図1は修飾されたEGII(SEQ ID NO:1)のアミノ酸配列を示す。
図2は図1に描かれたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を示す。
図3は本願に記載されたアミノ酸配列(‘mEG2’と表示されている)と公表されたEG2(Gene(1988)63(1):11-22)(’Eg2-1988’と表示されている)の位置合わせである。
図4は修飾されたEGIIを発現するために使用されるEGIIpTrex3プラスミドの概略図である。
図5は修飾されたEGIIを発現するために使用されるEGIIpTrex3プラスミドの概略図である。
図6はT. reesei EG2 株AとB由来の濃縮した上澄液のSDS-PAGE電気泳動である。(実施例1と2で記載されている。)
図7は以下の酵素処理の後の塊除去について表面の繊維の定量値を示す表1に与えられた結果を図に表したものである。
図8は塊除去の酵素的処理結果を示す写真である。
図9布地の擦れについて表2に与えられている結果をグラフに表したものである。
詳細な説明
本発明は以下の定義と実施例を用いて参考のためのみに詳細に述べられている。本願に引用された全ての特許と刊行物は、そのような特許と刊行物に開示された全ての配列を含め、引用により明示的に本願に組み入れられる。
本願で別に定義されていない場合には、本願で使用される全ての技術的及び科学的用語はこの発明が属する技術分野の普通の技術者により共通に理解されているものと同一の意味を持つ。SingletonらDICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale & Marham, The HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は技術者にとりこの発明で使用される用語の多くの一般的辞書となる。本願に記載された方法と材料に類似又は等価のいかなる方法と材料も本願発明の実施と試験で使用できるが、ここには好ましい方法と材料が記載されている。数値の範囲はその範囲を限る数も含む。別に指示がある場合を除き、核酸は左から右へ5’から3’の方向へ、アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシ基の向きに左から右へそれぞれ書かれている。技術者は本願技術分野の定義と用語について、Sambrookら、1989、とAusubel FMら、1993を特に参照する。この発明は、記載された特定の方法論、試験手順及び試薬に限定されないことを理解すべきである。これらは変わりうるからである。
数値範囲はこの範囲を限る数字を含む。
別に指示がある場合を除き、核酸は左から右へ5’から3’の方向へ、アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシ基の向きに左から右へそれぞれ書かれている。
本願に記載の見出しは全体として明細書を参照することにより理解できる本発明の種々の面又は実施態様を限るものではない。従って、直ぐ後に定義される用語は、全体として明細書を参照することにより、さらに十分に定義される。
定 義
「綿を含む布地類」とは、綿織物、綿のニット地、綿のデニム、綿の編み物用糸等を含む純粋の綿又は綿を含むものから作られた縫製または縫製されていない布地類をいう。綿の混紡が使用される場合、布地類中の綿の量は少なくとも綿重量で約40%であるべきであり、好ましくは綿重量で約60%、及び最も好ましくは綿重量で約75%より多くあるべきである。混合で使用される場合、布地類に使用される他の材質はポリアミド繊維(例えば、ナイロン6及びナイロン66)、アクリル繊維(例えば、ポリアクリロニトリル繊維)、及びポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール繊維(例えば、ビニロン)、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリウレア繊維及びアラミド繊維等の1以上の非綿繊維を含みうる。
「セルロースを含む布地類」は、天然のセルロース製品の及び人工のセルロース製品(例えば、ジュート、亜麻、ラミー繊維、レイヨン、TENCELTM)等、綿の、又は綿以外のセルロース製繊維を含む布地類または綿又は綿以外のセルロースを含む混合布地製品をいう。人工のセルロースを含む布地類の項にはレイヨンのような本願技術分野で良く知られている再生布地類が含まれる。他の人工のセルロースを含む布地類は化学的に修飾されたセルロース繊維(例.酢酸により誘導体とされたセルロース)と溶媒紡糸(solvent spun)セルロース繊維(例.リオセル(lyocell))を含む。もちろん、このような材料から作られる衣類や織物用糸は、セルロースを含む布地類の定義に含まれる。同様に、「セルロースを含む布地類」はこのような材料から作られた織物用繊維を含む。
「処理剤組成物」とは、製造においてセルロースを含む布地類の処理に使用できる修飾を受けたEGIIセルラーゼ成分を含む組成物をいう。このような処理は、ストーンウォッシング(stonewashing)、塊の除去(depilling)、織物や、セルロースを含む布地類の感触と外観の改変、またはセルロースを含む布地類の製造において使用される他の技術を非限定的に含む。加えて、この発明について述べる場合、処理は、セルロースの布地又は繊維から「デッドコットン(dead cotton)」、つまり、成熟した綿よりも相当に非晶質である未成熟な綿、を取り除くことを考慮している。デッドコットンは不均一な染色を起こすことが知られている。さらに、「処理剤組成物」は、汚れた製造されたセルロース含有布地類の洗浄に使用できる修飾されたEGIIセルラーゼ成分を含む組成物をいう。例えば、修飾EGIIセルラーゼは洗濯物の洗浄用洗剤組成物で使用しても良い。本願の発明において有用な洗剤組成物は、予備洗浄剤、予備浸漬剤及び家庭用の色の回復剤のような特別な調合剤を含む。処理剤組成物は稀釈を要する濃縮液、稀釈液、またはセルロースを含む布地類に直接に適用できる形態のものでも良い。
セルロースを含む布地類に対するセルラーゼの作用パターンは、製造においてストーンウォッシング成分として使用されるか、または汚れた製造されたセルロースを含む布地類の洗濯において使用されるかで大きく変わらないことが出願人が現在信じているところである。従って、あるセルラーゼまたはセルラーゼの混合物により与えられる、擦れ(abrasion)、染料の再沈着、強度の損失といった性質の改善、改善された感触が、セルラーゼを組み入れた洗剤と製造方法の両者において得られる。もちろん、本願で示すように、セルラーゼの種々の織物用の用途、例えば、ストーンウォッシング、洗濯洗剤、または予備浸漬、に用いる特定の組成物の処方は、各組成物が用いられる異なる用途により異なっても良い。しかし、セルラーゼ組成物の添加によって達成される改善は種々の織物用途のそれぞれについて広く一致しているであろう。
「ストーンウォッシング組成物」はセルロースを含む布地類のストーンウォッシングにおいて使用するための処方をいう。ストーンウォッシング組成物は、汚れた衣類の洗浄が予定されている洗剤組成物と対照的に、消費者に販売するため提供する前、つまり、製造工程において、セルロースを含む布地類を修飾するために使用される。
「ストーンウォッシング」は、デニムに「ストーンウォッシング」された外観を与える撹拌とカスケーディング(cascading)条件下、つまり、回転ドラム洗濯機中で、セルラーゼ溶液によりセルロースを含む染色した布地類を処理することをいう。デニムに「ストーンウォッシング」された外観を与える方法は米国特許第4,832,864号に述べられ、これは引用によりその全部が組み入れられる。一般的に、ストーンウォッシング技術は染色されたデニムに使用されてきた。
「洗剤組成物」は汚れたセルロースを含む布地類の洗濯に使用する洗濯媒体中で使用することが意図された混合物をいう。本願発明について述べる場合、そのような組成物は、セルラーゼと界面活性剤に加え、他の加水分解酵素、添加剤、漂白剤、青みつけ剤、蛍光染料、固化予防剤、マスキング剤、セルラーゼ活性剤、抗酸化剤、溶解剤を非限定的に含む多くの添加物を含んでも良い。そのような組成物は、ストーンウォッシング組成物と対照的に一般に汚れた衣類の洗浄に使用され、製造工程では使用されない。
「再沈着性セルラーゼ」とは、セルラーゼ溶液を使用した、セルロースを含む布地類の酵素によるストーンウォッシング又は他の処理において、特にデニムについて、布地に染料が再沈着する結果となるセルラーゼをいう。この効果は逆染色(backstaining)といわれることが多い。布地類のそのような逆染色は、望む白と対照した青色ではなく、再沈着が青色の上に青色を加える結果となるため、不完全なストーンウォッシングとなる。
「表面活性剤または界面活性剤」は、洗剤組成物で用いる良く知られているアニオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤をいう。
「洗浄媒体」は、洗剤組成物の必要量を水に加えて調製される洗浄水溶液をいう。この洗浄媒体は一般的に洗浄に有効な量の洗剤を含む。
用語「EGII」は、本願で定義する場合、トリコデルマ属の種のEGIIから通常由来するエンドグルカナーゼ型の成分、またはトリコデルマ属の種のEGIIに由来するエンドグルカナーゼを同定する特徴を備えているエンドグルカナーゼ型の成分をいう。EGIIが、以前は幾人かの著作者により”EGIII”という命名でよばれていたことが、しかし現在の命名法は用語EGIIを使用していることに留意すべきである。例えば、Stalbrandら、APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、第61巻、1090-1097ページ(1995)での議論を見よ。いずれにしても、本願で定義されるEGIIタンパク質は実質的にEGIIIタンパク質とその分子量、pI及びpH最適値において異なる。用語「EGIIセルラーゼ」は、約4.0から6.0の最適pH、約5.5からの等電点(pI)、及び約48Kダルトンの分子量により特徴付けられるトリコデルマ属の種に由来するエンドグルカナーゼ成分をいう。EGIIセルラーゼはトリコデルマ・レセイまたはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)に由来することが好ましい。
用語「修飾を受けたEGII」は、本願で使用するとき、図1に示されるアミノ酸配列をいう。
用語「%相同性」は、本願では用語「%同一性」と相互に入れ替えて使用され、修飾を受けたEGIIをコードする核酸配列または修飾を受けたEGIIアミノ酸配列の間の、配列位置合わせプログラムを使用して位置あわせをしたときの、核酸配列又はアミノ酸配列の同一性の水準をいう。
例えば、本願で使用する場合、80%の相同性は定められたアルゴリズムにより決定される80%の配列同一性と同じことを意味する。そして、従って、所与の配列の相同体は所与の配列の長さ全体にわたり80%より大きい配列相同性をもつ。配列同一性の水準の例は、本願で述べる場合には、所与の配列、例えば、修飾を受けたegl IIの配列に対し80、85、90、95、98%またはそれより大きい配列同一性を非限定的に含む。
2種の配列の間の同一性を決定するために使用され得るコンピュータプログラムの例はBLASTプログラム1式、例えば、BLASTN、BLASTX、及びTBLASTXとBLASTPとTBLASTNを非限定的に含み、これらはwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTでインターネット上で一般に入手できる。また、Altschulら、1990年及びAltschulら、1997年も参照せよ。
