JP2014226632A - 防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法及びこれを塗布した防燃体 - Google Patents

防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法及びこれを塗布した防燃体 Download PDF

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Abstract

【課題】 有機バインダーを含有する塗料と比較して耐熱性が高く、サイディングと遜色ない美装や施工の均一性が確保できる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を提供すること。
【解決手段】有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、薄片化した層状粘土鉱物の溶媒中分散体を前記固相被覆体の表面に付着させる工程(S100〜S106)と、層状粘土鉱物の付着した固相被覆体の表面に常温硬化性ガラスを塗布して粘土鉱物粒子間の空隙をガラスで結合した複合体を形成して被覆する工程(S108、S110)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、炎を発生して燃焼する木材、紙、布、天然樹脂又は合成樹脂等の有機物材料表面に塗布して好適な防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法に関し、特に防火性、防炎性、難燃性等の防燃性を向上させる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法に関する。
また、本発明は上記の防燃性コーティング剤を塗布して防火性、防炎性、難燃性等の防燃性を向上させた防燃体に関する。
木造日本住宅の構造部材である柱や梁は、可燃性であり火災時には炎上する。そのため、防火地域での木造住宅建築には法律上の制限がある。また、都市部に木造住宅が密集する地域では震災時の火災による甚大な被害が予想されており、これらの防燃性を向上させることも都市防災上の重要な課題である。これら木質構造部材の防燃性を向上させるコーティング材の開発が必要とされている。
日本住宅の外壁材としては、従来よりモルタル壁が使用されており、火災時に内部の木質構造部材をある程度保護する役割も果たしている。モルタルは、砂とセメントと水とを練り混ぜて作る建築材料で、ペースト状で施工性が良く、仕上材や目地材、躯体の調整などに多く用いられる。そして、例えば特許文献1では雲母片のような非透水性無機質扁平粒子を含む防水層を下地板の上に形成して、ラテックスセメント塗料を塗着する。次に、当該下地板の上にセメントモルタルを塗着硬化して、モルタル壁を得ている。
特許文献2では、難燃性クリヤー塗料として変性エポキシ樹脂等の有機バインダーに金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム)等を混合したものが開示されている。そして、300℃程度の高温であっても、水酸化物からの水分放出によって一定時間の難燃性維持は可能である。
特許文献3では、耐火性原料としてマイカを含み、耐火粘土によって500℃までの範囲で結晶水の脱離を生ずる建築用防火塗料が開示されている。
特開昭53−12125号公報 特開平8−239621号公報 特開2004−315772号公報
しかし、特許文献1の発明では、ラテックスセメント塗料を用いているので、ラテックスの有する可燃性のために、防燃性が充分でないという課題があった。また、ラテックスセメント塗料で生成した下地板の上にセメントモルタルを塗着硬化しているので、住宅用の外壁材として多用されているサイディングと比較して、美装や施工の均一性に劣るという課題がある。
特許文献2の発明では、有機バインダーを用いているが、有機バインダーを用いた塗料では、含有している水酸化物等が分解する際に吸熱しており、消炎効果のある物質(例えば水)が発散される間は耐火性を維持できるが、それが無くなると有機質なので炭化し最終的には燃焼して効果が失われる。そこで、有機バインダーの耐熱性には限界があり、防燃性が充分でないという課題がある。
さらに、特許文献3の発明では、1mm以上の塗膜を形成する厚塗りタイプのであり、被覆対象として木材を用いる場合には、木材特有の木目が見えなくなり質感が完全に失われるという課題がある。また、バインダーとしてセメントを用いているために衝撃や変形に弱いという課題がある。さらに、建築用防火塗料として厚膜タイプでバインダーに樹脂を使用するものもあるが、耐熱性に限界があるだけでなく、屋外で使用するとクラックが発生する等の耐久性が乏しいという課題がある。
本発明は、上記の課題を解決したもので、有機バインダーを含有する塗料と比較して耐熱性が高く、基材の色彩や質感を著しく損なわずに施工の均一性が確保できる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法及びこれを塗布した防燃体を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、例えば図1に示すように、有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、薄片化した層状粘土鉱物の溶媒中分散体を固相被覆体の表面に付着させる工程(S100〜S106)と、層状粘土鉱物の付着した固相被覆体の表面に常温硬化性ガラスを塗布して粘土鉱物粒子間の空隙をガラスで結合した複合体を形成して被覆する工程(S108、S110)と、を有することを特徴とする。
