以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
先ず、本実施の形態の光ディスク1の構成を図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態の光ディスク1の断面図である。図1に示すように、本実施の形態の光ディスク1は、第1の基板2と、第1の基板2の上に設けられている第1の情報記録層4と、第1の情報記録層4の上に設けられている第2の基板6と、第2の基板6の上に設けられている第2の情報記録層8と、第2の情報記録層8の上に設けられている中間層9と、中間層9の上に設けられている第3の情報記録層11と、第3の情報記録層11の上に設けられている保護層12とを有する。
第1の基板2及び第1の情報記録層4は、従来のDVD−ROMに対応する。第2の基板6及び第2の情報記録層8と、中間層9及び第3の情報記録層11は、従来のBD−ROMに対応する。
第1の基板2は、ポリカーボネートにより形成されており、その直径は120mmであって、厚みは0.6mmである。第1の基板2の上面には、内周から外周に向けて0.74μmのピッチの凹状の第1の情報記録ピット3が形成されている。第1の情報記録ピット3は、DVD−ROM規格に準拠している。従来のDVD−ROMとの互換性を保持しいわゆる逆読み出しとするため、第1の情報記録ピット3の螺旋の向きは、内周から外周の向きである。
第1の情報記録層4は、第1の基板2の上面にAg、Al、Au等の金属やそれらを主成分とする合金等をスパッタリングすること等により形成される反射膜であって、DVD用のレーザ光Lrを反射する。第1の情報記録層4の厚みは、DVD用のレーザ光Lrに対する反射率が45%以上になるように設計される。
第2の基板6は、BD−ROM規格に準拠した基板であって、その直径は120mmであり、厚みは0.4mmから0.5mmである。第2の基板6の上面には、内周から外周に向けて0.32μmのピッチの凹状の第2の情報記録ピット7が形成されている。第2の情報記録ピット7はBD−ROM規格に準拠している。なお、第1の情報記録層4と第2の基板6とは、粘着シート5によって接着される。
第2の情報記録層8は、DVD用のレーザ光Lrを透過するとともに、BD用のレーザ光Lbを反射する層であって、例えば、第2の基板6の上面に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、及びチタン(Ti)の全部又は一部と、窒素、酸素及び水素の全部又は一部等とで構成される化合物をスパッタリングすること等により形成される。第2の情報記録層8の厚みは、DVD用のレーザ光Lrに対する透過率が50%以上となり、BD用のレーザ光Lbを十分に反射するように設計される。
中間層9は、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbを透過する層であって、第2の情報記録層8の上面に、スピンコート法で紫外線硬化樹脂等を塗布することにより形成される。中間層9の厚みは、DVD用のレーザ光Lrに対する透過率及びBD用のレーザ光Lbに対する透過率が80%以上となるように設計され、例えば25μmである。中間層9の上面には、0.32μmのピッチの凹状の第3の情報記録ピット10が形成されている。第3の情報記録ピット10は、BD−ROM規格に準拠している。また、第3の情報記録ピット10は、中間層9の形成過程で、中間層9を形成する紫外線硬化樹脂を透明なポリカーボネート樹脂又はポリオレフィン樹脂のスタンパを用いて紫外線で硬化させることにより形成される。
第3の情報記録層11は、DVD用のレーザ光Lrを透過するとともに、BD用のレーザ光Lbの一部を反射し残部を透過する層であって、例えば、中間層9の上面に、Si、ZnS、Zr、Y、W、Ta、Nb、Cr、Hf、Ce及びTiの全部又は一部と、酸素及び窒素の全部又は一部等とで構成される化合物をスパッタリング又は蒸着すること等により形成される。第3の情報記録層11の厚みは、DVD用のレーザ光Lrを80%以上透過し、BD用のレーザ光Lbを70%以上透過するとともに12%以上反射するように設計される。
保護層12は、紫外線硬化樹脂又はポリカーボネートのシート等の層であって、その厚みは、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbを80%以上透過するように設計され、例えば75μmである。また、保護層12の表面には、傷や汚れをつきにくくするための厚み1μm程度のハードコート層が塗布されてもよい。
上述したように、本実施の形態の光ディスク1は、DVD−ROMに対応するDVD用信号面である第1の情報記録層4と、BD−ROMに対応するBD用信号面である第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11とを有する。そのため、本実施の形態の光ディスク1は、DVD再生機でもBD再生機でも再生することができる。また、BD−ROMに対応する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11に、BD規格に対応するより多くの情報(例えばより高画質の動画像)を記録することができる。
なお、第1の情報記録層4に記録される情報は、DVD用のレーザ光LrをNA(開口数)0.6又は0.65のDVD用対物レンズ39rにより第1の情報記録層4に集めてその反射光を処理することにより再生される。第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11に記録される情報は、BD用のレーザ光LbをNA0.85のBD用対物レンズ39bにより第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11に集めてその反射光を処理することにより再生される。
ところで、DVD−ROMに対応する第1の情報記録層4と、BD−ROMに対応する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11とを有する本実施の形態の光ディスク1の再生をDVD再生機で試みようとしたとき、正常に再生されない場合がある。そこで、以下では、DVD再生機で正常に再生される光ディスク1の構成を説明する。
その説明のためにその説明に先立って、本実施の形態の光ディスク1を再生するDVD用光ディスクドライブ装置20の動作を図2を用いて説明する。図2は、DVD用光ディスクドライブ装置20の構成図である。
光ディスク1がDVD用光ディスクドライブ装置20に装填されると、光ディスク1は不図示のスピンドルモータによって回転する。光ディスク1のレーザビーム入射面1aの下方に光ピックアップ30が配置されている。レーザビーム入射面1aは、光ディスク1を構成する保護層12の表面である。
光ピックアップ30は回転自在な光ディスク1のディスク径方向に移動自在に設けられている。光ピックアップ30は、半導体レーザ光源31と、コリメータレンズ32と、偏光ビームスプリッタ34と、モニタ用集光レンズ35と、モニタ用光検出器36と、立ち上げミラー37と、1/4波長板38と、DVD用対物レンズ39rと、レンズホルダ40と、トラッキングコイル41と、フォーカスコイル42と、ハーフプリズム43と、検出レンズ44と、多分割受光検出器45と、シリンドリカルレンズ46と、フォーカス制御用4分割検出器47とを有する。
光ピックアップ30において、半導体レーザ光源31から射出した赤色のDVD用のレーザ光Lrは、コリメータレンズ32により平行光に変換される。
コリメータレンズ32により平行光に変換されたDVD用のレーザ光Lrは、偏光ビームスプリッタ34に入射し、偏光ビームスプリッタ34の内部に設けられている偏光選択性誘電体多層膜34a(p偏光光:95%透過、5%反射、s偏光光:反射)を95%程度透過する。偏光ビームスプリッタ34に入射した光のうちの5%程度の光は、すなわち偏光選択性誘電体多層膜34aで反射された光は、モニタ用のレーザ光としてモニタ用集光レンズ35を介してモニタ用光検出器36に入射する。モニタ用光検出器36は、半導体レーザ光源31から射出したDVD用のレーザ光Lrの出力を監視する。
