上述した特許文献1に示されるようなFOUPに収納される半導体ウェハについて、その口径が300mmであるが、近年、300mmより大きい大口径化が図られている。例えば口径が450mmの半導体ウェハが促進されつつあり、これに対応して、FOUPが大型化及び大重量化されている。この大型化及び大重量化により、FOUPの幅及び奥行きだけでなく、その高さも増大されることが想定されている。
しかしながら、半導体ウェハの大口径化に伴って、FOUP等の荷が大型化及び大重量化されたとしても、これに対応して、保管庫が設置される工場等の施設を改築或いは増築等することは困難である場合が多い。即ち、該施設の天井高さは、半導体ウェハの大口径化以前と同一としなければならないといった制約を受ける場合がある。例えば荷を搬送する搬送車が、天井又はその近傍に敷設された軌道に沿って走行する天井走行車であって、荷を鉛直方向に昇降させる縦移載により、床上に設置された保管庫との間で荷を入出庫するような場合に、天井高さに係る制約の下では、問題が生じる。即ち、保管庫には、搬送車との間で荷を移載する際に荷が一時的に載置される移載部(例えば、「ポート」と称される)が、保管庫本体からその側方に突出するように設置されることが一般的である。こうしてポートが設置される高さ(即ち、床面からポートまでの鉛直距離)は、少なくとも所定の高さ以上でなければならない。該所定の高さは、施設内の荷の搬送を管理又は操作する管理者或いは操作員が、施設内を立ち回る際に例えば頭等の身体の一部がポートに衝突することを防止するために、管理者或いは操作員の頭上の安全性を十分に確保可能な高さ(即ち、安全上の高さ)である。このため、搬送車における、軌道上を走行するための走行機構や縦移載を行うためのホイスト機構等の機械的要素を、荷の大型化及び大重量化の分だけ大型化せざるを得ない、詳細には、荷の高さ分だけ天井との間の鉛直距離を増大せざるを得ないにも関わらず、安全上の高さを確保すべくポートの設置高さを下げられないという技術的問題点がある。このように、天井高さに係る安全上の高さを確保するといった寸法的な制約の下で、荷の大型化に対応しなければならない場合に、保管庫自体の構造或いは入出庫方法を改善する必要がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、荷の大型化に対応しつつ安全上の高さを確保することを可能ならしめる保管庫、及びこのような保管庫の入出庫方法を提供することを課題とする。
本発明の保管庫は上記課題を解決するために、天井又は該天井近傍に敷設された軌道に沿って走行すると共に荷を搬送する搬送車との間で前記荷の入出庫が行われる保管庫であって、内部が鉛直方向に複数段に分断されていると共に、前記荷を出し入れ可能な出入口が、前記複数段のうち少なくとも一つの段に少なくとも一つ設けられている筐体又はフレームと、該筐体又はフレーム外にて前記出入口に隣接しており、前記荷を載置可能な入出庫ポートと、前記筐体又はフレーム内にて前記荷を少なくとも水平一方向に往復移動可能であると共に前記鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、前記筐体又はフレーム内に、前記複数段の各々において前記少なくとも水平一方向に広がるように配列されており、前記駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能に夫々構成されている複数の棚部分と、該複数の棚部分のうち前記出入口に隣接する一の棚部分と前記入出庫ポートとの間で、前記出入口を介して前記荷を水平移動可能な外内移動手段とを備え、前記入出庫ポートは、前記軌道における、前記入出庫ポートに対向する入出庫位置に停止された前記搬送車との間に、前記荷の一つ分の高さより短い距離を有する。
本発明の保管庫によれば、例えば荷の入庫が行われる際に、先ず入庫すべき例えばFOUP等の荷を保持する例えばOHT(Overhead Hoist Transport)等の搬送車が、入出庫位置に停止される。ここに「搬送車」は、例えば天井走行型のビークルである。この際、入出庫ポートと搬送車との間の距離(具体的には、入出庫ポートの上面から搬送車の底面までの距離)は、荷の一つ分の高さより短くなっている。続いて、搬送車における例えばホイスト機構により、保持している荷が下降され、入出庫ポート上に載置される。すると、ローラ機構やスライド機構等の外内移動手段により、入出庫ポート上の荷が保管庫内部の一の棚部分上へ水平移動される。この際、入出庫ポート上に載置された荷の少なくとも上部は、搬送車の下方に露呈されることなく、搬送車内部に位置する。