JP2011138119A - 光学用フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】成形加工が容易で、加工時のフィルム欠陥が少なく、優れた透明性を有する光学用フィルムを提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系樹脂と、脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含む光学用フィルムであって、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対して滑剤を0.001重量部以上、1重量部以下含有することで、特に製膜時に発生する凹凸欠陥が少なく、成形加工の容易な光学特性に優れた光学用フィルムを得ることができる。
【選択図】なし
【解決手段】ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系樹脂と、脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含む光学用フィルムであって、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対して滑剤を0.001重量部以上、1重量部以下含有することで、特に製膜時に発生する凹凸欠陥が少なく、成形加工の容易な光学特性に優れた光学用フィルムを得ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、光学用フィルムに関するものであり、特に、フィルム成形時における金属ロールとの密着性に起因するフィルム外観欠点の少ない、優れた透明性を有する光学用フィルムに関する。
近年、電子機器はますます小型化し、ノートパソコン、携帯電話、携帯情報端末に代表されるように、軽量・コンパクトという特徴を生かした液晶表示装置が多く用いられるようになってきている。これら液晶表示装置は、偏光フィルムに始まり、その表示品位を保つ為に各種フィルムが用いられている。又、携帯情報端末や携帯電話向けに液晶表示装置を更に軽量化する目的で、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムを用いたプラスチック液晶表示装置も実用化されている。
液晶表示装置のように偏光を取り扱う場合、用いる樹脂フィルムは光学的に透明である事の他に、光学的に均質である事、着色や変色が少ない事、点状或いはスジ状等の外観欠陥が少ない事が求められる。又、ガラス基板を樹脂フィルムに代えたプラスチック液晶表示装置用のフィルム基板の場合等のように、複屈折と厚みの積で表される位相差が小さい事が要求されることもある。更に、外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくい事が要求されることもある。
また、液晶表示装置と同様に、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種撮影装置、CDやDVD等の光ピックアップ装置、プロジェクター等のOA機器等に使用される従来ガラスが用いられていたレンズも、軽量化を目的とした樹脂への置き換えが進んでいる。このようなプラスチックレンズは、温度や湿気等の使用環境による歪みによる焦点距離のズレの発生や射出成形等の加工時の応力発生等による位相差の影響を受けやすいため、外部応力により位相差が変化しにくい事がフィルムと同様に要求されている。これらを満足させる樹脂組成物として従来からのトリアセチルセルロースに代わり、透明性および耐熱性の高い(メタ)アクリル系樹脂の使用が検討されている。
熱可塑性樹脂を成形加工、特に溶融状態を経る射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形等より、シート、フィルム、レンズなどの各種形態(以下、フィルムも含め、単に成形体と言うことがある)へ成形加工する場合、これらの成形機における運転の安定性が得られる成形体の特性に対して重要である。
ところで、近年、外観欠点の少ない光学フィルムとして、(メタ)アクリル系樹脂が知られており、特許文献1には、(メタ)アクリル系樹脂とある特定の滑剤からなる光学フィルムはフィルム表面の平滑性に優れることが記載されている。また、(メタ)アクリル系樹脂を溶融製膜する工程において、フィルム表面の滑り性を改善するために、(メタ)アクリル系樹脂に金属塩である滑剤を添加する方法が知られている(特許文献2)。また、特許文献3には、フェニルマレイミド・オレフィン系共重合体と脂肪酸アミド系滑剤及び/又は金属石鹸系滑剤からなる負の複屈折性を示す透明樹脂組成物が記載されている。
ところで、(メタ)アクリル系樹脂を溶融押出により光学用フィルムへ成形する際、高温で製膜すると樹脂が熱分解してTダイリップなどに分解物が付着することでダイラインが生じたり、樹脂の分解物が凸欠陥と呼ばれる樹脂由来異物となるケースがあり、表面の平滑性や異物の観点から低温で製膜することが好ましい。なお、低温で製膜するには樹脂の溶融粘度を下げることが好ましいが、通常樹脂粘度を下げるためには樹脂を低分子量化することが有効であるが、得られるフィルムの強度に問題があった。低分子量化ではなく添加剤により粘度を低下させ、製膜温度を低下させて、表面の平滑性が良好で樹脂由来異物を減らすことができる添加剤が求められる。
また、芳香族ビニル単量体単位を含有しない樹脂は、耐溶剤性が比較的高いため好ましく用いられるが、芳香族ビニル単量体単位を含有しないために、樹脂に滑性がなく、製膜の際、成形ロールに樹脂が粘着することでロールに突起状の付着物が発生し、これがフィルムに転写されることで凹欠陥が発生するといった問題があった。
ところで、特許文献1記載の樹脂は、ダイライン数は少なくなるが、凹凸欠陥数や、生産性の点で改善の余地があった。また、滑剤と、樹脂粘度や異物の関係については、具体的に開示されていなかった。特許文献2の方法では、滑剤として金属塩を使用しているのみであるが、押出機の濾過フィルターを溶媒洗浄する際に、有機溶媒に不溶な金属塩が残存してしまい、濾過フィルターを再生することができず、コスト面で致命的な欠点となる場合があった。また、金属塩の添加により得られる効果は、通常の滑剤に期待されるような、ロールに付着した樹脂が、製膜中のフィルムに転写されて生じる凹欠陥数を減らすということのみであり、凸欠陥については着目されていなかった。また、特許文献3に開示されているフェニルマレイミド系化合物と脂肪酸アミド系化合物及び/又は金属石鹸系化合物からなる樹脂組成物は、樹脂の流動性、摩擦、滑り性を調整した加工性の高い樹脂組成物として記載されているが、脂肪酸アミド系化合物や金属石鹸系化合物の添加が、溶融粘度に与える影響や、凸欠陥に与える影響など何ら具体的開示はなかった。また、実施例で使用されているアルキレン脂肪酸アマイドはアクリル系樹脂と反応し、ゲル状異物が増加する。また、メチルメタクリレートなどを含有する(メタ)アクリル系樹脂については、金属石鹸系化合物を添加しているのみであり、脂肪酸アミド化合物と(メタ)アクリル系樹脂の特定の組み合わせについては、何ら開示されていない。
