姿見等に使われる汎用の鏡は、スプレー法で透明板状体であるガラス板に銀液を塗布し銀鏡反応により銀鏡膜を形成し、その上層に同様の手順で銅膜を形成し、その上層に銀鏡膜および銅膜保護のための裏止め塗膜をカーテンフローコート法で形成してなる。通常は、ガラス板を洗浄研磨した後、自動的、連続的に運ぶ装置であるコンベヤー上を搬送させつつ、上面に銀が析出した際、ガラス板に銀境膜が強固に付着するように、塩化スズ液を散布し、搬送されるガラス板に銀液を塗布し銀鏡反応により銀を析出させ銀鏡膜を形成し、その上層に同様の手順で銅膜を形成し、その上層に銀鏡膜および銅膜保護のために、裏止め塗料を塗布し焼き付け乾燥させた裏止め塗膜を被覆形成し、銀鏡膜、銅膜、裏止め塗膜を順次積層してなる。
しかしながら、銀鏡膜および銅膜保護ための裏止め塗膜を塗布したとしても、鏡の裏面端部の面取り加工を行うと、加工部に銀鏡膜および銀鏡膜を保護するための銅膜等の金属膜が露出するため、水分等と接触しやすく、金属膜が変質および変色しやすい。この変色は端部より内側に銀鏡膜および銅膜が侵食されることで広がり、縁シケ欠陥となる。尚、縁シケとは、鏡の切断面から腐食性物質が侵入し、銀鏡膜および銅膜を侵す腐食形態であり、多くが鏡の端に半円状または帯状に見られる。
鏡は過酷な環境下や長期間使用するうちに、裏止め塗膜を通して水分や酸素の影響を受け、銀鏡膜、銅膜の界面において局部電池作用が生じ、先ず銀よりイオン化しやすい銅からなる銅膜が腐食される犠牲防食作用により、銀境膜の腐食が抑制される。しかしながら、水分や酸素との接触が続けば最終的には銀鏡膜の腐食まで進展する。尚、水道水中に存在する微量に存在する塩素がこの腐食を助長する。また、腐食は環境温度が高くなるほど進行が速い。
よって、容易に縁シケ等が発生しないために、防食鏡においては、面取り加工部およびその内側近傍の鏡の裏面端縁部には銀鏡膜、金属膜を保護するための縁塗り塗料を塗布する。特に、風呂、トイレ等、水分が接触しやすく腐食しやすい場所に使用する場合は、縁塗り塗料を鏡の端縁部に塗ることが必要である。また、環境に優しいエコ仕様として、裏面鏡は裏止め塗膜に鉛顔料を使わないものに置き換わってきており、さらに銀鏡膜保護のための銅膜も形成しない鏡へと移行することも予想される。その中で、裏面鏡の端縁部の上記縁塗りは重要となる。
風呂、トイレ等の水分が接触しやすく腐食しやすい場所に使用する場合、鏡の耐食性能を高めるために、縁塗り塗液と同様の樹脂液を用いて鏡裏面全面にクリヤ塗装を行った防食鏡が使用されることがあるが、鏡裏面全面にクリヤ塗装を行うことは高価となる。そこで、金属膜が露出し、または取り扱い時にキズが付きやすく腐食しやすい鏡の裏面側端縁部に、縁塗り塗料を塗布した幅広の縁塗り塗膜を設け、鏡の耐食性能を高めることが好ましい。
尚、縁塗り塗料については種々提案されており、例えば、本出願人らは、特許文献1に、ガラス基板端部、銀鏡膜、銅等からなる金属保護膜、裏面保護膜(裏止め塗膜)へ強固に付着し、長期にわたり優れた防食効果を示す、ビスフェノ−ル型エポキシ樹脂、オルソ−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤およびシランカップリング剤を含有する縁塗り塗液を開示した。また、本出願人らは、特許文献2に、水性でありながら硬化が短時間で済み、鏡端縁部の被覆形成が容易なアクリルシリコン樹脂エマルジョンを含有する水性の縁塗り塗液を開示した。
このような縁塗り塗液を塗布する装置は、種々提案されており、例えば、本出願人は、特許文献3に鏡の裏面を上側にして移送しつつ、塗料槽からの塗料を塗料供給ロール、塗料ガイド、塗布ロールを介して前記鏡の裏面端縁部に導き塗装する鏡裏面端部の塗装装置を開示した。また、特許文献4には、被塗装体の上に接して塗装用ローラーを配し、塗装用ローラーを壁材で囲み、塗装用ローラーの周面と壁材とにより塗料溜を形成し、その間隙より塗液をローラー周面に沿って流下させ被塗装体を塗装する装置で、さらにローラー周面に環状溝を刻成してなる塗装装置が開示されている。
特許文献3および特許文献4は、いずれも鏡の裏面を上面としその端縁部を塗装する装置であり、縁塗り塗液が端面あるいは鏡表面側に垂れやすいという問題があった。
特許文献3の鏡裏面端部の塗装装置は、幅広く均一に裏面端縁部を塗装する上で好都合であるが、塗液の伝達部材が多く必ずしも簡易なものとはいえず、連続塗装に適さない。特許文献4の塗装装置は塗布ロールと壁材との間隙調整が容易でなく、所望厚みの塗膜を形成するのが困難で、特に先述のように端面等への垂れを生じやすい。
よって、本出願人は、特許文献5に、塗液が鏡端面に垂れ、さらに表面側に達しやすいという従来の不具合を解消し、またローラーの付着物等による鏡表面への汚染を防ぐものとして、裏面を下側として、鏡をコンベヤー上に移送させつつ、該裏面の端縁部域に下側より接触し回転する塗装ローラーにより該部を塗装する装置であって、塗装ローラーの下方に配した塗料槽の塗液に塗装ローラー下部を浸漬し、塗装ローラーの回転に伴い塗液をローラー外周に付着させて該ローラーの上端に接する鏡の裏面端縁部塗装装置本体と、塗装ローラーと鏡とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構と、鏡の裏面側端縁部に供する塗液量の制御機構を有する鏡の裏面端部の塗布装置を開示した。
また、本出願人は、特許文献6に、把手部と、その先端に配設した塗装用回転駆動部からなり、該回転駆動部は電動モーターと、一側端にモーター軸に軸着した小径プーリー、および回転駆動部本体に軸承され、ベルトを介して前記小径プーリーと連動回転する大径プーリーを配し、大径プーリーの対向軸端には塗装ローラー、および該塗装ローラーと近接、離隔調整可能に隣接した塗液溜と、鏡の側端に接する走査案内杆を配し、かつ塗液溜の塗装ローラー隣接側枠の一部を欠切して縦溝孔を形成し、該縦溝孔に塗装ローラーの一端を嵌入して塗液と接触させるハンディタイプの簡易な鏡の縁塗り器を開示した。
