JP2010507631A - アミノ酸伸長したインスリン - Google Patents
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Abstract
Description
この発明の態様は、ヒト組織を介したインスリンの吸収性を改善することである。
この発明の他の態様は、インスリンのインビボ半減期を改善することである。
この発明の他の態様は、満足のいく物理的安定性を有するインスリンを見出すことである。
この発明の他の態様は、満足のいく化学的安定性を有するインスリンを見出すことである。
この発明の他の態様は、満足のいくタンパク質分解安定性を有するインスリンを見出すことである。
この発明の他の態様は、満足のいく溶解性を有するインスリンを見出すことである。
ここで、「インスリン」なる用語は、任意の種からのインスリン、例えばブタインスリン、ウシインスリン、及びヒトインスリン、及びそれらの複合体、例えばダイマー及びオリゴマー、特にそれらのヘキサマーを含む亜鉛錯体をカバーする。さらに、ここで「インスリン」なる用語は、いわゆる「インスリン類似体」もカバーする。インスリン類似体は、天然のヒトインスリン分子と比較して、A及び/又はBアミノ酸鎖の一又は複数の変異、置換、欠失及び/又は付加を有するインスリン分子である。特に、一又は複数のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基と交換されていてもよく、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基が欠失していてもよく、及び/又は1又は2のアミノ酸残基が付加されていてもよく、但し、該インスリン類似体は十分なインスリン活性を有している。インスリン類似体は、好ましくは一又は複数の天然に生じるアミノ酸残基、特に好ましくはそれらの1、2又は3が、他のコード可能なアミノ酸残基で置換されているものである。例えば、B鎖の28位は、天然Pro残基から、Asp、Lys又はIleの一つに修飾されてもよい。他の実施態様において、B29位のLysはProに修飾されてもよく;またA21位のAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr又はVal、特にGly、Ala、Ser、又はThr、好ましくはGlyに修飾されてもよい。さらに、B3位のAsnはLysに修飾されてよい。インスリン類似体のさらなる具体例は、desB30ヒトインスリン及びdesB1ヒトインスリンである。インスリン類似体の具体例は、次の特許及び等価物:米国特許第5,618,913号、欧州特許第254,516号、欧州特許第280,534号、米国特許第5,750,497号、及び米国特許第6,011,007に記載されている。特定のインスリン類似体の例は、インスリンアスパルト(insulin aspart)(すなわち、AspB28ヒトインスリン)及びインスリンリスプロ(すなわち、LysB28、ProB29ヒトインスリン)である。この発明の一態様において、インスリン類似体なる用語は、A及び/又はB鎖の付加を有するインスリン分子をカバーしておらず、A鎖が21以下のアミノ酸残基からなる、B鎖が30以下のアミノ酸残基からなることを意味する。この発明の他の態様において、インスリン類似体なる用語は、ヒトインスリンと比較して、6を越えるアミノ酸残基、好ましくは4以下のアミノ酸残基、さらに好ましくは2以下のアミノ酸残基が交換されているインスリン分子をカバーしない。この発明の他の態様において、インスリン類似体なる用語は、ヒトインスリンと比較して、2を越えるアミノ酸残基、好ましくは1以下のアミノ酸残基が欠失しているインスリン分子をカバーしない。
ここで、公知の一般的に使用されている1又は3文字コードは、アミノ酸用に使用されている。
「アミノ酸残基」なる用語は、水素原子がアミノ基から除去され、及び/又はヒドロキシ基がカルボキシ基から除去されたアミノ酸をカバーする。ここで、アミノ酸は好ましくはコード可能な(アルファ)アミノ酸である。
ここで「アミノ酸オリゴマー」なる用語は、アミノ酸、好ましくはコード可能な(アルファ)アミノ酸の鎖で、むしろ均一な配列のものをカバーする。このようなアミノ酸オリゴマーの例は、例えばグリシンのホモオリゴマー、又はジ-又はトリ-ペプチドの繰り返し単位である。
ここで、「アミノ酸オリゴマー残基」なる用語は、水素原子がアミノ基から除去され、及び/又はヒドロキシ基がカルボキシ基から除去されたアミノ酸オリゴマー、すなわちオリゴマーのモノマーをカバーする。
ここで、「コード可能なアミノ酸」なる用語は、ヌクレオチドのトリプレット(「コドン」)によりコード可能なアミノ酸をカバーする。
ここで「疎水性度」なる用語は、ヒトインスリンと比較した疎水性度として使用され、「アッセイV」について記載されたように、HPLCにより測定される。