偏光ビームスプリッタ34を透過したDVD用のレーザ光Lrは、立ち上げミラー37により光路を90°曲げられて上方に向かい、DVD用のレーザ光Lrに対して1/4波長の位相差を与えて円偏光光に変換する1/4波長板38を経由し、NAが0.6〜0.65程度のDVD用対物レンズ39rに入射する。DVD用対物レンズ39rが取り付けられているレンズホルダ40の外側には、トラッキングコイル41とフォーカスコイル42とが取り付けられている。
DVD用対物レンズ39rにより絞り込まれたDVD用のレーザ光Lrは、光ディスク1のレーザビーム入射面1aに入射する。レーザビーム入射面1aに入射したDVD用のレーザ光Lrは、BD用信号面としての第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11を透過して、DVD用信号面としての第1の情報記録層4にスポット状に集められる。
第1の情報記録層4により反射された戻り光は、DVD用対物レンズ39rに再度入射し、1/4波長板38を通過して往路とは偏光方向が直交した直線偏光光(s偏光光)となって、立ち上げミラー37に向かう。そして、戻り光は、立ち上げミラー37を経由し、偏光ビームスプリッタ34の偏光選択性誘電体多層膜34aにより反射され、ハーフプリズム43に向かう。
ハーフプリズム43は、偏光ビームスプリッタ34からの光を、検出レンズ44に向かう光(RF信号系の光)と、シリンドリカルレンズ46に向かう光とに分割する。RF信号系の光は、検出レンズ44によって、多分割受光検出器45の上に集められる。シリンドリカルレンズ46に向かう光は、シリンドリカルレンズ46により非点収差が与えられて、フォーカス制御用4分割検出器47に向かう。
図3は、多分割受光検出器45の構成図である。図3に示すように、多分割受光検出器45は、光ディスク1のトラック方向に沿った直線と光ディスク径方向に沿った直線とを直交させて4分割された4個の検出領域A〜検出領域Dを有する。なお、図3において、符号A〜Dは、多分割受光検出器45の各検出領域を示し、以下の説明において、符号a〜dは、各検出領域における受光量を示す。
多分割受光検出器45は、各検出領域における受光量を、DVD用光ディスクドライブ装置20の内部に設けられているRF信号処理回路50と、トラッキング制御回路60とに出力する。
RF信号処理回路50は、下記の式(1)に示すように、RF信号系の光を受けた多分割受光検出器45内の検出領域A〜検出領域Dの各受光量を加算してRF信号を算出する。RF信号は、光ディスク1の第1の情報記録層4に記録されたメインデータの信号となる。
RF信号=(a+b+c+d) ・・・(1)
なお、“a”は検出領域Aにおける受光量であり、“b”は検出領域Bにおける受光量であり、“c”は検出領域Cにおける受光量であって、“d”は検出領域Dにおける受光量である。
トラッキング制御回路60は、周知のディファレンシャルフェーズディテクション法(DPD法)を用いて、対角線差信号を得る。
具体的には、トラッキング制御回路60は、下記の式(2)に示すように、多分割受光検出器45の4個の検出領域A〜検出領域Dのうちの一方の対角線上の2個の検出領域における受光量の和と、他方の対角線上の2個の検出領域における受光量の和との差を算出して対角線差信号を得る。すなわち、トラッキング制御回路60は、検出領域A及び検出領域Cの合計受光量(a+c)と、検出領域B及び検出領域Dの合計受光量(b+d)との差を算出し、対角線差信号を得る。
対角線差信号={(a+c)−(b+d)} ・・・(2)
トラッキング制御回路60は、式(2)により得られた対角線差信号(ディファレンシャルフェーズディテクション信号DPD)をトラッキングエラー信号TEとして用い、対角線差信号(ディファレンシャルフェーズディテクション信号DPD)を光ピックアップ30の内部のトラッキングコイル41に供給してDVD用対物レンズ39rを移動させてトラッキング制御を行う。
次に、ハーフプリズム43からシリンドリカルレンズ46に向かう光について説明する。上述したように、シリンドリカルレンズ46に向かう光は、シリンドリカルレンズ46によって非点収差が与えられて、フォーカス制御用4分割検出器47の上に集められる。
図4は、フォーカス制御用4分割検出器47の構成図である。フォーカス制御用4分割検出器47は、多分割受光検出器45と同様な手段であって、図4に示すように、光ディスク1のトラック方向に沿った直線と光ディスク径方向に沿った直線とを直交させて4分割された4個の検出領域E〜検出領域Hを有する。なお、図4及び図8において、符号E〜Hは、フォーカス制御用4分割検出器47の各検出領域を示し、以下の説明において、符号e〜hは、各検出領域における受光量を示す。また、検出領域Eは多分割受光検出器45の検出領域Aに対応し、検出領域Fは多分割受光検出器45の検出領域Bに対応し、検出領域Gは多分割受光検出器45の検出領域Cに対応し、検出領域Hは多分割受光検出器45の検出領域Dに対応する。
フォーカス制御用4分割検出器47は、各検出領域における受光量を、DVD用光ディスクドライブ装置20の内部に設けられているフォーカス制御回路70に出力する。
フォーカス制御回路70は、周知の非点収差法を用いて、フォーカスエラー信号FEを求める。具体的には、フォーカス制御回路70は、下記の式(3)に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47の4個の検出領域E〜検出領域Hのうちの一方の対角に位置する2個の検出領域における受光量の和と、他方の対角に位置する2個の検出領域における受光量の和との差を算出し、フォーカスエラー信号FEを得る。すなわち、フォーカス制御回路70は、検出領域E及び検出領域Gの合計受光量(e+g)と、検出領域F及び検出領域Hの合計受光量(f+h)との差を算出し、フォーカスエラー信号FEを得る。
フォーカスエラー信号FE={(e+g)−(f+h)} ・・・(3)
なお、“e”は検出領域Eにおける受光量であり、“f”は検出領域Fにおける受光量であり、“g”は検出領域Gにおける受光量であって、“h”は検出領域Hにおける受光量である。
そして、フォーカス制御回路70は、フォーカスエラー信号FEを光ピックアップ30の内部のフォーカスコイル42に供給しDVD用対物レンズ39rを移動させてフォーカス制御を行う。つまり、フォーカス制御回路70は、フォーカスエラー信号FEに基づいてDVD用対物レンズ39rを光ディスク1に対して近づけたり遠ざけたりしてフォーカスサーチすることで、DVD用のレーザ光Lrが第1の情報記録層4にジャストフォーカスするように制御する。
ところで、DVD用のレーザ光Lrを第1の情報記録層4にジャストフォーカスさせるDVD用対物レンズ39rの位置は一か所であり、その位置以外では、DVD用のレーザ光Lrは第1の情報記録層4にジャストフォーカスしない。フォーカスサーチの実行中、フォーカス制御回路70は、DVD用対物レンズ39rと光ディスク1との距離を変えて光ディスク1からの反射光の量を調べ、反射光の量が最大になる位置にDVD用対物レンズ39rを移動させる。その際、DVD用対物レンズ39rと光ディスク1との距離に対するRF信号の値を示すデータが得られる。
図5及び図6は、フォーカスサーチの実行中に得られる、DVD用対物レンズ39rと光ディスク1との距離と、RF信号との関係を示す図である。なお、RF信号は、光ディスク1の各部位からの反射光の量を示すが、入射光の量が一定であるので、各部位の反射率に比例する。また、図5及び図6において、符号“X”は、DVD用のレーザ光Lrに対するレーザビーム入射面1aの反射を示し、符号“Y”は、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射を示し、符号“Z”は、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射を示す。
以下に、光ディスク1がDVD再生機で正常に再生される場合の条件を調べるために、光ディスク1についてのRF信号の値を利用し、DVD用のレーザ光Lrに対する光ディスク1の第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率と、レーザビーム入射面1aの反射率との関係を調べたので、その結果を述べる。