上記本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法において、好ましくは、例えば図1に示すように、薄片化した層状粘土鉱物を固相被覆体の表面に付着させる工程(S100〜S106)は、水溶液中の金属イオンを層状粘土鉱物に浸潤させて、層状粘土鉱物の層間結合を緩和する工程(S100)と、その溶液に超音波振動などを付加し混合撹拌することによって層間を剥離して粘土鉱物粒子を薄片化する工程(S102)と、薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を懸濁液から分離乾燥する工程(S104)と、薄片化処理後に分離乾燥した層状粘土鉱物を溶媒中に分散含有する塗布液を調整する工程(S105)と、塗布液を固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程(S106)と、を有することを特徴とする。
上記本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法において、好ましくは、例えば図1、図12に示すように、層状粘土鉱物の溶媒中分散体を固相被覆体の表面に付着させる工程は、粒子径が被覆膜の膜厚よりも小さくなるように、層状粘土鉱物を粉砕処理する工程(S402)と、前記粉砕処理した層状粘土鉱物と溶媒を混合して撹拌した塗布液を調整する工程(S404)と、前記塗布液を固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程(S406)と、を有することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明は、例えば図9に示すように、有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、水溶液中の金属イオンを層状粘土鉱物に浸潤させて、層状粘土鉱物の層間結合を緩和し、超音波振動などによって層間を剥離して粘土鉱物粒子を薄片化する工程(S300)と、薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を懸濁液から分離乾燥する工程(S302)と、分離乾燥した薄片粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を含有する塗布液を調整する工程(S306)と、前記塗布液を固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程(S308、S310)と、を備え、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚を10μm〜300μmの範囲内で形成することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明は、例えば図13に示すように、有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、粒子径が被覆膜の膜厚よりも小さく粉砕処理された層状粘土鉱物を準備する工程(S502)と、層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を混和する工程(S504)と、この混和した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスを含む塗布液で、固相被覆体の表面を塗布する工程(S506)とを備え、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚を10μm〜300μmの範囲内で形成することを特徴とする。
上記本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法において、好ましくは、例えば図3に示すように、被覆体は木材、プラスチック、繊維の少なくとも一種類を含み、層状粘土鉱物はバーミキュライト、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母粘土鉱物、緑泥石、イモゴライト、アロフェン、セビオライト、バリゴルスカイトの少なくとも一種類を含み、前記溶媒はアルコール、アルデヒド、ケトン、ニトリルの少なくとも一種類を含むことを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の防燃体は、例えば図3に示すように、有機物を含んでなる固相被覆体の表面を防燃性コーティング剤で被覆した防燃体であって、固相被覆体の表面を被覆する層状粘土鉱物の層と、層状粘土鉱物の隙間並びに層状粘土鉱物と固相被覆体の表面との隙間を埋める常温硬化ガラスよりなるバインダーと、層状粘土鉱物の表面を覆う前記常温硬化ガラスよりなる無機質被覆層と、を有することを特徴とする。
本発明の防燃体において、好ましくは、層状粘土鉱物の層が薄片化処理した粘土鉱物粒子の層であるとよい。
このように構成された防燃体では、表面を防燃性コーティング材で被覆して、被覆体が高温に曝されない状態が保持できる数十秒から数分程度の耐火性を持たせている。さらに、ガラスコーティング材を用いて、薄片化した粘土鉱物の隙間も充填して複合化して、より長時間の耐火性を発現させている。
