JP2011038219A - 生分解性フェイスカバー - Google Patents

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Abstract

【課題】製糸性、開繊性が良好であることからスパンボンド法によって得ることができ、かつ柔軟性およびヒートシール性に優れ、加工後においても収縮の少ない不織布からなる生分解性フェイスカバーを提供する。該生分解性フェイスカバーは、使用後にコンポスト化処理が可能である。
【解決手段】本発明のフェイスカバーは、融点が160℃以上のポリ乳酸系重合体と、このポリ乳酸系重合体よりも融点が50℃以上低い脂肪族ポリエステル重合体とを含む複合繊維を構成繊維とする不織布からなることを特徴とする。前記脂肪族ポリエステル重合体は、複合繊維表面の少なくとも一部を形成するものであり、1,4−ブタンジオールとコハク酸を構成成分とするとともに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを0.1〜1質量%含有するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、衣服の着脱時に顔面を覆うための生分解性フェイスカバーに関する。
顔面に化粧を施した人が衣服を着脱するときに、衣服が顔面に接触すると、化粧が乱れるともに、化粧料の付着によって衣服が汚れる場合がある。
このような問題を解決するために、衣服の着脱の際に顔面を含む頭部を覆うようにした袋状のフェイスカバーが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。上記のようなフェイスカバーは、いずれも不織布を材料としたものである。
しかしながら、従来の不織布から形成されたフェイスカバーは、袋体を構成する際に別途接着剤などを必要とするなど、工程が煩雑になる場合があった。
上記の問題を解決するために、自己接着性繊維からなる不織布を材料としたフェイスカバーが検討されている。この自己接着性繊維からなる不織布は、加熱によって繊維の一部が溶融することにより繊維相互が接着一体化したものであり、すなわち、ヒートシール性を有するものである。
また、近年、石油を原料とする合成繊維は、焼却時の発熱量が多いため、自然環境保護の見地から見直しが必要とされている。それに伴い、自然界において生分解する脂肪族ポリエステルからなる繊維が開発されており、環境保護への貢献の高い繊維からなる不織布から形成可能なフェイスカバーが期待されている。上記の脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸系重合体は、その融点が約180℃と比較的高いことから、広い分野に使用されることが期待されている。
上記のような観点から、自己接着性を有し、ポリ乳酸系重合体などの生分解性を有する重合体よりなる不織布から形成可能なフェイスカバーが望まれている。
上記の要望に対して、ポリ乳酸系重合体を用いた自己接着性繊維からなり、フェイスカバーを形成可能と判断される不織布として、芯部にポリ乳酸を配し、鞘部にD−乳酸とL−乳酸との共重合体(D、L−乳酸共重合体)を配して、芯部よりも鞘部を低融点とした芯鞘型複合繊維により構成された不織布が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4)。
不織布をヒートシールすることにより袋状に形成されたフェイスカバーにおいては、熱加工安定性を考慮すると、芯部と鞘部の融点差が大きい複合繊維よりなる不織布を用いることが好ましいため、鞘部の共重合体は融点が低いもの(例えば、融点が120℃程度である共重合体)を選択することがよいと考えられる。しかし、D、L−乳酸共重合体において、融点が120℃程度のものは、結晶性が低いため、フェイスカバーを形成する際の熱接着工程において収縮したり熱ロールに融着したりする等のトラブルが発生しやすく、しかも得られるフェイスカバーは耐熱性に劣るものとなる。
これに代えて、鞘成分にポリ乳酸以外の融点の低い重合体を選択した場合は、ガラス転移温度も低い場合が多い。したがって、最も効率よく不織布が得られるスパンボンド法に適用して不織布を得ようとしても、スパンボンド法はノズル孔より吐出した糸条が牽引細化されるまでの距離(紡糸工程〜冷却・延伸工程の距離)が極めて短いため、冷却過程で十分冷え切らずにゴム状弾性を示したり、開繊工程で糸条同士がブロッキングを起こしたりするなどの問題があるため、操業性に劣り、そもそも不織布が得られにくい。
この問題を解決する方法として、フェイスカバーを形成可能と判断される不織布に鞘成分にポリ乳酸以外の融点の低い重合体を使用する場合に、有機過酸化物を用いた架橋反応により結晶化速度を制御して、短い冷却過程で冷却させるようにした技術が知られており(例えば、特許文献5)、この技術により得られた複合繊維よりなる不織布から形成されたフェイスカバーにおいては、架橋反応によって鞘成分に使用する重合体の結晶化速度を早くすることで、スパンボンド法のような冷却過程が短い工程でも糸条の冷却が十分可能となり、糸条同士のブロッキングも解消し、良好な開繊性(不織布の地合)を得ることができる。しかしながら、その一方で、架橋反応を行わせるために、重合体のゴム弾性は架橋無しの状態よりも強くなるため、高速紡糸に耐えうる架橋反応と開繊性とを両立させる反応条件の範囲は狭い。
特許文献6には、生分解性の第1成分と第2成分からなる複合繊維であり、第2成分の85℃における半結晶化時間が、第1成分の85℃における半結晶化時間よりも長いことを特徴とする生分解性複合繊維と、それを用いた構造物および吸水性物品とが記載されている。すなわち、異なる生分解性樹脂を用いて複合繊維を製造する場合において、互いに結晶化速度の差の小さい生分解性樹脂同士を使用すると、紡糸工程において、半結晶化時間の短い生分解性樹脂が結晶化する際に発生する熱で、半結晶化時間の長い生分解性樹脂の冷却が阻害される。そのため、第1成分と第2成分の半結晶化時間の差を大きくし、それによって、半結晶化時間の短い生分解性樹脂が結晶化する際に発生する熱で半結晶化時間の長い生分解性樹脂の冷却を阻害しないようにしている。
特許文献6に記載の複合繊維によれば、紡糸工程における冷却ゾーンの長さが十分確保できるような場合には十分適用できるが、冷却ゾーンが短いスパンボンド法では、鞘成分の重合体の半結晶化時間が長い樹脂を適用する場合に、開繊糸条密着が発生するなどの問題がある。そのため、この複合繊維よりなる不織布から形成されたフェイスカバーは、柔軟性が不十分であるという問題があった。
特開2000−125934号公報 特開2006−087789号公報 特開平07−310236号公報 特開平07−133511号公報 特開2007−084988号公報 特開2007−119928号公報
本発明は、上記した従来のフェイスカバーの問題を改良したものである。すなわち、本発明は、ヒートシール加工時の収縮が少ない不織布を用い、柔軟性およびヒートシール性に優れたフェイスカバーを提供することを課題とする。さらに、使用後にコンポスト化処理が可能である生分解性フェイスカバーを提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の重合体を接着成分とすること、および特定の繊維断面を有する複合繊維から形成された不織布を用いることにより、上記問題を解決した生分解性フェイスカバーを得ることができるという知見を得て、本発明に到達した。
すなわち、上記問題を解決するための手段は、下記の通りである。
