JP2010053699A - エンジンの潤滑構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トランスミッション室3のオイルを各潤滑個所に圧送する第1のオイルポンプと、クランク室に溜まるオイルをトランスミッション室3に戻す第2のオイルポンプ、すなわちスカベンジングポンプ42とを備えている。クランク室2は、クランク軸4を収納するクランク収納部2aと、これより下側に位置して第2のオイルポンプの吸込部に連通するオイル回収部5とに、仕切り壁95,96により仕切られている。仕切り壁95,96にはクランク収納部2aとオイル回収部5とを連通する連通孔97が形成され、オイル回収部5内には、第1のオイルポンプから吐出されるオイルを、クランクケース1に設けられた二次オイルフィルタ86へ圧送するオイル管115が配置されている。
【選択図】図6
Description
本発明は、クランク室内に溜まるオイルを、エア噛みが生じることなく、且つ、効率良くトランスミッション室側に戻すことができると共に、クランク室の下部空間を、有効にオイル配管に利用できるエンジンの潤滑構造を提供することを目的としている。
図1〜図14は、本発明にかかる潤滑構造を備えた自動二輪車用のセミドライサンプ式V型二気筒エンジンであり、これら図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。なお、説明の都合上、車輌の進行方向を、図1に矢印で示すようにエンジンの前方と規定し、乗車したライダーから見た左右(クランク軸方向)を、エンジンの左右と規定して、以下説明する。
図1はエンジンの左側面略図、図2は図1のII-II断面拡大図、図3は図1のIII-III断面拡大図、図4は図1のIV-IV断面拡大図、図5は図1のV-V断面拡大図である。図1において、クランクケース1の前半部の上面には、前傾姿勢の前気筒10と後傾姿勢の後気筒20とがV字状に配置されており、各気筒10,20は、下から順に配置されたシリンダ11,21、シリンダヘッド12、22及びシリンダヘッドヘッドカバー(ロッカーアームカバー)13、23により構成されると共にクランクケース1に締結されており、各シリンダヘッドカバー13、23は、さらに意匠カバー14、24により覆われている。
図6は右クランクケース部材1bの左側面図(内部の側面図)、図7は右クランクケース部材1bの内部を左斜め後方から見た斜視図、図8は左クランクケース部材1aの内部を右斜め後方から見た斜視図、図9は右クランクケース部材1bの外部を右斜め前方から見た斜視図、図10は左クランクケース部材1aの外部を左斜め後方から見た斜視図である。
図6において、クランク室2とトランスミッション室3との前後方向間には、第1の隔壁91と第2の隔壁92とがクランクケース1と一体に形成されており、これら隔壁91,92により、クランク室2とトランスミッション室3とを前後に隔離すると共に、トランスミッション室3の前端部に、クランク室2及びトランスミッション室3から隔離された気液分離室9を形成している。第1の隔壁91は、クランクケース1の上壁の後気筒用のボアの後端から後バランサ軸6bの前上端部近傍に向けて下方に延び、後バランサ軸6bの後側を円弧状に迂回して後バランサ軸6bの下端部(ポンプハウジング部80の前上方位置)に至り、さらに前下方に延び、下方に折れ曲がると共にL字状に後方に折れ曲がり、第2のオイルフィルタ保持部87の前上端部につながっている。
右クランクケース部材1bの壁内には、ポンプハウジング部80の後端部に形成されたフィードポンプ41のポンプ吸込口41cから下方に延びて第1のオイルフィルタ保持部86の右端出口部に至るフィードポンプ吸込側のオイル通路101と、ポンプハウジング部80の前端部に形成されたフィードポンプ41の吐出口41dから下方に延びるフィードポンプ吐出側のオイル通路102と、が形成されており、フィードポンプ吐出側の油路102の途中には、オイル貯留部8の延長部8a内に開口するリリーフバルブ取付部104が形成され、該リリーフバルブ取付部104にリリーフバルブ99が取り付けられている。
