本発明は、直列接続された正極側及び負極側の一対の半導体スイッチング素子を備えてなる半導体モジュールを用いた電力変換装置に関する。
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の高速半導体スイッチング素子を用いた電力変換装置が様々な分野で使われている。近年、半導体技術の進歩により大容量の半導体モジュールが実現され、可変周波数及び可変電圧の負荷駆動用のインバータの1相分である上下アームを構成する正極側及び負極側の一対の半導体スイッチング素子を一体化した半導体モジュールも広く普及している。
さらに、大容量化を図るため、半導体モジュールを複数並列接続することもあり、この場合、各半導体モジュールの電流分担の均等化が課題となる。例えば、スイッチング過渡時の電流分担を不均等にする要因としては、非特許文献1などに記されているように、スイッチング素子特性の差異、主回路配線インダクタンスの差異、温度差及びゲート駆動回路の差異が知られている。
ゲート駆動回路の差異に起因する電流分担を均等化する構成としては、構成部品(例えば、フォトカプラやトランジスタ)の個体差が影響しないように、例えば特許文献1、2に例示されるように、一つの駆動回路から抵抗を介して並列スイッチング素子の制御端子に接続する構成が一般的である。
また、ゲート駆動回路からスイッチング素子のゲート端子までのゲート配線インダクタンスを均等化することも重要であり、特許文献1ではゲート配線実装についても注意しており、半導体モジュールの近傍に各々の半導体モジュールのゲート端子に接続されるゲート抵抗が実装されている回路基板を配置している。
さらに、特許文献3では、主電流の変化による磁場変化の影響をゲート回路が受けないようにすることも考慮されている。
また、特許文献4では、並列接続されたゲート回路に各々コモンモードコイルを付けることで、主電流の変化による磁場変化の影響で電流分担が不均等になるのを抑制している。
さらに、特許文献7では、並列接続されたゲート相互間を比較的低い抵抗値の抵抗で連結することで不均等を抑制している。
特開2003−18860号公報
特開2003−88098号公報
特開平7−170723号公報
特開平8−19246号公報
特開2003−197858号公報
特開2007−151286号公報
特開平10−201243号公報
特開2004−135444号公報
CQ出版社、トランジスタ技術スペシャルNo.85「改訂*実践パワーエレクトロニクス入門」、p.85
しかし、上述した従来の技術では、最近の半導体技術の進歩による半導体モジュール小型化に必ずしも対応していないことから、半導体モジュールを小型化しても電力変換装置全体としては小型化できない問題が懸念される。
本発明が解決しようとする課題は、電力変換装置の小型化に適した半導体モジュールの実装構造を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、同一構成の第1と第2の半導体モジュールを互いに並列接続してなり、前記半導体モジュールは、直列接続された正極側及び負極側の一対の半導体スイッチング素子と、前記各半導体モジュールの縁部に設けられ前記一対の半導体スイッチング素子に接続された正極端子及び負極端子と、該正極端子及び負極端子とは異なる対向する縁部に設けられ前記一対の半導体スイッチング素子をそれぞれ制御する正極制御端子及び負極制御端子とを有して構成された電力変換装置を対象とする。特に、前記第1と第2の半導体モジュールの各スイッチング素子をそれぞれ制御する制御回路が搭載された制御回路基板を、一方の半導体モジュールの投影領域内に配置したことを特徴とする。
このように、制御回路基板を2つの半導体モジュールに対して1つにまとめて一方の半導体モジュールの投影領域内に配置したことから、他方の半導体モジュールの投影領域に電力変換装置の他の構成部品を配置することができるので、電力変換装置の小型化の実装構造に係る設計の自由度を増すことができる。
この場合において、並列接続された半導体スイッチング素子の制御端子(例えば、ゲート)に供給するスイッチング信号(例えば、ゲート信号)を一つの駆動回路により生成して差異をなくし、その駆動回路から並列半導体スイッチング素子の各ゲートに供給するゲート抵抗回路の部分を制御回路として制御回路基板に搭載することができる。
また、第1の態様において、前記制御回路は、前記第1と第2の半導体モジュールの正極側のスイッチング素子を制御する正極制御回路と、前記第1と第2の半導体モジュールの負極側のスイッチング素子を制御する負極制御回路とに分けて前記制御回路基板に搭載され、前記正極制御回路は、前記制御回路基板が配置された半導体モジュールの前記負極制御端子側に、前記負極制御回路は、前記制御回路基板が配置された半導体モジュールの正極制御端子側に配置されてなる構成とすることができる。
この場合において、2つの半導体モジュールをそれら半導体モジュールの正極端子及び負極端子を有する辺縁部が近接するように配置することで、正極端子に接続する正極導体あるいは負極端子に接続する負極導体を簡素化することができるため好ましい。その際には、第1の半導体モジュールの正極制御端子と第2の半導体モジュールの正極制御端子が同じ側の辺縁部ではなくなる。第1の半導体モジュールの負極制御端子と第2の半導体モジュールの負極制御端子も同様に同じ側の辺縁部ではなくなる。そこで、半導体スイッチング素子の各ゲートに供給するゲート抵抗回路の制御出力端子は、制御回路基板から遠い半導体モジュール側に位置させて配置することにより、ゲート配線長を短くすることができ、近い半導体モジュールのゲート配線長との差異を低減することができる。