形式上、この発明の伸長インスリンは、上述したインスリンと一又は複数のアミノ酸オリゴマー(類)から構築される。この発明の伸長インスリンにおいて、アミノ酸オリゴマーの一端は、ペプチド結合を介してインスリン残基に結合しているが、該アミノ酸オリゴマーの他端は、インスリン残基に結合していない。
アミノ酸オリゴマーは、例えば組換え方法により、インスリン残基に結合可能である。このような方法はそれ自体公知であり、例えば以下に記載される。
一実施態様において、組換え発現ベクターは酵母中で複製可能である。ベクターを酵母中で複製させることができる配列の例は酵母プラスミド2μm複製遺伝子REP1-3及び複製起点である。
細菌宿主細胞における転写を指向するのに適切なプロモーターの例は大腸菌lacオペロン、ストレプトマイセス・セリカラーアガラーゼ(agarase)遺伝子(dagA)、枯草菌レバンスクラーゼ(levansucrase)遺伝子(sacB)、バチルス・リケニホルミスアルファ-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトゲンアミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)アルファ-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、及びバチルス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)から得られるプロモーターである。糸状菌宿主細胞における転写を指向するのに適切なプロモーターの例は、コウジカビTAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、クロコウジカビの中性アルファ-アミラーゼ、及びクロコウジカビ酸安定性アルファ-アミラーゼの遺伝子から得られるプロモーターである。酵母宿主では、有用なプロモーターは、出芽酵母Ma1、TPI、ADH又はPGKプロモーターである。
ポリヌクレオチドコンストラクトは典型的には適切なターミネーターに作用可能に連結される。酵母において、適切なターミネーターはTPIターミネーター(Alberら(1982) J. Mol. Appl. Genet. 1:419-434)である。
一実施態様において、この発明のある種の伸長インスリンのインビボ半減期は改善され、2日毎投与に適したように作製される。
一実施態様において、この発明のある種の伸長インスリンのインビボ半減期は改善され、1日に1回投与に適したように作製される。
一実施態様において、この発明のある種の伸長インスリンのインビボ半減期は改善され、1日に2回投与に適したように作製される。
一実施態様において、この発明のある種の伸長インスリンのインビボ半減期は改善され、1日に3回投与に適したように作製される。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<20である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<15である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<10である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<5である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<1である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<0.5である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<0.1である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<0.05である。
他の実施態様において、本発明の伸長インスリンの疎水性度は<0.01である。
この発明の化合物、すなわち伸長インスリンは、例えば、皮下、経口、又は肺投与することができる。
皮下投与用として、この発明の伸長インスリンは、公知のインスリンの処方物と同じように処方される。さらに、皮下投与用として、この発明の伸長インスリンは、公知のインスリンの投与と同じように投与され、一般的に、医者はこの手順に通じている。
経口投与用として、この発明の伸長インスリンは、経口的に投与される他の医薬の処方物と同じように処方される。さらに、経口投与用として、この発明の伸長インスリンは、公知の経口用医薬の投与と同じように投与され、主として、医者はこのような手順に通じている。
この発明の伸長インスリンは、循環インスリンレベルを増加させ、及び/又は循環グルコースレベルを低下させるための用量効果的方式で、吸入により投与されてよい。このような投与は、糖尿病又は高血糖等の疾患を処置するのに効果的である。インスリンの効果的な投与を達成するには、この発明の伸長インスリンを、約0.5μg/kg〜約50μg/kg以上の吸入量で投与することが必要である。治療的有効量は、インスリンレベル、血糖値、患者の身体コンディション、患者の肺の状態等を含む要因を考慮し、博識な実施者により決定することができる。
