JP2011051060A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削加工で、硬質被覆層が優れた付着強度を有するとともに、長期の使用に亘って優れた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供すること。
【解決手段】 高cBN含有率のcBN基超高圧焼結材料製工具基体の表面に、 平均層厚0.1〜0.3μmの非晶質BNからなる下部層、平均層厚0.1〜0.3μmのTiBNからなる中間層、平均層厚1.0〜2.0μmのTiAlNからなる上部層、を順次蒸着形成することによって、優れた付着強度を有する硬質被覆層を構成する。
【選択図】 なし
【解決手段】 高cBN含有率のcBN基超高圧焼結材料製工具基体の表面に、 平均層厚0.1〜0.3μmの非晶質BNからなる下部層、平均層厚0.1〜0.3μmのTiBNからなる中間層、平均層厚1.0〜2.0μmのTiAlNからなる上部層、を順次蒸着形成することによって、優れた付着強度を有する硬質被覆層を構成する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた付着強度を有することにより、長期の使用に亘ってすぐれた耐欠損性と耐摩耗性を発揮する立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結材料製表面被覆切削工具(以下、cBN被覆工具という)に関する。
従来、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削加工には、被削材との親和性の低い工具材料として、cBN基超高圧焼結材料を用いることは良く知られている。
また、特許文献1に示すように、cBN基超高圧焼結材料を工具基体(以下、cBN工具基体という)とし、その表面に4a、5a、6a族元素およびAlから選択される元素の窒化物(例えば、TiAlN)からなる耐摩耗性被膜を形成し、かつ、該耐摩耗性被膜中に、非晶質構造のBN、TiB、SiNX(X=0.5〜1.33)等からなる超微粒化合物を含有させたcBN被覆工具(以下、従来被覆工具という)も知られており、この従来被覆工具によれば、切削加工における耐摩耗性、潤滑性、耐焼付き性、加工精度が向上し、工具寿命も改善されるようになることが知られている。
ところで、cBN被覆工具においては、一般的に、耐摩耗性の向上を図るため、cBN焼結体中のcBN含有割合を高くする試みがなされているが、cBN含有割合を70vol%程度以上に高くした場合には、硬質被覆層(例えば、上記従来被覆工具におけるTiAlNからなる耐摩耗性被膜)と工具基体との付着強度が低下傾向を示すようになるため、切削条件が過酷になるほど、チッピング、欠損、剥離等が生じ易くなり工具寿命の改善が十分ではないのが現状である。
また、特許文献1に示すように、cBN基超高圧焼結材料を工具基体(以下、cBN工具基体という)とし、その表面に4a、5a、6a族元素およびAlから選択される元素の窒化物(例えば、TiAlN)からなる耐摩耗性被膜を形成し、かつ、該耐摩耗性被膜中に、非晶質構造のBN、TiB、SiNX(X=0.5〜1.33)等からなる超微粒化合物を含有させたcBN被覆工具(以下、従来被覆工具という)も知られており、この従来被覆工具によれば、切削加工における耐摩耗性、潤滑性、耐焼付き性、加工精度が向上し、工具寿命も改善されるようになることが知られている。
ところで、cBN被覆工具においては、一般的に、耐摩耗性の向上を図るため、cBN焼結体中のcBN含有割合を高くする試みがなされているが、cBN含有割合を70vol%程度以上に高くした場合には、硬質被覆層(例えば、上記従来被覆工具におけるTiAlNからなる耐摩耗性被膜)と工具基体との付着強度が低下傾向を示すようになるため、切削条件が過酷になるほど、チッピング、欠損、剥離等が生じ易くなり工具寿命の改善が十分ではないのが現状である。
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は、通常の切削条件に加えて、より高速条件下での切削加工が要求される傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、通常条件下での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じない。しかし、これを、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削に用いた場合には、cBN工具基体と硬質膜(耐摩耗性被膜)との付着強度が十分でないため、これが原因で、欠損を生じやすく、そのため、比較的短時間で使用寿命に至り、長期の使用に亘って、十分な耐摩耗性を発揮することができない。
したがって、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮させるためには、cBN工具基体と硬質膜の付着強度を向上させることが大きな課題となっている。
