JP2010248134A - ペプチド組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 大豆蛋白原料をプロテアーゼで処理し、不溶の疎水性アミノ酸の豊富な未分解の高分子画分を除去した水溶液から調製されたペプチド組成物が、アンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性と、ヒト赤血球変形能低下抑制作用を有するもので、それらは、薬効性組成物とし、健康食品や医薬の原料として利用され、大豆の用途を大とするものである。
【選択図】 図1
Description
この大豆蛋白質をより有効に利用するために、蛋白質を分離し、さらには、酵素によって分解し、有用なアミノ酸やペプチドを得ることが幅広く行われてきている。
さらには、前記生理活性は、疎水性アミノ酸の豊富な、未分解の高分子画分を除去した大豆蛋白質のプロテアーゼ処理液、特に、その分画物であるペプチド組成物により奏されることを見出して、この発明を完成させたのである。
大豆蛋白原料をプロテアーゼで処理し、不溶の疎水性アミノ酸の豊富な未分解の高分子画分を除去した水溶液から調製された生成物であって、
アンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性と、ヒト赤血球変形能低下抑制作用を有すること
を特徴とするものである。
請求項1に記載のペプチド組成物において、
前記生成物は、
抗酸化活性およびラジカル捕捉活性をも有すること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載のペプチド組成物において、
前記プロテアーゼ処理は、
アルカリ域を保持しながら、基質特性の低いプロテアーゼで行う加水分解処理であること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載のペプチド組成物において、
前記未分解の高分子画分の沈殿除去は、
酸性pH調節及び/又はエタノールの添加により行われること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載のペプチド組成物において、
前記生成物は、
その調製において、1%酢酸水溶液に不溶な物質が除去されていること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載のペプチド組成物において、
前記生成物は、
その調製において、ゲルろ過による分画により取得されていること
を特徴とするものである。
請求項1又は2に記載のペプチド組成物において、
前記生成物は、
その調製において、高速液体クロマトグラフィーによる分画により取得されていること
を特徴とするものである。
また、医薬の原料としても、有効に利用することができるものである。
したがって、前記のような効果を発現させるために、健康食品や医薬として利用する際に、効率的に、また効果的に活用することを可能とするものである。
前記プロテアーゼ処理は、アルカリ域を保持しながら、基質特性の低いプロテアーゼで加水分解することが好ましい。
また、未分解高分子画分の除去は、水溶液のアルカリ状態を維持しながら行うことが好ましい。
この手段は、グルタミンとグルタミン酸の豊富な高分子量ポリペプチドを、事前に分離取得できるため、好ましい方法である。
しかしながら、脱脂大豆の場合は、蛋白質以外の成分を多量に含むため、プロテアーゼによる分解度が悪い。
また、プロテアーゼによる酵素処理は、大豆蛋白原料に水を加えて攪拌し、pHをアルカリ領域に調節したのち、プロテアーゼを加えることにより行う。
その際、蛋白質は、完全に溶解させる必要はなく(分解中に溶解する)、加える水の量は、蛋白原料の5〜20倍、好ましくは9〜10倍がよい。
具体的には、バチルス・サブチリス(Bacillus Subutilis)由来の、アルカリプロテアーゼであるビオブラーゼなどを用いることができる。
通常、大豆蛋白をアルカリ域で酵素分解すると、加水分解が進むに連れて、pHが低下し微酸性域に移行してしまう。
なお、微酸性域に移行したままで酵素分解を続けると、アミノ酸にまで加水分解され、この発明の目的を達成することが困難となる。
このpH調節には、苛性ソーダ溶液などのアルカリ金属水酸化物を用いることもできるが、アンモニア溶液(例えば、5%水溶液)などの有機アルカリを用いることができる。
例えば、ビオブラーゼの場合、pH9で安定である温度45〜55℃を用いることが好適である。
分解時間としては、分解によるpHの低下が無くなるまで行うことが好ましい。
大豆蛋白原料に対して1/100重量の酵素を用いた場合、15〜20時間とすることができる。
しかしながら、大豆蛋白質中に存在する、疎水性アミノ酸に富む固い高次構造部分は、分解され難く、分子量の大きいポリペプチドとして残存する。
したがって、目的とするペプチド組成物と分別することができる。
すなわち、疎水性アミノ酸の豊富な未分解の高分子画分を、沈殿として除去することができる。
この未分解高分子画分の沈殿除去は、酸性pH調節、さらにはエタノールの添加によって、より確実に行うことができる。
また、グルタミンとグルタミン酸の豊富な、高分子量ポリペプチドとペプチド組成物が分離取得できるため、好ましい方法である。
沈殿の程度は、用いる蛋白原料(例えば、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、豆乳、脱脂大豆など)により異なる。
大豆蛋白の割合が低くなるほど、沈殿度が悪くなる。この場合は、さらに、エタノール添加して除去することが好ましい。
中性の場合は、酸性の場合より高いエタノール濃度を必要とする。
中和した分解液にエタノールを加える場合、50%エタノール濃度までの、低い濃度で殆ど沈殿するので、エタノールの濃度は50%以下とすることができる。
大豆蛋白の割合が高い分離大豆蛋白を用いる場合で、かつ等電点付近であれば、アルコールは殆ど必要としない。
等電点以外でも、大豆蛋白の割合の高い分離大豆蛋白を用いる場合、エタノール濃度は20%〜50%で、未分解の疎水性高分子ポリペプチドを沈殿させることができる。
その際、ペプチド組成物のみを目的とする場合には、工程の増加とエタノールの量の増加による、ポリペプチドの純度が低下するため好ましい方法ではない。
