まず、本発明の第1実施形態によるハイブリッド型作業機械について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド型作業機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
油圧ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が搭載されている。また、上部旋回体3には、操縦装置及び運転席が設けられたキャビン10及びエンジンや蓄電部等の動力源が搭載される。
図2は、油圧ショベルの全体構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力伝達ラインを太い実線、油圧ラインを一点鎖線、パイロット油圧ラインを破線、電気駆動・制御ラインを実線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増速機としての変速機13の入力軸に接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプであるメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、油圧系の制御を行う制御装置である。コントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26には、パイロット油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ120に接続されている。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、ハイブリッド型建設機械の運転者によって操作される。
操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
操作装置26が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に供給される油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の駆動に必要な油圧をコントロールバルブ17に供給する。
旋回用操作検出部としての圧力センサ29は、操作装置26に対して旋回機構2を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を的確に把握することができる。この電気信号は、コントローラ120に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。また、本実施形態では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
エンジン11をアシストするための電動発電機12は、インバータ18を介して蓄電部50に接続される。蓄電部50は電動発電機12や他の電気負荷に対して電力を供給する電力供給部であり、電動発電機12の発電電力や他の電気負荷の回生電力を蓄積する機能も有する。
蓄電部50にはインバータ20Aを介して旋回用電動機21が電気的に接続される。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。
また、蓄電部50にはインバータ20Bを介して電動機30が電気的に接続されている。電動機30は、図1に示すブーム4のブーム軸に接続されており、ブーム4がブームシリンダ7によって油圧で駆動される際に発電を行うように構成されたブーム回生用の発電機である。電動機30により発電された電力は、回生エネルギとしてインバータ20Bを経て蓄電部50に供給される。
以上のような構成の油圧ショベルは、エンジン11、電動発電機12、旋回用電動機21、及び電動機30を動力源とするハイブリッド型作業機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。
ここで、蓄電部50について、図3を参照しながら詳細に説明する。図3は蓄電部50の回路図である。
蓄電部50は、バッテリ19と、昇降圧コンバータ100A及び100Bと、DCバス110A及び110Bとを有する。昇降圧コンバータ100A及び100Bの構成は同一であるため、ここでは昇降圧コンバータ100Aを中心に説明を行う。
昇降圧コンバータ100Aは、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、バッテリ19を接続するための電源接続端子103A、及び、負荷を接続するための出力端子104Aを備える。昇降圧コンバータ100Aの出力端子104Aと負荷との間は、DCバス110Aによって接続される。DCバス110Aに接続される電気負荷は、電動発電機12である。
なお、図3において、図の簡略化のためにインバータ18(図2参照)図示を省略する。また、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102BをPWM駆動する駆動制御部120A(図2参照)の図示を省略する。
昇降圧コンバータ100Aは自己診断機能を有しており、この自己診断機能は、昇降圧コンバータ100Aの電流検出部113Aが電流値を監視することによって実現される。なお、この自己診断機能は、電流検出部113Aの検出値を昇降圧コンバータ100Aが監視することによって実現されてもよい。