特開2005−307179号公報
特開2006−219607号公報
実開昭59−10856号公報
特開平4−41763号公報
特開平7−31911号公報
特開平7−265767号公報
鏡の裏面端部の面取り加工部は、銀鏡膜および銀鏡膜を保護するための銅膜等金属膜が露出するため、水分等と接触しやすく、銀鏡膜、金属膜が変質および変色しやすく、端部より内側に銀鏡膜および銅膜等金属膜の侵食が広がり、縁シケが発生する。
銀鏡膜および金属膜の保護のために裏止め塗膜が被覆形成されてなる鏡裏面の端縁部に、縁塗り塗料を塗布し縁塗り塗膜を形成した防食鏡において、銀鏡膜および銅膜保護ための裏止め塗膜を塗布したとしても、ハケ等で塗布し縁塗り塗膜の膜厚が不均一または塗り残しがある、ロールコーターで塗布しかすれがある等、縁塗りが適正でない場合に縁シケが発生するという問題があった。
縁塗りが適正でない状態で、例えば、Cl−、S、SO3 2−、NH4 +イオン等を含む強力な洗浄剤で鏡や鏡を取り付けてあるキャビネット等を洗浄する、 温泉地等の腐食ガスが蔓延している場所に鏡を取り付けると、取り付け後短期間で縁シケが発生する。このように、風呂、トイレ等水分が接触しやすく腐食しやすい場所に使用する場合は、鏡端縁部を縁塗り塗膜で被覆したとしても、縁塗りが適正でない場合、短時間で縁シケが発生する問題があった。
本発明は、鏡の裏面側に縁塗り塗料を縁塗りした縁塗り塗膜を形成した防食鏡であって、優れた耐食性能を有する防食鏡を提供することを目的とする。さらに、優れた耐食性能を得るために、膜厚が均一で平滑な縁塗り塗膜が形成された防食鏡を量産性よく製造する防食鏡の製造方法を提供することを目的とする。
図1は、本発明の防食鏡の端縁部の一例の拡大断面図である。
図1に示すように、通常、防食鏡1は、ガラス基板G上に銀鏡膜2を設け、その上に銀境膜保護膜としての銅膜3を設け、その上に裏止め塗料を塗布し裏止め塗膜4を設けた後、端部の面取り加工を行い、加工面5およびその近傍に縁塗り塗膜6を塗布形成してなる。
防食鏡1において、図1に示すよう、端縁部からの水分等による腐食、即ち、縁シケを防ぐために、加工面5および裏止め塗膜4上に縁塗り塗装を行う。設置時の取り扱い等で、防食鏡1の端縁部の裏止め塗膜4は傷が付きやすく、傷が付くと、そこから侵入した水分が銀鏡膜2または銅膜3に接触し縁シケが発生する。また、風呂およびトイレ等、水周りの鏡は洗剤を含んだ水で洗浄することも多く、防食鏡1の下辺の端縁部に水溜りができる。よって、防食鏡1において、端縁部を保護し腐食を防止するための帯状の縁塗り塗膜6を幅広に塗布することが好ましい。
図2は、本発明の防食鏡の一例を裏面側から見た平面図である。
鏡製品の殆どは矩形であり、殆どが壁面に水平、地面に垂直な状態で使用される。また、鏡に対して悪影響をおよぼす洗浄剤、水道水等殆どは液体であり、矩形の鏡の下辺部に水膜および水溜りとなって溜まりやすく、鏡の縁シケは下辺の鏡端縁部に集中的に発生する。このことから、図2に示すように、特に、下辺部に縁塗り塗料を帯状に広幅縁塗りし、帯状の縁塗り塗膜6を設けることによって、鏡の耐食性能は著しく向上させることが可能となる。
縁塗り塗膜6を塗布する範囲が、鏡端部から20mmより小さいと、前述の水膜および水溜りに対して十分な大きさではない。下辺部において、このことは、顕著となる。よって、縁塗り塗膜6を塗布する範囲は、防食鏡1の端縁部から20mm以上であることが好ましい。防食鏡1の端縁部から50mmを超えて塗布することは、通常、縁塗り塗装はハケまたはロールコーターで塗布することを考えると、現実的ではなく、価格の上昇に繋がる。
また、縁塗り塗膜6の厚さが20μmより薄いと、銀鏡膜2、銅膜3等の金属膜の保護効果が小さい。また、200μmより厚く塗ることは、ロールコーターでは塗り難く、乾燥に時間がかかり現実的ではなく、縁塗り塗膜6中に気泡が発生し易くなり、耐食性能が低下し易い。
即ち、本発明は、裏止め塗膜を裏面側に形成した鏡の端縁部に、鏡1の端部を始点として20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を形成してなることを特徴とする防食鏡1である。
さらに、本発明の防食鏡1において、特に、裏止め塗膜を裏面側に形成した鏡の端縁部に、少なくとも防食鏡の使用時に下辺となる端縁部には、鏡端部を始点として20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を形成することが好ましい。
縁塗り塗料としては、硬化した際に、耐水性等、耐久性に優れ鏡に優れた防食効果を与える縁塗り塗膜6を形成するエポキシ樹脂およびアクリルシリコン樹脂を用いることが好ましい。
また、本発明は、前記縁塗り塗膜6を形成するための縁塗り塗料が、エポキシ樹脂またはアクリルシリコン樹脂から選ばれることを特徴とする上記の防食鏡である。
本発明の防食鏡1の縁塗り塗膜6を形成するためのエポキシ樹脂を含有する縁塗り液としては、例えば、乾燥硬化が短時間で済み、言い換えれば、速乾性に優れ、縁塗り塗膜とした際に、ガラス基板G端縁のガラス面、銀鏡膜2、銅膜3等からなる金属膜および裏止め塗膜4へ強固に固着し、耐食性に優れ長期にわたり優れた防食効果を有する防食鏡1を得るために、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する縁塗り液を使用することが好ましい。特に、ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂に加え、ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂およびオルソクレゾ―ルノボラック型エポキシ樹脂を用い、速乾性が各々のエポキシ樹脂のエポキシ当量およびその重量比を調整した縁塗り塗液を用いることが好ましい。
