JP2010106225A - 新規なフッ素化テトラカルボン酸二無水物、これより得られるポリイミド前駆体、ポリイミドとその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、式(2)で表される反復単位を有するポリイミド前駆体および式(3)で表される反復単位を有するポリイミドにより達成される。但し、式(1)〜式(3)のXはエーテル基またはNH基を表す。そして、式(1)及び式(2)のYは2価の芳香族基または脂肪族基を表す。
【選択図】なし
Description
ポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中無触媒で等モル重付加反応させて溶媒可溶性の前駆体(ポリアミド酸)を重合し、このワニスを溶液キャスト製膜・乾燥・加熱脱水閉環反応(イミド化反応)することで比較的容易に製造することができる。これに加えてポリイミド樹脂は、膜純度が極めて高いことが特徴であり、イオンマイグレーションやコロージョン等のトラブルを引き起こす残留ハロゲンやナトリウムイオン等の金属イオンを嫌う半導体素子の絶縁用途に適している。また入手可能な様々なモノマーを用いて物性改良を行いやすく、近年益々多様化する要求特性に対応しやすいという点においても有利である。
集積回路の層間絶縁膜には平坦化用層間絶縁膜とLSI用低誘電率層間絶縁膜がある。現在配線回路の多層化技術により半導体素子の高集積化が行われている。この際、下層と上層配線を絶縁するために化学蒸着(CVD)無機膜を使用すると、絶縁層は蒸着面に均一な厚みで形成されるため下層配線部分が段差となって現れ、上層配線はこの段差の肩で折れ曲がり断線しやすいといった重大な問題が生じる。そこで流動性のある高分子ワニスを用いることで段差を吸収して平坦化し断線の問題を解消することが可能となる。ポリイミド前駆体ワニスをスピンコーティング・乾燥後、熱イミド化して形成されるポリイミド層は平坦化を実現し、また高い耐熱性と優れた電気的絶縁信頼性を有し、ピンホールのない膜となることから、層間絶縁膜として優れた利点を有する。
ポリイミド層間絶縁膜は多層配線工程における高温プロセスに対する耐熱性や比較的低い誘電率(3.0〜3.5)を兼ね備えている点で有利ではあるが、更なる高集積化、高速処理化および低消費電力化に対応可能な低誘電率ポリイミド材料の開発が急務となっている。
ポリイミドを低誘電率化するための方策としてポリイミド骨格中へ単位体積当たりの分極率の低いフッ素置換基特にトリフルオロメチル基の導入が有効である(例えば非特許文献1参照)。一例として2,2−ビス(3,4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから得られる下記式(7)で表される繰り返し単位を有するフッ素化ポリイミドのフィルムは平均屈折率から見積もられた誘電率が2.65と非常に低い値を示す(例えば非特許文献2参照)。
しかしながらこのような多孔性ポリイミドフィルムは、空孔を含まない通常の緻密なポリイミドフィルムに比べて機械的強度に劣り、CMP工程で重大なトラブルを引き起こす恐れがある。
しかしながら、多くのポリイミド系ではフィルムの線熱膨張係数は60〜80ppm/Kの範囲であり、低熱膨張特性を有していない。上記式(4)や式(5)で表されるポリイミドは低誘電率ではあるが、低線熱膨張係数は示さない。
一例として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから得られる下記式(9)で表されるポリイミドは脂環構造とトリフルオロメチル基を共に含有するため非常に低い誘電率(2.66)を示し、且つ比較的直線性の高い剛直な主鎖骨格を有するため低熱膨張係数(21ppm/K)および高ガラス転移温度(356℃)を同時に満たすことが報告されている(例えば非特許文献2参照)。
脂環構造を含まないフッ素基含有ポリイミドとして例えば下記式(10)で表される全芳香族ポリイミドは比較的低い誘電率(2.86)および極めて低い線熱膨張係数(−4.7ppm/K)を示すことが報告されている(例えば非特許文献7参照)。
イオンマイグレーションを抑制するという観点から、ポリイミド前駆体ワニスの代わりにポリイミドワニスを使用してこれを塗布・乾燥し層間絶縁膜を形成することが好ましいが、室温で安定なポリイミドワニスとするためには、ポリイミドが汎用の揮発性有機溶媒に対して室温で高い溶解性を有することが必要となる。
もしポリイミドワニスを基板上に塗布・乾燥するだけで、形成されたフィルムが低CTEを発現し、更に低誘電率、高Tg、且つ十分な膜靭性を有するポリイミド材料があれば上記産業分野にとって極めて有益な層間絶縁膜を提供しうるが、そのような材料は知られていないのが現状である。
で表されるポリイミドが上記要求特性を同時に満足する優れた特性を示すことから、上記産業分野において有益な材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
1.式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物。
