JP2010228370A - 射出成形同時加飾用フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一基材層と第二基材層とからなる基材層の第二基材層の表面に、絵柄層と接着剤層とが順に積層してなり、該第一基材層が艶消し剤を含み、該第二基材層が艶消し剤を含まないことを特徴とする射出成形同時加飾用シート、及びこれを用いた加飾成形品である。
【選択図】図1
Description
射出成形同時加飾方法においては、通常、基材、絵柄印刷層及び接着剤層を準に積層してなる加飾シートが用いられており(例えば、特許文献1)、このような射出成形同時加飾用の加飾シートの基材側を金型内に向けて基材側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出して、加飾成形品を得ることができる。
このように、ゲート流れによる艶差を低減しつつ、安定して加飾成形品を製造することは困難であり、これを実現しうる加飾シートの開発が望まれている。
すなわち、本発明は、
(1) 第一基材層と第二基材層とからなる基材層の第二基材層の表面に、絵柄層と接着剤層とが順に積層してなり、該第一基材層が艶消し剤を含み、該第二基材層が艶消し剤を含まないことを特徴とする射出成形同時加飾用シート、
(2) 第一基材層の厚さが、第二基材層の厚さの50%以下である上記(1)に記載の射出成形同時加飾用シート、
(3) 第一基材層及び第二基材層を形成する樹脂が、アクリル系樹脂である上記(1)又は(2)に記載の射出成形同時加飾用シート、
(4) 絵柄層が、メタリック調である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の射出成形同時加飾用シート、
(5) 絵柄層が、メタリック顔料及びパール顔料から選ばれる少なくとも一種を含むものである上記(4)に記載の射出成形同時加飾用シート、及び
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の射出成形同時加飾用シートを用いてなる加飾成形品、
を提供するものである。
本発明におけるゲート流れによる艶差の発生を低減する機構については、十分に解明されるには至っていないが、以下のように推測される。
従来加飾成形品に高級感を付与するために採用していた艶消し剤を含む基材に対する射出樹脂の熱や衝撃が、艶差の発生に大きく影響していたところ、基材層を艶消し剤を含む基材層と艶消し剤を含まない第二基材層との二層構成とし、かつ艶消し剤を含まない第二基材を射出樹脂の射出側に近い方に設けることで、射出樹脂の熱や衝撃を緩和し、艶差の発生を低減し、一様な意匠が得られるものと推測される。
本発明の加飾シートの基材層2は、第一基材層21と第二基材層22とからなり、第一基材層21は艶消し剤を含み、第二基材層22は艶消し剤を含まないことを特徴とする。ここで、第二基材層22における艶消し剤を含まないとは、実質的に艶消し剤を含まないことをいう。すなわち、本発明において、艶消し剤を含まない第二基材層22は、艶消し剤を全く含まない態様のほか、艶差の発生を低減するという本願発明の効果を阻害しない範囲であれば、艶消し剤を含んだ態様を有することができる。例えば、第二基材層22における艶消し剤の含有量が第一基材層21に含まれる艶消し剤の含有量に対して、30%未満であれば、艶差の発生が低減することはない。
第一基材層21に用いられる艶消し剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機粒子、アクリル系樹脂などからなる有機粒子、及び内部析出粒子などを好ましく挙げられる。これらのなかでは、酸化ケイ素及びアクリル系樹脂ビーズ、なかでも架橋アクリル樹脂ビーズが好ましい。
艶消し剤の平均粒径は、艶差のない均一な意匠感を得る観点から、0.01〜5.0μmが好ましく、0.05〜3.0μmがより好ましい。また、第一基材層21を形成する樹脂組成物中の艶消し剤の含有量は、艶差のない均一な意匠感を得る観点から、樹脂100質量部に対して、0.01〜5.0質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。
第二基材層22に用いられるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とする重合体であり、該構成単位を好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を含むものである。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
本発明の加飾シートに設けられる絵柄層3は、模様や文字、パターン状の絵柄、あるいは全面にわたって均一に着色したベタ着色を表現する層である。絵柄層3の絵柄は任意であるが、例えば、メタリック調のほか、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層3は、上記絵柄を表現する柄パターン層及びベタ着色層を単独で又は組み合わせて設けることができる。ベタ着色層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
絵柄層3は、通常は、上記の第二基材層22に印刷インキでグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法により形成される。絵柄層3の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。
接着剤層4は、本発明の加飾シートを接着性よく加飾成形品に接着するために形成されるものである。この接着剤層4に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の1種または2種以上を溶液、あるいはエマルジョン等塗布可能な形にしたものを、公知の塗布方法より適宜選択して、塗布し、乾燥することにより形成できる。
接着剤層4の厚さは、0.1〜5μm程度が好ましい。