本発明の防食鏡1において、縁塗り塗液に、ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂に加え、ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂およびオルソクレゾ―ルノボラック型エポキシ樹脂を含有させた効果で、縁塗り塗膜6を塗布形成する際の速乾性が優れたものとなり、エポキシ当量、各々のエポキシ樹脂の重量比を調整したことで、ガラス面、銀鏡膜2、銅膜3等からなる金属膜、裏止め塗膜4へ強固に固着させ、耐食性を高めた。
このように、本発明の防食鏡1に優れた耐食性能を与えるためには、縁塗り塗料に(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量、150〜300)、(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量、450〜3300)、(C)オルソクレゾ―ルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量、180〜300)、(D)エポキシ硬化剤、(E)シランカップリング剤を含有する縁塗り塗液を用い、鏡端部を始点として、20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を膜厚が均一で平滑に形成することが好ましい。
また、本発明は、前記縁塗り塗膜6を形成するための縁塗り塗料が、(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量、150〜300)、(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量、450〜3300)、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量、180〜300)、(D)エポキシ硬化剤、(E)シランカップリング剤を含有することを特徴とする上記の防食鏡1である。
さらに、本発明は、(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量、150〜300)と(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量450〜3300)の重量比が(A):(B)=30:70〜90:10であり、(A)+(B)に対する(C)オルソ−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜300)の重量比が、((A)+(B)):(C)=100:1〜100:20であることを特徴とする上記の防食鏡1である。
尚、エポキシ当量はエポキシ基1個あたりの当量であり、「エポキシ樹脂のエポキシ当量試験方法」JIS K7236:2001に準拠し、単位はg/equivである。
また、本発明の防食鏡1に優れた耐食性能を与えるためには、アクリルシリコン樹脂、特に、アクリルシリコン樹脂を水に分散させてなるアクリルシリコン樹脂エマルジョンを含有する水性の縁塗り塗液を用いて縁塗り塗膜6を形成しても良い。
本発明の防食鏡1において、アクリルシリコン樹脂エマルジョン樹脂を縁塗り塗液に使用することで、水性でありながら硬化が短時間で済み、防食鏡1の端縁部の縁塗り塗膜6の形成が容易で、鏡端部を始点として、20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を膜厚が均一で平滑に形成することで、ガラス面、銀鏡膜2、銅膜3等からなる金属膜、裏止め塗膜4へ強固に付着し、長期にわたる優れた防食効果を有する防食鏡1が得られた。
また、本発明は、前記縁塗り塗膜を形成するための縁塗り塗料が、アクリルシリコン樹脂を水に分散させてなるアクリルシリコン樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする水性の縁塗り塗液であることを特徴とする上記の防食鏡1である。
さらに、本発明は、前記アクリルシリコン樹脂がケイ素含有アクリル系単量体のみを乳化重合することにより得られるアクリルシリコン樹脂エマルジョン、またはケイ素含有アクリル系単量体と他の単量体とを乳化重合することにより得られるアクリルシリコン樹脂エマルジョンであることを特徴とする上記の防食鏡1である。
さらに、本発明は、前記アクリルシリコン樹脂の組成物がシクロヘキシルメタアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタアクリレートおよびブチルメタアクリレート、ケイ素単量体であることを特徴とする上記の防食鏡1である。
ロールコーターを用いての縁塗り塗装において、塗布ロールに添設して液溜めを設け、塗布ロールに縁塗り塗液を供給しつつ、同時に塗布ロールのロール面を鏡の裏面側端縁部に接触させつつ1本の塗布ロールのみのロールコーターを用いて、縁塗り塗装を行う従来の方法は、連続して縁塗り作業を行うと、縁塗り塗液の供給が追いつかなく、縁塗り塗膜6の均一塗布および膜厚制御が困難となる。
そこで、本発明の防食鏡1の製造において、膜厚が均一で平滑な縁塗り塗膜6が形成された防食鏡を得るために、塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールを並べ、その外周面が線状に接した状態、即ち、並接した状態で設けた3本のロールからなるロールコーターを用いた。詳しくは、各ロールが連動して回転することで、縁塗り塗液を満たした塗料槽に浸漬させた塗液ピックアップロールの外周面より縁塗り塗液が、調製ロールの外周面、次いで、塗布ロールの外周面に移り、塗布ロール面を鏡の裏面側端縁部と接触させることで、鏡の裏面側端縁部を縁塗りし、縁塗り塗膜6を設けた。
