JP2010205474A - 非水電解液及びそれを備えたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムイオン二次電池における電池特性をより一層改善せしめ得る非水電解液を提供し、また、そのような非水電解液を用いて、優れた電池特性を有するリチウムイオン二次電池を実現すること。
【解決手段】リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と共に、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを、更に含有させた。
【選択図】なし
【解決手段】リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と共に、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを、更に含有させた。
【選択図】なし
Description
本発明は、非水電解液及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に係り、更には、そのようなリチウムイオン二次電池を電源として備えた電子機器や輸送機器に関するものである。
近年、二次電池としてのリチウムイオン電池が、高出力や高エネルギー密度を実現し得る電池として注目され、既に、パソコン、携帯電話、携帯音楽プレイヤー等の小型民生機器用の領域では、その電源として実用化されており、また自動車産業においても、電気自動車やハイブリッド車等の車載用エネルギー源として、小型・軽量であるリチウムイオン二次電池の実用化が期待されている。
また、それらの用途の中で、小型民生機器に用いられる電池では、常温近傍で用いられることが多く、その寿命にあっても、車載用に求められるような長期に亘る信頼性は、必ずしも必要とはされていないのであるが、電気自動車或いはハイブリッド自動車用電池では、−40℃に近い極低温から60℃以上の高温に至る領域において、正常に作動することが求められ、民生用に比べると、非常に幅広い温度領域での使用が可能であることが要請され、更に、その寿命においても、民生用に比べて、遥かに長期に亘って機能するものであることが要請されている。例えば、米国先進バッテリー・コンソーシアム(USABC)の目標においては、15年、24万km走行相当において、車載用リチウムイオン電池として機能することが求められている。
ところで、従来、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液としては、ジエステル化合物を電解液に添加することにより、充放電の繰り返し時に電気容量の変化率が小さく、かつ低温時にも高い電気容量を維持するという、サイクル特性及び低温特性に優れたものが、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この特許文献1に記載された非水電解液では、ジエステル化合物を添加することにより、サイクル特性及び低温特性に優れるものの、未だ十分でなく、より高いサイクル特性及び低温特性を有するものが望まれていた。
また、特許文献2においては、リチウムイオン二次電池の非水電解液に、複数の添加剤を組み合わせて添加することとして、その添加剤として、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)とヘキサメチルシクロトリシロキサンの添加量を調整し、それらを共存させて、被膜形成を行うことにより、入出力特性及びサイクル特性を改善することが出来るとしている。しかしながら、これらの方法は確かに有効ではあるが、今後の高度なニーズに充分に応え得るリチウムイオン二次電池を得るには至っていなかった。
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、リチウムイオン二次電池における電池特性をより一層改善せしめ得る非水電解液を提供することにあり、また、そのような非水電解液を用いて、優れた電池特性を有するリチウムイオン二次電池を実現し、更には、かかるリチウムイオン二次電池を備えた電子機器及び輸送機器を提供することにある。
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載乃至はそこに開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) リチウムを含む電解質塩を非水系溶媒に溶解せしめてなる、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液にして、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と共に、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを、更に含有していることを特徴とする非水電解液。
(2) 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が、リチウムビス(オキサラト)ボレートである上記態様(1)に記載の非水電解液。
(3) 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が、非水電解液中に、0.05重量%以上の割合において含有せしめられている上記態様(1)又は(2)に記載の非水電解液。
(4) 前記多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルが、炭素数:2〜5のアルキレングリコールとアクリル酸若しくはメタクリル酸とのジエステル化合物である上記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載の非水電解液。
(5) 前記多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルが、非水電解液中に、0.01重量%以上の割合において含有せしめられている上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の非水電解液。
(6) 前記ビニルフルオロシランが、ジメチルビニルフルオロシラン、エチルメチルビニルフルオロシラン、ジエチルビニルフルオロシラン、ジ−n−プロピルビニルフルオロシラン、ジ−n−ブチルフルオロシラン、及びジフェニルビニルフルオロシランからなる群より選択された少なくとも1種以上である上記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の非水電解液。