本発明の加飾シートは、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、基材層2を、樹脂、艶消し剤及び各種添加剤を含む第一基材層21を形成する樹脂組成物からなるシートと、及び樹脂及び各種添加剤を含む第二基材層22を形成する樹脂組成物からなるシートとを、押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得る。次いで、第二基材層22の表面に、絵柄層3及び接着剤4を、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗工手段により積層すればよい。また、絵柄層3が複数層の場合、例えば絵柄層3を上記のように柄パターン層と、ベタ着色層との組み合わせとする場合は、1層を積層した後、乾燥し、その後次の層を積層すればよい。
上記のようにして得られた本発明の加飾シートは、射出成形同時加飾に好適に用いられる。射出成形同時加飾は、まず、射出成形同時加飾用の加飾シートの第一基材層を金型内に向けて第一基材層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する。この時の加熱温度は、基材層を形成する樹脂のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさす。
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン系共重合体樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体樹脂)などのスチレン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリブテン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸系共重合体樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
加飾成形品を構成する射出樹脂成形体の厚さについては特に制限はなく、当該加飾成形品の用途に応じて選定されるが、通常1〜5mm、好ましくは2〜3mmである。
(評価方法)
各実施例で得られた加飾成形品について、以下の方法で評価した。
(1)艶差の評価
実施例及び比較例で得られた加飾成形品を目視して、下記の基準で評価した。
○:樹脂を射出するゲート部に該当する箇所の裏面(加飾成形品の表面)と周囲との艶差を見つけることはできず、均一な意匠性を有していた。
△:樹脂を射出するゲート部に該当する箇所の裏面(加飾成形品の表面)と周囲との艶差は注意して観察すると若干あるが、実用上問題にはならない。
×:樹脂を射出するゲート部に該当する箇所の裏面(加飾成形品の表面)の箇所を確認するまでもなく、明らかに当該箇所と周囲との艶差が発生した。
(2)意匠性の評価
実施例及び比較例で得られた加飾成形品を目視して、下記の基準で評価した。
○:加飾シートのシワや破れは全くない。
△:加飾シートのシワが若干あるが、実用上問題にはならない。
×:加飾シートのシワが著しい、あるいは破れがある。
(1)加飾シートの製造
第一基材層として、艶消し剤を含むアクリル系樹脂シート(厚さ:10μm,艶消し剤含有量:樹脂100質量部に対して0.5質量部)、第二基材層として、艶消し剤を含まないアクリル系樹脂シート(厚さ:115μm,アクリルゴム含有量:樹脂100質量部に対して20質量部)を用意し、これらのシートを押出ラミネーションにより圧着させて基材層2を得た。
次いで、ポリウレタン・アクリルポリオール系樹脂をバインダーとし、金属顔料(粒径:5〜25μm)を樹脂固形分100質量部に対して30質量部の含有比率で含有するインキを用いて、塗工量5g/m2で全面均一にグラビア印刷で塗工して絵柄層3を形成し、さらにアクリル系樹脂の塗工液を厚さ4μmで塗布して、接着剤層4を形成し、加飾シートを得た。
上記(1)で得られた加飾シートを、熱盤温度150℃で加熱して射出成形の金型内形状に沿うように成形して、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、商品名「クラスチックMTH−2」)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出して、加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
実施例1において、第一基材層として、艶消し剤を含むアクリル系樹脂シート(厚さ:35μm,艶消し剤含有量:樹脂100質量部に対して0.5質量部)、第二基材層として、艶消し剤を含まないアクリル系樹脂シート(厚さ:80μm,アクリルゴム含有量:樹脂組成物に対して20質量部)とした以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
実施例1において、基材層をアクリル系樹脂シート(厚さ:120μm,艶消し剤含有量:樹脂100質量部に対して0.5質量部)のみとした以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品について、上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
2.基材層
21.第一基材層
22.第二基材層
3.絵柄層
4.接着剤層
Claims (6)
- 第一基材層と第二基材層とからなる基材層の第二基材層の表面に、絵柄層と接着剤層とが順に積層してなり、該第一基材層が艶消し剤を含み、該第二基材層が艶消し剤を含まないことを特徴とする射出成形同時加飾用シート。
- 第一基材層の厚さが、第二基材層の厚さの50%以下である請求項1に記載の射出成形同時加飾用シート。
- 第一基材層及び第二基材層を形成する樹脂が、アクリル系樹脂である請求項1又は2に記載の射出成形同時加飾用シート。
- 絵柄層が、メタリック調である請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形同時加飾用シート。
- 絵柄層が、メタリック顔料及びパール顔料から選ばれる少なくとも一種を含むものである請求項4に記載の射出成形同時加飾用シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形同時加飾用シートを用いてなる加飾成形品。
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