JP2011229122A - 電力増幅器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ドハティ増幅器のキャリア増幅器3に、キャリア増幅器3のみが飽和動作する第一の飽和状態において最大効率が得られる2次高調波負荷となるようそれぞれ調整されたキャリア側最適化入力高調波処理回路9とキャリア側最適化出力高調波処理回路11を備え、ピーク増幅器6に、キャリア増幅器3とピーク増幅器6とが両方飽和動作する第二の飽和状態において最大効率が得られる2次高調波負荷となるようそれぞれ調整されたピーク側最適化入力高調波処理回路14とピーク側最適化出力高調波処理回路16とを備えた電力増幅器としている。
【選択図】 図1
Description
送信用電力増幅器は、高周波信号を所要の送信出力に増幅するものであり、ほとんどの無線機において最も多くの電力を消費する部分である。
電力増幅器が消費する電力は、高周波出力に変換されるだけでなく、内部損失となる熱として放出される。
そのため、発熱量を低減して消費電力の低減や信頼性の向上を図るために、電力増幅器の電力変換効率を上げて、無駄な内部損失を抑えることが要求されている。
ドハティ増幅器は、飽和出力電力より低い出力電力においても高い電力効率が得られるという特徴があるため、近年の無線通信システムにおける増幅器の電力効率改善に有効な手段である。
一般的なドハティ増幅器について図5を用いて説明する。図5は、一般的なドハティ増幅器の構成を示す構成ブロック図である。
図5に示すように、ドハティ増幅器は、信号を分配する分配器38と、AB級にバイアスされたキャリア増幅器39と、B〜C級にバイアスされたピーク増幅器42と、位相調整回路40と、特性インピーダンスがZLであるλ/4変換器41と、ノード50とを備えている。
尚、ここでは、増幅素子45と増幅素子48は、飽和出力電力が同じものとして説明する。
分配器38は、入力された信号を2つに分配するものである。
位相調整回路40は、分配器38で分配された一方の信号の位相を、λ/4変換器41によって生じる位相の遅れと同じだけ遅らせるものである。
増幅素子45は、AB級にバイアスされた増幅素子であり、入力電力レベルの低い時から動作するものである。
出力整合回路46は、増幅素子45の出力とλ/4変換器41との整合を取るものである。
増幅素子48は、B〜C級にバイアスされた増幅素子であり、入力電力レベルが十分高いときに動作するものである。
出力整合回路49は、増幅素子48の出力とノード50との整合を取るものである。
ノード50は、λ/4変換器41からの出力とピーク増幅器42からの出力とを合成するものである。
次に、ドハティ増幅器の動作について図5を用いて説明する。
図5に示すように、入力端子37より入力された信号は、分配器38によって、キャリア増幅器39と位相調整回路40とに分配される。
位相調整回路40に入力した信号は、ノード50においてλ/4変換器41の出力とピーク増幅器42との出力が同相で合成されるよう、λ/4変換器41で生じる位相遅れの分、位相が遅らされ、ピーク増幅器42に入力されて増幅され、ノード50に出力される。
第一の飽和状態からさらに入力電力を上げていくと、ピーク増幅器42が動作し始め、ドハティ増幅器からはキャリア増幅器39の出力と、ピーク増幅器42の出力の合成電力が出力される。
この状態を第二の飽和状態とする。このとき、キャリア増幅器39とピーク増幅器42の信号周波数における負荷インピーダンスは共にZLとなる。
ドハティ増幅器のバックオフ−電力効率特性について、図6を用いて説明する。図6は、ドハティ増幅器のバックオフ−電力効率特性を示す説明図である。
図6に示すように、ドハティ増幅器全体の飽和出力電力の1/4の出力電力(バックオフ:−6dB)において、キャリア増幅器41のみが飽和動作している第一の飽和状態となり、高い電力効率で動作する。
また、使用する各増幅器単体の飽和出力時の電力効率を高めることで、ドハティ増幅器の電力効率を更に向上させることが期待できる。
増幅器単体の電力効率を向上させる技術として、F級増幅器がある。
F級増幅器は、増幅素子の出力に高調波を反射する高調波処理回路を設け、増幅素子から見た出力負荷を偶数次高調波において短絡、奇数次高調波において開放とすることで、トランジスタのドレイン電圧とドレイン電流の時間波形が重ならないようにし、トランジスタの損失を理想的には零にする方式である。
ドハティ増幅器に、F級増幅器のような高調波処理を行った増幅器を適用することでさらなる電力効率の向上が期待できる(非特許文献1参照)。
高調波処理回路を備えたドハティ増幅器について図7を用いて説明する。図7は、高調波処理回路を備えたドハティ増幅器の構成ブロック図である。
