JP5402507B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、切刃に衝撃的な負荷が断続的に作用する断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結材料製表面被覆切削工具(以下、cBN被覆工具という)に関する。
従来、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削加工には、被削材との親和性の低い工具材料として、cBN基超高圧焼結材料を用いることが知られており、耐摩耗性の向上、工具寿命の改善等の観点から、cBN基超高圧焼結材料の表面に硬質被覆層を被覆形成したcBN被覆工具も良く知られている。
例えば、特許文献1に示すように、cBN基超高圧焼結材料を工具基体(以下、cBN工具基体という)とし、その表面に4a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、酸窒化物、酸化物、Al等の1種の単層あるいは2種以上の複層からなり、層中の残留応力が−0.2〜0.2GPa、cBN工具基体の硬質相の残留応力が−0.5〜0GPaである、高温耐塑性変形性、耐摩耗性、耐欠損性に優れたcBN被覆工具が知られている。
また、特許文献2に示すように、cBN工具基体に4a、5a、6a族金属、Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の炭化物、窒化物、硼化物、酸化物等からなる硬質被覆層中に、0.1〜3GPaの圧縮残留応力を存在させた耐摩耗性、耐欠損性に優れたcBN被覆工具も知られている。
また、硬質被覆層中の応力の分布については、特許文献3に示すように、cBN工具基体表面に形成された硬質被覆層の厚さ方向に圧縮応力が変化しており、硬質被覆層の最表層で最小の圧縮応力を有し、被覆層中間点で極大の圧縮応力を示し、被覆層中間点からcBN工具基体表面までは一定の圧縮応力である応力分布を有するcBN被覆工具も知られており、このcBN被覆工具によれば、靭性、耐摩耗性、耐チッピング性が改善されることが知られている。
特開平6−330321号公報 特開2006−263857号公報 特開2006−35345号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は、通常の切削条件に加えて、より厳しい条件下での切削加工がおこなわれる傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、通常条件下での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じない。しかし、これを、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速断続切削に用いた場合には、切刃には断続的に繰り返し衝撃的な負荷が作用するが、cBN工具基体と硬質被覆層との付着強度が十分でないため、これが原因で、チッピング、欠損を生じやすく、そのため、比較的短時間で使用寿命に至り、長期の使用に亘って、十分な耐摩耗性を発揮することができない。
したがって、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮させるためには、cBN工具基体と硬質被覆層の付着強度を向上させることが大きな課題となっている。
本発明者等は、cBN基超高圧焼結材料を工具基体材料とし、硬質被覆層として、Ti,Cr,Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の窒化物、炭窒化物のうちの一種の単層あるいは二種以上の複層を形成したcBN被覆工具において、cBN工具基体と硬質被覆層間の付着強度向上を図るため鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
まず、本発明者等は、cBN工具基体に、例えば、PVDで硬質被覆層を蒸着形成してcBN被覆工具を作製し、これを、高速断続切削加工に供したところ、硬質被覆層内に存在する残留応力によってcBN工具基体に引張応力が働き、これが付着強度の低下を引き起こし、チッピング、欠損等を発生させる原因の一つであることを突き止めた。
そこで、cBN工具基体と硬質被覆層それぞれの残留応力の値およびcBN工具基体の残留応力と硬質被覆層の残留応力との相関についてさらに調査したところ、cBN工具基体と硬質被覆層の界面における両者の残留応力がそれぞれ−2GPa以下であって、かつ、両者の差の値が0.5GPa以内である場合には、cBN工具基体と硬質被覆層間の付着強度が大きく向上することを見出したのである。
さらに、cBN工具基体と硬質被覆層の界面における両者の残留応力をそれぞれ−2GPa以下とし、かつ、両者の差の値を0.5GPa以内とした上で、硬質被覆層中の残留応力が、硬質被覆層の表面に向かうにしたがって絶対値で次第に減少するような残留応力分布を構成すると、高速断続切削加工時の衝撃的負荷により発生した亀裂の硬質被覆層内への進展を抑制できるようになるため、より一段と、チッピング、欠損の発生を防止し得るようになることを見出したのである。
