JP2011174121A - ニッケル粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細で、かつ導電ペースト中の分散性に優れたニッケル粉末で、ペーストを印刷し乾燥させたときに満足すべき乾燥膜密度を有するとともに表面粗さが小さく、積層セラミックコンデンサの薄層化を可能とするニッケル粉末およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μm、300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量が1.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.0質量%以下であることを特徴とするニッケル粉末。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル粉末およびその製造方法に関する。さらに詳細には、積層セラミックコンデンサ、多層セラミック基板などの積層部品における内部電極、その他の電子回路用の厚膜導電体形成用導電ペーストに用いられるニッケル粉末およびその製造方法に関する。
ニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサ(Multi−Layer Ceramic Capacitors)、多層セラミック基板などの積層セラミックデバイスにおける内部電極、その他の電子回路の厚膜導電体形成用導電ペーストに広く用いられている。
この導電ペーストの主な用途である積層セラミックコンデンサは、電子回路に多用されている。その積層セラミックコンデンサの構造は、内部電極層と誘電体層とが交互に積み重なり、両端に外部電極が設けられた構造となっており、積層セラミックコンデンサの内部電極層の材料として、従来、銀やパラジウムなどの貴金属が用いられてきたが、現在では、低価格のニッケルへの転換が進んでいる。
一般に、積層セラミックコンデンサは、微細なニッケル粉末を含む導電ペーストを、グリーンシートなどからなる誘電体層の上にスクリーン印刷し、乾燥させ、複数層を積層して、圧着させた後、還元性雰囲気下で焼成し、所定サイズに切断し、外部電極を設けることによって製造されている。なお、導電ペーストは、微細なニッケル粉末とエチルセルロース等の樹脂とターピネオール等との有機溶剤等を混練して製造される。
ところで、電子機器においては、高性能化、小型化、高容量化、高周波化が進んでいる。このため、電子回路の設計においては、多層化、薄層化が進むとともに、異種材料による高積層化も進んでおり、上記積層セラミックコンデンサにおいても、これに対応した薄層化が進められている。よって、これを構成する誘電体層および内部電極層についても薄層化を図ることが必要となってくる。具体的に示すと、積層セラミックコンデンサの誘電体層の薄層化に伴い、焼成後の積層セラミックコンデンサの内部電極の厚みは、現在1μm程度にまで薄くなってきており、さらに厚み1μm以下のものまでも提供され始めている。
誘電体上にスクリーン印刷される内部電極の薄層化を図るためには、内部電極となるニッケル塗膜の印刷用導電ペーストに含まれるニッケル粉末の粒径を小さくする必要がある。そのため、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電ペーストに用いられるニッケル粉末として、従来は平均粒径が0.4μmの球状のニッケル粉末が用いられていたが、0.2μm以下のニッケル粉末が要求されるようになってきている。
このようなニッケル粉末の微細粒化への要求に対し、ニッケル粉末の製造は、乾式法と湿式法に大別される製造方法により行われてきている。
乾式法とは、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることにより金属ニッケル粉末を生成させる気相還元法に代表されるニッケル粉末の製造方法で、金属ハロゲン化物、すなわち、ニッケルハロゲン化物、特に塩化ニッケルの蒸気を気相中で水素還元してニッケル粉末を作製するものである。
凝集のない微細なニッケル粉を得るためには、気相での粒子間衝突による粒子成長を抑制するためにニッケルの希薄な雰囲気を採用せざるを得ないために生成速度が低下し、製造コストが増大してしまう問題、さらには生成速度を高めるために高濃度のニッケル雰囲気を採用し、下工程での分級処理にて連結粒子と粗大粒子を除去する場合、0.3μm以下の粒子の歩留まりが悪く、それゆえに製造コストが増大するという問題が生じる。
一方、液相還元法に代表される湿式法は、還元剤を含んだ水溶液にニッケルの塩を添加することによりニッケル粉末を生成するもので、乾式法に比べて凝集の少ない微細なニッケル粉が得られるが、そのためには、粒子の凝集抑制および粒子径の制御を目的に添加された分散安定剤のニッケル粒子表面への吸着による不純物品位の増加問題、あるいは凝集解消のためのせん断処理と球形化処理が必要となることによる製造コストが増大する問題がある。
さらに、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電ペーストに用いられるニッケル粉末には、導電ペーストを印刷し、乾燥させた乾燥膜において次のような特性も要求されている。
(a)乾燥膜密度が4.5g/cm以上であること
(b)表面粗さRaが0.15μm以下であること