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子103Aに接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110Aに供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの各々は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングを行なうことができる。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ120の駆動制御部120Aからゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bがそれぞれ並列に接続される。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100Aを介してDCバス110Aとの間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、図3には蓄電器としてバッテリ19を示すが、バッテリ19の代わりに、コンデンサ、充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
電源接続端子103Aは、バッテリ19が接続可能な端子であればよい。出力端子104Aは、DCバス110Aが接続可能な端子であればよい。
バッテリ19には、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出部112A及び112Bが接続される。また、DCバス110Aには、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111Aが接続される。バッテリ電圧検出部112A及び112Bは、バッテリ19の電圧値を検出し、DCバス電圧検出部111Aは、DCバス110Aの電圧値を検出する。
電流検出部113Aは、昇降圧コンバータ100Aのコンバータ電流値を検出可能な検出手段であればよく、電流検出用の抵抗器を含む。
昇降圧コンバータ100Bは、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、バッテリ19を接続するための電源接続端子103B、及び、負荷を接続するための出力端子104Bを備える。昇降圧コンバータ100Bの出力端子104Bと負荷との間は、DCバス110Bによって接続される。DCバス110Bに接続される電気負荷は、旋回用電動機21及び電動機30である。なお、図3では、図の簡略化のためにインバータ20A及びインバータ20B(図2参照)の図示を省略する。
昇降圧コンバータ100Bは自己診断機能を有しており、この自己診断機能は、昇降圧コンバータ100Bの電流検出部113Bが電流値を監視することによって実現される。なお、この自己診断機能は、電流検出部113Bの検出値を昇降圧コンバータ100Bが監視することによって実現されてもよい。
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子103Bに接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110Bに供給するために設けられている。
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの構成は、昇降圧コンバータ100Aと同一である。バッテリ19は、昇降圧コンバータ100Bを介してDCバス110Bとの間で電力の授受を行う。電源接続端子103Bは、バッテリ19が接続可能な端子であればよい。出力端子104Bは、DCバス110Bが接続可能な端子であればよい。DCバス110Bには、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111Bが接続される。DCバス電圧検出部111Bは、DCバス110Bの電圧値を検出する。電流検出部113Bは、昇降圧コンバータ100Bのコンバータ電流値を検出可能な検出手段であればよく、電流検出用の抵抗器を含む。
以上のように、本実施形態による油圧ショベルの駆動制御装置では、エンジン11のアシスト用の電動発電機12及びブーム回生用の電動機30はDCバス110Aに接続されており、旋回用電動機21はDCバス110Aとは異なるDCバス110Bに接続されている。また、DCバス110Aは昇降圧コンバータ100Aを介してバッテリに接続され、DCバス110Bは昇降圧コンバータ100Aとは異なる昇降圧コンバータ100Bを介してバッテリ19に接続されている。
したがって、油圧駆動部と協働する電動発電機12は、DCバス110Aを介して昇降圧コンバータ100Aとの間で電力の授受を行い、電気駆動部と協働する旋回用電動機21は、DCバス110Bを介して昇降圧コンバータ100Bとの間で電力の授受を行う。
DCバス110A及び110Bには、それぞれのDCバスの電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111A及び111Bがそれぞれ設けられている。DCバス110A及び110Bにより検出されたDCバス電圧値は、コントローラ120に入力される。また、DCバス110A及び110Bの各々には、平滑用のコンデンサ105が一対の出力端子104A,104Bにそれぞれ並列に挿入される。平滑用のコンデンサ105は、DCバス110A,110BのDCバス電圧を平滑化できる蓄電素子であればよい。
バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112A及び112Bが接続されている。バッテリ19と昇降圧コンバータ100A及び100Bの間には、昇降圧コンバータ100A及び100Bに流れるコンバータ電流値を検出するための電流検出部113A及び113Bが配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とコンバータ電流値は、コントローラ120に入力される。なお、バッテリ電流値は、電流検出部113Aと113Bでそれぞれ検出されるコンバータ電流値の和として求められる。
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と昇降圧コンバータ100Aとの間に設けられ、コントローラ120からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の電動(アシスト)運転を制御している際には、必要な電力がバッテリ19と昇降圧コンバータ100AからDCバス110Aを介して電動発電機12に供給される。一方、インバータ18が電動発電機12の発電運転を制御している際には、電動発電機12により発電された電力はDCバス110A及び昇降圧コンバータ100Aに供給される。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100Aを介してインバータ18に接続されるとともに、昇降圧コンバータ100Bを介してインバータ20A及び20Bにも接続されている。このため、電源としてのバッテリ19は、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、必要な電力を供給する。また、電動発電機12が発電運転を行っている際、旋回用電動機21が回生運転を行っている際、又は、電動機30が発電運転を行っている際には、発電運転又は回生運転によって発生した回生電力はバッテリ19に蓄積される。
バッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、電動機30の発電状態、及び、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100A及び100Bによって行われる。この昇降圧コンバータ100A及び100Bの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111A及び111Bによって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112A及び112Bによって検出されるバッテリ電圧値、及び電流検出部113A及び113Bによって検出されるコンバータ電流値に基づき、コントローラ120によって行われる。
インバータ20Aは、上述の如く旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100Bとの間に設けられ、コントローラ120からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータ20Aが旋回用電動機21の力行運転を制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100Bを介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21の回生運転を制御している際には、旋回用電動機21により発電された電力をDCバス110Bへ供給する。
インバータ20Bは、電動機30と昇降圧コンバータ100Bとの間に設けられ、電動機30の駆動制御を行う。電動機30は回生電力を発生させるための発電機として機能するモータであり、特にインバータ20Bは電動機30の発電運転を制御する。
昇降圧コンバータ100Aは、一側がDCバス110A及びインバータ18を介して電動発電機12に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されている。昇降圧コンバータ100Aは、電動発電機12の運転状態(駆動状態)に応じて、昇圧動作又は降圧動作を切り替える。
電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス110AのDCバス電圧値を昇圧する。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してバッテリ19に充電する必要があるため、DCバス110AのDCバス電圧値を降圧する。このため、昇降圧コンバータ100Aは、電動発電機12の運転状態(駆動状態)に応じて、DCバス110AのDCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作又は降圧動作を切り替える。
ここで、エンジン11は一定回転数で回転しているため、電動発電機12も一定回転数で回転し、これにより、インバータ18の電圧値は一定になるように制御される。従って、電動発電機12及びインバータ18は電圧変動が少ないDCバス110Aに接続されている。このように、DCバス110Aは電圧変動が小さい駆動部と接続しているので、昇降圧コンバータ100AはDCバス110AにおけるDCバス電圧検出部111Aによって検出した電圧値が一定になるように、DCバス電圧検出部111Aとバッテリ電圧検出部112A及び112Bとの電圧値を比較し、バッテリ19との電力供給の制御を行う。
