JP2010229804A - 硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法及び防火コート剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリイソシアネート成分とポリオール成分を構造体表面に吹き付け発泡させて該構造体表面に硬質ポリウレタンフォームの断熱層を形成させる硬質ポリウレタンフォームの現場発泡工法において、該断熱層表面に、珪酸塩水溶液と、該珪酸塩水溶液の固形分100重量部に対し0.1〜10重量部の界面活性剤と1〜70重量部の粘土鉱物系増粘剤とを含有する防火コート剤を付着させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの断熱層の現場発泡工法。
【選択図】なし
Description
本発明において、防火コート層を形成する被コート面となる硬質ポリウレタンフォーム断熱層は、現場発泡で成形されるものであり、その硬質ポリウレタンフォーム自体には特に制限はないが、通常の硬質ポリウレタンフォームは一度着火すると炎が伝播し易いという性質があり、特に建設現場での施工中の火災が問題となるので、難燃性能の高いイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームが好ましい。
<珪酸塩水溶液>
本発明で使用される珪酸塩水溶液は、塗布、乾燥によって塗膜を形成し加熱しなくても空気中で硬化するものであり、水に溶解可能なものであればいずれも使用できる。また、水に完全に溶解しなくても分散系で安定化しているもの、後述の塗布の前に、容易に再分散し使用時に分離しないものであれば使用できる。また、珪酸塩水溶液は複数の珪酸塩を含んでいてもよい。具体的には珪酸のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩の水溶液が好ましい。珪酸のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム等の塩、天然物の珪酸塩白土等、或いはアルキルシリケート類は水に難溶又は不溶であるが、支障のない範囲では使用可能である。珪酸塩水溶液の中では、工業的に汎用で安価に得られる水ガラスが特に好ましい。
二酸化珪素の含有量は通常、JIS K1408に記載されている蒸発乾固法により求められ、酸化ナトリウムの含有量も通常、JIS K1408に記載されている中和滴定法により求められ、これらを合計したものを水ガラスの固形分とする。水ガラスには微量の不純物が含まれるが、固形分の算出に影響はない。また、二酸化珪素、酸化ナトリウム及び微量の不純物を含んだ形で簡易に二酸化珪素と酸化ナトリウムの合計の含有量を測定する場合は、600〜1000℃で1時間以内程度加熱する強熱減量法を用いることもできる。
界面活性剤は液状、ワックス状、固体、粉体、水溶液、2種類以上の混合物等、いかなる形態のものでもかまわないが、少なくとも1種類のアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。即ち、アニオン性界面活性剤は珪酸塩水溶液への相溶性が良く、配合液の安定性の点で好ましい。
界面活性剤の不揮発分は、水や溶剤の揮発性成分を除いた部分であり、界面活性剤として働く有効な成分とみなす。有効成分はJIS K5601−1−2等の測定方法に準じて測定することができる。また、有効成分が100%のものを水や溶剤で希釈する場合は、計算値を用いてもよい。
粘土鉱物系増粘剤としては、水の存在下で構造粘性を発現する珪酸塩鉱物が挙げられる。具体例としては、層状珪酸塩鉱物、リボン状ないし繊維状珪酸塩鉱物、その他の珪酸塩鉱物が挙げられる。
また、リボン状ないし繊維状の構造を有する珪酸塩鉱物としては、セピオライト、カーロスターナイト、ワラストナイト、アタパルジャイト等が挙げられる。
粘土鉱物系増粘剤としては、その他、ゼオライト等、公知の珪酸塩鉱物を使用することができる。
これらの粘土鉱物系増粘剤は単独で使用することができるが、併用してもかまわない。