当業者であれば、本発明の方法が、ここに記載されていない装置を介した、この発明の伸長インスリンの肺投与により達成されてもよいことを認識しているであろう。
他の実施態様において、製薬用処方物は、何ら事前に溶解することなく使用準備が整った乾燥した処方物(例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
本発明のさらなる実施態様において、処方物は安定剤をさらに含有する。ここで使用される場合「安定剤」なる用語は、ペプチドを安定にするために、すなわちこのような処方物の保管期間及び/又は使用期間を長くするために、ポリペプチド含有製薬用処方物に添加される化学物質を称する。製薬用組成物に安定剤を使用することは、当業者によく知られている。便宜的な参照として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が挙げられる。
本発明のさらなる実施態様において、処方物は、プロテアーゼインヒビターをさらに含有する。
a)ここに記載された方法であって、ここで、この発明の伸長インスリンは患者の気道下部に送達される。
b)ここに記載された方法であって、ここで、この発明の伸長インスリンは肺胞に沈着する。
c)ここに記載された方法であって、ここで、この発明の伸長インスリンは、製薬的に許容可能な担体にこの発明の伸長インスリンを含有せしめてなる製薬用処方物として投与される。
d)ここに記載された方法であって、ここで、処方物は、水性媒体における溶液及び非水性媒体における懸濁液からなる群から選択される。
e)ここに記載された方法であって、ここで、処方物はエアゾールとして投与される。
f)ここに記載された方法であって、ここで、処方物は乾燥パウダーの形態をしている。
g)ここに記載された方法であって、ここで、処方物は約10ミクロン未満の粒子径を有する。
h)ここに記載された方法であって、ここで、処方物は約1〜約5ミクロンの粒子径を有する。
i)ここに記載された方法であって、ここで、処方物は約2〜約3ミクロンの粒子径を有する。
j)ここに記載された方法であって、ここで、送達されたこの発明の伸長インスリンの少なくとも約10%は、肺に沈着する。
k)ここに記載された方法であって、ここで、この発明の伸長インスリンは、肺投与に適した吸入装置から送達され、患者の肺にインスリン類似体を沈着可能である。
l)ここに記載された方法であって、ここで、装置は、ネブライザー、定量噴霧式吸入器、乾燥パウダー吸入器、及びスプレーからなる群から選択される。
m)ここに記載された方法であって、ここで、装置は乾燥パウダー吸入器である。
n)ここに記載された方法であって、ここで、装置はネブライザーである。
o)ここに記載された方法であって、ここで、装置は定量噴霧式吸入器である。
p)ここに記載された方法であって、ここで、装置はスプレーである。
q)ここに記載された方法であって、ここで、装置の作動により、約3μg/kg〜約20μg/kgのこの発明の伸長インスリン、好ましくは約7μg/kg〜約14μg/kgのこの発明の伸長インスリンが投与される。
r)ここに記載された方法であって、ここで、前記この発明の伸長インスリンは、ここでの任意の実施例に特に記載されている任意の化合物である。
s)この発明の伸長インスリンを有効量、肺的手段により、それを必要とする患者に投与することを含む、糖尿病を処置するためのここに記載された方法。
t)ここに記載された方法であって、ここで、この発明の伸長インスリンは、特にここでの特定の実施例における、ここに特に記載されているこの発明の任意の特定の伸長インスリンである。
上述した実施態様は、本方法に関連して特にここに記載されているが、それらは、使用される製品又は処方物についても同じように適用される。
要約すれば、この発明の特徴は以下の通りである:
1.少なくとも5のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15のアミノ酸残基で、800以下のアミノ酸残基、好ましくは300以下のアミノ酸残基、好ましくは100以下のアミノ酸残基、好ましくは50以下のアミノ酸残基を含む、一又は複数のアミノ酸オリゴマー残基に、アミド結合、好ましくはペプチド結合により結合しているインスリン残基(上述したもの)である伸長インスリン。
2.アミノ酸オリゴマー残基がコード可能なアミノ酸残基からなる、前項の伸長インスリン。
3.アミノ酸オリゴマー残基がリジン残基を含まない、前項の伸長インスリン。
5.アミノ酸オリゴマー残基がGly残基からなる、前項の伸長インスリン。
7.アミノ酸オリゴマー残基中のGly残基の量が少なくとも80%(数的)である、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