(7) 前記ビニルフルオロシランが、非水電解液中に、0.01重量%以上の割合において含有せしめられている上記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の非水電解液。
(8) 正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、それら正極及び負極の間に介在させられて、リチウムイオンを伝導する電解液とを備えたリチウムイオン二次電池において、
該電解液として、上記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の非水電解液を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
該電解液として、上記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の非水電解液を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
このように、本発明に従う、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液にあっては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と共に、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとが、少なくとも共に含有せしめられていることによって、そのようなリチウムイオン二次電池の充放電の繰り返しにおけるサイクル特性が、より一層向上せしめられ得ると共に、内部抵抗の上昇を効果的に抑制することが出来るのである。
なお、本発明において、そのような効果が得られる理由については、未だ充分に解明されてはいないが、現在までのところ、以下のように推測されている。オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとが、負極及び正極で適度に反応して、リチウムイオン透過性に優れる安定な複合被膜を形成し、この複合被膜により活性の高い電極と非水系電解液との余分な副反応を抑制せしめ、またリチウムイオンの脱挿入に係わる反応抵抗を低下させて、結果として抵抗上昇を抑制し、出力特性を向上させながら、高温保存特性やサイクル特性が改善されるものと推定される。
ところで、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液は、一般に、リチウムを含む電解質塩を所定の非水系溶媒に溶解せしめて、調整され得るものであって、そこで用いられる電解質塩としては、よく知られているように、たとえばLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4 等の無機塩や有機塩を挙げることが出来る。なお、この電解質塩は、非水電解液中の濃度において、一般に、0.1mol/L〜3.0mol/L程度において、好ましくは0.5mol/L〜2.0mol/L程度、更に好ましくは0.8mol/L〜1.6mol/L程度において、含有せしめられることとなる。なお、この電解質塩の濃度が低くなり過ぎると、非水電解液のイオン伝導度が低くなり、また、その濃度が高くなり過ぎると、逆に粘度が上昇するようになり、電池性能が低下することとなる。
また、かかるリチウムを含む電解質塩を溶解せしめる非水系溶媒としては、公知の各種の有機溶媒が用いられ得、例えば、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、ジオキソラン類、イオン液体等を用いることが出来る。具体的には、カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類を挙げることが出来、また、ラクトン類としては、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン類を、スルホラン類としては、スルホラン、テトラメチルスルホラン等を、更に、ジオキソラン類としては、1,3−ジオキソラン等を挙げることが出来る。この中でも、高誘電率溶媒である環状カーボネート類の少なくとも1種と、低粘度溶媒である鎖状カーボネート類、エーテル類のうちの少なくとも1種との組合せが、有利に用いられることとなる。それは、非水電解液中にLi含有電解質塩を共存させる場合は、かかるLi含有電解質塩の電離を促進させないと、そのイオン伝導度が大きく変わってしまうものであるところ、電解質塩の電離と溶媒の誘電率とは強い関係があり、より電離を促進させるためには、高い誘電率を持った溶媒を用いることが望ましいからである。また、高誘電率溶媒は粘性が高く、そのままでは充分なイオンの移動度を得ることが困難であるため、リチウムイオン電池の電位窓において分解しない低粘度溶媒を、更に混合せしめることで、リチウムイオンが移動し易くなるからである。
そして、本発明にあっては、かくの如きリチウムを含む電解質塩を所定の非水系溶媒に溶解せしめてなる非水電解液に、更に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを含有せしめることによって、リチウムイオン二次電池における電池特性をより一層向上せしめ得たのである。
ここで、本発明において用いられる、上記のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩は、よく知られているように、中心原子にC2O4 2-が配位したアニオンを有するリチウム塩であって、例えば、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等を挙げることが出来るが、特に、本発明にあっては、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)が有利に用いられることとなる。また、それらリチウム塩の2種以上を組み合わせて、用いることも可能である。
このようなオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩は、非水電解液中に、一般に、0.01重量%以上の割合において含有せしめられ、中でも0.05重量%以上10重量%以下であることが好ましく、特に、0.1重量%以上5重量%以下であることが、より一層好ましい。その含有量が0.01重量%以上であれば、充放電を繰り返した際の電池容量の低下を充分に抑制することが出来ることとなるのであり、更に、10重量%以下の含有量として、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩の含有量を抑えることによって、電極に生成する被膜による抵抗の増加を有利に抑制することが出来ることとなる。特に、その含有量を0.1重量%以上5重量%以下とすることにより、上記の効果をより一層大きく得ることが出来るのである。
また、本発明に従って非水電解液に更に添加含有せしめられる、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アミレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール等の多価アルコールとアクリル酸若しくはメタクリル酸とのエステル化反応によって得られるものであって、一般に、炭素数が2〜5のアルキレングリコールとアクリル酸若しくはメタクリル酸とのジエステル化合物が、有利に用いられることとなる。そして、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4―ブタンジオールジアクリレート、1,3―ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることが出来る。
そして、かかる多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルは、非水電解液中において、一般に、0.01重量%以上の割合において添加含有せしめられることとなる。中でも、そのようなエステル化合物は、有利には0.05重量%以上5重量%以下であることが望ましく、更に0.1重量%以上1重量%以下の含有量であることが、より一層好ましいのである。その含有量が、0.01重量%以上あれば、充放電を繰り返した際の電池抵抗の増加を充分に抑制することが出来るのであり、また、5重量%以下として、その含有量を抑えることにより、電極に生成する被膜による抵抗の増加を、効果的に抑制せしめ得ることになる。なお、かかる含有量を、0.1重量%以上1重量%以下とすることによって、より一層大きな上記の効果を得ることが出来るのである。
さらに、本発明に従って非水電解液に添加含有せしめられる、ビニルフルオロシランとしては、具体的には、ジメチルビニルフルオロシラン、エチルメチルビニルフルオロシラン、ジエチルビニルフルオロシラン、ジ−n−プロピルビニルフルオロシラン、ジ−n−ブチルフルオロシラン、ジフェニルビニルフルオロシラン等を挙げることが出来るが、特に、本発明にあっては、ジアルキルビニルフルオロシラン、中でもジメチルビニルフルオロシランが有利に用いられることとなる。また、それらビニルフルオロシランを2種以上組み合わせて、用いることも、可能である。
そして、かかるビニルフルオロシランは、非水電解液中において、一般に、0.01重量%以上の割合において、添加含有せしめられることとなる。中でも、そのようなエステル化合物は、有利には0.05重量%以上5重量%以下であることが望ましく、更に0.1重量%以上2重量%以下の含有量であることが、より一層好ましいのである。その含有量が、0.01重量%以上あれば、充放電を繰り返した際の電池抵抗の増加を充分に抑制することが出来るのであり、また、5重量%以下として、その含有量を抑えることにより、電極に生成する被膜による抵抗の増加を、効果的に抑制せしめ得ることになる。なお、かかる含有量を、0.1重量%以上1重量%以下とすることによって、より一層大きな上記の効果を得ることが出来るのである。
このように、本発明にあっては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとは、それぞれ、上述の如き割合において含有せしめられることとなるのであるが、特に、それら3成分は、その合計含有量において、非水電解液中において10重量%以下となるように調整されることが望ましく、中でも、5重量%以下とすることが、より好ましく、更に3重量%以下とすることが、より一層好ましい。そして、それら三つの成分の含有量と、得られる効果の関係や、コスト面を考慮すると、それら3成分の合計含有量を、0.1重量%以上2重量%以下の割合となるように調整することが、より一層好ましいということが出来る。
なお、本発明に従うリチウムイオン二次電池の非水電解液には、上記した必須の添加成分の他にも、必要に応じて、公知の各種の添加成分を、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の量で含有させることが出来る。このような「他の化合物」としては、具体的には、例えば、
(1)ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物等の過充電防止剤;
(2)ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジアリルジカーボネート等の不飽和結合含有カーボネート、フルオロエチレンカーボネートやトリフルオロメチルエチレンカーボネート等のハロゲン含有カーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルテトラエチルジシロキサン等のシロキサン化合物等の負極被膜形成剤;
(3)亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、プロペンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、グリコールサルフェートやプロピレングリコールサルフェート等の硫酸エステル類、メタンスルホン酸トリメチルシリル、エタンスルホン酸トリメチルシリル、メタンスルホン酸トリエチルシリル、フルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、フルオロメタンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル類等の正極保護剤;