(1)複合繊維を構成繊維としてスパンボンド法により形成された不織布からなり、前記複合繊維は融点が160℃以上のポリ乳酸系重合体とこのポリ乳酸系重合体よりも融点が50℃以上低い脂肪族ポリエステル重合体とを含むとともに、前記脂肪族ポリエステル重合体が前記複合繊維表面の少なくとも一部を形成しており、かつ前記脂肪族ポリエステル重合体は1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とするとともに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを0.1〜1質量%含有していることを特徴とする生分解性フェイスカバー。
(2)目付が15〜50g/mであり、柔軟度が15cN以上60cN以下であり、ドレープ係数が0.650以上0.950以下であることを特徴とする(2)の生分解性フェイスカバー。
(3)高級脂肪酸金属塩がモンタン酸カルシウムであることを特徴とする(1)または(2)の生分解性フェイスカバー。
(4)フェニルホスホン酸金属塩がフェニルホスホン酸亜鉛塩であることを特徴とする(1)〜(3)の生分解性フェイスカバー。
(5)アマイドワックスがエチレンビスステアリン酸アミドまたはエチレンビスパルミチン酸アミドであることを特徴とする(1)〜(4)の生分解性フェイスカバー。
(6)複合繊維は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、脂肪族ポリエステル重合体が鞘部を形成した芯鞘複合長繊維であって、芯部と鞘部の複合比が、質量比で、芯部/鞘部=3/1〜1/3であることを特徴とする(1)〜(5)の生分解性フェイスカバー。
(7)複合長繊維は、昇温速度10℃/分で融解した後、降温速度10℃/分で示差熱分析したときに、脂肪族ポリエステル重合体に起因する降温結晶化温度が存在し、この降温結晶化温度が80℃以上90℃以下であり、脂肪族ポリエステル重合体に起因する結晶化熱量が20J/g以上40J/g以下であることを特徴とする(1)〜(6)の生分解性フェイスカバー。
(8)(1)〜(7)の生分解性フェイスカバーであって、脂肪族ポリエステル重合体の溶融または軟化により構成繊維同士が接着しているヒートシール部を有することによって袋状に構成されていることを特徴とする生分解性フェイスカバー。
本発明の生分解性フェイスカバーは、ポリ乳酸系重合体と、このポリ乳酸系重合体よりも低融点の脂肪族ポリエステル重合体とを含む複合長繊維を構成繊維とする不織布から形成される。さらに、前記脂肪族ポリエステル重合体が前記構成繊維の表面の少なくとも一部を形成しており、前記脂肪族ポリエステル重合体が、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを0.1〜1質量%含有していることによって、開繊時の繊維−繊維間の摩擦を低減することができる。このため、本発明の生分解性フェイスカバーは、開繊性の良好なウエブにより製造されることが可能であり、地合の良好な不織布により製造されることが可能である。また、上記の不織布はスパンボンド法により製造されることが可能であり、この不織布から形成されたフェイスカバーは柔軟性に優れている。さらに、本発明の生分解性フェイスカバーは使用後にコンポスト化処理が可能である。
しかも本発明によれば、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体とを含み、前記脂肪族ポリエステル重合体は、1,4−ブタンジオールとコハク酸を構成成分とするとともに、ポリ乳酸系重合体の融点より50℃以上低い融点を有するため、熱処理加工時の安定性に優れ、ヒートシール性に優れた不織布によって生分解性フェイスカバーを得ることができる。
モンタン酸カルシウムを用いた場合に得られる長繊維の表面の様子を示す図である。 フェニルホスホン酸金属塩を用いた場合に得られる長繊維の表面の様子を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性フェイスカバー(以下、単に「フェイスカバー」と称する場合がある)は不織布から形成される。該不織布は融点が160℃以上のポリ乳酸系重合体と、このポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低い融点を有する脂肪族ポリエステル重合体とを含む複合繊維より得られる。上記脂肪族ポリエステル重合体は、ヒートシールされる熱接着成分である。
まずポリ乳酸系重合体について説明する。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布に用いられるポリ乳酸系重合体としては、融点が160℃以上の重合体あるいは融点が160℃以上の重合体同士のブレンド体を用いる。ポリ乳酸系重合体の融点が160℃以上であることで、高い結晶性を有することができる。そのため、不織布をヒートシール加工することにより袋状にしてフェイスカバーを得る際には、熱処理加工時の収縮が発生しにくく、また熱処理加工を安定して行うことができる。なお、以下に説明するように、ポリ乳酸系重合体の融点は、通常180℃未満である。
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ−L−乳酸や、ポリ−D−乳酸の融点は、約180℃である。ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸との共重合体を用いる場合には、共重合体の融点が160℃以上になるようにモノマー成分の共重合比率を決定する。すなわち、L−乳酸とD−乳酸との共重合比が、モル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=2.0/98.0〜0/100、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=98.0/2.0〜100/0であるものを用いる。共重合比率が前記範囲を外れると、共重合体の融点が160℃未満となり、本発明の目的を達し得ないこととなる。共重合体の融点は165℃以上がさらに好ましい。
ポリ乳酸系重合体の粘度は、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレイト(以下、「MFR1」と略記する)が、10〜80g/10分であることが好ましく、20〜70g/10分であることがさらに好ましい。MFR1が10g/10分未満であると、粘度が高すぎて、製造工程において溶融時のスクリューへの負担が大きくなる。反対にMFR1が80g/10分を超える場合は、粘度が低すぎるため紡糸工程において糸切れが発生しやすく操業性を損なう傾向となる。
上記ポリ乳酸系重合体のメルトフローレイトを所定の範囲に制御する方法としては、メルトフローレイトが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて重合体の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレイトが小さすぎる場合は、メルトフローレイトのより大きなポリ乳酸系重合体や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
ポリ乳酸系重合体としては、市販品を好適に使用することができ、具体的には、Nature Works社製 商品名「6201D」などを用いることができる。
また、上記ポリ乳酸系重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲において、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