なお、RF信号を用いて反射率を測定する理由は、以下の通りである。すなわち、レーザビーム入射面1a、第3の情報記録層11、及び第2の情報記録層8の各反射率を光学的に正確に測定しようとすると、正確な反射率測定光学装置が必要であり、且つ、測定ステップも多数に及ぶ。また、フォーカスエラー信号FEを用いると、後述するように問題が発生するからである。それに対し、RF信号を用いると、反射率を簡便にかつ比較的に正確に測定することができる。そのため、RF信号を用いて反射率を測定する。
反射率を得るためにフォーカスエラー信号FEを用いると問題が発生することを図7及び図8を用いて説明する。
図7は、球面収差が小さい場合のフォーカス制御用4分割検出器47における集光の様子と、フォーカスエラー信号FEと、RF信号とを示す図である。具体的には、図7(A)が、球面収差が小さい場合のフォーカス制御用4分割検出器47における集光の様子を示しており、図7(B)が、球面収差が小さい場合のフォーカスエラー信号FEを示しており、図7(C)が、球面収差が小さい場合のRF信号を示している。図7(A)、図7(B)、及び図7(C)において、垂直の方向に重なる各図は互いに関連している。
図8は、球面収差が大きい場合のフォーカス制御用4分割検出器47における集光の様子と、フォーカスエラー信号FEと、RF信号とを示す図である。具体的には、図8(A)が、球面収差が大きい場合のフォーカス制御用4分割検出器47における集光の様子を示しており、図8(B)が、球面収差が大きい場合のフォーカスエラー信号FEを示しており、図8(C)が、球面収差が大きい場合のRF信号を示している。図8(A)、図8(B)、及び図8(C)において、垂直の方向に重なる各図は互いに関連している。
球面収差が小さい場合、図7(A)の中央の図に示すように、シリンドリカルレンズ46によって集められる光ディスク1の各情報記録層からの反射光は、情報記録層に焦点が合うとフォーカス制御用4分割検出器47の中央に小さな円形となって集められる。しかしながら、情報記録層が焦点より近い又は遠いと、図7(A)の両端から2個目の2個の図に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47における光は45度傾いた楕円となる。情報記録層が更に焦点より近く又は遠くなると、図7(A)の両端の2個の図に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47における光の量は少なくなる。
球面収差が大きい場合、図8(A)の中央の図に示すように、シリンドリカルレンズ46によって集められる光ディスク1の各情報記録層からの反射光は、情報記録層に焦点が合うとフォーカス制御用4分割検出器47の中央に小さな円形となって集められる。しかしながら、図7(A)の中央の図と図8(A)の中央の図とを比較すると明らかなように、フォーカス制御用4分割検出器47の中央に集められる光の円の大きさは、球面収差が小さい場合に比べて大きい。情報記録層が焦点より近い又は遠いと、図8(A)の両端から2番目の2個の図に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47における光は45度傾いた楕円となる。情報記録層が更に焦点より近く又は遠くなると、図8(A)の両端の2個の図に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47における光の量は少なくなる。
通常、DVD用の光ピックアップは、光ディスク1のレーザビーム入射面1aから0.6mmの第1の情報記録層4から収差が少なく品位の良い反射光が得られるように設計されている。それに対して、光ディスク1の第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11は、球面収差が考慮されておらず大きな収差を有する。すなわち、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11からの反射光は、図8(A)に示すように、フォーカス制御用4分割検出器47の上に集められる。
図7(B)に示す球面収差が小さい場合のフォーカスエラー信号FEと、図8(B)に示す球面収差が大きい場合のフォーカスエラー信号FEとを比較すると明らかなように、球面収差が大きい場合のフォーカスエラー信号FEの振幅は、球面収差が小さい場合のフォーカスエラー信号FEの振幅より小さい。そのため、球面収差が大きい場合のフォーカスエラー信号FEを反射率を得るために用いると、正確な反射率を得ることができない。それに対して、図8(C)に示す球面収差が大きい場合のRF信号の振幅は、図7(C)に示す球面収差が小さい場合のRF信号の振幅と同程度であって、比較的に正確な反射率を得ることができる。
したがって、反射率を得るためには、フォーカスエラー信号FEを用いると問題が発生するのでフォーカスエラー信号FEを用いずに、RF信号を用いる。
次に、光ディスク1がDVD再生機で正常に再生される場合の条件を調べるために、光ディスク1についてのRF信号の値を利用した、DVD用のレーザ光Lrに対する光ディスク1の第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率と、レーザビーム入射面1aの反射率との関係を、図5及び図6を用いて説明する。
本実施の形態の光ディスク1のBD用信号面である第2の情報記録層8がSiとHとの化合物(以下、SiとHとの化合物を「Si−H」と表記する。)により形成されており、第3の情報記録層11がZnS−SiO2で形成されていて、第2の情報記録層8の厚みが7.5nmであって、第3の情報記録層11の厚みが135nmである場合、図5に示すデータが得られた。すなわち、DVD用のレーザ光Lrに対するBD用信号面である第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は、レーザビーム入射面1aの反射率より低い。
第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率がレーザビーム入射面1aの反射率より低いと、DVD再生機は、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11よりも奥(下側)に、レーザビーム入射面1aの反射率より高い反射率を有する再生すべき情報記録層があるはずであると判断し、第1の情報記録層4をサーチする。そのため、DVD再生機は、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率がレーザビーム入射面1aの反射率より低い光ディスク1の第1の情報記録層4に記録されている情報を正常に再生する。
なお、DVD再生機によって正常に再生される光ディスク1は、不図示のBD用光ディスクドライブ装置に装填した場合、正常に再生される。なぜなら、表面寄りにBD用信号面である第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11が存在し、BD用光ディスクドライブ装置は、それより奥(下側)の情報記録層をサーチする必要が無いからである。
それに対し、DVD再生機によって正常に再生されない光ディスク1についての、DVD用対物レンズ39rと光ディスク1との距離と、RF信号(反射率)との関係は、図6に示すように表現された。すなわち、DVD用のレーザ光Lrに対するBD用信号面である第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率が、レーザビーム入射面1aの反射率より高い。そのため、DVD再生機は、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11を再生すべき情報記録層であると誤認し、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率がレーザビーム入射面1aの反射率より高い光ディスク1を正常に再生しない。
したがって、光ディスク1をDVD再生機により正常に再生させるためには、光ディスク1の第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11のDVD用のレーザ光Lrに対する反射率が、DVD用のレーザ光Lrに対するレーザビーム入射面1a(保護層12の表面)の反射率を下回るように、各層を設計しなければならない。
