JP2010232464A - Iii族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオード - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性が高く、また、内部抵抗が低減され、優れた発光特性を有するIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオードを提供する。
【解決手段】エピタキシャル膜成長用の基板11上又は該基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層(ELO成長層)13が形成され、下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層されており、下地層13は、基板11又はバッファ層12上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターンを用いて形成されたものである。
【選択図】図1
【解決手段】エピタキシャル膜成長用の基板11上又は該基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層(ELO成長層)13が形成され、下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層されており、下地層13は、基板11又はバッファ層12上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターンを用いて形成されたものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)、各種電子デバイス等に、好適に用いられ、III族窒化物半導体が積層されてなるIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオードに関する。
従来から、III族窒化物半導体は、短波長の可視光を放射する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の、pn接合型構造のIII族窒化物半導体発光素子を構成するための機能材料として利用されている。特に、発光波長が360nm〜200nmの紫外領域或いは深紫外領域の発光を呈するレーザダイオード等の発光素子においては、III窒化物半導体層の材料として窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)もしくは窒化ガリウムインジウム(GaInN)等が用いられてなり、例えば、医療や精密加工の分野等における応用が期待されている。
上述のような紫外領域又は深紫外領域のレーザダイオード等を含む受発光デバイスにおいては、従来から、サファイアや炭化シリコン(SiC)等の異種単結晶基板上にGaNを積層したテンプレート基板、或いは自立したGaN基板が用いられている。しかしながら、このような基板を用いた場合に、発光層から出射された光がGaNに吸収されてしまうという問題がある。また、Al組成比が高いAlGaNをGaN上に堆積した場合に、格子定数の差と熱膨張係数の差によってクラックが発生してしまい、デバイス特性の劣化を生じてしまうという問題があった。
上述のような問題を解決するためには、受発光波長を透過する組成のAlGaN基板を用いることで、光の吸収を抑制して受発光効率を高くする必要がある。同時に、受発光層との格子定数差と熱膨張係数差を小さくすることで、クラックや転位の発生を抑制し、結晶品質を向上させる必要がある。しかしながら、従来のAlxGa1−xN(0<x≦1)の結晶品質は充分とは言えず、特に、AlNモル分率が高いAlxGa1−xN(0<x≦1)は、GaNに比べて高融点及び低蒸気圧であるAlNの特徴に近づくため、良好な結晶成長が困難であった。
一方、異種単結晶基板上に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させるため、例えば、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法と呼ばれる方法を用いて、GaNからなる単結晶を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の半導体素子によれば、基板上にバッファ層及び第1のGaN層を形成し、その上に、酸化シリコン(SiO2)からなるマスクパターンを形成し、このマスクパターン及び第1のGaN層の上に第2のGaN層を形成する方法が開示されている。特許文献1の半導体素子の製造方法においては、前記マスクパターン上からはGaNが成長しないため、マスクパターンで覆われていない第1のGaN層の表面から成長した第2のGaN層が前記マスクパターン上において横方向に成長し、垂直方向の貫通転位が抑制され、結晶性の高いGaN層が得られるというものである。
特許文献1に記載のELO法を用いてAlGaNからなる結晶を成長させる場合には、例えば、図10(a)の模式断面図に示すように、まず、サファイアからなる基板111上にIII族窒化物層であるバッファ層112を形成し、このバッファ層112上にSiO2又はSiNからなるマスクパターン120を形成する。そして、このバッファ層112及びマスクパターン120の上に、AlxGa1−xN(0<x≦1)からなる層をELO成長させる。
ここで、特許文献1のように、ELO成長させる層がGaN半導体から構成される場合には、SiO2又はSiNからなるマスクパターン120の上からはGaNが成長しないので、マスクパターン123が形成されていない領域Rから成長した下地層114がマスクパターン120の上で横方向に成長する。この際、結晶欠陥は結晶成長方向に向かって進むため、マスクパターン120上においては垂直方向への貫通転位が抑制されると考えられる。
ここで、特許文献1のように、ELO成長させる層がGaN半導体から構成される場合には、SiO2又はSiNからなるマスクパターン120の上からはGaNが成長しないので、マスクパターン123が形成されていない領域Rから成長した下地層114がマスクパターン120の上で横方向に成長する。この際、結晶欠陥は結晶成長方向に向かって進むため、マスクパターン120上においては垂直方向への貫通転位が抑制されると考えられる。
しかしながら、AlxGa1−xN(0<x≦1)のようなAlを組成物として含有する結晶をELO成長させた場合、図10(a)に示すように、SiO2又はSiNからなるマスクパターン120の上面120aに多結晶AlGaN層115が成長してしまう。この際、バッファ層112上においてマスクパターン120の形成されていない領域Rから成長したAlGaNからなる下地層114の横方向への成長が、マスクパターン120上に成長した多結晶AlGaN層115によって阻止される。従って、垂直方向への貫通転位を抑制することができず、ELO法を用いてAlxGa1−xN(0<x≦1)の結晶品質を向上させることができないばかりか、単結晶層を形成することができないという問題があった。
このような、ELO法を用いてAlGaN等のAlを含有する組成の結晶を成長させた場合の問題点を解決するため、ELO法の代替技術として、例えば、基板もしくはバッファ層に周期溝を形成し、この上にIII族窒化物半導体を堆積させることにより、転位が低減された結晶性の高い半導体層を形成する方法が提案されている。しかしながら、上述の周期溝は、基板やバッファ層を構成する材料によっては形成が困難もしくは不可能な場合がある。このため、紫外領域又は深紫外領域の発光を呈するレーザダイオード等の発光素子において、より優れた結晶性を有する半導体層が効率良く得られる技術が切に求められていた。
またさらに、従来のレーザダイオードにおいては、図10(b)の断面模式図に示すような、p型半導体層116の上に酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN)からなる絶縁層117が形成され、この絶縁層117に形成される貫通部117aを通じてp型半導体層116に備えられる狭窄部116cと正極118とが接続される構造が提案されている。しかしながら、このような構造とされたレーザダイオードは、p型半導体層116と正極118との接触面積が狭いことから、抵抗値が高くなってしまう。このため、狭窄部に大きな電流を流通するレーザダイオードにおいては、正極118とp型半導体層16が発熱し、レーザダイオードの発光特性が低下するという問題があった。
また、p型半導体層と正極との接触面積を広くするために、p型半導体層の内部に電流狭窄層が埋め込まれてなる、所謂インナーストライプ構造のレーザダイオードが提案されている(例えば、特許文献2〜4を参照)。しかしながら、特許文献2〜4では、電流狭窄層の開口部を、リフトオフやウェットエッチング等によって形成する必要があるため、電流狭窄層の結晶性を高めることができないという問題がある。ここで、特許文献2においては、スパッタ法により、500℃以下の温度で電流狭窄層を形成した後、開口部をリフトオフにより形成している。一方、特許文献3、4においては、MOCVD法により、400℃の温度で非晶質の電流狭窄層を形成し、開口部をウェットエッチングによって形成した後、熱処理をして結晶化させている。しかしながら、特許文献2〜4に記載された何れの方法においても、良好な結晶性を有する電流狭窄層は得られず、その上に形成されるp型半導体層の結晶性が低下するため、レーザダイオードの発光特性も低下するという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、結晶性が高く、また、正極との接触抵抗が低減され、優れた発光特性を有するIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオードを提供することを目的とする。
本発明者等は、基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成のELO成長層を形成する際、基板上又はIII族窒化物層上に炭素材料からなるマスクパターンを形成して前記ELO成長層を成長させることにより、マスクパターン上における多結晶の成長を抑制し、転位が低く結晶性に優れた層を形成できることを見出した。また、炭素材料からなるマスクパターンを用いて電流狭窄層を形成することにより、成長温度を高くすることができ、結晶性に優れた電流狭窄層を形成することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下に関する。
本発明は以下に関する。
[1] エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層が形成され、前記ELO層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層が順次積層されており、前記ELO成長層は、前記基板又は前記III族窒化物層上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターンを用いて形成されたものであることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
[2] 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していることを特徴とする上記[1]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[3] 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していないことを特徴とする上記[1]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[4] 前記発光層と前記p型半導体層との間の少なくとも一部に電流狭窄層が備えられることにより、インナーストライプ構造とされてなることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[5] 前記電流狭窄層が、前記発光層上に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを用いて形成されたものであることを特徴とする上記[4]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[6] 前記電流狭窄層がAlNからなることを特徴とする上記[4]又は[5]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[2] 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していることを特徴とする上記[1]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[3] 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していないことを特徴とする上記[1]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[4] 前記発光層と前記p型半導体層との間の少なくとも一部に電流狭窄層が備えられることにより、インナーストライプ構造とされてなることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[5] 前記電流狭窄層が、前記発光層上に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを用いて形成されたものであることを特徴とする上記[4]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[6] 前記電流狭窄層がAlNからなることを特徴とする上記[4]又は[5]に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