2.式(2)で表される反復単位を有するポリイミド前駆体。
3.式(3)で表される反復単位を有するポリイミド。
4.上記式(3)中、構造単位Yが下記式(4)〜(6)から選択されてなる上記3に記載のポリイミド。
下記式(1)で表される本発明のテトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。
上記エステル化反応は、溶質濃度5〜50質量%の範囲で行われる。副反応の制御、沈殿の濾過工程を考慮して、好ましくは10〜40質量%の範囲で行われる。
上記エステル化反応に用いる脱酸剤としては、特に限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が用いられる。
上記アミド化反応は次のようにして行う。まずトリメリット酸無水物クロリドを溶媒に溶解し、セプタムキャップで密栓する。この溶液に、TFMBおよび適当量の脱酸剤を同一溶媒に溶解したものをシリンジまたは滴下ロートにて滴下する。滴下終了後、反応混合物を1〜24時間撹拌する。この際TFMBに対するトリメリット酸無水物クロリドの添加量は通常2倍モルであるが、反応終了後のトリメリット酸無水物クロリドの分離のしやすさおよびの観点から、TFMBに対してトリメリット酸無水物クロリドを過剰に添加してもよい。その際のトリメリット酸無水物クロリドの添加量は2〜10倍モル量、好ましくは2〜5倍モル量である。
上記アミド化反応は、溶質濃度5〜50質量%の範囲で行われる。副反応の制御、沈殿の濾過工程を考慮して、好ましくは10〜40質量%の範囲で行われる。
反応に用いる脱酸剤としては、特に限定されないが、プロピレンオキサイドの他、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類が使用可能である。副反応の抑制および精製・分離工程の容易さの観点から脱酸剤としてプロピレンオキサイドが好適に用いられる。
このようにして重合反応に供することのできる高純度の該テトラカルボン酸二無水物を得ることができるが、テトラカルボン酸二無水物と反応せず、分離の容易な適当な溶媒から再結晶操作を行い更に純度を高めてもよい。
以下に式(2)で表される本発明のポリイミド前駆体の製造方法について説明する。まず、重合容器中ジアミンを重合溶媒に溶解する。ここでジアミンの分子構造は式(1)中、構造単位Yに2つのアミノ基を結合したもの(NH2−Y−NH2)である。このジアミン溶液に対して、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、−20〜100℃の範囲で、好ましくは20〜60℃の範囲で1〜72時間攪拌する。この際、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物成分の各々の総量は実質的に等モルで仕込まれる。また重合の際の全モノマー濃度は5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。
上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリイミド前駆体の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる恐れがあり、好ましくない。また、ジアミンモノマーとして脂肪族ジアミンを使用した場合、重合初期に塩形成が起こるが、上記モノマー濃度より高濃度で重合を行うと、形成された塩が溶解、消失するまでにより長い重合時間を必要とし、生産性の低下を招く恐れがあるので好ましくない。
上記脂肪族ジアミンのうち、低熱膨張特性発現の観点から剛直で直線的な分子構造を有するジアミンを使用することが好ましい。例えばトランス−1,4−シクロヘキサンジアミンが好適に用いられる。
式(3)で表される本発明のポリイミドは、上記の方法で得られたポリイミド前駆体の脱水閉環反応(イミド化反応)により製造することができる。適用可能なポリイミドの形態は、フィルム、基板/ポリイミドフィルム積層体、粉末、成型体および溶液(ワニス)が挙げられる。イミド化反応には公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
まずポリイミドフィルムを製造する方法について具体的に説明する。ポリイミド前駆体の重合溶液をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、エアーオーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたポリイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200〜400℃、好ましくは250〜350℃で加熱することで、ポリイミドフィルムが得られる。この際の加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から200℃以上、生成したポリイミドフィルムの熱安定性の観点から400℃以下が好ましい。またイミド化は減圧下、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
