図2には、本願発明に係るブーム撓み抑制装置10を備えたブーム付きクレーン車Zを示している。ここで、このクレーン車Zは、の全体構成を概説する。
上記クレーン車Zは、車両1上に搭載された旋回台2に伸縮ブーム3の基端部を連結し、該伸縮ブーム3を上記旋回台2との間に配置したブーム起伏シリンダ6によって起伏動させるとともに、上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部に張出・格納可能に取付けられたマスト11を張出させてその先端部と上記伸縮ブーム3の基端部をテンション部材13によって連結するとともに、上記マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の先端部、即ち、先端ブーム3Cの先端部に設けられたブームヘッド3Dを後述のテンションロープ14によって連結し、これらテンション部材13とテンションロープ14の張力によって上記伸縮ブーム3の縦方向(起伏面に沿う方向)の撓み変形を抑制するようになっている。なお、このクレーン車Zにおいては、上記伸縮ブーム3の先端にジブを装着していない状態を示しているが、他の実施形態では上記伸縮ブーム3の先端にジブを装着することもできる(図8参照)。このジブを装着した作業態様については後述する。
また、この実施形態では、上述のように、「上記マスト11を上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部に張出・格納可能に取付ける」としているが、ここでいう「基端ブーム3Aの先端部」とは、図2に示すように上記基端ブーム3Aの先端及びその近傍部位に限定されるものではなく、該基端ブーム3Aの先端寄りの広い範囲を示すものであり、その他の態様として、例えば、基端ブーム3Aの長手方向中間部位置を選んで取付けることも可能である。
また、上記ブームヘッド3D側における上記テンションロープ14の接続位置を上記ブームヘッド3Dの幅方向(伸縮ブーム3に起伏面に直交する方向)に適宜張出させて設けることで、上記伸縮ブーム3の横方向(伸縮ブーム3に起伏面に直交する方向)の撓み変形を抑制することもできるものである(上掲の特許文献1参照)。
そして、このクレーン車Zにおいては、上記旋回台2側に配置した主吊下用ウィンチ47から繰出され上記伸縮ブーム3の先端部から吊下される主ロープ4の先端に設けた主フック7によって吊荷を吊持するブーム作業と、上記旋回台2側に配置した副吊下用ウィンチ48から繰出され上記伸縮ブーム3の先端部から吊下される副ロープ5の先端に設けた副フック8によって吊荷を吊持するシングルトップ作業を選択できる。
一方、上記マスト11は、図3に示すように、その基端部11aが上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部3Aaに、該伸縮ブーム3の起伏面に沿う方向の回動可能に枢支され、該マスト11と上記基端ブーム3Aとの間に配置したマスト起伏シリンダ12の伸縮動によって、同図に実線図示するように上記基端ブーム3Aに略直交するように立ち上がる張出姿勢と、同図に鎖線図示するように上記基端ブーム3Aに沿って倒伏格納された格納姿勢の間で姿勢変更される。
なお、上記マスト11の張出姿勢は、上記基端ブーム3Aの軸方向視において、該基端ブーム3Aから略鉛直方向へ立ち上がる姿勢のみを指すのではなく、該基端ブーム3Aから側方へ傾斜状態で立ち上がる姿勢をも含むものである。また、上記マスト11は、同一構造をもつ左右一対のマスト体を、所定間隔をもって略平行に並置した状態で、又はそれぞれ側方へ拡開させた先開き状態で一体化して構成されており、該各マスト体を上記基端ブーム3Aの左右両側面の外側にそれぞれ位置させた状態で、該基端ブーム3A側に格納保持されるようになっている。
また、上記マスト11の先端部11bには、該マスト11の側面に直交する方向に延びる回転軸に支持された状態で一対の固定シーブ18(図6参照)が取付けられている。そして、この一対の固定シーブ18には上記テンションロープ14が巻き掛けられる。このテンションロープ14の取り回しについては後述する。
さらに、上記マスト11の軸方向の中間部位には、次述のテンションウィンチ15とプリテンションシリンダ16が備えられている。
上記テンションウィンチ15は、図6に示すように、油圧モータ15bによって回転駆動されるドラム15aを備え、このドラム15aには上記テンションロープ14の一端が巻き掛けられる。また、上記油圧モータ15bには、図7に示すように、メカニカルブレーキで構成されるウィンチブレーキ15cが備えられるとともに、上記ドラム15aと油圧モータ15bの間には減速機15dが介設されている。
上記テンションウィンチ15は、巻込動及び繰出動を通常の作動形態とするものであるが、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業時には通常の作動形態とは異なった作動を行なうように構成されている。即ち、上記テンションロープ14の先端側に設けられた折返しシーブ19を介して連結されたテンション部材17の先端(図6参照)を上記伸縮ブーム3のブームヘッド3D側に連結した状態で上記伸縮ブーム3の伸長作動させる場合は、通常の作動形態であれば上記テンションウィンチ15を繰出作動させるところ、これを低圧で巻込作動させるようにしている。
このように低圧で巻込作動しているテンションウィンチ15から上記テンションロープ14を上記伸縮ブーム3の伸長力によって逆に引き出すことで、上記テンションウィンチ15の油圧回路(図7参照)の油圧が上昇し、該油圧回路に設けた巻込用ブレーキ弁35が作動し上記テンションロープ14の引き出しが所定の抵抗をもった状態で行なわれ、その結果、上記テンションロープ14は上記伸縮ブーム3の伸長に伴って所定のブレーキ力が付与された状態で引き出されることになる(即ち、上記テンションロープ14には所定のテンションが掛けられた状態となる)。
なお、上記テンションウィンチ15の通常の巻込作動時、即ち、上記テンションロープ14を上記ドラム15aに巻き取るように該ドラム15aを回転させている場合(例えば、上記ブーム撓み抑制装置10の格納作業において上記伸縮ブーム3の縮小作動に追従させて上記テンションロープ14を上記テンションウィンチ15のドラム15aに巻き込んでいるような場合)において、上記テンションロープ14の巻き取り速度が上記伸縮ブーム3の縮小速度よりも大きくなって上記テンションロープ14に所定以上の張力が掛かったようなときには、油圧回路に設けた上記巻込用ブレーキ弁35が作動し上記油圧モータ15bがブレーキ装置として機能し、上記テンションロープ14の引き出し量が過大になるのが抑制される。
ここで、図7を参照して、上記テンションウィンチ15の油圧回路について簡単に説明する。
図7において、符号15はテンションウィンチである。このテンションウィンチは、ドラム15aと、これを駆動する油圧モータ15bと、該油圧モータ15bの中立状態を保持する油圧駆動のメカニカルブレーキで構成されるウィンチブレーキ15c及び減速機15dを備えて構成される。また、同図において、符号23は、上記ドラム15aをロックするためのロックシリンダである。
上記油圧モータ15bには、上記ウィンチブレーキ15cと共にブレーキ手段30を構成するブレーキ弁が備えられている。即ち、図7に示すように、上記油圧モータ15bの巻込側ポートには巻込用油路32が、繰出側ポートには繰出用油路33が、それぞれ接続されている。この巻込用油路32と繰出用油路33は、ウィンチ切換バルブ31を介して油圧供給源側のPポートとTポートにそれぞれ択一的接続可能とされている。上記巻込用油路32と繰出用油路33の間には、上記繰出用油路33側の最高圧力を規定する機能をもつリリーフバルブで構成される繰出用ブレーキ弁34と、上記巻込用油路32側の最高圧力を規定する機能をもつリリーフバルブで構成される巻込用ブレーキ弁35が備えられている。さらに、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートには、切換バルブ37と高圧用リリーフバルブ38と低圧用リリーフバルブ39を備えたリリーフ圧切換バルブユニット36が接続されている。
さらに、上記ウィンチブレーキ15cの油室には、切換バルブ29を介してブレーキ解除用の油圧が供給されるように構成されている。また、上記切換バルブ29には、上記巻込用油路32と繰出用油路33の間に配置したシャトルバルブ28を介してパイロット圧が供給されるようになっている。このため、上記ウィンチ切換バルブ31が巻込側と繰出側の何れに操作された場合にも、上記切換バルブ29を介して上記ウィンチブレーキ15cの油室に油圧が供給され、該ウィンチブレーキ15cはブレーキ解除状態とされ、上記ウィンチ切換バルブ31が中立位置に設定されない限り、上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ解除状態が維持され、上記ロックシリンダ23がロック状態で無い限り、上記油圧モータ15bの回転が許容される。これに対して、上記ウィンチ切換バルブ31が中立位置に設定されると、上記ウィンチブレーキ15cの油室内の油圧がドレーンされるため、該ウィンチブレーキ15はブレーキ状態とされ、このウィンチブレーキ15のブレーキ力によって上記テンションロープ14に掛かる張力が保持されることになる。