次に、ポリ乳酸系重合体よりも低融点の脂肪族ポリエステル重合体について説明する。 本発明においては、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル系重合体との融点差が50℃以上であることが必要である。上記融点差が50℃以上であると、生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布を得る場合に、不織布化のための熱接着性が良好となる。また、得られた生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布のヒートシール性を良好にすることが可能である。
この脂肪族ポリエステル系重合体は1,4−ブタンジオールとコハク酸を主たる構成成分とする脂肪族ポリエステルに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを溶融混合したものである。脂肪族ポリエステルに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1を添加することによって、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を速くすることと、開繊工程における繊維−繊維間の摩擦抵抗を少なくして、開繊工程におけるブロッキングの発生を効果的に防止することを達成できる。
1,4−ブタンジオールとコハク酸を主たる構成成分とする脂肪族ポリエステルとしては、イソシアナートが添加されていないものであれば、使用することが可能である。イソシアナートが添加された場合には、該イソシアナートと脂肪族ポリエステル中のウレタン結合とが反応するため、生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布を得る場合に、不織布化した際に、条件によっては、着色したりミクロゲルが発生したりするなどの問題が発生するおそれがある。
脂肪族ポリエステルは、DSC装置を用いて昇温速度500℃/分で200℃に昇温し、その状態で5分間ホールドさせて融解させた後、降温速度500℃/分で90℃に降温し、90℃でホールドして等温結晶化させて示差熱分析したときの結晶化速度指数(以下、「tmax1」と略記することがある)が、3〜10分であることが好ましい。この結晶化速度指数tmax1は、重合体を200℃の溶融状態から冷却し90℃にて結晶化させたときに最終的に到達する結晶化度の2分の1に到達するまでの時間(分)で示され、結晶化速度指数が小さいほど結晶化速度が速いことを意味する。従って、複合繊維に含まれる脂肪族ポリエステル重合体として、上記のように結晶化速度指数tmax1が3〜10分の結晶化速度の高いものを用いることで、溶融紡糸したときの冷却性が良好になり、開繊時にブロッキングを生じにくくすることができる。
本発明において、脂肪族ポリエステル重合体の原料となる脂肪族ポリエステルとしては、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて測定した230℃のメルトフローレイトと190℃のメルトフローレイトとの差である溶融粘度勾配が20g/10分以下の範囲であるものが好ましい。このような特性を持つ脂肪族ポリエステルは、温度による流動性の低下が少なく、架橋構造に近い高次構造を有することができ、このためtmax1を上述のように3〜10分とすることができる。すなわち、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を速くすることができ、短繊維不織布などの製造工程に比べて紡糸工程から冷却・延伸工程までが限られた短い距離とならざるを得ないスパンボンド不織布の製造工程においても、架橋反応によって発現するような溶融時の弾性を脂肪族ポリエステル重合体に発現させることがなく、これを良好に冷却させて結晶化させることができる。このため、本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布は、開繊工程におけるブロッキングの発生を効果的に防止することができる。
脂肪族ポリエステル重合体の原料となる脂肪族ポリエステルとしては、市販品を好適に使用することができ、具体的には、三菱化学社製、商品名「GSPla」(結晶融点:110℃)などを用いることができる。
複合長繊維を構成するポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体の、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて測定した、210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレイト(MFR1)の比(脂肪族ポリエステル重合体のMFR1/ポリ乳酸系重合体のMFR1)(以下、「MFR比1」と略記することがある)が、0.3〜1.5であることが好ましい。さらに、複合長繊維を構成するポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体の、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて測定した、230℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレイト(MFR2)の比(脂肪族ポリエステル重合体のMFR2/ポリ乳酸系重合体のMFR2)(以下、「MFR比2」と略記することがある)が、0.7以下であることが好ましくい。MFR比1とMFR比2がともに上記の範囲であることによって、複合長繊維を溶融紡糸した際に、ポリ乳酸系重合体が結晶化する際に発生する熱で脂肪族ポリエステル重合体の冷却を阻害することがなく、このため、糸条冷却後の開繊工程にてブロッキングを生じにくくすることができる。
高級脂肪酸としては、特に限定されないが、下記化学式(A)で示される。
n−12(n−m)−1COOH (A)
上記式中、nは10〜30の整数を示す。mは高級脂肪酸中の不飽和結合の数を示す。
高級脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、ノナコンサン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、9−ウンデシレン酸、リンデル酸、2−トリデセン酸、ミリストレイン酸、6−ペンタデセン酸、2−パルミトレイン酸、2−ヘプタデセン酸、オレイン酸、cis−9−ナデセン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、cis−7−キサコセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。上記の中でも、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を上げるという本発明の目的に照らせば、モンタン酸を最も好適に用いることができる。また、入手しやすく安価であり、ポリマー中に添加しやすく滑性付与効果も十分優れているという点からは、ステアリン酸を好適に用いることができる。
高級脂肪酸金属塩としては、特に限定されないが、下記化学一般式(B)で表される直鎖状のものが好適に用いられる。
(Cn−12(n−m)−1COOa+ (B)
上記式中、nは10〜30の整数を示す。mは高級脂肪酸中の不飽和結合の数を示す。Xは、Li、K、Na、Ca、Mg、Zn,Pb,Al、Ba、Cdから選ばれた少なくとも1種の金属原子を示す。aは原子Xのイオン価数を示す。金属塩としては、Ca、Mg、Zn塩などが、非水溶性で、肌に触れたときに肌を刺激しないという点から好ましい。