したがって、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮させるためには、cBN工具基体と硬質膜の付着強度を向上させることが大きな課題となっている。
本発明者等は、cBN基超高圧焼結材料を工具基体材料とし、硬質被覆層としてTiとAlの複合窒化物を形成した被覆工具において、基体と硬質膜間の付着強度を確保・向上させるための中間層について鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
cBNの含有割合が高い(70vol%以上)cBN基超高圧焼結材料からなるcBN工具基体の表面に、非晶質構造のBN(以下、aBNで示す)層を下部層として形成し、次いで、この上に、TiとBとNの複合化合物(以下、TiBNで示す)層を中間層として形成し、さらにこの上に、TiとAlの複合窒化物(以下、TiAlNで示す)層を上部層として形成したところ、下部層は、cBN工具基体および中間層の双方に対し強固な付着強度を備えるとともに、中間層は、上部層に対して優れた付着強度を有することを見出した。
したがって、cBN工具基体表面に、上記の下部層、中間層及び上部層の三層構造からなる硬質被覆層を形成したcBN被覆工具は、すぐれた付着強度を有することとなり、その結果として、焼入れ鋼等の高硬度被削材の高速断続切削加工において、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘って、優れた耐摩耗性を発揮するとともに、工具寿命の延命化が図られることを見出したのである。
したがって、cBN工具基体表面に、上記の下部層、中間層及び上部層の三層構造からなる硬質被覆層を形成したcBN被覆工具は、すぐれた付着強度を有することとなり、その結果として、焼入れ鋼等の高硬度被削材の高速断続切削加工において、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘って、優れた耐摩耗性を発揮するとともに、工具寿命の延命化が図られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 70vol%以上の立方晶窒化ほう素を含有し、残部は硬質分散相と結合相とからなる立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製工具基体の表面に、
平均層厚0.1〜0.3μmの非晶質BN層からなる下部層、
平均層厚0.1〜0.3μmのTiとBとNの複合化合物層からなる中間層、
平均層厚1.0〜2.0μmのTiとAlの複合窒化物層からなる上部層、
を順次蒸着形成したことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記中間層は、
組成式:Ti0.33(1−X)B0.67(1−X)NX
で表した場合、Xの値(但し、原子比)が0.05〜0.5を満足する組成割合のTiとBとNの複合化合物層であり、また、
上記上部層は、
組成式:(Ti1−YAlY)N層
で表した場合、Yの値(但し、原子比)が0.4〜0.65を満足する組成割合のTiとAlの複合窒化物層である前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
「(1) 70vol%以上の立方晶窒化ほう素を含有し、残部は硬質分散相と結合相とからなる立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製工具基体の表面に、
平均層厚0.1〜0.3μmの非晶質BN層からなる下部層、
平均層厚0.1〜0.3μmのTiとBとNの複合化合物層からなる中間層、
平均層厚1.0〜2.0μmのTiとAlの複合窒化物層からなる上部層、
を順次蒸着形成したことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記中間層は、
組成式:Ti0.33(1−X)B0.67(1−X)NX
で表した場合、Xの値(但し、原子比)が0.05〜0.5を満足する組成割合のTiとBとNの複合化合物層であり、また、
上記上部層は、
組成式:(Ti1−YAlY)N層
で表した場合、Yの値(但し、原子比)が0.4〜0.65を満足する組成割合のTiとAlの複合窒化物層である前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明について、以下に説明する。
立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製工具基体(cBN工具基体):
超高圧焼結材料製工具基体中の窒化ほう素(cBN)は、きわめて硬質で、焼結材料中で分散相を形成し、そしてこの分散相によって耐摩耗性の向上を図ることができる。
一般的には、cBN含有割合が70vol%以上となると、硬さは向上するものの、硬質被覆層との密着性が低下し、欠損発生の原因となるが、本発明では、下部層(非晶質のBN層(aBN層))および中間層(TiBN層)を介在形成することにより、cBN工具基体−上部層(TiAlN層)間の付着強度を十分確保することができるため、cBN含有割合が70vol%以上の高含有量のcBN工具基体をも切削工具として利用することが可能となった。