また、バインダーとして常温硬化ガラスを用い、粘土鉱物を複合化することによって、木材のコーティング層を無機質で構成したので、コーティング層の耐熱・耐火性が高いため、コーティング層の炭化や燃焼は起きない。
本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法によれば、コーティング層が100μm程度以下の薄膜であるため、ある程度の透明性(木質外観)を維持しつつも、無機質のコーティングとしての優れた耐火性能を実現できる。また、木材のコーティング層が無機質であるために、木材の塑性変形への追従性や耐衝撃性には限界があるが、ガラス成分は軟化点以上の温度(通常500℃以上)になると流動化するので、火災時には皮膜中のクラックをガラスが埋めるという自己修復性が期待できる。バーミキュライト自体はガス遮断性に優れており、火災時にはその間を軟化したガラスが充填することによって、内部の木材と外部の高温雰囲気との遮断効果をより長時間維持できることが期待される。
さらに、従来の厚膜型無機質コーティングにおいては、木材の質感が失われる課題があったが、これに対して、バーミキュライトを薄片化して積層させることで、コーティング層が100μm程度以下の厚さでも耐火性とある程度の木質感を残存させることができる。また、コーティング層に割れ等が発生しても、バインダー相のガラスが高温で流動化して修復することが期待できる。
本発明の第1の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。 本発明の一実施例を説明する流れ図である。 本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を木材に適用した場合に相当する、防燃体の模式図である。 塗布後の木片の外観を示す図面代用写真である。 バーミキュライトを塗布したのちガラスコーティングを塗布した木片の断面顕微鏡写真を示している。 本発明の防燃材に対する500℃での燃焼実験結果の説明図である。 本発明の防燃材に対する600℃での燃焼実験結果の説明図である。 本発明の防燃材に対する500℃での燃焼実験後の塗膜の電子顕微鏡写真である。 本発明の第2の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。 試験片外観の図面代用写真で、バーミキュライト粉末を用いる場合を示している。 図10に示す防燃材に対する500℃での燃焼実験結果の説明図である。 本発明の第3の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。 本発明の第4の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。図において、まず、水溶液中の金属イオンを層状粘土鉱物に浸潤させて、層状粘土鉱物の層間結合を緩和する(S100)。ここで、層状粘土鉱物としては、バーミキュライトのような粘土鉱物を用いると良い。ここで、粘土鉱物(clay mineral)とは、粘土を構成する鉱物で、主成分は層状ケイ酸塩鉱物(フィロケイ酸塩鉱物)である。主な粘土鉱物としては、カオリナイト(高陵石)、スメクタイト、セリサイト(絹雲母)、イライト、グローコナイト(海緑石)、クロライト(緑泥石)、タルク(滑石)、ゼオライト(沸石)などがある。
層状粘土鉱物の層間結合は、カリウムイオン、リチウムイオンやナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオンやカルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンを侵入させることで、層間の結合を弱くすることができる。具体的な処理法としては、これらの金属塩化物水溶液を調製して粘土鉱物の粉末を混合し、沸点以下の高温で十分な時間静置して金属イオンを粘土鉱物の層間に浸透させて結合を緩和させる。
次に、前記溶液に超音波振動などの振動作用を付加して層状粘土鉱物を薄片化処理する(S102)。超音波による剥離は局所的であるため、層状粘土鉱物全体での薄片化処理を促進するため、撹拌・混合して溶液の流れを生成する。
続いて、薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を懸濁液から分離乾燥する(S104)。薄片化した粘土鉱物は水溶液中に分散して懸濁液の状態を呈するので、懸濁液と容器底面に沈殿している薄片化しなかった粒子を容易に分離することができる。分離した懸濁液はさらに静置することによって、薄片化した粘土鉱物粒子が沈殿する。この状態で上澄みの塩化物水溶液を取り除き、蒸留水を加えて混合し残留している塩化物を薄めて再度、粘土鉱物粒子を沈降させてから上澄み液を取り除く。この操作を繰り返すことによって塩化物濃度を十分に低下させる。得られた粘土鉱物分散液から上澄み液を取り除き乾燥させる、あるいはフィルターを通して乾燥させることによって薄片化した粘土鉱物を分離する。
続いて、薄片化処理後に分離乾燥した層状粘土鉱物を溶媒中に分散含有する塗布液を調整する(S105)。例えば、塗布液は、薄片化処理した層状粘土鉱物と溶媒を所定の割合(例えば層状粘土鉱物の重量に対して溶媒の重量は3倍から50倍程度とするのがよく、特に好ましくは塗布作業が容易で、層状粘土鉱物の塗布量が容易に調整できる程度の混合比である10倍から20倍程度がよい。)層状粘土鉱物の重量に対して溶媒の重量が3倍より低いと、粘度が高くなって塗布作業が困難となり、膜厚が30〜100μm程度の薄い均一な粘土鉱物被膜の形成が困難となる。また層状粘土鉱物の重量に対して溶媒の重量が50倍を越えると、被膜を形成する層状粘土鉱物と比較して溶媒の量が増えて、塗布作業のコストが増大して好ましくない。