上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様は、直列接続された正極側及び負極側の一対の半導体スイッチング素子と、前記一対の半導体スイッチング素子に接続された正極端子及び負極端子と、該正極端子及び負極端子とは異なる対向する縁部に設けられ前記一対の半導体スイッチング素子をそれぞれ制御する正極制御端子及び負極制御端子とを有する半導体モジュールを備えてなる電力変換装置、つまり、並列接続していない半導体モジュールを備えてなる電力変換装置を対象とする。特に、前記半導体モジュールの各スイッチング素子をそれぞれ制御する制御回路が搭載された制御回路基板を前記半導体モジュールの投影領域内に配置したことを特徴とする。
この第2の態様でも、制御回路基板を半導体モジュールの投影領域内に配置したことから、電力変換装置の小型化の実装構造に係る設計の自由度を増すことができる。
上述の第1又は第2の態様の電力変換装置において、前記制御回路基板は、前記半導体モジュールの投影領域内に当該半導体モジュールの内部電流による電磁誘導ノイズの影響を受ける位置に配置され、前記制御回路は、前記電磁誘導ノイズに係る磁束が鎖交するループ回路の面積を低減した構成にすることができる。これによれば、制御回路基板を半導体モジュールに接近して配置しても、内部電流による電磁誘導ノイズの影響を低減できる。したがって、制御回路基板を半導体モジュールの投影領域内であっても、半導体モジュールから離して配置する必要がないので、設計の自由度を一層向上できる。例えば、2つの半導体モジュールを並列に接続し、一方の半導体モジュールの投影領域内に平滑コンデンサを配置すると、各半導体モジュール用のスナバ回路を省略できるから、制御回路基板を他方の半導体モジュールに近接して配置することができる。これにより、さらに、電力変換装置の小型化を図ることができる。
この場合において、これに加えて、又は単独に、前記制御回路は、前記電磁誘導ノイズに係る磁束が鎖交するループ回路の向きを、前記磁束の変化により当該制御回路が誤動作しない向きに配置することができる。これによれば、制御回路基板を半導体モジュールに接近して配置しても、内部電流による電磁誘導ノイズの影響を低減できる。さらに、これらに加えて、前記制御回路は、前記電磁誘導ノイズに係る磁束が鎖交するループ回路の向きが、残存磁束の変化により当該制御回路が誤動作しない向きに配置された構成とすることができる。
また、第1の態様において、前記第1と第2の半導体モジュールの正極端子と負極端子にそれぞれ接続された正極導体と負極導体とが近接対向して配設された第1の部分と、前記正極導体と前記負極導体が近接対向して配設されていない第2の部分とが形成され、前記第1の部分の近傍の領域に前記制御回路基板から前記他の半導体モジュールの制御端子に至る配線を通す構成とすることができる。これによれば、正極導体と負極導体とが近接対向して配設された第1の部分の近傍は、正極導体と負極導体に流れる主回路電流により形成される磁界の影響が小さいので、制御回路基板から他の半導体モジュールの制御端子に至る配線が受ける電磁ノイズを低減できる。
さらに、第1の態様において、前記制御回路は、前記第1と第2の半導体モジュールの正極側のスイッチング素子を制御する2つの正極制御回路と、前記第1と第2の半導体モジュールの負極側のスイッチング素子を制御する2つの負極制御回路とが前記制御回路基板に搭載されてなり、前記2つの正極制御回路と前記2つの負極制御回路の配線パターンが同一である構成とすることができる。これによれば、2つの半導体モジュールを並列接続して用いない場合でも、制御回路基板を共用することができるから、部品種類を削減できる。
さらに、第1の態様において、前記制御回路は、前記第1と第2の半導体モジュールの正極側のスイッチング素子を制御する2つの正極制御回路と、前記第1と第2の半導体モジュールの負極側のスイッチング素子を制御する2つの負極制御回路とが前記制御回路基板に搭載されてなり、前記2つの正極制御回路と前記2つの負極制御回路は、それぞれ対応する半導体スイッチング素子の制御端子の相互間を接続するゲート感度補正抵抗を備え、該ゲート感度補正抵抗に係る回路は、前記半導体モジュール内部電流による電磁誘導ノイズに係る磁束が鎖交するループ回路の面積を低減してなる構成とすることができる。これによれば、一般に半導体モジュール側の正極制御端子又は負極制御端子の近傍に設けられるゲート感度補正抵抗を、制御回路基板に設けることができる。
本発明によれば、電力変換装置の小型化に適した半導体モジュールの実装構造を提供することができる。
以下、本発明の実施例について図面を用いながら詳細に説明する。
図1に本発明の電力変換装置の実施例1の斜視構成図を、図2にその上面図を、図3にその側面図を示す。本実施例は、ほぼ同じ形状の2つの半導体モジュール11、12を並列接続した実装構成であり、基本構成としては特許文献5に記載のものと同様である。
本実施例は、図4に示す一般的な3相インバータ回路に適用可能なものである。ここでは、半導体スイッチング素子の一例として、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタIGBTを適用したものして説明する。図4において、図示していない直流電源あるいは平滑コンデンサから、3相インバータ回路を介して負荷7を駆動する構成となっている。1相を構成する直列接続された正極側及び負極側の一対の半導体スイッチング素子(図中で例えば、UP、UN)が交互にオン・オフを繰り返すことで、任意の周波数及び電圧の交流電力を負荷7に供給する。必要な電力が大きい場合には、1相分を複数の半導体スイッチング素子を並列した構成とすることがある。
図5に、スイッチング素子を2個並列接続した1相分の回路構成を示す。ここでは、一対の半導体スイッチング素子111、112で1つの半導体モジュール11を、同様にスイッチング素子121、122とで1つの半導体モジュール12を構成している。すなわち、半導体モジュール11,12は、それぞれ、いわゆる2in1モジュールと称されている。