その際、ロールを連動して回転させることで、縁塗り塗液が付着した塗液ピックアップロールの外周面と調製ロールの外周面の接点に縁塗り塗液の液溜りを作ることで混練し、調製ロールのロール面に縁塗り塗液が均一に供給されるように展開する。
さらに、本発明は、裏止め塗膜を被覆形成した鏡を、裏止め塗膜を被覆形成した裏面側を上としてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触し回転する塗布ロールにより鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する、並接して連動する塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールからなる鏡裏面側端縁部の縁塗り装置を用いて、塗液ピックアップロールの下方に配した塗料槽内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロールの下部を浸漬し、塗液ピックアップロールの回転に伴い縁塗り塗液を塗液ピックアップロールの外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロールに並接して連動する調製ロールの外周面に移しつつ、縁塗り塗液を連動して回転する塗液ピックアップロールと調製ロール間で混練し、調製ロールの外周面に展開し、次いで縁塗り塗液を調製ロールに並接して連動する塗布ロールの外周面に移し、塗布ロールの下端に接しつつ搬送される鏡の裏面端縁部に縁塗り塗液を塗布し、縁塗り塗装をすることを特徴とする上記の防食鏡1の製造方法である。
本発明により、鏡の裏面側に縁塗り塗料を縁塗りした縁塗り塗膜6を形成した優れた耐食性能を有する防食鏡1が得られた。さらに、優れた耐食性能を得るために、膜厚が均一で平滑な縁塗り塗膜6が形成された防食鏡1を量産性よく製造するための防食鏡1の製造方法が得られた。
本発明は、裏止め塗膜を裏面側に形成した鏡の端縁部に、鏡の端部を始点として、20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を形成してなることを特徴とする防食鏡1である。
本発明の防食鏡における縁塗り塗膜6を形成するための、縁塗り塗液について説明する。
縁塗り塗液には、特許文献1に記載の(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量150〜300)、(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量450〜3300)、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜300)、(D)エポキシ硬化剤、(E)シランカップリング剤を含有する縁塗り塗液を使用することが好ましく、裏止め塗膜4を裏面側に形成した鏡の端縁部に、鏡端部を始点として、20mm以上、50mm以下の位置までに、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜6を形成することで、優れた防食鏡1が得られる。
前記(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂は、常温、即ち、室温である20℃前後で液体であり、エポキシ当量が150〜300、好ましくは180〜250の範囲のものを使用する。エポキシ当量が150未満であると、鏡の端縁に縁塗り塗液を塗布後、乾燥硬化させ縁塗り塗膜6を得たとしても、耐水性、耐酸耐アルカリ性に劣り、長期にわたり優れた防食効果が得られない。好ましくは、180以上である。エポキシ当量が300より大きいと液状でなく粘度が上がり粘液または固体となり、縁塗り塗液を塗布後乾燥硬化させて得られた縁塗り塗膜6は脆くなり、クラック等が発生し、優れた防食効果が得られない。好ましくは250以下である。
前記(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂は、常温で固形であり、エポキシ当量が450〜3300、好ましくは450〜2200の範囲の物を使用する。エポキシ当量が450未満であると、エポキシ樹脂が液状となる。エポキシ当量が3300より大きいと、縁塗り塗液を塗布、乾燥硬化させて得られた縁塗り塗膜6が脆くなり、クラック等が発生し、鏡の端縁部との付着力が弱くなり、優れた防食効果が得られない。
また、(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂と(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂の重量比は(A):(B)=30:70〜90:10の範囲、好ましくは、(A):(B)=40:60〜80:20の範囲である。(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂が30質量%未満、(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂が70質量%より大きな範囲で調製した縁塗り塗液を用い、塗布後、乾燥硬化させて形成した縁塗り塗膜6は、耐水性および鏡の端部への付着力が劣る。一方、(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂の重量比が90.0質量%を超えて、また、(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂の重量比が10.0質量%未満で形成した被覆は銀鏡膜2、銅膜3、裏止め塗膜4への固着強度が不十分となる。