本発明は以上のようなフィルム製膜時の課題を解決する為になされたものであり、特に製膜時に発生する凹凸欠陥が少なく、成形加工の容易な光学特性に優れた光学用フィルムを製造する為の樹脂組成物を提供する事を目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、(メタ)アクリル系樹脂と脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含有する光学フィルムが光学用フィルムとして優れていることがわかった。即ち本発明は、以下に関する。
(i)ガラス転移温度が110℃以上であり、芳香族ビニル系単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂と、脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含む光学用フィルムであって、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド(アマイド)化合物を0.001重量部以上、1重量部以下含有することを特徴とする光学用フィルム。
(ii)(メタ)アクリル系樹脂が、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、および、グルタルイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(i)に記載の光学用フィルム。
(iii)上記グルタルイミド樹脂が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを含むことを特徴とする(ii)に記載の光学用フィルム。
(i)ガラス転移温度が110℃以上であり、芳香族ビニル系単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂と、脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含む光学用フィルムであって、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド(アマイド)化合物を0.001重量部以上、1重量部以下含有することを特徴とする光学用フィルム。
(ii)(メタ)アクリル系樹脂が、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、および、グルタルイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(i)に記載の光学用フィルム。
(iii)上記グルタルイミド樹脂が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを含むことを特徴とする(ii)に記載の光学用フィルム。
(式中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
(式中、R4は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R5は水素またはメチル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
(iv)溶融押出フィルムであることを特徴とする(i)〜(iii)に記載の光学用フィルム。
(v)(i)〜(iv)に記載の光学用フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
(vi)(v)に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
(iv)溶融押出フィルムであることを特徴とする(i)〜(iii)に記載の光学用フィルム。
(v)(i)〜(iv)に記載の光学用フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
(vi)(v)に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
本発明によれば、製膜に起因するフィルム凹欠陥が少ないだけでなく、樹脂由来異物である凸欠陥も少なく、さらには、樹脂の溶融粘度が低く製膜性が改善された優れた透明性を有する光学用フィルムを得ることが出来る。
本発明の一実施形態について以下、説明する。
本発明は、ガラス転移温度が110℃以上であり、芳香族ビニル系単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂(本明細書においては、アクリル系樹脂と称する場合もある。)と、脂肪酸アミド(本明細書においては、脂肪酸アミド(アマイド)、または、脂肪酸アマイドと表記する場合もある)化合物を含む光学用フィルムであって、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド(アマイド)化合物を0.001重量部以上、1重量部以下含有することを特徴とする光学用フィルムに関する。
本発明の光学用フィルムに含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が110℃以上であり、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。この範囲を下回ると、フィルムの耐熱性が劣るため、高温時の物性変化が大きくなり、適用範囲が狭くなる。特に光学用途に使用される場合には、ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、フィルムに高温環境下でゆがみなどが生じ易く、安定した光学的特性が得られない傾向があり、好ましくない。
本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、下記一般式(2)
(式中、R4は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R5は水素またはメチル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)で表される単位を含有する樹脂であれば特に制限されず、メタアクリル酸エステル単量体単位の重合物を環化、変性したものなども含まれる。また、その他の単位がさらに含まれていてもよいし。言うまでもなく、直接共重合されていてもよいし、グラフト共重合していてもよい。また、(メタ)アクリル系単量体単位を含有しない、その他のポリマー成分が混合されていてもよい。本発明の効果がより発揮されるのは、上記一般式(2)で表される単位が、全熱可塑性樹脂中10重量%以上であり、20重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましい。