したがって、cBN工具基体の残留応力及び硬質被覆層の残留応力を所定値以上とし、さらに、cBN工具基体の残留応力と硬質被覆層のそれとの差を所定値以内に抑えたcBN被覆工具、あるいは、これに加えてさらに、硬質被覆層の表面に向かうにしたがって残留応力が絶対値で次第に減少するような残留応力分布を形成せしめたcBN被覆工具は、すぐれた付着強度を有することとなり、その結果として、焼入れ鋼等の高硬度被削材の高速断続切削加工において、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することはなく、優れた耐摩耗性を発揮するとともに、工具寿命の延命化が図られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体表面に、硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具であって、
前記工具基体表面と硬質被覆層との界面における、工具基体中の残留応力の値および硬質被覆層中の残留応力の値がいずれも−2GPa以下の残留応力であって、かつ、工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値が、0.5GPa以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記硬質被覆層が、Ti,Cr,Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の窒化物、炭窒化物のうちの一種の単層あるいは二種以上の複層で構成されていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記硬質被覆層中の残留応力の値が、硬質被覆層の表面に向かって絶対値で次第に小さくなる残留応力分布を示すことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明について、以下に説明する。
立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製工具基体(cBN工具基体):
超高圧焼結材料製工具基体中の窒化ほう素(cBN)は、きわめて硬質で、焼結材料中で分散相を形成し、そしてこの分散相によって耐摩耗性の向上に寄与する。
cBN工具基体中の他の構成成分、例えば、結合相等としては、周期律表VIa、Va、VIa族元素の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物ならびにこれらの固溶体からなる群の中から選択された少なくとも1種とアルミニウム化合物のセラミックス系結合材を用いることができるが、その他の成分が含有されることを何ら妨げるものではない。
cBN工具基体の表面(即ち、硬質被覆層との界面)に所定の残留応力を形成させるためには、例えば、以下の方法を用いることができる。
通常の焼結法によってcBN工具基体を作製した後、例えば、PVDにより硬質被覆層を成膜する際の前処理として、cBN工具基体に対してアルミナ粒子によるウエットブラスト処理を施し、その噴射圧力、時間を調整することにより、cBN工具基体表面から最大5μmの深さにおける残留応力の値をコントロールすることができる。
表1に、cBN粒径が2μm以下であるcBN工具基体の表面にウエットブラスト処理を行った場合、cBN工具基体表面に形成される残留応力の値の一例を示す。
表1によれば、ウエットブラストの噴射圧力を0〜0.24GPa、噴射時間を0〜60secの間で調整することによって、cBN工具基体表面に形成される残留応力の値は、−0.27〜−3.38GPaの範囲にコントロールできることがわかる。
cBN工具基体表面に形成される残留応力の値は、cBN工具基体中に含有されるTiN相について、XRDを利用した「2θ−sinψ法」によって測定し、算出した。
Figure 0005402507
硬質被覆層:
硬質被覆層としては、Ti,Cr,Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の窒化物、炭窒化物のうちの一種の単層あるいは二種以上の複層から構成することができ、例えば、TiN層、TiAlN層を用いることができる。
硬質被覆層の成膜は、例えば、アークイオンプレーティング(AIP)として知られるPVD法によって行うことができ、特に、成膜条件の内のバイアス条件の調整によって、成膜される硬質被覆層中の残留応力の値をコントロールすることができる。
表2に、AIPによって成膜したTiAlN層中の残留応力の値と、バイアス条件との関連を示す。
なお、AIP成膜の条件は、
反応ガス種 : N
反応ガス圧 :3 Pa、
アーク電流値:110 A、
ヒータ温度 :750 ℃、
目標膜厚 :2 μm、
である。
表2によれば、バイアス電圧を−25〜−200Vの間で調整することによって、硬質被覆層(TiAlN層)中に形成される残留応力の値は、−0.9〜−4.9GPaの範囲にコントロールできることがわかる。
また、硬質被覆層中の残留応力の値は、cBN工具基体表面の残留応力測定の場合と同様、層中のTiN相について、XRDを利用した「2θ−sinψ法」によって測定することができる。
Figure 0005402507
硬質被覆層中の残留応力を、硬質被覆層の表面に向かって絶対値で次第に小さくなる残留応力分布形態とするためには、表2から明らかなように、成膜の進行とともにバイアス電圧を次第に小さくしていけば良い。
なお、層厚方向に対して残留応力の値が変化する場合には、残留応力分布の値は、X線の侵入深さを変化させることにより、層中の深さ別残留応力を測定する、通称「薄膜応力測定法」により測定することができる。
本発明では、cBN工具基体表面と硬質被覆層との界面における、cBN工具基体中の残留応力の値および硬質被覆層中の残留応力の値をいずれも−2GPa以下の残留応力としているが、いずれか、あるいは、両者の残留応力の値が−2GPaを超える場合には、切削加工時に、硬質被覆層表面に亀裂が発生した場合、膜中へ亀裂が進展しやすくなり、チッピングが生じ易くなる。