図6において、クランク室2内の下端部は、前側の仕切り壁95と後側の仕切り壁96とによりクランク軸収納部から仕切られることにより、オイル回収部5として形成されており、該オイル回収部5は、クランクケース1の前端壁から第2のオイルフィルタ保持部87の前端部に亘っている。前側の仕切り壁95は、前バランサ軸6aの下端部近傍位置から後方に延び、クランク軸4の前端に略対応する前後方向位置付近で途切れている。後側の仕切り壁96は、オイル貯留部8の延長部8aの前上端位置から、クランク軸のクランクアーム部分の回転軌跡に略沿うように湾曲状に前方に延び、前側の仕切り壁95の後端に対し、一定の隙間を置いた後下方位置まで至っている。すなわち、前仕切り壁95の後端と、後仕切り壁96の前端との間で、前下方に向いて開口するオイル回収口97を形成している。言い換えると、該オイル回収口97は、クランク軸4の矢印R方向への回転により後側の仕切り壁96上を前方に流れるオイルの流れに対向するように開口している。
図4において、右クランクケース部材1bに一体に形成されたオイルポンプ用の共通ポンプハウジング部80内には、左から順にスカベンジングポンプ42用の内外ロータ42a、42b、共通のポンプボディ81、フィードポンプ41用の内外ロータ41a、41bが内装されており、ポンプハウジング部80の右端は、ポンプカバー84により閉塞されている。すなわち、共通のポンプボディ81を挟んで、左側に容量の大きなスカベンジングポンプ42が配置され、右側にスカベンジングポンプ42よりも容量の小さなフィードポンプ41が配置されている。いずれのオイルポンプ41,42も、前記内外一対のロータ41a,41b、42a、42bを噛み合い状態で回転可能に収納してなるトロコイド型ポンプであり、各内側ロータ41a,42aが前述の共通のポンプ軸36に連結されている。ポンプ軸36の右端部はポンプカバー84から右方のクラッチ室59内に突出しており、右方突出部分に固着されたポンプ用入力ギヤ82は、後バランサ軸6bに固着されたギヤ83に噛み合い、後バランサ軸6bから動力が伝達され、後バランサ軸6bと逆方向に回転するようになっている。
図11は、図1のXI-XI断面拡大図であり、両一次オイルフィルタ44,45の構造及びその取付構造を詳細に示している。略円筒状に形成されている両オイルフィルタ保持部86,87は、右クランクケース部材1bの略右端部から左クランクケース部材1aの略左端部に亘って形成されている。後側に位置するフィードポンプ用の第1のオイルフィルタ保持部86は、左クランクケース部材1aの左端面にオイルフィルタ取付口123が開口すると共に該オイルフィルタ取付口123の近傍の内周面にめねじ部125が形成され、右クランクケース部材1bの右端部にオイルフィルタ出口部127が形成され、両クランクケース部材1a、1bの合わせ面を含む左右幅の中央部分に、後方のオイル貯留部8に向いて開口するスリット状のオイル吸込口86aが形成されている。第1のオイルフィルタ保持部86の右端部に形成されたオイルフィルタ出口部127は、右クランクケース部材1bに形成された前記フィードポンプ吸込側のオイル通路101の下端部に連通している。
図9において、二次オイルフィルタ46のオイルろ過後のオイル出口は、右クランクケース部材1bの壁内に形成されたメインオイル通路(メインギャラリ)141に連通し、該メインオイル通路141は後方に延び、後端部が、上方に延びる縦向きのメインオイル通路142に連通している。該縦向きのメインオイル通路142は右クランクケース部材1bの軸受孔64bに至っている。
図2において、クランク軸4の左右のジャーナル部4a、4bを支持する左右のクランクケース部材1a、1bの軸受孔64a、64bの内周面には、それぞれ環状オイル通路57a、57bが形成されており、各環状オイル通路57a、57bは、前述の各クランクケース部材1a、1b内に形成された縦向きのオイル通路142,148(図9及び図10)にそれぞれ連通している。
図3において、変速用入力軸31と変速用出力軸32内にはそれぞれ軸方向に延びるオイル通路171,172が形成されており、各オイル通路171,172は、それぞれ径方向に延びる分岐通路を介して、変速ギヤ群G1,G2の各ギヤの嵌合部分に連通している。変速用入力軸31のオイル通路171は、左端部が左クランクケース部材1aのオイル通路174に連通し、該オイル通路174は右方にL字状に折れ曲がり、両クランクケース部材1a、1bの合わせ面を介して右クランクケース部材1bのオイル通路175に連通している。該オイル通路175の右端部は、前記変速用入力軸用のオイル入口部146に至り、前記オイル管145からオイルが供給されるようになっている。変速用出力軸32用のオイル通路172は、右端部が、右クランクケース部材1bのオイル通路176を介して、前記変速用出力軸用のオイル入口部147に至り、前記オイル管145からオイルが供給されるようになっている。