GenBank DNA Sequencesまたは他の公開のデータベースの核酸配列と比較して所与の核酸配列を評価する際、配列の調査は、通常BLASTNプログラムを使用して実行される。BLASTXプログラムはGenBank Protein Sequencesと他の公開のデータベース中のアミノ酸配列に対し、全てのリーディングフレーム(reading frames)内の翻訳された核酸配列を調査する際に好まれる。BLASTNとBLASTXの両者は11.0のオープンギャップペナルティー及び1.0のエクステンデドギャップペナルティーのデフォルトパラメーターを使用して稼動され、BLOSUM-62マトリックスを利用する。(例えば、Altschulら、1997年参照)
2以上の配列の間の「%同一性」を決定するため選択された配列の好ましい位置あわせは、例えば、MacVector 6.5版、CLUSTAL-W プログラムを、10.0のオープンギャップペナルティー、0.1のエキステンデドギャップペナルティー、及びBLOSUM 30相同マトリックス等のデフォルトパラメーターで稼動して行われる。
「成分セルラーゼ」は、所与の微生物により産生されるセルラーゼ系に普通存在する他のセルラーゼ成分を本質的に伴わない成分である。単一の成分は組換え成分、つまりこの単一の成分をコードするDNA配列がクローニングされ、続いてこのDNA配列により細胞が形質転換され、そして宿主に発現されることにより産生されても良い。例えば、米国特許第5,654,193号参照。成分セルラーゼの他の例は、日本特許第07203960-A号とWO92/06209に開示されたものを非限定的に含む。宿主は、異種性の宿主であることが好ましく、しかし、宿主はある条件下では、同種の宿主でも良い。
用語「精製された」は、本願で使用するときは、他の成分の除去、特に他のタンパク質、最も特定して言えば、修飾を受けたEGIIを発現する細胞にある他の酵素の除去もいう。修飾を受けたEGIIは「実質的に純粋」でも良く、つまり、EGIIを産生した生物、つまり、例えば、組換えにより修飾を受けたEGIIを産生した宿主、に由来する他の成分を含まないことでも良い。好ましい実施態様では、修飾を受けたEGIIは少なくとも75%(w/w)純粋であり、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。別の好ましい実施態様では、修飾を受けたEGIIは100%純粋である。
「塊除去(depilling)」という語は、製造工程または続く洗浄において行われる処理をいう。どちらの場合でも、処理は綿製品を、布地類、水、緩衝液、セルラーゼ酵素及び、任意に、洗剤又は界面活性剤を含む回転式水平または垂直ドラムジェットダイヤー(dyer)、洗濯機、または他の装置に入れて、撹拌とせん断流を布地に与えて行われる。この処理は使用した化学試薬や、分離した小繊維等の布地の一部を取り除くために水による濯ぎが続くことが多い。処理の後、布地類はこの機械から取り出され、乾燥される。
用語「ポリペプチド」は、本願で使用される場合、ペプチド結合により結合された一本鎖のアミノ酸残基から作られた化合物をいう。用語「タンパク質」は本願で使用する場合、用語「ポリペプチド」と相互に入れ替えて使用される。
用語「核酸分子」はRNA、DNA及びcDNA分子を含む。遺伝子コードの縮重の結果として所与のタンパク質、例えば、修飾を受けたEG2(またはいずれか他のタンパク質)をコードする多種のヌクレオチド配列を作ることができることは理解されるであろう。本願発明は、遺伝子コードの縮重を与えられたとき、修飾を受けたEG2をコードする全ての可能な種類のヌクレオチド配列を含む。
「異種」の核酸構造体、又は配列は、それが発現される細胞にとり固有のものではない配列の一部をもつ。制御配列にとり異種とは、現にその発現を調節している同一の遺伝子を天然では調節するために機能していない制御配列(つまり、プロモーターまたはエンハンサー)をいう。一般的に、異種の核酸配列はその細胞にとり内在性ではなく、またはそれらが含まれるゲノムの一部ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション(microinjection)、電気穿孔法(electroporation)等により細胞へ加えられたものである。「異種」の核酸構造体は、元の細胞で見出される制御配列/DNAコーディング領域の組合せと同一、又は異なる制御配列/DNAコーディング領域の組合せを含んでも良い。
本願で使用される場合、用語「ベクター」は異なる宿主細胞の間で移されるようにデザインされた核酸構造体をいう。「発現ベクター」とは、異なる細胞の異種のDNA断片を組み入れ発現できるベクターをいう。多くの原核及び真核発現ベクターは、市販されている。適切な発現ベクターの選択は本願技術分野の技術者の知識の範囲内にある。
従って、「発現カセット」または「発現ベクター」は、目的細胞中で特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸要素を有する、組換え又は合成により生成された核酸構造体である。組換え発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウィルス、核酸断片に組み入れることができる。通常、発現ベクターの組換え発現カセット部は、他の配列のほか、転写を受ける核酸配列とプロモーターを含む。
本願で使用する場合、用語「プラスミド」はクローニングベクターとして使用される円環の二重鎖(ds)DNA構造体で、多くの細菌といくつかの真核細胞の染色体の外にある自律的に複製する遺伝子要素を形成するものをいう。
本願で使用する場合、用語「選択マーカー-コード化ヌクレトチド配列」は細胞中に発現できるヌクレオチド配列であり、選択マーカーの発現が、発現される遺伝子を含む細胞の、対応する選択性試薬の存在下または対応する選択的増殖条件下、増殖を可能にするものをいう。
本願で使用する場合、用語「プロモーター」は下流の遺伝子の転写を指令する核酸配列をいう。このプロモーターは、一般的に、目的遺伝子が発現される宿主細胞に適したものである。このプロモーターは他の転写及び翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも言われる)とともに所与の遺伝子の発現に必要である。一般に、転写及び翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始配列、終止配列、翻訳開始及び終止配列、及びエンハンサー又は活性化配列を非限定的に含む。
核酸が別の核酸配列と機能的に関連があるとき、核酸は「機能的に連結している」。例えば、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質としてDNAが発現する場合、分泌のリーダー(leader)をコードするDNAはポリペプチドのDNAと機能的に連結している。プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与えるときには、そのコーディング領域と機能的に連結している。あるいは、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促すように位置している場合、コーディング領域と機能的に連結している。一般的に、「機能的に連結された」とは、連結されているDNA配列が隣接し、そして、分泌リーダーの場合、隣接しかつリーディングフレームのうちにある。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は便宜な制限部位でのリガーゼによる結合(ligation)により達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドのアダプター、リンカー又はPCR用プライマーが従来の方法で使用される。
本願で使用される場合、用語「遺伝子」はポリペプチド鎖の産生に関連するDNA断片で、コード領域の前又は後にある領域、例えば、5’ 非翻訳領域(5’ UTR)または、「リーダー」配列、及び3’UTR領域または「トレーラー」配列を、また、個々のコーディング領域(エクソン)の間に介在領域(イントロン)含んでも良く、含まなくても良い。
一般的に、本願に述べられた新規のタンパク質又はその類縁体、又は相同体をコードする核酸分子は、本願に規定されたタンパク質の対応する核酸配列に中程度から高度に厳格な条件下でハイブリダイズする。しかし、ある場合には、実質的に異なるコドンの用法による新規なタンパク質をコードする核酸配列が使用されるが、その新規なタンパク質をコードするヌクレオチド配列によりコードされたタンパク質は、固有のタンパク質と同一または実質的に同一のアミノ酸配列をもつ。例えば、宿主により特定のコドンが利用される頻度に従い、原核又は真核細胞の発現システムで新規なタンパク質の迅速な発現を促すようにコーディング領域が修飾されても良い。Te’oら、FEMS Microbiology Letters 190:13-19,(2000)、は例えば、糸状菌における発現の最適化について述べている。
中程度から高度に厳格なハイブリダイゼーション及び洗浄条件下、2個の配列が特異的に互いにハイブリダイズする場合、核酸配列は対照核酸配列に「選択的にハイブリダイズされ得ると」考えられる。ハイブリダイゼーション条件は核酸結合複合体又はプローブの融解温度(Tm)に基づく。例えば、「最高の厳格さ」は通常、約Tm-5℃(プローブのTmの5°低温)で生じる。「高度の厳格さ」は通常Tmの約5-10°低温で、「中程度の厳格さ」はプローブのTmの約10-20°低温で、そして、「低い厳格さ」はTmの約20-25°低温で生じる。機能的には、最高に厳格な条件は、ハイブリダイゼーションプローブと厳格な同一性又はほぼ厳格な同一性をもつ配列を同定するために用いられても良い。一方、高度に厳格な条件は、プローブと約80%以上の同一性をもつ配列を同定するため使用される。
中程度及び高度に厳格なハイブリダイゼーション条件は本願技術分野で良く知られている(例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL(第2版)、Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y., 1989, Chapter 9 and 11, and in Ausbel FM ら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, N.Y.,1993, 参照。明示的に引用により本願に組み入れられる)高度に厳格な条件の例は約42℃で、50%ホルムアミド中、5XSSC、5X Denhardt’s 溶液、0.5%SDS 及び100μg/ml変性担体DNA中でのハイブリダイゼーション、続く室温での2XSSC と0.5%SDS中での二度の洗浄、さらに二度の42℃での0.1XSSC と0.5% SDS中での洗浄を含む。
本願で使用する場合、「組換え体」は細胞又はベクターを示すことがあり、これらは異種の核酸配列の導入により修飾され、またはそのように修飾された細胞から生じた細胞である。つまり、例えば、組換え細胞は、その細胞の固有(非-組換体)の形態中に同一の形態で見出されない遺伝子を発現する、または、組換えのない場合には異常に発現され、不十分に発現され、または全く発現されない固有の遺伝子が、意図的なヒトの介入の結果として発現される。
本願で使用する場合、細胞に関し用語「形質転換された」、「安定に形質転換された」又は「遺伝子導入された」は、その細胞が固有ではない(異種)核酸配列をそのゲノムに組入れ、または多世代にわたり維持されるエピソームであるプラスミドとして固有ではない(異種)核酸配列を有することをいう。
本願で使用する場合、用語「発現」はポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づき産生される過程をいう。この過程は転写と翻訳の両者を含む。