図7に示すように、高調波処理回路を備えたドハティ増幅器は、図5に示した一般的なドハティ増幅器と同様に、入力端子19と、分配器20と、キャリア増幅器21と、位相調整回路22と、ピーク増幅器24と、インピーダンス変換器23と、ノード36とを備えている。
同様に、ピーク増幅器24は、入力整合回路31と、高調波処理回路32と、増幅素子33と、高調波処理回路34と、出力整合回路35とから構成されている。
高調波処理を行うことにより、高調波処理回路を備えたドハティ増幅器は、一般的なドハティ増幅器に比べて効率が向上する。
尚、従来の構成においては、キャリア増幅器21の高調波負荷と、ピーク増幅器24の高調波負荷は同一の負荷条件に対して効率が良くなるように調整されている。
ところで、高調波を利用した増幅器の整合回路を設計する際には、基本波の負荷インピーダンス及び高調波の負荷インピーダンスをそれぞれ最適な条件に設定する必要があるが、信号周波数における負荷が変化した場合、最も高い電力効率が得られる高調波負荷が変化する。
信号周波数における負荷インピーダンスが、負荷インピーダンスAの場合と、負荷インピーダンスBの場合とでは、それぞれ最も高い電力効率が得られる2倍波負荷が異なることがわかる。
ドハティ増幅器では、前述したように、キャリア増幅器の信号周波数における出力負荷がピーク増幅器の動作状態により変化し、これにより、増幅器全体の飽和出力電力よりも低い出力電力における高効率動作を実現するものとなっている。
しかしながら、ピーク増幅器の動作の有無によって信号周波数における出力負荷が変化するため、図8に示したように、高調波処理による効果が大きい高調波の負荷も変化してしまう。
従来の高調波処理回路を備えたドハティ増幅器(図7参照)では、キャリア増幅器21における高調波負荷インピーダンスと、ピーク増幅器24における高調波負荷インピーダンスとが同一となるよう、高調波処理回路27及び高調波処理回路29、高調波処理回路32及び高調波処理回路34が構成されていた。
ドハティ増幅器におけるキャリア増幅器21の出力負荷は、第一の飽和状態では2ZL、第二の飽和状態ではZLと異なるため、図9(a)に示すように、出力整合回路30を介して増幅素子28からみた負荷インピーダンスも異なる。
そして、信号周波数の出力負荷の変化に応じて、最も高い効率が得られる2倍波の出力負荷も異なるものとなり、第一の飽和状態で最大の効率が得られる2倍波の出力負荷はマーカー▲の点であり、第二の飽和状態で最大の効率が得られる2倍波の出力負荷はマーカー●の点となる。
従来の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性について図10を用いて説明する。図10は、従来の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性を示す説明図である。
図10に示すように、第二の飽和状態において最大の効率が得られるように、キャリア増幅器とピーク増幅器の高調波出力負荷を同一に調整している従来の増幅器では、全ての領域において一般的なドハティ増幅器よりは良好な効率となる。
しかし、第二の飽和状態では十分な効率改善が得られるものの、キャリア増幅器のみが動作する第一の飽和状態(バックオフ−6dBの点)においては、信号周波数の出力負荷が第二の飽和状態とは異なるため、最適な高調波負荷とはならず、十分な効率改善は認められない。
尚、高調波処理を行うドハティ増幅器に関する先行技術としては、特開2009−194421号公報(出願人:株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、高調波反射回路を備えた増幅器の入力段に、2次高調波を発生して位相及び振幅を調整する高調波発生回路を備え、増幅器出力での2次高調波反射レベルを上げて電力効率を向上させる高周波電力増幅器が記載されている。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る電力増幅器は、キャリア増幅器とピーク増幅器にそれぞれ高調波処理回路を備えたドハティ増幅器において、キャリア増幅器の高調波処理回路が、キャリア増幅器のみが飽和動作する第一の飽和状態で最も電力効率が高くなるよう設定され、ピーク増幅器の高調波処理回路が、キャリア増幅器とピーク増幅器の両方が飽和動作する第二の飽和状態でピーク増幅器の出力電力効率が最も高くなるよう設定された構成であり、第二の飽和状態だけでなく第一の飽和状態における電力効率を向上させて、特に第一の飽和状態付近で動作することが多いピーク対平均電力比の大きいCDMA信号やOFDM信号の増幅において、顕著な電力効率の向上を図ることができるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る電力増幅器の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る電力増幅器の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電力増幅器(第1の増幅器)は、一般的なドハティ増幅器と同様に、入力端子1と、分配器2と、キャリア増幅器3と、位相調整回路4と、インピーダンス変換器5と、ピーク増幅器6と、ノード18とを備えている。