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、グルタル酸無水物樹脂、ラクトン環構造を有する樹脂、グルタルイミド樹脂などを挙げることができる。グルタル酸無水物樹脂としては、特に制限されないが、特開2007−254703記載の方法などに従って製造することができる。ラクトン環構造を有する樹脂としては、特開2008−9378記載の方法などに従って製造することができる。(グルタルイミド樹脂)グルタルイミド樹脂について、以下に詳述する。グルタルイミド樹脂としては具体的には、例えば、下記一般式(1)
(式中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、 下記一般式(2)
(式中、R4は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R5は水素またはメチル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミド樹脂を好適に用いることができる。
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。
また、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
上記一般式(2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R6はメチル基であることが好ましく、R4は水素であり、R5はメチル基であり、R6はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミド樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR4、R5、およびR6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。上記グルタルイミド樹脂にアクリル酸エステル単位を含む場合は、その含有量が1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましい。アクリル酸エステル単位が上記範囲内であれば、グルタルイミド樹脂は熱安定性に優れたものになるが、上記範囲を超えると熱安定性が悪くなり、樹脂製造時あるいは成形加工時に樹脂の分子量や粘度低下が発生して物性が悪化する傾向がある。
上記グルタルイミド樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、R3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
本発明に係るグルタルイミド単位の含有量は、NMRなどから、算出することも可能であるが、簡便に重量比を算出するため、「イミド化率」との指標を設けることもできる。イミド化率は、樹脂中のグルタルイミド基の割合を示し、大きい程、分子中にグルタルイミド基が多いことを示す。グルタルイミド基は、それ自身正の固有複屈折を与える作用を有しているため、当該範囲に設定することで、樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た成形品の複屈折性を抑制することができ、本発明の樹脂組成物から形成した樹脂成形品(例えば、樹脂フィルム)の光学部材としての使用用途が拡大する。
本発明に係るイミド化率(Im%)は、例えば以下の方法で測定できる値である。1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行う。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、次式で求める。
Im%=B/(A+B)×100 上記イミド化率は、求められる物性に応じて適宜設定してやればよいが、例えば、偏光子保護フィルム用途に用いる場合は、1.5〜5.0%とすることが好ましく、2.0%〜4.5%とすることがさらに好ましく、2.5%〜4.5%とすることが特に好ましい。
イミド化率が上記範囲内であれば、得られるイミド樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりすることがない。
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、および(メタ)アクリル酸エステル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
上記グルタルイミド樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104〜5×105であることが好ましく、5×104〜3×105であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムの機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
また、上記グルタルイミド樹脂の酸価は特に限定されるものではないが、0.50mmol/g以下であることが好ましく、0.45mmol/g以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0mmol/g以上が好ましく、0.05mmol/g以上が好ましく、0.10mmol/g以上であることが特に好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたグルタルイミド樹脂を得ることができる。
一方、例えば、酸価が上記範囲より大きいと、溶融押出時の樹脂の発泡が起こりやすくなり、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
尚、酸価は、例えば特開2005−23272に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
上記グルタルイミド樹脂において、一般式(1)(2)で表される単位の含有量(換言すれば、割合)は、特に限定されるものではなく、グルタルイミド樹脂に要求される物性や、本発明にかかる光学用フィルムに要求される光学特性に応じて決定すればよい。
(グルタルイミド樹脂の製造方法) ここで、上記グルタルイミド樹脂の製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。製造方法としては特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。例えば、特開昭56−8404、特公平6−86492、特公昭52−32665などに記載の方法に準じて製造できる。(メタ)アクリル酸エステル重合体として、好ましくはポリメタクリル酸メチルである。本発明のグルタルイミド樹脂がアクリル酸エステル単位を含む場合には、原料となる(メタ)アクリル酸エステル重合体中のアクリル酸エステル単位が1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましい。