8.アミノ酸オリゴマー中のGly残基の量が少なくとも85%(数的)である、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
9.アミノ酸オリゴマー残基中のGly残基の量が少なくとも90%(数的)である、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
10.アミノ酸オリゴマー残基中のGly残基の量が少なくとも95%(数的)である、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
12.アミノ酸オリゴマー残基が、インスリンの位置B1、A21、B29又はB30の一つにあるアミノ酸残基に結合しており、但し該アミノ酸はオリゴマー残基に結合する前の末端位に存在している、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。前記の位置B1、A21、B29又はB30にあるアミノ酸が末端位に存在しないならば、アミノ酸オリゴマー残基はインスリンの位置B0、B(−1)、A22、A23、B31又はB32の一つにあるアミノ酸残基に結合している。
14.アミノ酸オリゴマー残基が、インスリンの位置B29又はB30の一つにあるアミノ酸残基に結合しており、但し該アミノ酸はオリゴマーに結合する前の末端位に存在しており、該オリゴマーがアルギニン残基により終結している、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
16.インスリン残基が、次の任意の修飾:A14:E又はD;A21:G、A又はQ;B3:Q、S又はT;B25:H;B28:D又はE;B30:des(すなわちdesB30)の一又は複数を有するヒトインスリンである、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
17.インスリン残基が、ヒトインスリン、desB30ヒトインスリン、インスリンアスパルト、A21Glyヒトインスリン、A21Gly desB30ヒトインスリン、リスプロ、又はグルリシン(glulisine)の残基である、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
18.唯一のオリゴマー残基がインスリン残基に結合している、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
19.厳密には2つのオリゴマー残基がインスリン残基に結合している、最後の1項を除き、前述の可能な項のいずれかの伸長インスリン。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的に使用され、何らの方法で本発明を限定するものと解してはならない。
ここに提供される任意かつ全ての例、又は例示的言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより明らかに例証することを意図しており、特に請求項に記載がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中の如何なる語句も請求項に記載していない要素が本発明の実施に必須であることを示しているものと解してはならない。
ここでの特許文献の引用及び援用は単に便宜上なされているもので、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性についての見解を反映させるものではない。
文献のここでの記載は、それらが従来技術を構成することの承認ではない。
この発明は、ここに付記される請求項に列挙される
この発明は、適用される法律に容認される場合、ここに付加される請求項に列挙された主題事項の全ての修正点及び等価物を含む。
次の実施例は、限定ではなく、例証のために提供されるものである。
発現ベクターの構築、酵母細胞の形質転換、及び本発明のインシュリン前駆体の発現
全ての発現プラスミドは、欧州特許第171142号に記載されたものに類似した、C-POT型のものであり、出芽酵母におけるプラスミドの選択及び安定化を目的とし、***酵母トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子(POT)を含有することで特徴付けられる。またプラスミドは、出芽酵母トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ及びターミネーターをさらに含有する。これらの配列は、インスリン生成物及びリーダーの融合タンパク質をコードするEcoRI-XbaIフラグメントの配列を除く全ての配列であるとして、プラスミドpKFN1003における対応配列に類似している(国際公開第90/10075号に記載)。種々の融合タンパク質を発現させるために、pKFN1003のEcoRI-XbaIフラグメントは、関心あるリーダー-インスリン融合体をコードするEcoRI-XbaIフラグメントで簡単に置き換えられる。このようなEcoRI-XbaIフラグメントは、標準的な手順に従い、合成オリゴヌクレオチド及びPCRを使用して合成されてよい。