同様に、ピーク増幅器6は、入力整合回路13と、ピーク側最適化高調波処理回路14と、B〜C級にバイアスされた増幅素子15と、ピーク側最適化高調波処理回路16と、出力整合回路17とから構成されている。
同様に、入力整合回路13は、ピーク側最適化入力高調波処理回路14と共に、信号周波数について、増幅素子15と入力側負荷とのインピーダンス整合をとるものである。
同様に、出力整合回路17は、ピーク側最適化出力高調波処理回路16と共に、信号周波数について、増幅素子15と出力側負荷とのインピーダンス整合をとるものである。
他の構成部分については、従来の増幅器と同様の構成及び動作である。
第1の増幅器の特徴部分について説明する。
まず、キャリア側最適化入力高調波処理回路9とキャリア側最適化出力高調波処理回路11について説明する。
尚、高調波処理は、理想的には増幅素子の出力側負荷のみで2次高調波を反射することで実現できるが、実際には、入力側の負荷が出力側負荷に影響を与えるため、本増幅器では入力側にも高調波処理回路を備えて最適な高調波処理を行うようにしている。
つまり、キャリア増幅器3のみが動作している状態の信号周波数の出力負荷に合わせて、キャリア増幅器3の電力効率が最大になるような高調波負荷とすることで、高調波処理の効果を高め、電力効率を向上させるものであり、特に、第一の飽和状態においてキャリア増幅器3に最適な2次高調波負荷を与えるよう設定される。
特に、CDMAやOFDMといったPAPRが大きい変調方式の信号に適用した場合に電力変換効率を著しく向上させることができるものである。
次に、ピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理回路16について説明する。
ピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理回路16は、キャリア増幅器3とピーク増幅器6が両方とも飽和している第二の飽和状態において、ピーク増幅器6の電力効率が最も高くなるよう、ピーク増幅器6に最適な2次高調波負荷を与えるよう設定されている。
これにより、第二の飽和状態においても良好な電力効率が得られるものである。
次に、図1に示したキャリア側最適化入力高調波処理回路9と、キャリア側最適化出力高調波処理回路11と、ピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理回路16の構成について図2を用いて説明する。尚、ここでは、これらの回路を総称して「高調波処理回路」として説明する。図2(a)(b)は、第1の増幅器における高調波処理回路の構成例を示す回路図である。
図2(a)に示すように、第1の増幅器の高調波処理回路は、入力端子56と、出力端子57と、整合回路51と、伝送線路52と、先端解放スタブ53と、先端解放スタブ54とを備えている。
また、先端開放スタブ54は、任意の長さLを備えている。先端開放スタブ54の長さLは、通常、各高調波処理回路によって異なる。
整合回路51は、入力側の高調波処理回路においては、2次高調波について、増幅素子と入力側負荷とのインピーダンス整合をとるものであり、出力側においては、2次高調波について、増幅素子の出力と整合回路51以降の回路との負荷インピーダンス整合をとる回路である。
また、整合回路51以降の伝送線路及びスタブの特性インピーダンスは、整合回路51によるインピーダンス変換によって基本波のQが高くなりすぎないように、2次高調波負荷と基本波負荷との関係に応じて、任意に設定される。
尚、整合回路51は、基本波に対してはプリマッチ回路として動作する。
図2(a)の高調波処理回路において、伝送線路52は、基本波に対してλ/4の長さであるため、2次高調波についてはλ/2となり、B点の負荷ZBとA点から伝送線路52側をみた負荷ZA52は同じになる。
そのため、B点における2次高調波の負荷は、先端開放スタブ54の長さLによって決まる。
基本波については、先端開放スタブ53が基本波に対しλ/4の長さであるため、先端開放スタブ54の長さによらず、B点の負荷は常に0となる。
また、伝送線路52が基本波に対しλ/4の長さであるため、A点における伝送線路52側の負荷は無限大となり、先端開放スタブ54の長さLを変更しても基本波の負荷は変化しない。
すなわち、高調波処理回路は、基本波についてはプリマッチ回路となる。