また、(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂、(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂に加え、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有させると、乾燥性が飛躍的に向上する。(C)オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂は、エポキシ当量が180〜300、好ましくは195〜230の物を使用する。エポキシ当量が180未満であると鏡の端縁部に塗布後、乾燥硬化させ縁塗り塗膜6を形成する際、硬化速度が速くなり過ぎて、塗布時間が少なくなり塗布作業がし辛い。好ましいエポキシ当量は195以上である。エポキシ当量が300より大きいと、溶解した際の粘度が高く、鏡縁塗り塗液を作る際、均一に混合させることができない。
また、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の含有は(A)ビスフェノール型液状エポキシ樹脂と(B)ビスフェノール型固形エポキシ樹脂の計(A)+(B)に対して1.0質量%〜20.0質量%の範囲、好ましくは(A)+(B)対して2.0質量%〜15.0質量%が適切であり、含有量1質量%未満で形成した縁塗り塗膜6は、乾
燥性が不十分で、即ち、乾燥が遅く、20.0質量%を超えると塗膜の耐食性が劣化する。 (D)エポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と付加反応するため、1分子中に少なくとも2個の窒素原子に活性水素原子が結合したアミノ基を有するアミン系硬化剤が使用される。例えば、アミンアダクト樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミンをアミン形硬化剤として使用する。縁塗り塗液において、主剤である(A)、(B)、(C)各エポキシ樹脂と(D)エポキシ硬化剤とは使用直前に混合する。混合した後、塗布し前記各エポキシ樹脂中のエポキシ基と(D)エポキシ硬化剤中のアミノ基の活性水素との付加反応により硬化した縁塗り塗膜6を形成するが、エポキシ基とアミノ基の混合比はモル当量比でエポキシ基:アミノ基=1:2〜2:1の範囲とするのが好ましい。以上の混合比の範囲外では縁塗り塗膜6の硬化が不十分となる。
(E)シランカップリング剤は本発明の縁塗り塗液を、図1の斜めの断面、即ち、加工部5に塗布し乾燥硬化させ縁塗り塗膜6とした際に、縁塗り塗膜6をガラス基板G、銀鏡膜2、銅膜3および裏止め塗膜4により強固に固着させるために含有させる。(E)シランカップリング剤は、ガラス基板G、銀鏡膜2、銀境膜2の保護のための銅膜3に対して付加反応又は親和性を有する官能基と、有機材料である裏止め塗膜4に使用している樹脂に対して反応、または親和性を有する官能基とを有する。ガラス基板Gに対して付加反応する、または親和性を有する官能基としては、直鎖又は分岐鎖を有するメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基またはシラノ−ル基等が挙げられる。一方、有機材料に対して付加反応する、または親和性を有する官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。
このような官能基を有する(E)シランカップリング剤としては、γ-グリシキドシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシキドシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシキドシプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランまたはγ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、(E)シランカップリング剤は、(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量150〜300)、(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量450〜3300)、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜300)、(D)エポキシ硬化剤の計、(A)+(B)+(C)+(D)に対して、0.5質量%〜10.0質量%の範囲で配合する。(E)シランカップリング剤が0.5質量%未満であれば、縁塗り塗膜6が、図1の加工部5におけるガラス基板G、銀鏡膜2、銀境膜2の保護のための銅膜3に固着しない。また、10.0質量%より大きいと、縁塗り塗液が増粘、ゲル化し塗布し難い。
尚、(A)、(B)、(C)の各エポキシ樹脂を溶解させるため、炭化水素系、エステル系、エ−テル系、ケトン系、アルコ−ル系等、公知の有機溶剤を適宜使用し、また塗布時の作業性、塗布御の仕上がり外観を向上させるためレベリング剤、消泡剤、レオロジーコントロ−ル剤等を適宜添加する。
(A)ビスフェノ−ル型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量150〜300)、(B)ビスフェノ−ル型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量450〜3300)、(C)オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜300)、(D)エポキシ硬化剤、(E)シランカップリング剤に、有機溶剤、レベリング剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤を適宜添加して得られた本発明の縁塗り塗液は、鏡の端縁部および面取り加工された鏡裏面の端縁の加工部5へロールコーターで乾燥膜厚20μm以上、200μm以下になるように塗布した後、200℃以下で乾燥硬化、好ましくは、180℃にて5分間、乾燥硬化させて縁塗り塗膜6を形成し、鏡の端縁部が被覆された防食鏡1を完成させる。