この工程において、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。複数種の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、最終的に得られるグルタルイミド樹脂に複数種類の(メタ)アクリル酸エステル単位を与えることができる。
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体にイミド化剤を添加し、イミド化を行う。これにより、上記グルタルイミド樹脂を製造することができる。
上記イミド化剤は、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであれば特に限定されず、WO2005/054311記載のもの等が挙げられる。具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
また、常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂の物性や、本発明にかかるグルタルイミド樹脂を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。すなわち、(1)押出機などを用い、溶融状態にある(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化剤と反応させたり、(2)イミド化反応に対して非反応性溶媒を用いて、溶液状態の(メタ)アクリル酸エステル重合体にイミド化剤と反応させること等により、得られる。
上記グルタルイミド樹脂を押出機を用いて製造する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマー(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル重合体)に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008−273140に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、原料である(メタ)アクリル酸エステル重合体を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜300℃にて行うことが好ましく、さらに200〜290℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が300℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるグルタルイミド系樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。 押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。 押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
また、押出機には、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
また、上記グルタルイミド樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
上記グルタルイミド樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
具体的には、原料ポリマーを加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
上説したような方法によれば、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位の比率が所望に制御されたグルタルイミド樹脂を容易に製造することができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、芳香族ビニル系単量体単位を含有しないことを特徴とする。具体的には、一般式(3)
(式中、R7は水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は炭素数6〜10のアリール基である)で表される単量体単位が光学フィルムを構成する全熱可塑性樹脂中、1重量%以下であることを言う。
本発明は芳香族ビニル系単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂に脂肪酸アミド(アマイド)化合物が含有されることが必須である。脂肪酸アミド(アマイド)化合物を添加することで、樹脂の溶融粘度が低下し低温で成形することが可能となり、製膜に起因するフィルム凹欠陥が少ないだけでなく、樹脂由来異物である凸欠陥が少ない優れた光学フィルムを得ることができる。なお、樹脂由来異物である凸欠陥とは、フィルムを観察した際に核となる異物がなく、樹脂が凸状に突起した欠陥であり、(メタ)アクリル系樹脂を高温で成形した場合に発生しやすい。
本発明にかかる脂肪酸アミド(アマイド)化合物は、本発明の効果が得られるのであれば特に制限はない。
上記脂肪酸アミド(アマイド)化合物としては、公知の任意の脂肪酸アミド(アマイド)化合物が使用され得る。本発明でいう脂肪酸アミド(アマイド)化合物とは、脂肪酸とアミンからなるアミド(アマイド)であり、分子内に長鎖脂肪族基と1つのアミド基を持つものであり、飽和・不飽和モノアミド(アマイド)、置換アミド(アマイド)、メチロールアミド(アマイド)、エタノールアミド(アマイド)、エステルアミド(アマイド)、置換尿素などがある。
本発明でいう脂肪酸アミド化合物には、1分子に2つ以上のアミド基を含有する飽和・不飽和ビスアミド(アマイド)、芳香族ビスアミド(アマイド)、エチレンビスエルカ酸アミド(アマイド)、エチレンビスステアリン酸アミド(アマイド)、エチレンビスオレイン酸アミド(アマイド)、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物などは含まない。1分子に2つ以上のアミド基を含有すると、ゲル状異物(凸欠陥)が増加する傾向があり好ましくない。これは、(メタ)アクリル系樹脂に含有するカルボニル基と2つ以上のアミド基が反応し、架橋するためと推定している。
好ましい脂肪酸アミド(アマイド)化合物の例としては、例えば、ステアリン酸アミド(アマイド)、オレイン酸アミド(アマイド)、エルカ酸アミド(アマイド)、ベヘニン酸アミド(アマイド)、ステアリルエルカ酸アミド(アマイド)、N−オレイルパルミトアミド(アマイド)、N−ステアリルエルカアミド(アマイド)などが挙げられる。なかでも、入手容易性からステアリン酸アミド(アマイド)が特に好ましい。