図2(b)に示すように、別の構成の高調波処理回路は、先端開放スタブ53が接続されたB点と先端開放スタブ54との間に、整合回路55を備えている。
整合回路51だけでは伝送線路52及び先端開放スタブ54との2次高調波の負荷整合が十分にとれない場合には、このように、先端開放スタブ54と伝送線路52との間に別の整合回路55を入れて、調整を行うことも可能である。
第1の増幅器の高調波処理回路はいずれも、基本的には図2(a)又は(b)に示した構成であるが、先端開放スタブ54の長さLは、通常、それぞれ異なったものとなる。
各高調波処理回路の設定方法について説明する。
第1の増幅器では、まず、キャリア側最適化出力高調波処理回路11について、第一の飽和状態において、高調波反射によってキャリア増幅器3で最大の効率が得られる2次高調波の負荷インピーダンスとなるよう、先端開放スタブ54の電気長Lを調整する。
そして、入力側の調整後に再度、キャリア側最適化出力高調波処理回路11の微調整を行って、第一の飽和状態においてキャリア増幅器3で最大の効率が得られるように設定する。
まず、ピーク側最適化出力高調波処理回路16を、第二の飽和状態において高調波反射によってピーク増幅器6が最大の効率となる高調波負荷インピーダンスとなるよう調整する。
そして、ピーク側最適化入力高調波処理回路14の調整を行い、その後、再度ピーク側最適化出力高調波処理回路16を微調整する。
このようにして第1の増幅器における高調波処理回路の設定が行われるものである。
第1の増幅器における高調波負荷インピーダンスについて図3を用いて説明する。図3(a)は、第1の増幅器のキャリア増幅器における基本波と2次高調波の負荷インピーダンスを示す説明図であり、(b)は、第1の増幅器のピーク増幅器における基本波と2次高調波の負荷インピーダンスを示す説明図である。
図3(b)に示すように、ピーク増幅器6については、図9(b)に示した従来の増幅器と同様に、第二の飽和状態において最大の効率が得られる2倍波の負荷インピーダンス(マーカー●)と、上述した手順で設定されたピーク増幅器6の2倍波負荷インピーダンス(マーカー□)とは一致しており、第二の飽和状態においてピーク増幅器6は高調波処理の効果が十分に得られるものとなっている。
そして、基本波の負荷インピーダンスの変化に応じて、キャリア増幅器3において最も高い効率が得られる2倍波の負荷インピーダンスも第一の飽和状態(▲)と第二の飽和状態(●)とで異なるが、第1の増幅器の特徴として、上述した手順によって設定されたキャリア増幅器3の2倍波負荷インピーダンス(マーカー□)は、第一の飽和状態においてキャリア増幅器3で最大の効率が得られる2倍波の負荷インピーダンスと一致しており、第一の飽和状態においてキャリア増幅器3で最大の高調波処理効果が得られるようになっている。
第1の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性について図4を用いて説明する。図4は、第1の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性を示す説明図である。
図4に示すように、第1の増幅器では、第一の飽和領域を中心とするバックオフの大きい領域において、通常のドハティ増幅器や高調波処理回路を備えた従来の増幅器に比べて良好な電力効率が得られる。これは、キャリア増幅器の高調波処理回路を、第一の飽和状態において最大の効率となるよう設定しているためである。
これは、従来の増幅器が、キャリア増幅器とピーク増幅器の高調波処理回路を両方とも第二の飽和状態に合わせて調整しているのに対して、第1の増幅器ではキャリア増幅器の高調波処理回路は第一の飽和状態で最適となるように設定しており、第二の飽和状態においてはキャリア増幅器の高調波負荷が最適な負荷とはならないためである。
本発明の第1の実施の形態に係る電力増幅器によれば、ドハティ増幅器のキャリア増幅器3に、キャリア増幅器3のみが動作する第一の飽和状態において最大効率が得られる2次高調波負荷となるようそれぞれ調整されたキャリア側最適化入力高調波処理回路9とキャリア側最適化出力高調波処理回路11を備え、ピーク増幅器6に、キャリア増幅器3とピーク増幅器6とが両方動作する第二の飽和状態において最大効率が得られる2次高調波負荷となるようそれぞれ調整されたピーク側最適化入力高調波処理回路14とピーク側最適化出力高調波処理回路16とを備えているので、通常のドハティ増幅器と比べると、第2の飽和状態だけでなく第一の飽和状態付近において十分な高調波処理の効果を得ることができ、CDMAやOFDMといったPAPRが大きい変調方式の信号に適用した場合に電力変換効率を著しく向上させることができる効果がある。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電力増幅器について説明する。