(4)トリメチルホスフェートやトリエチルホスフェート等のリン酸エステル類、ポリリン酸メラミン塩やポリリン酸アンモニウム塩、ポリリン酸エチレンジアミン塩、ポリリン酸ヘキサメチレンジアミン塩、ポリリン酸ピペラジン塩等のポリリン酸類等の難燃化剤;
等が挙げられる。
(1)ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物等の過充電防止剤;
(2)ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジアリルジカーボネート等の不飽和結合含有カーボネート、フルオロエチレンカーボネートやトリフルオロメチルエチレンカーボネート等のハロゲン含有カーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルテトラエチルジシロキサン等のシロキサン化合物等の負極被膜形成剤;
(3)亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、プロペンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、グリコールサルフェートやプロピレングリコールサルフェート等の硫酸エステル類、メタンスルホン酸トリメチルシリル、エタンスルホン酸トリメチルシリル、メタンスルホン酸トリエチルシリル、フルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、フルオロメタンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル類等の正極保護剤;
(4)トリメチルホスフェートやトリエチルホスフェート等のリン酸エステル類、ポリリン酸メラミン塩やポリリン酸アンモニウム塩、ポリリン酸エチレンジアミン塩、ポリリン酸ヘキサメチレンジアミン塩、ポリリン酸ピペラジン塩等のポリリン酸類等の難燃化剤;
等が挙げられる。
ここで、上記の過充電防止剤としては、ビフェニル、ターフェニル(又はその部分水素化体)、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼンが好ましい。これらは、2種類以上併用して、用いてもよい。
また、負極被膜形成剤としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、無水コハク酸、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンが好ましい。これらは、2種類以上併用して、用いてもよい。正極保護剤としては、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチルが好ましい。これらは、2種類以上併用して、用いてもよい。また、負極被膜形成剤と正極保護剤との併用や、過充電防止剤と負極被膜形成剤と正極保護剤との併用が特に好ましい。
そして、非水電解液中におけるこれら他の化合物の含有割合は、特に限定されることはないが、非水系電解液全体に対し、それぞれ、0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、特に好ましくは0.1重量%以上5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以上2重量%以下である。これらの化合物を添加することにより、過充電による異常時に電池の破裂・発火を抑制したり、高温保存後の容量維持率やサイクル特性を向上させたりすることが出来る。
ところで、かくの如き本発明に従う非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、よく知られているように、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、それら正極及び負極の間に介在せしめられた、本発明に従う非水電解液とを含んでなる構造において、基本的に構成されることとなる。
そこにおいて、正極は、一般に、正極活物質と導電材と結着材とを含んで構成されている。具体的には、それら正極活物質と導電材と結着材とを適当な溶媒にて混合して得られた正極スラリーを用い、それを、適当な塗工装置にて所定の正極集電箔上に塗工することにより、正極シートを形成して、目的とする正極として用いられるのである。
そして、そのような正極を与える構成成分の一つたる正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化物が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、リチウムコバルト系複合酸化物(典型的にはLiCoO2 )、リチウムニッケル系複合酸化物(典型的にはLiNiO2 )、リチウムマンガン系複合酸化物(典型的にはLiMn2O4)、リチウムバナジウム系複合酸化物(典型的にはLiV2O3)や、更に、遷移金属を2種以上含む複合酸化物等が挙げられる。リチウム含有遷移金属リン酸化物としては、例えば、鉄リン酸化物(典型的にはLiFePO4)、コバルトリン酸化物(典型的にはLiCoPO4)や、遷移金属を2種以上含む複合リン酸化物等が挙げられる。
また、導電材は、正極の電気伝導性を確保するためのものであり、一般に、公知の各種の炭素粉末材料が用いられ、例えば、非水電解液との反応がなく且つ良好な体積固有抵抗(100Ω・cm未満)を有しているために、アセチレンブラック等のカーボンブラックや炭素繊維等の炭素微分が用いられることとなる。更に、結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、一般に、リチウムイオン二次電池の電位において分解反応がなく且つ非水電解液に対して不溶であるポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等が、好適に用いられる。なお、正極活物質、導電材及び結着材を分散させる溶媒としては、例えば、N−メチル2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられ、更に、集電体となる集電箔の材質としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケルメッキ鋼等が採用されることとなる。