[7] エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、炭素材料からなるELO用マスクパターンを形成するパターン形成工程と、前記ELO用マスクパターンを用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層を形成するELO成長工程と、前記ELO成長層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層を順次積層する半導体層形成工程と、を備えることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[8] 前記ELO用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする上記[7]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[9] 前記半導体層形成工程は、さらに、前記発光層を形成した後、該発光層上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを形成する小工程と、次いで、前記狭窄層用マスクパターンを用いて、前記発光層上に電流狭窄層を形成する小工程とを含むことを特徴とする上記[7]又は[8]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[10] 前記狭窄層用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする上記[9]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[11] 前記半導体層形成工程は、前記電流狭窄層を、AlYGa1−YN(0<Y≦1)からなる組成として、1000〜1400℃の範囲の温度で形成することを特徴とする上記[9]又は[10]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[8] 前記ELO用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする上記[7]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[9] 前記半導体層形成工程は、さらに、前記発光層を形成した後、該発光層上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを形成する小工程と、次いで、前記狭窄層用マスクパターンを用いて、前記発光層上に電流狭窄層を形成する小工程とを含むことを特徴とする上記[7]又は[8]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[10] 前記狭窄層用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする上記[9]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[11] 前記半導体層形成工程は、前記電流狭窄層を、AlYGa1−YN(0<Y≦1)からなる組成として、1000〜1400℃の範囲の温度で形成することを特徴とする上記[9]又は[10]に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
[12] 上記[7]〜[11]の何れか1項に記載の製造方法によって得られるIII族窒化物半導体発光素子。
[13] 上記[1]〜[6]又は[12]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子の素子構造が用いられてなるレーザダイオード。
[13] 上記[1]〜[6]又は[12]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子の素子構造が用いられてなるレーザダイオード。
本発明のIII族窒化物半導体発光素子によれば、エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層が形成され、前記ELO層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層が順次積層されており、前記ELO成長層は、前記基板又は前記III族窒化物層上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターンを用いて形成されたものなので、ELO成長層が良好に成長して結晶性に優れる層となり、その上に形成されるIII族窒化物半導体からなる各層の結晶性を向上させることが可能となる。これにより、発光特性に優れたIII族窒化物半導体発光素子が実現できる。
また、本発明のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、炭素材料からなるELO用マスクパターンを形成するパターン形成工程と、前記ELO用マスクパターンを用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層を形成するELO成長工程と、前記ELO成長層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層を順次積層する半導体層形成工程とを備えているので、ELO成長層を結晶性の高い層として効率良く形成することができ、また、その上に、結晶性に優れたIII族窒化物半導体からなる各層を形成することできるので、発光特性に優れたIII族窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
また、本発明のレーザダイオードによれば、上記本発明のIII族窒化物半導体発光素子の素子構造が用いられてなるものなので、発光特性に優れたものとなる。
以下に、本発明の実施形態であるIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオードについて、図1〜9を適宜参照しながら説明する。図1は本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子を示す模式図であり、図2は図1に示すIII族窒化物半導体発光素子の要部を示す模式断面図、図3〜図8は各製造工程を示す模式断面図である。尚、以下の説明において参照する図面は、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法、並びにレーザダイオードを説明する図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のIII族窒化物半導体発光素子等の寸法関係とは異なっている。
[III族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード)の積層構造]
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード:以下、発光素子と略称することがある)1は、図1(a)、(b)に示す例のように、エピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12の上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層である下地層13が形成され、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層されており、下地層13が、炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2等を参照)を用いてELO成長によって形成されたものである。
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード:以下、発光素子と略称することがある)1は、図1(a)、(b)に示す例のように、エピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12の上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層である下地層13が形成され、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層されており、下地層13が、炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2等を参照)を用いてELO成長によって形成されたものである。
また、図1(a)、(b)に示す例の発光素子1は、発光層15とp型半導体層16との間の少なくとも一部に、発光層15上に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を用いて形成された電流狭窄層17が備えられた素子構造とされている。これにより、発光素子1は、所謂インナーストライプ構造のレーザダイオードを構成している。
また、図示例の発光素子1は、p型半導体層16上に正極18が積層されており、また、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに形成された露出領域14dに負極19が積層されてなる。
以下、本実施形態の発光素子1の積層構造について詳述する。
また、図示例の発光素子1は、p型半導体層16上に正極18が積層されており、また、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに形成された露出領域14dに負極19が積層されてなる。
以下、本実施形態の発光素子1の積層構造について詳述する。
『基板』
一般に、III族窒化物半導体の結晶が積層される基板の材料としては、例えば、サファイア(α−Al2O3単結晶)、炭化シリコン(SiC)、単結晶シリコン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板材料が選択して用いられる。これらの内、融点が比較的高く耐熱性を有するサファイアやZnO或いはGa2O3等の酸化物単結晶材料、単結晶シリコンや立方晶或いは六方晶結晶型のSiC等のIV族半導体単結晶からなる基板材料を用いることが、結晶性の良好なIII族窒化物半導体を積層できる点で好ましく、中でもサファイアを用いることが最も好ましい。
また、基板11の大きさとしては、通常は直径2インチ程度のものが用いられるが、これには限定されず、例えば、直径4〜6インチの基板等、さらに大型の基板を使用することも可能である。
一般に、III族窒化物半導体の結晶が積層される基板の材料としては、例えば、サファイア(α−Al2O3単結晶)、炭化シリコン(SiC)、単結晶シリコン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板材料が選択して用いられる。これらの内、融点が比較的高く耐熱性を有するサファイアやZnO或いはGa2O3等の酸化物単結晶材料、単結晶シリコンや立方晶或いは六方晶結晶型のSiC等のIV族半導体単結晶からなる基板材料を用いることが、結晶性の良好なIII族窒化物半導体を積層できる点で好ましく、中でもサファイアを用いることが最も好ましい。
また、基板11の大きさとしては、通常は直径2インチ程度のものが用いられるが、これには限定されず、例えば、直径4〜6インチの基板等、さらに大型の基板を使用することも可能である。
『バッファ層(III族窒化物層)』
本実施形態の発光素子1は、基板11上にバッファ層12が設けられている。
本実施形態のバッファ層12は、例えば、一般式AlYGa1−YN(0≦Y≦1)で表されるIII族窒化物からなり、AlGaN又はAlN等の材料を好適に用いることができる。また、バッファ層12の形成方法としても、特に限定されず、例えば、MOCVD法や反応性スパッタ法等、この分野で従来から用いられている方法を何等制限無く採用することができる。
また、バッファ層12を構成する材料としては、バッファ層12上に積層されるIII族窒化物半導体と同じ結晶構造を有するものを用いることができ、格子の長さが、後述の下地層13を構成するIII族窒化物半導体に近いものが好ましい。
本実施形態の発光素子1は、基板11上にバッファ層12が設けられている。
本実施形態のバッファ層12は、例えば、一般式AlYGa1−YN(0≦Y≦1)で表されるIII族窒化物からなり、AlGaN又はAlN等の材料を好適に用いることができる。また、バッファ層12の形成方法としても、特に限定されず、例えば、MOCVD法や反応性スパッタ法等、この分野で従来から用いられている方法を何等制限無く採用することができる。
また、バッファ層12を構成する材料としては、バッファ層12上に積層されるIII族窒化物半導体と同じ結晶構造を有するものを用いることができ、格子の長さが、後述の下地層13を構成するIII族窒化物半導体に近いものが好ましい。
バッファ層12の膜厚は、特に限定されないが、0.1〜5μm以下の範囲とされていることが好ましい。バッファ層12の膜厚をこの範囲とすることにより、良好な結晶性及び配向性を有したバッファ層が得られる。
バッファ層12の膜厚が0.1μm未満だと、結晶性が充分でなく、後述する領域Rにおける結晶性が低下し、その後の下地層13の横方向へのELO成長に影響を与える虞がある。また、5μmを超える膜厚でバッファ層12を形成した場合、クラックや反り、表面平坦性の劣化等が生じ易くなるので好ましくない。バッファ層12の膜厚を上記範囲内とすることにより、結晶性の良好な層が得られるとともに、クラックや反り等が低減できる点で好ましく、バッファ層12の膜厚は、1〜2μmの範囲とされていることがより好ましい。
バッファ層12の膜厚が0.1μm未満だと、結晶性が充分でなく、後述する領域Rにおける結晶性が低下し、その後の下地層13の横方向へのELO成長に影響を与える虞がある。また、5μmを超える膜厚でバッファ層12を形成した場合、クラックや反り、表面平坦性の劣化等が生じ易くなるので好ましくない。バッファ層12の膜厚を上記範囲内とすることにより、結晶性の良好な層が得られるとともに、クラックや反り等が低減できる点で好ましく、バッファ層12の膜厚は、1〜2μmの範囲とされていることがより好ましい。
『半導体層』
図1(a)の模式断面図に示すように、本実施形態の発光素子1は、基板11上に、上述のようなバッファ層12を介して、III族窒化物系半導体からなり、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16から構成される半導体層20が積層されてなる。また、図示例では、下地層(ELO成長層)13がバッファ層12上に積層されている。
また、図示例においては、半導体層20において、発光層15とp型半導体層16との間に電流狭窄層17が形成されている。
図1(a)の模式断面図に示すように、本実施形態の発光素子1は、基板11上に、上述のようなバッファ層12を介して、III族窒化物系半導体からなり、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16から構成される半導体層20が積層されてなる。また、図示例では、下地層(ELO成長層)13がバッファ層12上に積層されている。