該上部は、水平移動に伴って、搬送車内部からその側方へ出された後に、出入口を通過して一の棚部分に達する。ここに一の棚部分において「出入口に隣接する」とは、例えば一の段に設けられた複数の棚部分のうち、出入口の最も近くにある棚部分を示す。この後、例えばアクチュエータ、スライダ、ロボットアーム等の駆動手段により、一の棚部分上の荷が、複数の棚部分のうち一の棚部分より他の棚部分上へ移動され、保管庫内に保管される。これにより、入庫が完了される。ここに「複数の棚部分」とは、例えば鉛直方向に一又は複数列配列された複数の載置面を有する棚列を示す。例えば、鉛直方向にm(但し、mは2以上の自然数)段、水平一方向にn(但し、nは1以上の自然数)列、且つこれに垂直である残る水平一方向(以下、単に「厚み方向」と称する)にはo(但し、oは1以上の自然数)列といった具合に、例えば薄く且つ縦に細長い平板形状となるように、棚全体の骨格は、構成されてもよい。また、「駆動手段」とは、このような複数の棚部分間を、例えば鉛直方向及び水平一方向という2方向或いは2軸方向に移動可能に構成されている。
また、例えば荷の出庫が行われる際に、先ず空荷の搬送車が入出庫位置に停止される。この際に、入出庫ポートと搬送車との間の距離は、入庫の際と同様にして、荷の一つ分の高さより短くなっている。続いて、外内移動手段により、駆動手段により他の棚部分から一の棚部分上に移動された出庫すべき荷が、入出庫ポート上へ水平移動される。この際、入庫の際と同様にして、荷の少なくとも上部は、搬送車の下方に露呈されることなく、搬送車内部に位置する。該上部は、水平移動に伴って、出入口を通過した後に、搬送車側方からその内部に達する。続いて、例えばホイスト機構により、入出庫ポート上の荷が保持されると共に上昇され、荷の底面が入出庫ポート上から離れる。これにより、出庫が完了される。
以上のように、入出庫ポートと搬送車との間の距離を荷の一つ分の高さより短くして、移載時に荷の少なくとも上部を露呈させないことにより、荷の大型化以前と比較して、入出庫ポートの鉛直方向の配置が殆ど又は全く下がらないで済む。従って、荷の大型化に対応しつつ安全上の高さを確保することが可能となる。
尚、入出庫ポート及び一の棚部分は、別体に構成されているが、一の棚部分自体を水平移動可能に構成し、入出庫時に軌道の下方へ繰り出すように制御して、一の棚部分を入出庫ポートとして機能させてもよい。
本発明の保管庫の一態様では、前記出入口は、前記複数段のうちの一の段と、前記複数段のうち前記一の段より一つ下の段とに設けられており、前記一つ下の段に設けられた出入口に隣接する前記入出庫ポートは、当該保管庫が置かれる床との関係で安全上予め規定されている高さ閾値より高い位置に配置される。
この態様によれば、例えば最上段に設けられた出入口に隣接するポートを入庫専用の入庫ポートとして機能させると共に、最上段より一つ下の段に設けられた出入口に隣接するポートを出庫専用の出庫ポートとして機能させてもよい。この場合に、出庫ポートは、所定の高さ閾値より高い位置に配置されている。ここに「高さ閾値」は、当該保管庫が置かれる床との関係で安全上予め規定されているものであり、例えば予め安全を考慮して規定された、出庫ポートが配置される高さを意味する。具体的には、人間の平均身長に、ある程度のマージンを加えた値など、管理者或いは操作員が出庫ポートに衝突する可能性があると判定するための高さを示してもよい。このように、最上段の第1のポートに加えて、最上段より一つ下の段に、所定の高さ条件下で第2のポートを設けることにより、保管庫との間で入出庫される荷の量を増倍させることも可能である。従って、入出庫に係る時間をより短縮して、より効率よく入出庫することが可能となる。尚、出入口が設けられる二つの段は、最上段及びその一つ下の段に限定されず、複数段のうち連続する二つの段であればいずれの二つの段であってもよい。
本発明の保管庫の他の態様では、前記複数の棚部分は、前記軌道の方位に対して前記少なくとも水平一方向の方位が直交するように、前記軌道に対して配置されており、前記筐体又はフレームは、前記軌道より他の下方に配置される。
この態様によれば、軌道の方位に対して、複数の棚部分における水平一方向の方位が直交していることにより、軌道が敷設された施設内に、効率よく多数の保管庫を配置することが可能となる。また、筐体又はフレームが軌道の下方に配置されないことにより、筐体又はフレームを最大限に高く構成し、天井との間のスペースを有効に活用すると共に、荷の収容又は載置量を増大させることが可能となる。