第2の実施の形態に係る電力増幅器(第2の増幅器)は、キャリア側最適化出力高調波処理回路に、第一の飽和状態でキャリア増幅器に最適な2次高調波負荷を与える先端開放スタブと、第二の飽和状態でキャリア増幅器に最適な2次高調波負荷を与える別の先端開放スタブとを備え、入力電力レベルに応じていずれかの先端開放スタブを切り替えてλ/4伝送線路に接続するものであり、入力電力レベルが変化しても最適な高調波負荷をキャリア増幅器に与えることができ、増幅器全体の電力効率を更に向上させるものである。
本発明の第2の実施の形態に係る電力増幅器の構成について図11を用いて説明する。図11は、本発明の第2の実施の形態に係る電力増幅器の構成ブロック図である。
図11に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る電力増幅器(第2の増幅器)は、基本的な構成は第1の増幅器とほぼ同様であって、キャリア増幅器3とピーク増幅器6とを備えたドハティ増幅器であり、キャリア増幅器3にキャリア側最適化入力高調波処理回路9と、キャリア側最適化出力高調波処理11′を備え、ピーク増幅器6にピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理16を備えている。また、ノード18の後段にλ/4変換器8が設けられている。
分配器71は、入力された信号を分配器2と検波器72とに分配する。
検波器72は、入力された信号を検波して入力電力レベルを検出する。
判定回路73は、しきい値を記憶しており、検波器72で検出された入力電力レベルをしきい値と比較し、比較結果に基づいてキャリア側最適化出力高調波処理回路11′を制御する制御信号を出力する。判定回路73は、例えばオペアンプ等を用いたコンパレータで構成される。
第2の増幅器の特徴部分であるキャリア側最適化出力高調波処理回路11′の構成について図12を用いて説明する。図12は、第2の増幅器のキャリア側最適化出力高調波処理回路11′の回路図である。
図12に示すように、第2の増幅器のキャリア側最適化出力高調波処理回路11′は、第1の増幅器のキャリア側最適化出力高調波処理回路11(図2(a)参照)と同様の部分として、入力端子56と、出力端子57と、整合回路51と、伝送線路52と、先端解放スタブ53とを備えており、第2の増幅器の特徴部分として、スイッチ59と、先端開放スタブ60と、先端開放スタブ61と、制御信号入力端子64とを備えている。
尚、先端開放スタブ60、先端開放スタブ61、先端開放スタブ53は、それぞれ、請求項における第1の先端開放スタブ、第2の先端開放スタブ、第3の先端開放スタブに相当している。
これにより、第一の飽和状態と第二の飽和状態のそれぞれについて、キャリア増幅器3で十分な高調波処理の効果が得られ、効率が良くなるものである。
スイッチ59は、制御信号入力端子64を介して入力される制御信号によって先端開放スタブ60又は61のいずれかを切り替えて伝送線路52に接続する。
そして、接続された先端開放スタブ60又は61の電気長に応じた2次高調波負荷が、キャリア増幅器3に与えられるものである。
次に、第2の増幅器の特徴部分の動作について説明する。
第2の増幅器では、入力端子1から入力された信号は、分配器71で分配され、検波器72と分配器2に入力される。分配器2に入力された信号については第1の増幅器と同様であり、説明を省略する。
キャリア側最適化出力高調波処理回路11′では、スイッチ59が先端開放スタブ60側に切り替えられ、キャリア増幅器3のみが動作している第一の飽和状態において、高調波反射によりキャリア増幅器3の効率が最大となる最適な2次高調波負荷インピーダンスとなる。
これにより、キャリア側最適化出力高調波処理回路11′のスイッチ59が先端開放スタブ61側に切り替えられ、キャリア増幅器3とピーク増幅器6が共に飽和動作している第二の飽和状態において、キャリア増幅器3の効率が最大となるような最適な2次高調波負荷インピーダンスとなる。
つまり、キャリア側最適化入力高調波処理回路9は、第一の飽和状態においてキャリア増幅器3の効率が最大となるように設定され、ピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理回路16は、第二の飽和状態においてピーク増幅器6の出力が最適となるように設定されている。
第2の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性について図13を用いて説明する。図13は、第2の増幅器におけるバックオフ−電力効率特性を示す説明図である。
図13に示すように、第2の増幅器では、バックオフの大きい領域から増幅器全体の飽和出力に至るまで、全ての出力電力において通常のドハティ増幅器や高調波処理回路を備えた従来の増幅器に比べて良好な電力効率が得られている。