ゲルろ過剤としては、Bio GelP−10やP−2などを用いることができる。
分離大豆蛋白質(SPI;不二製油(株)製「フジプローR」)1kgに、脱イオン水を加えて9lとし、5%アンモニア溶液でpH9に調節したのち、ビオプラーゼ10gを加え、攪拌しながら、恒温槽内において、温度50℃で3時間インキュベートし、さらに、ビオプラーゼ10gを加え、20時間インキュベートした。
遠心分離して得られた上清と、沈殿物を精製した際の上清を、1.1lまで減圧濃縮したのち、同量のエタノールを加え3日間放置し、遠心分離により沈殿を除去した。
得られた上清に、再度エタノール1.33lを加え、析出物をろ過し、減圧濃縮後凍結乾燥して、70%エタノールに可溶な組成物である、この発明にかかるペプチド組成物344.3gを得た。
上記で得られたペプチド組成物4gに、1%酢酸10mlを加えて溶解したのち、遠心分離して得られた上清を、Bio Gel P−2カラム(3×38cm)に供し、1%酢酸水溶液で展開し、分画した。
その際の、ゲルろ過パターンを、図1に示した。
また、画分6〜13の紫外吸収スペクトルを、図2に示した。
画分6〜9には、Tyr/Pheが、画分10〜13にはTrpが含まれていることが示された。
上記で得られ、収量の僅かな画分14,15を除いた各画分の特性を、以下の方法で測定し、抗酸化活性を図3に、ラジカル捕捉活性を図4に、ACE阻害活性を図5に、赤血球変形能低下抑制作用を図6に示す。
それらの結果から明らかなように、各画分は、効果の程度に差異は認められるが、いずれも、抗酸化活性、ラジカル捕捉活性、及びACE阻害活性を有し、特に画分7以降の画分がより高いACE阻害活性を有していた。
また、その画分7以降の画分の赤血球変形能低下抑制作用については、画分7,9及び13において顕著な効果が認められた。
この画分6〜13のHPLCチャートを、図7に示し、それらのピーク成分のACE阻害活性を測定し表1に示した。
−抗酸化活性の測定方法−
上記で得られた各分離抽出物の抗酸化活性を、リノ−ル酸の酸化物がβ−カロチンを退色させる作用を利用したMillerらの方法に準じ、以下の方法で測定した。
試料を分注した分光光度計用試験管セルに、リノ−ル酸−β−カロチン溶液を加えて攪拌し、温度50℃の恒温槽で、20分間反応させた場合のβ−カロチンの退色度を470nmの吸光度によって求め、合成抗酸化剤ブチルヒドロキシアニソール(BHA)による吸光度の減少量を測定し、試料と同じ減少量を与えるBHAの濃度によって、試料の抗酸化活性を表した。
試料溶液に、等量のDPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)溶液、MES緩衝液、20%エタノールを加え、室温で20分間反応させたのち、520nmでの吸光度を測定した。
その活性は、同様にして行った、アスコルビン酸(AsA)でDPPHラジカル捕捉活性の検量線を作成し、試料g当たりのラジカル捕捉活性を、AsA当量(μmol/g)で表した。
ACE(シグマ社製、酵素番号EC3.4.15.1)と、合成基質ヒプリル−ヒスチジル−ロイシン(ペプチド研究所製)を用い、Liebermanの測定法を改良した山本等の方法に準じて測定した。
すなわち、生成した馬尿酸を酢酸エチルにて抽出し、225nmの吸光度で測定した。
被検液での吸光度をEs、被検液の代わりに緩衝液を加えた時の値をEc、予め反応停止液を加えて反応させた時の値をEbとして、次式から阻害率を求めた。
阻害率(%)=(Ec−Es)/(Ec−Eb)×100
ACE阻害剤の阻害活性IC50値は、ACEの酵素活性を50%(阻害率)阻害するために必要な試料の濃度(M)で示した。
3.8%クエン酸ソーダ溶液を含む採血管に、採血した血液を2500rpm×10分遠心分離して赤血球を沈殿させた後、洗浄し、HEPESを加え、6.0%赤血球浮遊液を調製した。
この6.0%赤血球浮遊液にHEPESを加え、温度37.0℃で予備インキュベートしたのち、AAPH溶液(酸化ストレス物質)、AAPH溶液と試料をそれぞれ添加し、温度37.0℃で45分インキュベートした。
その後、測定するまで氷冷し、測定は、温度25.0℃で7分、再度インキュベートしてから行った。
なお、赤血球変形能は、従来の定量性と再現性に難点のある微細孔(nucleipore)フィルターを用いた方法に代わるものとして、発明者が開発したフィルター特性が顕著に改善された、ニッケルメッシュ(nickelmesh)フィルターを用いる方法で測定した。
Claims (7)
- 大豆蛋白原料をプロテアーゼで処理し、不溶の疎水性アミノ酸の豊富な未分解の高分子画分を除去した水溶液から調製された生成物であって、
アンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性と、ヒト赤血球変形能低下抑制作用を有すること
を特徴とするペプチド組成物。 - 前記生成物は、
抗酸化活性およびラジカル捕捉活性をも有すること
を特徴とする請求項1に記載のペプチド組成物。 - 前記プロテアーゼ処理は、
アルカリ域を保持しながら、基質特性の低いプロテアーゼで行う加水分解処理であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド組成物。 - 前記未分解の高分子画分の沈殿除去は、
酸性pH調節及び/又はエタノールの添加により行われること
を特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド組成物。 - 前記生成物は、
その調製において、1%酢酸水溶液に不溶な物質が除去されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド組成物。 - 前記生成物は、
その調製において、ゲルろ過による分画により取得されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド組成物。 - 前記生成物は、
その調製において、高速液体クロマトグラフィーによる分画により取得されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のペプチド組成物。
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