次に、本実施の形態の光ディスク1の第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率を考察する。第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11は、BD用信号面であるので、BD用のレーザ光Lbに対して、2層BD−ROMの反射率の規格である反射率“12%から28%”を満たすことが望ましい。
そこで、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11を形成する材料の候補の一つであるSi−Hを基板の上に1層設けてディスク形状にしたときの、厚みと反射率との関係と、厚みと透過率との関係とを図9及び図10を用いて説明する。図9は、Si−Hをフラットで透明なポリカーボネート基板の上にスパッタ法で成膜したサンプルについての、厚みと波長405nmの光に対する反射率との関係と、厚みと波長650nmの光に対する反射率との関係とを示す図である。図10は、Si−Hをフラットで透明なポリカーボネート基板の上にスパッタ法で成膜したサンプルについての、厚みと波長405nmの光に対する透過率との関係と、厚みと波長650nmの光に対する透過率との関係とを示す図である。なお、各サンプルへの入射光の波長は、島津製作所製の分光光度計UV−3100を用いて確認した。
図9に示すように、波長405nmの光に対する反射率は、Si−Hの厚みが30nmより薄いと、波長650nmの光に対する反射率よりも高くなることがわかる。また、波長405nmの光に対する反射率は、厚みが約20nmのときに約35%で最大となり、厚みがそれ以上になると下がることがわかる。また、図10に示すように、Si−Hについては、波長650nmの光に対する透過率は、波長405nmの光に対する透過率に比べて高いことがわかる。
第3の情報記録層11をSi−Hで形成した場合、第3の情報記録層11の波長405nmの光に対する反射率を2層BD−ROM規格の12%以上にするためには、図9に示すように、第3の情報記録層11の厚みを5.5nm以上にする必要がある。図10に示す透過率を考慮すると、第3の情報記録層11は薄いほどよい。仮に第3の情報記録層11の厚みを5.5nmとした場合、図10に示すように、波長405nmの光に対する透過率は53%である。
第2の情報記録層8をもSi−Hで形成した場合、第3の情報記録層11を透過した波長405nmの光に対する反射率を2層BD−ROM規格の12%以上にするためには、光は第3の情報記録層11を往路と復路との2回通過するので、第2の情報記録層8の単体での反射率をR2(%)とすると、R2は、下記の式(4)を満足しなければならない。
0.53×0.53×R2≧12 ・・・(4)
すなわち、R2は43%以上でなければならない。しかしながら、図9を用いて説明したように、Si−Hの波長405nmの光に対する反射率の最大値は約35%である。したがって、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11をSi−Hで形成すると、第2の情報記録層8の波長405nmの光に対する反射率を2層BD−ROM規格の12%以上にすることができない。
そこで、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の波長405nmの光に対する反射率を2層BD−ROM規格の12%以上にするために、第3の情報記録層11を形成する材料として、光の吸収が少なく透光性が高い、いわゆる消衰係数が小さい誘電体が適当ではないかと考えて検討した。以下に検討結果を示す。
図11は、いわゆる消衰係数が小さい誘電体の一つであるZnS−SiO2をフラットで透明なポリカーボネート基板の上にスパッタ法で成膜したサンプルについての、厚みが56nm、111nm、135nm、167nm、及び195nmそれぞれの場合における、波長と反射率との関係を示す図である。図11に示すように、厚みが135nmである場合、400nm近傍の波長の光に対する反射率が高く、600nm近傍の波長の光に対する反射率が低い。
図12は、ZnS−SiO2をフラットで透明なポリカーボネート基板の上にスパッタ法で成膜したサンプルについての、厚みが56nm、111nm、135nm、167nm、及び195nmそれぞれの場合における、波長と透過率との関係を示す図である。図12に示すように、厚みによらず、650nmの波長の光に対する透過率は80%以上であり、405nmの波長の光に対する透過率は70%以上である。
図13から図22は、光学薄膜シミュレーションにより得られた、屈折率が2.2である材料の各厚みにおける波長と反射率との関係を示す図である。図13では厚みは10nmであり、図14では厚みは30nmであり、図15では厚みは60nmであり、図16では厚みは90nmであり、図17では厚みは110nmであり、図18では厚みは124nmであり、図19では厚みは152nmであり、図20では厚みは160nmであり、図21では厚みは200nmであり、図22では厚みは230nmである。
図13から図22それぞれを比較すると明らかなように、波長405nmの光に対する反射率は、厚みが90nm(図16参照)である場合、最も低いことがわかる。膜内での往復光路長は、膜の厚みの2倍に屈折率を乗じた長さになるので、厚みが90nmであれば、往復光路長は、90×2×2.2=396nmである。屈折率の小さい媒質から大きい媒質に入射した光は、入射する前の光に対して位相が反転する。そのため、396nm近傍の波長の光は、位相が打ち消され反射率が低くなっていると考えられる。
同様に、厚みが110nm(図17参照)である場合、110×2×2.2=484nm近傍の波長の光については、位相が打ち消され反射率が低くなる。厚みが124nm(図18参照)である場合、124×2×2.2=546nm近傍の波長の光については、位相が打ち消され反射率が低くなる。厚みが152nm(図19参照)である場合、152×2×2.2=669nm近傍の波長の光については、位相が打ち消され反射率が低くなる。厚みが160nm(図20参照)である場合、厚みが200nm(図21参照)である場合、及び厚みが230nm(図22参照)である場合についても、図16から図19を用いて説明した考え方が適用される。
それに対し、厚みが152nm(図19参照)である場合、反射率が高い波長は450nm弱である。上述したように、屈折率の小さい媒質から大きい媒質に入射した光は、入射する前の光に対して位相が反転する。そのため、膜の厚みの(2/(1.0+0.5))倍に屈折率を乗じた長さに対応する波長の光については、膜の表面での反射光と膜の奥の面での反射光との位相が揃い、強調されて反射率が高くなる。
図23から図27は、光学薄膜シミュレーションにより得られた、反射率が最大となる光の波長が405nm近傍になる場合の波長と反射率との関係を示す図である。図23では、膜の屈折率nが1.8であり、厚みが170nmであって、図24では、膜の屈折率nが2.0であり、厚みが152nmであって、図25では、膜の屈折率nが2.2であり、厚みが135nmである。図26では、膜の屈折率nが2.3であり、厚みが135nmであって、図27では、膜の屈折率nが2.5であり、厚みが120nmである。図27は、実験により得られた図11とほぼ一致していることがわかる。
図23から図27に示すように、405nm近傍の光の反射率は、屈折率が2.0以下である場合(図23及び図24)、10%未満であるが、屈折率が2.2以上である場合(図25から図27)、12%以上である。また、屈折率が2.2である場合、図13から図22、及び図25に示すように、405nm近傍の光の反射率の最大値は、膜の厚みが138nmであるときである。屈折率が2.2であって膜の厚みが138nmの0.9倍である場合、すなわち膜の厚みが124nmである場合も、図18に示すように、405nm近傍の光の反射率は12%以上である。また、屈折率が2.2であって膜の厚みが138nmの1.1倍である場合、すなわち膜の厚みが152nmである場合も、図19に示すように、405nm近傍の光の反射率は12%以上である。
それに対し、屈折率が2.2であって膜の厚みが138nmの0.8倍である場合、すなわち膜の厚みが110nmである場合、図17に示すように、405nm近傍の光の反射率は10%以下である。また、屈折率が2.2であって膜の厚みが138nmの1.2倍である場合、すなわち膜の厚みが160nmである場合、図20に示すように、405nm近傍の光の反射率は10%以下である。
