以下、本発明のハイブリッド型作業機械を適用した実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械を含む建設機械を示す側面図である。
このハイブリッド型作業機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
「全体構成」
図2は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを太実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を細実線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16Aを介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、実施の形態1の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、コントロールバルブ17には、切替弁130及び140を介して油圧モータ150が接続される。切替弁130は、入力側がメインポンプ14とコントロールバルブ17に接続されており、出力側が切替弁140を介して油圧モータ150に接続されている。
切替弁130は、圧油の供給源をメインポンプ14又はコントロールバルブ17で切り替える切替弁である。また、切替弁140は、油圧モータ150への圧油の供給/非供給を切り替える切替弁である。
なお、メインポンプ14から切替弁130及び140を介して油圧モータ150に圧油を供給する高圧油圧ライン16Bは、バイパス部を構成する。
油圧モータ150の出力軸150Aには発電機160が接続されており、油圧モータ150が駆動される際に、電力を発電する。発電された電力は、インバータ170を介してDCバス110に供給される。
なお、切替弁130、140、及びインバータ170の駆動制御は、後述する駆動制御部120によって行われる。
また、電動発電機12には、インバータ18及び蓄電制御部としての昇降圧コンバータ100を介して蓄電器としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。
また、DCバス110には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。
DCバス110には、DCバス110の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ30に入力される。なお、バッテリ19、DCバス110と昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21との間で電力の授受を行う蓄電系を構成する。
また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部113が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21、インバータ20、レゾルバ22、及び旋回用減速機24とで負荷駆動系を構成する。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cを含み、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cには、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1の建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このような実施の形態1の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型作業機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
また、上述のように、コントロールバルブ17には、切替弁130及び140を介して油圧モータ150が接続されている。油圧モータ150は、ブーム4が下げられるときにブームシリンダ7からコントロールバルブ17に戻される圧油、又は、コントロールバルブ17を介さずに、メインポンプ14から直接供給される圧油によって駆動される油圧モータである。この油圧モータ150の駆動制御と切替弁130、140の構成及び切替制御については、後に詳しく述べる。
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。電動発電機12とインバータ18とで電動発電系を構成する。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。
このバッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100によって行われる。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。
インバータ20は、旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19へ充電する。図2には、旋回電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む実施の形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス110に接続するようにしてもよい。