半導体モジュール11には、主電流が流れる正極端子11P、負極端子11N、交流端子110と、正極側の半導体スイッチング素子111をオン・オフする制御信号を入力するための制御端子11GP、負極側の半導体スイッチング素子112用の制御端子11GNがある。同様に、半導体モジュール12には主電流が流れる正極端子12P、負極端子12N、交流端子120と、正極側の半導体スイッチング素子121用の制御端子12GP、負極側の半導体スイッチング素子122用の制御端子12GNがある。例えば、半導体スイッチング素子111の制御は、制御端子11GPのゲート端子11GP1と制御用エミッタ端子11GP2との間にゲート信号を印加することで行われる。
本実施例の半導体モジュール11、12は、同一の形状及び構造を有し、扁平な直方体状に形成されている。各半導体モジュール11、12の長辺の縁部上面にそれぞれ主電流の正極端子11P、12P及び負極端子11N、12Nが設けられ、これに対向する長辺の縁部上面に交流端子110が設けられている。また、各半導体モジュール11、12の対向する2つの短辺の縁部上面に制御端子11GPと12GP、及び11GNと12GNがそれぞれ設けられている。
2個の半導体モジュール11、12の正極端子11P、12P及び負極端子11N、12Nは、図23に示す端子42,43,411,412を有する正極導体及び負極導体により並列接続されている。正極導体は、正極端子11Pに接続される折り曲げ端子を有し、半導体モジュール11、12の対向する長辺の縁部に沿って延在される導体バーと、正極端子12Pに接続される折り曲げ端子を有し、半導体モジュール12の長辺の縁部に沿って延在される導体バーの2つが設けられる。一方、負極導体は、負極端子11N、12Nにそれぞれ接続される折り曲げ端子を有し、半導体モジュール11、12の対向する長辺の縁部に沿って延在される導体バーを有して形成されている。これらの導体バーは、間隔を空けて積層状に配置され、3相インバータの他相の並列半導体モジュールとの接続に用いられる。
これらの接続導体は、特許文献6に記載のものと類似の形状に形成されている。つまり、負極端子11N、12Nに接続される負極導体が端子411、412を介して、図示していない直流電源あるいは平滑コンデンサの負極(図5のN)へ接続される。半導体モジュール11の正極端子11Pに接続される正極導体は、端子43を介して直流電源あるいは平滑コンデンサの正極(図5のP)へ接続される。半導体モジュール12の正極端子12Pに接続される正極導体は、端子42を介して直流電源あるいは平滑コンデンサの正極(図5のP)へ接続される。
半導体モジュール内のスイッチング素子の駆動は、図示していないゲート駆動回路からゲート抵抗回路基板2に実装されているゲート抵抗、ゲート回路出力端子及びゲート配線を介して行われる。すなわち、ゲート駆動回路から共通ゲート配線31P、31N、ゲート抵抗回路入力端子21P、21Nを介してゲート抵抗回路基板2に駆動信号が入力される。
図6に示すように、ゲート抵抗回路基板2の正極側入力端子21Pから個々のゲート抵抗243、244を介して正極側出力端子22P1、22P2、さらにゲート配線32P1、32P2を介して半導体モジュール11、12の正極側ゲート端子11GP、12GPにゲート駆動信号が印加される。
負極側についても同様で、ゲート抵抗回路基板2の負極側入力端子21Nから個々のゲート抵抗241、242を介して負極側出力端子22N1、22N2、さらにゲート配線32N1、32N2を介して、半導体モジュール11、12の負極側ゲート端子11GN、12GNにゲート駆動信号が印加される。
図1ではゲート端子(例えば11GP)は簡略化したが、実際には図5に示すように、ゲート端子(例えば11GP1)と制御用エミッタ端子(例えば11GP2)とが1組になっている。同様に、ゲート配線(例えば32P1)も2本必要であり、この2本がツイストされた状態で用いられることが多い。図2では図の簡素化のためツイストされている部分を1本の太い線で表示している。ノイズによる誤動作抑制のためにシールド付きのツイスト線を用いられることもあり、その場合には丁度図2のような外観になる。
図2において、ゲート抵抗回路基板2が被さっている半導体モジュール12の正極側ゲート端子12GPが図において左側に、負極側ゲート端子12GNが図において右側にある。一方、ゲート抵抗回路基板2が被さっていない半導体モジュール11の正極側ゲート端子11GPが図において右側に、負極側ゲート端子11GNが図において左側にある。
そこで、正極側スイッチング素子のゲート端子11GP、12GPに接続されるゲート配線32P1、32P2とゲート抵抗回路基板2とが接続されるゲート回路出力端子22P1、22P2がゲート抵抗回路基板2における右側に、負極側スイッチング素子のゲート端子11GN、12GNに接続されるゲート配線32N1、32N2とゲート抵抗回路基板2とが接続されるゲート回路出力端子22N1、22N2 がゲート抵抗回路基板2における左側に配置されている。このように配置することによって、ゲート抵抗回路基板2から遠い側のゲート端子11GP、11GNまでのゲート配線32P1、32N1と、ゲート抵抗回路基板2が被さっていてすぐ近くのゲート端子12GP、12GNまでのゲート配線32P2、32N2とを均等な長さにすることが容易である。
仮に、正極側のゲート回路出力端子22P1、22P2が左側、負極側のゲート回路出力端子22N1、22N2が右側にある場合には、ゲート回路出力端子からゲート端子までの距離が極端に異なるため均等な長さにすることが難しい。均等な長さにするには近い側の配線は長さに余りが生じるため、その部分でノイズを受けることが懸念されるからである。
図3は、2個の半導体モジュール11、12を右側面から見たときの図である。半導体モジュール11、12は放熱器6などに取り付けられる。図3の二点鎖線で囲んだ部分はスナバ回路51及び52であり、図1、図2では、半導体モジュールの各端子を見やすくするために、記載が省略されている。なお、スナバ回路51及び52は半導体スイッチング素子のスイッチング過渡時の跳ね上り電圧を抑制する役割を担うものであり、最も単純なものはコンデンサを接続したものである。その他にコンデンサとダイオードとの直列体及びコンデンサを放電するための抵抗とで構成したものがある。