また、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートに上記リリーフ圧切換バルブユニット36が接続されているため、例えば、上記テンションウィンチ15の巻込作動時には、上記切換バルブ37の切り替え操作によって、上記高圧用リリーフバルブ38により最高圧力が規定された状態での上記テンションウィンチ15の高圧巻込作動と、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された状態での上記テンションウィンチ15の低圧巻込作動とが選択できることになる。
一方、上記テンションウィンチ15の一方のフランジ側には、ドラムロック機構20が備えられている。このドラムロック機構20は、掛止爪を備えた爪プレート21と該爪プレート21の掛止爪に選択的に掛止されるロック爪22を備え、該ロック爪22を上記ロックシリンダ23によって揺動させて上記ロック爪22を上記爪プレート21の掛止爪に選択的に掛止させることで上記ドラム15aの回転をロックするようになっている。なお、このドラムロック機構20のロック・アンロック状態は、ロック・アンロック検出器24によって検出される。
上記プリテンションシリンダ16は、上記テンションロープ14に所定のプリテンションを付与するものであって、そのロッド端には上記テンションロープ14の一端が連結される。このプリテンションシリンダ16には、圧力検出器25又はストローク検出器26が付設され、上記圧力検出器25によって検出される上記プリテンションシリンダ16の油圧値によって、又は上記ストローク検出器26によって検出される上記プリテンションシリンダ16のストローク(即ち、上記テンションロープ14の長さの変化量)によって、それぞれ上記テンションロープ14に付与されたプリテンションの大きさが検出されるようになっている。即ち、この実施形態では、上記圧力検出器25及び上記ストローク検出器26が特許請求の範囲中の「ロープ張力検出手段(66)」に該当する。
なお、この実施形態においては、上記プリテンションシリンダ16を用いて上記テンションロープ14にプリテンションを付与するようにしているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記プリテンションシリンダ16を設けることなく上記テンションウィンチ15を用いてプリテンションを付与する構成とか、上記プリテンションシリンダ16に代えてモータ駆動のウィンチを設け、該ウィンチによりプリテンションを付与する構成等、種々の形態を採用し得るものである。
ここで、図2、図3及び図6を参照して、上記テンションロープ14の取り回しについて説明する。
上記伸縮ブーム3の先端の上記ブームヘッド3Dには、テンション部材17を介して折返しシーブ19が連結されている(図2参照)。また、上記折返しシーブ19には、図6に示すように、上記テンションロープ14が巻き掛けられている。そして、このテンションロープ14の一端側は、上記マスト11の先端部に設けられた一対の固定シーブ18のうちの一方側を経て上記テンションウィンチ15のドラム15aに巻き付けられている。一方、上記テンションロープ14の他端は、上記一対の固定シーブ18のうちの他方側を経て上記プリテンションシリンダ16のロッド端に連結されている。
なお、この実施形態では、上記折返しシーブ19に巻き掛けられた上記テンションロープ14の先端部を、該折返しシーブ19に連結された上記テンション部材17を介して上記伸縮ブーム3のブームヘッド3Dに接続するようにしているが、他の実施形態においては上記テンション部材17の長さを短くするとか、場合によっては上記折返しシーブ19を直接上記ブームヘッド3Dに取付けるなど、種々の態様を採り得るものであり、この点においてこれらの構成は、請求項1における「マスト(11)の先端部と上記伸縮ブーム(3)の先端部の間にテンションロープ(14)を掛け回し、」という構成の範囲内であって、これを逸脱しないものである。
従って、上記テンションウィンチ15が巻込動あるいは繰出動を行なうことで、上記テンションロープ14の上記マスト11と上記折返しシーブ19との間の長さが変化し、上記伸縮ブーム3の伸縮動に上記テンションロープ14の長さを追従させることができる。
そして、上記伸縮ブーム3を所要長さに設定した時点で、上記ドラムロック機構20を作動させて上記テンションウィンチ15のドラム15aをロックし、その時点における上記テンションロープ14の長さを保持させる。このテンションウィンチ15のロック時点において上記テンションロープ14にはある大きさのプリテンションが付与されているが、上記ドラムロック機構20のロック位置(即ち、上記ロック爪22が選択的に掛止される上記爪プレート21における掛止爪の選択)のみによってはプリテンションの微調整を行なうことは困難である。
このため、上記ドラムロック機構20を作動させて上記テンションウィンチ15をロックした後、上記プリテンションシリンダ16を適宜伸縮させて上記テンションロープ14のプリテンションを微調整する。
このように、上記伸縮ブーム3を所要長さに設定し、それに対応させて上記テンションロープ14の長さを調整し且つ上記プリテンションシリンダ16によって上記テンションロープ14に所定のプリテンションを付与することで、上記伸縮ブーム3の自重による撓みが所定範囲内に抑制される。この状態で、上記伸縮ブーム3のブームヘッド3Dから吊下された主フック7を用いて荷物を吊り下げることでクレーン作業(ブーム作業)が行なわれるが、この場合、上記ブーム撓み抑制装置10によって上記伸縮ブーム3の自重による撓みが所定範囲内に抑えられているため、該伸縮ブーム3が過度に撓みを生じることがなく、安全性に高いクレーン作業が実現されるものである。
ここで、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業について説明する。
図4には、上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態を示している。また、図5には、上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態からの張出作業の初期状態を示している。
図4に示す上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態では、上記車両1はこれに備えられた各アウトリガによって浮上支持されている。また、上記伸縮ブーム3は、略水平に倒伏された全倒伏状態で且つ全縮状態とされている。さらに、上記ブーム撓み抑制装置10は、格納姿勢とされている。即ち、上記マスト11は、上記マスト起伏シリンダ12が全縮することで上記伸縮ブーム3の側面に沿った略水平姿勢とされ、図示しない固定手段によって固定保持されている。この固定保持状態から、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業が開始される。
先ず、上記マスト11の固定保持状態を解除し、しかる後、図5に示すように、上記伸縮ブーム3を全倒伏且つ全縮状態のまま、上記マスト起伏シリンダ12を伸長させて上記マスト11を略水平の格納位置から略鉛直に立ち上がる張出位置まで回動させ、この張出位置で停止させる。
次に、上記マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の基端部の間にテンション部材13を張設し、上記マスト11の前倒を規制し得るように上記テンション部材13によって該マスト11をその後方側から支持する。
次に、上記テンションウィンチ15を適宜巻込・繰出作動させながら、上記テンションロープ14の先端側に上記折返しシーブ19を介して連結された上記テンション部材17の先端を、上記伸縮ブーム3の上記ブームヘッド3D側に接続する。しかる後、図5に矢印Aで示すように上記伸縮ブーム3を伸長させながら、矢印Dで示すように上記伸縮ブーム3を起仰させ、最終的に図2に示すような作業姿勢とする。この場合、上記伸縮ブーム3の伸長に伴って、上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで、上記テンションロープ14は所定のテンションが付与された状態のまま上記テンションウィンチ15から引き出される。
また、上記ブーム撓み抑制装置10の格納作業は、上記張出作業時とは逆の手順で行なわれる。即ち、図2に示す作業姿勢から、上記伸縮ブーム3を倒伏且つ縮小作動させながら図5に示す姿勢とする。この場合、上記伸縮ブーム3の縮小に伴って、上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで、上記テンションロープ14は所定のテンションが付与された状態のまま上記テンションウィンチ15側に巻き取られる。