塗布液に用いる溶媒としては、例えばエタノール等のアルコール類を用いると乾燥も容易に行える。なお、アルコール類に代えて、他の極性有機溶媒、例えばアルデヒド、ケトン、ニトリルを用いても良い。他方で、溶媒の揮発性が過大であると、火災や労働作業環境の問題が生ずるため、人体に無害な溶媒がよい。溶媒の乾燥が簡単であれば良いので、乾燥炉を用いることができれば、溶媒は水でもよい。また、溶媒としてアルコール類を用いる場合は、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族の低級アルコールでもよい。
そして、薄片化処理した層状粘土鉱物を含む塗布液を被覆体の表面に塗布して乾燥させる(S106)。
次に、層状粘土鉱物の付着した固相被覆体の表面に常温硬化性ガラスを塗布して、粘土鉱物粒子間の空隙をガラスで結合した複合体を形成して被覆する(S108)。被覆膜の膜厚は、例えば10μm〜300μmの範囲内とするとよい。被覆膜の膜厚が10μm以下では、被覆体表面の凸凹に対して、十分な塗膜が形成できず、塗膜の均質性に劣り、耐久性に劣ることとなる。被覆膜の膜厚が300μm以上では、層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの使用量が増加して、塗膜形成工事の費用が高くなると共に、乾燥や固化に要する時間が長期化して塗膜の養生が負担になる。この際、常温硬化性ガラスは基材の表層に浸透し、粘土鉱物と常温硬化性ガラスからなる被膜と基材の間に強固な結合を形成することができる。
常温硬化性ガラスで被覆した被覆体は、乾燥した状態の室温で一週間程度乾燥させる(S110)。この乾燥期間は、空気中の水蒸気圧力や温度、通風状態によって変動するが、一週間程度あれば常温硬化性ガラスの硬化が完了すると共に、被覆体が木材である場合でも乾燥が完了し、防燃材が完成する(S112)。
ここで、常温硬化ガラスは無機質常温硬化型の液状ガラス原料液を用いるもので、例えば特許第2538527号公報、特公平7−10750号公報、特開2010−132511号公報に掲載されたものが使用できる。層状粘土鉱物の付着した被覆体の表面を被覆する作用から考えると次の点が必要である。
(i)室温で適用時には液体であり、層状粘土鉱物間のすき間に浸透できるような物性(濡れ性、表面張力、粘性)を有している事、
(ii)空気中で固化して、ある程度の強度を発揮する事、
(iii)高温では液化するが燃焼はせずに、層状粘土鉱物間をつないで酸素の内部への侵入を食い止める事。
常温硬化ガラスは、上記(i)〜(iii)の条件を満たしている。次に、常温硬化ガラスの組成と、これを用いたガラス膜による被覆方法の一例を、上記特許第2538527号公報を基に詳細に説明する。
常温硬化ガラスを用いた被覆方法の一例は、加水分解可能な有機金属化合物を、水と有機溶媒とからなる反応液中において、ホウ素イオンの存在下でハロゲンイオンを触媒とし、pHを4.5〜5.0に調整しながら加水分解、脱水縮合させた後、反応生成物を基材表面に塗布し、常温でガラス化させてガラス膜で被覆体の表面を被覆するものである。
有機金属化合物としては、例えば金属アルコキシドが好ましく、MR2(OR1)n−mなる一般式で表される。式中Mは酸化数nの金属、R1およびR2はアルキル基、mは0〜(n−1)の整数を表す。R1およびR2は同一でもよく、異なる基でもよい。なかでも好ましいのは、R1およびR2が炭素原子4個以下のアルキル基、即ちメチル基、エチル基、プロピル基、イソピロピル基、ブチル基、イソブチル基等の低級アルキル基が好適に用いられる。金属アルコキシドとしては、例えば、マグネシウムイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛プロポキシド、テトラエトキシシラン、チタンイソプロポキシド、バリウムエトキシド、バリウムイソプロポキシド、トリエトキシボラン、ジルコニウムプロポキシド等が挙げられる。
上記有機金属化合物は、反応の制御を容易にするため溶媒で希釈して用いることが望ましい。希釈用溶媒は、上記の有機金属化合物を溶解することができ、かつ水と均一に混合できればよい。一般的には脂肪族の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびそれらの混合物等が好適に用いられる。これらの溶媒中では、生成する金属酸化物ガラスの膜が安定である。反応液を構成する水と有機溶媒の割合は、水の濃度として0.2〜50 mol/L の範囲であればよい。
常温硬化ガラスを用いた被覆方法は、上記反応液中において、ホウ素イオンの存在下に、ハロゲンイオンを触媒として有機金属化合物を加水分解している。ホウ素イオンを与える化合物としては、トリアルコキシボランが用いられる。なかでもトリエトキシボランは好適である。反応液中のホウ素イオン濃度は1.0〜10.0 mol/L の範囲が好ましい。また、ハロゲンイオンはフッ素イオン、塩素イオン、又はこれらの混合物が用いられる。用いる化合物としては、上記反応液中でフッ素イオンや塩素イオンを生ずるものであればよく、例えばフッ素イオン源にはフッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム等、塩素イオン源には塩化アンモニウム等が好適である。