また、本発明の防火コート剤の主成分として好ましい珪酸塩水溶液である水ガラスは、pHが約11〜13の強アルカリ性であることから、粘土鉱物系増粘剤としてはこのような強アルカリ環境下でも安定かつ増粘効果の大きいものを選ぶことが好ましい。このような要求特性を満たすベントナイト系増粘剤として例えば、ロックウッドアディティブズ社のOPTIGELが好適なものとして挙げられる。
本発明においては、珪酸塩水溶液が乾燥して塗膜の形成に際し、硬化収縮や割れの防止等の目的で、必要に応じて造膜助剤を使用することができる。造膜助剤はまた、粘土鉱物系増粘剤との併用で粘度増加に対し優れた相乗効果を示し、防火コート剤の硬質ポリウレタンフォーム断熱層への付着性を高める。
本発明の防火コート剤は、適用対象面に付着すると、水分の蒸発により塗膜が乾燥し、空気中の炭酸ガスの作用により硬化し、珪酸塩の連続した塗膜を形成した後、更に珪酸官能基の間で架橋反応が進行することにより防火コート層を形成するものであり、特に硬化剤、硬化促進剤の配合は不要であるが、必要に応じ、作業性に支障のない範囲でこれらを配合してもかまわない。また、着色剤、無機フィラー、難燃剤、接着付与剤、その他の助剤を配合してもかまわない。
ただし、本発明の防火コート剤がこのような粘土鉱物系増粘剤以外の増粘剤を含む場合、前述の粘土鉱物系増粘剤を用いることによる本発明の効果を有効に得るために、本発明の防火コート剤中の粘土鉱物系増粘剤以外の増粘剤の含有量は、防火コート剤中の粘土鉱物系増粘剤の重量に対して、20重量%以下、特に10重量%以下とし、防火コート剤中の全増粘剤の含有量が珪酸塩水溶液の固形分100重量部に対して1〜70重量部程度となるようにすることが好ましい。
本発明の防火コート剤は、必要成分の所定量を混合することにより容易に調製することができる。
本発明の防火コート剤の硬質ポリウレタンフォーム断熱層表面への付着方法は、刷毛塗り、コテ塗り、ヘラ塗り、ロール塗り、スプレー塗布等、いかなる方法でもかまわないが、スプレー装置を使用して塗布することが好ましい。例えば、現場にて圧力空気、圧力ホース、エアーガンを用意すれば、前述の如く防火コート剤を現場で調合する必要なく、その場で簡単に塗布が可能であり、作業効率的にも優れている。
本発明の防火コート剤は有機物表面に対する濡れ性、付着性が良好であり、被塗布材は各種樹脂成型品、壁材、木材、その他、各種無機材料等への防火コート層の形成にも有効であるが、それらの中でも特に硬質ポリウレタンフォームの現場発泡における防火コート剤として好適に使用される。
水ガラス及び界面活性剤の固形分はメーカー分析値を採用し、防火コート剤の固形分は各原料の固形分から計算した。ここでは、増粘剤の固形分は100重量%、造膜助剤としての多価アルコールは常温乾燥を想定して固形分100重量%として扱った。
JIS K5600−2−3塗料一般試験方法のコーンプレート粘度計法に準じて、EM型回転粘度計(東機産業社製)で25℃での粘度を測定した。
スプレーブース内で900×1800mm、厚さ6mmのスレート板を垂直に立て、スプレー装置(ガスマー社製H−20)を使用して、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分の吐出圧力を7MPaに設定し、液比をポリイソシアネート成分:ポリオール成分=1:1容積比としてイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームを吹き重ねて、平均厚さ約30mmの断熱層を設けた。この時の組成は、ポリイソシアネート成分としてコロネート1156(日本ポリウレタン工業社製)171重量部に対し、ポリオール成分として、水酸基価700mgKOH/gのマンニッヒ変性ポリエーテルポリオール(第一工業製薬社製)30重量部、水酸基価295mgKOH/gのm,p−フタル酸系ポリエステルポリオール(東邦理化社製)20重量部、水酸基価250mgKOH/gのp−フタル酸系ポリエステルポリオール(東邦理化社製)50重量部、難燃剤トリスモノクロロプロピルホスフェート(大八化学工業社製)20重量部、シリコーン整泡剤L−5420(東レ・ダウコーニング社製)1重量部、発泡剤としてHFC245fa(セントラル硝子社製)20重量部、HFC365mfc(日本ソルベイ社製)22重量部、水0.5重量部、触媒としてトリエチレンジアミン33重量%溶液(花王社製)1.0重量部、ペンタメチルジエチレントリアミン(花王社製)0.3重量部、オクチル酸カリウム溶液(日本化学産業社製)5.0重量部、オクチル酸鉛溶液(日本化学産業社製)1.0重量部を混合液としたものを使用した。フォーム密度はコア部分で30Kg/m3であった。この吹き付け板をバンドソーで約450×450mmに切断して防火コート剤塗布評価用の試験片とした。