細胞への核酸配列の挿入について述べるとき、用語「導入された」は「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」をいい、核酸配列が細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、ミトコンドリアDNA)に組入れられ、自律的なレプリコンに転換され、または一時的に発現される(例えば、感染mRNA)原核または真核細胞へ核酸配列を組入れることを含む。
用語「シグナル配列」は、細胞外へタンパク質の成熟型の分泌を促すタンパク質のN-末端部のアミノ酸配列をいう。菌体外タンパク質の成熟型は、分泌過程で切断されるのでシグナル配列は欠いている。
用語「宿主細胞」は、ベクターを含み、複製、及び/または転写、または発現構造体の転写と翻訳(発現)を支える細胞をいう。本願の発明で使用される宿主細胞は、大腸菌のような原核細胞、または、酵母、植物、昆虫、両生類、哺乳類細胞のような真核細胞であり得る。一般的に、宿主細胞は糸状菌である。
用語「糸状菌」は、本願技術分野の技術者により認識される、全ての糸状菌をいう。好ましい菌類はアスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ、フサリウム(Fusarium)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、ペニシリウム(Penicillium)、フミコラ(Humicola)、ニューロスポラ(Neurospora)または、エメリセラ(Emericella)、ヒポクレア(Hypocrea)のようなそれらの有性体からなる群から選択される。
本願で使用する場合、用語「精製する」は一般的に核酸またはタンパク質含有細胞を生化学的に精製し及び/又はカラムクロマトグラフィーにかけることをいう。
用語「単離された」又は「精製された」は、本願で使用する場合、核酸またはタンパク質と天然に組み合わされている少なくとも一成分から取り出された核酸又はタンパク質をいう。
本願では、用語「実質的に純粋なポリペプチド」は、元々組み合わされていた他のポリペプチドを、多くとも10重量%で含むポリペプチド調製物をいう(他のポリペプチドはより低いパーセンテージが好まれる。例えば、多くとも8重量%、多くとも6重量%、多くとも5重量%、多くとも4%、多くとも3重量%、多くとも2重量%、多くとも1重量%、多くとも1/2重量%)従って、実質的に純粋なポリペプチドは少なくとも92%の純度であることが好ましく、つまり、このポリペプチドは調製物中にあるポリペプチド総量の少なくとも92重量%を構成し、少なくとも94%純度、少なくとも95%純度、少なくとも96%純度、少なくとも97%純度、少なくとも98%純度、少なくとも99%純度、少なくとも99.5%純度のようなより高いパーセンテージが好ましい。本願に開示されているポリペプチドは実質的に純粋な形態が好ましい。特に、本願に開示されているポリペプチド調製物は「本質的に純粋な形態」、つまり、このポリペプチド調製物が元々組み合わされていた他のポリペプチドを本質的に含まないことが望ましい。これは、例えば、良く知られている組換え法の手段によりポリペポプチドを調製することにより達成できる。ここで、用語「実質的に純粋なポリペプチド」は「単離されたポリペプチド」と「単離された形態にあるポリペプチド」と同意語である。
本願で使用する場合、用語「活性な」と「生化学的に活性な」は、プロテアーゼに関する酵素活性のように特定のタンパク質に関する生化学的活性をいう。所与のタンパク質の生化学的活性は、本願技術分野の技術者によりそのタンパク質に、通常帰せられるいずれかの生化学的活性をいうことになる。
本願で使用する場合、用語「濃縮された」とは、野生型、または天然に生じる菌類のセルラーゼ組成物で見出される新規のタンパク質の濃度と比較して、新規のタンパク質が高い濃度で見出されることをいう。
宿主生物と培養条件
発現の方法を特定することのない、修飾されたEGIIを発現する細胞の使用が本願では意図されている。
本願の発明は、修飾されたEGII-コード化核酸配列を含む発現ベクターにより形質導入、形質転換またはトランスフェクションされた宿主細胞を提供する。温度、pH等の培養条件は、形質導入、形質転換又はトランスフェクションの以前に、親宿主細胞に既に使用されていた条件であり、本願技術分野の技術者に明らかである。
ある方法では、糸状菌細胞と酵母細胞は、宿主細胞系で機能するプロモーター又は生化学的に活性なプロモーター断片または1以上の(例.連続した)エンハンサーをもつ発現ベクターによりトランスフェクションされ、修飾を受けたEGIIをコードするDNA部分と機能的に連結し、その結果、修飾を受けたEGIIはこの細胞系で発現される。
(i)糸状菌
本願発明は、対応する形質転換されていない親の菌類と比較して修飾を受けたEGII産生又は発現を向上させるために有効な方法で修飾を受け、選択され培養された細胞を含む糸状菌を提供する。
修飾を受けたEGII発現を増強するために処理され、及び/または修飾された親の糸状菌の種の例は、トリコデルマ属、例えばトリコデルマ・レセイ、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデアルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、ペニシリウム属、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)等のフミコラ属(Humicola sp.)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、クリソスポリウム属(Chrysosporium sp.)、フサリウム属(Fusariums sp.)、ヒポクレア属(Hypocrea sp.)及びエメリセラ属(Emericella sp.)を非限定的に含む。
修飾を受けたEGII発現細胞は親菌類系の培養に通常使用される条件下で培養される。一般に、細胞は、生理学的塩と栄養素を含む標準的培地で培養される。これら生理学的塩と栄養素は、Pourquie,J.ら、Biochemistry and Genetics of Cellulose Degradation、Aubert, J.Pら編、Academic Press, pp7186,1988、及びIlem,M.ら、Appl.Environ.Microbiol.63:1298 1306 ,1997に記載されている。培養条件は、また標準的である、例えば、培養は、所望の水準の修飾を受けたEGII発現が達成されるまで、振とう培養装置又は醗酵槽中で28℃で培養される。
所与の糸状菌の好ましい培養条件は科学文献及び/又はAmerican Type Culture Collection (ATCC; ワールドワイドウェブ atcc.org参照)のような菌類の情報源から見出しても良い。菌類の培養が終わったら、細胞は修飾を受けたEGIIの過剰発現を起こす又は許すため効果的な条件に暴露される。
修飾を受けたEGIIをコードしている配列が誘導可能なプロモーターに制御される場合は、誘導剤、例えば、糖、金属塩又は抗生物質が、高水準の修飾を受けたEGIIの発現の誘導に効果のある濃度で培地に加えられる。
(ii)酵母
本願の発明はまた、修飾を受けたEGII産生用の宿主細胞として酵母の使用を認めている。加水分解酵素をコードするいくつかの他の遺伝子は、酵母S.セレビシエ(S. cerevisiae)の種々の株で発現されている。これらは、トリコデルマ・レセイ由来の2種のエンドグルカナーゼ(Penttilaら、1987)、2種のセロビオヒドロラーゼ(Penttilaら、1988)及び1種のベータ-グルコシダーゼ(Cummings 及びFowler,1996)、アウレオバシドリウム・プルランス(Aureobasidlium pullulans)由来のキシラナーゼ(Li とLjungdahl,1996)、小麦由来のアルファ-アミラーゼ(Rothsteinら,1987)などをコードする配列を含む。加えて、ブチリビブロ・フィブリソルベンズ(Butyrivibro fibrisolvens) エンド-[ベータ]-1,4-グルカナーゼ(END1)、ファネロチャエテ クリソスポリウム セロビオヒドロラーゼ(Phanerochaete chrysosporium cellobiohydrolase)(CBH1)、ルミノコッカスフラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)セロデキストリナーゼ(CEL1)及びエンドマイセスフィブリリザー セロビアーゼ(Endomyces fibrilizer cellobiase)(Bgl1)は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)の試験株で発現に成功した(Van Rensburg ら、1998)。
核酸構造体/発現ベクター
修飾を受けたEGIIをコードするポリヌクレオチド断片(「修飾を受けた核酸配列」)は異種の核酸構造体又はベクターへ組入れられ、ベクターは、糸状菌または酵母細胞へ導入され、その中で複製をすることができる。本願に開示されたベクターと方法は修飾を受けたEGIIの発現のため宿主細胞での使用に適している。いずれのベクターも、それが導入される細胞内で複製でき、生存できる限り使用できる。多数の適したベクターとプロモーターが本願技術分野の技術者に知られ、市販されている。クローニング及び発現ベクターもSambrookら、1989、Ausbel F Mら、1989、及びStrathermら、1981に記載され、これらのそれぞれは本願に引用により明示的に組入れられる。菌類の適切な発現ベクターは、van den Hondel, C.A. M. J.Jら(1981)、Bennett,J.W.及びLasure,L.L.(編)、More Gene Manipulations in Fungi. Academic Press, pp.396 428に記載されている。適当なDNA配列はプラスミド又はベクター(まとめて、本願では「ベクター」と呼ぶ。)に種々の手順により挿入できる。一般に、DNA配列は標準的手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ作用部位に挿入される。このような手順と関連するサブクローニング(subcloning)の手順は、本願技術分野の技術者の知識の範囲内とみなされる。
修飾を受けたEGIIのコーディング領域を有する組換え糸状菌は修飾を受けたEGIIコーディング領域を含む異種の核酸構造体を糸状菌の選択された株の細胞へ導入することにより産生されても良い。
一度、修飾されたegl2核酸配列、相同体、変化体又はそれらの断片の好ましい形態が得られると、それは種々の方法で修飾を受ける。この配列がコードしない隣接の領域を含む場合、隣接の領域は切除、突然変異生成等を受けても良い。従って、移転、トランスバージョン、欠失、及び挿入が天然に生じる配列上でなされても良い。
修飾を受けたegl2コーディング領域は、良く知られた組換え技術に従い適したベクターへ挿入されても、修飾を受けたEGIIを発現できる糸状菌を形質転換するために使用されても良い。遺伝子コードの固有の縮重のため、実質的に同一又は機能的に等価のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列がクローンし、修飾を受けたEGIIを発現するために使用されても良い。そのため、そのようなコーディング領域でのそのような置換は、本願発明に属する配列の変異であると理解される。いずれのまた全てのこれらの配列の変異体は、親の修飾を受けたEGIIコード化核酸配列について本願で述べられたのと同一の方法で利用できる。