さらに、リチウムイオン二次電池における負極は、一般に、負極活物質と結着材とを含んで構成され、そして、その電気抵抗を下げるために、適宜に導電材が配合されて用いられることとなる。なお、それら負極活物質と結着材と更に必要に応じて配合される導電材には、上記した正極の場合と同様にして、適当な溶媒が加えられて、ペースト状の負極材として、所定の集電体の表面に塗工することにより、負極シートとして用いられるのである。
なお、そのような負極を構成する成分の一つである負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はなく、天然黒鉛や人造炭素物質、コークス等の炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好適に用いられることとなる。また、結着材としては、上記した正極の場合と同様に、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等が好適に用いられ、更に導電材としては、非水電解液との反応がなく且つ良好な体積固有抵抗(100Ω・cm未満)を有しているところから、アセチレンブラック等のカーボンブラックや、気相成長させた炭素繊維等の微粉体が、有利に用いられることとなる。更に、負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の箔を用いることが出来る。
また、本発明に従って構成されるリチウムイオン二次電池においても、従来と同様に、負極と正極との間に、適当なセパレータを配設することが可能である。このセパレータとしては、小型民生機器用リチウムイオン電池で従来から用いられているもので良く、特に限定されるものではない。尤も、正極と負極とを隔てることが可能であり且つ電解液を保持することが出来るものであることが望ましく、そのために、不織布や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系微多孔膜(フィルム)が、好適に用いられることとなる。
加えて、本発明が適用されるリチウムイオン二次電池の形状としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の各種の形状乃至は構造において、本発明が適用され得るものであって、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、扁平型、角型等の形状を採用することが可能である。また、電気自動車等の輸送機器に用いる大型のもの等にも、有利に適用することが可能である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そしてそのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことも、また、理解されるべきである。
−非水電解液の調製−
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比で1:1:1となるように混合してなる混合溶媒に、LiPF6 を、1mol/Lの濃度となるように溶解せしめ、更に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩として、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)を1.0重量%の割合において、また、多価アルコールのアクリル酸/メタクリル酸エステルとしてのエチレングリコールジメタクリレートを、0.2重量%の割合において、更に、ビニルフルオロシランとして、ジメチルビニルフルオロシランを、1.0重量%の割合となるように配合して、溶解・含有せしめ、実験例1に係る非水電解液を調製した。
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比で1:1:1となるように混合してなる混合溶媒に、LiPF6 を、1mol/Lの濃度となるように溶解せしめ、更に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩として、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)を1.0重量%の割合において、また、多価アルコールのアクリル酸/メタクリル酸エステルとしてのエチレングリコールジメタクリレートを、0.2重量%の割合において、更に、ビニルフルオロシランとして、ジメチルビニルフルオロシランを、1.0重量%の割合となるように配合して、溶解・含有せしめ、実験例1に係る非水電解液を調製した。
また、エチレングリコールジメタクリレートに代えて、エチレングリコールジアクリレートを用い、エチレングリコールジアクリレートの含有濃度を、0.5重量%とすること以外は、上記した実験例1の場合と同様にして、実験例2に係る非水電解液を調製した。
さらに、エチレングリコールジアクリレートに代えて、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを用いたこと以外は、上記した実験例2の場合と同様にして、実験例3に係る非水電解液を調製した。
加えて、ジメチルビニルフルオロシランに代えて、ジ−n−ブチルビニルフルオロシランを用いたこと以外は、実験例1の場合と同様にして、実験例4に係る非水電解液を調製した。
一方、比較のために、LiBOBとエチレングリコールジメタクリレート及びジメチルビニルフルオロシランを添加含有せしめないこと以外は、実験例1の場合と同様にして、非水電解液を調製し、比較例1に係る非水電解液とした。
また、ジメチルビニルフルオロシラン又はエチレングリコールジメタクリレートを添加含有せしめないこと以外は、実験例1の場合と同様にして、非水電解液を調製し、それぞれ、比較例2又は比較例3に係る非水電解液とした。
−リチウムイオン二次電池の作製−
正極活物質としてのLiNiO2 を85重量%、導電剤としてのアセチレンブラックを10重量%、そして結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%となるように混合し、更に分散剤としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加して、スラリー状の正極材を得た。次いで、この正極材スラリーを、20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥して、正極塗布シートを作製した。その後、かかる塗布シートをプレスし、所定サイズの矩形状に切出し、そして、電流取出し用のリードタブ溶接部となる部分の正極材を剥ぎ取って、シート状の正極電極とした。