乾燥膜密度は、積層セラミックコンデンサ製造時における電極のクラックの発生に大きな影響を与える。ニッケル粉末は、ペースト化された後、誘電体グリーンシート上に印刷され、そこで乾燥される。この際に分散性が悪い粉末もしくはペースト中でその分散性を維持できず凝集してしまうような粉末の場合には、乾燥膜中に多数の空隙が存在してしまい、その結果として、乾燥膜が厚くなる。そのため印刷面積は一定であるので、膜厚が厚い場合には、その乾燥膜の密度は低くなるということである。この低密度の乾燥膜を積層セラミックコンデンサの製造に用いた場合、その後の焼成工程において、焼結の際にニッケル粉末間の空隙を埋めるべく収縮量が大きくなり、その結果、誘電体層との収縮量の大きなミスマッチが生じ、クラック等の構造欠陥が多発してしまうという問題が生じる。したがって、乾燥膜密度は高密度であることが要求される。
内部電極表面の平坦性も重要な要素である。薄層化が進んだ積層セラミックコンデンサは、誘電体層も非常に薄くなっている。このため、導電ペーストを印刷し乾燥させた乾燥膜、すなわち内部電極表面に凹凸があると、積層セラミックコンデンサ製造時の積層工程から圧着工程において、内部電極表面の凸部がその上に積層された誘電体層を突き抜けてしまい、内部電極のショート不良が発生しやすくなる。
この内部電極表面の平坦性は、電極作製に用いる粉末が示す分散性や粒径の均一性に非常に大きく影響を受ける。分散性の悪い粉末は、凝集体を形成するために内部電極表面に凹凸が形成されやすく、平坦性が悪化する。また、粒径が均一でない粉末も、粗大粒子を含んでいるために同様に平坦性が悪化する。従って、平均粒径の小さいニッケル粉末を用いたとしても、ニッケル粉末の分散性が悪い場合、あるいは粒径が均一でない場合には、薄層化された積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極のショート不良が発生しやすくなるという問題がある。
このような積層セラミックコンデンサに使用するニッケル粉末への要求に対して、例えば、特許文献1では、粒度分布が(d10+d90)/d50で、3.0〜6.0であり、比表面積が1.0〜1.6m/gであることを特徴とするニッケル粉末が提案されている。この提案では、ニッケル粉末の焼結挙動の改善のために、ニッケル粉末の特に、CV値とタップ密度とを増加させることに注目している。
しかしながら、特許文献1の提案は、内部電極の薄層化を考慮したものではなく、平均粒径が0.5〜2.5μmと大きな粒径のニッケル粉末に適用されており、内部電極薄層化に対応した内部電極導電ペースト用として求められている0.3μm以下の微細なニッケル粉末に対応したものではない。
さらに、特許文献2では、嵩密度が1.7〜3.5g/cmであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定による平均粒子径(D50値)の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径(D50値)の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であるニッケル粉が提案されている。
この提案によれば、ビヒクル中への分散性に優れ、導電ペースト中の充填率が高く、さらには粒度分布特性に優れており、絶縁破壊の起こりにくい特性を有しているとされている。
しかしながら、特許文献2に開示されるニッケル粉では、ニッケル粉の粒度分布について注目したものであり、導電ペースト中での分散性に大きく影響すると考えられるニッケル粉の表面性状が考慮されたものではない。また、適用される粒径も平均粒径で0.2〜0.6μmとやや大きく、ニッケル粉の表面性状がさらに大きく影響する0.3μm以下の微細なニッケル粉末では、必ずしも分散性が十分に得られるとは言えるものではない。
特開2005−248198公報 特開2001−266653公報
このような状況の中、本発明は、微細で、かつ分散性に優れたニッケル粉末およびその製造方法を提供することを目的するもので、具体的には、導電ペースト中での分散性に優れたニッケル粉末で、ペーストを印刷し乾燥させたときに満足すべき乾燥膜密度を有するとともに表面粗さが小さく、積層セラミックコンデンサの薄層化を可能とするニッケル粉末およびその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み、導電ペースト中での微細ニッケル粉末の分散性について鋭意研究したところ、導電ペースト中での分散性および導電ペーストの乾燥膜における乾燥膜密度には、ニッケル粉末に含有される水分が大きく影響していること見出し、そこで、ニッケル粉を特定の温度で真空乾燥させることで、粒子同士の凝集を抑制しながら分散性および乾燥膜密度が改善可能な水分含有率とすることができることを発見し、本発明に至ったものである。
すなわち、酸素および水分含有量の調整は、粉末生成後に真空下での熱乾燥することによって、酸素および水分を除去する方法は、真空下で行われるために大気と接触することなく熱乾燥されることで、粉末に吸着している水分の除去が効率的に行われると共に、加熱により水酸化ニッケルの自己分解を行わせる事ができる。
本発明の第一の発明は、SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μm、水分含有量が300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量換算で1.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.0質量%以下であるニッケル粉末である。