本発明における脂肪酸アマイド化合物の添加量は、前記芳香族ビニル単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を基準として、0.001〜1重量部である事が好ましい。より好ましくは、0.005〜0.5重量部である。さらに好ましくは、0.005〜0.1重量部である。滑剤の添加量が上記範囲内であれば、光学フィルムの透明性を損なうことなく、成形時の金属ロールと溶融樹脂との剥離性に起因する凹欠陥の少ないフィルムを得ることができる。また、上記脂肪酸アマイド化合物を添加することで、(メタ)アクリル系樹脂自体の溶融粘度を低下させることができ、凸欠陥も少ない光学フィルムを得ることもできる。
光学フィルムの製造過程で、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着した押出機を用いた場合に、ベント口から滑剤が揮発したり、Tダイから排出された高温の樹脂が冷却されるまでの間に滑剤が揮発したりする場合があるため、樹脂と滑剤を混練する際は、目的とする滑剤量よりも多目の量を用いて製造することが好ましい。
脂肪酸アマイド化合物と、前記芳香族ビニル単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂の混合方法としては、特に制限されないが、芳香族ビニル単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂を製造する際に、溶融混練しても良いし、溶融押出フィルムを製造する際、押出機に添加してもよい。
本発明は本発明の効果を妨げない範囲で、一般的に使用される、熱安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、フィラーなどを添加してもよい。これらの添加剤を添加する場合、芳香族ビニル単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂に対して0〜20重量%以下であることが好ましく、0〜10重量%以下であることがさらに好ましく、0〜5重量%以下であることが特に好ましい。
(光学用フィルムおよびその製造方法) 本発明にかかる光学用フィルムとしては、位相差フィルムや偏光子保護フィルム、位相差発現機能を有する偏光子保護フィルム、光学補償機能を付与するコーティング材のベースフィルムなどを挙げることができる。本発明にかかる光学用フィルムは、上記に示した条件を満たすフィルムであればよいが、延伸されたフィルム、すなわち、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムによれば、機械的特性を向上させることができる。
なお、本発明にかかる光学用フィルムが延伸フィルムである場合、一軸延伸した一軸延伸フィルムであってもよいし、さらに延伸工程を組み合わせて行って得られる二軸延伸フィルムであってもよい。
本発明にかかる光学用フィルムが延伸フィルムである場合、その厚みは、特に限定されるものではないが、10μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、30μm〜100μmであることがさらに好ましい。
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、延伸倍率が過大になり、ヘーズが悪化する傾向がある。
本発明にかかる光学用フィルムは、膜厚40μmにおける波長380nmの光線透過率が30%以上であり、40%以上であることがより好ましい。
また、膜厚40μmにおける波長400nmの光線透過率は、80%以上であり、85%以上であることがより好ましい。400nmは可視光領域であり、特にこの波長での光線透過率は高いことが好ましい。
膜厚40μmにおける波長380nm及び400nmの光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの無色透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、無色透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、ヘーズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
本発明にかかる光学用フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、偏光子保護フィルムとして使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。
より具体的には、面内位相差は原料フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。また、面内位相差は延伸フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
また、厚み方向位相差は原料フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差は延伸フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる光学用フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。
フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差が50nmを超えたりすると、本発明にかかる光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルムを、液晶表示装置の偏光板として用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
一方、本発明にかかる光学用フィルムを、位相差フィルムや位相差発現機能を有する偏光子保護フィルムなどに使用する場合には、光学異方性が大きい方が好ましい。
具体的には、光学フィルムの面内位相差(Re)が30〜100nmであり、かつ、厚み方向位相差(Rth)が50〜320nmであることが好ましい。光学フィルムの面内位相差は、より好ましくは40〜100nmである。厚み方向位相差は、より好ましくは100〜300nmである。光学フィルムの面内位相差が30nm以下の場合は、必要とする位相差を付与できないとの問題が発生する場合がある。
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出するこ
とができる。
とができる。
Re=(nx−ny)×d Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
また、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光子保護フィルムとして使用する場合、配向複屈折の値が0〜0.1×10−3であることが好ましく、0〜0.01×10−3であることがより好ましい。