その際に使用される有機酸の酸無水物としては、特に限定されず、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が使用可能であるが、コストおよび後処理のしやすさの観点から無水酢酸が好適に用いられる。また有機3級アミンとしては特に限定されず、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等が使用可能であるが、安全性の観点から好ましくはピリジンが用いられる。
化学イミド化反応の際、脱水環化試薬中の酸無水物の使用量は、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1〜10倍モルの範囲であることが好ましく、脱水環化試薬中の塩基性触媒の使用量は酸無水物に対して0.1〜2倍モルの範囲であることが好ましい。これらの範囲外で化学イミド化を行うとイミド化反応が完結しなかったり、反応溶液中にイミド化が未完結のポリイミドが析出してやはりイミド化が不十分となる恐れがある。
得られたポリイミド粉末を、重合の際に使用可能な上記の溶媒に再溶解してポリイミドのワニスを得ることができる。
このポリイミドワニスをバーコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、インクジェット法、ディッピング法、スプレーコーティング法等の方法で基板上に塗工し、40〜300℃、好ましくは80〜250℃で乾燥するによってもポリイミドフィルムを形成することができる。
上記のように得られたポリイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することでポリイミドの成型体を作製することもできる。
ポリイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して0〜100℃、好ましくは0〜60℃で反応させることにより、ポリイミドの異性体であるポリイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリイミド前駆体フィルムを浸漬することでも可能である。ポリイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより、ポリイミドへ容易に変換することができる。
本発明のポリイミドおよびその前駆体中に、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、色素、顔料、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えることができる。
ポリイミドのガラス転移温度Tgは高い程よいが、230℃以上であれば実用上支障なく、250℃以上であればより好ましい。
ポリイミドのCTEは低い程よいが、40ppm/K以下であれば実用上支障はなく、30ppm/K以下であればより好ましい。
ポリイミドの誘電率は低いほどよいが、2.8以下であれば実用上支障はなく、2.75以下であればより好ましい。
上記ポリイミドフィルムは十分な膜靭性を示すことが必要である。その指標として180°折曲試験によりフィルムが破断しないことが必要である。
ポリイミドは、ポリイミド自体に溶媒溶解性がなくてもポリイミド前駆体が揮発性の有機溶媒に可溶であれば、層間絶縁膜形成に支障はないが、ポリイミドが有機溶媒に室温で高い溶解性を示し、安定なワニスとなることが工程簡略化の観点からより望ましい。
ポリイミドには十分高い熱酸化安定性も求められる。その指標として空気雰囲気中で測定された5%重量減少温度が400℃以上であれば実用上支障はなく、420℃以上であればより好ましい。
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、KBr法にて本発明のテトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルを測定した。また透過法にて本発明のポリイミドの薄膜(5μm厚)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中で本発明のテトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを測定した。
<示差走査熱量分析(融点および融解曲線)>
本発明のテトラカルボン酸二無水物の融点および融解曲線は、ブルカーエイエックス社製示差走査熱量分析装置(DSC3100)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定した。融点が高く融解ピークがシャープであるほど、高純度であることを示す。
