができ、又、光路差付与構造のピッチが小さくなりすぎず、製造し易い対物レンズとなり、更に第2光ディスクのワーキングディスタンスを確保できる。一方、(5)式の値が下限以上であれば、製造誤差に起因して生じる対物レンズの光源側光学面と光ディスク側光学面の光軸偏心に対する光学特性の劣化が大きくなりすぎず、更には対物レンズの光学面の縁厚が薄くなり過ぎないから、射出成形などでは素材の流動を円滑に行うことが出来、成形が容易になる。尚、以下の式を満たすとより好ましい。
0.90≦dx/f≦1.41 (5’)
更に、BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(4)を満たすことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
また、条件式(5)を満たすことにより、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになるため、DVDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるにも拘わらず、本発明の第1光路差付与構造を対物レンズに設けることにより、DVDの記録/再生におけるワーキングディスタンスも十分に確保できるため、本発明の効果がより顕著なものとなる。
第1光束及び第2光束は、平行光として対物レンズに入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物レンズに入射してもよい。トラッキング時においても、コマ収差が発生することを防止するためには、第1光束及び第2光束を全て平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが好ましい。本発明の第1光路差付与構造を用いることによって、第1光束及び第2光束の全てを平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが可能となるため、本発明の効果がより顕著となる。第1光束が平行光又は略平行光になる場合、第1光束が対物レンズに入射する時の対物レンズの結像倍率m1が、下記の式(9)を満たすことが好ましい。
−0.01<m1<0.01 (9)
また、第2光束を平行光又は略平行光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(10)を満たすことが好ましい。
−0.01<m2<0.01 (10)
一方で、第2光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(10)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m2≦−0.01 (10)´
第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.2mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.25mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。光ピックアップ装置はスリムタイプであると好ましい。スリムタイプとは、高さH=8mm以下の光ピックアップ装置(図4に点線で外形を概略的に示す)をいう。
尚、テレビでは映像を観賞することが主目的であるため、多くの場合映像を記録しているBDやDVDの使用頻度は高いことが予測される一方で、多くの場合音声のみを記録しているCDの使用頻度は高くないと考えられる。そこで、テレビに内蔵される光ディスクドライブに含まれる光ピックアップ装置においては、CDを除外し、用途をBDとDVDの2互換に限定し得る。基板の厚さが最も厚いCDの互換を考慮する必要がなくなることにより、ワーキングディスタンスの問題が減少し、より小径の対物レンズを用いることが可能となるため、特に液晶テレビ、プラズマテレビ、FED(電界放出ディスプレイ)テレビ、LEDテレビ又は有機ELテレビ等のような薄型のテレビに内蔵される光ディスクドライブ用の薄型の光ピックアップ装置に好適である。
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
本発明によれば、2つの異なる光ディスクを互換使用する場合において、十分なワーキングディスタンスを確保でき、波長特性や温度特性に優れた光ピックアップ装置用の対物レンズ並びに光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図4は、異なる光ディスクであるBDとDVDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、スリムタイプであって、光情報記録再生装置に搭載できる。ここでは、第1光ディスクをBDとし、第2光ディスクをDVDとし、第3光ディスクをCDとする。なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではない。
光ピックアップ装置PU1は、対物レンズOL、λ/4波長板QWP、立ち上げミラーM、コリメートレンズCOL、偏光ビームスプリッタBS、ダイクロイックプリズムDP,BDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ1=405nmのレーザ光束(第1光束)を射出する第1半導体レーザLD1(第1光源)と、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ2=660nmのレーザ光束(第2光束)を射出する第2半導体レーザLD2(第2光源)、センサレンズSEN、光検出器としての受光素子PD等を有する。
単玉の対物レンズOLの中央領域に形成された第1光路差付与構造は、重畳構造ではなく、第1光路差付与構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1光路差付与構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。又、対物レンズOLの周辺領域に形成された第2光路差付与構造は、第2光路差付与構造を通過した第1光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2光路差付与構造を通過した第2光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。
青紫色半導体レーザLD1から射出された第1光束(λ1=405nm)の発散光束は、実線で示すように、ダイクロイックプリズムDPを通過し、偏光ビームスプリッタBSを通過した後、コリメートレンズCOLを通過して平行光となり、立ち上げミラーMで反射され、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、不図示の絞りによりその光束径が規制され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域と周辺領域により集光された光束は、厚さ0.1mmの保護基板PL1を介して、BDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOL、不図示の絞りを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、立ち上げミラーMで反射され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、2軸アクチュエータAC1により対物レンズOLをフォーカシングやトラッキングさせることで、BDに記録された情報を読み取ることができる。ここで、第1光束に波長変動が生じた場合や、複数の情報記録層を有するBDの記録/再生を行う場合、波長変動や異なる情報記録層に起因して発生する球面収差を、倍率変更手段としてのコリメートレンズCOLを光軸方向に変化させて、対物光学素子OLに入射する光束の発散角又は収束角を変更することで補正できるようになっている。
半導体レーザLD2から射出された第2光束(λ2=660nm)の発散光束は、点線で示すように、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCOLを通過し、立ち上げミラーMで反射され、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域により集光された(周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、厚さ0.6mmの保護基板PL2を介して、DVDの情報記録面RL2に形成されるスポットとなり、スポット中心部を形成する。
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOLを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、立ち上げミラーMで反射され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いてDVDに記録された情報を読み取ることができる。
(実施例)
以下、上述した実施の形態に用いることができる実施例について説明する。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10-3)を、E(例えば、2.5×E−3)を用いて表す場合がある。また、対物レンズの光学面は、それぞれ数1式に表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、Aiは非球面係数、hは光軸からの高さ、rは近軸曲率半径である。
また、回折構造を用いた実施例の場合、その回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路差は、数2式の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
尚、λは入射光束の波長(使用波長ともいう)、λBは設計波長(ブレーズ型回折構造の場合ブレーズ化波長という)、dorは回折次数、Ciは光路差関数の係数である。
(実施例1)
実施例1の対物レンズのレンズデータを表1に示す。又、実施例1の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図5に示す。図5に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.41である。
図6〜11は、実施例1について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。横軸は対物レンズから離れる方向を正とする。本発明者は、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、第1光路差付与構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1光路差付与構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする構造(以下、(1/1)構造という)とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図6に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図7に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図8に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図9に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図10に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図11に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
尚、6次を超える次数の回折光を発生させる光路差付与構造は、一般的に段差量が大きくなることから製造が困難となる上に、波長変動時の回折効率の変動が大きくなるため望ましくない。以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例2)