(前後の気筒10,20の潤滑用オイルの戻り経路)
(1)図14は、エンジン内のオイル循環を簡単にまとめたブロック図であり、太い実線で示す矢印は、トランスミッション室3のオイル貯留部8からフィードポンプ41を経て各潤滑箇所に至るオイル供給経路であり、細い実線で示す矢印は、クランク室2のオイル回収部5からスカベンジングポンプ42を経てオイル貯留部8に至るオイル回収経路であり、破線で示す矢印は、各潤滑箇所からオイル回収部5又はオイル貯留部8に至るオイル戻り経路である。
(1)図6において、クランク室2に溜まるオイルを、一旦、クランク収納部2aの下側のオイル回収部5に収納し、静止状態とした後、オイル回収部5内のオイルをスカベンジングポンプ42で吸い込み、気液分離室9を介してトランスミッション室3に排出するので、スカベンジングポンプ42は、クランク収納部2a内の圧力変動の影響を抑えて、オイル回収部5内のオイルを吸い込むことができ、スカベンジングポンプ42の吸込能力を十分に発揮させることができる。
(1)前記実施の形態では、クランクケースはクランク軸方向に二分割された構造となっているが、3つ以上に分割されるクランクケースとすることも可能である。また、オイルポンプを3個以上備えたエンジンにも適用可能である。
1a 左クランクケース部材
1b 右クランクケース部材
2 クランク室
3 トランスミッション室
4 クランク軸
5 オイル回収部
8 オイル貯留部
41 フィードポンプ(第1のオイルポンプ)
42 スカベンジングポンプ(第2のオイルポンプ)
86 二次オイルフィルタ
95 前側の仕切り壁
96 後側の仕切り壁
97 連通孔
111,112 オイル管接続部(オイル管用のオイル口部分)
115 オイル管
115a、115b オイル管の接続筒部(オイル管115の継手の一例)
Claims (6)
- クランクケース内のトランスミッション室に貯留されるオイルをエンジンの各潤滑個所に圧送する第1のオイルポンプと、クランク室に溜まるオイルを前記トランスミッション室に戻す第2のオイルポンプと、を備えたエンジンの潤滑構造において、
前記クランク室は、クランク軸を収納するクランク収納部と、該クランク収納部の下側に位置すると共に前記第2のオイルポンプの吸込部に連通するオイル回収部とに、仕切り壁により仕切られており、
前記仕切り壁には前記クランク収納部と前記オイル回収部とをオイル流通可能に連通する連通孔が形成され、
前記オイル回収部内には、前記第1のオイルポンプから吐出されるオイルを、前記クランクケースに設けられた二次オイルフィルタへ圧送するためのオイル管が配置されていることを特徴とするエンジンの潤滑構造。 - 請求項1記載のエンジンの潤滑構造において、
前記オイル管の長さ方向の端部は、前記オイル管の長さ方向と略直角な筒状の継手を有しており、
前記継手は、オイル回収部の側壁部に形成されたオイル口部分に嵌合接続されているエンジンの潤滑構造。 - 請求項2記載のエンジンの潤滑構造において、
前記クランクケースは、クランク軸方向に二つのクランクケース部材に分割されており、
前記オイル管は長さ方向の両端部に前記継手を有しており、
前記両継手は、二分割された一方のクランクケース部材に形成された前記オイル口部分に接続されているエンジンの潤滑構造。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のエンジンの潤滑構造において、
クランクケースの前端下部に前記二次オイルフィルタが配置されているエンジンの潤滑構造。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載のエンジンの潤滑構造において、
前記連通孔は、前記クランク軸の回転によって前記仕切り壁の上面を移動するオイルの流れに対向するように開口しているエンジンの潤滑構造。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジンの潤滑構造において、
前記オイル回収部には、前記第2のオイルポンプの吸込側に連通するオイル吸込口が開口しており、該オイル吸込口と前記連通孔とは、オイル回収部の互いに反対側の端部又は端部近傍に配置されているエンジンの潤滑構造。
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