正極活物質としてのLiNiO2 を85重量%、導電剤としてのアセチレンブラックを10重量%、そして結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%となるように混合し、更に分散剤としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加して、スラリー状の正極材を得た。次いで、この正極材スラリーを、20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥して、正極塗布シートを作製した。その後、かかる塗布シートをプレスし、所定サイズの矩形状に切出し、そして、電流取出し用のリードタブ溶接部となる部分の正極材を剥ぎ取って、シート状の正極電極とした。
また、負極活物質としての炭素材料粉末を95重量%、そして結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%の割合で混合せしめて、上記した正極の場合と同様にして、負極スラリーを作製し、それを、10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布した後、加熱乾燥して、負極塗布シートを作製した。その後、かかる塗布シートをプレスし、所定サイズの矩形状に切出し、そして、電流取出し用のリードタブ溶接部となる部分の負極材を剥ぎ取って、シート状の負極電極を得た。
かくして得られた正極電極と負極電極とを、25μm厚の微多孔性ポリエチレン製フィルムからなるセパレータを挟んで捲回し、ロール状の電極体とした後、そのロール状の電極体を、18650型円筒ケースに挿入して、ケース内に保持せしめた。また、その際、正極及び負極のリードタブ溶接部に接続した集電リードを、ケースに設けられた正極端子及び負極端子に、それぞれ接合した。その後、先に調製された実験例1〜4及び比較例1〜3に係る非水電解液を、それぞれ、ケース内に注入し、密閉して、それぞれ、実験例1〜4及び比較例1〜3に係る円筒型リチウムイオン二次電池を得た。
−初期放電容量−
上記で作製した実験例1〜4及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池を用いて、0.2mA/cm2で4.1Vまで定電流充電した後、0.2mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行った。続いて、0.2mA/cm2 で4.1Vまで充電した後、0.1mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行い、このときの放電容量を初期放電容量:V0とした。なお、測定は20℃の雰囲気下において行った。
上記で作製した実験例1〜4及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池を用いて、0.2mA/cm2で4.1Vまで定電流充電した後、0.2mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行った。続いて、0.2mA/cm2 で4.1Vまで充電した後、0.1mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行い、このときの放電容量を初期放電容量:V0とした。なお、測定は20℃の雰囲気下において行った。
−高温サイクル特性試験・放電容量維持率−
上記で得られた実験例1〜4及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池を用いて、それぞれ、雰囲気温度:60℃の恒温槽に入れ、充電電流:2.0mA/cm2 で4.1Vまでの定電流充電を行なった後、放電電流:2.0mA/cm2 で3.0Vまでの定電流放電を行うことからなる充放電操作を1サイクルとし、このサイクルを、合計500サイクル行うことからなる高温サイクル特性試験を行った。そして、かかる高温サイクル特性試験の後、雰囲気温度を20℃とし、0.2mA/cm2 で4.1Vまで定電流充電した後、0.2mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電を行なった。続いて、0.2mA/cm2で4.1Vまで充電した後、0.1mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行ない、このときの放電容量をサイクル後放電容量:Vcとした。
上記で得られた実験例1〜4及び比較例1〜3のリチウムイオン二次電池を用いて、それぞれ、雰囲気温度:60℃の恒温槽に入れ、充電電流:2.0mA/cm2 で4.1Vまでの定電流充電を行なった後、放電電流:2.0mA/cm2 で3.0Vまでの定電流放電を行うことからなる充放電操作を1サイクルとし、このサイクルを、合計500サイクル行うことからなる高温サイクル特性試験を行った。そして、かかる高温サイクル特性試験の後、雰囲気温度を20℃とし、0.2mA/cm2 で4.1Vまで定電流充電した後、0.2mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電を行なった。続いて、0.2mA/cm2で4.1Vまで充電した後、0.1mA/cm2で3.0Vまで定電流放電を行ない、このときの放電容量をサイクル後放電容量:Vcとした。
かくして得られたサイクル後放電容量:Vcと、先に得た初期放電容量:V0とを用い、次式(1)により放電容量維持率:Vk(%)を求めた。
放電容量維持率:Vk(%)=Vc/V0×100 …式(1)
放電容量維持率:Vk(%)=Vc/V0×100 …式(1)
−電池抵抗増加率−
実験例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池を用い、充放電のサイクルを繰り返した際の、電池抵抗増加率:Rinを求めた。電池抵抗は、20℃で、充電電流:0.2mA/cm2 で3.7Vまで定電流定電圧充電を行なった後、放電電流:10mA/cm2 で定電流放電を行ない、10秒後の電圧を測定して、電圧降下により求めた、この値を20℃での電池抵抗:R20とした。また、20℃の電池抵抗増加率:Rinは、20℃において、上記高温サイクル特性試験の前に測定した電池抵抗:Rb と、上記高温サイクル特性試験の後に測定した電池抵抗:Raとを用い、次式(2)により求めた。