本願の発明はまた、上記のような一以上の修飾を受けたEGIIをコードする核酸配列を含む組換え核酸構造体も含む。この構造体はプラスミドまたはウィルスベクターのようなベクターを含み、その中に、順方向又は逆方向に本願発明の配列が挿入されている。
異種の核酸構造体は修飾を受けたegl2、又は変異種、断片又はそれらのスプライシングを受けた変異種を、(i)単離した状態で;(ii)追加のコーディング領域、例えば、融合タンパク質、またはシグナルペプチドのコーディング領域と組み合わせて(ここで、egl2コーディング領域は、コーディング領域の主要部である);(iii)非コーディング領域、例えば、適当な宿主でコーディング領域の発現に有効な、イントロンと、プロモーターとターミネーター因子のような制御因子、または、5’及び/または3’非翻訳領域と組み合わせて、(iv)修飾されたegl2コーディング領域が異種遺伝子であるベクターまたは宿主環境内にある状態で、含んでも良い。
本願発明の一面では、異種の核酸構造体は修飾を受けたEGIIをコードする核酸配列を細胞へ、生体外(in vitro) で移すために使用される。細胞は、確立された糸状菌と酵母系統が好ましい。安定な形質転換株を得るため有効ないずれの方法も本願発明を実施するため使用できることになる。
適当なベクターは、選択的マーカーをコードする核酸配列、挿入部位、プロモーターとターミネーション配列のような、適した調節配列を通常備えている。このベクターは、例えば、非コーディング領域、例えばイントロンと制御配列、つまりプロモーターとターミネーター因子、または、5’及び/または3’非翻訳領域で、宿主細胞(及び/または、修飾を受けた可溶タンパク抗原コーディング領域が正常には発現しないベクターまたは宿主細胞環境)でコーディング領域の発現に有効な領域であって、コーディング領域に機能的に連結しているもの等を含む。多くの適したベクターとプロモーターは、本願技術分野での技術者に知られ、これらの多くは、市販されており、Sambrookら(上記)に記載されている。
例示のプロモーターは、構成プロモーターと誘導プロモーターの両者を含み、これらの例には、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、EF-1アルファプロモーター、記載されたような(Clon TechとBASF)、tet-onまたはtet-off系のtet応答性因子(TRE)を含むプロモーター、ベータアクチンプロモーター及びある種の金属塩の添加により発現を増大できるメタロチオンプロモーターを含む。プロモーター配列は発現目的で特定の糸状菌により認識されるDNA配列である。これは修飾を受けたEGIIポリペプチドをコードするDNA配列に機能的に連結している。そのような連結は、開示された発現ベクター内の修飾を受けたEGIIポリペプチドをコードするDNA配列の開始コドンについてプロモーター位置決めを含む。このプロモーター配列は修飾されたEGIIポリペプチドの発現を媒介する転写と翻訳制御配列を含む。例には、アスペルギルス・ニゲル、A・アワモリ又はA・オリゼのグルコアミラーゼ、アルファ-アミラーゼ又はアルファ-グルコシダーゼをコードする遺伝子;A・ニードランス gpdA またtrpC 遺伝子;ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)cbh1またはtrp1遺伝子;A・ニゲルまたはリゾムコール・ミヘイアスパラギン酸プロテアーゼをコードする遺伝子;T・レセイ cbh1、cbh2、egl1、egl2または他のセルラーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターを含む。
適当な選択マーカーの選択は宿主細胞により変わり、異なる宿主細胞のマーカーは、本願技術分野で良く知られている。典型的な選択マーカー遺伝子は、A・ニードランス又はT・レセイ由来のargB、A・ニードランス由来のamdS、ニューロスポラ・クラッサ又はT・レセイ由来のpyr4、アスペルギルス・ニゲルまたはA・ニードランス由来のpyrG
を含む。他の選択的マーカーの例は、trpc、trp1、oliC31、niaDまたはleu2を非限定的に含み、これらは、trp-、pyr-、leu-等の突然変異株の形質転換をするために使用される異種の核酸構造体に含まれる。
このような選択マーカーは形質転換株に糸状菌により普通は代謝されない代謝産物を利用できる性能を与える。例えば、形質転換細胞が窒素源としてアセトアミド上で増殖できるようにする酵素アセトアミダーゼをコードするT・レセイ由来のamdS遺伝子である。選択マーカー(例.pyrG)は栄養要求性突然変異株が選択的最小培地上で増殖する能力を回復させ、また、選択マーカー(例.olic31)は突然変異株に阻害薬剤または抗生物質の存在下で増殖する能力を与える。
選択マーカーをコードする配列は本願技術分野で一般的に使用される方法を使用して、いずれかの適したプラスミド中へクローンされる。プラスミドの例はpUC18、pBR322、及びpUC100を含む。
本願発明の実施は、別に記載されている場合を除き、分子生物学、微生物学、組み換えDNA、と免疫学の従来の技術を使用するが、これらは本願の技術の範囲内にある。そのような技術は文献に十分に説明されている。例えば、Sambrookら、1989年;Ausubelら、1993年;およびColiganら、1991年参照。本願に記載のすべての特許、特許出願、論文及び刊行物は引用により本願に明示的に組み入れられる。
宿主細胞の形質転換
本願発明はさらに、外部より導入された、修飾を受けたEGII-をコードする核酸配列を含むように遺伝学的に修飾された細胞と細胞組成物を規定する。親細胞はまたは細胞系列は、クローニングベクターまたは発現ベクターにより遺伝学的に修飾(つまり、形質導入、形質転換または感染)を受けても良い。このベクターは、さらに上記のように、例えば、プラスミド、ウィルス粒子、ファージなどの形態である。
種々の方法が生体外で細胞へ発現ベクターを移すために使用されても良い。適したベクターが構築された後、これは菌類または酵母の株を形質転換するために使用される。異種の核酸配列を発現するため細胞に核酸を導入する一般的方法は普通の技術者に知られている。このような方法は、電気的穿孔法、単一細胞への核マイクロインジェクションまたは直接マイクロインジェクション、完全な細胞との細菌のプロトプラスト融合、ポリカチオン、例えば、ポリブレンまたはポリオルニチンの使用;リポソームとの膜融合、リポフェクタミン(lipofectamine)たはリポフェクション(lipofection)-媒介トランスフェクション;DNA-コートされた微粒子銃による高速注入;リン酸カルシウムDNA沈殿;DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション;修飾を受けたウィルス核酸による感染等を非限定的に含む。
糸状菌(例.T・レセイ)への異種の核酸構造体(発現ベクター)の導入法は、微粒子または遺伝子銃の使用、形質転換操作前の糸状菌類の細胞壁の透過性向上(例.例えば、高濃度のアルカリ、例えば、0.05Mから0.4MCaCl2または酢酸リチウムの使用による)、プロトプラスト融合またはアグロバクテリウム(agrobacterium)媒介形質転換を非限定的に使用する。ポリエチレングリコールとCaCl2によるプロトプラストまたはスフェロプラストの処理による糸状菌の形質転換の方法の説明が、Campbell,E.Iら、Curr.Genet.16:53 56,1989とPenttila,Mら、Gene,63:11 22,1988に記載されている。
加えて、修飾を受けたEGIIをコードする核酸を含む異種の核酸構造体は、生体外で転写を受けることができ、そして、その結果形成されたRNAは既知の方法、注入により宿主細胞へ送り込まれる。
修飾を受けたegl2のコーディング領域を含む異種の核酸構造体の導入後、遺伝学的に修飾を受けた細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換株を選択しまたは、EGII-をコードする核酸配列の発現を増幅するために適当であるように修飾された従来の栄養培地で培養を受ける。温度、pH等の培養条件は発現のため選ばれた宿主細胞にすでに使用されたものであり、本願技術分野の技術者に明らかである。
一般的に、このような異種の核酸構造体が導入された細胞の後代は異種の核酸構造体に修飾を受けたEGII-をコードする核酸配列を含むと考えられている。
セルラーゼ組成物の生産に使用するためのトリコデアルマ・レセイのような糸状菌の新規かつ有用な形質転換株が意図されている。本願発明は糸状菌の形質転換株、特に修飾を受けたegl2コーディング領域を含む菌類、または修飾を受けたegl2コーディング領域の修飾型を含む菌類を含む。
糸状菌の安定な形質転換株は一般的に、その比較的早い増殖速度と固形培地上での不規則ではなく滑らかな輪郭をもつ円形状のコロニーの形成により、不安定な形質転換株から区別されえる。加えて、いくつかの場合には、安定性に関するさらなる試験が固型非選択的培地上で形質転換体を増殖させ、この培地から胞子を取り、その後選択培地上で発芽し増殖するこれらの胞子のパーセンテージを決定することにより行うことができる。
修飾を受けたEGII核酸コーディング領域及び/またはタンパク質発現の分析
修飾を受けたEGIIをコードする核酸構造体により形質転換を受けた細胞系による修飾を受けたEGIIの発現を評価するため、定量を、タンパク質水準で、RNA水準でまたは、エンドグルカナーゼ活性に特有の機能的及び/またはその産生のバイオアッセイにより行うことができる。
本願で述べられた修飾を受けたegl2核酸とタンパク質配列の一例では、糸状菌、例えば、トリコデルマ・レセイの遺伝学的に修飾を受けた株は操作を受け、修飾を受けたEGIIの量を増やす。そのような遺伝学的に修飾を受けた糸状菌は、セルロース加水分解能力が増大したセルラーゼ製品を産生するために有用であろう。ある方法では、これは適した宿主細胞に、例えばトリコデルマ・レセイのような糸状菌へ修飾を受けたegl2のコーディング領域を導入することにより達成される。
従って、本願の発明は、修飾を受けたEGIIをコードするDNA配列を含む発現ベクターを糸状菌または他の安定な宿主に導入することにより、糸状菌または他の適当な宿主に修飾を受けたEGIIの発現する方法を含む。
別の面では、本願の発明は、糸状菌または他の適した宿主に修飾を受けたEGIIの発現を修飾する方法を含む。そのような修飾は、修飾を受けたEGIIの発現の増大または脱落、または変形体の発現を含む。修飾を受けたEGIIの変形体は変形されたアミノ酸配列または変形された核酸配列を有しても良い。
一般的に、修飾を受けたEGIIの発現の分析に使用される定量は、適当にラベルされたプローブを用いた(核酸コーディング領域に基づく)、ノーザーンブロット、ドットブロット(DNAまたはRNA分析)、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、または、生体外でのハイブリダイゼーション及び従来のサザンブロット及びラジオオートグラフィーを含む。