本発明の第二の発明は、SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μm、水分含有量が300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量換算で1.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.0質量%以下のニッケル粉末、エチルセルロース、およびターピネオールからなる導電ペーストを、塗布し、乾燥させて形成した乾燥膜の乾燥膜密度が4.5g/cm以上で、さらに乾燥膜の算術平均表面粗さRaが、0.10μm以下のニッケル粉末である。
本発明の第三の発明は、SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μmのニッケル粒子を、真空下で130〜300℃の温度範囲で熱乾燥して請求項1から3のいずれかに記載のニッケル粉末を生成するニッケル粉末の製造方法で、さらにニッケル粒子は、パラジウムを含有する複合コロイド溶液、還元剤およびアルカリ性物質とからなるアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して生成させたニッケル粒子であることを特徴とするものである。
本発明のニッケル粉末は、微細で、かつ分散性に優れたものであり、導電ペーストに用いた場合に、高い乾燥膜密度を有し、小さい表面粗さで示される平坦な膜表面を実現することができる。
よって、係るニッケル粉末を用いた導電ペーストによれば、積層セラミックコンデンサ製造時におけるクラックの発生を抑制し、かつ、平坦性に優れる乾燥膜を備え、薄層化した場合においても内部電極の作製不良によるショート等の障害が生じないため、高品質の内部電極を歩留まりよく作製することができ、さらに、本発明の製造方法は、容易で量産性に優れたものであり、工業的に顕著な効果を奏するものである。
積層セラミックコンデンサ(以下、MLCCと称することがある)の薄層化に対応したニッケル粉末、すなわち、粒径が小さいニッケル粉末は、その比表面積が増大するため、粒径が大きいニッケル粉末と比較して水分が吸着しやすく、また酸素との反応性が増加する傾向にある。したがって、湿式還元反応と呼ばれる還元剤を含んだ水溶液にニッケルの塩を添加することにより粒径の小さいニッケル粉末を製造する湿式還元法を用いたニッケル粉末の製造方法では、水溶液中の溶存酸素とニッケルが反応し、ニッケル粉末に含まれる酸素量が増加する。さらに、ニッケル粉末生成後にも、大気との接触により大気中の水分が吸着し、水分含有量が増加する傾向にある。
このようなニッケル粉末に含有される酸素量の増大、および水分含有量の増加は、以下に示す問題を生じさせる。
(1)乾燥膜密度の低下
ニッケル粉末に含有される酸素は、水酸化ニッケルもしくは酸化ニッケル形態で存在していると考えられるが、水酸化ニッケルおよび酸化ニッケルの密度は、それぞれ4.2g/cm、6.7g/cmであり、金属ニッケルの密度8.9g/cmと比較して非常に小さい。したがって、酸素含有量が多いということは、水酸化ニッケルおよび酸化ニッケルが多く存在し、これらの密度を勘案すると、個々の粒子の密度が小さくなることを示している。
このような密度が小さいニッケル粉末をペースト化し、分散、乾燥して乾燥膜を形成しても、酸素含有量が少ないニッケル粉末を用いた場合と比較して、乾燥膜の密度は低下してしまう。この低密度の乾燥膜は、積層セラミックコンデンサの製造の焼成工程において、焼結の際に収縮量が大きくなり、誘電体層との収縮量の大きなミスマッチが起こり、クラック、デラミネーション等の構造欠陥を生じる要因となる。
(2)乾燥膜の粗化
例えば、カールフィッシャー水分量が1.8質量%のニッケル粉末を、窒素気流中において熱重量−示差熱分析装置(TG−DTA)により重量変化を測定した場合、100℃程度から重量減少が確認されている。この重量減少は、主に吸着水分の蒸発によるものと考えられるが、これら温度域での水分の蒸発は、導電ペーストを乾燥させる温度域と一致するため、乾燥膜中に穴を形成させ、その結果として粗な膜が形成され乾燥膜密度が低下する原因となる。また、粗な膜が形成されることにより、膜の表面粗さも悪化してしまい、内部電極表面の凸部が、誘電体層を突き抜け易くなり、内部電極のショート不良の発生を招き易くなる。
(3)クラック等の発生
MLCCの製造における焼成工程は、還元雰囲気中で行われる。このため、酸素含有量および水分含有量の多いニッケル粉末は、加熱による吸着水分の蒸発、さらに含有される酸素と還元雰囲気中の水素ガスとの結合による水の生成、蒸発という変化が生じ、大量のガスが発生することになる。このガスの発生は、TG−DTA測定結果から、100〜600℃程度と非常に広い温度域で確認される。この発生したガス成分は、製造工程中のコンデンサ内部に内圧を生じさせ、その結果、クラック等の発生原因となる。
(4)ペースト中の分散性の悪化
水分含有量が多いニッケル粉末は、ペースト中で分散性が悪化する傾向にある。この理由については、詳細は不明であるが次のように考えられる。
まず、ニッケル粉末の吸着水は、粉末表面に存在していると考える。通常、ペーストの作製には、適度な乾燥性とペースト化した際の粘度を考慮してターピネオール等の比較的高分子な有機溶剤と粘度調整溶剤として石油系炭化水素溶剤が溶剤成分に用いられる。このターピネオールおよび石油系炭化水素溶剤は、沸点が180℃前後のものを用いるが、このような溶剤は、水との相溶性をほとんど有しておらず、ペースト中に水分含有量の多いニッケル粉末を分散させようとすると、ニッケル粉末表面に存在する吸着水の影響により、溶剤と親和性が得られず、結果的に粉末同士が凝集してしまい、そのために分散性が悪化するものと考えられる。
このようにして、ペースト中でのニッケル粉末の分散性の悪化、すなわち粉末の凝集は、乾燥膜密度の低下と表面粗さの悪化を招いてしまう。