MT663を、600nmでの光学密度が0.6になるまで、YPGaL(1%のバクト酵母抽出物、2%のバクトペプトン、2%のガラクトース、1%のラクタート)において増殖させた。100mlの培養体を遠心分離により収集し、10mlの水で洗浄し、再度遠心分離し、1.2Mのソルビトール、25mMのNa2EDTA、pH=8.0及び6.7mg/mlのジチオトレイトール(dithiotreitol)を含有する10mlの溶液に再懸濁させた。懸濁液を30℃で15分インキュベートし、遠心分離し、1.2Mのソルビトール、10mMのNa2EDTA、0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH5.8、及び2mgのNovozym(登録商標)234を含有する10mlの溶液に、細胞を再懸濁させた。懸濁液を30℃で30分インキュベートし、遠心分離により細胞を収集し、10mlの1.2Mソルビトール及び10mlのCAS(1.2Mのソルビトール、10mMのCaCl2、10mMのTris HCl(pH=7.5))で洗浄し、2mlのCASに再懸濁させた。形質転換のために、1mlのCAS-懸濁細胞を、約0.1mgのプラスミドDNAと混合し、室温に15分間放置した。1mlの(20%のポリエチレングリコール4000、10mMのCaCl2、10mMのTris HCl、pH=7.5)を添加し、混合物をさらに30分、室温で放置した。混合物を遠心分離し、ペレットを、0.1mlのSOS(1.2Mのソルビトール、33%v/vのYPD、6.7mMのCaCl2)に再懸濁させ、30℃で2時間インキュベートした。ついで、懸濁液を遠心分離にかけ、ペレットを0.5mlの1.2Mソルビトールに再懸濁させた。ついで、6mlの上層寒天(1.2Mのソルビトールと2.5%の寒天を含有する、ShermanらのSC培地(1982) Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory)を52℃で添加し、同様の寒天で凝固した、ソルビトール含有培地を収容するプレートの頂部に、懸濁液を注いだ。発現プラスミドで形質転換された出芽酵母株MT663を、30℃で72時間、YPDにおいて増殖させた。
伸長インスリン前駆体を、セファロース(EC 3.4.21.50)に固定化されたアクロモバクター・ライティクス(Achromobacter lyticus)リジン特異性プロテアーゼ(ALP)により、対応する2本鎖desB30インスリン類似体に転換させた。各インスリン類似体前駆体について、3mlの酵母培養上清を新しいチューブに移し、0.2MのNaHCO3、pH9.1に溶解させた666μlのALPを添加した。溶液は、pH最適範囲内にある約8.1のpH値を有し、混合物を穏やかな攪拌下で、1.5時間インキュベートした。
上述したようにして多くのインスリン前駆体を生成し、培地から単離して、精製した。 これらの伸長インスリンを、以下に記載するようなヒトインスリンと比較し、ヒトインスリンレセプターに対する結合親和性により測定されるように、生物学的インスリン活性についてテストした。それは、精製前のインスリンの結合親和性を評価するのに有利である。これにより、培養上清をアッセイすることができる。
酸性HPLC又は脱塩後、純粋なフラクションを凍結乾燥させることにより、化合物を単離する。
中性HPLC又はアニオン交換クロマトグラフィー後、化合物を脱塩し、等電点pHで沈殿させるか、又は酸性HPLCにより精製する。
HPLCシステムは次のものからなるGilsonシステムである:モデル215液体ハンドラー、モデル322-H2ポンプ及びモデル155UV検出器。検出は典型的には210nm及び280nmである。
Akta精製FPLCシステム(Amersham Biosciences)は次のものからなる:モデルP-900ポンプ、モデル UV-900 UV検出器、モデルpH/C-900 pH及び伝導度検出器、モデルFrac-950フラクション収集器。UV検出は典型的には214nm、254nm及び276nmである。
カラム: Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleusil 300-7 C4
流量: 8ml/分、
バッファーA: アセトニトリル中0.1% TFA
バッファーB: 水中0.1% TFA
勾配: 0,0 - 5.0分: 10% A
5.00 - 30.0分: 10% Aから90% A
30.0 - 35.0分: 90% A
35.0 - 40.0分: 100% A
中性HPLC:
カラム: Phenomenex, Jupiter, C4 5μm 250 x 10,00 mm, 300A
流量: 6 ml/分
バッファーA: 5mM TRIS、7,5mM (NH4)2SO4、pH=7,3、20% CH3CN
バッファーB: 60% CH3CN、40%水
勾配: 0 - 5分: 10% B