また、本発明の防食鏡に優れた耐食性能を与えるためには、特許文献2に記載のアクリルシリコン樹脂を水に分散させてなるアクリルシリコン樹脂エマルジョンを含有する水性の縁塗り塗液を用いて縁塗り塗膜6を形成しても良い。
アクリルシリコン樹脂エマルジョンは、塗布後の硬化が速く防食鏡の端縁部の縁塗り塗膜6の形成が容易である。縁塗り塗膜6とした際に耐久性、耐薬品性に富むこと、また、優れた縁塗り塗膜6を得るための樹脂を重合する際の、樹脂設計の自由度の高いことから、ケイ素含有アクリル系単量体のみを乳化重合することにより得られるアクリルシリコン樹脂エマルジョン、またはケイ素含有アクリル系単量体とケイ素を含有しない他の単量体とを乳化重合することにより得られるアクリルシリコン樹脂エマルジョンが好適に使用される。
前記ケイ素含有アクリル系単量体としては、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
前記アクリル系単量体と共重合可能なケイ素を含有しない他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル等の水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル等が挙げられる。
上記アクリル樹脂エマルジョンは、例えば、乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法で、水性媒体中で前記の単量体、連鎖移動剤、界面活性剤、ラジカル重合開始剤および、必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、単量体を重合させてエマルジョンに製造される。
必要に応じて用いられる他の添加剤成分の例としては、アルコキシシラン及び/又はオルガノアルコキシシランが挙げられる。具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等が挙げられる。これらのアルコキシシラン及び/又はオルガノアルコキシシランは、単独でまたは2種以上を混合して使用される。
アクリルシリコン樹脂は、その樹脂を構成する単量体がシクロヘキシルメタアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタアクリレートおよびブチルメタアクリレート、および前記ケイ素含有アクリル系単量体またはケイ素を含有しない単量体であるケイ素単量体であり、構成する単量体として、それらを全て使用することが好ましい。アクリルシリコン樹脂エマルジョンの重合が行い易く、水性の縁塗り塗液にした際に塗布し易く、得られた防食鏡1に優れた防食効果を与える。
アクリルシリコン樹脂エマルジョンに水、造膜助剤、レベリング剤、消泡剤を適宜添加して得られた本発明の鏡用縁塗り液は、鏡の裏面側端縁部および面取り加工された鏡1の裏面側端部の加工部5へロールコーターで膜厚20μm以上、200μm以下になるように塗布する。さらにこれを80℃以下で促進乾燥、好ましくは常温乾燥させて縁塗り塗膜6を形成し、鏡の端縁を被覆して縁塗り塗膜6として防食鏡1を完成させる。
次いで、本発明の防食鏡1における縁塗り塗膜6を形成する際、優れた耐食性能を得るために、膜厚が均一で平滑な縁塗り塗膜6が形成された前記防食鏡1を量産性よく製造するための防食鏡の製造方法について説明する。
図3の(A)は、本発明の防食鏡を製造するための裏面側端縁部の縁塗り装置の一例の側面図である。(B)は、本発明の防食鏡を製造するための縁塗り装置の一例の正面図である。
本発明の防食鏡1を製造するための鏡の製造方法は、図3の(A)および(B)に示すように、裏止め塗膜6を裏面側に被覆形成した鏡7を、裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触し回転する塗布ロール8により鏡7の裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する、並接して連動する塗液ピックアップロール9と調製ロール10と塗布ロール8からなる鏡7の裏面側端縁部の縁塗り装置を用いて、塗液ピックアップロール9の下方に配した塗料槽11内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロール9の下部を浸漬し、塗液ピックアップロール9の回転に伴い縁塗り塗液を塗液ピックアップロール9の外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール9に並接して連動する調製ロール10の外周面に移しつつ、縁塗り塗液を連動して回転する塗液ピックアップロール9と調製ロール10間で混練し、調製ロール10の外周面に展開し、次いで調製ロール10に並接して連動する塗布ロール8の外周面に移し、塗布ロール8の下端に接しつつ搬送される鏡7の裏面端縁部に縁塗り塗液を塗布し、縁塗り塗装することを特徴とする。
その際、塗液ピックアップロール9は、回転させつつ縁塗り塗液を満たした塗料槽11に浸漬する。その際、塗液ピックアップロール9の外周面に、所望の量の縁塗り塗液が付着するように、塗料槽11内の縁塗り塗液の液面高さを調製して、塗液ピックアップロール9の浸漬位置を決定することが好ましい。鏡7の裏面側端縁部に一定の膜厚の縁塗り塗膜6を形成するためには、塗布中は、塗料槽11内の縁塗り塗液の液面高さを一定の高さを保つに保つことが好ましい。液面高さを一定の高さを保つことで、塗液ピックアップロール9の外周面に、一定量の縁塗り塗液が付着する。