したがって、屈折率が2.2である場合、第3の情報記録層11の厚みは、波長405nmの光に対する反射率が最大になる厚みに対して−10%から+10%までの厚みであれば、波長405nmの光に対する反射率は12%以上になる。
上述したように、屈折率の小さい媒質から大きい媒質に入射した光は、入射する前の光に対して位相が反転する。したがって、波長405nmの光に対する反射率が最大になる第3の情報記録層11の厚みは、屈折率が2.2である場合、
405×(1+0.5)/(2×2.2)=607.5/(2×2.2)=138(nm)
となる。
屈折率がx(2.2≦x≦2.5)である場合、波長405nmの光に対する反射率が12%以上になる第3の情報記録層11の厚みは、
「405×(1+0.5) /(2×x)=607.5/(2×x)」の0.9倍から1.1倍までである。
以下に、各層の構成を変えたときの本実施の形態の光ディスク1について、DVD用のレーザ光Lrに対する各層の反射率と、BD用のレーザ光Lbに対する各層の反射率と、市販の再生機により再生を試みたときのBD,DVDの再生結果とを調べたので、それらを説明する。
先ず、実施例1の光ディスクをその製造方法とともに説明する。
実施例1の光ディスクは、第1の情報記録層4と、第2の情報記録層8と、第3の情報記録層11とを有する。それらの製造工程を順に説明し、それにより実施例1の光ディスク及びその製造方法を説明する。
最初に、第1の情報記録層4の製造工程を説明する。
先ず、厚み5mm、直径200mmの円板状のガラス原盤を超純水と酸化セリウムとを用いて研磨し、その後洗浄した。そして、ガラス原盤の上に、密着剤を介して、スピンコート法により、クレゾールノボラック樹脂及びベンゾフェノンエステルを含むフォトレジストを、DVD用のレーザ光Lrの波長の1/5程度の厚みで均一に塗布した。フォトレジストはポジ型でもネガ型でも構わないが、実施例1ではポジ型のフォトレジストを使用した。
その後、フォトレジストが塗布されたガラス原盤をホットプレートにより60℃から80℃の温度でベーキングし、ガラス原盤に付着した有機溶媒を蒸発させた。ベーキングは恒温槽により行ってもよい。
次に、DVD規格で決められた情報を後に得るために、ベーキングされたガラス原盤の上のフォトレジストに、0.74μmのピッチで凹状のピットがスパイラル状に形成されるように、レーザビームレコーダからのUV領域の波長の光によりフォトレジストを露光し感光させた。
そして、感光した部分をアルカリ現像液で除去し、アドレス及びエラー訂正等の情報が付加されたSD動画像等のDVD規格で変調された情報を有する凹状のピットが形成された第1のガラスマスタを得た。
次に、第1のガラスマスタのフォトレジストの上に、スパッタリング法によりニッケル等の導電膜を形成し、更に、導電膜を電極としてニッケルをめっきした。これにより、フォトレジストに形成された凹状のピットの逆パターンである、SD動画像等のDVD規格で変調された情報を有する凸状のピットが、めっきされたニッケル層に写し取られた。
次に、ニッケル層を第1のガラスマスタから剥離して第1のマスタスタンパとした。そして、第1のマスタスタンパに対して電解処理等を行って酸化物を剥離し、その後ニッケルをめっきし、第1のマスタスタンパに形成されたピットと逆形状の凹状のピットが形成された第1のマザースタンパを得た。
そして、第1のマザースタンパに対して電解処理を行い、その後ニッケルをめっきし、第1のマスタスタンパのピットと同形状で凸状のピットが形成された第1のベビースタンパを得た。
次に、第1のベビースタンパを金型に取り付けてポリカーボネート樹脂を射出成形し、厚み0.6mmの第1の基板2を得た。第1の基板2が得られた際、第1の基板2の表面には、DVD−ROM規格に準拠したピットである第1の情報記録ピット3が形成された。なお、第1のベビースタンパの替わりに第1のマスタスタンパを用いても、第1の基板2を得ることができる。
次に、第1の基板2の表面に形成された第1の情報記録ピット3の上に反射膜を積層して第1の情報記録層4を形成した。第1の情報記録層4に用いる反射膜としてはAl、AgもしくはAu等、又はそれらを主成分とする反射膜が好適である。実施例1では、第1の情報記録層4が単体でDVD用のレーザ光Lrに対してなるべく高い反射率が得られるように、第1の情報記録層4の材料としてAgを用いた。また、第1の情報記録層4は、マグネトロンスパッタリングを行うことにより形成し、その厚みを70nmとした。
続いて、第2の情報記録層8の製造工程を説明する。
先ず、厚み5mm、直径200mmの円板状のガラス原盤を超純水と酸化セリウムとを用いて研磨し、その後洗浄した。そして、ガラス原盤の上に、密着剤を介して、スピンコート法により、クレゾールノボラック樹脂及びベンゾフェノンエステルを含むフォトレジストを、BD用のレーザ光Lbの波長の1/5程度の厚みで均一に塗布した。フォトレジストはポジ型でもネガ型でも構わないが、実施例1ではポジ型のフォトレジストを使用した。
その後、フォトレジストが塗布されたガラス原盤をホットプレートにより60℃から80℃の温度でベーキングし、ガラス原盤に付着した有機溶媒を蒸発させた。ベーキングは恒温槽により行ってもよい。
次に、BD−ROM規格で決められた1−7PP変調された情報を後に得るために、ベーキングされたガラス原盤の上のフォトレジストに、最短ピット長が0.15μmであるピットが0.32μmのピッチでスパイラル状に形成されるように、レーザビームレコーダからのUV領域以下の波長の光によりフォトレジストを露光し感光させた。
そして、感光した部分をアルカリ現像液で除去し、凹状のピットが形成された第2のガラスマスタを得た。
次に、第2のガラスマスタのフォトレジストの上に、スパッタリング法によりニッケル等の導電膜を形成し、更に、導電膜を電極としてニッケルをめっきした。これにより、フォトレジストに形成された凹状のピットの逆パターンである凸状のピットが、めっきされたニッケル層に写し取られた。
次に、ニッケル層を第2のガラスマスタから剥離して第2のマスタスタンパとした。そして、第2のマスタスタンパに対して電解処理等を行って酸化物を剥離し、その後、ニッケルをめっきし、第2のマスタスタンパに形成されたピットと逆形状の凹状のピットが形成された第2のマザースタンパを得た。
そして、第2のマザースタンパに対してニッケルをめっきし、第2のマスタスタンパのピットと同形状で凸状のピットが形成された第2のベビースタンパを得た。
次に、第2のベビースタンパを金型に取り付けてポリカーボネート樹脂を射出成形し、厚み0.48mmの第2の基板6を得た。第2の基板6が得られた際、第2の基板6の表面には、BD−ROM規格に準拠したピットである第2の情報記録ピット7が形成された。なお、第2のベビースタンパの替わりに第2のマスタスタンパを用いても、第2の基板6を得ることができる。
次に、第2の情報記録層8の製造工程の説明を終える前に第3の情報記録層11を製造するためのソフトスタンパの製造工程を説明する。
先ず、厚み5mm、直径200mmの円板状のガラス原盤を超純水と酸化セリウムとを用いて研磨し、その後洗浄した。そして、ガラス原盤の上に、密着剤を介して、スピンコート法により、クレゾールノボラック樹脂及びベンゾフェノンエステルを含むフォトレジストを、BD用のレーザ光Lbの波長の1/5程度の厚みで均一に塗布した。フォトレジストはポジ型でもネガ型でも構わないが、実施例1ではポジ型のフォトレジストを使用した。
その後、フォトレジストが塗布されたガラス原盤をホットプレートにより60℃から80℃の温度でベーキングし、ガラス原盤に付着した有機溶媒を蒸発させた。ベーキングは恒温槽により行ってもよい。
次に、BD−ROM規格で決められた1−7PP変調された情報を後に得るために、ベーキングされたガラス原盤の上のフォトレジストに、最短ピット長が0.15μmであるピットが0.32μmのピッチのスパイラル状に形成されるように、レーザビームレコーダからのUV領域以下の波長の光によりフォトレジストを露光し感光させた。
そして、感光した部分をアルカリ現像液で除去し、凹状のピットが形成された第3のガラスマスタを得た。