上記の中でも、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を上げるという本発明の目的に照らせば、モンタン酸カルシウムを最も好適に用いることができる。また、入手しやすく安価であり、ポリマー中に添加しやすく滑性付与効果も十分優れているという点からは、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などが好適である。
モンタン酸カルシウムを用いた場合は開繊性が良好となる。その理由としては、不織布を構成する繊維形態に起因すると推察される。すなわち、モンタン酸カルシウムを脂肪族ポリエステルに添加し、溶融紡糸することによって、理由は定かではないが、繊維表面に以下の(イ)〜(ハ)から選ばれた少なくとも1種の形状を呈するようにすることができる。
(イ)繊維表面に微細な凹部が形成されること
(ロ)繊維表面に微細な凸部が形成されること
(ハ)繊維表面の繊維軸方向に筋状に凹部が形成されること
そして、繊維表面に上記のように凹部や凸部が形成されると、本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布を構成する繊維−繊維間の表面摩擦が小さくなり、開繊時に良好な開繊状態になると推測される。
図1は、モンタン酸カルシウムを用いた場合に得られる長繊維の表面の様子を示すものである。図示のように、繊維表面に微細な凹凸部が形成されている。
フェニルホスホン酸金属塩としては、フェニルホスホン酸亜鉛塩、フェニルホスホン酸カルシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩等を使用することができる。上記の中でも、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を上げるという本発明の目的からは、フェニルホスホン酸亜鉛塩が特に好適に用いられる。
フェニルホスホン酸金属塩を用いた場合も開繊性が良好となる。その理由としては、本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布を構成した場合の繊維の表面形態がモンタン酸カルシウムのときと同様となっていることからして、同様の理由であると推測される。
図2は、フェニルホスホン酸金属塩を用いた場合に得られる長繊維の表面の様子を示す。図示されたように、繊維表面に微細な凹凸が形成されている。この場合の凹凸部は、モンタン酸カルシウムを用いた場合に得られる長繊維の表面の凹凸部よりも細かな凹凸部となる。
また、アマイドワックスを用いた場合も開繊性が良好となる。その理由としては、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度が速くなることと、開繊工程での繊維−繊維間の摩擦抵抗を小さくして、開繊時におけるブロッキングの発生を効果的に防止することができるためであると推測される。
アマイドワックスとしては、特に限定されないが、脂肪族モノカルボン酸アミド、N−置換脂肪族モノカルボン酸アミド、脂肪族ビスカルボン酸アミド、N−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド、N−置換尿素類などの脂肪族カルボン酸アミドや、芳香族カルボン酸アミド、あるいは水酸基をさらに有するヒドロキシアミドなどが挙げられる。これらの化合物が有するアミド基は1個でも2個以上でもよい。
脂肪族モノカルボン酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、べへニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
N−置換脂肪族モノカルボン酸アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールべへニン酸アミドが好ましい。
脂肪族ビスカルボン酸アミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスベヘニン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
N−置換脂肪族カルボン酸ビスアミドの具体例としては、N,N´−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N´−エチレン−ビス−オレイルアミド、N,N´−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスパルミチン酸アミド、N,N´−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N,N´−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N´−ヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミドが好ましい。
N−置換尿素類の具体例としては、N−ブチル−N´ステアリル尿素、N−プロピル−N´ステアリル尿素、N−アリル−N´ステアリル尿素、N−ステアリル−N´ステアリルが好ましい。
これらの中でも、N,N´−エチレン−ビス−オレイルアミド、N,N´−エチレン−ビス−リシノレイルアミド、N,N´−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N´−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスパルミチン酸アミド、N,N´−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、N,N´−ヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等のビスアミドが、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度をより向上させることができる点で好ましい。
脂肪族ポリエステルに溶融混合する際の、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つの配合量は、その合計で0.1〜1質量%であることが必要であり、0.1〜0.7質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。配合量が0.1質量%未満では、繊維−繊維間の摩擦抵抗を小さくすることができず、開繊工程におけるブロッキングの発生を抑制するには不十分である。また、1質量%を超えると、紡糸操業性が劣る傾向となる。
以上の点に関連して、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを溶融混合した脂肪族ポリエステル重合体は、DSC装置を用いて昇温速度500℃/分で200℃に昇温し、その状態で5分間ホールドさせて融解させた後、降温速度500℃/分で90℃に降温し、90℃でホールドして等温結晶化させて示差熱分析したときの結晶化速度指数(以下、「tmax2」と略記する場合がある)が2分以下であることが好ましい。結晶化速度指数tmax2は、重合体を200℃の溶融状態から冷却し90℃にて結晶化させたときに最終的に到達する結晶化度の2分の1に到達するまでの時間(分)で示され、結晶化速度指数が小さいほど結晶化速度が速いことを意味する。したがって、複合繊維の原料として用いられる、脂肪族ポリエステルに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを所定量溶融混合した脂肪族ポリエステル重合体は、結晶化速度指数tmax2を2分以下にすることに加えて、繊維−繊維間の摩擦抵抗を小さくすることが可能であり、このため溶融紡糸したときの冷却性が良好であるとともに、開繊時にブロッキングを生じにくいようにすることができる。そのため、本発明の生分解性フェイスカバーを形成するのに有用である。