昇降圧コンバータ100は、一側がDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してバッテリ19に充電する必要があるため、DCバス電圧値を降圧する必要がある。これは、旋回用電動機21の力行運転と回生運転においても同様であり、その上、電動発電機12はエンジン11の負荷状態に応じて運転状態が切り替えられ、旋回用電動機21は上部旋回体3の旋回動作に応じて運転状態が切り替えられるため、電動発電機12と旋回用電動機21には、いずれか一方が電動(アシスト)運転又は力行運転を行い、他方が発電運転又は回生運転を行う状況が生じうる。
また、実施の形態1のハイブリッド型作業機械では、油圧モータ150によって駆動される発電機160で発電される電力がDCバス110に供給される。このように発電機160からDCバス110に供給される電力は、電動発電機12の電動運転、又は旋回用電動機21の力行運転によって消費される場合と、バッテリ19に蓄積される場合とがある。
このため、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、旋回用電動機21、及び発電機160の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
DCバス110は、インバータ18、20、及び170と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、バッテリ19、電動発電機12、旋回用電動機21、及び発電機160の間で電力の授受を行うことができるように構成されている。
DCバス電圧検出部111は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ30に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
バッテリ電流検出部113は、バッテリ19の電流値を検出するための電流検出部である。バッテリ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100に流れる電流を正の値として検出される。検出されるバッテリ電流値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
切替弁130は、圧油の入力をメインポンプ14又はコントロールバルブ17で切り替える切替弁であり、例えば、スプールバルブで構成される。
切替弁140は、油圧モータ150への圧油の供給/非供給を切り替える切替弁であり、例えば、スプールバルブで構成される。
切替弁130及び140の詳細な構成については、図4を用いて後述する。
油圧モータ150は、ブーム4が下げられるときにブームシリンダ7からコントロールバルブ17に戻される圧油、又は、コントロールバルブ17を介さずに、メインポンプ14から直接供給される圧油によって駆動されることにより、これらの圧油の圧力エネルギを回転駆動力に変換する油圧モータである。この油圧モータ150は、発電機160を駆動するために配設される。
発電機160は、上述のように油圧モータ150によって回転駆動力に変換された圧油の圧力エネルギを電気エネルギに変換して回収するための発電機である。この発電機160により、ブーム4が下げられるときにブームシリンダ7からコントロールバルブ17に戻される圧油、又は、コントロールバルブ17を介さずに、メインポンプ14から直接供給される圧油の圧力エネルギを電気エネルギとして回収することができる。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、キャビン10内の運転席の前方に配設されている。
レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーである。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)をレバー26A、26B、及びペダル26Cの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
旋回用操作検出部としての圧力センサ29では、操作装置26のレバー26A及び26Bとペダル26Cの各々に対して操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される下部走行体1、旋回機構2、ブーム4、アーム5、及びバケット6を駆動させるための操作量を的確に把握することができる。この電気信号は、コントローラ30に入力される。
また、実施の形態1では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
「コントローラ30」
コントローラ30は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械の駆動制御を行う制御装置であり、駆動制御部120を含み、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
駆動制御部120は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)、及び、昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるバッテリ19の充放電制御に加えて、切替弁130、140の切替制御、発電機160の運転制御を行うための制御装置である。
駆動制御部120は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりバッテリ19の充放電制御を行う。
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づいて行われる。
また、駆動制御部120は、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6の駆動状態に応じて、切替弁130、140の切替制御を行い、油圧モータ150によって駆動される発電機160の運転制御を行う。このため、駆動制御部120には、圧力センサ29を通じて、操作装置26のレバー26A、26B、及びペダル26Cに入力されるすべての操作状況を表す電気信号が入力される。