次に、第3のガラスマスタのフォトレジストの上に、スパッタリング法によりニッケル等の導電膜を形成し、更に、その導電膜を電極としニッケルをめっきした。これにより、フォトレジストに形成された凹状のピットの逆パターンである凸状のピットが、めっきされたニッケル層に写し取られた。
次に、ニッケル層を第3のガラスマスタから剥離して第3のマスタスタンパとした。そして、第3のマスタスタンパに対して電解処理等を行って酸化物を剥離し、その後、ニッケルをめっきし、第3のマスタスタンパに形成されたピットと逆形状の凹状のピットが形成された第3のマザースタンパを得た。
そして、第3のマザースタンパに対してポリカーボネート樹脂を射出成形し、第3の情報記録層11を製造するためのソフトスタンパを得た。なお、ソフトスタンパは、ポリオレフィン樹脂等の材料によって形成されてもよい。
ソフトスタンパが得られた後に、第2の基板6の表面に形成された第2の情報記録ピット7の上に第2の情報記録層8を形成した。具体的には、第2の基板6をチャンバに入れてチャンバ内を真空状態にし、その後アルゴンガスとともに水素ガスをチャンバ内に導入してスパッタリングを行うことによりSi−Hを堆積し、厚みが7.5nmである第2の情報記録層8を形成した。
次に、第2の情報記録層8の上に、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbに対する透過率が85%以上である紫外線硬化樹脂を塗布し、中間層9を25μmの厚みで形成した。中間層9を形成する際、上述した第3の情報記録層11を製造するためのソフトスタンパのピットが形成されている面を塗布された紫外線硬化樹脂に押し当て、ソフトスタンパのピットが形成されていない面から紫外線を照射した。そして、ソフトスタンパを取り除き、中間層9の上面に第3の情報記録ピット10を形成した。なお、中間層9の上面は、中間層9の第2の情報記録層8と接していない面である。また、中間層9を形成するための紫外線硬化樹脂は、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbに対する透過率が90%以上であることが望ましい。
次に、中間層9の上面に形成された第3の情報記録ピット10の上に、RFスパッタリング法により誘電体の一つであるZnS−SiO2を135nmの厚みで成膜し、それにより第3の情報記録層11を形成した。
そして、第3の情報記録層11の上に、厚み0.1mmの保護層12を圧着し、実施例1の光ディスクのBD用信号面の製造を終了した。なお、保護層12は、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbに対する透過率が85%以上であるポリカーボネート樹脂のシートと粘着材とで構成される層である。また、DVD用のレーザ光Lr及びBD用のレーザ光Lbに対する保護層12の透過率は、90%以上であることが望ましい。
最後に、第1の情報記録層4が形成された第1の基板2と、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11が形成された第2の基板6とを、図28に示すように、第1の基板2の第1の情報記録層4が形成されている面と、第2の基板6の保護層12が貼りつけられていない面とが対向するようにして、粘着シート5を用いて貼り合せた。これにより、実施例1の光ディスクの製造を終了した。
第2の基板6、粘着シート5、及び保護層12の厚みの合計は0.6mmであることが望ましい。なぜなら、従来のDVD及びBDの厚みが1.2mmであって、実施例1の光ディスクの厚みもそれらと同じ1.2mmであることが望ましく、第1の基板2の厚みが0.6mmであるからである。実施例1では、第2の基板6の厚みが0.48mmであり、保護層12の厚みが0.1mmであるので、粘着シート5の厚みを0.02mmとした。
第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を、DVD用のレーザ光Lrの波長と同じ波長650nmの光を発し、NAが0.6である対物レンズを有するパルステック社製ODU−1000を用いて以下に示す方法により測定した。すなわち、対物レンズを光ディスクに対して近づけたり遠ざけたりして対物レンズと光ディスクとの距離を変化させるフォーカス制御を行い、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を測定した。図5は、実施例1の光ディスクについての、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率の測定結果を模式的に示す図である。
図5に示すように、第2の情報記録層8の反射光と第3の情報記録層11の反射光とを明確に区別することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は1.0%であった。その反射率1.0%は、ポリカーボネート樹脂により形成されているレーザビーム入射面1aの反射率5%より低い。
また、第2の情報記録層8のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は14%であり、第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は12%であった。
また、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率は49%であって、DVD規格の規定反射率の45%から85%を満足した。
実施例1の光ディスクの再生を市販されている任意の7台のBD/DVD兼用再生機により試みたところ、7台全ての機器において第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11であるBD用信号面を再生することができた。また、実施例1の光ディスクの再生を市販されている任意の20台のDVD再生機により試みたところ、20台全ての機器において第1の情報記録層4であるDVD用信号面を再生することができた。
また、第3の情報記録層11に用いたZnS−SiO2をエリプソメータにより測定したところ、405nmの波長の光に対しては、消衰係数は0.1以下でほぼ0であり、屈折率は約2.2であった。第3の情報記録層11の往復光路長は、厚みの2倍に屈折率を乗じた長さであるので、135×2×2.2=594(nm)である。膜の入射面での反射光と膜の奥の面での反射光とでは、位相が反転するので、波長594nm近傍の光では位相が打ち消され反射率が低くなる。半波長のずれを考慮すると、135×2×2.2/(1.0+0.5)=396nm近傍の波長の光の反射率が高くなる。そのため、波長405nmのBD用のレーザ光Lbに対する第3の情報記録層11の反射率が12%となったと考えられる。また、第3の情報記録層11の消衰係数がほぼ0であるため、反射光以外の光の大部分は、奥の情報記録層である第2の情報記録層8へ透過していく。
なお、650nmの波長のDVD用のレーザ光Lrの反射率を極力減らすためのZnS−SiO2の厚みd650は、ZnS−SiO2の屈折率が2.2であるので、
d650=650/(2×2.2)=147(nm)である。実施例1の第3の情報記録層11の厚み135nmは147nmに対して約9%薄い。そのため、波長650nmのDVD用のレーザ光Lrは、第3の情報記録層11を十分に透過し、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率が高くなったと考えられる。また、405nmの波長の光の反射率を高くするためのZnS−SiO2の厚みd405は、
d405=405×1.5/(2×2.2)=607.5/(2×2.2)=138(nm)と計算される。
次に、実施例2の光ディスクを説明する。
実施例2の光ディスクの基本的な構成は実施例1の光ディスクの構成と同じであるが、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の厚みが、実施例2の光ディスクと実施例1の光ディスクとで異なる。
実施例2の光ディスクでは、第2の情報記録層8はSi−Hにより形成されており、その厚みは8nmであって、第3の情報記録層11はZnS−SiO2により形成されており、その厚みは138nmである。