次に、第2の増幅器の別の構成について図14を用いて説明する。図14は、第2の増幅器の別の構成を示す構成ブロック図である。
図14に示すように、第2の増幅器の別の構成は、図11に示した第2の増幅器と基本的な構成は同様であり、キャリア増幅器3のキャリア側最適化入力高調波処理回路9の代わりに、図12に示したキャリア側最適化出力高調波処理回路11′と同様の構成を備えたキャリア側最適化入力高調波処理回路9′を備え、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′に対しても判定回路73からの制御信号で先端開放スタブを切り替えるようになっている。
他の構成部分については第2の増幅器と同様である。
これにより、入力電力レベルがしきい値より低ければ、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′とキャリア側最適化出力高調波処理回路11′のスイッチ59が先端開放スタブ60側に切り替えられ、入力電力レベルがしきい値以上であれば、スイッチ59が61側に切り替えられる。
また、スイッチを用いて複数の先端開放スタブを切り替えるのではなく、バリキャップダイオードと1つのスタブとを組み合わせて、検波器72で検波した入力電力レベルに応じてバリキャップダイオードの容量を制御することにより、徐々に高調波の反射位相を制御することも可能である。この場合には、判定回路73は検波器72で検波した入力電力レベルに応じてバリキャップダイオードの容量を制御する制御回路となる。
これにより、入力電力レベルの変化に応じて最適な高調波負荷を精度よく設定することができ、一層増幅器の効率を向上させることができるものである。
本発明の第2の実施の形態に係る電力増幅器によれば、ドハティ増幅器のキャリア増幅器3にキャリア側最適化出力高調波処理回路11′と、入力電力レベルを検出する検波器72と、検出された入力電力レベルに応じてキャリア側最適化出力高調波処理回路11′を制御する制御信号を出力する判定回路73を備え、キャリア側最適化出力高調波処理回路11′が、入力端子56と、出力端子57と、入力端子56と出力端子57の間に設けられた高調波の整合回路51と、整合回路51と出力端子57との間に接続された基本波の1/4波長の長さの伝送線路52と、第一の飽和状態でキャリア増幅器3において最大の効率が得られる高調波負荷となる電気長を備えた先端開放スタブ60と、第二の飽和状態でキャリア増幅器3において最大の効率が得られる高調波負荷となる電気長を備えた先端開放スタブ61と、制御信号に従って先端開放スタブ60,61を切り替えて伝送線路52に直列に接続するスイッチ59と、伝送線路52とスイッチ59との間に接続された基本波の1/4波長の長さの先端開放スタブ53とを備えた電力増幅器としているので、入力電力レベルに応じてキャリア増幅器3における最適な高調波負荷を切り替えて設定することができ、第一の飽和状態と第二の飽和状態の両方で良好な効率が得られ、広い出力電力レベルに亘って増幅器の効率を向上させることができる効果がある。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る電力増幅器(第3の増幅器)について説明する。
第3の増幅器は、第2の増幅器と同様に、キャリア側最適化出力高調波処理回路とキャリア側最適化入力高調波処理回路に、第一の飽和状態でキャリア増幅器に最適な2次高調波負荷を与える先端開放スタブと、第二の飽和状態でキャリア増幅器に最適な2次高調波負荷を与える別の先端開放スタブとを備えたものであるが、増幅器への入力電力の代わりにキャリア増幅器のドレイン電流を検出して、それに応じて先端開放スタブを切り替えていずれかの先端開放スタブをλ/4伝送線路に接続するものであり、入力信号電力を減少させず、簡単な回路構成で入力電力レベルの変化に応じた最適な高調波負荷をキャリア増幅器に与えることができ、増幅器全体の電力効率を更に向上させるものである。
第3の増幅器の構成について図15を用いて説明する。図15は、本発明の第3の実施の形態に係る電力増幅器の構成ブロック図である。
図15に示すように、第3の増幅器は、基本的な構成は図13に示した第2の増幅器の別の構成とほぼ同様であって、キャリア増幅器3にキャリア側最適化入力高調波処理回路9′と、キャリア側最適化出力高調波処理11′とを備え、ピーク増幅器6にピーク側最適化入力高調波処理回路14と、ピーク側最適化出力高調波処理16を備えている。また、ノード18の後段にλ/4変換器74が設けられている。
また、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′の構成もほぼ同様であり、後述する。