また、駆動制御部120には、電動発電機12の温度、電動発電機12に通流する電流値、電動発電機12に印加される電圧値、インバータ18に含まれるスイッチング素子の温度、インバータ18に供給される電圧値、及びインバータ18に供給される電流値を表す信号が入力されるように構成されている。
駆動制御部120は、これらの温度等に基づき、電動発電機12とインバータ18の異常を検出する。このため、駆動制御部120は、電動発電機12とインバータ18の異常を検出する異常検出部としての機能も担う。
なお、電動発電機12の異常とは、例えば、電動発電機12に断線が生じている場合や、温度が異常に上昇している状態をいう。
なお、駆動制御部120は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
図3は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械に用いる蓄電系の詳細図である。この昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、バッテリ19を接続するための電源接続端子104、インバータ105を接続するための出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。コンバータ10の出力端子106とインバータ105との間は、DCバス110によって接続される。なお、インバータ105は、インバータ18及び20(図2参照)に相当する。
リアクトル101は、一端が昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続されるとともに、他端が電源接続端子104に接続されており、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、後述する昇降圧コンバータの駆動制御装置からゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、図3には、蓄電器としてバッテリ19を示すが、バッテリ19の代わりに、コンデンサ、充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
電源接続端子104及び出力端子106は、バッテリ19及びインバータ105が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値(vbat_det)を検出し、DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧(以下、DCバス電圧:vdc_det)を検出する。
平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化できる蓄電素子であればよい。
バッテリ電流検出部113は、バッテリ19に通流する電流の値を検出可能な検出手段であればよく、電流検出用の抵抗器を含む。このリアクトル電流検出部108は、バッテリ19に通流する電流値(ibat_det)を検出する。
「昇降圧動作」
このような昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力をDCバス110に供給する。これにより、DCバス110が昇圧される。
また、DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102B、インバータ105を介して供給される回生電力をDCバス110からバッテリ19に供給する。これにより、DCバス110に蓄積された電力がバッテリ19に充電され、DCバス110が降圧される。
図4は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械の発電機160によるエネルギ回収機構及びその周辺部を詳細に示す構成図である。この図4には、説明の便宜上、ブームシリンダ7と油圧モータ150の駆動に関係する構成要素のみを示し、他の構成要素は省略する。
コントロールバルブ17には、ブームシリンダ7への圧油の供給制御を行うための切替弁17A、17B、絞り17C、及び圧油タンク17Dが含まれる。切替弁17A及び17Bは、操作装置26への操作入力に応じて変化するパイロット圧によって切り替えられる。
また、切替弁17Aは、例えば、スプールバルブで構成され、3つの油路17A−1、17A−2、17A−3を有する。この切替弁17Aの切り替えは、操作装置26に入力される操作量に応じて変化するパイロット圧によって行われる。
油路17A−1は、メインポンプ14からブームシリンダ7の下降用シリンダ室7Aに圧油を供給し、上昇用シリンダ室7Bから油を抜き取るための油路である。なお、このとき、切替弁17Bは油路17B−2に切り替えられる。また、油路17A−2は、図4に示すように接続されることにより、メインポンプ14で生成される圧油を圧油タンク17Dに供給する油路である。この油路17A−2が高圧油圧ライン16Aに接続されているときには、ブームシリンダ7は静止状態に保持される。なお、このとき、切替弁17Bは油路17B−1に切り替えられる。さらに、油路17A−3は、メインポンプ14で生成される圧油をブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bに供給するとともに、下降用シリンダ室7Aの内部の油を抜き取るための油路である。なお、このとき、切替弁17Bは油路17B−2に切り替えられる。
切替弁17Bは、ブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bと切替弁17Aとの間に配設され、2つの油路17B−1、17B−2を有する。この切替弁17Bの切り替えは、操作装置26に入力される操作量に応じて変化するパイロット圧によって行われる。