図3の破線部20Pは、ゲート抵抗回路の部品部分であり、回路構成の例を図6に示す。図6において、上部は図5の回路を図2の実装構造に近い配置で記したものである。下部がゲート抵抗回路基板2の構成例を示している。図の最下部にあるゲート駆動回路基板29から、正極側の制御信号がゲート配線31Pを介してゲート抵抗回路基板2の入力端子21P1、21P2に、負極側の制御信号がゲート配線31Nを介してゲート抵抗回路基板2の入力端子21N1、21N2に伝えられる。入力端子21P1からは個々のゲート抵抗243、244を介して出力端子22P11及び22P21に分岐される。入力端子21P2からは出力端子22P12及び22P22に分岐される。
ここで、ゲート回路が外部ノイズの影響を受けないようにするため、後述する実施例のように、入力端子21P1〜出力端子22P11、出力端子22P12〜入力端子21P2で構成されるループ回路、及び入力端子21P1〜出力端子22P21、出力端子22P22〜入力端子21P2で構成されるループ回路のループ面積はできるだけ低減した構造になっている。出力端子22P11と22P12との間には、比較的高抵抗値の抵抗263とゲート過電圧抑制のためのツェナーダイオード2531、2532が接続されている。なお、負極側20N1、20N2についても回路構成は同じであるため、説明は省略する。
以上説明したように、本実施例によれば、制御回路基板であるゲート抵抗回路基板2を2個の半導体モジュール11,12に対して1つにまとめて一方の半導体モジュール12の投影領域内に配置したことから、他方の半導体モジュール11の投影領域に電力変換装置の他の構成部品を配置することができるので、電力変換装置の小型化の実装構造に係る設計の自由度を増すことができる。
また、並列接続された2個の半導体スイッチング素子111と121、112と122の制御端子11GPと12GP、11GNと12GNに供給するゲート信号を一つのゲート駆動回路29により生成していることから、並列素子の制御タイミングの差異をなくすことができる。
また、ゲート回路は、半導体モジュール11,12の正極側のスイッチング素子111,121を制御する正極側のゲート回路20P1と20P2、及び半導体モジュール11,12の負極側のスイッチング素子112,122を制御する負極側のゲート回路20N1,20N2とに分けて、ゲート抵抗回路基板2に搭載し、さらに正極側のゲート回路20P1と20P2は、ゲート抵抗回路基板2が重ねて配置された半導体モジュール2の負極側の制御端子12GN側に、負極側のゲート回路20N1,20N2は、ゲート抵抗回路基板2が重ねて配置された半導体モジュールの正極側の制御端子12GP側に配置された構成としているから、半導体モジュール11,12の正極側のゲート配線長及び負極側のゲート配線長をほぼ均等化することができる。特に、半導体スイッチング素子の各ゲートに供給するゲート抵抗回路の正極側出力端子22P1と22P2及び負極側出力端子22N1と22N2を、半導体モジュール11側に位置させて配置しているから、ゲート配線長を一層短くすることができる。
また、正極側出力端子22P1と22P2及び負極側出力端子22N1と22N2は、半導体モジュール11の正極側出力端子22P1及び負極側出力端子22N1をゲート抵抗回路基板2の外側に、ゲート抵抗回路基板2が配置された半導体モジュール12の正極側出力端子22P2及び負極側出力端子22N2を内側に配置することにより、ゲート配線長を一層均等化することができる。
本発明の実施例2を図7、図8を用いて説明する。図7は、本実施例の斜視構成図であり、図8は本実施例の右側面図である。
本実施例が実施例1と相違する点は、平滑コンデンサ50を正極導体の端子42、43及び負極導体の端子411、412に直接接続し、これに伴いスナバ回路51、52を除去したことにある。つまり、半導体モジュールと平滑コンデンサとを近づけることにより、配線の浮遊インダクタンスが低減できるので、スイッチング時の跳ね上り電圧を抑制できるためのスナバ回路を除去することが可能となる。
そして、本実施例では、スナバ回路52が無くなったので、ゲート抵抗回路基板2を半導体モジュール12の上表面に近づけて配置している。これによりゲート抵抗回路基板2から半導体モジュールのゲート端子(例えば12GN)までの距離が小さくなりゲート配線(例えば32N2)を短くできるため、一層ノイズの影響を受けにくくなるとともに、使用する配線が少なくて済むという利点がある。
さらに、それにより空いたスペースにゲート駆動回路29を配置することで更なる小型化を図っている。
ところが、ゲート抵抗回路基板2が半導体モジュールに近づけたことで半導体モジュール内部を流れる電流の影響を受けやすくなる。半導体モジュール内部電流とその電流による磁界の概略を図9、図10に示す。図9は正極側スイッチング素子導通時で、図10は負極側スイッチング素子導通時であり、それぞれ同図(a)はモジュール上面から、同図(b)は側面から、同図(c)は前面から見た図である。これらの磁界の概要は、特許文献5に記載されている。
図9(c)のように正極側の半導体スイッチング素子導通時は、モジュール内部正極導体120Pからボンディングワイヤ1211、半導体素子部122P、ボンディングワイヤ1212を介して出力導体1200に電流が流れる。この電流が作る磁界はボンディングワイヤ1211と1212とで囲まれた領域では、紙面の手前から奥に、ボンディングワイヤ1212の上部では紙面の奥から手前に向かう向きである。この磁力線の概略を同図(b)に実線で示した。ゲート抵抗回路基板2の部分には、図9(a)、(b)において上から下、すなわち出力端子22N1、22N2から入力端子20Nに向かう向きとなる。