次に、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度の関係について説明する。
ポリ乳酸系重合体の結晶化速度は遅く、上述した脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を測定する温度(90℃)では等温結晶化は発現しない。従って、ポリ乳酸系重合体は脂肪族ポリエステル重合体よりも結晶化速度は遅いと推測する。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布においては、脂肪族ポリエステル重合体が、複合繊維表面の少なくとも一部を形成する。複合繊維を製造する工程において、結晶化速度の遅いポリ乳酸系重合体が結晶化する際に発生する熱で、繊維表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル重合体の冷却が阻害される。しかしながら、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化速度を上述の範囲にし、さらに高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを添加することにより、結晶化速度を速くすることができる。それにより、ポリ乳酸系重合体が結晶化する際に発生する熱に阻害されず複合繊維の紡糸工程、開繊工程で繊維同士のブロッキングを起こさずに不織布を製造することができるため、該不織布により形成された生分解性フェイスカバーは柔軟性に優れたものとなる。
ポリ乳酸系重合体は、DSC装置を用いて昇温速度500℃/分で200℃に昇温し、その状態で5分間ホールドさせて溶解させた後、降温速度500℃/分で130℃に降温し、130℃でホールドして等温結晶化させて示差熱分析したときの結晶化速度指数(以下、「tmax3」と略記する場合がある)が、10分以下であることが好ましい。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布においては、脂肪族ポリエステル重合体が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する。このような繊維を構成するための繊維断面形態として、例えば、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体とが貼り合わされたサイドバイサイド型複合断面、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し脂肪族ポリエステル重合体が鞘部を形成してなる芯鞘型複合断面、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル重合体とが繊維表面に交互に存在する分割型複合断面や多葉型複合断面等が挙げられる。脂肪族ポリエステル重合体は後述のように熱接着成分としての役割を果たすものであるため、フェイスカバーを形成する際のヒートシール性を考慮すると、脂肪族ポリエステル重合体が繊維の全表面を形成している芯鞘型複合断面であることが好ましい。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布は、芯鞘型複合断面を有した複合繊維であることが好ましい。かかる場合には、ポリ乳酸系重合体が繊維形成成分としての芯部を形成する。さらに、脂肪族ポリエステル重合体が、生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布の形態を維持するためや、他の部材と熱シールにより貼り合わせられるための熱接着成分として機能する鞘部を形成する。このような芯鞘型複合断面である場合において、芯部と鞘部の複合比(質量比)は、芯部/鞘部=3/1〜1/3であることが好ましい。芯部の比率が3/1を超えると、鞘部の比率が少なくなりすぎるため、熱接着性に劣る傾向となり、不織布より形成されるフェイスカバーの形態保持性や機械特性が劣る傾向となるうえに、十分なヒートシール性を得にくくなる。一方、芯部の比率が1/3未満となると、得られたフェイスカバーの機械的強度が不十分なものとなりやすい。
本発明の生分解性フェイスカバーは、前述した複合繊維が堆積されたスパンボンド法により形成された不織布から得られるものである。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布の形態としては、脂肪族ポリエステル重合体成分が溶融または軟化することにより繊維同士が熱接着して形態保持しているものがよいが、構成繊維同士が交絡により形態保持しているものでもよい。熱接着の形態としては、繊維同士の接点において、溶融または軟化した脂肪族ポリエステル重合体を介して熱接着したものであってもよいし、また、熱エンボス装置を通すことにより、部分的に形成される熱接着部と、それ以外の非熱接着部とを有し、熱接着部において脂肪族ポリエステル重合体成分が溶融または軟化して不織布として形態保持しているものであってもよい。
本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布を構成する複合繊維の単糸繊度は、7デシテックス以下であるものが好ましく、5デシテックス以下であるものがより好ましい。単糸繊度が7デシテックスを超えると、フェイスカバーを着用する場合において、肌に接した際に硬さを感じるようになり、着用時に不快感を覚えやすくなるためである。なお、単糸繊度の下限は、不織布を得る際の操業性の観点より、1デシテックス程度とする。
本発明の生分解性フェイスカバーの目付は、15〜50g/mの範囲が好ましく、2
0〜40g/mがより好ましい。目付が15g/m未満であると、機械特性がフェイ
スカバーとしての実用性に乏しいものとなりやすい。逆に、目付が50g/mを超える
と、本発明の生分解性フェイスカバーを形成可能な不織布における構成繊維が密であるた
め、該フェイスカバーの風合いが硬くなりやすい。
本発明の生分解性フェイスカバーは、JIS L 1906:2000に記載のハンドルオメーター法に準じて測定した柔軟度が15cN以上90cN以下であることが好ましく、15cN以上60cN以下がより好ましい。柔軟度が60cNを超えると、不織布の風合いが硬くなりフェイスカバーとして好ましくない。また、柔軟度が15cN未満であると、柔らかすぎて、取り扱いにくい傾向となる場合があり好ましくない。
また、本発明の生分解性フェイスカバーは、JIS L 1096:1999に記載の方法に準じて測定したドレープ係数が0.91以下であることが好ましい。このドレープ係数は、不織布のドレープ性(柔軟性の指標のひとつ)を表すものであり、その数値が小さいほどドレープ性が良く現れることを意味する。0.91を超えると、風合いが硬くなる傾向にある。本発明においては、ドレープ係数の下限は0.650程度とする。あまり小さくなりすぎると、フェイスカバーを装着した際に顔にまとわりつきすぎるためである。
上記のように複合繊維の単糸繊度を7デシックス以下とし、フェイスカバーの目付を15〜50g/mとして、これらの範囲でそれぞれ調整することにより、柔軟性に優れるフェイスカバーを得ることができる。