そして、図5に示す姿勢に達した時点で、上記テンション部材17の先端を上記ブームヘッド3D側から切り離してこれを上記マスト11側に格納保持させる。しかる後、上記マスト起伏シリンダ12を縮小作動させ、上記マスト11を立ち上がり姿勢から後傾させて、最終的に、図4に示すように該マスト11を上記伸縮ブーム3側に固定保持する。
また、上記ブーム撓み抑制装置10の張出及び格納作業時の他に、作業姿勢において上記伸縮ブーム3を伸縮させる場合もあり、この場合は、上記伸縮ブーム3の伸縮作動に伴って上記テンションウィンチ15を巻込・繰出作動させて、常時上記テンションロープ14に一定のテンションを作用させる。
ところで、上記ブーム撓み抑制装置10を伸縮ブーム3の上面側へ張出すための準備作業(後述する)においては、該伸縮ブーム3の伸縮作動を停止した時点(即ち、伸縮ブーム3の伸縮作動に伴う上記テンションロープ14の上記テンションウィンチ15からの引出・引込動作が停止され、準備作業が完了した時点)で該テンションウィンチ15のドラム15aをロックするドラムロック操作を行い、ドラムロック操作の完了後に、伸縮ブームの先端部から吊下されたフックを使用して吊荷を吊持する通常のクレーン作業に移行するが、例えば、ドラムロック操作の操作忘れとか、ドラムロック操作は行なわれたもののドラムロック機構の作動不良等によって、ドラムロックが完遂されていない状態(即ち、テンションウィンチ15はアンロック状態)ということも起こり得る。
このようなテンションウィンチ15のアンロック状態においては、該テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのみによって上記テンションロープ14にブレーキ力が付与されているため、上記テンションウィンチ15のアンロック状態において、例えば、伸縮ブーム3の撓みが増大する方向の作動がなされた場合、該伸縮ブーム3の撓み増加によって上記テンションロープ14の張力が増加し、この増加したロープ張力が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力を越えたような場合には、該ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出され、その結果、上記ウィンチブレーキ15cにおいてはブレーキシューの焼き付きによる焼損とかシューホルダーの折損等の発生によってこれが損傷することが懸念されるおそれのあることは既述の通りである。
このような問題は、上記伸縮ブーム3の先端にジブを装着した場合においても同様である。即ち、図8に示すように、上記伸縮ブーム3の先端にジブ基台53を介して伸縮式のジブ9を装着し、このジブ9を上記ジブ基台53との間に配置したチルトシリンダ54の伸縮動によってチルトさせる構成の場合、上記ジブ9の自重モーメントは全て上記伸縮ブーム3の先端に掛かる荷重(ブーム負荷)として上記テンションロープ14の張力に反映されるため、テンションロープ14の張力制御においては上記ジブ9を装着していない状態と同様に考えることができるためである。
これに対して、上記テンションロープ14のロープ張力をブーム負荷から直接的に検出するに代えて、他の要素、例えば、作業機の転倒モーメントから間接的に検出する手法を採用する場合には、上記伸縮ブーム3の先端にジブを装着していない作業状態では上記伸縮ブーム3の起伏角とブーム長さを考慮すれば良いが、上記伸縮ブーム3の先端にジブを装着した作業状態では上記伸縮ブーム3の起伏角とブーム長さの他に、上記ジブ9のジブ長さとジブチルト角をも考慮することが必要であり、後述のように、上記テンションロープ14のロープ張力をブーム負荷から直接的に検出するときとは異なった制御形態となる。
なお、図8に示したクレーン車Zの各構成部材の作動等については、図2に示したクレーン車Zの各構成部材に対応させて同一の符号を付すことで、図2についての説明を援用し、ここでの説明を省略する。
従って、以下においては、これら既述事項を踏まえた上で、上記問題点を解決するための具体的な制御例について説明する。
先ず、各制御例に共通する制御内容を、図1に示す制御ブロック図に基づいて説明する。
この実施形態における制御系は、図1に示すように、情報入力系60と、該情報入力系60からの入力情報に基づいて各種の演算処理を行なう制御系50と、該制御系50からの出力信号を受けて動作する出力系70を備えて構成される。
「情報入力系60」
上記情報入力系60は、
上記伸縮ブーム3のブーム長さを検出し、これをブーム長さ信号「C1」として出力するブーム長さ検出手段61と、
上記ブーム撓み抑制装置10の上記テンションロープ14の接続状態(接続されているか、接続されていないか)がオペレータによって入力され、これを接続状態信号「C2」として出力するロープ接続状態入力手段62と、
上記伸縮ブーム3の起伏操作がされているか否かを検出し、これをブーム起伏操作信号「C3」として出力するブーム起伏操作検出手段63と、
上記テンションウィンチ15のドラム15aが上記ドラムロック機構20によってロックされているか否かを検出し、これをドラムロック信号「C4」として出力するテンションウィンチドラムロック検出手段64(図6に示すロック・アンロック検出器24に該当する)と、
上記ブーム起伏シリンダ6に掛かる反力を検出し、これを起伏反力信号「C5」として出力する起伏シリンダ反力検出手段65と、
上記テンションロープ14に掛かっている張力を上記圧力検出器25又は上記ストローク検出器26によって検出し、これをロープ張力信号C6として出力するロープ張力検出手段(66)と、
上記伸縮ブーム3の伸縮操作がされているか否かを検出し、これをブーム伸縮操作信号「C7」として出力するブーム伸縮操作検出手段81と、
上記伸縮ブーム3の起伏角を検出し、これを起伏角信号「C8」として出力するブーム起伏角検出手段82と、
上記伸縮ブーム3の先端部に掛かる負荷(フック自重と吊荷重量を含む負荷であって、ジブ9を装着したものにあってはこのジブ9の自重も含む)を検出し、これを負荷信号「C9」として出力するブーム負荷検出手段84と、
上記ジブ9の伸縮操作がされているか否かを検出し、これをジブ伸縮操作信号「C10」として出力するジブ伸縮操作検出手段91と、
上記ジブ9のチルト操作がされているか否かを検出し、これをジブチルト操作信号「C11」として出力するジブチルト操作検出手段92と、
上記ジブ9の長さを検出し、これをジブ長さ信号「C12」として出力するジブ長さ検出手段93と、
上記ジブ9のチルト角を検出し、これをジブチルト角信号「C13」として出力するジブチルト角検出手段94と、
を備えて構成される。
「出力系70」
上記出力系70は、次述の制御系50側からの信号を受けて所定の出力態様を実現するものであって、上記テンションウィンチ15を作動させるべく油圧系を制御するテンションウィンチ作動バルブ71と、上記ブーム起伏シリンダ6を駆動させるべく油圧系を制御するブーム起伏駆動作動バルブ72と、警報を発する警報手段73を備えて構成される。
なお、上記警報手段73における警報内容としては、例えば、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業に際して、上記テンションウィンチ15をロックすべきであるにもロックされていないとき、ブームの倒伏作動とか吊荷作業が規制されるべきであるにも拘らずその操作がなされたとき、等において、これらを警報音、音声あるいはモニター画像にて報知する。
「制御系50」
上記制御系50には、作動制御手段51が備えられ、該作動制御手段51は上記情報入力系60の各手段61〜66、81〜84、91〜94からの各信号「C1」〜「C13」を受けて、上記出力系70の上記各構成要素の作動を制御する。また、この制御系50には、作業半径算出手段83が備えられており、該作業半径算出手段83は、上記ブーム長さ検出手段61からのブーム長さ信号「C1」と、上記ブーム起伏角検出手段82からの起伏角信号「C8」と、上記ジブ長さ検出手段93からのジブ長さ信号「C12」と、上記ジブチルト角検出手段94からのジブチルト角信号「C13」を受けて、現在のクレーン車Zの作業半径を検出し、これらを上記出力系70の上記各構成要素の作動制御に供する。以下、上記作動制御手段51による制御例として、第1〜第5の制御例を図9〜図13に示すフローチャートを参照してそれぞれ説明する。
第1の制御例
第1の制御例は、請求項1、請求項2及び請求項5の構成に対応するものであって、上記ブーム撓み抑制装置10の張出準備作業中において、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して引き出されるのを、該テンションロープ14のロープ張力に基づいて規制することで、該ウィンチブレーキ15cの損傷の発生を防止するものである。尚、この第1の制御例は、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9が装着されていない構成のものにも、上記ジブ9が装着された構成のものにも、同様に適用できるものである。以下、この制御を図9に示すフローチャートに基づいて説明すると、以下の通りである。