一方、図10(c)のように負極側の半導体スイッチング素子導通時は、出力導体1200からボンディングワイヤ1213、半導体素子部122N、ボンディングワイヤ1214を介してモジュール内部負極導体120Nに電流が流れる。この電流が作る磁界はボンディングワイヤ1213と1214とで囲まれた領域では、紙面の奥から手前に、ボンディングワイヤ1214の上部では紙面の手前から奥に向かう向きである。この磁力線の概略を同図(b)に実線で示した。ゲート抵抗回路基板2の部分には図10(a)、(b)において下から上、すなわち入力端子21Pから出力端子22P1、22P2に向かう向きとなる。
これらの磁界は、スイッチング時の電流変化により変動するから、電磁誘導ノイズ等のノイズ要因になることが懸念される。そこで、ゲート抵抗回路基板2の構造を図11〜図13に示すようにする。図11(a)は、ゲート抵抗回路基板2の表面から、同図(b)は表側より裏面配線パターンを透視した図を示している。また、図12(a)は表面、同図(b)は裏面の配線パターンを示している。図12(b)は裏面から見た図である。図11、図12において、正極側のゲート抵抗回路基板200Pと負極側のゲート抵抗回路基板200Nとでは、部品配置及び配線パターンを同じにしている。そのため、ゲート抵抗回路基板2を図11、図12において左右に二分割すると、同一の回路基板となる。したがって、場合によっては二分割した同一回路基板を2つ並べても良い。
図13は、図11における矢視A−A’図である。図中の点線は半導体モジュール内部の正極側の半導体スイッチング素子導通時の電流による磁力線を示している。ゲート抵抗回路基板2の表側パターンと裏側パターンとの間を通る磁界は、図において上下方向である。それに対して、抵抗241及び261を磁界の向きに実装しているため、抵抗、抵抗リード部分及び配線パターンとで構成されるループ回路を貫く磁界を低減できており、磁界の影響を受けにくい実装となっている。すなわち、抵抗、抵抗リード部分及び配線パターンとで構成されるループ回路全体の延在方向を、半導体スイッチング素子導通時の電流による磁力線の向きに平行に構成したことから、電磁誘導ノイズに係る磁束の鎖交数を低減することができる。
上述したように、本実施例によれば、ゲート抵抗回路基板2を、半導体モジュール12の投影領域内に、その半導体モジュール12の内部電流による電磁誘導ノイズを受けるような近接位置に配置しても、抵抗241及び261を磁界の向きに実装しているため、抵抗、抵抗リード部分及び配線パターンとで構成されるループ回路を貫く磁界を低減でき、磁界の影響を受けにくい実装とすることができる。つまり、電磁誘導ノイズに係る磁束が貫通するループ回路を低減した、言い換えれば、ループ回路に鎖交する電磁誘導ノイズに係る磁束の鎖交数を低減した回路構成にする。
本実施例によれば、ゲート抵抗回路基板2を半導体モジュール12に接近して配置しても、内部電流による電磁誘導ノイズの影響を低減できる。したがって、ゲート抵抗回路基板2を半導体モジュール12の投影領域内であっても、半導体モジュール12から離して配置する必要がないので、設計の自由度を一層向上できる。
なお,図8に示したようにゲート駆動回路29は半導体モジュール12表面から離れているため、半導体モジュール12の内部電流が作る磁界の影響は受けにくく、ここに配置しても問題はない。
したがって、本実施例のように、2つの半導体モジュールを並列に接続し、一方の半導体モジュールの投影領域内に平滑コンデンサを配置することにより、スナバ回路を省略できるから、ゲート抵抗回路基板2を他方の半導体モジュールに近接して配置することができるので、電力変換装置の小型化をさらに図ることができる。
本発明の実施例3を図14〜図18を用いて説明する。図14は、ゲート抵抗回路基板2の回路構成を示す。本実施例は、図6のゲート抵抗回路基板2から、ツェナーダイオード(例えば、2511、2512)を除いた点が相違することから、他の構成の説明は省略する。本実施例のツェナーダイオードは、各半導体スイッチに対応させて分岐して設けたゲート抵抗回路の分岐前のゲート駆動回路基板29側に設けられている。この点は、特許文献2の場合と同様である。
図15及び図16に、ゲート抵抗回路基板2の実装構成及び配線パターンを示す。ここでは、抵抗241〜244及び261〜264を図において横方向に延在させて実装している。また、中心線C−C’に関して対称の構成にしている。このゲート抵抗回路基板2を図7と同じように設置すると半導体モジュール12内部電流による磁界は図9及び図10と同じようになる。
本実施例の場合、抵抗261が受ける磁界の様子を図17に、抵抗263が受ける磁界の様子を図18に示す。正極側の半導体スイッチング素子が導通することにより半導体モジュール内部電流による磁界は図9に示したような向きとなるため、図17の矢印で示す向きの磁界が増大することになる。図17において、抵抗261のリードは片方が表面パターン271と接続点(スルーホール等)2712で接続され配線パターン271を介して接続点2711に接続される。他方は裏面パターン281と接続点2812で接続され配線パターン281を介して接続点2811に接続される。このとき半導体モジュール内部電流による磁界変化により、抵抗261とそのリード及び配線パターンで構成されるループを1ターンコイルとみなせて、図示したように端子2711がマイナス、端子2811がプラスとなる向きに誘起電圧が発生する。端子2711は、出力端子22N1を介して負極側の半導体スイッチング素子のゲート端子11GN1に接続され、端子2811は、出力端子22N1を介して負極側スイッチング素子の制御用エミッタ端子11GN2に接続される。このため、負極側の半導体スイッチング素子(図5の112)をオフさせる向き、すなわち誤動作を抑制する方向に作用する。図示していないが、もう一方の負極側の半導体スイッチング素子についても同様である。