本発明のポリイミド前駆体の0.5質量%溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用い、熱機械分析により、静荷重0.5g/膜厚1μm(膜厚20μmの場合は静荷重10g)、昇温速度5℃/分における試験片の伸びを計測し、試験片が急激に伸びた温度の前後の曲線にそれぞれ接線を引き、これらの接線の交点よりガラス転移温度(Tg)を決定した。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm(膜厚20μmの場合は静荷重10g)、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、ガラス転移温度以下である100〜150℃の範囲での平均値として、本発明のポリイミドフィルム(20μm厚)の線熱膨張係数を求めた。
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミドフィルム(20μm厚)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリイミドフィルムの平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×nav 2により周波数1MHzに相当するポリイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(11)で表される本発明のテトラカルボン酸二無水物(以下TATFBPとも称する)は式(13)で表されるジオール(DHTFMB)とトリメリット酸無水物クロリドより合成した。まずDHTFMBを以下のように合成した。2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)3.20g(10mmol)を500mLナス型フラスコに入れ、水100mLを加えて攪拌し、懸濁させた。これに濃塩酸24mL(100mmol)を加えて攪拌しA液とした。50mLナス型フラスコに亜硝酸ナトリウム1.38g(30mmol)を入れ、水8mLを加えて溶解し、B液とした。氷浴で冷却したA液に攪拌下B液をシリンジにてすばやく加えた。2時間攪拌後、未反応の亜硝酸ナトリウムを分解するために尿素0.1gを加え、更に30分攪拌し、C液とした。次に1L3つ口フラスコに燐酸7mLと水600mLを入れ、還流管を付けて窒素雰囲気中、120℃に加熱した。この水溶液中にC液をゆっくり加え、120℃で1時間還流して加水分解を行った。室温まで放冷後、生成物をジエチルエーテルで抽出し、エバポレーターで溶媒留去して橙色油状生成物を得た。これに水と活性炭を加えて脱色後、熱濾過し、エバポレーターで水を留去して薄黄色固体を得た。最後にシクロヘキサンにて再結晶・真空乾燥を行い、収率43%で白色結晶を得た。FT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルから得られた生成物は式(13)で表される目的のジオール体であることが確認された。分析結果を以下に示す。
FT−IR: 3316cm−1(フェノール性OH基)、1593cm−1(ビフェニレン基)
1H−NMR:δ10.2ppm(OH、2H)、δ7.0〜7.1ppm(ビフェニレン基上CaromH、6H)
DSC:融点149.9℃
氷浴中で冷却した溶液Aに攪拌下溶液Bを滴下して3時間攪拌し、その後室温で12時間攪拌した。析出した白色のピリジン塩酸塩を濾別し、濾液をエバポレーターで溶媒留去し、析出物を水で繰り返し洗浄してピリジンを除去した。生成物を80℃で12時間真空乾燥し、更に適当量の無水酢酸を加えて120℃で3時間加熱して一部開環した酸無水物基を完全に閉環させた。これにトルエンを加えて無水酢酸を共沸除去し、得られた白色固体を120℃で24時間真空乾燥して収率42%で粗生成物を得た。最後にトルエンにて再結晶(再結晶収率92%)し、120℃で24時間真空乾燥して白色結晶を得た。FT−IRスペクトル(図1)および1H−NMRスペクトル(図2)より得られた生成物は式(11)で表される目的のテトラカルボン酸二無水物であり、示差熱分析による融解の吸熱ピーク(図3)が非常にシャープであったことから生成物は高純度であることが確認された。分析結果を以下に示す。
FT−IR: 1856cm−1、1784cm−1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1750cm−1(エステル基C=O伸縮振動)
DSC:融点245.3℃
<ポリイミド前駆体の重合、イミド化およびポリイミドフィルム特性の評価>
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBと称する)3mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した後、この溶液に式(11)で表される本発明のテトラカルボン酸二無水物粉末(TATFBP))3mmolを一度に加えた(溶質濃度:30質量%)。室温で24時間攪拌後、溶液粘度が増加して攪拌しにくくなったため、16質量%まで同一溶媒で適宜希釈しトータル72時間撹拌して均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、高い溶液貯蔵安定を示した。DMAc中、30℃、0.5質量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリイミド前駆体の固有粘度は1.75dL/gであり、高重合体であった。
このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得たポリイミド前駆体フィルムを基板上、350℃で1時間真空中で熱イミド化を行った後、残留応力を除去するために基板から剥がして真空中350℃で1時間熱処理を行い、膜厚20μmの淡黄色のポリイミドフィルムを得た。また、ポリイミド前駆体溶液に過剰量の無水酢酸/ピリジン(体積比7/3)を攪拌しながら滴下し、室温で24時間攪拌することによっても容易に化学イミド化することが可能であった。この際反応溶液はゲル化しなかった。化学イミド化終了後、反応溶液を大量のメタノール中に滴下してポリイミドを沈殿・濾過してメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥してポリイミドの粉末を得た。赤外吸収スペクトルを測定したところ、化学イミド化はほぼ完結していることが確認された。このポリイミド粉末はDMAc、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等幅広い有機溶媒に対して25℃で高い溶解性(5質量%以上)を示した。
熱イミド化によって得られたポリイミドフィルムは180°折曲げ試験によっても破断せずフレキシブルであった。得られた膜厚20μmのポリイミドフィルムのガラス転移温度は268℃であり、5%重量減少温度は窒素雰囲気中で463℃、空気雰囲気中で428℃と十分高い耐熱性および熱安定性を示し、線熱膨張係数(CTE)は28.9ppm/Kと比較的低い値を示した。また平均屈折率から見積もった誘電率は2.75と全芳香族ポリイミドにしては非常に低い値を示した。また、上記ポリイミドの粉末をDMAcに溶解して得たポリイミドワニスをガラス基板上に塗布・乾燥し、同様な条件で熱処理して作製したポリイミドフィルムについても、ポリイミド前駆体フィルムを熱イミド化して作製したポリイミドフィルムとほぼ同等の物性を示した。ポリイミド薄膜のFT−IRスペクトルを図4に示す。
<アミド基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(12)で表される本発明のアミド基含有テトラカルボン酸二無水物(以下TATFMBと称する)は、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBと称する)とトリメリット酸無水物クロリドより合成した。まず、ナス型フラスコにトリメリット酸クロリド4.21g(20mmol)を入れ、酢酸エチル14mLとn−ヘキサン20mLからなる混合溶媒を加えて溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した。他方で、別のフラスコ中でTFMB1.61g(5mmol)を酢酸エチル6.5mLとn−ヘキサン7.6mLからなる混合溶媒を加えて溶解させ、更に脱酸剤としてプロピレンオキサイド0.7mL(10mmol)を加えてセプタムシールして溶液Bを調製した。
エタノールアイスバス中で冷却した溶液Aに攪拌下溶液Bを滴下して3時間攪拌し、その後室温で12時間攪拌した。析出物を濾別し、酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:1)でよく洗浄して、過剰量のトリメリット酸無水物クロリドおよび副生成物であるクロロプロパノールを除去し、60℃で12時間真空乾燥して収率81%で白色の生成物を得た。これを120℃で12時間真空乾燥後、無水酢酸/トルエン混合溶液(体積比1/10)から再結晶し、最後に120℃で24時間真空乾燥して白色結晶を得た。FT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルより得られた生成物は式(12)で表される目的のアミド基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。分析結果を以下に示す。
FT−IR: 3378cm−1(アミド基NH伸縮振動)、3108cm−1(芳香族C−H伸縮振動)、1858cm−1、1782cm−1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1676cm−1(アミド基C=O伸縮振動)
1H−NMR: δ11.06ppm(s、NH、2H)、δ8.65ppm(s、フタルイミド上、3位CaromH、2H)、δ8.37ppm(フタルイミド上、5および6位CaromH、4H)、δ7.46ppm(d、中央ビフェニル上、6および6’位CaromH、2H)、δ8.13ppm(d、中央ビフェニル上、5および5’位CaromH、2H)、δ8.27ppm(s、中央ビフェニル上、3および3’位CaromH、2H)、
DSC:融点267℃