5 - 35分: 10- 60% B
35 - 39分: 60% B
39 - 40分: 70% B
40 - 43.5分: 70% B
カラム: Ressource Q, 6ml
流量: 6ml/分
バッファーA: 0.09% NH4HCO3, 0.25% NH4OAc, 42.5% エタノール pH8.4
バッファーB: 0.09% NH4HCO3, 2.5% NH4OAc, 42.5% エタノール pH8.4
勾配: 100% Aから100% B、30カラム容量中
脱塩:
カラム: HiPrep 26/10
流量: 10ml/分, 6カラム容量
バッファー 10mM NH4HCO3
本発明の次のインスリンを、上述したようにして調製する:
MALDI-MS(単鎖前駆体のもの:B鎖のN末端伸長部:EEAEAEAPK、Cペプチド:DGK、マトリックス:シナピン酸);m/z:8669、算出値:7432。
実施例12
MALDI-MS(単鎖前駆体のもの:B鎖のN末端伸長部:EEAEAEAPK、Cペプチド:DGK、マトリックス:シナピン酸);m/z:9012、算出値:9011。
実施例13
MALDI-MS(単鎖前駆体のもの:B鎖のN末端伸長部:EEAEAEAPK、Cペプチド:DGK、マトリックス:シナピン酸);m/z:9354、算出値:9353。
実施例14
MALDI-MS(単鎖前駆体のもの:B鎖のN末端伸長部:EEAEAEAPK、Cペプチド:DGK、マトリックス:シナピン酸);m/z:8598、算出値:8596。
実施例15
MALDI-MS(単鎖前駆体のもの:B鎖のN末端伸長部:EEAEAEAPK、Cペプチド:DGK、マトリックス:シナピン酸);m/z:8942、算出値:8937。
実施例16
A21G A22-27G desB30ヒトインスリン
A21G A22-33G desB30ヒトインスリン
A21G A22-39G desB30ヒトインスリン
A21G A22-45G desB30ヒトインスリン
A21G A22-51G desB30ヒトインスリン
A21G A22-57G desB30ヒトインスリン
A21G A22-61G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-33G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-39G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-45G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-51G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-57G desB30ヒトインスリン
A21Q A22-61G desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-33G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-39G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-45G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-51G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-57G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21G A22-61G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-33G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-39G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-45G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-51G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-57G B25H desB30ヒトインスリン
A14E A21Q A22-61G B25H desB30ヒトインスリン
A14E,A21G A22-39[GPP]6 B25H,desB30ヒトインスリン
A21G A22-39[GPP]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21G A22-39[GPP]9 B25H,desB30ヒトインスリン
A21G A22-39[GS]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21G A22-39[GS]9 B25H,desB30ヒトインスリン