本発明では、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を備える表面被覆切削工具を提供するという観点から、cBN含有割合は70vol%以上とする。
超高圧焼結材料製工具基体中の窒化ほう素(cBN)は、きわめて硬質で、焼結材料中で分散相を形成し、そしてこの分散相によって耐摩耗性の向上を図ることができる。
一般的には、cBN含有割合が70vol%以上となると、硬さは向上するものの、硬質被覆層との密着性が低下し、欠損発生の原因となるが、本発明では、下部層(非晶質のBN層(aBN層))および中間層(TiBN層)を介在形成することにより、cBN工具基体−上部層(TiAlN層)間の付着強度を十分確保することができるため、cBN含有割合が70vol%以上の高含有量のcBN工具基体をも切削工具として利用することが可能となった。
本発明では、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を備える表面被覆切削工具を提供するという観点から、cBN含有割合は70vol%以上とする。
なお、cBN焼結体の他の構成成分、例えば、結合相等としては、周期律表VIa、Va、VIa族元素の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物ならびにこれらの固溶体からなる群の中から選択された少なくとも1種とアルミニウム化合物のセラミックス系結合材を用いることができる。
下部層(非晶質のBN層(aBN層)):
下部層は、cBN工具基体および中間層(TiBN層)の双方に対し強固な付着強度を有するが、下部層の平均層厚が0.1μm未満では、付着強度向上効果が十分でなく、一方、その平均層厚が0.3μmを超えると耐摩耗性が劣るからであるから、平均層厚は0.1〜0.3μmと定めた。
また、下部層のaBN層は、例えば、六方晶窒化ほう素(h−BN)焼結体をターゲットとしたアルゴン−窒素混合雰囲気中で、RFスパッタリングで成膜することができる。
下部層は、cBN工具基体および中間層(TiBN層)の双方に対し強固な付着強度を有するが、下部層の平均層厚が0.1μm未満では、付着強度向上効果が十分でなく、一方、その平均層厚が0.3μmを超えると耐摩耗性が劣るからであるから、平均層厚は0.1〜0.3μmと定めた。
また、下部層のaBN層は、例えば、六方晶窒化ほう素(h−BN)焼結体をターゲットとしたアルゴン−窒素混合雰囲気中で、RFスパッタリングで成膜することができる。
中間層(TiBN層):
中間層は、TiとBとNの複合化合物層から構成するが、中間層の平均層厚が0.1μm未満では、付着強度向上効果が十分でなく、一方、その平均層厚が0.3μmを超えると、耐摩耗性が低下傾向を示し、長期の使用に亘って満足できる工具特性を発揮することができなくなることから、平均層厚は0.1〜0.3μmと定めた。
この中間層は、N濃度が高い場合に、主としてTiN+aBN+TiB2(微量)の混合層からなるが、aBNとTiNの含有割合が高いことから、下部層(aBN層)と上部層(TiAlN層)のいずれに対しても強固な付着強度を有する。
中間層(TiBN層)を、
組成式:Ti0.33(1−X)B0.67(1−X)NX
で表した場合、Xの値(但し、原子比)が0.05〜0.5を満足する組成割合であるときに、下部層と上部層に対して、一段と優れた付着強度を示す。
また、中間層のTiBN層は、例えば、TiB2焼結体をターゲットとしたアルゴン−窒素混合雰囲気中で、DCスパッタリングで成膜することができる。
中間層は、TiとBとNの複合化合物層から構成するが、中間層の平均層厚が0.1μm未満では、付着強度向上効果が十分でなく、一方、その平均層厚が0.3μmを超えると、耐摩耗性が低下傾向を示し、長期の使用に亘って満足できる工具特性を発揮することができなくなることから、平均層厚は0.1〜0.3μmと定めた。
この中間層は、N濃度が高い場合に、主としてTiN+aBN+TiB2(微量)の混合層からなるが、aBNとTiNの含有割合が高いことから、下部層(aBN層)と上部層(TiAlN層)のいずれに対しても強固な付着強度を有する。
中間層(TiBN層)を、
組成式:Ti0.33(1−X)B0.67(1−X)NX
で表した場合、Xの値(但し、原子比)が0.05〜0.5を満足する組成割合であるときに、下部層と上部層に対して、一段と優れた付着強度を示す。
また、中間層のTiBN層は、例えば、TiB2焼結体をターゲットとしたアルゴン−窒素混合雰囲気中で、DCスパッタリングで成膜することができる。
上部層(TiAlN層):
TiAlN層からなる上部層は、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性および耐高温酸化性を具備する層であるが、該上部層を、
組成式:(Ti1−YAlY)N層
で表した場合、Yの値(但し、原子比)が0.4〜0.65を満足する組成割合であるときに、最も好ましい特性を発揮する。