実施例2の光ディスクについて、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を実施例1と同様にして測定した。図5は、実施例2の光ディスクについての、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率の測定結果を模式的に示す図でもある。
図5に示すように、第2の情報記録層8の反射光と第3の情報記録層11の反射光とを明確に区別することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は1.3%であった。その反射率1.3%は、レーザビーム入射面1aの反射率5%より低い。
また、第2の情報記録層8のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は13.4%であり、第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は12.2%であった。
また、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率は46%であって、DVD規格の規定反射率の45%から85%を満足した。
上述したように、650nmの波長のDVD用のレーザ光Lrの反射率を極力減らすためのZnS−SiO2の厚みd650は、147(nm)である。実施例2の第3の情報記録層11の厚み138nmは147nmに対して約6%薄い。そのため、波長650nmのDVD用のレーザ光Lrは、第3の情報記録層11を十分に透過し、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率が高くなったと考えられる。
実施例2の光ディスクの再生を市販されている任意の7台のBD/DVD兼用再生機により試みたところ、7台全ての機器において第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11であるBD用信号面を再生することができた。また、実施例2の光ディスクの再生を市販されている任意の20台のDVD再生機により試みたところ、20台全ての機器において第1の情報記録層4であるDVD用信号面を再生することができた。
次に、実施例3の光ディスクを説明する。
実施例3の光ディスクの基本的な構成は実施例1の光ディスクの構成と同じであるが、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の厚みが、実施例3の光ディスクと実施例1の光ディスクとで異なる。
実施例3の光ディスクでは、第2の情報記録層8はSi−Hにより形成されており、その厚みは8nmであって、第3の情報記録層11はZnS−SiO2により形成されており、その厚みは111nmである。
実施例3の光ディスクについて、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を実施例1と同様にして測定した。図6は、実施例3の光ディスクについての、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率の測定結果を模式的に示す図である。
図6に示すように、第2の情報記録層8の反射光と第3の情報記録層11の反射光とを明確に区別することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は5.5%であった。その反射率5.5%は、レーザビーム入射面1aの反射率5%より高い。
また、第2の情報記録層8のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は9.5%であり、第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は6%であった。
また、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率は43%であって、DVD規格の規定反射率の45%から85%を満足しなかった。
上述したように、650nmの波長のDVD用のレーザ光Lrの反射率を極力減らすためのZnS−SiO2の厚みd650は、147nmである。実施例3の第3の情報記録層11の厚み111nmは147nmに対して約24%薄い。そのため、波長650nmのDVD用のレーザ光Lrは、第3の情報記録層11を十分に透過することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率が低くなったと考えられる。
実施例3の光ディスクの再生を市販されている任意の7台のBD/DVD兼用再生機により試みたところ、6台の機器において第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11であるBD用信号面を通常に再生することができたが、1台については再生までに通常の2倍ほど時間がかかった。また、実施例3の光ディスクの再生を市販されている任意の20台のDVD再生機により試みたところ、19台の機器において第1の情報記録層4であるDVD用信号面を再生することができたが、1台では再生できなかった。
次に、実施例4の光ディスクを説明する。
実施例4の光ディスクでは、第2の情報記録層8はSi−Hにより形成されており、その厚みは8nmであって、第3の情報記録層11はZrOにより形成されており、その厚みは130nmである。
実施例4の光ディスクについて、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を実施例1と同様にして測定した。図5は、実施例4の光ディスクについての、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率の測定結果を模式的に示す図でもある。
図5に示すように、第2の情報記録層8の反射光と第3の情報記録層11の反射光とを明確に区別することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は4.8%であった。その反射率4.8%は、レーザビーム入射面1aの反射率5%より低い。
また、第2の情報記録層8のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は13.6%であり、第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は12.3%であった。
また、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率は43%であって、DVD規格の規定反射率の45%から85%より低い。
実施例4の光ディスクの再生を市販されている任意の6台のBD/DVD兼用再生機により試みたところ、6台全ての機器において第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11であるBD用信号面を再生することができた。また、実施例4の光ディスクの再生を市販されている任意の20台のDVD再生機により試みたところ、18台の機器において第1の情報記録層4であるDVD用信号面を再生することができたが、2台の機器では再生されるまでの時間が長かったり、ディスクを認識できない場合があった。
また、第3の情報記録層11に用いたZrOをエリプソメータにより測定したところ、405nmの波長の光に対しては、消衰係数は0.1以下でほぼ0であり、屈折率は約2.33であった。第3の情報記録層11の往復光路長は、厚みの2倍に屈折率を乗じた長さであるので、130×2×2.33=606(nm)である。膜の入射面での反射光と膜の奥の面での反射光とでは、位相が反転する。そのため、波長606nm近傍の光では位相が打ち消され反射率が低くなる。半波長のずれを考慮すると、130×2×2.33/(1.0+0.5)=404nm近傍の波長の光の反射率が高くなる。そのため、波長405nmのBD用のレーザ光Lbに対する第3の情報記録層11の反射率が12%となったと考えられる。また、第3の情報記録層11の消衰係数がほぼ0であるため、反射光以外の光の大部分は、奥の情報記録層である第2の情報記録層8へ透過していく。
なお、650nmの波長のDVD用のレーザ光Lrの反射率を極力減らすためのZrOの厚みd650’は、ZnOの屈折率が2.33であるので、