また、cBN工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値が、0.5GPaを超えると、切削加工時に、cBN工具基体と硬質被覆層との界面が脆弱化して、被覆層の剥離が生じ易くなり耐チッピング性が悪化してしまう。
したがって、本発明では、cBN工具基体表面と硬質被覆層との界面における、cBN工具基体中の残留応力の値および硬質被覆層中の残留応力の値をいずれも−2GPa以下の残留応力と定め、また、cBN工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値は、0.5GPa以下と定めた。
上記のとおり、本発明の表面被覆切削工具は、cBN工具基体と硬質被覆層との界面における、工具基体中の残留応力の値および硬質被覆層中の残留応力の値がいずれも−2GPa以下の残留応力であって、かつ、工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値が、0.5GPa以下であることから、これを、切刃に断続的・繰り返しの衝撃的な負荷が作用する高硬度鋼の高速断続切削に用いた場合でも、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することはなく、さらに、硬質被覆層中の残留応力分布を、硬質被覆層の表面に向かって絶対値で次第に小さくした場合には、より一段と優れた耐チッピング性、耐欠損性を示し、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を発揮するものである。
以下に、本発明の表面被覆切削工具を実施例に基づいて説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、AlN粉末、Ni粉末、Al粉末、Co粉末、W粉末を用意し、これら原料粉末を表3に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置またはダイヤモンド切断機にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正方形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のインサート形状をもち、cBN含有割合が30〜60wt%である表3に示される本発明cBN工具基体1〜10を製造した。
Figure 0005402507
ついで、上記本発明cBN工具基体1〜10に対して、表4に示す噴射圧力、噴射時間にてアルミナ粒子を用いたウエットブラスト処理を施し、その後、アセトン中で超音波洗浄し乾燥した。
乾燥後の上記本発明cBN工具基体1〜10の表面の残留応力σmを、cBN工具基体中の結合相に含有されるTiN相について、XRDを利用した「2θ−sinψ法」によって測定することにより算出した。
残留応力の値を表6に示す。
ついで、上記本発明cBN工具基体1〜10を、物理蒸着装置の一種であるアークイオンプレーティング(AIP)装置内に自転公転自在に支持装着し、
まず、装置内を真空排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入し、1.5PaのArガス雰囲気とし、cBN工具基体1に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、前記cBN工具基体をArガスボンバード洗浄し、
ついで、前記装置内で、表5に示す条件(バイアス電圧、反応ガスの種類、反応ガス圧力、ターゲットの種類等)でアークイオンプレーティングを行い、所定の目標層厚、層種別の硬質被覆層を形成することにより、
ISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明cBN被覆工具1〜10(本発明1〜10という)を作製した。
上記本発明1〜10について、cBN工具基体表面と硬質被覆層との界面における硬質被覆層中の残留応力σcを、X線の侵入深さを変化させることにより、層中の深さ別残留応力を測定する、通称「薄膜応力測定法」により測定した。
また、成膜中に、バイアス電圧を変化させたものについては、層厚方向の応力分布(硬質被覆層表層における残留応力σs)を、前記と同様に、「薄膜応力測定法」により測定した。
これらの値(但し、層厚方向の応力分布については、これに代えて、硬質被覆層表層における残留応力の値σs)を、表6に示す。
Figure 0005402507
Figure 0005402507
Figure 0005402507
比較のため、実施例で使用したcBN工具基体1〜10に、表7に示す条件でウエットブラスト処理を施し、あるいは、施さず、その後、アセトン中で超音波洗浄し乾燥し、比較例cBN工具基体1〜10を作製した。
乾燥後の上記比較例cBN工具基体1〜10の表面の残留応力σmを、cBN工具基体中の結合相に含有されるTiN相について、XRDを利用して「2θ−sinψ法」によって測定し、算出した。

残留応力の値を表9に示す。
ついで、上記比較例cBN工具基体1〜10を、アークイオンプレーティング(AIP)装置内に自転公転自在に支持装着し、
まず、装置内を真空排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入し、1.5PaのArガス雰囲気とし、cBN工具基体1に−100Vの直流バイアス電圧を印加して、前記cBN工具基体をArガスボンバード洗浄し、