本発明の保管庫の他の態様では、前記荷を入庫すべき場合に、前記搬送車が前記入出庫位置に停止している状態で、前記搬送車により前記入出庫ポートに載置された荷を前記入出庫ポートから前記一の棚部分に水平移動させるように前記外内移動手段を制御すると共に、前記荷を出庫すべき場合に、前記搬送車が前記入出庫位置に停止している状態で、前記駆動手段により前記一の棚部分に載置された荷を前記一の棚部分から前記入出庫ポートに水平移動させるように前記外内移動手段を制御する制御手段を更に備える。
この態様によれば、例えば荷を入庫すべき場合に、入庫すべき荷を保持している搬送車が入出庫位置に停止され、入庫すべき荷が搬送車から入出庫ポート上に載置される。すると、搬送車が入出庫位置に停止している状態で、例えば当該保管庫の各部を制御する制御手段の制御下で、外内移動手段により、入出庫ポート上の荷が一の棚部分上に移動される。こうして、荷が入出庫ポート外へ移動されると、搬送車が走行可能な状態となる。
一方、荷を出庫すべき場合に、空荷の搬送車が入出庫位置に停止している状態で、制御手段の制御下で、外内移動手段により、一の棚部分上の荷が入出庫ポート上に移動される。すると、搬送車により、入出庫ポート上の荷が保持されると共に上昇される。こうして、荷の底面が入出庫ポートから離れると、搬送車が走行可能な状態となる。
以上のように、外内移動手段により荷を水平移動させる際には、搬送車を入出庫位置に停止させておく。これにより、搬送車における、保管庫の出入口側の側面を介して、荷の水平移動が可能となる。これは、搬送車の走行を僅かながら制限することになるが、例えば一の荷につき、数分かかる搬送時間の部分と考えれば、特に問題視される制限とはならない。
本発明の保管庫の他の態様では、前記入出庫ポートは、載置された前記荷の位置決めを行う位置決め手段を有し、前記搬送車は、前記入出庫位置に停止された際に前記外内移動手段により水平移動される荷が通過可能に開いている開口を規定する本体部と、該本体部の内部に前記荷を保持可能な保持手段と、該保持手段により保持された荷を、前記位置決め手段により位置決めした位置決め位置又は該位置決め位置から解除した解除位置に変位させるように昇降可能な昇降手段とを有する。
この態様によれば、「位置決め手段」とは、例えば入出庫ポートの上面に設けられた複数の位置決めピン等の凸部であって、入出庫ポートと搬送車との間で荷を移載する際の所定の移載位置を意味する。具体的には、例えば該凸部は、荷の底面に設けられた凹部に係合可能であってもよい。例えば、荷を入庫すべき場合に、入出庫位置に停止された搬送車において、例えばグリッパ機構等の保持手段により入庫すべき荷が保持されており、例えばホイスト機構等の昇降手段により保持手段ごと荷が下降され、入出庫ポート上に載置される。この際に、荷が位置決め位置に位置する。ここに「位置決め位置」とは、例えば入出庫ポート側の凸部に荷側の凹部が係合されている状態を示す。続いて、位置決め位置にある荷が、外内移動手段により、出入口を介して一の棚部分上に水平移動される。この際に、荷が、本体部に規定された開口を通過して、搬送車内部からその側方へ移動される。
一方、荷を出庫すべき場合に、一の棚部分上の出庫すべき荷が、外内移動手段により、出入口を介して、入出庫ポート上に水平移動される。この際に、荷が、本体部における開口を通過して、搬送車側方からその内部へ移動される。すると、入出庫位置に停止されている搬送車において、保持手段により入出庫ポート上の荷が保持され、昇降手段により保持手段ごと荷が上昇され、荷の低面が入出庫ポートから離れる。この際に、荷が解除位置に位置する。ここに「解除位置」とは、例えば入出庫ポート側の凸部と荷側の凹部との係合が外れた状態を示す。
以上のように、入出庫の動作における荷の昇降について、昇降手段は、荷を位置決め位置及び解除位置間の距離、即ち位置決め手段の鉛直方向の長さに対応する距離だけ昇降させればよく、入出庫に係る時間をより短縮して、より効率よく入出庫することが可能となる。
本発明の保管庫の他の態様では、前記少なくとも一つの段は、前記複数段のうちの最上段である。
この態様では、最上段に設けられた出入口に隣接して、入出庫ポートが設けられることにより、入出庫ポートの鉛直方向の配置が最大限に上がる。従って、荷の大型化に対応しつつ安全上の高さを確実に確保することが可能となる。また、例えばホイスト機構による荷の昇降距離が最短となり、移載時間が短縮されることにより、入出庫に係る時間を短縮して、効率よく入出庫することが可能となる。