また、キャリア増幅器3とピーク増幅器6のドレイン側には、それぞれ、ドレインバイアス電源回路83とドレインバイアス電源回路86とが設けられ、ドレインバイアス電圧を印加する。
電流検出回路84は、キャリア増幅器3の増幅素子10のドレイン電流量を検出する。
キャリア側最適化入力高調波処理回路9′について図16を用いて説明する。図16は、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′の回路図である。
キャリア側最適化入力高調波処理回路9′は、図12に示したキャリア側最適化出力高調波処理回路11′とほぼ同様の構成であり、入力端子91と、整合回路92と、出力端子93と、伝送線路94と、先端解放スタブ95と、スイッチ96と、先端開放スタブ97と、先端開放スタブ98と、制御信号入力端子99とを備えている。
整合回路92は、増幅素子10と入力側負荷とのインピーダンス整合をとる。
尚、先端開放スタブ97、先端開放スタブ98、先端開放スタブ95は、それぞれ、請求項における第1の先端開放スタブ、第2の先端開放スタブ、第3の先端開放スタブに相当している。
そして、スイッチ96が、制御信号入力端子99からの制御信号に従って、先端解放スタブ97又は98のいずれかを伝送線路94に接続する。
次に、入力信号電力とドレイン電流との関係について図17を用いて説明する。図17は、入力信号電力と電流検出回路84に流れるドレイン電流との関係を示す模式説明図である。
図17に示すように、増幅器の入力信号電力が増加すると、ドレイン電流も増加する特性を備えている。そこで、第2の増幅器で用いた入力電力のしきい値に対応するキャリア増幅器3のドレイン電流量をドレイン電流のしきい値として設定することにより、ドレイン電流の検出で第2の増幅器と同様の入力電力レベルに応じた高調波負荷の制御を行うことができるものである。
第3の増幅器においては、判定回路82に当該ドレイン電流のしきい値が設定されている。
次に、電流検出回路84について図18を用いて説明する。図18は、電流検出回路84の構成例を示す回路図である。
図18に示すように、電流検出回路84は、入力端子100と、抵抗101と、差動増幅器102と、電位差出力端子103と、出力端子104とを備えている。
そして、上記構成の電流検出回路84においては、入力端子100から入力されたドレイン電流は、抵抗101を通って出力端子104からキャリア増幅器3に出力される。その際、低い抵抗値を持つ抵抗101の両端の電位差を検出し、差動増幅器102で増幅して、電位差出力端子103から判定回路82に出力される。検出される電位差は、ドレイン電流の大きさに対応している。
次に、第3の増幅器の動作について図15、図12、図16を用いて説明する。
第3の増幅器では、入力端子1に入力された信号は、分配器2で分配され、キャリア増幅器3とピーク増幅器6とに入力される。基本的な動作は第1の増幅器と同様であるため、ここでは省略する。
そして、第3の増幅器の特徴として、電流検出回路84が、キャリア増幅器3のドレイン電流量を検出して、判定回路82に出力する。判定回路82は、入力されたドレイン電流量としきい値とを比較して、検出されたしきい値がしきい値よりも小さい場合には、キャリア側最適化出力高調波処理回路11′に対して、スイッチ59を先端開放スタブ60側に切り替える制御信号を出力すると共に、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′に対して、スイッチ96を先端開放スタブ97側に切り替える制御信号を出力する。
これにより、キャリア増幅器3とピーク増幅器6が共に飽和動作している第二の飽和状態において、キャリア増幅器3の効率が最大となるような最適な2次高調波負荷インピーダンスとなる。
次に、第3の増幅器の別の構成について図19を用いて説明する。図19は、第3の増幅器の別の構成を示す構成ブロック図である。
別の構成の第3の増幅器は、キャリア増幅器3のドレイン電流を検出する代わりに、ピーク増幅器6のドレイン電流を検出して、キャリア増幅器3の高調波負荷の制御を行うものである。
また、図15に示した第3の増幅器における判定回路82の代わりに判定回路82′が設けられている。
判定回路82′は、検出されたドレイン電流量と予め記憶されているしきい値とを比較して、比較結果に基づいて、キャリア側最適化出力高調波処理回路11′とキャリア側最適化入力高調波処理回路9′とを制御する制御信号を出力し、ドレイン電流量に応じてスイッチを適切な先端解放スタブに接続させる。
次に、第3の増幅器の別の構成におけるドレイン電流について図20を用いて説明する。図20は、入力信号電力と電流検出回路84′に流れるドレイン電流との関係を示す模式説明図である。
図20に示すように、ピーク増幅器6は、B級又はC級にバイアスされているため、AB級にバイアスされているキャリア増幅器3とは入力信号電力とドレイン電流の関係は異なるものとなる。