本発明の生分解性フェイスカバーは、昇温速度10℃/分で溶解した後、降温速度10℃/分で示差熱分析したときに、ポリ乳酸系重合体に起因する降温結晶化温度Tc1と、脂肪族ポリエステル重合体に起因する降温結晶化温度Tc2とが存在する。本発明においては、Tc2が80℃以上90℃以下であることが好ましい。降温結晶化温度Tcは、例えば袋状のフェイスカバーを製造するためにヒートシール加工を施した場合のシール部が冷却して固化するときの温度を示すものであり、この温度が低いほど冷却時間がかかることを表す。したがって、脂肪族ポリエステル重合体に起因する降温結晶化温度Tc2が80℃未満であると、本発明の生分解性フェイスカバーを製造するためにヒートシール加工した際に、シール部が冷却されるまでの時間がかかり、加工速度が遅くなるため好ましくない。
また、脂肪族ポリエステル重合体に起因する結晶化熱量Hexo2が20J/g以上40J/g以下であることが好ましい。結晶化熱量Hexoは、冷却するのに必要な能力であり、この値が小さい場合は、ヒートシール部がなかなか冷却固化しないという現象が発生する。結晶化熱量Hexo2が20J/g未満である場合には、本発明の生分解性フェイスカバーを製造するためにヒートシール加工した際に、シール部が冷却されるまでの時間がかかり、加工速度が遅くなるため好ましくない。
本発明の生分解性フェイスカバーは、上記のような不織布にて形成されるものである。すなわち、この不織布を適宜の大きさに裁断し、ヒートシール部を形成することにより、袋状の形態としたものである。
ヒートシール部においては、脂肪族ポリエステル重合体が溶融または軟化することにより繊維同士が密着し、かつポリ乳酸系重合体は熱の影響を受けずに繊維の形態を維持した状態となっている。このように、不織布にヒートシール部を形成してフェイスカバーを得るために、公知のヒートシーラーによる製袋加工を適用することができる。このときのヒートシーラーの処理条件(設定温度、線圧、処理速度)は、脂肪族ポリエステル重合体を溶融または軟化させ、かつ脂肪族ポリエステル重合体よりも高融点のポリ乳酸系重合体に熱の影響を与えない適宜の条件に設定することができる。
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定や各種物性の評価は、下記の方法により実施した。
(1)融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、商品名「DSC−2型」)を用いて、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
(2)降温結晶化温度Tc(℃)、結晶化熱量Hexo(J/g):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、商品名「DSC−7型」)を用い、試料質量を10mg、昇温速度を10℃/分として210℃まで昇温し、続いて降温速度を10℃/分として降温したときに得られた結晶化発熱曲線の発熱ピークの極値を与える温度を降温結晶化温度Tcc(℃)とし、その発熱ピークの部分の面積を結晶化熱量Hexo(J/g)とした。
(3)結晶化速度指数(分):
tmax1、tmax2
示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、商品名「DSC−2型」)を用いて、試料5mgを昇温速度500℃/分で200℃に昇温し、その状態で5分間ホールドさせた後、降温速度500℃/分で90℃に降温し、90℃でホールドして等温結晶化させて示差熱分析することにより、脂肪族ポリエステル重合体の結晶化指数tmax1と、脂肪族ポリエステル重合体に、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを溶融混合させて、溶融温度200℃で押出した溶融混合物の結晶化速度指数tmax2を求めた。
tmax3
示差走査型熱量計(パーキンエルマ社、商品名「DSC−2型」)を用いて、試料5mgを昇温速度500℃/分で200℃に昇温し、その状態で5分間ホールドさせて融解させた後、降温速度500℃/分で130℃に降温し、130℃でホールドして等温結晶化させて示差熱分析することにより、ポリ乳酸系重合体の結晶化速度指数tmax3を求めた。
(4)繊度(デシテックス):フェイスカバーを形成可能な不織布において、ウエブ状態における複合繊維50本の繊維径を光学顕微鏡にて測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
(5)目付(g/m):フェイスカバーを形成可能な不織布において、標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、平衡水分にした後、各試料片の重量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m)とした。
(6)柔軟性(cN):JIS L 1906:2000に記載のハンドルオメーター法に準じて測定した。
(7)ドレープ係数:JIS L 1096:1999の記載の方法に準じて測定した。
(8)フェイスカバーの装着性
化粧を施した人にフェイスカバーを装着し、上衣の着換えを行った後、フェイスカバーを脱着した。脱着後の状態について、下記の2段階で官能評価した。
○:柔軟性、ドレープ性があり、フェイスカバーの頭部への装着は殆どずれることなく維持されて、ずれて顔面が剥き出しになることがなかった。また、着脱した衣類を観察したところ、化粧料の付着は確認されなかった。
×:硬く、ドレープ性が不十分であるため、フェイスカバーの頭部への装着はずれが生じた。また、脱着した衣類を観察したところ、化粧料の付着が多少観察された。
(実施例1)
融点が168℃、MFR1が20g/10分、MFR2が40g/10分、結晶化速度指数tmax3が7.4分の、(L−乳酸)/(D−乳酸)(モル比)=98.4/1.6のL−乳酸とD−乳酸の共重合体(Nature Works社製、商品名「6201D」)(以下、「P1」と略記する)を、芯成分用重合体として用意した。
また、融点が114℃、MFR1が22g/10分、MFR2が25g/10分である、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とする脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート系樹脂)(三菱化学社製、商品名「GSPla FZ71PD」)(以下、「P2」と略記する)を、鞘成分用重合体の原料として用意した。この脂肪族ポリエステルの結晶化速度指数tmax1は、7.4分であった。
さらに、P1をベースとして結晶核剤のタルク(以下、「TA」と略記する)を20質量%練り込み含有したマスターバッチを用意した。
そして、P1とP2の複合比が、質量比でP1:P2=1:1となるように、またP1の溶融重合中にタルクが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中に高級脂肪酸金属塩であるモンタン酸カルシウム(クラリアント社製 商品名「リコモントCa塩V101」)(以下、「V101」と略記する)が、0.5質量%含まれることとなるように、個別に計量した後、P1、P2をそれぞれ個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度200℃で溶融した。モンタン酸カルシウムを添加したP2の結晶化速度指数tmax2は1.0分であった。次いで、芯鞘型複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして補集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、3.5デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付30g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例1のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例2)