また、図示例においては、半導体層20において、発光層15とp型半導体層16との間に電流狭窄層17が形成されている。
III族窒化物半導体としては、例えば、一般式AlJGaKInZN1−AMA(式中、0≦J≦1、0≦K≦1、0≦Z≦1であり、且つ、J+K+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされる窒化ガリウム系化合物半導体が多数知られており、本発明においても、それら周知の窒化ガリウム系化合物半導体を含めて上記一般式AlJGaKInZN1−AMA(式中、0≦J≦1、0≦K≦1、0≦Z≦1であり、且つ、J+K+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされる窒化ガリウム系化合物半導体を何ら制限なく用いることができる。
窒化ガリウム系化合物半導体は、Al、GaおよびIn以外に他のIII族元素を含有することができる。
「下地層(ELO成長層)」
下地層13は、上述したようなエピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層12上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からELO成長されてなる層であり、従来公知のMOVPE法やCVD法等を用いて形成することができる。また、本実施形態の下地層13は、バッファ層12上に形成された、炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2を参照)を用いて形成されたものである。
下地層13は、上述したようなエピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層12上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からELO成長されてなる層であり、従来公知のMOVPE法やCVD法等を用いて形成することができる。また、本実施形態の下地層13は、バッファ層12上に形成された、炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2を参照)を用いて形成されたものである。
(組成及び膜厚)
下地層13の材料としては、一般式AlXGa1−XN(0<X≦1)で表される組成のものが用いられる。
即ち、下地層13は、図2に示すように、ELO用マスクパターン50の上面50a、及びバッファ層12の表面12aのELO用マスクパターン50によって被覆されていない領域R上に積層されて形成されている。そして、本実施形態では、ELO用マスクパターン50が炭素材料から形成されているため、下地層13がAlを含有する組成を有しているにも関わらず、ELO用マスクパターン50上に多結晶層が成長することがない。これにより、ELO用マスクパターン50上でAlxGa1−xN(0<x≦1)が充分に横方向成長するとともに、表面13fが平坦であり、結晶性の良好な下地層13が形成される。
下地層13の材料としては、一般式AlXGa1−XN(0<X≦1)で表される組成のものが用いられる。
即ち、下地層13は、図2に示すように、ELO用マスクパターン50の上面50a、及びバッファ層12の表面12aのELO用マスクパターン50によって被覆されていない領域R上に積層されて形成されている。そして、本実施形態では、ELO用マスクパターン50が炭素材料から形成されているため、下地層13がAlを含有する組成を有しているにも関わらず、ELO用マスクパターン50上に多結晶層が成長することがない。これにより、ELO用マスクパターン50上でAlxGa1−xN(0<x≦1)が充分に横方向成長するとともに、表面13fが平坦であり、結晶性の良好な下地層13が形成される。
下地層13の膜厚としては、該下地層13の表面13fが平坦となるために必要な厚さであれば良く、特に限定されないが、2〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜20μmの範囲であることがより好ましい。下地層13の膜厚がこの範囲であれば、表面13fの平坦性に優れた下地層13が得られる。下地層13の膜厚が2μm未満だと、一般にELO成長において用いる数μm〜十数μmの幅(ピッチ)のマスク全体を覆いきれない虞がある。また、下地層13の膜厚が50μmを超えると、マスクを覆った後の膜厚が厚くなり、表面13fの平坦性が低下する虞がある。
下地層13は、必要に応じて、n型不純物が1×1017〜1×1019個/cm3の範囲内でドーピングされた構成としても良いが、アンドープ(<1×1017個/cm3)の構成とすることもでき、アンドープの方が良好な結晶性を維持できる点で好ましい。また、基板が導電性である場合には、下地層13にn型不純物をドーピングして導電性とすることにより、発光素子の上下に電極を形成することも可能となる。
(ELO用マスクパターン)
本実施形態の下地層13は、上述したように、バッファ層12上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2を参照)を用いて形成される。
本実施形態のELO用マスクパターン50は、バッファ層12上に積層された炭素材料膜が所定の形状にパターニングされてなるものである。ELO用マスクパターン50に用いられる炭素材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、カーボンナノチューブ、フラーレン等を用いることができ、適宜採用することが可能であるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、III族窒化物からなるバッファ層12上に緻密な炭素膜を形成できる材料であれば良い。
本実施形態の下地層13は、上述したように、バッファ層12上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターン50(図2を参照)を用いて形成される。
本実施形態のELO用マスクパターン50は、バッファ層12上に積層された炭素材料膜が所定の形状にパターニングされてなるものである。ELO用マスクパターン50に用いられる炭素材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、カーボンナノチューブ、フラーレン等を用いることができ、適宜採用することが可能であるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、III族窒化物からなるバッファ層12上に緻密な炭素膜を形成できる材料であれば良い。
ELO用マスクパターン50の膜厚は、特に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下の範囲であることが好ましく、50nm以上200nm以下の範囲であることがより好ましい。なお、AlxGa1−xN(0<x≦1)からなる下地層13の成長は、GaNよりも横方向への結晶成長が遅いことから、ELO用マスクパターン50の膜厚は、膜質が維持できる範囲内で選択されることが好ましい。
ELO用マスクパターン50のパターン形状は、図2に示すように、下地層13の表面13fが平坦となるような形状であれば、特に限定されない。また、ELO用マスクパターン50のパターン形状には、ストライプ状、島状、格子状等の任意の形状を用いることが可能である。
(下地層の結晶転位密度)
下地層13の表面13fには、図2の模式断面図に示すように、結晶転位密度が低い領域Sと結晶転位密度が高い領域とがELO用マスクパターン50の形状に応じて、所定の間隔で交互に配置されるように形成されている。また、上述の領域Sには、会合線Lが形成されている。すなわち、ELO法による結晶成長では、炭素材料からなるELO用マスクパターン50の上面50aからはAlxGa1−xN(0<x≦1)が成長しないため、ELO用マスクパターン50で被覆されていないバッファ層12上の領域Rから成長したAlxGa1−xN(0<x≦1)が、当該ELO用マスクパターン50の上面50aにおいて横方向へと成長する。これにより、下地層13の表面13fにおいて、垂直方向の貫通転位が抑制された領域Sが得られる。
下地層13の表面13fには、図2の模式断面図に示すように、結晶転位密度が低い領域Sと結晶転位密度が高い領域とがELO用マスクパターン50の形状に応じて、所定の間隔で交互に配置されるように形成されている。また、上述の領域Sには、会合線Lが形成されている。すなわち、ELO法による結晶成長では、炭素材料からなるELO用マスクパターン50の上面50aからはAlxGa1−xN(0<x≦1)が成長しないため、ELO用マスクパターン50で被覆されていないバッファ層12上の領域Rから成長したAlxGa1−xN(0<x≦1)が、当該ELO用マスクパターン50の上面50aにおいて横方向へと成長する。これにより、下地層13の表面13fにおいて、垂直方向の貫通転位が抑制された領域Sが得られる。
下地層13における会合線Lは、上述の領域Sに出現する。これは、ELO用マスクパターン50の上面50aの左右から横方向に成長してきたELO成長層(下地層13)が出会うことで、貫通転位からなる会合線Lが形成されるためである。
これに対して、結晶転位密度が高い領域は、下地層13の表面13fであってマスクパターン50に被覆されていないバッファ層12上の領域Rの垂直方向上方に形成されている。そして、結晶転位密度が高い領域には、垂直方向への貫通転位が形成されている。これは、領域Rの垂直方向上方では、下地層13が垂直方向に成長するので、結晶欠陥が垂直方向に伝播して貫通転位が形成されるためである。
本実施形態の下地層13は、ELO用マスクパターン50を用いてバッファ層12上に形成されることで、上述したような作用により、表面13f付近の結晶転位密度が低減され、また、結晶性に優れた層となる。
なお、図2に示す例の下地層13は、ELO用マスクパターン50がバッファ層12と下地層13との間に残存しているが、本実施形態ではこれには限定されない。例えば、下地層の成膜条件の他、ELO用マスクパターンの炭素材料や膜厚等を適宜調整することにより、ELO用マスクパターンがバッファ層と下地層との間に残存していない構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、基板11上に設けられたバッファ層12上にELO用マスクパターン50を形成し、バッファ層12上の領域Rから下地層13がELO成長されてなる例を説明しているが、これには限定されない。例えば、基板11上に形成されたELO用マスクパターンを用いて、バッファ層を介さず、基板上に直接下地層を形成することも可能である。
「n型半導体層」
n型半導体層14は、通常、前記下地層(ELO成長層)13上に形成され、n型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bから構成される。
n型半導体層14は、通常、前記下地層(ELO成長層)13上に形成され、n型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bから構成される。
{n型コンタクト層}
本実施形態のn型コンタクト層14aはIII族窒化物半導体からなり、例えば、MOCVD法や反応性スパッタ法等の方法により、下地層13上に積層して成膜される。
n型コンタクト層14aの材質としては、例えば、下地層13と同様にAlxGa1−xN(0<x≦1)からなる組成とすることができる。また、n型コンタクト層14aは、n型不純物がドーピングされていることが好ましく、n型不純物の含有量を適正範囲に制御することにより、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で効果がある。
本実施形態のn型コンタクト層14aはIII族窒化物半導体からなり、例えば、MOCVD法や反応性スパッタ法等の方法により、下地層13上に積層して成膜される。
n型コンタクト層14aの材質としては、例えば、下地層13と同様にAlxGa1−xN(0<x≦1)からなる組成とすることができる。また、n型コンタクト層14aは、n型不純物がドーピングされていることが好ましく、n型不純物の含有量を適正範囲に制御することにより、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で効果がある。
また、n型コンタクト層14aの膜厚が、1〜5μmの範囲であることが好ましく、2〜3μmの範囲であることがより好ましい。下地層13の膜厚を上記範囲とし、また、n型コンタクト層14aの膜厚をこの範囲とすることにより、III族窒化物半導体の結晶性が良好に維持される。図1に示す例のような、上面側に正極18及び負極19を有する構造の発光素子1では、電流がn型コンタクト層14aを横方向(面内方向)に流れるので、n型コンタクト層14aの膜厚が薄すぎると抵抗が高くなる。しかしながら、n型コンタクト層14aが厚すぎると、このn型コンタクト層14aの上部に電流が集中してしまうため、所定以上の膜厚は不要であり、具体的には上記範囲とすることが好ましい。
{n型クラッド層}
上述のn型コンタクト層14aと詳細を後述する発光層15との間には、n型クラッド層14bが設けられる。n型クラッド層14bを設けることにより、負極19側から注入された電子を効率的に発光層15内に閉じ込め、また、本実施形態の発光素子1をレーザダイオードに適用した場合には、n型クラッド層14bが、光を閉じ込めるための導波路層の役目を果たす。
n型クラッド層14bは、MOCVD法等の方法を用いて、例えば、AlGaN等から成膜することが可能である。
上述のn型コンタクト層14aと詳細を後述する発光層15との間には、n型クラッド層14bが設けられる。n型クラッド層14bを設けることにより、負極19側から注入された電子を効率的に発光層15内に閉じ込め、また、本実施形態の発光素子1をレーザダイオードに適用した場合には、n型クラッド層14bが、光を閉じ込めるための導波路層の役目を果たす。
n型クラッド層14bは、MOCVD法等の方法を用いて、例えば、AlGaN等から成膜することが可能である。
n型クラッド層14bの膜厚は、特に限定されないが、20〜200nmの範囲とすることが好ましく、50〜150nmの範囲とすることがより好ましい。
また、n型クラッド層14bにもn型不純物がドーピングされていることが好ましく、n型不純物の含有量を適正範囲に制御することにより、III族窒化物半導体の良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で効果がある。