なお、上記ブーム撓み抑制装置10の「張出準備作業中」とは、上記ロープ接続状態入力手段62から上記テンションロープ14の接続状態が入力され、且つ上記テンションウィンチドラムロック検出手段64により上記ドラムロック機構20の非ドラムロック状態が検出されている状態を言う。以下の各制御例においても同様である。
図9のフローチャートにおいて、制御の開始後、先ず、上記ブーム撓み抑制装置10が張出準備作業中であるのか否かが判断される。即ち、ステップS1においては上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端側に接続されているか否かが判断され、ステップS2においては上記テンションウィンチ15が上記ドラムロック機構20によってドラムロック状態とされているか否かが判断される。この判断は、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端側に接続された状態で、且つ上記テンションウィンチ15がドラムロック状態とされているときは、上記ブーム撓み抑制装置10を有効に機能させた上での「クレーン作業中」であると考えられる一方、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端側に接続された状態であっても、上記テンションウィンチ15がドラムロック状態とされていないときは、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出され得る状態、例えば、上記伸縮ブーム3の伸縮作動に追従して上記テンションウィンチ15から上記テンションロープ14が引き出され、あるいは引き込まれている状態であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」と判断できることから、本願発明が対象とする「上記ブーム撓み抑制装置10の準備作業中」であるか否かを判断すべく設けたステップである。
そして、ステップS2において上記テンションウィンチ15は「ドラムロック状態」であると判断された場合は、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に付設された上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS2において、現在、上記テンションウィンチ15は「非ドラムロック状態」であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」であると判断された場合は、次にステップS3へ移行し、ここで上記伸縮ブーム3が伸縮操作されているか否かが判断される。この判断は、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されている場合には、該伸縮ブーム3の伸縮作動に追従して上記テンションウィンチ15から上記テンションロープ14を引き出し又は引き込み作動させる必要があるためである。
そして、ステップS3において、現在、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されていると判断された場合には、上記テンションウィンチ15が低圧で巻込み作動しているため、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS3において、現在、上記伸縮ブーム3は伸縮操作されていないと判断された場合には、次に、ステップS4において、上記伸縮ブーム3の現在のブーム長さと、上記テンションロープ14の現在のロープ張力を読み込み、しかる後、ステップS5へ移行する。このステップS5では、上記伸縮ブーム3の現在の「ブーム長さ」と予め設定した「所定値」とが比較判断される。
このステップS5での比較判断は、例え上記テンションウィンチ15が「非ドラムロック状態」であって、上記伸縮ブーム3が伸縮作動していない状態であっても、該伸縮ブーム3のブーム長さが短かければ、該伸縮ブーム3の撓み量が少なく上記テンションロープ14のロープ張力が過大となって該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、「ブーム長さ」を上記「所定値」と比較したものである。従って、上記「所定値」は、伸縮ブーム3の撓み量を、上記テンションロープ14のロープ張力が過大とならない程度に抑えることができるような長さに設定される。
そして、ステップS5において、現在の「ブーム長さ」は「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、現在の「ブーム長さ」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなって上記テンションロープ14に過大な張力がかかり、該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合には次のステップS6へ移行する。
なお、上記ステップS5における判断は必須ではなく、例えば、他の実施形態においてはこれを省略することもできる。
ステップS6においては、上記テンションロープ14の現在の「ロープ張力」と予め設定した「所定値」との比較判断が行なわれる。このステップS5での比較判断は、例え上記ブーム撓み抑制手段10の準備作業中、即ち、上記テンションウィンチ15が「非ドラムロック状態」で、且つ上記テンションロープ14が接続された状態で、さらに、上記伸縮ブーム3が伸縮作動していない状態で且つ上記伸縮ブーム3のブーム長さが「所定値」以上であったとしても、上記テンションロープ14のロープ張力が小さければ、上記テンションロープ14のロープ張力が過大となって該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、現在の「ロープ張力」を上記「所定値」と比較したものである。従って、上記「所定値」は、上記ウィンチブレーキ15cの最大ブレーキ力に対応するロープ張力よりも小さい張力値に設定される。
ステップS6において、現在の「ロープ張力」は上記「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りを終了させる(ステップS7)。この上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りの終了に伴って、上記ウィンチブレーキ15cがON作動し所定のブレーキ力を発生するが、上記テンションロープ14のロープ張力が上記ブレーキ力を上回ることはないため、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということもなく、その保護が図られる。
これに対して、現在の「ロープ張力」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合には、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りを開始させる(ステップS8)。このテンションウィンチ15の自動低圧巻取りの開始に伴って上記ウィンチブレーキ15cがOFF作動し、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出される場合、何等の抵抗を生じることなく該テンションロープ14の上記テンションウィンチ15から引き出しが許容され、該テンションロープ14のロープ張力は、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された最高圧力に対応する張力を上回ることがなく、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
尚、この実施形態では、上記ステップS6〜ステップS8が、特許請求の範囲中の「ブレーキ保護手段X」に該当する。
第2の制御例
第2の制御例は、請求項1、請求項3及び請求項5の構成に対応するものであって、上記ブーム撓み抑制装置10の張出準備作業中において、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して引き出されるのを、上記伸縮ブーム3の起伏角及びその作動方向に基づいて規制することで、該ウィンチブレーキ15cの損傷の発生を防止するものである。なお、この制御例は、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9が装着されていない場合における制御を一例として示したものである。以下、この制御を図10に示すフローチャートに基づいて説明すると、以下の通りである。
図10のフローチャートにおいて、制御の開始後、先ず、ブーム起伏角の更新の有無を判断するためのフラグFを「0」に設定する(ステップS1)。次に、上記ブーム撓み抑制手段10が準備作業中であるかどうかを判断するために、先ずステップS2においては上記テンションロープ14の接続状態を判断し、さらにステップS4において上記テンションウィンチ15がドラムロック状態であるか否かが判断される。