本発明の入出庫方法は上記課題を解決するために、(i)内部が鉛直方向に複数段に分断されていると共に、荷を出し入れ可能な出入口が、前記複数段のうち少なくとも一つの段に少なくとも一つ設けられている筐体又はフレームと、(ii)該筐体又はフレーム外にて前記出入口に隣接しており、前記荷を載置可能な入出庫ポートと、(iii)前記筐体又はフレーム内にて前記荷を少なくとも水平一方向に往復移動可能であると共に前記鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、(iv)前記筐体又はフレーム内に、前記複数段の各々において前記少なくとも水平一方向に広がるように配列されており、前記駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能に夫々構成されている複数の棚部分と、(v)該複数の棚部分のうち前記出入口に隣接する一の棚部分と前記入出庫ポートとの間で、前記出入口を介して前記荷を水平移動可能な外内移動手段とを備え、前記入出庫ポートは、天井又は該天井近傍に敷設された軌道に沿って走行すると共に前記荷を搬送する搬送車であって、前記軌道における、前記入出庫ポートに対向する入出庫位置に停止された前記搬送車との間に、前記荷の一つ分の高さより短い距離を有しており、前記搬送車との間で前記荷の入出庫が行われる保管庫の入出庫方法であって、前記荷を入庫すべき場合に、前記搬送車が前記入出庫位置に停止している状態で、前記搬送車により前記入出庫ポートに載置された荷を前記入出庫ポートから前記一の棚部分に水平移動させるように前記外内移動手段を制御する第1制御行程と、該第1制御工程に続いて前記他の荷を出庫すべき場合に、前記搬送車が前記入出庫位置に停止している状態で、前記駆動手段により前記一の棚部分に載置された荷を前記一の棚部分から前記入出庫ポートに水平移動させるように前記外内移動手段を制御する第2制御工程とを備える。
本発明の入出庫方法によれば、上述した本発明の保管庫と同様に、入出庫ポートと搬送車との間の距離を荷の一つ分の高さより短くして、移載時に荷の少なくとも上部を露呈させないことにより、荷の大型化以前と比較して、入出庫ポートの鉛直方向の配置が下がらない。従って、荷の大型化に対応しつつ安全上の高さを確保することが可能となる。
尚、本発明の入出庫方法においても、上述した本発明の保管庫における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
実施形態に係る保管庫の構成について図1から図4を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る保管庫を備える製造システムの外観を示す斜視図であって、図2は、図1の保管庫の内部構造を模式的に示す断面図であって、図3は、図2の駆動手段、複数の棚部分及び外内移動手段を上面側から視た断面図であって、図4は、図3の複数の棚部分間で荷を移載する際の動作を模式的に示す説明図である。
図1において、製造システム100は、レール1、ビークル2、ストッカ10、製造指示部30、搬送指示部31、搬送コントローラ32、及びストッカコントローラ33を備える。製造システム100は、半導体素子の製造スケジュールに従って、FOUP3を不図示の製造装置、ストッカ10へ搬送すると共に、FOUP3をストッカ10との間で入出庫する。
FOUP3は、本発明に係る「荷」の一例として、ビークル2によりレール1に沿って搬送されると共に、ストッカ10内で、入出庫、又は保管位置の調整のために搬送(即ち、保管庫内搬送)される。図4において、FOUP3は、底面に、凹部3a,3bを有している。凹部3aは、後述するポートP1及び棚部分15に設けられた凸部9a,15aに対応するサイズに形成されている。一方、凹部3bは、後述する載置部11に設けられた凸部11aに対応するサイズに形成されている。
図1において、レール1は、本発明に係る「軌道」の一例として、天井101に敷設されており、ビークル2が走行するための軌道の役割を果たす。本実施形態では、レール1において、ポートP1の鉛直上方に対応する位置は、入出庫位置として設定されている。
ビークル2は、本発明に係る「搬送車」の一例として、リニアモータにより駆動されるOHT(天井走行車)であって、レール1に沿って走行して、FOUP3を搬送すると共に、入出庫位置で停止して、ポートP1との間でFOUP3を移載する。ビークル2は、本体部2a、及び上下移動部5を備える。