ついで、前記装置内で、表8に示す条件(バイアス電圧、反応ガスの種類、反応ガス圧力、ターゲットの種類等)でアークイオンプレーティングを行い、所定の目標層厚、層種別の硬質被覆層を形成することにより、
ISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の比較例cBN被覆工具1〜10(比較例1〜10という)を作製した。
上記比較例1〜10について、cBN工具基体表面と硬質被覆層との界面における硬質被覆層中の残留応力σcを、X線の侵入深さを変化させることにより、層中の深さ別残留応力を測定する、通称「薄膜応力測定法」により測定した。
また、成膜中に、バイアス電圧を変化させたものについては、層厚方向の応力分布(硬質被覆層表層における残留応力σs)を、前記と同様に、「薄膜応力測定法」により測定した。
これらの値(但し、層厚方向の応力分布については、これに代えて、硬質被覆層表層における残留応力の値σs)を、表9に示す。
Figure 0005402507
Figure 0005402507
Figure 0005402507
表6及び表9の比較から、本発明1〜10は、いずれも、cBN工具基体と硬質被覆層との界面における、工具基体中の残留応力の値(σm)および硬質被覆層中の残留応力の値(σc)がいずれも−2GPa以下の残留応力であって、かつ、工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値(σm−σc)が、0.5GPa以下であり、加えて、本発明1〜10は、硬質被覆層の表層の残留応力の値(σs)が、σcより絶対値で小さくなっており、硬質被覆層の表層に向かうにしたがって、残留応力の値が絶対値で減少していることが分かる。
これに対して、比較例1〜10では、σm,σcの何れかが−2GPaを超えているか、または、σm−σcの値が0.5GPaを超えており、いずれも本発明の規定を満たさないものであることが分かる。
上記の本発明1〜10および比較例1〜10を用い、以下の切削条件で切削加工試験を実施した。
《切削条件1》
被削材:JIS・SUJ2の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HA60)、
切削速度: 180 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.12 mm、
切削時間: 10 分
の条件での、焼入れ軸受鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min)、
《切削条件2》
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒(硬さ:HA62)、
切削速度: 200 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.12 mm、
切削時間: 10 分
の条件で、高硬度クロム鋼の湿式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は、150m/min)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件1,2による切削加工試験の測定結果を表10に示した。
Figure 0005402507
表10に示される結果から、本発明cBN被覆工具1〜10は、切刃に断続的・繰り返しの衝撃的な負荷が作用する高硬度鋼の高速断続切削に用いた場合でも、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することはなく、長期の使用に亘って優れた耐摩耗性を示した。
これに対して、比較例cBN被覆工具1〜10においては、cBN工具基体と硬質被覆層との付着強度が劣るためチッピング、欠損、剥離等を発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明のcBN被覆工具は、高硬度鋼の高速断続切削加工用の切削工具として好適であり、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものであるが、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工にも勿論使用可能である。

Claims (3)

  1. 立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体表面に、硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具であって、
    前記工具基体表面と硬質被覆層との界面における、工具基体中の残留応力の値および硬質被覆層中の残留応力の値がいずれも−2GPa以下の残留応力であって、かつ、工具基体中の残留応力と硬質被覆層中の残留応力の差の値が、0.5GPa以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記硬質被覆層が、Ti,Cr,Al及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の窒化物、炭窒化物のうちの一種の単層あるいは二種以上の複層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記硬質被覆層中の残留応力の値が、硬質被覆層の表面に向かって絶対値で次第に小さくなる残留応力分布を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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