d650’=650/(2×2.33)=139(nm)である。実施例4の第3の情報記録層11の厚み130nmは139nmに対して約7%薄い。そのため、波長650nmのDVD用のレーザ光Lrは、第3の情報記録層11を十分に透過し、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率が高くなったと考えられる。また、405nmの波長の光の反射率を高くするためのZnOの厚みd405’は、
d405’=405×1.5/(2×2.33)=607.5/(2×2.33)=130(nm)と計算される。
次に、実施例5の光ディスクを説明する。
実施例5の光ディスクの基本的な構成は実施例1の光ディスクの構成と同じであるが、実施例5の光ディスクでは、第2の情報記録層8はSi−Hにより形成されており、その厚みは8nmであって、第3の情報記録層11はTiOにより形成されており、その厚みは122nmである。
実施例5の光ディスクについて、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率を実施例1と同様にして測定した。図5は、実施例5の光ディスクについての、対物レンズと光ディスクとの距離に対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率の測定結果を模式的に示す図でもある。
図5に示すように、第2の情報記録層8の反射光と第3の情報記録層11の反射光とを明確に区別することができず、DVD用のレーザ光Lrに対する第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11の反射率は4.8%であった。その反射率4.8%は、レーザビーム入射面1aの反射率5%より低い。
また、第2の情報記録層8のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は12.7%であり、第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は12.9%であった。
また、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率は43%であって、DVD規格の規定反射率の45%から85%より低くなった。
実施例5の光ディスクの再生を市販されている任意の6台のBD/DVD兼用再生機により試みたところ、6台全ての機器において第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11であるBD用信号面を再生することができた。また、実施例5の光ディスクの再生を市販されている任意の20台のDVD再生機により試みたところ、20台全ての機器において第1の情報記録層4であるDVD用信号面を再生することができた。
また、第3の情報記録層11に用いたTiOをエリプソメータにより測定したところ、405nmの波長の光に対しては、消衰係数は0.1以下でほぼ0であり、屈折率は約2.5であった。第3の情報記録層11の往復光路長は、厚みの2倍に屈折率を乗じた長さであるので、122×2×2.5=610(nm)である。膜の入射面での反射光と膜の奥の面での反射光とでは、位相が反転する。そのため、波長610nm近傍の光では位相が打ち消され反射率が低くなる。半波長のずれを考慮すると、122×2×2.5/(1.0+0.5)=407nm近傍の波長の光の反射率が高くなる。そのため、波長405nmのBD用のレーザ光Lbに対する第3の情報記録層11の反射率が12%となったと考えられる。また、第3の情報記録層11の消衰係数がほぼ0であるため、反射光以外の光の大部分は、奥の情報記録層である第2の情報記録層8へ透過していく。
なお、650nmの波長のDVD用のレーザ光Lrの反射率を極力減らすためのTiOの厚みd650’’は、TiOの屈折率が2.5であるので、
d650’’=650/(2×2.5)=130(nm)である。実施例5の第3の情報記録層11の厚み122nmは130nmに対して約6%薄い。そのため、波長650nmのDVD用のレーザ光Lrは、第3の情報記録層11を十分に透過し、DVD用のレーザ光Lrに対する第1の情報記録層4の反射率が高くなったと考えられる。また、405nmの波長の光の反射率を高くするためのTiOの厚みd405’’は、
d405’’=405×1.5/(2×2.5)=607.5/(2×2.5)=122(nm)と計算される。
ここで、第3の情報記録層11の材料の屈折率をx(2.2≦x≦2.5)とし、第3の情報記録層11の厚みをt(nm)とすると、波長405nmのBD用のレーザ光Lbに対する第3の情報記録層11の反射率を最大にするためのtは、下記の式(5)により特定される。
t=405×1.5/(2×x)=607.5/(2×x) ・・・(5)
つまり、BD用のレーザ光Lbの波長を“λ”とすると、BD用のレーザ光Lbに対する第3の情報記録層11の反射率を最大にするためのtは、下記の式(6)により特定される。
t=λ×1.5/(2×x) ・・・(6)
したがって一般に、第3の情報記録層11の屈折率がxであって、第3の情報記録層11に記録されている情報を再生するための光(再生光)の波長がλである場合、第3の情報記録層11の厚みが{λ×1.5/(2×x)}であれば、再生光に対する第3の情報記録層11の反射率は最大になる。
すなわち、第3の情報記録層11の厚みが、第3の情報記録層11の表面で反射した再生光の位相と、第3の情報記録層11の奥の面で反射した再生光の位相とが等しくなる厚みであれば、再生光に対する第3の情報記録層11の反射率は最大になる。
なお、上述した実施の形態では、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率が、2層BD−ROMの反射率の規格である反射率“12%から28%”を満たす場合について説明した。第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11のBD用のレーザ光Lbに対する反射率は、“12%から28%”を満たすことが望ましいが、それが満たされない場合、記録型の2層のBD−REや2層のBD−Rの反射率3.5%以上を満たせばよい。その場合、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11は、Si−Hにより形成されてもよい。Si−Hも、誘電体の一つである。
また、上述した実施の形態の光ディスク1は、図1を用いて説明したように、第1の基板2と、第1の基板2の上に設けられている第1の情報記録層4と、第1の情報記録層4の上に設けられている第2の基板6と、第2の基板6の上に設けられている第2の情報記録層8と、第2の情報記録層8の上に設けられている中間層9と、中間層9の上に設けられている第3の情報記録層11と、第3の情報記録層11の上に設けられている保護層12とを有する。すなわち、上述した実施の形態の光ディスク1は、DVD用信号面の上に2個のBD用信号面を有する。
しかしながら、第2の情報記録層8及び第3の情報記録層11を有する第2の基板6と、第1の情報記録層4を有する第1の基板2とは置き換えられてもよい。つまり、光ディスクは、表面側に1個のDVD用信号面を有し、裏面側に積層された2個のBD用信号面を有してもよい。その光ディスク1も、DVD再生機でもBD再生機でも再生することができる。また、2個のBD用信号面に、BD規格に対応するより多くの情報を記録することができる。
その場合の光ディスクは、次のように表現される。すなわち、光ディスクは、上面に第1の規格に対応する第1のピット列が形成されている第1の基板と、第1の基板の上に設けられており、第1の規格に対応する第1の光を反射する第1の情報記録層と、第1の情報記録層の上に設けられており、上面に第1の規格に対応する第2のピット列が形成されている、第1の光を透過する中間層と、中間層の上に設けられており、第1の光の一部を透過し残部を反射する、誘電体により形成されている第2の情報記録層と、第2の情報記録層の上に設けられており、上面に、第1の規格のディスクより情報の記録密度が低いディスクに関する第2の規格に対応する第3のピット列が形成されている、第1の光を透過する第2の基板と、第2の基板の上に設けられている、第2の規格に対応する第2の光を反射するとともに、第1の光を透過する第3の情報記録層とを有する。