木材に常温硬化ガラスを用いて被覆する用途では、反応液中の上記ハロゲンイオンの濃度は、例えば、触媒を含む反応液の合計重量に対して0.002〜0.3 mol/kgの範囲が好ましい。ハロゲンイオンの濃度が0.002mol/kgより低いと、有機金属化合物の加水分解が十分に進行し難くなり、金属酸化物ガラスの球体粒子の生長が抑制され、また膜の形成が困難となる。またハロゲンイオンの濃度が0.3から2 mol/kgを越えると、生成する金属酸化物ガラスが不均一になり易いためいずれも好ましくない。
図2は、本発明の一実施例を説明する流れ図である。ここでは、被覆体は木材であり、層状粘土鉱物はバーミキュライトであり、溶媒はアルコールである場合を取り上げる。コーティングの原料としては、バーミキュライト、溶媒(エタノール)、常温硬化ガラスの三点である。バーミキュライトとしては、福島県産の粒状(粒子径1〜5mm)のものと南アフリカ産のバーミキュライトを機械的に粉砕した粉末状のもの(粒子径10μm〜1mm)を用いており、両者は外観、耐火性に関して同様の結果を示している。
バーミキュライトの前処理として塩化カリウム(KCl)の水溶液にバーミキュライトを入れ、温度80℃で、例えば24時間以上静置する(S200)。この処理によってバーミキュライトの層間にカリウムイオンが侵入し、層間の結合が弱くなる。同様な効果は塩化ナトリウム(NaCl)水溶液でも確かめられた。
室温まで冷却後、超音波振動を付与することによってバーミキュライト粒子を薄片化処理する(S202)。はく離したバーミキュライトは容器の上部に上澄み液の状態で浮遊するのでその部分を吸出して分離した。分離液をさらに長時間静置すると薄片化したバーミキュライトは沈殿するので、透明な上澄み液を分離し、底部に沈殿した薄片バーミキュライトを蒸留水で希釈する。
この操作を最低3回繰り返してKClを除去後、紙フィルターを通す、あるいは乾燥処理によって薄片バーミキュライトの凝集体を得る(S204)。
次に薄片バーミキュライトと溶媒のエタノールを所定の割合(バーミキュライト1gに対してエタノール10mL)で混合し、下塗り用の塗布液を調製する(S206)。試験片に対してまず下塗り用の塗布液を刷毛を用いて塗布し、溶媒であるアルコールが蒸発して乾燥した状態にさせる(S208)。
次に、常温硬化ガラス原料液を刷毛で塗布する(S210)。常温硬化ガラスとしては、例えば前述の特許公報に記載された技術に基づく、市販の二液混合型の製品を用いるとよい。当該二液混合型の製品では主剤と触媒を用いている。主剤の組成は、メタノール1〜10%、イソプロピルアルコール1〜10%を含むと共に、ケイ酸化アルカリと金属アルコキシドを含有している。触媒は、メタノール40〜50%、イソプロピルアルコール1〜10%を含むと共に、トリアルコキシボランとハロゲンイオンを含有している。ここでは、主剤9に対し触媒1の割合で混合している。
常温硬化ガラス原料液を試験片に二度塗りする場合には、常温硬化ガラスが固化後に、バーミキュライト、常温硬化ガラスの塗布を繰り返す。
常温硬化性ガラスで被覆した試験片は、乾燥した状態の室温で一週間程度乾燥させる(S212)。そして、完成した試験片(防燃材)に対して、電気炉内での5分間の燃焼実験を行った。燃焼実験の温度は500℃と600℃の2通りである。
表1は木片上にバーミキュライト液を塗布乾燥、常温硬化ガラスを塗布・乾燥のプロセスを2回繰り返した際の重量増(1m当たり)の記録である。6個の試験片について測定を行った結果、最初のバーミキュライト層は1m当たり20〜40mg、その後に塗布した常温硬化ガラスはおよそ100mg付着・浸透した。2回目のバーミキュライト層はおよそ20mg、その後の常温硬化ガラスは僅か10〜20mgの増加であった。2回目の常温硬化ガラスの塗布時には第一層がすでに緻密な相を形成しているために、ガラス原料液の木材内部への浸透がほとんどなく、そのために付着量が格段に低下したと考えられる。常温硬化ガラスの塗布後、完全にガラス化するまでには数日かかるといわれており、今回は、最低でも三日間室温で放置後に燃焼試験に供した。
図3はコーティング層の形成過程の模式図である。最初にバーミキュライト薄片をアルコールに分散させた溶液を木材表面に塗り、それを乾燥させると薄片の長手方向が木材表面にほぼ平行に配列した層ができる。その後、その上から常温硬化ガラスを塗ると常温硬化ガラスはバーミキュライト薄片間の間隙に浸透し、さらには木材内部にも浸透する。このことにより、バーミキュライト薄片相互が強固に結合し、さらにはこのようにして形成したコーティング層が基材である木材とも強固に結合する。また、高温ではガラスが液状となることによって酸素の透過を阻止する。
薄片バーミキュライトは層状に積層されるが、その間には空隙が残存しており、また指でこすると簡単に剥がれるほどの密着性しかない。常温硬化ガラスはバーミキュライト間の空隙に浸透するだけでなく、その下の木材にも浸透し、固化後には薄片バーミキュライト粒子間、さらにはコーティング層と木材の間に強固な結合を形成する。
図4に示す燃焼実験用の木片は檜材であり、その大きさはおよそ9mm×9mm×14mmで、重量は約450mgである。ここで左端から「木材」と記載された試料は、木片単体を示している。「V1」を付した試料には、バーミキュライトが1層塗布されている。「G1」を付した試料には、常温硬化ガラスのみが1層塗布されている。「V1+G1」を付した試料には、バーミキュライト1層の上に常温硬化ガラス1層が塗布されている。(V1+G1)x2を付した試料は、バーミキュライト1層の上に常温硬化ガラスを1層塗る工程を2回繰り返したことを表している。V1以外の試料は木材の木目が透けて見えており、基材の色彩や質感が維持されていることが分かる。