本体部2aは、内部に、FOUP3を収容可能な空間を有する。本体部2aにおいて、該空間の下方及び一側方(即ち、図2における本体部2aの右側面)が開放されている。本実施形態では、該一側方に開けられた開口H0により、ポートP1及び後述する棚部分15t間でのFOUP3の水平移動が可能になる。本体部2a内部の天壁には、上下移動部5が取り付けられている。
図2において、上下移動部5は、ホイスト5a、ベルト5b、及びグリッパ5cを備える。ベルト5bの一端は、ホイスト5aの図示しない巻き軸に固定されており、その他端は、グリッパ5cの上面に固定されている。グリッパ5cは、本発明における「保持手段」の一例であって、その両端部は、内側に向けて屈曲されている。グリッパ5cは、その屈曲された両端部でFOUP3の上部に取り付けられたフランジ4を把持する把持位置と、把持されたフランジ4を解放する解放位置との間で変位する。
ホイスト5aは、本発明における「昇降手段」の一例として、図示しないモータを備えており、モータを制御して、ベルト5bを下方へ繰り出す又は上方へ巻き上げる動作を行う。ホイスト5aは、繰り出し動作又は巻き上げ動作により、グリッパ5cを上下方向に移動させる。ホイスト5aは、本実施形態では特に、ポートP1に設けられた位置決めピン9aの長さに若干の有余を加えた距離を上下移動させる。位置決めピン9aは、本発明に係る「位置決め手段」の一例として、3本のピンからなっており、FOUP3の凹部3aに対応するサイズに形成されている。尚、ビークル2或いは上下移動部5は、入庫すべきFOUP3又は出庫すべきFOUP3を把持する際の姿勢(例えば、水平二方向及び回転方向についての位置)を微調整する調整機構を更に備えていてもよい。
ビークル2は、入庫時に、ホイスト5aにより、把持位置にあるグリッパ5cを、位置決めピン9aの長さに若干の有余を加えた距離下降させていき、把持しているFOUP3の底面をポートP1上面に接触させた状態で、グリッパ5cを解放位置に変位させる。これにより、FOUP3がグリッパ5cから解放され、ポートP1上に移載される。この際に、FOUP3が位置決め位置にあって、その凹部3a及び位置決めピン9aが係合している。一方、ビークル2は、出庫時に、ホイスト5aにより、解放位置にあるグリッパ5cを下降させていき、ポートP1上に載置されているFOUP3のフランジ4に対応する位置で、グリッパ5cを保持位置に変位させる。続けて、ホイスト5aにより、把持位置にあるグリッパ5cを、位置決めピン9aの長さに若干の有余を加えた距離上昇させる。これにより、FOUP3の底面がポートP1上面から離れ、FOUP3がビークル2に移載される。この際に、FOUP3が解除位置にあって、その凹部3a及び位置決めピン9aの係合が外れている。
(保管庫単体)
次に、ストッカ10の構造及び動作について、図2から図4を参照して説明する。ストッカ10は、本発明に係る「保管庫」の一例として、レール1に隣接して設けられており、複数のFOUP3を収容可能である。ストッカ10は、本実施形態では、ビークル2との間で、1つのポートP1を介して、入庫すべきFOUP3の入庫処理、及び出庫すべきFOUP3の出庫処理を行う。
図2において、ストッカ10は、本体部10a、保管庫内搬送装置19、複数の棚部分15、及びポートP1を含んでいるスライド機構9を備える。
本体部10aは、本発明に係る「筐体又はフレーム」の一例として、後述する最上段におけるレール1側の側面に、入出庫されるFOUP3が通過可能な出入口H1を設けている。
保管庫内搬送装置19は、例えばスタッカ或いはスタッカロボットであり、載置部11、水平駆動部13、及び鉛直駆動部14を備えており、ストッカコントローラ33の制御により、複数の棚部分15間でFOUP3を移載(即ち、保管庫内搬送)する。
載置部11は、複数の棚部分15間でFOUP3を移載するために、水平駆動部13により水平一方向に、且つ鉛直駆動部14により鉛直方向に移動される。載置部11は、上面に第1載置面11sを有している。
図4において、第1載置面11sは、いずれかの棚部分15に載置されているFOUP3を移載する際に、FOUP3の底面に接触し(即ち、図4(a)に点線で示される状態)、FOUP3をその底側から支持する。第1載置面11aには、支持部材として、凸部11aが形成されている。図4(b)に示すように、凸部11aは、FOUP3の凹部3bに対応するサイズに形成されており、移載時に、この凹部3bに係合される。