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
一方、本発明にかかる光学用フィルムを、位相差フィルムや位相差発現機能を有する偏光子保護フィルムなどに使用する場合には、配向複屈折の値が1.0×10−3以上であることが好ましく、2.0×10−3以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「配向複屈折」とは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、前述のnx、nyを用いて説明すると、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10−12m2/N以下であることが好ましく、10×10−12m2/N以下であることがより好ましく、5×10−12m2/N以下であることがさらに好ましい。
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
一方、光弾性係数の絶対値が20×10−12m2/Nより大きいと、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
c=△n/△F ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
本発明にかかる光学用フィルムは、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。具体的には、例えば、本発明にかかる光学用フィルムを、表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明にかかる光学用フィルムに表面処理を施すことが好ましい。
このような表面処理を施すことにより、本発明にかかる光学用フィルムと、コーティングまたはラミネートされる別のフィルムとの間の相互の密着性を向上させることができる。
なお、本発明にかかる光学用フィルムに対する表面処理の目的は、作用効果を目的とするものに限定されるものではない。つまり、本発明にかかる光学用フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。
上記表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理であることが好ましい。
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したような特性を有するため、そのまま最終製品として各種用途に用いることができる。また、上説したような各種加工を施すことにより、用途の幅を広げることができる。
本発明にかかる光学用フィルムの用途は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
また、本発明の光学用フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
本発明の光学用フィルムは、上述のように偏光子保護フィルムとしても、位相差フィルムとしても用いることができるが、その特性から紫外線の曝露量が少ない部位に使用することがより効果を発揮するため好ましい。即ち、液晶及び2枚の偏光板を含む液晶表示装置を想定した場合、最表面に使用される偏光子保護フィルムが最も紫外線の曝露量が多いことから、最表面以外に使用されることが好ましい。
ここで、本発明にかかる光学用フィルムを製造する方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明にかかる光学用フィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形、溶液流延成形、スピンコート成形等を挙げることができる。
中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
以下、本発明にかかるフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明にかかる光学用フィルムを溶融押出法により製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
本発明にかかる光学用フィルムを溶融押出法により成形する場合、まず、上述のアクリル系樹脂組成物を、押出機に供給し、該樹脂組成物を加熱溶融させる。
樹脂組成物は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明にかかる樹脂組成物)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
次に、押出機内で加熱溶融された樹脂組成物を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、熱可塑性樹脂組成物中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。 フィルター種は特に制限されないが、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。
次に、Tダイに供給された樹脂組成物を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの成形ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜する。
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの成形ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
なお、金属ロールと溶融樹脂との剥離性が悪い場合、樹脂中の低分子量成分が金属ロールに突起状に付着し、その突起物がフィルムに転写されて凹欠陥が発生することがある。一般的に滑剤が含有されている本発明のアクリル系樹脂は、樹脂に含まれる滑剤が金属ロール表面に薄膜を形勢することで金属ロールと溶融樹脂との剥離性が良好となり、フィルムに凹欠陥が生じ難くい。さらに、フィルムの生産性が高い、すなわち押出機の吐出が多く剪断による発熱で樹脂の温度が高温となった状態でも凹欠陥が発生し難く、生産性に優れる。
なお、本明細書において、「成形ロール」とは、「タッチロール」および「成形ロール」を包含する意味で用いられる。
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの成形ロールも表面が金属であるため、成膜するフィルムが薄いと、成形ロールの面同士が接触して、成形ロールの外面に傷が付いたり、成形ロールそのものが破損したりすることがある。