電池抵抗増加率:Rin(%)=(Ra−Rb)/Rb×100 …式(2)
実験例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池を用い、充放電のサイクルを繰り返した際の、電池抵抗増加率:Rinを求めた。電池抵抗は、20℃で、充電電流:0.2mA/cm2 で3.7Vまで定電流定電圧充電を行なった後、放電電流:10mA/cm2 で定電流放電を行ない、10秒後の電圧を測定して、電圧降下により求めた、この値を20℃での電池抵抗:R20とした。また、20℃の電池抵抗増加率:Rinは、20℃において、上記高温サイクル特性試験の前に測定した電池抵抗:Rb と、上記高温サイクル特性試験の後に測定した電池抵抗:Raとを用い、次式(2)により求めた。
電池抵抗増加率:Rin(%)=(Ra−Rb)/Rb×100 …式(2)
−初期抵抗特性−
実験例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池を用い、高温サイクル特性試験を行なう前の状態で、20℃において、初期抵抗特性:Rs を求めた。ここでは、初期抵抗特性:Rs は、LiBOBと多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステル及びジメチルビニルフルオロシランを添加含有せしめていない、比較例1の初期電池抵抗:Rb1を基準(=100)とした相対値を、次式(3)を用いて求めた。
初期抵抗特性:Rs=(Rb/Rb1)×100 …式(3)
実験例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池を用い、高温サイクル特性試験を行なう前の状態で、20℃において、初期抵抗特性:Rs を求めた。ここでは、初期抵抗特性:Rs は、LiBOBと多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステル及びジメチルビニルフルオロシランを添加含有せしめていない、比較例1の初期電池抵抗:Rb1を基準(=100)とした相対値を、次式(3)を用いて求めた。
初期抵抗特性:Rs=(Rb/Rb1)×100 …式(3)
かくして得られた実験例1〜4及び比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池についての放電容量維持率、初期抵抗特性及び電池抵抗増加率についての結果を、それぞれ、下記表1に示す。
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従って、非水溶媒にリチウムを含む電解質塩を溶解させてなる非水電解液に対して、更に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを添加配合せしめてなる非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池(実験例1〜4)にあっては、その何れか一つを少なくとも含有していない比較例1〜3に係るリチウムイオン二次電池に比べて、サイクル試験後の容量維持率と抵抗増加率が有利に改善せしめられていることを、認めることが出来る。
Claims (8)
- リチウムを含む電解質塩を非水系溶媒に溶解せしめてなる、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液にして、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と共に、多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルと、ビニルフルオロシランとを、更に含有していることを特徴とする非水電解液。
- 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が、リチウムビス(オキサラト)ボレートである請求項1に記載の非水電解液。
- 前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩が、非水電解液中に、0.05重量%以上の割合において含有せしめられている請求項1又は請求項2に記載の非水電解液。
- 前記多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルが、炭素数:2〜5のアルキレングリコールとアクリル酸若しくはメタクリル酸とのジエステル化合物である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の非水電解液。
- 前記多価アルコールのアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルが、非水電解液中に、0.01重量%以上の割合において含有せしめられている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の非水電解液。
- 前記ビニルフルオロシランが、ジメチルビニルフルオロシラン、エチルメチルビニルフルオロシラン、ジエチルビニルフルオロシラン、ジ−n−プロピルビニルフルオロシラン、ジ−n−ブチルフルオロシラン、及びジフェニルビニルフルオロシランからなる群より選択された少なくとも1種以上である請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の非水電解液。
- 前記ビニルフルオロシランが、非水電解液中に、0.01重量%以上の割合において含有せしめられている請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の非水電解液。
- 正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、それら正極及び負極の間に介在させられて、リチウムイオンを伝導する電解液とを備えたリチウムイオン二次電池において、
該電解液として、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の非水電解液を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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