即ち、ステップS2において上記テンションロープ14は接続されていないと判断された場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS3)。
一方、ステップS2において上記テンションロープ14は接続されていると判断された場合には、次にステップS4において、上記テンションウィンチ15が上記ドラムロック機構20によってドラムロック状態とされているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS4において、上記テンションウィンチ15は「ドラムロック状態」であると判断された場合は、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に付設された上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS5)。
これに対して、ステップS4において、現在、上記テンションウィンチ15は「非ドラムロック状態」であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」であると判断された場合は、次にステップS6へ移行する。このステップS6では、上記伸縮ブーム3の現在の「ブーム長さ」と予め設定した「所定値」とが比較判断される。この判断を行う理由、及び上記「所定値」の意義は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS6において、現在の「ブーム長さ」は「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS7)。
これに対して、現在の「ブーム長さ」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなって上記テンションロープ14に過大な張力がかかり、該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合にはステップS8へ移行する。
ステップS8においては、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。なお、上記ステップS6における判断は必須ではなく、例えば、他の実施形態においてはこれを省略することもできる。
そして、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されていると判断された場合には、上記テンションウィンチ15が低圧で巻込み作動しているため、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS9)。
なお、ステップS3、ステップS5、ステップS7、ステップS9においてそれぞれフラグFを「0」に設定したのは、上記ブーム撓み抑制装置10の準備作業が完了して通常のクレーン作業に移行した後に、例えば、上記伸縮ブーム3を伸縮させて段取り替えを行い、再度上記ブーム撓み抑制装置10の準備作業を行なうことも有り得るため、その場合においても後述のステップS12での更新制御が実行されるようにするためであり、以下の各制御例においても同様である。
これに対して、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3は伸縮操作されていないと判断された場合には、次に、ステップS10へ移行し、このステップS10では、上記伸縮ブーム3の現在の起伏角を読み込む。
次に、ステップS11において、現在、フラグFが「1」であるか否かが判断される。ここで、初回にはフラグFは「0」であるため、ステップS12へ移行するが、2回目以降ではフラグFは「1」であるため(ステップS13参照)、ステップS12及びステップS13を迂回してステップS14へ移行することになる。
ステップS12においては、上記伸縮ブーム3の伸縮作動が停止された時点における上記伸縮ブーム3の起伏角を、記憶手段(図示省略)に記憶されている上記伸縮ブーム3の起伏角(記憶角度)として更新し(初回の制御にあっては、記憶角度が存在しないため現在の起伏角がそのまま記憶される)、ステップS13で上記フラグFを「1」に設定した後、ステップS14へ移行する。なお、この伸縮ブーム3の起伏角の更新は、上記伸縮ブーム3の伸縮が停止された以後において上記伸縮ブーム3の起伏操作が行われた場合、その角度変化を取得するためである。
ステップS14においては、上記伸縮ブーム3が起伏操作されたか否かが判断される。この判断は、上記伸縮ブーム3の起伏角の変化量によっては該伸縮ブーム3の自重による撓みが増加し、上記テンションロープ14のロープ張力の増加、延いては上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるためである。
ステップS14において、上記伸縮ブーム3の起伏操作がなされたと判断されたときは、ステップS16へ移行し、ここで上記伸縮ブーム3の起伏動作が該伸縮ブーム3の自重による転倒モーメントが増加する側の操作であるのか否かが判断される。ここで、上記伸縮ブーム3の自重による転倒モーメントが減少する側の操作であるときには、上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作には結びつかないため、何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、上記伸縮ブーム3の自重による転倒モーメントが増加する側の操作であると判断された場合には、この動作が上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるため、ステップS17へ移行し、ここで起伏角の「変化量」と予め設定した「所定値」とを比較する。即ち、上記記憶角度と現在の起伏角の「差分」が上記「所定値」より大きいか否かが判断される。
そして、上記差分(即ち、起伏角の変化量)が上記「所定値」より大きいときは、上記伸縮ブーム3の自重による転倒モーメントの増加によって上記テンションロープ14のロープ張力が増大し、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cからそのブレーキ力に抗して強制的に引き出されて該ウィンチブレーキ15cが損傷する可能性があることから、この場合には上記テンションロープ14の自動低圧巻取りを行なう(ステップS18)。
このテンションウィンチ15の自動低圧巻取り作動時には上記ウィンチブレーキ15cがOFF状態にあるため、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出される場合、何等の抵抗を生じることなく該テンションロープ14の上記テンションウィンチ15から引き出しが許容され、該テンションロープ14のロープ張力は、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された最高圧力に対応する張力を上回ることがなく、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
これに対して、上記差分(即ち、起伏角の変化量)が上記「所定値」より小さいと判断されたときは、上記伸縮ブーム3の起伏動に伴って上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、そのまま制御をリターンさせる(ステップS17)。この場合、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りが行なわれていないので上記ウィンチブレーキ15cがON状態にあって所定のブレーキ力が発生しているが、上記テンションロープ14のロープ張力が上記ブレーキ力を上回ることはないため、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということもなく、その保護が図られる。
一方、ステップS14において、上記伸縮ブーム3の起伏操作はされていないと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の起伏動に伴って上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、上記フラグFを「0」に設定(ステップS15)したのち、制御をリターンさせる。
尚、この実施形態では、上記ステップS16〜ステップS18が、特許請求の範囲中の「ブレーキ保護手段X」に該当する。
第3の制御例
第3の制御例は、請求項1、請求項3及び請求項5の構成に対応するものであって、上記ブーム撓み抑制装置10の張出準備作業中において、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して引き出されるのを、上記クレーン車Zの作業半径に基づいて規制することで、該ウィンチブレーキ15cの損傷の発生を防止するものである。なお、この制御例は、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9が装着された場合における制御を示している。以下、この制御を図11に示すフローチャートに基づいて説明すると、以下の通りである。