図5はバーミキュライトを塗布後に常温硬化ガラスを塗布したコーティング材の断面の角部の光学顕微鏡写真である。厚さが約50μmの保護膜が平面部、角部ともに均一に形成されていることが分かる。
次に、これらの燃焼試験用の木片に、被膜形成処理を施して燃焼実験を行った。被膜形成処理した燃焼試験用の木片は、無塗装の試験片、角柱状の木片にバーミキュライトを塗布した試験片、常温硬化ガラスを塗布した試験片、バーミキュライトを塗布した後ガラスコーティングした試験片、表1に示すようなバーミキュライトとガラスを順次2回繰り返し塗布した試験片の5種類がある。実験温度は500℃および600℃とし電気炉内を所定の温度に保持した状態で、ステンレス皿にいれた試験片を皿ごと炉内に入れ、5分経った後取り出し残存物の重量を測定した。
図6は500℃における燃焼実験後に残存した木質部の重量で、無塗装の試験片、バーミキュライトを塗布した試験片V1、ガラスコーティングを1回した試験片G1、バーミキュライトを塗った後ガラスコーティングを各1回施した試験片V1+G1と、各2回施した試験片(V1+G1)x2を500℃の電気炉内に5分間いれる燃焼実験を行った後の残った木質部の重量を示している。
無処理の試験片はほとんど完全に燃焼して何も残らなかったが、バーミキュライトやガラス被膜のみの試験片の場合、内部はほとんど空洞化したがコーティング層のみは元の形状を保った外殻の形態で残った。バーミキュライトとガラスを塗布した試験片では、内部に炭化した木材が残った。炭化した木材の重量は、全体の重量から熱処理後の塗膜の重量(バーミキュライトからの水の脱離によって約15%重量減する)を差し引いて算出した。単層よりも2回塗布した方が効果は大きいことも示されている。
図7は600℃における試験結果で、500℃の場合と同様に、無塗装の試験片、バーミキュライトを塗布した試験片、ガラスコーティングを1回した試験片、バーミキュライトを塗った後ガラスコーティングを各1回施した試験片、各2回施した試験片を600℃の電気炉内に5分間いれる燃焼実験を行った後の残った木質部の重量を示す。バーミキュライト、ガラス単独ではほとんど効果がないが、両者を複合化することによって残存重量が増加している。
図8は500℃の燃焼実験後の塗膜断面の電子顕微鏡像である。木材は炭化しているが、その上にバーミキュライトが層になった状態が維持されている。この層の働きによって内部の木材の燃焼が阻止・遅延されたものと推測される。
続いて、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図9は、本発明の第2の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。まず、粒子径が10μm〜5mmの範囲内の層状粘土鉱物を準備する。このような層状粘土鉱物は、例えば福島産バーミキュライト粉砕粉や南アフリカ産バーミキュライト粉として入手できる。
次に、水溶液中の金属イオンを層状粘土鉱物に浸潤させて、層状粘土鉱物の層間結合を緩和し、超音波振動などによって層間を剥離して粘土鉱物粒子を薄片化する(S300)。具体的には、バーミキュライトの前処理として塩化カリウム(KCl)の水溶液にバーミキュライトを入れ、温度80℃で24時間以上静置する。このようにして、バーミキュライトの層間結合を緩和する。続いて、室温まで冷却後、超音波振動を付与することによってバーミキュライト粒子を薄片化する。この薄片化処理は、S202と同様であり、詳細な説明を省略する。そして、この操作を最低3回繰り返してKClを除去する。
続いて、薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を懸濁液から分離乾燥する(S302)。即ち、薄片化処理した粘土鉱物からKClを除去した後、紙フィルターを通す、あるいは乾燥処理によって薄片バーミキュライトの凝集体を得る(S304)。
次に、分離乾燥した薄片粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を含有する塗布液を調整する(S306)。具体的には、薄片化した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を混和する。常温硬化性ガラスが二液型の場合には、主剤と触媒に溶媒と同様の成分が含まれている関係で、常温硬化性ガラスの主剤と触媒を混和した原料液に、層状粘土鉱物の薄片化物を混ぜればよい。なお、常温硬化性ガラス原料液には、溶媒として脂肪族の低級アルコールや水が含有されているが、塗布液の粘度や膜厚との関係で、希釈液としての溶媒を追加してもよい。
次に、この混和した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を含む塗布液で、被覆体の表面を被覆して、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜を形成する(S308)。固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚は、例えば10μm〜300μmの範囲内で形成される。
層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスで被覆した試験片は、乾燥した状態の室温で一週間程度乾燥させる(S310)。このようにして、防燃材が完成する。完成した試験片(防燃材)に対して、電気炉内での5分間の燃焼実験を行ったところ、第1の実施形態とほぼ同等の結果が得られた。第1の施工形態ではバーミキュライト層が乾燥後に常温硬化ガラスを浸透させるのに対して、第2の施工形態では両者を混合させた塗布液を一回塗布する。後者の方が施工の手間数は少ないが、常温硬化ガラスの硬化反応が進んで粘土が上昇する前に施工しなくてはならないという時間的制約がある。両者は、対象物のサイズや施工にもちいる器具等の特性に応じて選択すれば良い。