また、n型クラッド層14bにもn型不純物がドーピングされていることが好ましく、n型不純物の含有量を適正範囲に制御することにより、III族窒化物半導体の良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で効果がある。
なお、本実施形態では、n型クラッド層14b上に、さらに、図示略のn型電子閉じ込め層を形成することが、負極19側から注入された電子を、より効率的に発光層15内に閉じ込めることが可能となる点から、さらに好ましい。
「発光層」
発光層15は、n型半導体層14上に積層されるとともに、後述のp型半導体層16がその上に積層される層であり、従来公知のMOCVD法等を用いて成膜することができる。また、発光層15は、図1に示す例のように、窒化ガリウム系化合物半導体からなる障壁層15aと、井戸層15bとが交互に繰り返して積層されてなる構成とすることができる。図示例においては、n型半導体層14側及びp型半導体層16側に障壁層15aが配される順で積層され、障壁層15aが計4層、井戸層15bが計3層の、所謂、多重量子井戸構造(MQW:multiple−quantum well)を有する発光層として形成されている。
発光層15は、n型半導体層14上に積層されるとともに、後述のp型半導体層16がその上に積層される層であり、従来公知のMOCVD法等を用いて成膜することができる。また、発光層15は、図1に示す例のように、窒化ガリウム系化合物半導体からなる障壁層15aと、井戸層15bとが交互に繰り返して積層されてなる構成とすることができる。図示例においては、n型半導体層14側及びp型半導体層16側に障壁層15aが配される順で積層され、障壁層15aが計4層、井戸層15bが計3層の、所謂、多重量子井戸構造(MQW:multiple−quantum well)を有する発光層として形成されている。
障壁層15aとしては、例えば、井戸層15bよりもバンドギャップエネルギーが大きいAlcGa1−cN等の窒化ガリウム系化合物半導体を、好適に用いることができる。
また、井戸層15bには、AldGa1−dN(0≦d<c)、又は、インジウムを含有する窒化ガリウム系化合物半導体として、例えば、Ga1−sInsN(0<s<0.4)等の窒化ガリウムインジウムを用いることができる。
また、井戸層15bには、AldGa1−dN(0≦d<c)、又は、インジウムを含有する窒化ガリウム系化合物半導体として、例えば、Ga1−sInsN(0<s<0.4)等の窒化ガリウムインジウムを用いることができる。
発光層15全体の膜厚としては、特に限定されないが、例えば、10〜100nmの範囲であることが好ましく、30〜50nmの範囲であることがより好ましい。発光層15の膜厚が上記範囲であると、発光出力の向上に寄与する。
「p型半導体層」
p型半導体層16は、上述した発光層15の上、つまり最上層の障壁層15aの上に形成され、p型電子ブロック層10、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16bから構成され、例えば、MOCVD法を用いて形成される。
また、本実施形態のp型半導体層16は、p型電子ブロック層10上の所定の位置に、詳細を後述する電流狭窄層17が形成されている。これにより、p型半導体層16は、電流狭窄層17の上面17a上、及びp型電子ブロック層10上において電流狭窄層17が形成されていない領域Tにp型クラッド層16aが形成され、所謂インナーストライプ構造として形成されている。
p型半導体層16は、上述した発光層15の上、つまり最上層の障壁層15aの上に形成され、p型電子ブロック層10、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16bから構成され、例えば、MOCVD法を用いて形成される。
また、本実施形態のp型半導体層16は、p型電子ブロック層10上の所定の位置に、詳細を後述する電流狭窄層17が形成されている。これにより、p型半導体層16は、電流狭窄層17の上面17a上、及びp型電子ブロック層10上において電流狭窄層17が形成されていない領域Tにp型クラッド層16aが形成され、所謂インナーストライプ構造として形成されている。
p型半導体層16は、導電性をp型に制御するためのp型不純物が添加されてなり、このようなp型不純物としては、特に限定されないが、Mgを用いることが好ましく、また、同様にZnを用いることも可能である。
また、p型半導体層16全体の膜厚は、特に限定されないが、レーザ構造を採用する場合には、200〜800nmの範囲であることが好ましく、300〜500nmの範囲であることがより好ましい。また、p型半導体層16全体の膜厚は、LED構造を採用する場合には、10〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜100nmの範囲であることがより好ましい。
また、p型半導体層16全体の膜厚は、特に限定されないが、レーザ構造を採用する場合には、200〜800nmの範囲であることが好ましく、300〜500nmの範囲であることがより好ましい。また、p型半導体層16全体の膜厚は、LED構造を採用する場合には、10〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜100nmの範囲であることがより好ましい。
{p型電子ブロック層}
p型電子ブロック層10の材料としては、発光層15のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、且つ、発光層15へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、例えば、一般式AldGa1−dN(0<d≦1、好ましくは0.1≦d≦0.8)で表されるものが挙げられる。ここで、上記一般式中のAlNのモル分率dとしては、この数値が大きくなると電子のオーバーフロー抑制効果が大きくなるものの、電気抵抗も大きくなることから、発光層15の組成との関係で適切な数値があるので、成膜の際の組成を適宜調整することが好ましい。
p型電子ブロック層10の材料としては、発光層15のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、且つ、発光層15へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、例えば、一般式AldGa1−dN(0<d≦1、好ましくは0.1≦d≦0.8)で表されるものが挙げられる。ここで、上記一般式中のAlNのモル分率dとしては、この数値が大きくなると電子のオーバーフロー抑制効果が大きくなるものの、電気抵抗も大きくなることから、発光層15の組成との関係で適切な数値があるので、成膜の際の組成を適宜調整することが好ましい。
{p型クラッド層}
p型クラッド層16aは、本実施形態の発光素子1をレーザダイオードに適用した場合に、導波路の働きをする層である。このような、レーザダイオードの導波路としての膜厚は、光の閉じ込め効果が充分に発揮できる厚さとする必要があるが、膜厚が厚すぎると電気抵抗が大きくなり、発光効率が低下する虞がある。このため、p型クラッド層16aの膜厚は、200〜800nmの範囲であることが好ましく、300〜500nmの範囲であることがより好ましい。
また、p型クラッド層16aとしては、発光層15よりも屈折率小さいものであることが必要であり、通常、発光層15よりもAlNのモル分率が大きなAlGaNを用いる。このような材料としては、例えば、一般式AldGa1−dN(0<d≦1、好ましくは0.1≦d≦0.7)で表されるものが挙げられる。
p型クラッド層16aは、本実施形態の発光素子1をレーザダイオードに適用した場合に、導波路の働きをする層である。このような、レーザダイオードの導波路としての膜厚は、光の閉じ込め効果が充分に発揮できる厚さとする必要があるが、膜厚が厚すぎると電気抵抗が大きくなり、発光効率が低下する虞がある。このため、p型クラッド層16aの膜厚は、200〜800nmの範囲であることが好ましく、300〜500nmの範囲であることがより好ましい。
また、p型クラッド層16aとしては、発光層15よりも屈折率小さいものであることが必要であり、通常、発光層15よりもAlNのモル分率が大きなAlGaNを用いる。このような材料としては、例えば、一般式AldGa1−dN(0<d≦1、好ましくは0.1≦d≦0.7)で表されるものが挙げられる。
また、p型クラッド層16aにp型不純物を添加することによって得られるp型ドーパント濃度を適正範囲に制御することにより、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られるという効果がある。
{p型コンタクト層}
p型コンタクト層16bとしては、少なくともAleGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなる窒化ガリウム系化合物半導体層である。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極との良好なオーミック接触の点で好ましい。
p型コンタクト層16bの膜厚は、特に限定されないが、10〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜100nmの範囲であることがより好ましい。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
p型コンタクト層16bとしては、少なくともAleGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなる窒化ガリウム系化合物半導体層である。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極との良好なオーミック接触の点で好ましい。
p型コンタクト層16bの膜厚は、特に限定されないが、10〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜100nmの範囲であることがより好ましい。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
また、p型コンタクト層16bにp型不純物を添加することによって得られるp型ドーパント濃度を適性範囲に制御することにより、正極との良好なオーミック接触の維持やクラック発生の防止、良好な結晶性の維持等の点で効果が得られる。
なお、本実施形態では、発光層15上に、さらに、図示略のp型電子閉じ込め層を形成することが、正極18側から注入された正孔を、より効率的に発光層15内に閉じ込めることが可能となる点からより好ましい。
「電流狭窄層」
本実施形態の発光素子1は、図1(a)、(b)に示す例のように、p型半導体層16の内部の少なくとも一部に電流狭窄層17を設けた構成とすることができ、図示例では、p型電子ブロック層10上において領域Tを除いた全面に電流狭窄層17が形成されている。また、障壁層15b上において、電流狭窄層17に形成された貫通部17bに対応する位置が、上記領域Tとされている。また、本実施形態では、上記領域Tが、発光素子1の上下方向(図1(a)の縦長方向)において、バッファ層12上のELO用マスクパターン50上に位置するように配されている。
上記構成により、発光素子1は、インナーストライプ構造のレーザダイオードとして構成されている。
本実施形態の発光素子1は、図1(a)、(b)に示す例のように、p型半導体層16の内部の少なくとも一部に電流狭窄層17を設けた構成とすることができ、図示例では、p型電子ブロック層10上において領域Tを除いた全面に電流狭窄層17が形成されている。また、障壁層15b上において、電流狭窄層17に形成された貫通部17bに対応する位置が、上記領域Tとされている。また、本実施形態では、上記領域Tが、発光素子1の上下方向(図1(a)の縦長方向)において、バッファ層12上のELO用マスクパターン50上に位置するように配されている。
上記構成により、発光素子1は、インナーストライプ構造のレーザダイオードとして構成されている。
また、本実施形態の電流狭窄層17は、後述の製造方法の説明において詳しく説明するが、p型電子ブロック層10上に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60(図7(d)を参照)を用いて形成されたものである。
電流狭窄層17の材質としては、例えば、AlN等、インナーストライプ構造の発光素子において、一般に用いられている材料を何等制限無く用いることができる。
{インナーストライプ構造}
上述したように、本実施形態の発光素子1は、p型半導体層16の内部に設けられた電流狭窄層17により、インナーストライプ構造のレーザダイオードとして構成されている。また、発光層15とp型半導体層16との間は、電流狭窄層17に形成された貫通部17bを通じて接続されている。
上述したように、本実施形態の発光素子1は、p型半導体層16の内部に設けられた電流狭窄層17により、インナーストライプ構造のレーザダイオードとして構成されている。また、発光層15とp型半導体層16との間は、電流狭窄層17に形成された貫通部17bを通じて接続されている。
このように、発光層15の上のp型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を設けることにより、発光層15中の狭い領域に電流を効果的に閉じ込めることができるので、発光層15における電流密度が向上する等の効果が得られる。また、インナーストライプ構造とすることにより、p型コンタクト層16bと後述の正極18との接触面積を大きくすることができるので、例えば、p型コンタクト16cの抵抗率が高い場合であっても、p型コンタクト16cの上部、つまり正極18と接する上面近傍において電流が拡散される。これにより、p型コンタクト層16bと正極18との間のコンタクト抵抗を低減できるという効果が得られ、ひいては、発光素子1の発光特性が向上するという効果が得られるものである。
本実施形態の電流狭窄層17は、図1(a)に示す例のように、p型電子ブロック層10上における領域T、つまり貫通部17bがバッファ層12上のELO用マスクパターン50上の位置に配することが好ましい。さらに、電流狭窄層17は、ELO用マスクパターン50上に配するとともに、図5(c)に示すような会合線Lの延長線上から外れるように配することがより好ましい。