加えて、修飾を受けたEGIIの産生と/または発現はサンプル中で、例えば、エンドグルカナーゼ活性、発現と/または産生の定量により、直接に測定されてもよい。そのような定量は、例えば、Shoemaker,S.P.とBrown,R.D.Jr.Biochim.Biophys.Acta,1978,523:133 146;Schulein(1988)と米国特許第5,246,853号と第5,475,101号に述べられ、それらのそれぞれは、本願に引用により明示的に組み入れられる。修飾を受けたEGIIが単離された可溶性及び不溶性基質を加水分解する能力はSuurnakkiら(2000)とOrtegaら(2001)で述べられた定量を用いて測定できる、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ又はβ-グルコシダーゼ活性を定量するために有用な基質は結晶性セルロース、濾紙、リン酸吸収セルロース(phosphoric acid swollen cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セロオリゴ糖(cellooligosaccharides)、メチルウンベリフェリルラクトシド、メチルウンベリフェリルセロビオシド、オルトニトロフェニルラクトシド、パラニトロフェニルラクトシド、オルトニトロフェニルセロビオシド、パラニトロフェニルセロビオシド、オルトニトロフェニルグルコシド、パラニトロフェニルグルコシド、メチルウンベリフェリルグルコシドである。
エンドグルカナーゼ活性は、Ghose、1987,Pure and Appl. Chem.59:257-268又は、Wood, T.M., and K.M.Bhat,1988、Methods for measuring cellulose activities Methods Enzymol.160:87-112の手順に従いカルボキシメチルセルロース(CMC)加水分解を用いて決定されても良い。簡単にいえば、エンドグルカナーゼ活性は、基質としてCMCを使用して生体外で決定されても良い。細胞を含まない液体発酵培地(菌体外の活性)の、または、超音波により粉砕された細胞を含有する液体培地(全活性)の適当な希釈液が低粘度CMC(1リットル当たり10g)を含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)中、50℃で定量されても良い。反応は5-10分間沸騰した水浴で加熱することにより終了する。還元糖は、標準としてグルコースを用い3,5-ジニトロサリチル酸試薬を使用して測定された。酵素活性(CMCアーゼ)は、1分当たりに遊離される還元糖のマイクロモル(国際単位で)として表わされる。
加えて、タンパク質の発現は、免疫学的方法、例えば、細胞、組織部位の免疫組織学的染色、または組織培養培地の、例えば、ウェスターンブロットまたはELISAによる免疫測定法により評価されても良い。そのような免疫測定法は修飾を受けたEGIIの発現の定性的及び定量的に評価するために使用できる。そのような方法の詳細は本願技術分野の技術者に知られており、そのような方法を行う多くの試薬が市販されている。
修飾を受けたEGIIの精製型は、種々の免疫測定法で使用するための、発現タンパク質に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を産生するために使用されても良い(例えば、Huら、1991参照)。定量の例には、ELISA、競合的的免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、ウェスターンブロット、間接的免疫蛍光定量等を含む。一般に市販の抗原と/またはキットはエンドグルカナーゼタンパク質の発現水準の定量的免疫測定法に使用されても良い。
修飾を受けたEGIIを精製する方法
一般に、細胞培養で産生される修飾を受けたEGIIセルラーゼは培地に分泌され、例えば、細胞培養培地から不要な成分を除去することにより、精製または単離される。しかし、いくつかの場合、修飾を受けたEGIIセルラーゼが細胞の分解物から回収しなければならない細胞内の成分の形で産生されても良い。そのような場合、この修飾を受けたEGIIセルラーゼは本願技術分野の技術者により日常的に用いられる技術を使用して、産生される細胞から精製される。例には、アフィニティークロマトグラフィー(Tilbeurghら、1984)、高分離能をもつ物質を使用したイオン-交換クロマトグラフ法(Medveら、1998)等のイオン交換クロマトグラフ法(Goyalら、1991;Fliessら、1983;Bhikhabhaiら、1984;Ellouzら、1987)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(TomazとQueiroz、1999)及び二相分配(Brumbauerら、1999)を非限定的に含む。
通常、修飾を受けたEGIIセルラーゼは、たとえば、特定の結合剤、例えば抗体または受容体、に親和性があるといった選択的性質をもつタンパク質を分離するために分けられる。または選択的された分子量範囲、または等電点の範囲をもつタンパク質が分離される。
修飾を受けたEGIIセルラーゼの発現が達成されると、そのようにして産生された、修飾を受けたEGIIセルラーゼは、細胞または細胞の培地から精製される。このような精製に適した方法の例は以下を含む。抗体-アフィニティーカラムクロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈澱;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのようなカチオン-交換樹脂によるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈澱、例えば、Sephadex G-75を用いたゲルろ過。タンパク質精製の種々の方法が使用され、そのような方法は本願技術分野で知られ、例えば、Deutscher,1990;Scopes,1982に述べられている。精製工程の選択は、例えば、使用される生産工程の性質と産生される特定のタンパク質により変わる。
利用
以下の実施例で使用される塊の除去(depilling)処理の条件は塊の除去に一般的に使用される条件と一致すると信じられている。通常の製造法で塊の除去を行う場合、塊の除去処理は約15から約120分である。塊除去の温度は約35℃から約60℃であり、布地に対する液体の比率は、重量で約2.5:1と約10:1の間であり、pHは約4.0から約6.0である。塊の除去が通常の洗濯で行われるとき、処理時間は約10から60分であり、温度は、約20℃から約70℃であり、布地に対する液体の比率は、重量で約2.5:1と約10:1の間であり、pHは約7.0から約9.5である。
塊の除去に使用する処理組成物の量はセルラーゼ組成物中の活性タンパク質の濃度、処理を受ける綿製品の量、望む塊除去の効果の大きさ、処理時間及び本願技術分野の技術者によく知られている他の変動因子により変わる。通常の製造方法で塊の除去に使用する場合、処理組成物の好ましい量は、一般的に1kg当たりの布地について約2,000と約100,000CMC単位の酵素と、より好ましくは、1kg当たりの布地について約10,000と約40,000CMC単位の間にある。通常の洗濯で塊の除去に使用する場合、好ましい量の処理組成物は、一般的に、1kgの布地当たり約200と約40,000CMC単位の間の酵素であり、より好ましくは、1kgの布地当たり約1,000と約10,000CMC単位の間である。
酵素の作用を調節する一選択肢は、これは、推奨されるのであり、要請されるのではないが、処理後に10分間、約70℃へ溶液を加熱することによる、または酵素活性を不活性にする化学物質を加えることによる、または布地類を速やかに乾燥させる処理の後に酵素を分解することである。
修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素を使用するセルロースを含む布地類の処理法
本願発明の一面は、本願発明の修飾を受けたEGIIを含む織物の処理のための組成物である。別の実施態様では、本願発明は生化学的つやだし(bio-polishing)工程での本発明の修飾を受けたEGIIの使用に関する。生化学的つやだし(Bio-Polishing)は手触りと外観に関し布地類の品質を向上させる織物用糸の表面の特異的な処理である。生化学的つやだしの最も重要な効果は綿毛と塊が少なくなり、つや/光沢の増大、布地類の手触りの向上、長期の柔軟性の持続と変化した水吸収性により特徴付けられる。生化学的つやだしは普通、編んだまたは織った布地類の製造における湿式処理において行われる。湿式処理は、例えば、糊の除去、磨き(scouring)、漂白、洗浄、染色/プリンティング及び仕上げのような工程を含む。これらの工程のそれぞれの間、この布地類は多少は機械的作用を受ける。一般に、織物類が編まれたりまたは、織られた後、布地類は糊の除去工程に進み、磨き工程等が続く。糊の除去は織物から糊を除く操作である。機械織りにより布を織る前に、縦糸は、その引っ張り強さを大きくするため糊用のデンプンまたはデンプンの誘導体によりコートされることが多い。織った後、糊のコーティングは、均一で、洗浄できる製品にするため布地類をさらに加工する前に除去されなければならない。生化学的つやだし効果を達成するため、セルロース分解と機械的作用の組合せが求められる。「超柔軟性」は、セルラーゼによる処理が柔軟剤による従来の処理と組み合わされたときに達成可能であることも知られている。セルロース製の布地の生化学的つやだし用に本発明の修飾されたEGIIの使用が有利であること、例えば、より徹底したつやだしが達成されえることが認められている。生化学的つやだしは、例えば、WO93/20278に記載された方法を適用することにより得られる。
上記のように、本願発明は修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素によるセルロースを含む布地類を処理する方法と関係する。本発明の修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物の使用は、先行技術のセルラーゼ処理と比較して逆染色の水準を等しく保つ一方、比較的高水準の擦れ(abrasion)を達成するという新規で驚くほどの結果を与える。擦れの水準は特定のセルラーゼ処理技術、例えば、ストーンウォッシングまたは洗濯の品質と効果を示すものとして働くので、本願発明の使用は驚くほど高い品質の織物処理組成物を与える。洗濯においては、擦れは時に、色の鮮明化、綿毛の除去または生化学的つやだしをいう。
本願の発明は、高含量のEGIIセルラーゼと比較したとき、優れた擦れを達成するために、修飾を受けたEGIIセルラーゼのみで、または他のセルラーゼ成分と組み合わせての使用を特に意図している。加えて、結合領域を欠く天然のセルラーゼ酵素が本発明の範囲内として意図されている。本発明の方法は、布地類の感触と/または外観の改善等を、処理を受けたセルロースを含む布地類に加える。
修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物による織物類の加工の方法論
本願の発明に従い、上記の修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物は織物類の製造で使用されても良く、例えば、塊の除去、ストーンウォッシングなどで使用されても良い。本願の発明の処理組成物は、例えば、緩衝剤、界面活性剤と糊除去剤等の他の任意の成分とともに有効量の修飾を受けたEGIIセルラーゼを含む水溶液を含むことが好ましい。
衣服の製造において通常の塊の除去工程では、布地又は衣服、水、緩衝剤、洗剤及び酵素が回転式水平または垂直ドラムジェットダイヤー、洗浄機、または布地類を撹拌し、せん断力を与える他の装置に加えられる。この処理は通常以下のような範囲の条件を用いる。
pH:3.5-6.0
液体比率1:2-1:100
温度:30-70℃
酵素の投与量:50,000-500,000CMC U
時間:10-60分
布地速度:10-200m/分
別の条件は、35℃から60℃で、pH4から6.5で15から120分を含む。