続いて、本発明の第3と第4の実施形態について説明する。これらの実施形態では、バーミキュライト粉末は機械的な粉砕処理したものである。
図12は、本発明の第3の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。まず層状粘土鉱物としてのバーミキュライトを準備する(S400)。層状粘土鉱物は、例えば、粒子径が10μm〜5mmの範囲内のものである。続いて、バーミキュライトを被覆膜として適切な程度に粉砕する(S402)。粉砕する粒子径としては、被覆膜の膜厚よりも小さくするのが望ましく、例えば被覆膜の膜厚が10μmの場合は10μm程度、200μmの場合は100μm程度に定める。粉砕には、例えば試験研究目的では乳棒と乳鉢を用いても良いが、量産化段階では粉砕用機械を用いると良い。
次に粉砕したバーミキュライトと溶媒のエタノールを所定の割合(バーミキュライト1gに対してエタノール10mL)で混合し、下塗り用の塗布液を調製する(S404)。試験片に対して、バーミキュライトの塗布液を刷毛を用いて塗布し、溶媒であるアルコールが蒸発して乾燥した状態にさせる(S406)。
続いて、常温硬化ガラス原料液を刷毛で塗布する(S408)。常温硬化性ガラスで被覆した試験片は、乾燥した状態の室温で一週間程度乾燥させる(S212)。
そして、完成した試験片(防燃材)に対して、電気炉内での5分間の燃焼実験を行った。燃焼実験の温度は500℃である。
図10は、試験片外観の図面代用写真で、バーミキュライト粉末を用いる場合を示している。図において、試料番号29は、福島産バーミキュライト粉砕粉を使用している。試料番号30は、南アフリカ産バーミキュライト粉を使用している。試料番号29、30は、各粉末をエタノールで分散後塗布、乾燥後に常温硬化ガラスを1回塗布したものである。
上記のバーミキュライト粉末は、乳鉢と乳棒ですりつぶしたものである。薄片化処理した層状粘土鉱物と比較すると、粒子径が粗いために外観の均質性にはバラツキがある(図4参照)。
図11は図10の試料に対する500℃における試験後の残存重量(木材部推定値)である。この耐火試験の結果によると、上記のバーミキュライト粉末は、薄片化処理したバーミキュライトと常温硬化ガラス原料液を2回繰り返して塗布したもの(V1+G1)x2の防燃性と同等であった。しかし、コーティングの重量は、29(福島産)が200mg/m、30(南ア産)が340mg/mと薄片化バーミキュライトを用いた場合の2倍以上となっている。バーミキュライトのような粘土鉱物は層状の結晶構造をしており、コーティング原料としてもちいるには、薄片状の粒子を用いた方が効率的に対象物の表面を覆う事ができる。しかし、工業的な観点、特にコストを考えると、バーミキュライト粉末は機械的な粉砕処理で製造できるため、薄片化処理した層状粘土鉱物に対して優位性を有している。
図13は、本発明の第4の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法を説明する流れ図である。
まず層状粘土鉱物としてのバーミキュライトを準備する(S500)。次に、バーミキュライトを被覆膜として適切な程度に粉砕する(S502)。そして、粉砕処理した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を混和する(S504)。続いて、この混和した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスを含む塗布液で、被覆体の表面を塗布し(S506)、乾燥させる。常温硬化性ガラスで被覆した被覆体は、乾燥した状態の室温で一週間程度乾燥させる(S212)。ここで、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚は、例えば10μm〜300μmの範囲内であるように形成する。
そして、完成した試験片(防燃材)に対して、電気炉内での5分間の燃焼実験を行ったところ、第1、第2、第3の実施形態と同様の結果が得られた。即ち、層状粘土鉱物を薄片化処理した場合と粉砕した場合、並びに層状粘土鉱物で被覆層を形成した後に常温硬化ガラス原料液を塗布する場合、常温硬化ガラス原料液と層状粘土鉱物とを混合した塗布液を作成して被覆体を被覆する場合とで、これら4通りの表面被覆方法について、耐燃焼性における顕著な相違は存在しない。
なお、上記の実施の形態においては、対象物として木材を対象として実験を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法は木材以外の可燃物に対しても、塗布材を付着させることで、耐火性能の向上が期待できる。
また、上記の実施の形態においては、まずバーミキュライトを塗布し乾燥後に常温硬化ガラスを塗布している。これは、後者が一定時間後に硬化するためであるが、施工状況によっては予め両者を混合した塗布液を準備して塗布してもよい。さらに、コーティングの施工法として刷毛塗りを行ったが、他にスプレーガンによる吹き付け等の施工法も適用可能なことは、言うまでもない。
本発明の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法は、ある程度の透明性(木質外観)を維持しつつも、無機質のコーティングとしての優れた耐火性能を実現できる。また、コーティング層に割れ等が発生しても、バインダー相のガラスが高温で流動化して修復することが期待できる。