図2において、水平駆動部13は、本発明に係る「駆動手段」の一部として機能し、図示しないモータにより、水平一方向に延びる水平ガイド17上で、駆動される。水平駆動部13は、載置部11と連結されており、載置部11を水平ガイド17に沿って、水平一方向(即ち、図2における左右方向)に往復移動させる。鉛直駆動部14は、本発明に係る「駆動手段」の一部として機能し、図示しないモータにより、鉛直方向に延びる鉛直ガイド18上で、駆動される。鉛直駆動部14には、水平ガイド17の中央部が固定されている。鉛直駆動部14は、この水平ガイド17を鉛直ガイド18に沿って、鉛直方向(即ち、図2における上下方向)に往復移動させる。この往復移動時に、載置部11は、水平ガイド17の中央部に位置する。このように、載置部11は、水平駆動部13及び鉛直駆動部14により、鉛直方向及び水平一方向の2軸方向に移動される。
複数の棚部分15は、鉛直方向に7段、各段における水平一方向に2列、且つ各段における厚み方向に1列として、合計14個の棚部分から構成されている。各棚部分15は、上面に第2載置面15sを有しており、この第2載置面15sに、FOUP3が載置される。図4において、第2載置面15sには、支持部材として、凸部15aが形成されている。図4(a)に示すように、凸部15aは、FOUP3の凹部3aに対応するサイズに形成されており、載置(保管)時に、この凹部3aに係合される。
次に、第1載置面11s及び第2載置面15sの形態について説明する。図3は、具体的には、図2におけるA1−A1断面に相当しており、ストッカ10の最上段に設置される2つの棚部分15(言い換えれば、第2載置面15s)を示している。2つの棚部分15のうち出入口H1に隣接する棚部分15t(即ち、図2において二点鎖線のエリアS1に示される)は、本発明に係る「一の棚部分」の一例として、また「外内移動手段」の一部として機能し、ポートP1との間でFOUP3を水平移動する。図3において、棚部分15tは、3つのローラからなっており、該3つのローラの上面が第2載置面15sとして機能する。3つのローラの各々は、モータ15mの駆動軸に回動自在に固定されている。
棚部分15tによる水平移動について、具体的には、モータ15mの駆動により、3つのローラが左回転された場合に、棚部分15t上のFOUP3がポートP1へ向けて水平移動される。一方、3つのローラが右回転された場合に、ポートP1から水平移動されるFOUP3が棚部分15t上に載置される。
棚部分15tを含む複数の棚部分15の第2載置面15sは、ストッカ10の上面側から視て、馬蹄のようにU字形に形成され、載置部11の第1載置面11sは、そのU字形の中央を埋める島のように形成されている。即ち、第1載置面11s及び第2載置面15sは、相互に相補の平面形状を有している。このような第1載置面11s及び第2載置面15sの間で、FOUP3の移載が行われる。
(保管庫内搬送動作)
次に、保管庫内搬送装置19による、ストッカ10の内部におけるFOUP3の移載動作(即ち、保管庫内搬送動作)について、図3及び図4を参照して説明する。
図2から図4において、保管庫内搬送装置19は、最上段においてレール1側(即ち、出入口H1に隣接する)の棚部分15tに載置されているFOUP3を、上から2番目の段のレール1と反対側にある棚部分15(即ち、図2において二点鎖線のエリアS2に示され、以後、「保管用棚部分15k」と称する)に移載(即ち、保管)する。この際に、載置部11が、棚部分15tの第2載置面15sの直下に移動される。この際、載置部11が、水平駆動部13により水平ガイド17の略中央に移動された後、鉛直駆動部14により鉛直ガイド18に沿って所定の鉛直位置に移動される。この所定の鉛直位置は、棚部分15tの第2載置面15sよりも下方である。この後、所定の鉛直位置にある載置部11が、水平駆動部13により水平ガイド17に沿って所定の水平位置に移動される。図4(a)に示すように、この所定の水平位置は、FOUP3の凹部3bの鉛直下方向に、載置部11の凸部11aが存在する位置である。
所定の鉛直位置且つ水平位置に移動された載置部11は、鉛直駆動部14により上昇される。この上昇により、載置部11が棚部分15tの中央を通過して、図4(b)に示すように、棚部分15tの第2載置面15sよりも高くなる。この時、FOUP3の凹部3a及び棚部分15tの凸部15aの係合が外れ、第2載置面15sに代わって、第1載置面11sでFOUP3が支持されると共に、載置部11の凸部11a及びFOUP3の凹部3bが相互に係合されることで、FOUP3が第2載置面15sから第1載置面11sへ移載される。