即ち、上部層の構成成分であるTiは所定の高温強度の維持に寄与し、Al成分は高温硬さ、耐熱性、耐高温酸化性の向上に寄与するが、Alの含有割合Yが0.65を超えると耐高温酸化性は向上するものの、Ti含有割合の相対的な減少によって耐摩耗性が低下し、一方、Alの含有割合Yが0.4未満になると、高温硬さ、耐熱性が低下し、その結果、耐摩耗性の低下がみられるようになることから、Alの含有割合Yの値を0.4〜0.65とすることが好ましい。
また、上部層の平均層厚が1.0μm未満では、自身のもつ高温硬さ、耐熱性および耐高温酸化性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が2.0μmを越えると、欠損が生じ易くなることから、その平均層厚を1.0〜2.0μmと定めた。
TiAlN層からなる上部層は、通常用いられるアークイオンプレーティング(AIP)法によって成膜することができる。
TiAlN層からなる上部層は、すぐれた高温強度、高温硬さ、耐熱性および耐高温酸化性を具備する層であるが、該上部層を、
組成式:(Ti1−YAlY)N層
で表した場合、Yの値(但し、原子比)が0.4〜0.65を満足する組成割合であるときに、最も好ましい特性を発揮する。
即ち、上部層の構成成分であるTiは所定の高温強度の維持に寄与し、Al成分は高温硬さ、耐熱性、耐高温酸化性の向上に寄与するが、Alの含有割合Yが0.65を超えると耐高温酸化性は向上するものの、Ti含有割合の相対的な減少によって耐摩耗性が低下し、一方、Alの含有割合Yが0.4未満になると、高温硬さ、耐熱性が低下し、その結果、耐摩耗性の低下がみられるようになることから、Alの含有割合Yの値を0.4〜0.65とすることが好ましい。
また、上部層の平均層厚が1.0μm未満では、自身のもつ高温硬さ、耐熱性および耐高温酸化性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が2.0μmを越えると、欠損が生じ易くなることから、その平均層厚を1.0〜2.0μmと定めた。
TiAlN層からなる上部層は、通常用いられるアークイオンプレーティング(AIP)法によって成膜することができる。
上記のとおり、本発明では、70vol%以上のcBNを含有するcBN工具基体表面にTiAlN層からなる硬質被覆層を形成するにあたり、cBN工具基体とTiAlN層の間に、下部層としてaBN層、また、中間層としてTiBN層を介在形成することにより、cBN工具基体と硬質被覆層間の付着強度の向上が図られ、その結果、本発明の表面被覆切削工具は、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削という厳しい切削条件下で用いた場合でも、欠損発生の恐れはなく、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を維持し、工具寿命の大幅な延長を図ることが可能である。
以下に、本発明の表面被覆切削工具を実施例に基づいて説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、AlN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、Ti3Al粉末、Ti2Al粉末、TiAl3粉末、Al粉末、Al2O3粉末、Co粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置またはダイヤモンド切断機にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正方形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のインサート形状をもち、cBN含有割合が70vol%以上である表1に示されるcBN工具基体1〜10を製造した。
ついで、図1に示される成膜装置、即ち、TiB2焼結体ターゲットおよびh−BN焼結体ターゲットを備えたスパッタリング装置と、Ti−Al合金ターゲットを備えたアークイオンプレーティング装置を併設した成膜装置の内部にcBN工具基体を装着し、
上記のcBN工具基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、前記装置内に自転公転自在に支持装着し、
(a)まず、装置内を真空排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入し、1.5PaのArガス雰囲気とし、cBN工具基体1に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、前記cBN工具基体をArガスボンバード洗浄し、
(b)ついで、前記装置内に、ArとN2との混合ガス(Ar/N2=50%)を導入し、作動圧を3.3Paになるように制御し、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体側に−20Vの直流バイアス電圧を印加し、h−BN焼結体ターゲット側に500Wの13.56MHzの周波数の高周波を印加することにより、cBN工具基体の上に表2に示される目標膜厚のaBN層(下部層)を形成し、