そこで、これらの問題点を解決するため、本発明のニッケル粉末は、平均粒径が0.1〜0.4μm、水分含有量として300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量(以下、水分量と称す)を用い、その水分量が1.2質量%以下であることを特徴とするものであり、さらにニッケル粉末の酸素含有量を2質量%以下とするものである。
以下に本発明の構成を要素毎に説明する。
1.平均粒径
本発明のニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.4μmであり、0.1〜0.3μmであることが好ましい。
本発明において使用する平均粒径は、その尺度として走査型電子顕微鏡観察により求める平均粒径(以下、SEM粒径と称す)、およびレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定して体積積算で50%となる粒径を求める平均粒径(以下、D50と称す)とする両者で表している。
前者のSEM粒径はニッケル粉末中の粒子、そのものの平均粒径であり、焼成特性等に影響する。一方、後者のD50は、凝集した粒子も含めた平均粒径である。
したがって、SEM粒径と比べてD50が大きい場合には、ニッケル粉末中の粒子の凝集が多く、分散性が悪いことを意味している。そのため、SEM粒径とD50のいずれもが0.1〜0.4μmの範囲にあることが必要であり、SEM粒径とD50は同程度の値であることが好ましく、D50とSEM粒径の比(D50/SEM粒径)は3以下、望ましくは2以下であると良い。
両方の平均粒径が0.4μmを超えると、薄層化したMLCCの内部電極中では厚み方向に存在するニッケル粒子数が少なくなり、電極の途切れ等が発生するため、電極の薄層化に対応することができない。さらなる電極の薄層化に対応するためには、平均粒径は0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。一方、平均粒径が0.1μm未満になると、酸素含有量および水分含有量がより増加するため、酸素含有および水分含有による上記問題が生じ易くなり、積層セラミックコンデンサ材料には適さなくなるためである。
2.水分含有量
(300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量:水分量)
本発明では、ニッケル粉末の水分含有量を「300℃におけるカールフィッシャー水分測定」によって測定された水分量を以って定義する。この「300℃におけるカールフィッシャー水分測定」による水分量(以下、カールフィッシャー水分量と称す)は1.2質量%以下が望ましい。
このカールフィッシャー水分量は、ニッケル粉末からの吸着水と呼ばれる水分と、水酸化ニッケルが自己分解して生成したものであると考えられる。このカールフィッシャー水分量が1.2質量%を超えると、ペースト乾燥中の水分の蒸発が多くなり高い乾燥膜密度を得にくくなり、MLCC製造における焼成工程でのガス発生が多くなり、クラックの発生原因となる。さらに、ペースト中でのニッケル粉末の分散性が低下するために、乾燥膜の表面粗さも悪化する。
このような問題の発生を抑えるためにも、カールフィッシャー水分量は1.0質量%以下とすることがより好ましい。なお、カールフィッシャー水分量は少ないほど好ましいが、大気中からのニッケル粉末表面への水分への吸着もあり、少なくとも0.05質量%程度の水分が含有されていると思われる。
3.酸素含有量
本発明のニッケル粉末の酸素含有量は、2.0質量%以下が望ましい。
酸素含有量が2質量%を超えると、ニッケル粉末に含まれる水酸化ニッケルもしくは酸化ニッケルの割合が高くなり、高い乾燥膜密度、例えば、4.5g/cm以上の乾燥膜密度を得ることができない。ニッケル粉末の酸素含有量は、当然、少ないほどより高い乾燥膜密度を得ることができるが、酸素含有量が過度に少ないと、ニッケル粉末が大気と接触した際に大気中の酸素との酸化が生じ、発熱、すなわち、燃焼するという状態が生じやすくなる。したがって、実際の製造工程中での操作性などを考慮すると、酸素含有量は0.5〜2質量%とすることが好ましく、0.5〜1.8質量%とすることがより好ましい。
さらに、本発明のニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサ用としてより好適なものとするために、以下の要素に適合することが好ましい。
4.乾燥膜密度
本発明のニッケル粉末と、エチルセルロースおよびターピネオールなどの溶剤からなる導電ペーストを、塗布し、乾燥させて得られる乾燥膜において、下記数1によって求められる乾燥膜密度が4.5g/cm以上であることが望ましい。
Figure 2011174121
乾燥膜密度が4.5g/cm未満であると、焼結の際の収縮量が大きくなり、誘電体層との収縮量の大きなミスマッチが生じて、クラック、デラミネーション等の構造欠陥が生じやすくなる。ここで、乾燥膜密度の最大値としては、本発明のニッケル粉末を用いたペーストの場合、6g/cm程度である。
本発明のニッケル粉末の乾燥膜密度の算出方法の一例を以下に示す。
エチルセルロース(15重量部)をターピネオール(80重量部)に投入し撹拌しながら加熱してエチルセルロースの溶け込んだターピネオール溶液を作製する。続いて、この溶液18重量部と、本発明のニッケル粉末54重量部と、ターピネオール28重量部とを、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを作製する。さらにPETフィルム上に200μmの厚みでニッケルペーストを塗布し、120℃で1時間乾燥させる。この乾燥膜をPETフィルムから剥離し、適当な大きさに切り出して、その膜の重量および体積を測定する。測定された重量および体積から数1を用いて乾燥膜密度を算出する。