図11のフローチャートにおいて、制御の開始後、先ず、ブーム起伏角の更新の有無を判断するためのフラグFを「0」に設定する(ステップS1)。次に、上記ブーム撓み抑制手段10が準備作業中であるかどうかを判断するために、先ずステップS2においては上記テンションロープ14の接続状態を判断し、さらにステップS4において上記テンションウィンチ15がドラムロック状態であるか否かが判断される。
即ち、ステップS2において上記テンションロープ14は接続されていないと判断された場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS3)。
一方、ステップS2において上記テンションロープ14は接続されていると判断された場合には、次にステップS4において、上記テンションウィンチ15が上記ドラムロック機構20によってドラムロック状態とされているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS4において、上記テンションウィンチ15は「ドラムロック状態」であると判断された場合は、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に付設された上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS5)。
これに対して、ステップS4において、現在、上記テンションウィンチ15は「非ドラムロック状態」であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」であると判断された場合は、次にステップS6へ移行する。このステップS6では、上記伸縮ブーム3の現在の「ブーム長さ」と予め設定した「所定値」とが比較判断される。この判断を行う理由、及び上記「所定値」の意義は、上記第1の制御例の場合と同様である。なお、上記ステップS6における判断は必須ではなく、例えば、他の実施形態においてはこれを省略することもできる。
そして、ステップS6において、現在の「ブーム長さ」は「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS7)。
これに対して、現在の「ブーム長さ」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなって上記テンションロープ14に過大な張力がかかり、該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合にはステップS8へ移行する。
ステップS8においては、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されていると判断された場合には、上記テンションウィンチ15が低圧で巻込み作動しているため、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には上記フラグFを「0」に設定した後(初回は「F=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS9)。
これに対して、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3は伸縮操作されていないと判断された場合には、次に、ステップS10へ移行し、このステップS10では、上記伸縮ブーム3のブーム長さ、起伏角、上記ジブ9のジブ長さ、ジブチルト角に基づいて、クレーン車Zの現在の作業半径を算出し、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、現在はフラグFが「1」であるか否かが判断される。ここで、初回にはフラグFは「0」であるため、ステップS12へ移行するが、2回目以降ではフラグFは「1」であるため(ステップS13参照)、ステップS12、ステップS13を迂回してステップS14へ移行することになる。
ステップS12においては、上記伸縮ブーム3の伸縮作動が停止された時点におけるクレーン車Zの作業半径を、記憶手段(図示省略)に記憶されているクレーン車Zの作業半径(記憶作業半径)として更新し(初回の制御にあっては、記憶作業半径が存在しないため現在の作業半径がそのまま記憶される)、その後、ステップS13へ移行し、該ステップS13においてフラグFを「1」に設定し、ステップS14へ移行する。
ステップS14においては、クレーン車Zの作業半径の変更操作が行われたか否かが判断される。この判断は、作業半径の変化量によっては上記伸縮ブーム3の自重による撓みが増加し、上記テンションロープ14のロープ張力の増加、延いては上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるためである。
ステップS14において、作業半径の変更操作がなされたと判断されたときは、ステップS16へ移行し、その作業半径の変更操作が、上記伸縮ブーム3の自重及び上記ジブ9の自重によってクレーン車Zの転倒モーメントが増加する側の操作であるのか否かが判断される。ここで、クレーン車Zの転倒モーメントが減少する側の操作であるときには、上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作には結びつかないため、何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、クレーン車Zの転倒モーメントが増加する側の操作であると判断された場合には、この動作が上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるため、ステップS17へ移行し、ここで作業半径の「変化量の絶対値」と予め設定した「所定値」とを比較する。即ち、記憶作業半径と現在の作業半径の絶対値の「差分」が上記「所定値」より大きいか否かが判断される。なお、ステップS17における対比に作業半径の「変化量の絶対値」を用いたのは、記憶作業半径と現在の作業半径の差分は、正の場合も負の場合もあり、これら何れであってもその変化量が過大になるとクレーン車の転倒モーメントの増加につながるため、この実施形態では単なる記憶作業半径と現在の作業半径の差分ではなく、その差分の絶対値を用いたものである。
そして、ステップS17において、上記差分の絶対値(即ち、作業半径の変化量の絶対値)が上記「所定値」より大きいときは、上記伸縮ブーム3あるいは上記ジブ9の自重によるクレーン車の転倒モーメントの増加によって上記テンションロープ14のロープ張力が増大し、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cからそのブレーキ力に抗して強制的に引き出されて該ウィンチブレーキ15cが損傷する可能性があることから、この場合には上記テンションロープ14の自動低圧巻取りを行なう(ステップS18)。
このテンションウィンチ15の自動低圧巻取り作動時には上記ウィンチブレーキ15cがOFF状態にあるため、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出される場合、何等の抵抗を生じることなく該テンションロープ14の上記テンションウィンチ15から引き出しが許容され、該テンションロープ14のロープ張力は、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された最高圧力に対応する張力を上回ることがなく、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
これに対して、上記差分の絶対値が上記「所定値」より小さいと判断されたときは、上記伸縮ブーム3の起伏動あるいは上記ジブ9のチルト動に伴って上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、そのまま制御をリターンさせる(ステップS17)。この場合、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りが行なわれていないので上記ウィンチブレーキ15cがON状態にあって所定のブレーキ力が発生しているが、上記テンションロープ14のロープ張力が上記ブレーキ力を上回ることはないため、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということもなく、その保護が図られる。
一方、ステップS14において、作業半径の変更操作はされていないと判断された場合には、上記フラグFを「0」に設定(ステップS15)したのち、制御をリターンさせる。
尚、この実施形態では、上記ステップS16〜ステップS18が、特許請求の範囲中の「ブレーキ保護手段X」に該当する。