Claims (9)

  1. 有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、
    層状粘土鉱物の溶媒中分散体を前記固相被覆体の表面に付着させる工程と、
    前記層状粘土鉱物の付着した前記固相被覆体の表面に常温硬化性ガラスを塗布して前記粘土鉱物の粒子間の空隙をガラスで結合した複合体を形成して被覆する工程と、
    を有することを特徴とする防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  2. 前記層状粘土鉱物の溶媒中分散体を前記固相被覆体の表面に付着させる工程は、
    水溶液中の金属イオンを前記層状粘土鉱物に浸潤させて、前記層状粘土鉱物の層間結合を緩和し、超音波振動、機械的振動、撹拌、又は急速加熱によって層間を剥離して粘土鉱物粒子を薄片化する工程と、
    薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を前記懸濁液から分離乾燥する工程と、
    前記薄片化処理後に分離乾燥した層状粘土鉱物を溶媒中に分散含有する塗布液を調整する工程と、
    前記塗布液を前記固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  3. 前記層状粘土鉱物の溶媒中分散体を前記固相被覆体の表面に付着させる工程は、
    粒子径が被覆膜の膜厚よりも小さくなるように、前記層状粘土鉱物を粉砕処理する工程と、
    前記粉砕処理した層状粘土鉱物と溶媒を混合して撹拌した塗布液を調整する工程と、
    前記塗布液を前記固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  4. 有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、
    水溶液中の金属イオンを前記層状粘土鉱物に浸潤させて、前記層状粘土鉱物の層間結合を緩和し、超音波振動などによって層間を剥離して粘土鉱物粒子を薄片化する工程と、
    薄片化処理した粘土鉱物を分散した懸濁液を分離し、薄片化した粘土鉱物を前記懸濁液から分離乾燥する工程と、
    前記分離乾燥した薄片粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を含有する塗布液を調整する工程と、
    前記塗布液を前記固相被覆体の表面に塗布して乾燥させる工程と、
    を備え、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚を10μm〜300μmの範囲内で形成することを特徴とする防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  5. 有機物を含んでなる固相被覆体の表面に防燃性を持たせる防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法であって、
    粒子径が被覆膜の膜厚よりも小さく粉砕処理された層状粘土鉱物を準備する工程と、
    前記層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を混和する工程と、
    この混和した層状粘土鉱物と常温硬化性ガラス原料液を含む塗布液で、前記固相被覆体の表面を被覆する工程と、
    を備え、固化後の層状粘土鉱物と常温硬化性ガラスの被覆膜の膜厚を10μm〜300μmの範囲内で形成することを特徴とする防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  6. 前記固相被覆体は木材、プラスチック、繊維の少なくとも一種類を含み、
    前記層状粘土鉱物はバーミキュライト、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母粘土鉱物、緑泥石、イモゴライト、アロフェン、セビオライト、バリゴルスカイトの少なくとも一種類を含み、
    前記溶媒はアルコール、アルデヒド、ケトン、ニトリルの少なくとも一種類を含むことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の防燃性コーティング剤を用いた表面被覆方法。
  7. 有機物を含んでなる固相被覆体の表面を防燃性コーティング剤で被覆した防燃体であって、
    前記固相被覆体の表面を被覆する層状粘土鉱物の層と、
    前記層状粘土鉱物の隙間並びに前記層状粘土鉱物と前記固相被覆体の表面との隙間を埋める常温硬化ガラスよりなるバインダーと、
    前記層状粘土鉱物の表面を覆う前記常温硬化ガラスよりなる無機質被覆層と、
    を有する防燃体。
  8. 請求項7に記載の防燃体において、
    前記層状粘土鉱物の層が薄片化処理した粘土鉱物粒子の長手方向が基材表面に平行に配列した層であり、層の厚さは10〜300 μmの範囲であり、下地材の色彩・質感を著しく変化させないことを特徴とする防燃体。
  9. 請求項7に記載の防燃体において、
    常温硬化ガラスよりなるバインダーが基材表層部に浸透し、防燃性コーティングと基材が強固に結合されていることを特徴とする防燃体。
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