なお、ここに記載した各構成成分の組成割合は適宜選択できるものである。
5.表面粗さ(Ra)
乾燥膜の表面粗さ(Ra)は0.15μm以下、好ましくは0.10μm以下である。
乾燥膜の表面粗さ(Ra)が0.15μmを越えると、内部電極表面に粗大な凸部が存在し、該凸部が、誘電体層を突き抜けてしまい、内部電極のショート不良が発生しやすくなる。なお、本発明において表面粗さは、JIS B0601−1994に規定される算術平均表面粗さRaを用いている。
以下、本発明のニッケル粉末の製造方法について説明する。
本発明のニッケル粉末の作製は、先ず、平均粒径0.1〜0.4μmのニッケル粉末を、湿式還元法であるニッケル塩水溶液中の還元反応で作製することが望ましく、このニッケル粉末を溶液から固液分離し、真空下で加熱、乾燥することを特徴とするものである。
ここで、真空下での加熱、乾燥は、加熱温度を130〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。ここで、加熱温度が130℃未満であると、ニッケルの表面吸着水、酸化物、表面水酸化物等の除去が十分に進行せず、上記効果を得ることができる水分量および酸素含有量とすることができない。一方、加熱温度が300℃より高い場合、ニッケル粉末中の粒子同士の焼結が生じて、粉末の分散性が低下して乾燥膜の粗化が生じる。
一方、真空下での加熱、乾燥が、大気雰囲気下で行われると、大気中の水分や酸素とニッケル粉末が再結合し、酸素や水分が大幅に増加してしまう。他方、還元雰囲気中で乾燥を行なった場合には、ニッケル粉末の酸素含有量が過度に少なくなり、ニッケル粉末が大気と接触した際に大気中の酸素との急激な酸化が生じやすくなることから好ましくない。
また、水分、酸素、不純物を極力排除し、水分や酸素との再結合を抑制した高純度不活性雰囲気、例えば6N以上のArガスを用いることもでき、真空下および不活性雰囲気下での雰囲気中の水分量は100ppm以下、酸素量は100ppm以下であることが望ましい。
次に、本発明のような平均粒径が、0.1〜0.4μmの微細な粒径を有し、かつ粒度分布が狭い分散性に優れたニッケル粉末を、本発明ではパラジウムを含有する複合コロイド溶液の還元助剤、還元剤、およびアルカリ性物質とからなるアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して生成させている。
このように、ニッケル塩水溶液からニッケルを還元析出するに際して、ニッケルの還元析出の核となり、かつニッケル粒子の核成長を促進する還元助剤のパラジウムを含有する複合コロイド溶液を用いることにより、微細粒かつ分散性に優れたニッケル粉末が生成されるものである。
本発明で用いるアルカリ性コロイド溶液の作製方法、すなわち、アルカリ性の還元剤溶液中にパラジウムを含有する複合コロイド溶液を分散させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、パラジウムを含有する複合コロイド溶液とアルカリ性の還元剤溶液を個別に作製し、これらの溶液を混合する方法、およびパラジウムを含有する複合コロイド溶液を作製した後にアルカリ性物質と還元剤を加える方法などを使用して作製することができる。
またニッケル塩水溶液も、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケルおよび硫酸ニッケル等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液を用いることができる。これらの水溶液の中では、特に廃液処理が簡易にできる塩化ニッケル水溶液が好ましく、その場合のニッケル塩水溶液に含まれるニッケルの量は、50〜200g/Lが望ましい。
次に、パラジウムを含有する複合コロイド溶液は、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液であることが好ましい。そのパラジウム量は、後にニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して質量比で1〜500質量ppmとすること好ましい。なお、パラジウム量が1質量ppm未満では、核となるコロイド粒子の数が少なくなり、得られるニッケル粒子の粒経が大きくなってしまう。一方、パラジウム量を500質量ppmよりも多くしても、得られるニッケル粒子の微細化に対する更なる効果がほとんど見られない。
パラジウムと複合コロイド粒子を構成する銀量は、ニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して0.01〜5質量ppmとすることが好ましい。またパラジウムと銀を複合させてコロイド粒子とした場合、銀は少量でニッケル粒子の粗大粒子および連結粒子の生成を抑制する効果を発揮する。これは、銀が入ることによってパラジウムが微細化し、核として作用するコロイド粒子の数が増加するためであると考えられる。銀量が0.01質量ppm未満では、上記効果がほとんど得られず、5質量ppmより多くしても、得られるニッケル粒子の微細化に対する、さらなる効果がほとんど見られないためである。
本発明の複合コロイド溶液の作製方法は、まずパラジウム塩水溶液と銀塩水溶液を上記範囲内の所定量を混合、作製した混合溶液を、次に好ましくはゼラチン等の保護コロイド剤を含む、例えばヒドラジン、ヒドラジン水和物等の水溶性ヒドラジン化合物を用いたヒドラジン水溶液等の還元剤溶液中に滴下することにより作製することができる。また、用いるパラジウム塩水溶液は、特に限定されるものではなく、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウムまたは硫酸パラジウムおよびアンミンパラジウム錯体等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液をパラジウム塩水溶液として用いることができるが、この中では、液調整が容易なアンミンパラジウム錯体水溶液が好ましい。また銀塩水溶液としては、例えば、アンミン銀錯体水溶液を用いることができる。