実施例2の対物レンズのレンズデータを表2に示す。又、実施例2の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図12に示す。図12に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.39である。
図13〜18は、実施例2について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図13に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図14に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図15に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図16に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図17に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図18に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例3)
実施例3の対物レンズのレンズデータを表3に示す。又、実施例3の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図19に示す。図19に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.25である。
図20〜25は、実施例3について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図20に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図21に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図22に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図23に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図24に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図25に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例4)
実施例4の対物レンズのレンズデータを表4に示す。又、実施例4の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図26に示す。図26に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.23である。
図27〜32は、実施例4について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図27に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図28に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図29に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図30に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図31に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図32に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例5)
実施例5の対物レンズのレンズデータを表5に示す。又、実施例5の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図33に示す。図33に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.17である。
図34〜39は、実施例5について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図34に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図35に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図36に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図37に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図38に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図39に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例6)
実施例6の対物レンズのレンズデータを表6に示す。又、実施例6の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図40に示す。図40に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.18である。
図41〜46は、実施例6について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図41に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図42に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図43に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図44に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図45に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図46に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例7)
実施例7の対物レンズのレンズデータを表7に示す。又、実施例7の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図47に示す。図47に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.12である。
図48〜53は、実施例7について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図48に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い2次回折光及び3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図49に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図50に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に近いため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図51に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図52に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に近いため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図53に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に近いため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例8)
実施例8の対物レンズのレンズデータを表8に示す。又、実施例8の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図54に示す。図54に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。なお、+30℃の環境温度変化が生じた場合でも球面収差は良好であり、+5nmの光源波長変動が生じた場合であっても、球面収差が大きく悪化することはない。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.11である。
図55〜60は、実施例8について、本発明者が行った検討結果を示す縦球面収差図である。本発明者らは、開口数NA0.6以内の中央領域の第1光路差付与構造を、(1/1)構造とし、これを変えることなく、開口数NA0.6以上の周辺領域の第2光路差付与構造を、(1/1)構造、(2/1)構造、(3/2)構造、(4/2)構造、(5/3)構造、(6、4)構造と変更して、最もDVD使用時のフレアの状態が良好な組み合わせを検討した。尚、図でグラフの縦軸は、対物レンズの光学面の半径を1として表記しており、mは回折次数を示す。又、グラフは、回折効率が1%以上の回折光(0次を含む)を表記している。
第2光路差付与構造を、(1/1)構造とすると、図55に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の最も光量が高い1次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(4/2)構造とすると、図56に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率3.19%である4次回折光と集光位置が光軸方向に近く、また回折効率1.23%である5次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(2/1)構造とすると、図57に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率4.56%である2次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(5/3)構造とすると、図58に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率99.49%である3次回折光と集光位置が光軸方向に離れ、またそれ以外の次数の回折光はほぼ発生しないため、良好なフレアが形成されることがわかる。
第2光路差付与構造を、(3/2)構造とすると、図59に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率2.82%である3次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
第2光路差付与構造を、(6/4)構造とすると、図60に示すように、中央領域を通過した第2光束の1次回折光が、周辺領域を通過した第2光束の回折効率1.65%である6次回折光と集光位置が光軸方向に一致するため、良好なフレアが形成されないことがわかる。
以上より、第2光路差付与構造は(5/3)構造であることが望ましいことがわかった。
(実施例9)
実施例9の対物レンズのレンズデータを表9に示す。又、実施例9の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図61に示す。図61に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.05である。
(実施例10)
実施例10の対物レンズのレンズデータを表10に示す。又、実施例10の対物レンズのBD使用時の球面収差図を図62に示す。図62に示すように、BDにおいて球面収差は良好である。本実施例において、第1光路差付与構造を第2光束が通過する際における近軸パワーは、−0.08である。
表11に、実施例1〜10の特徴となる数値をまとめて示す。尚、(3)式に関し、本実施例においては0.892μm<d<1.508μmを満たす。
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。