つまり、電流検出回路84′においては、入力信号電力が小さい状態では増幅素子15のドレイン電流は流れず、入力信号電力が一定の値を超えるとドレイン電流は急激に増加する。
また、第2の増幅器の変形例と同様に、第3の増幅器の変形例として、スイッチを用いて複数の先端開放スタブを切り替える代わりに、バリキャップダイオードと1つのスタブとを組み合わせて、電流検出回路84,84′で検出したドレイン電流量に応じてバリキャップダイオードの容量を制御することにより、徐々に高調波の反射位相を制御することも可能である。この場合には、判定回路82,82′は、電流検出回路84,84′で検出したドレイン電流量に応じてバリキャップダイオードの容量を制御する制御回路となる。
これにより、入力電力レベルの変化に応じて最適な高調波負荷を精度よく設定することができ、一層増幅器の効率を向上させることができるものである。
本発明の第3の実施の形態に係る電力増幅器によれば、ドハティ増幅器のキャリア増幅器3にキャリア側最適化出力高調波処理回路11′とキャリア側最適化入力高調波処理回路9′と、キャリア増幅器3のドレイン電流量を検出する電流検出回路84と、検出されたドレイン電流量に応じてキャリア側最適化出力高調波処理回路11′及びキャリア側最適化入力高調波処理回路9′とを制御する制御信号を出力する判定回路82を備え、キャリア側最適化出力高調波処理回路11′が、判定回路82からの制御信号に従って先端解放スタブ60又は61を切り替えて接続し、キャリア側最適化入力高調波処理回路9′が、判定回路82からの制御信号に従って先端解放スタブ97又は98を切り替えて接続する電力増幅器としているので、判定回路82におけるキャリア増幅器3のドレイン電流量のしきい値を入力電力レベルに応じて設定しておくことにより、入力電力レベルに応じてキャリア増幅器3における最適な高調波負荷を切り替えて設定することができ、第一の飽和状態と第二の飽和状態の両方において良好な効率が得られ、広い出力電力レベルに亘って増幅器の効率を向上させることができ、更に、簡易な回路構成で入力信号電力を低減させずに高調波負荷を制御できる効果がある。
Claims (3)
- AB級で動作する第1の増幅素子を有するキャリア増幅器と、
B級又はC級で動作する第2の増幅素子を有するピーク増幅器とを備え、
前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の出力を合成して出力するドハティ増幅器を有する電力増幅器であって、
前記キャリア増幅器に、高調波を反射し、前記第1の増幅素子から見た高調波出力負荷インピーダンスを、キャリア増幅器のみが動作して飽和する第1の飽和状態において前記キャリア増幅器の効率が最大となる高調波出力負荷インピーダンスとしたキャリア側高調波処理回路を備え、
前記ピーク増幅器に、高調波を反射し、前記第2の増幅素子から見た高調波出力負荷インピーダンスを、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器とが共に飽和状態となる第2の飽和状態において、前記ピーク増幅器の効率が最大となる高調波出力負荷インピーダンスとするピーク側高調波処理回路を備えたことを特徴とする電力増幅器。 - 入力電力レベルを検出する検波器と、
前記検波器で検出された入力電力レベルに応じて高調波処理回路を制御する制御信号を出力する判定回路とを備え、
前記判定回路が、前記キャリア増幅器から見た高調波出力負荷インピーダンスを、キャリア増幅器の効率が最大となる高調波出力負荷インピーダンスとするようにキャリア側高調波処理回路を制御する制御信号を出力し、
前記キャリア側高調波処理回路が、前記判定回路から出力される制御信号に従って、前記キャリア増幅器から見た高調波出力負荷インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。 - キャリア増幅器又はピーク増幅器のドレイン電流量を検出する電流検出器と、
前記電流検出器で検出されたドレイン電流量に応じて高調波処理回路を制御する制御信号を出力する判定回路とを備え、
前記判定回路が、前記キャリア増幅器から見た高調波出力負荷インピーダンスを、キャリア増幅器の効率が最大となる高調波出力負荷インピーダンスとするようにキャリア側高調波処理回路を制御する制御信号を出力し、
前記キャリア側高調波処理回路が、前記判定回路から出力される制御信号に従って、前記キャリア増幅器から見た高調波出力負荷インピーダンスを変化させることを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。
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