フェイスカバーを形成可能な不織布の目付を50g/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のフェイスカバーを得た。得られたフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例3)
芯成分用重合体として、実施例1で用いたP1をベースとしてTAを20質量%練り込み含有したマスターバッチを用意した。鞘成分用重合体の原料として、実施例1で用いたP2を用意した。
そして、P1とP2の複合比が、質量比でP1:P2=1:1となるように、またP1の溶融重合中にTAが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にV101が、0.3質量%含まれることとなるように、個別に計量した後、P1、P2をそれぞれ個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度220℃で溶融した。モンタン酸カルシウムを添加したP2の結晶化速度指数tmax2は2.0分であった。次いで、芯鞘型複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2600m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして補集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、3.2デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付30g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例3のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例4)
芯成分用重合体として、実施例1で用いたP1をベースとして結晶核剤のTAを20質量%練り込み含有したマスターバッチを用意した。鞘成分用重合体の原料として、実施例1で用いたP2を用意した。
そして、P1とP2の複合比が、質量比でP1:P2=2:1となるように、またP1の溶融重合中にタルクが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にV101が、0.5質量%含まれることとなるように、個別に計量した後、P1、P2をそれぞれ個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度200℃で溶融した。モンタン酸カルシウムを添加したP2の結晶化速度指数tmax2は1.0分であった。次いで、芯鞘型複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして補集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、4.8デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付20g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例4のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例5)
芯成分用重合体として、実施例1で用いたP1を用意した。鞘成分用重合体の原料として、実施例1で用いたP2を用意した。
そして、P1とP2の複合比が、質量比でP1:P2=1:1となるように、またP1の溶融重合中に結晶核剤としてフェニルホスホン酸亜鉛塩(日産化学社製、商品名「PPA−Zn」)(以下、「PPA−Zn」と略記する場合がある)が1質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にV101が、0.5質量%含まれることとなるように、個別に計量した後、P1、P2をそれぞれ個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度200℃で溶融した。モンタン酸カルシウムを添加したP2の結晶化速度指数tmax2は1.0分であった。次いで、芯鞘型複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸状を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2100m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして補集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、3.3デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付20g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を100℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例5のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例6)
芯成分用重合体として、実施例1で用いたP1をベースとして結晶核剤のTAを20質量%練り込み含有したマスターバッチを用意した。鞘成分用重合体の原料として、実施例1で用いたP2を用意した。
そして、P1とP2の複合比が質量比でP1:P2=1:1となるように、またP1の溶融重合体中にタルクが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にアマイドワックスであるN,N'−エチレンビスステアリン酸アミド(以下、「アマイドワックス1」と略記する)が0.5質量%含まれることになるように、個別に計量した後、P1、P2それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度220℃で溶融した。アマイドワックス1を添加したP2の結晶化速度指数tmax2は1.1分であった。
次いで、芯鞘複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2250m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、3.1デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付け50g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例6のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例7)
芯成分用重合体として実施例1で用いたP1、P2を用意した。
そして、P1とP2の複合比が質量比でP1:P2=1:1となるように、また、P1の溶融重合体中に結晶核剤としてTAが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にアマイドワックス1が0.3質量%含まれることになるように個別に計量した後、P1、P2をそれぞれ個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度220℃で溶融した。アマイドワックス1を添加したP2の結晶化速度指数tmax2は1.5分であった。