FOUP3が移載された載置部11は、保管用棚部分15kの第2載置面15sの直上に移動される。この際、載置部11が、水平駆動部13により水平一方向の所定の水平位置に移動される。この所定の水平位置は、保管用棚部分15kの凸部16の鉛直上方向に、FOUP3の凹部3aが存在する位置である。所定の水平位置に移動された載置部11は、鉛直駆動部14により下降される。この下降により、載置部11が保管用棚部分15kの中央を通過して、図4(a)に示すように、保管用棚部分15kの第2載置面15sよりも低くなる。この時、移載先の載置部11の凸部11a及びFOUP3の凹部3bの係合が外れ、第1載置面11sに代わって、第2載置面15sでFOUP3が支持されると共に、FOUP3の凹部3a及び載置部11の凸部11aが相互に係合されることで、FOUP3が第1載置面11sから第2載置面15sへ移載される。これにより、棚部分15tから保管用棚部分15kへのFOUP3の移載動作が完了される。尚、この移載工程を逆の順序で行えば、保管用棚部分15kから棚部分15tへの移載動作となる。
図3において、スライド機構9は、本発明に係る「外内移動手段」の一部として機能し、レール1の下方に位置するように、本体部10aの外部に、出入口H1に隣接して取り付けられている。スライダ機構9は、本実施形態では、入出庫位置に停止されるビークル2との間の距離L1がFOUP3の1つ分の高さより短くなるように配置されている。
スライド機構9は、不図示の一対のローラと、輪状の回動帯と、アクチュエータとを備えており、一対のローラが輪状の回動帯を取り巻くように構成されている。輪状の回動帯の一部は、レール1と対向する場合に、本発明に係る「入出庫ポート」の一例であるポートP1として機能し、FOUP3を載置可能である。スライド機構9は、アクチュエータを駆動して一対のローラを回転させ、輪状の回動帯を回動させる。スライド機構16は、この回動により、出入口H1に隣接する棚部分15tとの間で、FOUP3を水平移動させる。
スライド機構16による水平移動について、具体的には、アクチュエータの駆動により、一対のローラが右回転された場合に、回動帯が右回動される。すると、ポートP1として機能する回動帯部分が、出入口H1側に順に引き込まれ、一対のローラの下側へ配置される。これにより、ポートP1上のFOUP3が、ビークル2側の開口H0及びストッカ10側の出入口H1を介して、棚部分15sへ水平移動され、その第2載置面15s上に載置される。この際に、FOUP3の凹部3aが棚部分15t(言い換えれば、第2載置面15s)の位置決めピン15aに係合されている。一方、一対のローラが左回転された場合に、回動帯が左回動される。すると、ポートP1として機能する回動帯部分が、出入口H1側から順に引き出され、一対のローラの上側(即ち、レール1側)へ配置される。これにより、棚部分15tからのFOUP3が、ストッカ10側の出入口H1及びビークル2側の開口H0を介して水平移動され、ポートP1上に載置される。この際に、FOUP3の凹部3aがポートP1の位置決めピン9aに係合されている。
製造指示部30は、半導体素子製造工場内におけるメインコントローラであって、半導体素子の製造スケジュールを作成し、該製造スケジュールに基づいて、搬送指示部31に対してFOUP3の搬送を指示する。
搬送指示部31は、MCS(Material Control System)であって、製造指示部30からの指示により、製造スケジュールに基づいて搬送スケジュールを作成する。搬送指示部31は、搬送スケジュールに基づいて、搬送コントローラ32に対してFOUP3の搬送を指示すると共に、ストッカコントローラ33に対してFOUP3の保管庫内搬送を指示する。
搬送コントローラ32は、搬送指示部31からの指示により、ビークル2の各部を制御して、レール1に沿ってFOUP3を搬送すると共に、不図示の製造装置、ストッカ10との間でFOUP3を移載する。搬送コントローラ32は、本実施形態では、ポートP1との間でFOUP3を移載する際の他に、ポートP1と棚部分15tとの間でFOUP3が水平移動される際にも、入出庫位置にビークル2を停止させた状態とする。
ストッカコントローラ33は、本発明に係る「制御手段」の一例として、搬送指示部31からの指示により、ストッカ10の各部を制御して、ポートP1を介してビークル2との間でFOUP3を移載すると共に、ストッカ10の内部でFOUP3を搬送し、FOUP3をポートP1又は所定の棚部分15に収容或いは載置する。ストッカコントローラ33は、本実施形態では、入出庫位置にビークル2が停止されている状態で、ビークル2との間でFOUP3を移載する他に、ポートP1と棚部分15tとの間でFOUP3を水平移動する。
(入庫動作処理)