A21G A22-39[GE]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21G A22-39[GE]9 B25H,desB30ヒトインスリン
A14E,A21Q,A22-39[GPP]6 B25H,desB30ヒトインスリン
A21Q,A22-39[GPP]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21Q A22-39[GPP]9 B25H,desB30ヒトインスリン
A21Q,A22-39[GS]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21Q,A22-39[GS]9 B25H,desB30ヒトインスリン
A21Q,A22-39[GE]9 desB30ヒトインスリン
A14E,A21Q,A22-39[GE]9 B25H,desB30ヒトインスリン
上述した実施例8のインスリンのラット気管内点滴の結果を、図1に付与する。
アッセイ(I)
本発明のインシュリンのインシュリンレセプター結合性
ヒトインシュリンレセプターについての、本発明のインシュリンの親和性は、SPAアッセイ(シンチレーション近接アッセイ)マイクロタイタープレート抗体捕捉アッセイにより測定可能である。SPA-PVT抗体-結合ビーズ、抗-マウス試薬(Amersham Biosciences、カタログ番号 PRNQ0017)を、25mlの結合バッファー(100mMのHEPES、pH7.8;100mMの塩化ナトリウム、10mMのMgSO4、0.025%のトゥイーン(Tween)-20)と混合する。単一のPackard Optiplate(Packard No.6005190)用の試薬混合物は、2.4μlの1:5000に希釈された精製組換えヒトインシュリンレセプター−(マイナス)エクソン11、100μlの試薬混合物当たり5000cpmに相当するA14Tyr[125I]-ヒトインシュリンの所定量の保存溶液、12μlの1:1000に希釈されたF12抗体、3mlのSPA-ビーズ、全体を12mlにする結合バッファーからなる。ついで、全体で100μlを添加し、適切なサンプルから希釈系列を作製する。ついで、希釈系列に100μlの試薬混合物を添加し、ゆっくりと振揺させつつ、サンプルを16時間インキュベートする。ついで、1分間遠心分離することにより相分離させ、プレートをトップカウンターで計測する。GraphPad Prism 2.01(GraphPad Software, San Diego、CA)における非線状回帰アルゴリズムを使用し、結合データを適合させる。
ヒトインスリンに対する本発明のインスリンの作用強度
静脈内ボーラス投与後の本発明のインシュリンの血糖値低下効果を試験するためにウィスターラットを使用する。本発明のインシュリンかヒトインスリンの投与後に、血糖濃度をモニターする。
本発明のインスリンのT50%のブタにおける測定
T50%とは、試験されるインスリンのA14Tyr[125I]標識された誘導体の注射量の50%が、外部γ計測器を用いて測定して、注射部位から消失した時間である。
実験用動物ケアの原則に従い、薬物動態及び薬力学的研究のために、特定の病原菌を持たないLYYD、糖尿病ではない雌のブタ、デンマーク在来種、ヨークシャー及びデュロックの交雑種を使用する(Holmenlund, Haarloev, Denmark)。ブタは意識があり、4-5ヶ月の年齢、70-95kgの体重である。実験前に動物を8時間絶食させる。
125Iを有するTyrA14で標識された伸長インスリンの処方された調製物を、先に記載したブタに皮下注射する(Ribel, U., Jorgensen, K, Brange, J, 及びHenriksen, U. The pig as a model for subcutaneous insulin absorption in man. Serrano-Rios, M and Lefebvre, P. J. 891-896. 1985. Amsterdam; New York; Oxford, Elsevier Science Publishers. 1985 (Conference Proceeding))。
皮下注射部位から放射性標識が消失するのを、伝統的な外部ガンマ-計測法の修正法を使用し、モニターする(Ribel, U. Subcutaneous absorption of insulin analogues. Berger, M. 及びGries, F. A. 70-77 (1993). Stuttgart; New York, Georg Thime Verlag (Conference Proceeding))。この修正法を用いると、コードレスポータブル装置(Scancys Laboratorieteknik, Varlose, DK-3500, Denmark)を使用して、数日間、皮下沈着物から放射活性が消失するのを連続して測定することができる。測定を1分間隔で実施し、計測された値をバックグラウンド活性に対して修正する。