上述したように、ELO用マスクパターン50上の下地層13には、ELO用マスクパターン50上の面方向中心付近に、基板11側から垂直方向に向かう貫通転位からなる会合線Lが形成されている。本実施形態では、図1(a)に示す例のように、貫通部17b(領域T)の位置が会合線L(図5(c)も参照)の延長線上から外れるように、ELO用マスクパターン50の上面50aの縁部に近づけて配した構成としている。これにより、貫通部17b(領域T)に垂直方向で対応する位置の半導体層20は、転位が抑制された結晶によって構成される。これにより、発光層15に効果的に電流を閉じ込めることができるとともに、貫通部17b(領域T)の位置においては、正極18からの供給電流が貫通転位に逃げることが無く、発光層15における電流密度が向上する。これにより、発光層15における発光効率をより向上させることが可能となる。
ここで、従来のレーザダイオード等の発光素子においては、図10(b)に示すような、p型半導体層116の上に、電流の半導体層内部に閉じ込めるための層としてSiO2又はSiNからなる絶縁層117が形成され、この絶縁層117に形成される貫通部117aを通じてp型半導体層116と正極118とが接続される構造が提案されている。しかしながら、このような場合、p型半導体層116と正極118との間が狭い狭窄部116cのみで接続される構成のため、これらの間のコンタクト抵抗が非常に高くなるので電流が流れ難くなり、レーザダイオードの発光特性が低下するという大きな問題があった。
本実施形態では、上述のような、p型半導体層16の内部に電流狭窄層17が設けられたインナーストライプ構造とすることにより、電流の効果的な閉じ込めによる発光層15の発光強度の向上と、コンタクト抵抗の低減を同時に実現することができるので、優れた発光特性を有する発光素子(レーザダイオード)が得られる。
また、本実施形態では、後述の製造方法で詳しく説明するように、電流狭窄層17が、p型半導体層16の内部に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60(図7(d)を参照)を用いて形成されたものなので、高い加工精度で安定して製造することができ、形状及び結晶構造の安定した電流狭窄層とすることが可能であり、ひいては、発光素子の発光特性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、後述の製造方法で詳しく説明するように、電流狭窄層17が、p型半導体層16の内部に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60(図7(d)を参照)を用いて形成されたものなので、高い加工精度で安定して製造することができ、形状及び結晶構造の安定した電流狭窄層とすることが可能であり、ひいては、発光素子の発光特性を向上させることが可能となる。
『正極及び負極』
正極18は、上述のp型半導体層16(p型コンタクト層16b)上に形成される電極である。本実施形態の正極18は、上述したように、p型コンタクト層16bとの間で広い面積で接するように形成され、接触抵抗が低減するように構成されている。
正極18の材料としては、Au、Al、Ni及びCu等を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
正極18は、上述のp型半導体層16(p型コンタクト層16b)上に形成される電極である。本実施形態の正極18は、上述したように、p型コンタクト層16bとの間で広い面積で接するように形成され、接触抵抗が低減するように構成されている。
正極18の材料としては、Au、Al、Ni及びCu等を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
負極19は、基板11上に、n型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層された半導体層において、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに接するように形成される。
このため、負極19を設ける際は、p型半導体層16、発光層15及びn型半導体層14の一部を除去することにより、n型コンタクト層14aの露出領域14dを形成し、この上に負極19を形成する。
負極19の材料としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
このため、負極19を設ける際は、p型半導体層16、発光層15及びn型半導体層14の一部を除去することにより、n型コンタクト層14aの露出領域14dを形成し、この上に負極19を形成する。
負極19の材料としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
以上説明したような、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子1によれば、エピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層12上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層13が形成され、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型半導体層16が順次積層されており、下地層13が、バッファ層12上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターン50を用いて形成されたものなので、下地層13が良好にELO成長して結晶性に優れる層となり、その上に形成されるIII族窒化物半導体からなる各層の結晶性を向上させることが可能となる。これにより、発光特性に優れた発光素子1を実現できる。
本実施形態の発光素子1は、上記構成により、下地層13の表面13fに、結晶転位密度が低い領域Sが形成されるので、結晶性に優れた下地層13とすることができ、その上に形成され、III族窒化物半導体からなる各層の結晶性も優れたものとすることができる。
本実施形態の発光素子1は、上記構成により、下地層13の表面13fに、結晶転位密度が低い領域Sが形成されるので、結晶性に優れた下地層13とすることができ、その上に形成され、III族窒化物半導体からなる各層の結晶性も優れたものとすることができる。
また、本実施形態の発光素子1によれば、p型半導体層16の内部に上記構成の電流狭窄層17が備えられることにより、インナーストライプ構造のレーザダイオードとして構成され、また、電流狭窄層17が、炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を用いて形成されたものなので、高い加工精度で安定して製造することが可能となり、発光特性に優れた発光素子1が得られる。
また、本実施形態においては、主に、電流狭窄層17が備えられてなるレーザダイオードタイプの発光素子1を例に説明しているが、本実施形態の発光素子1に備えられる各種構造は、これには限定されない。例えば、本実施形態で説明する、基板11上のバッファ層12の上にELO用マスクパターン50を設け、このELO用マスクパターン50を用いて下地層13が成長されてなる構造は、例えば、LEDタイプの発光素子においても適用することが可能である。
本実施形態の発光素子は、上記各変形態様とした場合であっても、上記同様の効果を奏することが可能である。
[III族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード)の製造方法]
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード)の製造方法は、エピタキシャル膜成長用の基板11上又は該基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を形成するパターン形成工程と、ELO用マスクパターン50を用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層(ELO成長層)13を形成するELO成長工程と、下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14を構成するn型コンタクト層14a、n型クラッド層14b、発光層15及びp型半導体層16を順次積層する半導体層形成工程とを備えた方法である。
また、本実施形態で説明する例においては、前記半導体層形成工程が、さらに、発光層15を形成し、この上にp型電子ブロック層10を形成した後、p型電子ブロック層16a上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する小工程と、次いで、狭窄層用マスクパターン60を用いて、p型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を形成する小工程とを含む方法としている。
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子(レーザダイオード)の製造方法は、エピタキシャル膜成長用の基板11上又は該基板11上に形成されたバッファ層(III族窒化物層)12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を形成するパターン形成工程と、ELO用マスクパターン50を用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層(ELO成長層)13を形成するELO成長工程と、下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層14を構成するn型コンタクト層14a、n型クラッド層14b、発光層15及びp型半導体層16を順次積層する半導体層形成工程とを備えた方法である。
また、本実施形態で説明する例においては、前記半導体層形成工程が、さらに、発光層15を形成し、この上にp型電子ブロック層10を形成した後、p型電子ブロック層16a上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する小工程と、次いで、狭窄層用マスクパターン60を用いて、p型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を形成する小工程とを含む方法としている。
そして、本実施形態では、p型半導体層16上に正極18を積層するとともに、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに形成された露出領域14dに負極19を積層して各電極を形成する工程が備えられている(図8(a)、(b)を参照)。
以下、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法について詳述する。
以下、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法について詳述する。
<バッファ層の形成>
本実施形態の製造方法においては、まず、図3に示すように、基板11上にIII族窒化物からなるバッファ層12を積層して形成する。
バッファ層12の形成方法としては、特に限定されず、例えば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、反応性スパッタ法等、この分野において従来公知の汎用的な結晶成長方法を採用することが可能である。また、バッファ層12をAlNから形成する場合には、昇華法や液相成長法等も採用することも可能である。
本実施形態の製造方法においては、まず、図3に示すように、基板11上にIII族窒化物からなるバッファ層12を積層して形成する。
バッファ層12の形成方法としては、特に限定されず、例えば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、反応性スパッタ法等、この分野において従来公知の汎用的な結晶成長方法を採用することが可能である。また、バッファ層12をAlNから形成する場合には、昇華法や液相成長法等も採用することも可能である。
<パターン形成工程>
次に、パターン形成工程においては、図4(a)〜図4(b)に示すように、基板11上に形成されたバッファ層12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を積層する。
次に、パターン形成工程においては、図4(a)〜図4(b)に示すように、基板11上に形成されたバッファ層12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を積層する。
具体的には、図4(a)に示すように、まず、バッファ層12の表面12a全体に、炭素材料からなる炭素膜50Aを、例えば、MOCVD等のCVD法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ分解蒸着法、熱分解蒸着法等、従来公知の汎用的な方法を用いて形成する。この際、炭素材料としては、上述したように、黒鉛(グラファイト)、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、カーボンナノチューブ、フラーレン等を適宜選択して用いることができる。
次いで、図4(b)に示すように、炭素膜50AをパターニングしてELO用マスクパターン50を形成する。炭素膜50Aのパターニング方法としては、特に限定されず、一般的なフォトリソ技術を採用することができる。例えば、先ず、炭素膜50A上に図示略のレジスト層を形成し、このレジスト層を露光現像して所定の形状に形成する。次に、レジスト層をマスクとして、炭素膜50Aをアッシング処理することで炭素膜50Aをパターニングする。最後に、上記レジスト層を汎用的な方法を用いて除去する。
以上のような工程により、III族窒化物からなるバッファ層12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン60を形成する。
以上のような工程により、III族窒化物からなるバッファ層12上に、炭素材料からなるELO用マスクパターン60を形成する。
<ELO成長工程>
次に、ELO成長工程においては、図5(a)〜(c)に示すように、バッファ層12上に、上記パターン形成工程において形成されたELO用マスクパターン50を用いて、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成の結晶をエピタキシャル成長させることにより、下地層(ELO成長層)13を積層する。
次に、ELO成長工程においては、図5(a)〜(c)に示すように、バッファ層12上に、上記パターン形成工程において形成されたELO用マスクパターン50を用いて、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成の結晶をエピタキシャル成長させることにより、下地層(ELO成長層)13を積層する。