一方、旋回用電動機21の回転速度は、作業内容に対応したオペレータのレバー操作量に基づいて変化するので、電動発電機12に比べて大きい。このため、旋回用電動機21へ供給されるためのDCバス110Bの電圧値は、旋回用電動機21の回転速度に応じて、大きく変化することになる。従って、一定の電圧値に制御されるDCバス110Aに旋回用電動機21を接続した場合、旋回用電動機21の回転速度が高速の場合、DCバス110Aの電圧値が十分に高くないため、高速での旋回動作を行うことができなくなる。しかも、高電圧の回生電力が旋回電動機21よりDCバス110Aへ供給されると、インバータ18の損傷につながってしまう。
そこで、本実施形態では、電圧値を一定に制御するDCバス110A及び昇降圧コンバータ100Aとは別に、DCバス110B及び昇降圧コンバータ100Bを設けることで、各電動機を効率よく駆動できるようにしている。
昇降圧コンバータ100Bは、一側がDCバス110Bを介して旋回用電動機21及び電動機30に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されている。昇降圧コンバータ100Bは、旋回用電動機21に接続されたレゾルバ22、若しくは、電動機30のレゾルバ(図示せず)によって検出された旋回速度、若しくは、回転速度に応じたDCバス110Bの電圧値になるように昇圧動作又は降圧動作を切り替える。ここで、昇降圧コンバータ100Bは、DCバス110Bの電圧値をDCバス110Aの電圧値よりも高い値に設定する。これは、電動発電機12と旋回用電動機21の使用方法の違いによるものである。
このように、昇降圧コンバータ100BがDCバス110Bの電圧値を可変制御するのは、旋回用電動機21は、駆動時における回転速度の変化が電動発電機12に比べてかなり大きいため、力行運転及び回生運転を行う際にDCバス110Bの電圧値は大きく変動するためである。なお、昇降圧動作の切替は、コントローラ120によって行われる。
具体的には、レゾルバ22で検出された回転速度が高速である場合には、DCバス110Bには高電圧が必要とされる。この場合、DCバス電圧検出部111Bの電圧検出値が高速での回転速度に対応した電圧値となるように、昇降圧コンバータ100Bは、DCバス電圧検出部111Bとバッテリ電圧検出部112Bとの電圧値を比較し、バッテリ19との電力供給の制御を行う。
また、レゾルバ22で検出された回転速度が低速である場合には、DCバス110Bの電圧は低い電圧で十分である。この場合、DCバス電圧が高い状態であると過電圧状態となるため、DCバス電圧検出部111Bの電圧検出値を、低速での回転速度に対応した電圧値となるように、昇降圧コンバータ100Bは、バッテリ19との電力供給の制御を行う。
また、上述の説明では、レゾルバ22によって検出された旋回速度に基づいてDCバス110Bの電圧値が変化するが、運転者のレバー操作量に対応した速度指令値に基づいて、DCバス110Bの電圧値を変更するようにしてもよい。電動機30のレゾルバ(図示せず)によってDCバス110Bの電圧値を変更する場合も同様である。
なお、既述のように、DCバス電圧検出部111A及びDCバス電圧検出部111Bは、DCバス110A及びDCバス110Bの電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリ電圧検出部112A及び112Bは、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、電流検出部113A及び電流検出部113Bは、昇降圧コンバータ100A及び昇降圧コンバータ100Bのコンバータ電流値を検出するための電流検出部である。コンバータ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100A及び100Bに流れる電流を正の値として検出される。
上述の昇降圧コンバータ100Aにおいて、DCバス110Aを昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110Aに供給される。これにより、DCバス110Aが昇圧される。これは、昇降圧コンバータ100BとDCバス110Bとの関係においても同様である。
DCバス110Aを降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102Bを介して、電動発電機12によって発生される発電電力がDCバス110Aからバッテリ19に供給される。これにより、DCバス110Aに蓄積された電力がバッテリ19に充電され、DCバス110Aが降圧される。この降圧動作は、昇降圧コンバータ100BとDCバス110Bを介して接続された旋回用電動発電機21との間においても同様である。
以上のような油圧駆動機構、電気駆動機構、及び電気制御系を有する油圧ショベルにおいて、上述のように複数のコンバータ(本実施形態では2つの昇降圧コンバータ100A,100B)が用いられた場合、複数のコンバータのそれぞれがバッテリ19の充放電を行なうこととなる。コントローラ120は、2つの昇降圧コンバータ100A,100Bの充放電電流値が予め設定された電流許容値以下となるように個別に制御する。ところが、2つの昇降圧コンバータ100A,100Bが両方とも同時にバッテリ19の充電を行なうか、あるいはバッテリ19からの放電を同時に行なうという状況が発生し得る。そのような場合には、昇降圧コンバータ100A,100Bの単独では充放電電流値が許容値以下となっていても、両方の昇降圧コンバータ100A,100Bによる充電電流の合計値又は放電電流の合計値が許容値を超えてしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、両方の昇降圧コンバータ100A,100Bによる充電電流の合計値又は放電電流の合計値とバッテリ19の電流許容値とを比較する。