乾燥前の硬質ポリウレタンフォーム断熱層表面への防火コート剤の付着量は、前記試験片のスプレー塗布直後の重量測定から求めた。乾燥後の付着量は、23℃,60%RHで2日乾燥した後の重量測定から求めた。
前述の方法で、試験片作成時に70×150×厚さ0.5mmのSPCC鋼板をダミーとして防火コート剤を同様にスプレー塗布し、23℃,60%RHで2日乾燥後の付着量と厚さから試験片表面に形成された防火コート層の平均厚さを見積もった。
塗布性は以下の基準で評価した。
なお、塗膜状態は、防火コート剤塗布後23℃,60%RH乾燥2週間後の塗膜の状態である。
(濡れ性)
○:良好
△:ややハジキあり
×:ハジキが多い
(付着性)
○:良好
△:ややタレあり
×:タレが多い
(塗膜状態)
○:良好
△:一部剥離、脱落
×:剥離、脱落が多い
前記のイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォームを吹き付けた試験片から100×100mmの試料を切り出して、この試料について、コーンカロリーメーターIII(東洋精機社製)を利用し防火コート剤を塗布したポリウレタンフォーム表面側から50KW/m2の輻射熱を10分間当てて表面部分の着火と燃焼の状態を調べ、以下の評価基準で評価した。
(耐火性)
○:60秒を超えて瞬間的に着火はするが直ぐに消え、燃焼は続かない
△:10〜60秒の間で着火し燃焼し続ける
×:10秒以内に着火し炎上する
水ガラスとして、1号珪酸ソーダ(固形分44.4重量%、富士化学社製)200重量部、3号珪酸ソーダ(固形分38.4重量%、富士化学社製)400重量部の混合物を調製し、これに界面活性剤としてハイテノール325L(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムの26重量%水溶液、第一工業製薬社製)1.0重量部を混合、溶解した後、増粘剤としてOPTIGEL WX(変性ベントナイト、ロックウッドアディティブズ社製)60重量部を加え、撹拌、分散して本発明の防火コート剤を得た。粘度は7日後にほぼ安定し420mPa・s/25℃であった。
耐火性評価の結果、加熱開始から防火コート剤の発泡がみられ、硬質ポリウレタンフォーム表面からの瞬間的な着火はあったが直ぐに消え、その後燃焼は認められなかった。
増粘剤を加える前に造膜助剤としてエチレングリコール又はグリセリンを混合、溶解する以外は実施例1と同様の方法で防火コート剤を調製し、吹き付け評価を行った。
耐火性評価の結果、夫々、防火コート剤の発泡がみられ、硬質ポリウレタンフォーム表面からの瞬間的な着火はあったが直ぐに消え、連続した燃焼は認められず、実施例1と合わせ、本発明の防火コート剤の有効性が確認できた。
比較例1は防火コート剤を塗布せず、比較例2〜5は実施例1と同様の方法で防火コート剤を調製し、吹き付け評価を行った。防火コート剤の組成、粘度及び評価結果を表2に示す。
水ガラスのみで防火コート層を形成した比較例2では、水ガラスの硬質ポリウレタンフォームに対する濡れ性、付着性が悪いために良好な防火コート層を形成し得ず、耐火性が十分でない。
また、水ガラスに界面活性剤と粘土鉱物系増粘剤の一方のみを配合した比較例3,4でも十分な濡れ性、付着性が両立せず、その結果、耐火性の改善効果は十分ではない。
実施例1〜4で防火コート剤を塗布して得られた試験片に対して、下記の方法で溶断火玉試験を行い、それぞれ実施例5〜8として評価した。
その結果を表3に示す。
実施例5〜8では、いずれも火玉との接触により試験片表面からの瞬間的な着火はあったが、防火コート層の発泡とともに直ぐに消え、その後燃焼は認められなかった。また、火玉は試験片表面に突き刺さった状態で止まり、冷えて固まった。