次いで、縁塗り塗液が付着した塗液ピックアップロール9の外周面と調製ロール10の外周面は、縁塗り塗液の粘性でスリップなく、つけ回りすることにより連動する。塗液ピックアップロール9と調製ロール10の外周面接点で液溜り12を作ることで縁塗り塗液は混練され、調製ロール10の外周面に均一に展開される。次いで、並接する調製ロール10と塗布ロール8が粘性でスリップなく付け回りすることにより、調製ロール10と塗布ロール8の回転に伴い、調製ロール10の外周面から塗布ロール8の外周面へ縁塗り塗液は移る。最後に塗布ロール8が鏡7の端縁部に押圧されることにより縁塗り液が鏡7の裏面側端縁部に移り、縁塗り塗膜6が塗布される。
尚、鏡7を自動的、連続的に運ぶ装置であるコンベヤーとしては、図3の(A)および(B)に示すような、通常、搬送ロール13が用いられる、駆動としては、鏡7を自動的、連続的に運べるように工夫して、下側の搬送ロール13、または図示しない上側の搬送ロールを電動モーター等で駆動させる。通常、搬送ロール13は円筒状ゴム輪に鉄棒を心棒として挿入したものが用いられる。
また、塗液ピックアップロール9と調製ロール10と塗布ロール8の各心棒に、図示しない歯車またはベルト車等を設置して互いに連結させる等して、各ロールがスリップすることなく円滑に連動させることが好ましい。尚、搬送する鏡7の裏面に押圧されることによって、塗布ロール8が回転するので、塗液ピックアップロール9と調製ロール10と塗布ロール8に、特に電動モーター等の駆動源を設置する必要はない。
塗液ピックアップロール9と調製ロール10と塗布ロール8の外周面は、縁塗り塗液を保持するためにエンボス加工等されていることが好ましい。縁塗り塗液を保持するために少なくとも、塗布ロール8は、外周面に多数の環状溝を周設していることが好ましい。
また、塗布ロール8は硬い鏡1の裏面側端部14と連続して当たるので、その外周面には、連続塗装をするに連れてつぶれる懸念のない硬い材料を用いるが好ましく、金属、セラミックまたは硬質樹脂等から選ばれる。縁塗り塗液に対して変質することなく優れた耐性があることからはステンレス鋼が適した材料であり、塗布ロール8の表面に複数の環状溝を周設する際に加工容易であることを考慮すれば、アルミニウム、アルミニウム合金が適した材料である。縁塗り塗液に対して十分に耐性があり、加工が容易であることから、アルミニウム、アルミニウム合金を用いることが好ましい。
多数の環状溝を周設する塗布ロール8を用いることで、鏡7の裏面側端縁部に供給する縁塗り塗液の液量の制御機構として、例えば、図示しない塗液掻取り枝杆を用い、外周面に塗液掻取り枝杆を押し付けて、環状溝内の縁塗り塗を除き掻取り、塗鏡裏面に供給する液量を精密に制御することが可能となる。掻き取られた縁塗り塗液は、捨てずに塗料槽11に戻すことが経済的である。
図4は、塗布ロールの一例の部分拡大断面図である。
外周面に設けた環状溝15の溝幅16および深さ17は縁塗り塗液の固形分濃度または粘度によるが、鏡7に所望の厚みの縁塗り塗膜6をつけるためには、各々0.1mm以上、2.0mm以下の間で調整する。0.1mmより溝幅16が狭いまたは深さ17が浅い溝は加工が困難であるとともに、縁塗り塗膜6が薄くなりすぎて現実的ではない。2.0mmより、溝幅16が広いまたは深さ17深い溝は、ロール外周面の縁塗り塗液の保持量が多すぎる、ロール外周面に塗液の流れが生じ外周面上で不均一になる等の不具合が生じ均一な膜厚の縁塗り塗膜6が形成困難となる。
図4に示すように、環状溝15は、断面逆3角形の形状とすることが加工しやすく、各ロールが外周面の接触による抵抗で連動しやすい、言い換えれば、付け回りしやすいように、外周部頂点は面取り加工することが好ましい。このようにすることで、鏡7の裏面端縁部に供給する縁塗り塗液の塗液量の制御機構として、例えば、塗液掻取り枝杆を用いた際に、鏡裏面端縁部に供給する縁塗り塗液の塗液量の制御がしやすい。
また、塗布ロール8と鏡7に相対的な押圧力を適宜付与する機構としては、例えば、図3において、図示しないアームの先端に塗布ロール8を取り付け、支点からのアームの触れ幅を調整し、アーム自体に板バネを用いるまたはアームに渦巻きバネを添説する等の機構があげられる。このように、塗布ロール8と鏡7とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構として押圧力調整用のバネ弾性体を塗布ロール8に近接して設けることが好ましい。
尚、本発明の防食鏡およびその製造方法は、ガラス基板G上に銀鏡膜2、銀鏡膜2を保護するための銅膜3等の金属膜、裏止め塗膜4を順次積層した防食鏡1ばかりでなく、環境保護のために、銀鏡膜2を保護するための銅膜3等からなる金属膜が用いないで、ガラス基板G上に銀鏡膜2、裏止め塗膜4を順次積層した鏡に幅広帯状の縁塗り塗膜を形成した防食鏡1についても好適に適用される。また、無鉛の顔料を使用した裏面保護膜4を有する無鉛鏡にも好適に適用される。
公知の手段で、図1に示すように、ガラス基板Gの片面に銀鏡膜2、銅膜3、裏止め塗膜4を順次積層してなる厚み5mmの防食鏡1を作製した。
具体的には、清浄に洗浄したガラス基板Gの片面に硝酸銀溶液と銀を還元させるための還元液とからなる銀メッキ液をスプレーし、銀鏡反応にて1.0g/m2となるように銀鏡膜2を形成し、この膜面を水洗した後、硫酸銅溶液と銅を還元させるための還元液とからなる銅メッキ液をスプレーし、0.3g/m2となるように銅膜3を形成し、水洗後に乾燥させた。銅膜3上に、エポキシ樹脂および硬化剤を85重量部、シクロヘキサン−ホルムアルデヒド樹脂を15重量部のバインダーと顔料とが重量比で顔料/バインダー=2.0であり、かつ顔料組成物中6.0質量%の硫酸鉛を含有する有鉛顔料からなる裏止め塗料をフローコーターにより均一な膜厚となるように塗布した後、乾燥炉で6分、ガラス基板Gの温度が140℃になるように硬化させ乾燥後の膜厚50μmの裏止め塗膜4を形成した。