第4の制御例
第4の制御例は、請求項1、請求項4及び請求項5の構成に対応するものであって、上記ブーム撓み抑制装置10の張出準備作業中において、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して引き出されるのを、ブーム負荷に基づいて規制することで、該ウィンチブレーキ15cの損傷の発生を防止するものである。尚、この第4の制御例は、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9が装着されていない構成のものにも、上記ジブ9が装着された構成のものにも、同様に適用できるものである。以下、この制御を図12に示すフローチャートに基づいて説明すると、以下の通りである。
図12のフローチャートにおいて、制御の開始後、先ず、上記ブーム撓み抑制手段10が準備作業中であるかどうかを判断するために、先ずステップS1においては上記テンションロープ14の接続状態を判断し、さらにステップS2において上記テンションウィンチ15がドラムロック状態であるか否かが判断される。これらの判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同じである。
即ち、ステップS1において上記テンションロープ14は接続されていないと判断された場合には、そのまま制御をリターンさせる。また、ステップS2において、上記テンションウィンチ15は「ドラムロック状態」であると判断された場合は、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合にも何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS2において、現在、上記テンションウィンチ15は「非ドラムロック状態」であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」であると判断された場合は、次にステップS3へ移行し、ここで上記伸縮ブーム3が伸縮操作されているか否かが判断される。この判断の理由も、上記第1の制御例の場合と同じである。
そして、ステップS3において、現在、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されていると判断された場合には、上記テンションウィンチ15が低圧で巻込み作動しているため、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に付設された上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS3において、現在、上記伸縮ブーム3は伸縮操作されていないと判断された場合には、次に、ステップS4へ移行する。このステップS4では、上記伸縮ブーム3の現在のブーム長さと該伸縮ブーム3に掛かるブーム負荷を読み込む。
次に、ステップS5において、上記伸縮ブーム3の現在の「ブーム長さ」と予め設定した「所定値」とが比較判断される。このステップS5での比較判断の理由及び上記「所定値」の意義も、第1の制御例の場合と同じである。
そして、ステップS5において、現在の「ブーム長さ」は「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、現在の「ブーム長さ」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなって上記テンションロープ14に過大な張力がかかり、該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合には次のステップS6へ移行する。
ステップS6においては、現在の「ブーム負荷」と予め設定した「所定値」との比較判断が行なわれる。このステップS6での比較判断の理由は、例え上記テンションウィンチ15が「非ドラムロック状態」であって、上記伸縮ブーム3が伸縮作動していない状態であり、さらに上記伸縮ブーム3のブーム長さが「所定値」以上であっても、上記伸縮ブーム3に掛かるブーム負荷が小さければ、上記テンションロープ14のロープ張力が過大となって該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、現在の「ブーム負荷」を上記「所定値」と比較したものである。従って、上記「所定値」は、上記ウィンチブレーキ15cの最大ブレーキ力に対応するロープ張力を発生するときのブーム負荷よりも小さい負荷値に設定される。
ステップS6において、現在の「ブーム負荷」は上記「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りを終了させる(ステップS7)。この上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りの終了に伴って、上記ウィンチブレーキ15cがON作動し所定のブレーキ力を発生するが、上記テンションロープ14のロープ張力が上記ブレーキ力を上回ることはないため、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということもなく、その保護が図られる。
これに対して、現在の「ブーム負荷」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合には、上記テンションウィンチ15の自動低圧巻取りを開始させる(ステップS8)。このテンションウィンチ15の自動低圧巻取りの開始に伴って上記ウィンチブレーキ15cがOFF作動し、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15から引き出される場合、何等の抵抗を生じることなく該テンションロープ14の上記テンションウィンチ15から引き出しが許容され、該テンションロープ14のロープ張力は、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された最高圧力に対応する張力を上回ることがなく、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
尚、この実施形態では、上記ステップS6〜ステップS8が、特許請求の範囲中の「ブレーキ保護手段X」に該当する。
第5の制御例
第5の制御例は、請求項1、請求項3及び請求項6の構成に対応するものであって、上記ブーム撓み抑制装置10の張出準備作業中において、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に備えられた上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して引き出されるのを、上記テンションウィンチ15をドラムロックすることで規制し、これによって該ウィンチブレーキ15cの損傷の発生を防止するものである。尚、この第5の制御例では、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9が装着された構成のものを例にとって説明する。以下、この制御を図13に示すフローチャートに基づいて説明すると、以下の通りである。
図13のフローチャートにおいて、制御の開始後、先ず、ブーム起伏角の更新の有無を判断するためのフラグF1とジブチルト角の更新の有無を判断するためのフラグF2を、共に「0」に設定する(ステップS1)。次に、上記ブーム撓み抑制手段10が「準備作業中」であるかどうかを判断するために、先ずステップS2においては上記テンションロープ14の接続状態を判断し、さらにステップS4において上記テンションウィンチ15がドラムロック状態であるか否かが判断される。
即ち、ステップS2において、上記テンションロープ14は接続されていないと判断された場合には、上記フラグF1及びフラグF2をそれぞれ「0」に設定した後(初回は「F1=0、F2=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS3)。
一方、ステップS2において、上記テンションロープ14は接続されていると判断された場合には、次にステップS4において、上記テンションウィンチ15が上記ドラムロック機構20によってドラムロック状態とされているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS4において、上記テンションウィンチ15は「ドラムロック状態」であると判断された場合は、上記テンションロープ14が上記テンションウィンチ15に付設された上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグF1及びフラグF2をそれぞれ「0」に設定した後(初回は「F1=0、F2=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS5)。