次に、本実施形態の搬送コントローラ32及びストッカコントローラ33による入庫動作処理について図5を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態の入庫動作処理を示すフローチャートである。
図5において、先ず搬送コントローラ32により、ビークル2が入出庫位置に停止される(ステップS41)。続いて、ホイスト5a及びグリッパ5cが制御され、ビークル2に保持されているFOUP3が、位置決めピン9aの高さ分下降されると共にグリッパ5cから解放されることにより、ポートP1に移載される(ステップS42)。この際、FOUP3の上部が、ビークル2の下方で露呈されることがない。すると、ストッカコントローラ33により、スライド機構9及び棚部分15tが制御され、ポートP1上のFOUP3が、開口H0及び出入口H1を介して出入口H1に隣接する棚部分15t上に水平移動される(ステップS43)。この後に、搬送コントローラ32により、ビークル2が次の搬送元に向けて走行される(ステップS44)。これにより、一連の入庫動作処理が終了される。
(出庫動作処理)
次に、本実施形態の搬送コントローラ32及びストッカコントローラ33による出庫動作処理について図6を参照して説明する。ここに図6は、出庫動作処理を示すフローチャートである。
図6において、先ず搬送コントローラ32により、入庫動作時と同様にして、ビークル2が入出庫位置に停止される(ステップS51)。すると、ストッカコントローラ33により、棚部分15t及びスライド機構9が制御され、棚部分15t上のFOUP3が、出入口H1及び開口H0を介してポートP1上に水平移動される(ステップS52)。この際、FOUP3の上部が、ビークル2の下方で露呈されることがない。すると、搬送コントローラ32により、ホイスト5a及びグリッパ5cが制御され、ポートP1上のFOUP3が、グリッパ5cに保持されると共に位置決めピン9aの高さ分上昇されることにより、ビークル2に移載される(ステップS53)。この後に、搬送コントローラ32により、ビークル2が搬送先に向けて走行される(ステップS54)。これにより、一連の出庫動作処理が終了される。
このように、本実施形態の入庫動作処理及び出庫動作処理によれば、ポートP1とビークル2との間の距離L1をFOUP3の一つ分の高さより短くして、移載時にFOUP3の少なくとも上部を露呈させないことにより、FOUP3の大型化以前と比較して、ポートP1の鉛直方向の配置が下がらない。従って、FOUP3の大型化に対応しつつ安全上の高さを確保することが可能となる。
尚、本実施形態によれば、ストッカ10において、1つのポートP1を最上段に配置するが、ポートの数は1つに限定されない。
図7は、本発明に係る保管庫の一例を示しており、図2の保管庫と比較して、入出庫ポートの数が異なる。図7において、ストッカ110は、最上段に設けられた第1出入口H101に加えて、最上段より1つ下の段に、第2出入口H201を設けている。第1ポートP11(言い換えれば、第1スライド機構109)は、第1レール101の下方に位置するように、最上段の第1出入口H101に隣接して設けられており、第2ポートP12(言い換えれば、第2スライド機構209)は、第2レール201の下方に位置するように、最上段より1つ下の段の第2出入口H201に隣接して設けられている。このような第1ポートP11及び第2ポートP12は、同一の鉛直方向にある。第2ポートP12は、本実施形態では、ストッカ101の設置面から、鉛直方向の高さL2の位置に配置されている。高さL2は、予め設定されている高さ閾値L0より高い値を示す。高さ閾値L0は、ストッカ101を管理或いは操作する管理者或いは操作員が第2ポートP12に衝突する危険性を回避するために設定された高さである。
このように、ストッカ110において、例えば第1ポートP11を入庫専用として、第2ポートP12を出庫専用として設けることにより、ストッカ110との間で入出庫されるFOUP3の量を増倍させることも可能である。従って、入出庫に係る時間をより短縮して、より効率よく入出庫することが可能となる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う入出庫方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…レール、2…ビークル(天井走行車)、3…FOUP(荷)、9…スライド機構、10…ストッカ(保管庫)、11…載置部、13…水平駆動部、14…鉛直駆動部、15…棚部分、33…ストッカコントローラ、100…製造システム