尚、裏止め塗膜4に用いる樹脂には、エポキシ樹脂以外に、メラミン樹脂、アルキド樹脂が挙げられ、顔料には、硫酸鉛を含む有鉛顔料以外に炭酸鉛からなる有鉛顔料、または無鉛顔料が挙げられるが、本実施例においては、エポキシ樹脂、硫酸鉛を含む有鉛顔料を使用した。有鉛顔料は銅膜3に対して防錆効果がある。
このようにして作製した鏡を300mm角の大きさに切断し、その端縁部をシーミング加工し、上記銀鏡膜2、銅膜3が露呈した加工部5に、図3に示した鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置を使用し、エポキシ樹脂を主成分とする縁塗り塗料、またはアクリルシリコン樹脂を主成分とする縁塗り塗料を用い、所定の膜厚および縁塗り幅となるように、縁塗り塗装を実施した。
エポキシ樹脂を主成分とする縁塗り塗料には、主剤および硬化剤からなる2液型のものを使用した。
主剤は、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂(エポキシ等量184〜194)40重量部、ビスフェノール型固形状エポキシ樹脂(エポキシ等量900〜1000)60重量部およびオルソクレゾール/ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ等量205〜230)3重量部に、レオロジーコントロール剤、4重量部、レベリング剤、0.5重量部、消泡剤0.5重量部を加え、溶剤としてメチルイソブチルケトン、メチルプロピルグリコール、ノルマルブタノール、キシレン等を加え、所望の固形分濃度、粘度に調整した。硬化剤は、アミン価235〜265、活性水素等量150のポリアミド樹脂(富士化学工業株式会社製、トーマイド437)を用いた。これら、主剤および硬化剤を塗布前に混合して使用した。
また、アクリルシリコン樹脂を主成分とする縁塗り塗料は、TG、20℃のアクリルシリコン樹脂エマルジョン(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名、ポリデュレックスG623)を用い、造膜助剤としてのテキサノールおよびレベリング剤を加えた後、純水を加えることで、所望の固形分濃度、粘度に調整した。
図3に示すように、裏止め塗膜6を被覆形成してなる鏡7を、裏止め塗膜6を形成した裏面側を上にして搬送ロール13上に搬送させつつ、鏡7の裏面側の端縁部に上側より接触し回転する塗布ロール8により、鏡7の裏面側の端縁部に前記縁塗り塗液を塗装した。詳しくは、塗液ピックアップロール9の下方に配した塗料槽11内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロール9の下部を浸漬し、塗液ピックアップロール9の回転に伴い、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール9の外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール9に並接して連動する調製ロール10の外周面に移しつつ、縁塗り塗液を連動して回転する塗液ピックアップロール9と調製ロール10間で混練し、調製ロール10の外周面に展開し、次いで、縁塗り塗液を調製ロール10に並接して連動する塗布ロール8の外周面に移し、塗布ロール8の下端に接しつつ搬送される鏡7の裏面端縁部に縁塗り塗液を塗布し、縁塗り塗装した後に、焼成して縁塗り塗膜6とした。
塗布ロール8の直径は50.0mm、塗布ロール8の外周面には、多数の環状溝15を周設してなり、環状溝15の溝幅16は0.5mm、深さ17が0.5mmである。
このようにして得られた鏡の縁塗り部を20mmの高さまで、1.0質量%濃度の塩酸溶液に浸漬し、室温(約20℃)下、48時間(hr)、96時間(hr)、144時間(hr)経過後の表面状態を確認することで、耐酸性の評価を行い、防食鏡1としての耐食性能を確認した。
エポキシ樹脂を主成分とした縁塗り塗液による縁塗り塗膜6を形成した鏡7の耐酸性評価結果を表1に示す。
表1に示すように、厚さ、10μm、30μm、50μm、80μm、120μm、200μm、250μm、300μm、各々縁塗り幅、10mm、20mm、30mmの縁塗り塗膜6を形成した鏡を、上述の濃度、1.0質量%の塩酸溶液に鏡端部より20mm浸漬した。尚、図2に示すように、縁塗り幅18とは、鏡1の端部より形成した帯状の縁塗り塗膜6の幅である。
表1に示すように、鏡の端部を始点として30mm、50mmの縁塗り幅で、各々、厚さ、30μm、50μm、80μm、120μm、200μmの縁塗り塗膜6を形成した鏡は、浸漬144時間経過後、鏡面に異常なく良好な耐酸性を示した。
それに対して、縁塗り塗膜16の厚さが10μmの鏡1は、縁塗り幅、10mm、30mm、50mmともに、96時間経過後、銀鏡膜2に腐食が発生し、144時間経過後、浸漬部全体が腐食した。このことは、縁塗り塗膜6の厚さが足りなくて、所望の耐食性能が得られなかったことによる。
また、縁塗り幅10mmの鏡は、浸漬48時間経過後、腐食が発生した、このことは裏止め塗膜4に濃度、1.0質量%の塩酸溶液が作用したことによる。
また、濃度、1.0質量%の塩酸溶液に浸漬した結果、縁塗り塗膜16の厚さが250μm、300μmの鏡は、縁塗り塗膜6の表面に発泡が発生し、浸漬96時間系経過後、全てに銀鏡膜2の腐食が発生した。これは、気泡が発生した縁塗り塗膜6に、濃度、1.0質量%の塩酸溶液が浸入し、銀境膜2が侵されたことによる。
尚、アクリルシリコン樹脂を主成分とした縁塗り塗液による縁塗り塗膜6を形成した鏡の耐酸性評価結果も表1と同等の結果であった。