本実施形態において、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成の結晶をエピタキシャル成長させる方法としては、特に限定されず、例えば、有機金属化学的気相堆積法(MOVPE、MOCVD又はOMVPE等と略称される)、分子線エピタキシャル法(MBE)、ハイドライド気相成長法(HVPE)等の気相成長法を採用することができる。なお、これらに例示した方法の中でも、MOVPE法を採用することが最も好ましい。
気相成長法は、液相法と比較してAlGaN混晶結晶を作製し易いために好ましい。さらに、MOVPE法は、HVPE法と比較して組成の制御が容易であり、MBE法と比較して大きな成長速度が得られるために好ましい。
また、MOVPE法では、キャリアガスとして水素(H2)又は窒素(N2)を用いることができる。また、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、窒素源としてアンモニア(NH3)またはヒドラジン(N2H4)などを用いることができる。
AlxGa1−xN(0<x≦1)なる組成の結晶からなる下地層13は、MOVPE法による成長温度を1250℃以上として成長させることが好ましい。成長温度が1250℃以下だと、Al組成が高いAlxGa1−xN(0<x≦1)の結晶品質が低下するためである。また、MOVPE法による下地層13の成長温度は、より好ましくは1300℃以上であり、さらに好ましくは1400℃以上である。上述のような1250℃以上という成長温度は、高融点且つ低蒸気圧物質であるAlNの最適成長温度に近いと考えられるとともに、アンモニアの分解、反応がより促進され、Alの表面マイグレーションも促進される点で好ましい。
また、MOVPE法による下地層13の成長速度は、生産性を向上させる観点から0.1μm/hr以上とすることが好ましく、より好ましくは1μm/hr以上であり、さらに好ましくは2μm/hr以上である。
本実施形態のELO成長工程は、具体的には、まず、図5(a)に示すように、ELO用マスクパターン50が形成されていないバッファ層12上の領域Rに、AlxGa1−xN(0<x≦1)からなる組成の結晶13Aをエピタキシャル成長させる。ここで、結晶成長初期において、結晶13Aの高さ(厚さ)がELO用マスクパターン50の高さ(厚さ)を超えない範囲では、結晶13Aの成長方向は、領域Rに対して垂直方向上向きとなる。また、エピタキシャル成長においては、結晶転位(結晶欠陥)は結晶成長方向に伝播するため、結晶転位の方向も領域Rに対して垂直方向上向きとなる。そして、結晶成長が進行して結晶13Aの高さがELO用マスクパターン50の高さを超えると、図5(a)に示すように、結晶13AのELO用マスクパターン50に近接した部分が、ELO用マスクパターン50の上面50a上に、横方向に向かうように成長(ラテラル成長)をはじめる。なお、図中の矢印は、結晶13Aの成長方向および結晶転位の伝播方向を示している。
そして、図5(b)に示すように、さらに結晶13Aが成長すると、ELO用マスクパターン50を挟んで隣接する結晶13A同士が当該ELO用マスクパターン50上で会合し、一体化して下地層(ELO成長層)13が形成される。この際、ELO用マスクパターン50上における結晶転位の方向は、図5(b)中に示す矢印のように、互いに対向するように横方向の向きとなっている。これにより、ELO用マスクパターン50上には、垂直方向への貫通転位が形成されない。また、ELO用マスクパターン50上には、隣接する結晶13A同士が会合して形成される貫通転位、即ち会合線Lが形成される。
なお、上述したELO法による結晶成長の初期段階、即ち、図5(a)から図5(b)への過程において、ELO用マスクパターン50の上面50aの上方には、結晶13Aの横方向への成長が十分でないために、会合線Lの近傍に一部空隙(ボイド)が発生する場合がある。しかしながら、このような空隙を伴って下地層13がELO成長した場合であっても、この空隙は結晶成長が進んだ段階、即ち図5(c)の段階には消失する。このため、充分に結晶成長した下地層13には、表面13f付近に空隙が存在することはない。
なお、上述したELO法による結晶成長の初期段階、即ち、図5(a)から図5(b)への過程において、ELO用マスクパターン50の上面50aの上方には、結晶13Aの横方向への成長が十分でないために、会合線Lの近傍に一部空隙(ボイド)が発生する場合がある。しかしながら、このような空隙を伴って下地層13がELO成長した場合であっても、この空隙は結晶成長が進んだ段階、即ち図5(c)の段階には消失する。このため、充分に結晶成長した下地層13には、表面13f付近に空隙が存在することはない。
そして、図5(c)に示すように、下地層13は、さらに成長することにより、その表面13fが平坦となる。
本実施形態のELO成長工程では、このような手順により、結晶転位密度が低い領域Sを有する下地層13を形成することができる。
本実施形態のELO成長工程では、このような手順により、結晶転位密度が低い領域Sを有する下地層13を形成することができる。
<半導体層形成工程>
次に、半導体層形成工程では、図6(a)〜図6(c)(図7(a)〜(d)に示す小工程も参照)に示すように、上記ELO成長工程で形成された下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型コンタクト層14a、n型クラッド層14b、発光層15及びp型半導体層16を順次積層することにより、バッファ層12上に半導体層20を形成する。
次に、半導体層形成工程では、図6(a)〜図6(c)(図7(a)〜(d)に示す小工程も参照)に示すように、上記ELO成長工程で形成された下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型コンタクト層14a、n型クラッド層14b、発光層15及びp型半導体層16を順次積層することにより、バッファ層12上に半導体層20を形成する。
「n型半導体層の形成」
まず、図6(a)に示すように、上記ELO成長工程で形成された下地層13の上にn型コンタクト層14aを形成した後、この上に、n型クラッド層14bを形成する。
n型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bの成膜方法としては、MOCVD法や反応性スパッタ法等、従来公知の方法を何等制限無く採用することができる。また、これらn型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bには、上述したようなn型不純物をドーピングする。
まず、図6(a)に示すように、上記ELO成長工程で形成された下地層13の上にn型コンタクト層14aを形成した後、この上に、n型クラッド層14bを形成する。
n型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bの成膜方法としては、MOCVD法や反応性スパッタ法等、従来公知の方法を何等制限無く採用することができる。また、これらn型コンタクト層14a及びn型クラッド層14bには、上述したようなn型不純物をドーピングする。
また、本実施形態の製造方法では、必要に応じて、n型クラッド層c上に、さらに、MOCVD法を用いてn型電子閉じ込め層を形成する方法とすることも可能である。
「発光層の形成」
次いで、図6(b)に示すように、発光層15を、例えば、従来公知のMOCVD法等によってn型クラッド層14b上に形成する。
本実施形態で形成する、図1(a)の模式断面図に例示するような発光層15は、障壁層に始まって障壁層に終わる積層構造を有しており、例えば、AlGaNからなる4層の障壁層15aと、ノンドープのGaNからなる3層の井戸層15bとを交互に積層して形成することができる。
次いで、図6(b)に示すように、発光層15を、例えば、従来公知のMOCVD法等によってn型クラッド層14b上に形成する。
本実施形態で形成する、図1(a)の模式断面図に例示するような発光層15は、障壁層に始まって障壁層に終わる積層構造を有しており、例えば、AlGaNからなる4層の障壁層15aと、ノンドープのGaNからなる3層の井戸層15bとを交互に積層して形成することができる。
「p型半導体層の形成」
次いで、図6(c)に示すように、発光層15上、つまり、発光層15の最上層となる障壁層15a上に、p型電子ブロック層10、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16bからなるp型半導体層16を形成する。p型半導体層16を形成する方法としては、MOCVD法やスパッタ法等、従来公知の方法を何等制限無く採用することが可能である。
p型半導体層16にドープするp型不純物としては、Mgや亜鉛(Zn)を用いることができる。
次いで、図6(c)に示すように、発光層15上、つまり、発光層15の最上層となる障壁層15a上に、p型電子ブロック層10、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16bからなるp型半導体層16を形成する。p型半導体層16を形成する方法としては、MOCVD法やスパッタ法等、従来公知の方法を何等制限無く採用することが可能である。
p型半導体層16にドープするp型不純物としては、Mgや亜鉛(Zn)を用いることができる。
『半導体形成工程における各小工程』
本実施形態の半導体層形成工程においては、図7(a)〜図7(d)に示すように、さらに、発光層15を形成し、p型電子ブロック層10を形成した後に、該p型電子ブロック層10上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する小工程と、次いで、狭窄層用マスクパターン60を用いてp型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を形成する小工程とを含む方法とすることができる。
本実施形態の半導体層形成工程においては、図7(a)〜図7(d)に示すように、さらに、発光層15を形成し、p型電子ブロック層10を形成した後に、該p型電子ブロック層10上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する小工程と、次いで、狭窄層用マスクパターン60を用いてp型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を形成する小工程とを含む方法とすることができる。
「狭窄層用マスクパターンを形成する小工程」
本小工程においては、図7(a)に示すように、まず、p型電子ブロック層10上に、炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を積層して形成する。
具体的には、ELO用マスクパターン50を形成する際の前記パターン形成工程と同様、まず、p型電子ブロック層10の表面全体に、炭素材料からなる炭素膜60Aを、例えば、CVD法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ分解蒸着法、熱分解蒸着法等、従来公知の汎用的な方法を用いて形成する。この際、炭素材料についても、前記パターン形成工程と同様の材料を用いることができる。
本小工程においては、図7(a)に示すように、まず、p型電子ブロック層10上に、炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を積層して形成する。
具体的には、ELO用マスクパターン50を形成する際の前記パターン形成工程と同様、まず、p型電子ブロック層10の表面全体に、炭素材料からなる炭素膜60Aを、例えば、CVD法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ分解蒸着法、熱分解蒸着法等、従来公知の汎用的な方法を用いて形成する。この際、炭素材料についても、前記パターン形成工程と同様の材料を用いることができる。
次いで、図7(b)に示すように、炭素膜60Aをパターニングして狭窄層用マスクパターン60を形成する。炭素膜60Aのパターニング方法としても、前記パターン形成工程と同様、特に限定されず、一般的なフォトリソ技術を採用することができる。
以上のような工程により、p型電子ブロック層10上に、炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する。
以上のような工程により、p型電子ブロック層10上に、炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する。
「電流狭窄層を形成する小工程」
本小工程においては、図7(c)に示すように、まず、p型電子ブロック層10の上面において狭窄層用マスクパターン60が形成されていない領域にAlN層17Aを積層して形成する。この際、図7(c)に示すように、AlN層17Aを、狭窄層用マスクパターン60よりも薄く形成した後、図7(d)に示すように、狭窄層用マスクパターン60をアッシング等の方法で除去することにより、貫通部17bを有する形状にパターン形成された電流狭窄層17が得られる。
本小工程においては、図7(c)に示すように、まず、p型電子ブロック層10の上面において狭窄層用マスクパターン60が形成されていない領域にAlN層17Aを積層して形成する。この際、図7(c)に示すように、AlN層17Aを、狭窄層用マスクパターン60よりも薄く形成した後、図7(d)に示すように、狭窄層用マスクパターン60をアッシング等の方法で除去することにより、貫通部17bを有する形状にパターン形成された電流狭窄層17が得られる。
電流狭窄層17を形成するためのAlN層17Aの成長温度としては、1000〜1400℃の範囲が好ましく、1050〜1300℃の範囲がより好ましく、1100〜1250℃の範囲がさらに好ましい。
また、電流狭窄層17を形成するためのAlN層17Aを成長させるのに好ましい温度は、電流狭窄層17(AlN層17A)の組成によっても異なる。電流狭窄層17が、AlYGa1−YN(0<Y≦1)からなる場合、0<Y≦0.3では1000〜1100℃の温度範囲が好ましく、0.3≦Y≦0.7では1100〜1250℃の範囲、0.7≦Y≦1では1250〜1400℃の温度範囲が好ましい。
また、本実施形態のように、電流狭窄層17がAlNからなる場合、電流狭窄層17を形成するためのAlN層17aの成長温度は、発光層15の井戸層15bを成長させる温度の±100℃の範囲とすることが好ましい。