(c)ついで、前記装置内をArとN2との混合ガス(Ar/N2=50%)雰囲気に維持し、かつ、作動圧を3.3Pa,500℃に維持したまま、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、TiB2焼結体のターゲットに直流電源を用いてスパッタを行うことにより、前記aBN層(下部層)の表面に表2に示される目標層厚、所定組成のTiBN層からなる中間層(TiBN層)を形成し、
(d)ついで、装置内を500℃とした状態で、cBN工具基体に−15〜−25Vの直流バイアス電圧を印加して、Ti−Al合金カソード電極とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記中間層(TiBN層)の表面に表3に示される目標層厚、所定組成のTiAlN層からなる上部層を形成することにより、
ISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明cBN被覆工具1〜10を作製した。
上記のcBN工具基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、前記装置内に自転公転自在に支持装着し、
(a)まず、装置内を真空排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入し、1.5PaのArガス雰囲気とし、cBN工具基体1に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、前記cBN工具基体をArガスボンバード洗浄し、
(b)ついで、前記装置内に、ArとN2との混合ガス(Ar/N2=50%)を導入し、作動圧を3.3Paになるように制御し、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体側に−20Vの直流バイアス電圧を印加し、h−BN焼結体ターゲット側に500Wの13.56MHzの周波数の高周波を印加することにより、cBN工具基体の上に表2に示される目標膜厚のaBN層(下部層)を形成し、
(c)ついで、前記装置内をArとN2との混合ガス(Ar/N2=50%)雰囲気に維持し、かつ、作動圧を3.3Pa,500℃に維持したまま、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、TiB2焼結体のターゲットに直流電源を用いてスパッタを行うことにより、前記aBN層(下部層)の表面に表2に示される目標層厚、所定組成のTiBN層からなる中間層(TiBN層)を形成し、
(d)ついで、装置内を500℃とした状態で、cBN工具基体に−15〜−25Vの直流バイアス電圧を印加して、Ti−Al合金カソード電極とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記中間層(TiBN層)の表面に表3に示される目標層厚、所定組成のTiAlN層からなる上部層を形成することにより、
ISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明cBN被覆工具1〜10を作製した。
比較のため、実施例で使用したcBN工具基体1〜10の上に、表3に示される所定組成のTiAlN層からなる硬質被覆層を、アークイオンプレーティングにより所定の平均層厚で蒸着形成することにより、比較例cBN被覆工具1〜10を作製した。
上記本発明cBN被覆工具1〜10について、下部層(aBN層)、中間層(TiBN層)および上部層(TiAlN層)の膜組成を、また、比較例cBN被覆工具1〜10のTiAlN層についての膜組成を、オージェ電子分光分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
表2における中間層のX値、上部層の値は、各層の組成の平均値(5ヶ所の平均値)を示す。
また、本発明cBN被覆工具1〜10および比較例cBN被覆工具1〜10の各層の層厚を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
これらの測定値を、表2、3に示す。
表2における中間層のX値、上部層の値は、各層の組成の平均値(5ヶ所の平均値)を示す。
また、本発明cBN被覆工具1〜10および比較例cBN被覆工具1〜10の各層の層厚を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
これらの測定値を、表2、3に示す。
上記の本発明cBN被覆工具1〜10および比較例cBN被覆工具1〜10を用い、以下の切削条件で切削加工試験を実施した。
《切削条件1》
被削材:JIS・SUJ2の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HRA60)、
切削速度: 190 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.15 mm、