試験片を、防火コート剤塗布面(ただし、後述の比較例6においては、ポリウレタンフォーム面)を上にして、板面が水平となるように置き、上方50cmの高さから、SS400軟質鋼材をアセチレンバーナーで溶断して、約1000℃の溶融した火玉を、防火コート剤塗布面(ただし、後述の比較例6においては、ポリウレタンフォーム面)に落下させ、着火と燃焼の状態を調べた。火玉防火性の評価は、大きさが平均径約10mmの火玉について行い、以下の評価基準で評価した。
(火玉防火性)
○:瞬間的に着火はするが直ぐに消火し、火玉は表面部分で止まっている
△:着火し、火玉はポリウレタンフォーム層中間までもぐり込み短時間燃焼する
×:着火し、火玉はポリウレタンフォーム層を貫通し燃焼を続ける
比較例1の防火コート剤を塗布していない試験片、及び比較例2〜4で防止コート剤を塗布して得られた試験片を用いて、実施例5〜8と同様にして溶断火玉試験を行い、それぞれ比較例6〜9として評価した。
その結果を表4に示すが、防火コート剤を形成しなかった比較例6、水ガラスのみを用いた比較例7、及び水ガラスに界面活性剤のみを配合した比較例8では、火玉との接触で着火、燃焼し、火玉がポリウレタンフォーム層を貫通して燃焼を続けた。
また、水ガラスに増粘剤のみを配合し、塗膜にハジキのある比較例9では、火玉との接触により着火し、火玉がポリウレタンフォーム層の中間までもぐり込んで短時間燃焼した。
増粘剤を加える前に増膜助剤としてエチレングリコールを混合、溶解し、増粘剤としてOPTIGEL WXの代わりにOPTIGEL CK(精製ベントナイト、ロックウッドアディティブズ社製)或いはこれと共にPANGEL AD(セピオライト、楠本化成社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法で防火コート剤を調製し、同様の方法で吹き付け評価を行うと共に、実施例5〜8と同様の方法で溶断火玉試験を行った。各防火コート剤の組成及び粘度(7日後)と評価結果を表5に合わせて示す。
火玉防火性においては、いずれも火玉との接触により試験片表面からの瞬間的な着火はあったが、防火コート剤の発泡とともに直ぐに消え、その後燃焼は認められなかった。また、火玉は試験片表面に突き刺さった状態で止まり、冷えて固まった。
Claims (7)
- ポリイソシアネート成分とポリオール成分を構造体表面に吹き付け発泡させて該構造体表面に硬質ポリウレタンフォームの断熱層を形成させる硬質ポリウレタンフォームの現場発泡工法において、該断熱層表面に、珪酸塩水溶液と、珪酸塩水溶液の固形分100重量部に対し0.1〜10重量部の界面活性剤と1〜70重量部の粘土鉱物系増粘剤とを含有する防火コート剤を付着させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法。
- 該珪酸塩水溶液が、水ガラスである請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法。
- 該界面活性剤が、少なくとも1種類のアニオン性界面活性剤を含有する請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法。
- 該粘土鉱物系増粘剤が、ベントナイト系増粘剤である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法。
- 該防火コート剤が、珪酸塩水溶液の固形分100重量部に対し、更に造膜助剤として分子量300以下の多価アルコール類を1〜40重量部含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム断熱層の現場発泡工法に用いられる防火コート剤。
- 珪酸塩水溶液と、珪酸塩水溶液の固形分100重量部に対して0.1〜10重量部の界面活性剤と1〜70重量部の粘土鉱物系増粘剤とを含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム断熱層用防火コート剤。
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