そして、充電電流の合計値又は放電電流の合計値が電流許容値を超えたら、昇降圧コンバータ100A,100Bのいずれか一方の充電電流又は放電電流を制限して、合計値が電流許容値以下となるように設定する。このとき、昇降圧コンバータ100A,100Bのうち電流が制限される昇降圧コンバータは、油圧駆動部に接続されたコンバータとする。本実施形態では、油圧駆動部に接続されたコンバータは、昇降圧コンバータ100Aである。すなわち、電動発電機12は変速機13とエンジン11を介して油圧ポンプであるメインポンプ14に接続されている。また、ブーム回生用の電動機30は、ブーム4を駆動するための油圧シリンダであるブームシリンダ7に接続されている。したがって、電動発電機12が接続された昇降圧コンバータ100Aは、油圧駆動部に関する充放電電流を制御するコンバータである。
ここで、油圧駆動部として特に電動発電機12を選択することが好ましい。油圧駆動部に油圧を供給するメインポンプ14はエンジン11の動力で常に駆動されており、メインポンプ14の駆動力の大部分はエンジン11の出力でまかなわれている。電動発電機12は、エンジンの出力が十分でなくなったときにエンジン11をアシストするものであり、電動発電機12によるアシスト量が少なくなっても、あるいはアシストが無くなっても、油圧駆動部が駆動できないわけではない。すなわち、電動発電機12によるエンジン11のアシスト量が減ったとしても、油圧により作動する作業要素の駆動速度が若干落ちたり、作業要素の力強さが減少する程度であり、全く機能しなくなるわけではない。したがって、電動発電機12に繋がっている昇降圧コンバータ100Aの放電電流を制限しても、油圧駆動部の機能が大きく低下することは無いといえる。
一方、例えば電気駆動部である旋回用電動機21に対して電力を供給する場合は、旋回用電動機21を駆動して上部旋回体3を駆動するときである。上部旋回体3の駆動源は旋回用電動機21のみであり、旋回用電動機21に供給される電流(バッテリ19からの放電電流)の変化は、上部旋回体3の旋回運動に直接影響する。例えば、旋回用電動機21に供給する電流を制限して半減したとすると、上部旋回体3の旋回速度は著しく落ちてしまう。また、旋回用電動機21に供給する電流を停止した場合には、上部旋回体3を旋回することができなくなってしまう。
以上を考慮すると、電気駆動部である旋回用電動機21が接続された昇降圧コンバータ100Bにおいて放電電流を制限するよりも、油圧駆動部に係わる電動発電機12が接続された昇降圧コンバータ100Aにおいて放電電流を制限するほうが、油圧ショベルの機能を損なわずに充電電流を制限することができることがわかる。
また、電動発電機12が発電運転を行なってバッテリ19に充電電流を供給する場合には、バッテリ19の充電率が低下している場合であるが、電動発電機12の発電量を低減しても、他の電気負荷からの回生電流で充電を行なうことができ、特に問題が生じることはない。
一方、例えば旋回用電動機21が発電を行なう場合は、旋回用電動機21が減速するときであり、旋回用電動機21が回生ブレーキの機能を果たしていることが多い。そのような場合には、もし旋回用電動機21の発電量を制限したり、発電を停止してしまうと、回生ブレーキを利用できなくなってしまい、上部旋回体3を所望の減速度で減速することができず、旋回運動が著しく制限されてしまうおそれがある。以上を考慮すると、電気駆動部である旋回用電動機21及び電動機30に接続された昇降圧コンバータ100Bにおいて充電電流を制限するよりも、油圧駆動部に係わる電動発電機12が接続された昇降圧コンバータ100Aにおいて充電電流を制限するほうが、油圧ショベルの機能を損なわずに充電電流を制限することができる。
以上の考察に基づき、本実施形態では、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充放電電流の合計値がバッテリ19に対する電流許容値を超えた場合に、電動発電機12が接続された昇降圧コンバータ100Aの充放電電流を制限することで、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充放電電流の合計値を制限して、バッテリ19に対する実際の充放電電流を許容値以下としている。
図4はバッテリ19の充電電流を制限した場合の充電電流の変化を示すグラフである。図4において、昇降圧コンバータ100Aにおける充電電流が太い一点鎖線CIAで示され、昇降圧コンバータ100Bにおける充電電流が太い二点鎖線CIBで示され、充電電流CIAと充電電流CIBの合計値CITが太い実線で示されている。充電電流CIAと充電電流CIBとの和(合計値)CITは、バッテリ19に流れる充電電流となる。
時刻t1までは、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流CIA及びCIBの合計値はバッテリ19に対する充電電流許容値ILを超えていないので、昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAは制限されていない。時刻t1において、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流の合計値CITが充電電流許容値CILを超えたので、超えた分の電流値(CIA−CIL)が昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAから差し引かれて制限されている。このとき、昇降圧コンバータ100Bの充電電流CIBは制限されていない。超えた分の電流値(CIA−CIL)が昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAから差し引かれて制限されているため、時刻t1以降は、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流の合計値CITは、充電電流許容値CILに等しくなっており、充電電流許容値CILを超えることは無い。