油路17B−1は、遮断用の油路であり、油路17B−2は、圧油が両方向に通流可能な油路である。この切替弁17Bの油路17B−1、17B−2の切り替えは、上述の通り、ブームシリンダ7を静止状態に保持する場合には、油路17B−1に切り替えられ、ブームシリンダ7を駆動する場合には、油路17B−2に切り替えられる。
切替弁130は、圧油の供給源をメインポンプ14又はコントロールバルブ17のいずれかに切り替える回生切替弁である。切替弁130は、例えば、スプールバルブで構成され、3つの油路130A、130B、130Cを有する。この切替弁130の切り替えは、駆動制御部120によって電気的に行われる。
油路130Aは、メインポンプ14で生成される圧油を直接的に油圧モータ150に供給する際に接続される油路である。このとき、メインポンプ14で生成される圧油は、高圧油圧ライン16Bを通じて、コントロールバルブ17をバイパスされ、直接的に油圧モータ150に供給される。なお、このとき、切替弁140は、油路140Aに切り替えられる。
油路130Bは、切替弁を切り替える際、コントロールバルブ17から入力ポートとメインポンプ14からの入力ポートとがバイパスするのを防ぐための不感帯として機能する油路である。油路130Aから油路130C、若しくは、油路130Cから油路130Aから油路130Cへ切り替えを行う際に、一時的に経由する。
油路130Cは、図4に示すような接続状態にされることにより、ブーム4が下げられるときに、ブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bからコントロールバルブ17に戻される圧油を油圧モータ150に供給する場合に接続される油路である。なお、このとき、切替弁140は、油路140Aに切り替えられる。
切替弁140は、油圧モータ150への圧油の供給/非供給を切り替える切替弁である。切替弁140は、例えば、スプールバルブで構成され、2つの油路140A、140Bを有する。この切替弁140の切り替えは、駆動制御部120によって電気的に行われる。なお、切替弁140は、油圧モータ150に圧油を供給する場合には、油路140Aに切り替えられ、油圧モータ150に圧油を供給しない場合には、油路140Bに切り替えられる。
このような実施の形態1のハイブリッド型作業機械において、図4に示す状態では、切替弁17Aは油路17A−2に切り替えられ、高圧油圧ライン16Aは絞り17Cを介して圧油タンク17Dに接続されており、切替弁17Bは油路17B―1に切り替えられて遮断されている。これにより、ブームシリンダ7は静止されている。
また、切替弁130は、油路130Cに切り替えられているため、高圧油圧ライン16Bは遮断され、また、切替弁140は、油路140Bに切り替えられているため、油圧モータ150は駆動されておらず、発電機160は静止状態にある。
次に、高圧油圧ライン16Bを経て油圧モータ150に圧油を供給する場合について説明する。
図5は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械において、高圧油圧ライン16Bを経て油圧モータ150に圧油を供給する場合の油圧回路の接続状態を示す図である。
図5に示すように、切替弁130は、油路130Aに切り替えられ、切替弁140は、油路140Aに切り替えられている。
これにより、メインポンプ14で生成される圧油は、コントロールバルブ17を経ずに(コントロールバルブ17をバイパスして)、高圧油圧ライン16Bを通じて、直接的に油圧モータ150に供給される。油圧モータ150が駆動されることにより、発電機160が発電を行い、インバータ170を介してDCバス110に直流電力が供給される。
このように、コントロールバルブ17を経ずに、メインポンプ14から圧油を直接的に油圧モータ150に供給する場合は、ブーム4が下げられるときにブームシリンダ7からコントロールバルブ17に戻される圧油によって油圧モータ150を駆動する場合と異なり、切替弁130及び140を切り替えるだけで、継続的に発電を行うことができる。
実施の形態1のハイブリッド型作業機械において、電動発電機12が駆動されなくなっても、メインポンプ14は、エンジン11によって常に駆動されているため、切替弁130及び140を油路130A及び140Aに切り替えるだけで、継続的に発電を行うことができる。
図6は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械において実行される切替弁130及び140の切替制御処理の内容を示す処理手順を示す図である。この処理は、駆動制御部120によって実行される。
駆動制御部120は、ハイブリッド型作業機械の運転が開始されると、切替制御処理を開始する。
駆動制御部120は、電動発電機12又はインバータ18の異常が発生していないか否かを判定する(ステップS1)。
駆動制御部120は、異常が発生していると判定した場合は(ステップS1でYes)、切替弁130を油路130Aに切り替え、切替弁140を油路140Aに切り替える(ステップS2)。これは、図5に示す状態に相当する。
これにより、メインポンプ14で生成される圧油は、コントロールバルブ17を経ずに(コントロールバルブ17をバイパスして)、高圧油圧ライン16Bを通じて、直接的に油圧モータ150に供給される。
このように、油圧モータ150が駆動されることにより、電動発電機12が発電運転を行うことができない状態であっても、発電機160が発電を行い、インバータ170を介してDCバス110に直流電力が供給されるため、旋回用電動機21の駆動制御を行うことができる。