布地に対する液体の比率は、重量で普通2.5:1と20:1の間にある。処理条件の最適化は技術者の技術の十分範囲内である。加えられるセルラーゼ酵素の量は、Ghose(1987)のセルラーゼ定量法に基づき、通常1kgの布地類当たり約1,000から200,000CMCのセルラーゼ活性に対応する。処理後、この酵素は溶液を70℃まで10分間加熱することにより分解されることが多い。布地類は機械から取り出され、時折の追加の染色後、乾燥され、ロール状に巻かれる。製造中の綿布地類の塊の除去のための従来のセルラーゼ処理の詳細をさらに述べる刊行物の要約は、米国特許第5,232,851号、第1列に見出される。特に、意図されている調合物は、プロキセル(1,2-ベンズイソチアゾリン)を、0.03-0.20%の範囲で保存料または抗酸化剤として含んでも良い。特に、意図している処方はグルセロールを10-35%の範囲で含んでも良い。
洗濯工程の間の塊の除去処理のため、セルラーゼが多くの他の成分とともに洗剤混合物に含まれる。他の成分は、界面活性剤、緩衝剤、添加剤、漂白剤、再沈着防止剤、光学的漂白剤、抗酸化剤(例.プロキセル)と溶解剤のほか、他の酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、追加のセルラーゼを含んでも良い。
染色された布地類の「ストーンウォッシュされた」外観(色の部分的な擦れ)は、特に、デニムの布地類またはジーンズで、軽石の存在下でそのような布地類から作られたデニムまたはジーンズを洗浄し、布地類の色を好ましいように部分的に薄くすることにより、または、酵素的、特にセルロース分解酵素により、布地類を処理することにより実現できることは本願技術分野で知られている。本願発明の修飾を受けたEGIIによる処理は、米国特許第4,832,864号に開示されているようにそれのみで、従来の方法で必要とされるより少量の軽石とともに実施しても良く、またはWO95/09225で開示されたようなパーライトとともに行われても良い。
修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素組成物の有効量は、その意図した目的に十分な、修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の濃度である。そのため、本願の発明に従い組成物を処理する場合において修飾を受けたEGIIセルラーゼの「有効量」は、望ましい処理、例えば、ストーンウォッシング、塊の除去、柔軟化等を行える量である。使用される修飾を受けたEGIIセルラーゼの量は使用された装置、使用される工程の変動因子(修飾を受けたEGIIセルラーゼ処理溶液の温度、セルラーゼ溶液への暴露時間等)、及びセルラーゼ活性(例えば、活性の高いセルラーゼ組成物が使用される場合、活性の低いセルラーゼ組成物と比較したとき、溶液は低い濃度のセルラーゼでよい。)により変わる。修飾を受けたEGIIセルラーゼの正確な濃度は、望む結果と、上記の因子に基づき技術者により容易に決定できる。修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物は1-1000ppmの濃度で含まれることが好ましく、10-400ppmがより好ましく、20-100ppm総タンパク質が最も好ましい。
緩衝剤の濃度が、使用する修飾を受けたEGIIセルラーゼが活性を示す範囲内に、溶液のpHを維持できるに十分であるように、処理剤組成物に任意に緩衝剤が使用されるが、この緩衝剤は、使用する修飾を受けたEGIIセルラーゼの性質により変わる。使用される緩衝剤の正確な濃度は技術者が、容易に考慮するいくつかの因子により変わる。例えば、好ましい実施態様では、緩衝液濃度と緩衝剤は最適なセルラーゼ活性に求められるpHの範囲内に修飾を受けたEGIIセルラーゼ溶液のpHを維持できるように選択される。好ましくは、ストーンウォッシング組成物の緩衝液濃度は約0.001N以上である。適した緩衝剤は、例えば、クエン酸塩、酢酸塩を含む。
修飾を受けたEGIIと緩衝剤に加え、処理組成物は任意に界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤は100ppm以上の濃度で、好ましくは、約200-15,000ppmで稀釈された洗浄溶媒に含まれる。適した界面活性剤はセルラーゼと布地類と共存できるいずれの界面活性剤を含んでも良く、例えば、アニオン性、非イオン性及び両性電解質の界面活性剤を含む。本願で使用される 適したアニオン性界面活性剤は、直鎖または分岐したアルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖または分岐したアルキルまたはアルケニル基をもつアルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩;アルキルまたはアルケニル硫酸塩;オレフィンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩等を含む。アニオン性界面活性剤の適したカウンターイオンは、ナトリウムとカリウムのようなアルカリ金属イオン、カルシウムとマグネシウムのようなカルカリ土類金属;アンモニウムイオン;及び炭素数2または3の1から3個のアルカノール基をもつアルカノールアミンを含む。両性電解質の界面活性剤は硫酸四級アンモニウムスルホン酸塩とベタイン型の両性電解質界面活性剤を含む。このような両性電解質界面活性剤は同一の分子に陽電荷と陰電荷の両者をもつ。一般的に非イオン性界面活性剤は、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキシドアダクト、及び脂肪酸グリセリンモノエステルとともに、ポリオキシアルキレンエーテルを含む。
好ましい実施態様では、濃縮された処理組成物が本願で述べられた方法での使用のために調製することができる。このような濃縮物は、濃縮された量の上記の修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物、緩衝剤、界面活性剤を、水溶液に含む。そのように処方されたとき、この処理剤濃縮液は、本願発明に従い、迅速で正確に処理組成物を調製できるように容易に水で稀釈でき、必要な濃度でこれらの成分を含む。そのような濃度は約0.1から約50重量パーセントの上記の菌類セルラーゼ組成物(タンパク質);約0.1から約80重量パーセントの緩衝液;約0から約50重量%の界面活性剤;残部の水を含む。水溶液の濃縮物が処方されるとき、これらの濃縮物は、上記のような修飾を受けたEGIIセルラーゼ溶液中にその原料の必要な濃度に達するように、稀釈することができる。容易に分かることであるが、このような処理剤濃縮物は、使用される位置に濃縮物を容易に移すことができると共に、修飾を受けたEGIIセルラーゼ溶液を容易に処方できる。この処理剤濃縮物はこの技術分野で認識されている剤型、例えば、液剤、エマルジョン、ゲル、又はペーストでありえる。このような剤型は技術者に良く知られている。
固形処理剤濃縮物を使用するとき、セルラーゼ組成物は、顆粒、粉末、凝集物又は固形丸剤でも良い。顆粒が使用される場合、この顆粒はセルラーゼ保護剤を含むように処方されることが好ましい。例えば、WO91/17235で”GRANULES CONTAINING BOTH AN ENZYME AND AN ENZYME PROTECTING AGENT AND DETERGENT COMPOSITIONS CONTAINING SUCH GRANULES”と題された出願を参照せよ。この出願は引用により全部を本願に組み入れられる。同様にこの顆粒は洗浄溶媒へ顆粒を溶解させる速度を減じるために原料を含むように処方できる。このような原料と顆粒は米国特許第5,254,283号に開示され、これは引用により全部が本願に組み入れられる。
石、軽石、充填剤、溶媒、酵素活性剤及び他の再沈着防止剤等の他の原料もまた、望むときには、本願の発明の処理剤組成物と使用でき、または含ませることができる。
セルロースを含む布地類は有効量の修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素または誘導体を含む処理剤組成物と接触し、そうして修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素は布地類に接近する。たとえば、処理剤組成物が水溶液である場合、布地類は直接に溶液に浸漬されても良い。同様に、処理剤組成物が濃縮物の場合、濃縮物はセルロースを含む布地類がある状態で、水浴中で稀釈される。処理剤組成物が固形剤であるときは、例えば、予洗ゲル(pre-wash gel)または固形塊であるときは、処理剤組成物は直接にこの組成物を布地類に用いて接触させても良くまたは、洗液に入れても良い。
セルロースを含む布地類は、セルロースを含む布地類にストーンウォッシュ様の外観を与える酵素の作用を行わせることができる条件下で処理剤溶液により処理される。例えば、ストーンウォッシュの間、pH、液体比、温度及び反応時間がストーンウォッシング組成物が作用する条件下で最適であるように調節されてもよい。「有効条件」は、必ず、修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素がセルロースを含む布地類と効率的に反応するpH、液体の比率、温度をいう。修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の反応条件、そしてそれゆえ本願発明の処理剤組成物に有効な条件は、他の類似のセルラーゼについて使用される良く知られた方法と実質的に同様である。したがって、本願発明に従い、修飾を受けたEGIIを含む処理剤組成物によるセルロースを含む布地類の処理に有効な条件は、野生型のセルラーゼ組成物を使用する先行技術の条件と類似している。よって、本願発明に従い処理剤組成物を使用するための条件の最大化は本願技術分野の技術者の技術の範囲内である。
本願で使用される処理における液の比率は、一般的にセルロースの布地類で好ましい効果を達成するために十分な量であり、使用する方法により変わる。好ましくは、液の比率は約3:1から約100:1;より好ましくは4:1から約50:1、最も好ましくは約6:1から約20:1である。
本願の処理組成物による処理における反応温度は、2つの拮抗する因子により支配されている。第一に、温度が高ければ反応速度は大きくなる、つまり反応は速くなり、低温で必要な反応時間と比較して反応時間が短くなる。従って、反応温度は一般的に少なくとも約10℃である。第二にセルラーゼは、使用されるセルラーゼの性質に依存する所与の反応温度より高いと活性を失うタンパク質である。従って、反応温度が高すぎると、セルロース分解活性はセルラーゼの変性の結果として失われる。結果として、本願で使用する最高反応温度は一般的に約65℃である。上記の観点において、反応温度は一般的に約30℃から約65℃であり、好ましくは約35℃から約60℃、より好ましくは、約35℃から約55℃である。
反応時間はこの処理を行う特定の条件により変わる。例えば、修飾を受けたEGIIセルラーゼのpH、温度と濃度は全て最適な反応時間に影響する。一般的に、反応時間は約5分から約5時間であり、好ましくは約10分から約3時間であり、更に好ましくは約20分から約1時間である。
本願発明に従い修飾を受けたEGIIセルラーゼ組成物(つまり、処理剤組成物)を用いた、上記の方法で処理されたセルロースを含む布地類は、高エンド型EGIIセルラーゼ含有組成物で同じ方法で処理を受けた同一のセルロースを含む布地類と比較したとき、染料の再沈着が減少し、塊の除去が向上し、擦れが大きくなる。
B. 修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素を含む洗剤組成物によるセルロースを含む布地類の処理の方法