また、正極側の半導体スイッチング素子がターンオフする時には、図17の矢印で示す向きの磁界が減少することになり、図示した符号と逆の極性に誘起電圧が発生するが、正極側の半導体スイッチング素子のターンオフに影響を及ぼすわけではないので問題ない。
一方、負極側の半導体スイッチング素子が導通することにより半導体モジュール内部電流による磁界は図10に示したような向きとなるため、図18の矢印で示す向きの磁界が増大することになる。その磁界変化により、抵抗263とそのリード及び配線パターンで構成されるループを1ターンコイルとみなせて、図示したように端子2821がプラス、端子2731がマイナスとなる向きに誘起電圧が発生する。端子2731は出力端子22P1を介して、正極側の半導体スイッチング素子のゲート端子11GP1に接続され、端子2821は出力端子22P1を介して、正極側の半導体スイッチング素子の制御用エミッタ端子11GP2に接続されるため、正極側の半導体スイッチング素子(図5の111)をオフさせる向き、すなわち誤動作を抑制する方向に作用する。図示していないが、もう一方の正極側の半導体スイッチング素子についても同様である。
また、負極側の半導体スイッチング素子がターンオフする時には、図18の矢印で示す向きの磁界が減少することになり、図示した符号と逆の極性に誘起電圧が発生するが、負極側スイッチング素子のターンオフに影響を及ぼすわけではないので問題ない。
以上説明したように、本実施例3によれば、ゲート抵抗回路基板2の抵抗とリード線と配線パターンからなるループ回路の延在方向を、半導体モジュール内部電流により生ずる磁界の向きに直交する方向に合わせているが、電磁誘導ノイズに係る磁束の変化により抵抗回路に誘起される電流の向きが、ゲート抵抗回路を誤動作させない向きになるから、ゲート抵抗回路基板2を半導体モジュールに接近して配置しても、内部電流による電磁誘導ノイズの影響を低減できる。
本発明の実施例4について、図19〜図24を用いて説明する。本実施例は、図19に示すように、図4に示す三相インバータの各スイッチング素子部分を2並列接続構成とした場合の実装例を示している。
半導体モジュール11U、12Uが並列でU相、11V、12Vが並列でV相、11W、12Wが並列でW相を構成している。図において手前側の半導体モジュール12U、12V、12Wの正極端子12UP、12VP、12WPを接続している正極導体、各半導体モジュール11U〜12Wの負極端子(図で見えているのは12UN、12VN、12WN)を接続している負極導体、反対側の半導体モジュール11U、11V、11Wの正極端子(図では隠れているため図示せず)を接続している奥側正極導体が横に長く跨っている。
このうちV相の部分を拡大して図20に示す。図1の実施例1の実装とほぼ同じであるが、前述のように負極導体及び2つの正極導体が横に長く跨っているため、ゲート抵抗回路基板2から奥側の制御端子11GPV及び11GNVへのゲート配線が手前側の半導体モジュール12Vの正極端子12PVと負極端子12NVとにより形成される空間部を通している。ゲート配線をこの空間部を通した理由を図21〜図24で説明する。
まず、図21は、2並列接続された1相分の動作電流を示している。始め上側スイッチング素子111及び121はオフした状態で、図中、二点鎖線で通流経路を示すように、下側112及び122の環流ダイオードに電流が流れた状態から、上側スイッチング素子111及び121がターンオンして図中の実線の通流経路に変わる状態について説明する。
始めは負極導体の端子411及び412から負極端子11N及び12Nに電流が流れ込んでおり、正極側の半導体スイッチング素子がターンオンすることにより、実線の経路、すなわち、片方の正極導体の接続端子43から片方の正極端子11Pに、もう一方の正極導体の端子42から正極端子12Pに電流が流れるように変化する。
この時の実装上の電流経路を図22及び図23に示す。図23は積層された3導体を分解して図示したものである。両図において、(1)負側環流時は図21における二点鎖線の経路であり、(2)正側導通時は図21における実線の経路である。
図24に、この時の電流による磁界の変化を示す。(1)負側環流時では負側導体の端子411及び412から図において下向きに電流が流れているため、図中の領域A及び領域Cでは紙面の奥から手前に向かう磁界が支配的で、領域Bでは反対に紙面の手前から奥に向かう磁界が支配的である。また、奥側の半導体モジュール11の負極端子11Nへ点線で示した下向きの電流が流れ、手前側の半導体モジュール12の負極端子12Nへも下向きの電流が流れている。並列接続した両方の電流がほぼ均等とすると領域Dでは紙面に垂直な方向の磁界は概ねゼロである。
次に、(2)正側導通時は、正極導体の端子42及び43から電流が流れるため、領域A及び領域Cでは紙面の手前から奥に向かう磁界が支配的で、領域Bでは紙面の奥から手前に向かう磁界が支配的である。そのため、領域A、領域B、領域Cではスイッチング時には大きく磁界が変化する。もしこの部分にゲート配線が通ると磁界の影響を受ける可能性がある。ゲート配線はツイストするなど外部磁界変化の影響を受けにくくするのが一般的であるが、ツイストの粗さなどにより全く影響を受けないとは言い切れないこともあるため、このように磁界変化の大きい場所は配線経路としては避ける方が好ましい。
一方、領域Dに関しては、(2)正側導通時でもほとんど変化がないので、本実施例においては、この領域をゲート配線経路にした。なお、領域Dでなく、その両脇の領域E、領域Fでは磁界がゼロではないがスイッチングによって磁界の向きは大きく変わらないためこの部分をゲート配線経路としても良く、図7のゲート配線32P1は領域Fを、ゲート配線32N1は領域Eを通っていることになる。
すなわち、本実施例によれば、3相インバータ回路を1相あたり2並列の半導体モジュールにより構成する場合において、一方の半導体モジュール12に重ねて配置されたゲート抵抗回路基板2から、他方の半導体モジュール11の制御端子11GP,11GNに接続するゲート配線を、2並列の半導体モジュール11,12の正極端子11Pと12P及び負極端子11Nと12Nにより形成される隙間(領域D)を通していることから、主回路に流れる電流による磁界の影響を受けることなく配線することができる。