上記のように、複合コロイド溶液を作製する際には、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子をより分散させるため、保護コロイド剤を用いることが好ましい。この保護コロイド剤としては、パラジウムと銀からなる複合コロイド粒子を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与するものであれば良く、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールを用いることもできる。
具体的には、保護コロイド剤を予め含む溶液に、パラジウムおよび銀を混合して複合コロイド粒子として分散させる。なお、ゼラチン等の保護コロイド剤の添加量は、ニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して10〜5000質量ppmとすることが好ましい。ゼラチン等の保護コロイド剤の添加量が10質量ppm未満であると、保護コロイドの形成が不十分となり、コロイド粒子が凝集してしまうことがあり、還元したニッケル粉中に粗大粒子や連結粒子が発生してしまうおそれがある。また、添加量が5000質量ppmよりも多くなると、保護コロイドが多くなりすぎ、未還元のニッケル塩が残留してしまうおそれがある。
ここで使用する還元剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素ナトリウム等から選ばれる少なくとも1種類の還元剤を含むものであれば良い。これらの還元剤の中では、特に成分に不純物がすくない点で、ヒドラジン(N2)が好ましく、特に安全性の点から、水加ヒドラジンが好ましい。その還元剤濃度は、320〜380g/Lが望ましい。このヒドラジン、ヒドラジン水和物等の水溶性ヒドラジン化合物を用いてヒドラジン水溶液を作製することができる。
また、アルカリ性物質も、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶性アルカリ性物質を用いることができる。
本発明においては、これら水溶性アルカリ性物質と、ヒドラジン、ヒドラジン水和物等の水溶性ヒドラジン化合物を純水中で混合して、アルカリ性のヒドラジン水溶液として用いることができる。なお、アルカリ性のヒドラジン水溶液としては、特にpHが10以上に調整された水酸化ナトリウムとヒドラジン水和物の混合水溶液が好ましい。pHが10未満では、反応速度が遅くなるため、ニッケルの還元析出が起こりにくくなるからである。
さらに、ニッケル粉末の焼結性をコントロールするために、反応時にクロムやマグネシウム、イットリウムの塩等の添加物を添加しても良い。これらの添加物は水溶性であるものが望ましい。これら塩は、ニッケル粒子生成反応時において、ニッケル塩水溶液と同時にアルカリ性コロイド溶液に添加してもよいし、アルカリ性コロイド溶液に添加するニッケル塩水溶液に予め添加してもよい。
たとえばクロム塩は、硝酸クロム、硫酸クロム、硫化クロム、酸化クロムを用いることもできるが、特に塩化クロムが好適である。マグネシウム塩は、例えば硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、酸化マグネシウムを用いることもできるが、特に塩化マグネシウムが好適である。
さらに、析出後のニッケル粒子に、焼結性をコントロールするために、硫化物による湿式処理により粒子表層に硫黄を含んでも良い。
硫化物による湿式処理では、通常、水溶液を用い、硫化物には、硫化水素ナトリウム、硫化水素アンモニウム、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等を用いる。例えば、ニッケル粉末を硫化物の溶液により湿式処理する方法としては、純水にニッケル粉末を混合、攪拌しながら、硫化物の溶液を添加した後に、固液分離し、乾燥する方法が好ましい。
ニッケル粉末を溶液から固液分離、あるいは硫化物による湿式処理後に行われる固液分離の方法は、特に限定されるものではなく、通常に行われる固液分離の方法が用いられ、例えば、遠心機やフィルタープレスを用いて行われる。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
乾燥膜密度、水分含有量、乾燥膜密度および乾燥膜表面粗さについて、ニッケル粉末の評価を以下のようにして行なった。
(乾燥膜密度)
乾燥膜密度は、まず、エチルセルロース(15重量部)をターピネオール(80重量部)に投入し撹拌しながら80℃に加熱してエチルセルロースの溶け込んだターピネオール溶液を作製した。続いて、この溶液18重量部と、本発明のニッケル粉末54重量部と、ターピネオール28重量部とを、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを作製した。
次に、厚み100μmのPETフィルム上に200μmの厚みで導電ペーストをアプリケーターにより10cm角のサイズに塗布し、真空中、120℃で1時間乾燥した。この乾燥膜をPETフィルムから剥がし、さらに1.5cm角に切り出し、その切り出した膜の重量[g]および膜厚[cm]を測定し、数1の計算式を用いて、測定された重量および膜厚から乾燥膜密度[g/cm]を算出し、4.5g/cm以上のものを合格とした。