次いで、実施例6と同様の製造方法にて、目付30g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。
次いで、この不織布を用いて、実施例6と同様にして、実施例7のフェイスカバーを形成した。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(実施例8)
芯成分用重合体として実施例1で用いたP1をベースとして結晶核剤のTAを20質量%練り込み含有したマスターバッチを用意した。鞘成分用重合体の原料として、実施例1で用いたP2を用意した。
そして、P1とP2との複合比が質量比でP1:P2=2:1となるように、またP1の溶融重合体中にタルクが0.5質量%含まれることになるように、さらにP2の溶融重合体中にアマイドワックスであるN,N'−エチレンビスパルミチン酸アミド(以下、「アマイドワックス2」と略記する)が0.5質量%含まれることになるように、個別に計量した後、P1、P2それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて温度220℃で溶融した。アマイドワックス2を添加したP2の結晶化速度指数tmax2は、1.2分であった。
次いで、芯鞘型複合繊維断面となる紡糸口金を用いて、P1が芯部を構成しP2が鞘部を構成するように、単孔吐出量0.70g/分で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置で冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度2000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。開繊の際に、密着糸および収束糸は認められず、開繊性は良好であった。堆積された複合長繊維の単糸繊度は、3.1デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付30g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を100℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例8のフェイスカバーを形成した。すなわち、不織布から、幅40cm、長さ40cmのシートを切り出し、長さ20cmで折返した。そして幅方向の両端部を、温度120℃、面圧98N/cm、処理時間1秒でヒートシールして、幅0.5cmのヒートシール部を形成し、袋状のフェイスカバーを形成した。得られたフェイスカバーのヒートシール部を目視で観察したところ、熱による収縮の発生はなく、良好にシールされていた。
得られたポリ乳酸系長繊維不織布からなるフェイスカバーの性能を表1に示す。
(比較例1)
実施例1のP1の溶融重合中にタルクを0.5質量%を含有させ、丸金の紡糸口金より、紡糸温度210℃、単孔吐出量1.67g/分で溶融紡糸した。次に、紡出糸状を冷却空気流にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて5000m/分で引き取り、これを公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上に堆積してウエブを形成した。堆積させた長繊維の単糸繊度は、3.3デシテックスであった。
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付30g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を130℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20個/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。
次いで、この不織布を用いて、実施例1と同様の方法でフェイスカバーを形成しようとしたが、ヒートシール部を形成できず、ヒートシール加工ができなかった。このため、超音波加工によりフェイスカバーを形成した。
比較例1のフェイスカバーの性能を表1に示す。
実施例1〜8のフェイスカバーは、比較例1のフェイスカバーと比較して、柔軟性および肌ざわり性に優れており、さらに装着性に優れるものであった。しかも、ヒートシール加工を良好に行うことが可能であり、工業生産性が良好であった。

Claims (8)

  1. 複合繊維を構成繊維としてスパンボンド法により形成された不織布からなり、前記複合繊維は融点が160℃以上のポリ乳酸系重合体とこのポリ乳酸系重合体よりも融点が50℃以上低い脂肪族ポリエステル重合体とを含むとともに、前記脂肪族ポリエステル重合体が前記複合繊維表面の少なくとも一部を形成しており、かつ前記脂肪族ポリエステル重合体は1,4−ブタンジオールとコハク酸とを構成成分とするとともに、高級脂肪酸と、高級脂肪酸金属塩と、フェニルホスホン酸金属塩と、アマイドワックスとから選ばれる少なくとも1つを0.1〜1質量%含有していることを特徴とする生分解性フェイスカバー。
  2. 目付が15〜50g/mであり、柔軟度が15cN以上60cN以下であり、ドレープ係数が0.650以上0.950以下であることを特徴とする請求項1記載の生分解性フェイスカバー。
  3. 高級脂肪酸金属塩がモンタン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の生分解性フェイスカバー。
  4. フェニルホスホン酸金属塩がフェニルホスホン酸亜鉛塩であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の生分解性フェイスカバー。
  5. アマイドワックスがエチレンビスステアリン酸アミドまたはエチレンビスパルミチン酸アミドであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の生分解性フェイスカバー。
  6. 複合繊維は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、脂肪族ポリエステル重合体が鞘部を形成した芯鞘複合長繊維であって、芯部と鞘部の複合比が、質量比で、芯部/鞘部=3/1〜1/3であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の生分解性フェイスカバー。
  7. 複合長繊維は、昇温速度10℃/分で融解した後、降温速度10℃/分で示差熱分析したときに、脂肪族ポリエステル重合体に起因する降温結晶化温度が存在し、この降温結晶化温度が80℃以上90℃以下であり、脂肪族ポリエステル重合体に起因する結晶化熱量が20J/g以上40J/g以下であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の生分解性フェイスカバー。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項記載の生分解性フェイスカバーであって、脂肪族ポリエステル重合体の溶融または軟化により構成繊維同士が接着しているヒートシール部を有することによって袋状に構成されていることを特徴とする生分解性フェイスカバー。
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