なお、図4において、充電電流CIAの時刻t1以降に示された点線は、充電電流CIAを制限しないときの充電電流の合計値CITを示している。時刻t1以降に充電電流CIAを制限しないと、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流の合計値CITは、充電電流許容値CILを超えてしまうことがわかる。
図5は充電電流CIA,CIB及び合計値CITの大きさを示すグラフであり、(a)は充電電流CIAを制限しない場合を示し、(b)は充電電流CIAを制限する場合を示している。図5(b)に示すように、本実施形態による電流制限を行なうことで、昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAが制限されることで、充電電流CIAと充電電流CIBとを合算した電流合計値CITは許容値CILに制限される。
ここで、上述のように充電電流CIAを制限して合計値CITを制限する制御方法について説明する。昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAは、DCバス110Aの電圧によって決まるため、DCバス110Aの電圧を制御することで、昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAを制限する。また、DCバス110Aの電圧は電動発電機12の出力によって決まるため、電動発電機12の出力を制御することで、結果として昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAを制限することができる。
図6は昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAを制限する処理のフローチャートである。まず、ステップS1において、制御部であるコントローラ120は、バッテリ19に供給されている充電電流(合計値IL)が充電電流許容値CILを超えたか否かを判定する。バッテリ19に供給している充電電流(合計値CIT)は、電流検出部113A及び113Bで検出した電流値を合算することで求められる。
ステップS1において、バッテリ19に供給されている充電電流(合計値CIT)が充電電流許容値CILを超えていないと判定されると、充電電流(合計値CIT)を制限する必要は無いので、処理は終了する。一方、ステップS1において、バッテリ19に供給されている充電電流(合計値CIT)が充電電流許容値CILを超えていると判定されると、処理はステップS2に進む。
ステップS2では、コントローラ120は、電動発電機12(アシストモータ)の制限出力を算出する。バッテリ19に流れる充電電流はバッテリの端子間電圧に比例するので、バッテリの端子間電圧に対応するDCバス110Aの電圧を求め、DCバス110Aがそのような電圧になるような電動発電機12の出力を求める。この出力が、電動発電機12の制限出力となる。
電動発電機12の制限出力を算出したら、ステップS3において、コントローラ120は、電動発電機12が算出した制限出力を出すように運転するように電動発電機12の制限出力指令値を算出する。そして、コントローラ120は電動発電機12の制限出力指令値を電動発電機12に出力し、処理は終了する。
図7は、上述の処理による制限後の出力指令値の算出アルゴリズムを表す図である。図7において、電流はバッテリ19に流れる充電電流であり、その電流値は負(マイナス)の値であり、電動発電機12の出力も負(マイナス)の値である。
コントローラ120は、図7に示す算出アルゴリズムを用いて図6に示す処理を行なうことで、電動発電機12の出力を制限し、それによりDCバス110Aの電圧及び昇降圧コンバータ100Aに印加される電圧を制限する。その結果、昇降圧コンバータ100Aからバッテリ19に流れる充電電流CIAが制限され、充電電流CIA及びCIBの合計値CIT、すなわちバッテリ19に流れる充電電流が、充電電流許容値CIL以下となるように制限される。
次に、放電の際に放電電流DIAを制限して合計値DITを制限する制御方法について説明する。昇降圧コンバータ100Aの放電電流IAは、DCバス110Aの電圧によって決まるため、DCバス110Aの電圧を制御することで、昇降圧コンバータ100Aの放電電流IAを制限する。また、DCバス110Aの電圧は電動発電機12の出力によって決まるため、電動発電機12の出力を制御することで、結果として昇降圧コンバータ100Aの放電電流DIAを制限することができる。
図8は昇降圧コンバータ100Aの放電電流DIAを制限する処理のフローチャートである。まず、ステップS11において、制御部であるコントローラ120は、バッテリ19に供給されている放電電流(合計値DIT)が放電電流許容値DILを超えたか否かを判定する。バッテリ19から出力している放電電流(合計値DIT)は、電流検出部113A及び113Bで検出した電流値を合算することで求められる。