(水分含有量)
水分含有量は、300℃におけるカールフィッシャー水分測定によるカールフィッシャー水分量、すなわち非酸化性ガス雰囲気下で試料を300℃にて処理をし、気化したガスからカールフィッシャー滴定により分析したものである。
(酸素含有量)
酸素含有量は、赤外線吸収法を用いて分析した。
(平均粒径)
SEM粒径は、ニッケル粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL社製、走査型電子顕微鏡JSM−5510)を用いて観察し、倍率10000倍のSEM観察写真20視野について、画像処理ソフト(マウンテック社製 MAC−VIEW)にて10000個の粒子の直径を測定し、その個数平均値を求め、SEM粒径とした。なお、粒子の直径は、粒子外周の任意の2点間で最大となる距離とした。
また、D50は、得られたニッケル粉末にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求めるレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、HRA 9320−X100)で測定して、体積積算で50%となる粒径を平均粒径とした。
(表面粗さRa)
導電ペーストを2.54cm(1インチ)角のパイレックスガラス上にスクリーン印刷し、真空中、120℃で1時間乾燥させることにより、10mm角、膜厚1μmの乾燥膜を作製した。作製した乾燥膜の表面粗さRa(算術平均表面粗さ)をJIS B0601−1994の規格に基づいて測定した。本発明における表面粗さRaは、JIS B0601−1994に規定される算術平均表面粗さ(Ra)であり、その値が0.10μm以下であるものを合格とした。
パラジウム(Pd)と微量の銀(Ag)からなる複合コロイド溶液に、保護コロイド剤であるゼラチンとアルカリ性物質とヒドラジンとを混合し、ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液を作製した。
ニッケルを還元するためのアルカリ性コロイド溶液は、具体的には次のように作製した。まず、ニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して250質量ppmのゼラチンを6Lの純水に溶解させた後、0.02g/Lの濃度となるようにヒドラジンを添加して反応液を作製した。次に、ニッケル塩水溶液として添加されるニッケルの量に対して250質量ppmのパラジウムと、2.5質量ppmの銀を含有するアンミンパラジウム錯体とアンミン銀錯体の混合溶液を作製し、ゼラチンと還元剤であるヒドラジンを含む反応液6Lに混合溶液0.1Lを滴下して、コロイド溶液を作製した。
このコロイド溶液に、pH10以上になるようにアルカリ性物質である水酸化ナトリウムを適量加え、さらにヒドラジンの濃度が26g/Lとなるまでヒドラジン0.2Lを加え、パラジウムと微量の銀からなるコロイドが混合されたアルカリ性コロイド溶液を作製した。
なお、溶液中のパラジウムおよび銀のニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対する添加量は、ICP発光分光分析法より計測して確認した。これらの添加量を表1にそれぞれ示す。
Figure 2011174121
ニッケル粉末の作製は、塩化ニッケルを予め溶解させたニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液を、上記アルカリ性コロイド溶液約6.3Lに、0.5L滴下してニッケルの還元を行い、ニッケル粒子を生成させた。この生成したニッケル粒子を固液分離した後、真空中で150℃に加熱、保持しながら12時間乾燥させ、所望のニッケル粉末を作製した。
この得られたニッケル粉末について、平均粒径(SEM、D50)、水分量、乾燥膜密度および乾燥膜表面粗さを評価した。得られた結果を表2にまとめて示す。
真空中での加熱による乾燥の温度を200℃とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を得るとともに評価した。パラジウムおよび銀の添加量は、表1にそれぞれ示す。また、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を150質量ppm、銀添加量を1.5質量ppm、ゼラチン添加量を150質量ppmとし、真空中での加熱による乾燥の温度を200℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。パラジウムおよび銀の添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を450質量ppm、銀添加量を4.0質量ppm、ゼラチン添加量を450質量ppmとしたこと、乾燥温度を200℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を得るとともに評価した。パラジウムおよび銀の添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を300質量ppm、銀添加量を3.0質量ppm、ゼラチン添加量を300質量ppmとしたこと、ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対して0.5質量%のクロムを塩化ニッケル水溶液に溶解させて添加したこと、乾燥温度を200℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。