一方、ステップS1において、駆動制御部120が電動発電機12又はインバータ18の異常が発生していないと判定した場合は(ステップS1でNo)、切替弁130Cを切り替え(ステップS3)、駆動制御部120は、ブーム4が下げられているか否かを判定する(ステップS4)。ブーム4が下げられていることは、圧力センサ29から駆動制御部120に入力される信号に基づき、操作装置26のレバー26Bにブーム4を下げるための操作が入力されたか否かを判定することによって検知することができる。
駆動制御部120は、ブーム4が下げられていると判定した場合は(ステップS4でYes)、切替弁140を油路140Aに切り替える(ステップS5)。
これにより、ブームシリンダ7からコントロールバルブ17に戻される圧油によって油圧モータ150が駆動され、発電機160によって発電が行われる。
また、ステップS4において、ブーム4が下げられていないと判定した場合は、駆動制御部120は、切替弁140を油路140Bに切り替える(ステップS6)。これは、図4に示す状態に相当する。
これにより、ブームシリンダ7の静止、又は上昇動作が可能になる。
従来のハイブリッド型作業機械は、高圧油圧回路16B及び切替弁130を有しないため、電動発電機12又はインバータ18に異常が生じて発電運転を行えなくなった場合には、旋回用電動機21の力行運転を行うための電力は、バッテリ19に蓄積された電力だけに限られてしまう。
このため、電動機12又はインバータ18に異常が生じた場合に、バッテリ19の充電率が低下すると、旋回用電動機21を旋回駆動させることができなくなる可能性がある。
しかしながら、実施の形態1のハイブリッド型作業機械によれば、そのような場合に切替弁130及び140を油路130A及び140Aに切り替えれば、常時駆動されているメインポンプ14で生成される圧油が高圧油圧回路16Bを経て油圧モータ150に直接的に供給される。これにより、油圧モータ150の駆動を継続的に行うことができ、これにより発電機160で継続的に発電が行われるため、バッテリ19を充電することができ、旋回用電動機21の駆動制御を継続的に行うことができる。また、メインポンプ14から油圧駆動部への圧油の出力要求がない場合にもブームシリンダ7へ圧油を供給する必要がないため、コントロールバルブ17を経ずに、メインポンプ14から圧油を油圧モータ150に供給することができる。
なお、以上では、バケット6を有するハイブリッド型作業機械について説明したが、バケット6の代わりに、インバータを介してDCバス110に接続されるリフティングマグネットを有していてもよい。
電動発電機12又はインバータ18に異常が生じた場合に、切替弁130及び140が油路130A及び140Aに切り替えられることにより、高圧油圧ライン16Bを介してメインポンプ14から油圧モータ150に圧油を直接的に供給できるため、旋回用電動機21に加えて、リフティングマグネットの駆動制御も行うことができる。
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2のハイブリッド型作業機械の発電機160によるエネルギ回収機構及びその周辺部を詳細に示す構成図である。この図7には、説明の便宜上、ブームシリンダ7と油圧モータ150の駆動に関係する構成要素のみを示し、他の構成要素は省略する。
実施の形態2のハイブリッド型作業機械は、切替弁230の構成が実施の形態1の切替弁130と異なる。その他の構成は、実施の形態1のハイブリッド型作業機械と同一であるため、同一の構成要素には、同一符号を付し、その説明を省略する。
切替弁230は、油路230A、230B、230Cを含む。このうち、油路230B及び230Cは、実施の形態1のハイブリッド型作業機械における切替弁130の油路130B及び130Cと同一である。すなわち、切替弁230は、油路230Aの構成が実施の形態1の切替弁130と異なる。
切替弁230の油路230Aは、高圧油圧ライン16Bを経てメインポンプ14から直接的に供給される圧油と、ブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bから供給される圧油との両方を油圧モータ150に供給するための油路である。
図8は、実施の形態2のハイブリッド型作業機械において、切替弁230の油路230Aを経て、高圧油圧ライン16B及びブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bから油圧モータ150に圧油を供給する場合の油圧回路の接続状態を示す図である。
図8に示すように、切替弁230は、油路230Aに切り替えられ、切替弁140は、油路140Aに切り替えられている。
これにより、メインポンプ14で生成される圧油は、コントロールバルブ17を経ずに(コントロールバルブ17をバイパスして)、高圧油圧ライン16Bを通じて、直接的に油圧モータ150に供給される。また、これに加えて、ブーム4が下げられる場合には、切替弁17Aが油路17A−1に切り替えられるとともに、切替弁17Bが油路17B−2に切り替えられるため、高圧油圧ライン16B及びブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bの双方から油圧モータ150に圧油が供給される。
このように、高圧油圧ライン16B及びブームシリンダ7の上昇用シリンダ室7Bの双方から油圧モータ150に圧油を供給できるので、継続的に発電を行うことができ、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合でも、旋回用電動機21の駆動制御を行うことができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のハイブリッド型作業機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。