すなわち、本実施例のように3相インバータを構成する場合、2並列接続した半導体モジュールを3つ又は2つ並べて電力変換装置を構成することになる。これらの場合、各半導体モジュールの正極端子と負極端子を共通に接続する板状の正極導体と負極導体が必要になる。この場合、図23等に示すように、共通の負極導体を挟んで2枚の共通の正極導体を間隔をあけて配置し、それらの共通導体を並べた複数の半導体モジュールに跨って配設することになる。この場合、直流電源に接続される端子42,43,411,412は、重ねて配設された共通の正極導体及び負極導体から突出させて形成される。
したがって、正極導体及び負極導体は、半導体モジュール11,12の11P、12P、及び負極端子11N、12Nにそれぞれ接続された正極導体と負極導体とが近接対向して配設された第1の部分と、それらが近接対向して配設されていない第2の部分(領域A,B,Cを画成する導体部分)とが形成される。この場合、第1の部分の近傍の領域E,D,Fに制御回路基板2から半導体モジュール11の制御端子11GP、11GNに至るゲート配線32P1,32N1を通すことが好ましい。これにより、主回路に流れる電流による磁界の影響を受けることなくゲート配線をすることができる。
本発明の実施例5について、図25〜図28を用いて説明する。
図25は、ゲート抵抗回路の並列接続されたゲート端子相互間をゲート感度補正抵抗240P及び240Nで接続した例であり、この点は、特許文献7に記載されている通り公知である。ここで、ゲート感度補正抵抗は、半導体モジュールのゲート端子相互間を接続するのが好ましいが、抵抗を実装する場所の問題から本実施例ではゲート抵抗回路基板2に実装することにした。
この時のゲート抵抗回路基板2の実装を図26に、回路の配線パターンを図27に、図26における側面を図28に示す。全体実装としては図7に示したものと同じ場合を考える。
ゲート感度補正抵抗240P及び240Nは図26、図28において図中の縦方向に実装しており、つまり図11の実施例2で説明したのと同様に抵抗のループ回路の向き(断面)を主回路電流による磁界の向きに平行に配置したことから、図28に磁力線を示す磁界の影響を受けにくい。そのため、並列接続したゲート端子間に影響を及ぼすことがない。なお、図26、図27において、ゲート感度補正抵抗240Pはゲート抵抗244の脇に置いたが、ゲート抵抗243の脇に置いて、それに応じた配線パターンにしてもよく、同様にゲート感度補正抵抗240Nをゲート抵抗241の脇でなくゲート抵抗242の脇においてそれに応じた配線パターンにしても構わない。
本実施例によれば、ゲート感度補正抵抗240P,240Nをゲート抵抗回路基板2に実装することができ、かつ、それらの抵抗のループ回路の向きを主回路電流による磁界の向きに平行に配置したことから、主回路電流による電磁ノイズの影響を受けることがない実装構造を実現できる。
本発明の実施例6について、図29〜図31を用いて説明する。
図29は、交流電源8からPWM整流回路を介して電力を供給している場合の回路構成であり、力率改善や電力回生する場合に一般的に用いられている。なお図29では、交流電源8のみとしたが、電源の後段にフィルタあるいは昇圧リアクトルが接続される場合もある。ここでは、PWM整流回路の各相は各々1つの半導体モジュール1R、1S、1Tで構成されており並列接続はしていない。負荷7に接続されるインバータに関しても同様に並列接続していなく3つの半導体モジュール1U、1V、1Wで構成されている。各々の半導体モジュールにはゲート抵抗回路基板2R、2S、2T、2U、2V及び2Wから制御端子に接続されている。
図30に本実施例の実装例を示す。各半導体モジュール(例えば1U)に被さるように各ゲート抵抗回路基板(例えば2U)が実装されており、その出力端子(例えば22PU)から制御端子(例えば1UGP)にゲート配線を介して接続されている。この時の特徴としては図1では被さっている半導体モジュール12ではない方の半導体モジュール11の負側制御端子11GNに接続されていた出力端子22N1を、図30の場合には被さっている半導体モジュール1Uの正側制御端子1UGPに接続される出力端子22PUとして使うことでゲート配線長さを短くできることである。
同じ形状の半導体モジュールのためのゲート抵抗回路基板2を並列接続時と非並列とで2種類に分けて準備しておくのは保守管理の観点で言えば得策ではない。まして、並列接続が必要なものはかなりの大電力用であるため用途も限られてくる。そこで、1種類のゲート抵抗回路基板に統一することで保守管理部品の種類が少なくなり、故障時の対応が迅速になるためサービスの低下を最小限に抑制することが可能になると考えられる。
図11及び図12で示したゲート抵抗回路基板は、正側回路基板200Pと負側回路基板200Nとは同じ構造であるため、正負を逆に使用しても構わない。このように正側回路と負側回路とを同一構造にしておくことで図29〜図30のように並列接続しない場合にも流用することが可能であり、保守管理部品の種類低減が可能となる。
また、図31は、図11、図12で示した同じ回路パターンに必要な部品のみを実装したものである。図11、図12では図の右側を正側回路基板200P、左側を負側回路基板200Nとすることでゲート配線長さの均等化を図れた。しかし、図31では左側に正側回路を、右側に負側回路とすることで図30に示すように半導体モジュールの制御端子との配線を短くすることが可能となっている。
また、図31はゲート抵抗回路基板2Uとしては図12と同じ配線パターンを用いて、必要な部分の部品のみを実装している。使用する対象が並列接続した場合に流用しないことが確実であれば、不要な部品は除去しておくことができる。