切削時間: 10 分
の条件での、焼入れ軸受鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min)、
《切削条件2》
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HRA62)、
切削速度: 180 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.15 mm、
切削時間: 10 分
の条件で、高硬度クロム鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、150m/min)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件1,2による切削加工試験の測定結果を表4に示した。
《切削条件1》
被削材:JIS・SUJ2の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HRA60)、
切削速度: 190 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.15 mm、
切削時間: 10 分
の条件での、焼入れ軸受鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min)、
《切削条件2》
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HRA62)、
切削速度: 180 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.15 mm、
切削時間: 10 分
の条件で、高硬度クロム鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、150m/min)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件1,2による切削加工試験の測定結果を表4に示した。
表2〜4に示される結果から、本発明cBN被覆切削工具1〜10は、70vol%以上のcBNを含有するcBN工具基体表面に、aBN層からなる下部層、TiBN層からなる中間層を介して、TiAlN層からなる上部層を形成することにより、cBN工具基体と硬質被覆層との付着強度が向上することから、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐欠損性を示すとともに、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮し、工具寿命の大幅な延長が図られている。
これに対して、比較例cBN被覆工具1〜10においては、cBN工具基体と硬質被覆層(TiAlN層)との付着強度が劣るため膜の剥離や欠損等を発生し、膜が剥離した場合には逃げ面摩耗が進行しやすく耐摩耗性に劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
これに対して、比較例cBN被覆工具1〜10においては、cBN工具基体と硬質被覆層(TiAlN層)との付着強度が劣るため膜の剥離や欠損等を発生し、膜が剥離した場合には逃げ面摩耗が進行しやすく耐摩耗性に劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明のcBN被覆工具は、高硬度鋼の高速断続切削加工用の切削工具として好適であり、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものであるが、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工にも勿論使用可能である。
Claims (2)
- 70vol%以上の立方晶窒化ほう素を含有し、残部は硬質分散相と結合相とからなる立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製工具基体の表面に、
平均層厚0.1〜0.3μmの非晶質BN層からなる下部層、
平均層厚0.1〜0.3μmのTiとBとNの複合化合物層からなる中間層、
平均層厚1.0〜2.0μmのTiとAlの複合窒化物層からなる上部層、
を順次蒸着形成したことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記中間層は、
組成式:Ti0.33(1−X)B0.67(1−X)NX
で表した場合、Xの値(但し、原子比)が0.05〜0.5を満足する組成割合のTiとBとNの複合化合物層であり、また、
上記上部層は、
組成式:(Ti1−YAlY)N層
で表した場合、Yの値(但し、原子比)が0.4〜0.65を満足する組成割合のTiとAlの複合窒化物層である請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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