また、電流狭窄層17を形成するためのAlN層17Aを成長させるのに好ましい温度は、電流狭窄層17(AlN層17A)の組成によっても異なる。電流狭窄層17が、AlYGa1−YN(0<Y≦1)からなる場合、0<Y≦0.3では1000〜1100℃の温度範囲が好ましく、0.3≦Y≦0.7では1100〜1250℃の範囲、0.7≦Y≦1では1250〜1400℃の温度範囲が好ましい。
また、本実施形態のように、電流狭窄層17がAlNからなる場合、電流狭窄層17を形成するためのAlN層17aの成長温度は、発光層15の井戸層15bを成長させる温度の±100℃の範囲とすることが好ましい。
上記各小工程において、狭窄層用マスクパターン60を用いて形成された電流狭窄層17の上面17a、及びp型電子ブロック層10上において貫通部17bで露出した領域には、p型クラッド層16aが上述した方法によって形成される(図8(a)を参照)。これにより、本実施形態では、インナーストライプ構造の発光素子(レーザダイオード)を製造することができる。
<各電極を形成する工程>
本実施形態の製造方法では、上記工程によって得られたp型半導体層16上に正極18を積層するとともに、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに形成された露出領域14dに負極19を積層して各電極を形成する工程が備えられている。
本実施形態の製造方法では、上記工程によって得られたp型半導体層16上に正極18を積層するとともに、n型半導体層14のn型コンタクト層14aに形成された露出領域14dに負極19を積層して各電極を形成する工程が備えられている。
具体的には、まず、図8(a)に示すような基板11上にp型半導体層16までの各層が積層されたウェーハに対し、図8(b)に示すように、正極18を、p型半導体層16の表面16dを覆うようにして、従来公知の方法を用いて形成する。この際、正極18は、例えば、p型半導体層16の表面16d側から順に、Ti、Al、Auの各材料を、従来公知の方法で積層することによって形成することができる。
また、負極19を形成する際は、図8(b)に示すように、まず、基板11上に形成されたp型半導体層16、発光層15及びn型半導体層14の一部と、上述した正極18の一部を、ドライエッチング等の方法によって除去することにより、n型コンタクト層14aの露出領域14dを形成する。そして、この露出領域14d上に、例えば、露出領域14d表面側から順に、Ni、Al、Ti、及びAuの各材料を従来公知の方法で積層することにより、詳細な図示を省略する4層構造の負極19を形成することができる。
<発光素子の分割>
本実施形態の製造方法では、上記各工程によって得られたウェーハを、基板11の裏面を研削及びへき開によって端面を形成した後、例えば、500μm角の正方形に切断することにより、発光素子チップ(図1(a)、(b)に例示する発光素子1)とすることができる。
本実施形態の製造方法では、上記各工程によって得られたウェーハを、基板11の裏面を研削及びへき開によって端面を形成した後、例えば、500μm角の正方形に切断することにより、発光素子チップ(図1(a)、(b)に例示する発光素子1)とすることができる。
以上説明したような、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、エピタキシャル膜成長用の基板11上に形成されたバッファ層12上に炭素材料からなるELO用マスクパターン50を形成するパターン形成工程と、ELO用マスクパターン50を用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有する下地層13を形成するELO成長工程と、下地層13上に、III族窒化物半導体からなるn型コンタクト層14a、n型クラッド層14b、発光層15及びp型半導体層16を順次積層する半導体層形成工程とを備えているので、下地層13を結晶性の高い層として効率良く形成することができるとともに、その上に、結晶性に優れたIII族窒化物半導体からなる各層を形成することできるので、発光特性に優れたIII族窒化物半導体発光素子1を製造することが可能となる。
本実施形態の製造方法によれば、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を用いて下地層13を形成するので、結晶組成にAlを有している場合でもELO用マスクパターン50上に結晶が成長しない。これにより、当該ELO用マスクパターン50上には下地層13が横方向に結晶成長(ラテラル成長)し、下地層13の表面13fには結晶転位密度が低い領域Sが形成される。従って、結晶性に優れた下地層13を形成することができ、その上に形成するIII族窒化物半導体からなる各層を、結晶性に優れた層として形成することが可能となる。
本実施形態の製造方法によれば、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を用いて下地層13を形成するので、結晶組成にAlを有している場合でもELO用マスクパターン50上に結晶が成長しない。これにより、当該ELO用マスクパターン50上には下地層13が横方向に結晶成長(ラテラル成長)し、下地層13の表面13fには結晶転位密度が低い領域Sが形成される。従って、結晶性に優れた下地層13を形成することができ、その上に形成するIII族窒化物半導体からなる各層を、結晶性に優れた層として形成することが可能となる。
また、本実施形態の製造方法によれば、半導体層形成工程において、p型電子ブロック層10を形成した後に、該p型電子ブロック層10上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターン60を形成する小工程と、次いで、狭窄層用マスクパターン60を用いてp型電子ブロック層10上に電流狭窄層17を形成する小工程とを含む方法としているので、インナーストライプ構造のレーザダイオード(発光素子)を効率良く形成することができる。
なお、本実施形態の製造方法では、下地層13を、炭素材料からなるELO用マスクパターン50を用いてバッファ層12上に形成する例を説明しているが、例えば、バッファ層12を省略し、基板11上に直接ELO用マスクパターン50を形成し、このELO用マスクパターン50を用いて下地層13を成長させる方法としても良い。
また、本実施形態の製造方法では、バッファ層12と下地層13との間にELO用マスクパターン50を残存させている例を説明しているが、上述したように、成膜条件等を変更することにより、ELO用マスクパターン50を残存させずにp型半導体層16を形成することも可能である。
また、本実施形態の製造方法では、バッファ層12と下地層13との間にELO用マスクパターン50を残存させている例を説明しているが、上述したように、成膜条件等を変更することにより、ELO用マスクパターン50を残存させずにp型半導体層16を形成することも可能である。
以下に、本発明のIII族窒化物半導体発光素子及びその製造方法を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
図1(a)、(b)に、本実験例で作製したIII族窒化物半導体発光素子の断面模式図を示す。本例では、以下に示すような方法により、図2に示すような構造を有するAlNエピタキシャル基板を作製し、その上に、III族窒化物半導体からなる各層を形成した。
図1(a)、(b)に、本実験例で作製したIII族窒化物半導体発光素子の断面模式図を示す。本例では、以下に示すような方法により、図2に示すような構造を有するAlNエピタキシャル基板を作製し、その上に、III族窒化物半導体からなる各層を形成した。
{バッファ層(III族窒化物層)の形成)
まず、サファイアからなる基板上に、III族窒化物としてAlNを用いてバッファ層を成膜した。バッファ層の成膜には、高温MOCVD装置を用いた。具体的には、基板をモリブデンサセプタに載置し、ロードロック室を介してステンレス鋼を用いた水冷反応炉内に基板をセットした。そして、窒素ガスを流通させて炉内をパージした。
まず、サファイアからなる基板上に、III族窒化物としてAlNを用いてバッファ層を成膜した。バッファ層の成膜には、高温MOCVD装置を用いた。具体的には、基板をモリブデンサセプタに載置し、ロードロック室を介してステンレス鋼を用いた水冷反応炉内に基板をセットした。そして、窒素ガスを流通させて炉内をパージした。
次に、MOCVD炉内の流通ガスを水素に変更した後、炉内を30torrの圧力に維持した。そして、抵抗加熱ヒータを動作させて、基板の温度を室温から1400℃に15分間の時間をかけて昇温させた。次に、基板の温度を1400℃に保ったまま、水素ガスを5分間流通させて、基板の表面をサーマルクリーニングした。
次に、基板の温度を1300℃に降温し、この1300℃で温度が安定したことを確認した。その後、トリメチルアルミニウム(TMA)の蒸気、及びアンモニア(NH3)ガスを、V/III比が500になるように、キャリアガスである水素ガスとともに気相成長反応炉内に供給し、AlN膜を10分間成長させた。その後、アンモニア(NH3)ガスとトリメチルアルミニウム(TMA)とを、V/III比が100になるように調整し、さらに、AlN膜を40分間成長させた。このAlN膜の成長中は、エピタキシャル層の反射率とサセプタ温度を観察装置で確認し、温度をモニターした。また、モニターした反射率より、AlN層の膜厚がトータル2μmに達したことを確認した。
最後に、トリメチルアルミニウム(TMA)の供給を停止して300℃まで降温し、アンモニアの供給も停止した後、さらに室温まで降温した。そして、気相成長反応炉内を窒素に置換し、ロードロック室を介して、AlNからなるバッファ層が形成されたウェーハを取り出した。
{パターン形成工程}
次に、基板上に形成したAlNからなるバッファ層の表面に、カーボン(炭素材料)からなるELO用マスクパターンを形成した。この際、カーボンの成膜にはスパッタ装置を用いた。具体的には、基板上のバッファ層の表面全体に、下記に示す成膜条件で、カーボン膜(炭素膜)をスパッタで形成した。次いで、フォトリソグラフィーにより、カーボン膜上に数μm間隔のストライプ状のレジストパターンを形成した。そして、このウェーハに酸素アッシングを施すことにより、カーボン膜が露出した部分を酸化除去した。その後、レジストパターンを除去することにより、バッファ層上にカーボン膜ストライプ構造からなるELO用マスクパターンを形成した。
次に、基板上に形成したAlNからなるバッファ層の表面に、カーボン(炭素材料)からなるELO用マスクパターンを形成した。この際、カーボンの成膜にはスパッタ装置を用いた。具体的には、基板上のバッファ層の表面全体に、下記に示す成膜条件で、カーボン膜(炭素膜)をスパッタで形成した。次いで、フォトリソグラフィーにより、カーボン膜上に数μm間隔のストライプ状のレジストパターンを形成した。そして、このウェーハに酸素アッシングを施すことにより、カーボン膜が露出した部分を酸化除去した。その後、レジストパターンを除去することにより、バッファ層上にカーボン膜ストライプ構造からなるELO用マスクパターンを形成した。
「スパッタ条件」
ターゲット:高純度グラファイト
成膜温度 :室温
成膜速度 :40〜50nm/hr
膜厚 :200nm
ターゲット:高純度グラファイト
成膜温度 :室温
成膜速度 :40〜50nm/hr
膜厚 :200nm
{ELO成長工程}
次いで、ELO用マスクパターンが形成されたウェーハ上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる下地層(ELO成長層)として、AlN膜を成膜した。このAlN膜の成膜には、上記バッファ層と同様、高温MOCVD装置を用いた。具体的には、ELO用マスクパターンが形成された基板をモリブデンサセプタに載置し、ロードロック室を介して、ステンレス鋼を用いた水冷反応炉内に基板をセットした。その後、窒素ガスを流通させることにより炉内をパージした。
次いで、ELO用マスクパターンが形成されたウェーハ上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる下地層(ELO成長層)として、AlN膜を成膜した。このAlN膜の成膜には、上記バッファ層と同様、高温MOCVD装置を用いた。具体的には、ELO用マスクパターンが形成された基板をモリブデンサセプタに載置し、ロードロック室を介して、ステンレス鋼を用いた水冷反応炉内に基板をセットした。その後、窒素ガスを流通させることにより炉内をパージした。
次に、MOCVD炉内の流通ガスを水素に変更した後、反応炉内を30torrの圧力に維持した。そして、抵抗加熱ヒータを動作させ、基板の温度を室温から1400℃に15分間かけて昇温させた。次に、基板の温度を1400℃に保ったまま、水素ガスを5分間流通させて、基板の表面、つまりELO用マスクパターンが形成されたバッファ層上をサーマルクリーニングした。
次に、基板の温度を1300℃に降温し、この1300℃で温度が安定したことを確認した後、アンモニアガスとトリメチルアルミニウムとを同時に気相成長反応炉へ供給してAlNの成膜を開始した。この際、アンモニアガスとトリメチルアルミニウムとのV/III比が100となるように予め調整した。このような手順により、約10μmのAlN膜を3〜4時間かけて成長させた。
次に、トリメチルアルミニウム(TMA)の供給を停止して300℃まで降温し、アンモニアの供給も停止した後、さらに室温まで降温した。そして、気相成長反応炉内を窒素に置換し、再度、ロードロック室を介してサセプタに載置したウェーハを取り出した。
このような各手順により、垂直方向への貫通転位が抑制され、結晶性に優れたAlNエピタキシャル基板を製造することができた。
そして、得られたウェーハの断面構造を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察したところ、図9(a)、(b)の写真図に示すように、基板200上に成膜されたAlNからなるバッファ層201及びその上に成膜されたAlNからなる下地層202が、共に良好な結晶性を有していることが明らかとなった。また、本例で作製したウェーハは、図9(a)、(b)に示すように、上記バッファ層201と下地層202の間に、カーボンからなるELO用マスクパターン203が僅かに残存していることがわかる。なお、図9(b)に示す顕微鏡写真図は、図9(a)の部分拡大図である。
そして、得られたウェーハの断面構造を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察したところ、図9(a)、(b)の写真図に示すように、基板200上に成膜されたAlNからなるバッファ層201及びその上に成膜されたAlNからなる下地層202が、共に良好な結晶性を有していることが明らかとなった。また、本例で作製したウェーハは、図9(a)、(b)に示すように、上記バッファ層201と下地層202の間に、カーボンからなるELO用マスクパターン203が僅かに残存していることがわかる。なお、図9(b)に示す顕微鏡写真図は、図9(a)の部分拡大図である。