テトラカルボン酸二無水物成分としてTATFBPの代わりにTATFMBを用いた以外は実施例2に記載した方法と同様にポリアミド酸を重合、製膜、熱イミド化を行い、物性評価した。得られたポリアミド酸の固有粘度は0.47dL/gであった。ポリアミド酸膜(10μm厚)のi線透過率は32.7%であった。ポリイミドフィルム(膜厚20μm)は180°折曲げ試験によっても破断せずフレキシブルであった。ガラス転移温度は303℃であり、線熱膨張係数は37.8ppm/Kと比較的低い値を示した。また、機械的特性は引張弾性率5.40GPaと高弾性を示し、破断伸びは5.0%であった。ポリイミド前駆体およびポリイミド薄膜のFT−IRスペクトルをそれぞれ図5および図6に示す。
テトラカルボン酸二無水物成分としてTATFBPの代わりにTATFMB、ジアミン成分としてTFMBの代わりにトランス−1,4−シクロヘキサンジアミン(以下CHDAと称する)を用いて、実施例2に記載した方法と同様にポリアミド酸を重合、製膜、熱イミド化を行い、物性評価した。得られたポリアミド酸の固有粘度は0.75dL/gであった。ポリアミド酸膜(10μm厚)のi線透過率は52.6%と比較的高い透明性を示した。ポリイミドフィルム(膜厚20μm)は180°折曲げ試験によっても破断せずフレキシブルであった。ガラス転移温度は321℃であり、線熱膨張係数は21.8ppm/Kと比較的低い値を示した。また、機械的特性は引張弾性率6.69GPaと高弾性を示し、破断伸びは4.8%であった。ポリイミド薄膜のFT−IRスペクトルを図7に示す。
<感光性樹脂組成物の作製とポジ型パターン形成>
実施例4と同様にして得られたポリアミド酸のDMAc溶液にジアゾナフトキノン系感光剤として2,3,4−トリス(1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−5−スルフォキシ)ベンゾフェノンを添加・溶解してシリコンウエハ上に塗布し、80℃で2時間熱風乾燥器中で乾燥させて、膜厚10μmの感光性樹脂組成物膜を形成した。この時膜中のジアゾナフトキノン系感光剤の濃度は30質量%である。更にこの膜を空気中100℃で10分間プリベイク後、フォトマスクを介し、落射式高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製トスキュア251)のi線(365nm、照射光強度=150mW/cm2)を10秒間照射した。これを20体積%のエタノール含むテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)2.38質量%水溶液にて21℃で90秒間パドリング現像を行い、エタノールで洗浄後、60℃で乾燥して、線幅20μmの鮮明なレリーフパターンが得られた。このレリーフパターンを300℃で加熱した熱イミド化後も、パターンの崩れは見られなかった。図8にそのSEM写真を示す。
実施例6において、実施例4と同様にして得られたポリアミド酸を実施例5と同様にして得られたポリアミド酸に変更した以外は同様にして感光性樹脂組成物膜を作製し、ポジ型パターン形成を行った。その際現像は、2.38質量%TMAH水溶液を用いて21℃で20秒間行い、その後水でリンスした。その結果、実施例6と同様に、線幅20μmの鮮明なレリーフパターンが得られた。このレリーフパターンを300℃で加熱した熱イミド化後もパターンの崩れは見られなかった。図9にそのSEM写真を示す。
テトラカルボン酸二無水物として本発明のTATFBPの代わりに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、実施例2に記載した方法と同様にTFMBと重合反応を行ってポリイミド前駆体を得た。このポリイミド前駆体のワニスに化学イミド化剤を投入したところ、反応溶液がゲル化し、イミド化を完結することができなかった。そのため、ポリイミド前駆体膜を製膜し、熱イミド化して作製したポリイミドフィルムについて膜物性を評価した。このポリイミドのガラス転移温度は314℃と耐熱性には優れていたが、誘電率は2.93と高い値となり、低誘電率化の観点から層間絶縁膜材料としては不十分であった。また、このポリイミドはフィルム、粉末共にm−クレゾール以外の溶媒には全く溶解性を示さず、溶液加工性を有していなかった。
Claims (5)
- 式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物。
(式(1)中、Xは酸素原子またはNH基を表す。) - 式(2)で表される反復単位を有するポリイミド前駆体。
(式(2)中、Xは請求項1に記載したものと同義であり、Yは2価の芳香族基または脂肪族基を表す。Rは水素原子、シリル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基のうちいずれかの基を表し、これらが混在してもよい。) - 式(3)で表される反復単位を有するポリイミド。
(式(3)中、XおよびYは式(2)における定義と同意義である。) - 上記式(3)中、構造単位Yが下記式(4)〜(6)から選択されてなる請求項3に記載のポリイミド。
- 請求項3または請求項4に記載のポリイミドを含有してなる集積回路の層間絶縁膜。
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