なお、図31では抵抗241及び261は図において縦方向に実装されているため、半導体モジュール内部電流による磁界の変化の影響は受けにくく問題とはならない。
本発明の実施例7について、図32〜図33を用いて説明する。
図32の本実施例は、実施例1、4の主回路の接続導体の構成が異なる。本実施例では、半導体モジュール11と12とを並列接続する主回路配線の導体が、半導体モジュール11と12の正極端子11P,12P及び負極端子11N,12Nの端子面と平行に設けている。そのため、2つの半導体モジュール11,12の間隔が広くなり、ゲート抵抗回路基板2の出力端子22P1から制御端子11GPまでの距離、同様に出力端子22N1から制御端子11GNまでの距離が一層遠くなっている。このような実装構造は、特許文献8に記載された構造と類似である。
図33に、本実施例のゲート抵抗回路基板2の実装構造を示す。本実施例では、図11に比べて負側入力端子21Nが図の左側に寄っており、出力端子22N1までの電流経路がもう一方の出力端子22N2までの電流経路に比べて短くなっている。同様に、正側入力端子21Pが図の右側に寄って、出力端子22P1までの電流経路がもう一方の出力端子22P2までの電流経路に比べて短くなっている。
すなわち、出力端子から制御端子までのゲート配線32P1と32P2とでは距離の差が大きいため、配線長さを揃えると近い側のゲート配線32P2がかなり余ってしまう。この余りの部分に磁界が鎖交すると誤動作などの要因になる可能性があるため好ましくない。そこで、本実施例では、ゲート抵抗回路基板2の内部の配線経路に差をつけて、ゲート配線長さの差を緩和することで並列接続間の不均等を低減している。
本発明の実施例8を図34〜図35に示す。本実施例は、図1に示した2並列接続の構成をさらに横に2個並べて、全体で4並列接続の構成にした場合である。ゲート抵抗回路基板2Aから半導体モジュール11と12にゲート配線が接続され、もう一方のゲート抵抗回路基板2Bから半導体モジュール13と14にゲート配線が接続されている。
4並列接続の半導体モジュール11,12,13,14に対して、共通のゲート駆動回路から配線31Pから分岐点31P0を介してゲート配線31P1及び31P2に分岐され、ゲート抵抗回路基板2A及び2Bの正側入力端子2A1P及び2B1Pに接続する。同様に配線31Nから分岐点31N0を介してゲート配線31N1及び31N2に分岐され、ゲート抵抗回路基板2A及び2Bの負側入力端子2A1N及び2B1Nに接続する。分岐点31P0及び31N0は3組の配線をカシメ接続やハンダ接続により接続する。
2つのゲート抵抗回路基板2A及び2Bから各々2個の半導体モジュール11、12及び13、14へのゲート配線については図1の場合と同様なので説明は省略する。
このように2並列接続の構造を基本として複数組設けることで2、4、6並列と並列数を増加して変換器容量を増大することが可能である。並列数が増加した場合に、分岐点31P0の分岐する配線数が増大するため、図示していないゲート駆動回路の出力端子から直接複数組の配線を接続したり、ゲート駆動回路の出力端子を複数組設けるなどもできる。
以上、本発明を実施例1〜8に基づいて説明したように、本発明によれば、電力変換装置の小型化を図りつつ、並列接続時の電流分担不均等を抑制することが可能となる。
なお、本発明はそれらの実施例に限定されるものではなく、例えば、半導体スイッチング素子として、IGBTに限らず、他の周知のスイッチング素子にも適用できるのは言うまでもない。
本発明の電力変換装置の実施例1の構成を示す斜視図である。
実施例1の上面図である。
実施例1の側面図である。
実施例1が適用される3相インバータの回路の構成図である。
実施例1の主回路構成を示す図である。
実施例1のゲート回路の詳細構成を示す図である。
本発明の電力変換装置の実施例2の構成を示す斜視図である。
実施例2の側面図である。
実施例2の主回路電流による磁界を説明する模式図である。
実施例2の主回路電流による磁界を説明する模式図である。
実施例1又は2におけるゲート抵抗回路の実装構成を示す図である。
実施例1又は2におけるゲート抵抗回路の配線パターンを示す図である。
図11の線A−A’から見たゲート抵抗回路基板の矢視図である。
実施例3におけるゲート抵抗回路の構成を示す図である。
実施例3におけるゲート抵抗回路の実装構成を示す図である。
実施例3におけるゲート抵抗回路の配線パターンを示す図である。
実施例3による電磁誘導ノイズ低減効果を説明する図である。
実施例3による電磁誘導ノイズ低減効果を説明する図である。
本発明の電力変換装置の実施例4の構成を示す斜視図である。
実施例4における電磁誘導ノイズ低減効果を説明する図である。
2個並列半導体モジュールのスイッチング時における電流の流れを説明する図である。
実施例4におけるスイッチング時の電流経路の変化を説明する図である。
実施例4におけるスイッチング時の接続導体の電流経路の変化を説明する図である。
実施例4におけるスイッチング時の接続導体周りの電流による磁界の変化を説明する図である。
本発明の実施例5におけるゲート回路の構成を示す図である。
実施例5におけるゲート抵抗回路の実装構成を示す図である。
実施例5におけるゲート抵抗回路の配線パターンを示す図である。
実施例5の主回路電流による磁界を説明する模式図である。
本発明の実施例6の電力変換装置の回路構成を示す図である。
実施例6の構成を示す斜視図である。
実施例6におけるゲート抵抗回路の実装構成を示す図である。
本発明の実施例7の電力変換装置の構成を示す斜視図である。
実施例7におけるゲート抵抗回路の実装構成を示す図である。
本発明の実施例8の電力変換装置の構成を示す斜視図である。
実施例8の上面図を示す図である。
符号の説明
2 ゲート抵抗回路基板
6 放熱器
7 負荷
8 電源
11、12 半導体モジュール
31P、31N、32P1、32P2、32N1、32N2 ゲート配線
42、43、411、412 端子
50 平滑コンデンサ
51、52 スナバ回路