そのため、上説したような2つの成形ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで成膜する場合、まず、該2つの成形ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原料フィルムを一旦取得する。その後、該原料フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
より具体的に説明すると、厚み40μmの光学用フィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原料フィルムを取得する。その後、該原料フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
このように、本発明にかかる光学用フィルムが延伸フィルムである場合、本発明にかかる樹脂組成物を一旦、未延伸状態の原料フィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。
本明細書では、説明の便宜上、本発明にかかる樹脂組成物をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原料フィルム」と称する。なお、該原料フィルムもまた、本発明にかかる光学用フィルムの一実施形態であることを付言しておく。
原料フィルムを延伸する場合、原料フィルムを成形後、直ちに、該原料フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原料フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原料フィルムの延伸を行ってもよい。
なお、原料フィルムに成形後、直ちに該原料フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原料フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間的)しか存在しないことがありうる。
また、上記原料フィルムは、その後、延伸される場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原料フィルムは、完成品である光学用フィルムとしての性能を有していなくてもよい。
原料フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
原料フィルムを延伸するとき、原料フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
上記範囲内で予熱することにより、原料フィルムの厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
一方、原料フィルムの予熱温度が高すぎると、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原料フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原料フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
なお、本発明にかかる樹脂組成物は、原料フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られる光学用フィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
原料フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。
一般的には、DSC法によって求めた原料フィルムのガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムのヘーズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
上記原料フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、さらに、ヘーズが1%以下である延伸フィルムを製造することができる。
また、本発明にかかる光学用フィルムにおいて、(メタ)アクリル系熱可塑性樹脂と脂肪酸アミド化合物との混合割合を上説した範囲で調整し、適切な延伸条件を選択することにより、ヘーズの増大を実質的に伴うことなく、厚みムラの小さなフィルムを容易に製造することができる。
本発明にかかる光学用フィルムは、必要に応じて、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層や光学補償機能を有する化合物等のコーティング層を形成させたりして用いることができる。
本発明にかかる光学用フィルムの表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりする場合、上記方法で製造した延伸フィルム(原料フィルムを本発明にかかる光学用フィルムとする場合には、該原料フィルム)に表面処理を施すことが好ましい。
なお、表面処理の種類については、上説した通りである。また、本発明にかかるフィルムにおいて、表面処理を施す場合、その表面処理の程度は特に限定されるものではないが、50dyn/cm以上であることが好ましく、50dyn/cm〜80dyn/cm以下であることがより好ましい。
このような程度の表面処理であれば、従来公知の表面処理設備を用いて表面処理を施すことができる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
[イミド化率の算出] 1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、次式で求めた。
Im%=B/(A+B)×100 なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
[ガラス転移温度] アクリル系樹脂10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
[酸価] ジクロロメタン37.5mlにアクリル系樹脂のペレット0.3gを溶解させ、メタノール37.5mlを添加した。この溶液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して10分間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Aml)を測定した。 次に、ジクロロメタン37.5mlとメタノール37.5mlの混合液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して10分間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Bml)を測定した。 樹脂中に残存する酸成分(カルボキシル基および酸無水物基由来のモノ)の割合を酸価Cmmol/gとし、次式で求めた。 C=0.1×((B−A)/0.3)