本願発明に従い、修飾を受けた上記のEGIIセルラーゼ組成物は洗剤組成物として使用しても良い。本願発明によるこの洗剤組成物は予洗組成物、予浸(pre-soak)組成物として有用であり、本洗浄サイクル中の洗剤による洗浄に有用である。好ましくは、本願発明の洗剤組成物は、有効量の修飾を受けたEGIIセルラーゼ、界面活性剤及び任意に下記の他の成分を含む。
本願発明の洗剤組成物中で使用される修飾を受けたEGIIセルラーゼの有効量はセルラーゼを含む布地類に対しての擦れを改善できるに十分な量である。好ましくは、使用された修飾を受けたEGIIセルラーゼは、洗剤の重量パーセントで約0.001%から約25%、より好ましくは、約0.02%から約10%である。
この洗剤組成物中で使用される修飾を受けたEGIIセルラーゼの具体的的な濃度は、洗浄液に稀釈したときに修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の濃度が約0.1から約1000ppm、好ましくは約0.2ppmから約500ppm、最も好ましくは約0.5ppmから約250ppm総タンパク質の範囲にあるように選択されることが好ましい。従って、洗剤組成物中に使用される修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の具体的な量は、洗剤が洗浄液を形成するように水に加えられたとき、洗剤が稀釈される程度により変わる。
修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の低い濃度では、つまり、20ppm未満の修飾を受けたEGII酵素の濃度では、先行の組成物と比較したとき、同等の表面の繊維の擦れをもち、再染色または再沈着が減少することが、洗浄を繰り返した後に明らかになるであろう。高い濃度では、つまり40ppmより高い修飾を受けたEGIIセルラーゼ酵素の濃度では、一度の洗浄後に、表面の繊維除去は等しいが、再染色の減少が明らかとなろう。
本願発明の洗剤組成物はどのような本願技術分野で認識されている形態でも良く、例えば、液体稀釈剤として、或いは顆粒に、エマルジョンに、ゲルまたはペースト状であっても良い。そのような形態は技術者に良く知られている。固形洗剤組成物が使用されるとき、修飾を受けたEGIIセルラーゼは顆粒として処方されることが好ましい。好ましくは、顆粒剤はセルラーゼ保護剤を追加的に含むように処方される。例えば、WO91/17235で”GARNULES CONTAINING BOTH AN ENZYME AND AN ENZYME PROTECTING AGENT AND DETERGENT CONPOSITIONS CONTACTING SUCH GRANULES”と題された出願を参照せよ。同様に、顆粒剤は、顆粒剤が洗浄溶液へ溶解する速度を減少させるため原料を含むように処方することができる。そのような原料と顆粒剤は米国特許第5,254,283号に開示され、引用により全部が本願に組み入れられる。
本発明の修飾を受けたEGIIは種々の洗剤組成物を処方するときに有用である。多くの既知の化合物が、本願発明の修飾を受けたEGIIを含む組成物において有用な適した界面活性剤である。これらは、BarryJ.Andersonに与えられた米国特許第4,404,128号、Jiri Floraらに与えられた米国特許第4,261,868号に開示されたように、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性イオン性の洗剤を含む。適した洗剤の処方は米国特許第5,204,015号の実施例7で述べられているものである。本願技術は洗剤組成物として使用できる種々の処方について詳しい。典型的な洗剤組成物に加え、本願発明の修飾を受けたEGIIは天然または野生型のセルラーゼが使用されるいずれの目的にも使用してよいことが容易に理解されよう。本願発明の変異種は洗剤組成物中で性能が向上しても良い(野生型と比較したとき)。本願で使用する場合に、洗剤中の向上した性能とは、標準的洗浄サイクルの後に通常の評価により決定したとき、ある酵素に感受性のある汚れの洗浄度が増大することとして定義される。
本発明の修飾を受けたEGIIは、6.5と12.0の間にpHをもち、重量で約0.01から約5%(好ましくは、0.1%から0.5%)粉末及び液体洗剤に処方できる。これらの洗剤組成物は、添加剤と安定剤のほか、既知のプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、またはエンドグルコシダーゼのような他の酵素も含んで良い。
本発明の修飾を受けたEGIIの従来の洗剤組成物への添加は、いずれかの特別な用途制限を受けることがない。いいかえれば、pHが上記範囲にあり、温度が、記載した修飾を受けたEGIIの変性温度より低い限り、洗剤に適したどの温度とpHも本願の組成物に適している。加えて、本発明の修飾を受けたEGIIは、洗剤を含まない洗剤組成物中で、またそれのみでまたは添加剤と安定剤と組み合わせて使用できる。
本願の発明はまた、本願の発明の修飾を受けたEGIIを含む洗剤組成物に関する。洗剤組成物は、洗剤組成物中で普通に使用される添加剤をさらに含んでも良い。これらは漂白剤、界面活性剤、添加剤、酵素と漂白触媒から選択できるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6268169号を参照せよ。本願技術分野の普通の技術者にとり、この組成物にどの添加物を含めることが適当かは容易に分かるであろう。本願に記載されているリストは全てを含めているわけではなく、適当な添加剤の例としてのみ理解されるべきである。酵素とこの組成物の他の成分、例えば界面活性剤、と共存できるこれらの添加物のみを使用することは本願技術分野の通常の技術をもつ者にも容易に分かるであろう。
添加物を使用している場合、洗剤組成物中に含まれる添加物の量は、約0.01%から約99.9%、約1%から約95%が好ましく、約1%から約80%がさらに好ましい。
動物飼料
本願発明の修飾を受けたEGIIは、例えば、米国特許第5,612,055号;第5,314,692号;第5,147,642号に記載されているように動物飼料添加物の一部として動物飼料に含めることができる。
パルプと紙の用途
製紙パルプ産業では、本願発明の修飾を受けたEGIIは、例えば以下のように、有利に使用できる。
樹皮の除去:修飾を受けたEGIIによる前処理は、ドラム機械中で樹皮を除く前に形成層を劣化させ、エネルギーの節約となる利点を生む。
繊維の解離:純化(refining)または叩解前に、修飾を受けたEGIIによるセルロース繊維を含む原料の処理は、繊維の間の表面のセルラーゼの加水分解効果により、エネルギー消費を低減させる結果となる。本発明の酵素組成物は繊維の壁を貫通する高い能力があると信じられているので、修飾を受けたEGIIの使用は、既知の酵素の使用と比較してエネルギー節約を向上させる結果となる。
繊維の修飾、つまり、より深く貫通する酵素を要する繊維の壁全体にわたる部分的加水分解が必要である場合の繊維の性質の改善(例.硬い繊維をより柔軟にするため)繊維の深部処理は、これまで、高収量のパルプ、例えば、機械パルプまたは再利用パルプの混合物、には使用できなかった。これは繊維の壁の小孔マトリックスの物理的制限による酵素分子の通過を妨げる繊維の壁の構造の性質ためである。本願のエンドグルカナーゼは繊維の壁を貫通することができると認められている。
排水性の改善について 製紙パルプの排水性は加水分解酵素、例えば、セルラーゼによるパルプ処理により改善される。本願の修飾を受けたEGIIを使用するとより効果的であり、例えば、高度に、繊維の間の空隙を詰まらせ排水速度を限る、微細切片(繊維破片からなる)の強く含水した微小繊維の束を緩め、製紙機のワイアーメッシュの大きさとする。パルプがセルラーゼ処理を受けると、カナダの標準自由度(The Canadian standard freeness(CSF))は大きくなり、Schopper-Riegler 排水指数は減少する。米国特許第4,923,565号と第4,613,406号参照。
繊維間の結合について 加水分解酵素は繊維間の結合を改善するために製紙パルプの製造に応用される。この酵素は、不純物、例えば、セルロースの破片の繊維表面を濯ぎ、そのようにして、繊維の細胞壁に結合する露出したセルロースの面積を大きくし、そのようにして繊維間の水素結合能を高める。この工程はまた、角質除去(defornification)といわれる。セルラーゼを含む酵素調製物により製造された紙と板紙は強度が向上しまたはグラメジ(grammage)が減少し、表面が平滑になり印刷性が改善される。
酵素によるインク除去について セルラーゼのような加水分解酵素を使用することによるパルプ製造において再使用紙の部分的加水分解はインク粒子の除去と凝集を促進することが知られている。本願の修飾されたEGIIの使用は繊維の壁のマトリックスに酵素分子がより良く貫通し、インク粒子が効率的に遊離するように表面を柔軟にすることにより、表面構造からインクをより効果的に遊離させる。繊維から出たインク粒子に付着するセルロース断片をより効果的に加水分解ことにより、遊離したインク粒子の凝集も改善される。
リグノセルロースパルプの処理は、例えば、WO91/14819、WO91/14822、WO92/17573とWO92/18688に記載されているように行われても良い。
植物物質の分解
さらに別の実施態様では、本願の発明は、植物物質、例えば、細胞壁の分解のため本発明による修飾を受けたEGII、及び/または酵素組成物の使用に関する。
本発明の修飾を受けたEGII及び/または酵素組成物は、収量を向上させるためワイン、果物または野菜ジュース製品において有用である。本発明によるこの修飾を受けたEGIIは種々の植物細胞壁由来物質または廃棄物、例えば小麦のわら、トウモロコシの穂軸、トウモロコシの植物全体、木の実の殻、草、野菜の外皮、豆の皮、利用後の穀粒、砂糖ダイコンのパルプ等のような農業の廃棄物、の酵素による加水分解に使用しても良い。この植物物質は、異なる加工処理を改善するため、穀物のベータグルカンまたはベータグルカンオリゴマーの精製のような他の成分の精製または抽出を容易にするため、飼料価値を改善するため、水との結合性を弱くするため、排水処理プラントの分解性能を向上させるため、例えば草とトウモロコシをサイレージ(ensilage)にするなどのために分解されても良い。
実施例
以下の実施例では、以下の略号を使用する。eq(等量);M(モル);μM(マイクロモル);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);Ci(キューリー);mCi(ミリキューリー);μCi(マイクロキューリー);TLC(薄層クロマトグラフィー);Ts(トシル);Bz(ベンジル);Ph(フェニル);Ms(メシル);Et(エチル)、Me(メチル)
実施例
本願の発明は以下の実施例で更に詳細に説明されるが、特許請求の発明の範囲を限定する意図はない。添付した図面は本発明の明細書の一部として考えられることを意図している。引用された全ての文献等はその中に記載された全てについて、特定して引用により本願に組み入れる。以下の実施例は請求項の発明を説明するために、しかし限定するためではなく、提供される。
実施例1
EGII 発現
この実施例は宿主細胞の構築と修飾を受けたEGIIセルラーゼの発現を説明する。
セルロース分解活性が低い株が、生化学的仕上げとデニム洗浄用に望まれていた。新しい株がいくつかのまたは全ての主要セルラーゼを欠失させて構築された。目的セルラーゼ、例えばCBHI、CBHII、EGI及びEGIIを欠失させる技術について米国特許第5,472,864号とWO92/17574を参照。使用する宿主株はT・レセイ株RL-P37であった。この株の作成法と特徴付けは既に公表されている。(Sheir-Neiss and Montenecourt, 1984)これは、野生型の株(QM6a)からいくつかの突然変異ステップの結果として得られたセルラーゼ過剰産生株である。