ステップS11において、バッテリ19から出力されている放電電流(合計値DIT)が放電電流許容値DILを超えていないと判定されると、放電電流(合計値DIT)を制限する必要は無いので、処理は終了する。一方、ステップS11において、バッテリ19から出力されている放電電流(合計値DIT)が放電電流許容値DILを超えていると判定されると、処理はステップS12に進む。
ステップS12では、コントローラ120は、電動発電機12(アシストモータ)の制限出力を算出する。バッテリ19から流れる放電電流はバッテリ19の端子間電圧に比例するので、バッテリ19の端子間電圧に対応するDCバス110Aの電圧を求め、DCバス110Aがそのような電圧になるような電動発電機12の出力を求める。この出力が、電動発電機12の制限出力となる。
電動発電機12の制限出力を算出したら、ステップS13において、コントローラ120は、電動発電機12が算出した制限出力を出すように運転するように電動発電機12の制限出力指令値を算出する。そして、コントローラ120は電動発電機12の制限出力指令値を電動発電機12に出力し、処理は終了する。
図9は、上述の処理による制限後の出力指令値の算出アルゴリズムを表す図である。図9において、電流はバッテリ19から流れる放電電流であり、その電流値は正(プラス)の値であり、電動発電機12の出力も正(プラス)の値である。
コントローラ120は、図9に示す算出アルゴリズムを用いて図8に示す処理を行なうことで、電動発電機12の出力を制限し、それによりDCバス110Aの電圧及び昇降圧コンバータ100Aに印加される電圧を制限する。その結果、バッテリ19から昇降圧コンバータ100Aに流れる充電電流DIAが制限され、充電電流DIA及びDIBの合算値DIT、すなわちバッテリ19から流れる放電電流が、放電電流許容値DIL以下となるように制限される。
次に、本発明の第2実施形態による油圧ショベルについて説明する。本発明の第2実施形態による油圧ショベルの基本的な構成は、上述の第1実施形態による油圧ショベルの構成と同じであるため、その説明は省略する。
第2実施形態では、制御部50の構成が図3に示す第1実施形態による構成と異なる。図3に示す第1実施形態による制御部50は、2つのDCバス110A,110Bを有し、昇降圧コンバータ100A,100BがそれぞれのDCバス110A,110Bに接続されているが、本実施形態では、DCバスは一つであり、一つのDCバスに対して2つの昇降圧コンバータが接続されている。
図10は第2実施形態における蓄電部50の回路図である。第2実施形態における蓄電部50は、DCバス110Aのみを有している。そして、2つの昇降圧コンバータ100A,100BはDCバス110Aに対して並列に接続され、インバータ18,20A,20Bを介して、電動発電機12、電動機30、及び旋回用電動機21は全てDCバス110Aに接続される。
図11はバッテリ19の充電電流を制限した場合の充電電流の変化を示すグラフである。図11において、昇降圧コンバータ100Aにおける充電電流が太い一点鎖線CIAで示され、昇降圧コンバータ100Bにおける充電電流が太い二点鎖線CIBで示され、これら充電電流の合計値CITが太い実線で示されている。充電電流CIAと充電電流CIBとの和(合計値)CITは、バッテリ19に流れる充電電流となる。
時刻t1までは、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流CIA及びCIBの合計値CITはバッテリ19に対する電流許容値CILを超えていないので、充電電流CIA及びCIBの合計値CITは制限されていない。時刻t1において、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流の合計値CITが充電電流許容値CILを超えたので、超えた分の電流値(CIA−CIL)の1/2が昇降圧コンバータ100Aの充電電流値CIAから差し引かれ、同時に超えた分の電流値(CIA−CIL)の1/2が昇降圧コンバータ100Bの充電電流値CIBから差し引かれて制限されている。
超えた分の電流値(CIA−CIL)の1/2が昇降圧コンバータ100Aの充電電流CIAから差し引かれ、且つ超えた分の電流値(CIA−CIL)の1/2が昇降圧コンバータ100Bの充電電流CIBから差し引かれて制限されているため、時刻t1以降は、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流の合計値CITは、充電電流許容値CILに等しくなっており、電流許容値CILを超えることは無い。
なお、図11において、充電電流CIAの時刻t1以降に示された点線は、充電電流CIAを制限しないときの充電電流CIT示しており、充電電流CIBの時刻t1以降に示された点線は、充電電流CIBを制限しないときの充電電流CIT示しており、合計値ICTの時刻t1以降に示された点線は、充電電流CIA及び充電電流CIBを制限しないときの合計値CITを示している。
図12は充電電流CIA,CIB及び合計値CITの大きさを示すグラフであり、(a)は充電電流CIA及びCIBを制限しない場合を示し、(b)は充電電流CIA及びCIBを制限する場合を示している。図12(b)に示すように、本実施形態による電流制限を行なうことで、昇降圧コンバータ100A及び100Bの充電電流CIA及びCIBの両方が制限されることで、充電電流CIAと充電電流CIBとを合算した電流合計値CITは放電電流許容値CILに制限される。
本実施形態における放電電流の制限に関しては、上述の充電電流の制限と同様な方法で制限することができるので、その説明は省略する。