[実施例2]
本例では、上記実施例1で作製したウェーハの下地層上に、以下の手順で、n型コンタクト層、n型クラッド層、発光層及びp型半導体層を形成し、さらに、正極及び負極を形成することにより、発光素子を作製した。また、本例で作製する発光素子においては、発光層とp型半導体層との間に電流狭窄層を形成することにより、インナーストライプ構造を有するレーザダイオードとした。
本例では、上記実施例1で作製したウェーハの下地層上に、以下の手順で、n型コンタクト層、n型クラッド層、発光層及びp型半導体層を形成し、さらに、正極及び負極を形成することにより、発光素子を作製した。また、本例で作製する発光素子においては、発光層とp型半導体層との間に電流狭窄層を形成することにより、インナーストライプ構造を有するレーザダイオードとした。
『半導体層形成工程』
「n型コンタクト層及びn型クラッド層の形成」
まず、実施例1において基板上に形成した下地層の上に、従来公知のMOCVD装置を用いてAl0.25Ga0.75Nからなるn型コンタクト層を形成した。このAl0.25Ga0.75Nからなるn型コンタクト層は、n型クラッド層としても機能するものである。また、n型コンタクト層にはテトラメチルシラン(TMSi)を原料としてSiをドープし、約2μmの膜厚で成膜した。
「n型コンタクト層及びn型クラッド層の形成」
まず、実施例1において基板上に形成した下地層の上に、従来公知のMOCVD装置を用いてAl0.25Ga0.75Nからなるn型コンタクト層を形成した。このAl0.25Ga0.75Nからなるn型コンタクト層は、n型クラッド層としても機能するものである。また、n型コンタクト層にはテトラメチルシラン(TMSi)を原料としてSiをドープし、約2μmの膜厚で成膜した。
『n型電子閉じ込め層を形成する工程』
次に、本実施例においては、上記n型コンタクト層(n型クラッド層)上に、同じMOCVD装置を用いてn型電子閉じ込め層を形成した。この際、AlGaNのAlNモル分率が18%になるように、原料のTMAとトリメチルガリウム(TMG)の流通量を調整し、膜厚が100nmのn型電子閉じ込め層を形成した。
次に、本実施例においては、上記n型コンタクト層(n型クラッド層)上に、同じMOCVD装置を用いてn型電子閉じ込め層を形成した。この際、AlGaNのAlNモル分率が18%になるように、原料のTMAとトリメチルガリウム(TMG)の流通量を調整し、膜厚が100nmのn型電子閉じ込め層を形成した。
「発光層の形成」
次いで、膜厚が8nmで4層のAlGaN(AlNモル分率12%)障壁層と、膜厚が3nmで3層のGaN井戸層とからなる、多重量子井戸構造を有する発光層を積層した。
この発光層の形成にあたっては、まず、n型クラッド層上に障壁層を形成し、この障壁層上に井戸層を形成した。そして、このような積層手順を3回繰り返した後、3番目に積層した井戸層上に、4番目の障壁層を形成した。この、最後の障壁層は、基板温度を1050℃とした後、AlGaN(AlNモル分率35%)を10nmの膜厚で積層することにより形成し、また、エチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を原料として、Mgをドーピングした。本例では、上記手順により、多重量子井戸構造を有する発光層の両側に障壁層を配した構造とした。
そして、発光層の上に、p型電子ブロック層を20nmの膜厚で積層した。
次いで、膜厚が8nmで4層のAlGaN(AlNモル分率12%)障壁層と、膜厚が3nmで3層のGaN井戸層とからなる、多重量子井戸構造を有する発光層を積層した。
この発光層の形成にあたっては、まず、n型クラッド層上に障壁層を形成し、この障壁層上に井戸層を形成した。そして、このような積層手順を3回繰り返した後、3番目に積層した井戸層上に、4番目の障壁層を形成した。この、最後の障壁層は、基板温度を1050℃とした後、AlGaN(AlNモル分率35%)を10nmの膜厚で積層することにより形成し、また、エチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を原料として、Mgをドーピングした。本例では、上記手順により、多重量子井戸構造を有する発光層の両側に障壁層を配した構造とした。
そして、発光層の上に、p型電子ブロック層を20nmの膜厚で積層した。
「狭窄層用マスクパターンの形成」
次いで、p型電子ブロック層の表面に、カーボン(炭素材料)からなる狭窄層用マスクパターンを形成した。この際、カーボンの成膜にはスパッタ装置を用い、膜厚を100nmとした点を除き、上述したELO用マスクパターンと同様の条件及び手順を用いて、p型電子ブロック層の表面全体に形成した。そして、上述したELO用マスクパターンと同様のフォトリソグラフィー法により、カーボン膜を3μm幅のストライプ状に形成した。
次いで、p型電子ブロック層の表面に、カーボン(炭素材料)からなる狭窄層用マスクパターンを形成した。この際、カーボンの成膜にはスパッタ装置を用い、膜厚を100nmとした点を除き、上述したELO用マスクパターンと同様の条件及び手順を用いて、p型電子ブロック層の表面全体に形成した。そして、上述したELO用マスクパターンと同様のフォトリソグラフィー法により、カーボン膜を3μm幅のストライプ状に形成した。
「電流狭窄層の形成」
次いで、狭窄層用マスクパターンが形成されたp型電子ブロック層上に、AlNからなる電流狭窄層を形成した。具体的には、AlNを、p型電子ブロック層上において狭窄層用マスクパターンが形成されていない領域に、狭窄層用マスクパターンより低い高さとして形成した後、狭窄層用マスクパターンをアッシング等の方法で除去することにより、貫通部を有する形状にパターン形成された電流狭窄層を得た。
次いで、狭窄層用マスクパターンが形成されたp型電子ブロック層上に、AlNからなる電流狭窄層を形成した。具体的には、AlNを、p型電子ブロック層上において狭窄層用マスクパターンが形成されていない領域に、狭窄層用マスクパターンより低い高さとして形成した後、狭窄層用マスクパターンをアッシング等の方法で除去することにより、貫通部を有する形状にパターン形成された電流狭窄層を得た。
「p型半導体層の形成」
次いで、電流狭窄層及び該電流狭窄層に設けられた貫通部から露出するp型電子ブロック層の上に、MgをドーピングしたAlGaN(AlNモル分率25%)からなるp型クラッド層を0.5μmの膜厚で積層し、この上に、MgをドーピングしたGaNからなるn型コンタクト層を50nmの膜厚で積層することにより、p型半導体層を形成した。
次いで、電流狭窄層及び該電流狭窄層に設けられた貫通部から露出するp型電子ブロック層の上に、MgをドーピングしたAlGaN(AlNモル分率25%)からなるp型クラッド層を0.5μmの膜厚で積層し、この上に、MgをドーピングしたGaNからなるn型コンタクト層を50nmの膜厚で積層することにより、p型半導体層を形成した。
上記各工程による各層の成膜終了後、炉内温度を室温まで降温し、ロードロック室を介してエピタキシャルウェーハを取り出した。
『電極の形成』
次いで、上記エピタキシャルウェーハを用いて、図1(a)、(b)に例示するレーザダイオード(発光素子)を作製した。
すなわち、上記エピタキシャルウェーハのp型半導体層の表面に、ニッケル(Ni)/金(Au)を順に積層して蒸着及びアロイ処理を行なうことにより、オーミックコンタクト層である正極を形成し、p側電極とした。
さらに、エピタキシャルウェーハに対してドライエッチングを施し、n型コンタクト層のn側電極(負極)を形成する領域を露出させ、この露出領域に、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/チタン(Ti)/金(Au)の4層が順に積層されてなる負極(n側電極)を形成した。
次いで、上記エピタキシャルウェーハを用いて、図1(a)、(b)に例示するレーザダイオード(発光素子)を作製した。
すなわち、上記エピタキシャルウェーハのp型半導体層の表面に、ニッケル(Ni)/金(Au)を順に積層して蒸着及びアロイ処理を行なうことにより、オーミックコンタクト層である正極を形成し、p側電極とした。
さらに、エピタキシャルウェーハに対してドライエッチングを施し、n型コンタクト層のn側電極(負極)を形成する領域を露出させ、この露出領域に、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/チタン(Ti)/金(Au)の4層が順に積層されてなる負極(n側電極)を形成した。
次いで、各電極が形成されたウェーハについて、基板の裏面を研削及びへき開によって端面を形成した後、ウェーハを500μm角の正方形のチップに切断して分割することにより、図1(a)、(b)に示すような、インナーストライプ構造を有するレーザダイオード(発光素子)を作製した。
『発光特性の測定』
次いで、上述の手順で得られたレーザダイオードについて、正極(p側)及び負極(n側)の電極間に順方向電流を流したところ、電流100mAにおける順方向電圧は5.8Vであった。また、p側の正極を通して発光状態を観察したところ、発光波長は358nmであり、発光出力は1mWであった。
次いで、上述の手順で得られたレーザダイオードについて、正極(p側)及び負極(n側)の電極間に順方向電流を流したところ、電流100mAにおける順方向電圧は5.8Vであった。また、p側の正極を通して発光状態を観察したところ、発光波長は358nmであり、発光出力は1mWであった。
以上の結果により、本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子が、結晶性に優れており、また、内部抵抗が低減され、優れた発光特性を有することが明らかである。
1…III族窒化物半導体発光素子(発光素子)、11…基板、12…バッファ層(III族窒化物層)、12a…表面(バッファ層)、17…電流狭窄層、17a…上面(電流狭窄層)、17A…AlN層(電流狭窄層)、14…n型半導体層、13…下地層(ELO成長層)13A…AlxGa1−xN(0<x≦1)からなる組成の結晶、13f…表面(下地層)、15…発光層、16…p型半導体層、20…半導体層、50…ELO用マスクパターン、60…狭窄層用マスクパターン、50A、60A…炭素膜、L…会合線、R…領域(バッファ層上においてELO用マスクパターンが形成されていない領域)、S…領域(結晶転位密度が低い領域)、T…領域(p型電子ブロック層上において電流狭窄層が形成されていない領域)
Claims (13)
- エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、AlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層が形成され、
前記ELO層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層が順次積層されており、
前記ELO成長層は、前記基板又は前記III族窒化物層上に形成された炭素材料からなるELO用マスクパターンを用いて形成されたものであることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。 - 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
- 前記ELO用マスクパターンが前記基板上又は前記III族窒化物層と前記ELO成長層との間に残存していないことを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
- 前記発光層と前記p型半導体層との間の少なくとも一部に電流狭窄層が備えられることにより、インナーストライプ構造とされてなることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
- 前記電流狭窄層が、前記発光層上に形成された炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
- 前記電流狭窄層がAlNからなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
- エピタキシャル膜成長用の基板上又は該基板上に形成されたIII族窒化物層上に、炭素材料からなるELO用マスクパターンを形成するパターン形成工程と、
前記ELO用マスクパターンを用いてAlXGa1−XN(0<X≦1)からなる組成を有するELO成長層を形成するELO成長工程と、
前記ELO成長層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層を順次積層する半導体層形成工程と、を備えることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。 - 前記ELO用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする請求項7に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 前記半導体層形成工程は、さらに、前記発光層を形成した後、該発光層上に炭素材料からなる狭窄層用マスクパターンを形成する小工程と、
次いで、前記狭窄層用マスクパターンを用いて、前記発光層上に電流狭窄層を形成する小工程とを含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。 - 前記狭窄層用マスクパターンをなす炭素材料が、黒鉛、アモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンの内の何れかであることを特徴とする請求項9に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 前記半導体層形成工程は、前記電流狭窄層を、AlYGa1−YN(0<Y≦1)からなる組成として、1000〜1400℃の範囲の温度で形成することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 請求項7〜請求項11の何れか1項に記載の製造方法によって得られるIII族窒化物半導体発光素子。
- 請求項1〜請求項6又は請求項12の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子の素子構造が用いられてなるレーザダイオード。
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