T・レセイ Eg2Aについて、CBHI、CBHIIをコードする配列は分子遺伝学的技術を用いて欠失または中断された。
T・レセイEG2Bについて、CBHI、CBHII、EGIとEGIIをコードする配列は分子遺伝学的技術を用いて欠失または中断により不活性化された。
T・レセイEG2AとBが、図2に示すヌクレオチド配列の1コピーにより形質転換された。このヌクレオチド配列はCBHIをコードする遺伝子から得られる高効率プロモーターの調節下に置かれていた。
EGII発現カセットの構築
egl II遺伝子特異的配列を含む、1988年にSaloheimo,M.らにより発表されたegl II ヌクレオチド配列に従い設計されたプライマーを用いてPCRにより、egl II遺伝子が単離された。制限部位がegl IIに加えられ、ベクターpTrex3へ挿入された(米国特許第6426410号参照)。順方向のプライマーに、Sac II部位が加えられた。また、CBH1プロモーターの最後の10ヌクレオチドがCBH1シグナル配列の直前に加えられた。これは発現を増大できるからである。逆方向のプライマーに、Asc I 部位が加えられた。順方向と逆方向のプライマーの配列を下記に示す。
PCR 混合物は以下の成分を含んでいた。順方向のプライマー(10μM) 1μL;逆方向のプライマー(10μM) 1μL;DNA(500ng/μL)1μL;dNTPs(10mM);10XHerculase buffer;5μL、及びHerculase DNA ポリメラーゼ;0.5μL(Stratagene Cat.#60026)及び総量50μLまでの脱イオン水
このPCR操作手順は以下の通り。94℃で60秒の開始変性、23サイクルの変性、アニーリング、及び伸長、それぞれ、94℃で30秒;50℃で30秒;72℃で90秒、で行った。最後の72℃で5分間の伸長反応。
このPCR断片は1%アガロース中で電気泳動により分析された。Gel-Extraction Purification Kit(Qiagene Cat. No.28706)を使用して予想の大きさの断片を単離した。このPCR断片はpTrex3にクローンされpEG2/pTrex3を形成し(図5と6参照)大腸菌 DH5alpha Max Efficiency 細胞に導入され形質転換された(Invitogen Cat. No.18258012)。挿入されたDNAのヌクレオチド配列が決定された(図2参照)。pEG2/pTrex3は以下の配列をもち、大文字はpTrexプラスミドヌクレオチドを示し、小文字はEG2ヌクレオチドを示す。
T・レセイ(T.reesei)egl II遺伝子を含む発現ベクター(図5と6参照)、pEGII/ptrex3は、正確に挿入した大きさを確認するために分解された。1の正確なクローン由来のプラスミドDNAがXbaIにより分解され、cbh1プロモーター、-eglII、-cbh1、ターミネーター-amdSを含む発現カセットが分離された。この6.0kbのカセットはアガロース抽出により精製され、T・レセイ(T.reesei)に導入されEg2Bといわれる株が作成された。
外部から導入されたプラスミドDNAによるT・レセイの形質転換の方法は、公表されている(Penttila ら、1986;Gruber ら、1990、Smithら、1991)。安定した形質転換株はプラスミドDNAを宿主の染色体へ組み入れることにより生じる。組み入れは、プラスミドDNAと相同性のあるゲノムの部位で起こりえる。または非相同性の部位で起こりえる。
実施例2
高EG2含有T.reesei産生物の生化学的特徴づけ
以下の実施例はEGIIを回収し、特徴付ける方法を詳しく説明する。
T・レセイ(T.reesei)株EG2 Bは、修飾されたEG2を産生し、本願技術分野で既知の方法を用いて、発酵により増殖される。上澄液が本願技術分野の技術者に知られている方法を用いて回収され濃縮された。この上澄み液中の産生物、修飾を受けたEG2(EG2 B)とIndiAge(登録商標)Max L(EG2A)が同量のEG2タンパク質を有するように濃縮された。IndiAge(登録商標)Max Lと修飾を受けたEG2は13%ソルビトール、1.35%安息香酸ナトリウム、または13%グリセロール、1.35%安息香酸ナトリウムにより調剤された。
IndiAge(登録商標)Max Lは124g/Lタンパク質(分散修正后(scatter-corrected )A 280nm)に調製された。SDS-PAGE ゲルによる濃度測定(Amersham Biosciences)結果はこの上澄み液の主要成分は約35%のEG1と約50%のEG2タンパク質であった。修飾を受けたEG2は78g/L タンパク質(分散修正后(scatter-corrected) A 280nm)に調製された。濃度測定(Amersham Biosciences)結果はこの産生物は96%のEG2タンパク質を含んでいたことを示した。同一量のEG2タンパク質を含むように濃縮されたとき、IndiAge(登録商標)Max Lと修飾を受けたEG2は、CMC/DNS定量に基づき同様のエンドグルカナーゼ活性をもつことが見出された。IndiAge(登録商標)Max Lと修飾を受けたEG2はCMC活性に基づく量で、生化学的仕上げとデニム洗浄用試験に使用された(以下に記載)。
タンパク質定量-280nmにおける散乱を補正した吸収(分散修正后(scatter-corrected) A 280nm)は、その組成中の芳香族アミノ酸(主にチロシンとトリプトファン)の存在によるタンパク質の固有の吸収に基づいている。サンプル中に干渉物質が存在による散乱について吸収が補正される場合、より正確に決定できる。
清浄な3mLの石英セルを使用し、3mLのMilliQ水を加える。データ間隔1nm、スキャニング速度120nm/分、スリット幅0.5nmでUV/Vis 分光光度計(Perkin Elmer Lambda 35または Cary 3)で自動0調節をする。3mLの水に100μLを加えるような稀釈サンプルが、0.04と0.2吸光度の間のA280を与える。100μLの稀釈サンプルを加え混合する。650から250の波長で走査させる。
散乱による補正は観測された吸光度のログと波長のログの間の線型関係を外挿して行われた。
散乱による補正は、94AUM-1cm-1のモル吸光度を考慮して計算された(EG2配列に基づくVector NTIソフトウェアにより計算される)。スペクトル測定は異なる稀釈度で3度繰り返された。
濃度分析は画像走査器(Amersham Biosciences)を用いて行われ、ImageQuantTL v2005(Amersham Bioscience)ソフトウェア使用した1D ゲル分析が行われた。
実施例3
生化学的つやだし性能
この実施例は、異なる組成をもつセルラーゼ製品がセルロース繊維を含む布地類の仕上げに使用されているときに見られる、表面繊維除去と塊の除去における違いについて述べる。具体的には、この実施例は修飾を受けたEGIIエンドグルカナーゼがEGIIエンド-高含有セルラーゼ(IndiAge(登録商標)MAX L、Genencor, Palo Alto, Californiaから入手可能)と比較して表面の繊維除去能が改善していることを述べる。
これらのセルラーゼ組成物はセルロース繊維を含む布地類から表面の繊維と塊を除去する性能について試験された。
特に、布地類のサンプル(ブラシを掛けた綿織物; Intertex LLC(Garden Grove, カリフォルニア)により製造され、反応性ロイヤルブルーにより染められた100% 綿の両面編みで、布地類の一面はブラシが掛かっている)がThies mini-soft(3kg)ジェットダイヤー(jet dyer)(Thies, Coesfeld Germany; thiestextilmaschinen.de のインターネットウェブ (Web))で以下の条件で処理された。
緩衝剤 pH5:クエン酸2水和物(1g/l)とクエン酸1水和物(0.8g/l)
液体:30 l水
布地類:3kg±0.1kg
液体比率:1:10(10リットルの水に1kg 布地類)
温度:60℃
酵素量:113176または213579、または318,830CMC単位
布地の速度:100m/分
酵素処理に続き、1g炭酸ナトリウム/ lの添加、60℃、5分間、pH>9へのpH上昇により酵素が不活性化された。この布地類は30l水で二度濯ぎを受け、家庭の乾燥機で乾燥された。
処理を受けた布地にある塊と表面の繊維の量は2法のうち少なくとも1法(通常は2法とも)を使用して定量された。最初の方法は、Videometer、VideometerLab2 Image 分析システム(Videometer, Horsholm Denmark; videometer.com.のインターネットウェブ)を使用した。この画像分析器は布地上の表面繊維と塊の量を定量するソフトウェアを備えている。または、表面の綿毛の量は目視で定量できる(例.ASTM 試験法D3512-02)。
Videometerからの結果は下記表1に表されている。図7も参照せよ。図8は、、目視評価に使用されたものと同一の活性のセルラーゼ酵素により処理された布地の写真である。
表の数値は布地表面の繊維の量を表す。数字が大きいほど、布地表面の繊維と塊の量は小さい。
これらの結果は、上記のような生化学的仕上げ工程で同一の活性量が使用された場合、修飾を受けたEGII成分セルラーゼが塊と布地表面繊維(綿毛)を、IndiAge(登録商標)Maxセルラーゼより効果的に除くことを示す。
実施例4
デニムの擦れ性能
この例は、修飾を受けたEGII織物処理組成物のデニム仕上げ性能が向上していることを示す。修飾を受けたEGII織物処理組成物によりデニムを処理するとき、以下の条件でIndiAgeMaxLと比べ擦れの水準が増大する。
IndiAge(登録商標)Max Lと修飾を受けたEG2が高せん断洗濯機中でデニムの生化学的ストーンウォッシング(biostone washing)について比較された。
デニム製の脚部が、以下の条件でIndiAgeMaxLと修飾を受けたEG2で、2,500、5,000、10,000及び20,000 CMC U/Lの量で処理を受けた。
装置:Unimac (50lb 実験スケールの前方投入型洗濯機)
デニム製試料:Cone Millの12枚の糊抜き品(6枚の黄色の斑点のある(サルファー染料)インジゴで染めたデニムの脚部+バラストとして6枚の100%インジゴで染めたデニムの脚部)
酵素:修飾を受けたEG2とIndiAge(登録商標)Max Lは、それぞれ10138CMC/gと11674CMCU/gを含有した。両方共に13%ソルビトールと1.35%安息香酸塩により調剤された。
液体比率:10から1(30L緩衝液中に3kg)
pH:5.0±0.1(リン酸ジナトリウム(DSP)/クエン酸 緩衝液で調節)
温度:55℃
処理時間:60分
酵素処理後の2X 水すすぎ
セルラーゼ処理後の逆着色と擦れの水準を定量するために、各デニムの脚部の8個の反射率計の値をミノルタのChroma Meter CR-200を使用して測定した。擦れと逆着色性能の定量はCIELAB(-b
*)設定を使用して表された。CIE L
*値は擦れを定量するために使用され、絶対CIEb
*が逆染色を定量するために使用された(CIE L
*:L
*値が高いほど、擦れが高い。;CIEb
*:b
*の絶対値が高いほど、逆染色は高い。)
これらの結果は、修飾を受けたEGII織物処理組成物が、エンド型-EGII高含有処理組成物と比較して擦れ性能が高まっていることを示す。
本願に述べられた実施例と実施態様は説明のためのみに提供され、その種々の修飾や変更は本願技術分野の技術者には示唆されており、かつこの出願の本質と範囲に含まれまた請求項の範囲に含まれることを理解すべきである。本願に引用される全ての刊行物、特許、特許出願は引用により、全部を全ての目的のため組み入れられる。