[ヘーズ測定] JIS K 7136記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
[全光線透過率測定] JIS K 7361−1記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
[フィルム外観評価] 得られた二軸延伸フィルムから縦210mm、横300mmのサイズの試験片を各水準3枚ずつ切り出し、暗室にてデスクスタンド(ナショナル製SQ948H、蛍光灯27W)の光を照射しながら、目視で観察されるフィルム欠陥の周囲を油性ペンでチェックした。次いで、倍率50倍の透過型光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープ(VH−Z75)、株式会社キーエンス製)でチェックした欠陥が無色透明であり、フィルム面の斜め方向から観察して凹んでいるものは金属ロールとの剥離性に起因する凹欠陥とし、フィルム面の斜め方向から観察して凸状に盛り上がっているものは凸欠陥であるとし、フィルム面にアルコール溶剤などを用いて拭取れるような汚れ成分が付着している場合は、滑剤のブリードアウトにより汚染された製膜ロールからの滑剤の転写に由来する滑剤汚れとし、それぞれの欠陥に関して、試験片3枚の合計個数により評価した。
[粘度] 溶融押出機とTダイの間にギアポンプとポリマーフィルターをとりつけて溶融製膜を行い、ポリマーフィルターの前後の圧力の数値を測定し、評価した。樹脂種以外の条件(温度など、フィルター種など)を全て同一にした条件で製膜を行った際、樹脂粘度が高い樹脂の方が圧力は高くなる。
[樹脂に対する滑剤量の定量]樹脂1.0gを塩化メチレン20gに溶解し、これを試料とし、ガスクロマトグラフ(島津製作所製ガスクロマトグラフ(GC−2010)、RESTEK製カラム(Rtx−1)、カラム温度設定:35℃を5分間保持し、5℃/分の速度で70℃まで昇温し、さらに20℃/分の速度で270℃まで昇温後、40分間保持、キャリアガス:ヘリウム、圧力:10.7(kPa/分)を5分保持し、0.l3(kPa/分)の速度で11.6(kPa/分)まで昇圧し、さらに0.40(kPa/分)の速度で15.7(kPa/分)まで昇圧し、さらに2.0(kPa/分)の速度で35(kPa/分)まで昇圧し、30分間保持、注入口温度:200℃、検出器温度:270℃、スプリット比:4)を測定した。濃度の異なる滑剤の塩化メチレン溶液を用いて検量線を作成しておき、得られた滑剤由来のピーク面積から、滑剤量を求めた。
[製造例1] 原料の樹脂としてメタクリル酸メチル重合体(Mw:10.5万)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化樹脂を製造した。
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230〜250℃、スクリュー回転数は150rpmとした。原料樹脂を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して2重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化樹脂(I)を得た。
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化樹脂(I)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して5重量部の炭酸ジメチルを注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化樹脂(II)を得た。
さらに、イミド化樹脂(II)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化樹脂(III)を得た。
イミド化樹脂(III)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度および酸価を測定した。その結果、イミド化率は4モル%、ガラス転移温度は128℃、酸価は0.40mmol/gであった。
[実施例1] 製造例1で得られたイミド化樹脂(III)100重量部と、脂肪酸アマイド化合物であるステアリン酸アマイド(商品名脂肪酸アマイドS、花王製)0.1重量部とを単軸押出機を用いてペレットにし、ペレット状の樹脂組成物を得た。樹脂中の滑剤量は950ppmであった。
このペレット状の樹脂組成物を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機にギアポンプとポリマーフィルターを装着し、400mm幅のTダイとを用いて270℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み130μmのフィルムを得た。フィルム中の滑剤量は645ppmであった(すなわち、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対し0.0645部であった)。このフィルムについて上記の方法に従ってフィルム外観評価を行った(表1)。
[比較例1] 滑剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にフィルムを作成した。結果を表1に示す。
ステアリン酸アマイドを混合した実施例1では、脂肪酸アミド化合物の滑剤としての効果により、ロールとの剥離性が改善し、凹欠陥が大幅に減少しているのみでなく、凸欠陥数も減少している。また、溶融製膜時のフィルター差圧も減少していることから、わずか0.1部の添加で粘度低下効果があることがわかる。
Claims (6)
- ガラス転移温度が110℃以上であり、芳香族ビニル系単量体単位を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる熱可塑性樹脂と、脂肪酸アミド(アマイド)化合物を含む光学用フィルムであって、アクリル系熱可塑性樹脂100重量部に対して脂肪酸アミド(アマイド)化合物を0.001重量部以上、1重量部以下含有することを特徴とする光学用フィルム。
- (メタ)アクリル系樹脂が、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、および、グルタルイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の光学用フィルム。
- 溶融押出フィルムであることを特徴とする請求項1〜3に記載の光学用フィルム。
- 請求項1〜4に記載の光学用フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
- 請求項5に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
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