ラットへの伸長インスリンの肺送達
被験物質は、滴下法により肺経路で投与されるであろう。簡単に述べると、雄ウィスターラット(約250g)を、6.6ml/kg scプライミング用量として、続いて30分の間隔を開けて3.3ml/kg scの保持用量を3回付与される約60mlのフェンタニル/デヒドロデンズペリドール/-ドルミカムで麻酔する。麻酔誘導の10分後、基本サンプルを尾静脈(t=-20分)から得、続いて被験物質の投与直前(t=0)、基本サンプルを得た。t=0において、被験物質を一方の肺に気管内的に投与する。丸くなった端部を有する特定のカニューレを、200μlの空気と被験物質(1mg/kg)を含有するシリンジに搭載する。オリフィスを介してカニューレを気管に導入し、二分枝部を丁度通過するように主気管支の一方に送る。挿入中、頸部を外側から触診し、気管内部の位置を確認する。シリンジの内容物を注射し、2秒中断する。その後、カニューレをゆっくりと引き抜く。試験中(4時間までの血液サンプル)、ラットは麻酔がかかったままであり、実験後、安楽死させる。
本発明の伸長インスリンの疎水性度
ヒトインスリンに対する本発明の伸長インスリンの疎水性度(疎水性指標)、k'relを、溶離液としてA)10%のアセトニトリルを含有する0.1Mのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.3、及びB)水に50%のアセトニトリルが入ったものの混合物を使用し、40℃で定組成溶離させることにより、LiChrosorb RP18(5μm、250x4mm)HPLCカラムにおいて測定した。214nmでの溶出液のUV吸収度を追跡することにより、溶出をモニターした。ボイド時間、t0を0.1mMの硝酸ナトリウムを注入することにより見出した。ヒトインスリンについての保持時間tヒトを、A及びB溶液の間の比率を変えることにより、少なくとも2t0に調節した。k'rel=(tインスリン−t0)/(tヒト−t0)。
Claims (10)
- 少なくとも5のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10のアミノ酸残基で、800以下のアミノ酸残基、好ましくは300以下のアミノ酸残基、好ましくは100以下のアミノ酸残基、好ましくは50以下のアミノ酸残基を含む、一又は複数のアミノ酸オリゴマー残基に、アミド結合、好ましくはペプチド結合により結合しているインスリン残基である伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマーがコード可能なアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマーが、Gly、Glu、Pro及びSer残基からなる群から選択されるアミノ酸残基からなる、請求項1又は2に記載の伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマー中のGly残基の量が少なくとも80%(重量/重量)である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマーがGly残基からなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマーが(Gly)n、(Gly-Pro-Pro)n、(Pro-Pro-Gly)n、(Gly-Ser)n、(Ser-Gly)n、(Gly-Glu)n又は(Glu-Gly)nであり、nがアミノ酸残基の適切な数を付与する整数である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- アミノ酸オリゴマーが、インスリンの位置B1、A21、B29又はB30の一つにあるアミノ酸残基に結合しており、但し該アミノ酸はオリゴマーに結合する前の末端位に存在している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- インスリンが、次の任意の修飾:A14位において:E又はD;A21において:G、A又はQ;B3位において:Q、S又はT;B25位において:H;B28位において:D又はE;及びB30位において:desの一又は複数を有するヒトインスリンである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- インスリンが、ヒトインスリン、desB30ヒトインスリン、インスリンアスパルト、A21Glyヒトインスリン、A21Gly desB30ヒトインスリン、リスプロ、又はグルリシンである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の伸長インスリン。
- 明細書に記載した任意の新規特徴又は特徴の組合せ。
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