これに対して、ステップS4において、現在、上記テンションウィンチ15は「非ドラムロック状態」であって上記ブーム撓み抑制装置10の「準備作業中」であると判断された場合は、次にステップS6へ移行する。このステップS6では、上記伸縮ブーム3の現在の「ブーム長さ」と予め設定した「所定値」とが比較判断される。この判断を行う理由、及び上記「所定値」の意義は、上記第1の制御例の場合と同様である。なお、上記ステップS6における判断は必須ではなく、例えば、他の実施形態においてはこれを省略することもできる。
そして、ステップS6において、現在の「ブーム長さ」は「所定値」より小さいと判断された場合には、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグF1及びフラグF2をそれぞれ「0」に設定した後(初回は「F1=0、F2=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS7)。
これに対して、現在の「ブーム長さ」が上記「所定値」より大きいと判断された場合には、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなって上記テンションロープ14に過大な張力がかかり、該テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるという事態が発生し得るため、この場合にはステップS8へ移行する。
ステップS8においては、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されているか否かが判断される。この判断を行う理由は、上記第1の制御例の場合と同様である。
そして、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3が伸縮操作されていると判断された場合には、上記テンションウィンチ15が低圧で巻込み作動しているため、上記テンションロープ14が上記ウィンチブレーキ15cのブレーキ力に抗して強制的に引き出されるというような事態は発生しないと考えられるので、この場合には、上記フラグF1及びフラグF2をそれぞれ「0」に設定した後(初回は「F1=0、F2=0」であるため、これを維持)、リターンさせる(ステップS9)。
これに対して、ステップS8において、現在、上記伸縮ブーム3は伸縮操作されていないと判断された場合には、次に、ステップS10へ移行し、このステップS10では、現在フラグF1が「1」であるか否か(即ち、ブーム起伏角の更新が既になされているのか否か)が判断される。ここで、初回にはフラグF1は「0」であるため、ステップS11へ移行するが、2回目以降ではフラグF1は「1」であるため(ステップS12参照)、ステップS11及びステップS12を迂回してステップS13へ移行することになる。
ステップS11においては、上記伸縮ブーム3の伸縮作動が停止された時点における上記伸縮ブーム3の起伏角を、記憶手段(図示省略)に記憶されている上記伸縮ブーム3の起伏角(記憶角度)として更新し、さらにステップS12で上記フラグF1を「1」に設定したのち、ステップS13へ移行する。
ステップS13においては、上記伸縮ブーム3が起伏操作されたか否かが判断される。この判断は、上記伸縮ブーム3の起伏角の変化量によっては該伸縮ブーム3の自重による撓みが増加し、上記テンションロープ14のロープ張力の増加、延いては上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるためである。
ステップS13において、上記伸縮ブーム3の起伏操作がなされていないと判断された場合は、何等の制御も行なうことなく、後述のステップS18へ移行する。
これに対して、ステップS13において、上記伸縮ブーム3の起伏操作がなされたと判断されたときは、ステップS14へ移行し、ここで上記伸縮ブーム3の起伏動作が該伸縮ブーム3の自重によってクレーン車の転倒モーメントが増加する側の操作であるのか否かが判断される。
ここで、上記操作がクレーン車の転倒モーメントが減少する側の操作であるときには、上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作には結びつかないため、後述のステップS18へ移行する。
これに対して、上記操作がクレーン車の転倒モーメントが増加する側の操作であると判断された場合には、この動作が上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるため、ステップS15へ移行し、ここで起伏角の「変化量」と予め設定した「所定値」とを比較する。即ち、上記記憶角度と現在の起伏角の「差分」が上記「所定値」より大きいか否かが判断される。
そして、上記差分(即ち、起伏角の変化量)が上記「所定値」より大きいときは、ステップS16へ移行し、上記伸縮ブーム3の撓みが増加する方向、即ち、上記テンションロープ14のロープ張力が増加する方向への操作を禁止した後、ステップS18へ移行する。これにより、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
これに対して、ステップS15において、上記差分(即ち、起伏角の変化量)が上記「所定値」より小さいと判断された場合には、例え上記伸縮ブーム3の撓みが増加する方向の操作であってもこれが許容されたのち(ステップS17)、ステップS18へ移行する。
以上で、上記伸縮ブーム3の起伏動を対象とした制御が完了し、次に上記ジブ9のチルト動を対象とした制御に移行する。
即ち、ステップS13、ステップS14、ステップS16又はステップS17からステップS18に移行し、ここでは、現在フラグF2が「1」であるか否かが判断される。ここで、初回にはフラグF2は「0」であるため、ステップS19へ移行するが、2回目以降ではフラグF2は「1」であるため(ステップS20参照)、ステップS19及びステップS20を迂回してステップS21へ移行することになる。
ステップS19においては、上記伸縮ブーム3の伸縮作動が停止された時点における上記ジブ9のジブチルト角を、記憶手段(図示省略)に記憶されている上記ジブ9のジブチルト角(記憶角度)として更新し、さらにステップS20でフラグF2を「1」に設定した後、ステップS21へ移行する。
ステップS21においては、上記ジブ9がチルト操作されたか否かが判断される。この判断は、上記ジブ9のジブチルト角の変化量によっては上記伸縮ブーム3の撓みが増加し、上記テンションロープ14のロープ張力の増加、延いては上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるためである。
ステップS21において、上記ジブ9のチルト操作がなされていないと判断された場合は、何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS21において、上記ジブ9のチルト操作がなされたと判断されたときは、ステップS22へ移行し、ここでは上記操作がクレーン車の転倒モーメントが増加する側の操作であるのか否かが判断される。
ここで、上記操作がクレーン車の転倒モーメントが減少する側の操作であるときには、上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作には結びつかないため、何等の制御も行なうことなく制御をリターンさせる。
これに対して、ステップS22において、上記操作がクレーン車の転倒モーメントが増加する側の操作であると判断された場合には、この動作が上記テンションロープ14の上記ウィンチブレーキ15cからの強制的な引き出し動作に結びつく可能性があるため、ステップS23へ移行し、ここでジブチルト角の「変化量の絶対値」と予め設定した「所定値」とを比較する。即ち、上記記憶角度と現在のジブチルト角の「差分の絶対値」が上記「所定値」より大きいか否かが判断される。なお、ステップS23における対比に記憶角度と現在のジブチルト角の「差分の絶対値」を用いたのは、記憶角度と現在のジブチルト角の差分は、正の場合も負の場合もあり、これら何れであってもその変化量が過大になるとクレーン車の転倒モーメントの増加につながるため、この実施形態では単なる記憶角度と現在のジブチルト角の差分ではなく、その差分の絶対値を用いたものである。
そして、ステップS23において、上記差分の絶対値が上記「所定値」より大きいと判断されたときは、上記伸縮ブーム3の撓みが増加する方向の操作を禁止(ステップS24)した後、制御をリターンする。これにより、上記ウィンチブレーキ15cが損傷するということが未然に且つ確実に防止され、その保護が図られる。
これに対して、ステップS23において、上記差分の絶対値が上記「所定値」より小さいと判断されたときは、上記伸縮ブーム3の撓みが増加する方向の操作であってもこれを許容(ステップS25)した後、制御をリターンする。
尚、この実施形態では、上記ステップS15〜ステップS17、及びステップS23〜ステップS25が、特許請求の範囲中の「ブレーキ保護手段X」に該当する。
また、この第5の制御例は、ステップS18〜ステップS25を省略することで、上記伸縮ブーム3の先端に上記ジブ9を備えない構成のものにも適用できるものである。