なお、溶液中のクロムの添加量は、ICP発光分光分析法より計測して確認した。パラジウム、銀およびクロム(Cr)の添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を300質量ppm、銀添加量を3.0質量ppm、ゼラチン添加量を300質量ppmとしたこと、ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対して0.5質量%のクロムを塩化ニッケル水溶液に溶解させて添加したこと、乾燥温度を250℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。なお、溶液中のクロムの添加量は、ICP発光分光分析法より計測して確認した。パラジウム、銀およびクロムの添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
(比較例1)
乾燥温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。パラジウムおよび銀の添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
(比較例2)
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を300質量ppm、銀添加量を3.0質量ppm、ゼラチン添加量を300質量ppmとしたこと、ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対して0.5質量%のクロムを塩化ニッケル水溶液に溶解させて添加したこと、乾燥温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。なお、溶液中のクロムの添加量は、ICP発光分光分析法より計測して確認した。パラジウム、銀およびクロムの添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
(比較例3)
ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対するパラジウム添加量を300質量ppm、銀添加量を3.0質量ppm、ゼラチン添加量を300質量ppmとしたこと、ニッケル塩水溶液中のニッケルの量に対して0.5質量%のクロムを塩化ニッケル水溶液に溶解させて添加したこと、乾燥温度を400℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を作製した。なお、溶液中のクロムの添加量は、ICP発光分光分析法より計測して確認した。パラジウム、銀およびクロムの添加量を表1に、得られたニッケル粉末の評価結果を表2にまとめて示す。
Figure 2011174121
表1、表2から明らかなように、実施例1〜6は、乾燥膜密度が4.5g/cm以上であり、かつ乾燥膜の表面粗さRaも0.10μm以下となっており、積層セラミックコンデンサ用のニッケル粉末として好適であることがわかる。
一方、比較例1および比較例2は、乾燥温度が低く水分量が1.2質量%を超えているため、乾燥膜密度が小さくなっていることから、積層セラミックコンデンサ用のニッケル粉末として好ましくないことがわかる。さらに、比較例3では、乾燥温度が高くD50が0.4μmを超えているため、乾燥膜密度がさらに小さく、乾燥膜の表面粗さも極端に大きくなっていることから、積層セラミックコンデンサ用のニッケル粉末として適合しないことがわかる。これは、D50/SEM粒径が3.4と大きく、ニッケル粉末が凝集しているためと考えられる。

Claims (5)

  1. SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μm、水分含有量が300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量換算で1.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.0質量%以下であることを特徴とするニッケル粉末。
  2. SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μm、水分含有量が300℃におけるカールフィッシャー水分測定による水分量換算で1.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.0質量%以下のニッケル粉末、エチルセルロース、およびターピネオールからなる導電ペーストを、塗布し、乾燥させて形成した乾燥膜の乾燥膜密度が4.5g/cm以上であることを特徴とするニッケル粉末。
  3. 前記乾燥膜の算術平均表面粗さRaが、0.15μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル粉末。
  4. SEM粒径およびD50で表す平均粒径が0.1〜0.4μmのニッケル粒子を、真空下で130〜300℃の温度範囲で熱乾燥して請求項1から3のいずれかに記載のニッケル粉末を生成することを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記ニッケル粒子が、パラジウムを含有する複合コロイド溶液、還元剤およびアルカリ性物質とからなるアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩水溶液を添加して生成させたニッケル粒子であることを特徴とする請求項4に記載のニッケル粉末の製造方法。
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